説明

2個の隣接するキラル中心を有する環化合物を調製する方法

(a)ニトロオレフィンおよび(b)α-置換β-ジカルボニルまたは酸性C-H化合物を有する同等の化合物からジアステレオトピック基を持つ第4級炭素原子を有するキラル化合物を合成する方法を開示する。不斉炭素原子を含む置換基の1個と第4級炭素原子を含むジアステレオトピック基の1個との間での続いての分子内反応は、1個が相対的な立体化学に対する制御を備えた第4級である、2個の隣接する不斉中心を有する新しい化合物を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアステレオトピック基を持つ非不斉第4級炭素原子に隣接する不斉炭素原子を有するキラル化合物を調製する方法に関する。不斉炭素原子を含む置換基のうちの1個と第4級炭素原子を含むジアステレオトピック基の1個との間の次の分子内反応は、一方が相対的および絶対的立体化学に対する制御を備えた第4級である、2個の隣接する不斉中心を含有する新しい化合物を作成する。
【背景技術】
【0002】
多くの有機化合物は光学活性形で存在し、すなわち平面偏光の平面を回転させる能力を有する。化合物の各種の光学活性形は、立体異性体と呼ばれる。特異的な立体異性体は、エナンチオマーとも呼ぶことが可能であり、そのような立体異性体の混合物はエナンチオマー性、またはラセミ混合物と呼ばれることが多い。所与の化学化合物では、エナンチオマーの対のそれぞれは、それらが相互の重ね合わすことができない鏡像であることを除いて同一である。
【0003】
立体化学的な純度は、ほとんどの処方薬がキラリティを示す製薬分野において重要である。たとえばβ-アドレナリン遮断薬のL-エナンチオマー、プロプラノロールは、そのD-エナンチオマーより100倍の効力があることが既知である。加えて、ある立体異性体は好都合な、または不活性な効果よりも有害な効果を付与するため、光学純度は製薬分野において重要である。たとえばサリドマイドのD-エナンチオマーは、妊娠中のつわりの制御に処方されたときに安全および有効な鎮痛剤であると考えられているが、これに対してその対応するL-エナンチオマーは強いテラトゲンであると考えられている。
【0004】
したがって、生物活性を示す化合物は、1個以上の不斉炭素原子を含有する。しかしながら上述したように、そのような化合物の一方のエナンチオマーは、優れた生物活性を示すのに対して、他方のエナンチオマーわずかな生物活性を示すか、または望ましくない結果を生じる。したがって研究者は、不活性エナンチオマーの合成を最小限にしながら、または消滅させながら、生物活性エナンチオマーの合成に努めている。
【0005】
所望のエナンチオマーを選択的に合成する能力により、さらに有用な薬剤製品の調製が可能となる。たとえば薬剤の投薬量は、大量の不活性エナンチオマーを含有するラセミ混合物とは対照的に、活性エナンチオマーのみが個人に投与されるため削減することができる。活性エナンチオマーの削減用量は、ラセミ混合物と比較して有害な副作用も削減する。加えて立体選択的合成は、活性および不活性エナンチオマーを分離する段階が削除されるためにさらに経済的であり、原材料が不活性エナンチオマーの合成に消費されないため、原材料廃棄物およびコストが削減される。
【0006】
生物活性化合物の合成で生じる特に困難な問題は、所望の立体化学を有する第4級炭素原子の調製である。「第4級炭素」は、水素以外に4個の置換基を有する炭素原子として定義される。第4級炭素原子は、4個の置換基それぞれが相互に異なるときに不斉である。炭素間結合を形成するために多数の合成反応を利用できるが、第4級炭素を生成するために利用できる反応の数は限定されている。さらに、不斉第4級炭素を生成するための開始物質として、(1個の水素原子および水素ではない3個の置換基を有する炭素原子として定義される)第3級炭素を有するただちに利用できる化合物の数は限定されている。第4級炭素の立体選択的調製は、さらになお困難であり、活発な研究分野である。
【0007】
通常、第4級炭素原子の形成は多段階工程である。加えて、第4級炭素原子を形成するために使用される反応は、望ましくない副反応を引き起こすことが多い。たとえば第3級アルキルハライドとエノラートとの反応は、置換ではなく、デヒドロハロゲン化による広範囲に渡る除去を引き起こす。第4級炭素原子の調製における問題の一部は、特許文献1、非特許文献1〜3 に開示されている。
【特許文献1】国際公開第00/15599号パンフレット
【非特許文献1】S. F. Martin, Tetrahedron, 36, pp 419-460 (1980).
【非特許文献2】K. Fuji, Chem. Rev., 93, pp 2037-2066 (1993).
【非特許文献3】E. J. Corey et al., Angew. Chem. Int.Ed., 37, pp 388-401 (1998).
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ジアステレオトピック基を有する非不斉炭素原子に隣接する不斉炭素原子を有する化合物を調製する方法に関する。さらに詳細には、本発明は、一方が第4級であり、相対的および絶対的立体化学に対して制御を有する、2個の隣接する不斉炭素原子を含有する環状化合物を提供するために、(a)ニトロオレフィンとα-置換β-ジカルボニル化合物または酸性C-H部分を有する同等の化合物との反応、(b)続いてのニトロ基の還元、(c)続いての、第4級炭素原子におけるプロキラル中心の置換基、通常、カルボニル置換基への分子内環化による、所望の立体化学の不斉第4級炭素原子に隣接する所望の立体化学の不斉炭素原子を有するキラル化合物を調製する方法に関する。
【0009】
従来の研究者らは、第4級炭素原子を生成するための環化およびアルキル化シーケンスを実施することによって、所望の立体化学の第4級炭素原子を含有する環系の調製を試みた。これらの試みは、反応収率に悪影響を及ぼすラセミ混合物および副反応を生じさせた。本方法は、環化の前にキラル、通常はプロキラルの第4級炭素原子を調製する。続いての還元および環化シーケンスは、所望の立体化学の第4級炭素原子が、1,3-ジカルボニル、または同等物の付加中に生成された所望の立体化学のキラル炭素に隣接する環系に位置する環化合物を提供する。
【0010】
さらに詳細には、本発明は、リガンドおよび金属錯体を含む触媒錯体によって仲介された、ニトロ化合物(III)を生成するための構造式(I)、および好ましくは構造式(Ia)を有する化合物とニトロオレフィン(II)との間の付加反応によって、ジアステレオトピック基を持つ非不斉第4級炭素原子に隣接する所望の立体化学の不斉炭素原子を有する化合物を調製する方法に関する。付加のエナンチオ選択性は、反応条件によって制御される。
【0011】
1つの実施形態において、化合物(III)、またはそのエナンチオマーのニトロ(NO2
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

基は、化合物(IV)を生成するためにアミノ(NH2)基に変換され、これは次に、α-置換β-ジカルボニル、または同等の化合物のニトロオレフィンへの付加において生成されたキラル炭素に隣接する環系内に位置する所望の立体化学の第4級炭素を有する化合物(V)を生成するために分子内環化反応を受ける。環化のジアステレオ選択性は、反応条件、特に反応温度によって制御される。最も一般的には、環化は、アミンまたは有機金属塩基の使用によって仲介される。
【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

