説明

1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートの構造異性体を含む新規組成物およびそれを含有するポリマー組成物

新規な固体ベンゾエートエステル組成物は、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのトランスおよびシス構造異性体を含む混合物であり、該トランス異性体が、混合物の1〜66または72〜99質量パーセントを構成する。種々のポリマー組成物(例えばホットメルト接着剤)に与えられる特性は、これらの異性体の市販で入手可能な混合物を用いては実現できない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件は、米国特許出願第11/949,378号(2007年12月3日出願)の継続出願であってその利益を主張するものであり、その内容の全部をこの参照により本明細書に組入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートの2つの構造異性体を制御された割合で含有する新規混合物に関する。更に詳しくは、本発明は、これらの異性体混合物の製造方法および種々のポリマー組成物(これに限定されるものではないが例えばホットメルト接着剤)に所望の特性を与えるためのこれらの混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術の説明
1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、CHDMという)のジベンゾエートには2つの異性体形が存在する。これらの1つはトランス形であり、これは式
【0004】
【化1】

【0005】
で表すことができる。
【0006】
第2はシス形であり、これは式
【0007】
【化2】

【0008】
で表すことができる。
【0009】
これらの異性体の両者におけるシクロヘキサン環は、嵩高なメチルベンゾエート基間の立体的相互作用を回避するために「いす」形であることが見出されている。
【0010】
1,4−シクロヘキサンジメタノール(ジベンゾエートを製造するための出発材料)を製造するための1つの商業的なプロセスは、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸またはこの酸のエステルを対応するジアルコールに水素化することを含む。得られる混合物中のシスおよびトランス異性体の異性体分布は、出発材料および水素化触媒によって決定される。米国特許第6,919,489号(Orthらに付与)は、レニウムでドープされたラネーニッケル触媒を使用して、シスのトランスに対する比が0.7以下であるCHDMを、対応するジカルボン酸のジメチルエステル(シスのトランスに対する比1.2〜2.1を有する)から得る。
【0011】
条件または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の水素のジアルキルエステルに対するモル比を調整することによってCHDMのシスのトランスに対する比を制御する能力を開示する他の特許としては、米国特許第5,395,986号および第5,395,987号が挙げられる。
【0012】
CHDMのシスおよびトランス立体異性体を分離する方法は文献に報告されている。Malachowskiら(Ber.1938,71,159)は、ジエチルヘキサヒドロテレフタレートをナトリウムおよびアルコールで還元することによってこれを達成する。シスまたはトランスヘキサヒドロエステルのいずれからも、対応するアルコールの立体異性体混合物が得られた。混合物中のシスおよびトランスエステルは、対応するベンゾエートへの変換、続いて分別結晶化および加水分解によって分離された。
【0013】
本発明は、約70質量パーセントのトランス異性体および約30質量パーセントのシス異性体を含有するCHDMジベンゾエートの市販で入手可能な型を、最大100質量パーセントのいずれかの異性体を含有する画分に分離するための方法の発見に基づく。1〜66質量パーセントまたは72〜99質量パーセントのトランス異性体を含有する混合物は文献において報告されておらず、従って新規組成物であると考えられる。
【0014】
本発明者らは、本発明のベンゾエートエステル混合物によってポリマー組成物(特にホットメルト接着剤)に与えられる特性が、混合物中のトランスおよびシス異性体の相対濃度に応じて顕著に変わることになることを発見した。
【0015】
米国特許第5,026,756号(William D.Arendtに対し)は、該特許で1,4−シクロヘキサンジメタノールのジベンゾエート(以下、CHDMDBという)という化合物の特徴を安息香酸の他のエステルに対して区別するのは、明確な凝固点の存在であることを開示する。その融点より高温に加熱し、次いでこの温度よりも低温に冷却する際、殆どの他のジベンゾエートは典型的には液体を実質的にその融点よりも低い温度で残すことになる(「過冷却」という現象)。
【0016】
再現可能に固化させる能力により、CHDMDBの異性体はホットメルト接着剤において使用するのに特異に好適である。前記のArendt特許は、CHDMDBのサンプルが示差走査熱量計中で加熱される際に生成するカーブを含む。該カーブは二峰性として示され、融点が「約80および123℃」である。高温側の融点はよりシャープに特定される。
