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高透明性光触媒膜およびそれを有する物品
説明

高透明性光触媒膜およびそれを有する物品

【課題】 基材上に1コート法で形成されてなる、優れた親水性能を有するが、分解活性はほとんど示さないため、有機系基材の劣化を抑制し得ると共に、高い透明性を有する光触媒膜を提供する。
【解決手段】 有機系基材上に、チタンアルコキシドと有機高分子化合物とが加水分解縮合してなる複合体を含むコーティング剤を1回のみ塗布することによって設けられたチタンアルコキシドの加水分解縮合物の含有率が表面から深さ方向に向かって連続的に変化する非晶質酸化チタン膜の表面を、水分存在下で100℃以下の温度にて加熱処理することにより得られた光触媒膜であって、光触媒粒子以外に、特定の粒径範囲の金属酸化物小粒子と、特定の粒径範囲の金属酸化物大粒子とを所定の割合で含み、表面に凹凸を有する高透明性光触媒膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高透明性光触媒膜およびそれを有する物品に関する。さらに詳しくは、本発明は、基材上に1コート法で形成されてなる、優れた親水性能を有するが、分解活性はほとんど示さず、しかも高い透明性を有する光触媒膜、および有機系基材上に該光触媒膜を有する物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、一般にそのバンドギャップ以上のエネルギーの光を照射すると、伝導帯に電子が励起され、価電子帯に正孔が生じる。そして、励起されて生じた電子は表面酸素を還元してスーパーオキサイドアニオン(・O2−)を生成すると共に、正孔は表面水酸基を酸化して水酸ラジカル(・OH)を生成し、これらの反応性活性酸素種が強い酸化分解機能を発揮し、光触媒からなる膜の表面に付着している有機物質を高効率で分解することが知られている。
【0003】
このような光触媒の機能を応用して、例えば脱臭、防汚、抗菌、殺菌、さらには廃水中や廃ガス中の環境汚染上の問題となっている各種物質の分解・除去などが検討されている。
【0004】
また、光触媒のもう1つの機能として、該光触媒が光励起されると、例えば特許文献1に開示されているように、光触媒膜表面は、水と接触角が10度以下となる超親水化を発現することも知られている。このような光触媒の超親水化機能を応用して、例えば、防曇性、防滴性、防汚性、防霜性、滑雪性付与を目的として、高速道路の防音壁、道路反射鏡、各種反射体、街路灯、自動車をはじめとする車両のボディーコートやサイドミラーあるいはウインド用フィルム、窓ガラスを含む建材、道路標識、ロードサイド看板、冷凍・冷蔵用ショーケース、各種レンズ類やセンサー類などに光触媒膜を用いることが検討されている。
【0005】
このような光触媒については、これまで数多く知られており、中でも酸化チタンは代表的なものの一つに挙げられる。酸化チタンには無定形のアモルファス型のほか、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の3つの代表的な結晶系が存在し、これら3つの結晶系で光触媒活性を示し、有機物の分解能のほか、超親水性を発現することで有名である。特にアナターゼ型が最も高い活性を示すことが一般に知られている。
【0006】
当該アナターゼ型酸化チタンは、通常、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物を出発原料としゾルゲル法により得た加水分解縮合物や、四塩化チタンや硫酸チタニルなどの無機チタン化合物塩の水和酸化物などから得た無定形酸化チタンから熱処理を経ることによって得ることができる。しかしながら、これらは通常、400℃以上の高温下での熱処理が必要であるため、コスト高となることを避けられず、耐熱性の乏しい基板に成膜することが困難であるなど多くの問題を伴うものである。
【0007】
したがって、従来、特に活性の高いアナターゼ型酸化チタンを比較的低温で得る方法が種々試みられており、また開示されている。
【0008】
例えば、スパッタリングや真空蒸着などの物理的成膜手法によって基板上に酸化チタン膜を生成させる際に、水蒸気を導入させ無定形酸化チタン内に水酸基を多く含有させることによって、酸化チタン骨格中の原子の移動度を上昇せしめ、その後の熱処理よる結晶化を容易にする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これによれば、結晶化温度を200℃程度にまで下げることが可能である。
【0009】
また、シリコンアルコキシドと加水分解性を有するチタン化合物を含む溶液から、チタン化合物とシリコンアルコキシドが所定のモル比で配合されている複合金属酸化物あるいは水酸化物を含むゲル膜を形成し、次いで、100℃以下の温水を接触させることによって、結晶径が数10〜100nm程度のアナターゼに帰属されるチタニア微結晶を析出させる方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
確かに上記の方法によれば、プラスチック基板など耐熱性の低い材料にも直接無定形酸化チタンを成膜し、その後、低温の熱処理工程を経てアナターゼ型酸化チタンを形成することができると考えられる。しかしながら、これらの方法で得られるアナターゼ型酸化チタンは、その公報中でも明示されているように、一般的なアナターゼ型酸化チタンと同様に光励起超親水性の発現のほか高い有機物分解活性も示すため、プラスチック基材などに直接形成させた場合には、その高い有機物分解活性により基材が短期間のうちに侵食され、基材物性が低下したり光触媒膜の脱落により光触媒機能が低下したりすることなどが容易に推察される。このため、上記各方法は、アナターゼ型酸化チタン膜とともに、別途活性遮断層を設けることを必要とし、例えば、アナターゼ型酸化チタン微粒子を無機系のバインダーに分散させて作られる常温で硬化が可能な光触媒コーティング剤を塗布する方法と比べて、明確な優位性が見出せないものであった。
【0011】
一方、アナターゼ型酸化チタンをプラスチックなどの有機基材上に直接付与させる方法として、例えば、フッ素系のシランカップリング剤でアナターゼ型酸化チタン表面を修飾し、アナターゼ型酸化チタン微粒子の表面エネルギーを低下させバインダー成分との相互作用を弱めることによって、塗膜表面に浮上(偏析)させた自己傾斜型光触媒コーティング剤が知られている(特許文献4参照)。また、酸化チタン表面を光触媒として不活性な無機材料で覆い、かつ無数に細孔を設ける処方によってマスクメロン型形状を有する光触媒材料などが提案されている(特許文献5参照)。
【0012】
これらはアナターゼ型酸化チタンが有機基材と直接接触することを回避できることから、有機基材に直接塗布可能と考えられる。しかし、これらは全てアナターゼ型酸化チタンの高い酸化力の影響が基材に及ぶことを防ぐ為に、複雑な表面処理をする必要があり、さらに、これらは酸化チタンの表面偏析の為に厚みがミクロンオーダー必要であることや、酸化チタン粒子そのものが数ミクロン径のものでしか作製できないなど、多くの制約を伴うものである。
