説明

高電圧超音波機能を実現するための集積回路

超音波画像化システムの高電圧超音波機能を実現するための集積SOI回路がもたらされる。集積回路は集積チップとしてパッケージングされる。集積回路は、シリコン・オン・インシュレータ技術から構成され、少なくとも後続する高電圧超音波機能部、すなわちゲートドライバ、電力増幅器、送受信スイッチを組み込む。選択的に、集積チップは、低雑音増幅器及びアナログマルチプレクサを含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、超音波画像化システムに関する。より特定されることに、本発明は、超音波画像化システムの高電圧超音波機能を実現するための集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、超音波画像化システム10を示す。圧電変換器アレイ(piezoelectric transducer array)12は、電気刺激(electrical stimuli)から超音波をもたらし、電気刺激を電気信号にぶつけて(当てて)超音波を逆変換する。圧電変換器アレイ12は、自身のケーシング(casing)内に収容され、2メートルケーブル14を通じて超音波画像化システム10の残りを含むカートにつながれる。
【0003】
収集サブシステム(acquisition sub-system)16は、超音波の発生のために圧電変換器アレイ12を刺激する。収集サブシステム16は、入射超音波から走査線(スキャンライン(scan line))に圧電変換器アレイ12によって生成される電気信号も処理する。この走査線は、圧電変換器アレイ12から現れる軸上に位置される組織についての音響発生情報(echogenic information)をもたらす。信号処理サブシステム18は、走査線を画像に変換する。画像は、表示されてもよく、記憶されてもよく、又はインタフェイス部、記憶部、及びコネクティビティサブシステム(connectivity sub-system)20によって他のシステムに転送されてもよい。サブシステム22はユーザインタフェイス部をもたらし、他のサブシステム16、18、及び20を制御する。
【0004】
収集サブシステム16は、各々が、圧電変換器アレイ12からの単一の圧電変換器を処理する同じチャネルから構成される。概して、圧電変換器は、超音波の発生と受信との両方のために交互に使用される。従って、収集サブシステム16の各々のチャネルは、超音波の発生のために圧電変換器に高電圧信号をもたらす送信器と、圧電変換器によって吸収される超音波によって生成される電気信号を処理する受信器とを含む。スイッチのセットは、送信器及び受信器が互いに干渉することを防止する。
【0005】
送信器は、低電圧高周波アナログ信号を、低歪を備える高電圧(通常、200 Vpp)高電流(通常、+/- 2 A)信号に増幅するという困難な課題を有する。送信器は、低電圧高周波アナログ信号を増幅するために、高電圧トランジスタ、低電圧演算増幅器、高電流バッファ、変圧器、コンデンサ、及び抵抗等の個別部品(ディスクリートコンポーネント)を含む。従って、収集サブシステム16の各々の増幅器は、多くの個別部品を必要とすると共に、システムにおいてかなりの基板スペース(領域)を占める。ハイエンド超音波画像化システムにおける多くのチャネル(通常128)は、かなりの費用(コスト)をもたらす。
【0006】
それ故に、単一の集積回路上に超音波画像化システムの各々の送信器の高電圧機能を組み込む必要性が存在する。単一のチップは、高電圧送信器機能を実現するのに使用される従来の超音波送信器回路のいくつかの個別部品によって必要とされるスペースを劇的に低減する。更に、従来の超音波送信器回路において必要とされる個別部品は他の用途に対して最適化される。それ故にそれらの大きさ及び消費電力は、必要とされる量よりも高くなる。超音波画像化システムの全ての部品の大きさ及び特性を調整することによって、単一の集積回路により、低い消費電力でより優れた性能を提供し得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、超音波画像化システムの高電圧超音波機能を実現するための集積回路をもたらす。集積回路は集積チップとしてパッケージングされる。それ故に、本発明の集積チップは、高電圧送信器機能を実現するのに従来の超音波送信器回路のいくつかの個別部品によって必要とされるスペースを劇的に低減する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
