説明

高温多塵埃下における水平動ストローク検出器のスライド機構

【課題】 ウォーキングビーム加熱炉の水平動ストロークを制御する水平動ストローク検出器を提供する。
【解決手段】 加熱炉内で鋼材を搬送するウォーキングビームの水平方向の動作を制御するストローク検出器において、高温で多塵埃の環境の下で使用する水平動ストローク検出器のケーシングAの環状の外周ケース5の内周面に環状のオイルレスブッシュ4を設け、この環状のオイルレスブッシュ4の内周面をスライドロッド1に当接可能な内径とし、ケーシングAの環状の外周ケース5の両側に環状のダストシール押え3、3を配置し、この環状のダストシール押え3、3の両端の内周面に環状のダストシール2、2を外向きに固定して上記のスライドロッド1の外周に当接して取り付けている、高温で多塵埃の下における水平動ストローク検出器のスライド機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉内で鋼材を搬送するウォーキングビームにおいて、水平方向の動作を制御するストローク検出器に関し、特に高温で多塵埃の環境の下においても検出不良が発生しにくいストローク検出器のスライド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱炉のウォーキングビームの水平動の動作を制御するストローク検出器は、図3に示すように上部のフレーム22に取り付けてあるリミットスイッチ支持台15aによって固定されたリミットスイッチ15に対し、リミットスイッチ15のケリ板14が付いたケーシングAが、スライドロッド11上を水平方向に移動し、ウォーキングビームの前進限および後進限を検出している。このケーシングAは、下部のフレーム23に取り付けてあるギヤー支持台17aによって固定されたギヤー17上をラック16が噛み合うことによっても水平方向に移動する。
【0003】
この図3に示すケーシングAのスライド部12およびスライド部13には、図2に示す機構では、ボールベアリング9が採用されている。このボールベアリング9は、ケーシングAの外周ケース10内でスナップリング8にて固定されている。さらに外周ケース10の両端にオイルシール7を取りつけて、グリースの流出および図3に示すスライド部12およびスライド部13への塵埃の侵入を防いでいる。また、図2に示すボールベアリング9へは、潤滑のためにグリースが給脂されるようになっている。しかし、高温で多塵埃の環境下で、図3に示す水平動ストローク検出器が使用される場合、グリースの硬化および粉塵の混入により、図2に示すボールベアリング9の破損が度々発生し、ストローク不良が発生するという問題があった。また、図2に示すケーシングAとのスライドロッド6の摩耗も著しくストローク不良の発生原因となっている。
【0004】
ところで、これらのウォーキングビームの水平動ストローク検出器は、上記した従来技術の水平動ストロークにおける粉塵の混入によるボールベアリングの破損によるストローク不良の問題や、ケーシングAとのスライドロッド6の摩耗によるストローク不良の問題に対処する先行技術文献は容易に見いだすことはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ウォーキングビーム加熱炉の高温で多塵埃の環境の下で使用する水平動ストローク検出器がグリースの硬化、粉塵の混入によるボールベアリングの破損により検知不良となり、ストローク不良が発生するという問題およびスライドロッドの摩耗によるストローク不良が発生するという問題を解決した機構からなる水平動ストローク検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、図1に示すように、無給脂でも潤滑性を有する環状のオイルレスブッシュ4を採用してスライドロッド1に嵌合したスライド機構である。この図1に示す本発明のスライド機構はスライドロッド1の周囲に嵌合されて軸方向に水平動する機構である。この機構では、前後に配置の環状のダストシール押え3、3で最外周部に外向きに取りつけられた環状のダストシール2、2と、それらの環状のダストシール押え3、3の間で環状の外周ケース5の内周に設けられた環状のオイルレスブッシュ4から形成されている。この環状のオイルレスブッシュ4はスライドロッド1に当接して前後に移動できる。この環状のダストシール押え3、3の内周面はスライドロッド1との間に環状の空洞19、19を有する。さらに環状の外周ケース5の内周面の中央部には、やはり環状の空洞18を有する。これらの図1の機構は、図3に示す水平動ストローク検出器のケーシングAのスライドロッド11に嵌合のケーシングAの環状のスライド部12およびスライド部13に相当する。また、図2に示す前後の環状のオイルシール7、7と、その内部の環状のスナップリング8、8を有し、さらに環状のスナップリング8、8の内側の環状のボールベアリング9およびボールベアリング9の周囲に当接の環状の外周ケース10に相当する。図1において、ケーシングAの両端に取り付けた環状のダストシール2、2は外向きにダストシール押え3、3で固定され、ケーシングAであるスライド機構は外側ケース5の内周の軸方向の中間部に配置されたオイルレスブッシュ4と、内周のスライドロッド1の軸方向の両端に外向きに配置された環状のダストシール2、2とを環状のダストシール押え3、3で固定している。これらに加えて、スライドロッド1の表面には、硬質クロムめっきを施して、これらから水平動ストローク検出器のスライド機構を構成している。
