説明

高性能の動的吹き付けノズル

【課題】粉末粒子を被覆する動的吹き付けシステムのノズルアッセンブリを提供する。
【解決手段】動的吹き付けシステムのノズルアッセンブリは、先細部、スロート部及び末広部を備え、各々は、高圧加熱ガスの流れに浮遊した粉末粒子の混合物を通過させるための通路を画定するように協働する。ノズルアッセンブリは、末広部に取り付けられ、且つ、ノズルアッセンブリの末広部から所定の長さで末端部まで延在する延長部を更に備える。延長部は、高圧加熱ガスの流れにより粉末粒子に発揮された引きずり力が、より長い期間に亘って粉末粒子に作用することを可能にし、これによって粉末粒子を以前には達成できなかったより高速度にまで加速することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年8月23日に出願された米国特許出願シリアル番号10/924270号の部分継続出願である。
本発明は、概して、動的吹き付けシステムのためのノズルアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
動的吹き付けシステムのためのノズルアッセンブリは、典型的には、正の圧力下で粉末粒子の流れを加熱ガスの流れと混合させるための混合チャンバーを備えている。混合チャンバーは、ラバール式の先細−末広超音波ノズルに接続されている。加熱ガスも、粉末粒子の流れの正の圧力よりも低く設定された正の圧力下で混合チャンバー内に導入される。混合チャンバー内では、加熱ガスの流れと、粉末粒子の流れとは、一緒に混合して、ガス/粉末混合物を形成する。ガス粉末混合物は、混合チャンバーから超音波ノズル内へと流れ込み、該粉末粒子は、毎秒200mから1,300mの範囲の間の速度へと加速される。
【0003】
米国特許出願番号2005/0214474A2(以下では、「‘474」出願)は、動的吹き付けシステムのためのラバール式のノズルアッセンブリを開示している。ノズルアッセンブリは、入口及び出口を形成する先細部分を備える。当該出口は、当該入口に対して間隔を隔てた関係にある。末広部分は、入口及び出口を形成し、該出口は入口に対して間隔を隔てた関係にある。スロート部は、先細部の出口と、末広部の入口とを相互接続している。先細部、スロート部及び末広部は、これらを通過する通路を形成し、該通路は、先細部の入口及び出口の間で幅が狭くなり且つ末広部の入口及び出口の間で拡大する周辺部を有している。
【0004】
‘474出願で開示されたノズルアッセンブリ等のノズルアッセンブリの作動中には、粒子は、臨界速度を超えた場合にノズルを出て、ノズルアッセンブリに対向して配置された基板に付着する。粉末粒子の臨界速度は、その材料組成とそのサイズに依存している。より高い密度の粒子は、基板に付着する上で一般により高い速度を必要としている。更には、より大きい粉末粒子を加速することはより困難となる。従って、コーティング密度及び粒子の堆積効率は、粉末粒子を吹き付けることがより難しくなる状況で、非常に低くなり得る。粉末粒子の速度は、ノズルアッセンブリを出たとき、粉末粒子のサイズ及び密度とは逆向きに変化する。加熱ガスの流れの速度を増大させることは、ノズルアッセンブリを出たとき粉末粒子の速度を増大させる。しかし、動的吹き付けシステム内で加熱ガスの流れの達成可能な速度に対して制限が存在している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、高い密度及び大きいサイズを有する粉末粒子を吹き付けることが困難である基板への付着を改善するため粉末粒子の速度を増大させるようにノズルアッセンブリを改善することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、動的吹き付けシステムのためのノズルアッセンブリを提供する。ノズルアッセンブリは、入口及び出口を形成する先細部を備える。当該出口は当該入口に対して間隔を隔てた関係にある。末広部は、入口及び出口を形成し、当該出口は当該入口に対して間隔を隔てた関係にある。スロート部は、先細部の出口と末広部の入口とを相互接続する。先細部、スロート部及び末広部は、これらを通した通路を画定する。当該通路は、先細部の入口及び出口の間で狭くなり、末広部の入口及び出口の間で拡径する周辺部を備える。延長部は、通路を更に画定し、末広部の出口から、出口から所定の長さで隔てられた末端部まで延在する。延長部により画定された通路の周辺部は、末広部の出口により画定された通路の周辺部と少なくとも等しいか又は大きい。
【0007】
