説明

2つの視野方向を有する内視鏡用対物レンズ

本発明は、2つの視野方向(8,10;8’;10’)を有する内視鏡用対物レンズ(1,1’)であって、その軸線(8,8’)が第1視野方向で位置合せされた第1遠位対物レンズ部分(6,6’)と、その軸線(10,10’)が第2視野方向で位置合せされた第2対物レンズ部分(9,9’)と、その軸線(3,3’)が像センサ(4,4’)またはイメージガイドに位置合せされた近位対物レンズ部分(2,2’)と、光路が前記第1または第2遠位対物レンズ部分(6,6’;9,9’)から前記近位対物レンズ部分(2,2’)へと切替可能に偏向されるための、プリズム(14,14’)を有する切替機構とを備えてなるものにおいて、前記切替機構が、前記光路上に機械的に移すことが可能な光線偏向機構(17,35)を有していることを特徴とする対物レンズに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に指摘した種類の対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
前文に係る対物レンズが特許文献1により公知である。この特許文献が示す内視鏡対物レンズは、2つの異なる視野方向用に2つの遠位対物レンズ部分と、1つの共通する近位対物レンズ部分とを有している。電気的に切替可能な偏光フィルタが切替機構として設けられている。この構造体の像輝度は満足できるものでない。
【0003】
特許文献2が示す対物レンズは、対物レンズに対してイメージガイドを旋回させることによって機械的に切り替えられる2つの視野方向を有している。この構造では、支出が法外であることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0 363 118号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 347 140号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、前文に係る対物レンズにおいて視野方向の切替を簡単に、良好な像輝度で可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴部分の特徴で解決される。
【0007】
本発明によれば、切替のために光線偏向機構を機械的に光路上に移すことができる。冒頭に指摘した両方の構造体の諸欠点は、これによって回避することができる。1つの光学部材を移動させるだけで、偏光フィルタの光学的諸欠点が回避されることになる。
【0008】
主に請求項2において、対物レンズ内の光路長は両方の視野方向で同じである。これにより光学的状況が簡素となる。
【0009】
ここで問題とする種類の対物レンズでは、両方の遠位対物レンズ部分のそれぞれの遠位端に強負屈折レンズが着座しており、この強負屈折レンズが強い結像誤差を生じる。これらの結像誤差が近位対物レンズ部分内で補正され、この近位対物レンズ部分は補正のために遠位対物レンズ部分に適合されていなければならない。それゆえに有利なことに、請求項3の特徴が設けられている。両方の遠位対物レンズ部分内の光路が場合によって反射に至るまで同一である場合、近位対物レンズ部分内での補正措置によって両方の遠位対物レンズ部分が結像誤差に対して正しく補償されることが保証されている。
【0010】
有利には請求項4により、プリズムの界面が交互に反射または透過に切り替えられる。このため、界面と平行に配置される鏡が使用され、この鏡は光路上にまたは光路外に移動可能であり、その結果として所望する反射を引き起こすか、またはその不在時に光路を界面に通過させることができる。これにより、構造上ごく単純な解決がきわめて良好な像輝度で得られることになる。
【0011】
有利には請求項5の特徴が設けられている。ここで、切替可能な鏡は界面で反射するか否かを決定するだけとされている。
【0012】
第1隙間の面は一般に対物レンズ軸線に対して斜めである。これにより得られる光路の僅かな平行移動が視野方向の僅かな変化をもたらすことになる。それゆえに有利には、請求項6の特徴が設けられている。逆向きの傾斜方向を有する第2隙間が第1隙間の平行移動を補償し、結果的に得られる対物レンズの視野方向は所望の如く正確に直線的に延びることになる。
【0013】
