2型血管内皮増殖因子受容体の阻害剤
本開示は、新規な血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)結合ポリペプチド、および血管内皮増殖因子(VEGF)によって媒介される生物活性を阻害するためのこれらのポリペプチドの使用法に関する。本開示はまた、単一ドメイン結合ポリペプチドに関する様々な改良を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)結合ポリペプチド、および血管内皮増殖因子(VEGF)によって媒介される生物活性を阻害するためのこれらのポリペプチドの使用法に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、「Inhibitors of Vascular Endothelial Growth Factor Receptors」という名称で2003年12月5日に出願した米国仮特許出願第60/527,886号の出願日の恩典を主張する。上記参照出願の教示はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血管新生は、既存の毛細血管または後毛細管細静脈から新たな血管が形成される過程であり;これは、排卵、胚発生、創傷修復、および心筋での側枝血管の生成を含む多くの生理学的過程の重要な構成要素である。血管新生はまた、腫瘍の増殖および転移、糖尿病網膜症、ならびに黄斑変性症などの多くの病理学的状態の中核をなす。多くの場合、この過程は、様々なサイトカインおよび増殖因子に応答した既存の血管内皮細胞の活性化から始まる。癌においては、腫瘍から放出さるサイトカインまたは血管新生因子が、特定の細胞表面受容体と相互作用することによって血管内皮細胞を刺激する。活性化された内皮細胞は血管の基底膜を分解する酵素を分泌し、内皮細胞が腫瘍組織に浸潤できるようになる。このような状態になったならば、内皮細胞は分化して既存の血管の新たな血管側枝を形成する。新たな血管は腫瘍に栄養分を提供し、よってさらなる増殖が促進され、また新たな血管は転移経路を提供する。
【0004】
今日までに、特に強力な因子VEGFを含む多くの血管新生因子が同定されている。VEGFは最初、濾胞星状細胞の馴化培地および種々の細胞株から精製された。最近になって、VEGFの多くの構造類似体および選択的スプライシング型が同定された。様々な形態のVEGFが、高親和性リガンドとして一連のVEGF受容体(VEGFR)に結合する。VEGFRはチロシンキナーゼ受容体であり、その多くは血管新生の重要な調節因子である。VEGFRファミリーは以下の3つの主要なサブタイプを含む:VEGFR-1、VEGFR-2(ヒトでは、キナーゼインサートドメイン受容体、「KDR」としても知られる)、およびVEGFR-3。VEGFの形態の中で、VEGF-A、VEGF-C、およびVEGF-Dは、VEGFR-2と結合し、これを活性化することが知られている。
【0005】
同族受容体を介して作用するVEGFは、血管新生過程において血管内皮特異的マイトジェンとして機能し得る。さらに、VEGFおよびVEGFRは、癌などの不適切な血管新生によって特徴づけられる状況において上方制御されているという実質的な証拠が存在する。その結果、多くの研究が、VEGFまたはVEGFRを標的にするおよび阻害する治療法の同定に重点を置いている。
【0006】
VEGFまたはVEGFRを標的にするまたは阻害する現在の治療アプローチには、抗体、ペプチド、および小分子キナーゼ阻害剤が含まれる。これらのうち抗体が、リガンドおよび細胞受容体のインビボ認識および阻害のために最も広く用いられている。高度に特異的な抗体は、受容体-リガンド相互作用を阻止し、それによってその成分の生物活性を中和するため、およびまた表面上に同族受容体を発現している細胞に毒物を特異的に送達するために用いられている。抗体は効果的ではあるものの、生成するのに組換え哺乳動物細胞における発現に依存する、大きく複雑な分子である。抗体はまた、補体経路の活性化および抗体介在性細胞傷害性を含む、望ましくない場合が多い様々な副作用をもたらす。その結果、不適切な血管新生によって特徴づけられる癌などの疾患の治療として、VEGF/VEGFR経路を特異的に阻害し得る有効な治療法の必要性が残っている。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
一つには、本開示は、VEGFR-2受容体、特にヒトVEGFR-2(KDRとしても知られる)およびマウスVEGFR-2(Flk-1としても知られる)に結合する新規な単一ドメインポリペプチドを提供する。本明細書に記載するVEGFR-2結合タンパク質は、例えば、インビボまたはインビトロでVEGFR-2を検出するために使用できる。さらに、本明細書に記載する特定のVEGFR-2結合タンパク質は、VEGFR-2媒介性生物活性に関連する疾患を治療するために使用できる。例えば、KDRはVEGFの血管新生促進作用を媒介するため、本開示の特定のKDR結合タンパク質はヒト患者において血管新生を抑制するために使用できる。本開示の特定のVEGFR-2結合タンパク質は、癌、炎症性疾患、自己免疫疾患、および網膜症などの疾患を治療するために使用できる。組織の細胞の過剰増殖に関連した多くの疾患は血管新生成分を含むと考えられ、したがって本明細書に記載する特定のVEGFR-2結合タンパク質を用いてそのような疾患を治療し得ることが期待される。
【0008】
本明細書に記載する単一ドメインポリペプチドは一般にVEGFR-2などの標的に結合するポリペプチドであり、標的結合活性は、抗原結合活性が一般に重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの両方によってもたらされる抗体および一本鎖抗体とは区別されて、単一構造ドメイン内に存在する。本開示はまた、標的に結合する単一ドメインポリペプチドを含み得るより大きなタンパク質を提供する。例えば、結合活性が増加した複合分子を作製するために、複数の単一ドメインポリペプチドを結合することができる。同様に、単一ドメインポリペプチドを多くの他のポリペプチドに(例えば、融合タンパク質として)結合することができる。特定の局面において、単一ドメインポリペプチドは、免疫グロブリンドメインおよび免疫グロブリン様ドメインによって例証される、少なくとも2つのβシートに内に分布する少なくとも5〜7個のβストランドまたはβ様ストランドを含み得る。β様ストランドとは、単一ドメインポリペプチドの安定化に関与するが、必ずしもβストランドの高次構造をとるとは限らないアミノ酸の鎖である。β様ストランドがタンパク質の安定化に関与しているかどうかは、その鎖を欠失させるかまたは鎖の配列を変更し、タンパク質の安定性が減少するかどうかを解析することによって評価し得る。安定性は、例えば熱変性および再生実験によって評価することができる。好ましくは、単一ドメインポリペプチドは2つ以下のβ様ストランドを含む。β様ストランドは通常αヘリックス高次構造をとらず、ランダムコイル構造をとり得る。免疫グロブリンドメインまたは免疫グロブリン様ドメインでは、β様ストランドは、そうでなければ最もN末端側のβストランドまたは最もC末端側のβストランドによって占有される構造内の位置に存在する場合が最も多い。タンパク質配列の内部に位置する場合に通常βストランドを形成するアミノ酸鎖は、N末端またはC末端に近い位置に位置する場合、明白にはβストランドではなく、本明細書においてβ様ストランドと称する高次構造をとり得る。
【0009】
特定の態様において、本開示は、VEGFR-2に結合する単一ドメインポリペプチドを提供する。好ましくは、単一ドメインポリペプチドはヒトKDR、マウスFlk-1、またはその両方に結合する。単一ドメインポリペプチドは、少なくとも2つのβシートの間に分布する少なくとも7つのβストランドまたはβ様ストランド、および2つのβストランドまたはβ様ストランドを結合する、VEGFR-2への結合に関与する少なくとも1つのループ部分を含む構造構成を有する約80〜約150アミノ酸を含み得る。すなわち、ループ部分は2つのβストランド、2つのβ様ストランド、または1つのβストランドと1つのβ様ストランドを結合し得る。典型的に、1つまたは複数のループ部分はVEGFR-2結合に関与するが、1つのまたは複数のβストランドまたはβ様ストランド部分、特にループ部分に最も近接して位置するβストランドまたはβ様ストランド部分もまたVEGFR-2結合に関与する可能性がある。単一ドメインポリペプチドは、免疫グロブリンドメインまたは免疫グロブリン様ドメインである構造単位を含み得る。単一ドメインポリペプチドはVEGFR-2の任意の部分に結合し得るが、VEGFR-2の細胞外ドメインに結合するポリペプチドが好ましい。結合は、平衡定数(例えば、解離、KD)に関して、および速度定数(例えば、結合速度定数、Kon、および解離速度定数、koff)に関して評価され得る。単一ドメインポリペプチドは典型的に、10-6M未満、または10-7M、5x 10-8M、10-8M未満、もしくは10-9M未満のKDでVEGFR-2に結合するように選択される。VEGFR-2結合ポリペプチドは、VEGFファミリーの1つ、2つ、またはそれ以上のメンバー、特にVEGF-A、VEGF-C、およびVEGF-Dとの結合に関して競合し得り、血管内皮細胞の増殖、血管の透過化、および血管内皮細胞の運動性の増加などの1つまたは複数のVEGFR-2媒介性生物学的事象を抑制し得る。VEGFR-2結合ポリペプチドは、治療目的に、およびVEGFR-2の検出または結合が関与する任意の目的に使用することができる。治療に使用するためのポリペプチドは一般に、5x10-8M未満、10-8M未満、または10-9M未満のKDを有するが、koffが十分に低いかまたはkonが十分に高い場合にはより高いKD値も許容され得る。特定の態様において、VEGFR-2に結合する単一ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、およびSEQ ID NO:4からなる群より選択される共通VEGFR-2結合配列を含む。好ましくは、そのような配列はループ、特にFGループ内に位置している。
【0010】
特定の態様において、単一ドメインポリペプチドは、免疫グロブリン(Ig)可変ドメインを含む。Ig可変ドメインは、例えば、ヒトVLドメイン、ヒトVHドメイン、およびラクダVHHドメインからなる群より選択され得る。Ig可変領域の1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のループはVEGFR-2への結合に関与し得り、典型的にCDR1、CDR2、またはCDR3として知られるループのいずれかがVEGFR-2結合に関与する。
【0011】
特定の態様において、単一ドメインポリペプチドは免疫グロブリン様ドメインを含む。免疫グロブリン様ドメインの1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のループは、VEGFR-2への結合に関与し得る。好ましい免疫グロブリン様ドメインは、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ドメインである。そのようなドメインは、N末端からC末端の順に、βストランドまたはβ様ストランド、A;ループ、AB;βストランド、B;ループ、BC;βストランド C;ループ CD;βストランド D;ループ DE;βストランド F;ループ FG;およびβストランドまたはβ様ストランド Gを含み得る。構造構成の例として、図22を参照されたい。任意に、ループAB、BC、CD、DE、EF、およびFGのいずれかまたはすべてがVEGFR-2結合に関与し得るが、好ましいループはBC、DE、およびFGである。好ましいFn3ドメインはヒトフィブロネクチンに由来するFn3ドメインであり、特に10Fn3と称されるフィブロネクチンの10番目のFn3ドメインである。本明細書に開示するいずれのVEGFR-2結合ポリペプチドも、天然10Fn3と同一のアミノ酸配列を有さないこと;配列はVEGFR-2結合タンパク質が得られるように改変されているが、タンパク質は10Fn3の基本的な構造特性を有すること、および特に、天然10Fn3との認識できる配列相同性を保持するものをそれでもなお本明細書では「10Fn3ポリペプチド」と称することに留意されたい。この命名法は、例えば、特定の標的タンパク質に対して作製された組換え抗体VLドメインは任意の天然VLドメインと同一ではない場合もあるが、それにもかかわらずこのタンパク質がVLタンパク質と承認される、抗体分野において認められる命名法と類似している。10Fn3ポリペプチドは、SEQ ID NO:5に示すヒト10Fn3ドメインと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%同一であってよい。可変性の大部分は一般に、1つまたは複数のループ内に存在する。そのような可変性が生理的条件においてポリペプチドの安定性を破壊しないならば、10Fn3ポリペプチドのβストランドまたはβ様ストランドはそれぞれ本質的に、SEQ ID NO:5の対応するβストランドまたはβ様ストランドの配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一であるアミノ酸配列からなってよい。10Fn3ポリペプチドは、SEQ ID NO:5の対応するループの配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一であるアミノ酸配列から本質的になるループAB、CD、およびEFの配列をそれぞれ有し得る。多くの場合、ループBC、DE、およびFGのいずれかまたはすべては、SEQ ID NO:5と比較して保存性が低い。例えば、ループBC、DE、およびFGはすべて、SEQ ID NO:5の対応するループと20%、10%未満、または0%の同一性であってよい。
【0012】
特定の態様において、本開示は、VEGFR-2に結合する免疫グロブリン様折りたたみを有するドメインを含む非抗体ポリペプチドを提供する。非抗体ポリペプチドは20 kDa未満または15 kDa未満の分子量を有し得り、一般に(例えば、アミノ酸配列の変更により)Fn3骨格などの参照または「骨格」タンパク質に由来する。非抗体ポリペプチドは、10-6M未満、または10-7M未満、5x10-8M未満、10-8M未満、もしくは10-9M未満のKDでVEGFR-2と結合し得る。未改変の参照タンパク質はVEGFR-2に意味をもって結合しないか、または10-6Mを超えるKDで結合する。非抗体ポリペプチドは、特に5x10-8M未満、10-8M未満、または10-9M未満のKDを有する場合にVEGFシグナル伝達を阻害し得るが、koffが十分に低い場合には(例えば、5x10-4 S-1)それよりも高いKD値も許容され得る。免疫グロブリン様折りたたみは10Fn3ポリペプチドであってよい。
【0013】
特定の態様において、本開示は、VEGFR-2に結合する免疫グロブリン折りたたみを有する単一ドメインを含むポリペプチドを提供する。ポリペプチドは20 kDa未満または15 kDa未の分子量を有し得り、一般に(例えば、アミノ酸配列の変更により)免疫グロブリンの可変ドメインに由来する。ポリペプチドは、10-6M未満、または10-7M未満、5x10-8 M未満、10-8M未満、もしくは10-9M未満のKDでVEGFR-2と結合し得る。ポリペプチドは、特に5x10-8M未満、10-8M未満、または10-9M未満のKDを有する場合にVEGFシグナル伝達を阻害し得るが、koffが十分に低いかまたはkonが十分に高い場合にはそれよりも高いKD値も許容され得る。特定の好ましい態様において、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインに由来する免疫グロブリン折りたたみを有し、VEGFR-2に結合し得る単一ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:241〜310からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0014】
特定の好ましい態様において、本開示は、SEQ ID NO:192〜194のいずれかのアミノ酸配列を含むVEGFR-2結合タンパク質を提供する。SEQ ID NO:194のアミノ酸配列を含むポリペプチドの場合、関心対象のPEG部分または他の部分を93位にシステインに共有結合することができる。PEG部分はまた、ポリペプチド内のアミン部分に共有結合することもできる。アミン部分は、例えば、ポリペプチドのN末端に見出される1級アミンまたはリジンもしくはアルギニンなどのアミノ酸内に存在するアミン基であってよい。特定の態様において、PEG部分は、a) N末端、b) N末端と最もN末端側のβストランドまたはβ様ストランドの間;c) 標的結合部位と反対側のポリペプチド面上に位置するループ;d) C末端と最もC末端側のβストランドまたはβ様ストランドの間;およびe) C末端からなる群より選択されるポリペプチド上の位置に結合される。
【0015】
特定の局面において、本開示は、VEGFR-2結合を媒介する短いペプチド配列を提供する。そのような配列は、単離された形態で、または免疫グロブリもしくは免疫グロブリン様ドメインなどの特定のタンパク質構造内に挿入された場合に、VEGFR-2結合を媒介し得る。そのような配列の例には、SEQ ID NO:1〜4として開示される配列、およびSEQ ID NO:1〜4と少なくとも85%、90%、または95%同一であり、かつVEGFR-2結合活性を保持する他の配列が含まれる。したがって本開示は、SEQ ID NO:1〜4のいずれかの配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、VEGFR-2に結合し、かつVEGFR-2への結合に関してVEGF種と競合する実質的に純粋なポリペプチドを提供する。そのようなポリペプチドの例には、SEQ ID NO:6〜183、186〜197、および199のいずれかの配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれる。好ましくは、そのようなポリペプチドはVEGFの生物活性を阻害し、10-6M未満、または10-7M未満、5x10-8M未満、10-8M未満、もしくは10-9M未満のKDでVEGFR-2と結合し得る。
【0016】
