説明

(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム誘導体及び関連する中間体の調製方法

カルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−(1−オキサ−又は1−チア−)3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を調製する方法を記載する。この方法は、(a)カルボキシ保護された7−アミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボキシレートとアルキル−又はアリール−スルフェニルクロリドとを反応させる工程と、(b)対応する7−アルキル−又はアリール−チオイミノ誘導体と1−(アルキル−又はω−ヒドロキシアルキル−)1H−テトラゾール−5−イルチオールとを反応させる工程と、(c)トリフェニルホスフィン及び塩基で中和された塩化アルミニウムの存在下で、対応する7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェムとメタノールとを反応させる工程とを含む。得られたカルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−(1−オキサ−又は1−チア−)3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸と、活性化された2−(シアノメチルチオ)酢酸又は2−(ジフルオロメチルチオ)酢酸との反応により、保護エステル基を最終的に除去した後で、セフメタゾール及びフロモキセフそれぞれを得る。こうした7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム中間体は、新規な化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1−オキサ−又は1−チア−)セファロスポリン類の調製に有用な中間体である(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム誘導体の調製方法に関する。より詳細には、本発明は、カルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−(アルキル−又はω−ヒドロキシアルキル−)1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸の調製方法、及びそれらの化合物を治療のための(1−オキサ又は1−チア)セファロスポリン類、特に式Aのフロモキセフ及び式Bのセフメタゾールに転化する方法について言及する。
【0002】
【化1】

【0003】
【化2】

【0004】
本記載の本文中において、典型的なセファロスポリン化学の番号付けにより構造(a)の核部分を指定するためによく認められている表現「(1−デチア−1−オキサ)−3−セフェム又は3−セフェム」及び「(5−オキサ−又は5−チア−)1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン」の代わりに、不適切ではあるけれども、命名を簡略化するために、用語「(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム」を使用する。
【0005】
【化3】

【0006】
ここで、Xは酸素又は硫黄を示す。
【背景技術】
【0007】
上記化合物のフロモキセフ及びセフメタゾールは、抗菌薬として使用される7β−アシルアミノ−7α−メトキシ−セファロスポリン種の抗生物質である。
【0008】
フロモキセフは、米国特許第4,532,233号明細書に記載されているオキサセフェムであり、オキサセフェムは主要な中間体がカルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボン酸であって、多段階式の方法によって調製される。この化合物は、テトラゾール環に結合したヒドロキシエチルラジカルの一級ヒドロキシル基の保護、それに続く活性化された2−(ジフルオロメチルチオ)酢酸との縮合、並びにヒドロキシ及びカルボキシ保護基の除去によってフロモキセフに転化される。フロモキセフを調製するための多段階式の方法は、A.クリーマン(A. Kleemann)、J.エンジェル(J. Engel)、「ファーマシューティカル・サブスタンス(Pharmaceutical Substances)」、ジー・チーメ出版社(G. Thieme Verlag)、第4版、2001年、フロモキセフ−6515−S(A.クリーマン(A. Kleemenn)ら)に記載されている。
【0009】
セフメタゾールは、英国特許第1449420号明細書に記載されているセフェムであり、対応するカルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の、活性化された2−(シアノメチルチオ)酢酸との縮合による反応、及びそのカルボキシ保護基の除去によって調製される。この合成に関して、H.ナカオ(H. Nakao)ら、ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(J. Antibiot.)、(東京)、1979年、32、320−329も参照のこと。
【0010】
フロモキセフ及びセフメタゾールはそれぞれ、7β−(置換−チオ)アセトアミド−7α−メトキシ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸である。それらの合成には、カルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸の調製及び、それを活性化された(置換−チオ)酢酸と縮合することが必要である。
【0011】
これら2つの7β−(置換−チオ)アセトアミド−7α−メトキシ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)−3−セフェム−4−カルボン酸類の合成では、鏡像異性的に純粋な、カルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)−3−セフェム−4−カルボン酸の調製を考慮しなければならない。
【0012】
さらに、フロモキセフの合成は、テトラゾール部分における2−ヒドロキシエチル置換の存在を考慮しなければならず、活性化されたジフルオロメチルチオ酢酸との縮合中に一級ヒドロキシル基の保護が必要となる。