【0013】
ところで、プラスチック基材に代表される有機系基材に高い親水性能をもたせ、防汚性を発現させる方法としては、該基材上に光触媒層を設ける方法があるが、この場合、一般に光触媒層から発生する反応性活性種のもつ酸化分解能から、該有機系基材を保護する層を設けなければならず、したがって2層コート法となり、これがコスト高の要因となっていた。
【0014】
本発明者らは、このような問題に対処するために鋭意研究を重ね、先に、有機系基材上に1コート法で、優れた親水性能を発揮するが、該基材の劣化を抑制し得る光触媒層を形成する技術を見出し、特許を出願した(特願2008−024479号明細書)。
【0015】
この技術は、太陽光源照射下で充分な光励起超親水性を示すが、この超親水性がもたらす防汚性・防滴性・防曇性は、光励起型であるがゆえに機能発現までの時間が太陽光のあたり方によって大きく変化することが指摘されている。特に防曇性においては、場合によっては優れた超親水性を短期間で発現せしめたい場合もあり、初期接触角の低下や親水化速度の向上が今まで以上に求められることもある。また、窓材、自動車のサイドミラー、カーブミラー、反射板などに用いられる光触媒膜には、前記親水性能と共に、高い透明性も要求される。
【0016】
【特許文献1】国際特許公開96/29375号パンフレット
【特許文献2】特開2000−345320号公報
【特許文献3】特開2002−97013号公報
【特許文献4】特開2005−131640号公報
【特許文献5】特許第3484470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、このような事情のもとで、高い親水性能と透明性が要求される分野に好適な、基材上に1コート法で形成されてなる、優れた親水性能を有するが、分解活性はほとんど示さないため、有機系基材の劣化を抑制し得ると共に、高い透明性を有する光触媒膜、及び基材上に該光触媒膜を有する物品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す知見を得た。
有機系基材上に、特定のコーティング剤を1コート法で塗布して、成分傾斜構造を有する非晶質酸化チタン膜を形成し、この非晶質酸化チタン膜の表面を特定の条件で、光触媒化されることにより、あるいは光触媒化処理することにより、超親水性を発揮するが、有機物に対する分解活性をほとんど示さず、有機系基材の劣化を効果的に抑制し得る光触媒膜が得られることを見出した。
【0019】
そして、上記光触媒膜が、光触媒粒子以外に、特定の粒径範囲の金属酸化物小粒子と、特定の粒径範囲の金属酸化物大粒子とを所定の割合で含むことにより、その表面に凹凸が付与され、親水性能が向上すると共に、透明性が高くなることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0020】
すなわち、本発明は、
(1) 有機系基材上に、チタンアルコキシドと有機高分子化合物とが加水分解縮合してなる複合体を含むコーティング剤を1回のみ塗布することによって設けられた、チタンアルコキシドの加水分解縮合物の含有率が表面から深さ方向に向かって連続的に変化する非晶質酸化チタン膜の表面が、水蒸気の存在下で100℃以下の温度に曝されることにより得られた光触媒膜であって、光触媒粒子以外に、(a)平均粒径40nm未満の金属酸化物粒子Aと、(b)平均粒径40nm以上90nm未満の金属酸化物粒子Bまたは平均粒径90nm以上150nm未満の金属酸化物粒子Cまたは平均粒径150nm以上200nm未満の金属酸化物粒子Dとを含み、かつその混合割合が、質量基準で下記関係式(1)〜(3)
80/20≦A/B≦45/55 (1)
97/3 ≦A/C≦70/30 (2)
97/3 ≦A/D≦88/12 (3)
を満たし、表面に凹凸を有することを特徴とする高透明性光触媒膜、
(2) 有機系基材上に塗布された非晶質酸化チタン膜の表面を、水分存在下で100℃以下の温度にて加熱処理することにより得られた光触媒膜である上記(1)項に記載の高透明性光触媒膜、
(3) JIS K 7361に準拠して測定した光触媒膜自身のヘイズ値が、0.6%未満である上記(1)または(2)項に記載の高透明性光触媒膜、
(4) 金属酸化物粒子A〜Dが、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナおよびマグネシアの中から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜、
(5) 金属酸化物粒子A〜Dが、シリカ系粒子である上記(4)項に記載の高透明性光触媒膜、
(6) 光触媒粒子以外に、金属酸化物粒子Aのみを含む光触媒膜と比較して、親水化速度が2倍以上向上してなる上記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜、
(7) 有機系基材の表面に、上記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜を有することを特徴とする物品、および
(8) 高透明性光触媒膜の表面に、さらに機能膜を有する上記(7)項に記載の物品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い親水性能と透明性が要求される分野、例えば窓材、自動車のサイドミラー、カーブミラー、反射板などに好適な有機基材上に1コート法で形成されてなる、優れた親水性能を有するが、分解活性はほとんど示さないため、有機系基材の劣化を抑制し得ると共に、高い透明性を有する光触媒膜、及び有機系基材上に該光触媒膜を有する物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
まず、本発明の高透明性光触媒膜について説明する。
本発明の高透明性光触媒膜は、有機系基材上に、チタンアルコキシドと有機高分子化合物とが加水分解縮合してなる複合体を含むコーティング剤を1回のみ塗布することによって設けられた、チタンアルコキシドの加水分解縮合物の含有率が表面から深さ方向に向かって連続的に変化する非晶質酸化チタン膜の表面が、水蒸気の存在下で100℃以下の温度に曝されることにより得られた光触媒膜である。
【0023】
[光触媒膜の性状]
本発明の光触媒膜は、有機系基材上に設けられたチタンアルコキシド加水分解縮合物の含有率が、表面から深さ方向に向って連続的に変化する成分傾斜構造を有する非晶質酸化チタン膜の表面が、水蒸気の存在下で100℃以下の温度に曝され、光触媒化されることにより、あるいは水分の存在下で100℃以下の温度にて加熱処理し、光触媒化することにより得られたものであって、超親水性を発揮するが、有機物に対する分解活性をほとんど示さない特徴を有している。
【0024】
このようにして得られた本発明の光触媒膜は、光半導体粒子を含有し、該光半導体粒子が結晶質酸化チタンを含んでいることが好ましい。
【0025】
