説明

(2S,4S)−4−フルオロ−1−[4−フルオロ−β−(4−フルオロフェニル)−L−フェニルアラニル]−2−ピロリジンカルボニトリルp−トルエンスルホン酸塩及びその無水結晶形態

本発明は、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の無水結晶質形態を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロシアノピロリジン化合物の特定の形態、例えば、無水物形態及び水和物形態に関する。より詳細には、本発明は、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の1固体状態無水物形態に関する。この化合物は、セリンプロテアーゼ(例えば、ジペプチジルペプチダーゼ)の阻害薬であり、障害、例えば、代謝性障害、例えば、高血糖症(hyperglycosemia)及び/又は糖尿病の別の状態などの治療において有用である。本明細書に開示されている特定の形態は、市販薬として使用するための予想以上に有益な物理的特性を示す。
【背景技術】
【0002】
2002年6月26日に国際出願され、2003年1月9日にWO03/02531として公開された国際特許出願PCT/US02/20471では、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)などのセリンプロテアーゼについて論じられており、また、DPP-IVの阻害薬としての活性を示す化合物について論じられている。この公開された特許出願(これは、参照により本明細書に組み入れる)は、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリル塩酸塩を包含するヘテロ環式化合物について開示している。
【0003】
上記で参照した刊行物において言及されているように、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリル塩酸塩は、DPP-IVの阻害活性を示す。しかしながら、この化合物の幾種類かの塩形態には問題がある。それは、医薬として用いる場合に商用上で曝されることが予想される湿度(例えば、20〜75%の相対湿度(RH))において、大量の水を吸収することに起因している。
【0004】
さらに、それらの塩は、結晶質固体として単離することができないことに起因する別の問題も引き起こす。結果として、特別の取扱い手順及び特別の貯蔵方法を行わない限り、それらの塩の市販薬としての適合性は危ういものとなるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、セリンプロテアーゼ阻害薬として、例えば、ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、DPP-IV阻害薬)として、商用的に適している新規形態の(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩を同定した。
【0006】
本発明の化合物は、結晶形態で調製することが可能であり、従って、向上した物理的安定性を有し得る。より詳細には、本発明のp-トルエンスルホン酸塩は、広範囲の湿度に曝されてもその吸水量は極めて少なく、物理的に安定な結晶形態で調製することが可能であり、従って、その医薬としての適合性が向上している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、式(I):
【化1】

【0008】
で表される化合物の形態を包含する。好ましくは、本発明は、1固体状態形態、即ち、形態1を包含する。最も好ましくは、本発明は、無水物形態1を包含し、これは、医薬として商用的に開発するのに望ましい物理的特性を示す。より詳細には、無水物形態1は結晶質であり、熱力学的に安定であり、有利な水分吸収プロフィールを示す。
【0009】
本発明は、式(I):
【化2】

【0010】
で表される化合物の無水物形態、水和物形態又は溶媒和物形態を包含し、また、それらの混合物も包含する。好ましくは、該化合物は、無水物形態である。本発明の好ましい化合物の例として、無水物形態1は、他にも特性はあるが、とりわけ、10℃/分で加熱したときの約240〜250℃の分解温度で特徴付けることができる。
【0011】
本発明の一実施形態は、以下のピーク:
【表1】

【0012】
の少なくとも1つを含む粉末X線回折パターンを特徴とする、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の無水物形態1の結晶形態を包含する。好ましくは、上記結晶形態は、上記ピークの2つ以上を示す。より詳細には、上記結晶形態は、図1のパターンと実施的に類似している粉末X線回折パターンを示す。特に、式(I)で表される化合物と別の相との混合物では、該混合物の粉末回折パターンにおいて表Iに挙げられている全てのピークが認められるとは限らない。
【0013】
本発明の別の態様は、本明細書で記述された化合物を含んでいる医薬組成物を包含する。より詳細には、本発明は、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の無水物形態1を含んでいる医薬組成物を包含する。
【0014】
さらに、本発明は、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の1種以上の水和物形態、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の1種以上の溶媒和物形態及び/又は(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の1種以上の非晶質形態を含んでいる医薬組成物を包含すると解釈されるべきである。
【0015】
好ましくは、本明細書で使用される場合、医薬組成物は、製薬上許容される1種以上の担体、希釈剤又は賦形剤を含んでいる。
【0016】
本発明の別の態様は、本発明の化合物(該化合物の無水物、水和物及び溶媒和物を包含する)を投与することを含む、代謝性障害、胃腸障害、ウイルス性障害、自己免疫障害、皮膚障害又は粘膜障害、補体介在障害(compliment mediated disorder)、炎症性障害、並びに、心身障害、抑鬱性障害及び神経精神障害(ここで、前記障害としては、限定するものではないが、糖尿病、肥満、高脂血症、乾癬、腸管痛、便秘、脳脊髄炎、糸球体腎炎(glumerulonepritis)、リポジストロフィー、組織損傷、HIV感染症、アレルギー、炎症、関節炎、移植拒絶反応、高血圧症、鬱血性心不全、腫瘍及びストレス性流産などを挙げることができる)を治療又は予防する方法を包含する。以下に示されているように、本発明の一態様は、治療で使用するための本発明化合物も包含する。
【0017】
図面の簡単な説明
図1は、ブラッグ-ブレンターノ配置を有する慣習的な粉末X線回折計及び銅Kα放射を用いた、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩(形態1)の粉末X線回折パターンを表している。
【0018】
図2aは、(2S,4S)-1-{(2R)-2-アミノ-3-[(4-メトキシベンジル)スルホニル]-3-メチルブタノイル}-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル塩酸塩の粉末X線回折パターンを表している。
【0019】
図2bは、95%相対湿度に曝された後の、(2S,4S)-1-{(2R)-2-アミノ-3-[(4-メトキシベンジル)スルホニル]-3-メチルブタノイル}-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル塩酸塩の粉末X線回折パターンを表している。
【0020】
図3は、形態1のFT Ramanスペクトルを示している。
【0021】
図4は、無水物形態1の水分吸収プロフィールを示している。
【0022】
