説明

17α−アセトキシ−11β−[4−(N、N−ジメチル−アミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンの合成のための工業的プロセスおよびプロセスの新規中間体

本発明は強い抗プロゲストーゲンおよび抗グルココルチコイド剤である式(I)の17α−アセトキシ−11β−[4−(N,N−ジメチル−アミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン[CDB−2914]の溶媒和のない合成のための新規な工業的プロセスに関する。本発明はまたそのプロセスで中間体として利用される式(VII)および(VIII)の化合物に関する。
以下は本発明によるプロセスである:
i)式(X)の3−(エチレン−ジオキシ)−エストラ−5(10),9(11)−ジエン−17−オンを既知の方法により無水テトラヒドロフラン中でインサイツに生じるカリウムアセチリドと反応させ、
ii)得られた式(IX)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−エチニル−17β−ヒドロキシ−エストラ−5(10),9(11)−ジエンをジクロロメタン中、トリエチルアミンおよび酢酸の存在下でフェニルスルフェニルクロリドと反応させ、
iii)得られた式(VIII)の3−(エチレン−ジオキシ)−21−(フェニル−スルフィニル)−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),17(20),20−テトラエンの異性体混合物をまずメタノール中ナトリウムメトキシドと、ついでトリメチルホスファイトと反応させ、
iv)得られた式(VII)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−20−メトキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),20−トリエンをメタノール中で塩化水素と反応させ、ついで
v)得られた式(VI)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−20−オンをジクロロメタン中、トリメチルオルトギ酸およびp−トルエンスルホン酸の存在下で既知の方法によりエチレングリコールと反応させ、
vi)得られた式(V)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエンをピリジンとジクロロメタンの混合物中、ヘキサクロロアセトンの存在下で既知の方法により過酸化水素と反応させ、
vii)得られた5α,10α−と5β,10β−エポキシドのおよそ1:1の混合物を含む式(IV)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−5,10−エポキシ−19−ノルプレグナ−9(11)−エンを溶液から単離し、テトラヒドロフラン中、塩化第一銅触媒の存在下で4−ブロモ−N,N−ジメチル−アニリンから得られたグリニア試薬と既知の方法により異性体を分離することなく反応させ、
viii)得られた式(III)の3,3,20,20−ビス−(エチレン−ジオキシ)−5α,17α−ジヒドロキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−9(11)−エンを水中で既知の方法により硫酸水素カリウムと反応させ、
ix)得られた式(II)の11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンを既知の方法により過塩素酸の存在下、無水酢酸でアセチル化し、最後に
x)得られた溶媒和を含む式(I)の化合物からエタノールと水1:1混合物中70℃で溶媒和のない式(I)の化合物を遊離する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は強い抗プロゲストーゲンおよび抗グルココルチコイド剤である式(I)の溶媒和のない17α−アセトキシ−11β−[4−(N,N−ジメチル−アミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン[CDB−2914]の合成のための新規な工業的プロセスに関する。本発明はまたそのプロセスで中間体として利用される式(VII)および(VIII)の化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
添付の図式でローマ数字の式の化合物の名称は本発明によるプロセスの説明で与えられる。
【0003】
以下は本発明によるプロセスである:
i)式(X)の3−(エチレン−ジオキシ)−エストラ−5(10),9(11)−ジエン−17−オンを既知の方法により無水テトラヒドロフラン中でインサイツに生じるカリウムアセチリドと反応させ、
ii)得られた式(IX)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−エチニル−17β−ヒドロキシ−エストラ−5(10),9(11)−ジエンをジクロロメタン中トリエチルアミンおよび酢酸の存在下でフェニルスルフェニルクロリドと反応し、
iii)得られた式(VIII)の3−(エチレン−ジオキシ)−21−(フェニル−スルフィニル)−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),17(20),20−テトラエンの異性体混合物をまずメタノール中ナトリウムメトキシドと、ついでトリメチルホスファイトと反応し、
iv)得られた式(VII)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−20−メトキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),20−トリエンをメタノール中で塩化水素と反応し、ついで
v)得られた式(VI)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−20−オンをジクロロメタン中トリメチルオルトギ酸およびp−トルエンスルホン酸の存在下で既知の方法によりエチレングリコールと反応し、
vi)得られた式(V)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエンをピリジンとジクロロメタンの混合物中ヘキサクロロアセトンの存在下で既知の方法により過酸化水素と反応し、