結晶質酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の何れの結晶質酸化チタンであってもよく、あるいは、上記結晶質酸化チタンであって結晶欠陥や結晶歪みを内包するものでもよく、これ等の結晶質酸化チタンを2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0026】
また、本発明の光触媒膜に含まれる、全結晶質酸化チタンに占める結晶径が1〜10nmの範囲内にある結晶質酸化チタンの割合は、90%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。
【0027】
なお、本発明において、結晶径とは、透過型電子顕微鏡で結晶質酸化チタンの断面を観察したときの結晶粒の格子縞の最大長さを意味し、また、結晶径が1〜10nmの範囲にある結晶質酸化チタンの含有割合は、光触媒膜の断面を透過型電子顕微鏡で観察したときの、全結晶数に対する結晶径が1〜10nmの範囲にある結晶数の割合を算出することによって求められる。
【0028】
本発明の光触媒膜は、透過型電子顕微鏡による光触媒膜の50nm×50nmの範囲における断面観察によって、少なくとも結晶粒が5個以上存在するものであることが好ましく、10個以上存在するものであることがより好ましい。上記観察範囲における結晶粒数が5個以上であることにより、超親水性付与機能を有するが、分解活性が抑制された光触媒膜を得ることができる。本発明の光触媒膜は、結晶質酸化チタンが非晶質酸化チタン中に分散してなるものであることが好ましい。この場合、例えば、透過型電子顕微鏡で観察したときに、非晶質酸化チタンの海の中に結晶化チタン粒子が島状に点在してなるものが好ましい。
【0029】
本発明の光触媒膜は、太陽光照射時における水に対する限界接触角が20度未満であるものが好ましく、10度以下であるものがさらに好ましい。
【0030】
また、本発明の光触媒膜は、3mW/cmの人工太陽光照射時におけるメチレンブルーの分解速度が、塗布したメチレンブルーの最大吸収波長における吸光度の低下速度(分解活性)ΔABS/minで0.1以下であるものが好ましく、0.05以下であるものがより好ましく、0.01以下であるものがさらに好ましく、0.0015以下であるものがさらに好ましい。
【0031】
上記水に対する接触角、メチレンブルーの分解速度は、例えば、結晶質酸化チタンの結晶径や含有割合を調整することにより制御することができる。
【0032】
さらに、本発明の光触媒膜は、表面に凹凸を有し、優れた親水性能を発揮すると共に、反射率が低く、高い透明性を有している。
【0033】
ウエンツェルの法則によると、塗膜表面にある程度の凹凸を付与することにより、該塗膜の濡れ性が強調され、親水性能が向上することが知られている。本発明者らは、光触媒膜の親水性能を効果的に向上されると共に、反射率を低くして透明度を効果的に高める凹凸について、研究を重ね、本発明を完成するに至ったものである。
【0034】
すなわち、本発明の光触媒膜は、光触媒粒子以外に、(a)平均粒径40nm未満の金属酸化物粒子Aと、(b)平均粒径40nm以上90nm未満の金属酸化物粒子Bまたは平均粒径90nm以上150nm未満の金属酸化物粒子Cまたは平均粒径150nm以上200nm未満の金属酸化物粒子Dとを含み、かつその混合割合が、質量基準で下記関係式(1)〜(3)
80/20≦A/B≦45/55 (1)
97/3 ≦A/C≦70/30 (2)
97/3 ≦A/D≦88/12 (3)
を満たし、表面に凹凸を有している。
【0035】
なお、上記関係式(1)の「80/20≦A/B≦45/55」は、AとBとの質量比が、80:20〜45:55の範囲にあることを示す。他の関係式(2)、(3)も同様である。
【0036】
金属酸化物粒子Aと、金属酸化物粒子BまたはCまたはDとの質量基準の割合が、それぞれ上記関係式(1)、(2)、(3)を満たすことにより、形成される本発明の高透明性光触媒膜自身のJIS K 7361に準拠して測定したヘイズ値を0.6%未満にすることができると共に、光触媒粒子以外に、金属酸化物粒子Aのみを含む光触媒膜と比較して、親水化速度を2倍以上向上させることができる。
なお、上記の光触媒膜のヘイズ値および親水化速度は、下記の方法により測定した値である。
【0037】
<光触媒膜の親水化速度>
2mm厚の無色透明アクリル板(三菱レーヨン社製、「アクリライトL」)上に、厚み100nmの光触媒膜を形成させ、暗所保持下で十分に疎水下させたサンプルについて、紫外・可視光領域の発光スペクトルが太陽光に類似した人工太陽光源(セリック社製「XC−100BSS」)を使用し、擬似太陽光を照射したのち、接触角計(エルマ販売(株)製「G−1−1000」)で純水に対する接触角の経時変化を追跡した。親水化速度は、光照射時間(min)に対して水接触角値の逆数をプロットし、その直線近似線の傾きを取ることによって求める。
【0038】
<光触媒膜のヘイズ値>
2mm厚の無色透明アクリル板(前出)上に、厚み100nmの光触媒膜を形成し、日本電色社製のヘイズメーター「NDH−2000」を用い、JIS K 7361に準拠してヘイズ値を求める。光触媒膜自身のヘイズ値は、光触媒膜を成膜した前出の無色透明アクリル板のヘイズ値から、同アクリル板単独のヘイズ値を差し引くことによって求めた。
【0039】
本発明で用いる前記金属酸化物粒子A〜Dとしては、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナおよびマグネシアを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、シリカ系微粒子が、当該光触媒膜のヘイズ値低減および親水化速度の向上効果の観点から好適である。
【0040】
また、本発明の光触媒膜中に含まれる、前記金属酸化物粒子Aと、BまたはCまたはDとの合計量は、当該光触媒膜のヘイズ値低減および親水化速度の向上効果の観点から10〜80質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることがより好ましい。
なお、前記の各金属酸化物粒子の平均粒径は、レーザー散乱回折法により、測定される値である。
【0041】
[光触媒膜の製造]
本発明の光触媒膜は、前述したように、光半導体粒子である結晶質酸化チタンを含むと共に、表面に凹凸を付与するために、光触媒粒子以外に、それぞれ特定の粒径範囲を有する、金属酸化物粒子Aと、金属酸化物粒子BまたはCまたはDとを含む。また、チタンアルコキシドが有機高分子化合物と加水分解縮合してその含有率が表面から深さ方向に向かって連続的に変化する複合体を形成している。
【0042】
チタンアルコキシドの具体例としては、後述するチタンテトラアルコキシドを挙げることができ、また、有機化合物の具体例としては、後述する加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物を挙げることができる。
【0043】
また、本発明の光触媒膜は、無機金属塩、有機金属塩ならびにチタンおよび珪素以外の金属のアルコキシドの中から選ばれる少なくとも1種類の金属系化合物をさらに含んでなるものであることが好ましく、上記金属系化合物の具体例は、後述するとおりであるが、特に硝酸アルミニウムが好ましい。