特定の態様においては、本明細書に記載するVEGFR-2結合ポリペプチドのいずれかを、例えば、同様にVEGFR-2に結合する部分(例えば、第2の同一なまたは異なるVEGFR-2結合ポリペプチド)、異なる標的に結合する部分(例えば、二重特異性性結合剤を作製するため)、標識部分、タンパク質の精製を容易にする部分、または改善された薬物動態を提供する部分を含む、1つまたは複数のさらなる部分と結合することができる。薬物動態の改善は、認知される治療必要性に従って評価され得る。おそらくは投薬後にタンパク質が血清中に利用できる状態で残存する時間を延長することによって、生物学的利用能を増加させることおよび/または投薬間の時間を延長することが望ましい場合が多い。場合によっては、長期にわたるタンパク質の血清濃度の継続性を改善すること(例えば、投与の直後および次の投与の直前のタンパク質の血清濃度の相違を減少させること)が望ましい。血液からのタンパク質排除を遅延させる傾向がある部分には、ポリエチレングリコール、糖(例えば、シアル酸)、および許容性の良好なタンパク質部分(例えば、Fc断片または血清アルブミン)が含まれる。単一ドメインポリペプチドは、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、またはヒト)におけるポリペプチドの排除速度を未修飾ポリペプチドの1/3未満に減少させる部分に結合させることができる。薬物動態の改善の他の尺度には血中半減期が含まれ得り、血中半減期はα相とβ相に分類される場合が多い。適切な部分を付加することによって、これらの相の一方または両方を改善することができる。ポリエチレングリコールを使用する場合、1つまたは複数のPEG分子をタンパク質の異なる位置に結合することができ、そのような結合は、アミン、チオール、または他の適切な反応基との反応によって達成され得る。PEG化は、適切な反応基をタンパク質に導入して、PEG化が優先的に起こる部位を作製する、部位特異的PEG化によって達成され得る。好ましい態様において、タンパク質は、所望の位置でシステイン残基を有し、システインにおける部位特異的PEG化が可能になるように改変される。PEGの分子量は広範囲にわたり様々であってよく、PEGは分岐していても直鎖状であってもよい。特に本開示は、PEG化が10Fn3ポリペプチドの標的結合活性と適合し得ること、およびさらにPEG化によってそのようなポリペプチドの薬物動態が改善されることを証明する。したがって、1つの態様において本開示は、そのようなポリペプチドが結合し得る標的にかかわらず、PEG化型の10Fn3ポリペプチドを提供する。
【0017】
特定の態様において、本開示は、本明細書に開示するVEGFR-2結合ポリペプチドのいずれかを含む製剤を提供する。製剤は、VEGFR-2結合ポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む治療製剤であってよい。製剤はまた、抗癌剤または抗血管新生剤などのさらなる活性物質を含む複合製剤であってよい。
【0018】
特定の局面において、本開示は、細胞中のVEGF生物活性を阻害するため、またはVEGFR-2によって媒介される生物活性を阻害するために、VEGFR-2結合タンパク質を使用する方法を提供する。細胞はインビボに存在してもエクスビボに存在してもよく、例えば生体の細胞、培養細胞、または組織試料中の細胞であってよい。本方法は、細胞を、本明細書において開示するVEGFR-2阻害ポリペプチドのいずれかと、そのような生物活性を阻害するのに十分な量でおよび十分な時間接触させる段階を含み得る。
【0019】
特定の局面において、本開示は、VEGFまたはVEGFR-2の阻害に応答する病態を有する患者を治療する方法を提供する。そのような方法は、患者に、本明細書に記載するVEGFR-2阻害ポリペプチドのいずれかの有効量を投与する段階を含み得る。病態は、不適切な血管新生によって特徴づけられる病態であってよい。病態は過剰増殖性病態であってよい。治療に適した病態(または疾患)の例には、自己免疫疾患、炎症性疾患、網膜症(特に増殖性網膜症)、および癌が含まれる。疾患、特に自己免疫疾患、炎症性疾患、網膜症、および癌からなる群より選択される疾患を治療する医薬品を調製するために、本明細書に記載するVEGR-2阻害ポリペプチドのいずれかを使用することができる。
【0020】
特定の局面において、本開示は、試料中のVEGFR-2を検出する方法を提供する。方法は、ポリペプチド-VEGFR-2複合体が形成され得る条件下で、試料を本明細書に記載するVEGFR-2結合ポリペプチドと接触させる段階;および複合体を検出し、それによって試料中のVEGFR-2を検出する段階を含み得る。検出は、例えば、X線検査、免疫学的アッセイ、蛍光検出、質量分析、または表面プラズモン共鳴など、当技術分野において周知である任意の技法を用いて実施し得る。試料は、生検試料、特に腫瘍の生検試料、疑わしい腫瘍、または望ましくない血管新生を起こしていることが疑われる組織などの生物試料である場合が多い。試料は、ヒトまたは他の哺乳動物に由来し得る。VEGFR-2結合ポリペプチドは、放射性部分、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、ハプテン部分などで標識することができる。VEGFR-2結合ポリペプチドは、固体支持体上に固定化してもよい。
【0021】
本開示の別の局面は、本明細書に掲示するポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸に関する。特定の態様において、核酸は、SEQ ID NO:6〜183、186〜197、199、および241〜528のいずれかからなる群より選択されるポリペプチドをコードする核酸配列を含み得る。特定の態様において、核酸は、ストリンジェントな条件においてSEQ ID NO:184の核酸配列とハイブリダイズし、ヒトKDRと1x10-6M未満のKDで結合するポリペプチドをコードする核酸配列を含む。特定の態様において、核酸は、SEQ ID NO:184およびSEQ ID NO:185からなる群より選択される核酸配列を含み得る。
【0022】
本開示のさらなる局面は、プロモーターと機能的に連結された、本明細書に開示するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターに関する。本開示の別の局面は、本明細書に開示する核酸を含む細胞に関する。また、本開示のポリペプチドをコードする核酸を発現させる段階を含む、VEGFR-2、例えばKDRと結合するポリペプチドを生成する方法を提供する。特定の態様において、核酸は、SEQ ID NO:6〜183、186〜197、199、および241〜528のいずれかからなる群より選択されるポリペプチドをコードする配列を含み得る。特定の局面において、核酸は、ストリンジェントな条件においてSEQ ID NO:184の核酸配列とハイブリダイズする配列を含む。特定の態様において、核酸は、SEQ ID NO:184およびSEQ ID NO:185からなる群より選択される核酸配列を含む。特定の態様において、核酸は細胞内で発現される。または、核酸は無細胞系で発現される。
【0023】
特定の局面において、本開示は、ポリペプチドがどの標的に結合するように操作されるかにかかわらず、任意の10Fn3ポリペプチドに適用できる発見を提供する。上記のように、本開示は、PEGを用いて、標的結合を大きく妨げることなく10Fn3ポリペプチドの薬物動態の改善に成功し得ることを実証する。したがって本開示は、標的に結合し、かつ非PEG化ポリペプチドと比較して改善された薬物動態を有するPEG化10Fn3ポリペプチドを提供する。さらなる態様において、本開示は、10Fn3ポリペプチドの最初の8アミノ酸を欠失させることで、標的結合親和性が増加し得ることを実証する。したがって本開示は、最初の8アミノ酸(SEQ ID NO:5の配列を参照にして番号付けされたアミノ酸)を欠く10Fn3ポリペプチドを提供する。翻訳および適切なプロセシングを促進するために、1つまたは2つのアミノ酸を欠失型のポリペプチドに付加し得ることが理解される。本開示は、10Fn3ポリペプチドの皮下投与によって、ポリペプチドの血流への放出が遅延されること、および10Fn3ポリペプチドの最大血清濃度が減少することを実証する。したがって本開示は、皮下投与によって患者に10Fn3ポリペプチドを投与する方法を提供する。この投与経路は、静脈内投与と比較して放出の遅延を達成するために、および/または同等の投与量を静脈内投与することによって達成される最大血清濃度と比較して、10Fn3ポリペプチドの最大血清濃度を少なくとも25%または少なくとも50%減少させるために有用であり得る。投与する10Fn3ポリペプチドは、ポリエチレングリコール部分など、10Fn3ポリペプチドの血中半減期を延長させる(または排除速度を減少させる、もしくは同様に別の薬物動態パラメータに影響を及ぼす)部分と結合することができる。好ましくは、投与する10Fn3ポリペプチドは、SEQ ID NO:5と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0024】
特定の局面において、本開示は、第1哺乳動物に由来する予め選択された標的タンパク質、および第2哺乳動物に由来するその相同体に結合する単一ドメインポリペプチドを提供する。そのような単一ドメインポリペプチドは、第1哺乳動物がヒトであり、第2哺乳動物が、マウス、ラット、モルモット、イヌ、または非ヒト霊長動物など、前臨床試験を行うのに望ましい哺乳動物である場合に、特に有用である。本開示は、そのような二重特異性を有するように単一ドメインポリペプチドを操作できること、ならびに二重特異性によって、ヒト細胞、ヒト対象、および動物モデルにおいて同じポリペプチドを試験できることで、薬物開発が簡便になることを実証する。好ましくは、二重特異性ポリペプチドが作製できるように、第1哺乳動物の予め選択された標的タンパク質と第2哺乳動物に由来するその相同体のアミノ酸配列は、十分に類似している。例えば、予め選択された標的タンパク質および第2哺乳動物に由来する相同体は、少なくとも50アミノ酸の領域にわたり少なくとも80%、90%、または95%の同一性を共有し得り、任意には全タンパク質配列にわたり、または膜タンパク質の場合には細胞外ドメインの配列にわたり、少なくとも80%、90%、または95%の同一性を共有し得る。この種類の二重特異性結合特性を有する単一ドメインポリペプチドは、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様ドメインを含み得り、好ましくは、1x10-6M、1x10-7M、5x10-8M、1x10-8M、または1x10-9M未満の解離定数で、予め選択されたヒト標的タンパク質およびその相同体の両方に結合する。
【0025】
発明の詳細な説明
1. 概要
本明細書はとりわけ、VEGFR-2受容体に結合する新規な単一ドメインポリペプチドの同定および生成について記載する。ヒトではKDRおよびマウスではFLK-1とも称されるVEGFR-2は、VEGFシグナル伝達の血管新生促進効果の主要なメディエーターである。VEGFR-2にはVEGF-A、VEGF-C、およびVEGF-Dが結合し、VEGFR-2はこれらによって活性化される。血管内皮細胞では、VEGFR-2の活性化によって細胞の増殖および遊走が促進され、インビボでは、VEGFR-2の活性化によって血管新生が誘発され、また脈管構造の透過性が増加する。血管新生の増大は腫瘍増殖および様々な網膜症の重要な特徴として確立しており、脈管構造の透過性の増加は多くの炎症反応における重要な事象である。
【0026】
本開示は、VEGFR-2に結合する何百もの単一ドメインポリペプチドを提供するが、その多くはインビトロおよび/またはインビボVEGFアンタゴニスト活性を示す。VEGFアンタゴニスト活性を有する単一ドメインポリペプチドは、多くの治療用途において有用であると考えられる。抗KDR抗体は、癌および癌に起因する合併症から増殖性網膜症、炎症性疾患、および線維症にわたる疾患および病態に対して、インビボ有用性を有するとして確立されている。本明細書に提示するインビボおよびインビトロデータによれば、単一ドメインポリペプチドは同じ疾患範囲の治療において有用であると考えられる。
【0027】
治療用途に加えて、VEGFR-2結合単一ドメインポリペプチドは、VEGFR-2を検出することが望ましい任意の状況において使用することができる。例えば、造血系統の特に有用な細胞を含む多くの幹細胞はVEGFR-2を発現する。KDR結合ポリペプチドを特に標識形式で使用して、幹細胞を検出することおよび細胞選別を容易にすることができる。インビボでは、標識VEGFR-2結合ポリペプチドを用いて、VEGFR-2が発現されている組織を画像化することができる。VEGFR-2発現の上昇は、特に高レベルの血管新生活性または炎症活性を表している組織に特有である。組織試料の組織学的解析もまた、VEGFR-2の検出から恩恵を受け得る。例えば、抗VEGFR-2または抗VEGF治療の有効可能性を評価するために、腫瘍生検試料においてVEGFR-2発現を検出することが望ましい場合がある。興味深いことに、本明細書に開示するVEGFR-2結合タンパク質の多くは、ナノモル濃度の解離定数でVEGFR-2に結合するにもかかわらず、VEGFR-2媒介性生物学的事象に有意な効果を及ぼし得ない。したがってそのような結合タンパク質は、VEGFR-2媒介性事象を有意に撹乱することなくVEGFR-2を発現する細胞を選択的に標識することが望ましい場合が多い、インビボ可視化法または細胞標識法において有用であり得る。
【0028】
本開示は、VEGFR-2への結合に重要である新規単一ドメインポリペプチドおよびアミノ酸モチーフを同定するための、核酸-タンパク質融合物(RNA-タンパク質およびDNA-タンパク質融合物)を利用する、PROfusion(商標)と称されるインビトロディスプレイ技術の使用について記載する。核酸-タンパク質融合技術とは、タンパク質をそのコード遺伝情報と共有結合させるディスプレイ技術である。PROfuion(商標)技術を用いて、ヒトフィブロネクチンタイプ3ドメイン(10Fn3)に基づく骨格を使用して構築された、または抗体軽鎖の可変ドメインから構築された単一ドメインポリペプチドをコードする核酸の集合体をスクリーニングした。発現されるポリペプチドは骨格タンパク質の「ライブラリー」と称されるが、これを高親和性でVEGFR-2と結合し得るポリペプチドに関してスクリーニングした。本発明者らは、骨格タンパク質のこのライブラリーから、VEGFR-2に結合し、場合によってはVEGF生物活性を阻害する新規な単一ドメインポリペプチドを単離した。さらに、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様骨格内に位置する多くの独立してランダム化したループが、VEGFR-2結合に関与する共通配列の関連セットに収束する傾向があることが見出された。したがって、これらの共通配列を有するポリペプチドは、これらが同定されたタンパク質状況から分離された場合でさえも、VEGFR-2結合剤として有用であることが予想される。例えば、SEQ ID NO1〜4を参照されたい。そのようなポリペプチドは、独立した小ペプチドVEGFR-2結合剤として使用し得り、または他のタンパク質、特に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様折りたたみを共有するタンパク質内に位置し得る。
【0029】
上記したように、本開示は、VEGFR-2への高親和性結合、VEGF-A、VEGF-C、またはVEGF-Dの1つまたは複数に関するアンタゴニスト作用、および薬物動態の改善などの特定の所望の特性を有する単一ドメインポリペプチドが、有効な抗癌剤として使用され得ることを実証する。抗癌剤としてのそのようなポリペプチドの有効性は、癌における血管新生の役割に関連していることが予想されるが、本発明者らは任意の特定の機構に縛られることを望まない。形式上、本単一ドメインポリペプチドが、血管新生過程とは無関係の理由で癌に対して有効であるという可能性もある。
【0030】
本発明者らの知る限り、本開示は、インビボでの治療効果を達成するためにFn3に基づくポリペプチドを使用する、初めて成功した試みである。インビボ有効性を達成するためになされた改善および発見の多くは、Fn3に基づく他のポリペプチドにも広く適用できると考えられる。すなわち、Fn3に基づくポリペプチドのリガンド結合特性は一般に、溶媒接近ループ領域内に位置する比較的少数のアミノ酸によって決定されるが、Fn3に基づくポリペプチドの薬物動態特性などの他の特性は、リガンド結合に直接関与せず、また標的タンパク質にかかわらずタンパク質間で保存されているタンパク質の大部分によって決定される傾向がある。これは、CDR領域と称される少数のループが抗原結合を媒介し、インビボ抗体挙動の他の特性は主として保存されたフレームワーク領域および定常ドメインによって決定される抗体にも当てはまる。
【0031】
「阻害する」とは、本明細書においては以下のいずれかに関して使用される場合が多い、現象の測定可能な減少を意味する:ポリペプチド処理していない対照試料と比較した、VEGFとVEGFRとの相互作用、VEGFもしくはVEGFR媒介性血管新生、血管新生、血管新生の症状、VEGFR含有細胞の生存度、VEGF依存性Ba/F3細胞の生存度、またはVEGFもしくはVEGFR媒介性細胞増殖。活性または相互作用の減少が少なくとも10%、好ましくは20%、30%、40%、または50%、より好ましくは60%、70%、80%、90%、またはそれ以上である場合、ポリペプチドはVEGFまたはVEGFR-2媒介性活性を阻害することになる。
【0032】
