説明

高耐光性記録材料用紫外線吸収性ポリマー

【課題】記録材料の紫外線吸収層に適した紫外線吸収性ポリマーを見出すこと、そして最終的には、耐光性に優れた記録材料を提供することを目的とした。
【解決手段】記録材料に紫外線吸収層を形成するために用いられる紫外線吸収性ポリマーであって、下式(1)で示されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマーを必須的に含むモノマー混合物から合成されることを特徴とする高耐光性記録材料用紫外線吸収性ポリマー。


(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、R2は水素結合を形成し得る元素を有する基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表し、R4は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用記録材料、感熱記録材料等の記録材料に紫外線吸収層を付与するために用いられ、記録材料の印字層に印字された画像や文字の紫外線による変退色を長期に亘って防止することのできる高耐光性記録材料用紫外線吸収性ポリマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報産業の発達によって、高機能なディスプレイや記録材料のニーズが高まっている。例えば、インクジェット用記録材料、感熱記録材料等の記録材料は、パソコンやデジタルカメラの普及に後押しされ、これらのアウトプットのツールとして多用されている。パソコンやデジタルカメラの性能が高度になるにつれ、記録材料の画像にも銀塩写真と同程度の耐光性や鮮映性が求められるようになってきた。特に、上記記録材料に含まれる着色剤(染料および顔料)は紫外線に弱く、室内光でも画像や文字の変退色が起こってしまうため、耐光性の改善は重要課題であり、通常の上記記録材料には、紫外線を吸収することのできる層(紫外線吸収層)が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ベンゾトリアゾール系モノマーと酢酸ビニルとの共重合体を鹸化してなる水溶性高分子を含有する保護層を設けた耐光性に優れた感熱記録材料が提案されている。また、特許文献2では、ベンゾトリアゾール系モノマーとオキシアルキレン鎖を有する単量体とを共重合した紫外線吸収性共重合体が提案されており、これをポリビニルアルコールと相溶させてインク受容層として使用することで、インクジェット方式で描かれた画像や文字の変退色を防止できる旨、記載されている。さらに、特許文献3には、酸化防止性モノマーおよび/または紫外線吸収性モノマーを特定のモノマーと組み合わせて得られる共重合体を表面層に用いたインクジェット記録用媒体が記載されている。
【0004】
しかしながら、上記従来技術の実施例で使用されているベンゾトリアゾール系モノマーは、特許文献4において本出願人が明らかにしたように、紫外線吸収能が経時低下し易く、金属イオンの存在下で錯体を形成して塗膜が着色し易い化合物であった。ベンゾトリアゾール系化合物においては、ベンゾトリアゾール環に連結したベンゼン環の2位のヒドロキシル基の水素原子とベンゾトリアゾール環の窒素原子とが分子内水素結合によって一種の環が形成されて、この環部分が光エネルギーを吸収して熱エネルギーに変えることで紫外線吸収能が発揮されると考えられている。ところが、ベンゼン環の2位のヒドロキシル基の水素原子とベンゾトリアゾール環の窒素原子との分子内水素結合の形成が、何らかの要因で阻害されると紫外線吸収能が発揮されなくなる。水素結合阻害要因としては、例えば、ポリイソシアネート系硬化剤(架橋剤)等のヒドロキシル基との反応性を有する物質を樹脂組成物中に含有させたために、ベンゼン環の2位のヒドロキシル基が消費されてしまうこと、あるいはこのヒドロキシル基が金属イオンの存在下で錯体を形成してしまうこと等が考えられた。また、ベンゾトリアゾール環自体が、光と水の影響によって徐々に分解されることも紫外線吸収能の低下原因の一つであると考えられた。
【0005】
そして、特許文献4では、ベンゾトリアゾール系モノマーの中でも、ベンゼン環の3位に立体障害基が導入されたものを用い、2位のヒドロキシル基が消費されてしまうのを防ぐことにより、長期に亘って紫外線吸収能を発揮することのできる樹脂組成物を提供することに成功した。しかし、この特許文献4は、特にインクジェット記録材料や感熱記録材料等の紫外線吸収層として好適な樹脂組成物を開示しているわけではない。すなわち、これらの記録材料に適した紫外線吸収層を形成するには、記録材料の染料層(印字層)に含まれている着色剤(染料、顔料)、無機酸や有機酸の金属塩等、顕色剤、増感剤等の種々の添加剤や、インクジェット用のインクに含まれる水等が、ベンゾトリアゾール系モノマーの紫外線吸収能の安定性に及ぼす影響を考慮する必要がある。また、印字層の上に紫外線吸収層を設けるのであれば該層と印字層との親和性を考慮する必要があり、紫外線吸収層そのものをインク受容層として機能させる場合には、その適正を考慮しなければならない。さらに、着色剤は、熱やオゾンにも弱いため、これらに対する耐性を記録材料に付与することが望まれており、最近では、インクジェットプリンタ対応のラベル面を備えたDVDが出現したため、耐指紋付着性等の改善も要求されるようになってきた。しかしながら、これらの記録材料特有の問題に関する知見は、特許文献4においては開示されていない。
【特許文献1】特開平9−11962号公報
【特許文献2】特開2002−226521号公報
【特許文献3】特許第3299723号公報
【特許文献4】特開2003−268048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術を踏まえ、本発明では、記録材料の紫外線吸収層に適した紫外線吸収性ポリマーを見出すこと、そして最終的には、耐光性に優れた記録材料を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の高耐光性記録材料用紫外線吸収性ポリマーは、記録材料に紫外線吸収層を形成するためのものであって、下式(1)で示されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマーを必須的に含むモノマー混合物から合成されることを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、R2は水素結合を形成し得る元素を有する基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表し、R4は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
【0010】
上記式(1)における置換基R4は、炭素数4〜12のアルキル基であることが好ましく、また、上記モノマー混合物は、さらに、紫外線安定性基を有するモノマーを含むものであってもよい。なお、本発明の「ポリマー」は、ホモポリマーのみならず、2元以上の共重合体をも含む意味である。
【0011】
本発明には、上記紫外線吸収性ポリマーを含む紫外線吸収層が形成されている高耐光性記録材料も包含され、紫外線吸収層が印字層の上側に形成されている高耐光性記録材料、紫外線吸収層が上記紫外線吸収性ポリマーを含む印字層である高耐光性記録材料、印字層が紫外線吸収性ポリマーを含み、さらにこの印字層の上側に紫外線吸収性ポリマーを含む層が形成された高耐光性記録材料、のいずれもが含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の紫外線吸収性ポリマーは、ベンゾトリアゾール系モノマーとして、ベンゾトリアゾール環に連結したベンゼン環の3位の位置に重合性不飽和二重結合を有する置換基を持つものから得られるので、紫外線吸収能に大きな影響を与えるベンゼン環の2位のヒドロキシル基が消費されて紫外線吸収能が低下してしまうのを防ぐことができ、記録材料の着色剤の退色防止に非常に有効である。また本発明の紫外線吸収性ポリマーは、耐熱性に優れる上に、空気中に含まれる酸化性ガス(オゾンガス等)に対しても耐性があるので、長期に亘って退色のない記録材料を提供することができた。また、記録材料は素手で触るものであり、特にDVD−Rのラベル面等には指紋が付着し易く、指紋付着部にクラックが発生したり変色を起こす場合があるが、本発明の紫外線吸収層を記録材料の表面に保護層的に設けることで、耐指紋性が向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者等は、前記したように特許文献4において、ベンゾトリアゾール系モノマーが、ベンゼン環の2位のヒドロキシル基に隣接する3位に立体障害性の高い嵩高な置換基を有していると、2位のヒドロキシル基がこのヒドロキシル基との反応性のある化合物や金属イオンと結合するのを妨害するため、ヒドロキシル基が消費されることがなくなり、その結果として、2位のヒドロキシル基の水素原子とベンゾトリアゾール環中の窒素原子との環形成による紫外線吸収能が長期間に亘って維持されることを見出している。