本発明は、動的吹き付けシステムにより塗布された粉末で基板を被覆する方法を更に提供する。本方法は粉末を加熱ガスの流れで混合し、加熱ガスの流れを加速し、粉末を加速するため粉末に作用する引きずり力を提供するように、加熱ガスの流れをノズルアッセンブリの先細部、スロート部及び末広部を通して差し向け、加熱ガスの流れの引きずり力が粉末を臨界速度にまで更に加速するように該粉末に作用するための追加の時間を提供するように、加熱ガス及び粉末の加速した流れをノズルアッセンブリの延長部を通して通過させる、各工程を備える。
【0008】
従って、本発明は、末広部を単に延長することによって発生する負の影響を回避するため、延長部の所定の長さに亘って通路の拡径比を制限しつつ、ノズルアッセンブリの長さ全体を増大させる。これは、粉末粒子が、ノズルアッセンブリを通して加熱ガスの流れにより形成された引きずり力にさらされる時間を増大させる。粉末粒子の引きずり力に対する流れのこの増大したさらしは、引きずり力のための時間をより多く提供し、粉末粒子を以前には達成することができなかった増大速度にまで加速する。粉末粒子の増大した速度は、高密度でより大きいサイズの粉末粒子など、吹き付けることが困難な材料を接着させるための動的吹き付けシステムの能力を改善する。
【0009】
本発明は、添付図面と関連させたときの次の詳細な説明を参照することによってより理解されるようになるため、本発明の他の利点は容易に理解されよう。
【実施例】
【0010】
本発明は、米国特許出願番号2005/0214474A1、米国特許番号6,139,913号及び6,283,386号、並びに、1999年1月10日に発行された、「表面及びコーティング技術」の第3巻の62から72ページに公開された、「動的吹き付けコーティング」と題された、ヴァン・ステーンキステらによる論文に記載されているように、動的吹き付けシステム及びノズルアッセンブリ20への改善点を備える。これらの文献の開示内容は全て、参照により本願に組み込まれる。
【0011】
図面を参照すると、同様の参照番号は、幾つかの図面を通して対応する部品を示しており、動的吹き付けシステムは、概して、20で示される。図1を参照すると、動的吹き付けシステム20は、粉末粒子22のコーティングを基板材料24に適用する。加熱されたガスの流れは、粉末粒子22を浮遊させており、該粉末粒子22は、高速度で基板24へと吹き付けられる。米国特許番号6,139,913号に開示されているように、基板材料24は、金属、合金、プラスチック、ポリマー、セラミック、木、半導体、又は、これらの材料の任意の組み合わせ及び混合物を始めとした、幅広い範囲の材料のうち任意のものから構成することができる。動的吹き付けシステム20で使用される粉末粒子22は、他の既知の粉末粒子22に加えて、米国特許番号6,139,913号及び6,283,386号に開示された材料のうち任意の材料から構成することができる。これらの粉末粒子22は、一般に、金属、合金、セラミック、ポリマー、ダイアモンド、金属被覆セラミック、半導体、又は、これらの材料のうち任意の組み合わせ及び混合物を含んでいてもよい。好ましくは、当該粒子は、1ミクロンから250ミクロンまでの範囲の間の平均公称直径を有する。
【0012】
動的吹き付けシステム20は、支持テーブル28又は他の支持装置が配置されているエンクロージャ26を備えている。取り付けパネル30は、支持テーブル28に固定され、ワークホルダー32を支持している。ワークホルダー32は、3次元運動を可能にし、適切なワークピースを支持することができる。ワークピースは、被覆されるべき基板材料24から形成される。エンクロージャ26は、少なくとも1つの空気入口(図示せず)と、適切な排出導管36によりダストコレクター(図示せず)に接続された少なくとも1つの空気出口34とを形成する、周囲壁を備えている。動的吹き付けシステム20の作動中に、ダストレコクターは、エンクロージャ26内部から空気を連続的に引き出し、空気を排気する前に引き続く処理のため空気内に含まれるダスト又は粒子を収集する。
【0013】
動的吹き付けシステム20は、3.4Mpa(500psi)までの圧力でガスの流れをバラストタンク40に供給することができるガスコンプレッサ38を更に備えている。空気、ヘリウム、アルゴン、窒素、又は、他の希ガスを始めとする多数の様々に異なるガスを、動的吹き付けシステム20内で利用することができる。バラストタンク40は、ライン46のシステム20を通して粉末供給器42及びガス加熱器44と流体連通している。ガス加熱器44は、加熱ガス、後述する加熱された主要ガスの流れをノズルアッセンブリ48に供給する。粉末供給器42は、吹き付けられるべき粉末粒子22を加熱されていないガスの流れへと混合し、ノズルアッセンブリ48に粉末粒子22を供給するため、加熱されていないガス及び粉末粒子22の混合物を、増補の入口ライン50に供給する。コンピュータ52は、ガス加熱器44及び粉末供給器42に供給されるガスの圧力と、ガス加熱器44から出る加熱された主要ガスの温度とを制御する。