【0017】
前記のArendt特許に記載されているCHDMDBは、CHDMの約68質量パーセントのトランス異性体および約32質量パーセントのシス異性体を含有する市販で入手可能な製品から製造される。
【0018】
本発明は、前記のArendt特許において言及されるCHDMDB異性体の混合物がその融点よりも高温に加熱された後徐冷される場合に、結晶物質の形での部分的な固化が温度約100℃で生じるという発見に基づく。この結晶物質のガスクロマトグラフィによる分析により、これが典型的に90質量パーセント超のトランス異性体を含有する混合物であることが明らかになる。残りの溶融物質は約70℃未満で、ほぼ等しい質量のトランスおよびシス異性体を含有する非結晶物質に固化する。
【0019】
ここで、本発明のトランス−およびシス−リッチな混合物が種々の特性をポリマー組成物に(一般的に、および特にホットメルト接着剤に対し)与えることもまた見出した。約72質量パーセント超のトランス異性体を変性剤として含有する本発明のCHDMDB混合物の1つを用いることにより、オープンタイムおよび接着剤がその最高の特性を実現するのに必要な時間の両者は、Arendt特許に記載される製品の異性体分布を用いて得られる値に対して顕著に低減される。これらの利点の第2により、製造ライン(この上でホットメルト接着剤を用いて紙、ボール紙、布帛または他の物質の2つの層を結合する)の最大速度における実質的な増大が可能になる。約72質量パーセント超のトランス異性体を有する混合物を含有する接着剤を、先行技術の変性剤を基にする接着剤よりも顕著に強く設計できることもまた見出した。
【0020】
オープンタイムは、その間に第1の基材に塗布された接着剤がこの基材と第2のもの(これに対して適用する)との間の結合を実現するのに十分な接着性を維持する時間間隔である。硬化時間は、接合すべき2つの基材を一緒にプレスしてからの結合に必要な時間として規定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の要約
本発明は、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのシスおよびトランス異性体の両者を含有し、該トランス異性体が組成物の1〜66または72〜99質量パーセントを構成する新規な固体ベンゾエートエステル組成物を提供する。好ましい組成物は90〜94質量パーセントのトランス異性体を含有し、そして最も好ましくは95質量パーセント超のトランス異性体を含有する。別の側面において、該組成物は48〜52質量パーセントのトランス異性体を含む。
【0022】
本発明はまた、市販で入手可能な形の1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート(CHDMDB)を、溶融精製を用いて、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートの72〜約99質量パーセントのトランス異性体を含有する結晶固体組成物と1〜約66質量パーセントのこのトランス異性体を含有する部分結晶固体とに分離する方法を提供する。
【0023】
本発明の第3の側面は、本発明の異性体混合物のいずれかを可塑剤または他の種の変性剤として含有する多様なポリマー組成物を提供する。1種または複数種のポリマーおよび存在する他の含有成分の1種または複数種の型に応じ、本発明のエステル組成物は、種々の所望の特性をポリマー組成物に与える。
【0024】
ホットメルト接着剤は、本発明の好ましい分類のポリマー組成物を構成する。これらの組成物は、典型的には、(1)典型的にはオレフィンポリマー(これらに限定されるものではないが、エチレン/酢酸ビニルコポリマーおよびスチレン/オレフィンコポリマーが挙げられる)からなる群から選択されるポリマー、(2)少なくとも1種の炭化水素レジン、ならびに(3)変性剤としての本発明のCHDMDB異性体混合物の1つ、を含む。
【0025】
約72質量パーセント超の1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのトランス異性体を含有する本発明のベンゾエートエステル組成物は、幾つかの利点の中でも特に、典型的には硬化時間を低減し、そしてホットメルト接着剤の結合強度を増大させることができる。約66質量パーセント未満のこのトランス異性体を含有する本発明のエステル組成物は、他の利点を与えることに加えて、これらの接着剤のオープンタイムを増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、市販で入手可能なCHDMDB、Benzoflex 352のDSC出力である。
【図2】図2は、トランスリッチCHDMDB、XP−7007のDSC出力である。
【図3】図3は、シスリッチCHDMDB、XP−7008のDSC出力である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明の新規ベンゾエートエステル混合物は、以下の一連のプロセスステップを用いて溶融精製によって製造する:
【0028】