「VEGF結合活性」とは、任意のVEGF受容体を介して作用する、しかし特にVEGFR-2受容体を介してシグナル伝達する任意のVEGFファミリーメンバーの任意の機能を意味する。VEGFファミリーには、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、および胎盤増殖因子(PIGF)、ならびにVEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF189、およびVEGF206を含むVEGFの種々の選択的スプライシング型が含まれる(Tischer et al., J. Biol. Chem, 266:11947-11954, 1991)。チロシンキナーゼ受容体のVEGFRファミリーには、VEGFR-1(Flt-1としても知られる)、VEGFR-2(KDR(ヒト型)またはFlk-1(マウス型)としても知られる)、およびVEGFR-3(Flt-4としても知られる)が含まれる。VEGFリガンドはVEGF受容体に結合し、例えば血管新生、脈管形成、内皮細胞増殖、血管拡張、および細胞遊走を誘導する。VEGFリガンドはまた、同族受容体への結合を介してアポトーシスを抑制し得る。VEGFR-2は、血管新生に最も関与しているVEGFRであると考えられている。VEGFR-2またはKDR媒介性生物活性とは、VEGFR-2またはKDRの拮抗作用によって生物活性の測定可能な減少が起こるような、VEGFR-2またはKDRが著しく関与する任意の生物学的機能である。VEGFおよびVEGFRの生物活性は、当技術分野において周知である標準的なアッセイ法によって測定することができる。例には、リガンド結合アッセイ法およびスキャッチャードプロット解析;受容体二量体化アッセイ法;細胞リン酸化アッセイ法;チロシンキナーゼリン酸化アッセイ法(例えば、Meyer et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 995:200-207, 2003);BrdU標識実験および細胞計数実験などの内皮細胞増殖アッセイ法;VEGF依存性細胞増殖アッセイ法;ならびに血管新生アッセイ法が含まれる。血管新生を測定する方法は標準的であり、例えばJain et al.(Nat. Rev. Cancer 2:266-276, 2002)に記載されている。血管新生は、非分岐血管区域の数(単位面積当たりの区域の数)、機能的血管密度(単位面積当たりの灌流血管の全長)、血管径、脈管の形成、または血管容量密度(単位面積当たりの、各区域の長さおよび直径に基づいて計算された全血管容量)を測定することにより評価することができる。VEGF媒介性増殖および血管新生の例示的なアッセイ法は、米国特許第6,559,126号、Lyden et al, Nature Medicine 7:1194 (2001)、Jacob et al, Exp. Pathol. 15:1234 (1978)、およびBae et al, J. Biol. Chem. 275:13588 (2000)に見出され得る。これらのアッセイは精製受容体もしくはリガンドまたはその両方を用いて行うことができ、またインビトロでもインビボでも行うことができる。これらのアッセイはまた、遺伝子導入されたまたは天然のリガンドもしくは受容体またはその両方を用いて細胞内で行うことができる。VEGFの生物活性を阻害するポリペプチドは、VEGFの生物活性の少なくとも10%の減少、好ましくは20%、30%、40%、または50%、より好ましくは60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の減少をもたらす。生物活性の阻害はまた、IC50によって測定され得る。好ましくは、VEGFまたはVEGFR-2の生物活性を阻害するポリペプチドは、100 nM未満、より好ましくは10 nM未満、最も好ましくは1 nM未満のIC50を有する。
【0033】
2. ポリペプチド
本明細書に記載する方法を用いて、2つの関連するタンパク質構造群:免疫グロブリン折りたたみを有するタンパク質および免疫グロブリン様折りたたみを有するタンパク質に由来する単一ドメインVEGFR-2結合ポリペプチドを作製することに成功した。「ポリペプチド」とは、長さ、翻訳後修飾、または機能にかかわらず、2つまたはそれ以上のアミノ酸の任意の配列を意味する。「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において互換的に用いられる。ポリペプチドは、天然アミノ酸、および参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,559,126号に記載されているような非天然アミノ酸を含み得る。ポリペプチドはまた、種々の標準的な化学的方法のいずれかで修飾され得る(例えば、アミノ酸を保護基で修飾することができる;カルボキシ末端アミノ酸を末端アミド基にすることができる;アミノ末端残基を、例えば親油性を増強させる基で修飾することができる;または安定性もしくはインビボ半減期を増大させるために、ポリペプチドを化学的にグリコシル化するかもしくは別の方法で修飾することができる)。ポリペプチド修飾は、ポリペプチドへの環式化合物などの別の構造または他の分子の結合を含み得り、また立体配置が変化した(すなわち、RもしくはS;またはLもしくはD)1つまたはそれ以上のアミノ酸を含むポリペプチドを含み得る。「単一ドメインポリペプチド」という用語は、対象ポリペプチドの標的結合活性(例えば、VEGFR-2結合活性)が、例えば、抗原結合活性が一般に重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの両方によってもたらされる抗体および一本鎖抗体とは区別されて、単一構造ドメイン内に存在することを示すために用いられる。結合活性が増加した複合分子を作製するために、本明細書に開示するような複数の単一ドメインポリペプチドを結合し得ることが意図される。同様に、単一ドメインポリペプチドを、蛍光ポリペプチド、標的化ポリペプチド、および異なる治療効果を有するポリペプチドなどの多くの他のポリペプチドに(例えば、融合タンパク質として)結合することができる。
【0034】
免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様骨格の単一ドメインポリペプチドは、特定の構造特性を共有する傾向がある。例えば、ポリペプチドは約80〜約150アミノ酸を含み得り、アミノ酸は一連のβストランドまたはβ様ストランドに構造的に構成されて、βストランドまたはβ様ストランドが介在ループ部分によって結合されたβシートを形成する。重鎖可変ドメインおよび10Fn3ドメインの構造構成の例を図22にす。βシートは単一ドメインポリペプチドの安定な核を形成し、また一方でβストランドまたはβ様ストランドを結合するループから構成される2つの「面」を形成する。本明細書に記載するように、これらのループを変更して要望に合わせたリガンド結合部位を作製することができ、適切な対照を使用することで、タンパク質の全体的な安定性を破壊することなくそのような変更物を作製することができる。抗体では、これらのループのうちの3つは周知の相補性決定領域(または「CDR」)である。
【0035】
単一ドメインポリペプチドを形成するための骨格は、生理的条件において高度に可溶性であり安定であるべきである。免疫グロブリン骨格の例は、単一ドメインVHもしくはVL骨格および単一ドメインラクダVHHドメイン(ラクダで見出された重鎖可変ドメインの形態)、または天然で見出されるもしくは実験室において操作された他の免疫グロブリン可変ドメインである。本明細書に開示する単一ドメイン形式では、免疫グロブリンポリペプチドは、結合活性を獲得するために第2ポリペプチドと二量体を形成する必要がない。したがって、第2タンパク質とのジスルフィド架橋結合を媒介するシステインを天然に含む任意のそのようなポリペプチドは、システインを除去するように変更され得る。または、単一ドメインポリペプチドにPEGなどのさらなる部分を結合するのに使用するため、システインは保持され得る。
【0036】
他の骨格は、非抗体骨格タンパク質であってよい。「非抗体骨格タンパク質またはドメイン」とは、免疫グロブリン様折りたたみを有する非抗体ポリペプチドを意味する。「抗体様折りたたみ」とは、2層の逆平行βシートを含み、2つのβシートの平らな疎水面が相互に向かい合って詰め込まれた約80〜150アミノ酸残基のタンパク質ドメインを意味する。そのような骨格の例は「フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質」であり、これはフィブロネクチンタイプIIIドメイン(Fn3)に基づくポリペプチドを意味する。フィブロネクチンは、細胞外基質の形成および細胞間相互作用において重要な役割を果たす大きなタンパク質であり;これは、3つのタイプ(タイプI、II、およびIII)の小さなドメインの多くの繰り返しからなる(Baron et al., 1991)。Fn3自体は、細胞接着分子、細胞表面ホルモン受容体およびサイトカイン受容体、シャペロニン、ならびに糖質結合ドメインの一部を含む大きなサブファミリーの模範例である。総説に関しては、Bork & Doolittle, Proc Natl Acad Sci U S A. 1992 Oct 1;89(19):8990-4;Bork et al., J Mol Biol. 1994 Sep 30;242(4):309-20;Campbell & Spitzfaden, Structure. 1994 May 15;2(5):333-7;Harpez & Chothia, J Mol Biol. 1994 May 13;238(4):528-39)を参照されたい。
【0037】
好ましくは、フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質は「10Fn3」骨格であり、これは、1つまたは複数の溶媒接近ループ、特にBCループ(アミノ酸20〜30)、DEループ(アミノ酸52〜56)、およびFGループ(アミノ酸77〜87)として同定される3つのループの1つまたは複数がランダム化されるまたは変異された、ヒトフィブロネクチンタイプIIIタンパク質の10番目のモジュールに基づくポリペプチド変種を意味する(番号付けの図式はヒトフィブロネクチンの10番目のタイプIIIドメインの配列に基づき、アミノ酸Val-Ser-Asp-Val-Proがアミノ酸番号1〜5を表す)。ヒトフィブロネクチンタイプIIIドメインの野生型の10番目のモジュールのアミノ酸配列は:
である。したがって、野生型BCループはDAPAVTVRの配列を含み;野生型DEループはGSKSTの配列を含み、野生型FGループはGRGDSPASSKPの配列を含む。BC、DE、およびFGループに隣接する配列はまた、例えば表1〜3においてフレームワーク1、2、3、および4と称される。
【0038】
様々な改良変異体10Fn3骨格が同定されている。Asp7の改良は、負に荷電していないアミノ酸残基(例えば、Asn、Lysなど)によって置換される。これらの変異体はいずれも、中性pHにおける変異体10Fn3の、野生型よりも高い安定性を促進する効果を有する。10Fn3骨格における有益であるかまたは中立である種々のさらなる改変が開示されている。例えば、Batori et al. Protein Eng. 2002 Dec;15(12):1015-20;Koide et al., Biochemistry 2001 Aug 28;40(34):10326-33を参照されたい。
【0039】
さらに、10Fn3骨格に対するいくつかの新たな改変を本明細書に開示する。特に重要なことには、野生型ヒト10Fn3の最初の8アミノ酸を欠失させることで、VEGFR-2結合がおよそ3倍に改善されることが見出された。最初の8アミノ酸は、BC、DE、およびFGループに近接した位置に折りたたまれる傾向があるため、この変異体はまた、異なる標的に対する結合に関して選択される他の10Fn3骨格においても標的結合を改善することが期待される。したがって、最初の8アミノ酸を欠いた10Fn3骨格をコードする核酸のライブラリーを構築して、この改良ライブラリーにおいてスクリーニングを行うことができる。
【0040】
変種および野生型10Fn3タンパク質はどちらも、同じ構造、すなわち7つのβストランドドメイン配列(A〜と称される)、および7つのβストランドドメイン配列を結合する6つのループ領域(ABループ、BCループ、CDループ、DEループ、EFループ、およびFGループ)によって特徴づけられる。N末端およびC末端に近接して位置するβストランドは、溶液中でβ様高次構造をとり得る。SEQ ID NO:5では、ABループは残基15〜16に相当し、BCループは残基22〜30に相当し、CDループは残基39〜45に相当し、DEループは残基51〜55に相当し、EFループは残基60〜66に相当し、FGループは残基76〜87に相当する。図22に示されるように、BCループ、DEループ、およびFGループはすべて、ポリペプチドの同じ面に位置する。同様に、免疫グロブリンも骨格も、少なくとも7つのβストランドまたはβ様ストランド、しばしば9つのβストランドまたはβ様ストランドを有する傾向がある。
【0041】
本明細書に開示する単一ドメインポリペプチドは、少なくとも2つのβシートの間に分布する少なくとも5〜7個のβストランドまたはβ様ストランド、および2つのβストランドまたはβ様ストランドを結合する少なくとも1つのループ部分を有し得り、ループ部分はVEGFR-2、特にKDRへの結合に関与し、その結合は1x10-6M未満、好ましくは1x10-8M未満の解離定数によって特徴づけられる。本明細書に記載する、5x10-9M未満の解離定数を有するポリペプチドは、VEGFシグナル伝達を抑制するためのインビボでの治療的使用に特に望ましい。1x10-6M〜5x10-9Mの解離定数を有するポリペプチドは、VEGFR-2タンパク質のエクスビボまたはインビボでの検出または標識に使用するのに望ましいと考えられる。
【0042】
任意に、VEGFR-2結合タンパク質は、同じ種に由来する他の関連タンパク質と比較してVEGFR-2に特異的に結合する。「特異的に結合する」とは、標的タンパク質(例えば、VEGFR-2)を認識しこれと相互作用するが、試料、例えば生物試料中の他の分子を実質的に認識せずこれと相互作用しないポリペプチドを意味する。好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、少なくとも500 nM程度のKDでVEGFRと特異的に結合する。好ましくは、ポリペプチドは、1 pM〜500 nM、より好ましくは1 pM〜100 nM、より好ましくは1 p<〜10 nM、最も好ましくは1 pM〜1 nMまたはそれよりも低いKDでVEGFRと特異的に結合する。
【0043】
一般に、選択された標的に結合し得る特異的なポリペプチド変種を同定するために、骨格単一ドメインポリペプチドのライブラリーをスクリーニングする。これらのライブラリーは、例えばファージディスプレイライブラリーまたはPROfusion(商標)ライブラリーであってよい。
【0044】
例示的な態様において、本発明者らは、新規なインビトロRNA-タンパク質融合ディスプレイ技術を利用して、ヒト(KDR)およびマウス(Flk-1)VEGFR-2の両方に結合し、VEGFに依存的な生物活性を阻害するポリペプチドを単離した。これらのポリペプチドは、フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質のライブラリー(Koide et al, JMB 284:1141 (1998))、およびVH分子の集団に由来するCDR3ドメインと交換することによってCDR3の多様性が増加したVLドメインのライブラリーから同定された。10Fn3は、SEQ ID NO:5に示されるように約94個のアミノ酸残基を含む。
【0045】
さらに、上記のように、10Fn3のN末端のアミノ酸配列も同様に変異または欠失させることができる。例えば、BC、DE、およびFGループのランダム化は、全長10Fn3の状況で、またはN末端の1〜8アミノ酸の欠失または変異を有する10Fn3の状況で起こり得る。例えば、8位のLをQに変異させることができる。多様なライブラリーを作製するためにランダム化した後、フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質を、タンパク質、この場合はVEGFRに対して高親和性を有するポリペプチドを選択するスクリーニングアッセイにおいて使用することができる。(RNA-タンパク質融合技術およびフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質ライブラリースクリーニング法の詳細については、参照により本明細書に組み入れられるSzostak et al.、米国特許第6,258,558号;第6,261,804号;第6,241,553号;第6,281,344号;第6,207,446号、第6,518,018号;国際公開公報第00/34787号;WO第01/64942号;WO第02/032925号;およびRoberts and Szostak, Proc Natl. Acad. Sci. 94:12297-12302, 1997を参照されたい。)
【0046】
本明細書に記載する最初の選択では、23〜29、52〜55、および77〜86位にある10Fn3の3つの領域をランダム化し、ヒトVEGFR-2の細胞外ドメイン(ヒトIgG1Fcに融合したKDRのアミノ酸1〜764)に対するインビトロ選択に使用した。mRNAディスプレイ(RNA-タンパク質融合)およびインビトロ選択を使用して、本発明者らは約10兆個の変種を有する10Fn3に基づくライブラリーをサンプリングした。最初の選択により、KDR(ヒトVEGFR-2)への結合に関してVEGFと拮抗する、中程度の親和性(KD=10〜200 nM)を有するポリペプチドが同定された。続いて、最初の選択に由来する単一クローン(KD=11〜13 nM)を、突然変異誘発およびさらなる選択に供した。この親和性成熟過程により、60 pM〜2 nMの解離定数を有する新たなVEGFR結合ポリペプチドが得られた。KDR結合剤を表3に示す。さらに、本発明者らはまた、始めはFlk-1に対する検出可能な結合親和性を有さなかったKDR結合剤の突然変異誘発した集団から、Flk-1、マウスKDR相同体に結合し得るポリペプチドを単離し、結果的にヒトおよびマウスVEGFR-2の両方に対する二重特異性を示すポリペプチドを単離した。これらのポリペプチドは、KDRまたはFlk-1細胞外ドメインを提示する細胞に結合することが示される。これらのポリペプチドはまた、VEGF依存性増殖アッセイにおいて細胞増殖を抑制した。KDRおよびFlk-1に結合するポリペプチドを表2に示し、好ましいKDR結合剤およびKDR/Flk-1結合剤の選択を表1に示す。
【0047】
本発明者らは、これらの選択で同定されたVEGFR-2結合ポリペプチドを用いて、VEGFR-2に対するポリペプチドの結合に必要なFGループアミノ酸共通配列を決定した。この配列を以下のSEQ ID NO:1〜4に記載する。
【0048】