vii)得られた5α,10α−と5β,10β−エポキシドのおよそ1:1の混合物を含む式(IV)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−5,10−エポキシ−19−ノルプレグナ−9(11)−エンを溶液から単離し、テトラヒドロフラン中、塩化第一銅触媒の存在下で4−ブロモ−N,N−ジメチル−アニリンから得られたグリニア試薬と既知の方法により異性体を分離することなく反応し、
viii)得られた式(III)の3,3,20,20−ビス−(エチレン−ジオキシ)−5α,17α−ジヒドロキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−9(11)−エンを水中で既知の方法により硫酸水素カリウムと反応し、
ix)得られた式(II)の11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンを既知の方法により過塩素酸の存在下、無水酢酸でアセチル化し、最後に
x)得られた溶媒和を含む式(I)の化合物からエタノールと水1:1混合物中70℃で溶媒和のない式(I)の化合物を遊離する。
【0004】
式(I)の化合物の合成は3−メトキシ−19−ノルプレグナ−1,3,5(10),17(20)−テトラエンから始める米国特許US4,954,490で初めて述べられた。まず17(20)−二重結合の四酸化オスミウムによる酸化によって17α,20αジオールが合成され、それはバーチ還元によって3−メトキシ−19−ノルプレグナ−2,5(10)−ジエン−17α,20α−ジオールに変換される。ついで三臭化ピリジンによって17α,20α−ジヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3−オンを与えるように4,9−ジエン構造が造られ、それは17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンを生じるようにシュウ酸クロリドによって酸化される。ついでケタール形成によって3,3,20,20−ビス−(エチレン−ジオキシ)−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−17α−オールが合成され、化合物を5α,10α−エポキシ−3,3,20,20−ビス−(エチレン−ジオキシ)−19−ノルプレグナ−9(11)−エン−17α−オールを与えるようにメタクロロ過安息香酸と反応する。後者はCuCl触媒の存在下でp−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル−マグネシウムブロミドとのグリニア反応によって3,3,20,20−ビス−(エチレン−ジオキシ)−5α,17α−ジヒドロキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−9(11)−エンへと変換され、最後に無水酢酸とリン酸の混合物でのアシル化によって式(I)の化合物が得られる。これは10ステップの合成であり、その全収率は0.62%で、それゆえ活性成分の工業的生産には適さない。
【0005】
米国特許US5,929,262によればプレグナン側鎖は以下の文献に述べられているいわゆるSNAP法によって合成される:アメリカ化学会誌 112, 6449−6450 (1990)。合成の出発物質は3,3−(エチレン−ジオキシ)−ノルアンドロスタ−5(10),9(11)−ジエン−17−オンであり、それはまず17α−ヒドロキシ,17β−シアンヒドリンに変換される。後者は4−(N,N−ジメチルアミノ)−ピリジンの存在下、クロロ−(クロロメチル)−ジメチルシランと反応して17β−シアノ−17α−[(クロロメチル)−ジメチルシリル]−エストラ−5(10),9(11)−ジエンを生じ、それはリチウム ジ−tert−ブチルビフェニルの存在下での分子間付加とそれに続く得られた生成物の塩酸との反応によって17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンに変換される。17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンは、触媒量のp−トルエンスルホン酸の存在下でエチレングリコールとトリメチルオルトギ酸との反応によってさらに精製することなしに3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエンへと変換される。次の反応ステップはヘキサフルオロアセトンとリン酸二ナトリウムの存在下で30%過酸化水素による5(10)−二重結合のエポキシドへの酸化である。ついでCuCl触媒の存在下、p−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル−マグネシウムブロミドとのグリニア反応によって3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−5α,17α−ジヒドロキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−9−エンが得られ、p−トルエンスルホン酸触媒の存在下でのトリフルオロ無水酢酸と酢酸によるアシル化によって式(I)の化合物が合成される。9ステップのプロセスの最初のステップにおいて用いられる試薬は環境保護の観点から有害であり(シアン化アルカリおよび金属リチウムがシアンヒドリンの合成に用いられる)反応温度は−70℃で、それは工業的生産においては不利である。合成の全収率は13%である。
【0006】
特許出願WO2004/078709は以下のような上記プロセスの改変について述べている:上に述べた方法によって得られる17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエンからまず酢酸とトリフルオロ無水酢酸の混合物との反応によって17α−アセトキシ誘導体が合成される。次のステップは3,3−(エチレン−ジオキシ)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−20−オンを与えるためのp−トルエンスルホン酸の存在下、エチレングリコールとトリエチルオルトギ酸による3位のオキソ基からのケタールの形成である。これはヘキサフルオロ酢酸とリン酸水素二ナトリウムの存在下、30%過酸化水素で5α,10α−エポキシド誘導体に変換され、グリニア反応により上に述べたプロセスに反して2当量の試薬を用いるだけで5α−ヒドロキシ−17α−アセトキシ−3,3−(エチレン−ジオキシ)−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−9(10)−エン−20−オンが得られる。式(I)の最終産物が酢酸水での加水分解によって得られる。