したがって本発明の重要な態様は、キラル第3級炭素に隣接する第4級炭素を生成する、触媒錯体および塩基の存在下で、ニトロオレフィン(II)および構造式(I)、および特に(Ia)の化合物からニトロ化合物(III)を立体選択的に生成する方法を提供することであり、式中、Aは、C(=O)OR1、C(=O)N(R52、C(=O)SR5、CN、NO2、およびSO2R5から成る群より選択され;Bは、C(=O)OR2、C(=O)N(R52、C(=O)SR5、およびCNから成る群より選択され;R1は、C1-4アルキル、ヒドロ、およびMから成る群より選択され;R2は、ヒドロ、M、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アシルアミノ、ハロ、アルキルチオ、アリル、C1-3アルキレンアリール、およびシアノC1-3アルキルから成る群より選択され;R4は、非置換または置換アリールおよびヘテロアリールから成る群より選択され;R5は独立して、ヒドロ、C1-4アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;Mは、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンであり;式中、R6は、アルコキシ、アミノ、またはチオであり;R7は、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択される。化合物(Ia)の好ましい実施形態において、R6およびR7は、同一のアルコキシであり、キラル第3級炭素に隣接する2個のジアステレオトピック基を持つ第4級炭素原子を生成する。どちらの場合においても、R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、C1-3アルキレンアリール(たとえばベンジル)、アシルアミノ、ハロ、アリル、およびシアノC1-3アルキルから成る群より選択され;R4は、非置換または置換アリールおよびヘテロアリールから成る群より選択される。R4では、電子求引性置換基および電子供与芳香族基が選択される。通常、電子供与芳香族ニトロスチレンは、より速い反応時間を示す。
【0018】
構造式(I)の他の有用な化合物は、これに限定されるわけではないが:
【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

【0026】
【化14】

および
【0027】
【化15】

を含む。
【0028】
本発明で有用な構造式(Ia)のα-置換β-ジエステルの例は、これに限定されるわけではないが:
【0029】
【化16】

【0030】
【化17】

【0031】
【化18】

【0032】
【化19】

【0033】
【化20】

【0034】
【化21】

【0035】
【化22】

および
【0036】
【化23】

を含む。
【0037】
触媒錯体は、リガンドおよび金属錯体を含み、ここでリガンドは、構造式(VI)
【0038】
【化24】

(式中、R9およびR10は独立して、ヒドロ、アルキル、アリール、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択され、あるいはR9およびR10はひとまとめにされて3-、4-、5-、または6-員シクロアルキル環または二環を形成し;
XおよびX’は独立して、酸素、硫黄および窒素から成る群より選択され;
R11およびR12は独立して、ヒドロ、アルキル、C1-3アルキレンアリール、およびアリールから成る群より選択され、またはR11およびR12は、それらが結合する環とひとまとめにされて、二環式または三環式縮合環を形成し;
R13またはR14は独立して、ヒドロ、アルキル、C1-3アルキレンアリール、およびアリールから成る群より選択され、またはR13およびR14は、それらが結合する環とひとまとめにされて、二環式または三環式縮合環を形成する)を有するか、あるいは構造式(VII)
【0039】
【化25】

(式中、nは1-3であり、R15およびR16は独立して、アルキル、アリール、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択される)のどちらかを有する。これらのリガンドは、どちらかのキラル形で、高いエナンチオマー純度で調製できる。
【0040】
別の好ましいリガンドは、構造式(XIII)、またはそのエナンチオマーを有し、
【0041】
【化26】

式中、R9およびR10は独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択され、またはR9およびR10はひとまとめにされて、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはインダニルを形成する。
【0042】
本発明の別の態様は、構造式(I)、および好ましくは(Ia)の化合物のニトロオレフィンへの十分なラセミ付加を提供する。ラセミリガンド(VIII)または(VII)の使用は、ラセミ化合物を合成する効率的な方法を提供する。α-置換マロナートジエステルのニトロスチレンへのラセミ付加を達成しようとする以前の試みは、有害な塩基、たとえばナトリウム金属および水素化ナトリウムの使用を必要とし、65%以下の収率を生じた。B. Reichert et al., Chem. Ber., 71, 1254-1259(1983);およびN. Arai et al.,Bull. Chem. Soc.Jpn.,70,2525-2534(1997)を参照。アミン塩基を使用するこれらの方法を反復する試みは、ニトロスチレンの重合を誘発した。本明細書で開示された条件下でのリガンドのラセミ混合物の使用は、有害な塩基の使用を回避しながら、所望のラセミ付加生成物を高い収率で提供した。
【0043】
本発明のさらなる態様は、開示した方法によって調製された化合物に関する。特に本発明は、本明細書で述べるような、本方法によって生成される、ジアステレオトピック基を持つ非不斉第4級炭素原子に隣接する不斉炭素原子を有するキラル化合物に関する。
【0044】
本発明のこれらおよび他の態様ならびに新規な特徴は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明は、塩基ならびにキラル第3級炭素に隣接するキラルまたはプロキラル第4級炭素を生成するキラルリガンドおよび金属錯体を含む触媒錯体の存在下で、ニトロオレフィン(II)および構造式(I)、好ましくは構造式(Ia)の化合物からニトロ化合物(III)をエナンチオ選択的に生成する方法に関する。
【0046】
さらに詳細には、本発明は、所望の立体選択性の第4級炭素原子を有する化合物を調製する方法であって、構造式(I)または(Ia)
【0047】
【化27】

【0048】
【化28】

を有する化合物を構造式(II)
【0049】
【化29】

のニトロオレフィンと反応させて、構造式(III)または(IIIa)
【0050】
【化30】

【0051】
【化31】

それぞれのニトロ化合物、あるいはそのエナンチオマーを形成することを含む、調製方法に関し、
式中、Aは、C(=O)OR1、C(=O)N(R52、C(=O)SR5、CN、NO2、およびSO2R5から成る群より選択され;Bは、C(=O)OR2、C(=O)N(R52、C(=O)SR、およびCNから成る群より選択され;R1は、C1-4アルキル、ヒドロ、およびMから成る群より選択され;R2は、ヒドロ、M、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アシルアミノ、ハロ、アルキルチオ、アリル、C1-3アルキレンアリール、およびシアノC1-3アルキルから成る群より選択され;R4は、非置換または置換アリールおよびヘテロアリールから成る群より選択され;R5は独立して、ヒドロ、C1-4アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;Mは、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンであり;式中、R6は、アルコキシであり;R7は、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され、前記反応は、塩基ならびにリガンドおよび金属錯体を含む触媒錯体の存在下で実施される。
【0052】
ある好ましい実施形態において、構造式(Ia)のR6およびR7は同一のアルコキシであり、キラル第3級炭素に隣接するプロキラル第4級炭素を生成する。これらの場合のそれぞれで、R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アシルアミノ、ハロ、アリル、C1-3アルキレンアリール、およびシアノC1-3アルキルから成る群より選択され;R4は、アリールおよびヘテロアリールから成る群より選択される。
【0053】
触媒錯体は、リガンドおよび金属錯体を含む。リガンドは構造式(VI)
【0054】
【化32】

(式中、R9およびR10は独立して、ヒドロ、アルキル、アリール、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択され、あるいはR9およびR10はひとまとめにされて3-、4-、5-、または6-員シクロアルキル環または二環を形成し;
XおよびX’は独立して、酸素、硫黄および窒素から成る群より選択され;
R11およびR12は独立して、ヒドロ、アルキル、C1-3アルキレンアリール、およびアリールから成る群より選択され、またはR11およびR12は、それらが結合する環とひとまとめにされて、二環式または三環式縮合環を形成し;
R13またはR14は独立して、ヒドロ、アルキル、C1-3アルキレンアリール、およびアリールから成る群より選択され、またはR13およびR14は、それらが結合する環とひとまとめにされて、二環式または三環式縮合環を形成する)を有するか、あるいは構造式(VII)
【0055】
【化33】

(式中、nは1-3であり、R15およびR16は独立して、アルキル、アリール、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択される)のどちらかを有する。
【0056】
好ましい実施形態において、R6およびR7はアルコキシであり、R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アシルアミノ、ハロゲン、アリル、シアノメチル、シアノエチルおよびベンジルから成る群より選択され、R4は、非置換または置換アリールまたはヘテロアリールである。ある好ましい実施形態において、RaおよびRbは同一のアルコキシ、好ましくはメトキシまたはエトキシである。他の好ましい実施形態において、R4
【0057】
【化34】

