鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法、鹸化セルロースエステルフィルム及びこれを用いた偏光板、光学補償フィルム及び反射防止フィルム

【課題】架橋剤の過剰添加、加熱促進、電離放射線量アップ等の過酷な手段を採ることなく耐久性のある被膜を形成できる鹸化処理セルロースエステルフィルム及びそれを備えた光学フィルムを得る。
【解決手段】セルロースエステルフィルム10に少なくとも水、有機溶媒及びアルカリ剤を含有するアルカリ水溶液12を塗布し、鹸化セルロースエステルフィルム10‘の鹸化処理面表層の可塑剤量を、ATR/IR法による測定で0.25以下となるようセルロースエステルフィルム10をアルカリ水溶液12で鹸化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法、鹸化セルロースエステルフィルム及びこれを用いた偏光板、光学補償フィルム及び反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
平面型画像表示装置(FPD)として液晶表示装置が採用されている。液晶表示装置は、液晶セル、偏光板、光学補償フィルム(位相差板)及び反射防止フィルム等の光学的機能を有するシート材料(光学フィルム)で構成される。
【0003】
偏光板は、一般に偏光膜とその両側に設けられた2枚の透明保護膜から構成される。偏光膜は、一般にポリビニルアルコールに沃素または二色性染料の水溶液を含浸させてこれを一軸延伸することで得られる。
【0004】
光学補償シートは、画像着色を解消し、視野角を拡大することで液晶表示装置の表示品位を向上する機能を有するため、種々の液晶表示装置で採用されている。近年、光学補償シートとして、従来から使用されていた延伸複屈折フィルムに代わり、透明支持体上に液晶性分子(特にディスコティック液晶性分子)から形成された光学異方層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。この光学異方層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定することで形成される。液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子を用いることで液晶セルの種々の表示モードに対応する様々な光学特性を有する光学補償シートを作りだすことができる。
【0005】
例えば、TNモードの液晶セル用光学補償シート、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シート、OCBモードまたはHANモード液晶セル用光学補償シート、STNモードの液晶セル用光学補償シート、VAモード液晶セル用光学補償シートが提案されている。さらに、液晶表示装置の軽量化を図るために、光学補償シートを偏光板の一方の保護膜として用いる一体型楕円偏光板が提案されている。
【0006】
また、反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)等の画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するため、ディスプレイの表面に配置される。
【0007】
偏光板の保護フィルム、光学補償シートの透明支持体、反射防止フィルムの基材として、優れた光透過性、光学的な無配向性、優れた物理的、機械的特性、温湿度変化の少ない特性を有するセルロースアセテートフィルムに代表されるセルロースエステルフィルムが採用されている。
【0008】
一般的に、偏光板や光学補償シートにおいては、偏光膜や光学異方層が透明支持体であるセルロースエステルフィルムに接着層や配向膜(通常ポリビニルアルコール:PVA)を介して設けられている。また、反射防止フィルム等においては、重合性基を含む多官能モノマー化合物がセルロースエステルフィルム上に被膜として形成されている。
【0009】
セルロースエステルフィルムを安定、均一にアルカリ鹸化処理することにより表面欠陥のない光学フィルムに適した表面鹸化セルロースエステルフィルムを提供する方法として、鹸化処理液を最適化する方法(特許文献1,2)が開示されている。
【0010】
また、配向膜との密着性が適切なセルロースエステルフィルムのアルカリ鹸化処理方法(特許文献3,4,5)が開示されている。
【0011】
さらに、セルロースエステルフィルムのアシル基置換度と低分子化合物の重量比をフィルム表層と内部とで変化させることで、高温高湿下でも偏光子と保護フィルムの間で剥離や光漏れが少ない耐久性に優れた偏光板の提供方法(特許文献6)が開示されている。
【特許文献1】特開2004−203964号公報
【特許文献2】特開2004−203965号公報
【特許文献3】特開2004−182893号公報
【特許文献4】特開2004−225002号公報
【特許文献5】特開2006−335800号公報
【特許文献6】特開2005−307142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1及び2は、表面欠陥のない鹸化処理方法に最適な鹸化処理液組成に関するものである。また、特許文献3〜6は、配向膜素材であるポリビニルアルコール(PVA)との親和性を付与するための鹸化処理方法に関するものである。特許文献1〜6は、配向膜素材等の架橋性(耐久性)を改善するために必要な鹸化処理されたセルロースエステルフィルムに関するものではなかった。
【0013】
したがって、従来の方法では架橋性(耐久性)を付与するためには、架橋剤の過剰添加、加熱促進、電離放射線量アップ等の過酷な架橋条件(硬化条件)を選択せざるを得ず、基材となるセルロースエステルフィルムの平面性低下などの品質低下を引き起こす原因となっていた。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、架橋剤の過剰添加、加熱促進、電離放射線量アップ等の過酷な架橋条件(硬化条件)を選択せずに、セルロースエステルフィルム上に重合性基を含む多官能モノマー化合物の耐久性のある被膜を形成できる鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法、鹸化セルロースエステルフィルム、偏光板、光学補償フィルム及び反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法は、(a)セルロースエステルフィルムに少なくとも水、有機溶媒及びアルカリ剤を含有するアルカリ水溶液を塗布する塗布工程と、(b)前記セルロースエステルフィルムを前記アルカリ水溶液で鹸化し、該セルロースエステルフィルムの鹸化処理面表層の可塑剤量を、ATR/IR法による測定で0.25以下とする鹸化処理工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するために、発明者らが鋭意 検討した結果、セルロースエステルフィルムをアルカリ水溶液で、鹸化処理後のフィルム表面の可塑剤量をATR/IR法による測定で0.25以下となるまで鹸化処理することで、重合性基を含む多官能モノマー化合物の重合反応(架橋)時においての架橋の阻害となる疎水性の抽出成分(可塑剤)のセルロースエステルフィルムからの抽出量を低減できることを見出した。その結果、架橋剤の過剰添加、加熱促進、電離放射線量アップ等の過酷な手段を採ることなく、前記多官能モノマー化合物の重合反応から形成される被膜の耐久性を向上できる鹸化処理セルロースエステルフィルムを製造することができる。
【0017】
本発明において、ATR/IR法による測定とは、全反射吸収分光法(Attenuated Total Reflection absorption spectroscopy:標準化学用語辞典 第2版)を意味する。具体的には、石英などの屈折率の大きな透明物質と試料(固体または液体)を密着させ、透明物質側からある入射角度で入射光を当てると全反射が起きるが、反射光は密着面近傍(数μm)でごく一部試料により吸収を受けるため,試料の吸収特性が反映される。この全反射光の強度変化を測定してスペクトルを得る方法をいう。
[使用機種]
NICOLET 4700(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
ATR本体(フォルダー):45°
プリズム:KRS−5 45°
[サンプル条件]
サイズ:1.9cm×4.5cm
測定湿度:25℃ 20%
[測定データ処理]
1490cm−1の可塑剤由来ピークと1370cm−1のセルロースエステルフィルム由来ピークの比
また、鹸化処理面表層とは、膜面の表面から1〜2μmの深さの位置までをいう。
【0018】
本発明の鹸化セルロースエステルフィルムの製造は、前記発明において、前記鹸化処理工程が、前記セルロースエステルフィルムを最大膜面温度40℃〜70℃の範囲で鹸化することを含むことを特徴とする。
【0019】
鹸化処理時において、セルロースエステルフィルムの最大膜面温度40℃〜70℃の範囲とすることで、セルロースエステルフィルムからの可塑剤の抽出量を多くできる。鹸化処理時に可塑剤の抽出量を多くすることで、重合性基を含む多官能モノマー化合物の重合反応(架橋)時において、セルロースエステルフィルムからの可塑剤の抽出量を低減できる。
【0020】
本発明の鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法は、前記発明において、前記アルカリ水溶液が、有機溶媒と水の比が0.7以下のアルカリ水溶液であることを特徴とする。アルカリ水溶液中の有機溶剤により、ポリマーフィルムは溶解等されることはないが、ポリマーフィルム中の添加物質が抽出されることがある。抽出された添加物質は疎水物質であるため、後に塗布する配向膜並びに液晶性分子層の塗膜形成や液晶分子の配向に影響を与えてしまう。ポリマーフィルムからの添加物質の抽出、特に疎水物質の抽出量を低減することが、ポリマーフィルムを用いた光学フィルムの品質/特性の向上に有効である。
【0021】
本発明の鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法は、前記発明において、前記有機溶媒が、無機性/有機性値(I/O値)が0.5以上、かつ溶解度パラメーターが16〜40[mJ/m]であることを特徴とする。I/O値がこの範囲よりも無機性が強いか、又は溶解度パラメーターが低いと、アルカリ鹸化速度が低下し、また鹸化度の全面均一性も不満足となる。一方、I/O値が上記範囲よりも有機性の側であるか、又は溶解度パラメーターが高溶解性の側では、鹸化速度は速いが、ヘイズを生じ易く、したがって全面均一性の点では同様に不満足となる。
【0022】
本発明の鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法は、前記発明において、前記アルカリ水溶液の塗布量が8g/m〜12g/mの範囲であることを特徴とする。塗布量があまり多すぎると疎水性成分の抽出が多くなるおそれがあり、少なすぎるとポリマーフィルムにスジが発生するおそれがあるからである。
【0023】
本発明の鹸化セルロースエステルフィルムは、上述の製造方法で製造されたことを特徴とする。
【0024】
本発明の偏光板は、前記鹸化セルロースエステルフィルムを備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明の光学補償フィルムは、前記鹸化セルロースエステルフィルムを備えたことを特徴とする。
【0026】
本発明の反射防止フィルムは、前記鹸化セルロースエステルフィルムを備えたことを特徴とする。
【0027】
前記製造方法により製造された鹸化セルロースエステルフィルム、この鹸化セルロースエステルフィルムを備えた偏光板、光学補償フィルム及び反射防止フィルムである。本発明の鹸化セルロースエステルフィルムは、重合反応の阻害要因となる可塑剤の抽出量が抑制されている結果、架橋性(耐久性)が改善されているので、上記用途に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、セルロースエステルフィルムをアルカリ水溶液で、鹸化処理後の鹸化処理面表層の可塑剤量をATR/IR法による測定で0.25以下となるまで鹸化処理することで、架橋剤の過剰添加、加熱促進、電離放射線量アップ等の過酷な架橋条件(硬化条件)を選択せずに、セルロースエステルフィルム上に重合性基を含む多官能モノマー化合物の耐久性のある被膜を形成できる鹸化セルロースエステルフィルム、偏光板、光学補償フィルム及び反射防止フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造方法の実施形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施形態以外の他の実施形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0030】