【0044】
本発明の光触媒膜は、非晶質酸化チタン膜が、水蒸気の存在下で、100℃以下の温度に曝されることにより、あるいは水分の存在下で100℃以下の温度にて加熱処理することにより製造される。この場合、温度100℃以下、相対湿度5%以上の環境下で光触媒を製造することが好ましい。
【0045】
また、本発明においては、上記環境下において、さらに250〜1200nmの波長域から選ばれる任意領域の波長を有するとともに、紫外光を含む光の存在下で製造することが好ましく、その場合は、放射照度5〜400W/mの条件で照射しつつ、上記温度が30〜60℃、相対湿度が50〜80%とすることが好適な製造条件の一つに挙げられる。
【0046】
250〜1200nmの波長域から選ばれる任意領域の波長を有するとともに、紫外光を含む光としては、少なくとも、波長250〜260nm、290〜315nm、350〜1200nmの波長域の光を含むものであることが好ましく、放射照度200〜400W/mの条件下で照射することが、さらに好ましい。
【0047】
本発明においては、少なくとも1回以上、水を噴霧することが好ましい。本発明に用いられる設備や装置に関する制約は特にないが、代表的には、恒温恒湿環境が得られる各種設備のほか、カーボンアーク式サンシャインウエザーメーター、キセノンウエザーメーター、メタリングウエザーメーター、デューパネルウエザーメーターなどが例示できる。
【0048】
なお、上記と同等の条件が得られる屋外環境下における暴露によっても同様に本発明の光触媒膜を製造することが可能である。
【0049】
本発明の光触媒膜は、(A)チタンアルコキシドを加水分解縮合させて得られるチタニアゾルと、(B)分子中に加水分解により酸化チタンと結合し得る金属含有基(加水分解性金属含有基と称することがある。)を有する有機高分子化合物と、(C)凹凸形成用の金属酸化物粒子を含むコーティング剤を用いて形成させ、この膜が、前述の製造条件で光触媒化することにより製造される。
【0050】
(A)成分であるチタンテトラアルコキシドを加水分解縮合させて得られるチタニアゾルの調製において、原料となるチタンテトラアルコキシドとしては、アルコキシル基の炭素数が1〜4程度のチタンテトラアルコキシドが用いられる。このチタンテトラアルコキシドにおいては、4つのアルコキシル基は、たがいに同一でも異なっていてもよいが、入手の容易さなどの点から、同一のものが好ましく用いられる。上記チタンテトラアルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシドおよびチタンテトラ−tert−ブトキシドが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記チタンテトラアルコキシドを加水分解−縮合させて、チタニアゾル溶液を調製する。このチタンテトラアルコキシドの加水分解−縮合反応は、好ましくは炭素数3以上のエーテル系酸素を有するアルコール類を溶媒として用い、酸性触媒の存在下でチタンテトラアルコキシドに水を作用させることにより行われる。
【0052】
上記炭素数3以上のエーテル系酸素を有するアルコール類としては、チタンテトラアルコキシドに対して相互作用を有する溶剤、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテルなどのセロソルブ系溶剤、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。これらの中で、特にチタンテトラアルコキシドに対する相互作用が強いセロソルブ系溶剤が好ましい。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
このようなチタンテトラアルコキシドに対して相互作用を有する溶剤を溶媒として用いることにより、チタンテトラアルコキシドの加水分解−縮合反応により得られたチタニアゾル溶液を安定化させることができ、縮合反応を進行させてもゲル化や粒子化が生じにくくなる。
【0054】
チタンテトラアルコキシドの加水分解−縮合反応は、チタンテトラアルコキシドに対し、4〜20倍モル程度、好ましくは5〜12倍モルの上記アルコール類と、0.5倍モル以上4倍モル未満程度、好ましくは1〜3.0倍モルの水を用い、塩酸、硫酸、硝酸などの酸性触媒の存在下、通常0〜70℃、好ましくは20〜50℃の範囲の温度において行われる。酸性触媒は、チタンテトラアルコキシドに対し、通常0.1〜1.0倍モル、好ましくは0.2〜0.7倍モルの範囲で用いられる。
【0055】
上記(B)成分の加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物は、例えば(x)加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と、(y)金属を含まないエチレン性不飽和単量体を共重合させることにより、得ることができる。
【0056】
上記(B)(x)成分である加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体としては、一般式(4)
【0057】
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基、Aはアルキレン基、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、Rは加水分解性基または非加水分解性基であるが、その中の少なくとも1つは加水分解により、(A)成分と化学結合しうる加水分解性基であることが必要であり、また、Rが複数の場合には、各Rはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよく、Mはケイ素、チタン、ジルコニウム、インジウム、スズ、アルミニウムなどの金属原子、kは金属原子Mの価数である。)
で表されるものを挙げることができる。
【0058】
上記一般式(4)において、Rのうちの加水分解により(A)成分と化学結合しうる加水分解性基としては、例えばアルコキシル基、イソシアネート基、塩素原子などのハロゲン原子、オキシハロゲン基、アセチルアセトネート基、水酸基などが挙げられ、一方、(A)成分と化学結合しない非加水分解性基としては、例えば低級アルキル基などが好ましく挙げられる。
【0059】