であり、式中、RaおよびRbは独立して、C1-4アルキル、シクロアルキル、C1-3アルキレンC3-6シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、C1-3アルキレンアリール、C1-3アルキレンヘテロアリール、アリール、およびヘテロアリールから成る群より選択される。好ましい実施形態において、RaおよびRbは独立して、メチル、ベンジル、シクロペンチル、インダニル、シクロプロピルメチル、C1-4アルキレンフェニル、フェニル、置換フェニル、チアゾリル、ベンズイミダゾリル、テトラヒドロフリル、C1-3アルキレンチエニル、ピラニル、およびC1-3アルキレンテトラフリルから成る群より選択される。複数の追加の適切なRaおよびRb置換基は、参考文献として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,423,710号に開示されている。特に好ましい実施形態において、RbはC1-4アルキル、特にメチルである。
【0058】
本明細書で開示されている方法は、工業用途において、たとえば医薬品および農業用化学薬品の製造において有用である。特に、本明細書に開示した方法は、高い光学純度であり、所望の立体化学の第4級炭素原子に隣接する所望の立体化学の第3級炭素原子をさらに含有するヘテロ原子含有環系を有する医薬品を合成するのに有用である。
【0059】
本明細書で使用するように、「アルキル」という用語は、指示された数の炭素原子を含有する直鎖および分岐炭化水素基として定義される。別途指示しない限り、炭化水素基は、16個までの炭素原子を含有できる。好ましいアルキル基は、C1-4アルキル基、すなわちメチル、エチル、ならびに直鎖および分岐プロピルおよびブチル基である。
【0060】
「シクロアルキル」という用語は、環状C3-C8炭化水素基、たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、およびシクロペンチルとして定義される。本明細書で定義するように、「シクロアルキル」という用語は、橋架けアルキル、すなわちC6-C16二環または多環炭化炭素基、すなわちノルボルニル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]-オクチル、およびデカヒドロナフチルを含む。シクロアルキル基は、非置換であるか、C1-4アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、ハロ、メルカプト、ニトロ、カルボキサルデヒド、カルボキシ、アルコキシカルボニル、およびカルボキサミドから成る群より独立して選択された1個、2個または3個の置換基によって置換される。
【0061】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、酸素、窒素、および硫黄から成る群より選択される1つ以上のヘテロ原子を含有する単環式、二環式、および三環式基として本明細書で定義される。「ヘテロシクロアルキル」基は、環に結合したオキソ基(=O)も含有することができる。ヘテロシクロアルキル基の非制限的な例は、1,3-ジオキソ-ラニル、2-ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピロリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル、1,4-ジチアニル、および1,4-ジオキサニルを含む。
【0062】
「アルキレン」という用語は本明細書では、置換基を有するアルキル基として定義される。たとえば「C1-3アルキレンアリール」および「C1-3アルケンヘテロアリールという用語は、アリールまたはヘテロアリール基によって置換されたC1-3アルキレン基、たとえばベンジル(-CH2C6H5)として定義される。
【0063】
「ハロゲン」という用語は本明細書では、フッ素、臭素、塩素、およびヨウ素として定義される。「ハロ」という用語は本明細書では、フルオロ、ブロモ、クロロ、およびヨードとして定義される。
【0064】
「ハロアルキル」という用語は本明細書では、1つ以上のハロ置換基によって置換されたアルキル基として定義される。同様に「ハロシクロアルキル」は、1つ以上のハロ置換基を有するシクロアルキル基として定義される。
【0065】
「アリール」という用語は単独で、または組合せて、本明細書では単環式または多環式芳香族基、好ましくは単環式または二環式芳香族基、たとえばフェニルまたはナフチルとして定義される。別途指示しない限り、「アリール」基は非置換であるか、または1つ以上の、および特に1〜3個の置換基、たとえばハロ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、カルボキシ、カルボキシアルデヒド、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、およびアルキルスルホニルによって置換される。アリール基の例は、これに限定されるわけではないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、クロロフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニルなどを含む。
【0066】
「ヘテロアリール」という用語は本明細書では、1個または2個の芳香環を含有し、芳香環内に少なくとも1個の窒素、酸素、または硫黄原子を含有し、非置換であるか、または1個以上の、および特に1〜3個の置換基、たとえばハロ、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルコキシアルキル、ハロアルキル、パーハロアルキル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、カルバモイル、カルボキシ、カルボキシアルデヒド、メルカプト、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、およびアルキルスルホニルによって置換された単環式または二環式環系として定義される。ヘテロアリール基の例は、これに限定されるわけではないが、チエニル、フリル、ピリジル、オキサゾリル、キノリル、イソキノリル、インドリル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、およびチアジアゾリルを含む。
【0067】
「ヒドロキシ」という用語は、本明細書では-OHとして定義される。
【0068】
「アルコキシ」という用語は本明細書では-ORとして定義され、式中、Rはアルキル、好ましくはC1-4アルキルである。「ハロアルコキシ」という用語は本明細書では-OR、好ましくはC1-4アルキルとして定義され、式中、Rはハロ置換アルキルである。
【0069】
「アルコキシアルキル」という用語は本明細書では、水素がアルコキシ基によって置換されたアルキル基として定義される。「(アルキルチオ)-アルキル」という用語は、酸素原子が硫黄原子で置換されたことを除いて、アルコキシアルキルと同様に定義される。
「ヒドロキシアルキル」という用語は本明細書では、アルキル基に付加されたヒドロキシ基として定義される。
【0070】
「アミノ」という用語は本明細書ではNH2として定義され、「アルキルアミノ」という用語は本明細書ではNR2として定義され、式中、少なくとも1個のRがアルキルであり、第2のRはアルキルまたはヒドロである。
【0071】
「アシルアミノ」という用語は本明細書ではRaC(=O)N(Rb)-として定義され、Raはアルキルまたはアリールであり、Rbは水素、アルキルまたはアリールである。
【0072】
「カルボキサルデヒド」という用語は、-CHOとして定義される。
【0073】
「カルボキシ」という用語は本明細書では-COOHとして定義される。
【0074】
「アルコキシカルボニル」という用語は本明細書では、-C(=O)ORとして定義され、Rはアルキルである。
【0075】
「カルボキサミド」という用語は本明細書では-C(=O)N(R)2として定義され、式中、各Rは独立して、ヒドロまたはアルキルである。
【0076】
「メルカプト」という用語は本明細書では-SHとして定義される。
【0077】
「アルキルチオ」という用語は本明細書では-SRとして定義され、式中、Rはアルキルである。
【0078】
「アルキルスルフィニル」という用語は本明細書ではR-SO2-として定義され、式中、Rはアルキルである。
【0079】
「アルキルスルホニル」という用語は本明細書ではR-SO3-として定義され、式中、アルキルである。
【0080】
「ニトロ」という用語は本明細書ではNO2として定義される。
【0081】
「シアノ」という用語は本明細書では-CNとして定義される。
【0082】
「アリル」という用語は-CH2CH=CH2として定義される。
【0083】
「シアノC1-3アルキル」という用語は-CH2CN、-C2H5-CN、および-C3H7CNとして定義される。
【0084】
「アルキル金属カチオン」はという用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはセシウムイオンして定義される。
【0085】
「アルカリ土類金属カチオン」という用語は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、またはバリウムイオンとして定義される。
【0086】
置換基が炭素または窒素原子に結合されているとして示されていない場合、炭素原子が適切な数の水素原子を含有することが理解される。本明細書で使用するように、「Me」はメチルであり、「Et」はエチルであり、「Bn」はベンジルであり、「Bu」はブチルであり、「Boc」はt-ブトキシカルボニルであり、「Ac」はアセチル(CH3C=O)である。
【0087】
構造式(I)の有用な化合物は、これに限定されるわけではないが:
【0088】
【化35】

【0089】
【化36】

【0090】
【化37】

【0091】
【化38】

【0092】
【化39】

【0093】
【化40】

【0094】
【化41】

【0095】
【化42】

【0096】
【化43】

を含む。
【0097】
Mの例は、これに限定されるわけではないが、Na、K、Li、Mg、およびCaカチオンを含む。
【0098】
本発明で有用な構造式(Ia)のα-置換β-ジエステルの例は、これに限定されるわけではないが:
【0099】
【化44】