【0014】
本発明では、下式(1)で示されるベンゾトリアゾール系モノマーを選択した。このベンゾトリアゾール系モノマーは、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリロイル基と水素結合を形成し得る基がベンゼン環の3位に結合しており、重合後は(メタ)アクリロイル基部分がポリマー主鎖となるため非常に嵩高くなって、立体障害により2位のヒドロキシル基を保護する効果が極めて高い。このため、記録材料のインク受容層や感熱層に含まれている金属塩化合物や酸性物質等と、ベンゾトリアゾール系モノマー由来のベンゼン環の2位のヒドロキシル基が反応してしまうのを可及的に防止することができる。よって、紫外線吸収性ポリマーの紫外線吸収能を長期に亘って高レベルで維持することができ、記録材料に記録された画像や印字の変退色を長期に亘って防止することができた。また、紫外線吸収層の着色を防止することも可能となった。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、R2は水素結合を形成し得る元素を有する基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表し、R4は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
【0017】
1のハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかを表し、炭素数1〜8のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基(イソペンチル基)、tert−ペンチル基(2,2−ジメチルプロピル基)、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基(1,1,3,3,−テトラメチルブチル基)、2−エチルヘキシル基といった直鎖状または分枝状のアルキル基やシクロヘキシル基等の脂環式アルキル基が挙げられる。炭素数1〜4のアルコキシ基とは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基である。
【0018】
2は、合成後のポリマー分子間で水素結合を形成し、ポリマーを塗膜化した場合の物性(耐屈曲性、耐水性等)を高める作用を有する。R2の具体例としては、NH、CH2NH、OCH2CH(OH)CH2O、CH2CH2COOCH2CH(OH)CH2O等が挙げられる。R2の中では、活性水素を有する窒素原子が含まれているNHとCH2NHが好ましく、特に後者が好ましい。
【0019】
4の炭素数1〜12の炭化水素基の具体例としては、前記した炭素数1〜8のアルキル基に加えて、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖状または分枝状のアルキル基、シクロヘキシル基等の脂環式アルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。このR4は、5位(2位のヒドロキシル基に対してパラ位)についている立体障害基であると、2位のヒドロキシル基の消費を阻害する効果が一層増大するため好ましい。R4としては、炭素数4〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましく、tert−オクチル基等の嵩高い分岐状のアルキル基(またはこれらを有している基)が好ましい。
【0020】
上記式(1)で表されるベンゾトリアゾール系モノマーの好ましい具体例としては、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(メタ)アクリロイルアミノフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(メタ)アクリロイルアミノメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノ−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。なお、これらのうち、嵩高いR4が5位にあるものは、2−[2'−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノ−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールと2−[2'−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールである。
【0021】
上記ベンゾトリアゾール系モノマーは、例えば、対応するベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤として市販されている)に、(メタ)アクリル酸クロライドやN−メチロールアクリルアミドまたはそのアルキルエーテルを反応させる等の方法で合成することができる。例えば、2−[2'−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノ−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールは、2−[2'−ヒドロキシ−3’−アミノ−5’−tert−オクチルフェニル]−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸クロライドを反応させて得ることができる。また、2−[2'−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールは、2−[2'−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル]−ベンゾトリアゾール(例えば、CYTEC社製;商品名「CYASORB UV−5411」)にN−メチロールアクリルアミド(例えば、日東化学工業社製等)を反応させて得ることができる。
【0022】
本発明の紫外線吸収性ポリマーを合成する際には、下式(2)で示されるベンゾフェノン系モノマーを併用してもよい。ベンゾフェノン系モノマーも紫外線吸収能を有するベンゾフェノン骨格を有しており、ベンゾトリアゾール系モノマーと併用すると、吸収波長が広がって、得られるポリマーの紫外線吸収能が一層高まるからである。
【0023】
【化3】

【0024】
[式中、R5は水素原子またはヒドロキシル基を表し、R6は水素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Wは炭素数3〜12のアルキル基または下式(3)で表される基を示し、
【0025】
【化4】

【0026】
(R7は水素結合を形成し得る元素を有する基であり、R8は水素原子またはメチル基を表す。)
Wが炭素数3〜12のアルキル基の場合には、Xは上記式(3)で表される基を表し、Wが上記式(3)で表される基の場合には、Xは水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表す。]
【0027】