【0007】
式(I)の化合物の13−エチル類縁体の合成は次の文献に述べられている:ステロイド 63, 50−57 (1998)。合成の出発物質はレボノルゲストレル(17α−エチニル−17β−ヒドロキシ−13−エチル−ゴナ−4−エン−3−オン)であり反応の順序は以下の通りである:まず3,3−(エチレン−ジオキシ)−ケタールが形成され、それから三臭化ピリジンを用いてΔ5(10)−誘導体を経て17α−エチニル−17β−ヒドロキシ−13−エチル−ゴナ−4,9−ジエン−3−オンが合成される。ついで17β−ニトロキシ誘導体が合成され、続いてそれを17α−ホルミルオキシ−13−エチル−18,19−ジノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンを与えるように酢酸水銀の存在下ギ酸とジメチルホルムアミドの混合物と反応させ、それは炭酸水素カリウムで加水分解されて17α−ヒドロキシ−13−エチル−18,19−ジノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンを生じ、後者は3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)誘導体に変換される。式(I)の化合物の合成のさらなるステップは上と同じである(エポキシド形成、グリニア反応、ケタールの加水分解とアシル化)。17β−ニトロキシ誘導体合成および側鎖形成の収率は29%、合成の全収率は3.5%である。さらにプロセスの不利な点は合成の中間体がカラムクロマトグラフィーによって精製されることであり、それは工業的規模では非常に費用がかかる。
【0008】
次の文献:Bioorg. Med. Chem. Lett., 1997, 2229−2234,には、3,3−(エチレン−ジオキシ)−19−ノルアンドロスタ−5(10),9(11)−ジエン−17−オン−それは我々の発明でも同様に出発原料として用いている−から出発する17α−エチニル誘導体およびこれからの5α,10α−エポキシドの合成について述べられている。
【0009】
プレグナン側鎖の合成のためのプロセス−コルチコイド系列で−は米国特許US4,041,055に述べられていて、それによればトリエチルアミンの存在下17α−エチニル−アンドロスタン誘導体とフェニルスルフェニルクロリドから21−(フェニルスルフィニル)−プレグナン誘導体が得られ、次に20−メトキシ−21−(フェニルスルフィニル)誘導体を与えるようにマイケル付加する。後者はトリメチルホスフェートと反応して17α−ヒドロキシ−20−ケト−プレグナン誘導体を生じ酸加水分解によって17α−ヒドロキシ−20−ケト−プレグナンが得られる。
【0010】
式(IX)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−エチニル−17β−ヒドロキシ−エストラ−5(10),9(11)−ジエンが容易に大量に利用できる工業製品である式(X)の3−(エチレン−ジオキシ)−エストラ−5(10),9(11)−ジエン−17−オンから合成できることが知られている。本発明の基礎は、式(VIII)の新規3−(エチレン−ジオキシ)−21−(フェニルスルフィニル)−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),17(20),20−テトラエンがトリエチルアミンおよび酢酸の存在下、式(IX)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−エチニル−17β−ヒドロキシ−エストラ−5(10),9(11)−ジエンとフェニルスルフェニルクロリドから始めてよい収率で、米国特許US4,041,055に述べられている(−70℃)よりも高温で合成できるという発見である。式(VII)の新規3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−20−メトキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),20−トリエンは式(VIII)の化合物からメタノールの付加とそれに続くトリメチルホスファイトとの反応によって得られる。式(VI)の新規3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−20−オンは20−メトキシ誘導体から塩酸による加水分解によって合成される。式(V)の既知3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエンは式(VI)の化合物からトリメチルオルトギ酸およびp−トルエンスルホン酸の存在下でエチレングリコールとのケタール形成反応で得られる。式(I)の望まれる生成物は式(V)の化合物から4ステップで合成されるが、たった2つの中間体の分離のみが必要である。まず式(IV)の5α,10α−エポキシドが合成され、ついでこれはCuCl触媒の存在下でグリニア反応によって式(III)の5α−ヒドロキシ−11−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]誘導体に変換される。酸加水分解の後に式(II)の17α−ヒドロキシ−11β−[4−(N,N−ジメチル−アミノ)−フェニル]−プレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンが得られ後者は無水酢酸と過塩素酸の混合物でアシル化され式(I)の望まれる化合物を生じ、それは溶媒和のない形に変換される。
【発明の概要】
【0011】