【0013】
(先行技術)
鏡像異性的に純粋な、カルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)−3−セフェム−4−カルボン酸は、t−ブチル次亜塩素酸塩の存在下で、カルボキシ保護された7−ベンズアミド−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸と、リチウムメトキシドとを反応させることによって調製できることが知られている(クリーマン(Kleemann)ら及び独国特許発明第2806457号明細書)。塩素又はリチウムメトキシドを用いて7−ベンズアミンド基を7β−アミノ−7α−メトキシ官能基に転化する別の方法は、PCT国際公開第2006/006290号パンフレットに記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
E.M.ゴードン(E.M. Gordon)ら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J. Am. Chem. Soc.)1977年、99(16)5504−5及び同書、1980年、102(5)、1690−1702に記載されているように、鏡像異性的に純粋な、カルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸は、ジクロロメタン中のトリフェニルホスフィン及び酢酸第二水銀の存在下にて、対応する7−メチル−又は7−(4−トルイル)−チオイミノ誘導体をメタノールと反応させることによって調製できることも知られている。しかし、反応混合物中に第二水銀塩が存在することで生成物の精製が困難になる。
【0015】
最後に、カルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−(1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボン酸と、活性化された2−(ジフルオロメチルチオ)酢酸との縮合によりフロモキセフ前駆体を調製するには、テトラゾール部分の一級ヒドロキシル基をその4−メチルベンゾイルオキシカルボニルエステルとして保護する必要があり、続いてそれをSnCl4を用いて除去しなければならないことも知られている(クリーマン(Kleeman)ら)。
【課題を解決するための手段】
【0016】
今般、カルボキシ保護された7−アミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸を出発として、それをアルキル−又はアリール−スルフェニルクロリドと反応させることにより、対応する7−チオイミノ誘導体を得て、それを適切な1−(アルキル−又はω−ヒドロキシアルキル−)1H−テトラゾール−5−イルチオール又はそれらの塩と反応させて、対応する7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−[(1−置換)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェムを得て、それを三塩化アルミニウム、トリフェニルホスフィン及び重炭酸ナトリウムの存在下においてメタノールで処理することによって、対応するカルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−(アルキル−又はω−ヒドロキシアルキル−)1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸に変換することを見出した。
【0017】
こうして得られたカルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−(アルキル−又はω−ヒドロキシアルキル−)1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸は、フロモキセフ(式A)及びセフメタゾール(式B)又はそれらの類似体の調製における主要な中間体に相当する。これらは、カルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−(アルキル−又はω−ヒドロキシアルキル−)1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸を、シリル化剤の存在下で適切に活性化された2−(ジフルオロメチルチオ)酢酸と典型的な縮合をすることにより、カルボキシルの脱保護の後でフロモキセフが得られ、又は適切に活性化された2−(シアノメチルチオ)酢酸と典型的な縮合をすることにより、カルボキシルの脱保護の後にセフメタゾールが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
したがって、本発明の目的は、式Iの(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム誘導体
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、Xは酸素又は硫黄を示し、Yは1〜3個の炭素原子のアルキル基又は2〜3個の炭素原子のω−ヒドロキシアルキル基を示し、R°はカルボキシ保護基を示す。)又はそれらの塩を調製する方法であって、
(a)式IIのカルボキシ−保護された7−アミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、X及びR°は上記で定義された通りである。)又はそれらの塩を、式IIIの(アルキル−又はアリール−)スルフェニルクロリド
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、Wは1〜3個の炭素原子のアルキル、非置換若しくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルで置換されたベンジル基、又は非置換若しくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルで置換されたフェニル基である。)で処理する工程と、
(b)そうして得られた式IVの対応するカルボキシ保護された7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸
【0025】
【化7】