一般式(4)における−Mk−1で表される金属含有基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリ−n−プロポキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリ−n−ブトキシシリル基、トリイソブトキシシリル基、トリ−sec−ブトキシシリル基、トリ−tert−ブトキシシリル基、トリクロロシリル基、ジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、トリイソシアナトシリル基、メチルジイソシアナトシリル基など、トリメトキシチタニウム基、トリエトキシチタニウム基、トリ−n−プロポキシチタニウム基、トリイソプロポキシチタニウム基、トリ−n−ブトキシチタニウム基、トリイソブトキシチタニウム基、トリ−sec−ブトキシチタニウム基、トリ−tert−ブトキシチタニウム基、トリクロロチタニウム基、さらには、トリメトキシジルコニウム基、トリエトキシジルコニウム基、トリ−n−プロポキシジルコニウム基、トリイソプロポキシジルコニウム基、トリ−n−ブトキシジルコニウム基、トリイソブトキシジルコニウム基、トリ−sec−ブトキシジルコニウム基、トリ−tert−ブトキシジルコニウム基、トリクロロジルコニウム基、またさらには、ジメトキシアルミニウム基、ジエトキシアルミニウム基、ジ−n−プロポキシアルミニウム基、ジイソプロポキシアルミニウム基、ジ−n−ブトキシアルミニウム基、ジイソブトキシアルミニウム基、ジ−sec−ブトキシアルミニウム基、ジ−tert−ブトキシアルミニウム基、トリクロロアルミニウム基などが挙げられる。
【0060】
この(x)成分のエチレン性不飽和単量体は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
一方、上記(y)成分である金属を含まないエチレン性不飽和単量体としては、例えば一般式(5)
【0062】
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基、Xは一価の有機基である。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、好ましくは一般式(5−a)
【0063】
【化3】

(式中、Rは前記と同じであり、Rは炭化水素基を示す。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、あるいは上記一般式(5−a)で表されるエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて添加される密着性向上剤としての一般式(5−b)
【0064】
【化4】

(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rはエポキシ基、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有する炭化水素基を示す。)
で表されるエチレン性不飽和単量体との混合物を挙げることができる。
【0065】
上記一般式(5−a)で表されるエチレン性不飽和単量体において、Rで示される炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基を好ましく挙げることができる。炭素数1〜10のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、および各種のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。炭素数3〜10のシクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などが、炭素数6〜10のアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基などが、炭素数7〜10のアラルキル基の例としては、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0066】
この一般式(5−a)で表されるエチレン性不飽和単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
上記一般式(5−b)で表されるエチレン性不飽和単量体において、Rで示されるエポキシ基、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有する炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基を好ましく挙げることができる。上記置換基のハロゲン原子としては、塩素原子および臭素原子がよい。上記炭化水素基の具体例としては、前述の一般式(5−a)におけるRの説明において例示した基と同じものを挙げることができる。
【0068】
上記一般式(5−b)で表されるエチレン性不飽和単量体の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3−グリシドキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2−ブロモエチル(メタ)アクリレートなどを好ましく挙げることができる。
【0069】
また、上記一般式(5)で表されるエチレン性不飽和単量体としては、これら以外にもスチレン、α−メチルスチレン、α−アセトキシスチレン、m−、o−またはp−ブロモスチレン、m−、o−またはp−クロロスチレン、m−、o−またはp−ビニルフェノール、1−または2−ビニルナフタレンなど、さらにはエチレン性不飽和基を有する重合性高分子用安定剤、例えばエチレン性不飽和基を有する、酸化防止剤、紫外線吸収剤および光安定剤なども用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
また、一般式(5−a)で表されるエチレン性不飽和単量体と一般式(5−b)で表されるエチレン性不飽和単量体とを併用する場合は、前者のエチレン性不飽和単量体に対し、後者のエチレン性不飽和単量体を1〜100モル%の割合で用いるのが好ましい。
【0071】
上記(x)成分の加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と(y)成分の金属を含まないエチレン性不飽和単量体とを、ラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル共重合させることにより、(B)成分である加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物が得られる。
【0072】
一方、(C)成分である凹凸形成用の金属酸化物粒子としては、前述で説明したように、(a)平均粒径40nm未満の金属酸化物粒子Aと、(b)平均粒径40nm以上90nm未満の金属酸化物粒子Bまたは平均粒径90nm以上150nm未満の金属酸化物粒子Cまたは平均粒径150nm以上200nm未満の金属酸化物粒子Dとを用いる。
【0073】
前記金属酸化物粒子Aと、金属酸化物粒子BまたはCまたはDとの使用割合は、前記関係式(1)〜(3)で示すとおりである。
【0074】
この金属酸化物粒子A〜Dとしては、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナおよびマグネシアの中から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられるが、これらの中でシリカ系微粒子が好適である。このシリカ系微粒子としては、コロイダルシリカが好ましい。
【0075】
