説明

高VI粘度調整剤としてのポリメタクリレート

潤滑組成物は、潤滑粘度の油、および重量で0.5から10パーセントのポリ(メタ)アクリレート粘度調整剤ポリマーを含み、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粘度調整剤ポリマーは、(i)15重量パーセントから35重量パーセントモノマー単位の(メタ)アクリル酸メチル、(ii)0から10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜Cアルキル、(iii)50から85重量パーセントモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜C30アルキル、および(iv)0から10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の窒素含有モノマーを含む。そのような潤滑組成物は高い粘度指数を示し、向上した燃料経済性を内燃機関に付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される技術は、特に内燃機関用の、潤滑剤に高い粘度指数を付与する特定のポリメタクリレートに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルおよびメタクリルポリマーは潤滑組成物中に用いられることで知られている。例えば、1968年8月13日のCupperらの特許文献1は、粘度指数向上剤−分散剤添加剤として長鎖アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキル、アルキルが1から4の炭素原子を有するアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキル、およびアクリル酸またはメタクリル酸のポリマーを含む鉱油を含み、ポリマーの酸部分は1−ヒドロキシ−アルキル−2−アルキルまたはアルケニルイミダゾリンで中和されている潤滑組成物を開示している。短鎖のアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルは、通常はモノマー成分の重量を基準として約3から約15重量パーセントである。
【0003】
2003年8月26日のRoosらの特許文献2は、さらに精製することなく潤滑油中の添加剤として用いてよいポリマー組成物の合成のためのプロセスを開示している。特定の実施例において、85:15のDPMA:MMAのモノマー混合物が使用される。ここで、MMAはメタクリル酸メチルであり、DPMAは(登録商標)Dobanol 25L(Shell AG)とメタクリル酸メチルとの反応によって得られる。理論分子量は20,000g/molである。
【0004】
1989年9月19日のPennewissらの特許文献3は、石油系油分のための流動点降下添加剤として用いられるようにすることができるポリマーを開示している。前記ポリマーは、その中のコモノマーとして、(a)10から30モルパーセントのメタクリル酸メチル、(b)直鎖アルキル基を有し、アルキル基の中に16から30の炭素原子を有する、10から70モルパーセントのメタクリル酸アルキル、(c)直鎖アルキル基を有し、アルキル基の中に4から15の炭素原子を有する、および/または分岐アルキル基を有し、アルキル基の中に4から45の炭素原子を有する、10から80モルパーセントのメタクリル酸アルキル、ならびに(d)分散作用を有する、0から30モルパーセントのフリーラジカル的に重合可能な窒素含有モノマーを含む。
【0005】
2001年12月18日のSivikらの特許文献4は、(A)重量で約55から約99.9%の1つ以上のアクリル酸アルキルエステルモノマーであって、エステルのアルキル基の中に1から約24の炭素原子を含み、エステルの少なくとも約50モル%はエステルのアルキル基の中に少なくとも6の炭素原子を含む1つ以上のアクリル酸アルキルエステルモノマーと、(B)重量で約0.1%から約45%の少なくとも1つの(選ばれた)窒素含有モノマーとを反応させることによって調製される窒素含有共重合体を開示している。実施例において、容器に57.5部のメタクリル酸メチル、12.7部のメタクリル酸ブチル、それぞれ226.5部のC9〜11メタクリレート(metacrylate)[原文まま]およびC12〜15メタクリレート、4.22部のtert−ドデシルメルカプタン、および164.4部の85中性(neutral)パラフィン油を仕込み、その後に続いてVAZO−67および11.7![原文まま]部のN−(−3−(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミドを充填する。
【0006】
1999年10月19日のBryantらの特許文献5は上記に関連している。それは、(A)重量で約5%から約75%のアクリル酸アルキルエステルモノマーであって、アルキル基の中に1から11の炭素原子を含むアクリル酸アルキルエステルモノマー、(B)重量で約25%から約95%のアクリル酸アルキルエステルモノマーであって、アルキル基の中に12から約24の炭素原子を含むアクリル酸アルキルエステルモノマー、および(C)重量で約0.2%から約20%の窒素含有モノマーから誘導される単位を含むポリメタクリル酸エステル系の分散剤−粘度調整剤を開示している。
【0007】
2000年9月26日のSeebauerらの特許文献6は、潤滑油組成物のための粘度向上剤を開示している。共重合体は、(a)エステル基の中に約13から約19の炭素原子を含むメタクリル酸エステル、(b)エステル基の中に7から約12の炭素原子を含む特定のメタクリル酸エステル、ならびに(c)エステル基の中に2から約8の炭素原子を含むメタクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、および窒素含有ビニルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1つのモノマーから誘導される単位を含んでよい。モノマー(c)は、メタクリル酸メチルであってよい。モノマー(c)から誘導される群が存在するとき、それらはポリマー中に存在する単位の約0.2から約60モル%、または1から約25モル%を構成する。実施例において、280部のC12〜15メタクリレート、80部のメタクリル酸2−エチルヘキシル、および40部のメタクリル酸メチルからポリマーが調製される。
【0008】
従って、開示される技術は、潤滑剤に高い粘度指数を付与し、それによって特定の実施態様において向上した燃料経済性を提供する潤滑剤を得る問題に対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,397,146号明細書
【特許文献2】米国特許第6,610,802号明細書
【特許文献3】米国特許第4,867,894号明細書
【特許文献4】米国特許第6,331,603号明細書
【特許文献5】米国特許第6,969,068号明細書