【0026】
(式中、X、R°及びWは上記で定義された通りである。)を、式Vの[1−アルキル−又は1−(ω−ヒドロキシアルキル)]−1H−テトラゾール−5−イルチオール
【0027】
【化8】

【0028】
(式中、Yは1〜3個の炭素原子のアルキル又は2〜3個の炭素原子のω−ヒドロキシアルキルである。)又はそれらのアルカリ金属塩で処理する工程と、
(c)そうして得られた式VIの対応する7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)−3−セフェム
【0029】
【化9】

【0030】
(式中、W、X、R°及びYは上記で定義された通りである。)を、塩基で中和された三塩化アルミニウム及びトリアリールホスフィン又はトリ(C1−C6)アルキルホスフィンの存在下においてメタノールで処理して、前記式Iの化合物自体又は任意に遊離塩基に中和したその付加塩として単離する工程とを含む方法を提供することである。式III及びVIにおいて、ベンジル基のアルキル置換は、好ましくはベンゼン環中である。このようにして得られた式Iの化合物は、鏡像異性的に純粋な形態である。
【0031】
工程(c)において、好ましくは三塩化アルミニウムを中和する塩基として、重炭酸ナトリウムが使用される。同じ工程(c)において、「トリアリールホスフィン又はトリ(C1−C6)アルキルホスフィン」という表現は、3つの水素原子が、任意に置換されたフェニル基、例えばフェニル若しくはトルイルによって、単環式芳香族複素環式基、例えばフリル若しくはチエニルによって、又は(C1−C6)アルキル基、例えばn−ブチルによって置き換えられているホスフィンを指す。
【0032】
特に、酸性媒体中で容易に除去できる保護基でエステル化された7−アミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸が、出発物質として使用される。本発明に従って使用される保護基及びそれらの除去方法は、例えば、テオドラW.グリーン(Theodora W. Greene)、ピーターG.V.ワッツ(Peter G. V. Wuts)、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、第III版、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons)、1999年、p.373−431に記載されている。好ましいエステル類は、4−メトキシベンジル及びジフェニルメチル(ベンズヒドリル)エステル類であり、それはジクロロメタン中でトリフルオロ酢酸及びアニソールによって、又はジクロロメタン中で三塩化アルミニウム及びアニソールによって容易に除去できる。
【0033】
工程(a)において、カルボキシ保護された7−アミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸自体又はそれらの塩酸塩を、メチル−又はアリール−スルフェニルクロリドと反応させるが、ここでのメチル−又はアリール−スルフェニルクロリドは、対応するメチル−又はアリール−ジスルフィドと塩素とを不活性有機溶媒、例えばトルエン又はジクロロメタン中で、室温(20〜30℃)にて、塩化水素受容体、例えば1,2−エポキシプロパンの存在下で反応させることによって別に調製されたものである。メチルスルフェニルクロリド(式III、W=メチル)、フェニルスルフェニルクロリド(式III、W=フェニル)及びp−トルイルスルフェニルクロリド(式III、W=4−メチルフェニル)は、好ましいメチル−又はアリール−スルフェニルクロリドである。こうして得られた式IVの7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェムは、例えば重炭酸ナトリウム(NaHCO3)の水溶液のような塩基との中和、塩類の除去、及びジクロロメタンのような好適な溶媒を用いた抽出により、従来の方法に従って単離される。
【0034】
工程(b)において、こうして得られた式IVの7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェムを、式Vの1−アルキル又は1−(ω−ヒドロキシアルキル)−1H−テトラゾール−5−イルチオールによって、好ましくはそれをナトリウム塩の形態で用いて処理する。この反応は、不活性有機溶媒、例えばジクロロメタン又はトルエンと水とを用いる二相系にて、四級アンモニウム塩、例えばテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドの存在下、20〜30℃の温度で行われる。5〜10時間後、反応が完了し、こうして得られた式VIの7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)−3−セフェムは、例えば相を分離し、有機相を水で洗浄し、乾燥し、溶媒を蒸発させ、例えばメタノールのようなアルコールを用いて残留物を結晶化させることにより、従来の方法に従って単離される。
【0035】
ナトリウム塩としての1−メチル−1H−テトラゾール−5−イルチオール又は1−(2−ヒドロキシエチル)−]−1H−テトラゾール−5−イルチオールを、1−置換−1H−テトラゾール−5−イルチオールとして使用することが好ましい。このナトリウム塩は、例えば1−置換−1H−テトラゾール−5−イルチオールとアセトン中の2−エチルヘキサン酸ナトリウムとの反応のように、既知の方法に従って調製できる。
【0036】
工程(b)の終わりに得られる、Xが酸素である式VIの7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)−3−セフェム化合物は、フロモキセフの調製に有用な新規の中間体であり、それらはまた本発明のさらなる目的でもある。
【0037】
工程(c)において、工程(b)の終わりに得られた式VIの7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−クロロメチル(1−オキサ−又は1−チア)3−セフェムを、ジクロロメタン又はトルエンのような不活性有機溶媒中で、塩基で中和された三塩化アルミニウム及びトリアリールホスフィン又はトリ(C1−C6)アルキルホスフィンの存在下において、メタノールと反応させる。
【0038】
一般に、このメタノールはまた、三塩化アルミニウムを中和する塩基として重炭酸ナトリウムを含有する。好ましくは、トリアリールホスフィン又はトリ(C1−C6)アルキルホスフィンは、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トルイル)ホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン及びトリ(n−ブチル)ホスフィンから成る群から選択される。
【0039】
実際には、10〜15℃の温度で前もって調製され、重炭酸ナトリウムのような塩基で中和された三塩化アルミニウムのメタノール溶液は、上記溶媒のいずれか1つにおいて、化合物VIと、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トルイル)ホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン又はトリ(n−ブチル)ホスフィンとの溶液に添加される。こうして得られた式Iの化合物は、反応の終わりに得られた懸濁液に氷酢酸を添加し、続いて相を分離し、有機相を乾燥させ、式Iの生成物をジクロロメタン又はトルエンのような溶媒で抽出し、イソプロパノール中のHCl、イソプロパノール中のHBr、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸又はナフタレン−2−スルホン酸のような塩化酸を選択して有機溶液に添加することによって単離される。
【0040】
重炭酸ナトリウムの代わりとして、アルカリ金属メトキシド類、例えばリチウムメトキシド又はナトリウムメトキシド及びアルカリ金属アセテート類、例えばナトリウム又はカリウムアセテートもまた効果的な中和塩基である。
【0041】
生成物の抽出及び溶媒の蒸発によって、式Iの化合物は遊離塩基として単離され、それは、例えばシリカゲル、適切な樹脂によって又はジメチルアセトアミドのような極性溶媒の溶液によって、及びメタノール又はイソプロパノールのようなアルコールによる沈澱によって既知の方法に従って精製できる。
【0042】
例えば塩酸塩、臭酸塩、メタンスルホネート、p−トルエンスルホネート又はナフタレン−2−スルホネートのような塩の形態で単離することによって、こうして塩化された式Iの化合物は既に純粋な形態であり、対応する純粋な遊離塩基は、中和によって容易に得ることができる。
【0043】
出発物質として使用される式IIの化合物は既知であるか、又は例えば独国特許発明第2806457号明細書に記載されるように、ピリジンの存在下でPCl5と反応させることによって、対応するカルボキシ保護された7−アシルアミド−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸を処理することにより容易に調製できる(米国特許第4,366,316号明細書も参照のこと)。
【0044】
特に、本発明は上記で示されるような方法を提供し、それによって工程(c)の終わりに式I’の化合物
【0045】
【化10】