図1を参照に、鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法に関する本発明を説明する。図1(a)に示すように、透明支持体であるセルロースエステルフィルム10にアルカリ水溶液12が塗布される。アルカリ水溶液12は、少なくとも水、有機溶媒及びアルカリ剤を含有する。アルカリ水溶液12の塗布は、例えば、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター(細い金属線を巻いたロッド)が好ましく利用できる。機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、セルロースエステルフィルム10に可塑剤14が添加されている。可塑剤14としては、疎水性のリン酸エステルまたはカルボン酸エステル等が用いられる。
【0031】
次いで、図1(b)に示すように、アルカリ水溶液12により、セルロースエステルフィルム10の表面が鹸化処理される。セルロースエステルフィルム10の膜面温度は、図示しないヒーターにより所定温度に制御される。鹸化処理時において、アルカリ水溶液12中の有機溶剤により、セルロースエステルフィルム10中の可塑剤14が表面に抽出される。一方で、セルロースエステルフィルム10中にも可塑剤14が存在する。発明者らは、セルロースエステルフィルム10中の可塑剤14が後述する工程で再抽出され、可塑剤14が重合性基を含む多官能モノマー化合物の架橋性を阻害すること、特に、セルロースエステルフィルム10の表面に存在する可塑剤14が架橋性に影響を与えることを見出した。従って、鹸化処理時にセルロースエステルフィルム10の表面から可塑剤14をできるだけ多く抽出することが重要である。
【0032】
次いで、図1(c)に示すように、鹸化処理に利用されたアルカリ水溶液及び抽出された可塑剤が、鹸化セルロースエステルフィルム10‘から、洗浄水を塗布する方法や洗浄水を吹き付ける方法により、洗浄・除去される。アルカリ水溶液が残っていると、鹸化反応が進行するからである。
【0033】
本発明では、洗浄工程後の鹸化セルロースエステルフィルム10‘の鹸化処理面表層の可塑剤量が、ATR/IR法による測定で0.25以下となるよう、鹸化処理工程でセルロースエステルフィルム10が鹸化処理される。鹸化セルロースエステルフィルム10‘の処理表面の可塑剤14の量を上述の範囲とすることで、重合性基を含む多官能モノマー化合物の架橋性を阻害する現象を抑制できる。
【0034】
次いで、図1(d)に示すように、ポリビニルアルコールや変性ポリビニルアルコール等の配向膜形成材料16が鹸化セルロースエステルフィルム10‘上に塗布される。このとき鹸化セルロースエステルフィルム10‘の処理表面の可塑剤14が少ないので、配向膜形成材料16の塗布時の鹸化セルロースエステルフィルム10‘から抽出される可塑剤14の量は少なくなる。
【0035】
次いで、図1(e)に示すように、鹸化セルロースエステルフィルム10‘上の配向膜形成材料16を加熱乾燥することにより、配向膜形成材料16が架橋される。配向膜形成材料16中に含まれる可塑剤14の量が少ないので、配向膜形成材料16の架橋が阻害されずに配向膜形成材料16は配向膜18となる。
【0036】
最後に、図1(f)に示されるように、配向膜18上に液晶層形成材料を塗布し、図示しない加熱ゾーンで溶媒を蒸発させ、配向膜18上に液晶層20を形成する。さらに、液晶層20は紫外線(UV)ランプにより紫外線を照射される。加熱ゾーンで溶媒を蒸発させるときに液晶層20の硬膜反応が促進する。配向膜18中の架橋剤14の量が少ないので、紫外線(UV)ランプにより紫外線を照射される場合であっても、立体障害が少なくなり、皮膜強度が向上する。図1(e)の工程で可塑剤の再抽出量が多いとこの架橋が阻害されることになる。
【0037】
上述したように鹸化処理時にセルロースエステルフィルムから可塑剤を多く抽出して、処理表面の可塑剤量をATR/IR法による測定で0.25以下とすることで、架橋性が阻害されることを抑制できる。なお、鹸化セルロースエステルフィルム上に形成される被膜は、叙述は配向膜形成材料に限定されず、重合性基を含む多官能モノマー化合物であればよいことが理解される。
【0038】
[セルロースエステルフィルム]
光学フィルムに使用されるポリマーフィルムは、光透過率が80%以上であるポリマーフィルムを用いる事が好ましい。ポリマーフィルムとしては、外力により複屈折が発現しにくいものが好ましい。ポリマーフィルムは、エステル結合あるいはアミド結合のような加水分解できる結合(鹸化処理の対象となる結合)を含む。エステル結合が好ましく、エステル結合がポリマーの側鎖に存在していることがさらに好ましい。エステル結合が側鎖に存在しているポリマーとしては、セルロースエステルが代表的である。セルロースの低級脂肪酸エステルがより好ましく、セルロースアセテートがさらに好ましく、酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートが最も好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
【0039】
セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましい。
【0040】
ポリマーフィルムを光学補償シートに用いる場合、ポリマーフィルムは、高いレターデーション値を有することが好ましい。フィルムのReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)および(II)で定義される。
(I) Re=|nx−ny|×d(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d式(I)および(II)において、nxは、フィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率、nyは、フィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率、dは、単位をnmとするフィルムの厚みである。ポリマーフィルムのReレターデーション値は1〜200nmであり、そして、Rthレターデーション値は70〜400nmであることが好ましい。具体的な値は、測定光の入射方向をフィルム膜面の鉛直方向に対して傾斜させた測定結果より外挿して求める。測定は、エリプソメーター(例えば、M−150、日本分光(株)製)を用いて実施できる。測定波長としては、632.8nm(He−Neレーザー)を採用する。
【0041】
ポリマーフィルムのレターデーションを調整するためには延伸のような外力を与える方法が一般的である。光学異方性を調節するためのレターデーション上昇剤が場合により添加される。セルロースアシレートフィルムのレターデーションを調整するには、芳香族環を少なくとも二つ有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。例えば、欧州特許0911656A2号明細書、特開2000−111914号、同2000−275434号公報等記載の化合物が挙げられる。レターデーション上昇剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
【0042】
ソルベントキャスト法によりポリマーフィルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマー材料を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルおよび炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0043】
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。さらに2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0044】
一般的な方法でポリマー溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。ポリマーの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。ポリマーの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。溶液は、常温(0〜40℃)でポリマーと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、ポリマーと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
【0045】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケット構造の加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後、容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0046】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもポリマーを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でポリマーを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られる効果がある。冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にポリマーを撹拌しながら徐々に添加する。ポリマーの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。ポリマーの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0047】
次に、混合物を−100〜−10℃、好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、ポリマーと有機溶媒の混合物は固化する。冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。なお、冷却速度とは、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0048】
さらに、これを0〜200℃、好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃に加温すると、有機溶媒中にポリマーが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよいし、温浴中で加温してもよい。加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。なお、加温速度とは、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
【0049】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保温する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0050】
調製したポリマー溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりポリマーフィルムを製膜する。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に加工しておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0051】
ポリマーフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。具体的には、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の16頁に詳細の化合物等が挙げられる。可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
【0052】
さらに、本発明のポリマーフィルムには、用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、微粒子、剥離剤、帯電防止剤、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)、赤外吸収剤を等)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。また、フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。これらの詳細は、上記の公技番号 2001−1745号技法の17頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されないが、ポリマーフィルム全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