【特許文献6】米国特許第6,124,249号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示される技術は、潤滑粘度の油、および重量で0.5から10パーセントのポリ(メタ)アクリレート粘度調整剤ポリマーを含む潤滑組成物を提供し、ポリ(メタ)アクリレート粘度調整剤ポリマーは、(i)15重量パーセント超から45重量パーセントモノマー単位の(メタ)アクリル酸メチル、(ii)0から10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜Cアルキル、(iii)50から85重量パーセント未満モノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜C30アルキル、および(iv)0から10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の窒素含有モノマーを含む。
【0011】
別の実施態様において、開示される技術は、潤滑粘度の油、および重量で0.5から30パーセントのポリ(メタ)アクリレート粘度調整剤ポリマーを含む潤滑組成物を提供し、ポリ(メタ)アクリレート粘度調整剤ポリマーは、(i)15重量パーセントから35重量パーセントモノマー単位の(メタ)アクリル酸メチル、(ii)0から10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜Cアルキル、(iii)50から85重量パーセントモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜C30アルキル、および(iv)0から10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の分散剤モノマーを含む。
【0012】
開示される技術は、内燃機関を潤滑するための方法も提供し、この方法は、該内燃機関にそのような潤滑組成物を供給することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
非限定的な例示として下記にさまざまな好ましい特徴および実施態様が記載される。
【0014】
潤滑粘度の油
本潤滑組成物は、潤滑粘度の油を含む。そのような油は、天然および合成の油、水素化分解、水素化、および水素化仕上げから誘導される油、未精製油、精製油、および再精製油、ならびにそれらの混合物を含む。
【0015】
本発明の潤滑剤を作る上で有用な天然の油は、動物油、植物油(例えばヒマシ油)、鉱物潤滑油、例えばパラフィン系、ナフテン系、パラフィン−ナフテン混合系の液体石油系油分および溶媒処理または酸処理された鉱物潤滑油、および石炭または頁岩あるいはそれらの混合物から誘導される油を含む。
【0016】
合成潤滑油は有用であり、炭化水素油、例えば重合、オリゴマー化、またはインターポリマー化したオレフィン(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレン共重合体);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、1−デセンの三量体またはオリゴマー、例えばポリ(1−デセン)、多くの場合にポリα−オレフィンと呼ばれるような材料、およびそれらの混合物;アルキル−ベンゼン(例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例えばビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル、およびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類縁体および同族体あるいはそれらの混合物を含む。他の合成潤滑油は、ポリオールエステル(例えばPriolube(登録商標)3970)、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えばリン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、またはポリマー化テトラヒドロフランを含む。合成油は、Fischer−Tropsch反応によって製造されてよく、通常は水素化異性化Fischer−Tropsch炭化水素またはワックスであってよい。一実施態様において、油は、Fischer−Tropschガスツーリキッド(gas−to−liquid)合成手順ならびに他のガスツーリキッド油によって調製されてよい。
【0017】
未精製油は、一般にさらに精製処理することなく(またはほとんどすることなく)天然または合成の原料から直接得られる油である。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製ステップにおいてさらに処理されたことを除けば、未精製油と同様である。精製技法は当分野において公知であり、溶剤抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、ろ過、パーコレーションなどを含む。再精製油は、再生油または再処理油として知られ、精製油を得るのに用いられるものと同様なプロセスによって得られ、多くの場合に消耗した添加剤および油分解生成物の除去を目的とする技法によってさらに処理される。
【0018】
潤滑粘度の油は、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesに規格が示されているようにも定義されてよい。5つの基油類は以下の通りである。I類(硫黄含有率>0.03重量%、および/または<90重量%飽和物、粘度指数80〜120);II類(硫黄含有率<0.03重量%、および>90重量%飽和物、粘度指数80〜120);III類(硫黄含有率<0.03重量%および>90重量%飽和物、粘度指数>120);IV類(すべてのポリアルファオレフィン(PAO));およびV類(I、II、IIIまたはIV類に含まれない他のすべて)。
【0019】
特定の実施態様において、潤滑粘度の油は、少なくとも120、または特定の実施態様において、少なくとも110、115、120、130または140の粘度指数を有する油を含んでよい。すなわち、油成分全体は、個々にはより低い粘度指数を有することがあるいくつかの油を含むさまざまな量の他の油をブレンドすることによって調製してよいが、調合物(特定の実施態様において、特定の添加剤によって持ち込まれることがある希釈剤油成分を含む)中に存在する油全体はこの大きさの粘度指数を有してよい。そのような粘度指数を有する油は、通常はAPI III類の油である。III類の油は、定義により最大0.03%の硫黄含有率および少なくとも90%の飽和物を有する鉱物系油であることも要求される。これらの追加の特徴は、特定の実施態様において本発明の油について存在してよいが、特定の実施態様において、粘度指数が規格どおりであるという前提条件で、油は、例えばより大きな硫黄含有率またはより低い飽和物含有率を有してよい。少量(例えば重量で50%未満または20または10または5または1パーセント未満、下限は例えば0、1、2、5または10パーセント)の非鉱油、例えばIV類およびV類も油全体が規格どおりの粘度指数を有する限り存在してよい。粘度指数は、いずれの添加剤の存在も別として、および粘度調整剤ポリマーの存在を別として油成分それ自体のものである。
【0020】