【0046】
(式中、X’は酸素であり、Y’は2−ヒドロキシエチルであり、R°はカルボキシ保護基、好ましくはベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルである。)が単離される。化合物I’は鏡像異性的に純粋な形態で得られる。
【0047】
本発明はまた、上記で示されるような方法を提供し、それによって、工程(c)の終わりに、式I’’の化合物
【0048】
【化11】

【0049】
(式中、X’’は硫黄であり、Y’’はメチルであり、R°はカルボキシ保護基、好ましくはベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルである。)が単離される。この化合物I’’は鏡像異性的に純粋な形態で得られる。
【0050】
こうして得られた、R°が上記で示されたカルボキシ保護基、好ましくはベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルである式Iのカルボキシ保護された7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−アルキル−又は1−(ω−ヒドロキシアルキル−)1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸は、塩化水素受容体、例えばピリジンのような三級アミンの存在下において、及び式Iの化合物においてYが2〜3個の炭素原子を有するω−ヒドロキシアルキルである場合は、さらにシリル化剤、例えばヘキサメチルジシラザン及び/又はトリメチルクロロシランの存在下において、適切に活性化された2−(ジフルオロメチルチオ)酢酸又は2−(シアノメチルチオ)酢酸との縮合によって、フロモキセフ又はセフメタゾールに容易に変換できる。フロモキセフの調製の場合、使用される中間体化合物は、Xが酸素であり、Yが2−ヒドロキシエチルである式Iを有する。セフメタゾールの場合は、中間体化合物は、Xが硫黄であり、Yがメチルである式Iを有する。
【0051】
したがって、本発明のさらなる目的は、上記で示されるような方法を提供することであり、ここで式I’の化合物はさらに、シリル化剤の存在下で、活性化された2−(ジフルオロメチルチオ)酢酸と反応させて処理することによって、式VII’の化合物
【0052】
【化12】

【0053】
(式中、X’は酸素であり、Y’は2−ヒドロキシエチルであり、R°はカルボキシ保護基であり、この保護基はフロモキセフを単離するために除去される。)を得る。
【0054】
好ましい実施形態によれば、7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボン酸のジフェニルメチル又は4−メトキシベンジルエステルは、シリル化剤、例えばヘキサメチルジシラザン及びトリメチルクロロシランで処理され、次いでそれは、−10°〜−25℃の温度にて、ジクロロメタン中ピリジンの存在下において2−(ジフルオロメチルチオ)アセチルクロリド(F2CH−S−CH2COCl)で処理される。反応の終わりに、生成物は、例えば反応混合物に水を添加し、相を分離し、有機相を蒸発し、フロモキセフのジフェニルメチル又は4−メトキシベンジルエステルから成る残留物をジクロロメタンで取出し、こうして得られた溶液をトリフルオロ酢酸及びアニソールで処理することによって、既知の技術に従って単離される。こうして得られた98%純度のフロモキセフは、反応混合物に水を添加し、相を分離し、有機相を濃縮することにより酸性形態の生成物を回収することによって、又は有機相を2−エチルヘキサン酸ナトリウム若しくはカリウムで処理することによりナトリウム若しくはカリウム塩形態の生成物を回収することによって単離される。
【0055】
フロモキサフのナトリウム塩を、pH5.8−6.2の水溶液をシリカゲル又は樹脂、例えばアンベルライト(Amberlite)(登録商標)XAD1180を含有するカラムに通し、脱イオン水又は脱イオン水とアルコール、例えばメタノ−ル若しくはイソプロパノールとの混合物で溶出することによって、さらに精製してもよい。
【0056】
別の実施形態によれば、本発明は上記で示されるような方法を提供し、それによって式I’’の化合物をさらに、活性化された2−(シアノメチルチオ)酢酸で反応させて処理し、VII’’の化合物
【0057】
【化13】

【0058】
(式中、X’’は硫黄であり、Y’’はメチルであり、R°はカルボキシ保護基であり、この保護基はセフメタゾールを単離するために除去される。)を提供する。
【0059】
別の好ましい実施形態によれば、ジフェニルメチル又は4−メトキシベンジル7β−アミノ−7α−メトキシ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートは、−10〜−25℃の温度でジクロロメタン中、ピリジンの存在下において、2−(シアノメチルチオ)アセチルクロリド(NCCH2SCH2COCl)で処理される。反応の終わりに、生成物は、例えば反応混合物に水を添加し、相を分離し、有機相を蒸発し、セフメタゾールのベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルエステルから成る残留物をジクロロメタンで取出し、こうして得られた溶液をトリフルオロ酢酸及びアニソール又は三塩化アルミニウム及びアニソールで処理することによって、既知の方法に従って単離される。こうして得られた99%純度のセフメタゾールは、反応混合物に水を添加し、相を分離し、有機相を濃縮することにより酸性の形態で生成物を回収することによって、又は有機相を2−エチルヘキサン酸ナトリウム若しくはカリウムで処理することによりナトリウム若しくはカリウム塩として生成物を回収することによって単離される。
【0060】
最後に、本発明のさらなる目的は、新規な式VIの7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム化合物
【0061】
【化14】

