説明

高電極境界表面積を備えたバッテリ

本発明による電気化学バッテリ電池は、高率放電容量を改善するために高度な電極境界表面積を有し、電極の形状は、電池の大量生産に適した高品質で信頼性のある高速製造を容易にする。固体物電極の境界面は、境界表面積を増大させ半径方向に延びるローブを有する。ローブは、鋭利なコーナーを有さず、ローブ間に形成されたその凹型領域は広く開口しており、セパレータと他の電極との間に空隙を残すことなく、セパレータの組み立て及び他の電極の凹型領域への挿入を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学電池バッテリに関し、特に正電極と負電極との間に大きな電極境界表面積を備えた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池を含むバッテリは、電子装置用の電源として使用される。理想のバッテリは、安価で、電力レベル、温度、又は使用条件に関係なく無限の容量を有するものであろう。これはまた、無限の保存寿命を有し、全ての条件の下で安全で、ユーザが誤使用又は悪用することが不可能なものであろう。このような理想のバッテリは不可能であり、バッテリの製造業者はこの理想に近づくバッテリを継続して設計している。実際のバッテリにおいては、バッテリ性能に関連して、理想のバッテリ特性の中で行う必要があるトレードオフ及び妥協点が存在する。従って、バッテリにより電源が供給されることになる電子装置の要件は、バッテリ及び電池設計において重要な要因である。例えば、多くの装置がバッテリボックスを有しており、これが1つ又は複数のバッテリのサイズ及び形状を制約し、1つ又は複数のバッテリの放電特性は、予測される使用条件下で装置を動作させるのに十分なものでなければならない。
【0003】
製造者は、電子装置の性能と機能の数を向上させるよう継続的に努力している。これにより、長い放電寿命(高容量)、長い保存寿命、耐漏洩性、及び製造の容易さなどの、他の望ましいバッテリ性能特性における受け入れがたい犠牲を伴うことなく、より高出力を提供するバッテリへの増大する要求が生じることになる。この増大する出力要件の傾向は、消費者が取り替え可能なバッテリ付きの携帯装置におい顕著である。
【0004】
バッテリはその理論容量の何分の一かだけを出力することができ、この割合(放電効率)は放電率が増大すると減少するので、高いバッテリ容量及び長い放電寿命を達成することは、高出力のために必要とされる高放電率に対して特に問題にしている。バッテリ及びこれらが収容する電池の放電効率に対して寄与する多くの要因がある。1つの要因は、電極間の境界表面積である。一般に、境界表面積が増大すると、電流密度、内部抵抗、集中分極化、及び放電効率に影響する可能性のある他の特性に対して好ましい効果がある。しかしながら、この境界表面積を増大させることは、活性材料及び理論上の放電容量の減少を犠牲にして成立する場合が多い。大きな電極境界表面積を備えた電池の設計では、活性材料の必要な低減、不活性成分の増加、及びこれ自体では性能が改善されない高価な材料の増加、並びに理論上の容量を低下させるか又は改善を相殺する何らかの他の変化を最小限にすることが望ましい。
【0005】
幾つかの家庭用バッテリは、高出力用途に特に好適な活性材料及び/又は電極を使用する。実施例としては、1次リチウムバッテリ及び充電式(2次)ニッケル/カドミウムバッテリを含む。これらのバッテリには、比較的高価であるか、取り扱いに特別な要件があるか、又は使用済みバッテリの廃棄で環境問題を提起する材料が使用されることが多い。一般に、高率/高出力用途では高度な境界表面積が望ましいので、これらのバッテリは、螺旋状に巻かれた電極設計を有することが多い。しかしながら、このような設計は通常、セパレータと集電器とによって費やされるより多くの内部容積があり、ボビン式設計よりも製造が困難で高コストである。
【0006】
装置がこれらの出力要件を超えない場合には、アルカリ二酸化亜鉛/マンガンバッテリを使用することによりこれらの問題を解決することができる。高出力装置の電源として好適なものとするために、アルカリバッテリの高出力性能を改善する必要性がある。
【0007】
ボビン形構成を備えた円筒形アルカリZn/MnO2電池では、電極境界表面積を増大させることによって、高率放電特性を改善することができる。この形式の典型的な市販の電池は、缶に隣接して配置された正電極を有する。この正電極(カソード)は、基本的に平滑で円形の内部表面を備えた中空円筒形状を有し、その内部にセパレータと負電極(アノード)とが配置されている。正電極の内部表面を平滑でないように変えることによって、電極境界表面積を増やすことができる。これを行うための1つの好都合な方法は、使用されている典型的な電池製造プロセスと互換性があるが、垂直に走る(すなわち、正電極が缶に組み込まれると缶側壁に平行な)波形を用いて正電極面を波形にすることである。一般的に、表面積が大きいほどより良好な高率の放電容量になる。一般にカソードの厚さが減少すると、これが正電極の分極化を減少させる傾向となるので、高率放電容量を更に改善することができる。
【0008】
電極境界面の増大によってアルカリバッテリの高出力性能を改善することがこれまで取り組まれてきた。米国特許第5,869,205号、第6,074,781号、及び第6,342,317号に実施例を見出すことができる。しかしながら、これらの引例の各々には以下のような1つ又はそれ以上の欠点がある。
【0009】
集電器の突起部が複数の同極の電極の各々に延びなければならないときには、電池の製造は困難である。これは、各集電器の突起部が、電池と集電器の両方の配向を必要とする、複数の電極の1つと整列しなければならないことを意味する。加えて、複数の集電器の突起部が必要とされるときは、単一の集電器の突起部で十分である電池の設計と比較して、活性材料の容積が減少し、集電器の容積全体の増大が可能でなければならない。
【0010】
典型的なセパレータ材料(例えば、高分子フィルムや織布又は不織布の紙又は布)のストリップ又はシート形態での使用は、カソード内のキャビティの表面に共形のセパレータ製造が困難であることに起因して、実際的ではない場合がある。電極の1つの境界面に対するスプレー式セパレータの適用でさえ困難となる可能性がある。鋭利なコーナー及び垂直でない境界面もまた、製造上望ましい高速度でアノードがキャビティを完全に満たすことを困難にする可能性がある。
【0011】
第2の電極の境界面から第1の電極の活性材料までの距離を最大にすることによって放電効率を最大にすると、結果として得られる第1の電極形状には、電池製造中に以下のような種々の問題が生じる可能性がある。すなわち、(1)第1の電極の全体の境界表面が電極とセパレータの間に空隙が残ることなくセパレータによってカバーされるように、セパレータを挿入することが困難であること、(2)セパレータを第1の電極表面に接して保持して、第2の電極の挿入の前、途中、及び挿入後にギャップが生じないようにすることが困難であること、(3)高速の電池組み立て中に第2の電極とセパレータとの間にエアポケットが形成されるのを防ぐことである。このような電極の形状はまた、電極表面から延びる比較的脆弱なローブ又は突起部を含む傾向があり、電極形成及び取り扱い時、並びに電池コンテナへの電極及びセパレータの組み立ての間及び後において破損を生じやすい。
【0012】
直径が小さい電池(例えば、AA/R6及びAAA/R03サイズ)は、利用可能なスペースがより一層限られており、電極寸法を小さくする必要があるので、特に上記の問題の影響を受けやすい。
【0013】
上記の原理を鑑みて、本発明の目的は、安価で製造が容易であり、高容量で、予測された温度及び使用条件下で良好に機能し、保存寿命が長く、安全で、ユーザの誤使用又は悪用の結果故障しにくい電気化学バッテリ電池を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、理論上の容量、中間及び低率の放電性能、並びに他の望ましいバッテリ電池特性に対する悪影響を最低限にする、高率/高出力放電性能が改良されたバッテリ電池を提供することである。
【0015】
また、高境界表面積を有する電極を備えた経済的なバッテリ電池を提供することも同様に本発明の目的である。
【0016】
高電極境界表面積を有する電池設計の上記問題に照らして、ボビン形式電極構成を備え、高速大量生産が可能な高電極境界表面積を有する、経済的で信頼性のあるアルカリ二酸化亜鉛/マンガンバッテリ電池を提供することが本発明の別の目的である。
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,869,205号公報
【特許文献2】米国特許第6,074,781号公報
【特許文献3】米国特許第6,342,317号公報
【特許文献4】国際特許出願WO01/11703A1公報
【特許文献5】国際特許出願WO99/00270公報
【特許文献6】国際特許出願WO00/79622A1公報
【発明の開示】
【0018】
本発明の電気化学バッテリ電池によって、上記の目的に対処され、従来技術の上記の欠点が克服される。本発明は、電気化学バッテリ電池に関する。電池は、直立側壁を備えたハウジングと、第1の活性材料を含む第1の電極と、第2の活性材料を含み、第1の電極内に配置された第2の電極と、前記第1と第2の電極との間に配置されたセパレータと、電解質とを備える。第1と第2の電極の少なくとも一方は固体物を含み、その表面が第1と第2の電極の他方が配置されるキャビティの表面を定める。キャビティの表面は、半径方向に延びる複数のローブを有し、該ローブは固体電極体の表面に複数の凹型領域及び凸型領域を形成し、各凸型領域の半径は0.030インチ(0.76mm)より小さい半径が無く、各凹型領域の半径は0.030インチ(0.76mm)より小さい半径が無い。