【0100】
【化45】

【0101】
【化46】

【0102】
【化47】

【0103】
【化48】

【0104】
【化49】

【0105】
【化50】

および
【0106】
【化51】

を含む。
【0107】
ニトロ化合物(III)を形成するための、構造式(I)の化合物、特にα-置換β-カルボニル化合物(Ia)とニトロオレフィン(II)との間の付加反応は、触媒錯体の存在下で実施される。触媒錯体は、リガンドと金属錯体を反応させることによって実施する。リガンドと金属錯体は、溶媒の存在下で反応できる。触媒錯体を形成するために必要な反応時間は、リガンドおよび金属錯体の特性に関連する。触媒錯体の形成に有用である溶媒は、これに限定されるわけではないが、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、塩化メチレン(CH2Cl2)、クロロベンゼン、およびクロロホルム(CHCl3)を含む。好ましい溶媒はクロロホルムおよびクロロベンゼンを含む。
【0108】
触媒錯体の調製に有用なリガンドは、構造式(VI)または(VII)を有し、たとえばそれぞれ参考文献として本明細書に組み込まれている、特許文献1、およびJohnson et al., Acc. Chem. Res.,33, 325-335(2000)に開示されている。好ましいリガンドは構造式(VIII)または(IX)
【0109】
【化52】

【0110】
【化53】

を有し、式中、n、X、X’、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は上で定義した通りである。化合物(VIII)および(IX)のエナンチオマーも好ましい。
【0111】
さらに好ましいリガンドは、構造式(X)
【0112】
【化54】

を有し、式中、R9およびR10は独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択され、またはR9およびR10はひとまとめにされてシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはインダニルを形成し、R11、R12、R13、およびR14は独立して、ヒドロ、アルキル、アリール、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択される。
【0113】
別の好ましいリガンドは、構造式(XI)
【0114】
【化55】

を有し、式中、R9およびR10は独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択され、またはR9およびR10はひとまとめにされてシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはインダニルを形成し、R11、R12、R13、およびR14は独立して、ヒドロ、アルキル、アリール、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択される。
【0115】
別の好ましいリガンドは、構造式(XIII)
【0116】
【化56】

(式中、R9およびR10は独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択され、またはR9およびR10はひとまとめにされてシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはインダニルを形成する)または化合物(XIII)のエナンチオマーを有する。
【0117】
触媒錯体の調製に有用な金属錯体は、これに限定されるわけではないが、スズ、亜鉛、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタン、イッテルビウム、ジルコニウム、銅、アンチモン、または過塩素酸マグネシウム;マグネシウム、銅、亜鉛、ランタン、またはニッケルのトリフルオロメタンスルホン酸塩;マグネシウム、銅、亜鉛、またはニッケルの臭化物;マグネシウム、銅、亜鉛、またはニッケルのヨウ化物;マグネシウム、銅、亜鉛、またはニッケルのアセト酢酸塩を含む。好ましい金属錯体は、トリフルオロメタンスルホン酸マグネシウム(Mg(OTf)2)である。
【0118】
反応で有用な塩基はアミン、好ましくは第3級アミンである。適切な塩基は、これに限定されるわけではないが、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,6-ルチジン、N-メチルモルホリン、N-エチルピペリジン、イミダゾール、および5,6-ジメチルメンズイミダゾールを含む。好ましい塩基は、2,6-ルチジン、N-メチルモルホリン、および5,6-ジメチルベンズイミダゾールである。より強い塩基の使用は、ニトロスチレンの重合を引き起こす。
【0119】
ニトロ化合物(III)の合成の立体選択性は、反応で使用する触媒錯体の量および反応時間によって制御できる。一般に、約5mol%を超える触媒錯体の反応混合物への添加は、約3時間の反応時間の後に高い変換を与えることができる。しかしながら立体選択性は、完全に最適化されていない。反応の立体選択性を向上させるために、約0.01mol%〜約2mol%の触媒、好ましくは約0.05mol%〜約1mol%、たとえば約0.1mol%の触媒を使用することと、反応時間を約16〜約30時間、好ましくは約18〜約24時間に延長することとが有用であった。反応が約30時間よりも長く進行する場合、生成物のエナンチオマー過剰率が低下する。エナンチオマー過剰率の低下は、α-置換β-ジカルボニル化合物(Ia)のエチルエステルよりもメチルエステルでより顕著であるが、イソプロピルエステルは、エナンチオマー過剰率の減少をほとんどまたは全く示さない。
【0120】
反応で使用する塩基の量は通常、触媒錯体の量よりもやや多く、少なくとも触媒錯体の量に等しい。たとえば反応で1mol%の触媒錯体を使用する場合、塩基の量は通常、約1〜約7mol%、好ましくは約4〜約6mol%である。
【0121】
ニトロ化合物(III)の環化は、2段階工程、すなわちニトロ基の還元と、それに続く、2個の隣接する立体中心を含有するピロリジノン(V)を得るための環化(ラクタム化)を使用して達成される。化合物(V)の第4級炭素原子の立体選択性のレベルは、化合物(III)のキラル中心の特性はもちろんのこと、AおよびB基の立体バルクおよび環化反応の条件によっても影響を受ける。
【0122】
ニトロ基の還元は、当業界で既知の方法、好ましくはニッケルボロヒドリド(<1:2.5の好ましいモル比で、NiCl2/NaBH4からインサイチューで調製)を用いた還元によって、または酸の存在下での亜鉛還元によって、または遷移金属触媒の存在下での水素化によって実施できる。亜鉛金属および酸を用いてニトロ基をアミノ基に還元する場合、反応の立体選択性は、環化段階前に未反応亜鉛を除去することによって改善できる。
【0123】
環化は、塩基の存在下で、約9以上のpH、たとえば約9〜約12、好ましくは約9.5〜約11において進行する。温度は特に重要でないが、低温、好ましくは約-10℃〜約-78℃、さらに好ましくは約-20℃〜約-78℃が、ジアステレオ選択性を改善するために使用される。ニッケルボロヒドリドおよびRaneyニッケル反応は通常、約20℃〜約70℃にて実施される。
【0124】
適切な塩基は、有機金属塩基、アルカロイド、アミン、および無機塩基を含む。具体的な塩基の例は、これに限定されるわけではないが、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ナトリウムエトキシド(NaOEt)、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、およびイソプロピル塩化マグネシウムを含む。DBUは特に好ましい塩基である。
【0125】
化合物(IV)のジエチルエステル(すなわちAおよびBはC(=O)OC2H5である)は、最大の立体選択性を提供するように思われる。しかしながら化合物(IV)のジメチルエステル(すなわちAおよびBはC(=O)OCH3である)を使用する環化はなお立体選択的であるが、生成物のジアステレオマー過剰率は低下する。AおよびBがC(=O)OCH(CH32である場合、環化反応が進行するためには、約-78℃を超える温度が必要である。
【0126】
ニトロ化合物(III)のR3置換基も、環化反応の立体選択性に影響を及ぼす。R3置換基のサイズが大きくなると、環化反応の立体選択性が低下する。したがって、好ましいR3置換基はメチルおよびエチルである。
【0127】
[実施例1]
以下の合成シーケンスは、置換マロナートのニトロオレフィンへの付加によって、ジアステレオトピック基を持つ非不斉第4級炭素原子に隣接して不斉第3級炭素が生成される本発明の方法を示す。ニトロ基へのアミン基への続いての還元と、それに続くアミン化合物の立体選択的分子内環化は、キラル第4級炭素原子に隣接するキラル第3級炭素原子を含有する環を生成する。
【0128】
【化57】