図5は、HCl塩の水分吸収プロフィールを示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書を通して論じられ、また、例証されているように、本発明は、特定の固体状態結晶形態を包含する。そのような形態の特性決定を行うためには何種類かの方法が存在するが、本発明は、選択された方法により限定されるべきではなく、又は、本発明化合物の特性決定を行うのに使用された器具類により限定されるべきではない。例えば、X線回折パターンに関しては、実験で得られるパターンにおける回折ピーク強度は、当技術分野では知られているように、主として調製したサンプルの優先配向(該結晶の非ランダム配向)に起因して変動し得る。そのようなものとして、本発明の範囲は、当業者には認識される特性決定の変動性を考慮に入れて判断されなくてはならない。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、例えば研究者又は臨床医によって求められる、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的反応を引き出す薬物又は薬剤の量を意味する。さらに、用語「治療上有効量」は、そのような量を受けなかった対応する患者と比較して、疾患、障害若しくは副作用の治療、治癒、予防若しくは改善の向上をもたらすか、又は、疾患若しくは障害の進行速度を低下させるような任意の量を意味する。前記用語の範囲内には、正常な生理学的機能を高めるのに有効な量も包含される。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「無水の(anhydrous)」及び「無水物(anhydrate)」は、交換可能に使用される。同様に、用語「含水の(hydrous)」及び「水和物(hydrate)」も、交換可能に使用される。
【0026】
一実施形態では、該化合物は、式(I)で表される化合物の無水物形態1である。典型的には、該無水物形態1は、クーロメトリックKTFにより、約0.02〜2.5%w/wの含水量、好ましくは、約1.0%w/w未満の含水量、さらに好ましくは、約0.5%w/w未満の含水量、さらに好ましくは、約0.025%w/w未満の含水量を有する。
【0027】
重要なことには、上記含水量について言及したが、そのような含水量は、本発明の形態を含んでいる任意の特定の医薬組成物又は医薬製剤について記述しているものと見なされるべきではない。むしろ、製薬上許容される別の担体、希釈剤又は賦形剤と混合されたときは、含水量は、さらに高くなることもあるし、又は、低くなることもある。上記で挙げた含水量は、該特定形態自体について記述しているものと見なされるべきである。
【0028】
一実施形態では、該化合物は、図1に示されている粉末X線回折パターンにより部分的に特徴付けられる式(I)で表される化合物の無水物形態1である。式(I)で表される化合物の無水物形態1は、下記表Iのピークを含むことを特徴とし得るが、それに限定されるものではない。
【表2】

【0029】
特に、式(I)で表される化合物と別の相との混合物では、該混合物の粉末回折パターンにおいて表Iに挙げられている全てのピークが認められるとは限らない。
【0030】
本発明は、その範囲内に、実質的に純粋な無水物形態、水和物形態又は溶媒和物形態を包含し、さらに、それらの混合物も包含する。本発明は、その範囲内に、結晶質形態又は非晶質形態を包含し、さらに、結晶質形態と非晶質形態の混合物も包含する。
【0031】
式(I)で表される化合物の遊離塩基及びHCl塩は、国際特許出願PCT/US02/20471(2002年6月26日に出願され、2003年1月9日にWO03/02531として公開された)に記載されている手順に従って調製することができる。この国際特許出願は、特に該出願中で確認されている実験手順に関して、参照により本明細書に組み入れる。
【0032】
スキームAに示されているように、式(I)で表される化合物、即ち、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩は、識別可能な一形態(形態1として示されている無水物)で調製した。
【0033】
無水物形態1
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の形態1は、エタノール中で、パラ-トルエンスルホン酸の存在下に、高温(好ましくは、60℃)で、t-ブチル{(1S)-1-[ビス(4-フルオロフェニル)メチル]-2-[(2S,4S)-2-シアノ-4-フルオロ-1-ピロリジニル]-2-オキソエチル}カルバメートを反応させた後、冷却し、濾過して生成物を採取することにより調製することができる。
【0034】
あるいは、形態1は、該反応混合物の溶媒がアセトニトリルである場合は単離可能であり、該反応は好ましくは20℃で実施し、生成物は濾過により単離する。
【0035】
薬物調製の多形の堅実な制御は、水とエタノールの混合物から結晶化させることにより達成可能である。
【0036】
スキームA
【化3】

【0037】
式(I)で表される化合物が2種類以上の固体状態形態で存在し得るかどうかについて調べるために、また、式(I)で表される化合物が溶媒和物を形成する傾向を有するかどうかについて調べるために、一連の結晶化実験を行った。この一連の実験では、47種類の溶媒系と4種類の結晶化モード(緩速蒸発、急速蒸発、冷却、及び、熟成)用いた。これらの実験では、さらなる非溶媒和固体状態形態の存在は示されなかった。実施した実験からは溶媒和物の証拠は得られなかった。
【0038】
治療において使用するために、治療上有効量の本発明化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)は、原料の化合物のまま投与することもできるが、当該活性成分を医薬組成物として供することもできる。従って、本発明は、さらに、治療上有効量の本発明化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)及び製薬上許容される1種以上の担体、希釈剤又は賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。本発明化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)については、上記で記述したとおりである。該担体、希釈剤又は賦形剤は、当該製剤中の他の成分と適合性であり且つ当該製剤を受けるレシピエントに対して有害ではないという意味において、許容されるものでなくてはならない。本発明の別の態様により、本発明化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)を製薬上許容される1種以上の担体、希釈剤又は賦形剤と混合することを含む、医薬製剤の調製方法も提供される。
【0039】
本発明化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)は、任意の経路による投与用として製剤することができる。適切な経路は、治療対象の疾患及び治療対象の患者に依存する。適切な医薬製剤には、経口投与、直腸内投与、鼻内投与、局所投与(口腔内投与、舌下投与及び経皮投与など)、膣内投与若しくは非経口投与(筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与及び、罹患組織への直接的な投与)のための製剤、又は、吸入若しくは吹入による投与に適した形態の製剤などが包含される。該製剤は、必要に応じて、好都合には個別の投与単位で供することが可能であり、また、製薬の技術分野でよく知られている方法のいずれかにより調製することができる。
【0040】
経口投与に適合させた医薬製剤は、カプセル剤若しくは錠剤のような個別の単位;散剤若しくは顆粒剤;水性若しくは非水性液体中の溶液剤若しくは懸濁液剤;食用泡状剤若しくはホイップ剤;又は、水中油型液体エマルション剤若しくは油中水型液体エマルション剤として供することができる。
【0041】