我々の発明によるプロセスは好ましくは式(X)の3−(エチレン−ジオキシ)−エストラ−5(10),9(11)−ジエン−17−オンを−カリウムtertブトキシドとアセチレンからインサイツに作られる−カリウムアセチリドと無水テトラヒドロフラン中−5から+5℃、好ましくは0から−2℃の間の温度で反応することによって行われる。得られた式(IX)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−エチニル−17β−ヒドロキシ−エストラ−5(10),9(11)−ジエンをクロロメタン溶液中で1.3当量のフェニルスルフェニルクロリドのクロロホルム溶液と−10から+5℃、好ましくは0から−5℃の間の温度で、1.3当量のトリエチルアミンと1.2当量の酢酸の存在下で反応させる。得られた式(VIII)の3−(エチレン−ジオキシ)−21−(フェニル−スルフィニル)−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),17(20),20−テトラエンをまずメタノール中0.5当量のナトリウムメトキシドと、ついで1.1当量のトリメチルホスフェートと50から60℃、好ましくは62から64℃の間の温度で反応させる。得られた式(VII)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−20−メトキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),20−トリエンをメタノール中20から25℃の間の温度で0.08当量の塩化水素で加水分解する。得られた式(VI)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−20−オンを10当量のエチレングリコールおよび6等量のトリメチルオルトギ酸とジクロロメタン中p−トルエンスルホン酸の存在下で20から25℃の間の温度で反応させる。得られた式(V)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10).9(11)−ジエンを5当量の50%過酸化水素溶液と、ピリジンとジクロロメタン混合物中0.25当量のヘキサクロロアセトンの存在下−10から+10℃、好ましくは0から−2℃の間の温度で反応させる。得られた式(IV)の5α,10α−と5β,10β−エポキシドが55:45の混合物を含む3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−5,10−エポキシ−19−ノルプレグナ−9(11)−エンを次のステップで異性体を精製、分離することなく反応させる。式(IV)のエポキシドの混合物を−4−ブロモ−N,N−ジメチル−アニリンとマグネシウムから得られる−5当量の4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニルマグネシウムブロミドとテトラヒドロフラン中CuCl触媒の存在下15から20℃の間の温度で反応させる。得られた式(III)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−5α,17α−ジヒドロキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−9(11)−エンを水中で0から5℃の間の温度で2.5当量の硫酸水素カリウムと反応させ、ついで反応混合物をジクロロメタンで抽出する。得られた式(II)の11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンのジクロロメタン溶液を合成の最終ステップ、17−ヒドロキシ基のアシル化に直接用いる。式(II)の化合物の溶液を1.5当量の70%過塩素酸の存在下−10から−40℃、好ましくは−25から−30℃の間の温度で1時間、10当量の無水酢酸と反応させる。得られた式(I)の粗17α−アセトキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンをイソプロパノールから再結晶し、ついで得られた溶媒和を含む式(I)の化合物からエタノールと水の1:1混合物中で溶媒和のない化合物を遊離させる。
【発明の効果】
【0012】
我々の発明は以下のような利点がある:
1)商業的に利用できる出発物質を用いて工業的規模で行える。
【0013】
2)9ステップであるが、7中間体の単離のみが必要である。
【0014】
3)新プロセスは側鎖の合成にフェニルスルフェニルクロリドを用いてノルステロイド系に応用される。工業的応用可能性の点からこの利点は反応が、文献による類似化合物の合成で用いられる−70℃のかわりに、0から−5℃の間の温度で式(VIII)および(VII)の新規中間体を経て行われることである。
【0015】
4)合成中に形成される副産物は次のステップで容易に分離されるので式(VI)の化合物の5α,10α−および5β,10β−エポキシド異性体混合物を分離する必要がない。
【0016】
5)文献中にその使用が述べられている可燃性、爆発性で工業的に利用できないジエチルエーテルよりも危険性が低い溶媒、エタノールと水の1:1混合物中70℃で溶媒和のない製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】式(I)を示す。
【図2】式(II)を示す。
【図3】式(III)を示す。
【図4】式(IV)を示す。
【図5】式(V)を示す。
【図6】式(VI)を示す。
【図7】式(VII)を示す。
【図8】式(VIII)を示す。
【図9】式(IX)を示す。
【図10】式(X)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
我々の発明によるプロセスを以下の実施例で説明するがこれに限るものではない。
【実施例1】
【0019】
3−(エチレン−ジオキシ)−17α−エチニル−17β−ヒドロキシ−エストラ−5(10),9(11)−ジエン(IX)
窒素下でカリウムtert−ブトキシド(60g)を無水テトラヒドロフラン(1500mL)に溶解し溶液にアセチレンを20℃で30分間バブルし、ついで溶液を0−(−2)℃に冷却しアセチレンのバブリングをさらに30分間続けた。それからアセチレンのバブリングを続けながら式(X)の化合物(119.4g, 0.38mol)を加えた。反応混合物を1時間攪拌し過剰のアセチレンを取り去るために混合物を通して窒素をバブルした。塩化アンモニウム飽和溶液(750mL)を加え反応混合物を10分間攪拌した。有機層を分離し水相をテトラヒドロフラン(300mL)で抽出した。合わせた有機層を塩化アンモニウム飽和溶液(150mL)で洗い、容積600mLに濃縮し氷水(4L)に注いだ。得られた混合物を30分間攪拌し、沈殿した結晶性生成物をろ過し40℃で乾燥し標記の化合物122.8g(95%)を得た。生成物の純度は最低95%であった(HPLCによる)。