【0053】
ポリマーフィルムは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3〜100%であることが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、30〜200μmであることが好ましく、40〜120μmであることがさらに好ましい。
【0054】
[アルカリ鹸化方法]
本発明のセルロースエステルフィルムのアルカリ鹸化方法は、少なくとも水、有機溶媒及びアルカリ剤を含有するアルカリ水溶液をセルロースエステルフィルムに塗布する塗布工程と、前記塗布工程で塗布されたアルカリ水溶液でセルロースエステルフィルムを鹸化する鹸化処理工程とを含んでいる。さらに、鹸化処理応工程を停止させる反応停止工程と、予め室温以上に加熱する工程、セルロースエステルフィルムの膜面温度を維持する工程、そして、アルカリ水溶液をセルロースエステルフィルムから洗い落とす工程を備えている。ポリマーフィルムを搬送しながら、これらの工程及びその前後の工程を実施することが好ましい。
【0055】
アルカリ水溶液を用いてセルロースエステルフィルムを鹸化処理する工程は従来公知のいずれの方法のものを用いて良い。例えば、浸漬方法、吹き付け方法、塗布方法等が挙げられる。特に、フィルムの片面のみをムラ無く均一に鹸化処理する場合は、塗布方式が好ましい。塗布の方法としては、後に述べるように従来公知の塗布方法を用いることができる。
【0056】
本発明において、塗布されるアルカリ水溶液中の有機溶媒と水の比が0.7以下とすることが好ましい。アルカリ水溶液中の有機溶剤により、ポリマーフィルムは溶解等されることはないが、ポリマーフィルム中の添加物質が抽出されることがある。抽出された添加物質は疎水物質であるため、後に塗布する配向膜並びに液晶性分子層の塗膜形成や液晶分子の配向に影響を与えてしまう。ポリマーフィルムからの添加物質の抽出、特に疎水物質の抽出量を低減することが、ポリマーフィルムを用いた光学フィルムの品質/特性の向上に有効である。その意味で、有機溶媒と水の比はより好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.3以下である。
【0057】
鹸化処理したセルロースエステルフィルムに例えば配向膜を形成するときに、架橋剤の過剰添加、加熱促進、電離放射線量アップ等の過酷な架橋条件(硬化条件)を選択せずに、セルロースエステルフィルム上に重合性基を含む多官能モノマー化合物の耐久性のある被膜を形成できる。
【0058】
鹸化処理において、予め室温以上に加熱する工程、セルロースエステルフィルムにアルカリ水溶液を塗布する工程、セルロースエステルフィルムの温度を室温以上且つ適切な湿度に維持する工程、そして、アルカリ水溶液をセルロースエステルフィルムから洗い落とす工程によりアルカリ鹸化処理を実施することから成る。また、ポリマーフィルムを予め室温以上に加熱する工程、あるいは、ポリマーフィルムにアルカリ水溶液を塗布する工程の前に、粉塵を除去するため、並びに膜表面の濡れ性をより均一にするために除電処理、除塵処理あるいは、ウエット処理を実施することもできるこれらの方法は一般に知られている方法を用いることができ、除電方法としては、特開昭62−131500号公報に記載の方法、や除塵方法としては特開平2−43157号公報に記載の方法を挙げることができる。
【0059】
セルロースエステルフィルムを予め室温以上に加熱する工程では、温・熱風の衝突、加熱ロールによる接触伝熱、マイクロ波による誘導加熱、あるいは赤外線ヒーターによる輻射熱加熱等が好ましく利用できる。特に加熱ロールによる接触伝熱は、熱伝達効率が高く小さな設置面積で行える点、搬送開始時のフィルム温度の立ち上がりが速い点で好ましい。一般の2重ジャケットロールや電磁誘導ロール(トクデン社製)が利用できる。本発明において加熱後のセルロースエステルフィルムの最大膜面温度は、40℃〜70℃であることが好ましく、50℃〜70℃がさらに好ましく、60℃〜70℃が最も好ましい。フィルム温度の検出には、一般に市販されている非接触の赤外線温度計が利用でき、上記温度範囲に制御するために、加熱手段に対してフィードバック制御を行ってもよい。
【0060】
セルロースエステルフィルムの最大膜面温度は、上述したようにヒーター等により制御される。図2のグラフは膜面温度と可塑剤量の関係を示している。横軸の膜面温度(℃)は、鹸化処理時の膜面の温度を示している。縦軸の可塑剤量は、鹸化処理後のセルロースエステルフィルムの膜面表層のATR/IR法による測定した可塑剤量を示している。グラフから、ヒーター温度つまり膜面温度が高いほど、可塑剤の量が減少することが理解できる。鹸化処理時に可塑剤が多く抽出されたことを意味する。
【0061】
セルロースエステルフィルムにアルカリ水溶液を塗布する工程では、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター(細い金属線を巻いたロッド)が好ましく利用できる。塗布方式に関しては、各種文献(例えば、Modern Coating and Drying Technology,Edward Cohen and Edgar B. Gutoff, Edits., VCH Publishers, Inc, 1992) に記載されている。アルカリ水溶液の塗布量は、有機溶媒による疎水性物質の抽出量を考慮して、多くなりすぎないことが望ましく、8g/m〜12g/m以下が好ましい。 g/m〜 g/m以下がより好ましい(明細書の加筆版をみると8g/m〜12g/mでしたので削除します)。少ない塗布量域でも安定に操作できるロッドコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、ダイコーターが特に好ましい。また、アルカリ水溶液を塗布し、セルロースエステルフィルムを鹸化処理したのち、アルカリ水溶液をポリマーフィルムから容易に洗い落とすために、アルカリ水溶液はフィルムの下面に塗布されることが好ましい。塗布量の変動をセルロースエステルフィルムの幅方向および塗布時間に対して30%未満に抑制することが好ましい。また、連続塗布方式を採用することもできる。本発明においては、セルロースエステルフィルムを、酸素濃度が0〜18%の範囲にある雰囲気下において鹸化処理することが好ましい。酸素濃度は、0〜15%がさらに好ましく、0〜10%が最も好ましい。低酸素濃度下で鹸化塗布液を(アルカリ水溶液)を塗布することで、フィルムの表面特性を制御でき、密着性の高い表面を得ることができる。雰囲気中の酸素以外の気体成分は、不活性ガス(例、窒素、ヘリウム、アルゴン)であることが好ましく、窒素であることが特に好ましい。
【0062】
鹸化反応に必要なアルカリ水溶液の塗布量は、フィルムの単位面積当りの鹸化反応サイト数に配向膜との密着を発現させるために必要な鹸化深さを乗じた総鹸化サイト数(=理論アルカリ塗布量)が目安となる。鹸化反応の進行にともなってアルカリが消費され反応速度が低下するため、実際には上述の理論アルカリ塗布量の数倍を塗布することが好ましい。具体的には、理論アルカリ塗布量の2〜20倍であることが好ましく、2〜5倍であることがさらに好ましい。
【0063】
アルカリ水溶液の温度は、反応温度(=セルロースエステルフィルムの温度)に等しいことが望ましい。使用する有機溶媒の種類によっては、反応温度がアルカリ水溶液の沸点を越える場合もある。安定な塗布を行うためには、アルカリ水溶液の沸点よりも低い温度であることが好ましく、沸点よりも5℃低い温度であることがさらに好ましく、沸点よりも10℃低い温度であることが最も好ましい。
【0064】
本発明のアルカリ鹸化方法はアルカリ水溶液を塗布した後、鹸化反応が終了するまで、セルロースエステルフィルムの最大膜面温度を室温以上の40℃〜70℃に保つ。なお、本発明において、室温とは15℃である。
【0065】
アルカリ水溶液とセルロースエステルフィルムとの鹸化反応を停止するには、次の方法がある。一つ目の方法は、塗布されたアルカリ水溶液を希釈してアルカリ濃度を下げ、反応速度を低下させる方法であり、二つ目の方法は、アルカリ水溶液が塗布されたセルロースエステルフィルムの温度を下げ、反応速度を低下させる方法であり、三つ目の方法は、酸性の液によって中和する方法である。また、別の方法として、バー(ロッド)を塗布面に当接させてアルカリ水溶液を掻き落とすようにしてもよい。
【0066】
塗布されたアルカリ水溶液を希釈するためには、希釈溶媒を塗布する方法、希釈溶媒を吹き付ける方法、希釈溶媒の入った容器にセルロースエステルフィルムごと浸漬する方法が採用できる。希釈溶媒を塗布する方法と吹き付ける方法がセルロースエステルフィルムを連続搬送しながら実施する上で好ましい方法である。希釈溶媒を塗布する方法は、必要最小限の希釈溶媒量を用いて実施できるために最も好ましい。
【0067】
希釈溶媒の塗布は、既にアルカリ水溶液が塗布されたセルロースエステルフィルム上に希釈溶媒を再度適用できる連続塗布可能な方式であることが望ましい。塗布は、前記アルカリ水溶液の塗布工程で説明と同様のダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコータが好ましく利用できる。アルカリ水溶液と希釈溶媒とを速やかに混合してアルカリ濃度を低下させるためには、希釈溶媒が塗布される微小領域(塗布ビードと呼ぶこともある)において、流れが層流であるダイコーターよりも、流れが一様とならないロールコーターやロッドコーターが好ましい。
【0068】
希釈溶媒は、アルカリ濃度を低下させることが目的であるため、アルカリ水溶液中のアルカリ剤を溶解する溶媒でなければならない。よって、水または有機溶剤と水との混合液を用いることが好ましく、二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。前述したアルカリ鹸化溶液に用いた有機溶剤が優位に用いることができる。好ましい溶剤は水である。
【0069】
希釈溶媒の塗布量は、アルカリ水溶液の濃度に応じて決定する。塗布ビードにおける流れが層流であるダイコーターの場合、塗布量は、元のアルカリ濃度を1.5〜10倍に希釈することが好ましく、2〜5倍に希釈することがさらに好ましい。ロールコーターやロッドコーターの場合は、塗布ビード内の流動が一様でないため、アルカリ水溶液と希釈溶媒との混合が発生し、この混合した液が再塗布される。したがって、この場合は希釈溶媒の塗布量によって希釈率を特定することができないため、希釈溶媒塗布後のアルカリ濃度を測定する必要がある。ロールコーターやロッドコーターにおいても、塗布量は、元のアルカリ濃度を1.5〜10倍に希釈することが好ましく、2〜5倍に希釈することがさらに好ましい。
【0070】
アルカリによる鹸化反応を迅速に停止するため、酸を用いることもできる。少ない量で中和するため、強酸を用いることが好ましい。さらに、水洗の容易さを考慮すると、アルカリと中和反応後に生成する塩が水に対する溶解度が高い酸を選定することが好ましい。塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、メタンスルホン酸、クエン酸が特に好ましい。
【0071】
塗布されたアルカリ水溶液を酸で中和するためには、酸溶液を塗布する方法、酸溶液を吹き付ける方法、あるいは酸溶液の入った容器にセルロースエステルフィルムごと浸漬する方法が採用できる。酸溶液を塗布する方法と吹き付ける方法がセルロースエステルフィルムを連続搬送しながら実施する上で好ましい。酸溶液を塗布する方法は、必要最小限の酸溶液を用いて実施できるために最も好ましい。
【0072】
酸溶液の塗布は、既にアルカリ水溶液が塗布されたセルロースエステルフィルム上に酸溶液を再度適用できる連続塗布可能な方式であることが望ましい。塗布は、前記塗布工程で説明と同様のダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター(細い金属線を巻いたロッド)が好ましく利用できる。アルカリ水溶液と希釈溶媒とを速やかに混合してアルカリ濃度を低下させるためには、希釈溶媒が塗布される微小領域(塗布ビードと呼ぶこともある)において、流れが層流であるダイコーターよりも、流れが一様とならないロールコーターやロッドコーターが好ましい。
【0073】
酸溶液の塗布量は、アルカリの種類とアルカリ水溶液の濃度に応じて決定する。塗布ビードにおける流れが層流であるダイコーターの場合、酸の塗布量は、元のアルカリ塗布量の0.1〜5倍であることが好ましく、0.5〜2倍であることがさらに好ましい。ロールコーターやロッドコーターの場合は、塗布ビード内の流動が一様でないため、アルカリ水溶液と酸性溶液との混合が発生し、混合した液が再塗布される。したがって、この場合は酸性溶液の塗布量によって中和率を特定することができないため、酸溶液塗布後のアルカリ濃度を測定する必要がある。ロールコーターやロッドコーターにおいては、酸溶液塗布後のpHが4〜9になる様に酸溶液の塗布量を決定することが好ましく、6〜8になるように決定することがさらに好ましい。