SEQ ID NO:1〜4などのVEGFR-2結合ポリペプチドは、単独で(単離ペプチドとして)、10Fn3単一ドメインポリペプチドの一部として、(全長アミノ末端または欠失アミノ末端を有する)全長フィブロネクチンもしくはその断片の一部として、免疫グロブリン(特に単一ドメイン免疫グロブリン)の状況において、免疫グロブリン様折りたたみを有する別のタンパク質の状況において、または別の非関連タンパク質の状況において製剤化することができる。ポリペプチドはまた、それ自体はVEGFRへの結合に寄与しない異種タンパク質との融合タンパク質の一部として製剤化することができる。さらに、本発明のポリペプチドはまた核酸と融合させることも可能である。ポリペプチドまた、単量体、二量体、または多量体として操作され得る。
【0049】
好ましい共通VEGFR-2結合ペプチドの配列:
SEQ ID NO:1‐(L/M)GXN(G/D)(H/R)EL(L/M)TP
[Xは任意のアミノ酸であってよく;(/)は同じ位置の選択的アミノ酸を表す]
SEQ ID NO:2‐XERNGRXL(L/M/N)TP
[Xは任意のアミノ酸であってよく;(/)は同じ位置の選択的アミノ酸を表す。]
SEQ ID NO:3‐(D/E)GXNXRXXIP
[Xは任意のアミノ酸であってよく;(/)は同じ位置の選択的アミノ酸を表す。]
SEQ ID NO:4‐(D/E)G(R/P)N(G/E)R(S/L)(S/F)IP
[Xは任意のアミノ酸であってよく;(/)は同じ位置の選択的アミノ酸を表す。]
【0050】
好ましいVEGFR-2結合10Fn3ポリペプチドの配列:
【0051】
上記のCT-01分子は最初の8アミノ酸の欠失を有し、N末端またはC末端にさらなるアミノ酸を含み得る。例えば、さらなるMG配列をN末端に置くことができる。Mは通常切断されて、N末端にはGEV…配列が残る。通常の8アミノ酸をN末端に再付加することでも、所望の特性を有するKDR結合タンパク質が生成される。N末端のメチオニンは通常切断されて、配列:
が得られる。
【0052】
本明細書に開示するポリペプチドは、特に標的タンパク質と相互作用しないと考えられるタンパク質の部分において、1つまたは複数の保存的置換によって修飾され得る。免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様ドメイン内の5%、10%、20%、もしくはさらに30%程度、またはそれ以上のアミノ酸が、標的に対するタンパク質の親和性を実質的に変更することなく、保存的置換によって変更され得ると考えられる。そのような変化はインビボにおけるポリペプチドの免疫原性を変更するかもしれず、免疫原性が減少する場合、そのような変化は望ましい。本明細書で使用する「保存的置換」とは、対応する参照残基と物理的または機能的に類似した残基である。すなわち、保存的置換とその参照残基は、類似した大きさ、形状、電荷、共有結合または水素結合を形成する能力を含む化学的特性などを有する。好ましい保存的置換は、許容される点突然変異に関してDayhoff et al., Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352 (1978 & Supp.)において定義された基準を満たす置換である。保存的置換の例は以下の群内の置換である:(a) バリン、グリシン;(b) グリシン、アラニン;(c) バリン、イソロイシン、ロイシン;(d) アスパラギン酸、グルタミン酸;(e) アスパラギン、グルタミン;(f) セリン、スレオニン;(g) リジン、アルギニン、メチオニン;および(h) フェニルアラニン、チロシン。
【0053】
本明細書に開示するポリペプチドはまた、効力、生物学的利用能、化学的安定性、および/または有効性を改善するために修飾してもよい。例えば、本発明の1つの態様では、生物活性およびポリペプチド構造の化学的安定性を改良するために、D-アミノ酸ペプチドまたはレトロエナンチオ(retroenantio)ペプチド配列が作製され得る(例えば、Juvvadi et al., J. Am. Chem. Sco. 118: 8989-8997, 1996;Freidinger et al., Science, 210: 656-658,1980を参照のこと)。ラクタム制約(Freidinger、前記を参照のこと)、および/またはジペプチド代用物としてのアザビシクロアルカンアミノ酸もまた、天然ペプチドの生物学的特性および薬理学的特性を改善するために利用され得る(例えば、Hanessian et al., Tetrahedron 53:12789-12854, 1997を参照のこと)。
【0054】
チオアミド、二級アミンおよび三級アミン、特に複素環などのアミド結合代用物(Spatola, A.F.、「Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins」 Wenstein, B. Ed. Marcel Dekker, New York, 1983 Vol. 7, pp 267-357の総説を参照のこと)もまた、ポリペプチド骨格の酵素分解を妨げて、それにより活性を改善するために利用され得る。環状ポリペプチドは酵素分解に対する感受性が非常に低いことから、直鎖ポリペプチドの環状ポリペプチド類似体への変換を利用して、代謝的安定性を改善することも可能である(一般的に、Veber et al. Nature 292:55-58, 1981を参照のこと)。
【0055】
ポリペプチドはまた、代謝を遅延させるまたは妨げるため、および親油性を増大させるために、エステルおよびアミドとしての末端基キャッピングを利用して修飾することもできる。種々のリンカーによって結合されたペプチドの二量体もまた、活性および特性を増強し得る(例えば、Y. Shiomohigashi et al、Peptide Chemistry 1988, Proceedings of the 26th Symposium on Peptide Chemistry, Tokyo, October 24-26, pgs. 47-50. 1989を参照のこと)。非天然アミノ酸などのポリペプチド修飾のさらなる例に関しては、米国特許第6,559,126号を参照されたい。
【0056】
インビボで使用する場合、PEG化に適した形態が作製され得る。例えば、N末端の8アミノ酸を欠くCT-01型について以下に示すように、システインを含むC末端尾部が付加され、発現される(C末端にEIDKPCQが付加される)
以下に記載するインビボ実験では、この分子のPEG化型を使用する。システインの代わりにセリンを有する対照型もまた使用した:
【0057】
同じC末端尾部を、SEQ ID NO:193に示すN末端8アミノ酸を有するCT-01型に付加することもできる。
【0058】
所望のKDR結合特性を有するさらなる変種が単離された。以下のコア配列はいくぶん異なるFGループを有し、例えば、N末端MG配列、欠失された8アミノ酸を回復するN末端配列、および/またはPEG化用のシステインを提供するためのC末端尾部と共に発現させることができる。
別のそのような変種はコア配列:
を有する。
【0059】
さらに、同様の方法により、VLフレームワーク内の好ましい単一ドメイン免疫グロブリンポリペプチドも単離され、これを図21に開示する。
【0060】
本発明には、本明細書に記載するポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列もまた含まれる。当業者によって理解されるように、3塩基目の縮重により、ほぼすべてのアミノ酸が、コードヌクレオチド配列において2つ以上のトリプレットコドンで示され得る。さらに、わずかな塩基対変化はコードされるアミノ酸配列において保存的置換をもたらし得るが、遺伝子産物の生物活性を実質的に変更しないと考えられる。したがって、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸配列は、わずかに配列を修飾することができ、それでもなおそれぞれの遺伝子産物をコードし得る。
【0061】
さらに、本発明のポリペプチドを、さらに変異させて、より高い親和性でVEGFRと結合するポリペプチドをスクリーニングし得るリードポリペプチドとして使用することができる。一例では、本明細書に記載するポリペプチドは、さらに変異させるかまたはランダム化して、リードポリペプチドと異なるアミノ酸変異を有するポリペプチドを作製するリードポリペプチドとして使用される。次いで、さらにランダム化されたポリペプチドを用いて、本明細書に記載するVEGF生物活性を阻害する(例えば、VEGFRに結合し、同じ受容体へのVEGFの結合を阻止する)ポリペプチドをスクリーニングすることができる。
【0062】
3. 核酸およびポリペプチドの生成
本発明のポリペプチドは、当技術分野において周知である任意の標準的な方法を用いて生成することができる。
【0063】
一例において、ポリペプチドは、ポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、cDNA)を組換え発現ベクターに挿入し、発現を促進する条件下においてDNA配列を発現させることによる組換えDNA法により作製される。本明細書に開示するCT-01ポリペプチドをコードする核酸配列の例には以下のものがある:
【0064】
本明細書に開示する種々のポリペプチドのいずれかをコードする核酸は、化学的に合成することができる。コドン使用頻度は、細胞内での発現を改善するように選択され得る。そのようなコドン使用頻度は、選択した細胞種に依存することになる。大腸菌(E. coli)および他の細菌、ならびに哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞、および昆虫細胞について、特定のコドン使用頻度パターンが開発されている。例えば、Mayfield et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Jan 21;100(2):438-42;Sinclair et al. Protein Expr Purif. 2002 Oct;26(1):96-105;Connell ND. Curr Opin Biotechnol. 2001 Oct;12(5):446-9;Makrides et al. Microbiol Rev. 1996 Sep;60(3):512-38;およびSharp et al. Yeast. 1991 Oct;7(7):657-78を参照されたい。
【0065】
核酸操作の一般的な技法は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2 ed., 1989, またはF. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Green Publishing and Wiley-Interscience: New York, 1987)、および定期的な最新情報に記載されている。ポリペプチドをコードするDNAは、哺乳動物、ウイルス、または昆虫遺伝子に由来する適切な転写または翻訳調節エレメントに連結する。そのような調節エレメントには、転写プロモーター、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終結を調節する配列が含まれる。宿主における複製能は通常、複製開始点によって付与され、形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子がさらに組み入れられる。
【0066】
組換えDNAはまた、タンパク質の精製に有用であると考えられる任意の種類のタンパク質タグ配列を含み得る。タンパク質タグの例には、これらに限定されるわけではないが、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、またはGSTタグが含まれる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主との使用に適したクローニングベクターおよび発現ベクターは、Cloning Vectors: A Laboratory Manual, (Elsevier, New York, 1985)に見出すことができ、その関連する開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0067】
当業者に周知であるように、発現構築物は、宿主細胞に適した方法を用いて宿主細胞に導入する。核酸を宿主細胞に導入する様々な方法が当技術分野において周知であり、これにはエレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化リビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(ベクターが感染物質の場合)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0068】
適切な宿主細胞には、原核生物、酵母、哺乳動物細胞、または細菌細胞が含まれる。適切な細菌には、例えば大腸菌またはバシラス種といったグラム陰性菌またはグラム陽性菌が含まれる。好ましくはS. セレビシエ(S. cerevisiae)などのサッカロミセス種に由来する酵母もまた、ポリペプチドの産生に使用することができる。種々の哺乳動物または昆虫細胞培養系もまた、組換えタンパク質を発現させるために使用することができる。昆虫細胞において異種タンパク質を産生させるためのバキュロウイルス系については、Luckow and Summers, (Bio/Technology, 6:47, 1988)に概説されている。適切な哺乳動物宿主細胞株の例には、内皮細胞、COS-7サル腎臓細胞、CV-1、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、ヒト胎児腎臓細胞、HeLa、293、293T、およびBHK細胞株が含まれる。精製ポリペプチドは、適切な宿主/ベクター系を培養して組換えタンパク質を発現させることによって調製される。多くの用途のため、本明細書に開示するポリペプチドの多くの小さなサイズのものは、発現の好ましい方法として大腸菌で発現される。次いで、培地または細胞抽出物からタンパク質が精製される。
【0069】
本明細書に開示するタンパク質はまた、細胞翻訳系を用いて生成することもできる。そのような目的では、ポリペプチドをコードする核酸は、インビトロ転写が行われてmRNAが産生されるように、および利用する特定の無細胞系(哺乳動物もしくは酵母無細胞翻訳系などの真核生物、または細菌無細胞翻訳系などの原核生物)でmRNAの無細胞翻訳が行われるように、修飾されなければならない。
【0070】
VEGFR結合ポリペプチドはまた、化学合成によって作製することもできる(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed., 1984, The Pierce Chemical Co., Rockford, ILに記載されている方法による)。タンパク質の修飾もまた化学合成によって作製され得る。
【0071】
本発明のポリペプチドは、タンパク質化学の分野において周知であるタンパク質の単離/精製法によって精製され得る。非限定的な例には、抽出、再結晶、塩析(例えば、硫酸アンモニウムまたは硫酸ナトリウムを用いる)、遠心分離、透析、限外ろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲルろ過、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動、向流分配、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。精製後、ポリペプチドは、ろ過および透析を含むがこれらに限定されない当業者に周知の様々な方法のいずれかにより、異なる緩衝液に交換するおよび/または濃縮することができる。
【0072】
精製されたポリペプチドは、好ましくは少なくとも85%の純度、より好ましくは少なくとも95%の純度、最も好ましくは少なくとも98%の純度である。純度の正確な数値にかかわらず、ポリペプチドは薬学的産物として使用するのに十分純粋である。
【0073】
4. ポリペプチドの翻訳後修飾
特定の態様において、本発明の結合ポリペプチドはさらに翻訳後修飾を含み得る。例示的な翻訳後タンパク質修飾には、リン酸化、アセチル化、メチル化、ADP-リボシル化、ユビキチン化、グリコシル化、カルボニル化、sumo化、ビオチン化、またはポリペプチド側鎖もしくは疎水基の付加が含まれる。結果として、修飾された可溶性ポリペプチドは、脂質、多糖または単糖、およびリン酸などの非アミノ酸成分を含み得る。グリコシル化の好ましい形式は、ポリペプチドに1つまたは複数のシアル酸部分を結合するシアル化である。シアル酸部分は、溶解度および血中半減期を改善すると共に、タンパク質の免疫原性の可能性を減少させる。例えば、Raju et al. Biochemistry. 2001 Jul 31;40(30):8868-76を参照されたい。ポリペプチドの機能性に及ぼすそのような非アミノ酸成分の効果は、VEGFR-2またはVEGF機能におけるその拮抗作用の役割、例えば血管新生または腫瘍増殖に及ぼすその抑制効果について試験され得る。
【0074】
本発明の1つの特定の態様において、修飾型の対象可溶性ポリペプチドは、非タンパク質ポリマーに対する対象可溶性ポリペプチドの結合を含む。1つの特定の態様において、ポリマーは、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号;または第4,179,337号に記載されているようなポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンである。本発明の修飾ポリペプチドの例には、PEG化M5FLおよびPEG化CT-01が含まれる。
【0075】
PEGは、市販されている、または当技術分野で周知の方法に従ってエチレングリコールの開環重合によって調製され得る、周知の水溶性ポリマーである(Sandler and Karo, Polymer Synthesis, Academic Press, New York, Vol. 3, pages 138-161)。「PEG」という用語は、大きさまたはPEGの末端における修飾にかかわらず、任意のポリエチレングリコール分子を包含するために広く用いられ、式:
X-O(CH2CH2O)n-1CH2CH2OH(1)