上記、合成シーケンスで使用したキラルリガンドは:
【0129】
【化58】

であった。
【0130】
2-ベンジルオキシ-1-メトキシ-4-(2-ニトロビニル)ベンゼン(ニトロスチレン(1))の調製
3-ベンジルオキシ-4-メトキシ-p-ニトロスチレンとしても既知のニトロスチレン(1)は、市販の0-ベンジルイソバニリン(Aldrich Chem. Co., Milwaukee, WI)から、A. Bermejo et al., J. Med. Chem., 45, 5058-5086(2002)またはBattersby, Tetrahedron, 14,46-53(1961)に開示されている手順を使用して調製した。
【0131】
2-(S)-1-(3-ベンジルオキシ-4-メトキシフェニル)-2-ニトロエチル]-2-メチル-マロン酸ジメチルエステル(マロナート(2))の調製
クロロホルム(4320mL)、以下に開示するように調製したキラルリガンド(54.8g、0.154モル)およびMg(OTf)2(45.2g、0.14モル)を50L 5口フラスコに添加した。得られた混合物を少なくとも20分間攪拌し、続いて水(10.4mL)を添加し、少なくとも1時間攪拌した。クロロホルム(11.48L)および粉末4Aモレキュラーシーブス(784g)を反応混合物に添加して、攪拌を1時間に渡って、または含水率がKarl Fischer滴定によって決定されるように40ppm未満になるまで、続けた。反応混合物に窒素ガス(N2)を0.5時間通気させて、次にニトロスチレン(1)(4kg、14.0モル)を固体として20分間に渡って添加した。クロロホルム(250mL)をすすぎ液として添加し、続いてジメチルメチルマロナート(2.482kg、16.96モル、2260.5mL)を1分間に渡って添加した。CHCl3(250mL)を用いたすすぎの後、N-メチルモルホリン(18.4g、0.182モル、20mL)を注射器によって迅速に添加した。反応混合物をN2下で18時間に渡って室温(RT)にて攪拌した。反応を完了についてHPLCによって監視した。次に水(1.6L)を添加して反応を停止させて、続いて少なくとも1時間してモレキュラーシーブスを膨潤させた。次に反応混合物を粗焼結ガラス漏斗上のCELITE(商標)床で濾過した。濾液の層を分離し、次に有機層を1:1 塩水:水溶液(8L)で洗浄した。有機層を回転蒸発によって濃縮し、固体懸濁物を得た。エタノール(EtOH)(200プルーフ、8L)を懸濁物に添加し、固体を濾過により収集した。固体ケーキを最小量の200プルーフEtOH(500mL)で洗浄した。湿潤ケーキを次に50Lフラスコに添加し、EtOH(190プルーフ、36L)によって2時間に渡って50℃において粉砕し、次に15時間に渡って室温まで冷却させた。生成物を濾過によって単離し、40〜50℃での真空下で乾燥させたオフホワイト色結晶性固体を所望の生成物(2)(5.28kg、12.23モル、収率87%)として得た。
【0132】
HPLCによる化合物(2)の純度は99%であり、エナンチオマー比(e.r.)は93.6:6.4であった。
Rf=0.34(2:1 ヘキサン:EtOAc);1H NMR(CDCl3/400 MHz)δ:7.39(br, d, 2H,Bn-H), 7.34(br t, 2H, Bn-H), 6.78(d, J=8.4 Hz, 1H, Ar-H), 6.68(dd, J=2.0, 8.4 Hz,Ar-H), 6.66(d, J=2.0 Hz, 1H, Ar-H), 5.13(d, J=12.30, 1H, -OCH2-Ar), 5.09(d,J=12. 30,1H,-OCH2-Ar), 4.91(d,J=7.2 Hz, 2H, N02-CH2), 4.00(t, J=7.2 Hz, 1H, N02CH2CHAr), 3.82(s, 3H, Ar-OCH3), 3.67(s, 3H,-OC02CH3), 3.65(s, 3H, -CO2CH3), 1.21(s, 3H, q.CH3)。13C NMR(CDCl3/400 MHz)5:171.53, 170.89, 149.94, 147.99, 136.98, 128.69, 128.03, 127.47, 127.16, 122.02, 115.69, 111.83, 77.75, 71.33, 56.97, 55.97, 53.12, 52.90, 48.10, 20.34. 回転:[α]24=+28. 7(c=1, クロロホルム)。Anal. Calcd for C22H25NO8:C, 61.25;H, 5.84;N, 3.25. Found:C, 61.11;H, 5.96;N, 3.15. RP-HPLC条件:Waters YMC-Pack Pro-C18, 120A, 5 m, 移動相を用いた4.6mm×150mm A;水、0.1% トリフルオロ酢酸、1% イソプロピルアルコール;B アセトニトリル、0.05% トリフルオロ酢酸, 1% イソプロピルアルコール、10分間に渡る15% B〜95% Bの勾配、95% Bにて2.5分間の維持、15% Bへの1分間の復帰、15% Bでの1.5分間の維持を使用して、1.5ml/分。
233nmでのUV検出 tR=9.7分。キラルHPLC条件:CHIRALPAK(登録商標)AD column, 10μm, 1.0mL/分にてヘキサン-エタノール(90:10,v/v)移動相を用いた4.6mm×250mm, 206nmでのUV検出,tg=11.4分。
【0133】
上の反応で使用したキラルリガンドは、以下のように調製した。I.W.Davies et al., Tet.Lett., 37, pp. 813-814(1996)and Chem. Commun., pp.1753-1754(1996)も参照。
【0134】
【化59】