【0074】
セルロースエステルフィルムの温度を降下させて、鹸化反応を停止することもできる。反応を促進させるために室温以上に保たれた状態から、充分に温度低下させることによって実質的に鹸化反応を停止させる。セルロースエステルフィルムの温度を低下させる手段は、セルロースエステルフィルムの片面が濡れていることを考慮して決定する。塗布の反対面への冷風の衝突、あるいは、冷却ロールによる接触伝熱等が好ましく採用できる。冷却後のフィルム温度は、5℃〜60℃であることが好ましく、10℃〜50℃であることがさらに好ましく、15℃〜30℃であることが最も好ましい。フィルム温度は、非接触式の赤外線温度計で測定することが好ましい。冷却手段に対してフィーッドバック制御を行い、冷却温度を調節することもできる。
【0075】
洗浄工程は、アルカリ水溶液を除去するために実施する。アルカリ水溶液が残っていると、鹸化反応が進行するばかりでなく、後に塗布する配向膜ならびに液晶性分子層の塗膜形成や液晶分子の配向に影響を及ぼす。洗浄は、洗浄水を塗布する方法、洗浄水を吹き付ける方法、あるいは、洗浄水の入った容器にポリマーフィルムごと浸漬する方法で実施できる。洗浄水を塗布する方法と吹き付ける方法が、ポリマーフィルムを連続搬送しながら実施するために好ましい。洗浄水を吹き付ける方法では、噴流によってポリマーフィルム上の洗浄水とアルカリ性塗布液との乱流混合が得られるために、特に好ましい。
【0076】
水の吹きつけ方法は、塗布ヘッド(例、ファウンテンコーター、フロッグマウスコーター)を用いる方法、あるいは、空気の加湿や塗装、タンクの自動洗浄に利用されるスプレーノズルを用いる方法で実施できる。塗布方式に関しては、「コーティングのすべて」荒木正義編集、(株)加工技術研究会(1999年)に記載がある。円錐状あるいは扇状のスプレーノズルをセルロースエステルフィルムの幅方向に配列して、全幅に水流が衝突するように配置することができる。市販のスプレーノズル(例えば、(株)いけうち製、スプレーイングシステムズ社製)を用いてもよい。
【0077】
水の吹き付け速度は、大きいほうが高い乱流混合が得られる。ただし、速度が大きいと、連続搬送するセルロースエステルフィルムの搬送安定性を損なう場合もある。吹き付けの衝突速度は、50〜1000cm/秒が好ましく、100〜700cm/秒がさらに好ましく、100〜500cm/秒が最も好ましい。
【0078】
水洗に使用する水の量は、下記に定義される理論希釈率を上回る量である。理論希釈倍率=水洗水の使用量[cc/m2 ]÷アルカリ鹸化溶液の塗布量[cc/m2 ]、すなわち、水洗に使用される水の全てがアルカリ性塗布液の希釈混合に寄与したという仮定の理論希釈率を定義する。実際には、完全混合は起こらないので、理論希釈率を上回る水洗水量を使用することとなる。用いたアルカリ性塗布液のアルカリ濃度や副次添加物、溶媒の種類にもよるが、少なくとも100〜1000倍、好ましくは500〜1万倍、さらに好ましくは1000〜十万倍の理論希釈が得られる水洗水を使用する。
【0079】
水吹き付け量のバラツキは、走行するポリマーフィルムの幅方向および塗布時間に対して30%未満に制御することが好ましい。ただし、ポリマーフィルムの幅方向の両端では、アルカリ水溶液の塗布量や中和に使用した酸溶液の塗布量が多いことがしばしば発生する。塗布量が多い部分の洗浄性を確保するために、幅方向両端の水吹き付け量を増やすこともできる。塗布ヘッドを用いる場合は、両端の流量が多くなるように水が吐出するスリットのクリアランスを広く設定する。また、局所的に両端に水膜を供給するために幅が狭いコーターを別途、設置してもよい。幅が狭いコーターは、複数設置することもできる。スプレーノズルを用いる場合も、両端に局所的に水吹き付けるためのノズルを設置する。
【0080】
水洗で一定量の水を用いる場合、一度に全量適用するよりも数回に分割して適用する回分式洗浄方法が好ましい。すなわち、水の量を幾つかに分けて、セルロースエステルフィルムの搬送方向にタンデムに設置した複数の水洗手段に供給する。一つの水洗手段と次の水洗手段との間には適当な時間(距離)を設けて、拡散によるアルカリ性塗布液の希釈を進行させる。さらに好ましくは、搬送されるセルロースエステルフィルムに傾斜を設けるなどして、フィルム上の水がフィルム面に沿って流れる様にすれば、拡散に加えて、流動による混合希釈が得られる。最も好ましい方法としては、水洗手段と水洗手段の間にセルロースエステルフィルム上の水膜を除去する水切り手段を設けることで、さらに水洗希釈効率を高められる。具体的な水切り手段としては、ブレードコーターに用いられるブレード、エアナイフコーターに用いられるエアナイフ、ロッドコーターに用いられるロッド、ロールコーターに用いられるロールが挙げられる。タンデムに配置された水洗手段の数は、多いほうが有利である。ただし、設置スペースならびに設備コストの観点から、通常は2〜10段、好ましくは2〜5段が使用される。
【0081】
水切り手段後の水膜厚みは、薄い方が好ましいが、用いる水切り手段の種類によって最低水膜厚みが制限される。ブレード、ロッド、ロールなど、物理的に固体をポリマーフィルムに接触させる方法においては、例え固体がゴムなどの硬度の低い弾性体であったとしても、フィルム表面にキズを付けたり、弾性体が磨り減ったりするので有限の水膜を潤滑流体として残す必要がある。通常は、数μm以上、好ましくは10μm以上の水膜を潤滑流体として残存させる。
【0082】
極限まで水膜厚みを減少させられる水切り手段としては、エアナイフが好ましい。充分な風量と風圧を設定することにより、水膜厚みをゼロに近づけることが出来る。ただし、エアの吹出し量が大きすぎると、ばたつきや寄りなど、セルロースエステルフィルムの搬送安定性に影響を及ぼすことがあるので、好ましい範囲が存在する。セルロースエステルフィルム上の元の水膜厚み、フィルムの搬送速度にもよるが、通常は10〜500m/秒、好ましくは20〜300m/秒、より好ましくは30〜200m/秒の風速を使用する。また、均一に水膜除去を行うためには、セルロースエステルフィルムの幅方向の風速分布を、通常は10%以内、好ましくは5%以内になる様、エアナイフの吹出し口やエアナイフへの給気方法を調整する。搬送するセルロースエステルフィルム表面とエアナイフ吹出し口の間隙は、狭い方が水切り能が増すが、セルロースエステルフィルムと接触して傷付ける可能性が高くなるため、適当な範囲がある。通常は、10μm〜10cm、好ましくは100μm〜5cm、さらに好ましくは500μm〜1cmの間隙をもって、エアナイフを設置する。さらに、エアナイフと対向する様に、セルロースエステルフィルムの水洗面と反対側にバックアップロールを設置することで、間隙の設定が安定するとともに、フィルムのバタツキやシワ、変形などの影響を緩和することができるために好ましい。
【0083】
洗浄水には、純水を用いることが好ましい。本発明に用いられる純水とは、比電気抵抗が少なくとも0.1MΩ以上であり、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの金属イオンは1ppm未満、クロル、硝酸などのアニオンは0.1ppm未満であることが好ましい。純水は、逆浸透膜、イオン交換樹脂、蒸留などの単体、あるいはそれらの組み合わせによって得ることができる。
【0084】
洗浄水の温度は、高い方が洗浄能力が上がる。しかし、搬送されるセルロースエステルフィルム上に水を吹き付ける方法においては、空気と接触する水の面積が大きく、高温ほど蒸発が著しくなるため、周囲の湿度が増し、結露する危険性が高くなる。このため、洗浄水の温度は、通常は5〜90℃、好ましくは25℃〜80℃、さらに好ましくは25℃〜60℃の範囲で設定する。
【0085】
アルカリ鹸化溶液の成分、または鹸化反応の生成物が水に容易に溶けない場合、水洗工程の前または後に水に不溶な成分を除去するための溶剤洗浄工程を付加しても良い。溶剤洗浄工程は、上に述べた水洗方法、水切り手段を利用することができる。用いる有機溶剤については、前述のアルカリ鹸化溶液に使用できる溶剤のほか、新版溶剤ポケットブック(オーム社、1994年刊)に記載の溶剤を使用することができる。
【0086】
洗浄工程の次に乾燥工程を実施することもできる。通常は、エアナイフなどの水切り手段で充分に水膜を除去できることが多く、乾燥工程は必要でないことあるが、セルロースエステルフィルムをロール状に巻き取る前に、好ましい含水率に調整するために加熱乾燥してもよい。逆に、設定された湿度を有する風で調湿することもできる。乾燥風の温度は30〜200℃が好ましく、40〜150℃がより好ましく、50〜120℃が特に好ましい。
【0087】
本発明のアルカリ水溶液による鹸化方法は上述した鹸化反応工程の後に連続して機能層の塗設を行うことができる。塗布により片面に鹸化処理を実施し、その上に機能層の塗設を行うことにより、機能層を設けた後にフィルムをロール状に巻き取っても、機能層面とフィルムの反対面との間で貼りついたりすることを防止することができる。
【0088】
[アルカリ水溶液]
本発明の鹸化処理に使用されるアルカリ水溶液について説明する。本発明のアルカリ水溶液は、水または有機溶剤と水との混合液にアルカリを溶解して調製できる。好ましい有機溶媒は、炭素原子数8以下のアルコール、炭素原子数が6以下のケトン、炭素原子数が6以下のエステル、炭素原子数が6以下の多価アルコールから選ばれる1種または2種以上の有機溶媒である。
【0089】
[有機溶媒]
本発明のアルカリ水溶液の溶媒は、水及び有機溶媒の混合溶液からなる。有機溶媒としては、水と混和可能な有機溶媒であればいずれも用いることができる。その中でも好ましい有機溶媒は、無機性/有機性値(I/O値)が0.5以上、且つ溶解度パラメーターが16〜40[mJ/m]の範囲のものが好ましい。より好ましくは、I/O値が0.6〜10、且つ溶解度パラメーターが18〜31[mJ/m]である。I/O値がこの範囲よりも無機性が強いか、又は溶解度パラメーターが低いと、アルカリ鹸化速度が低下し、また鹸化度の全面均一性も不満足となる。一方、I/O値が上記範囲よりも有機性の側であるか、又は溶解度パラメーターが高溶解性の側では、鹸化速度は速いが、ヘイズを生じ易く、したがって全面均一性の点では同様に不満足となる。溶解度パラメーター及びI/O値が上記の範囲にあって本発明に好ましく用いることができる有機溶媒の例には下記の溶媒が挙げられる。
【0090】
有機溶剤については、新版溶剤ポケットブック(オーム社、1994年刊)に記載があり、有機溶剤の具体例としては、一価アルコール(例、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フッ素化アルコールなど)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、多価アルコール(例、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)およびエーテル(例、メチルセルソルブ、エチレングリコールジエチルエーテル)が挙げられる。特に好ましいものは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンである。
【0091】
有機溶剤は、ポリマーフィルムを溶解したり膨潤したりしないことが必要である。また、アルカリ鹸化溶液の塗布が容易になるように、アルカリ水溶液の液物性の項で記載されるように、表面張力が適度に低い有機溶剤を選択することも望ましい。また、有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度および反応時間に応じて決定する。短い時間で鹸化反応を完了するためには、高い濃度に溶液を調製することが好ましい。ただし、溶媒濃度が高すぎるとポリマーフィルム中の成分(可塑剤など)が抽出されたり、フィルムの過度の膨潤が起こる場合があり、適切に選択する。水と有機溶媒の混合比は、3/97〜85/15質量比が好ましい。より好ましくは5/95〜60/40質量比であり、さらに好ましくは15/85〜40/60質量比である。この範囲において、フィルムの光学特性を損なうことなく容易にフィルム全面が均一に鹸化処理される。
【0092】
[アルカリ剤]
アルカリ水溶液のアルカリ剤は、無機塩基および有機塩基のいずれも使用できる。低い濃度で鹸化反応をおこすためには強塩基が好ましい。アルカリ金属の水酸化物(例、NaOH、KOH、LiOH)、アミン(例、パーフルオロトリブチルアミン、トリエチルアミン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン等)、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシト゛(アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、および錯塩の遊離塩基(例、[Pt(NH3 )6](OH)4 )が好ましく、アルカリ金属の水酸化物がさらに好ましく、NaOHおよびKOHが最も好ましい。