【0019】
本発明の実施形態は、同様に固体物を有する第3の電極を有することができる。このような実施形態では、第3の電極は、第1の電極と同じ極性のものであり、第1と第3の電極が第2の電極が内部に配置されるキャビティを定めるように、第2の電極内に配置することができる。第1の電極はキャビティの外部表面を構成し、第3の電極はキャビティの内部表面を構成する。別のこのような実施形態では、第3の電極は第2の電極と同じ極性のものであり、第2と第3の電極が第1の電極が内部に配置されるキャビティを定めるように、第1の電極の外側に配置することができる。この実施形態では、第3の電極はキャビティの外部表面を構成し、第2の電極はキャビティの内部表面を構成する。
【0020】
本発明の別の実施形態では、第1の電極は固体物であり、その外部表面の形状はハウジングの直立壁の形状と共形である。第1の電極の内部表面は、半径方向内側に延びる、凹型領域を形成するローブを有する。第2の電極は第1の電極のキャビティ内に配置され、第1の電極とセパレータ内のキャビティの形状によって定められた外形を有する。
【0021】
別の実施形態では、第2の電極は固体物であり、第2の電極の外部表面とハウジングの直立壁は第1の電極が配置される内部にキャビティを定める。第2の電極は、第2の電極の外部表面に複数の凹型領域を形成する、半径方向外側に延びる複数のローブを含む。第1の電極の外部形状と内部形状は、ハウジングの直立壁の形状、及び第2の電極の外部表面とセパレータとの外部形状によってそれぞれ定められる。
【0022】
本発明の更に別の実施形態では、第1の電極は最小半径方向厚さd2を備えた固体物を含む。第1の電極の各ローブは幅d1を有し、ベースとローブの端部間の半径方向の半分の距離の位置でローブの半径方向の中心線と垂直である。比率d1:d2は、2.5:1より大きいが8.1:1より大きくはない。
本発明の別の実施形態は、直立側壁を備えたハウジングと、二酸化マンガンから構成される第1の活性材料を含む第1の電極と、亜鉛から構成される第2の活性材料を含む第2の電極と、前記第1と第2の電極の間に配置されるセパレータと、水酸化カリウム水溶液から構成される電解質とを備える一次電気化学電池バッテリである。少なくとも第1の電極は固体物であり、その内部表面は第2の電極が配置されるキャビティの表面を定める。キャビティの表面は、複数の凹型領域及び凸型領域を形成する、半径方向に延びる複数のローブを含む。各固体物の電極ローブは、0.030インチ(0.76mm)より小さい半径がない凸型の表面を有する。ベースから開口端部までの半径方向距離が増大しても、凹型領域の幅は増大しない。各第1の電極ローブでは、ローブの幅(第1の電極の表面上の2点間で測定され、この2点の各々が、電池の長手方向軸から第1の電極の最も外側の内部表面までの半径方向距離と、電池の長手方向軸から第1の電極の最も内側の内部表面までの半径方向距離との平均値に等しい電池の長手方向軸からの半径方向距離)と第1の電極の最小半径方向厚さの比率は、少なくとも2.5:1であるが8.1:1より大きくはない。
【0023】
本発明の利点の中で、高電極境界表面積を備えた電気化学バッテリ電池の高速製造の簡便化がある。これは固体電極体の凹型境界面の半径が0.030インチ(0.76mm)より大きくないときに達成される。これにより、狭すぎて適切に挿入できないか又はセパレータを適用できない、あるいは高速の製造速度で他の電極材料を適切に充填できないコーナーが回避される。セパレータ及び他の電極の材料がこれらの凹型領域に適切に挿入されない場合には、電池の内部抵抗を増大させ、電流密度及び他の場所への集中分極化を高め、放電効率を低下させることができるギャップが存在してもよい。電極間の境界でのセパレータへの損傷、又はセパレータの不均一性、あるいは不十分なコーティングが存在する場合もあり、これは電池の製造中又は使用中に不均一な放電又は内部短絡を生じる結果となる可能性がある。狭いコーナーを避けることにより、組み立て中及びその後に、セパレータと電極の間にギャップが生成されるのを防ぐのに役立つことができる。セパレータの材料は、以前の形状に戻ろうとする傾向があり、これらの境界面で電極の形状と正確に共形とはならない可能性があり、元々ギャップが存在しなかった場合でもギャップが発生する原因となる。
【0024】
本発明の利点はまた、各固体物の外部電極ローブでは、隣接するローブの端部までの半径方向距離が増大すると、半径方向の中心線からローブの表面までの垂直方向の距離が増大する場合に認識される。これはまた、上述と同様の方法で、電極とセパレータの組み立て、及びギャップと電池欠陥の回避を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のこれら及び他の機能、利点、並びに目的は、以下の明細書、請求項、及び添付図面を参照することによって当業者には更に理解され評価されるであろう。
【0026】
本明細書で特に定義されていない限り、本明細書で使用される用語は、電気化学バッテリ電池の当業者に理解される標準的な意味である。本明細書で特に指定されない限り以下の定義及び関係が使用される。
「固体電極体」とは、電池に組み立てられると、集電器、セパレータ、又は他の電極の支持がなくても、セパレータを介して電池内で他の電極と接続される電極表面形状を維持することができる電極を意味する。固体電極体はゲル化した電極を含まない。
「内部」、「外部」、「内側」、及び「外側」は、電池の長手方向軸を基準とし、電池が対称でない場合、該長手方向軸は、電極の長手方向の末端の位置で電池の長手方向寸法に垂直な断面の領域の中心を通る。
「ローブ」とは、構成要素の材料特性、電極の多孔性、及び同様のものに起因する電極表面の通常の変動を含まない、電極の表面からの突起部を意味する。
「半径方向の中心線」とは、電池の長手方向軸から放射状に広がり、該長手方向軸の法線である直線を意味する。
「境界面」とは、セパレータを介して反対の極性の電極に隣接する電極の表面を意味し、「境界表面積」とは、固体電極で測定された境界面の全領域を意味する(両方の電極が固体の場合、2つの固体電極間の境界表面積は、2つのうちの大きい方であり、第3の電極がある場合には、電池の電極境界表面積は、電池の相反する極性の電極間の境界表面積の合計である)。
「電極容積」は、電極内の細孔を含めた電極の境界面内に含まれる容積である。
「ローブベース」とは、隣接するローブとローブとが接するローブの一部分である。
「ローブ先端」は、ローブのベースから離れているローブの端部である。
「開口端部」は、凹型領域を形成するローブの先端間にある、電極表面の凹型領域の部分である。
第1の電極は、第2の電極の半径方向外側に配置され、第3の電極は、存在する場合には、最も内側の電極又は最も外側の電極とすることができ、図面には以下の寸法が示される。
1−第1の電極が固体物のときは、第2の電極が同様に固体物であるか否かにかかわらず第1の電極の最も外側の内部表面までの電池の中心からの半径距離であり、また、第2の電極が固体物であり第1の電極が固体物でないときには、第2の電極の最も外側の内部表面までの電池の中心からの半径距離である。
2−第1の電極が固体物のときは、第2の電極が同様に固体物であるか否かにかかわらず第1の電極のローブの最も内側の内部表面までの電池の中心からの半径距離であり、また、第2の電極が固体物であり第1の電極が固体物でないときには、第2の電極の最も内側の内部表面までの電池の中心からの半径方向距離である。
1−電池の中心からの半径方向距離が各々(r1+r2)/2である、ローブの表面上の2点間で測定された第1の電極のローブの幅である。
2−第1の電極の最小半径方向厚さである。
1a−第1の電極の内部表面の凹型部分の最小半径である。
1b−第1の電極の内部表面の凸型部分の最小半径である。
2a−第2の電極の内部表面の凹型部分の最小半径である。
2b−第2の電極の内部表面の凸型部分の最小半径である。
1−第1の電極のローブの中心線からローブ表面までの垂直方向の距離である。
2−第2の電極のローブの中心線からローブ表面までの垂直方向の距離である。
【0027】
図1を参照すると、従来の電気化学バッテリ電池10が示されている。電池10は側壁12を備えた缶から構成されるハウジングと、閉塞底端部14と、開放頂端部16とを含む。第1の端子カバー18は、缶の底部14に溶接されるか又は他の方法で取り付けられる。もしくは、缶底部14は、第1の端子として機能し且つセパレータカバーを不要とするために、第1の端子カバー18の形状を含むように形成してもよい。缶の開放頂端部16に組み込まれるのは、カバーと、第2の端子カバー30を有するシール組立体である。プラスチックフィルムのラベル20又は他のジャケットは、缶側壁12の外部表面の周りに形成することができる。ラベル20は、第1の端子カバー18及び第2の端子カバー30の周縁部にわたって延びることができる。第1の(外側の)電極22は、缶の内部表面の周りに形成される。第1の電極22は、缶の一部分と直接接触し、缶は第1の集電器として機能して、第1の電極22と第1の端子カバー18との間の電気的接触を形成する。第2の(内側の)電極26は、第1の電極22のキャビティ内に配置され、第1の電極22と第2の電極26との間にセパレータ24を備えている。第2の集電器は、第2の端子カバー30から第2の電極26内に延びて、第2の電極26とカバー30との間の電気的接触を形成する。環状シール32は缶の開口端部16内に配置され、缶内に電極材料及び電解質を収納する。内側のカバー34は、シール32のための圧縮支持を提供し、電池10からの材料の漏洩に対する所望のレベルの耐性を達成する。シール32はまた、第2の端子カバー30を缶側壁12から電気的に絶縁する。