【実施例2】
【0020】
3−(エチレン−ジオキシ)−21−(フェニル−スルフィニル)−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),17(20),20−テトラエン(VIII)
ジクロロメタン(2200mL)中、式(IX)の化合物(122.5g,0.36mol)、トリエチルアミン(151mL)および酢酸(24.6mL) の懸濁液にフェニルスルフェニルクロリド(67.9g,0.47mol)のクロロホルム溶液(170mL)を温度を0から−5℃に保ちながら滴下した。反応混合物を10分間攪拌し、ついで水(250mL)およびメタノール(100mL)を加えた。有機層を分離し、1N塩酸および水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾かし容積185mLに濃縮した。残渣にジイソプロピルエーテル(120mL)を加え混合物を5℃に冷却した。沈殿した結晶をろ過し60℃以下で乾燥して標記の化合物144g(88%)を得た。生成物の純度は最低95%であった(HPLCによる)。
融点:176−180℃
【実施例3】
【0021】
3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−20−メトキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),20−トリエン(VII)
ナトリウムメトキシド(8.67g,0.16mol)のメタノール溶液(4320mL)に式(VIII)の化合物(144g,0.321mol)を加えた。反応混合物62−64℃で3時間攪拌し、ついでトリメチルホスファイト(42mL,0.35mol)を加え62−64℃で2時間攪拌を続けた。反応混合物を20℃に冷却し塩化ナトリウム(288g)の水溶液(14L)に注いだ。沈殿した結晶性の生成物をろ過し、水で洗い40℃で乾燥し標記の化合物80.2g(67%)を得た。生成物の純度は最低95%であった(HPLCによる)。
融点:128−132℃
【実施例4】
【0022】
3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−20−オン(VI)
1N塩酸(18mL)とメタノール(800mL)の混合物中で式(VII)の化合物(80g,0.27mol)を20−25℃で40分攪拌し、ついで10℃の水(800mL)を加え反応混合物を30分間攪拌した。沈殿した結晶性の生成物をろ過し、水で洗い60℃で乾燥し標記の化合物73g(95%)を得た。生成物の純度は98%であった(HPLCによる)。
融点:140−140℃
【実施例5】
【0023】
3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン(V)
式(VI)の化合物(73g,0.2mol)のジクロロメタン(580mL)の溶液にエチレングリコール(126mL,2.26mol)、トリメチルオルトギ酸(132mL,1.21mol)およびp−トルエンスルホン酸(4.85g)を加えた。反応混合物を20−25℃で2時間攪拌し、ついで炭酸水素ナトリウム飽和溶液(380mL)を加え30分間攪拌を続けた。有機層を分離し、水(400mL)で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥し容積175mLに濃縮した。0.5%のピリジンを含むメタノール(230mL)を加えジクロロメタンを除去するため容積175mLに濃縮した。得られた結晶性懸濁液を0−2℃に冷却し、2時間攪拌し、沈殿した生成物をろ過し50℃で乾燥して標記の化合物71.5g(87%)を得た。生成物の純度は98%であった(HPLCによる)。
融点:172−174℃
【実施例6】
【0024】
3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−5α,10α−エポキシ−19−ノルプレグナ−9(11)−エン(IV)
窒素下で式(V)の化合物(71g,0.176mol)のジクロロメタン(360mL)とピリジン(1.8mL)の溶液にヘキサクロロアセトン(6.5mL,0.043mol)および50%過酸化水素溶液(51.5mL,0.9mol)を0−(−2)℃で加え反応混合物を0−2℃で3時間攪拌した。ついでジクロロメタン(1800mL)およびチオ硫酸ナトリウム(160g)を含む氷水(1440mL)を加え混合物を0−10℃で30分間攪拌した。有機層を分離し、水(300mL)で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥し減圧下で濃縮し、5α,10α−と5β,10β−エポキシドの55:45の混合物である生成物83gを得た。得られた粗エポキシド混合物をさらに精製することなく次のステップに用いた。
【実施例7】
【0025】
3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−5α,17α−ジヒドロキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−9(11)−エン(III)
テトラヒドロフラン(44mL)中でマグネシウムリボン(23.3g,0.97mol)と1,2−ジブロモエタン(0.35mL)の混合物を40−50℃で5分間攪拌し、ついで反応混合物を15℃に冷却し4−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン(176g,0.88mol)のテトラヒドロフラン溶液(1050ml)を温度を15℃以下に保つような速度で加えた。ついで反応混合物をグリニア試薬の溶液を得るために16−18℃で2時間攪拌した。
【0026】
前のステップで得られたエポキシドの混合物(74g,0.176mol)をジクロロメタン(300mL)に溶解し塩化第一銅(4g)を加えた。反応混合物を20−25℃で15分間攪拌し、ついで15℃に冷却しグリニア試薬の溶液を45分間にわたって加えた。反応混合物を20−25℃で2時間攪拌し、ついで塩化アンモニウム(170g)を含む水(1400mL)へ注いだ。有機層を分離して、水相をジクロロメタン(2x200mL)で抽出し、合わせた有機層を水(5x500mL)で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥し濃縮した。残渣を還流温度で酢酸エチル(200mL)に溶解し、溶液を−5℃に冷却し得られた結晶性懸濁液をこの温度で5時間保持した。沈殿した生成物をろ過し60℃で乾燥して標記の化合物41.7g(46%)を得た。生成物の純度は最低95%であった(HPLCによる)。