例えば、錠剤又はカプセル剤の形態での経口投与に関しては、活性薬物成分を、エタノール、グリセロール及び水などのような経口用の無毒性で製薬上許容される不活性担体と組合せることができる。散剤は、該化合物を適切な微細な寸法に粉砕し、その粉砕した化合物を同様に粉砕した食用炭水化物(例えば、デンプン又はマンニトールなど)などの製薬用担体と混合することにより調製する。矯味矯臭剤、保存剤、分散剤及び着色剤を存在させることもできる。
【0042】
カプセル剤は、上述したように粉末混合物を調製し、その粉末を形成させておいたゼラチンシースに充填することにより作製し得る。充填操作に先立ち、コロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はポリエチレングリコールなどの流動促進剤(glidant)及び滑沢剤を前記粉末混合物に添加することができる。カプセル剤が摂取されたときの薬物の有効性を改善するために、寒天、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウムなどの可溶化剤又は崩壊剤を添加することもできる。
【0043】
さらに、所望又は必要であれば、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤もまた上記混合物中に配合することができる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然の糖類、例えば、グルコース又はβ-ラクトース、トウモロコシ甘味剤、天然及び合成のゴム、例えば、アラビアゴム、トラガカントゴム又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール及びワックスなどを挙げることができる。上記投与形態に用いられる滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムなどを挙げることができる。崩壊剤としては、限定するものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト及びキサンタンガムなどを挙げることができる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、造粒又はスラッギングし、滑沢剤及び崩壊剤を加え、錠剤に圧縮成型することによって調製する。粉末混合物は、上記のように、適切に粉砕した該化合物を希釈剤又は基剤と混合することにより調製し、場合により、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン若しくはポリビニルピロリドンなどの結合剤、パラフィンなどの溶液抑制剤、4級塩などの再吸収促進剤、及び/又は、ベントナイト、カオリン若しくはリン酸二カルシウムなどの吸収剤も一緒に混合して調製してもよい。前記粉末混合物は、シロップ、デンプンペースト、アカシア粘質物(acadia mucilage)又はセルロース物質若しくはポリマー物質の溶液などの結合剤で湿らせ、スクリーンを通して押し出すことにより造粒することができる。造粒するための別法として、前記粉末混合物を錠剤機に通すことができるが、それによって得られたものは形成の不完全なスラグであり、砕いて顆粒にする。この顆粒を、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク又は鉱油を添加することによって滑沢化して、錠剤成形ダイに付着するのを防ぐことができる。次いで、滑沢化された前記混合物を圧縮して錠剤とする。本発明の化合物は、さらにまた、自由流動性の不活性担体と組合せて、造粒ステップ又はスラッギングステップを経ることなく直接圧縮して錠剤とすることもできる。セラックのシーラーからなる透明又は不透明の保護コーティング、糖のコーティング又はポリマー物質のコーティング、及び、ワックスのつや出しコーティングを施すことができる。種々の単位製剤を識別するために、これらのコーティングに染料を添加することもできる。
【0044】
溶液剤、シロップ剤及びエリキシル剤などの経口用液体は、所定量が予め定められた量の該化合物を含むように投与単位形態として調製することができる。シロップ剤は、適切に矯味した水溶液に該化合物を溶解させることによって調製することができ、また、エリキシル剤は、無毒性のアルコール系ビヒクルを使用することにより調製する。懸濁液剤は、該化合物を無毒性ビヒクルに分散させることによって製剤することができる。エトキシル化イソステアリルアルコールやポリオキシエチレンソルビトールエーテルなどの可溶化剤及び乳化剤、保存剤、ペパーミント油などの着香添加剤、又は天然甘味剤若しくはサッカリン若しくは別の人工甘味剤なども添加することができる。
【0045】
適切な場合には、経口投与用の投与単位製剤をマイクロカプセル化することができる。この製剤は、例えば、粒状物質にコーティングを施すか又は粒状物質をポリマー又はワックスなどに包埋することにより、放出が延長又は持続されるように調製することができる。
【0046】
本発明の化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)は、さらにまた、単ラメラ小胞、大単ラメラ小胞及び多重ラメラ小胞などのリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンなどの種々のリン脂質から形成させることができる。
【0047】
本発明の化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)は、さらにまた、該化合物分子が結合する個々の担体としてのモノクローナル抗体を使用することにより送達することもできる。該化合物は、さらにまた、ターゲッティング可能な薬物担体としての可溶性ポリマーと結合させてもよい。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール又はパルミトイル残基で置換されているポリエチレンオキシドポリリシンなどを挙げることができる。さらに、該化合物は、薬物の制御放出を達成するのに有用なある種の生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及び、ヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロック共重合体などに結合させてもよい。
【0048】
経皮投与に適合させた医薬製剤は、長期間にわたりレシピエントの表皮と十分に接触した状態で保持されることを意図した個別の貼付剤として提供することができる。例えば、活性成分は、文献(Pharmaceutical Research, 3(6), 318(1986))に概説されているように、イオン導入法によりパッチから送達させることができる。この文献は、参照によりそのような送達系に関して本明細書に組み入れる。
【0049】
局所投与に適合させた医薬製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤、ローション剤、散剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エーロゾル剤又は油剤として製剤することができる。
【0050】
眼又は他の外部組織(例えば、口や皮膚など)の治療に関しては、該製剤は、好ましくは、局所軟膏剤又はクリーム剤として適用する。軟膏剤として製剤する場合、活性成分をパラフィン系軟膏基剤又は水混和性軟膏基剤のいずれかと併用し得る。あるいは、活性成分を、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤を有するクリーム剤として製剤することもできる。
【0051】
眼への局所投与に適合させた医薬製剤としては、活性成分が適切な担体(特に、水性溶媒)に溶解又は懸濁されている点眼剤などがある。
【0052】
口内への局所投与に適合させた医薬製剤としては、ロゼンジ剤、パステル剤及び口内洗浄剤などを挙げることができる。
【0053】
直腸内投与に適合させた医薬製剤は、坐剤又は浣腸剤として供することができる。
【0054】