【0028】
図2は、図1の線II−IIに沿った電池10の断面図である。典型的なアルカリ二酸化亜鉛/マンガン電池では、第1の電極22は固体物から構成される。第1の電極22は、内部表面がほぼ平滑な円筒形状を有する。第1の電極22の外部表面は、缶側壁12の内部表面の形状とほぼ共形である。第1の電極22の外部表面は、缶側壁12と直接接触することができ、又は、例えば電気絶縁性フィルムのシートを使用して側壁12から離間して配置してもよい。第1の電極22はまた、キャビティを定める内部表面を有する。第2の電極26は、第1の電極22の内部表面によって定められた円筒形キャビティ内に配置される。セパレータ24は、図1に示されるように第1の電極22と第2の電極26との間に配置される。典型的なアルカリ二酸化亜鉛/マンガン電池では、第2の電極26は固体物ではないが、液体又はゲルなどの流動性材料から構成され、第1の電極22及びセパレータ24の後に電池内部に挿入されなければならない。
【0029】
図3は、図2と同様であるが、大きな電極境界表面積を備えた電気化学バッテリ電池110の断面図である。従来の電池10の第1の電極22と同様の平滑な円筒形内部表面を有するのではなく、電池110の第1の電極122は、半径方向に内側に突出する複数のローブ123を含む。第1の電極22の内部表面が円形断面を有する電池10とは対照的に、電池110のローブ23は、第1の電極122の内部表面の周囲長を増大させるのに役立つ。これにより、セパレータ124を介して第2の電極126と接続される第1の電極122の内部表面の面積が増大する。隣接するローブ123は、第1の電極122の内部表面に凹型領域を生成する。第2の電極126は、セパレータ124と共に第1の電極122の内部表面の形状によって一般に定められる外形を有する。第2の電極126が固体物の場合の実施形態では、第2の電極126は、半径方向外側に延びる複数のローブ127を有する。
【0030】
第1の電極122が固体物のときには、ローブ123の各々は、図3に示されるように同じ寸法を有するか、あるいはローブ123は異なる形状及び/又はサイズを有することができる。第1の電極122の隣接するローブ123間の凹型領域の各々は、少なくとも1つの半径R1aを含む。図3は、ローブ123間の各凹型領域において同じサイズの単一半径R1aを示すが、別の実施形態では、凹型領域は、各々1つよりも多い半径R1aを有していてもよい。各第1の電極の凹型領域における半径R1aの数に関係なく、0.030インチ(0.76mm)より小さい半径R1aはない。これにより、高速組み立てプロセス中でさえもセパレータ124又はローブ123に損傷を与えず、またセパレータ124と電極122及び126との間にギャップを形成することなく、セパレータ124及び第2の電極126の両方をローブ123間の凹型領域に好適に挿入することが容易になる。0.060インチ(1.52mm)より小さな半径R1aがないときには更に製造が容易になる。同様に、第2の電極126が固体物のときには、第2の電極126は複数のローブ127を含み、該ローブは同じ寸法を有するか、又は異なる形状及び/又はサイズを有することができ、第2の電極126の隣接するローブ127間に複数の凹型領域が形成される。
【0031】
各ローブ123は、電池110の長手方向軸36から延びる半径方向の中心線を有する。半径方向の中心線に垂直で該半径方向の中心線から第1の電極122の内部表面までの距離w1は、長手方向軸36からの半径方向距離が大きくなるにつれて増大する。これもまた、隣接する第1の電極のローブ123間の凹型領域へのセパレータ124及び第2の電極126の好適な挿入を容易にする。
大きな電極境界表面積を備える別の電池が図4に示され、断面は図3と類似している。図4の電池210は、第1の電極222と第2の電極226のサイズ及び形状、これらの対応するローブ223及び227、並びにセパレータ224を除けば、図3の電池110に類似している。電池210では、ローブ223の凹型端部の半径R1bは、電池110と比較して実質的に増大していた。電池210の半径R1bは少なくとも0.030インチ(0.76mm)である。これはセパレータ224の組み立てを更に容易にし、セパレータ224と電極222及び226との間のギャップを無くし、セパレータ224及びローブ223の両方に対する損傷を回避する。半径R1bが少なくとも0.060インチ(1.52mm)であると電池の製造は更に容易になる。図3の実施形態と同様に、第1の電極のローブ223は全て同じ寸法にすることができ、あるいはローブ223は、異なる形状及び/又はサイズであってもよい。電池210は、電池110に比べて小さな電極境界表面積を有するが、このような表面積の減少は、大規模製造の許容速度で高品質の信頼性のある電池を作るためには必要とすることができる。
【0032】
図4に示された実施形態の別の変形形態では、第2の電極226が固体物で、第1の電極222は固体物ではない。第1の電極222は、第2の電極226及びセパレータ224の後でハウジングに挿入される。更に別の変形形態では、両方の電極が固体物である。いずれの電極も最初に缶に挿入することができ、あるいはこれらの電極間にセパレータ224を用いて両電極を共に挿入してもよい。
【0033】
第2の電極226が固体物であるときには、第2の電極226の外部表面と直立缶壁12の内部表面とは、第1の電極222が配置されるキャビティを定める。第2の電極226は、複数の半径方向外側に延びるローブ227を含む。各ローブの端部は、少なくとも1つの半径R2bを有する。隣接するローブ227は、第2の電極226の外部表面に複数の凹型領域を形成する。第1の電極222が固体物でないときには、第1の電極222の内部形状は、セパレータ224と共に第2の電極226の外部表面の形状によって一般に定められる。隣接する第2の電極のローブ227間の凹型領域の各々は、少なくとも1つの半径R2aを有し、第1の電極222が固体物であるか否かによらず、各半径R2aは少なくとも0.030インチ(0.76mm)である。各ローブ227は、電池210の長手方向軸36から延びる半径方向の中心線を有する。長手方向軸36からの半径方向距離が大きくなるにつれ、半径方向中心線に垂直で半径方向の中心線から第2の電極226の外部表面までの距離w2は小さくなる。ローブ227とこれらの間に形成された凹型領域は、同一の寸法を有することができ、又は異なる形状及び/又はサイズであってもよい。
【0034】
図5から図9は、本発明の更に別の実施形態を示す。これらの全ては図3及び図4と同様の断面図である。電池310、410、510、610、及び710は、それぞれ第1の電極322、422、522、622、及び722と、それぞれ第1の電極のローブ323、423、523、623、及び723と、それぞれセパレータ324、424、524、624、及び724と、それぞれ第2の電極326、426、526、626、及び726と、それぞれ第2の電極のローブ327、427、527、627、及び727とを有する。電池110及び210と同様に、電池310、410、510、610、及び710のいずれか又は両方の電極は固体物とすることができる。
【0035】
本明細書で図示及び説明されたように、電気化学バッテリ電池は、円筒形のアルカリ電池であるが、本発明の教示は、他の電気化学システムのバッテリ電池の種々の形式並びに種々のサイズ及び構成のバッテリ電池に適用することができる。
【0036】
以下は、更に考慮しなければならない相互作用はあるが、本発明による電池を設計する上での有益な一般的ガイドラインである。
(1)負電極と正電極の容積比率は、負電極と正電極の活性材料の理論容量の所望の比率に基づくべきである。これは通常、安全性、漏洩、及び放電性能基準に基づいて個別に設定される。
(2)最良の高出力/高率放電特性に対する電極境界表面積を最大化する。
(3)大きな電極境界表面積の結果としての高出力/高率放電特性の改善は、必要とされるセパレータの容積の増大と、対応する活性材料の容積の減少によって相殺されることになる。
(4)高出力/高率放電特性の改善は、固体電極が強化されなければならない場合(例えば結合剤追加、あるいは電極の配合を変えることによって)、活性材料の容積の減少により相殺される可能性がある。
(5)電極境界表面積が、所望の高出力/高率の性能レベルを達成するのに必要とされるよりも増大した場合には、特に低出力/低率放電で容量が低下することになる。
【0037】
上記のガイドライン(3)によれば、電極境界表面積を増大させることによる改善可能な高率の放電容量は、電極境界表面積を対象範囲とするために必要なセパレータの量(及び容積)が増大するので、活性材料の量が減少することによって部分的に相殺される。セパレータの容積が増大した効果は、放電率が低いときに極めて明らかであり、この場合、放電効率が非常に良好で、放電容量を決定する際に電池内の活性材料の量がより重要な要因である。境界表面積が増大すると比較的低率での放電容量が減少し、これは、減少した活性材料の容積に起因する容量損失が、大きな電極境界表面積及び放電効率の改善によって得られた少量の容量よりも大きいことによる。多くの民生用アルカリ電池が広範な範囲の割合(例えば、約20mAから1000mA及びこれ以上)にわたって電池を放電する、多種多様の装置に使用されるので、表面積の増大とセパレータ容積の増大が均衡していることが望ましい場合が多い。また、セパレータの容積増大を最小限に抑えることは、特に高出力の放電を必要とする装置を対象としないバッテリの形式において更に重要である。
【0038】
