説明

(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法並びに用途

【課題】高純度の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体を工業的に容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸系水溶性単量体を水溶液重合して(メタ)アクリル酸系重合体を製造するに際し、重合後の反応液中の重合体の単量体換算濃度が38〜72重量%となるのに必要な(メタ)アクリル酸系水溶性単量体、重合開始剤及び次亜リン酸(塩)を水性媒体中に逐次導入して重合した後、中和する。このとき、上記(メタ)アクリル酸系水溶性単量体に加えて、全単量体に対して30モル%未満である、不飽和スルホン酸系単量体を除く、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体以外の他の単量体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法並びに該製造方法で得られた(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法としては従来より多数提案されている。次亜リン酸(塩)存在下での(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法についても多数提案されている。例えばUS2,789,099号(特許文献1)、特開昭50−15881号(特許文献2)、特開昭55−127413号(特許文献3)に製法が開示されている。また、次亜リン酸(塩)存在下で得られた(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の用途についても多数提案されている。
【0003】
例えば、特開昭51−76184号(特許文献4)、特開昭55−11092号(特許文献5)、特開昭55−14900号(特許文献6)、特開昭59−193909号(特許文献7)、特開昭60−174793号(特許文献8)、特開昭61−220794号(特許文献9)、特開昭61−293599号(特許文献10)、特開昭62−207888号(特許文献11)、特開昭62−214186号(特許文献12)等にスケール防止剤又は腐蝕抑制剤としての用途が開示されている。しかし、上記した従来の製法では次亜リン酸(塩)および/またはその変性物が製品中に多量残留するため、低純度の水溶性重合体しか得られなかった。
【0004】
また、重合触媒として銅を併用する製法は、銅が最終製品中に残留するため、毒性面から不安の残るものであった。
【0005】
また、これら従来の製法は、次亜リン酸(塩)の効率が悪く、高価な次亜リン酸(塩)を多量用いる必要があるため、低コスト水溶性重合体の製造には限界があった。
【0006】
更には、従来の製法は比較的低濃度で重合を行うため、高濃度の水溶性重合体溶液を得るためには、溶媒を蒸発させる必要があるため、低コスト水溶性重合体は得られなかった。また、これら従来の製法で得られた水溶性重合体のスケール防止能及び腐蝕抑制能も充分でなく、改良が望まれていた。
【特許文献1】米国特許第2,789,099号明細書
【特許文献2】特開昭50−15881号公報
【特許文献3】特開昭55−127413号公報
【特許文献4】特開昭51−76184号公報
【特許文献5】特開昭55−11092号公報
【特許文献6】特開昭55−14900号公報
【特許文献7】特開昭59−193909号公報
【特許文献8】特開昭60−174793号公報
【特許文献9】特開昭61−220794号公報
【特許文献10】特開昭61−293599号公報
【特許文献11】特開昭62−207888号公報
【特許文献12】特開昭62−214186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、次亜リン酸(塩)存在下で(メタ)アクリル酸系水溶性重合体を得るに際し、従来の製法が有していた上記問題点を解消するものである。更には次亜リン酸(塩)存在下で得られた従来の(メタ)アクリル酸系水溶重合体の性能不充分を解消するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法は、上記の課題を解決するために、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体を水溶液重合して(メタ)アクリル酸系重合体を製造するに際し、重合後の反応液中の重合体の単量体換算濃度が38〜72重量%となるのに必要な(メタ)アクリル酸系水溶性単量体、重合開始剤及び次亜リン酸(塩)を水性媒体中に逐次導入して重合した後、中和する(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法において、全単量体に対して30モル%未満である、不飽和スルホン酸系単量体を除く、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体以外の他の単量体を用いることを特徴としている。
【0009】
また、上記重合反応は、L−アスコルビル酸、亜硫酸、または鉄の存在下で行うことが好ましい。
【0010】
また、上記逐次導入の方法は、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体、重合開始剤及び次亜リン酸(塩)を水性媒体中に連続的に導入する方法か、または分割的に導入する方法であることが好ましい。
【0011】
また、上記中和は、水酸化ナトリウムを用いて行うことが好ましい。
【0012】
また、次亜リン酸(塩)は、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体1モル当り0.001〜0.5モル量用いることが好ましい。