特に有用な油は、7.0mm−1未満、例えば2から6未満または5mm−1未満または3から5または3から4.5mm−1の100℃における動粘度を有してよい。適当な油は、低めの粘度の場合の100 Neutral(100N)油またはいくぶん高めの粘度の場合の150Nと指定されるものを含む。油は、粘度によって引き起こされる性能低下を最小にし、それによってエンジン中の燃料経済性を最大にするために、特に低温において適切に低い粘度を有することが望ましい。この理由で、上記に記載されているように高い粘度指数(ASTM D 2270)が望ましい。これらは、2.9mPa−s(cP)未満、または2.5未満もしくは1.8から2.3mPa−sの高せん断条件(ASTM D 4683)下で150℃における動的粘度を有する完全な調合物(粘度調整剤および他の添加剤を含む)を調製するのに適している基油である。これらの粘度パラメータを有する油は周知であり、市販されている。特に、精製油、例えば溶媒抽出油は、低VI成分、例えば芳香族またはナフテン成分が多かれ少なかれ除去され、主としてより高いVIパラフィン成分が残るため、通常はより高い(より良好な)粘度指数を有する。精製すると、通常はさまざまな他の好ましくない材料、例えば硫黄も除去される。
【0021】
存在する潤滑粘度の油の量は、通常は100重量%から粘度調整剤および他の機能添加剤の量の和を減じた後に残る残存量である。
【0022】
本潤滑組成物は、濃縮物および/または完全に調合された潤滑剤の形であってよい。本潤滑組成物(粘度調整剤ポリマーを含む)が濃縮物(別の油と組み合わされて全体または部分として完成形の潤滑剤を形成してよい)の形であるなら、潤滑粘度の油に対するおよび/または希釈剤油に対するポリマーのの比は重量で1:99から99:1または重量で80:20から10:90の範囲を含む。
【0023】
本技術の潤滑剤は、ポリ(メタ)アクリレート粘度調整剤ポリマーも含む。本明細書において用いられる表現「(メタ)アクリレート」などは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのどちらかあるいはそれらの混合物(あるいは状況が示すことがある対応する酸、アミド等)を指すと理解される。粘度調整剤ポリマーは、15重量パーセントから35重量パーセント、あるいは15重量パーセント超から45重量パーセントモノマー単位の(メタ)アクリル酸メチル、すなわちアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルモノマーから誘導される重合した単位、0から10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜Cアルキル、50から85重量パーセント、あるいは15から85重量パーセント未満のモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜C30(例えばC12〜15)アルキル、および0.5から10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の分散剤モノマーを含む。アルキル基は、直鎖または分岐、飽和または不飽和であってよい。特定の実施態様において、アルキル基のいくつかまたはすべては直鎖および飽和である。他のモノマー単位も存在してよい。
【0024】
ポリマー内の(メタ)アクリル酸メチル単位は、メタクリル酸メチルであってよく、ポリマーの15超から45重量パーセント、またはポリマーの15から35、または16から35、または17から40、または18から35、または18から30、または19から25、または20から25、または19から22重量パーセントの量で存在してよい。(メタ)アクリル酸C〜Cアルキル単位は、メタクリル酸ブチル単位であってよい。(メタ)アクリル酸C〜Cアルキル単位は、ポリマーの0から10重量パーセントまたは0.5から5パーセントまたは0.8から2または0から2パーセントで存在してよい。(メタ)アクリル酸C〜C30アルキル単位は、メタクリル酸C10〜C16アルキルまたはそれらの混合物、例えばメタクリル酸C12〜15アルキルまたはメタクリル酸ラウリル(すなわちn−ドデシル)であってよい。そのような単位は、ポリマーの50から85重量パーセント未満、またはポリマーの60から85未満、または65から85、または70から80、または70から80、または75から80重量パーセントで存在してよい。(メタ)アクリル酸C〜C30アルキルの上方量は、所定のポリマーについて100パーセントから他のモノマーの量、例えば80.5パーセントまたは81パーセントまたは84パーセントまたは85パーセントを減じることによって得られる量であってよい。
【0025】
粘度調整剤ポリマーは、0から10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の分散剤モノマーも含んでよく、分散剤モノマーは窒素含有モノマーであってよい。そのようなモノマーは、通常はポリマーに分散剤の性格を付与するために用いられ、従って時には分散剤粘度調整剤と呼ばれる種類のものである。窒素含有モノマーは、(メタ)アクリル系モノマー、例えばメタクリル酸エステルまたはメタクリルアミドであってよい。すなわち、アクリル部分との窒素含有部分の結合は窒素原子を介してであってよく、あるいは酸素原子を介してであってよく、その場合にはモノマーの窒素はモノマー単位のどこか他に位置している。窒素含有モノマーは、(メタ)アクリルモノマー以外、例えばビニル置換窒素複素環モノマーおよびビニル置換アミンであってよい。窒素含有モノマーは周知であり、例えば米国特許第6,331,603号に例が開示されている。適当なモノマーの中にはアクリル酸ジアルキルアミノアルキル、メタクリル酸ジアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド、ジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド、N−ターシャリーアルキルアクリルアミド、およびN−ターシャリーアルキルメタクリルアミドがあり、アルキル基またはアミノアルキル基は、独立に、1から8の炭素原子を含んでよい。窒素含有モノマーは、例えば、t−ブチルアクリルアミド、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、またはN−ビニルカプロラクタムであってよい。それは、4−フェニルアゾアニリン、4−アミノジフェニルアミン、2−アミノベンゾイミダール、3−ニトロアニリン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン、N−(4−アミノ−5−メトキシ−2−メチル−フェニル)−ベンズアミド、N−(4−アミノ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−ベンズアミド、N−(4−アミノ−2,5−ジエトキシ−フェニル)−ベンズアミド、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミド、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステル、およびN,N−ジメチルフェニレンジアミンを含む、国際公開第2005/087821号に開示されている芳香族アミンのいずれかにもとづく(メタ)アクリルアミドでもあってよい。
【0026】
あるいは、分散剤モノマーは、窒素または酸素含有基、例えばアミノ基またはヒドロキシ基で置換されたペンダントヒドロカルビル基を含むモノマーとして記載されてよい。酸素含有基を有する分散剤モノマーの例は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、例えばメタクリル酸ヒドロキシエチルである。
【0027】
窒素含有モノマーの量は、存在するなら、一般にポリマーの0.5から10重量パーセント、他の実施態様においては重量でポリマーの1から8、または2から6、または3から4パーセントである。分散剤モノマーは、ポリマーの油溶性特性を犠牲にすることなくポリマーおよびポリマーを含む潤滑剤に分散性を付与するだけでなく向上した粘度指数特性を付与する(すなわち「粘度指数増強」)ためにも使用してよい。