1. CHDMDBの約68〜約70質量パーセントのトランス異性体および約30〜約32質量パーセントのシス異性体を含有する市販で入手可能な混合物を、該混合物の融点よりも高温に加熱して溶融物質を形成し、次いでこれを徐々に約100℃まで冷却し、その点で該物質の一部の結晶化を生じさせる。融点は、約120〜約128℃の範囲となる。結晶化した物質中のトランスおよびシス異性体の相対濃度は、結晶化温度への冷却速度および時間間隔(この間、溶融物および結晶物質の混合物がこの温度で維持される)によって規定されることになる。例えば、1時間の冷却は、84〜86%トランス異性体の形成をもたらし、そして16時間の冷却は、94〜96%のトランス異性体の形成をもたらした。
【0029】
2. 97質量パーセント以下のCHDMジベンゾエートのトランス異性体を含有する結晶物質を混合物から単離する。
【0030】
3. 残りの液体物質を室温まで冷却して、実質的に等しい質量のトランスおよびシス異性体を含有する固体を得る。
【0031】
本発明の異性体混合物を得るための出発物質として使用するCHDMDBは、安息香酸またはその好適な誘導体を、市販で入手可能な形の1,4−シクロヘキサンジメタノールの1つと反応させることによって製造できる。1つのこのような生成物は、約70質量パーセントのトランス異性体と約30質量パーセントのシス異性体とを含有する。得られるベンゾエートエステルは、Benzoflex(登録商標)352として市販で入手可能である。
【0032】
72〜99質量パーセントのトランス異性体を含有するCHDMDB異性体の混合物は、Benzoflex(登録商標)352に対し、十分に長いオープンタイムでのより速い硬化時間という加工上の利点に基づいて、ホットメルト接着剤における変性剤として用いるのに特に好適である。付随する例におけるデータは、これらの異性体混合物が、より強い結合を与えるのに加え、接着剤のレジン成分の結晶化速度の増大もさせる(Benzoflex(登録商標)352に対して最大2倍)ことを示す。実際面で、これは、最大結合強度の発現に必要な時間を低減させる。
【0033】
トランス異性体リッチ画分を用いて実現できるよりも長いオープンタイムを必要とする用途について、約34質量パーセント超のシス異性体を含有するCHDMDB混合物は、このより長いオープンタイムを与えることになる。
【0034】
ホットメルト接着剤において典型的に使用するポリマーの種類としては、これらに限定されるものではないが、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリオレフィン、スチレン,アクリレートおよびオレフィンを基にするブロックコポリマー、メタロセン触媒系のオレフィン、アモルファスポリアルファオレフィン、アクリルトリブロック含有するアクリルゴム、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、反応型および非反応型のポリウレタン、ポリエステル、スルホポリエステルならびにポリアミドが挙げられる。
【0035】
ホットメルト接着剤において使用する粘着付与レジンの種類としては、これらに限定するものではないが、脂肪族レジン、芳香族レジン、純粋モノマーレジン、混合芳香族および脂肪族レジン、ロジン、ロジンエステル、テルペンおよび他の混合モノマーレジンが挙げられる。
【0036】
本発明のCHDMDB異性体混合物をホットメルト接着剤において使用する場合、これらの混合物の濃度範囲は、2〜50質量パーセント、好ましくは15〜35質量パーセント(接着剤配合物の総質量基準)である。最適濃度は、多くのパラメータ(これらに限定するものではないが所望のオープンタイムおよび硬化時間、溶融粘度、接着および強度が挙げられる)によって決定される。
【0037】
ホットメルト接着剤の用途としては、これらに限定されるものではないが、不織布、パッケージング材料、製品組立品、製本物接着剤、およびラベルの接着の製造が挙げられる。コンポジット製品としては、織布および不織布、固体フィルムおよびシート(天然および合成のポリマーから形成されるもの)、パッケージング材料、スティックのり、構造材料、製本物、およびラベルからなる群から選択される物質の2つの結合した層を挙げることができる。不織布としては、おむつまたは女性用衛生用品を挙げることができる。結合は、有機ポリマー、レジン、および1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートの72質量パーセント超のトランス異性体、好ましくは90〜94質量パーセントのトランス異性体、を含有する第1の混合物、または1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートの66質量パーセント未満のトランス異性体を含有する第2の混合物からなる群から選択される変性剤、を含有する溶融した接着剤組成物を用いて実現される。
【0038】
本発明のCHDMDB組成物は、種々のポリマー組成物(これらに限定されるものではないが粉末コーティング、水性コーティング、ホットメルトコーティング、溶媒系コーティング、u.v.硬化性コーティング、およびジェットのインク(例えばホットメルトジェットインク)、ワニス(例えばオーバープリントワニス)、溶液および水性の型が挙げられる)において、他の種の可塑剤および変性剤に対して、加工および/または製品の利点を与える。
【0039】