ベンゾフェノン系モノマーにおいても、カルボニル基で連結されている少なくとも一方のベンゼン環には2位にヒドロキシル基があり、カルボニル基の酸素原子と水素結合を作って、環を形成する。従って、紫外線吸収能の発揮メカニズムと、ヒドロキシル基の消費による紫外線吸収能の経時低下メカニズムは、ベンゾトリアゾール系モノマーの場合と同じであると考えられる。また、光と水によってベンゾフェノン骨格が分解して紫外線吸収能が低下することも見出された。
【0028】
よって、ベンゾフェノン系モノマーにおいても、ベンゼン環の3位に立体障害基が必要である。ただし、ベンゾフェノン系モノマーの場合は、3位の置換基が重合性不飽和基を有する基(式(3)で表される基)であることまでは必須とされず、単に嵩高い炭素数4〜12のアルキル基であってもよい。
【0029】
式(2)におけるR6の炭素数1〜6のアルコキシ基は、上記した炭素数1〜4のアルコキシ基に加えて、ペントキシ基とヘキシルオキシ基が挙げられる。式(3)におけるR7は、ベンゾトリアゾール系モノマーにおけるR2として例示した基が挙げられる。Xは、前記R4と同じである。
【0030】
ベンゾフェノン系モノマーの好ましい具体例としては、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]−3−プロピルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]−3−tert−ブチルベンゾフェノン等を挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上で使用することができる。これらのモノマーは、例えば、対応するベンゾフェノン(紫外線吸収剤として市販されている)に、グリシジル(メタ)アクリレートを反応させる等の方法で合成することができる。
【0031】
本発明の紫外線吸収性ポリマーを合成する場合には、紫外線安定性基を有するモノマー(紫外線安定性モノマー)を併用してもよい。紫外線安定性モノマーを共重合させると、得られるポリマーは、紫外線吸収能に加えて紫外線安定性をも有することになり、ベンゾトリアゾール系モノマーやベンゾフェノン系モノマー由来の紫外線吸収性基の光分解抑制効果が一層高まるので、紫外線吸収層の耐光性が長期間持続することとなる。また、紫外線安定性モノマーを高濃度(10質量%以上)に共重合すると、記録材料用色素の耐光性、紫外線吸収層の耐熱性および耐指紋性が向上する。紫外線安定性モノマーとは、分子中に重合性二重結合と紫外線安定性基を同時に有するものであれば特にその種類は限定されないが、中でも特に好ましいのは、下記式(4)で示されるモノマーである。
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、R9は水素原子またはシアノ基を表し、R10、R11はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R12は水素原子またはアルキル基を表し、Z1は酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0034】
上記式(4)で表されるモノマーの具体例としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(例えば、旭電化工業社製「アデカスタブLA87」)、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(例えば、旭電化工業社製「アデカスタブLA−82」)、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が非限定的に挙げられ、これらは単独でも、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用しても構わない。
【0035】
本発明の紫外線吸収性ポリマーを合成する場合には、上記ベンゾトリアゾール系モノマーに加えて(必要に応じてベンゾフェノン系モノマーや紫外線安定性モノマーと)、紫外線吸収能を持たないモノマー(その他のモノマーという)を共重合させることが望ましい。その他のモノマーの種類と量を選択することで、得られる紫外線吸収性ポリマーの特性を種々変化させることが可能である。例えば、耐指紋性等の記録材料の保護層として要求される特性や、印字層として要求される特性に応じて、その他のモノマーを選択すればよい。
【0036】
その他のモノマーとしては、特に限定されないが、耐候性に優れたポリマーを合成することができ、ベンゾトリアゾール系モノマーとの共重合性が良好な(メタ)アクリレート類が好ましい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、イーストマン社製「Eastman AAEM」)、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0037】
また、その他のモノマーとして、以下の各種モノマー類も使用可能である。
【0038】
酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類。
【0039】
ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート等の珪素含有モノマー類。
【0040】
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、へプタドデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有モノマー類。
【0041】
(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート硫酸塩、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルメチルカルバメート、N,N−メチルビニルアセトアミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレート等の窒素含有モノマー類。
【0042】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能モノマー類。
【0043】
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、2,2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、β−ジフルオロメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ジビニルエーテル、ジビニルアセタール等のビニルエーテル類。
【0044】
グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジルアクリレート、α−メチルグリシジルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製の「MGMA」)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製の「サイロマーA400」等)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製の「サイロマーM100」等)等のエポキシ基含有モノマー類。
【0045】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製の「プラクセルF」シリーズ等)等のヒドロキシル基含有モノマー類。
【0046】
スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等の酸性官能基含有モノマー類。
【0047】
本発明の紫外線吸収性ポリマーをモノマー混合物から合成するにあたっては、各種モノマー量を次の範囲にすることが好ましい。なお、以下の説明は、使用するモノマーの合計量が100質量%になるように選択する場合の各モノマーの好ましい使用量の目安である。
【0048】