【0062】
(Xは酸素であり、Yは1〜3個の炭素原子のアルキル基又は2〜3個の炭素原子のω−ヒドロキシアルキル基であり、Wは1〜3個の炭素原子を有するアルキル、非置換若しくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルで置換されたベンジル基、又は非置換若しくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルで置換されたフェニル基であり、R°はカルボキシ保護基である。)を提供することである。ベンジル基のアルキル置換は、好ましくはベンゼン環中である。
【0063】
好ましい化合物は、X’が酸素であり、Y’が2−ヒドロキシエチルであり、R°がベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルであり、Wがメチル、ベンジル又はp−トルイルである式VI’の化合物である。
【0064】
次の実施例は本発明を例示するものであるが、限定するものではない。
【実施例1】
【0065】
(a)−5℃に冷却された60g(0.138m)のベンズヒドリル7−アミノ−3−クロロメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボキシレートの1800mlジクロロメタン溶液に、96g(1.65m)の1,2−エポキシプロパンを5分間で添加する。次いで、−5℃〜0℃の温度で800mlジクロロメタン中の26g(0.276m)のジメチルスルフィドを10%塩素のジクロロメタン溶液200mlで処理することによって得られたCH3SClのジクロロメタン溶液を、そこに添加する。混合物を−5℃〜0℃の温度にて30分間攪拌し、次いでその温度を20℃まで上昇させ、攪拌を1時間続ける。混合物を、80gの重炭酸ナトリウムの1200ml水溶液で処理し、相を分離させ、水相を200mlのジクロロメタンで洗浄する。相を分離させて、回収した有機相を600mlの水で洗浄し、水相を200mlのジクロロメタンで抽出し、次いで有機相を回収し、真空下で減圧乾燥させる。残留物を225mlのメタノールで結晶化させて、ベンズヒドリル7−メチルチオイミノ−3−クロロメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボキシレートを得る。収率:理論値の88%。
1H−RMN(CDCl3) δ p.p.m.:2.9(s,3H);4.4(2d,2H);4.5(2d,2H);5.2(s,1H);6.9(s,1H);7.2〜7.6(m,10H)。
【0066】
(b)工程(a)で得られた11.5g(0.026m)の中間体ベンズヒドリル7−メチルチオイミノ−3−クロロメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボキシレートの150mlジクロロメタン溶液に、7g(0.041m)のナトリウム1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イルチオレートの150ml水溶液を20℃で添加する。次いで、1.2gのテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドを添加し、反応混合物を20℃〜25℃の温度にて8時間攪拌する。相を分離させ、有機相を50mlの水で洗浄する。有機相を真空下で濃縮し、残留物を30mlのメタノールで取出す。混合物を冷却し、固体の生成物をろ過し、乾燥して、ベンズヒドリル7−メチルチオイミノ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボキシレートを得る。収率:理論値の85%。
1H−RMN(CDCl3) δ p.p.m.:2.90(s,3H);3.9(t,2H);4.3(t,2H);4.35(s,2H);4.6(2d,2H);5.2(s,1H);6.9(s,1H);7.4(m,10H)。
【0067】
(c)工程(b)で得られ、5℃に冷却された51.4g(0.093m)の中間体ベンズヒドリル7−メチルチオイミノ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボキシレートの800mlジクロロメタン溶液に、30gのトリフェニルホスフィン(0.1143m)を添加し、混合物を0℃〜5℃の温度で15分間攪拌し、次いで24.6g(0.29m)の重炭酸ナトリウムで中和された13.12g(0.097m)の三塩化アルミニウムの200mlメタノール溶液をそこに添加する。混合物を25℃で30分間攪拌し、次いでそれを0℃〜5℃の温度に冷却し、50mlのメタノールで希釈し、8℃±1℃にて3時間攪拌する。反応の終わりに混合物を17mlの氷酢酸で処理し、15℃〜20℃の温度で15分間攪拌し、次いで5%塩化ナトリウムを含有する250mlの水で処理し、さらに10分間攪拌する。相を分離させ、5%酢酸を含有する250mlの水及び5%の塩化ナトリウムを含有する250mlの水で有機相を洗浄する。有機相を回収し、低容積まで真空下で濃縮して、残留物をメタノール/ジクロロメタン混合物で取出す。固体をろ過し、イソプロピルエーテルで洗浄し、乾燥して、ベンズヒドリル7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボキシレートを得る。収率:理論値の82%。