担体が固体である鼻内投与に適合させた医薬製剤としては、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末剤などがある。この粗粉末剤は、鼻から吸い込む方法で、即ち、鼻の近くに保持された粉末用の容器から鼻腔を通して急速に吸入することにより、投与される。経鼻スプレー剤又は点鼻剤として投与するための、担体が液体である適切な製剤としては、活性成分の水性溶液剤又は油性溶液剤などがある。
【0055】
吸入による投与に適合させた医薬製剤としては、種々のタイプの用量計量加圧式エーロゾル、噴霧器又は吹き入れ器により生成させ得る微粒子ダスト剤又はミスト剤などがある。
【0056】
膣内投与に適合させた医薬製剤は、膣坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤又はスプレー製剤として供することができる。
【0057】
非経口投与に適合させた医薬製剤としては、酸化防止剤、バッファー、静菌剤、及び該製剤を意図されたレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有していてもよい水性及び非水性の無菌注射用溶液剤;並びに、懸濁化剤及び/又は粘稠化剤を含んでいてもよい水性及び非水性の無菌懸濁液剤などを挙げることができる。該製剤は、単位用量又は複数回分の用量の容器(例えば、密封したアンプル及びバイアル瓶など)に入れて供し得る。また、該製剤は、使用直前に例えば注射用蒸留水などの無菌の液体担体を加えることのみが必要とされる凍結乾燥状態で保存することができる。即製の注射用溶液及び懸濁液は、無菌の散剤、顆粒剤及び錠剤から調製することができる。
【0058】
上記で特に言及した成分に加えて、該製剤には、対象の製剤のタイプを考慮して、当技術分野で慣用の別の作用物質を含ませてもよい。例えば、経口投与に適する製剤には、矯味矯臭剤を含ませることができる。
【0059】
本発明では、さらにまた、ポストプロリン/アナリン分解プロテアーゼ(例えば、セリンプロテアーゼ、例えば、ジペプチジルペプチダーゼ、例えば、DPP-IV)を阻害する方法も提供され、ここで該方法は、治療上有効量の本発明化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)を哺乳動物に投与することを含む。本発明の化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)については、本明細書で記述してあるとおりである。
【0060】
本発明化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)の治療上有効量の決定は、多くの要因に依存する。そのような要因としては、限定するものではないが、哺乳動物の年齢と体重、処置を必要とする正確な症状とその重症度、製剤の種類、及び、投与経路などを挙げることができる。治療上有効量は、最終的には、担当の医師又は獣医師の裁量により決定される。
【0061】
典型的には、本発明化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)は、治療のために、1日当たり、レシピエント(哺乳動物)の体重1kg当たり、0.1〜100mgの範囲で与えられる。許容される1日当たりの投与量は、1日当たり、約0.1〜約1000mg、好ましくは、1日当たり、約0.5〜約500mgであり得る。
【0062】
上記本発明化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)は、ポストプロリン/アナリン分解プロテアーゼ(例えば、セリンプロテアーゼ、例えば、ジペプチジルペプチダーゼ、例えば、DPP-IV)を阻害することが必要であることを特徴とする哺乳動物の障害の治療において有用であり、そのような障害を治療するための医薬の調製において有用である。本発明化合物(該化合物の無水物形態及び/又は水和物形態を包含する)は、代謝性障害、胃腸障害、ウイルス性障害、自己免疫障害、皮膚障害又は粘膜障害、補体介在障害(compliment mediated disorder)、炎症性障害、並びに、心身障害、抑鬱性障害及び神経精神障害(ここで、前記障害としては、限定するものではないが、糖尿病、肥満、高脂血症、乾癬、腸管痛、便秘、脳脊髄炎、糸球体腎炎(glumerulonepritis)、リポジストロフィー、組織損傷、HIV感染症、アレルギー、炎症、関節炎、移植拒絶反応、高血圧症、鬱血性心不全、腫瘍及びストレス性流産などを挙げることができる)を治療又は予防するのに有用である。
【0063】
以下の実施例は、例証することのみを目的としたものであって、決して、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0064】
実施例1
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩(形態1)の調製
(a) (4S)-1-(t-ブトキシカルボニル)-4-フルオロ-L-プロリンアミドの調製
(4S)-1-(t-ブトキシカルボニル)-4-フルオロ-L-プロリン(130g, 1wt, 1当量)、ジクロロメタン(520mL, 4容積)、ピリジン(55mL, 0.4容積, 1.2当量)及びBoc-無水物(145g, 1.1wt, 1.2当量)を反応器に入れた。その反応溶液を約20℃で2時間撹拌した。反応器に重炭酸アンモニウム(62g, 0.5wt, 1.44当量)を加え、約20℃で一晩撹拌した。その反応物をセライト床(130g, 1wt)で濾過し、濾過ケーキをジクロロメタン(260mL, 2容積)で洗浄した。濾液を3容積まで濃縮し、ヘプタン(520mL, 4容積)を添加し、再度濃縮して、最終容積を3容積とした。ヘプタン(390mL, 3容積)を添加し、得られた反応物を約5℃に30分間冷却した。
【0065】
濾過により固体を採取し、ヘプタン(260mL, 2容積)で洗浄し、次いで、減圧下に約50℃で恒量になるまで乾燥させた。収率:88〜90%。
【0066】
(b) (2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリルパラ-トルエンスルホン酸の調製
(4S)-1-(t-ブトキシカルボニル)-4-フルオロ-L-プロリンアミド(116g, 1wt, 1当量)、酢酸イソプロピル(578mL, 5容積)及びピリジン(88mL, 0.8容積, 2.2当量)を反応器に入れた。得られたスラリーを約20℃で撹拌した。温度を約20℃に維持しながら、トリフルオロ酢酸無水物(77mL, 1.0wt, 1.1当量)を30分間以上かけて添加した。その反応溶液を約20℃でさらに1時間撹拌した。水(578mL, 5容積)を徐々に添加し、得られた反応混合物を15分間撹拌した。撹拌を停止し、層を分離させ、水層(下層)を廃棄した。有機層を、減圧下に約50℃のジャケット温度で容積が半分になるまで濃縮した。その反応物を酢酸イソプロピルで希釈して5容積に戻した。反応器の内容物を20℃に冷却し、その反応器にp-トルエンスルホン酸(94g, 0.8wt, 1当量)を添加した。得られた反応物を2時間撹拌した。この時点でガスクロマトグラフィーによる分析を行えば、(4S)-1-(t-ブトキシカルボニル)-4-フルオロ-L-プロリンアミドが完全に消費されたことが示されたであろう。その反応物を、高真空下に約50℃のジャケット温度で3容積になるまで濃縮し、2容積のイソプロピルアルコールを添加し、最終容積が4容積になるまで濃縮した。その反応物を0℃に冷却して、30分間維持した。濾過により固体を採取し、イソプロピルアルコール(1容積)で洗浄し、次いで、減圧下に約50℃で恒量になるまで乾燥させた。収率:68〜71%。
【0067】
(c) t-ブチル{(1S)-1-[ビス(4-フルオロフェニル)メチル]-2-[(2S,4S)-2-シアノ-4-フルオロ-1-ピロリジニル]-2-オキソエチル}カルバメートの調製