【0014】
図2を参照すると、主要ガス通路54は、ガス加熱器44をノズルアッセンブリ48に接続する。使用前混合チャンバー56は、主要ガス通路54に接続され、流れ直線器58を通して加熱された主要ガスを、混合チャンバー60に差し向ける。混合チャンバー60は、加熱された主要ガス内に粉末粒子22を浮遊させるため、粉末粒子22を、加熱された主要ガスの流れへと混合させる。好ましくは、混合チャンバー60は、調整チャンバー62(後述される)の上流に配置されている。加熱された主要ガスの温度は、主要ガス通路54内の温度熱電対64によって監視され、混合チャンバー60に接続された圧力センサ68は、加熱された主要ガスの圧力を監視する。
【0015】
粉末インジェクタ管70は、増補の入口ライン50と流体連通し、混合チャンバー60に粉末粒子22を供給するため、ガス及び粉末粒子の混合物を混合チャンバー60に差し向ける。粉末噴射管は、予備チャンバー56及び流れ直線器58を通って混合チャンバー60へと延在する。好ましくは、噴射管は、0.3ミリメートルから3.0ミリメートルの間の内径を有し、ノズルアッセンブリ48の中心軸Cと同一線上に整列している。
【0016】
調整チャンバー62は、粉末ガス混合チャンバー60と、ノズルアッセンブリ48の先細部72(後述する)との間に配置されている。調整チャンバー62は、粉末粒子22を、ノズルアッセンブリ48を通って流れる加熱された主要ガスと混合する前に、粉末粒子22の温度を増大させる。好ましくは、図2に示されるように、調整チャンバー62は、先細部72の上流に配置されている。調整チャンバー62は、好ましくはノズルアッセンブリ48の中心軸Cと同一直線上に、長さ方向軸Bに沿った長さを有する。調整チャンバー62の内部は、ノズルアッセンブリ48の先細部72の入口77に等しい内径を有する円柱形状を有する。調整チャンバー62は、ノズルアッセンブリ48の先細部72と粉末ガス混合チャンバー60と解放可能に係合する。好ましくは、解放可能な係合は、交換チャンバー、先細部72及び調整チャンバー62の間で、各々、ねじ(図示せず)と対応して係合することによってなされる。しかし、解放可能な係合は、スナップ適合式接続、バヨネット式接続、又は、他の適切な種類の接続など他の装置を介してなすことができる。長さ方向軸Bに沿った長さは、好ましくは、少なくとも20ミリメートル以上である。調整チャンバー62の最適な長さは、吹き付けられる粒子と、基板材料24とに依存している。最適な長さは、実験的に決定することができるが、20ミリメートルから1000ミリメートルの範囲であるのが好ましい。
【0017】
図3に最も良く示されるように、ノズルアッセンブリ48は、入口77及び出口74を形成する先細部72を備えている。出口74は、入口77に対して間隔を隔てた関係にある。末広部76は、入口78及び出口80を形成し、該出口80は入口78に対して間隔を隔てた関係にある。スロート部82は、先細部72の出口74と、末広部76の入口78とを相互に接続する。先細部72、スロート部82及び末広部76は、当該技術分野で知られているように、ラバール式先細−末広ノズルを形成し、協働して通路66を形成する。通路66は、周辺部84を備え、該周辺部は、先細部72の入口77及び出口74の間で狭くなり、末広部76の入口78及び出口80の間で拡大する。延長部86は、通路66を更に形成し、末広部76の出口80から、該出口80から所定の長さL間隔を隔てた末端部88へと延在する。延長部86の所定の長さLは、20ミリメートルから1000ミリメートルの範囲にある。従って、ノズルアッセンブリ48は、先細部72、スロート部82、末広部76、及び、延長部86に亘る全体長さとして100ミリメートルから1500ミリメートルの範囲となる。
【0018】
空気力学に基づくと、引きずり力が、加熱された主要ガスの流れによって粉末粒子22に適用される。引きずり力は、次式により表すことができる。
D=1/2(C・ρ・(V−V・A) (1)