ベンゾトリアゾール系モノマーは、5質量%以上(より好ましくは10質量%以上)、95質量%以下(より好ましくは70質量%以下)が好ましい。この範囲であれば、紫外線吸収能が充分となり記録材料の着色剤の変退色を抑制でき、記録材料の諸特性への悪影響がない。ベンゾフェノン系モノマーを併用する場合も、5質量%以上(より好ましくは10質量%以上)、95質量%以下(より好ましくは70質量%以下)が好ましい。紫外線安定性モノマーは、0.1質量%以上50質量%以下の使用が好ましい。より好ましい使用量は3質量%以上45質量%以下であり、さらに好ましい使用量は5質量%以上40質量%以下である。また、その他のモノマーは、上記モノマー以外の残部として用いられる。
【0049】
本発明の紫外線吸収性ポリマーを合成する際の重合方法には格別の制限はなく、公知の重合法、例えば溶液重合法、塊状重合法、水溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が使用できる。
【0050】
溶液重合法は、公知のように、モノマー混合物および生成ポリマーが溶解可能な溶媒を用い、溶媒中でラジカル重合させる方法である。用い得る溶媒としては、トルエン、キシレン、その他の芳香族系溶媒;n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、エチルセロソルブ等のアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド等を使用できる。使用する溶媒の種類はこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合溶媒として使用してもよく、溶媒の使用量は、モノマー濃度、ポリマーの所望の分子量、ポリマー溶液濃度等を考慮し適宜定めればよい。
【0051】
溶液重合においては、油溶性のラジカル重合開始剤を用いる。例えば、2,2'−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の公知の重合開始剤が挙げられる。重合開始剤の使用量は、ポリマーの要求特性等に応じて適宜決定すべきものであり、特に限定はないが、モノマー混合物の全量に対し0.01質量%以上、50質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、20質量%以下である。また必要に応じて、例えば、n−ドデシルメルカプタンのような連鎖移動剤を1種以上添加し、ポリマーの分子量を調整してもよい。また、溶液重合の場合の重合反応の温度は特に限定されないが、室温〜200℃の範囲が好ましく、40〜140℃がより好ましい。なお反応時間は、用いるモノマー混合物の組成や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が効率よく完結し得るように適宜設定すればよい。また上記溶媒を用いることなく重合を行えば、塊状重合となる。
【0052】
溶液重合(塊状重合を含む)で重合する場合、得られる紫外線吸収性ポリマーの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)で2,000〜1,000,000が好ましい。また、より好ましいMwの下限は5,000、さらに好ましい下限は10,000であり、より好ましいMwの上限は800,000、さらに好ましい上限は300,000である。ここでいう重量平均分子量とは、GPCを用いて標準ポリスチレンを基準として求めた値を意味する。
【0053】
水溶液重合法は、溶液重合の有機溶媒の代わりに、水を媒体とする方法である。重合開始剤としては水溶性の化合物を使用する必要があり、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩や過酸化水素等の無機の過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酢酸等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等のアゾ化合物等が挙げられる。また、これらの重合開始剤と共に、還元剤として、亜硫酸水素ナトリウムやL−アスコルビン酸等を用いることにより、レドックス系開始剤としてもよい。重合開始剤の使用量は特に限定されない。
【0054】
反応温度は、特に限定されないが、0〜100℃が好ましく、40〜95℃がより好ましい。反応時間は、用いるモノマー混合物の組成や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が効率よく完結し得るように適宜設定すればよいが、通常、1〜10時間程度である。なお、反応系には、親水性溶媒や添加剤を添加してもよい。
【0055】
水溶液重合法でポリマーを得る場合、Mwは2000〜800000が好ましい。より好ましいMwの下限は3000であり、より好ましいMwの上限は500000である。
【0056】
懸濁重合法は、モノマー混合物および生成ポリマーが溶解しない溶媒中に、モノマー混合物を分散させてラジカル重合を行うものである。疎水性モノマーの場合は水を溶媒として用いてもよいが、親水性モノマーを多く含むモノマー混合物の場合は、溶液重合法と同種の溶媒、特に、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、トルエンが好ましく用いられる。これらの溶媒を用いて重合した後、溶媒を水性媒体へ置換することで、水性樹脂が得られる。水性媒体への置換は、上記溶媒を蒸留によって留去した後、水性媒体を加える方法、水性媒体を加えた後、有機溶媒を留去する方法等が挙げられる。水性媒体とは、水、または水とメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンとの混合物である。なお、重合開始剤や反応条件は溶液重合と同じでよい。ポリマーの分子量も上記範囲が好ましい。また、懸濁重合法の場合でも、必要に応じて後述する乳化重合法で使用される界面活性剤を使用してもよい。
【0057】
乳化重合法は、通常、水を媒体として界面活性剤(乳化剤)によって水中に形成されたミセル中で、水に溶けないモノマー混合物をラジカル重合し、ポリマー微粒子が水中に分散したエマルションを得る方法である。乳化重合に際しては、一括仕込み法、モノマー滴下法、プレエマルション法等の手段を用いることができる。また、シード重合、コア・シェル重合、パワーフィード重合等の多段重合を行うと、異相構造を有するポリマー粒子を得ることができる。
【0058】
界面活性剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性の各種界面活性剤の他、高分子型や反応型の界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0059】
アニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート類;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩やスルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート類;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩類;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩類;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類;ジアルキルスルホコハク酸塩類;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート類;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート類が挙げられる。
【0060】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のポリオキシエチレンエーテル類;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等のポリオールと脂肪酸のエステル類;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸との縮合生成物等を挙げることができる。
【0061】
カチオン性界面活性剤としては、アミン塩、イミダゾール塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0062】