【0013】
また、上記重合開始剤は、過硫酸塩であることが好ましく、該重合開始剤の量は、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体1モル当り、0.001〜0.1モル量用いることが好ましい。
【0014】
上記の製造方法で得られる(メタ)アクリル酸系水溶性重合体は、無機顔料分散剤として使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法によれば、高純度で低コスト且つ安全性が高い(メタ)アクリル酸系水溶性重合体が工業的に容易に製造可能となる。更には、意外にも、スケール防止剤、腐蝕防止剤などのいわゆる水処理剤並びに無機顔料分散剤として使用した場合、従来品より格段に機能が優れるものである。
【0016】
このように本発明は工業的利用価値が極めて高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、水性媒体中に、重合後液中の重合体の単量体換算濃度が38〜72重量%となるのに必要な(メタ)アクリル酸系単量体、重合開始剤及び次亜リン酸(塩)を逐次導入して重合することを特徴とする(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法並びに該製造方法により得られた(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の無機顔料分散剤、スケール防止剤及び金属の腐蝕抑制剤としての用途に関する。
【0018】
本発明では、(メタ)アクリル酸系単量体、重合開始剤及び次亜リン酸(塩)(以下添加成分と称す。)を水性媒体中に逐次導入する。
【0019】
添加成分のいずれか一つの成分あるいは全ての成分を全量初期仕込みとした場合、本願発明のような(メタ)アクリル酸系水溶性重合体は得られないものである。
【0020】
添加成分はそれぞれ独立にあるいは混合して水性媒体中に導入される。添加成分が固体である場合、固体状のまま導入するもできまた水あるいはアルコール、ケトンなどの有機溶媒に溶解して導入することができる。
【0021】
逐次導入の方法としては添加成分を連続的に導入することもあるいは分割的に導入することもまた可能である。
【0022】
本発明で用いられる(メタ)アクリル酸系単量体とはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩及びメタクリル酸塩を50wt%以上、好ましくは70wt%以上含有する重合性単量体を意味する。(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸のナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩;アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカリ性物質を用いて中和して得られた無機あるいは有機のアンモニウム塩などを挙げることができる。中でもアクリル酸の使用が特に好ましい。重合開始剤としては特に制限がなく、多種類の触媒が使用できる。例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリン酸等の水溶性アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等の油溶性アゾ化合物などが用いられるが、中でも安価で開始剤効率が高い過硫酸塩が特に好ましい。これら重合開始剤は(メタ)アクリル酸系水溶性単量体1モル当り、0.001〜0.1モル量用いるのが好ましい。
【0023】
次亜リン酸(塩)としては、次亜リン酸、次亜リン酸のナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩;アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカリ性物質を用いて中和して得られた無機あるいは有機のアンモニウム塩などを挙げることができる。中でも安価で工業的に入手しやすい次亜リン酸ナトリウムが特に好ましい。これら次亜リン酸(塩)は(メタ)アクリル酸系水溶性系単量体1モル当り0.01〜0.5モル量用いるのが好ましい。本発明では、水性媒体中に前記添加成分を逐次導入して重合される。水性媒体とは水あるいは水と水に溶解可能な無機又は有機溶媒との混合溶媒を意味する。無機又は有機の溶媒使用は分子量調節に役立つが、最終製品とするためには、これら溶媒を除去する必要があるため、特殊な場合を除いては使用しない方が好ましい。
【0024】
本発明では、重合後液中の重合体の単量体換算濃度が38〜72重量%とすることが必要である。好ましくは40〜60重量%である。38重量%未満の低い単量体換算濃度で反応しても、本願発明のように高純度、低コスト且つ安全性の高い(メタ)アクリル酸系水溶性重合体は得られないものである。
【0025】
又、38重量%未満の低い単量体換算濃度で反応しても、本願発明品のように無機顔料分散剤、スケール防止剤及び金属腐蝕抑制剤として格段に優れた効果を奏する(メタ)アクリル酸系水溶性重合体は得られないものである。72重量%を超える高い単量体換算濃度での製造は、重合系の粘度が著しく高くなり、実質上製造は困難となる。尚、本発明における重合後液中の重合体単量体換算濃度とは実質上重合が完結した時点における液中の重合した(メタ)アクリル酸系水溶性単量体分を重量%で表記したものである。また、発明の効果を損わない範囲で(メタ)アクリル酸系水溶性単量体、重合開始剤及び次亜リン酸(塩)のうち少くとも1つあるいはすべての成分の少量を初期仕込として重合することは勿論可能である。