【0028】
ポリマーの重量平均分子量Mwは、20,000から1,000,000または100,000から500,000または200,000から500,000、または50,000から500,000、または250,000から450,000または200,000から450,000、または少なくとも200,000、または300,000から1,000,000であってよい。
【0029】
一実施態様において、本潤滑組成物は、重量で1から5パーセントの粘度調整剤ポリマーを含んでよく、粘度調整剤ポリマーは15から25重量パーセントのメタクリル酸メチルモノマー単位、60から84重量パーセントのメタクリル酸C12〜15アルキルモノマー単位、および1から8重量パーセントのメタクリル酸ジメチルアミノエチルモノマー単位を含む。任意選択として、(メタ)アクリル酸C2〜4アルキルのモノマー単位はなくてもよい。ポリマーは、200,000から500,000の重量平均分子量を有してよい。
【0030】
一実施態様において、ポリマーは、15超から45重量パーセントモノマー単位のメタクリル酸メチル、0から10重量パーセントモノマー単位の1つ以上のメタクリル酸C〜Cアルキル、50から83重量パーセント未満モノマー単位の1つ以上のメタクリル酸C10〜C16アルキル、および2から8重量パーセントモノマー単位の1つ以上の窒素含有メタクリルモノマーを含み、前記ポリマーは、約50,000から約500,000または200,000から500,000の重量平均分子量を有するポリメタクリル酸エステルポリマーであってよい。
【0031】
別の実施態様において、ポリマーは、19から30重量パーセント単位のメタクリル酸メチル、0.5から2重量パーセント単位のメタクリル酸ブチル、70から80重量パーセントのメタクリル酸C12〜15アルキル、および2から4重量パーセント単位のジメチルアミノエチルメタクリルアミドまたはジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを含み、300,000から400,000の重量平均分子量を有する。
【0032】
別の実施態様において、ポリマーは、18から30重量パーセントのメタクリル酸メチルモノマー単位;0.5から5重量パーセントのメタクリル酸ブチルモノマー単位;60から80.5重量パーセントのメタクリル酸ラウリルモノマー単位;および1から8重量パーセントのメタクリル酸ジメチルアミノプロピルモノマー単位を含む。
【0033】
さらに別の実施態様において、ポリマーは、18から30重量パーセントのメタクリル酸メチルモノマー単位;60から81重量パーセントのメタクリル酸ラウリルモノマー単位;および1から8重量パーセントのメタクリル酸ジメチルアミノエチルモノマー単位を含む。そのような実施態様において、ポリマーは、アクリル酸ブチル単位を含まないかまたは実質的に含まない。
【0034】
粘度調整剤は、公知の方法による(メタ)アクリル酸エステルモノマーのフリーラジカル重合によって調製してよい。これらの方法は、従来のフリーラジカル重合ならびにさまざまな公知の制御重合の方法、例えば原子移動ラジカル重合(ATRP)および可逆付加−フラグメント化連鎖移動(RAFT)を含む。
【0035】
特定の実施態様において、ポリマーは、二官能モノマーも多官能モノマーも含まない。特定の実施態様において、ポリマーは、実質的に直鎖である。
【0036】
本潤滑組成物中の粘度調整剤ポリマーの量は、組成物の0.5から10重量パーセント(油を含まない基準で示される)であってよい。代りの量は、重量で1から5または1.5から2.5パーセントを含む。そのような量は、潤滑粘度の油と一緒になって、150℃において2.9mPa−s(cP)未満、または2.0から2.8もしくは2.1から2.7mPa−sの高温、高せん断粘度(ASTM D 4683)を有する調合された潤滑剤を提供する量であってよい。そのような材料は、0W−20または0W−30または0W−40の粘度等級を有する潤滑剤調合物に対応してよい。
【0037】
他の機能添加剤
本組成物は、任意選択として、潤滑剤において通常使用される他の機能添加剤、例えば内燃機関用の潤滑剤を含む。他の機能添加剤は、金属活性低下剤、粘度調整剤(上記に記載されている粘度調整剤以外)、洗剤、摩擦調整剤、磨耗防止剤、リン含有亜鉛塩、腐食抑制剤、分散剤、分散剤粘度調整剤、極圧添加剤、酸化防止剤、発泡抑制剤(消泡剤)、解乳化剤、流動点降下剤、封止膨潤剤の少なくとも1つ、およびそれらの混合物を含んでよい。通常、完全に調合された潤滑油は、これらの機能添加剤の1つ以上を含む。
【0038】
一実施態様において、本潤滑組成物は、酸化防止剤、過塩基性洗剤、分散剤、例えばコハク酸イミド分散剤の少なくとも1つ、またはそれらの混合物をさらに含む。一実施態様において、潤滑組成物は、無灰分磨耗防止剤またはヒドロキシカルボン酸化合物、およびリン含有磨耗防止剤を含む。
【0039】
洗剤
本潤滑組成物は、任意選択として、中性または過塩基性の洗剤を含む。適当な洗剤基質は、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リンの酸、モノおよび/またはジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、およびサリゲニンを含む。国際公開第2004/096957号およびその中の引用文献を含む多数の特許公報にさまざまな過塩基性洗剤およびそれらの調製方法がより詳細に記載されている。洗剤基質は、通常は金属、例えばカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、またはそれらの混合物との塩とされ、酸性材料、例えば二酸化炭素でさらに処理されて塩基の取込みを助け、それによって炭酸塩化された材料を形成してよい。例は、過塩基性炭酸化スルホン酸カルシウム洗剤および過塩基性炭酸化ナトリウム洗剤を含む。過塩基性洗剤は、油を含む基準(例えば約50%の希釈剤油を含む市販材料として)で計算して100から500または250から450または300から400の総アルカリ価を有してよい。洗剤は、0重量%から10重量%、または0.1重量%から8重量%、または0.4重量%から4重量%、または0.5から2重量%または0.6から1重量%(油を含まない基準)で存在してよい。
【0040】
分散剤
分散剤は、潤滑油組成物の中の混合の前には灰分形成金属を含まず、潤滑剤およびポリマー分散剤に加えられるとき普通は灰分形成金属をまったく持ち込まないので、多くの場合に無灰分型分散剤として知られている。無灰分型分散剤は、比較的高い分子量の炭化水素鎖と結合した極性基を特徴とする。通常の無灰分分散剤は、N−置換長鎖アルケニルコハク酸イミドを含む。N−置換長鎖アルケニルコハク酸イミドの例は、イソブテンから誘導された350から5000、または500から3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンコハク酸イミドを含む。例えば、米国特許第3,172,892号または米国特許第4,234,435号において、または欧州特許第0355895号において、コハク酸イミド分散剤およびそれらの調製法が開示されている。コハク酸イミド分散剤は、通常はポリアミン、通常はポリ(エチレンアミン)から形成されるイミドである。
【0041】