【0007】
本発明の第1の手段は、加熱炉内で鋼材を搬送するウォーキングビームの水平方向の動作を制御するストローク検出器における装置である。この装置において、高温で多塵埃の環境の下で使用する水平動ストローク検出器のケーシングAの環状の外周ケース5の内周面に環状のオイルレスブッシュ4を設け、この環状のオイルレスブッシュ4の内周面をスライドロッド1に当接可能な内径とし、ケーシングAの環状の外周ケース5の両側に環状のダストシール押え3、3を配置し、この環状のダストシール押え3、3の両端の内周面に環状のダストシール2、2を外向きに固定して上記のスライドロッド1の外周に当接して取り付けている、高温多塵埃下における水平動ストローク検出器のスライド機構である。
【0008】
この第1の手段は、図3に示す水平動ストローク検出器のケーシングAの環状のスライド部12およびスライド部13に代えて、図1に示す環状のオイルレスブッシュ4を採用することで、従来、採用されていた図2に示す環状のボールベアリング9に必要であったグリースの給脂を不要にし、グリースの硬化による図3の環状のスライド部12およびスライド部13の破損によるストローク不良をなくした水平動ストローク検出器のスライド機構である。また、従来では、ケーシングAの両端にグリースの流出を防ぐ目的で環状のオイルシール7を内向きに固定し取り付けていたが、本発明では、グリースの給脂を無くしたので内側からのグリースの流出を考慮する必要がないので環状のダストシール2、2を外向きに固定して取り付け、従来より塵埃の侵入防止に対する効果を発揮できるものとした。このことにより、図3に示す環状のスライド部12およびスライド部13の破損によるストローク不良となる問題が、本発明の第1の手段では軽減できる。
【0009】
本発明の第2の手段は、スライドロッド1は、硬質クロムめっきを施している、高温の多塵埃の下における水平動ストローク検出器のスライド機構である。
【0010】
本発明の第2の手段は、本発明のスライドロッド1として硬質クロムめっきを施すことで、耐磨耗性を向上させ、高温の多塵埃の下における水平動ストローク検出器のスライド機構の摩耗によるストローク不良を著しく軽減させている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の手段では、水平動ストローク検出器のスライド機構は、ケーシングであるスライド機構にオイルレスブッシュを採用しているため、グリースの給脂がなくても潤滑性があり、高温の雰囲気下で使用した場合においてもグリースの硬化によるスライド機構の破損がなくなり、ストローク不良の発生を抑えることができる。またダストシールを外向きに固定し取り付けることでオイルレスブッシュへの塵埃の侵入を著しく軽減させ、スライド機構であるオイルレスブッシュの破損によるストローク不良の発生を抑えることができる。さらに、第2の手段では、スライドロッドに硬質クロムめっきを施した水平動ストローク検出器のスライド機構を採用することで、スライドロッドの摩耗によるストローク不良の発生をより一層に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の水平動ストローク検出器のスライド機構の図である。
【図2】従来の水平動ストローク検出器のスライド機構の図である。
【図3】水平動ストローク検出器の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。本発明の第1の実施の形態では、特に高温で多塵埃の環境の下において使用できる加熱炉内で鋼材を搬送するウォーキングビームの水平動ストローク検出器のスライド機構である。この加熱炉のウォーキングビームの水平動ストローク検出器は、図3に示すように、フレーム22から支持されたリミットスイッチ支持台15aに固定されたリミットスイッチ15に対し、リミットスイッチ15のケリ板14が付いたケーシングAが、スライドロッド11上を水平方向に移動することで、ウォーキングビームの前進限および後進限を検出している。すなわち、本発明の実施の形態では、この図3に示すケーシングAの両端のスライド部12およびスライド部13に代えて、図1に示す環状のオイルレスブッシュ4を採用したケーシングAからなるスライド機構としている。このスライド機構では、ケーシングAの両端に環状のダストシール2、2を外向きにして、その上からダストシール押え3、3で固定してスライドロッド1の外周に当接して取り付けている。この環状のオイルレスブッシュ4の外周面には環状の外周ケース5を当接して設けており、これらの両側をダストシール押え3、3で固定している。