【0093】
アルカリ水溶液の濃度は、使用するアルカリの種類、反応温度および反応時間に応じて決定する。短い時間で鹸化反応を完了するためには、高い濃度に溶液を調製することが好ましい。ただし、アルカリ濃度が高すぎるとアルカリ水溶液の安定性が損なわれ、長時間塗布において析出する場合もある。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5規定(N)であることが好ましく、0.5〜5Nであることがさらに好ましく、0.5〜3Nであることが最も好ましい。
【0094】
高濃度のアルカリ水溶液は環境雰囲気のCO2 を吸収して溶液中で炭酸となりpHを下げるとともに、炭酸塩の沈殿物を発生させやすくなるため、環境雰囲気のCO2 濃度は5000ppm以下が好ましい。環境雰囲気のCO2 の吸収を抑制するために、アルカリ水溶液の塗布コーターを半密閉構造としたり、乾燥空気、不活性ガスやアルカリ水溶液の有機溶剤飽和蒸気で覆うようにしたりすることがより好ましい。
【0095】
[界面活性剤]
本発明のアルカリ水溶液は、界面活性剤を含有することもできる。界面活性剤を添加することによって、たとえ有機溶媒がフィルム含有物質を抽出したとしてもアルカリ水溶液中に安定に存在させ、後の水洗工程においても抽出物質が析出、固体化しない。界面活性剤の濃度は、ポリマーフィルムからアルカリ水溶液中に抽出された疎水性添加物を安定に分散できる濃度を設定する。アルカリ水溶液に使用する有機溶剤がポリマーフィルムを溶解したり膨潤したりしないとすると、フィルムより抽出される添加物はフィルム表面近傍からのみである。疎水性添加物の抽出量は、本発明で塗布する1〜50cc/m2 のアルカリ水溶液塗布量中に、最大でも1質量%と見積もれる。界面活性剤の濃度は、この抽出量の10倍である10質量%添加すれば、十分な分散特性が得られることが分かった。一方、界面活性剤の種類によっては、水洗工程で十分洗い落とされずに残留すると、後にポリマーフィルム上に配向膜を塗布する際に、フィルムと配向膜との結合(密着)に支障をきたす場合がある。また、液晶性分子を塗布する際にも液晶性分子の配向を妨げることがあるため、必要以上に添加することは好ましくない。界面活性剤の添加濃度は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がさらに好ましい。本発明のアルカリ鹸化方法に好ましく用いられる界面活性剤については、本発明のアルカリ鹸化液に溶解または分散可能なものであれば特に制限はない。ノニオン界面活性剤、イオン性界面活性剤(アニオン、カチオン、両性界面活性剤)等のいずれをも好適に用いることができる。界面活性剤の中でも、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤が溶解性と鹸化性能の観点から好ましく用いられる。
【0096】
これらの界面活性剤は、1種類を単独で添加しても異なる陰イオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤を1種類以上、または陰イオン性とノニオン性を組み合わせて添加してもよい。
【0097】
以下、本発明に使用しうる界面活性剤について順次説明する。
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0098】
好ましいノニオン界面活性剤としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(1) R1−L1−Q1
式中、R1は炭素数8以上の直鎖または分岐のアルキル基(置換基を有していても良い)を表し、単素数8〜22のアルキル基が好ましく、特に好ましいのは炭素数10〜18のアルキル基である。該アルキル基は、適当な置換基を有していても良い。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基などが挙げられる。L1はRIとQ1を連結する基を表し、直接結合または2価の連結基を表し、好ましくは、単結合、−O−、−CO−、−NR11−、−S−、−SO2 −、−PO(OR12)−、アルキレン基、アリーレン基またはこれらを組み合わせて形成される2価の連結基である。ここでR11は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。R12はアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。L1としては、直接結合、−O−、−CO−、−NR11−、−S−、−SO2 −、アルキレン基、アリーレン基を含むことが好ましく、−CO−、−O−、−NR11−、アルキレン基、またはアリーレン基を含んでいることが特に好ましい。L1が、アルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラブチレン、ヘキサメチレン基等が挙げられる。L1が、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン、ナフタレン基等が挙げられる。L1が、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、特に好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。L1として挙げられた基は、適当な置換基を有していても良い。このような置換基としては先にR11における置換基として挙げた置換基と同様なものを挙げることができる。Q1はノニオン親水性基を表す。
【0099】
より好ましくは、一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
一般式(2) R2−L2−Q2
式中R2、L2は、各々式(1)中のR1、L1と同一の内容を表す。Q2は、ポリオキシエチレンユニット(重合度5〜150)、ポリグリセリンユニット(重合度3〜30)、親水性糖鎖ユニットから選ばれるノニオン親水性基が好ましく用いられる。特に重合度10〜50のポリオキシエチレンユニット、重合度5〜15のポリグリセリンユニットに加え、グルコース、アラビノース、フルクトース、ソルビトール、マンノース等の親水性糖鎖ユニットが好ましい。
【0100】
具体的には、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンエチレンアビエチルエーテル、ポリオキシエチレンノニンエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノステアレート、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ジスチレン化フェノールポリエチレンオキシド付加物、トリベンジルフェノールポリエチレンオキシド付加物、オクチルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤の質量平均分子量は、300〜50000が好ましく、500〜5000が特に好ましい。
【0101】
(アニオン界面活性剤)
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、αオレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が好適に挙げられる。
【0102】
好ましいアニオン界面活性剤としては、前記一般式(1)においてQ1がアニオン性基を表す化合物が挙げられる。より好ましくは、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(3) R3−L3−Q3
式中、R3は炭素数8以上の直鎖または分岐のアルキル基(置換基を有していても良い)を表し、単素数8〜22のアルキル基が好ましく、特に好ましいのは単素数10〜18のアルキル基である。該アルキル基は、適当な置換基を有していても良い。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基などが挙げられる。L3は2価の連結基を表し、好ましくは、下記群から選ばれるユニットを組み合わせて得られる極性部分構造を有する2価の連結基である。
ユニット:−O−、−CO−、−NR5−(R5は炭素数1〜5のアルキル基)、−OH、−CH=CH−、−SO2 −、
具体的には、上記一般式(3)中のL3において、必ず、上記ユニットの少なくとも1つを含む様に構造を選択すればよい。特に好ましいのは、極性部分構造としてエステル基(−COO−、−OCO−)、アミド基(−CONR5−、−NR5CO−)、水酸基(−OH)、−CH=CH−を有する場合である。Q3はアニオン親水性基を表し、好ましくは−COOM、−OSO3M、−P(=O)(OR21)OM、−SO3 Mで表される基(ここでMはカチオンを、R21はMまたは単素数1〜3のアルキル基を表す)であり、特に好ましいのは−SO3 Mである。Mはアニオン性基の対カチオンを表し、水素イオン、アルカリ金属イオン(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アンモニウムイオンが好ましい。特に好ましいのは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
【0103】
(カチオン界面活性剤)
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
【0104】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等が挙げられる。
【0105】
以上の界面活性剤のうち、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらもまた前記界面活性剤に包含される。前記界面活性剤は、一種単独で使用してもよいし、併用により効果を損なわない限りにおいては、2種以上を併用してもよい。また、これらの界面活性剤とともに、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤を併用しても良い。例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型、パーフルオロアルキルベタイン等の両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタン等の非イオン型が挙げられる。
【0106】
アルカリ水溶液には、ノニオン活性剤とアニオン活性剤またはノニオン活性剤とカチオン活性剤を共存させて用いることも本発明の効果が高められて好ましい。
【0107】
これらの界面活性剤のアルカリ水溶液に対する添加量は、好ましくは、0.001〜20質量%であり、より好ましくは、0.01〜10質量%であり、特に好ましくは、0.03〜3質量%である。添加量が、0.001質量%より少ない場合には、界面活性剤の添加効果が得難く、20質量%よりも多い場合には、鹸化性が低下する傾向がある。
【0108】
[消泡剤]
さらに、本発明におけるアルカリ水溶液には消泡剤を含有させることが好ましい。この添加剤は、アルカリ水溶液中に、好ましくは0.001〜5質量%、特に好ましくは0.005〜3質量%の濃度で含有させることができる。この範囲において、フィルム表面への微小な気泡の付着も無くなり、アルカリ処理による鹸化がムラ無く均一に進行する。特に、長尺フィルムを連続して迅速に処理するのに有効である。
【0109】
消泡剤としては、ヒマシ油、亜麻仁油等の油脂系、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸系、天然ワックス等の脂肪酸エステル系、ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコール等のアルコール系、ジ−t−アミルフェノキシエタノール、ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ、3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系、トリブチルフォスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェート等の燐酸エステル系、ジアミルアミン等のアミン系、ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミド等のアミド系、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カリウム、羊毛オレイン酸のカルシウム塩等の金属石鹸系、ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、フロロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンとポリアルキレンオキサイドとの共重合体等のシリコーンオイル、及びその溶液型、エマルジョン型、ペースト型シリコーンオイル等のシリコーン系の消泡剤が挙げられる。