(式中、nは20〜2300であり、XはHまたは末端修飾、例えばC1-4アルキルである)によって表され得る。1つの態様において、本発明のPEGは一方の末端がヒドロキシまたはメトキシで終結する、すなわちXはHまたはCH3(「メトキシPEG」)である。PEGは、結合反応に必要な;分子の化学合成によって生じる;または分子の部分に最適距離を保つためのスペーサーである化学基を含み得る。さらに、このようなPEGは、互いに結合した1つまたは複数のPEG側鎖からなってよい。2つ以上のPEG鎖を有するPEGは、分岐型(multiarmedまたはbranched)PEGと称される。分岐型PEGは、例えば、グリセロール、ペンタエリスリトール、およびエチレンオキシドを含む種々のポリオールにポリエチレンオキシドを付加することによって調製される。例えば、ペンタエリスリトールおよびエチレンオキシドから、4分岐型PEGを調製することができる。分岐型PEGは、例えば、EP-A第0 473 084号および米国特許第5,932,462号に記載されている。PEGの1つの形態には、リジンの1級アミノ基を介して連結された2つのPEG側鎖(PEG2)が含まれる(Monfardini, C., et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)。
【0076】
PEGは周知であるが、本発明者らの知る限り、PEG化10Fn3ポリペプチドがPEG化され、リガンド結合活性を保持し得ることが初めて実証される。好ましい態様において、PEG化10Fn3ポリペプチドは、特にN末端またはC末端のシステイン部分にPEGを結合させることによる、部位特異的PEG化によって作製される。したがって本開示は、少なくとも1つのループが標的結合に関与する、約80〜約150アミノ酸を有する10Fn3ドメイン;および共有結合されたPEG部分を含む、改善された薬物動態特性を有する標的結合10Fn3ポリペプチドであって、100 nM未満のKDで標的と結合し、哺乳動物において30 mL/hr/kg未満の排除速度を有する10Fn3ポリペプチドを提供する。PEG部分は、Cys残基への結合によるなど、部位特異的PEG化によって10Fn3ポリペプチドに結合することができ、Cys残基は、10Fn3ポリペプチドのN末端、またはN末端と最もN末端側のβストランドもしくはβ様ストランドの間、または10Fn3ポリペプチドのC末端、またはC末端と最もC末端側のβストランドもしくはβ様ストランドの間に位置し得る。Cys残基は、他の位置、特に標的結合に関与しないループのいずれかに位置してもよい。PEG部分はまた、アミンへの結合によるなど、他の化学反応によって結合することもできる。
【0077】
ペプチドまたはタンパク質へのPEG結合は一般に、PEGの活性化および活性化PEG中間体の標的タンパク質/ペプチドへ、またはその後活性化されて標的タンパク質/ペプチドに結合されるリンカーへの直接的結合を含む(Abuchowski, A. et al, J. Biol. Chem., 252, 3751 (1997)およびJ. Biol. Chem., 252, 3582 (1997)、Zalipsky, et al.、ならびにHarris et. al.: Poly(ethylene glycol) Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications; (J. M. Harris ed.) Plenum Press: New York, 1992; Chap.21 and 22を参照のこと)。PEG分子を含む結合ポリペプチドは複合化タンパク質の別名でも知られ、一方PEG分子の結合を欠くタンパク質は非複合化と称され得ることに留意されたい。
【0078】
VEGFR-2結合ポリペプチドに結合させるために、例えば、約1,000ダルトン(Da)〜100,000 Da(nは20〜2300)の様々な分子量型のPEGが選択され得る。PEGにおける反復単位の数「n」は、ダルトンで記載される分子量に関して概算される。活性化リンカー上のPEGの分子量を組み合わせたものが薬学的使用に適していることが好ましい。したがって、1つの態様において、PEG分子の分子量は100,000 Daを超えない。例えば、3つのPEG分子をリンカーに結合する場合、各PEG分子が12,000 Da(nはそれぞれ約270)という同じ分子量を有するならば、リンカー上のPEGの全分子量は約36,000 Da(n全体は約820)である。またリンカーに結合するPEGの分子量は異なってもよく、例えばリンカー上の3つの分子うち、2つのPEG分子はそれぞれ5,000 Da(nはそれぞれ約110)であってよく、1つのPEG分子は12,000 Da(nは約270)であってよい。
【0079】
本発明の特定の態様において、VEGFR-2結合ポリペプチドは、式:-CO-(CH2)x-(OCH2CH2)m-ORの1つのポリ(エチレングリコール)基と共有結合され、ポリ(エチレングリコール)基の-CO(すなわち、カルボニル)が結合ポリペプチドのアミノ基の1つとアミド結合を形成する:Rは低級アルキルであり;xは2または3であり;mは約450〜約950であり;nおよびmは、複合体から結合ポリペプチドを引いた分子量が約10〜40 kDaになるように選択される。1つの態様では、結合ポリペプチドのリジンのε-アミノ基が利用可能な(遊離)アミノ基である。
【0080】
上記の複合体は、式(II):P-NHCO-(CH2)x-(OCH2CH2)m-OR(II)(式中、Pは本明細書に記載する結合ポリペプチドの基であり(すなわち、式(II)に示されるカルボニルとアミド結合を形成する1つまたは複数のアミノ基を含まない);Rは低級アルキルであり;xは2または3であり;mは約450〜約950であり、複合体から結合ポリペプチドを引いた分子量が約10〜40 kDaになるように選択される)によってより具体的に示すことができる。本明細書において、「m」の所与の範囲は位置づけの意味を有する。「m」の範囲はいずれの場合にも、PEG基の分子量によって正確に決定される。
【0081】
当業者は、例えば、PEG化結合ポリペプチドを治療にどのように使用するか、所望の投与量、循環時間、タンパク質分解に対する耐性、免疫原性、および他の考慮事項に基づいて、PEGの適切な分子量を選択することができる。PEG、およびタンパク質の特性を増強させるためのその使用に関する考察については、N. V. Katre, Advanced Drug Delivery Reviews 10:91-114 (1993)を参照されたい。
【0082】
本発明の1つの態様においては、PEG分子は活性化されて、結合ポリペプチド上のアミノ基、リジンなどと反応し得る(Bencham C. O. et al., Anal. Biochem. , 131, 25 (1983);Veronese, F. M. et al., Appl. Biochem., 11, 141 (1985).;Zalipsky, S. et al., Polymeric Drugs and Drug Delivery Systems, adrs 9-110 ACS Symposium Series 469 (1999);Zalipsky, S. et al., Europ. Polym. J., 19, 1177-1183 (1983);Delgado, C. et al., Biotechnology and Applied Biochemistry, 12, 119-128 (1990))。
【0083】
1つの特定の態様では、PEG-結合ポリペプチド複合体を形成するために、PEGの炭酸エステルが用いられる。PEGとの反応においてN,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)が用いられて、活性化混合PEG-スクシンイミジルカーボネートが形成され得り、次にこれをリンカーの求核基または結合ポリペプチドのアミノ基と反応させることができる(米国特許第5,281,698号および米国特許第5,932,462号を参照のこと)。同様の種類の反応において、1,1'-(ジベンゾトリアゾリル)カーボネートおよびジ-(2-ピリジル)カーボネートをPEGと反応させて、それぞれPEG-ベンゾトリアゾリルおよびPEG-ピリジル混合カーボネート(米国特許第5,382,657号)を形成することができる。
【0084】
10Fn3ポリペプチドのPEG化は、最先端の方法に従って、例えば結合ポリペプチドと求電子的に活性のあるPEG(供給業者;Shearwater Corp.、米国、www.shearwatercorp.com)との反応によって行うことができる。本発明の好ましいPEG試薬は、例えば、プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(PEG-SPA)、ブタン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(PEG-SBA)、またはmPEG2-NHSなどの分岐型N-ヒドロキシスクシンイミドである(Monfardini, C., et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)。このような方法は、結合ポリペプチドリジンのε-アミノ基または結合ポリペプチドのN末端アミノ基におけるPEG化に用いられ得る。
【0085】
別の態様において、PEG分子は、結合ポリペプチド上のスルフヒドリル基に結合することができる(Sartore, L., et al., Appl. Biochem. Biotechnol., 27, 45 (1991);Morpurgo et al., Biocon. Chem., 7, 363-368 (1996);Goodson et al., Bio/Technology (1990) 8, 343;米国特許第5,766,897号)。米国特許第6,610,281号および第5,766,897号は、スルフヒドリル基に結合できる例示的な反応性PEG種について記載している。
【0086】
PEG分子を結合ポリペプチド上のシステイン残基に結合するいくつかの態様では、システイン残基は結合ポリペプチドに固有のものであり、他の態様においては、1つまたは複数のシステイン残基が結合ポリペプチド内に挿入される。システイン残基を作製するために、結合ポリペプチドコード配列内に変異を導入することができる。これは、例えば、1つまたは複数のアミノ酸残基をシステインに変異させることによって達成され得る。システイン残基に変異するための好ましいアミノ酸には、セリン、スレオニン、アラニン、および他の親水性残基が含まれる。好ましくは、システインに変異させる残基は表面露出残基である。一次配列またはタンパク質に基づいて残基の表面露出度を予測するアルゴリズムは、当技術分野において周知である。または、結合ポリペプチドを設計し進化させる基礎としたフレームワークの結晶構造が解析されているならば(Himanen et al., Nature . (2001) 20-27;414(6866):933-8)、結合ポリペプチドのアミノ酸配列を比較することにより表面残基を予測することができ、ひいては表面露出残基を同定することができる。1つの態様において、システイン残基は、結合ポリペプチドのN末端および/もしくはC末端に、もしくはその近傍に、またはループ領域内に導入される。
【0087】
いくつかの態様において、PEG化結合ポリペプチドは、N末端アミノ酸のαアミノ基に共有結合されたPEGを含む。部位特異的N末端還元的アミノ化について
は、Pepinsky et al., (2001) JPET, 297,1059、および米国特許第5,824,784に記載されている。他の利用可能な求核アミノ基を利用するタンパク質の還元的アミノ化へのPEG-アルデヒドの使用については、米国特許第4,002,531号、Wieder et al., (1979) J. Biol. Chem. 254,12579、およびChamow et al., (1994) Bioconjugate Chem. 5, 133に記載されている。
【0088】
別の態様において、PEG化結合ポリペプチドはリンカーに共有結合した1つまたは複数のPEG分子を含み、このリンカーは次に結合ポリペプチドのN末端のアミノ残基のαアミノ基に結合されている。そのようなアプローチは、米国特許公報第2002/0044921号およびWO第94/01451号に記載されている。
【0089】
1つの態様において、結合ポリペプチドはC末端でPEG化される。特定の態様において、タンパク質は、C末端アジド-メチオニンを導入し、続いてシュタウディンガー反応によりメチル-PEG-トリアリルホスフィン化合物を結合することによって、C末端でPEG化される。このC末端結合法は、Cazalis et al., C-Terminal Site-Specific PEGylation of a Truncated Thrombomodulin Mutant with Retention of Full Bioactivity, Bioconjug Chem. 2004;15(5)1005-1009に記載されている。
【0090】
結合ポリペプチドのモノPEG化はまた、WO第94/01451号に記載されている一般的な方法に従って生成することもできる。WO第94/01451号は、修飾された末端アミノ酸α-炭素反応基を有する組換えポリペプチドを調製する方法について記載している。本方法の工程は、組換えポリペプチドを形成する段階、およびそのN末端α-アミンおよびC末端α-カルボキシルを1つまたは複数の生物学的に付加された保護基で保護する段階を含む。次いで、ポリペプチドを化学保護剤と反応させて、反応性側鎖基を選択的に保護し得り、それによって側鎖基が修飾されるのを防ぐ。続いて、ポリペプチドを生物学的保護基に特異的な切断試薬で切断し、未保護の末端アミノ酸α-炭素反応基を形成する。未保護の末端アミノ酸α-炭素反応基を、化学修飾剤で修飾する。次に、側鎖が保護された末端修飾単一コピーポリペプチドの側鎖基を脱保護して、末端が修飾された組換え単一コピーポリペプチドを形成する。本方法における工程の数および順序は、ポリペプチドのN末端および/またはC末端アミノ酸の選択的修飾を達成するために変更することができる。
【0091】
結合反応における結合ポリペプチドと活性化PEGの比率は、約1:0.5〜1:50、約1:1〜1:30、約1:5〜1:15であってよい。本方法においては、結合ポリペプチドに対するPEGの共有結合的付加を触媒するため、様々な水溶性緩衝液を用いることができる。1つの態様において、使用する緩衝液のpHは約7.0〜9.0である。別の態様では、pHはわずかに塩基性範囲にあり、例えば約7.5〜8.5である。例えばリン酸緩衝液など、中性pHに近いpKaを有する緩衝液も使用することができる。
【0092】
サイズ排除(例えば、ゲルろ過)およびイオン交換クロマトグラフィーなど、
当技術分野において周知である従来の分離および精製技法を用いて、PEG化結合ポリペプチドを精製することができる。SDS-PAGEにより生成物を分離することも可能である。分離され得る生成物には、モノ、ジ、トリ、ポリ、および非PEG化結合ポリペプチド、ならびに遊離のPEGが含まれる。モノPEG複合体の割合は、組成物中のモノPEGの割合を増加させるために、溶出ピーク周囲の広い画分をプールすることにより調節することができる。約90%のモノPEG複合体が、収率および活性の良好なバランスを示す。例えば少なくとも92%、または少なくとも96%の複合体がモノPEG種である組成物が望ましいと考えられる。本発明の1つの態様において、モノPEG複合体の割合は90%〜96%である。
【0093】
1つの態様において、本発明のPEG化結合ポリペプチドは、1つ、2つ、またはそれ以上のPEG部分を含む。1つの態様において、PEG部分は、タンパク質の表面上にある、および/または標的リガンドと接触する表面から離れたアミノ酸残基に結合される。1つの態様において、PEG結合ポリペプチド中のPEGの組み合わせた分子量または全分子量は約3,000 Da〜60,000 Daであり、任意に約10,000 Da〜36,000 Daである。1つの態様において、PEG化結合ポリペプチド中のPEGは実質的に線状の直鎖PEGである。
【0094】
本発明の1つの態様において、PEG化結合ポリペプチド中のPEGは、ヒドロキシルアミンアッセイ(例えば、室温における8〜16時間の450 mMヒドロキシルアミン(pH 6.5))によりPEG化アミノ酸残基から加水分解されず、したがって安定である。1つの態様においては、組成物の80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%を超える割合が、安定なモノPEG結合ポリペプチドである。
【0095】
別の態様において、本発明のPEG化結合ポリペプチドは、好ましくは、非修飾タンパク質に付随する生物活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、または100%を保持する。1つの態様において、生物活性とは、KD、kon、またはkoffによって評価される、VEGFR-2に結合する能力を指す。1つの特定の態様において、PEG化結合ポリペプチドタンパク質は、非PEG化結合ポリペプチドと比較してVEGFRへの結合の増加を示す。
【0096】
PEG修飾ポリペプチドの血清排除速度は、非修飾結合ポリペプチドの排除速度と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはさらには90%減少し得る。PEG修飾ポリペプチドは、非修飾タンパク質の半減期(t1/2)と比較して延長された半減期を有し得る。PEG結合ポリペプチドの半減期は、非修飾結合ポリペプチドの半減期と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、400%、もしくは500%、またはさらには1000%延長され得る。いくつかの態様において、タンパク質半減期は、緩衝生理食塩溶液中または血清中など、インビトロで決定される。他の態様においては、タンパク質半減期は、動物の血清または他の体液中でのタンパク質の半減期のようなインビボ半減期である。
【0097】
5. 治療用製剤および投与方法