融点:228−232℃
【実施例8】
【0027】
11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(II)
硫酸水素カリウム(27.5g,0.2mol)の水溶液(230mL)に式(III)の化合物(41.7g,0.077mol)を+5℃で加え反応混合物をこの温度で4時間攪拌した。ついでジクロロメタン(230mL)と水酸化カリウム(4.3g)の水溶液(40mL)を加え、有機層を分離して硫酸ナトリウム上で乾燥した。シリカゲル(7.5g)を加えジクロロメタン溶液を20−25℃で30分間攪拌し、ついでろ過した。ろ液を容積100mLに濃縮しそのようにして得られた11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンを含む溶液を次のステップに用いた。
【実施例9】
【0028】
17α−アセトキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(I)
無水酢酸(73mL,0.77mol)を−10℃に冷却し70%過塩素酸(10.8mL,0.124mol)を加えた。そのようにして得られた溶液を−30℃に冷却し前のステップで得られた式(II)の化合物のジクロロメタン溶液(100mL)を、温度を−20から−30℃の間に保つような速度で加え、ついで反応混合物をこの温度で1時間攪拌した。混合物を0℃のジクロロメタン(300mL)で稀釈して酢酸ナトリウム(10.25g,0.125mol)を含む水(400mL)に注いだ。有機層を分離し、水(3x100mL)で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥し減圧下で濃縮した。得られた黄色のシロップ状の物質をイソプロパノール(150mL)から結晶化して5−10%の溶媒を含む溶媒和した形の標記化合物27gを得た。この物質を60℃でエタノール(230mL)に溶解し、ついで70℃に暖めイオン交換水(260mL)を加えた。そのようにして得られた溶液に窒素をバブルし、70℃で14時間保持した。溶媒和のない結晶性の生成物が徐々に溶液から沈殿した。結晶を70℃でろ過し、70℃の水で洗い40℃で乾燥し標記の化合物24g(66%)を得た。生成物の純度は99%であった(HPLCによる)。
融点:184−186℃
【実施例10】
【0029】
3−(エチレン−ジオキシ)−17α−エチニル−17β−ヒドロキシ−エストラ−5(10),9(11)−ジエン(IX)
窒素下でカリウムtert−ブトキシドを無水テトラヒドロフラン(565L)に溶解し溶液にアセチレンを20℃で30分間バブルし、ついで溶液を0−(−2)℃に冷却してアセチレンのバブリングをさらに30分間続けた。ついで式(X)の化合物(45kg,143mol)をアセチレンのバブリングを続けながら加えた。反応混合物を1時間攪拌し過剰のアセチレンを除くため混合物を通して窒素をバブルした。塩化アンモニウム飽和溶液(280L)を加え反応混合物を20分間攪拌した。有機層を分離して液相をテトラヒドロフラン(110L)で抽出した。合わせた有機層を塩化アンモニウム飽和溶液(55L)で洗い、容積220Lに濃縮し氷水(1500L)に注いだ。得られた混合物を30分間攪拌し、沈殿した結晶性生成物をろ過して40℃で乾燥し標記の化合物47.4kg(97.2%)を得た。生成物の純度は最低95%であった(HPLCによる)。
【実施例11】
【0030】
3−(エチレン−ジオキシ)−21−(フェニル−スルフィニル)−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),17(20),20−テトラエン(VIII)
ジクロロメタン(720L)中、式(IX)の化合物(40kg,117mol)、トリエチルアミン(49L)および酢酸(8L)の懸濁液にフェニルスルフェニルクロリド(22.1kg,153mol)のクロロホルム溶液(55L)を温度を0から−5℃の間に保ちながら滴下した。反応混合物を10分間攪拌し、ついで水(80L)とメタノール(32L)を加えた。有機層を分離し、1N塩酸と水で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥して容積28Lに濃縮した。残渣にジイソプロピルエーテル(40L)を加え混合物を5℃に冷却した。沈殿した結晶をろ過し60℃以下で乾燥して標記の化合物45.8kg(87.3%)を得た。生成物の純度は最低95%であった(HPLCによる)。
融点:176−180℃
【実施例12】
【0031】
3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−20−メトキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),20−トリエン(VII)
ナトリウムメトキシド(1.2kg,22.2mol)のメタノール溶液(600mL)に式(VIII)の化合物(20kg,44.6mol)を加えた。反応混合物を62−64℃で3時間攪拌し、ついでトリメチルホスファイト(5.8L,48.6mol)を加え62−64℃で2時間攪拌を続けた。反応混合物を20℃に冷却し塩化ナトリウム(40kg)の水溶液(1940L)に注いだ。沈殿した結晶性の生成物をろ過し、水で洗い40℃で乾燥し標記の化合物12.5kg(75.3%)を得た。生成物の純度は最低95%であった(HPLCによる)。
融点:128−132℃
【実施例13】
【0032】
3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−20−オン(VI)
式(VII)の化合物(56kg,150mol)の1N塩酸(12.6L)とメタノール(560L)の混合物中の懸濁液を20−25℃で40分間攪拌し、ついで10℃の水(560L)を加え反応混合物を30分間攪拌した。沈殿した結晶状の生成物をろ過し、水で洗い60℃で乾燥して標記の化合物51.1kg(95%)を得た。生成物の純度は98%であった(HPLCによる)。
融点:140−140℃
【実施例14】
【0033】
3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10).9(11)−ジエン(V)