本発明は、種々のセパレータの種類と、挿入及び組み立て並びに適用のプロセスとを用いることができる。以下は、材料、形式、及びプロセスの選定の一般的な検討事項である。材料の種類は、使用されることになる電気化学システムの電池において意図されるセパレータ機能を実行するのに好適なものでなければならない。活性材料が最大容積の材料の利用を可能とするために、セパレータ材料の量は最小限にすべきである。電極境界表面積の所与の増加に必要な追加のセパレータの量は、幾つかの方法で最小にすることができる。セパレータでの折り重ね、並びにセパレータ及び電池内でのセパレータと他の絶縁体との間の重なりは、最小限にされるべきであり、セパレータはできるだけ薄くすべきである。セパレータ材料の特性、並びにセパレータを製造して電池に組み立てるプロセスによって課せられる制約がある。例えば、大きな境界面を備えた第1の電極の形状が更に複雑になると、セパレータを平坦なシートで形成するときに、セパレータのより多くの折り重ねを必要とする場合がある。セパレータが過度に薄い場合には、セパレータを介した短絡が発生する可能性があるので、製造者は、円滑な電極境界面を備えた従来の電池においてセパレータの厚さの限界に挑戦することが多い。大きな境界表面積を備えた電池においてセパレータが共形でなければならない電極縁部及びより小さな半径は、必要な最小セパレータ厚さが増す傾向がある。第1の電極のキャビティが円滑な円形形状でない場合は、セパレータとセパレータ挿入工具との間隙がより小さいことがあるので、好適な材料及びプロセスの選定に関して追加の制約が課せられる。本発明は必ずしも特定のセパレータの材料、形態、又は組み立てプロセス、アプリケーション、又は電池への挿入(セパレータ組み立てとして以下に言及される)を必要としないので、上記の検討事項及び他の利点並びに欠点は考慮されなければならない。例えば、セパレータの材料がシートの形態である場合、第1の電極のキャビティ形状により緊密に適合させて、セパレータが電池に挿入される前にセパレータの折り重なり容積を縮小するようセパレータを予成形することには、利点と欠点とがある。正電極内のキャビティの形状に緊密に適合させるため、セパレータを完全に均一な厚さで成形(例えば熱成形)することは別の選択肢である。第1の電極が缶内に収められる前か後に、第1の電極の内部表面上へのスプレーコーティングも更に別の選択肢である。
【0039】
セパレータの材料、形態、及び組み立てプロセスに関係なく、セパレータが配置され且つ共形でなければならない第1の電極のキャビティの形状及び寸法を考慮する必要がある。セパレータの組み立てを容易にするこうした設計上の特徴は、電極境界表面積を減少させる場合が多い。例えば、電極境界表面積を最大にするためには、境界面の形状は、より多くの突起部又はローブを有する傾向となり、凸型又は突出部上のコーナーがより鋭利であり、凹型又は陥入部の半径がより小さく、突出部間の開口領域がより狭くなる。反対に、セパレータ容積を最小化してセパレータの組み立てを容易にする最適条件は、平滑な表面を含む傾向となり、鋭利なコーナーが無く、境界面の全ての湾曲部の半径が可能な限り大きく、セパレータの組み立て、挿入、又は適用に最大限の間隙をもたらす大きな開口領域を有している。境界表面積の最大化とセパレータ容積の最小化のための設計と同様に、境界表面積の最大化とセパレータの材料及び組み立てプロセスの選択との間には均衡が存在する。
【0040】
大きな電極境界表面積を備えた電池設計における別の検討事項は、境界面でエアポケット又は空隙がなく、セパレータと電極の各々とを密着させることである。空隙により、特に高率での放電の間に、空隙近傍にある電極内の活性材料が不完全に使用される結果となる可能性がある。セパレータと電極間の空隙により、少なくとも1つの電極数及び/又は電池内の電極高さにおいて整合する最適数よりも少ない電極数に減少する場合もある。また、空隙により、1つの電極がセパレータに対して空隙位置で力を加える場合には、セパレータが裂ける可能性もある。好適なセパレータの組み立てを容易にする同様の要因はまた、空隙を回避することに寄与するものでもある。
【0041】
固体電極の生産性及び信頼性もまた、大きな電極境界表面積を備える電池の設計の検討事項である。複雑な形状は成形より困難で高コストであり、製造の管理がより難しい。鋭利な突出部はより脆弱で、製造プロセス並びに電池の取り扱い及び使用中に材料がより破損しやすい。電極の細い領域もまた脆弱であり破損しやすい。一般に、好適なセパレータ組み立てに寄与する電極境界面形状の同じ特性が、電極製造及び組み立てにも有利である。
【0042】
上記の関係を考慮すると、本発明の電気化学バッテリ電池は、大きな電極境界表面積を有し、また、製造に対して実用的で、出荷、取り扱い、使用、及び誤用などの標準的な条件下で信頼性のある高率の放電特性とを有する。本発明の1つの態様では、個体電極の境界面の任意の凹型領域の半径は、0.030インチ(0.76mm)以上である。別の態様では、各ローブは、半径が0.30インチ(0.76mm)以上の凸型表面を有する。別の態様では、ローブの幅は、ベースから先端まで広がることはなく、連続的に減少する場合がある。これらの特徴の各々は、電極の生産性、電極の耐久性、及びセパレータの組み立てに寄与するが、達成可能な最大電極境界表面積を制限する。
【0043】
一般に、従来の電池に対して十分に高率で高出力の放電特性を与えるのに好適で望ましいものであることが明らかになった構成及び材料(電極、電解質、及び集電器用のものを含む)は、本発明に従って作られた電池に対しても好適で望ましいものとなる傾向がある。
【0044】
上記で検討されたように、境界表面積を増大させる突起部又はローブを備えた電極は、通常、図1及び図2に示される電池10の電極よりも脆弱である。一部の電池は、使用される材料特性により、高水準の強度と構造的一体性を備えた固体電極を有する。換言すれば、固体電極は強度及び構造的一体性が低いことになる。固体電極は、離散的な粒子の混合物を含む場合、例えば、活性金属及び剛直な凝集体に共に焼結された材料からなる固体シートよりも脆弱である。幾つかの要因がこのような電極の強度に寄与する可能性があり、これらの各々は、電極強度を高めるよう改質することができる。これは、例えばLR6/AA型電池である水溶性アルカリ電解質を使用したZn/MnO2電池のカソードの以下の実施例に示されている。開示された原理は同様に、粒子材料の混合物から構成される固体電極を備えた、本発明の電池及び他の電池などの他の形式の電池にも適用することができる。
【0045】
通常のアルカリZn/MnO2電池のカソードは、MnO2活性材料と、電極の導電性を高めるために使用されるグラファイト粒子との混合物を含む。MnO2は、電解二酸化マンガン(EMD)である場合が多い。アルカリ電池の好適なグレードのEMDは、Kerr−McGee Chemical Corp.(米国オークランド州オクラホマ市)及びErachem Comilog,Inc.(米国メリーランド州マルチモア)から入手可能である。好ましくは、EMDは、2001年2月15日に公開された国際特許出願WO01/11703A1に開示されている、カリウム含有量が200ppm未満である高電位EMD(pH電圧が少なくとも0.86ボルト)である。グラファイトは、アルカリグレードのグラファイト粉体、発泡グラファイト、又はこれらの混合物とすることができる。好適な発泡グラファイトは、1999年1月6日に公開された国際特許出願WO99/00270に従って、Superior Graphite Co.(米国イリノイ州シカゴ)から入手可能である。また、混合物は通常水分を含み(電解質塩を含む場合と含まない場合がある)、また、何らかの方法で性能を改善するために、少量(通常2重量パーセント未満)の他の材料を含んでもよい。このような性能強化材料の実施例は、国際特許出願WO00/79622A1に開示されたニオブドープのTiO2と硫酸バリウムとを含む。
【0046】
使用に好適なアルカリ電池のカソード混合物は、製造、出荷、保管、及び使用の間に、成形されたカソードの表面から有意な量の電極材料を失うことなく、共に結合しておくのに十分な強度を有する。アルカリ電池カソードは、単独又は組み合わせによる幾つかの方法で強化することができる。カソードの最小厚さを増大させることがカソードをより強くすることになる。
【0047】
幾つかの電池では、カソードを強化するためにカソード混合物に結合剤が付加される。結合剤はまた、別の望ましい幾つかの特性を有する場合がある。例えば、結合剤は、カソードが成形されるときの潤滑剤として機能することができ、又は電池内に電解質を保持して放電中のイオンの移動を促進することができる。一般には、導電性の活性材料の量を最大にするために、最小の量(又はゼロ)の結合剤が使用される。結合剤が使用されるときには、該結合剤は一般に、正電極混合物の固体成分に対し、約0.1から6重量パーセントであり、更に一般的には0.2から2重量パーセントである。アルカリZn/MO2カソードの好適な結合剤は、アクリル酸、アクリル酸塩、テトラフルオロエチレン、ステアリン酸カルシウム、アクリル酸/スルホン酸ナトリウムコポリマー、並びに、スチレンとブタジエン、イソプレン、エチレンブチレン、及びエチレンプロピレンの1つ又はそれ以上とのコポリマーなどといった材料のモノマーやポリマーを含む。結合剤材料は単独又は組み合わせて使用することができる。CARBOPOL(登録商標)940(B.F.Goodrichの100%酸形態のアクリル酸)、Coathylene HA 1681(Hoechst Celaneseのポリエチレン)、KRATON(登録商標) G1702(Kraton ポリmers Businessのスチレン、エチレン、及びプロピレンの二重ブロックコポリマー)、ポリ(アクリル酸−co−4−スチレンスルホン酸ナトリウム)は、良好な電極強度を与えることが分かった。CARBOPOL(登録商標)940と、TEFLON(登録商標)T30B又はTEFLON(登録商標)6C(E.I. du Pont de Nemours & Co.のテトラフルオロエチレン)との混合物などの混合結合剤が有利とすることができる。これら2つの材料の混合物を用いるときは、1:4から4:1のCARBOPOL(登録商標)対TEFLON(登録商標)の重量比が有利である。一般に、この範囲内では比率が大きいほどカソードの強度が強い。例えば、CARBOPOL(登録商標)対TEFLON(登録商標)の重量比が3:1のカソードは、1:1又は1:3のカソードよりも強い。CARBOPOL(登録商標)/TEFLON(登録商標)の混合物を用いるときには、カソードの結合剤レベルは、カソード混合物の固体の非溶解成分に基づいて、重量パーセントで約0.2から2、好ましくは0.2から1とすることができる。