N-{[(1,1-ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}-4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニン(400g, 1wt, 1当量)、(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル パラ-トルエンスルホン酸(307.7g, 0.77wt, 1.01当量)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N,N-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート[即ち、HATU](408g, 1.02wt, 1.01当量)及びDMF(2.8L, 7容積)を反応器に入れた。この混合物を約0℃に冷却した。ヒューニッヒ塩基(376mL, 0.94容積, 2.04当量)を30分間以上かけて添加した。得られた混合物を約25℃に加熱し、その温度で反応が完結するまで(約3時間)撹拌した。MTBE(2.8LmL, 7容積)を添加した後、水(2L, 5容積)を30分間以上かけて添加することにより反応をクエンチした。水相をMTBE(1.2L, 3容積)で抽出した。有機層を合して水(2L, 5容積)で洗浄した。有機層を減圧下に3容積になるまで濃縮し、エタノール(1.6L, 4容積)を添加した。その反応物を減圧下にさらに3容積になるまで濃縮し、エタノール(1.6L, 4容積)を添加した。その反応物を減圧下にさらに3容積になるまで濃縮した。エタノール(2L, 5容積)を添加した。この、t-ブチル{(1S)-1-[ビス(4-フルオロフェニル)メチル]-2-[(2S,4S)-2-シアノ-4-フルオロ-1-ピロリジニル]-2-オキソエチル}カルバメートのエタノール溶液を次のステップで直接使用した。
【0068】
(d) (2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩(形態1)の調製
エタノール(3.5L, 7容積)中のt-ブチル{(1S)-1-[ビス(4-フルオロフェニル)メチル]-2-[(2S,4S)-2-シアノ-4-フルオロ-1-ピロリジニル]-2-オキソエチル}カルバメート (500g, 1wt, 1当量)のスラリーを、頭上撹拌機を備えた10L容反応器に入れた。この溶液にパラ-トルエンスルホン酸(403g, 0.806wt, 2当量)を添加した。この溶液を60℃に加熱し、その温度で12時間撹拌した。得られた反応混合物を5℃に冷却し、その温度で30分間撹拌した。濾過により固体を採取し、エタノール(2×1L)で洗浄し、50℃の真空炉中で恒量になるまで乾燥させた。収率:2ステップで70〜80%。
【0069】
実施例2
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩(形態1)の粉末X線回折
無水p-トルエンスルホン酸塩のX線粉末ディフラクトグラムのパターンを、以下の取得条件を用いて記録した:管状アノード:Cu、発生器電圧:45kV、発生器電流:40mA、開始角:2.0°2θ、最終角:50°2θ、ステップサイズ:0.01°2θ、1ステップ当たりの時間:12.0秒。得られたX線回折パターンは図1に示してあるが、それは、例証を目的として記載したものであり、本発明を限定するものではない。
【0070】
実施例3
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリル塩酸塩の調製
【化4】

【0071】
上記化合物は、代替的に、(2S,4S)-1-[(2S)-2-アミノ-3,3-ビス(4-フルオロフェニル)プロパノイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル塩酸塩と命名することも可能である。
【0072】
A.3,3-ビス(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシプロパン酸
n-ブチルリチウム(2.5M 46mL, 115mmol)を無水THF(80mL)に溶解させた溶液に、0℃で、ジイソプロピルアミン(11.13g, 115mmol)を滴下して加えた。得られた溶液を10分間撹拌した。その溶液を0℃に維持しながら、酢酸(2.64g, 44mmol)を滴下して加えた。その混合物を10分間撹拌し、次いで、50℃に加熱した。30分間経過した後、重い沈澱物が生じた。その溶液を冷却した。4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(9.6g, 0.044mol)をTHF(50mL, 無水)に溶解させた溶液を0℃で添加し、室温で一晩撹拌した。水(100mL)及びジエチルエーテル(100mL)を添加した。水層を分離し、1M HClで酸性化してpH3とした。有機物を酢酸エチル(3×200mL)で抽出した後、MgSO4で脱水した。濾過し、減圧下に溶媒を除去して、白色の未精製固体を得た。これは、冷CHCl3で洗浄することにより、微量のベンゾフェノンを除去することができた。この固体を高真空下に乾燥させて、5.63g(20.2mmol, 収率46%)の化合物Aを白色の固体として得た。
【0073】
1H NMR(d6-DMSO)400MHz δ 12.4(s(br), 1H), 7.48-7.39(m, 4H), 7.19-7.02(m, 4H), 5.91(s(br), 1H), 3.25(s, 2H)ppm。
【0074】
B.3,3-ビス(4-フルオロフェニル)アクリル酸
硫酸を酢酸(50mL, V/V)に溶解させた20%溶液に化合物A(5.6g, 20.2mmol)を添加し、得られた混合物をRTで30分間撹拌した。この溶液にH2O(500mL)を添加し、有機物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した後、MgSO4で脱水した。濾過し、減圧下に溶媒を除去して、白色の固体を得た。この固体を高真空下に乾燥させて、4.97g(19.1mmol, 収率95%)の化合物Bを白色の固体として得た。
【0075】
1H NMR(CDCl3)400MHz δ 7.27-7.21(m, 2H), 7.19-7.13(m, 2H), 7.10-6.95(m, 4H), 6.26(s, 1H)ppm。
【0076】
C.3,3-ビス(4-フルオロフェニル)プロパン酸
化合物B(2.5g, 9.61mmol)を酢酸エチル(250mL)に溶解させた溶液に炭素担持10%パラジウム(50%w/w)を添加し、1気圧の水素で12時間水素化した。この不均質溶液をセライトで濾過し、減圧下に濃縮して、黄色の油状物を得た。この油状物を高真空下に乾燥させて、2.40g(9.16mmol, 収率95%)の化合物Cを黄色の油状物として得た。
【0077】
1H NMR(d6-DMSO)400MHz δ 12.08(brs, 1H), 7.40-7.30(m, 4H), 7.15-7.05(m, 4H), 4.45(t, 1H, J=8.1Hz), 3.05(d, 2H, J=8.1Hz)ppm。
【0078】
D.(4S,5R)-3-[3,3-ビス(4-フルオロフェニル)プロパノイル]-4-メチル-5-フェニル-1,3-オキサゾリジン-2-オン
化合物C(2.0g, 7.63mmol)を含んでいるTHF(50mL, 無水)にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.18g, 9.16mmol)を添加し、次いで、得られた溶液を-78℃に冷却した。この溶液にトリメチルアセチルクロリド(0.97g, 8.01mmol)を添加し、1時間かけて0℃まで昇温させた。得られた不透明混合物を濾過し、濾液を、リチウム化(4S,5R)-(-)-4-メチル-5-フェニル-2-オキサゾリジノンの-78℃溶液(これは、(4S,5R)-(-)-4-メチル-5-フェニル-2-オキサゾリジノン(1.35g, 7.63mmol)をTHF(50mL)に溶解させた-78℃の溶液を10分間撹拌し、それにn-ブチルリチウム(2.5M 3.0mL, 7.63mmol)を滴下して加えてリチウム化(4S,5R)-(-)-4-メチル-5-フェニル-2-オキサゾリジノンを生成させることにより調製した)に10分間かけて徐々に添加した。この黄色の混合物を0℃まで昇温させ、H2O(50mL)でクエンチし、ジエチルエーテル(3×250mL)で抽出した後、MgSO4で脱水した。濾過し、減圧下に溶媒を除去して、固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, 20%酢酸エチル/ヘキサン)に付して、化合物Dを得た。この白色の固体を高真空下に乾燥させて、2.31g(5.49mmol, 収率72%)を白色の固体として得た。