この側面において、ベンゾエート組成物としては、有機ポリマーおよび該ポリマー用の変性剤を挙げることができる。変性剤としては、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのトランスおよびシス異性体の混合物であってトランス異性体が組成物の72〜99質量パーセントを構成するもの;またはトランス異性体が組成物の1〜66質量パーセントを構成する該異性体の混合物を挙げることができる。組成物はプラスチゾルであることができる。組成物は、押出成形または射出成形による物品製造用のエンジニアリングプラスチックにおいて使用できる。更に、該組成物は有機または水性のビヒクルを含むことができる。
【0040】
本発明のベンゾエート組成物は、種々のプラスチックのための加工助剤として、そしてエンジニアリングプラスチック(例えばポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド/スチレンブレンド物、および同様のポリマー)における補強フィラーおよびプロセス助剤の両者として作用する。本明細書で使用する「加工助剤」は、小量(1〜5%)で添加できる上実質的な改善が他の特性の顕著な減損なしでの加工をもたらす物質である。Encyclopedia of PVC Volume II,第602頁 Marcel Dekker,Inc,NYによって要約される。
【0041】
以下の例は、CHDMDBの本発明の異性体混合物の製造および評価を説明し、そして添付の特許請求の範囲において規定する本発明の範囲の限定と解釈すべきではない。特記がない限り、全ての部およびパーセントは質量基準である。異性体混合物およびこれらの混合物を含有する組成物の特性は雰囲気条件下で測定した。
【0042】
例1
この例は、本発明のCHDMDB異性体混合物の製造を説明する。
【0043】
約70質量パーセントのトランスCHDMDBおよび約30パーセントのシス異性体(Benzoflex(登録商標)352として入手可能)を含有する100質量部のCHDMDB異性体混合物(以後、「対照」という)を、温度140℃に加熱したオーブン内に置いた。オーブンの温度を次いで100℃に下げ、そしてこの温度で16時間維持した。組成物の液体部分をデカンテーションし、固体結晶物質を残した。結晶物質のガスクロマトグラフィによる分析からトランス異性体量が96パーセントであることが明らかになった。この物質を以後XP−7007という。
【0044】
前記の液体部分を雰囲気温度で固化させ、ほぼ等しい質量部のシスおよびトランス異性体を含有することが分かった。この物質を以後XP−7008という。
【0045】
全ての物質を、TAモデル2910 DSC示差走査熱量計を用いて分析した。得られるカーブを添付の図面にて表す:図1は対照について、図2はXP−7007について、そして図3はXP−7008についてである。結晶XP−7008物質についてのピークは80.2℃で生じ、市販のエステル混合物についての56.77℃でのピークよりも顕著に高く、そしてXP−7008についての顕著に広いピークは、より高量のシス異性体を示す。
【0046】
例2
この例は、レジン結晶化速度に対する例1の3つのCHDMDB異性体の効果を比較する。評価する5つのレジンは、ホットメルト接着剤において従来使用されるものであり、以下の通り説明できる:
【0047】
Regelrez(登録商標)1094(レジンA)−Eastman Chemicalから入手可能な純粋モノマー脂肪族レジン
【0048】
Wingtack(登録商標)95(レジンB)−Goodyear Chemicalから入手可能なC5脂肪族レジン
【0049】
Nevex(登録商標)100(レジンC)−Neville Chemicalから入手可能な芳香族レジン
【0050】
Eastotac(登録商標)H−100R(レジンD)−Eastman Chemicalから入手可能な水素化脂肪族レジン
【0051】
Escorez(登録商標)5300(レジンE)−Exxon Mobil Chemical Companyから入手可能な脂環式レジン
【0052】
全てのサンプルは、5グラムのレジンおよび5グラムの異性体混合物を含有していた。
【0053】
結晶化速度は以下の手順を用いて評価した:サンプルをオーブン中177℃で15分間加熱し、更に15分間同じ温度で撹拌および加熱した。サンプルを次いでオーブンから取り出し、そして結晶化させた。初期と完全な結晶化との時間間隔を表1に記録する。
【0054】
異性体混合物を以下の通り特定する:
1=対照=Benzoflex(登録商標)352として特定される市販で入手可能な混合物(トランス:シス異性体質量比70:30を含有)
2=XP 7007 トランス:シス質量比92:8の混合物
3=XP 7008 トランス:シス質量比1:1の混合物
【0055】
【表1】

【0056】
表1中のデータは、異性体混合物2(最も高い濃度のトランス異性体を含有する)を用いて実現される結晶化の加速された速度を示す。結晶化の速度は、最も高いシス異性体量の異性体を用いた対照に対して遅くなり、これは幾つかの商業用途のために望ましい場合がある。
【0057】
例3
この例は、本発明のベンゾエート異性体混合物によって種々の配合物に与えられる特性を、公知の異性体混合物によって与えられるものと比較する。
【0058】
接着剤配合物の製造
全ての接着剤配合物は、ポリマー以外の含有成分を177℃にて低速(400RPM)で混合しながら溶融することによって製造した。次いでポリマーをゆっくり添加し、均一になるまで混合した。これは最大混合時間30分間を必要とした。脱気が必要な場合には、接着剤配合物を缶内に置いて1時間オーブン内で加熱した。