ここでCは引きずり係数、ρは加熱された主要ガスの密度、Vは加熱された主要ガスの速度、Vは粉末粒子22の速度、Aは粉末粒子22の平均断面積である。引きずり力は、粉末粒子22を臨界速度にまで加速する。引きずり力には浪費されたポテンシャルが存在することが発見された。粉末粒子22は、十分に長い期間に亘って引きずり力にはさらされておらず、即ち、粉末粒子22は、より長い期間に亘って引きずり力にさらされた場合には、より高い速度を達成し得るからである。従って、延長部86をノズルアッセンブリ48の末広部76に追加することによって、粉末粒子22は、より長い期間に亘って引きずり力にさらされ、これによって、浪費されるポテンシャルを最小にし、粉末粒子22に適用される引きずり力を最大にする。
【0019】
加熱された主要ガスは、先細部72、スロート部82を通って流れ、末広部76へと至り、加熱された主要ガスは高速度にまで加速される。加熱された主要ガスの速度が増大するとき、加熱された主要ガスの密度は減少する。これは、次式により表されるノズルアッセンブリ48内の質量の保存に関して明らかである。
【0020】
f=A・V・ρ (2)
ここで、fは、加熱された主要ガスの流量であり、Aは通路66内の任意の与えられた位置におけるノズルアッセンブリ48の周辺部84の断面積であり、Vは加熱された主要ガスの速度であり、ρは加熱された主要ガスの密度である。加熱された主要ガスの密度における減少は、引きずり力に負の影響を及ぼす。加えて、通路66を通って延在する中心軸Cに沿った距離に亘って、通路66の周辺部84の変化の比率として定義された拡径比は、末広部76で達成可能な速度における増大を制限する。加熱された主要ガスが末広部76を通って流れるとき、ノズルアッセンブリ48の外側壁近傍の境界層は発達し、分離する傾向となり、加熱された主要ガスの流れに衝撃波を形成する。衝撃波は、加熱された主要ガスの速度を有意に減少させる。従って、ノズルアッセンブリ48の末広部76を外側に単に延長することは有効ではない。従って、延長部86により形成された通路66の周辺部84は、末広部76の出口80により形成された通路66の周辺部84と少なくとも同じであるか又はより大きくなる。通路66の周辺部84が断面形状を画定させることが理解されるべきである。図3及び図4に参照されるように、周辺部84により画定された断面形状を、延長部86の所定の長さLを通して均一とすることができる。延長部86の均一な断面形状は、ゼロに等しいか又は無視できるほど小さい拡径比を有することが理解されるべきである。代替例として、図5及び図6に参照されるように、延長部86により形成された周辺部84の断面形状は、延長部86が末広部76の出口80から延長部86の末端部88にかけて延在するとき、末広部76の出口80に対して僅かに増大し得る。それにも関わらず、延長部86により形成された僅かに増大した断面形状は、末広部76の拡径比に対して有意に小さい拡径比を有する。延長部86の周辺部84により形成された、均一な断面形状やその代替の僅かに増大した断面形状は、加熱されたガスの密度を有意に減少させることなく、また加熱されたガスの流れ内に衝撃波を形成すること無く、より長い期間に亘って、粉末粒子22に引きずり力を働かせることを可能にする。
【0021】
上述されたように、末広部76により形成された通路66の拡径比は、延長部86により形成された通路66の拡径比よりも大きい。これは、加熱された主要ガスが、加熱された主要ガスの密度を減少させ続けることなく、加熱主要ガス内に衝撃波が発生することを回避するように、加熱された主要ガスが延長部86を通って流れることを可能にしている。末広部76は図3及び図5に示されるように一定の拡径比を有することが考慮されているが、末広部76の拡径比は、図7に示されるように、入口78から末広部76の出口80へと連続的に減少することが好ましい。これは、末広部76の入口78からの距離が末広部76の出口80に向かう方向に増大するとき連続的に減少する率で中心軸Cから連続的に発散する、放物又は曲面形状を有するものとして更に記載することができる。放物又は曲面に形成された末広部76は、スロート部82の直接下流側で最大の可能な拡径比を提供し、これによって、延長部86の近傍よりもスロート部82の近傍で加熱主要ガスの速度を急激に増大させ、加熱された主要ガスと粉末粒子22との間の速度差を最大にして粉末粒子22に適用された引きずり力を増大させる。従って、末広部76は、スロート部82の近傍で最大の拡径比を有し、末広部76の出口80で最小の拡径比を有する。その結果、末広部76のガス圧力は、高い拡径比に起因して急激に降下する。図7に示されるように、これは、粉末粒子22が、粉末インジェクタ管70を通って低圧粉末供給器42により噴射されることを可能にする。
【0022】