式(VI)の化合物(49.3kg,137mol)のジクロロメタン溶液(390L)にエチレングリコール(85L,1527mol)、トリメチルオルトギ酸(89L,818mol)およびp−トルエンスルホン酸(3.28kg)を加えた。反応混合物を20−25℃で2時間攪拌し、ついで炭酸水素ナトリウム飽和溶液(260L)を加え30分間攪拌を続けた。有機層を分離し、水(270L)で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥し容積118Lに濃縮した。0.5%ピリジンを含むメタノール(150L)を加えついでジクロロメタンを除くために蒸発した。得られた結晶懸濁液を0−(−2)℃に冷却し、2時間攪拌し、沈殿した生成物をろ過し50℃で乾燥して標記の化合物48.33kg(87%)を得た。生成物の純度は98%であった(HPLCによる)。
融点:172−174℃
【実施例15】
【0034】
3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−5α,10α−エポキシ−19−ノルプレグナ−9(11)−エン(IV)
窒素下で式(V)の化合物(20kg,49.7mol)のジクロロメタン(100L)とピリジン(0.5L)の溶液にヘキサクロロアセトン(1.8L,12mol)と50%過酸化水素溶液(14.5L,253mol)を0−(−2)℃で加え反応混合物を0−2℃で3時間攪拌した。ついでジクロロメタン(500L)とチオ硫酸ナトリウム(50kg)を含む氷水(400L)を加え混合物を0−10℃で30分間攪拌した。有機層を分離し、水(85L)で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥し減圧下で濃縮して5α,10α−と5β,10β−エポキシドの55:45の混合物である生成物23.3kgを得た。得られた粗エポキシド混合物をさらに精製することなく次のステップに用いた。
【実施例16】
【0035】
3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−5α,17α−ジヒドロキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−9(11)−エン(III)
テトラヒドロフラン(13L)中マグネシウムリボン(6.55kg,272mol)と1,2−ジブロモエタン(0.1L)の混合物を40−50℃で5分間攪拌し、ついで反応混合物を15℃に冷却し4−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン(49.5kg,247mol)のテトラヒドロフラン溶液(300L)を、温度を15℃以下に保つような速度で加えた。ついで反応混合物を、グリニア試薬溶液を得るために16−18℃で2時間攪拌した。
【0036】
前のステップで得られたエポキシドの混合物(20.8kg,49.7mol)をジクロロメタン(85L)に溶解し塩化第一銅(1.12kg)を加えた。反応混合物を20−25℃で15分間攪拌し、ついで15℃に冷却しグリニア試薬の溶液を45分間にわたって加えた。反応混合物を20−25℃で2時間攪拌し、ついで塩化アンモニウム(48kg)を含む水(400L)に注いだ。有機層を分離し、液相をジクロロメタン(2x60L)で抽出し、合わせた有機層を水(5x140L)で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥し濃縮した。残渣を還流温度で酢酸エチル(60L)に溶解し、溶液を−5℃に冷却して得られた結晶懸濁液をこの温度に5時間保持した。沈殿した生成物をろ過し60℃で乾燥して標記の化合物12.6kg(47%)を得た。生成物の純度は最低95%であった(HPLCによる)。
融点:228−232℃
【実施例17】
【0037】
11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(II)
硫酸水素カリウム(7.12kg,51.8mol)の水溶液(60L)に式(III)の化合物(11.7kg,21.7mol)を+5℃で加え反応混合物をこの温度で4時間攪拌した。ついでジクロロメタン(60L)および水酸化カリウム(1.11kg)の水溶液(10L)を加え、有機層を分離し硫酸ナトリウム上で乾燥した。シリカゲル(2kg)を加えジクロロメタン溶液を20−25℃で30分間攪拌し、ついでろ過した。ろ液を容積26Lに濃縮しそのようにして得られた溶液を次のステップで用いた。
【実施例18】
【0038】
17α−アセトキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(I)
無水酢酸(18.9L,199mol)を−10℃に冷却し70%過塩素酸(2.8L,32.1mol)を加えた。そのようにして得られた溶液を−30℃に冷却し前のステップで得られた式(II)の化合物のジクロロメタン溶液(26L)を、温度を−20から−30℃の間に保つような速度で加え、ついで反応混合物をこの温度で1時間攪拌した。混合物を0℃のジクロロメタン(80L)で稀釈して酢酸ナトリウム(2.65kg,32.4mol)を含む水(100L)に注いだ。有機層を分離し、水(3x25L)で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥して減圧下で濃縮した。得られた黄色のシロップ状の物質をイソプロパノール(40L)から結晶化して5−10%の溶媒を含む溶媒和型の標記化合物7kgを得た。この物質を60℃でエタノール(60L)に溶解し、ついで70℃に暖めイオン交換水(67L)を加えた。そのようにして得られた溶液を通して窒素をバブルし、溶液を70℃で14時間保持した。溶媒和のない結晶性生成物が溶液から徐々に沈殿した。結晶を70℃でろ過し、70℃の水で洗い40℃で乾燥して6.6kg(64%)の標記化合物を得た。生成物の純度は99%であった(HPLCによる)。