【0059】
接着剤配合物の組成
配合物1.不織布用のブロックコポリマー構造接着剤
50部のRegelrez(登録商標)1094−Eastman Chemicalから入手可能な純粋モノマー脂肪族レジン
0.5部のInorgox(登録商標)1010−Ciba Geigy Corporationから入手可能な酸化防止剤
35部の異性体CHDMDB(評価されるもの)、例1で説明した通り特定
25部のKraton(登録商標)G−1652、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー Kraton Polymersから入手可能
【0060】
配合物2.パレット接着剤
10部のエチレン/酢酸ビニルコポリマー Elvax(登録商標)150としてDupontから入手可能
50部の芳香族レジン Neville ChemicalからNexex(登録商標)100として入手可能
50部のCHDMDB異性体混合物(評価されるもの)
1部のIrganox(登録商標)1076
【0061】
配合物3.典型的なスティックのり配合物
25部の400メルトインデックスエチレン/酢酸ビニルコポリマー(28モルパーセントの酢酸ビニルを含有、Elvax(登録商標)210としてDupontから入手可能)
21部の4メルトインデックスエチレン/酢酸ビニルコポリマー(28モルパーセントの酢酸ビニルを含有、Elvax(登録商標)260としてDupontから入手可能)
35部のSylvatac(登録商標)100NS、ロジンエステル、Arizona Chemicalから入手可能
20部のCHDMDB異性体混合物(評価されるもの)
0.1部の酸化防止剤、Irganox(登録商標)101としてCiba Geigy Corporataionから入手可能
【0062】
配合物4.典型的なラベルおよび一般的なパッキングのり
25部のElvax(登録商標)210
25部のSylvatac(登録商標)100NS
25部のCHDMDB異性体
0.1部の酸化防止剤、Irganox(登録商標)1010としてCiba Geigyから入手可能
3部の鉱物油、Tufflo 6056としてCitcoから入手可能
【0063】
配合物5.メタロセンポリオレフィンを基にする不織用途用の接着剤
37部のメタロセン触媒ポリオレフィン、Licocene(登録商標)PP2602としてClariantから入手可能
3部のメタロセン触媒ポリオレフィン、Licocene(登録商標)PE4201として入手可能
20部のCHDMDB異性体
40部の脂環式レジン、Escorez(登録商標)5300としてExxon Mobilから入手可能
0.1部のIrganox(登録商標)1010
【0064】
試験手順
平均オープンタイムを、3測定の最小に基づき、クラフト紙の2インチ幅の細長片を用いて評価した。評価される配合物を177℃にオーブン内で加熱した。溶融接着剤の10mil厚フィルムを紙細長片に3インチ長のBirdドローダウンバーを用いて塗布してタイマーを開始した。クラフト紙の第2の細長片を接着剤の上に所望の時間間隔で前後のストロークを用いて50グラムの木材ブロックで適用し、そして直ちに外した。この手順を、より長い時間間隔で、繊維を裂く結合が観察されなくなるまで繰り返した。これが生じた時間間隔を記録した。表2に示す。
【0065】
平均硬化時間を、3測定の最小に基づき、評価される溶融配合物をクラフト紙の3 1/2インチ幅の細長片に3インチ幅のBirdドローダウンバーを用いて塗布することによって評価した。配合物は、温度177℃までオーブン内で加熱したものである。接着剤の10mil厚フィルムを紙細長片にドローダウンバーを用いて塗布し、そして第2の紙細長片を適用し、続いて手で加圧した。上側層の紙を一定速度で引き去った。紙繊維の裂けが最初に観察されたときの時間間隔に注目して硬化時間として記録した。硬化時間値は表3に示す。
【0066】
種々の基材への接着は、溶融配合物を110ポンド石版紙のシートに塗布してコーティングを固化させることによって評価した。コートされた紙を2×2インチ(5cm×5cm)角に切断して、コートされた側をガラス、白色着色(W)または明澄(C)PVC(ポリ塩化ビニル)、スチール、アルミニウムおよびオークに適用した。コートされた紙をホットエア送風機で加熱して接着剤を活性化し、その後得られるコンポジットを冷やした。冷却された紙を基材から引き去り、そして裂かれた紙繊維のパーセントを評価した。
【0067】
剪断力によって接着が破壊された温度(SAFT;剪断接着破壊温度)は、評価される溶融接着剤の6mil厚層をMylar(登録商標)フィルム片に塗布することによって評価した。接着剤が冷却された時点で、フィルムの1インチ×6インチの細長片をステンレススチールのシートに適用して1インチ×1インチの重ね継ぎを形成した。次いで重なり領域をホットエアガンで加熱して接着剤を溶融し、結合を形成した。フィルム細長片の自由端を1キログラム重りにペーパークリップを用いて取付けた。得られるコンポジットを、次いで、支持体に十分なクリアランスで取付けて重りを落とした。組立品を次いで、50℃に加熱したオーブン内に置いた。オーブン温度を半時間毎に5℃上昇させた。重りが落ちたときの温度に注目した。