末広部76及び延長部86により形成された周辺部84の断面は、様々な形状を有し得るが、矩形形状を有するのが好ましい。末端部88において延長部86により形成された周辺部84の矩形形状の断面は、6.0ミリメートルから24.0ミリメートルの範囲の長辺寸法と、1.0ミリメートルから6.0ミリメートルの範囲の短辺寸法とを有する。代替例として、図9に示されるように、末広部76と延長部86とにより形成された通路66の周辺部84は、円形状を有する断面を画定させることができる。
【0023】
好ましくは、図5に示されるように、延長部86は、末広部76に解放可能に取り付けられる。末広部76と延長部86との間で、ねじを螺号させることによって、或いは、スナップ適合接続、バヨネット式接続又は他の適切な接続方法を用いて、解放可能な取り付けを実行することができる。しかし、図3に示されるように、延長部86は、単一ユニットとして末広部76と一体に成形されてもよいと考えられる。
【0024】
スロート部82により形成された通路66の周辺部84は、断面を画定させる。図9に示されるように、断面は、円形形状であってもよい。スロートの円形形状の断面は、1.0ミリメートルから5.0ミリメートルの範囲の直径を有していてもよい。しかし、スロート部82の断面は、他の形状を有していてもよいことが理解されるべきである。好ましくは、図4及び図6に参照されるように、スロート部82の断面は楕円形を有する。スロート部82に隣接した末広部76の矩形形状の断面において過度の摩耗が顕著である。過度の摩耗は、ノズルアッセンブリ48の性能に負の影響を及ぼす。過度の摩耗は、スロート部82の円形形状の断面から出る、加熱主要ガス及び粉末粒子22の急激な径方向の膨張に帰着される。この過度の摩耗は、スロート部82の断面を細長くすることによって減少される。従って、スロート部82の楕円形状の断面は、末広部76の矩形形状断面において顕著となる過度の摩耗を最小にさせる。
【0025】
図7及び図8を参照すると、ノズルアッセンブリ48の代替実施例が示されている。代替実施例では、粒子インジェクタ管は、ノズルアッセンブリ48の末広部76に粉末粒子22を供給するため、調整チャンバー62及びノズルアッセンブリ48の末広部76を相互接続する。加熱主要ガスがスロート部82から末広部76に入ったとき、粉末粒子22をノズルアッセンブリ48の末広部76内の加熱主要ガスの流れと混合するため、混合チャンバー60が、スロート部82に隣接して、末広部76内に配置される。代替の実施例では、調整チャンバー62の長さ方向軸Bは、中心軸Cと同一直線上にあり、実際、調整チャンバー62はノズルアッセンブリ48から分離されている。粒子インジェクタ管は、調整チャンバー62及び末広部76内の混合チャンバー60を流体連通するように相互接続する。かくして、粉末粒子22をスロート部82を通して差し向ける代わりに粉末粒子22をノズルアッセンブリ48の末広部76内に提供することによって、スロート部92の粉末集積及び詰まりは、最小となる。代替の実施例では、末広部76内のガス圧力は、高い拡径比に起因して急激に降下する。これは、粉末粒子22をより高い圧力(典型的には300psi)で噴射する、図2に示された好ましい実施例と比較して、粉末粒子22をより低い圧力(100psi未満)で噴射することを可能にする。更には、粉末粒子22を上昇した温度(粉末粒子22の溶解温度の80%まで)まで加熱するため、外部の加熱源を使用する、取り外し式調整チャンバー62を備えていてもよい。取り外し式調整チャンバー62は、図7に示されるように、粉末インジェクタ管70を通して末広部76と流体連通している。代替例として、取り外し式調整チャンバー62は、図2に示されるように、粉末インジェクタ管70を通して、予備混合チャンバー56と流体連通していてもよい。
【0026】
前記した発明は、関連する法的標準に従って説明された。かくして、上記説明は、本質上、本発明を限定するものではなく、あくまでも例示である。開示された実施例に対する変形及び変更は、当業者には明らかであり、本発明の範囲内でなすことができる。従って、提供された本発明の法的保護の範囲は、請求の範囲を研究することによってのみ決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、動的吹き付けシステムを示す概略レイアウトである。
【図2】図2は、動的吹き付けシステムで使用するためのノズルの断面図である。
【図3】図3は、ノズルの延長部分の拡大断面図である。
【図4】図4は、図3に示されたノズルの延長部分の端面図である。
【図5】図5は、ノズルの延長部分の代替実施例の拡大断面図である。
【図6】図6は、図5に示されたノズルの延長部分の代替実施例の端面図である。
【図7】図7は、ノズルのための調整チャンバーの代替実施例の断面図である。