【0110】
本発明に用いるアルカリ水溶液には、アルカリ水溶液への界面活性剤、消泡剤の溶解助剤として、上述した有機溶剤以外の有機溶媒を添加することができる。好ましくは水への溶解度を持つ溶媒であれば特に制限はない。例えば、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミン、フッ化アルコール(例えば、Cn F2n+1(CH2 )k OH(nは3〜8の整数、kは1または2の整数)、1,2,2,3,3−ヘプタフロロプロパノール、ヘキサフロロブタンジオール、パーフロロシクロヘキサノール等)等を挙げることができる。これらの有機溶剤の含有量は使用液の総質量に対して0.1〜5%が好ましい。
【0111】
[防黴剤/防菌剤]
本発明に用いるアルカリ水溶液には、さらに、防黴剤及び/または防菌剤を含有させることが好ましい。本発明において使用される防黴剤及び防菌剤は、アルカリ鹸化に悪影響を及ぼさないものであれば何でもよい。具体的には、L.E.West,"Water Quality Criteria"Phot.Sci.and Eng.,Vol9 No.6(1965)記載の殺菌剤、特開昭57−8542号、同58−105145号、同59−126533号、同55−111942号、同57−157244号公報記載の各種防黴剤、「防菌防黴の化学」堀口博著・三共出版(昭57)、「防菌防黴技術ハンドブック」日本防菌防黴学会・技報堂(昭61)に記載されているような化学物などを用いることができる。これら防黴剤及び/または防菌剤の添加量は、アルカリ水溶液中に0.01〜50g/Lであることが好ましく、より好ましくは0.05〜20g/Lである。
【0112】
[その他の添加剤]
なお、本発明に用いるアルカリ水溶液には、他の添加剤を併用しても良い。例えば、アルカリ液安定化剤(酸化防止剤等)、水溶性化合物(ポリアルキレングリコール類、天然水溶性樹脂等)が挙げられる。なお、本発明においてアルカリ水溶液の添加剤は、これらに限定されるものではない。
【0113】
[水]
また、アルカリ水溶液に用いる水としては、日本国水道法(昭和32年法律第177号)及びそれに基づく水質基準に関する省令(昭和53年8月31日厚生省令第56号)、同国温泉法(昭和23年7月10日法律第125号及びその別表)、及び、WHO規定水道水基準によって規定される水中の混入の状態に於ける各元素やミネラル等への影響、等に基づくものが好ましい。
【0114】
本発明の効果の達成をより確実にするために、上述した水を用いることが好ましく、アルカリ水溶液のカルシウム濃度は、0.001〜400mg/Lであるのが好ましく、0.001〜150mg/Lであるのがさらに好ましく、0.001〜10mg/Lであるのが特に好ましい。マグネシウム濃度は、0.001〜400mg/Lであるのが好ましく、0.001〜150mg/Lであるのがさらに好ましく、0.001〜10mg/Lであるのが特に好ましい。カルシウムやマグネシウム以外の他の多価の金属イオンも含まれないことが好ましい。多価金属イオンの濃度は0.002〜1000mg/Lであることが好ましい。一方、アルカリ水溶液に塩化物イオンや炭酸イオンなどのアニオンも含まないことが好ましい。塩化物イオン濃度は0.001〜500mg/Lであることが好ましく、0.001〜300mg/Lであるのがさらに好ましく、0.001〜100mg/Lであるのが特に好ましい。また、炭酸イオンも含まれないことが好ましい。炭酸イオン濃度は0.001〜3500mg/Lであることが好ましく、0.001〜1000mg/Lであるのがさらに好ましく、0.001〜200mg/Lであるのが特に好ましい。これらの濃度範囲において、溶液中の不溶解物の生成が抑えられる。
【0115】
[アルカリ水溶液の液物性]
本発明に供されるアルカリ水溶液は上記で説明の組成物から構成されるが、以下に記載の液体物性の範囲になるように調整されることが好ましい。アルカリ水溶液は、その表面張力が45mN/m以下であリ、且つ粘度が0.8〜20mPa・sであることが好ましい。より好ましくは、表面張力が20〜40mN/mであり、且つ粘度が1〜15mPa・sである。この範囲で、アルカリ水溶液の塗布が搬送速度に応じて安定な塗布操作が容易に行える様になり、且つフィルム表面への液の濡れ性、フィルム表面に塗布した溶液の保持性、鹸化処理後のフィルム表面からのアルカリ液の除去性が充分に行われる。また、アルカリ水溶液の密度は、0.65〜1.05g/cm3であることが好ましい。より好ましくは、0.70〜1.00g/cm3であり、さらには0.75〜0.95g/cm3であることが特に好ましい。この粘度範囲において、搬送での風圧による風ムラ、自重により搬送方向に平行な塗布スジ等を生じることなく鹸化処理が均一に行われる。さらには、本発明のアルカリ水溶液の電気伝導度は、1mS/cm〜100mS/cmであることが好ましく、2mS/cm〜50mS/cmであることがより好ましく、3mS/cm〜50mS/cmであることが特に好ましい。この電気伝導度の範囲において、鹸化反応が均一に進行し、且つ鹸化反応後の鹸化液のフィルム表面からの除去も容易となる。電気伝導度が1mS/cmよりも小さいと、鹸化処理後のフィルム表面に残存する不純物のために輝点故障が多く発生したり、光学補償層の密着不良が生じやすくなり好ましくない。また、アルカリ鹸化溶液の液特性として、測定波長400nmにおける液の吸光度は2.0未満であることが好ましい。
【0116】
[セルロースエステルフィルムの表面特性]
塗布による鹸化を行うことで「輝点故障」や「表示ムラ」を改善できるが、「輝点故障」を確実に改善するには、鹸化後のフィルムの表面特性を調節することが必要であることがわかった。また逆に鹸化後のフィルムの表面特性を調節しないと塗布による鹸化処理を行っても輝点故障が発生し、さらには液晶表示装置を長期にわたり使用した後に「雲状故障」を生じる場合があることがわかった。
【0117】
「輝点故障」とは、液晶表示装置の画面上に生ずる星状に輝く欠陥であり、画面が黒表示の場合に容易に観察することができる。このような輝点故障について調べた結果、輝点は配向膜あるいは光学異方性層などの屑が付着して生じていることがわかった。これらの屑は、液晶表示装置の寸法に合わせて光学補償シートを切断(あるいは打ち抜き)する際の衝撃により、フィルムから配向膜(と同時に光学異方性層)が僅かながら剥離することで生じることがわかった。
【0118】
「雲状故障」とは、液晶表示装置の画面上に、雲状にくすんだように見えるムラが生じる欠陥であり、画面が白表示の場合に観察し易い欠陥である。この雲状故障は、液晶表示装置を製造した直後には発生し難く、長期経時後に発生し易い。このような雲状ムラについて調べた結果、雲状ムラは、光学補償シートに用いられるセルロースエステルフィルム中の低分子量化合物(例えば可塑剤など)が、長期経時後に配向膜と光学異方性層の界面にまで析出することで発生することがわかった。さらに雲状故障は、従来のような浸漬による鹸化処理より、塗布による鹸化処理を施したほうが生じ易いこともわかった。
【0119】
セルロースエステルフィルムの、塗布による鹸化処理が施された面の表面特性を、下記の(1)〜(6)の表面特性のうちの少なくとも一つ(好ましくは複数)を満足させることで、塗布による鹸化処理を用いる利点(フィルムの平滑な面状を保てることなど)に加えて、光学補償シートを液晶表示装置に用いた際の輝点故障を、雲状故障の発生もなく改善できることがわかった。セルロースエステルフィルムに塗布による鹸化処理を施した場合に、「輝点故障」および「雲状故障」の発生を抑えることのできるフィルムの表面特性を以下に記載する。
(1)フィルム表面の鹸化深さが、0.010〜0.8μmの範囲にあること。鹸化深さは、0.020〜0.6μmの範囲にあることが好ましく、0.040〜0.4μmの範囲にあることがより好ましい。
(2)表面における化学結合の存在量の比を示すC=O/C−O比が0〜0.6の範囲にあり、かつC−C/C−O比が0.45〜0.75の範囲にあること。C=O/C−O比は、0〜0.55の範囲にあることが好ましく、0〜0.5の範囲にあることがより好ましい。C−C/C−O比は、0.5以上0.7の範囲にあることが好ましく、0.5〜0.65の範囲にあることがより好ましい。
(3)セルロースエステルフィルムに可塑剤としてリン化合物添加されている場合、表面における元素の存在量の比を示すO/C比が0.62〜0.75の範囲にあり、かつP/C比が0.007〜0.015の範囲にあること。表面のO/C比は、0.63〜0.73の範囲にあることが好ましく、0.64〜0.71の範囲にあることがより好ましい。表面のP/C比は、0.008〜0.0145の範囲にあることが好ましく、0.009〜0.014の範囲にあることがより好ましい。
(4)セルロースエステルフィルムとしてセルロースアセテートフィルムを用いた場合、フィルム表面のアセチル置換度が、1.8〜2.7の範囲にあること。アセチル置換度は、1.85〜2.5の範囲にあることが好ましく、1.9〜2.4の範囲にあることがより好ましい。
(5)フィルム表面における水との接触角が、20〜55度の範囲にあること。水との接触角は、25〜50度の範囲にあることが好ましく、30〜45度の範囲にあることがより好ましい。
(6)フィルム表面における表面エネルギーは55〜75mN/mの範囲にあることが好ましい。
【0120】
これらの表面特性を達成することにより輝点故障と雲状故障が抑えられる理由についてはわかっていないが、以下のように推測される。例えば、鹸化深さが深すぎる場合には、表面付近のセルロースエステルの主鎖などの切断が生じていると推測される。この主鎖の切断によりフィルム表面のセルロースエステルの分子量が低下して脆くなり、フィルムと配向膜の密着性が低下すると考えられる。そしてフィルム表面が過度に(表面から深くまで)鹸化処理されることにより低分子量化合物(可塑剤など)の発生が多くなり表面付近に多く付着すると考えられる。長期経時後に低分子量化合物が配向膜の表面へと析出することで雲状故障を生じると推測される。一方、鹸化深さが浅すぎる場合には、鹸化処理が不充分であるためにフィルムと配向膜の密着性が低下すると考えられる。そして鹸化深さが極端に浅いためにセルロースエステルフィルム表面の極近傍に微量に存在する低分子量化合物(可塑剤など)が長期経時後に配向膜の表面にまで析出しやすいと考えられる。
【0121】
セルロースエステルフィルムの表面特性を上記の範囲に調節するには、塗布による鹸化処理の条件を調節することで達成できる。表面特性を調節するための最大のポイントは、18%以下の低酸素雰囲気下でアルカリ水溶液をセルロースエステルフィルムに塗布すること、およびこの後アルカリ水溶液を30℃〜80℃の洗浄液(温水が好ましい)で洗浄することである。
【0122】
[表面特性の評価方法]
セルロースエステルフィルムの表面特性(1)〜(5)の評価方法については、WO02/46809号公報明細書の27頁〜30頁に記載の方法で行うことが出来る。表面特性の表面エネルギー(評価項目(6))の評価方法は、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社、1989年刊行)に記載の接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることが出来る。本発明のセルロースエステルフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知の溶媒をセルロースエステルフィルムに滴下し、液滴表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
【0123】
[光学補償シート]
鹸化処理したセルロースエステルフィルムは、光学補償シートの透明支持体として好ましく用いられる。光学補償シートは、アルカリ水溶液を塗布することにより鹸化したポリマーフィルム、配向膜形成用樹脂層、および液晶性分子の配向を固定化した光学異方性層が、この順に積層された層構成を有する。配向膜形成用樹脂層として後述するように、重合性基を含む多官能モノマー化合物が用いられる。
【0124】
配向膜の形成においては、セルロースエステルフィルムを加熱する工程、ポリマーフィルムの配向膜側の表面にアルカリ水溶液を塗布する工程、アルカリ水溶液塗布面の温度を維持する工程、反応を停止する工程、アルカリ水溶液を洗浄してフィルムの表面から除去する工程に次いで、配向膜を塗布して乾燥する工程を付加することもできる。さらに、配向膜を塗布、乾燥後に配向膜表面をラビング処理し、液晶性分子層を塗布、乾燥して、最終的な光学補償シートまで完成することもできる。セルロースエステルフィルムの鹸化処理のみならず、配向膜、液晶性分子層を一貫して形成することにより、高い生産性が得られる。さらに、鹸化処理〜配向膜塗布までの時間経過がない、活性化した鹸化面の劣化が少ない、鹸化処理の水洗工程が湿式の除塵と兼ねられる、複数回の送り出し、巻取りに伴うロール末端部のロスが発生しないことが、利点として挙げられる。