【0068】
接着破壊の温度は、接着剤配合物2(パレット接着剤)について、この配合物の3/16インチ径のビーズを段ボール紙の2”×16”片に適用することにより評価した。接着剤を用いて、積層されたボール紙の2”×2”片を有する結合積層体を形成した。1分間隔で結合の強度を評価した。完全な結合破壊に必要な時間を記録した。
【0069】
溶融粘度値は177℃でモデルDV II RVTブルックフィールド粘度計(Thermosel(登録商標)装置を備える)を用いて得た。そして速度5RPMで回転する18番スピンドルを選択して見掛け粘度を評価した。
【0070】
評価の結果を以下の表に記録する。CHDMDBのサンプルは、「対照」(市販材料について)、XP−007(96パーセントのトランス異性体を含有する混合物について)およびXP008(実質的に等しい質量のトランスおよびシス異性体を含有する物質について)と特定する。
【0071】
177℃での溶融粘度(mPa・s)
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのトランスおよびシス異性体を含む組成物であって、トランス異性体が該組成物の72〜99質量パーセントを構成する、組成物。
【請求項2】
トランス異性体が該組成物の90〜94質量パーセントであり、かつ該組成物の融点が120〜128℃である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのトランスおよびシス異性体を含む組成物であって、トランス異性体が該組成物の1〜66質量パーセントである、組成物。
【請求項4】
トランス異性体が該組成物の48〜52質量パーセントであり、かつ該組成物の融点が80〜84℃である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのシスおよびトランス異性体を含み、かつ72質量パーセント超の該トランス異性体を含有する固体組成物の製造方法であって:
(1)68〜70質量パーセントの該トランス異性体および30〜32質量パーセントの該シス異性体を含む組成物を、溶融した物質を形成するのに十分な時間間隔でその融点超に加熱すること;
(2)該溶融した物質を100℃に冷却し、そして、該トランス異性体を含有する固化した組成物を結晶化および分離するのに効果的な時間この温度を維持すること;ならびに
(3)該溶融した組成物の残部を固化させること;
を含む、方法。
【請求項6】
結晶化のための時間を増大させることによって該トランス異性体の濃度を増大させる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(a)エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリオレフィン、スチレン,アクリレートおよびオレフィンを基にするブロックコポリマー、メタロセン触媒系のオレフィン、アモルファスポリアルファオレフィン、アクリルトリブロック含有アクリルゴム、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、反応型および非反応型のポリウレタン、ポリエステル、スルホポリエステルならびにポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー、(b)脂肪族レジン、芳香族レジン、純粋モノマーレジン、脂環式レジン、ロジン、レジンエステル、テルペンおよび混合モノマーレジンからなる群から選択される粘着付与レジン、(c)酸化防止剤、ならびに(d)(1)1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのトランスおよびシス異性体の混合物であって、該トランス異性体が組成物の72〜99質量パーセントを構成する混合物、および(2)1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのトランスおよびシス異性体の混合物であって、該トランス異性体が組成物の1〜66質量パーセントを構成する混合物、からなる群から選択される変性剤組成物を含む、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項8】
熱可塑性ポリマー、レジンおよび変性剤を含むホットメルト接着剤組成物の硬化時間および結晶化速度を促進する方法であって、該変性剤として、少なくとも72質量パーセントのトランス異性体を含有する1,4−ジメチルシクロヘキシルジベンゾエートの構造異性体のブレンド物を選択すること、を含む、方法。
【請求項9】
該熱可塑性ポリマーが、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリオレフィン、メタロセン触媒オレフィンポリマー、アモルファスポリオレフィン、スチレンアクリレートおよびオレフィンを基にするブロックコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、反応型および非反応型のポリウレタン、ポリエステル、スルホポリエステル、アクリルブロックおよびトリブロックコポリマー、アクリルエラストマーおよびポリアミドからなる群から選択され、かつ、該粘着付与レジンが、脂肪族、脂環式および芳香族レジン、純粋モノマーレジン、官能性レジンおよびテルペンレジンからなる群から選択され、かつ、該ブレンド物が90〜94質量パーセントの該トランス異性体を含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