【0014】
本発明の第2の実施の形態は、スライドロッド1は表面に硬質クロムメッキが施されて長期間の使用に耐えうるものとしている。このスライドロッド1の素材として、JIS規格の一般構造用圧延鋼材のSS400からなる棒鋼を使用し、この棒鋼からスライドロッド1を形成している。さらに、このJIS規格の一般構造用圧延鋼材のSS400からなるスライドロッド1の表面に硬質クロムめっきを施し、本発明のスライドロッド1とこの上をスライドする水平動ストローク検出器からスライド機構を形成している。
【実施例1】
【0015】
実施例として、上記した第1の実施の形態および第2の実施の形態を採用する。すなわち、加熱炉内で鋼材を搬送するウォーキングビームの水平動のストロークを検出するためにスライドして移動する検出器のスライド機構として、図3に示すケーシングAのスライド部12およびスライド部13に、図1に示す環状のオイルレスブッシュ4を採用する。この環状のオイルレスブッシュ4の両側を環状のダストシール押え3、3でケーシングの両端に環状のダストシール2、2を外向きに固定し取り付ける。このようにして取り付けた環状のオイルレスブッシュ4の外周を中央に配置の環状の外周ケース5で保持する。これに加えて、硬質クロムめっきを施したスライドロッド1をケーシングAであるスライド機構のスライド軸として採用している。これらの機構からなる本発明の水平動ストローク検出器のスライド機構を、特に高温で多塵埃の環境の下で使用したところ、ウォーキングビームの水平動ストローク検出器のストローク不良は3年間に1度も発生することはなかった。
【0016】
これに対し、比較例として、加熱炉内で鋼材を搬送するウォーキングビームの水平動ストローク検出器のスライド機構において、図3に示すケーシングAのスライド部13に、図2に示す従来の環状のボールベアリング9を採用し、さらにケーシングAの環状の外周ケース10の内周面内に有する環状のボールベアリング9の両側に、環状のスナップリング8、8を介して、環状のオイルシール7、7を内向きに固定して取り付け、高温で多塵埃の環境の下で使用し比較例とした。この比較例では、ウォーキングビームAの水平動ストローク検出器のストローク不良が3年間で2度も発生する問題が起きた。
【0017】
以上の実施例と比較例の対比により、以下の機構である、加熱炉内で鋼材を搬送するウォーキングビームの水平動ストローク検出器において、図3に示すケーシングAのスライド部13に、図1に示すオイルレスブッシュ4を採用し、ケーシングAの環状の外周ケース5の両端に設けた環状のダストシール押え3、3により環状のダストダストシール2、2を外向きに固定し取り付け水平動ストローク検出器とし、この水平動ストローク検出器に加えて、硬質クロムめっきを施したスライドロッド1を採用して形成した本発明のスライド機構は、特に高温で多塵埃の環境の下で使用する場合に、ストローク不良の発生の防止に有効であることが判明した。
【符号の説明】
【0018】
1 スライドロッド
2 ダストシール
3 ダストシール押え
4 オイルレスブッシュ
5 外周ケース
6 スライドロッド
7 オイルシール
8 スナップリング
9 ボールベアリング
10 外周ケース
11 スライドロッド
12 スライド部
13 スライド部
14 リミットスイッチのケリ板
15 リミットスイッチ
15a リミットスイッチ支持台
16 ラック
17 ギヤー
17a ギヤー支持台
18 空洞
19 空洞
20 空洞
21 空洞
22 フレーム
23 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内で鋼材を搬送するウォーキングビームの水平方向の動作を制御するストローク検出器において、高温で多塵埃の環境の下で使用する水平動ストローク検出器のケーシングの環状の外周ケースの内周面に環状のオイルレスブッシュを設け、該環状のオイルレスブッシュをスライドロッドに当接可能な内径とし、ケーシングの環状の外周ケースの両側に環状のダストシール押えを配置し、該環状のダストシール押えの両端の内周面に環状のダストシールを外向きに固定してスライドロッドの外周に当接して取り付けていることを特徴とする高温多塵埃下における水平動ストローク検出器のスライド機構。
【請求項2】
スライドロッドは、表面に硬質クロムめっきを施していることを特徴とする請求項1に記載の高温多塵埃下における水平動ストローク検出器のスライド機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136739(P2012−136739A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290078(P2010−290078)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】