有利には請求項7の特徴が設けられている。こうして得られるプリズム構造体では、近位対物レンズ部分側にある射出面は光路が近位対物レンズ部分に向かって射出すべき領域で透過性であるが、それと並んで内方に反射するように形成されており、そこでは第2視野方向用に光路の偏向を行うことができる。
【0014】
請求項7による反射構成をもたらすことができるのは、例えば、この領域内の射出面の反射被覆によって、または有利には請求項8により反射領域が全反射するように形成されていることによってである。このためには、プリズムの屈折率と反射角度が相応に選択されなければならない。
【0015】
鏡は、界面に極力密着させて障害物がそれらの間に侵入できないようにすべきである。しかしその場合は干渉のおそれがある。つまり、鏡と界面との間の隙間は過度に狭くしてはならない。隙間は有利には請求項9により1μm超、特に有利には請求項10により5μm超とすべきであろう。
【0016】
視野方向の間で切り替えるのに使用される鏡は、有利には請求項11により、隣接した絞りを有して構造ユニットとして形成されており、鏡を光路外に摺動させると絞りが光路上に移されることになる。その場合、直線的に向いた第1視野方向に延びる光路は、この絞りで絞られ、それにより明確な構造簡素化がもたらされることになる。
【0017】
光線偏向機構は、まったく別の仕方で、例えば鏡または付加的プリズムとして形成しておくこともでき、有利には請求項12により形成されている。その際、プリズムが有する2つの領域は、交互に光路上に移すことができ、両方の遠位対物レンズ部分に適合された異なる偏向を生じる。切替のために、プリズムは、その第1領域または第2領域が光路上に達する程度に動かさねばならないだけである。好ましい1実施例においてプリズムは1領域が平行平面板として形成されて光路を直線的に通過させることができる一方、別の領域では本来のプリズムとして形成されている。
【0018】
第1対物レンズ部分が近位対物レンズ部分の軸線方向で直線的に視野を定めるように位置合せされた対物レンズについて、請求項13が有利な構造体を示している。その際、平行な端面を有するプリズム第1領域は、第1遠位対物レンズ部分の光路に影響することなく、この光路を透過させる平行平面板として形成されている。
【0019】
プリズムの機械的摺動は、さまざまな仕方で、例えば回転等によって行うことができるが、しかし有利には請求項14により形成され、詳細には近位対物レンズ部分の軸線を横切る摺動として形成されている。
【0020】
請求項15によれば、一緒に移動するために一方または両方の遠位対物レンズ部分はプリズムと結合しておくことができる。これにより、例えば構造体は光学調整に関して改善することができ、内視鏡の窮屈な内部空間内でのスペース需要に関してもさまざまな構造可能性が得られることになる。
【0021】
図面に本発明が例示的に略示してある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】傾斜視野方向の切替位置における本発明の第1実施形態に係る対物レンズの側面図である。
【図2】直線的視野方向の切替位置における図1の図である。
【図3】隣接した絞りを有する変更実施形態における図1、図2に見られる鏡の平面図である。
【図4】第1切替位置における第2実施形態の本発明に係る対物レンズの略図である。
【図5】第2切替位置における図4の対物レンズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、3つの対物レンズ部分から成る本発明の第1実施形態に係る対物レンズ1を示している。
【0024】
近位対物レンズ部分2は、その軸線3が図示しない内視鏡軸部の軸線上に配置されており、内視鏡の遠位端領域には、対物レンズ1が配置されている。近位対物レンズ部分2は複数のレンズから成り、2つの遠位対物レンズ部分の一方と一緒にガラス板5を通して像面4に像を生成している。この像面は、例えば電子像センサを担持することができる。像面4は、中間像面とすることもでき、この中間像面から通常のイメージガイド、例えばリレーレンズ装置を備えたイメージガイドが、内視鏡の近位側に配置される接眼レンズへと像を伝送するようになっている。
【0025】
対物レンズ1の遠位領域に配置された第1遠位対物レンズ部分6は、その他は図示されていない内視鏡の窓7を通してその軸線8を近位対物レンズ部分の軸線3と平行にして、つまり内視鏡の軸線方向で直線的に視野を定めるものである。さらに、第2遠位対物レンズ部分9が設けられており、この対物レンズ部分はその軸線10を第2傾斜視野方向にして窓11を通して視野を定めるものである。