一実施態様において、本発明は、350から5000、または500から3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるポリイソブチレンコハク酸イミド分散剤を含む。ポリイソブチレンコハク酸イミドは、単独で用いても他の分散剤と組み合わせて用いてもよい。
【0042】
別の種別の無灰分分散剤は、Mannich塩基である。Mannich分散剤は、アルキルフェノールとアルデヒド(特にホルムアルデヒド)およびアミン(特にポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。アルキル基は、通常は少なくとも30の炭素原子を含む。
【0043】
分散剤は、さまざまな剤のいずれかとの反応により、従来法によって後処理してもよい。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、およびリン化合物がある。
【0044】
分散剤は、本潤滑組成物の0重量%から20重量%、または0.1重量%から15重量%、または0.1重量%から10重量%、または1重量%から6重量%で存在してよい。
【0045】
酸化防止剤
酸化防止剤化合物は公知であり、例えば硫化オレフィン(通常は硫化4−カルボブトキシシクロヘキセンまたはオレフィンスルフィド)、アルキル化ジフェニルアミン(例えばノニルジフェニルアミン、通常はジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン)、ヒンダードフェノール、またはそれらの混合物を含む。酸化防止剤化合物は単独で用いても組み合せて用いてもよい。酸化防止剤は、本潤滑組成物の0重量%から20重量%、または0.1重量%から10重量%、または1重量%から5重量%の範囲で存在してよい。
【0046】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体的に障害となる基としてセカンダリーブチルおよび/またはターシャリーブチル基を含んでよい。フェノール基は、ヒドロカルビル基および/または第2の芳香族基と結合している橋架け基で置換されていてよい。適当なヒンダードフェノール酸化防止剤の例は、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールまたは4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、あるいは4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを含む。一実施態様において、ヒンダードフェノール酸化防止剤はエステルであり、例えばCibaからのIrganox(商標)L−135、または2,6−ジ−tert−ブチルフェノールとアクリル酸アルキルとから誘導される付加生成物を含んでよく、ここでアルキル基は1から18、または2から12、または2から8、または2から6、または4の炭素原子を含んでよい。米国特許第6,559,105号に適当なエステル含有ヒンダードフェノール酸化防止剤化学のさらに詳細な記載が見いだされる。一実施態様において、本潤滑剤は、時には環境的に好ましくない副生成物を含むと考えられるフェノール酸化防止剤を含まないかまたは減少した量のフェノール酸化防止剤を含む。
【0047】
粘度調整剤
追加の粘度調整剤は、スチレン−ブタジエンの水素化共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化イソプレンポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリ(アルキルスチレン)、水素化アルケニルアリール共役ジエン共重合体、ポリオレフィン、無水マレイン酸のエステル−スチレン共重合体、または(アルファ−オレフィン無水マレイン酸)共重合体のエステルを含む。分散剤粘度調整剤(多くの場合にDVMと呼ばれる)は、官能化ポリオレフィン、例えばアシル化剤(例えば無水マレイン酸)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン−プロピレン共重合体;アミンで官能化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応したエステル化無水マレイン酸−スチレン共重合体を含む。任意選択の追加の粘度調整剤および/または分散剤粘度調整剤の総量は、本潤滑組成物の0重量%から20重量%、0.1重量%から15重量%、または0.1重量%から10重量%であってよい。
【0048】
リン含有亜鉛塩を含む摩耗防止剤
本潤滑組成物は、任意選択として、少なくとも1つの磨耗防止剤をさらに含む。適当な磨耗防止剤の例は、リン酸エステル、硫化オレフィン、金属ジヒドロカルビルジチオリン酸塩(例えばジアルキルジチオリン酸亜鉛)を含む硫黄含有摩耗防止添加剤、チオカルバミド酸エステル、アルキレン結合チオカルバミド酸エステル、およびビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドを含むチオカルバミド酸エステル含有化合物、およびポリオールと酸とのモノエステル、例えばモノオレイン酸グリセロールを含む。一実施態様において、本潤滑組成物は、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛を含まない。一実施態様において、本潤滑組成物は、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛をさらに含む。磨耗防止剤は、本潤滑組成物の0重量%から15重量%、または0重量%から10重量%、または0.05重量%から5重量%、または0.1重量%から3重量%を含む範囲で存在してよい。
【0049】
摩擦調整剤
一実施態様において、さらなるものは、摩擦調整剤、またはその混合物を含む。通常、摩擦調整剤は0重量%から10重量%、または0.05重量%から8重量%、または0.1重量%から4重量%を含む範囲で存在してよい。適当な摩擦調整剤の例は、アミン、エステルまたはエポキシドの長鎖脂肪酸誘導体;脂肪族イミダゾリン(すなわち長鎖脂肪酸アミド、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪族エポキシド誘導体、および長鎖脂肪族イミダゾリン);およびアルキルリン酸のアミン塩を含む。摩擦調整剤は、硫化脂肪族化合物およびオレフィン、トリグリセリド(例えばヒマワリ油)またはポリオールと脂肪族カルボン酸とのモノエステルなどの材料も包含してよい。
【0050】
別の摩擦調整剤は、ヒドロキシカルボキシル化合物であってよい。このヒドロキシカルボキシル化合物は、構造
【0051】
【化1】

の一般式を有してもよく、あるいはこの式によって表されてもよい。式中、nおよびmは、独立に、1から5の整数であり;Xは、脂肪族または脂環式の基、あるいは炭素鎖中に酸素原子を含む脂肪族または脂環式の基、あるいは置換されている以上の種類の基であって、最大6の炭素原子を有し、n+mの利用可能な結合点を含む基であり;各Yは、独立に、−O−、>NH、または>NRであるか、または2つのYが一緒になって2つのカルボニル基の間に形成されるイミド構造R−N<の窒素を表し;少なくとも1つのRまたはR基はヒドロカルビル基であることを前提条件として各RおよびRは、独立に、水素またはヒドロカルビル基であり;少なくとも1つの−OR基は−C(O)−Y−R基の少なくとも1つに対してαまたはβであるXの炭素原子に位置することを別の前提条件として各Rは、独立に、水素、ヒドロカルビル基、またはアシル基である。Yは、酸素または窒素(すなわち>NHまたはNR)であってよいので、この材料は、エステル、アミドまたはイミド、またはそれらの混合物である。RおよびRによって表される単数または複数のヒドロカルビル基は、通常は1から150の炭素原子または、代りの実施態様においては、4から30の炭素原子または6から20または10から20または11から18または8から10の炭素原子を含む。