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤およびベタイン型両性界面活性剤等が挙げられ、例えば、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2‐アルキル‐N‐カルボキシエチル‐N‐ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N‐テトラデシル‐N,N‐ベタイン型(例えば、第一工業製薬社製の「アモーゲンK」等)が挙げられる。
【0063】
高分子界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等や、これらのポリマーの構成モノマーを含むコポリマー等が挙げられる。
【0064】
反応型界面活性剤としては、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(例えば、第一工業製薬社製の「アクアロンKH−10」等)、ポリオキシエチレンノニルプロペニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、第一工業製薬社製の「アクアロンHS」、「アクアロンBC−10」等)、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、旭電化工業社製の「アデカリアソープSE」等)、アルキルアリルスルホコハク酸ソーダ(例えば、三洋化成工業社製の「エレミノールJS−2」等)、メタクリル酸ポリオキシアルキレン硫酸エステル塩(例えば、三洋化成工業社製の「エレミノールRS−30」等)、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル塩(例えば、日本乳化剤社製の「アントックスMS−2N」、「アントックスMS−NH4」等)が挙げられる。その他、花王社製の「ラテムルS−180」、第一工業製薬社製の「ニューフロンティア」、日本乳化剤社製「RA−1823」、「RA−2320」等の、プロペニル基、イソプロペニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基等の重合性二重結合を有するアニオン性反応型界面活性剤が使用可能である。
【0065】
また、ポリオキシエチレンノニルプロペニルエーテル(例えば、第一工業製薬社製の「アクアロンRN」等)、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル(例えば、旭電化工業社製の「アデカリアソープNE」等)、ポリオキシアルキレングリコールモノアクリレート(例えば、日本油脂社製の「ブレンマーAET」、「ブレンマーAPT」等)、ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート(例えば、日本油脂社製の「ブレンマーALE」等)、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(例えば、日本油脂社製の「ブレンマーPLE」等)、ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(例えば、日本油脂社製の「ブレンマーPSE」等)、ステアロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート(例えば、日本油脂社製の「ブレンマーASEP」等)、アリロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレートモノ(メタ)アクリレート(例えば、日本油脂社製の「ブレンマーPKEP」、「ブレンマーAKEP」等)、ノニルフェノキシポリアルキレンエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート(例えば、日本油脂社製の「ブレンマー43ANEP−500」、「ブレンマー70ANEP−550」等)、ノニルフェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(例えば、日本油脂社製の「ブレンマーPNEP」、「ブレンマーPNPE」等)、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジメタクリレート(例えば、日本油脂社製の「ブレンマー80PDC」等)、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、日本油脂社製の「ブレンマー30ADC」等)のプロペニル基、イソプロペニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基等の重合性二重結合を有するノニオン性反応型界面活性剤が使用可能である。
【0066】
上記各種の界面活性剤は、1種または2種以上で使用できる。また、クラウンエーテル類の相間移動触媒等も界面活性剤として使用することができる。
【0067】
界面活性剤の使用量は特に限定されるものではなく、モノマー混合物全量に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜8質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。
【0068】
乳化重合の際に用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩や過酸化水素等の無機の過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酢酸等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等のアゾ化合物等が挙げられる。また、これらの重合開始剤と共に、還元剤として、亜硫酸水素ナトリウムやL−アスコルビン酸等を用いることにより、レドックス系開始剤としてもよい。重合開始剤の使用量は特に限定されない。
【0069】
乳化重合での反応温度は、特に限定されないが、0〜100℃が好ましく、40〜95℃がより好ましい。反応時間は、用いるモノマー混合物の組成、界面活性剤や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が効率よく完結し得るように適宜設定すればよいが、通常、1〜10時間程度である。なお、反応系には、親水性溶媒や添加剤を添加してもよい。また、界面活性剤を用いずに乳化重合を行えるように条件を選択することも可能である。
【0070】
乳化重合の前、途中または重合後に、酸基を有するモノマーまたはポリマーを中和することもできる。中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0071】
本発明の記録材料は、上記本発明の紫外線吸収性ポリマーを含む紫外線吸収層が、着色剤(染料・顔料)が含まれている印字層とは別に、その印字層の上側に設けられているタイプ(第1のタイプ)と、印字層そのものに紫外線吸収性ポリマーが含まれていて、印字層が紫外線吸収層としても機能するタイプ(第2のタイプ)の2種類がある。ここで、印字層とは、画像や文字が描き出される層であり、インクジェット式記録材料であればインク受容層であり、感熱記録材料であれば発色層(感熱記録層)である。記録材料の基材は、紙、プラスチック、不織布、織布等、特に限定されない。
【0072】
第1のタイプの記録材料では、紫外線吸収層は、印字層の上側(光に曝される側)に設けられている。最表層に形成して表面保護層として機能させても構わない。また、印字層の上側であれば、紫外線吸収層が最表層に存在していなくてもよい。
【0073】