【0048】
カソードはまた、該カソード表面にコーティングを施すことによって強化することができる。結合剤として使用するのに適した材料は、この目的で使用することができる。コーティングは、カソード内のある範囲にまで浸透させて、表面下のカソード材料を更に結合することができる。コーティング材料はまた、電解質を吸収する傾向があり、放電中にアノード/カソード境界を湿潤状態に保つのを助けることができる。コーティング材料はまた、ある程度までセパレータ材料として機能し、セパレータとカソードとの間で機械的接触を改善することができる。ポリ(アクリル酸−co−4−スチレンスルホン酸ナトリウム)は、これらの利点の全てを有する。
【0049】
混合物の水分量は、成形前のアルカリ電池カソード中の固体非溶解成分の重量に基づき、一般に約1.5から8.0パーセントであり、電極強度に影響を与える。衝撃成形カソードを作る際の典型的な使用範囲は6から8パーセントである。リング成形で使用するための典型的な範囲は、1.5から6パーセントであり、2から4パーセントでは強度の改善が得られると共に、良好なカソード成形が更に保証される。
【0050】
カソード混合物中の固体充填割合もまた、カソードの強度の要因である。固体充填割合は、固体成分の(重量/実密度)の合計を、成形されたカソードの実際の容積で除算することによって求められる。典型的なアルカリ電池円筒形カソードでの充填は、約60パーセントから約80パーセントの範囲に及ぶ可能性がある。高い充填レベルは、より多くの活性材料を提供するが、水分のレベルが低下して電池内のイオンの移動が不十分となるので、高率放電では効率性が低下する。高率放電能力を最大にするためには、比較的低い充填レベルが望ましいが、カソード強度を最大にするためには高充填レベルであることが望ましい。固体の充填は、通常約70から79パーセントであり、衝撃成形カソードでは72パーセントが最も一般的であり、リング成形カソードでは75から79パーセントが最も一般的である。固体充填が増加すると共にカソード強度は一般に増大するが、プロセスを考慮すると、高率のプロセスを用いて作られた電池に対して追加の制約が付加される可能性がある。幾つかの要因は固体の充填に影響を及ぼす可能性がある。これには、実密度、粒子内多孔度、固有表面積、及び粒子サイズと形状の分布などの成分材料特性;カソード成形中の混合物中の水分量;カソード成形中に加えられる力;使用される成形プロセス;及び固体成分のそれぞれの量が含まれる。MnO2として電解二酸化マンガン(EMD)を使用することができ、グラファイトとして発泡天然グラファイトを使用することができる。カソードの成形中に加えられる力は、成型方法(例えば、リング成形又は衝撃成形)、カソードの混合物の組成、カソードのサイズと形状、及び所望の固体充填に応じて変わる。一般的には、成形の力が大きいほど、達成可能な最大固体充填レベルまでカソード強度は強くなる。
【0051】
アルカリ電池のカソードは、一般に電池の長手方向軸の周りに対称に形成されるが、しかしながら、これらは、意図的、又は製造プロセスの変動性の結果として非対称的とすることができる。従って、長手方向軸に沿って電極形状が非対称の場合、本発明は、個々のローブ、凹型領域、及び凸型領域に適用することができる。本発明は、各ローブ、凹型領域、及び凸型領域に有利に適用される。同様に、長手方向軸に沿って電極形状が変化する場合、本発明は、長手方向軸に垂直な個々の断面に適用することができ、電池内のこのような断面の各々に有利に適用することができる。
【0052】
アルカリ電池のカソードを形成する2つの一般的な方法は、リング成形と衝撃成形である。リング成形では、1つ又はそれ以上(通常は3から5)のリングが形成され、次に積み重ねた状態(1つのリングが別のリングの上にある)で缶内に挿入される。缶と電極間で良好な物理的及び電気的接触を形成することが望ましい。これを達成するために、リングの外径を缶の内径よりわずかに大きくして締まり嵌めを形成することができ、あるいは、リングを缶よりわずかに小さくして挿入を容易にすることができ、その後内側及び/又は上面に力を加えることでリングをわずかに再成形し、カソード混合物を缶に対してしっかりと押しつける。衝撃成形では、所望の数量のカソード混合物を缶の底部に入れ、缶の中心に挿入されるラムを使用して所望の寸法にまで成形する。両方の方法に利点と欠点とがある。幾つかの電池では、リング成型されたカソードの方が衝撃成形されたカソードよりも好適な高率放電容量を与える。しかしながら、カソードリングは、成形と缶への挿入の間に処理されなければならず、一般に衝撃成形のために必要とするカソードに比べてより強い成形カソードを必要とする。より高い境界電極面領域を備えた電池の製作では、リング成形プロセスが別の欠点を有する可能性がある。形成された電極は通常、図1及び図2の電池10のような従来の電池の電極よりも脆弱であるので、上記で検討されたように電極を強化する他の手段が必要になる場合がある。電池内に複数の積み重ねられた電極リングが存在する場合には、全てのリングを表面が他の電極(例えばアノード)と一致するように配向させる必要がある可能性があり、電池の製造プロセスに複雑さが付加される。
【0053】
衝撃成形カソードは、缶内で成形され、個々に処理される必要がないので、必要とされる強度は一般にリング成形カソードよりもはるかに小さい。これは、バッテリの設計者が電極境界表面積を最大化することになる形状を選択する際の自由度を大きくすることができる。これはまた、結合剤を追加するなどの電池の放電容量に悪影響を与える可能性がある手段によってカソードを強化する必要性を最小限にするか又はその必要性を排除することができる。
【0054】
アルカリZn/MnO2電池のアノードは、ゲル化した亜鉛粒子の混合物を含む場合が多い。亜鉛は、粉体又はフレーク形態、あるいはこの2つの組み合わせとすることができる。ビスマス、インジウム、及びアルミニウムから構成されるアマルガム化されていない亜鉛合金が有利とすることができる。好ましくは約110ミクロンのd50を有する亜鉛粉体は、Umicore(ベルギー国ブリュッセル)から入手することができ、亜鉛フレーク(例えばグレード5454.3)は、Transmet Corp.(米国オハイオ州コロンバス)から入手することができる。また、アノードは、水、水酸化カリウム電解質、及びゲル化剤を含む。B.F.Goodrich Specialty Chemicals(米国オハイオ州クリーブランド)から入手されるCARBOPOL(登録商標)940などの100%酸形態のアクリル酸が、通常のゲル化剤である。また、少量の他の材料をアノードの混合物及び/又は電解質に添加して、電池内のガスの発生の最小化及び/又は放電特性の増強を行うことができる。このような材料の実施例はIn(OH)3、ZnO、及び珪酸ナトリウムを含む。
【0055】
一般に、完成した電池の電解質の全KOH濃度は、約36から約40重量パーセントとなる。良好な高率/高出力放電特性のためには、この範囲の低い部分が望ましいとすることができる。
【0056】
本発明のアルカリZn/MnO2電池のアノードは、任意の好適な方法で電池内に挿入することができる。アノードは、電池内に置かれたときに流動性を有することができ、重力を利用して流れてカソードとセパレータ内のキャビティを満たすようになる。また、アノードは、例えば押し出しによって圧力下で電池内に分配することができる。これは、アノードのキャビティをより完全に満たす傾向を示す場合があるが、特にセパレータとカソードの境界面との間に空隙が存在する場合には、セパレータに損傷を与えるリスクが高くなる可能性がある。
【0057】
本発明の別の実施形態では、上述の実施形態におけるように、第1の電極ではなく第2の電極を固体電極にすることができる。このような実施形態では、電池を組み立てる方法の変更を必要とする可能性がある。例えば、固体の第2の電極が最初に挿入される場合、第2の電極は所定位置に保持されなければならない可能性があり、一方、第1の電極は第2の電極と缶との間のキャビティ内に分配される。代替として、第1の電極を缶内に分配することができ、続いて第2の電極を挿入して、そこにセパレータを配置し、流動性のある第1の電極を上方に向けて、第2の電極と缶との間のキャビティを満たす。
【0058】
第1と第2の電極が両方とも固体物である本発明の更に別の実施形態において、流動性のある電極を固体にするときには、電極及びセパレータが電池内に組み立てられるまで、電極の一方を流動性にすることができる。あるいは、第1と第2の電極は、缶に挿入する前にセパレータを使用して共に組み立てることができる。このような実施形態では、1つの電極の境界面は、別の電極の境界面の形状と緊密に適合し、セパレータと両方の電極との間に空隙がなく密接な接触を形成することになる。電極とセパレータを缶の外側に組み立てるためには、第1の電極は、セパレータと第2の電極の周りで互いに嵌合される2つ又はそれ以上の区域から構成することができる。別の方法では、両方の電極の境界面を垂直方向に先細として、一方の電極を他方の電極のキャビティに容易に挿入することができる。