【0052】
特定の実施態様において、nおよびmの少なくとも一方は1より大きく、すなわち2から5または2から4または2から3であり、他方は1または前述の範囲のいずれかであってよい。nおよびmがどちらも1のとき、適当な構造はグリコール酸HO−CH−COH、すなわちXが−CH−基である場合にもとづく。Xが−CHCH−である対応する酸は乳酸であり、これも有用であってよい。そのような材料は、対応するエステルおよびアミドを形成してよい。nまたはmの少なくとも一方が1より大きな酸の例は、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸を含む。nが2以上の材料は、イミドの形でも存在してよい。
【0053】
ジエステル、ジアミド、およびエステル−アミド化合物は、任意選択として公知のエステル化触媒の存在下で、ジカルボン酸(例えば酒石酸)をアミンまたはアルコールと反応させることによって調製してよい。例は、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、およびグリコール酸のエステル、アミド、およびイミド、いくつか実施態様において酒石酸エステル、酒石酸アミド、および酒石酸イミドを含む。特に、酒石酸オレイルイミドならびに酒石酸C12〜16アルキルジエステルが有用であることが見いだされた。酒石酸C12〜16アルキルジエステルは、12、13、14、および15の炭素原子を含むアルキル基の混合物またはそれらの組み合わせを含んでよい。16炭素原子のアルキル基は、大量に存在してもよく存在しなくてもよい。C12〜16アルキル基は、直鎖または分岐であってよく、RまたはR基のいずれについても同様であってよい。反応させてよいアルコールの中には1価または多価、直鎖または分岐アルコールがある。適当な分岐アルコールの例は、2−エチルヘキサノール、イソトリデカノール、Guerbetアルコール、およびそれらの混合物を含む。一実施態様において、1価アルコールは、5から20の炭素原子を含む。一実施態様において、混合物中で1価アルコールとともに多価アルコールが用いられる。
【0054】
言わば分子のコアを形成する適当なX基の中には、−CH−、−CHCH−、>CHCH<(式中、「<」および「>」は炭素原子との2つの結合を表す)、>CHCH−、および>C(CH−)、式中、結合は適切な−C(O)YRおよび−OR基によって占められている、があってよい。代りの実施態様において、「コア」は、単糖を想起させる構造、例えば
【0055】
【化2】

を有してよい。
【0056】
上の構造式の−OR基は、同様に、独立に、Rが水素であるヒドロキシ基、あるいはRまたはRと同じ種類の、または例えば1から4の炭素原子を有するヒドロカルビル基、あるいは低級カルボン酸、例えば1から6の炭素原子を有するもの、例えば酢酸、プロピオン酸または酪酸、から誘導されるアシル基を含むアシル基であってよい。特定の実施態様において、すべてのR基は、水素である。特定の実施態様において、分子中の−OR基の少なくとも1つは、−C(O)−Y−R基の1つに対してαまたはβの位置にある炭素原子にある。
【0057】
同じ化学構造は、最近の特許出願例えば国際公開第2008/147700号において異なる形式でも書かれた。本技術の無灰分磨耗防止剤は、ホウ素化されていてもよくホウ素化されていなくてもよい。一実施態様において、無灰分磨耗防止剤は、酒石酸(その異性体のいずれか)から誘導される。米国特許第4,237,022号に、適当な酒石酸イミドを調製するための方法(酒石酸を第1アミンと反応させることによる)の詳細な記載が開示されている。例えばカラム4および5を参照。米国特許出願公開第2005/198894号は、適当なヒドロキシカルボン酸化合物およびそれを調製する方法を開示している。カナダ特許第1183125号、米国特許出願公開第2006/0183647号および第2006/0079413号、国際公開第2008/067259号、および英国特許出願公開第2 105 743 A号のすべてが、適当な酒石酸誘導体の例を開示している。
【0058】
このヒドロキシカルボン酸化合物は、磨耗防止剤としての役も果たしてよい(すべての摩擦調整剤が必然的に磨耗防止剤であるわけではなく、その逆も成立するが)。それは、酸化防止剤としても作用してよく、または他の有用な機能を付与してもよい。ヒドロキシカルボン酸化合物は、潤滑組成物の0.01重量%から2重量%、または0.05から1.5重量%、または0.1から1重量%または0.2から0.6重量%で存在してよい。
【0059】
他の機能添加剤は、腐食抑制剤、例えば米国特許出願第05/038319号の段落5から8に記載されているもの、オクタン酸オクチルアミン、およびドデセニルコハク酸または無水物および脂肪酸例えばオレイン酸とポリアミンとの縮合生成物、または商品名Synalox(登録商標)腐食抑制剤で販売されている市販の腐食抑制剤を含む。他の添加剤は、ベンゾトリアゾールの誘導体(通常はトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダール、2−アルキルジチオベンゾイミダール、または2−アルキルジチオベンゾチアゾールを含む金属活性低下剤;アクリル酸エチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシル、および任意選択として酢酸ビニルの共重合体を含む発泡抑制剤;リン酸トリアルキル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸のエステル−スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤を含む。極圧(EP)添加剤も、硫黄−および塩素硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、およびリンEP剤を含め、存在してよい。
【0060】
油溶性モリブデン化合物
本技術の潤滑剤は、油溶性モリブデン化合物の形のモリブデンを含んでもよく含まなくてもよい。モリブデンの量は、重量で本潤滑組成物の500パーツパーミリオン未満、すなわち、0から500ppm、例えば400または300または200または100または50または10または1パーツパーミリオン未満であってよい。モリブデンの量の下限は、0または0.01または0.1または1パーツパーミリオンであってよい。他の実施態様において、モリブデンの量の下限は、10または50または100パーツパーミリオンであってよい。従って、モリブデンが存在するなら、適当な量は、10から500パーツパーミリオン、または50から400、または100から300パーツパーミリオンを含んでよいいくつか実施態様において、調合物は実質的にモリブデンを含まない。通常は、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミド酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、モリブデン硫化物、モリブデンカルボン酸塩、モリブデンアルコキシド、またはそれらの混合物を含む。