この紫外線吸収層は、本発明の紫外線吸収性ポリマーのみからなるものであっても、他の添加成分を含んだものであってもよい。他の添加成分としては、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト樹脂、アルミキレートやジルコニア等の金属系架橋剤等の硬化剤(この場合は紫外線吸収性ポリマーにヒドロキシル基やカルボキシル基を導入しておく);ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、インドール系等の有機系紫外線吸収剤や酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤;立体障害ピペリジン化合物(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「チヌビン123」、「チヌビン144」、「チヌビン765」等)等の添加型の紫外線安定剤;塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の他の樹脂;レベリング剤、酸化防止剤、タルク等の充填剤、防錆剤、蛍光性増白剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料、増粘剤、コロイダルシリカ、アルミナゾル等の無機微粒子やポリメチルメタクリレート系のアクリル系微粒子等の塗料分野で一般的な添加剤が挙げられる。上記の中の紫外線安定剤が紫外線吸収層の中に含まれていると、記録材料用色素の耐光性、紫外線吸収層の耐熱性および耐指紋性が向上する。よって、前記紫外線吸収性ポリマーを得るときに前記紫外線安定性モノマーの共重合量が少ない場合には、この添加型の紫外線安定剤を適量用いることが推奨される。これらの他の添加成分は、紫外線吸収層における本発明の紫外線吸収性ポリマー量が50質量%以上(より好ましくは80質量%以上)になるように使用することが望ましい。このタイプの記録材料においては、紫外線吸収層が他の機能を有する層、例えば、光沢層等であってもよい。
【0074】
上記の第1のタイプの記録材料は、紫外線吸収性ポリマーを含む紫外線吸収性ポリマー組成物を、印字層の表面に直接または必要に応じて光沢層等の他の層を介して、浸漬、吹き付け、刷毛塗り、カーテンフローコート、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、バーコート、静電塗装等の公知の塗工方法で塗工することにより製造することができる。紫外線吸収性ポリマー組成物は、水溶液、有機溶媒溶液、水分散体のいずれの態様でも構わない。乾燥温度は、溶媒・分散媒に適した温度で行えばよい。紫外線吸収層の厚みは特に限定されないが、0.5〜500μm程度が好ましい。
【0075】
第2のタイプの記録材料では、本発明の紫外線吸収性ポリマーは印字層に含まれる。インクジェット式記録材料の印字層は、通常、バインダー樹脂と、シリカ等の多孔性微粒子を主たる成分としているので、本発明の紫外線吸収性ポリマーを、バインダー樹脂の一部または全部として用いればよい。インクジェット式記録材料では、バインダー樹脂として、ポリビニルアルコール、酸基含有変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;ゼラチン、カゼイン、澱粉、酸化澱粉等の天然高分子類;カルボキシメチルセルロース等のセルロース類:酢酸ビニル類またはその鹸化物;ポリビニルピロリドン等のビニルピロリドン系樹脂;マレイン酸系樹脂;ポリアクリル酸等の各種酸基含有樹脂類等の親水性ポリマーが用いられていることが多い。よって、本発明の紫外線吸収性ポリマーが水溶性になるように前記その他のモノマーを選択して重合するか、または乳化重合等により疎水性ポリマーのエマルションを得て、上記バインダー樹脂の全部または一部として使用するとよい。バインダー樹脂が疎水性ポリマーであれば、紫外線吸収性ポリマーも疎水性にすればよい。紫外線吸収性ポリマー量は、バインダー樹脂100質量%中、50質量%以上(より好ましくは80質量%以上)が好ましい。
【0076】
第2のタイプの記録材料が感熱記録材料である場合、本発明の紫外線吸収性ポリマーは、発色層に含まれる。発色層とは、バインダー樹脂と、公知のロイコ染料等の感熱染料と顕色剤を含む層であり、感熱記録材料においてもバインダー樹脂は、上記親水性ポリマーが多用されている。よって、インクジェット式記録材料と同様に、感熱記録材料の場合も発色層のバインダー樹脂の一部または全部を、本発明の紫外線吸収性ポリマーに置き換えることで、発色層を紫外線吸収層としても機能させることができる。
【0077】
上記第1および第2のタイプの記録材料において、本発明の紫外線吸収性ポリマーと共に、クエンチャーを使用すると、記録材料用の染料色素の耐久性が一層向上するため、好ましい。クエンチャーとしては、「CIR1080」、「CIR1081」、「CIR960」(いずれも商品名で、日本カーリット社製)、みどり化学社製の商品名「MIR101」、住友精化社製の商品名「EST5」等が挙げられる。
【0078】
なお、記録材料の積層構成や各層への各種添加剤の配合等には当該分野で公知の様々な変更例があるが、当業者による通常の設計変更は全て本発明の記録材料に包含される。
【実施例】
【0079】
以下、実施例および比較例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお下記実施例および比較例において、「部」および「%」とあるのは、それぞれ質量部および質量%を表す。
【0080】
合成例1
撹拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたフラスコに、脱イオン水120部と、ラウリル硫酸ナトリウム1部、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(UVA−1とする)5部、メチルメタクリレート(MMA)30部を仕込み、窒素ガスを導入して撹拌しながら90℃まで昇温した。別途、上記UVA−1を15部と、ブチルメタクリレート(BMA)30部、エチルアクリレート(EA)20部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、脱イオン水15部からなるプレエマルション混合物を調製した。また、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.3部をイオン交換水15部に溶解して、重合開始剤水溶液を調製した。フラスコ内の液内温が90℃となってから、上記重合開始剤水溶液のうちの10%を添加し、90℃で30分間撹拌した。その後、上記プレエマルション混合物と残りの重合開始剤溶液を3時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、90℃でさらに1時間撹拌を維持して熟成させた。紫外線吸収性ポリマーエマルションNo.1が得られた。このエマルションNo.1の不揮発分は39.8%、平均粒子径は140nmであった。なお、各合成例におけるエマルションの平均粒子径は、Particle Sizing System社製の「NICOMP MODEL 380」を用いて測定し、解析方法は、VOLUME Weighted GAUSSIAN DISTRIBUTION Analysis(Solid Particle)を採用した。
【0081】
合成例2〜6
表1に示したようにモノマー種類等と仕込み量・滴下量を変えた以外は、上記合成例1と同様にして、紫外線吸収性ポリマーエマルションNo.2〜6を合成した。
【0082】
合成例7
撹拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたフラスコに、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルアミノメチル−3’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(UVA−1)60部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)14.5部、N−ビニルピロリドン(NVP)20部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)5部、紫外線安定性モノマー「アデカスタブLA−82」(商品名;旭電化工業社製;LA−82とする)0.5部、イソプロピルアルコール125部の混合物を仕込んで、窒素ガスを流入して撹拌しながら還流温度まで昇温した。一方、滴下ロートに、イソプロピルアルコール25部と、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)2部との混合物を仕込み、1時間かけて滴下した。滴下終了後も滴下開始から9時間後まで還流反応を続け、紫外線吸収性ポリマー溶液(不揮発分39.5%)を得た。続いて、このポリマー溶液から共沸蒸留によってイソプロピルアルコールを留去し、得られたポリマーに脱イオン水を加えて不揮発分40%に調整し、紫外線吸収性ポリマー水溶液No.7を得た。このポリマーNo.7の重量平均分子量(Mw)は32300であった。なお重量平均分子量は、GPC(東ソー社製の「HLC8120」)で、カラムとして「TSK−GEL GMHXL−L」(東ソー社製)を用いて、ポリスチレン換算の分子量として測定した値である。