【図8】図8は、ノズルを通って流れる高圧ガスへと粉末を噴射する代替方法を示す、ノズルの代替実施例の断面図である。
【図9】図9は、円形断面を示すノズルの延長部分の代替実施例の端面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的吹き付けシステムのためのノズルアッセンブリであって、
入口及び該入口に対して間隔を隔てた出口を画定する先細部と、
入口及び該入口に対して間隔を隔てた出口を画定する末広部と、
前記先細部の前記出口と前記末広部の前記入口とを相互接続するスロート部であって、前記先細部、前記スロート部及び前記末広部は、前記先細部の入口及び出口の間で狭くなり、前記末広部の入口及び出口の間で拡径する周辺部を有する通路を画定する、前記スロート部と、
前記通路を更に形成し、前記末広部の出口から該出口から所定の長さだけ隔てられた末端部へと延在する延長部であって、該延長部により形成された前記通路の周辺部は、前記末広部の出口により形成された前記通路の前記周辺部に少なくとも等しいか又は大きい、前記延長部と、
を備える、ノズルアッセンブリ。
【請求項2】
前記通路を通って延在する中心軸を更に備え、該通路は、該中心軸に沿った長さに亘って前記通路の周辺部の変化の比率として定義された拡径比を有し、前記末広部により形成された前記通路の前記拡径比は、前記延長部により形成された該通路の拡径比よりも大きい、請求項1に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項3】
前記末広部の拡径比は、該末広部の入口から出口にかけて連続的に減少する、請求項2に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項4】
前記延長部の前記所定の長さは、20ミリメートルから1000ミリメートルの範囲にある、請求項2に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項5】
前記末広部及び前記延長部により形成された前記通路の周辺部は、矩形形状を有する断面を画定させる、請求項4に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項6】
前記末端部で前記延長部により形成された前記周辺部の前記矩形形状の断面は、6ミリメートルから24ミリメートルの範囲の長辺寸法と、1ミリメートルから6ミリメートルの範囲の短辺寸法と、を有する、請求項5に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項7】
前記末広部及び前記延長部により形成された前記通路の周辺部は、円形形状を有する断面を画定させる、請求項4に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項8】
前記延長部は、前記末広部に解放可能に取り付けられている、請求項1に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項9】
前記延長部は、前記末広部と一体に成形されている、請求項1に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項10】
前記スロート部により形成された前記通路の周辺部は、楕円形状を有する断面を画定させる、請求項1に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項11】
前記ノズルは、80ミリメートルから1500ミリメートルの範囲に亘る、前記先細部、前記スロート部、前記末広部及び前記延長部に亘る全長を有する、請求項1に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項12】
前記先細部、前記スロート部を通して前記末広部へと粉末を流す前に、該粉末の温度を上昇させるための調整チャンバーを更に備え、該調整チャンバーは前記先細部の上流に配置されている、請求項1に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項13】
加熱されたガスの流れを前記粉末に混合するため前記調整チャンバーの上流に配置された混合チャンバーを更に備える、請求項12に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項14】
前記混合チャンバーに前記粉末を供給するため少なくとも1つの粒子インジェクタ管を更に備える、請求項13に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項15】