織布および不織布、ならびに天然および合成のポリマーから形成された固体のフィルムおよびシートからなる群から選択される物質の2つの結合した層を含み、該結合が、有機ポリマー、レジン、および72質量パーセント超の1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのトランス異性体を含有する第1の混合物からなる群から選択される変性剤、を含む溶融した接着剤組成物を用いて実現されている、コンポジット製品。
【請求項11】
不織布、パッケージング材料、スティックのり、構造材料、製本物およびラベルからなる群から選択される、請求項10に記載のコンポジット製品。
【請求項12】
該不織布が、おむつまたは女性用衛生用品である、請求項11に記載のコンポジット製品。
【請求項13】
有機ポリマーおよび該ポリマー用の変性剤を含む組成物であって、該変性剤が、
(1)1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのトランスおよびシスの異性体を含む混合物であって、トランス異性体が該組成物の72〜99質量パーセントを構成する混合物;ならびに
(2)該異性体を含む混合物であって、トランス異性体が該コーティング組成物の1〜66質量パーセントを構成する混合物;
からなる群から選択される、組成物。
【請求項14】
プラスチゾルである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
該ポリマーが、押出成形または射出成形による物品の製造用のエンジニアリングプラスチック、からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
有機または水性のビヒクルを更に含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
コーティング、インク、ワニス、および室温活性化接着剤からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
該コーティングが粉末コーティングであり、そして該インクがホットメルトジェットインクであり、そして該ワニスがオーバープリントワニスである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
該変性剤が、該ポリマー用のプロセス助剤である、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
該熱可塑性ポリマーが、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリオレフィン、メタロセン触媒オレフィンポリマー、アモルファスポリオレフィン、スチレンアクリレートおよびオレフィンを基にするブロックコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、反応型および非反応型のポリウレタン、ポリエステル、スルホポリエステル、アクリルブロックおよびトリブロックコポリマー、アクリルエラストマーおよびポリアミドからなる群から選択され、かつ、粘着付与レジンが、脂肪族、脂環式および芳香族レジン、純粋モノマーレジン、官能性レジンおよびテルペンレジンからなる群から選択され、かつ、該ブレンド物が48〜52質量パーセントの該トランス異性体を含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
織布および不織布、ならびに天然および合成のポリマーから形成された固体のフィルムおよびシートからなる群から選択される物質の2つの結合した層を含み、該結合が、有機ポリマー、レジン、および66質量パーセント未満の1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートのトランス異性体を含有する第1の混合物からなる群から選択される変性剤、を含む溶融した接着剤組成物を用いて実現されている、コンポジット製品。
【請求項22】
不織布、パッケージング材料、スティックのり、構造材料、製本物およびラベルからなる群から選択される、請求項19に記載のコンポジット製品。
【請求項23】
該不織布が、おむつまたは女性用衛生用品である、請求項20に記載のコンポジット製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−506637(P2011−506637A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536975(P2010−536975)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/084279
【国際公開番号】WO2009/073393
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(510153939)ジェノビク スペシャルティーズ ホールディングス コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】