【0026】
第2遠位対物レンズ部分9は、その遠位端に負屈折レンズ12を有し、このレンズはプリズム14の入射面13に着座している。軸線10の傾斜視野方向から入射する図1に示した光路は、プリズム14の、近位対物レンズ部分の軸線3に垂直な射出面15で反射され、プリズム14の界面16に投射されるようになっている。この界面で再度反射後、光路は近位対物レンズ部分2の軸線3方向に移され、プリズム14の射出面15を通して近位対物レンズ部分2に進入し、そこで光路は図示した光路で像面4に結像されることになる。
【0027】
すなわち、軸線10の方向で傾斜視野方向に入射する図1に示した光路は、プリズム14の内部で二度内方に反射され、しかも一回は射出面15で、次に界面16で反射されている。第1遠位対物レンズ部分6内で反射が起きず、第2遠位対物レンズ部分9内で二度反射されるので、両方の遠位対物レンズ部分内では同じ像整列が生じ、例えば両方の事例において正立像または両方の事例において倒立像が生じることになる。
【0028】
射出面15の、内部反射が起きねばならない反射領域で、射出面15は、例えば外側を金属被覆しておくことができる。しかしその場合この金属被覆は、界面16で反射後に光路が近位対物レンズ部分2の方向に通過すべきである領域にまで延設してはならない。この問題の洗練された解決は、図1に示したように、射出面15を金属被覆するのでなく、全反射が起きるようにプリズム14の屈折率と射出面15での反射角度とを選択することにある。
【0029】
図1で示すように、界面16で起きる第2反射の反射角度はごく鋭角に選択されており、ここでは全反射が現れることはない。つまり内部から界面16に当る光線は、この界面を通過することになる。それゆえに、図1に示した界面16での光線反射は別の手段で引き起こさねばならない。
【0030】
この目的のため、図1および図2が示すように、界面16に向かって金属被覆して形成された鏡17が界面16に密着して設けられている。図1および図2は、鏡17の2つの切替位置を示している。図1の位置では鏡が光路上に着座しており、図1に示す光線逆反射を引き起こしている。
【0031】
図2は図1の構造体を変更なしに同じ図で示しており、鏡17の切替位置のみが変更されている。
【0032】
図2の位置では鏡17が脇にずらされている。軸線10の方向で第2遠位対物レンズ部分9を通して斜めに入射する光路は、もはや界面16で内方に近位対物レンズ部分2の方向へと反射されるのでなく、界面16を通して出射して空間内を延びている。その軸線8の方向で直線的に視野を定める第1遠位対物レンズ部分6を通して入射する図2に示した光路は、図1の鏡17の位置のとき鏡の裏側で捕捉されたものであり、図2の切替位置で鏡が脇にずらされると、図2に示すように、界面16を通してプリズムに入射し、軸線8の方向で直線的に射出面15を通して近位対物レンズ部分2へと達することが可能となる。
【0033】
鏡17が図2の位置から図1の位置へと再び光路上にずらされると、第1遠位対物レンズ部分6を通して入射する光路が再び阻止され、図1に示した光線推移が再び得られることになる。界面16で全反射が起きないので、この箇所での反射は鏡17の切替位置のみによって決定され、これにより適切に制御することが可能となる。
【0034】
図1および図2の実施形態において、鏡17は単純な平面鏡として形成されており、この平面鏡は、プリズム14の界面16上を滑動して図1および図2の両方の切替位置の間を移動可能、詳細には図示平面上の移動方向で移動可能となっている。
【0035】
しかし、鏡17は図示平面に垂直な方向でも移動することが可能である。その場合、鏡は、図3に示すように、1つの絞り19を有する構造ユニット内の摺動板18に配置しておくことが可能となる。すなわち、摺動板18が矢印20の方向で移動することによって、選択的に鏡17か、または摺動板18に孔として形成される絞り19のいずれかを光路上に移すことが可能となっている。
【0036】
図3の摺動板18を用いた場合、鏡17が光路上に、つまり図1の位置にあるように摺動板18をずらすことによって、図1に示す光路は生成することが可能となる。絞り19が光路上に来るまで摺動板18を摺動させたのちに得られる図2の光路は、望ましいことに絞り19によって遮蔽されている。
【0037】