前記少なくとも1つの粒子インジェクタ管は、前記中心軸と平行な長さ方向軸を備え、前記混合チャンバーと流体連通する、請求項14に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項16】
前記末広部を通して粉末を流す前に該粉末の温度を上昇させるための調整チャンバーを更に備える、請求項1に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項17】
加熱ガスの流れを前記粉末と混合するため、前記スロート部に隣接して、前記末広部内に配置された混合チャンバーを更に備える、請求項16に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項18】
前記加熱されたガスが前記スロート部から前記末広部に入るとき、該加熱ガスの流れに前記粉末を混合するため該粉末を前記末広部内の前記混合チャンバーに供給するように前記調整チャンバーと前記末広部とを相互接続する少なくとも1つの粒子インジェクタ管を更に備える、請求項17に記載のノズルアッセンブリ。
【請求項19】
動的吹き付けシステムにより塗布された粉末で基板を被覆する方法であって、
前記動的吹き付けシステムは、先細部、スロート部、末広部及び延長部を有するノズルアッセンブリを備え、該ノズルアッセンブリは、該ノズルアッセンブリの中心軸に沿った所定の距離に亘って該ノズルアッセンブリにより形成された通路の周辺部の変化の比率として定義された拡径比を有し、前記拡散部の拡径比は前記延長部の拡径比よりも大きく、
前記方法は、
前記粉末を加熱ガスの流れに混合し、
加熱ガスの流れを加速し、前記粉末を加速するように前記粉末に作用するための引きずり力を提供するため、加熱ガスの前記流れを、前記ノズルアッセンブリの前記先細部、前記スロート部及び前記末広部を通して差し向け、
加熱ガスの流れの引きずり力が前記粉末を臨界速度にまで更に加速するように前記粉末に作用するための追加の時間を提供するように、前記加熱ガス及び前記粉末の加速された流れを前記ノズルアッセンブリの前記延長部を通して通過させる、各工程を備える方法。
【請求項20】
前記ノズルアッセンブリは、該ノズルアッセンブリの前記末広部を通して前記粉末を差し向ける前に、該粉末を加熱するための調整チャンバーを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記加熱ガスは、前記スロート部から前記末広部へと流れ、前記末広部により画定された前記通路の拡径比は、前記延長部に隣接する部分よりも前記スロート部に隣接する部分がより大きくなり、前記加熱ガスの流れを前記先細部、前記スロート部及び前記末広部を通して差し向ける前記工程は、前記延長部よりも前記スロート部の近傍でより速い速度に加熱ガスの流れの速度を増大させるため前記先細部、前記スロート部及び前記末広部を通して加熱ガスの流れを差し向けるものとして更に画定される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ノズルアッセンブリは、前記ノズルアッセンブリの調整チャンバーと前記末広部とを流体連通するように相互接続する少なくとも1つのインジェクタ管を更に備え、前記粉末を加熱ガスの流れと混合する前記工程は、前記ノズルアッセンブリの前記スロート部に隣接した前記末広部内の加熱ガスの流れで前記粉末を加熱するものとして更に画定される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記スロート部により形成された前記通路の周辺部は、細長い形状を備え、前記先細部、前記スロート部及び前記末広部を通して加熱ガスの流れを差し向ける前記工程は、前記先細部、前記スロート部の前記細長い周辺部及び前記末広部を通して加熱ガスの流れを差し向けるものとして更に画定される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記スロート部により形成された前記通路の前記周辺部の細長い形状は、楕円形状として更に画定される、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−73685(P2008−73685A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−203787(P2007−203787)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】