[3aR-[2(3’aR*, 8’aS*),3’αβ,8’αβ]]-(+)-2,2’-メチレンビス-[3a,8a-ジヒドロ-8H-インデノ-[1,2-d]-オキサゾール(ビス(オキサゾリン)(4))の調製
3L 丸底フラスコにジメチルマロンイミデートジヒドロクロリド(25.8g、0.112モル、1.0当量)およびジメチルホルムアミド(DMF)(320mL)を注入した。混合物を氷浴で冷却した。この懸濁物に(1R2S)-(+)-シス-1-アミノ-2-インダノール(40g、0.268モル、2.4当量)を数回に分けて、20分間に渡って添加した。次に氷浴を外して、反応を室温まで加温し、その間に反応生成物は反応から沈殿した。室温での攪拌の4日後、反応を濾過した。収集した白色固体をCH2Cl2(450mL)中に懸濁させた。次に混合物を水(260mL)および塩水(260mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム(Na2SO4)上で乾燥させ、濾過および濃縮してオフホワイト色固体を得た。真空下で一晩乾燥させて、ビス(オキサゾリン)(4)23.9g(収率65%)を得た。1H NMR(300MHz/CDCl3):δ7.45(m, 2H, Ar-H);7.27-7.21(m, 6H, Ar-H);5.56(d, J=7.9Hz, 2H, N-CH);5.34(m, 2H, O-CH);3.39(dd, J=7.0, 18.0 Hz, 2H, Ar-CHH);3:26(s, 2H, -CH2-);3.16(d, J=18.0 Hz, 2H, 14-CHH)。NMRは、特許文献1で作成されたピーク割当と一致している。
[3aR-[2(3’aR*, 8’aS*),3’αβ, 8’αβ]]-(+)-2,2’-シクロプロピリデンビス[3a,8a-ジヒドロ-8H-インデノ-[1,2-d]オキサゾール(キラルリガンド(5))の調製
1L 丸底フラスコにビス(オキサゾリン)(4)(30.3g、91.7mmol、1当量)、および無水THF(450mL)を添加した。スラリーを0℃まで冷却し、鉱油中の60%水素化ナトリウム(NaH)(11.0g、275.1ミリモル、3当量)を攪拌しながら慎重に添加した。混合物を室温まで加温し、次に1,2-ジブロモエタン(11.85mL、138mmol、1.5当量)を15分間に渡って、温度を25℃〜30℃に維持しながら添加した。反応をゆっくりと50℃まで加温し、次に3時間攪拌した。反応はTLCによって監視した(10%-メタノール/酢酸エチル、開始物質Rf-0.3(筋状)、生成物R-0.45(開始物質ほどは筋状でない))。完了後、反応混合物を0℃まで冷却し、飽和塩化アンモニウム(NH4Cl)(150mL)によって慎重に反応停止させた。水(150mL)を添加し、生成物をCH2Cl2(450mLおよび150mL)によって2回抽出した。合せた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過および濃縮して、オレンジ色固体を得た。固体をヘキサン(240mL)によって室温にて粉砕し、濾過して、次にヘキサン(91mL)でさらに洗浄して、化合物(5)(32g、98%)を白色粉末として得た。1H NMR(300MHz/CDCl3):δ7.45(m, 2H, Ar-H);7.27-7.19(m, 6H, Ar-H), 5.52(d, J=7.7 Hz, 2H, N-CH);5.32(m, 2H, O-CH);3.39(dd, J=7.0, 18.0 Hz, 2H, Ar-CHH), 3.20(dd, J=1.8, 18.0 Hz, 2H, Ar-CHH);1.36(m, 2H,-CHH-CHH-);1.27(m, 2H,-CHH-CHH-)。
【0135】
4-(3-ベンジルオキシ-4-メトキシフェニル)-3-メチル-2-オキソ-ピロリジン-3-カルボン酸メチルエステル(3)の調製
マロナート(2)(20.0g、46.4mmol、1.00当量)を含有するフラスコに、190プルーフEtOH(200mL)を添加した。次に濃塩酸(HCl)(100mL、1200mmol、25.9当量)を、添加漏斗を介して慎重に添加した。添加は非常に発熱性が高く、反応温度は23℃〜48℃に上昇した。温度を45℃〜52℃に維持するために、この混合物に亜鉛粉末(28.5g、436mmol、9.4当量)を数回に分けて添加した。反応はHPLCによって監視した。反応が完了した(ヒドロキシルアミンが完全にアミンに還元された)と判断されたとき、灰色懸濁物を0℃まで冷却し、次に飽和酢酸ナトリウム水溶液(NaOAc)(100ml)を反応混合物に添加した。次に未反応亜鉛粉末を濾過によって除去した。濾液を濃縮してEtOHを除去し、次にCH2Cl2(200mL)で希釈した層を分離し、水層をCH2Cl2(50mL)で抽出した。合せた有機層を飽和NaOAc水溶液(200mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過した。次に有機溶液を-78℃まで冷却し、次にDBU(30mL、201mmol、4.33当量)を添加した。得られた溶液を-78℃にて1時間攪拌し、次に室温まで加温した。HPLC分析は5:1のジアステレオマーの比を示した。
【0136】
反応混合物を1N HCl(200mL)に注入し、次に層を分離した。次に水層をCH2Cl2(25mL)で抽出した。合せた有機層を1N HCl(100mL)で洗浄し、層を分離した。得られた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過および濃縮した。生成物をメチルt-ブチルエーテルからの結晶化によって単離し、所望のジアステレオマーの、所望でないジアステレオマーに対する91:7の比でピロリジンエステル(3)(11.4g、収率66%)を得た。
【0137】
上の合成シーケンスは、所望の立体化学のキラル第3級炭素に隣接する環系内に配置された所望の立体化学の第4級炭素を有する環状化合物の製造を示している。ピロリジノンエステル(3)は、良好な収率および優れた光学純度で調製される。ピロリジノンエステル(3)は、医薬品を含む有用な市販製品を提供するために、第4級または第3級環炭素の立体化学に影響を及ぼすことなく、各種の反応を受けることができる。
【0138】
以下の合成シーケンスは、一方が第4級または第3級環炭素の立体化学に影響を及ぼすことなく、各種の反応をただちに受けることができるアリル置換基を持つ第4級である、2個の隣接する立体中心を含有するピロリジノンエステルを生成するための本方法におけるジエチルアリルマロナートの使用を示している。
【0139】
[実施例2]
【0140】
【化60】

実施例2で使用したキラルリガンドは
【0141】
【化61】

であった。
【0142】
2-[1R-フェニル-2-ニトロエチル]-2-アリルマロン酸ジエチルエステル(7)の調製
クロロホルム(CHCl3)、または代わりのクロロベンゼン(2.5mL)、キラルリガンド(-エナンチオマー)(34.25mg、0.097mmol)、およびMg(OTf)2(28.25mg、0.088mmol)を25mL フラスコに添加した。得られた混合物を少なくとも20分間に渡って攪拌し、続いて水(0.0065mL)を添加した。得られた混合物を少なくとも1時間に渡って攪拌した。モレキュラーシーブスが存在するときに立体選択性が改善されるため、モレキュラーシーブスは任意の、しかし好ましい成分である。クロロホルム(7.5mL)および粉末4Aモレキュラーシーブス(367.5mg)を反応混合物に添加し、攪拌を最低1時間続けた。次に含水率をKarl Fischer滴定によって決定した。含水率が40ppm以上である場合は、攪拌を続けて、追加のモレキュラーシーブスを添加した。含水率が40ppm未満であるときは、N2を反応混合物に最低2分間通気させた。次にニトロスチレン(6)(1.31g、8.77mmol)を固体として1分間に渡って添加した。クロロホルム(1mL)をすすぎ液として添加し、続いてジエチルアリルマロナート(2.13g、10.65mmol、2.09mL)を注射器によって1分間に渡って添加した。N-メチルモルホリン(11.5mg、0.114mmol、0.0125mL)をピペットによって迅速に添加した。窒素ガスを反応混合物に最低2分間に渡って通気し、次に反応混合物を窒素下で45時間に渡って室温にて攪拌した。反応を完了についてHPLCによって監視した。水(1mL)を添加して反応を停止させ、反応混合物を少なくとも5分間攪拌して、モレキュラーシーブスを膨潤させた。次に反応混合物をCELITETM床で濾過した。濾液の層を分離し、次に有機層を塩水(15mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4(5g)上で乾燥させた。有機層を回転蒸発によって濃縮し、黄色油を得た。油はフラッシュクロマトグラフィーを使用して9:1 ヘキサン:EtOAcで流出させることにより精製した。クロマトグラフィーは開始物質(Rf=0.4)および生成物(Rf=0.31)を分離するために必要であった。真空下での濃縮の後、所望の生成物(7)を透明油として得た(2.2g、6.29mmol、収率72%)。HPLCによる純度は>98面積%であり、エナンチオマー比は91:9であった。Rf=0.31(9:1 ヘキサン:EtOAc)。1H NMR(CDCl3/400 MHz)δ:7.32-7.27(m, 3H, Ar-H), 7.14(d, J=7.8 Hz,1H, Ar-H), 7.13(d, J=5.7 Hz, 1H, Ar-H), 5.80-5.68(m, 1H, CH=CH2), 5.17-4.95(m, 4H, CH=CH2, CH2-NO2), 4.31(q, J=7.14 Hz, 1H,-OCH2Me), 4.30(q, J=7.14 Hz,1H, -OCH2Me), 4.23(q, J=7.14 Hz, 2H, -OCH2Me), 4.19(dd, J=3.07, 7.05 Hz, 1H, Ar-CH), 2.57(dd, J=6.52, 14. 51 Hz, 1H, C-CH2), 2.27(dd, J=8.01, 14.55 Hz, 1H, C-CH2), 1.32(t, J=7.08 Hz, 3H, -CH3), 1.27(t, J=7.08 Hz, 3H, -CH3). 13C NMR(CDCl3/400 MHz)δ:169.92, 169.73, 135.26, 132. 08,129. 15,129.01, 128.67, 120.05, 78.77, 62.21, 60.67, 46.87, 38.60, 14.27. 回転:[α]24=-35.2(c=1,クロロホルム)。LCMS m/z 350(M+1), 303,275. Anal. Calcd. for C22H25NO8:C, 61.88;H,6.64;N,4.01. Found:C, 61.99;H, 6.97;N, 4.02。
【0143】
[実施例3]
上の合成は、ジアステレオトピック基を持つ非不斉炭素に隣接する不斉炭素原子を有する化合物のラセミ混合物を生成するために、リガンドのラセミ混合物を使用して実施することもできる。
【0144】
【化62】