【0026】
その他の製造条件については特に制限はなく通常の重合条件が適用される。例えば、重合温度は20〜150℃好ましくは70〜110℃とすることができる。また、重合時の系のpHについて0.5〜13.5好ましくは1〜12の範囲とすることができる。また、重合時にL−アスコルビル酸(塩)、(重)亜硫酸(塩)、鉄などの還元剤の存在下に製造することも勿論可能である。
【0027】
本発明では、さらに、発明の効果を損わない範囲で、不飽和スルホン酸系単量体を除く、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体以外の他の単量体を(メタ)アクリル酸系水溶性単量体と共に使用する。このような単量体としては、例えば(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド系単量体;3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソブレノール)、3−メチル−2−ブテン−1−オール(ブレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングルコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、α−ヒドロキシアクリル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコールなどの水酸基含有不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸などの含リン単量体;イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマール酸などのジカルボン酸系単量体;クロトン酸などを挙げることができる。
【0028】
これら共重合可能な単量体の使用量は全単量体に対して30モル%未満とするのが好ましい。
【0029】
本発明の製法及び該製法で得られた製品が格段に優れた効果を奏するかは明確でないが次のように推察されている。
【0030】
即ち、本発明の製法は、従来の製法より高濃度かつ特定の方法で重合を行うために次亜リン酸(塩)が効率的に作用する結果、少い次亜リン酸(塩)の使用並びに次亜リン酸(塩)および/またはその変性物含量の少く高純度な製品の製造を可能とならしめるものと考えられる。
【0031】
また、本発明の製品は高純度のため、例えばスケール防止剤、金属の腐蝕抑制剤として使用した場合、次亜リン酸(塩)および/またはその変性物に基づく、初期スケール核形成が著しく抑制されるためであろうと推察される。また本発明の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体は無機顔料分散剤としても優れた効果を発揮する。このような無機顔料としては、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、サチンホワイト、二酸化チタン、水酸化アルミニウムなどの塗工紙用顔料;ベンガラ、水酸化マグネシウム、磁性粉、消石灰、セメント、シリカ、硫酸カルシウムなどの工業材料の分散剤として好適に使用される。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、例中の部および%は重量部及び重量%を示す。
【0033】
実施例1
容量5lのSUS316製セパラブルフラスコにイオン交換水321.9部を仕込み、100℃に昇温し、窒素置換後、80%アクリル酸水溶液587.5部、15%過硫酸ナトリウム水溶液68.7部(0.0066モル/アクリル酸1モル)及び30%次亜リン酸ナトリウム水溶液21.9部(0.0095モル/アクリル酸1モル)を各々、別々の滴下口より2時間かけて滴下した。この間、系の温度は終始系の沸点を維持した。更に同温度で10分間の熟成を行い重合を完結し、重合後の液中のアクリル酸換算の濃度が47%である(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(1)を得た。(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(1)を48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和(pH=8)し、該して得た中和物の性能を以下のようにして評価した。
【0034】
無機顔料分散能容量1l(材質SUS304、内径90mm、高さ160mm)のビーカーに分散剤としての上記(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(1)の中和物を0.2部及び水を加えて全量を100部とした。ディゾルバー攪拌羽根(50mmφ)にて低速で攪拌下、カオリン(ジークライト工業社製、MC用ジーク)100部を3分間で添加した。次いで、3000rpmで10分間分散した。
【0035】
該して得られたカオリン50%スラリーの粘度をB形粘度計で測定し、その結果を第1表および第2表に示した。
【0036】
スケール防止能容量225mlのガラスびんに水170部を入れ、塩化カルシウム2水塩1.56%水溶液10部及び(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(1)の中和物の0.02%水溶液1部(得られる炭酸カルシウム過飽和水溶液に対して1ppm)混合し、さらに重炭酸ナトリウム3%水溶液10部を加えて混合して得られた炭酸カルシウム530ppmの過飽和溶液を密栓して、70℃で3時間加熱処理した。次いで冷却した後、沈殿物を0.2μメングランフィルターで濾過し、濾液をJISK0101に従って分析し、次式に従ってスケール抑制率(%)を算出した。
【0037】