【0059】
本発明の電池はまた、少なくとも1つの境界面が複数のローブを有する場合に、本発明に従って同軸に配置された1つ又はそれ以上の追加電極を備え、境界表面積を大きくすることができる。追加の電極は、第1の電極の外側又は第2の電極の内側に配置することができ、あるいは2つの追加電極のうち1つを第1の電極の外側、及び1つを第2の電極の内側で使用することができる。電極は交番する極性を有することができる。このタイプの構成は、アノードとカソードとの間の全境界表面積を更に増加させる。
【0060】
本発明で使用される集電器は、好適なものとして承認された任意の集電器とすることができる。集電器は、電池の内部環境では安定しており、好適な導電性を有し、他の電極と良好な電気的接触を有することになる。外側の電極が固体物のときには、缶は集電器として機能する場合が多い。集電器もまた、部分的に電極材料、形状、及び電池内での位置に応じて形状と数が変化する別の構造とすることができる。例えば、1つ又はそれ以上のピン、爪、ストリップ、又はスクリーン、あるいはこれらの組み合わせを用いることができる。
【0061】
以下の表1は、図3から図9による、比率がd1:d2の表面積及び容積の電極を備えた、例示的なLR6/AAサイズの電池の電極寸法をまとめたものである。








表1

【0062】
表1の電池はLR6/AAサイズの電池であるが、本発明は、LR03/AAA、LR14/C、及びLR20/Dのサイズを含めた、他の電池サイズの使用にも同様に好適である。これらの電池サイズにおける典型的な缶の内径(及びカソードの外径)は、LR6/AAの約12.7から14.0mmと比較して、約10から約35mmの範囲である。一般に、カソードの直径が大きな電池の設計にはより自由度がある。例えば、電極表面のローブの数を増やすことによって、電極境界表面積を増加させることが可能である。結果として高速製造につながらない表面が無い場合があるローブの数には制限がある。本発明による電池で使用可能なローブの数は、カソードの外径が大きくなるほど増加する。例えば、LR03/AAA電池では、3つを超えるローブを備えた電池を製造するのは難しく、LR20/Dでは6つ又はそれ以上のローブが実現可能である。
【0063】
本発明に従って製造された電池では、カソードの最小半径方向厚さ(d2)は一般に、図2の電池10などの電池のカソードの半径方向の厚さより小さくなる。d2が大きすぎる場合には、高速の放電効率の有意な改善を実現するのに十分な電極境界表面積が増大することにより、理論的な入力容量が過度に少なくなるポイント及び/又はカソードに対するアノードの比率が安全性に必要な範囲外となるポイントまで、アノードの利用可能な容積が減少することになる。d2が小さすぎる場合には、カソードが非常に脆弱になる。d2が設定されると、電池の中心からローブの端部及びベースまでの半径方向距離(それぞれr2及びr1)は、過剰な追加セパレータを必要とせずに、又はセパレータの組み立て及び電池へのアノードの適切な分配を困難にする形状を生成することなく、境界表面積の十分な増加をもたらすように選定されなければならない。LR6/AAサイズの電池では、d2は有利には少なくとも0.40mmであるが1.20mmより大きくはなく、r2は有利には少なくとも3.20mmであるが3.70mmより大きくはなく、r1は有利には少なくとも5.60mmであるが6.30mmより大きくはない。
【0064】
本発明のLR6/AA電池では通常、カソード容積に対する電極境界表面積の比率は約0.45mm2:1mm3から0.60mm2:1mm3であるが、有利には約0.49mm2:1mm3から0.60mm2:1mm3である。比率が大きすぎると電池の製造が困難になる。比率が小さすぎると、境界表面上のローブのない電池全体の境界表面積の増加が少なくなる。
【0065】
放電効率を最大にするためには、カソード全体にわたるアノードとの境界面からのカソード深さが極めて均一で浅いことが望ましいことになる。図2と同様の電池のカソードと比べて、高い境界表面積並びにこのような形状のカソードを有する電池を製造することは、上に開示されたように極めて困難なものとなる。従って、製造上の検討事項は、カソードの境界表面からのカソード深さの均一性に関して実用上の制約を課すことになる。ベースから先端までの均一なローブの幅及びd1:d2比率が約2:1であることは、放電効率を最大にするためには理想的である。上記で説明され図3から図9に示されたように、製造上実際的な電池のローブ幅は均一ではない。このような電池のd1:d2比率は、少なくとも2.5:1であることが多い。少なくとも3.0:1のd1:d2比率を有する電池はより製造が容易であり、少なくとも4.0:1の比率を有する電池が更に容易に製造される。衝撃成形されたカソードは、電池の外側で処理する必要がないので、d2は衝撃成形電池におけるよりも小さくすることができ、d1:d2≧6.5、又はd1:d2≧7.0の電池でも実際に可能である。d1:d2が8.1:1を超えると、境界表面積の増加によって得られる高率放電の改善は、カソードの不均一な放電により所望以上に相殺される可能性がある。
【0066】
本発明の特徴及び利点は以下の実施例に即して例証される。
【実施例1】
【0067】
従来のLR6/AAアルカリZnMnO2電池を、図1及び図2に示され、上述された設計を用いて作った。
重量比で17:1の電解二酸化マンガン(EMD)及び発泡グラファイトと、少量(それぞれ1重量パーセント未満)のBaSO4及びニオブ(Nb)ドープのTiO2と、7.8重量パーセントの45重量パーセントKOH水溶液と、1.6重量パーセントの脱イオン水とを共にブレンドしてカソード混合物を作った。カソードを内径が0.528インチ(13.4mm)のスチール缶に衝撃成形した。缶は、厚さが0.010インチ(0.254mm)であり、外側表面にニッケルメッキを施し、内側表面にグラファイトコーティングを被覆した。公称10.8gのカソード混合物を各電池内に入れ、高さ1.674インチ(42.52mm)、内径0.370インチ(9.40mm)に成形し、73.2容積パーセント固体充填した。成形カソードは、半径方向厚さが0.079インチ(2.01mm)、内側表面の面積が1.946平方インチ(1255mm2)、カソード容積が0.1867立方インチ(3060mm3)であった。
【0068】
カソードを缶に成形した後、セパレータを切断してほぼ円筒形状に成形し、カソードの内側表面と缶の底部とで形成されるキャビティに挿入した。セパレータは日本国高知県のニッポン高度紙工業の0.004インチ(0.10mm)厚さのグレードVLZ105製で、長さ2.244インチ(57.00mm)×高さ2.165インチ(54.99mm)であった。切断したセパレータを長さ方向に沿ってマンドレルに巻き取った。巻き取ったセパレータを底部位置で内側に折り畳み、カソードと缶底部の内側表面の側部及び底部を覆って共形となるようバスケット形状に成形した。成形したセパレータを加熱し、セパレータ層をシール密閉して、電池への挿入中に形状を維持するようにした。
【0069】
成形したセパレータを電池内に挿入した後、脱イオン水中で1.19gの37重量パーセントKOHを各電池に加えてセパレータを浸漬した。
【0070】
以下のものを共にブレンドしてアノードのゲル混合物を作った。(全て重量パーセント):69.00パーセントの亜鉛合金粉末、0.44パーセントのゲル化剤、29.39パーセントの電解質溶液、0.22重量パーセントのIn(OH)3、及び1.15重量パーセントの0.1NKOH。電解質は、40パーセント水性KOH(96.7パーセント)、ZnO(3.0パーセント)、及びケイ酸ナトリウム(0.3パーセント)を含んでいた。6.04gのアノード混合物を各電池のセパレータのキャビティ内に分配した。
【0071】
各電池のアノード対カソードの理論入力容量の公称比率は、EMDの想定の1.33電子放電に基づいて0.99:1であった。各電池(アノード、カソード、及びセパレータ)の公称全KOH濃度は37.3%であった。
【0072】
集電器の爪部、シール、及びカバーを含めたアノード集電器組立体を缶の開口端部に配置し、続いて負の端子カバーを配置することによって電池を閉じた。集電器組立体と端子カバーとを所定位置に保持し、缶上端部を内側方向にシール及び端子カバーの頂部を覆って圧着することによって電池をシールした。
【0073】
缶の底部に正の端子カバーを溶接し、缶の外側を覆って電池の端部の上に延びるラベルを配置して電池を完成させた。
【実施例2】
【0074】
以下のことを除いて、実施例1で説明した方法で電池を作った。カソードの断面形状は図4の電池210のものと対応していた。表1は主要寸法及び寸法関係(電池210)をまとめている。実施例1に比べて電極境界表面積がより大きいので、より多くのセパレータが必要であった。切断されたセパレータは、長さ3.07インチ(77.97mm)×高さ2.165インチ(54.99mm)であり、電解質の量はセパレータ挿入後に追加され、1.29gにまで増加した。
【実施例3】
【0075】
次のことを除いて実施例2で説明した方法で電池を作った。カソードの断面形状は図5の電池310のものと対応しており、電極寸法は表1の電池310に示された寸法であった。切断されたセパレータは、長さ3.07インチ(77.97mm)×高さ2.165インチ(54.99mm)であり、電解質の量はセパレータ挿入後に追加され、1.29gであった。