本発明においては、上記のようにして得られた(A)成分であるチタニアゾルの溶液と、(B)成分である加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物を適当な極性溶剤中に溶解させた溶液と、(C)成分である凹凸形成用の金属酸化物粒子との混合液を、塗布に適した粘度に調整することによって塗工液を得ることができる。この際、必要ならば、上記塗工液に水および/または酸性触媒を添加してもよい。
【0076】
上記塗工液に(C)成分を含有させることにより、得られる光触媒膜の表面に凹凸が付与され、該光触媒膜の親水性能および透明性が向上する。
【0077】
さらに、成分傾斜構造を有する非晶質酸化チタン膜の形成に用いられるコーティング剤には、アモルファス状酸化チタンの結晶生成を調整する物質として、無機金属塩、有機金属塩並びにチタンおよび珪素以外の金属のアルコキシドの中から選ばれる少なくとも1種の金属系化合物を含有させることができる。具体的には、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムや、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム等の各塩類、ならびに、これら無機塩類の水和物、アルミニウムトリアセチルアセトナートなどのアルミニウムキレート類、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどの金属アルコキシド類、ならびにこれら化合物の加水分解物、あるいは、その縮合物を挙げることができる。これらの中で、特に硝酸アルミニウムならびにその水和物が好適である。前記結晶生成調整物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
このように、コーティング剤中に結晶生成調整物質を含有させることにより、形成される光触媒膜中の酸化チタンの微結晶生成挙動(例えば、結晶生成速度や結晶成長速度など)を調節することができる。また、使用される環境や要求される性能に応じて、超親水性発現までの時間をコントロールすることなどが可能であり、さらに収縮に伴う亀裂発生抑制など膜の安定性の調節に寄与することもできる。
【0079】
本発明においては、有機系基材上に、上述のようにして得られた塗工液を、乾燥塗膜の厚さが、通常0.01〜1μm、好ましくは0.03〜0.3μmの範囲になるように、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などの公知の手段により塗布し、溶媒を揮散させて塗膜を形成させることが好ましい。
【0080】
上記有機系基材としては、例えばポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリスチレンやABS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂などからなる基材を挙げることができる。
【0081】
これらの有機基材は、本発明に係る成分傾斜膜との密着性をさらに向上させるために、所望により、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれる。
【0082】
なお、本発明において、有機基材としては、有機系材料以外の材料、例えば金属系材料、ガラスやセラミックス系材料、その他各種無機系または金属系材料からなる基材の表面に、有機系塗膜を有するものも包含する。
【0083】
本発明においては、このようにして形成された塗膜に、通常0〜200℃、好ましくは15〜150℃の温度にて加熱処理を施すことにより、表面に凹凸が付与された成分傾斜構造を有する非晶質酸化チタン膜が形成される。
【0084】
成分傾斜構造は、例えば得られた膜表面にスパッタリングを施して削っていき、経時的に膜表面の炭素原子とチタン原子の含有率を、X線光電子分光法などにより測定することによって、確認することができる。
次に、本発明の物品について説明する。
【0085】
[物品]
本発明の物品は、有機系基材の表面に本発明の高透明性光触媒膜を有することを特徴とする。
さらに、本発明の物品は、本発明の光触媒膜の機能を害さない範囲で、前記光触媒膜の表面に、厚みが500nm以下である機能膜をさらに設けることができる。
【0086】
上記機能膜の機能としては、暗所での親水保持性、導電性、帯電性、ハードコート性、反射特性制御、屈折率制御などが挙げられる。また、上記機能膜の具体的な構成成分としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ITO、酸化亜鉛などの金属酸化物系化合物が挙げられる。特に、太陽光が当たらない夜間において、親水性を保持するためなどを目的として、シリカを含んでなるものであることが好ましい。
【0087】
本発明の物品において、高透明性光触媒膜が形成される有機系基材としては、前記で例示した有機系基材と同じものを挙げることができ、また前記と同様に、その上に設けられる光触媒膜との密着性を向上させるために、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。
【0088】
本発明の物品としては、高速道路の防音壁、道路反射鏡、各種反射体、街路灯、自動車をはじめとする車両のボディーコートやサイドミラーあるいはウインド用フィルム、窓ガラスを含む建材、道路標識、ロードサイド看板、冷凍・冷蔵用ショーケース、各種レンズ類やセンサー類などを挙げることができる。
【0089】
また、本発明の物品としては、農業用フィルムを挙げることもできる。農業用フィルムは、近年、ハウス栽培やトンネル栽培に盛んに用いられるようになってきたものであり、このような栽培においては、農業用フィルムを展張使用する際、水滴付着による生じる曇りを防止するために、展張後に、防滴剤(防曇剤)を内面にスプレーしていたが、この防滴剤(防曇剤)は、短期間で防滴効果が失われるものであった。これに対して、本発明の光触媒膜を表面に有する農業用フィルムは、長期間親水性を維持し得るものであるため、再塗布を必要とせずに農作業を継続することが可能となる。
【0090】
上述したように、本発明の物品は、超親水性付与機能を有するが、分解活性が抑制された光触媒膜を有するものであるため、有機系基材を侵食することなく、物品の表面を親水化することが可能になる。
【実施例】
【0091】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で形成された光触媒膜の性能は、以下に示す方法に従って測定した。
【0092】
(1)親水化速度
明細書本文記載の方法に従って、親水化速度を測定し、比較例1の光触媒膜の値を1として指数表示した。
(2)ヘイズ値
明細書本文記載の方法に従って、ヘイズ値を測定した。ヘイズ値が低いほど透明性に優れている。
【0093】
合成例1 チタンアルコキシドの加水分解縮合液の調製