本発明は、VEGF生物活性の阻害に応答する病態を治療する、または前病態を予防する方法を扱う。好ましい例は、不適切な血管新生によって特徴づけられる病態である。投与の方法および投与量は、特定のポリペプチドの種類および治療する特定の病態に応じて異なるが、当業者によって容易に決定され得る。一般に、規制機関は、治療として用いられるタンパク質試薬が、許容される程度に低レベルの発熱物質しか含まないように製剤化されることを義務付けている。したがって、治療用製剤は一般に、実質的に発熱物質を含まないか、または適切な規制機関(例えば、FDA)によって決定された許容されるレベル未満の発熱物質しか含まない点で、他の製剤とは区別される。
【0098】
本発明の治療化合物は、薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤と共に単位剤形として投与することができる。投与は、非限定的な例として、非経口(例えば、静脈内、皮下)、経口、または局所投与であってよい。さらに、裸のDNA送達、組換え遺伝子およびベクター、患者の細胞のエクスビボ操作を含む細胞に基づく送達などのような、本発明のポリペプチドをコードする核酸を使用する任意の遺伝子治療法を用いることも可能である。
【0099】
化合物は、経口投与に関しては、丸剤、錠剤、カプセル剤、液体、または徐放錠;あるいは静脈内、皮下、または非経口投与に関しては、液体;局所投与に関しては、ゲル、ローション剤、軟膏剤、クリーム、またはポリマーもしくは他の徐放賦形剤の形態であってよい。
【0100】
当技術分野で周知の製剤化方法は、例えば「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」(20th ed., ed. A.R. Gennaro AR., 2000, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA)に見出される。非経口投与用製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水、生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物性油、または水素化ナフタレンを含み得る。化合物の放出を調節するには、生体適合性があり生物分解性のあるラクチド重合体、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体を用いることができる。ナノ粒子製剤(例えば、生分解性ナノ粒子、固体脂質ナノ粒子、リポソーム)を用いて、化合物の体内分布を調節することも可能である。有用と考えられる非経口送達系には、他に、エチレン-ビニルアセテート共重合体粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入系、およびリポソームが含まれる。製剤中の化合物の濃度は、投与する薬剤の投与量および投与経路を含む多くの要因によって異なる。
【0101】
ポリペプチドは任意に、製薬業界で通常用いられる、薬学的に許容される塩(非毒性酸付加塩など)または金属錯体として投与してもよい。酸付加塩の例には、酢酸、乳酸、パモン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、またはトリフルオロ酢酸などの有機酸;タンニン酸、カルボキシメチルセルロースなどのポリマー酸;および塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸が含まれる。金属複合体は、亜鉛、鉄などを含む。1つの態様において、ポリペプチドは、熱安定性を高めるために酢酸ナトリウムの存在下で製剤化される。
【0102】
経口用製剤には、薬学的に許容される非毒性賦形剤との混合物中に有効成分を含む錠剤が含まれる。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤または増量剤(例えば、スクロースおよびソルビトール)、潤滑剤、流動促進剤、および付着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油、またはタルク)であってよい。
【0103】
経口用製剤はまた、チュアブル錠、または有効成分が不活性固体希釈剤と混合されている硬ゼラチンカプセル、または有効成分が水もしくは油媒体と混合されている軟ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
【0104】
治療上有効な用量とは、投与されるものに対して治療効果をもたらす用量を指す。正確な用量は治療する疾患に依存することになり、周知の技法を用いて当業者によって確定され得る。一般的に、ポリペプチドは、1日当たり約0.01μg/kg〜約50 mg/kg、好ましくは1日当たり約0.01 mg/kg〜約30 mg/kg、最も好ましくは1日当たり約0.1 mg/kg〜約20 mg/kg投与される。ポリペプチドは毎日投与することもできるし(例えば、1日に1回、2回、3回、または4回)、より低い頻度で(例えば1日おきに1回、週または月に1回または2回)投与することもできる。さらに、当技術分野で周知であるように、年齢、ならびに体重、一般的な健康状態、性別、食習慣、投与時間、薬物間相互作用、および疾患の重症度に対する調節が必要であると考えられ、これは当業者による日常的な実験により確定されることになる。
【0105】
6. 例示的な使用
本明細書に記載するVEGFR-2結合ポリペプチドおよびそれらの関連変種は、多くの治療用途および診断用途に有用である。これらには、VEGFR-2への結合に関して競合することによるかまたはVEGFR-2への結合を遮断することによるVEGFの生物活性の阻害、および細胞、好ましくはVEGFR-2を発現している細胞への毒性部分または画像化部分の送達が含まれる。
【0106】
これらの分子の大きさが小さいことおよび構造が安定であることは、薬剤の製造、迅速な排除が望ましい特定用途における体内からの迅速な排除、またはそのような特徴を有する分子を用いることで適合し得るもしくは改善される新規送達系への製剤化に関して特に有用であり得る。
【0107】
本発明のポリペプチドは、VEGF生物活性の阻害剤としての有効性に基づき、以下を含むがそれらに限定されない、不適切な血管新生に関連した多くの病態に対して有効である:自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患、または乾癬);心疾患(例えば、アテローム性動脈硬化または血管再狭窄);網膜症(例えば、増殖性網膜症、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症、または血管新生緑内障)、腎疾患(例えば、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症候群;移植片拒絶;炎症性腎疾患;糸球体腎炎;メサンギウム増殖性糸球体腎炎;溶血性尿毒症症候群;および高血圧性腎硬化);血管芽細胞腫;血管腫;甲状腺過形成;組織移植;慢性炎症;メーグス症候群;心嚢液貯留;胸水;自己免疫疾患;糖尿病;子宮内膜症、慢性喘息、望ましくない線維症(特に肝線維症)、および癌、ならびに胸水および腹水などの癌に起因する合併症。好ましくは、本発明のVEGFR結合ポリペプチドは、過剰増殖性疾患または癌および癌の転移拡散の予防処置に用いられ得る。癌の非限定的な例には、膀胱癌、血液癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、軟骨癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、リンパ節癌、神経組織癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、骨格筋癌、皮膚癌、脊髄癌、脾臓癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、気管癌、泌尿生殖器癌、尿管癌、尿道癌、子宮癌、または膣癌が含まれる。治療可能なさらなる病態は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,524,583号に見出すことができる。VEGFR-2結合ポリペプチドの使用に関して記載している他の参照には、McLeod DS etal., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002 Feb;43(2):474-82;Watanabe et al. Exp Dermatol. 2004 Nov;13(11):671-81;Yoshiji H et al., Gut. 2003 Sep;52(9):1347-54;Verheul et al., Oncologist. 2000;5 Suppl 1:45-50;Boldicke et al., Stem Cells. 2001;19(1):24-36が含まれる。
【0108】
本明細書に記載するように、血管新生関連疾患には、例えば固形腫瘍、白血病などの血液由来腫瘍、および腫瘍転移を含む血管新生依存性癌;良性腫瘍、例えば血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫;免疫性炎症および非免疫性炎症などの炎症性疾患;慢性関節リウマチおよび乾癬;眼血管新生疾患、例えば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシス;オスラーウェバー症候群;心筋血管新生;プラーク新血管新生;毛細血管拡張症;血友病性関節症;血管線維腫;ならびに創傷肉芽形成および創傷治癒;毛細血管拡張症、乾癬、強皮症、化膿性肉芽腫、冠動脈側枝、虚血肢血管新生、角膜疾患、ルベオーシス、関節炎、糖尿病性新血管新生、骨折、脈管形成、造血が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0109】
VEGFR-2結合ポリペプチドは、単独で、または化学療法、放射線療法、免疫療法、外科的介入、またはこれらの任意の組み合わせなどの1つまたは複数のさらなる治療と組み合わせて投与することができる。長期療法は、上記の他の治療戦略における補助療法と同様に可能である。
【0110】
そのような方法の特定の態様において、1つまたは複数のポリペプチド治療薬は、共に(同時に)または異なった時間に(順次に)投与することができる。さらに、ポリペプチド治療薬は、癌を治療するまたは血管新生を抑制する別の種類の化合物と共に投与することができる。
【0111】
特定の態様において、本発明の本治療薬は単独で使用することができる。または、本治療薬は、増殖性疾患(例えば、腫瘍)の治療または予防を対象とした他の従来の抗癌治療アプローチと組み合わせて使用することができる。例えば、そのような方法は、予防的癌防止、手術後の癌の再発および転移の予防において、ならびに他の従来の癌治療の補助剤として使用することができる。本発明は、従来の癌治療(例えば、化学療法、放射線療法、光線療法、免疫療法、および手術)の有効性が、本ポリペプチド治療薬の使用により増強され得ることを認識する。
【0112】
様々な従来化合物が、抗腫瘍活性を有することが示されている。これらの化合物は、固形腫瘍を縮小させる、転移およびさらなる増殖を妨げる、または白血病もしくは骨髄悪性腫瘍における悪性腫瘍の数を減少させるために、化学療法における薬学的薬剤として使用されている。化学療法は様々な種類の悪性腫瘍の治療に有効であるが、多くの抗腫瘍化合物は望ましくない副作用を誘発する。2つまたはそれ以上の異なる治療を組み合わせた場合、治療は相乗的に作用して、それぞれの治療の投与量を減じることが可能となり、それによってそれぞれの化合物を高い投与量で使用した場合に起こる有害な副作用を低減できることが示されている。他の例においては、ある治療に抵抗性である悪性腫瘍は、2つまたはそれ以上の異なる治療の組み合わせに反応する場合がある。
【0113】
本発明のポリペプチド治療薬を別の従来の抗腫瘍薬と組み合わせて同時にまたは順次に投与する場合、そのような治療薬は、抗腫瘍薬の治療効果を増強する、またはそのような抗腫瘍薬に対する細胞の抵抗性を克服することが判明する場合がある。これによって抗腫瘍薬の投与量を減じることができ、ひいては望ましくない副作用が軽減されるか、または耐性細胞において抗腫瘍薬の有効性が回復する。
【0114】
併用抗腫瘍療法に用いられ得る薬学的化合物には、単に例証するために過ぎないが以下のものが含まれる:アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンポテシン(campothecin)、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン(ironotecan)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビン。
【0115】
特定の化学療法抗腫瘍化合物は、その作用機序によって例えば以下の群に分類され得る:代謝拮抗剤/抗癌剤、例えばピリミジン類似体(5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、およびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸拮抗剤、ならびに関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、および2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));天然物を含む抗増殖剤/抗分裂剤、例えばビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、微小管破壊剤(例えば、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポシロン、およびナベルビン)、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンポテシン、カルボプラチン、クロランブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、サイトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミド、およびエトポシド(VP16));抗生物質、例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシン;酵素(L-アスパラギンを全身的に代謝し、自身のアスパラギンを合成する能力をもたない細胞を除去するL-アスパラギナーゼ);抗血小板薬;抗増殖/抗分裂アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロランブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、スルホン酸アルキル-ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン(trazenes)-ダカルバジン(DTIC);抗増殖/抗分裂代謝拮抗剤、例えば葉酸類似体(メトトレキセート);白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)、およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩、および他のトロンビン阻害剤);線維素溶解薬(例えば組織プラスミノゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走薬(antimigratory agent);抗分泌薬(ブレベルジン(breveldin));免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP-470、ゲニステイン)、および増殖因子阻害剤(例えば、VEGF阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);、アンジオテンシン受容体遮断薬;酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)アムサクリン、カンポテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド(eniposide)、エピルビシン、エトポシド、イダルビシンおよびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン);増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能障害誘導剤およびカスパーゼ活性化因子;ならびにクロマチン破壊剤。
【0116】
特定の態様において、併用抗血管新生療法に用いられ得る薬学的化合物には、以下のものが含まれる:(1) bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)などの「血管新生分子」の放出阻害剤;(2) 抗βbFGF抗体などの血管新生分子の中和剤;および(3) コラゲナーゼ阻害剤、基底膜代謝回転阻害剤、血管新生抑制ステロイド、真菌由来血管新生阻害剤、血小板因子4、トロンボスポンジン、D-ペニシラミンおよび金チオマレートなどのリウマチ薬、ビタミンD3類似体、α-インターフェロンなどを含む、血管新生刺激に応答する内皮細胞の阻害剤。血管新生の提案されているさらなる阻害剤については、Blood et al., Bioch. Biophys. Acta., 1032:89-118 (1990)、Moses et al., Science, 248:1408-1410 (1990)、Ingber et al., Lab. Invest., 59:44-51 (1988)、ならびに米国特許第5,092,885号、第5,112,946号、第5,192,744号、第5,202,352号、および第6573256を参照されたい。さらに、血管新生を抑制するために使用され得る多種多様な化合物が存在し、例えば、エンドスタチンタンパク質または誘導体、アンジオスタチンのリジン結合断片、メラニンまたはメラニン促進化合物、プラスミノーゲン断片(例えば、プラスミノーゲンのクリングル1〜3)、トロポニンサブユニット、ビトロネクチンαVβ3の拮抗剤、サポシンBに由来するペプチド、抗生物質または類似体(例えば、テトラサイクリンまたはネオマイシン)、ジエノゲスト含有組成物、ペプチドに結合されたMetAP-2抑制コアを含む化合物、化合物EM-138、カルコンおよびその類似体、ならびにnaaladアーゼ阻害剤がある。例えば、米国特許第6,395,718号、第6,62,075号、第6,465,431号、第6,475,784号、第6,482,802号、第6,482,810号、第6,500,431号、第6,500,924号、第6,518,298号、第6,521,439号、第6,525,019号、第6,538,103号、第6,544,758号、第6,544,947号、第6,548,477号、第6,559,126号、および6,569,845号を参照されたい。