融点:184−186℃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の溶媒和のない17α−アセトキシ−11β−[4−(N,N−ジメチル−アミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンを式(VI)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−20−オンからのケタール形成、得られた式(V)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエンの5,10−位へのエポキシド形成、得られた式(IV)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−5,10−エポキシ−19−ノルプレグナ−9(11)−エンのブロモ−N,N−ジメチル−アニリンから得られたグリニア試薬との反応、そのようにして形成された式(III)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−5α,17α−ジヒドロキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−9(11)−エンの脱保護、得られた式(II)の11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンのアセチル化および最後に望ましい生成物の溶媒和のない形での遊離を経て合成するための工業的プロセスで
i)式(X)の3−(エチレン−ジオキシ)−エストラ−5(10),9(11)−ジエン−17−オンを既知の方法により無水テトラヒドロフラン中インサイツで形成されるカリウムアセチリドと反応する、
ii)得られた式(IX)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−エチニル−17β−ヒドロキシ−エストラ−5(10),9(11)−ジエンをジクロロメタン中トリエチルアミンと酢酸の存在下でフェニルスルフェニルクロリドと反応し、
iii)得られた式(VIII)の3−(エチレン−ジオキシ)−21−(フェニル−スルフィニル)−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),17(20),20−テトラエンの異性体混合物をまずメタノール中ナトリウムメトキシドと、ついでトリメチルホスファイトと反応し、
iv)得られた式(VII)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−20−メトキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),20−トリエンをメタノール中で塩化水素と反応し、ついで
v)得られた式(VI)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−20−オンを既知の方法によりジクロロメタン中トリメチルオルトギ酸およびp−トルエンスルホン酸の存在下でエチレングリコールと反応し、
vi)得られた式(V)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエンを既知の方法によりピリジンとジクロロメタンの混合物中ヘキサクロロアセトンの存在下で過酸化水素と反応し。
vii)得られた5α,10α−と5β,10β−エポキシドがおよそ1:1の混合物を含む式(IV)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−5,10−エポキシ−19−ノルプレグナ−9(11)−エンを既知の方法によりテトラヒドロフラン中、塩化第一銅触媒の存在下で異性体を分離することなく4−ブロモ−N,N−ジメチル−アニリンから得られたグリニア試薬と反応し、
viii)得られた式(III)の3,3,20,20−ビス(エチレン−ジオキシ)−5α,17α−ジヒドロキシ−11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−19−ノルプレグナ−9(11)−エンを既知の方法により水中で硫酸水素カリウムと反応し、
ix)得られた式(II)の11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)−フェニル]−17α−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンを既知の方法により過塩素酸の存在下、無水酢酸でアセチル化し、最後に
x)得られた溶媒和を含む式(I)の化合物からエタノールと水の1:1混合物中70℃で溶媒和のない式(I)の化合物を遊離する、
ことを特徴とする工業的プロセス。
【請求項2】
ステップii)でフェニルスルフェニルクロリドのクロロホルム溶液を用いることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップii)でフェニルスルフェニルクロリドとの反応を0−5℃で行うことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップii)でスルフェニルクロリドとの反応を1.2当量の酢酸の存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップiii)でナトリウムメトキシドおよびトリメチルホスファイトとの反応を62−64℃で行うことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
式(VII)の3−(エチレン−ジオキシ)−17α−ヒドロキシ−20−メトキシ−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),20−トリエン。
【請求項7】
式(VIII)の3−(エチレン−ジオキシ)−21−(フェニル−スルフィニル)−19−ノルプレグナ−5(10),9(11),17(20),20−テトラエン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−539964(P2009−539964A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514916(P2009−514916)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/HU2007/000045
【国際公開番号】WO2007/144674
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(591180314)リヒター ゲデオン ニルバーノシャン ミーケデーレスベニュタールシャシャーグ (33)
【Fターム(参考)】