【0079】
1H NMR(d6-DMSO)400MHz δ 7.40-7.25(m, 9H), 7.18-7.02(m, 4H), 5.76(d, 1H, J=7.6Hz), 4.65(m, 1H), 4.58(t, 1H, J=7.6Hz), 3.72(dd, 1H, J=16.8, 7.0Hz)3.57(dd, 1H, J=16.8, 7.0Hz), 0.58(d, 3H, J=6.7Hz)ppm。
【0080】
E.(4S,5R)-3-[(2S)-2-アジド-3,3-ビス(4-フルオロフェニル)プロパノイル]-4-メチル-5-[(1E,3Z)-1-メチルヘキサ-1,3,5-トリエニル]-1,3-オキサゾリジン-2-オン
化合物D(2.0g, 4.75mmol)を含んでいるTHF(50mL, 無水)の溶液に、約-78℃で、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(0.5Mトルエン溶液 10.0mL, 4.98mmol)を滴下して加えた。10分間撹拌した後、THF(10mL, 無水)中の2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルアジド(トリシルアジド)(1.84g, 5.94mmol)を一度に加えた。3分間経過した後、約-78℃で酢酸(1.31g, 21.8mmol)を添加し、次いで、反応物を約30℃まで急速に昇温させ、その温度で1時間撹拌することにより、淡黄色の溶液が生じた。この溶液にH2O(100mL)を添加し、有機物を酢酸エチル(500mL)で抽出した。飽和NaHCO3(100mL)で洗浄し、MgSO4で脱水した後、減圧下に溶媒を除去して、黄色の油状物を得た。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン 1:9)に付して、化合物Eを白色の固体として得た。HPLCにより、単一のジアステレオ異性体であることが示された。この白色の固体を高真空下に乾燥させて、1.71g(3.70mmol, 収率78%)を白色の固体として得た。
【0081】
1H NMR(CDCl3)400MHz δ 7.42-7.35(m, H), 7.25-7.18(m, H), 7.10-7.06(m, 2H), 7.05-6.92(m, 2H), 5.95(d, 1H, J=10.8Hz), 5.05(d, 1H, J=7.1Hz), 4.60(d, 1H, J=10.8Hz), 4.38(m, 1H), 0.95(d, 3H, J=6.8Hz)ppm。
【0082】
F.(2S)-2-アジド-3,3-ビス(4-フルオロフェニル)プロパン酸
化合物E(1.5g, 3.25mmol)をTHF/H2O(4:1, 50mL)に溶解させた溶液に、0℃で、水酸化リチウム(0.272g, 6.49mmol)を過酸化水素(30%水溶液 1.50mL, 48.75mmol)に溶解させた溶液を添加した。得られた混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで、Na2SO4(6.3g, 1.0M水溶液 50mL)でクエンチした。減圧下にTHFを除去し、溶液を、0℃で6.0M HClを用いて酸性化してpH1とした。有機物を酢酸エチル(2×200mL)で抽出した後、MgSO4で脱水した。濾過し、減圧下に溶媒を除去して、透明な油状物を得た。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン/酢酸 50:50:1)に付して、化合物Fを白色の固体として得た。この固体を高真空下に乾燥させて、0.78g(2.60mmol, 収率80%)を白色の固体として得た。
【0083】
1H NMR(CDCl3)400MHz δ 9.60(s(br), 1H), 7.25-7.10(m, 4H), 7.10-6.95(m, 4H), 4.50(d, 2H, J=8.6Hz)ppm。
【0084】
G.(2S)-2-アミノ-3,3-ビス(4-フルオロフェニル)プロパン酸
化合物F(1.5g, 4.95mmol)を酢酸エチル(250mL)に溶解させた溶液に炭素担持10%パラジウム(10%w/w)を添加し、1気圧の水素で12時間水素化した。この不均質溶液をセライト(1g)で濾過し、濾液を減圧下に濃縮して透明な油状物を得た。この油状物を高真空下に乾燥させて、1.30g(4.70mmol, 収率95%)の化合物Gを白色の固体として得た。
【0085】
1H NMR(d6-DMSO)400MHz δ 10.2(s(br), 1H), 7.38-7.27(m, 4H), 7.08-6.98(m, 4H), 4.25(d, 1H, J=8.3Hz), 3.95(d, 1H, J=8.3Hz)ppm。
【0086】
H.(2S)-2-[(t-ブトキシカルボニル)アミノ]-3,3-ビス(4-フルオロフェニル)プロパン酸
化合物G(1.30g, 4.69mmol)を含んでいるCH2Cl2(150mL)の溶液に、トリエチルアミン(2.37g, 23.4mmol)及び二炭酸ジ-t-ブチル(1.23g, 5.63mmol)を添加した。12時間撹拌した後、H2O(50mL)及びCH2Cl2(300mL)を添加し、得られた溶液を1.0M HClで酸性化してpH3とした。酢酸エチル層を分離した後、MgSO4で脱水し、減圧下に溶媒を除去して、透明な油状物を得た。この油状物を高真空下で乾燥させて、1.68g(4.4mmol, 収率95%)の化合物Hを白色の固体として得た。
【0087】
1H NMR(d6-DMSO)400MHz δ 12.4(s(br), 1H), 7.35-7.22(m, 4H), 7.15-6.95(m, 4H), 4.78(t, 1H, J=8.9Hz), 4.25(d, 1H, J=8.9Hz), 3.05(m, 1H), 1.20(s, 3H), 1.15(s, 6H)ppm。
【0088】
I.(2S,4S)-1-[(2S)-2-(t-ブトキシカルボニル)アミノ-3,3-ビス(4-フルオロフェニル)プロパノイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル
DMF溶液(25mL, 無水)に化合物H(1.0g, 2.65mmol)及びHATU(1.0g, 2.65mmol)を加えた。この溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.462mL, 2.65mmol)を添加し、30分後、(2S,4S)-4-フルオロ-2-ピロリジンカルボニトリル4-メチルベンゼンスルホネート(0.619g, 2.12mmol)及び追加のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.37mL, 2.12mmol)を添加した。この溶液をRTで12時間撹拌した後、重炭酸ナトリウム(100mL)を添加した。得られたゴム状の混合物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、有機物を飽和NaCl(50mL)で洗浄した後、MgSO4で脱水した。濾過し、減圧下に溶媒を除去して、透明な油状物を得た。この油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 4:1)に付して、白色の固体を得た。この固体を高真空下に乾燥させて、815mg(1.72mmol, 収率65%)の上記化合物を白色の固体として得た。