【0117】
併用療法の性質に応じて、本発明のポリペプチド治療薬の投与は、他の療法が施されている間および/またはその後に続けることができる。ポリペプチド治療薬の投与は、単回投与または複数回投与で行われ得る。場合によっては、ポリペプチド治療薬の投与は従来の療法の少なくとも数日前に開始され、他の例では、投与は従来の療法の直前またはそれと同時に開始される。
【0118】
本明細書に記載するVEGFR-2結合タンパク質はまた、検出可能に標識して、画像化用途または診断用途の目的で、VEGFR-2を発現している細胞と接触させるために使用することができる。診断目的では、本発明のポリペプチドは好ましくは固体支持体上に固定化される。好ましい固体支持体には、カラム(例えば、アガロースに基づくアフィニティーカラムなどのアフィニティーカラム)、マイクロチップ、またはビーズが含まれる。
【0119】
診断用途の1つの態様では、不適切な血管新生によって特徴づけられる病態を有する疑いのある患者に由来する、血清または組織生検試料などの生物試料を、VEGFR-2のレベルを検出するために本発明の検出可能に標識されたポリペプチドと接触させる。次いで、検出されたVEGFR-2のレベルを、同様に標識ポリペプチドと接触させた正常試料において検出されたVEGFR-2のレベルと比較する。VEGFR-2のレベルの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の増加は、不適切な血管新生によって特徴づけられる病態の診断上の指標と見なされ得る。
【0120】
特定の態様において、本発明のVEGFR-2結合ポリペプチドは、検出され得る標識にさらに結合される(例えば、標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、または酵素補助因子であってよい)。活性部分は以下のような放射性物質であってよい:鉄キレートなどの放射性重金属、ガドリニウムまたはマンガンの放射性キレート、酸素、窒素、鉄、炭素、またはガリウムの陽電子放射体、43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、68Ga、123I、125I、131I、132I、または99Tc。そのような部分に結合された結合剤は画像化剤として使用することができ、ヒトなどの哺乳動物における診断上の使用のために有効な量で投与され、次いで画像化剤の局在性および蓄積が検出される。画像化剤の局在性および蓄積は、ラジオシンチグラフィー、核磁気共鳴画像化法、コンピュータ断層撮影法、または陽電子放出断層撮影法によって検出され得る。VEGFRを対象にしたVEGFR-2結合ポリペプチドを使用する免疫シンチグラフィーを用いて、癌および脈管構造を検出および/または診断することができる。例えば、99テクネジウム、111インジウム、または125ヨウ素で標識したVEGFR-2マーカーに対する結合ポリペプチドのいずれかは、そのような画像化に効率的に使用することができる。当業者には明白であるように、投与する放射性同位元素の量は放射性同位元素に依存する。当業者は、活性部分として使用する所与の放射性核種の比放射能およびエネルギーに基づいて、投与すべき画像化剤の量を容易に製剤化することができる。典型的に、画像化剤の用量当たり0.1〜100ミリキュリー、好ましくは1〜10ミリキュリー、最も頻繁には2〜5ミリキュリーが投与される。したがって、放射性部分に結合された標的化部分を含む、画像化剤として有用である本発明の組成物は、0.1〜100ミリキュリー、いくつかの態様において好ましくは1〜10ミリキュリー、いくつかの態様において好ましくは2〜5ミリキュリー、いくつかの態様においてより好ましくは1〜5ミリキュリーを含む。
【0121】
本発明のVEGFR-2結合ポリペプチドはまた、VEGFR-2を発現している細胞または組織にさらなる治療薬(これらに限定されるわけではないが、薬剤化合物、化学療法化合物、および放射線治療化合物)を送達するために使用することができる。一例では、VEGFR-2を発現している腫瘍細胞または組織に化学療法薬を標的化送達するために、VEGFR-2結合ポリペプチドを化学療法薬と融合させる。
【0122】
本発明のVEGFR-2結合ポリペプチドは、研究、診断、および治療用途を含む様々な用途に有用である。例えば、本ポリペプチドを用いて、受容体またはその一部を単離および/または精製すること、ならびに受容体の構造(例えば、高次構造)および機能を研究することができる。
【0123】
特定の局面では、本発明の種々の結合ポリペプチドを使用し、例えば内皮細胞(例えば、静脈内皮細胞)において、またはVEGFR-2遺伝子をトランスフェクションした細胞において、VEGFR-2の発現を検出または測定することができる。したがって、本ポリペプチドは、診断または研究目的での、細胞選別および画像化(例えば、フローサイトメトリーおよび蛍光活性化細胞選別)などの用途において有用性を有する。
【0124】
特定の態様において、結合ポリペプチドまたはその断片は、診断目的のために標識されても標識されなくてもよい。典型的に診断アッセイは、VEGFR-2に対する結合ポリペプチドの結合によって生じる複合体の形成の検出を伴う。結合ポリペプチドまたは断片は、抗体と同様に直接標識することができる。これらに限定されないが、放射性核種、蛍光剤、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害剤、およびリガンド(例えば、ビオチン、ハプテン)を含む種々の標識を使用することができる。多くの適切な免疫測定法が当業者に周知である(例えば、米国特許第3,817,827号;第3,850,752号;第3,901,654号;および第4,098,876号を参照のこと)。非標識の場合には、結合ポリペプチドは凝集アッセイなどのアッセイに使用することができる。非標識結合ポリペプチドはまた、結合ポリペプチドと反応する標識抗体または他の適切な試薬(例えば、標識プロテインA)などの、結合ポリペプチドを検出するために使用し得る別の(1つまたは複数の)適切な試薬と組み合わせて使用することも可能である。
【0125】
1つの態様において、本発明の結合ポリペプチドは酵素免疫法において使用することができ、その場合、本ポリペプチドは酵素に結合させておく。VEGFR-2タンパク質を含む生物試料を本結合ポリペプチドと混合すると、結合ポリペプチドとVEGFR-2タンパク質との間に結合が生じる。1つの態様において、VEGFRタンパク質を発現している細胞(例えば、内皮細胞)を含む試料を本抗体と混合すると、結合ポリペプチドと、結合ポリペプチドによって認識されるVEGFR-2タンパク質を有する細胞との間に結合が生じる。これらの結合した細胞を非結合試薬から分離し得り、例えば、酵素が作用した場合に色または他の検出可能な変化を生じる酵素の基質と試料を接触させることによって、細胞に特異的に結合した結合ポリペプチド-酵素複合体の存在を検出することができる。別の態様では、本結合ポリペプチドは非標識であってよく、本結合ポリペプチドを認識する二次標識ポリペプチド(例えば、抗体)を添加することができる。
【0126】
特定の局面において、生物試料中のVEGFR-2タンパク質の存在の検出に使用するためのキットもまた調製することができる。そのようなキットは、VEGFR-2タンパク質またはそのような受容体の一部に結合するVEGFR-2結合ポリペプチド、および結合ポリペプチドと受容体タンパク質またはその一部との複合体の存在を検出するのに適した1つまたは複数の補助試薬を含む。本発明のポリペプチド組成物は、単独で、または他のエピトープに特異的なさらなる抗体と組み合わせて、凍結乾燥形態で提供することができる。結合ポリペプチドおよび/または抗体は標識されていてもされていなくてもよく、補助成分(例えば、Tris、リン酸、および炭酸などの緩衝液、安定剤、賦形剤、殺生物剤、および/または例えばウシ血清アルブミンなどの不活性タンパク質)と共にキット内に含めることができる。例えば、結合ポリペプチドおよび/または抗体は、補助成分との凍結乾燥混合物として提供されてもよいし、または補助成分は使用者が組み合わせるように個別に提供されてもよい。一般にこれらの補助物質は、活性結合ポリペプチドまたは抗体の量に基づいて約5重量%未満存在し、通常はポリペプチドまたは抗体濃度に基づいて全量で少なくとも約0.001重量%存在する。結合ポリペプチドに結合し得る二次抗体を使用する場合には、そのような抗体を、例えば別のバイアルまたは容器に入れてキット中に提供することができる。二次抗体は存在する場合、典型的に標識されており、上記の抗体製剤と同様の方法で製剤化することができる。
【0127】
同様に本発明は、VEGFR-2の発現を検出および/または定量化する方法であって、細胞またはその画分(例えば、膜画分)を含む組成物を、VEGFR-2またはこの受容体の一部に結合する結合ポリペプチドとこれらへの結合に適した条件下で接触させ、結合をモニターする方法に関する。結合ポリペプチドとVEGFR-2またはその一部との間で複合体が形成されたことを示す結合ポリペプチドの検出は、受容体の存在を示す。ポリペプチドの細胞への結合は、実施例に記載する方法などの標準的な方法によって決定することができる。この方法を用いて、個体の細胞におけるVEGFR-2発現を検出することができる。任意に、内皮細胞の表面上でのVEGFR-2の定量的発現を、例えばフローサイトメトリーによって評価することができ、染色強度を疾患の感受性、進行、またはリスクと相関づけることができる。
【0128】
本発明はまた、特定の疾患に対する哺乳動物の感受性を検出する方法に関する。例えば、本方法を用いて、細胞上に存在するVEGFR-2の量および/または哺乳動物におけるVEGFR-2陽性細胞の数に基づいて進行する疾患に対する哺乳動物の感受性を検出することができる。1つの態様において、本発明は、腫瘍に対する哺乳動物の感受性を検出する方法に関する。この態様では、正常個体においてVEGFR-2を発現する細胞を含む被験試料をVEGFR-2またはその一部と結合する結合ポリペプチドと、それらへの結合に適した条件下で接触させる。腫瘍に対する個体の感受性を示す結合および/または結合の量を検出するが、受容体が高レベルであるほど腫瘍に対する個体の感受性が高い。
【0129】
実施例:
以下の実施例は本発明を説明する目的で提供するものであり、限定するものと解釈されるべきではない。
【0130】
実施例1. KDR結合分子の最初の同定
ヒトフィブロネクチンの10番目のタイプ3ドメインの骨格に基づき、23〜29位、52〜55位、および77〜86位(アミノ酸番号はSEQ ID NO:5を参照にする)の3つの領域をランダム化して、約1013個のRNA-タンパク質融合変種のライブラリーを構築した(3ループライブラリー;Xu et al., Chemistry & Biology 9:933-942, 2002)。23〜29位および77〜86位(2ループライブラリー)または77〜86位(1ループライブラリー)でのみランダム化した領域を含む同様のライブラリーを構築した。これらの3つのライブラリーの混合物を、ヒトVEGFR-2の細胞外ドメイン(KDR、ヒトIgG1 Fcに融合した細胞外ドメイン、残基1〜764)に対するインビトロ選択に使用した。この用途のために、ループのアミノ酸の位置を残基23〜30(BCループ)、52〜56(DEループ)、および77〜87(FGループ)と定義する。6ラウンドの選択の後、DNA配列決定により標的結合集団を解析したが、これらはいくつかの複製物が存在するが多様であることが判明した。15個の独立したクローンによってコードされるタンパク質をKDRに対する結合に関してスクリーニングし(図1A)、続いて最も良好な結合剤をVEGFの存在下における標的結合の阻害について解析した(図1B)。KDR-VEGF結合を阻害する複数のクローンが同定され、これらのクローンが天然リガンド(VEGF)結合部位においてまたはその近傍でKDRと結合することが示唆された。2つの結合分子(VR28およびVR12)がVEGF-KDR相互作用を直接阻害する能力を、固定化VEGFおよびKDR-Fcを含む移動相を用いて、選択した結合タンパク質を含めてまたは含めずに、BIAcoreアッセイで評価した。VR28、それよりも低い程度でVR12は用量依存的様式でVEGFへのKDR結合を阻害したが、非競合クローン(VR17)は阻害しなかった(図1C)。最後に、精製組換えKDRに対する結合に加えて、VR28はまたKDR発現組換えCHO細胞に結合するが、対照CHO細胞には結合しないようであった(図1D)。
【0131】
VR28クローンの結合ループの配列を表4の1行目に示す。
【0132】
VR28は配列を決定した結合集団の中で最も豊富なクローンではなかったが(配列を決定した28クローンのうち1コピー)、KDRに対するその結合親和性は、放射性平衡結合アッセイ(図3および表5)およびBIAcoreアッセイ(表7)で決定された解離定数11〜13 nMを有して、この結合集団の試験したクローンの中で最良であった。分子の残りの骨格部分は、野生型10Fn3とは相違がなかった(結合に影響しない69位における偶発的な骨格変化を修正した後)。しかし、VR28は、VEGF依存性細胞増殖アッセイにおいてVEGF-KDRシグナル伝達の阻害をほとんど示さなかった。したがって、ナイーブライブラリーからの選択により、生化学的結合研究においてVEGFとKDRの相互作用を妨げる抗体模倣体が得られたが、生物学的シグナル伝達アッセイにおける中和機能には親和性の改善が有用であった。
【0133】
実施例2. クローンVR28の親和性成熟
結合ループ内のみでの配列変更に焦点を置いた突然変異誘発戦略を利用した。始めにどのループが最も改善をもたらす可能性が高いかを試験するため、ループ特異的高頻度変異誘発PCRを行い、VR28の各ループに独立して最大で30%の変異を導入した。KDRに対して選択を3ラウンド行った後、KDR-Fcに対する結合が改良された複数のクローンが認められた。選択プールの配列解析から、変異の大部分はFGループ内に蓄積し、BCループおよびDEループはほぼ原型のまま残っていることが明らかになった。この結果から、FGループがさらなる修飾の最も適した標的であることが示された。
【0134】
したがって、オリゴヌクレオチド突然変異誘発によりFGループ内のVR28配列を変更することによって、約1012個の変種の新規ライブラリーを構築した。FGループの位置のそれぞれについて(残基77〜86[VAQNDHELIT(SEQ ID NO:198)および次のプロリン(残基87)])、VR28コードDNAおよびNNSの50:50混合物を各位置に導入した。約80クローンのランダムな試料をDNA配列解析したところ、予想通りクローン当たり平均して6アミノ酸の変化が明らかになった。標的に対してより高い親和性を有するクローンを支持するために、選択過程において低いKDR-Fc濃度を使用した。4ラウンドの選択過程における標的結合のプロファイルを図2に示す。4ラウンドの選択後、結合集団をサブクローニングして解析した。表5および図3Aに、個々の結合クローンの親和性測定値を要約する。KDR-Fcに対して測定された結合定数は、VR28(11 nM)の10〜30倍改善されて<0.4〜<1.8 nMであった。
【0135】
そのいくつかを表4(Kクローン)に示すが、配列解析から、結合集団は多様であるが、クローン間にいくつかの共通モチーフが同定されることが明らかになった。最も顕著なことには、Pro87およびLeu84が(VR28に見られるように)ほとんどすべてのクローンに認められ、これらの残基が結合部位の構造に必須であることが示唆された。配列決定したクローンにおいてH82KまたはH82Rの変化のみが認められたことから、82位には正に荷電したアミノ酸が必要であると考えられ、または78位には脂肪族アミノ酸が主を占めていた。D81は多くの場合Gに変異されており、その結果この位置における負の荷電が消失し、可動性が増加した。さらに、選択された集団における全体的な変異の割合は、選択前のプールに匹敵しており、FGループは変化に対して非常に開放的であることが示唆された。
【0136】
ヒトフィブロネクチンの10Fn3ドメインのN末端におけるいくつかの残基は、構造決定によって示唆されるようにFGループに近接して位置する(Main et al, Cell 71:671-678, 1992)。2つの領域が近接していることは、標的結合に負の影響を及ぼす可能性があると考えられる。N末端領域における2つの偶発的な変異、L8PおよびL8Qは、おそらくFGループに対するN末端の位置の変化に起因して、多くの選択されたクローンの中でKDRへのより良好な結合をもたらした。N末端の影響をさらに試験するために、23個の異なるKDR結合剤について、βシートの前のN末端の最初の8残基が欠失された結合分子を作製した。次いで、欠失していない対応物と標的結合を比較した。図3Bに示すように、KDR-Fcに対する結合は欠失させることで平均して約3倍良好であった。
【0137】
実施例3. ヒト(KDR)およびマウス(Flk-1)VEGFR-2に対する二重特異性を有する結合剤の選択
VR28および親和性成熟した変種(Kクローン)の大部分は、図4に示すように、KDRのマウス相同体、Flk 1に結合し得なかった。しかし、KDRとFlk 1は高レベルの配列同一性を共有しているため(85%、Claffey et al., J. Biol. Chem. 267:16317-16322 (1992)、Shima et al., J. Biol. Chem. 271:3877-3883 (1996))、KDRおよびFlk 1の両方に結合し得る抗体模倣体が単離されることが考えられる。そのような二重結合剤は、同じ分子を動物モデルにおける機能研究において、次いでヒトにおける機能研究において試験できることから、望ましい。
【0138】