エチルセロソルブ149gに、チタンテトライソプロポキシド(商品名:A−1、日本曹達(株)製)75.7gを攪拌しながら滴下し、溶液(A)を得た。この溶液(A)にエチルセロソルブ58.3g、蒸留水4.55g、60質量%濃硝酸12.6gの混合溶液を攪拌しながら滴下し溶液(B)を得た。溶液(B)をその後、30℃で4時間攪拌することによってチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を得た。
【0094】
合成例2 有機高分子成分溶液の調製
2Lセパラブルフラスコに窒素雰囲気下でメチルイソブチルケトン704g、メタクリル酸メチル332g、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン42.0gを添加し、60℃まで昇温した。この混合溶液にアゾビスイソブチロニトリル3.2gを溶かしたメチルイソブチルケトン103gを滴下して重合反応を開始し、30時間攪拌して有機高分子成分溶液(D)を得た。
【0095】
実施例1
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.09g、コロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm)、日産化学工業(株)製)0.70gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作成した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
【0096】
その後コーティング液(H)を、2mm厚の無色透明アクリル板(三菱レーヨン製、「アクリライトL」)にスピンコーターを使用して、約10μmのウエット厚みで塗布し、ドライ厚みが100nmになるように塗布した。次いで、この塗膜を、恒温恒湿チャンバーにて85℃95%RHの条件下で15時間光触媒化処理した。
【0097】
この光触媒膜自身のヘイズ値は0.30%であり、親水化速度は、比較例1のものに対して2.19倍であった。また、XPS装置「PHI−5600」[アルバックファイ(株)製]を用い、アルゴンスパッタリング(4kV)を3分間隔で施し膜を削り、膜表面の炭素原子と金属原子の含有率をX線光電子分光法により測定し、傾斜性を調べたところ、表面から深さ方向に金属原子の含有率が連続的に減少する成分傾斜構造を有していることが確認された。
【0098】
実施例2
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)1.39g、コロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm)、日産化学工業(株)製)1.39gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.29%であり、親水化速度が比較例1のもの対して2.02倍であった。
【0099】
実施例3
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.64g、コロイダルシリカC(商品名:IPA−ST−ZL(平均粒径100nm)、日産化学工業(株)製)0.14gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.23%であり、親水化速度が比較例1のもの対して2.48倍であった。
【0100】
実施例4
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.09g、コロイダルシリカC(商品名:IPA−ST−ZL(平均粒径100nm)、日産化学工業(株)製)0.70gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.34%であり、親水化速度は比較例1のもの対して3.43倍であった。
【0101】
実施例5
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.64g、コロイダルシリカD(商品名:MP−2040(平均粒径190nm)、日産化学工業(株)製)0.10gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.32%であり、親水化速度は比較例1のもの対して2.02倍であった。
【0102】
実施例6
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.50g、コロイダルシリカD(商品名:MP−2040(平均粒径190nm)、日産化学工業(株)製)0.21gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜のヘイズ値は0.51%であり、親水化速度は比較例1のもの対して2.75倍であった。
【0103】
比較例1
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.78gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中のコロイダルシリカAの量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.12%であった。
【0104】
比較例2
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm)、日産化学工業(株)製)2.78gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中のコロイダルシリカBの量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.35%であり、親水化速度は比較例1のもの対して0.34倍であった。
【0105】
比較例3
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカC(商品名:IPA−ST−ZL(平均粒径100nm)、日産化学工業(株)製)2.78gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中のコロイダルシリカCの量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.74%であり、親水化速度は比較例1のもの対して0.35倍であった。
【0106】
比較例4
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカD(商品名:MP−2040(平均粒径190nm)、日産化学工業(株)製)2.09gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中のコロイダルシリカDの量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は1.69%であり、親水化速度は比較例1のもの対して0.25倍であった。
【0107】
比較例5