【0125】
光学補償シートは、鹸化処理したセルロースエステルフィルムからなる透明支持体、その上に設けられた配向膜および配向膜上に形成された円盤状構造単位を有する光学異方層からなる。配向膜は架橋されたポリマーからなるラビング処理された膜であることが好ましい。鹸化処理したセルロースエステルフィルムから可塑剤の再抽出量が少ないので、架橋剤の過剰添加、加熱促進、電離放射線量アップ等の過酷な架橋条件(硬化条件)を選択する必要がない。
【0126】
光学異方層に用いられる円盤状構造単位を有する化合物としては、低分子量の円盤状液晶性化合物(モノマー)または重合性円盤状液晶性化合物の重合により得られるポリマーを用いることができる。円盤状化合物(ディスコティック化合物)は、一般に、ディスコティック液晶相(即ち、ディスコティックネマチック相)を有する化合物とディスコティック液晶相を持たない化合物に大別することができる。円盤状化合物は、一般に負の複屈折を有する。光学異方層は、ディスコティック化合物の負の複屈折性を利用したものである。
【0127】
[配向膜]
光学異方層の配向膜は、架橋されたポリマーからなる膜をラビング処理して形成することが好ましい。配向膜は、架橋された2種のポリマーからなることがさらに好ましい。2種のポリマーの一方は、それ自体架橋可能なポリマーまたは架橋剤により架橋されるポリマーである。配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱あるいはpH変化により、ポリマー間で反応させて形成するか、あるいは、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成することができる。
【0128】
ポリマーの架橋は、ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を透明支持体上に塗布した後、加熱することにより実施できる。配向膜を透明支持体上に塗設した後から、光学補償シートを得るまでのいずれかの段階で架橋させる処理を行なってもよい。配向膜上に形成される円盤状構造を有する化合物(光学異方層)の配向を考慮すると、円盤状構造を有する化合物を配向させた後に最終の架橋を行なうことも好ましい。すなわち、透明支持体上にポリマーおよびポリマーを架橋することができる架橋剤を含む塗布液を塗布した場合、加熱乾燥した後、ラビング処理を行なって配向膜を形成し、次いでこの配向膜上に円盤状構造単位を有する化合物を含む塗布液を塗布し、ディスコティックネマチック相形成温度以上に加熱した後、冷却して光学異方層を形成する。
【0129】
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネートが含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。
【0130】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましく、85〜95%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3000であることが好ましい。変性ポリビニルアルコールの変性基は、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[022]に記載のもの等が挙げられる。
【0131】
ポリマー(好ましくは水溶性ポリマー、さらに好ましくはポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールの架橋剤の例には、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0132】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。配向膜中に1.0質量%を超える量で架橋剤が残存していると、充分な耐久性が得られない。そのような配向膜を液晶表示装置に使用すると、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合にレチキュレーションが発生することがある。
【0133】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なって良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、15℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
【0134】
配向膜は、透明支持体上または上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。配向膜は、その上に設けられる液晶性ディスコティック化合物の配向方向を規定するために設けられる。
【0135】
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0136】
[光学異方層]
光学補償シートの光学異方層は、配向膜上に形成される。光学異方層は、円盤状構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層であることが好ましい。光学異方層は、低分子量の液晶性円盤状化合物(モノマー)の層または重合性の液晶性円盤状化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層である。円盤状(ディスコティック)化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990) に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年) に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年) に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基がその直鎖として放射線状に置換された構造である。円盤状化合物には、液晶性を示すディスコティック液晶が含まれる。円盤状化合物から形成した光学異方層には、熱や光で反応する基を有する低分子ディスコティツク液晶を反応させて重合または架橋することにより、高分子量化して液晶性を失ったものも含まれる。円盤状化合物については、特開平8−50206号公報に記載がある。
【0137】
光学異方層は、ディスコティック構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層であって、そしてディスコティック構造単位の面が、透明支持体面に対して傾き、且つ該ディスコティック構造単位の面と透明支持体面とのなす角度が、光学異方層の深さ方向に変化していることが好ましい。
【0138】
ディスコティック構造単位の面の角度(傾斜角)は、一般に、光学異方層の深さ方向でかつ光学異方層の配向膜底面からの距離の増加と共に増加または減少している。上記傾斜角は、距離の増加と共に増加することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、および増加および減少を含む間欠的変化等を挙げることができる。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。傾斜角は、変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していることが好ましい。さらに、傾斜角は全体として増加していることが好ましく、特に連続的に変化することが好ましい。
【0139】
上記光学異方層は、一般にディスコティック化合物および他の化合物を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱し、その後配向状態(ディスコティックネマチック相)を維持して冷却することにより得られる。あるいは、上記光学異方層は、ディスコティック化合物および他の化合物(さらに、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱したのち重合させ(UV光の照射等により)、さらに冷却することにより得られる。本発明に用いるディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマチック液晶相−固相転移温度としては、70〜300℃が好ましく、特に70〜170℃が好ましい。
【0140】
支持体側のディスコティック単位の傾斜角は、一般にディスコティック化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック単位の傾斜角は、一般にディスコティック化合物あるいはディスコティック化合物と共に使用する他の化合物(例、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマー)を選択することにより調整することができる。さらに、傾斜角の変化の程度も上記選択により調整することができる。
【0141】
可塑剤、界面活性剤および重合性モノマーとしては、ディスコティック化合物と適度の相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しない限り、どのような化合物も使用することができる。これらの中で、重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有する化合物)が好ましい。上記化合物は、ディスコティック化合物に対して一般に1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%の量にて使用される。
【0142】
ポリマーとしては、ディスコティック化合物と相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物に傾斜角の変化を与えられる限り、どのようなポリマーも使用することができる。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。上記ポリマーは、液晶性ディスコティック化合物の配向を阻害しないように、ディスコティック化合物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%の量にて使用される。
【0143】
[偏光板]
偏光板は、ポリマーフィルム上に配向膜および液晶性分子の配向を固定化した光学異方性層を設けた光学補償シート、偏光膜、透明保護膜がこの順に積層された層構成を有する。透明保護膜には、セルロースアセテートフィルムが用いられる。偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、2色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。ポリマーフィルムの遅相軸と偏光膜の透過軸の関係は、適用される液晶表示装置の種類により異なる。TN、MVAまたはOCBの場合は、実質的に平行になるように配置する。反射型液晶表示装置の場合は、実質的に45度となるように配置することが好ましい。
【0144】
[液晶表示装置]
光学補償シートまたは偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。TN、MVA、およびOCBモードの液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板からなる。液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。光学補償シートは、液晶セルと一方の偏光板との間に、1枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置する。OCBモードの液晶表示装置の場合、光学補償シートは、ポリマーフィルム上に円盤状化合物、もしくは棒状液晶化合物を含む光学異方性層を有していても良い。光学異方性層は、円盤状化合物(もしくは棒状液晶化合物)を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。円盤状化合物は、一般に大きな複屈折率を有する。また、円盤状化合物には、多様な配向形態がある。従って、円盤状化合物を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。円盤状化合物を用いた光学補償シートについては、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、西独特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。
【0145】