【0145】
【化63】

2-アリル-2-[1-フェニル-2-ニトロエチル]-マロン酸ジエチルエステル(8)の調製
クロロホルム(150mL)、ラセミリガンド(1.97g、5.52mmol)、およびMg(OTf)2(1.62g、5.03mmol)を2L フラスコに添加した。混合物を少なくとも20分間攪拌し、続いて水(0.374mL)を添加した。得られた混合物を少なくとも1時間攪拌した。クロロホルム(450mL)および粉末4Aモレキュラーシーブス(22.2g)を反応混合物に添加して、攪拌を少なくとも1時間続けた。次に含水率をKarl Fischer滴定によって決定した。含水率が40ppm以上である場合は、攪拌を続けて、追加のモレキュラーシーブスを添加した。含水率が40ppm未満であるときは、N2を反応混合物に最低5分間通気させた。ニトロスチレン(6)(75g、502.9mmol)を固体として5分間に渡って添加した。クロロホルム(20mL)をすすぎ液として添加し、続いてジエチルアリルマロナート(110.76g、553.14mmol、109.12mL)をメスシリンダーによって2分間に渡って添加した。N-メチルモルホリン(661mg、6.54mmol、0.719mL)をピペットによって迅速に添加した。窒素ガスを再度、反応混合物に最低5分間に渡って通気した。反応混合物をN2下で67時間に渡って室温にて攪拌した。反応を完了についてHPLCによって監視した。水(50mL)を添加して反応を停止させ、反応混合物を少なくとも15分間攪拌して、モレキュラーシーブスを膨潤させた。次に反応混合物をCELITETM床で濾過した。濾液の層を分離し、次に有機層を1:1 塩水:水溶液(375mL)で洗浄した。有機層を回転蒸発によって濃縮し、200gを超える粗黄色油を得た。油はシリカゲル栓を使用して、20:1 ヘキサン:EtOAcで開始し、9:1に至る勾配を用いて溶出させて精製した。クロマトグラフィーは開始物質(Rf=0.19、20:1)を分離するために必要であった。真空下での濃縮の後、透明油を得た(124.3g、356mmol、収率71%)。HPLCによる生成物の純度は>97面積%であり、生成物はHPLCによりラセミ混合物であった。追加の15.02gは、分析的に純粋な標準と比較した重量%アッセイによって決定された不純画分に含有された。したがって反応は、化合物(8)を合計132.32g(399mmol、収率79%)与えた。Rf=0.19(20:1 ヘキサン:EtOAc)。1H NMR(CDCl3/400 MHz)δ:7.32-7.27(m, 3H, Ar-H), 7.14(d,J=7.8 Hz, 1H, Ar-H), 7.13(d,J=5.7 Hz, 1H, Ar-H), 5.80-5.68(m, 1H, CH=CH2)5.17-4.95(m, 4H, CH=CH2,CH2-NO2), 4.31(q, J=7.14 Hz, 1H ,-OCH2Me), 4.30(q, J=7.14 Hz, 1H, -OCH2Me), 4.23(q, J=7.14Hz, 2H, -OCH2Me), 4.19(dd, J=3.07, 7.05 Hz, 1H, Ar-CH);2.57(dd, J=6.52, 14.51 Hz, 1H, C-CH2), 2.27(dd, J=8.01, 14.55 Hz, 1H, C=CH2), 1.32(t, J=7.08 Hz, 3H, -CH3), 1.27(t, J=7.08 Hz, 3Hz, -CH3)。
【0146】
3-アリル-2-オキソ-4-フェニル-ピロリジン-3-カルボン酸エチルエステル(9)の調整
化合物(8)(120.0g、343.46mmol、1.00当量)を含有するフラスコに190プルーフEtOH(1500mL)を添加した。次に濃HCl(710.7mL、8.65mol、25.2当量)を、添加漏斗を介して慎重に添加した。添加は非常に発熱性が高く、反応温度は23℃〜48℃に上昇した。温度を45℃〜52℃に維持するために、この混合物に亜鉛粉末(211.1g、3.23mol、9.4当量)を数回に分けて添加し、反応はHPLCによって監視した。反応が完了したと判断されたとき、灰色懸濁物を0℃まで冷却した。懸濁物を0℃の飽和NaOAc水溶液(720mL)によって希釈し、次に未反応亜鉛粉末を濾過によって除去した。濾液を濃縮してEtOHを除去し、次にCH2Cl2(1L)で希釈した。有機層を飽和NaOAc水溶液(300mL)で洗浄した。次に有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過した。有機溶液を-78℃まで冷却し、次にDBU(221mL、1.48mmol、4.33当量)を添加した。得られた溶液を-78℃にて1時間攪拌し、次に室温まで加温した。HPLC分析はの60:1を超えるジアステレオマーの比を示した。次に反応混合物を1N HCl(400 mL)に注入し、次に層を分離した。水層をCH2Cl2(800mL)によって抽出した。合せた有機層を塩水(500mL)で洗浄し、層を分離した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過および濃縮した。油として分離された生成物(9)を静置すると結晶化して、92.07g(収率98%)を、98:2の所望のジアステレオマー対所望でないジアステレオマーの比で得た。1H NMR(CDCl3/400MHz)δ:7. 33-7.25(m, 3H, Ar-H), 7.20-7.15(m, 2H, Ar-H), 6.74(br s, 1H, N-H), 5.70-5.571H, CH=CH2), 4.92(d, J=10.5 Hz, 1H, CH=CH2), 4.84(dd, J=16.9, 3.13 Hz, 1H, CH=CH2), 4.28(q, J=7.13 Hz, 1H, -OCH2Me), 4.27(q, J=7.13 Hz, 1H, -OCH2Me), 4.26(t, J=6.83 Hz, 1H, Ar-CH), 3.75(dd, J=7.12, 9.03 Hz, 1H, CH2-NO2), 3.61(dd, J=6.35, 9.36 Hz, 1H, CH2-NO2), 2.41(dd, J=7.76, 14.5 Hz, 1H, C-CH2), 2.26(dddd, J=1.46, 1.46, 6.68, 14.5 Hz, 1H, C-CH2), 1.30(t, J=7.25 Hz, 3H, -CH3)。
【0147】
化合物(7)に上と同様の条件を受けさせて、キラル生成物(9)の単一ジアステレオマーを収率98%、98:2の所望のジアステレオマー対所望でないジアステレオマーの比で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の立体選択性の第4級炭素原子を有する化合物を調製する方法であって:
構造式(I)
【化1】

を有する化合物を構造式(II)
【化2】

のニトロオレフィンと反応させて構造式(III)
【化3】

(式中、Aは、C(=O)OR1、C(=O)N(R52、C(=O)SR5、CN、NO2、およびSO2R5から成る群より選択され;Bは、C(=O)OR2、C(=O)N(R52、C(=O)SR5、およびCNから成る群より選択され;R1は、C1-4アルキル、ヒドロ、およびMから成る群より選択され;R2は、ヒドロ、M、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アシルアミノ、ハロ、アルキルチオ、アリル、C1-3アルキレンアリール、およびシアノC1-3アルキルから成る群より選択され;R4は、非置換または置換アリールおよびヘテロアリールから成る群より選択され;R5は独立して、ヒドロ、C1-4アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;Mは、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンである)の化合物またはそのエナンチオマーを形成することを含み、
前記反応が塩基ならびにリガンドおよび金属錯体を含む触媒錯体の存在下で実施される、方法。
【請求項2】
所望の立体選択性の第4級炭素原子を有する化合物を調製する方法であって:
構造式(Ia)
【化4】