鏡17は、単独の部材または図3の構造ユニットのいずれかとして、界面16の方向でこの界面上を摺動可能に配置されている。鏡は、界面16とこれと平行に配置されるガラス棒22の射出面21との間の隙間内に着座しており、このガラス棒は、図1に示すように、その近位入射面23で他の負屈折レンズ12を担持している。
【0038】
界面16とガラス棒22の射出面21との間に形成される第1隙間は、平行面の間で限定された各隙間と同様に、光通過時に光路の平行移動を生じることになる。この平行移動が僅かな視野方向摺動、すなわち、直線的に向いた視野方向の僅かな傾動を生じることになる。
【0039】
このことを回避するため、図1において破線で第2隙間24が書き込まれており、この隙間はガラス棒22の部分間の分離および引き離しによってこの箇所に生成されている。第2隙間24は軸線8に対して、180°から第1隙間の角度を引いた角度に配置されている。第2隙間24は第1隙間と同様に光路の平行摺動を引き起こすが、但し第1隙間とは別の方向に引き起こし、これによって両方の摺動が相殺し合うことになる。
【0040】
いずれにしても鏡が図1の切替位置にありかつ光路上にある場合、鏡17は界面16に密着し、空気または場合によっては粉塵さえ障害となる仕方でこれらの面の間に達することのないようにすべきである。しかしその場合は、対向して密に隣接する両方の面の間で干渉のおそれがある。つまり、鏡17と界面16との間の隙間は過度に狭くしてはならない。隙間はいずれにしても1μm超、一層良好には5μm超とすべきである。
【0041】
図1と図2とで比較して示すように、第2遠位対物レンズ部分9内で二重反射が起き、これにより図1に示したように、光路が形成されるに至るまで、両方の遠位対物レンズ部分6,9内の光路は同一に形成されている。これにより、両方の事例において同じ像整列が得られることになる。像面4に生成される像が図1の図において正立像であると、図2の図でも像は正立像である。
【0042】
図4および図5は、第2実施形態の対物レンズ1’を示している。図示しない内視鏡軸部の遠位端領域に組み込むべく設けられた対物レンズ1’は、その主要組立体を略図して示されている。
【0043】
近位対物レンズ部分2’は、その軸線3’が像面4’に位置合せされており、図示実施例においてこの像面は電子像センサ30の受光面である。この像センサは、図示しない仕方で電線路を介して像処理機構に接続されている。像センサ30の像面4’の代わりに、内視鏡の長さにわたって像を移送するイメージガイドファイバの遠位端面を配置しておくことも可能である。
【0044】
対物レンズ1’は、異なる視野方向用に2つの遠位対物レンズ部分を有している。略示した実施例において第1遠位対物レンズ部分6’は、レンズ部品31と平行平面板32とから成り、第1遠位対物レンズ部分6’の軸線8’が面平行な端面に対して垂直にこの平行平面板を通過するようになっている。
【0045】
図4から明らかとなるように、第1遠位対物レンズ部分6’の軸線8’は、近位対物レンズ部分2’の軸線3’と一致している。通常の構造様式の場合、この軸線が内視鏡軸部の長手軸線と平行であり、第1遠位対物レンズ部分6’は直線的に視野を定めている。
【0046】
近位対物レンズ部分2’と第1遠位対物レンズ部分6’との間には、光軸方向で間隔があり、この間隔内にプリズム14’が配置されている。プリズム14’は、近位対物レンズ部分2’の軸線3’を横切って両方向矢印33の方向で摺動可能である。このため、例えば図示しないスライドガイドが設けられており、このスライドガイドは図示しないハウジング内、もしくは対物レンズ1’のホルダ内に配置されている。摺動のための駆動は、手動作動部または例えば電動機で行うことができる。
【0047】
プリズム14’は、両方向矢印33の方向で相前後して2つの領域、詳細には第1領域34と第2領域35とを有している。
【0048】
プリズム14’の第1領域34は、平行平面板として形成されている。遠位平行平面36および近位平行平面37は、近位対物レンズ部分2’の軸線3’に垂直である。
【0049】
図4において、プリズム14’は摺動位置にあり、第1遠位対物レンズ部分6’から到来する光路はこの摺動位置のとき近位対物レンズ部分2’に至るその経路で、プリズム14の面平行な第1領域34を通過するようになっている。
【0050】