【数1】

【0038】
A:加熱処理前のCaCO3 濃度(=530ppm)
B:無添加試験後の濾液中のCaCO3 濃度(=195ppm)
C:試験後の濾液中のCaCO3 濃度得られた結果を第1表および第2表に示した。
【0039】
金属の腐蝕抑制能容量500ccのSUS316製セパラブルフラスコに第5表に示した性状の合成水(姫路市水4倍濃縮に相当)445mlをとり、そこへ腐蝕抑制剤として(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(1)の中和物を合成水に対して固形分換算で60ppm添加し、水酸化ナトリウムを用いてpHを8.5に調整したのち、脱イオン水を加えて全量を450mlとし、試験液を調製した。次いで、得られた試験液中に25mm×40mm×1mmのSS−41製テストピース2枚を吊し、試験液上部に25ml/分の空気を流しながら、40℃で40時間熱処理した。熱処理終了後、テストピース上の腐蝕生成物を除きテストピースの減量を測定した。結果は2枚のテストピースの減量の平均値をMDD(mg/dm2 /day)換算し、第1表および第2表に示した。
【0040】
実施例2
実施例1において、初期仕込のイオン交換水321.9部の代りにイオン交換水558.7部を用いた他は実施例1と同様にしてアクリル酸換算濃度が38%である(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(2)を得た。(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(2)を実施例1と同様にして中和し、該して得た中和物の性能を実施例1と全く同様にして評価した。得られた結果を第1表および第2表に示した。
【0041】
実施例3
実施例1において、初期仕込のイオン交換水321.9部の代りにイオン交換水84.3部、80%アクリル酸水溶性587.5部の代りに100%アクリル酸470部、30%次亜リン酸ナトリウム水溶液21.9部の代りに30%次亜リン酸水溶液68.2部をそれぞれ用いた他は実施例1と同様にしてアクリル酸換算濃度が68%である(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(3)を得た。(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(3)を実施例1と同様に中和し、該して得た中和物の性能を実施例1と全く同様にして評価した。得られた結果を第1表および第2表に示した。
【0042】
実施例4
実施例1において80%アクリル酸水溶液587.5部の代りに80%メタクリル酸水溶液587.5部を用いた他は実施例1と同様にしてメタクリル酸換算濃度が47%である(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(4)を得た。(メタ)アクリル酸系重合体(4)を実施例1と同様に中和し、該して得た中和物の性能を実施例1と全く同様にして評価した。得られた結果を第1表および第2表に示した。
【0043】
参考例1
実施例1で用いたのと同じ重合容器にイオン交換水35.1部を仕込み、100℃に昇温し、窒素置換後、48%アクリル酸水溶液979.2部、48%水酸化ナトリウム水溶液543.9部、30%過硫酸ナトリウム水溶液34.4部(0.0066モル/アクリル酸ナトリウム1モル)及び30%次亜リン酸ナトリウム水溶液21.9部(0.0095モル/アクリル酸ナトリウム1モル)を2時間かけて滴下した。尚48%アクリル酸水溶液と48%水酸化ナトリウム水溶液の滴下は、滴下口直前で混合しアクリル酸ナトリウム水溶液として重合系に導入した。他は各々、別々の滴下口より重合系に導入した。この間、系の温度は終始沸点を維持した。更に同温度で10分間の熟成を行い重合を完結し、重合後の液中のアクリル酸ナトリウム換算の濃度が38%である(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(5)を得た。(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(5)の性能を実施例1と全く同様にして評価した。得られた結果を第1表および第2表に示した。
【0044】
実施例5
実施例1において、80%アクリル酸水溶液587.5部、15%過硫酸ナトリウム水溶液68.7部及び30%次亜リン酸ナトリウム水溶液21.9部を5分毎に各々1/24量ずつ分割的に重合系に導して反応した。実施例1と同様の熟成を行い、アクリル酸換算濃度が47%である(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(6)を得た。(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(6)を実施例1と同様に中和し、該して得た中和物の性能を実施例1と同様に評価した。得られた結果を第1表および第2表に示した。
【0045】
比較例1
実施例1において、30%次亜リン酸ナトリウム水溶液21.9部を初期仕込とした他は実施例1と同様にしてアクリル酸換算濃度が47%である比較用(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(1)を得た。比較用(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(1)を実施例1と同様にして中和し、該して得た中和物の性能を実施例1と全く同様にして評価した。得られた結果を第3表および第4表に示した。
【0046】
比較例2