集積回路は、シリコン・オン・インシュレータ(silicon-on-insulator (SOI))技術を使用して製造される。集積回路は、少なくとも後続する高電圧超音波デバイス、すなわち少なくとも一つのチャネルのための送受信スイッチ、電力増幅器、及びゲートドライバを組み込む集積チップとしてパッケージングされる。選択的に、低雑音前置増幅器(ローノイズプリアンプ(low-noise pre-amplifier))及びアナログマルチプレクサが追加され得る。好ましいSOI技術は、低電圧CMOS技術及びバイポーラトランジスタを、単一チップ上の超音波の要求仕様(必要条件)を上回る電圧を維持し得る高電圧高速トランジスタと組み合わせる。トランジスタは、誘電体で互いに絶縁分離される。これにより、競合技術に対してかなりの面積低減がもたらされる。ディジタル論理並びに低電圧及び高電圧アナログ機能の同一チップ上の集積ももたらされる。全てのこれらの部品は、高性能超音波送信器のために不可欠である。
【0009】
従って、本発明は、従来技術の超音波送信器回路(低雑音増幅器、ゲートドライバ、電力増幅器、絶縁ダイオード、T/Rスイッチ、及びアナログマルチプレクサ等)のビルディングブロック(building block)を単一のSOIチップ上に組み込み、それら各々の機能を働かせる。更に、本発明によりもたらされるSOI集積は、新たな機能(例えば、電力低減のためのダイナミックバイアシング(dynamic biasing))が追加されることを可能にし、従来技術の送信器回路のいくつかの個別部品で全く不可能であるか、又は実際的でない新たな回路技術を可能にする。
【0010】
これら及び他の利点は、図面を参照して以下の本発明の様々な実施例の詳細な説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
超音波システムにおける画質は多くのファクタ(要因)に依存する。それらのうちの一つは利用可能なチャネルの数である。消費電力及び基板スペースのために、従来技術の超音波画像化システムは128チャネルに制限される。本発明は、より多くのチャネル(例えば256チャネル)が使用され、それによって画質を向上させることを可能にするための組み込み高電圧SOI集積回路をもたらす。単一のチャネルの特性も非常に重要になる。信号対雑音比(signal-to-noise ratio)、歪、及びスルーレートのような測定基準は、寄生素子(parasitic component)が最小限に維持される本発明の単一のSOI集積送信器でかなり改善される。
【0012】
図2によって示されているように、集積回路は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)技術を使用して製造され、概して参照番号100によって示される。集積回路100は、少なくとも後続する高電圧超音波デバイス、すなわち低雑音前置増幅器(low-noise pre-amplifier (LNA))102、ゲートドライバ104、電力増幅器106、及び送受信スイッチ108を組み込む集積チップとしてパッケージングされる。LNA102はチップ100の外側に位置され得る。好ましいSOI技術は、低電圧CMOS技術及びバイポーラトランジスタを、単一チップ上の超音波の要求仕様を上回る電圧を維持し得る高電圧高速トランジスタと組み合わせる。SOI ICチップ100上のトランジスタは、誘電体で互いに絶縁分離される。これにより、競合技術に対してかなりの面積低減がもたらされる。ディジタル論理並びに低電圧及び高電圧アナログ機能の同一チップ上の集積ももたらされる。全てのこれらの部品は、高性能超音波送信器のために不可欠である。
【0013】
本発明を実現する最良の方法は、可能な限り多くの単一チップの機能を単一チップ100上に集積し、消費電力及び/又は領域が許容する限り多くのチャネルをチップ100上に集積することにある。集積回路100のための好ましいSOI技術はPhilips EZ-HVにあり、Philips EZ-HVは必要な電圧領域(範囲)トランジスタ(〜250 V)を可能にし、単一チップ上に全て一緒に集積される低電圧領域及び中間電圧領域のバイポーラトランジスタ並びにCMOSトランジスタをもたらす。
【0014】