偏光板では、液晶セルと偏光膜との間に配置される透明保護膜として、前記のポリマーフィルムを用いることができる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)透明保護膜のみ上記のポリマーフィルムを用いるか、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)2枚の透明保護膜に、上記のポリマーフィルムを用いる。液晶セルはOCBモード、またはTNモードであることが好ましい。OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速い利点がある。TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【0146】
[反射防止フィルム]
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、及び低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層、(即ち、高屈折率層、中屈折率層)を透明基体上に設けた構成となる。屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
【0147】
反射防止フィルムにおける高複屈折層、ハードコート層を塗布する場合が、セルロースエステルフィルム上に重合性基を含む多官能モノマー化合物を含む塗膜を形成する場合に該当する。
【0148】
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
【0149】
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
【0150】
本発明の鹸化されたセルロースエステルフィルムはいずれの方式にも適用できる。特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
塗布型反射防止フィルムの層構成は、基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率又、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい。例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。又、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
【0151】
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。又膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0152】
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
【0153】
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
【0154】
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。更に、ラジカル重合性及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
【0155】
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
【0156】
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
【0157】
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
【0158】
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001-40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
【0159】
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。又、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
【0160】
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
【0161】
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
【0162】
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
【0163】
ハードコート層は、反射防止フィルム に物理強度を付与するために、延伸・未延伸セルロースエステルフィルムの表面に設ける。特に、延伸・未延伸セルロース アシレートフィルムと前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。また、反射防止層を付与せず直接延伸・未延伸セルロースエステルフィルム上に塗設することも好ましい。ハードコート層は、光及び/又は熱の硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。 硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
【0164】
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、WO0/46617号公報等記載のものが挙げられる。高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。ハードコート層は、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0165】
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
【0166】
上記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0167】
塗布方法として、反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
【0168】
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
【0169】
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
【実施例】
【0170】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0171】
本実施例においては、光学補償シートの材料として、まず、支持体の材料としてセルローストリアセテートフィルム(富士フイルム(株)製)を用いて、支持体を製造した。その後、支持体上に配向膜として変性ポリビニルアルコールを形成し、配向膜上にディスコティック液晶相を形成し、光学補償シートを製造した。(実施例の使用したサンプルはこれで正しいでしょうか)
図3は、本発明の実施例(1〜8)と比較例(1,2)について、ヒーター温度、膜面温度、鹸化処理面表層可塑剤量及び耐湿潤性の評価をまとめて一覧表としたものである。
【0172】
鹸化処理面表層可塑剤量はATR/IR法によるピーク比で測定した。具体的には、赤外吸収スペクトル測定により算出された1490cm−1の可塑剤由来ピークと1370cm−1のセルロースエステルフィルム由来ピークの比を算出した。
【0173】
また、耐湿潤性に関して、学振式摩擦堅牢度試験機により液晶面剥がれ程度を目視評価し、その程度に応じて評点を付与した。具体的には、具体的には、剥がれがないものを5.0、剥がれがあるが実用上支障のないものを4.0、その中間を4.5、剥がれがあり実用上問題が認められる限度にあるものを3.0と評価した。
【0174】
実施例1〜5ではヒーター温度を120℃〜175℃と変化させた。一方で、比較例1では、ヒーター温度を110℃とした。ヒーター温度に対応して、実施例1〜5では、膜面温度は40℃〜80℃であり、比較例1では30℃であった。鹸化処理面表層可塑剤量は、膜面温度80℃の実施例1では0.05で、膜面温度30℃の比較例1では0.30であった。耐湿潤性に関して、可塑剤量0.05の実施例1、可塑剤量0.10の実施例2及び可塑剤量0.15の実施例3は5.0の評点を得た。可塑剤量0.20の実施例4は4.5の評点を、可塑剤量0.25の実施例5は4.0の評点を得た。一方、可塑剤量0.30の比較例1は3.0の評点で、最も低かった。この結果から、鹸化処理面表層可塑剤量が低いほど、耐湿潤性の評価が高くなることが理解できる。
【0175】
実施例6〜10と比較例2では、ヒーター温度は145℃であった。従って、実施例4〜8と比較例2の全てにおいて膜面温度は50℃であった。実施例6〜10と比較例2では可塑剤の含有量が異なる5種類のセルローストリアセテートフィルムが用いられた。実施例6は可塑剤の含有量が最も少なく、比較例2は可塑剤の含有量が最も多かった。実施例6〜10と比較例2は同じ50℃の膜面温度にかかわらず、鹸化処理面表層可塑剤量は、実施例6が0.05、実施例7が0.10、実施例8が0.15、実施例9が0.20、実施例10が0.25、比較例2が0.30であった。
【0176】
耐湿潤性に関して、可塑剤量0.05の実施例6、可塑剤量0.10の実施例7及び可塑剤量0.15の実施例8は5.0の評点を得た。可塑剤量0.20の実施例9は4.5の評点を、可塑剤量0.25の実施例10は4.0の評点を得た。一方、可塑剤量0.30の比較例2は3.0の評点で、最も低かった。この結果から、鹸化処理面表層可塑剤量が低いほど、耐湿潤性の評価が高くなることが理解できる。
【0177】
セルロースエステルフィルムの鹸化処理面表層可塑剤量を0.25以下とすることで架橋剤の過剰添加、加熱促進、電離放射線量アップ等の過酷な手段を採ることなく耐久性のある被膜を形成できる鹸化処理セルロースエステルフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】光学補償シートの製造方法を示す概略図である。
【図2】ヒーター温度と可塑剤量の関係を示すグラフ
【図3】実施例の条件及びフィルム評価をまとめた表図
【符号の説明】
【0179】
10…セルロースエステルフィルム、10‘…鹸化セルロースエステルフィルム、12…アルカリ水溶液、14…可塑剤、16…配向膜形成材料、18…配向膜、20…液晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法あって、
(a)セルロースエステルフィルムに少なくとも水、有機溶媒及びアルカリ剤を含有するアルカリ水溶液を塗布する塗布工程と、
(b)前記セルロースエステルフィルムを前記アルカリ水溶液で鹸化し、該セルロースエステルフィルムの鹸化処理面表層の可塑剤量を、ATR/IR法による測定で0.25以下とする鹸化処理工程と、を含む鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記鹸化処理工程が、前記セルロースエステルフィルムを最大膜面温度40℃〜70℃の範囲で鹸化することを含む請求項1記載の鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ水溶液が、有機溶媒と水の比が0.7以下のアルカリ水溶液である請求項1または2記載の鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記有機溶媒が、無機性/有機性値(I/O値)が0.5以上、かつ溶解度パラメーターが16〜40[mJ/m]である請求項1〜3の何れか1記載の鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ水溶液の塗布量が8g/m〜12g/mの範囲である請求項1〜4の何れか1記載の鹸化セルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1記載の製造方法で製造されたことを特徴とする鹸化セルロースエステルフィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の鹸化セルロースエステルフィルムを備えたことを特徴とする偏光板。
【請求項8】
請求項6に記載の鹸化セルロースエステルフィルムを備えたことを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項9】
請求項6に記載の鹸化セルロースエステルフィルムを備えたことを特徴とする反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−74000(P2009−74000A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246176(P2007−246176)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】