【実施例4】
【0076】
次のことを除いて実施例2で説明した方法で電池を作った。カソードの断面形状は図9の電池710のものと対応しており、電極寸法は表1の電池710に示された寸法であった。切断されたセパレータは、長さ3.07インチ(77.97mm)×高さ2.165インチ(54.99mm)であり、電解質の量はセパレータ挿入後に追加され、1.29gであった。
【実施例5】
【0077】
実施例1、3、及び4の電池を、21℃で1.0Vまで1000ミリワットで連続放電した。その他の実施例1、2、及び3の電池を、21℃で1.0Vまで1000ミリアンペアで連続放電した。結果を下記の表2にまとめている。実施例1の比較電池の表面領域及び持続時間を100%と設定し、カソード表面領域と放電持続時間を正規化(指標化)している。
表2

【0078】
表2に示されるように、カソードの境界表面積は、実施例1の従来の電池の表面積を上回り、実施例2で43%、実施例3で28%、及び実施例4で37%だけ増加した。上述のように、増大した表面領域の利点は、セパレータ容積の増加と、電池に入れることができる対応する活性材料の減少により部分的に相殺される。
【実施例6】
【0079】
次のことを除いて実施例2で説明した方法で電池を作った。カソードの断面形状は図3の電池110のものと対応しており、電極の寸法は表1の110に示された寸法であった。加工上の問題を確認した。カソードローブ123の端部における鋭利なコーナーのため、セパレータ124をカソードの内側表面に該コーナーで共形にして、維持させることは困難であった。結果として、これらの領域のカソード123とセパレータの間に空間すなわちギャップが存在しており、全てのアノード材料をアノードのキャビティに入れることは難しく、有効アノード/カソード境界表面積は減少した。これらの問題は低水準の電池の発生率が高くなる原因になり、これらの電池の放電容量は試験しなかった。最善の結果として、鋭利な端部の電極ローブを備える電池は、ローブ表面に対して容易に共形となるセパレータの材料を有する。実施例1から4で使用されたような弾性のある(すなわち最初の形状に跳ね返る傾向がある)セパレータの材料では、丸い電極ローブの端部、特に半径が0.030インチ(0.76mm)未満の凸型表面が無いローブは、実施例6で確認された処理問題を回避するのに有用である。半径が0.060インチ(1.52mm)未満の凸型表面が無いときの、加工上の問題が更に低減した。
【実施例7】
【0080】
LR20/Dサイズの電池を実施例3の電池と同様の方法で作った。カソードの形状は、図4の電池210の形状と類似しており、以下の公称寸法を有していた。r1=0.549インチ(13.94mm)、r2=0.316インチ(8.03mm)、d2=0.090インチ(2.29mm)、R1a=0.1505インチ(3.82mm)、R1b=0.248インチ(6.30mm)、カソード高さ=2.035インチ(51.69mm)。これは、1.421立方インチ(23,298mm3)のカソードの容積で7.020平方インチ(4,529mm2)の境界表面積、すなわち内径が0.867インチ(22.02mm)の円筒形カソードを備えた従来のLR20/Dサイズ電池の境界表面積の127%のという結果になった。実施例7の電池の電極寸法が最適化されず、セパレータが適正に形成されず、また、カソードローブのベースでセパレータとカソードの間に約0.05インチ(1.27mm)のギャップが残存しているにもかかわらず、これらの電池の1.0Vまでの1000mAの放電持続時間は、平均して従来電池の約116%であった。
【0081】
上の実施例で実証されたように、本発明に従って作られた電池は、従来の電池を超える改善された高率の放電持続時間をもたらし、これを行うための従来の方法の欠点を回避する。
【0082】
本発明の実施者及び当業者は、開示された概念の精神から逸脱することなく本発明に対して様々な変更及び改良を為し得ることを理解するであろう。与えられる保護範囲は、特許請求の範囲により、また、法的に許される解釈の外延により判断されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】従来のバッテリ電池の長手方向軸に沿った電池の断面図である。
【図2】線II−IIに沿った図1のバッテリ電池の断面図である。
【図3】高電極境界表面積を有する第1のバッテリ電池の断面図である。
【図4】高電極境界表面積を有する第2のバッテリ電池の断面図である。
【図5】高電極境界表面積を有する第3のバッテリ電池の断面図である。
【図6】高電極境界表面積を有する第4のバッテリ電池の断面図である。
【図7】高電極境界表面積を有する第5のバッテリ電池の断面図である。
【図8】高電極境界表面積を有する第6のバッテリ電池の断面図である。
【図9】高電極境界表面積を有する第7のバッテリ電池の断面図である。
【符号の説明】
【0084】
12 側壁
20 ラベル
36 電池の長手方向軸
210 電池
222 第1の電極
223 ローブ
224 セパレータ
226 第2の電極
227 ローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直立側壁を有するハウジングと、
第1の活性材料を含む第1の電極と、
第2の活性材料を含み、前記第1の電極内に配置された第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間に配置されたセパレータと、
電解質と、
を備え、
前記第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方は固体電極体を含み、前記第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方は前記第1の電極及び第2の電極の他方が配置されるキャビティの表面を定める表面を有し、前記キャビティの表面は前記固体電極体の表面に複数の凹型領域及び凸型領域を形成する、半径方向に延びる複数のローブを有し、各凸型領域は0.030インチより小さい半径が無く、各凹型領域は0.030インチより小さい半径が無いことを特徴とする電気化学バッテリ電池。
【請求項2】
各凹型面は0.060インチより小さい半径が無いことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1と第2の電極の一方だけが固体電極体を含むことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記第1の電極及び第2の電極の両方が固体電極体を含むことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記電池は前記第1の電極の極性と同じ極性を有する第3の電極を備え、前記第1と第3の電極の両方は、前記第2の電極が内部に配置されるキャビティを定める固体電極体を含み、前記第1の電極は前記キャビティの外部表面を構成し、前記第3の電極は前記キャビティの内部表面を構成することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項6】
前記第3の電極は、前記キャビティの内部表面に複数の凹型領域を形成する、半径方向に延びる複数のローブを含むことを特徴とする請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記電池は前記第2の電極の極性と同じ極性を有する第3の電極を備え、前記第2と第3の電極の両方は、前記第1の電極が内部に配置されるキャビティを定める固体電極体を含み、前記第3の電極は前記キャビティの外部表面を構成し、前記第2の電極は前記キャビティの内部表面を構成することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項8】
前記第2の電極だけが前記キャビティの外部表面に複数の凹型領域を形成する、半径方向に延びる複数のローブを含むことを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記第1の電極は、最小半径方向厚さd2を備えた固体物を含み、該第1の電極の各ローブが、前記第1の電極の表面上の2点間で測定された厚さd1を有し、前記2点の各々は、前記電池の長手方向軸から前記第1の電極の最も外側の内部表面までの半径方向距離と前記電池の長手方向軸から前記第1の電極の最も内側の内部表面までの半径方向距離との平均値に等しい前記電池の長手方向軸からの半径方向距離であり、比率d1:d2が2.5:1より大きいが8.1:1より大きくないことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項10】
1:d2が少なくとも3.0:1であることを特徴とする請求項9に記載の電池。
【請求項11】
1:d2が少なくとも4.0:1であることを特徴とする請求項9に記載の電池。
【請求項12】
前記第1の電極は単一の固体物を含み、d1:d2が少なくとも6.5.0:1であることを特徴とする請求項11に記載の電池。
【請求項13】
前記第1と第2の活性材料の一方が二酸化マンガンから構成され、前記第1と第2の活性材料の他方が亜鉛から構成され、前記電解質が水酸化カリウムの水溶液から構成されることを特徴とする請求項9に記載の電池。
【請求項14】