SOI ICチップ100は、第一の端子(ターミナル)(T1)を介して、図1によって示されているシステムのように超音波画像化システムによって生成される小振幅アナログ又はディジタル信号(低電圧信号)をとる。SOI ICチップ100は、電力増幅器106のための信号を増幅するゲートドライバ104のための低雑音前置増幅器(LNA)102で低電圧信号を増幅する。電力増幅器106は更に前記信号を増幅して、第二の端子(T2)を介して超音波画像化システム(図3参照)の超音波プローブ110に高電圧信号(例えば約200 Vpp)を出力する。超音波プローブ110は、抵抗R及びコンデンサCを有するRC回路を介してSOI ICチップ100に接続される。一つ又はそれより多くのICチップ100がプローブ110内に収容され得ることは意図される。第一及び第二の端子(T1及びT2)は、SOI ICチップ100の物理ピン(physical pin)又は完全にSOI ICチップ100内の信号ノードになり得る。
【0015】
ここでも同じSOIチップ100上のT/Rスイッチ108は、送信の間、受信エレクトロニクス(receive electronics)を保護し、超音波プローブ108から受信される少なくとも一つの信号のために、超音波画像化システムに対して低インピダンスパス(経路)をもたらす。受信信号は、図3によって示されているシステムのように、超音波画像化システムに送信される。
【0016】
従って、本発明は、従来技術の超音波送信器回路(ゲートドライバ、低雑音増幅器、電力増幅器、絶縁ダイオード、及びT/Rスイッチ等)のビルディングブロックを単一のSOI上に組み込み、それら各々の機能を働かせる。更に、本発明によりもたらされるSOI集積は、新たな機能(例えば、電力低減のためのダイナミックバイアシング)が追加されることを可能にし、従来技術の送信器回路のいくつかの個別部品で全く不可能であるか、又は実際的でない新たな回路技術を可能にする。信号波形を合成するためのディジタル論理回路及び高電圧増幅を行うことに先行してアナログ領域(ドメイン)に合成信号波形を変換するための回路のような更なる回路が、SOIチップ内に設けられ得る。
【0017】
本発明の更なる実施例は、図3において示されているように医療関連状況の診断で支援するために医療用画像のような超音波画像を収集すると共に表示するための超音波画像化システム300をもたらしている。超音波画像化システム300は、上記のように高電圧超音波機能を実行するための少なくとも一つのSOIチップ100と、マルチプレクサ(図示略)と、圧電変換器アレイ302とを有する、超音波プローブのようなハンドヘルド超音波走査(スキャンニング)デバイス302を含んでいる。
【0018】
圧電変換器アレイ302は、20KHzと20MHzとの間の周波数帯域で超音波エネルギを放出する。超音波エネルギは、患者の体内の構造体及び組織によって反射されるので、反射エネルギは、マルチプレクサを介して各々のチャネルのためのエネルギデータを制御ユニット304に中継(リレイ)するアレイ302によって検出される。
【0019】
制御ユニット304は、理想的には、圧電変換器アレイ302の動作のための電力ももたらすハンドヘルド走査デバイス302とケーブル306を介して電気的に通信する。制御ユニット304とハンドヘルド走査デバイス302との間の通信の他の手段が、ケーブル306に加えて、又はケーブル306の代わりに、使用されてもよい。このような通信の他の手段は、Bluetooth, IEEE 802.11a/b/c, 及び赤外線(infrared)等を含む。
【0020】
制御ユニット304は、様々な画像分析及び操作機能を行うように構成されるプロセッサ308と一つ又はそれより多くの記憶デバイス310とを含む。記憶デバイス310は、ハンドヘルド走査デバイス302から受信される未処理(生)データの一時記憶部と処理された画像の長期記憶部との両方をもたらす。記憶デバイス310は、ハードドライブ、書き込み可能CD-ROM又はDVD、メモリモジュール、光磁気ドライブ、及び磁気媒体のうちの何れかの組み合わせであってもよい。制御ユニット304は、超音波画像を表示するためのCRT又はLCDスクリーンのようなディスプレイデバイス312に更に接続される。ここでもオペレータがコマンドを制御ユニット304に発行することを可能にする一つ又はそれより多くのユーザ入力デバイス314がもたらされる。
【0021】
マルチプレクサは、少なくとも一つのSOI ICチップ100内に設けられ得ることが規定される。システム300の代わりの実施例において、少なくとも一つのSOI ICチップ100は制御ユニット304内に位置される。この実施例において、マルチプレクサは、ハンドヘルド超音波走査デバイス302内に位置される。
【0022】
本発明の上記実施例は、限定ではなく例示を意図するものであり、本発明の全ての実施例を表すことを意図するものではない。この法で文字通り且つ同等に認識される請求項においてもたらされる本発明の範囲を逸脱することなく様々な修正例及び変形例が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】超音波画像化システムのブロック図である。