実施例1において、初期仕込のイオン交換水321.9部の代りにイオン交換水1671.9部を用い且つ80%アクリル酸水溶液587.5部、15%過硫酸ナトリウム水溶液68.7部及び30%次亜リン酸ナトリウム21.9部を全量初期仕込とし70℃で反応した他は実施例1と同様にして重合して、アクリル酸換算濃度が20%である比較用(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(2)を得た。比較用(メタ)アクリル酸系重合体(2)を実施例1と同様にして中和し、該して得た中和物の性能を実施例1と全く同様にして評価した。得られた結果を第3表および第4表に示した。
【0047】
比較例3
実施例1において、初期仕込のイオン交換水321.9部の代りにイオン交換水664.7部を用いた他は実施例1と同様にしてアクリル酸換算濃度が35%である比較用(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(3)を得た。比較用(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(3)を実施例1と同様にして中和し、該して得た中和物の性能を実施例1と全く同様にして評価した。得られた結果を第3表および第4表に示した。
【0048】
比較例4
実施例3において、初期仕込のイオン交換水84.3部の代りにイオン交換水19.8部を用いた他は、実施例3と同様にしてアクリル酸換算濃度が75%である比較用(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(4)を得た。比較用(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(4)を実施例3と同様に中和し、該して得た中和物の性能を実施例3と全く同様にして評価した。得られた結果を第3表および第4表に示した。
【0049】
尚、(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(1)〜(6)及び比較用(メタ)アクリル酸系水溶性重合体(1)〜(4)の分子量はいずれも2〜6万の範囲内にあり、ほぼ同等の分子量と見なせるものであった。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、得られる(メタ)アクリル酸系水溶性重合体は、例えば、スケール防止剤、腐蝕防止剤などのいわゆる水処理剤並びに無機顔料分散剤として使用することができるため、本発明は工業的利用価値が極めて高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体として、少なくとも(メタ)アクリル酸系水溶性単量体を水溶液重合して(メタ)アクリル酸系重合体を製造するに際し、重合後の反応液中の重合体の単量体換算濃度が38〜72重量%となるのに必要な(メタ)アクリル酸系水溶性単量体、触媒として、銅(塩)を用いずに、重合開始剤及び次亜リン酸(塩)を水性媒体中に逐次導入して重合した後、中和する(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法において、
全単量体に対して30モル%未満である、不飽和スルホン酸系単量体を除く、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体以外の他の単量体を用いることを特徴とする(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法。
【請求項2】
上記重合反応は、L−アスコルビル酸、亜硫酸、または鉄の存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法。
【請求項3】
上記逐次導入の方法は、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体、重合開始剤及び次亜リン酸(塩)を水性媒体中に連続的に導入する方法か、または分割的に導入する方法であることを特徴とする請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法。
【請求項4】
上記中和は、水酸化ナトリウムを用いてpH8になるように行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法。
【請求項5】
次亜リン酸(塩)は、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体1モル当り0.001〜0.5モル量用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法。
【請求項6】
上記重合開始剤は、過硫酸塩であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法。
【請求項7】
上記重合開始剤の量は、(メタ)アクリル酸系水溶性単量体1モル当り、0.001〜0.1モル量用いることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で得られることを特徴とする(メタ)アクリル酸系水溶性重合体。
【請求項9】
請求項8の(メタ)アクリル酸系水溶性重合体を主成分とする無機顔料分散剤。

【公開番号】特開2007−84831(P2007−84831A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291571(P2006−291571)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【分割の表示】特願2003−45167(P2003−45167)の分割
【原出願日】平成5年3月12日(1993.3.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】