【0083】
合成例8
撹拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたフラスコに、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(UVA−1)20部、メチルメタクリレート63部、2−ヒドロキシエチルアクリレート4部、アクリル酸(AA)3部、シクロヘキシルアクリレート10部、イソプロピルアルコール60部、脱イオン水65部の混合物を仕込んで、窒素ガスを流入して撹拌しながら還流温度まで昇温した。一方、滴下ロートに、イソプロピルアルコール25部と2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4部との混合物を仕込み、1時間かけて滴下した。滴下終了後も滴下開始から9時間後まで還流反応を続け、紫外線吸収性ポリマー水性溶液(不揮発分39.8%)No.8を得た。このポリマーNo.8の重量平均分子量(Mw)は12500であった。なお重量平均分子量は合成例7と同様にして、ポリスチレン換算の分子量として測定した値である。
【0084】
合成例9〜10
表2に示したように、モノマー種類と仕込量を変更した以外は、合成例8と同様にして、紫外線吸収性ポリマー水性溶液No.9〜10を合成した。
【0085】
実験1(インクジェット式記録材料としての紫外線吸収層(表面保護層)の評価)
(1)インク受容層の形成
イタコン酸変性ポリビニルアルコール(商品名「KL−318K」;クラレ社製;不揮発分100%)39部、シリカ(商品名「ミズカシル(登録商標)P78D」;水澤化学社製)39部、カチオン性染料定着剤(商品名「ポリフィックス550」;昭和高分子社製;アミノ樹脂系エマルション;不揮発分60%)19.5部、塩化マグネシウム(商品名「塩化マグネシウムS」;富田製薬社製)2.5部を混合し、さらに不揮発分が20%になるように脱イオン水を加え、インク受容層形成用組成物を調製した。厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「ルミラーS10」;東レ社製)の片面に、上記インク受容層形成用組成物を乾燥膜厚が10μmとなるようにバーコーターで塗布した。105℃で5分間乾燥し、インク受容層を形成した。
【0086】
(2)紫外線吸収層(表面保護層)の形成
各合成例で得られた紫外線吸収性ポリマーエマルション(不揮発分約40%)または紫外線吸収性ポリマー水溶液(不揮発分約40%)または紫外線吸収性ポリマー水性溶液(不揮発分約40%)を10部と、コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスUP」;日産化学社製;不揮発分39%)90部とを混合し、紫外線吸収層形成用組成物を調製した。上記インク受容層の上側に、紫外線吸収層形成用組成物を乾燥膜厚が10μmとなるようにバーコーターで塗布し、105℃で5分間乾燥して、インクジェット式記録材料サンプルを得た。なお、実施例9では、合成例8で得た紫外線吸収性ポリマー水性溶液No.8を10部と、紫外線安定剤として「チヌビン123」(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.4部と、上記コロイダルシリカ90部とを混合して紫外線吸収層形成用組成物を調製し、他は上記と同様にして、インクジェット式記録材料サンプルを得た。
【0087】
(3)印字方法
上記で得たインクジェット式記録材料サンプルに対し、インクジェットプリンター(商品名「PM−750C」;セイコーエプソン社製)を用いて、マゼンタのベタ画像を印字した。下記(4)〜(7)に記載した方法で各特性を評価し、結果を表2に示した。
【0088】
(4)耐光性の評価方法・基準
上記印字後の記録材料サンプルに対し、キセノンウェザーメーター(型式「SC750−2W」;スガ試験機社製)により、照射エネルギー90W/m2、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件で照射した。照射時間は、12時間、18時間、24時間、30時間の4種類とした。色差計(型式「SE−2000」;日本電色社製)を用いて、照射前と照射後のL*、a*、b*を測定した。照射前のL*、a*、b*をL*0、a*0、b*0とし、照射後はL*1、a*1、b*1とし、下記式からΔEを求め、下記基準によって評価した。
ΔE=[(L*1−L*02+(a*1−a*02+(b*1−b*021/2
○(良好):ΔE<2、△(やや劣る):2≦ΔE<8、×(劣る):ΔE≧8
【0089】
(5)耐熱性の評価方法・基準
上記印字後の記録材料サンプルを80℃の熱風乾燥機内に放置した。放置時間は、24時間、48時間、72時間の3種類とした。上記耐光性の評価の場合と同様に色差計で測定したL*、a*、b*の結果から、高温下放置前後のΔEを求めた。評価基準は上記耐光性と同じとした。また、試験後のサンプルにセロハンテープを貼り、密着性を評価した。インク受容層が基材フィルムから層間剥離してしまったものを×、剥離しなかったものを○とした。
【0090】
(6)耐オゾンガス性
上記印字後の記録材料サンプルを、オゾンウェザーメーター(型式「OMS−H」;スガ試験機社製)を用いて、オゾンガス濃度5ppm、30℃の雰囲気下に放置した。放置時間は、1時間および2時間の2種類とした。上記耐光性の評価の場合と同様に、色差計で測定したL*、a*、b*の結果から、オゾン雰囲気下放置前後のΔEを求めた。評価基準は上記耐光性と同じとした。
【0091】
(7)耐指紋性
上記印字後の記録材料サンプルの紫外線吸収層表面に指紋を付着させ、80℃で放置した。放置時間は24時間、48時間、72時間、96時間の4種類とした。放置後の紫外線吸収層表面の外観を目視で観察し、下記基準で評価した。
○(良好):異常なし、△(やや劣る):わずかにクラックあり、×(劣る):クラック多数あり。
【0092】
表1および2中の略語は、下記の意味である。
UVA−1:2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UVA−2:2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UVA−3:2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
MMA:メチルメタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
NVP:N−ビニルピロリドン
CHA:シクロヘキシルアクリレート
LA82:1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート(旭電化工業社製;商品名「アデカスタブLA82」)
BMA:ブチルメタクリレート
EA:エチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AA:アクリル酸
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
本発明に係るベンゼン環の3位の位置に二重結合を有する立体障害基を有しているベンゾトリアゾール系モノマーであるUVA−1〜UVA−3から得られたポリマーを用いた実施例1〜11は、長期に亘って良好な耐光性、耐熱性、耐オゾンガス性、耐指紋性を発揮した。特に、紫外線安定性モノマー(LA82)の共重合量が多い実施例6,10、11および紫外線安定剤を後添加した実施例9は、長期に亘って非常に良好な耐光性、耐熱性、耐指紋性を示した。なお、実施例1、5,7,8は紫外線安定性モノマー(LA82)が共重合されていないか、その量が少ないため、他の実施例に比べて耐光性の安定性が若干低かった。