【図2】本発明による超音波画像化システムの高電圧超音波機能を実現するための単一のSOI集積チップのブロック図である。
【図3】超音波画像化システムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像化システムのための集積回路であって、前記集積回路は、
前記超音波画像化システムによって生成される低電圧信号を受信するための第一の端子と、
高電圧信号を得るために前記低電圧信号を増幅するための手段と、
前記超音波画像化システムの超音波プローブに対して前記高電圧信号を送信するための第二の端子と
を有する集積回路。
【請求項2】
前記超音波プローブから受信される少なくとも一つの信号のために前記超音波画像化システムに対して低インピダンスパスをもたらすためのスイッチを更に有する請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記集積回路は、シリコン・オン・インシュレータ技術を使用して製造される請求項1に記載の集積回路。
【請求項4】
前記集積回路は集積チップとしてパッケージングされる請求項1に記載の集積回路。
【請求項5】
前記増幅するための手段は、低雑音前置増幅器、ゲートドライバ、及び電力増幅器を有する請求項1に記載の集積回路。
【請求項6】
前記超音波プローブは圧電変換器アレイを含む請求項1に記載の集積回路。
【請求項7】
前記高電圧信号は約200Vppである請求項1に記載の集積回路。
【請求項8】
超音波画像化システムであって、
前記超音波画像化システムによって生成される低電圧信号を受信するための第一の端子と、
高電圧信号を得るために前記低電圧信号を増幅するための手段と、
前記超音波画像化システムの超音波プローブに対して前記高電圧信号を送信するための第二の端子と
を有する少なくとも一つの集積回路
を有する超音波画像化システム。
【請求項9】
前記超音波プローブから受信される少なくとも一つの信号のために前記超音波画像化システムに対して低インピダンスパスをもたらすためのスイッチを更に有する請求項8に記載の超音波画像化システム。
【請求項10】
前記集積回路は、シリコン・オン・インシュレータ技術を使用して製造される請求項8に記載の超音波画像化システム。
【請求項11】
前記集積回路は集積チップとしてパッケージングされる請求項8に記載の超音波画像化システム。
【請求項12】
前記増幅するための手段は、低雑音前置増幅器、ゲートドライバ、及び電力増幅器を有する請求項8に記載の超音波画像化システム。
【請求項13】
前記超音波プローブは圧電変換器アレイを含む請求項8に記載の超音波画像化システム。
【請求項14】
前記高電圧信号は約200Vppである請求項8に記載の超音波画像化システム。
【請求項15】
超音波画像化システムのためのSOI集積チップであって、前記SOI集積チップは、
第一の端子と、
高電圧信号を得るために前記第一の端子によって受信される低電圧信号を増幅するための少なくとも一つの増幅器と、
前記超音波画像化システムの超音波プローブに対して前記高電圧信号を送信するための第二の端子と
を有するSOI集積チップ。
【請求項16】
前記超音波プローブから受信される少なくとも一つの信号のために前記超音波画像化システムに対して低インピダンスパスをもたらすためのスイッチを更に有する請求項15に記載のSOI集積チップ。
【請求項17】
前記少なくとも一つの増幅器は、ゲートドライバ及び電力増幅器を有する請求項15に記載のSOI集積チップ。
【請求項18】
前記超音波プローブは圧電変換器アレイを含む請求項15に記載のSOI集積チップ。
【請求項19】
前記高電圧信号は約200Vppである請求項15に記載のSOI集積チップ。
【請求項20】
前記低電圧信号はアナログ及びディジタル信号のうちの少なくとも一つになる請求項15に記載のSOI集積チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−512168(P2008−512168A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530832(P2007−530832)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際出願番号】PCT/IB2005/052939
【国際公開番号】WO2006/030355
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】