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.64g、コロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm)、日産化学工業(株)製)0.14gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜のヘイズ値は0.39%であり、親水化速度は比較例1のもの対して1.45倍であった。
【0108】
比較例6
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)0.47g、コロイダルシリカB(商品名:IPA−ST−L(平均粒径50nm)、日産化学工業(株)製)2.31gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.19%であり、親水化速度は比較例1のもの対して0.74倍であった。
【0109】
比較例7
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.75g、コロイダルシリカC(商品名:IPA−ST−ZL(平均粒径100nm)、日産化学工業(株)製)0.03gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.21%であり、親水化速度は比較例1のもの対して1.58倍であった。
【0110】
比較例8
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)1.39g、コロイダルシリカC(商品名:IPA−ST−ZL(平均粒径100nm)、日産化学工業(株)製)1.39gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.25%であり、親水化速度は比較例1のもの対して0.72倍であった。
【0111】
比較例9
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.75g、コロイダルシリカD(商品名:MP−2040(平均粒径190nm)、日産化学工業(株)製)0.02gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.28%であり、親水化速度は比較例1のもの対して1.75倍であった。
【0112】
比較例10
エチルセロソルブ8.57gに硝酸アルミニウム・九水和物(和光純薬工業(株)製)1.22gを溶解させ、続いて合成例1で調製したチタンアルコキシドの加水分解縮合液(C)を11.03g加えてよく攪拌し溶液(G)を得た。続いて、合成例2で調製した有機高分子成分溶液(D)1.46g、メチルイソブチルケトン47.15g、エチルセロソルブ27.78g、上記記載の溶液(G)20.82g、およびコロイダルシリカA(商品名:IPA−ST(平均粒径20nm)、日産化学工業(株)製)2.36g、コロイダルシリカD(商品名:MP−2040(平均粒径190nm)、日産化学工業(株)製)0.31gの順番で混合し、その後、33℃の温浴で24時間攪拌して、コロイダルシリカと硝酸アルミニウムを混合したチタンアルコキシドの加水分解物と有機高分子成分との傾斜膜コーティング液(H)を作製した。この時、コーティング液(H)固形分中の全コロイダルシリカ量は30質量%であった。
その後、実施例1と同様な操作を行い、傾斜膜表面に光触媒層を有する光触媒膜を作製した。この光触媒膜自身のヘイズ値は0.65%であり、親水化速度は比較例1のもの対して2.75倍であった。
以上、実施例1〜6および比較例1〜10の結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
表1から分かるように、本発明の光触媒膜(実施例1〜6)は、いずれも親水化速度指数が2以上であり、かつ光触媒膜自身のヘイズ値はヘイズ値が0.6%未満である。
これに対し、比較例1〜9は、いずれも親水化速度が2未満である。比較例10は、親水化速度が2.75と高いが、光触媒膜自身のヘイズ値はヘイズ値が0.65%と大きい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の光触媒膜は、優れた親水性能を有するが、分解活性はほとんど示さず、有機系基材の劣化を抑制し得ると共に、高い透明性を有し、窓材、自動車のサイドミラー、カーブミラー、反射板などに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系基材上に、チタンアルコキシドと有機高分子化合物とが加水分解縮合してなる複合体を含むコーティング剤を1回のみ塗布することによって設けられた、チタンアルコキシドの加水分解縮合物の含有率が表面から深さ方向に向かって連続的に変化する非晶質酸化チタン膜の表面が、水蒸気の存在下で100℃以下の温度に曝されることにより得られた光触媒膜であって、光触媒粒子以外に、(a)平均粒径40nm未満の金属酸化物粒子Aと、(b)平均粒径40nm以上90nm未満の金属酸化物粒子Bまたは平均粒径90nm以上150nm未満の金属酸化物粒子Cまたは平均粒径150nm以上200nm未満の金属酸化物粒子Dとを含み、かつその混合割合が、質量基準で下記関係式(1)〜(3)
80/20≦A/B≦45/55 (1)
97/3 ≦A/C≦70/30 (2)
97/3 ≦A/D≦88/12 (3)
を満たし、表面に凹凸を有することを特徴とする高透明性光触媒膜。
【請求項2】
有機系基材上に塗布された非晶質酸化チタン膜の表面を、水分存在下で100℃以下の温度にて加熱処理することにより得られた光触媒膜である請求項1に記載の高透明性光触媒膜。
【請求項3】
JIS K 7361に準拠して測定した光触媒膜自身のヘイズ値が、0.6%未満である請求項1または2に記載の高透明性光触媒膜。
【請求項4】
金属酸化物粒子A〜Dが、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナおよびマグネシアの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜。
【請求項5】
金属酸化物粒子A〜Dが、シリカ系粒子である請求項4に記載の高透明性光触媒膜。
【請求項6】
光触媒粒子以外に、金属酸化物粒子Aのみを含む光触媒膜と比較して、親水化速度が2倍以上向上してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜。
【請求項7】
有機系基材の表面に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の高透明性光触媒膜を有することを特徴とする物品。
【請求項8】
高透明性光触媒膜の表面に、さらに機能膜を有する請求項7に記載の物品。

【公開番号】特開2010−116504(P2010−116504A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291441(P2008−291441)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】