のα-置換β-ジカルボニル化合物を構造式(II)
【化5】

のニトロオレフィンと反応させて構造式(IIIa)
【化6】

(式中、R6は、アルコキシであり;R7は、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アシルアミノ、ハロ、アルキルチオ、アリル、C1-3アルキレンアリール、およびシアノC1-3アルキルから成る群より選択され;R4は、非置換または置換アリールおよびヘテロアリールから成る群より選択される)の化合物またはそのエナンチオマーを形成することを含み;
前記反応が塩基ならびにリガンドおよび金属錯体を含む触媒錯体の存在下で実施される、
方法。
【請求項3】
前記リガンドが構造式(VI)
【化7】

(式中、R9およびR10は独立して、ヒドロ、アルキル、アリール、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択され、あるいはR9およびR10はひとまとめにされて3-、4-、5-、または6-員シクロアルキル環または二環を形成し;
XおよびX’は独立して、酸素、硫黄および窒素から成る群より選択され;
R11およびR12は独立して、ヒドロ、アルキル、C1-3アルキレンアリール、およびアリールから成る群より選択され、またはR11およびR12は、それらが結合する環とひとまとめにされて、二環式または三環式縮合環を形成し;
R13またはR14は独立して、ヒドロ、アルキル、C1-3アルキレンアリール、およびアリールから成る群より選択され、またはR13およびR14は、それらが結合する環とひとまとめにされて、二環式または三環式縮合環を形成する)を有するか;あるいは構造式(VII)
【化8】

(式中、nは1-3であり、R15およびR16は独立して、アルキル、アリール、およびC1-3アルキレンアリールから成る群より選択される)を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属錯体が過塩素酸マグネシウム、トリフルオロメタンスルホン酸マグネシウム、トリフルオロメタンスルホン酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、トリフルオロメタンスルホン酸ニッケル、臭化マグネシウム、臭化銅、臭化亜鉛、臭化ニッケル、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化銅、ヨウ化亜鉛、ヨウ化ニッケル、アセト酢酸マグネシウム、アセト酢酸銅、アセト酢酸亜鉛、アセト酢酸ニッケル、およびその混合物から成る群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記金属錯体がトリフルオロメタンスルホン酸マグネシウムを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基がトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,6-ルチジン、N-メチルモルホリン、N-エチルピペリジン、イミダゾール、および5,6-ジメチルベンズイミダゾールから成る群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記リガンドが構造
【化9】

またはそのエナンチオマーを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
R6およびR7がアルコキシである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
R6およびR7が独立して、メトキシまたはエトキシであり、R3がメチルまたはエチルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記構造式(I)の化合物が構造式
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記α-置換β-ジカルボニル化合物が構造式:
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

または、
【化26】

を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
R4がアリールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
R4が置換フェニルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
R4
【化27】

(式中、RaおよびRbは独立して、C1-4アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1-3アルキレンアリール、およびヘテロC1-3アルキレンアリールから成る群より選択される)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
アミノ化合物(IV)
【化28】

を形成するためにニトロ化合物(III)をニトロ基に変換する段階と;
それに続く化合物(V)
【化29】

を形成するための分子内環化反応の段階と;
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
アミノ化合物(IVa)
【化30】

を形成するためにニトロ化合物の化合物(IIIa)のニトロ基を変換する段階と;
それに続く化合物(Va)
【化31】

を形成するための分子内環化反応の段階と;
をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項17】
化合物(IIIa)が構造
【化32】

を有し、Meがメチルであり、Bnがベンジルである、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
化合物(IIIa)が構造
【化33】

を有し、Etがエチルである、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
化合物(Va)が構造
【化34】

を有し、Meがメチルであり、Bnがベンジルである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかの方法によって調製される化合物。
【請求項21】
構造式(III)
【化35】

(式中、Aは、C(=O)OR1、C(=O)N(R52、C(=O)SR5、CN、NO2、およびSO2R5から成る群より選択され;Bは、C(=O)OR2、C(=O)N(R52、C(=O)SR5、およびCNから成る群より選択され;R1は、C1-4アルキル、ヒドロ、およびMから成る群より選択され;R2は、ヒドロ、M、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アシルアミノ、ハロ、アルキルチオ、アリル、C1-3アルキレンアリール、およびシアノC1-3アルキルから成る群より選択され;R4は、非置換または置換アリールおよびヘテロアリールから成る群より選択され;R5は独立して、ヒドロ、C1-4アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;Mは、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンである)を有する化合物であって:
前記化合物(III)が、構造式(I)
【化36】

を有する化合物を構造式(II)
【化37】

のニトロオレフィンと反応させることを含む方法によって調製され、
前記反応が塩基ならびにリガンドおよび金属錯体を含む触媒錯体の存在下で実施される、
化合物。
【請求項22】
構造式(V)
【化38】

(式中、Aは、C(=O)OR1、C(=O)N(R52、C(=O)SR5、CN、NO2、およびSO2R5から成る群より選択され;R1は、C1-4アルキル、ヒドロ、およびMから成る群より選択され;R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アシルアミノ、ハロ、アルキルチオ、アリル、C1-3アルキレンアリール、およびシアノC1-3アルキルから成る群より選択され;R4は、非置換または置換アリールおよびヘテロアリールから成る群より選択され;R5は独立して、ヒドロ、C1-4アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;Mは、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンである)を有する化合物であって;
(a)構造式(I)
【化39】

(式中、Bは、C(=O)OR2、C(=O)N(R52、C(=O)SR5、CN、およびNO2から成る群より選択され;R2は、ヒドロ、M、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択される)の化合物を、構造式(II)
【化40】

のニトロオレフィンと反応させる段階であって、構造式(III)
【化41】

を有する化合物を形成するために、前記反応が塩基ならびにリガンドおよび金属錯体を含む触媒錯体の存在下で実施される段階と;
(b)アミノ化合物(IV)
【化42】

を形成するために化合物(III)のニトロ基を変換する段階と、それに続く;
(c)化合物(V)を形成するための分子内環化反応と;
を含む方法によって調製される化合物(V)。
【請求項23】
構造式(IIIa)
【化43】

(R6は、アルコキシ、アミノ、またはチオであり;R7は、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択され;R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アシルアミノ、ハロ、アルキルチオ、アリル、C1-3アルキレンアリール、およびシアノC1-3アルキルから成る群より選択され;R4は、非置換または置換アリールおよびヘテロアリールから成る群より選択される)を有する化合物であって;
前記化合物が構造式(Ia)
【化44】

のα-置換β-ジカルボニル化合物を構造式(II)
【化45】

のニトロオレフィンと反応させる段階を含む方法によって調製され、前記反応が塩基ならびにリガンドおよび金属錯体を含む触媒錯体の存在下で実施される、
化合物。
【請求項24】
構造式(Va)
【化46】

(式中、R6、はアルコキシ、アミノ、またはチオであり;R3は、C1-4アルキル、アルコキシ、アシルアミノ、ハロ、アルキルチオ、アリル、C1-3アルキレンアリール、およびシアノC1-3アルキルから成る群より選択され;R4は、非置換または置換アリールおよびヘテロアリールから成る群より選択される)を有する化合物であって;
(a)構造式(Ia)
【化47】

(R7は、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、C1-3アルキレンアリール、ヘテロアリール、およびC1-3アルキレンヘテロアリールから成る群より選択される)のα-置換p-ジカルボニル化合物を構造式(II)
【化48】

のニトロオレフィンと反応させる段階であって、構造式(IIIa)
【化49】

を有する化合物を形成するために、前記反応が塩基ならびにリガンドおよび金属錯体を含む触媒錯体の存在下で実施される、段階と;
(b)アミノ化合物(IVa)
【化50】

を形成するために化合物(IIIa)のニトロ基を変換する段階と、それに続く;
(c)化合物(Va)を形成するための分子内環化反応と;
を含む方法によって調製された化合物(Va)。

【公表番号】特表2006−524695(P2006−524695A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513147(P2006−513147)
【出願日】平成16年4月19日(2004.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/012128
【国際公開番号】WO2004/096764
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(398072160)アイコス コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】