1H−RMN(DMSO−d6) δ p.p.m.:3.45(s,3H);3..7(t,2H);4.2及び4.3(2d,2H);4.35(m,2H);4.6(2d,2H);5.1(t,1H);5.2(s,1H);6.9(s,1H);7,25−7,65(m,10H)。
【実施例2】
【0068】
(a)(b)実施例1の工程(a)及び(b)に記載されるように、同じ条件にて操作することにより、ベンズヒドリル7−アミノ−3−クロロメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートを出発としてCH3SClとの反応でベンズヒドリル3−クロロメチル−7−メチルチオイミノ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートを得て、それをナトリウム1−メチル−1H−テトラゾール−5−イルチオレートと反応させて、ベンズヒドリル7−メチルチオイミノ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートを得る。融点:211〜212℃。
【0069】
(c)5℃にて、上記工程(a)(b)で得られた25.2g(0.047m)の中間体ベンズヒドリル7−メチルチオイミノ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートの400mlジクロロメタン攪拌溶液に、15.18g(0.058m)のトリフェニルホスフィンを攪拌しながら添加し、次いで攪拌を0℃〜5℃の温度で15〜20分間続け、完全な溶液を得る。この溶液に、12.45g(0.29m)の重炭酸ナトリウムで中和された6.64g(0.097m)の塩化アルミニウムの105mlメタノール溶液を添加する。混合物を0℃〜5℃の温度に冷却し、25mlのメタノールで希釈し、8℃±1℃で3時間攪拌する。反応の終わり(HPLC制御)に、混合物を8.6mlの氷酢酸で処理し、20〜25℃で20分間攪拌し、次いで5%の塩化ナトリウムを含有する130mlの水で処理し、さらに10分間攪拌する。相を分離させ、5%酢酸を含有する130mlの水及び5%の塩化ナトリウムを含有する130mlの水で有機相を洗浄する。有機相を乾燥し、140〜155ml容積まで真空下で濃縮する。残留物溶液を210mlのメタノールで希釈し、再び容積が210〜230mlになるまで真空下での濃縮を開始する。混合物を0℃〜5℃の温度で15時間結晶化させる。固体生成物をろ過し、冷メタノールで洗浄し、30℃にて真空下で乾燥して、融点が127〜128℃のベンズヒドリル7β−アミノ−7α−メトキシ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートを得る。収率:理論値の84%。
【実施例3】
【0070】
(a)80.7g(0.15m)のベンズヒドリル7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボキシレートの250mlジクロロメタン懸濁液を調製し、次いで103.3g(0.64m)のヘキサメチルジシラザン及び34.75g(0.32m)のトリメチルクロロシランをそこに添加する。混合物を30分間攪拌して透明な溶液を得て、それを−5℃〜−10℃の温度に冷却し、30.2g(0.38m)のピリジンで処理する。この混合物に、0〜2℃にて32.8g(0.213m)の2−(ジフルオロメチルチオ)酢酸ナトリウムの625mlジクロロメタン溶液に52.8g(0.25m)の五塩化リン(PCl5)を添加することによって得られた2−(ジフルオロメチルチオ)アセチルクロリドの溶液を添加する。反応混合物を−10℃〜−15℃の温度にて30分間攪拌し、440mlの水をそこに添加し、攪拌をさらに15分間続ける。相の分離後、有機相を260mlの2N塩酸で洗浄し、次いで5%の重炭酸ナトリウム水溶液、最後に260mlの水で洗浄する。有機相を真空下で濃縮して濃厚油を得て、それをメタノールで取出し、15時間結晶化させる。固体をろ過し、冷メタノールで洗浄し、真空下で乾燥して、ベンズヒドリル7β−[2−(ジフルオロメチルチオ)アセトアミド]−7α−メトキシ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボキシレートを得る。収率:理論値の79%。
1H−RMN(DMSO−d6) δ p.p.m.:3.45(s,3H);3.65(2d,2H);3.7(t,2H);4.25(2d,2H);4.3(m,2H);4.6(2d,2H);5.1(t,1H);5.2(s,1H);6.9(s,1H);7.35(t,1H);7.25−7.65(m,10H);9.4(s,1H)。
【0071】
(b)−30℃〜−35℃の温度に冷却された、工程(a)にて得られた58g(0.088m)のベンズヒドリル7β−[2−(ジフルオロメチルチオ)アセトアミド]−7α−メトキシ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボキシレート中間体の250mlジクロロメタン溶液に、17.1g(0.15m)のトリフルオロ酢酸及び32g(0.29m)のアニソールを添加する。反応混合物を同じ温度で2〜3時間攪拌し、次いでその温度を20〜25℃に上昇させる。混合物を45mlの5%HCl、次いで45mlの水で洗浄する。分離した有機相を乾燥し、真空下で濃縮する。残留物を酢酸エチルで結晶化し、固体をろ過し、7β−[2−(ジフルオロメチルチオ)アセトアミド]−7α−メトキシ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボン酸(フロモキセフ遊離酸)を得る。収率:理論値の92%。