【0089】
1H NMR(CDCl3)400MHz δ 7.38-7.32(m, 2H), 7.21-7.15(m, 2H), 7.12-6.98(m, 4H), 5.15(d, 1H, J=51Hz), 5.03(d, 1H, J=8.9Hz, 4.89(d, 1H, J=11.2Hz), 4.86(d, 1H, J=8.9Hz), 4.40(d, 1H, J=11.2Hz), 3.83(ddd, 1H, J=36.8, 12.1, 3.7Hz), 3.05(d, 1H, J=12.2Hz), 2.62(t, 1H, J=15.3Hz), 2.25(m, 1H), 1.38(s, 9H)ppm。
【0090】
J.(2S,4S)-1-[(2S)-2-アミノ-3,3-ビス(4-フルオロフェニル)プロパノイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル塩酸塩
化合物I(0.5g, 1.05mmol)に1,4-ジオキサン(10mL, 40mmol)中の4.0N HClを添加し、3時間後、ジエチルエーテル(100mL)を添加した。生じた沈澱物を濾過により採取し、高真空下に乾燥させた後、0.41g(1.0mmol, 収率95%)の化合物Aを白色の固体として得た。
【0091】
1H NMR(d6-DMSO)400MHz δ 8.42(s(br), 3H), 7.72-7.66(m, 2H), 7.38-7.32(m, 2H), 7.25-7.19(m, 2H), 7.06-7.0(m, 2H), 5.38(d, 1H, J=51Hz), 4.91(d, 2H, J=8.8Hz), 4.82(d, 1H, J=11.3Hz), 4.41(d, 1H, J=11.3Hz), 3.86(ddd, 1H, J=39.2, 12.4, 3.1Hz), 3.45(q, 1H, J=12.4Hz), 2.38-2.20(m, 2H)ppm。
【0092】
無水HCl塩のX線粉末ディフラクトグラムのパターンを、以下の取得条件を用いて記録した:管状アノード:Cu、発生器電圧:45kV、発生器電流:40mA、開始角:2.0°2θ、最終角:50°2θ、ステップサイズ:0.02°2θ、1ステップ当たりの時間:6.0秒。得られたX線回折パターンは図2に示してあるが、それは、例証を目的として記載したものであり、本発明を限定するものではない。
【0093】
実施例4
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の水分吸収試験
約35mgの(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩を、対称一体型ガス流微量化学天秤システム(型番 SGA-100, VTI製)のサンプルパンの中に秤量した。25℃で相対湿度30%においてサンプルを平衡状態に保ち、その相対湿度を、40%、50%、60%、70%、80%及び90%まで段階的に上昇させた(吸着)。その際、相対湿度の各段階は、その条件下でサンプルが平衡状態になるまで維持した。平衡は、重量の変化が5分間で0.015%未満であるとして定義した。次いで、相対湿度を、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%及び5%まで段階的に低下させた(脱着)。その際、各段階は、平衡状態に達するまで維持した。平衡の条件は、前記吸着段階と同様であった。平衡状態に達した各相対湿度(RH)条件について、サンプルの含水量における増加(%w/w)又は減少(%w/w)を記録した。
【0094】
式(I)で表される化合物の無水物形態1は吸湿性ではなく、それは、25℃で、5%〜90%の相対湿度において、極めて少量の水しか吸着しない。
【0095】
典型的には、25℃で、5%〜90%の相対湿度において、無水物形態1が吸着するのは、1%w/wの水、好ましくは、0.5%w/w未満の水、さらに好ましくは、0.2%w/w未満の水である。無水物形態1によって吸着された水は、相対湿度が低下したときには、容易に脱着する。図4を参照されたい。
【0096】
実施例5
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルHCl塩の水分吸収試験
約13mgの(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルHCl塩を、対称一体型ガス流微量化学天秤システム(型番 SGA-100, VTI製)のサンプルパンの中に秤量した。重量の減少速度が5分間で0.015%未満になるまで、乾燥窒素流下でサンプルを60℃で乾燥させた。乾燥後、25℃でサンプルを平衡状態に保ち、相対湿度を、5%、20%、45%、75%及び95%まで段階的に上昇させた(吸着)。その際、相対湿度の各段階は、その条件下でサンプルが平衡状態になるまで又は180分の制限時間に達するまで維持した。平衡は、重量の変化が5分間で0.015%未満であるとして定義した。次いで、相対湿度を、75%、45%及び20%まで段階的に低下させた(脱着)。その際、各段階は、平衡状態に達するまで維持した。平衡の条件は、前記吸着段階と同様であった。平衡状態に達した各相対湿度(RH)条件について、サンプルの含水量における増加(%w/w)又は減少(%w/w)を記録した。
【0097】
式(I)で表される化合物のHCl塩は吸湿性である。即ち、それは、25℃で、95%の相対湿度において、約10%を超える量の水を吸着する。図5を参照されたい。
【0098】
実施例6
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩のFT Ramanスペクトル
形態1のFT Ramanスペクトルは、図3に示してある。
【0099】
純粋な固体のこのスペクトルは、供給元から提供されたNd:YVO4レーザーとView Stageを備えたThermo Nicolet 960 FT Raman分光計で得たものである。励起レーザーは1064nmであり、レーザー出力は〜300mWである。スペクトル分解能は4cm-1であり、64回のスキャンを平均して、S/N比を改善した。ピーク位置は、供給元から提供された「ピーク位置決定(peak find)」機能を用いて決定した。選択された多数の主要なピークをここに挙げる:3078、3062、3013、2987、2969、2931、2246、1663、1601、1187、1162、1126、1034、1011、864、800、636、401、290、108cm-1。本明細書で述べたように、当業者には認識される変動性に起因して、特定のピークの存在又は非存在は、本発明の範囲内含まれる化合物の特性決定において、必ずしも決定的であると解釈されるべきではない。
【0100】
実施例6
安定性試験
本発明化合物の純度に関するデータを収集した際に、本発明化合物は、安定性(例えば、40℃/70%RHのオーブン内で2週間後の安定性)に関して有益な特性を示す。そのこと自体、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の該形態、特に、無水物形態1は、商業的に実用的な薬物として有益なプロフィールを示している。
【0101】
生物学的データ
材料:
H-Ala-Pro-pNA・HClは、BACHEM Bioscience Inc.から購入した(製品番号 L-1115)。ジメチルスルホキシドを用いて500mMの原液を調製し、-20℃で貯蔵した。Gly-Pro-AMCは、Enzyme System Productsから購入し(製品番号 AMC-39)、ジメチルスルホキシド中の10mMの原液として-20℃で貯蔵した。被験化合物をジメチルスルホキシドに溶解させて10mMとし、それを、DPP-IV滴定アッセイ用の原液として用いた。精製されたヒトDPP-IVは、Athens Research and Technology, Inc.が調製した。材料は、DeMeesterら(J. Immunol. Methods 189, 99-105.(1996))の方法を用いて、ヒトプロスタソーム(prostasomes)から単離した。前記文献は、参照により、そのような方法に関して記載している範囲を本明細書に組み入れる。