前記第1の電極は外部表面と内部表面とを有する固体物から構成され、前記第1の電極の外部表面が前記ハウジングの直立側壁の形状と共形の形状を有し、前記第2の電極は前記第1の電極のキャビティ内に配置され、該キャビティの形状と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される前記セパレータとによって定められる外形を有し、前記第1の電極は複数のローブを含み、各ローブが半径方向に内側に延びて、前記第1の電極の内部表面に複数の凹型領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項15】
前記電池は一次電池であり、前記第1の活性材料は二酸化マンガンから構成され、前記第2の活性材料は亜鉛から構成され、前記電解質は水酸化カリウムの水溶液から構成され、前記第1の電極のローブによって形成された各凹型領域は、前記電池の長手方向軸から延びる半径方向の中心線と、前記半径方向の中心線に垂直で前記半径方向の中心線から隣接する第1の電極ローブの前記外部表面までの距離w1とを有し、前記距離w1は、前記電池の長手方向軸からの半径方向距離が増大するときに減少しないことを特徴とする請求項14に記載の電池。
【請求項16】
前記距離w1は、前記電池の長手方向軸からの半径方向距離が増大するときに増大することを特徴とする請求項15に記載の電池。
【請求項17】
前記第1の電極は正電極であることを特徴とする請求項15に記載の電池。
【請求項18】
前記電池は円筒形形状であり、前記第1の電極の外径は12.7mmと14.0mmを含めたこれらの間であることを特徴とする請求項15に記載の電池。
【請求項19】
前記電池は、長手方向軸、前記長手方向軸から前記第1の電極の最も外側の内部表面までの半径方向距離r1、前記長手方向軸から前記第1の電極の最も内側の内部表面までの半径方向距離r2、及び前記第1の電極の最も外側の内部表面と前記外部表面との間の最小の半径方向厚さd2を有するLR6サイズの円筒形アルカリ二酸化亜鉛/マンガン電池である請求項18に記載の電池。
【請求項20】
前記第1の電極は、r1が少なくとも5.60mmで且つ6.30mm以下であり、r2が少なくとも3.20mmで且つ3.70mm以下であり、d2が少なくとも0.40mmで且つ1.20mm以下である、2つ又はそれ以上の電極リングのスタックを含むことを特徴とする請求項19に記載の電池。
【請求項21】
前記第1の電極は単一の固体物を含むことを特徴とする請求項14に記載の電池。
【請求項22】
前記第1の電極は2つ又はそれ以上の固体物のスタックを含むことを特徴とする請求項14に記載の電池。
【請求項23】
前記第2の電極は外部表面と内部表面とを有する固体物を含み、前記第2の電極の外部表面と前記ハウジングの直立壁とがキャビティを定め、前記第1の電極は、前記第2の電極の外部表面と前記ハウジングの直立壁とによって定められた前記キャビティ内に配置され、第2の電極の外部表面と前記第1及び第2の電極間に配置された前記セパレータとの形状によって定められた内部形状を有し、更に前記ハウジングの直立壁の形状によって定められた外部形状を有し、前記第2の電極は複数のローブを含み、各ローブは半径方向外側に延びて、且つ前記第2の電極の外部表面に複数の凹型領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項24】
前記電池は一次電池であり、前記第1の活性材料は二酸化マンガンから構成され、前記第2の活性材料は亜鉛から構成され、前記電解質は水酸化カリウムの水溶液から構成され、前記第2の電極のローブによって形成された各凹型領域は、前記電池の長手方向軸から延びる半径方向の中心線と、前記半径方向の中心線に垂直で前記半径方向の中心線から隣接する第2の電極ローブの前記外部表面までの距離w2とを有し、前記距離w2は、前記電池の長手方向軸からの半径方向距離が増大するときに増大しないことを特徴とする請求項23に記載の電池。
【請求項25】
前記距離w2は、前記電池の長手方向軸からの半径方向距離が増大するときに減少することを特徴とする請求項24に記載の電池。
【請求項26】
前記電池は、長手方向軸、前記長手方向軸から前記第2の電極の最も外側の外部表面までの半径方向距離r1、前記長手方向軸から前記第2の電極の最も内側の外部表面までの半径方向距離r2、及び前記第2の電極の前記最も外側の内部表面と前記外部表面との間の最小の半径方向厚さd2を有するLR6サイズの円筒形アルカリ二酸化亜鉛/マンガン電池である請求項24に記載の電池。
【請求項27】
1が少なくとも5.60mmで且つ6.30mm以下であり、r2が少なくとも3.20mmで且つ3.70mm以下であり、d2が少なくとも0.40mmで且つ1.20mm以下であることを特徴とする請求項26に記載の電池。
【請求項28】
前記第2の電極は正電極であることを特徴とする請求項24に記載の電池。
【請求項29】
前記電池は円筒形であり、前記第1の電極の外径は12.7mmと14.0mmを含めたこれらの間であることを特徴とする請求項24に記載の電池。
【請求項30】
直立側壁を有するハウジングと、
第1の活性材料を含む第1の電極と、
第2の活性材料を含み、前記第1の電極内に配置された第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間に配置されたセパレータと、
電解質と、
を備えた電気化学バッテリ電池であって、
前記電池は一次電池であり、前記第1の活性材料は二酸化マンガンから構成され、前記第2の活性材料は亜鉛から構成され、前記電解質は水酸化カリウムの水溶液から構成され、少なくとも前記第1の電極は外部表面と内部表面とを有する固体電極体を含み、前記第1の電極の内部表面は前記第2の電極が配置されるキャビティの表面を定め、前記キャビティの表面は、前記第1の電極の表面に複数の凹型領域及び凸型領域を形成する、各々がベース及び先端を有する半径方向に延びる複数のローブを含み、該凸型領域の各々は0.030インチより小さい半径が無く、前記凹型領域の各々は、ベースと、開口端部と、前記電池の長手方向軸から延びる半径方向の中心線と、前記半径方向の中心線に垂直な幅とを有し、前記ベースから前記開口端部までの前記半径方向の中心線に沿った距離が増大するときに前記凹型領域の幅は増加せず、前記第1の電極は、最小半径方向厚さd2を有し、各電極のローブは前記第1の電極の表面上の2点間で測定されたローブ幅d1を有し、前記2点の各々は前記電池の長手方向軸から前記第1の電極の最も外側の内部表面までの半径方向距離と、前記電池の長手方向軸から前記第1の電極の最も内側の内部表面までの半径方向距離との平均値に等しい前記電池の長手方向軸からの半径方向距離であり、比率d1:d2が2.5:1より大きいが8.1:1より大きくないことを特徴とする電気化学バッテリ電池。
【請求項31】
各凹型表面が0.060インチより小さい半径が無いことを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項32】
1:d2が少なくとも3.0:1であることを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項33】
1:d2が少なくとも4.0:1であることを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項34】
前記第1の電極は単一の固体物を含み、d1:d2が少なくとも6.5:1であることを特徴とする請求項33に記載の電池。
【請求項35】
前記第1の電極は固体物から構成され、前記第1の電極のローブによって形成された各凹型領域は、前記電池の長手方向軸から延びる半径方向の中心線と、前記半径方向の中心線に垂直で、前記半径方向の中心線から隣接する第1の電極ローブの前記外部表面までの距離w1とを有し、前記距離w1は、前記電池の長手方向軸からの半径方向距離が増大するときに減少しないことを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項36】
前記第1の電極は、単一の固体物から構成されることを特徴とする請求項35に記載の電池。
【請求項37】
前記第1の電極は、2つ又はそれ以上の固体物のスタックを含むことを特徴とする請求項35に記載の電池。
【請求項38】
前記距離w1は、前記電池の長手方向軸からの半径方向距離が増大するときに増大することを特徴とする請求項35に記載の電池。
【請求項39】
前記第2の電極は固体物から構成され、
前記第2の電極のローブによって形成された各凹型領域は、前記電池の長手方向軸から延びる半径方向の中心線と、前記半径方向の中心線に垂直で前記半径方向の中心線から隣接する第2の電極ローブの前記外部表面までの距離w2とを有し、前記距離w2は前記電池の長手方向軸からの半径方向距離が増大するときに増大しないことを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項40】
前記距離w2は、前記電池の長手方向軸からの半径方向距離が増大するときに減少することを特徴とする請求項39に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−500744(P2006−500744A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−538202(P2004−538202)
【出願日】平成15年9月17日(2003.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/029436
【国際公開番号】WO2004/027894
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(500034767)エヴァレディー バッテリー カンパニー インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】