1H−RMN(DMSO−d6) δ p.p.m.:3.4(s,3H);3.65(s2H);3.7(t,2H);4.2(s,2H);4.3(t,2H);4.5(s,2H); 5.1(s,1H);7.05(t,1H);9.2(s,1H)。
【実施例4】
【0072】
(a)60g(0.113m)のベンズヒドリル7β−アミノ−7α−メトキシ−3−[1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートの150mlジクロロメタン懸濁液を調製し、次いで13.5g(0.17m)のピリジンを添加し、混合物を0〜3℃に冷却する。この混合物に、0〜2℃にて35g(0.168m)の五塩化リン(PCl5)を25g(0.213m)の2−(シアノメチルチオ)酢酸ナトリウムの150mlジクロロメタン溶液に添加することによって得られた2−(シアノメチルチオ)アセチルクロリドの溶液を添加する。反応混合物を−10℃〜−35℃の温度で30分間攪拌し、次いで100mlの水をそこに添加する。相を分離し、有機相を10%NaCl水溶液で洗浄し、続いて水で洗浄する。乾燥した有機相を真空下で濃縮し、残留物を得て、それを250mlのメタノールで取出す。生成物を10〜15℃にて15時間結晶化させ、次いで混合物を5℃に冷却する。固体をろ過し、冷メタノールで洗浄し、乾燥して、ベンズヒドリル7β−[2−(シアノメチルチオ)アセトアミド]−7α−メトキシ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートを得る。収率:理論値の86%。
【0073】
(b)100mlのアニソールに、37.5g(0.28m)の三塩化アルミニウムを20〜25℃で添加し、混合物を250mlのジクロロメタンで希釈し、溶液を得る。別に、50g(0.078m)の工程(a)のベンズヒドリル7β−[2−(シアノメチルチオ)アセトアミド]−7α−メトキシ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボキシレート中間体の800mlジクロロメタン溶液を調製し、−5℃に冷却し、上記で得られた溶液に添加する。得られた混合物を0℃にて40分間攪拌し、次いでそれを500mlの水、750mlのアセトン及び25mlの35%HClの混合物に注ぐ。30分間の攪拌後、相を分離させる。水相に、28gのNaCl及び75mlの酢酸エチルを添加する。有機相を分離させ、200mlの10%NaCl溶液で洗浄する。回収した有機相を500mlの5%NaHCO3で処理する。水相を回収し、40mlの35%HClでpH6にし、次いで15gの活性化アルミナを添加し、混合物を30分間攪拌する。アルミナをろ過し、水で洗浄する。水溶液を100gのNaCl及び300mlの酢酸エチルに添加し、50%H3PO4及び50mlのメチルイソブチルケトンを添加することによりpHを3.5〜3.6にする。50%H3PO4を添加することにより、pHを2時間かけて除々に2.2にし、生成物を冷やして15時間結晶化させる。固体をろ過し、洗浄し、真空下で乾燥して、7β−[2−(シアノメチルチオ)アセトアミド]−7α−メトキシ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸(セフメタゾール)を得る。収率:理論値の97%。
【実施例5】
【0074】
40g(0.742m)の量のベンズヒドリル7−メチルチオイミノ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートを640mlのジクロロメタンに攪拌しながら室温で添加する。混合物を5℃に冷却し、24g(0.0914m)のトリフェニルホスフィンをそこに攪拌しながら添加する。混合物を0〜5℃に15分間維持し、それによって透明な溶液(溶液A)を得る。別に、16.4g(0.078m)の無水三塩化アルミニウムを窒素雰囲気下で、予め10〜15℃に冷却された160mlのメタノールに滴下する。5分間の攪拌後、19.68g(0.234m)の重炭酸ナトリウムを10〜15分かけて10〜15℃で滴下し、混合物を25℃で30分間攪拌したまま放置し、懸濁液(懸濁液B)を得る。懸濁液Bを溶液Aに0〜5℃にて添加し、TLC(溶離液:酢酸エチル/トルエン1/1)による反応経過に従って反応混合物を8℃±1℃にて約3時間攪拌する。反応の終わりに、混合物を実施例2(c)に記載されているように処理して、32gのベンズヒドリル7β−アミノ−7α−メトキシ−3−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートを結晶性粉末として得る。融点:127〜128℃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム誘導体
【化1】