【0102】
DPP-IVアッセイ:
96-ウェルポリスチレン平底プレート(Costar, #9017)内で、被験化合物の100%ジメチルスルホキシド中での2倍連続希釈を行った。ジメチルスルホキシドを含んでいるが被験化合物は含んでいないウェルから得た平均酵素活性を、阻害率(%)を計算するための対照値として使用した。マイクロタイタープレート内で、DPP-IV(20ng/mL)を、被験化合物、基質及びアッセイバッファーと混合して、25mM Tris, pH7.5, 10mM KCl, 140mM NaCl中の、100μM H-Ala-Pro-pNA・HClを得た。インタクトなペプチドは、p-ニトロフェニルアニリドを含んでいるが、これは、DPP-IVにより加水分解されると、吸湿性物質(absorbant)であるp-ニトロフェニルアニリンを放出する。吸湿性(absorbency)は、Molecular Devices SpectraMax 250吸湿性プレートリーダーを用いて、387nmの波長で20分間隔でモニタリングした。酵素活性は、データの最もよい直線近似(linear fit)を評価することにより求めた。酵素活性の値は、該プレートリーダー上でソフトウェアにより該直線近似から直接的に得た。
【0103】
データ解析:
酵素活性は、データの最もよい直線近似(linear fit)を評価することにより求めた。データ処理は、Microsoft Excel RoboSageを用いて行った。
【0104】
IC50値の決定:
酵素活性を被験化合物の濃度に対してプロットし([I]=0も含む)、データに方程式(2)を当てはめることによりIC50を求めた。
【数1】

【0105】
Vmaxは、最大酵素活性の最もよい近似推定値であった。
【0106】
Ki値の決定:
Ki値は、競合モデルであると仮定した方程式(3)を用いて、IC50値から計算した。
【数2】

【0107】
被験化合物についての見掛けのKi値は、>5.0であった。
【0108】
全ての研究は、実験動物の管理の原則(NIH Publication No.85-23, 1985年改訂)、及び、動物の使用に関する GlaxoSmithKline の方針を満足するものであった。
【0109】
本発明の特定の実施形態について例示し、詳細に記述したが、本発明は、それらに限定されない。好ましい実施形態についての上記詳細な説明は、例示のみを目的として提供されており、本発明に対して何らかの限定を加えるものと解釈されるべきではない。変形態様は当業者には明白であり、本発明の精神から逸脱しない全ての変形態様は添付されている「特許請求の範囲」の範囲内に包含されるものである。
【0110】
さらに、本発明の該形態に関連するピークを同定した場合、該回折パターンはそのようなピークを非限定的に含んでいるものと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】ブラッグ-ブレンターノ配置を有する慣習的な粉末X線回折計及び銅Kα放射を用いた、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩(形態1)の粉末X線回折パターンを表す。
【図2a】(2S,4S)-1-{(2R)-2-アミノ-3-[(4-メトキシベンジル)スルホニル]-3-メチルブタノイル}-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル塩酸塩の粉末X線回折パターンを表す。
【図2b】95%相対湿度に曝された後の、(2S,4S)-1-{(2R)-2-アミノ-3-[(4-メトキシベンジル)スルホニル]-3-メチルブタノイル}-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル塩酸塩の粉末X線回折パターンを表す。
【図3】形態1のFT Ramanスペクトルを示す。
【図4】無水物形態1の水分吸収プロフィールを示す。
【図5】HCl塩の水分吸収プロフィールを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

で表される化合物の無水物形態、水和物形態又は溶媒和物形態。
【請求項2】
無水物形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
約240〜250℃の分解温度を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
以下のピーク:
【表1】

の少なくとも1つを含む粉末X線回折パターンを特徴とする、(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の無水物形態1の結晶形態。
【請求項5】
以下のピーク:
【表2】

の2つ以上を含む、請求項4に記載の結晶形態。
【請求項6】
粉末X線回折パターンが図1のパターンと実施的に類似している、請求項4に記載の結晶形態。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の化合物を含んでいる医薬組成物。
【請求項8】
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の無水物形態1を含んでいる医薬組成物。
【請求項9】
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の1種以上の水和物形態をさらに含んでいる、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の1種以上の溶媒和物形態をさらに含んでいる、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
(2S,4S)-4-フルオロ-1-[4-フルオロ-β-(4-フルオロフェニル)-L-フェニルアラニル]-2-ピロリジンカルボニトリルp-トルエンスルホン酸塩の1種以上の非晶質形態をさらに含んでいる、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
製薬上許容される1種以上の担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含んでいる、請求項7〜11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
代謝性障害、胃腸障害、ウイルス性障害、自己免疫障害、皮膚障害又は粘膜障害、補体介在障害、炎症性障害、並びに、心身障害、抑鬱性障害及び神経精神障害を治療又は予防する方法であって、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項14】
前記障害が、糖尿病、肥満、高脂血症、乾癬、腸管痛、便秘、脳脊髄炎、糸球体腎炎、リポジストロフィー、組織損傷、HIV感染症、アレルギー、炎症、関節炎、移植拒絶反応、高血圧症、鬱血性心不全、腫瘍又はストレス性流産である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
治療で使用するための請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−528187(P2006−528187A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521180(P2006−521180)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/023263
【国際公開番号】WO2005/009956
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】