プリズム14’の第2領域35は、第1領域34と同じ連続的近位平行平面37を有している。しかし第2領域は、遠位側に傾斜面、詳細には内部反射のための反射面38と射出面39とを有し、この射出面の前には、第2遠位対物レンズ部分9’が配置されている。
【0051】
図5が示す対物レンズ1’は、プリズム14’が別の位置に切り替わった位置にあり、詳細には、プリズム14’の第2領域35が遠位側で近位対物レンズ部分2’の前にある。図5に示す光線軸線は第2遠位対物レンズ部分9’の軸線10’からプリズム14’の近位平行平面37の箇所40で反射し、かつ遠位傾斜面38の41で反射したのちに、近位対物レンズ部分2’の軸線3’へと延びている。この実施例において、符号40および41の内部反射箇所は、両方とも全反射するように形成しておくことが可能である。
【0052】
すなわち、像センサ30は、図5の位置のとき第2遠位対物レンズ部分9’内で傾斜角度のもとで視野を定める一方、図4の位置では第1遠位対物レンズ部分6’内で直線的に視野を定めている。
【0053】
図4と図5とを比較して示すように、一緒に移動するために第2遠位対物レンズ部分9’は、プリズム14’と結合されている。このための結合手段は図示されていない。残りの組立体6’,2’,30は図4と図5との比較が示すように、相互に固着されている。
【0054】
図示しない変更実施形態において、例えば第2遠位対物レンズ部分9’は持続的に図5の位置に置き、構造素子6’,12’,30と強固に結合しておくことができるのに対して、プリズム14’は、残りすべての構造素子にかかわりなく両方向矢印33の方向で移動可能である。選択的構成において両方の遠位対物レンズ部分6’、9’は、一緒に移動するためにプリズム14’と結合しておくこともできる。こうして構造上の変更可能性が与えられており、これらの可能性は、例えば構造上の理由またはスペース上の理由からそれぞれに利点を有することがある。
【0055】
図4と図5との比較から明らかとなるように、図示した対物レンズ1’では、「オプティカルパス」または「ライトパス」とも称される光路長が両方の視野方向で同じとなるようにされている。図4と図5との比較が示すように、プリズム14’のプリズム領域35内の光路長は確かに平行平面板領域34内よりもかなり長い。しかしそのことは図4に示す光路では、平行平面板32によって補償されている。この平行平面板は、図4および図5の両方の光路上で光路長が実際に同じとなるように設計しておくことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの視野方向(8,10;8’;10’)を有する内視鏡用対物レンズ(1,1’)であって、その軸線(8,8’)が第1視野方向で位置合せされた第1遠位対物レンズ部分(6,6’)と、その軸線(10,10’)が第2視野方向で位置合せされた第2対物レンズ部分(9,9’)と、その軸線(3,3’)が像センサ(4,4’)またはイメージガイドに位置合せされた近位対物レンズ部分(2,2’)と、光路が前記第1または第2遠位対物レンズ部分(6,6’;9、9’)から前記近位対物レンズ部分(2,2’)へと切替可能に偏向されるための、プリズム(14,14’)を有する切替機構とを備えてなるものにおいて、前記切替機構が、前記光路上に機械的に移すことが可能な光線偏向機構(17,35)を有していることを特徴とする対物レンズ。
【請求項2】
前記対物レンズ(1’)内の光路長が、前記両方の視野方向(8’,10’)で同じであることを特徴とする、請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項3】
前記両方の遠位対物レンズ部分(6,9)内の前記光路が、所要の反射に至るまで同一であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の対物レンズ。
【請求項4】
前記プリズム(14)は、前記両方の遠位対物レンズ部分(6,9)の前記光路を受波し、前記近位対物レンズ部分(2)に向けて統合し、かつ前記近位対物レンズ部分(2)の前記軸線(3)に対して斜めに延びる界面(16)を有し、前記第1遠位対物レンズ部分(6)の前記光路は前記界面(16)を通して前記プリズム(14)に入射し、前記第2遠位対物レンズ部分(9)の前記光路は前記界面(16)の領域での反射によって前記プリズム(14)に反射して戻されて前記近位対物レンズ部分(2)内に達し、前記界面(16)の領域に可動鏡(17)が設けられており、前記鏡はその移動によって選択的に前記界面(16)内の通路を開放しまたは前記界面(16)での反射を引き起こすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の対物レンズ。