(式中、Xは酸素又は硫黄を示し、Yは1〜3個の炭素原子を有するアルキル又は2〜3個の炭素原子を有するω−ヒドロキシアルキルを示し、R°はカルボキシ保護基を示す。)又はそれらの塩を調製する方法であって、
(a)式IIのカルボキシ−保護された7−アミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸
【化2】

(式中、X及びR°は上記で定義された通りである。)又はそれらの塩を、式IIIの(アルキル−又はアリール−)スルフェニルクロリド
【化3】

(式中、Wは1〜3個の炭素原子を有するアルキル、非置換若しくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルで置換されたベンジル、又は非置換若しくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルで置換されたフェニルである。)で処理する工程(a)と、
(b)そうして得られた式IVの対応する7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム
【化4】

(式中、W、X及びR°は上記で定義された通りである。)を、式Vの[1−アルキル−又は1−(ω−ヒドロキシアルキル)−]−1H−テトラゾール−5−イルチオール
【化5】

(式中、Yは1〜3個の炭素原子のアルキル又は2〜3個の炭素原子のω−ヒドロキシアルキルである。)又はそれらのアルカリ金属塩で処理する工程(b)と、
(c)そうして得られた式VIの対応する7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)−3−セフェム
【化6】

(式中、W、X、R°及びYは上記で定義された通りである。)を、塩基で中和された三塩化アルミニウム及びトリアリールホスフィン又はトリ(C1−C6)アルキルホスフィンの存在下においてメタノールで処理して、前記式Iの化合物自体又はそれらの酸付加塩の形態を得る工程(c)とを含む方法。
【請求項2】
前記工程(a)において、前記(アルキル−又はアリール−)スルフェニルクロリドは、前記式IIIの化学式を有し、Wがメチル、フェニル又はp−トルイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(a)において、前記式IIの前記カルボキシ保護された7−アミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェム−4−カルボン酸又はそれらの塩は、Xが酸素又は硫黄であり、R°がベンズヒドリル又はp−メトキシベンジルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)において、前記式Vの前記[1−アルキル−又は1−(ω−ヒドロキシアルキル)−]1H−テトラゾール−5−イルチオールは、Yがメチル又は2−ヒドロキシエチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Yがメチル又は2−ヒドロキシエチルである前記式Vの前記[1−アルキル−又は1−(ω−ヒドロキシアルキル)−]1H−テトラゾール−5−イルチオールは、ナトリウム塩の形態である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(b)において、Yがメチル又は2−ヒドロキシエチルであり、ナトリウム塩の形態である前記式Vの前記[1−アルキル−又は1−(ω−ヒドロキシアルキル−)]1H−テトラゾール−5−イルチオールと、Xが酸素又は硫黄であり、R°がベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルであり、Wがメチル、フェニル又はp−トルイルである前記式IVの前記7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−クロロメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)3−セフェムを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(c)において、Xが酸素又は硫黄であり、R°がベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルであり、Yがメチル又は2−ヒドロキシエチルであり、Wがメチル、フェニル又はp−トルイルである前記式VIの前記7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−(1−オキサ−又は1−チア−)−3−セフェムを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(c)において、Xが酸素又は硫黄であり、Yがメチル又は2−ヒドロキシエチルであり、R°がカルボキシ保護基である前記式Iの化合物を単離する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(c)において、前記トリアリールホスフィン又は前記トリ(C1−C6)アルキルホスフィンが、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トルイル)ホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン及びトリ(n−ブチル)ホスフィンから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カルボキシ保護基R°がベンズヒドリルである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記カルボキシ保護基R°が4−メトキシベンジルである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記塩基が重炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(c)において、前記式Iの化合物が塩の形態で単離されて、遊離塩基に中和され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記塩が、塩酸塩、臭酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びナフタレン−2−スルホン酸塩から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(c)において、式I’の化合物
【化7】

(式中、X’は酸素であり、Y’は2−ヒドロキシエチルであり、R°はカルボキシ保護基である。)を単離する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(c)において、式I’’の化合物
【化8】

(式中、X’’は硫黄であり、Y’’はメチルであり、R°はカルボキシ保護基である。)を単離する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記カルボキシ保護基R°がベンズヒドリルである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記カルボキシ保護基R°が4−メトキシベンジルである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記カルボキシ保護基R°がベンズヒドリルである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記カルボキシ保護基R°が4−メトキシベンジルである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記式I’の化合物をさらに、シリル化剤の存在下で、活性化された2−(ジフルオロメチルチオ)酢酸と反応させて処理し、式VII’の化合物
【化9】

(式中、X’は酸素であり、Y’は2−ヒドロキシエチルであり、R°はカルボキシ保護基であり、この保護基は既知の方法によって除去されてフロモキセフを単離する。)を得る、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記シリル化剤が、ヘキサメチルジシラザン及びトリメチルクロロシランから成る、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カルボキシ保護基R°がベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルであり、それらの除去がジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸及びアニソールによる処理によって行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記式I’’の化合物をさらに、活性化された2−(シアノメチルチオ)酢酸と反応させて処理し、式VII’’の化合物
【化10】

(式中、X’’は硫黄であり、Y’’はメチルであり、R°はカルボキシ保護基であり、この保護基は既知の方法によって除去されてセフメタゾールを単離する。)を得る、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記カルボキシ保護基R°がベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルであり、それらの除去がジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸及びアニソールによる処理によって行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記カルボキシ保護基R°がベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルであり、それらの除去がジクロロメタン中の三塩化アルミニウム及びアニソールによる処理によって行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
式VI’の7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−1−デチア−1−オキサ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム
【化11】

(式中、X’は酸素であり、Y’は2〜3個の炭素原子を有するω−ヒドロキシアルキルであり、Wは1〜3個の炭素原子を有するアルキル、非置換若しくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルで置換されたベンジル、又は非置換若しくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルで置換されたフェニルであり、R°はカルボキシ保護基である。)。
【請求項28】
前記式VI’において、X’が酸素であり、Y’が2−ヒドロキシエチルであり、Wがメチル、フェニル又はp−トルイルであり、R°がベンズヒドリル又は4−メトキシベンジルである、請求項27に記載の7−(アルキル−又はアリール−)チオイミノ−1−デチア−1−オキサ−3−(1−置換−1H−テトラゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム。
【請求項29】
ベンズヒドリル7−メチルチオイミノ−3−[1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−テトラゾール−5−イル]チオメチル−1−デチア−1−オキサ−3−セフェム−4−カルボキシレート。

【公表番号】特表2009−530268(P2009−530268A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500008(P2009−500008)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/IT2007/000185
【国際公開番号】WO2007/105253
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(508278310)カルテージア, エッセ ア エッセ ディ エマヌエーラ ミリアヴァッカ エ コンパニーア (1)
【Fターム(参考)】