【0061】
油溶性ホウ素化合物
本技術の潤滑剤は、油溶性ホウ素化合物の形のホウ素を含んでもよく含まなくてもよい。ホウ素の量は、重量で本潤滑組成物の200パーツパーミリオン未満、例えば100または50または10または1パーツパーミリオン未満であってよい。ホウ素の量の下限は、0または0.01または0.1または1パーツパーミリオンであってよい。特定の実施態様において、調合物は、実質的にホウ素を含まず、ホウ素化分散剤(下記に記載されている)を含まないかまたは実質的に含まなくてよい。本組成物にホウ素を持ち込むことがある他の種類の化合物は、上記に記載されているホウ素化無灰分磨耗防止剤、ホウ素化洗剤、ホウ酸、およびホウ酸エステル、例えばホウ素化エポキシドを含んでよい。
【0062】
産業上の応用
本潤滑組成物は、鉄およびアルミニウム合金表面を含む、機械装置において通常見いだされる一連の表面において用いてよい。機械装置は、内燃機関、ギアボックス、自動変速装置、油圧機械、およびタービンを含む。通常、本潤滑組成物は、エンジン油、ギヤー油、自動変速装置油、油圧液、タービン油、金属工作流体、または循環油であってよい。一実施態様において、機械装置は、内燃機関(ガソリンまたはディーゼル燃料、2ストロークまたは4ストローク、自動車、トラック、オフロードまたは船舶)であり、本明細書において記載されている潤滑組成物を供給することによって潤滑してよい。
【0063】
内燃機関用の潤滑組成物は、硫黄、リン、または硫酸塩灰分(ASTM D−874)含有率に関わらずいずれのエンジン潤滑剤にも適したものとし得る。エンジン油潤滑剤の硫黄含有率は、1重量%以下、または0.8重量%以下、または0.5重量%以下、または0.3重量%以下であってよい。一実施態様において、硫黄含有率は、0.001重量%から0.5重量%、または0.01重量%から0.3重量%の範囲であってよい。リン含有率は、0.2重量%以下、または0.1重量%以下、または0.085重量%以下、または0.06重量%以下、0.055重量%以下、または0.05重量%以下でさえあってよい。一実施態様において、リン含有率は、100ppmから1000ppm、または325ppmから700ppmであってよい。全スルフェート灰分含有率は、2重量%以下、または1.5重量%以下、または1.1重量%以下、または1重量%以下、または0.8重量%以下、または0.5重量%以下であってよい。一実施態様において、スルフェート灰分含有率は、0.05重量%から0.9重量%、あるいは0.1重量%または0.2重量%から0.45重量%であってよい。
【0064】
本明細書において用いられる用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者に周知であるその普通の意味で用いられる。詳しくは、この用語は、分子の残りと直接結合している炭素原子を有し、主として炭化水素の性格を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例は以下、
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族、脂肪族、および脂環式で置換されている芳香族置換基、ならびに分子の別の部分を経て環が完結する(例えば2つの置換基が一緒になって環を形成する)環状置換基、
置換されている炭化水素置換基、すなわち、本技術の状況において置換基の主として炭化水素の性質を変化させない非炭化水素基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ)を含む置換基、
ヘテロ置換基、すなわち、主として炭化水素の性格を有するが、本技術の状況において、他は炭素原子で構成されている環または鎖の中に炭素以外を含み、ピリジル、フリル、チエニル、およびイミダゾリルのような置換基を包含する置換基を含む。ヘテロ原子は、硫黄、酸素、および窒素を含む。一般に、ヒドロカルビル基中の10炭素原子ごとに2を超えない、好ましくは1を超えない非炭化水素置換基が存在し、通常は、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基がない。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明の例示を提供する。これらの実施例は非網羅的であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0066】
調製実施例1 ポリマー合成
5Lのフラスコに1152.5gのメタクリル酸C12〜15アルキル、296gのメタクリル酸メチル、3016gの油(S油「ウルトラ3」、「II類+」の油)0.525gのTrigonox 21(商標)開始剤、および0.525gのn−ドデシルメルカプタンを充填する。内容物を撹拌して混合する。この混合物の3分の1を、機械式撹拌装置、コンデンサー、熱電対、添加ロート、および窒素入り口を備えた12Lの丸底フラスコに移す。フラスコは、52.5gのメタクリル酸ジメチルアミノエチルを含んでいる。化学物質の充填の前に、フラスコを60L/hr(2SCFH)の窒素で2時間パージする。反応混合物を110℃に加熱し(まだ窒素気流下にある間に)、発熱反応が起こり、それによって反応混合物の温度は最高120℃に達する。反応温度を110±5℃に維持しながら添加ロートを介してモノマー混合物の残りを1.5時間かけて加える。添加が完了した後、混合物を110℃でさらに1時間撹拌する。次の4時間の間に追加の1.4gのTrigonox 21(商標)を4つの部分に分けて600gの油とともに混合物に加え、その後、1時間撹拌を続ける。25gの油の中の2.4gの追加の開始剤Luperox P(商標)を加え、混合物をさらに2時間撹拌する。最後に1773gの追加の希釈剤油を加え、混合物を110℃でさらに1時間撹拌しておく。約66%の油を含む生成物を精製しないで用いる。
【0067】
調製実施例2
以下の量(相対重量パーセント)のモノマー、すなわち76.1%のメタクリル酸C12〜15アルキル、19.5%のメタクリル酸メチル、1.0%のメタクリル酸ブチル、および3.43%のメタクリル酸ジメチルアミノプロピルを用いることを除いて実質的に調製実施例1を繰り返す。生成物は310,000の重量平均分子量を有し、約67%の油を含む。
【0068】
調製実施例3
以下の量(相対重量パーセント)のモノマー、すなわち76.83%のメタクリル酸C12〜15アルキル、19.67%のメタクリル酸メチル、および3.5%のメタクリル酸ジメチルアミノエチルを用いることを除いて実質的に調製実施例1を繰り返す。生成物は368,000の重量平均分子量を有し、約64%の油を含む。
【0069】
調製実施例2および3の材料を、内燃機関に適している潤滑剤調合物中で評価する。潤滑剤は、鉱油(100N)の中に、1.53パーセントの過塩基性スルホン酸カルシウム洗剤(約42%の油を含む)、4.1パーセントのコハク酸イミド分散剤(約47%の油を含む)、1.79%の酸化防止剤、0.56%のジアルキルジチオリン酸亜鉛(10%の油)、酒石酸C12〜14アルキルにもとづく0.5%の無灰分摩擦調整剤、およびさらに少ない量の流動点降下剤および発泡抑制剤を含む。潤滑剤調合物に、調製実施例2または調製実施例3からのVI向上剤、または参考用に市販の粘度調整剤Viscoplex(商標)6−850(90%のメタクリル酸ラウリル、8%のメタクリル酸メチル、および2%のN−ビニルピロリドンの共重合体であると考えられ、70%の油を含んで供給される)を加える。
