説明

(11β,16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[1−メチル−エチリデンビス(オキシ)]−21−[1−オキソ−[4−(ニトロオキシメチル)ベンゾキシ]]プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンを調製するための方法

本発明は、(i)トリアムシノロンアセトニドと、4−(ニトロオキシメチル)安息香酸、4−ジメチルアミノピリジン及びN−N’−ジイソプロピルカルボジイミドとの反応、(ii)結晶化、及び(iii)制御析出のステップを含む、(11β、16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[1−メチル−エチリデンビス(オキシ)]−21−[1−オキソ−[4−(ニトロオキシメチル)ベンゾキシ]]プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンを調製するための新たな方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、話題の抗炎症薬として使用されている化合物(11β,16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[1−メチル−エチリデンビス(オキシ)]−21−[1−オキソ−[4−(ニトロオキシメチル)ベンゾキシ]]プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンの調製のための新たな方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)を持つ化合物(11β,16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[1−メチル−エチリデンビス(オキシ)]−21−[1−オキソ−[4−(ニトロオキシメチル)ベンゾキシ]]プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンは、出願WO2007025632(例1)に以前記載された副腎皮質ステロイドである。この化合物は、副腎皮質ステロイド感受性の皮膚病、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬及び脂漏性皮膚炎などの特定の炎症性疾患の治療に特に有用である。
【化1】

【0003】
前記化合物は、好ましくはクリーム、軟膏剤、ローション及びゲル、並びに同様の製剤を使用して、局所的に適用される。
【0004】
式(I)の化合物は、図表1に従って、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(IV)及び4−ジメチルアミノピリジン(V)の存在下で、トリアムシノロンアセトニド(II)と4−(ニトロオキシメチル)安息香酸(III)との反応によって、出願WO2007025632の例1において得られる。
【化2】

【0005】
この反応の収率は34.4%であり、これは工業的に実行不可能である。また、使用されるジイミド(IV)の価格も工業的方法に使用するための欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】出願WO2007025632
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、高収率であり、より安価な出発生成物を使用する化合物(I)の異なる工業的製造法を見出すことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の著者は、はるかに高い収率で生成物を製造し、さらにジイミド(IV)を、より安価なN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(VI)で代用する、(I)を得るための新たな工業的方法を達成した。他方で、生じる生成物は非常に高い純度であることを見出した。さらに、この新たな方法は、局所製剤の調製に適当な粒径を持つ最終生成物をもたらす制御析出の最終ステップも含む。
【0009】
単一の態様において、本発明は、費用効果の高い生成物から出発して適当な純度及び粒径を持つ最終生成物をもたらす、(11β、16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[1−メチル−エチリデンビス(オキシ)]−21−[1−オキソ−[4−(ニトロオキシメチル)ベンゾキシ]]プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン(I)を良好な収率で調製するための新たな工業的方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の単一の態様である、(11β、16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[1−メチル−エチリデンビス(オキシ)]−21−[1−オキソ−[4−(ニトロオキシメチル)ベンゾキシ]]プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン(I)を調製するための方法は、以下のステップを含む。
(i)不活性溶媒中における、トリアムシノロンアセトニド(II)
【化3】


と、4−(ニトロオキシメチル)安息香酸(III)、4−ジメチルアミノピリジン(V)及びN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(VI)
【化4】


との反応、続いて、主にN,N’−ジイソプロピル尿素からなる形成された固体の濾過又は遠心分離による除去、液相の酸性化、その中和及び水での洗い流し、有機相への不活性逆溶媒(anti−solvent)の添加、並びに濾過又は遠心分離による、こうして形成された化合物(I)の分離、
(ii)溶媒及び逆溶媒の混合物における、ステップ(i)で形成された化合物(I)の結晶化、並びに
(iii)溶媒及び逆溶媒の混合物における、ステップ(ii)で結晶化された化合物(I)の析出。
【0011】
好ましい実施形態において、ステップ(i)の溶媒は、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドなどのアミド、テトラヒドロフランなどの環式エーテル、アセトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルなどのエステル、アセトニトリルなどのニトリル、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、並びに同様の溶媒及びそれらの混合物からなる群から選択される。該溶媒は、好ましくはジクロロメタンである。
【0012】
別の好ましい実施形態において、酸性化は、塩酸、硫酸、リン酸及び臭化水素酸などの鉱酸、酢酸、トリフルオロ酢酸及びギ酸などのカルボン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸並びに他の同様の酸、並びにそれらの混合物からなる群から選択される酸で行われる。該酸は、好ましくは塩酸である。
【0013】
別の好ましい実施形態において、中和は、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムなどのアルカリ重炭酸塩、並びに炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムなどのアルカリ炭酸塩からなる群から選択される塩基で行われる。該塩基は、好ましくは炭酸水素ナトリウムである。
【0014】
別の好ましい実施形態において、ステップ(i)の逆溶媒は、エタノール、メタノール及びイソプロパノールなどのC〜Cアルカノール、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素、並びに水及び他の同様の逆溶媒、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。該逆溶媒は、好ましくはエタノールである。
【0015】
別の好ましい実施形態において、ステップ(ii)の溶媒は、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドなどのアミド、テトラヒドロフランなどの環式エーテル、アセトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルなどのエステル、アセトニトリルなどのニトリル、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、並びに同様の溶媒、及びこれらの混合物からなる群から選択される。該溶媒は、好ましくはジクロロメタンである。
【0016】
別の好ましい実施形態において、ステップ(ii)の逆溶媒は、エタノール、メタノール及びイソプロパノールなどのC〜Cアルカノール、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素、並びに水及び他の同様の逆溶媒、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。該逆溶媒は、好ましくはエタノールである。
【0017】
別の好ましい実施形態において、ステップ(iii)の溶媒は、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルなどのエステル、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドなどのアミド、テトラヒドロフランなどの環式エーテル、アセトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン、アセトニトリルなどのニトリル、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、及びジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、並びに同様の溶媒、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。該溶媒は、好ましくは酢酸エチルである。
【0018】
別の好ましい実施形態において、ステップ(iii)の逆溶媒は、ヘプタンなどのC〜C脂肪族炭化水素、イソプロピルエーテル及びエチルエーテルなどの脂肪族エーテルからなる群、エタノール、メタノール及びイソプロパノールなどのC〜Cアルカノールからなる群、並びに同様の逆溶媒、並びにこれらの混合物から選択される。該逆溶媒は、好ましくはヘプタンである。
【実施例】
【0019】
(例1)
(11β、16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[1−メチル−エチリデンビス(オキシ)]−21−[1−オキソ−[4−(ニトロオキシメチル)ベンゾキシ]]プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン(I)の合成
【化5】