【請求項5】
前記プリズム(14)は、前記界面(16)で全反射が起きないように形状および材料が設計されていることを特徴とする、請求項4に記載の対物レンズ。
【請求項6】
前記第1遠位対物レンズ部分(6)のガラス棒(22)は、第1隙間(16,21)から離間して前記界面(16)と平行な射出面(21)を有し、前記ガラス棒(22)は、第2隙間(24)によって分割されており、前記第2隙間は、前記第1遠位対物レンズ部分(6)の前記軸線(8)に対して、180°から前記第1隙間(16,21)の角度を引いた角度にあることを特徴とする、請求項4または5のいずれかに記載の対物レンズ。
【請求項7】
前記プリズム(14)は、前記近位対物レンズ部分(2)側にあるその射出面(15)が、射出領域の横で内方に反射するように形成されていることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載の対物レンズ。
【請求項8】
前記プリズム(14)は、前記射出面(15)の反射領域が全反射するように形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の対物レンズ。
【請求項9】
前記鏡(17)と前記界面(16)との間の距離が1μm超であることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項に記載の対物レンズ。
【請求項10】
前記距離が5μm超であることを特徴とする、請求項9に記載の対物レンズ。
【請求項11】
前記鏡(17)は、隣接して配置された絞り(19)と一緒になって、前記界面(16)と平行に摺動可能に配置された構造ユニット(18)を形成していることを特徴とする、請求項4〜10のいずれか1項に記載の対物レンズ。
【請求項12】
前記プリズム(14’)は前記光路上に交互に移すことが可能な2つの領域(34,35)を有し、そのうち、第1領域は、前記光路を前記第1遠位対物レンズ部分(6’)から前記近位対物レンズ部分(2’)内に導き、第2領域は、前記光路を前記第2遠位対物レンズ部分(9’)から前記近位対物レンズ部分内に導いていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の対物レンズ。
【請求項13】
前記近位対物レンズ部分(2’)および前記第1遠位対物レンズ部分(6’)が同じ軸線(8’,3’)上に配置されており、これらの間に前記プリズム(14’)が配置されており、前記プリズム(14’)の前記第1領域(34)が平行平面板として形成されている一方、前記第2領域(35)は、前記第2視野方向(10’)と前記近位対物レンズ部分(2’)の前記軸線(3’)との間の角度に一致した角度(40,41)で偏向していることを特徴とする、請求項12に記載の対物レンズ。
【請求項14】
前記プリズム(14’)は、前記近位対物レンズ部分(2’)の前記軸線(3’)を横切って摺動可能に前記近位対物レンズ部分と前記遠位対物レンズ部分(6’,9’)との間に配置されていることを特徴とする、請求項12または13のいずれかに記載の対物レンズ。
【請求項15】
一緒に移動するために前記遠位対物レンズ部分(6’,9’)の少なくとも1つが前記プリズムに固着されていることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1項に記載の対物レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−526293(P2012−526293A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508941(P2012−508941)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002717
【国際公開番号】WO2010/127827
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(510320416)オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (9)
【Fターム(参考)】