【0070】
示されている粘度調整剤を含む潤滑剤調合物を、ASTM D 2270による40および100℃の動粘度および粘度指数について評価する。それらを、ASTM D 4683の高温高せん断試験およびASTM D 5293の低温クランクせん断試験(−35℃)によっても評価する。下の表に結果が示される(VI向上剤の量は、希釈剤油と、その後の括弧の中の正味のポリマーの量とを含む)。
【0071】
【表1】

本技術のポリマーの中に高レベルのN−含有モノマーとともに高レベルのメタクリル酸メチルを含むことによって、低温粘度を犠牲にせずに粘度指数の顕著な向上を提供するポリ(メタ)アクリレート粘度調整剤の調製が可能になる。VIの高くなった潤滑剤は、より良好な高温耐久性を提供する(膜強度を維持することによって)と同時に、エンジン始動における燃料経済性を向上させることができる良好な低温流動性を提供する。短鎖モノマー(例えばメタクリル酸)の含有率を増加させると、特に高分子量ポリマーにおいて油溶性の劣るポリマーが得られ、それらのポリマーを含む調合物の低温機能が低下することが当業者に周知である。本技術は、依然として良好な低温性能を有する高粘度指数調合物を得る方法を提供する。
【0072】
上記に記載されている材料のあるものは最終調合物中で相互作用し、それによって最終調合物中の成分が最初に加えられるものと異なることがあることが知られている。例えば、金属イオン(例えば洗剤の)は他の分子の他の酸性部位または陰イオン部位に移動することができる。それによって生成する生成物は、本発明の組成物をその意図される使用において使用すると生成する生成物を含め、簡単に記載することができないことがある。それでも、すべてのそのような変化形および反応生成物が本発明の範囲内に含まれ、本発明は、上記に記載されている成分を混合することによって調製される組成物を包含する。
【0073】
上記において参照されている文書のそれぞれは、参照によって本明細書に組み込まれる。いずれかの文書についての言及は、そのような文書が従来技術として成立すること、または当業者の一般知識を構成することをいかなる意味でも認めるものではない。実施例中を除き、またはその他に特に明記しない限り、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定している本記載中のすべての数値的な量は、語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。特に明記しない限り、本明細書において参照されている各化学物質または組成物は、通常、市販の等級の中に存在すると理解される異性体、副生成物、誘導体、および他のそのような材料を含んでよい市販の等級の材料であると解釈されるべきである。しかし、各化学成分の量は、特に明記しない限り、市販の材料の中に普通は存在してよい溶媒または希釈剤油をすべて除いて示される。本明細書において示される上方および下方の量、範囲、および比の限界は独立に組み合わされてよいと理解されるべきである。同様に、本発明の各要素に関する範囲および量は、他の要素のいずれかに関する範囲または量とともに用いることができる。本明細書において用いられる表現「基本的にからなる」は、考慮されている組成物の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない物質の包含を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)潤滑粘度の油、および
(b)
(i)15重量パーセントから約35重量パーセントモノマー単位の(メタ)アクリル酸メチル、
(ii)0から約10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜Cアルキル、
(iii)約50から85重量パーセントモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜C30アルキル、および
(iv)0から約10重量パーセントモノマー単位の1つ以上の分散剤モノマー
を含む、重量で約0.5から約30パーセントのポリ(メタ)アクリレート粘度調整剤ポリマー
を含む潤滑組成物。
【請求項2】
前記ポリ(メタ)アクリレート粘度調整剤の前記量は、重量で約1から約5パーセントである、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記粘度調整剤ポリマーは、15から約25重量パーセントのメタクリル酸メチルモノマー単位を含む、請求項1または請求項2に記載の潤滑性組成物。
【請求項4】
前記粘度調整剤ポリマーは、約0.5から約5重量パーセントモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜Cアルキルを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記粘度調整剤ポリマーは、約65から約85重量パーセントモノマー単位の1つ以上の(メタ)アクリル酸C〜C30アルキルを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸C〜C30アルキルは、メタクリル酸C12〜15アルキルを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記粘度調整剤ポリマーは、約1から約8パーセントモノマー単位の1つ以上の窒素含有モノマーを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
前記窒素含有モノマーは、メタクリル酸ジメチルアミノエチルまたはジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
前記粘度調整剤ポリマーの前記重量平均分子量は、少なくとも約200,000である、請求項1から8のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
(i)15から約25重量パーセントのメタクリル酸メチルモノマー単位、
(iii)約60から約84重量パーセントのメタクリル酸C12〜15アルキルモノマー単位、および
(iv)約1から約8重量パーセントのメタクリル酸ジメチルアミノエチルモノマー単位
を含む、重量で約1から約5パーセントの粘度調整剤ポリマー
を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
摩擦調整剤、磨耗防止剤、洗剤、分散剤、酸化防止剤、リン含有亜鉛塩、流動点降下剤、および消泡剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の前記成分を混合することによって調製される潤滑組成物。
【請求項14】
内燃機関を潤滑するための方法であって、前記内燃機関に請求項1から13のいずれか1項に記載の潤滑組成物を供給することを含む方法。

【公表番号】特表2012−528923(P2012−528923A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514061(P2012−514061)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/036990
【国際公開番号】WO2010/141528
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】