【0097】
また、ベンゾトリアゾール系モノマーの置換基のR4が嵩高いtert−オクチル基であるUVA−1やUVA−2を用いた実施例1〜4に比べ、R4がメチル基であるUVA−3を用いた実施例5の性能が若干劣ることが確認された。
【0098】
実験2(感熱記録材料の発色層が紫外線吸収層でもある場合の評価)
(1)中間層の形成
脱イオン水90部に、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(不揮発分48%;商品名「Nipol LX4075」;日本ゼオン社製)をウエットで40部、リン酸エステル化澱粉(商品名「MS4600」;日本食品社製)を20%の濃度となるように水に分散させたものを30部、10%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液4部、焼成カオリン(商品名「アンシレックス」;エンゲルハード社製;JIS K−5101法に基づく吸油量80ml/100g)100部を配合し、よく混合して、中間層用塗液とし、50g/m2の原紙に、ブレードコーターにて塗抄量8g/m2で塗抄し、中間層を形成した。
【0099】
(2)紫外線吸収性ポリマーを含んだ発色層の形成
3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(ロイコ染料)30部とポリビニルアルコール(商品名「PVA−CST」;クラレ社製)を5%濃度に調整した水溶液60部とを脱イオン水10部に配合してよく混合し、この混合物をダイノミル(シンマルエンタープライズ社製)で体積平均径0.5μmになるまで粉砕して、A液とした。また、脱イオン水20部に、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(顕色剤)15部、合成例7で得られたポリマー水溶液No.7(不揮発分40%)30部、5%ポリビニルアルコール水溶液40部を添加混合し、実施例12用のB液を調製した。
【0100】
上記A液40部、上記B液120部、ステアリン酸亜鉛エマルション(商品名「ハイドリンE−366」;中京油脂社製;不揮発分40%)20部、炭酸カルシウム35部を混ぜ合わせ、この混合物に、ポリビニルアルコール(商品名「PVA−CST」;クラレ社製)を10%濃度に調整した水溶液を、感熱発色層用組成物の全固形分の20%となるように添加して感熱発色層用組成物を得た。この組成物を、上記中間層上に塗抄量が10g/m2となるように塗工して、100℃で1分間乾燥した。その後、スーパーカレンダー処理を行い、感熱記録材料サンプルを得た。
【0101】
(3)印字方法
上記で得た感熱記録材料サンプルに対し、ラベルプリンター(型式「IP21EX」;イシダ社製)を用いて、パルス幅0.65ms、印加電圧23Vで、実施例13の感熱記録材料サンプルを発色させた。(4)〜(7)に記載の方法で、特性の評価を行い、結果を表4に示した。
【0102】
(4)耐光性の評価方法・基準
上記発色後の感熱記録材料サンプルに対し、紫外線オートフェードメーター(型式「FAL−AU−B」;スガ試験機社製)で、4000時間の暴露試験を行った。暴露前後の白紙部と画像部の濃度を反射濃度計(型式「RD−918」;マクベス社製)で測定し、下記の基準で評価した。なお、白紙部の濃度測定はブルーフィルターを用いて行った。白紙部の濃度は小さい方が望ましく、実用的には0.3以下が好ましい。画像部の濃度は1.0以上が好ましい。
白紙部の評価基準…○:0以上0.15未満、△:0.15以上0.3未満、×:0.3以上
画像部の評価基準…○:1.25以上、△:1以上1.25未満、×:1未満。
【0103】
(5)耐熱性の評価方法・基準
上記発色後の感熱記録材料サンプルを100℃の雰囲気下で放置した。放置時間は、2時間と4時間の2種類とした。上記耐光性の評価の場合と同様に、反射濃度計で白紙部と画像部の濃度を測定した。この場合、放置後の白紙部の濃度は0.2以下が好ましく、白紙部の評価基準は下記の通りとした。画像部は耐光性の場合と同様、1.0以上が好ましく、耐光性と同じ評価基準を用いた。
白紙部の評価基準…○:0以上0.1未満、△:0.1以上0.2未満、×:0.2以上。
【0104】
(6)耐オゾンガス性
上記発色後の感熱記録材料サンプルを、オゾンウェザーメーター(型式「OMS−H」;スガ試験機社製)を用いて、オゾンガス濃度5ppm、30℃の雰囲気下に1時間放置した。放置前後の画像部の外観を目視で観察し、下記基準で評価した。
○:外観の変化なし、△:外観がやや変化している、×:外観が変化している。
【0105】
(7)耐指紋性
上記発色後の感熱記録材料サンプル表面に指紋を付着させ、80℃の雰囲気下に24時間放置した。放置後の表面の外観を目視で観察し、下記基準で評価した。
○(良好):異常なし、△(やや劣る):わずかにクラックあり、×(劣る):クラック多数あり。
【0106】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の紫外線吸収性ポリマーは優れた耐光性を長期に亘って発揮できるので、記録材料に記録された画像・印字等が変退色してしまうのを長期間防止することができる。従って、インクジェット式記録材料、感熱記録材料等に好適である。
【0108】
具体的には、パソコン、複写機、ワープロ、ファクシミリ等の様々な情報機器のプリンターで使用される記録材料;デジタルカメラ、デジタルビデオ、スキャナー等からの画像情報を出力するときの記録材料;色素増感型太陽電池;看板、バックライトの看板、マーキングフィルム、標識、表示板、食品等の容器、ラベルまたは包装材等のディスプレイ用途等に利用可能である。また、衣料、カーテン等の繊維用途;建材の内外装用途;キャッシュカード、IDカード等のカード類の絵柄用途;その他、家具、スポーツ用品、玩具等の絵柄用途にも適用できる。さらに、名刺、クレジットカード、IDカード、交通チケット等の磁気カードへも利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材料に紫外線吸収層を形成するために用いられる紫外線吸収性ポリマーであって、下式(1)で示されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマーを必須的に含むモノマー混合物から合成されることを特徴とする高耐光性記録材料用紫外線吸収性ポリマー。
【化1】

(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、R2は水素結合を形成し得る元素を有する基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表し、R4は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
上記式(1)における置換基R4が炭素数4〜12のアルキル基である請求項1に記載の高耐光性記録材料用紫外線吸収性ポリマー。
【請求項3】
上記モノマー混合物が、さらに、紫外線安定性基を有するモノマーを含むものである請求項1または2に記載の高耐光性記録材料用紫外線吸収性ポリマー。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の紫外線吸収性ポリマーを含むからなる紫外線吸収層が形成されていることを特徴とする高耐光性記録材料。
【請求項5】
紫外線吸収層が、印字層の上側に形成されている請求項4に記載の高耐光性記録材料。
【請求項6】
紫外線吸収層が、請求項1〜3に記載の紫外線吸収性ポリマーを含む印字層である請求項4または5に記載の高耐光性記録材料。

【公開番号】特開2006−264312(P2006−264312A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9829(P2006−9829)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】