【0020】
(i)反応
トリアムシノロンアセトニド(II)12.92Kg、4−(ニトロオキシメチル)安息香酸(III)6.50Kg、4−ジメチルアミノピリジン(V)401g及びN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(VI)5.8lを、ジクロロメタン284lに添加した。溶液を周囲温度に置き、反応が完了するまで撹拌しながら維持した。ジクロロメタン13lを添加した。
【0021】
形成された固体(N,N’−ジイソプロピル尿素)を濾過によって除去し、フィルターをジクロロメタンで洗浄した。
【0022】
ジクロロメタン抽出物を合わせ、0.5NのHCl 203lを添加した。0.5NのHCl 203lを有機相に添加し、続いて0.25NのNaHCO 129lを添加した。水性相のpHが添加した水と同様になるまで、それを水で洗浄した。
【0023】
無水エタノール465lを有機相に添加し、それを465lから504lの間の最終容量となるまで大気圧で蒸留し、それを室温に達するまで放置した。
【0024】
懸濁液を濾過し、湿潤固体をエタノールで洗浄した。
【0025】
湿潤固体を真空下で乾燥させ、化合物(I)15.59Kgを生成した。収率=85.5%。HPLC純度=98.41%。
【0026】
(ii)結晶化
前のステップで得られた固体15.56Kgをジクロロメタン467lに添加した。これを加熱還流し、47lの最終容量となるまで大気圧で蒸留した。それを周囲温度に達するまで放置し、エタノール560lを添加した。
【0027】
懸濁液を濾過し、湿潤固体をエタノールで洗浄した。
【0028】
湿潤固体を真空下で乾燥させた。
【0029】
(iii)析出
前のステップで得られた固体11.21Kgを酢酸エチル516lに添加した。溶液になるまで、それを加熱還流及び撹拌した。それを40〜50℃に冷却した。ヘプタン538lを添加し、周囲温度にした。溶液を0.2μmのフィルターに通して濾過した。それを酢酸エチルで洗浄し、少なくとも3時間周囲温度で撹拌した。
【0030】
懸濁液を濾過し、湿潤固体をヘプタンで洗浄した。
【0031】
湿潤固体を真空下で乾燥させた。
【0032】
(例2)
(I)の粒径分布
例1の最終ステップで得られた生成物の粒径分布は、d(0.9)=10.79μm、d(0.5)=5.26μm及びd(0.1)=2.34μmの値を特徴とするガウス分布を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(11β、16α)−9−フルオロ−11−ヒドロキシ−16,17−[1−メチル−エチリデンビス(オキシ)]−21−[1−オキソ−[4−(ニトロオキシメチル)ベンゾキシ]]プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン(I)
【化1】


を調製する方法であって、以下のステップ
(i)不活性溶媒中における、トリアムシノロンアセトニド(II)
【化2】


と、4−(ニトロオキシメチル)安息香酸(III)、4−ジメチルアミノピリジン(V)及びN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(VI)
【化3】


との反応、形成された固体の濾過又は遠心分離による除去、液相の酸性化、その中和及び水での洗い流し、有機相への不活性逆溶媒の添加、及び濾過又は遠心分離による、こうして形成された化合物(I)の分離、
(ii)溶媒及び逆溶媒の混合物における、ステップ(i)で形成された化合物(I)の結晶化、並びに
(iii)溶媒及び逆溶媒の混合物における、ステップ(ii)で結晶化された化合物(I)の析出
を含む上記方法。
【請求項2】
ステップ(i)の溶媒が、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒がジクロロメタンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸性化が、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、臭化水素酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸からなる群から選択される酸で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
酸が塩酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
中和が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選択される塩基で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
塩基が炭酸水素ナトリウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(i)の逆溶媒が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン及び水からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
逆溶媒がエタノールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(ii)の溶媒が、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
溶媒がジクロロメタンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(ii)の逆溶媒が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン及び水からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
逆溶媒がエタノールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(iii)の溶媒が、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、酢酸イソプロピル、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
溶媒が酢酸エチルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(iii)の逆溶媒が、ヘプタン、イソプロピルエーテル及びイソプロパノールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
逆溶媒がヘプタンである、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2013−510826(P2013−510826A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538352(P2012−538352)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067443
【国際公開番号】WO2011/058161
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(501108452)フエルレル インターナショナル,ソシエダッド アノニマ (39)
【出願人】(510114918)ニコックス ソシエテアノニム (3)
【Fターム(参考)】