FGループの突然変異誘発およびKDRに対する4ラウンドの選択後のクローン集団を、Flk 1に対してさらに3ラウンド選択した。図2に示すように、ラウンド5からラウンド7にかけてFlk 1に対する結合の増加が認められ、Flk 1結合剤の濃縮が示された。複数の個々のクローンについて結合を解析した結果、KDRのみに対して選択されたクローン(Kクローン)とは対照的に、Flk 1に対するさらなる選択に由来するほとんどのクローン(Eクローン)は、KDRおよびFlk 1の両方と相互作用し得ることが明らかになった。放射性平衡結合アッセイ(表6および図5)およびBIAcore(表7)により決定された両標的に対する結合定数から、個々のクローンは両標的に高親和性で結合し得ることが示される。
【0139】
例えば、E 19はKDRに対して60 pMおよびFlk-1に対して340 pMというKdを有する。これらの結果から、選択過程における単純な標的変換戦略によって、おそらくは両標的によってかけられる選択圧を介して、Flk-1に結合し得ない中程度のKDR結合剤であるVR28の変異誘発集団から、KDRおよびFlk-1の両方に対する二重特異性を有する分子が単離され得ることが実証される。選択されたフィブロネクチンに基づく結合タンパク質は、高い標的濃度においてもVEGFR1に対する実質的な結合は認められず、VEGFR-2(KDR)に対して高度に特異的である。
【0140】
配列解析から、いくつかのモチーフはKDR結合剤プールで認められたモチーフと類似しているが(残基84および87それぞれにおけるLeuおよびPro;残基82におけ正に荷電したアミノ酸、主にArg)、いくつかのモチーフは維持されていないことが(78位における脂肪族)明らかになった。さらに、モチーフERNGR(残基78〜82)がFlk-1に結合するほぼすべてのクローンに存在した(表4);このモチーフは、KDR結合プール中にはほとんど認められなかった。R79およびR82は、この位置に異なる残基が存在する場合、Flk-1への結合は大きく減少し、KDRへの結合は減少しないことから、Flk-1への高親和性結合に特に重要であると考えられる(図6A)。KDRおよびFlk-1への結合における各ループの重要性を決定するため、表4に示すクローンE6およびE26のループを、NNSランダム化配列によって1度に1ループ置換した。図6Bに示すように、置換後、タンパク質はもはやKDRにもFlk-1にも結合できない。これらの結果から、各ループは標的に対する結合に必要であることが示され、標的との相互作用には3つのループすべてが協同的に関与することが示唆される。
【0141】
両標的に結合し得るクローンを得るために、別の突然変異誘発戦略を独立して使用した。KDRと高親和性で(Kd=2 nM;表7)結合しFlk-1と低親和性で(Kd>3000 nM)結合する、VR28の高頻度変異誘発PCR親和性成熟の産物であるクローン159Q(8)L(表4)を、開始点として選択した。FGループの最初の6アミノ酸を十分にランダム化し(NNS)、残りの5残基(ELFTP)は原型のまま残した。Flk-1に対して選択を6ラウンド行った後、結合プールをDEループ(52〜56位)において再度ランダム化し、Flk-1に対してさらに3ラウンドおよびKDRに対して1ラウンドの選択を行った。このようにして、KDRおよびFlk-1の両方に対する多くの高親和性結合分子が得られた(表4および図4)。例えば、クローンM5FLは、KDRに対する高い結合親和性を維持しつつ(Kd=890 pM)、元のクローンの1000倍の改善である2.1 nMのKdでFlk-1に結合し得る。興味深いことに、VR28の変異誘発集団から選択されたFlk-1結合分子において認められたERNGRモチーフは、FGループのこの領域を十分にランダム化したにもかかわらず、クローン159Q(8)Lの変異誘発および選択に由来する複数のクローン中にも同様に存在した。2つの独立したライブラリーから同様の結合分子が単離されたことから、親和性成熟過程は、FGループ内に位置する最適なFlk-1結合モチーフを単離するのに強力であることが示唆される。
【0142】
実施例4. インビトロにおける細胞表面結合およびVEGF活性の中和
大腸菌が産生する結合分子を用いて、細胞培養モデル系におけるKDRおよびFlk-1結合分子の機能性を評価した。抗His6タグマウス抗体(大腸菌が発現するタンパク質はHisタグと共に発現された)および抗マウス蛍光標識抗体からなる検出系を使用して、結合分子が、低いナノモル濃度のEC50でKDRまたはFlk-1を発現する哺乳動物細胞に特異的に結合することが示された(図7および表8)。
【0143】
より重要なことには、エリスロポエチン受容体シグナル伝達ドメインに結合された細胞外KDRまたはFlk-1ドメインを発現する組換えBA/F3細胞(DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikoorganismen und Zellkulturen GmbH)を用いた場合、これらの分子は、KDR発現細胞については3〜12 nMおよびFlk-1発現細胞については2〜5 nMのIC50を有して、用量依存的様式でVEGF刺激による細胞増殖を抑制した。図8および表9に示すように、抑制の強度は対照抗KDRモノクローナル抗体および抗Flk-1モノクローナル抗体と同程度であると考えられる。
【0144】
HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)の増殖のVEGF阻害に関して、多くのクローンをさらに試験した。HUVEC細胞は、VEGFに反応する体内の細胞と密接に関連した天然のヒト細胞である。図9および表10に示すように、野生型フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質はこのヒト由来細胞系においてVEGF活性の阻害に関して不活性であるのに対し、フィブロネクチンに基づく結合タンパク質はこの系においてもVEGF活性を阻害する活性を有した。
【0145】
実施例5. M5FLタンパク質の熱安定性および可逆的リフォールディング
示差走査熱量測定(DSC)により、KDR結合剤M5FLの熱安定性を明らかにした。標準的なPBS緩衝液条件(リン酸ナトリウム pH 7.4、150mM NaCl)下では、M5FLは56℃で単一の不可逆的熱融解転移を有することが判明した。その後、酢酸ナトリウム pH 4.5が、M5FLタンパク質の溶解度に好ましい緩衝液であると同定された。この緩衝液(100 mM)中でのDSC実験から、M5FLはこれらの条件下でより安定であり(Tm=67〜77℃)、融解転移が可逆的であることが実証された(図10)。可逆的融解転移を用いてタンパク質治療薬の長期保存を支持する好ましい条件が同定されており(Remmele et al, Biochemistry 38:5241 (1999))、よってNa-酢酸 pH4.5はM5FLタンパク質の保存に最適な緩衝液であると同定された。
【0146】
実施例6. PEG化M5FLタンパク質のインビトロ結合および細胞に基づく活性
C末端伸長を有するM5FLタンパク質を大腸菌発現系で産生させて、以下のタンパク質配列を得た(Cys100に斜線を施し、C末端伸長に下線を引いてある;かなりの割合のタンパク質が最初のメチオニンを欠いて産生される):
【0147】
100位のシステイン残基の単一のスルフヒドリルを用いて、標準的なマレイミド化学法によりPEG変種に結合し、2つの異なるPEG化型M5FLを得た。直鎖状20 kD PEGおよび分岐型40 kD PEG(Shearwater Corporation)をM5FLと結合して、それぞれM5FL-PEG20およびM5FL-PEG40を作製した。陽イオン交換クロマトグラフィーにより、未反応のタンパク質およびPEGからPEG化タンパク質形態を精製した。2つのPEG型M5FLの共有結合を、SDS-PAGE(図11)および質量分析によって確認した。
【0148】
BIAcoreチップ上にアミド化学法によって固定化したヒトおよびマウスVEGF受容体標的タンパク質を用いて、表面プラズモン共鳴法(SPR)(BIAcore)によりインビトロ親和性測定を行った。いずれの標的タンパク質に対しても、20 kDおよび40 kD PEG化M5FL型は未修飾のM5FLよりも遅い結合速度(Ka)を有し、解離定数(kd)にはほぼ影響がないことが判明した(表11)。
【0149】
実施例4に記載したBa/F3系を用いて、PEG化M5FL調製物の機能性を試験した。図12は、それぞれの結合剤の濃度の関数としてのA490(細胞増殖の程度を表す)のプロットを示す。曲線はほぼ同一であり、どちらのPEG化型の生物活性にもPEG化の影響がほぼないことが示された。
【0150】
KDR結合ポリペプチドのサブセットについてKon、koff、およびKDを解析し、BaF3細胞に基づくVEGF阻害アッセイのEC50と比較した。散布図から、konはEC50と十分に相関するが、koffは十分に相関しないことが示された。105s-1以上のkonを有するKDR結合タンパク質の90%超は、10 nM以下のEC50を有した。KDはkonとkoffの比であり、予想通りEC50と中程度の相関を示す。
【0151】
CT-01を含む多くのKDR結合タンパク質を、VEGFR-1、VEGFR-2、およびVEGFR-3への結合に関して評価した。タンパク質はVEGFR-2に対する高度の特異性を示した。
【0152】
実施例6:KDR結合タンパク質CT-01の調製物はヒト内皮細胞においてVEGFR-2シグナル伝達を阻害する。
上記実施例に記載した方法を受けて、10Fn3に基づくさらなるKDR結合タンパク質を作製した。上記の実施例5でM5FLタンパク質の開発に関して記載したように、BIAcore結合アッセイを用いてヒトKDRおよびマウスFlk-1に対するKDについて、およびBa/F3アッセイにおけるIC50について試験した。CT-01と命名したタンパク質は、これらのアッセイそれぞれにおいて所望の特性を示し、よってさらなる解析に使用した。
【0153】
CT-01を導出した最初のクローンは、配列:
を有した。FGループ配列に下線を引いてある。
【0154】
上記のような親和性成熟により、CT-01のコア型が生成された。
【0155】
上記のCT-01分子は最初の8アミノ酸の欠失を有し、N末端またはC末端にさらなるアミノ酸を含み得る。例えば、さらなるMG配列をN末端に置くことができる。Mは通常切断されて、N末端にはGEV…配列が残る。通常の8アミノ酸をN末端に再付加することでも、所望の特性を有するKDR結合タンパク質が生成される。N末端のメチオニンは通常切断されて、配列:
が得られる。
【0156】
インビボで使用するには、PEG化に適した形態を作製することができる。例えば、N末端の8アミノ酸を欠く形態について以下に示すように、システインを含むC末端尾部を付加して、これを発現させた。
以下に記載するインビボ実験では、この分子のPEG化型を使用する。システインの代わりにセリンを有する対照型もまた使用した。
【0157】
同じC末端尾部を、SEQ ID NO:193に示すN末端8アミノ酸を有するCT-01型に付加することもできる。
【0158】
所望のKDR結合特性を有するさらなる変種が単離された。以下のコア配列はいくぶん異なるFGループを有し、例えば、N末端MG配列、欠失された8アミノ酸を回復するN末端配列、および/またはPEG化用のシステインを提供するためのC末端尾部と共に発現させることができる。
別のそのような変種はコア配列:
を有する。
【0159】
これらの変種を比較することによって、FGループの共通配列:(D/E)GXNXRXXIP(SEQ ID NO:3)が示される。より詳細には、共通配列は(D/E)G(R/P)N(G/E)R(S/L)(S/F)IP(SEQ ID NO:4)として表すことができる。
【0160】
実施例7: CT-01はヒト内皮細胞においてVEGFR-2シグナル伝達を阻害する。
図13に示すように、VEGFR-2を介したVEGF-Aシグナル伝達は、VEGFR-2の細胞内ドメインのリン酸化、およびその後のホスホリパーゼCγ(PLCγ)、プロテインキナーゼC(PKC)、Raf-1、MEK1/2、ERK1/2が関与する経路の活性化によって媒介され、内皮細胞増殖をもたらす。
【0161】
本明細書に開示するKDR結合剤がこのシグナル伝達経路の活性化を抑制するかどうかを評価するため、ヒト微小血管内皮細胞をVEGFR結合ポリペプチド(例えば、CT-01)で30分間処理し、VEGF-Aで5分間刺激した。ホスホ-VEGFR-2、非ホスホ-VEGFR-2、ホスホ-ERK1/2、および非ホスホ-ERK1/2に特異的な抗体を用いて、全細胞溶解物をSDS-PAGEおよびウェスタン解析により解析した。
【0162】
図13に示すように、130 pM CT-01はホスホ-VEGFR-2の形成を抑制し、また下流のリン酸化ERK1/2の形成を減少させる。リン酸化ERK1/2は完全には排除されないが、これはおそらく、ERK1/2は多くのさらなるシグナル伝達経路からシグナルを受け取るという事実による。
【0163】
実施例8:フィブロネクチンに基づくKDR結合タンパク質のVEGF-AおよびVEGF-Dによるシグナル伝達の阻止
VEGFR-2は3つのVEGF種、VEGF-A、VEGF-C、およびVEGF-Dの受容体である。KDRを介するVEGF-AおよびVEGF-D媒介性シグナル伝達に及ぼすフィブロネクチンに基づくKDR結合タンパク質の影響を評価する実験を行った。
【0164】
Flk-1媒介性シグナル伝達に依存するBa/F3細胞株を作製した。図14の左側のパネルに示すように、細胞生存度は、著しく高レベルのVEGF-Dが必要であるものの、細胞をVEGF-AまたはVEGF-Dで処理することにより維持することができた。
【0165】
図14の中央のパネルに示すように、細胞を15 ng/ml VEGF-Aの存在下で維持し、本明細書に開示するM5FLもしくはCT-01タンパク質、またはDC-101抗Flk-1抗体と接触させた。試薬はそれぞれVEGF-Aが媒介する細胞生存度を逆行させ、これにより、Flk-1を介したVEGF-Aシグナル伝達が阻止されたことが示される。
【0166】
図14の右側のパネルに示すように、細胞を300 ng/ml VEGF-Dの存在下で維持し、本明細書に開示するM5FLもしくはF10タンパク質、または抗VEGF-A抗体と接触させた。M5FLおよびF10はVEGF-Dが媒介する細胞生存度を逆行させ、これにより、Flk-1を介したVEGF-Dシグナル伝達が阻止されたことが示される。抗VEGF-A抗体は影響を及ぼさす、本アッセイの特異性が実証される。
【0167】
実施例9:薬物動態
薬物動態研究:未変性CT-01またはPEG化型(40 kDa PEG、CT-01PEG40)を125Iでヨウ素化した。ヨウ素化タンパク質10〜20 mCiを成体雄ラットの静脈内または腹腔内に投与し、表示の時間にヨウ素化タンパク質レベルを測定した。組織分布研究では、15分、2時間、および6時間後にラットを屠殺し、放射能レベルを測定した。図15および16を参照されたい。非修飾CT-01は、血液から迅速に排除される12 kDaタンパク質である。69.9 mL/hr/kgの排除、最大血清濃度9.1 mgを有して、曲線下面積(AUC)値は14.6 hr*mg/mLである。初期半減期(α)は0.3時間であり、第二相半減期(β)は13.5時間である。これと比較して、静脈内PEG化CT-01は、主に初期相の排除の劇的な減少が原因で、血中における存在が著しく増加した。AUCは10倍超増大して193となり、排除速度は1/10未満に低下して5.2となり、Cmaxは12.9 mg/mlである。α半減期は1時間まで延長され、β半減期は16.2時間まで延長される。ラットにおけるこれらに薬物動態はヒトにおける週に2回の投与計画に相当し、この投与の程度は十分に許容可能な範囲内にある。
【0168】
PEG化CT-01の腹腔内(i.p.)投与は貯蔵様薬物動態を有した。CT-01の血中濃度の最初の急増は認められなかった。代わりに、CT-01の量はよりゆっくりと増加し、ゆっくりと減少した。静脈内投与時のCT-01濃度の最初の急増に起因する副作用の問題がある場合、そのような薬物動態は望ましいと考えられる。10Fn3に基づく他の薬剤も、i.p.投与で同様に挙動を示す可能性が高い。したがって、これは、10Fn3に基づく薬剤による時間遅延投薬を達成するための一般化可能な様式であると考えられる。
【0169】
図16に示すように、肝臓がPEG化型CT-01を分泌する主な経路である。CT-01の長期蓄積は検出されなかった。
【0170】
20 kDA PEG部分に結合したCT-01を用いた場合にも、同様の結果が得られた。
【0171】
実施例10:CT-01のインビボ有効性
図17に概説するMilesアッセイを用いて、腫瘍効果研究のための用量、スケジュール、および投与パラメータを評価する。VEGF投与の4時間前に、Balb/c雌マウスの腹腔内に緩衝液または1、5、および20 mg/kgのCT-01PEG40を投与した。背中の皮膚にVEGF-Aを皮内局所投与することにより、エバンスブルー色素の血管漏出が誘導される(図17および18)。
【0172】
KDR結合剤で処理したマウスは、VEGF媒介性血管漏出のレベルの統計的に有意な減少を示した。CT-01の5 mg/kgおよび20 mg/kg用量は有意な結果を示した。したがって、マウス腫瘍モデル研究には5 mg/kg用量を選択した。
【0173】
実施例11:CT-01の腫瘍増殖抑制
B16-F10マウスメラノーマ腫瘍アッセイ:
1日目に、2x106個のB16-F10マウスメラノーマ腫瘍細胞をC57/BL雄マウスの皮下に移植した。6日目に、触知腫瘤が検出された。腫瘍が測定可能な大きさになった8日目に、媒体対照、5、15、または40 mg/kg CT-01PEG40の腹腔内連日投与を開始した。最低用量である5 mg/kgは腫瘍増殖を減少させた。18日目に、15および40 mg/kgで処理したマウスは、腫瘍増殖の50%および66%の減少を示した。図19を参照されたい。
【0174】
U87ヒト神経膠芽腫アッセイ:
5x106個のU87ヒト神経膠芽腫腫瘍細胞を雄ヌードマウスの皮下に移植した。腫瘍体積が約50 mm3に到達した時点で、処置を開始した(0日目)。媒体対照、3、10、または30 mg/kg CT-01PEG40を一日おきに(EOD)静脈内投与した。抗Flk-1抗体DC101を、最適投与計画に関して発表されている通り、40 mg/kgで週に2回投与した。最低用量である3 mg/kgは腫瘍増殖を減少させた。12日目に、10および30 mg/kgで処理したマウスは、腫瘍増殖の50%の減少を示した。図20を参照されたい。有効性は抗Flk-1抗体の有効性と匹敵する。
【0175】
以下の材料および方法を実施例1〜11に記載した実験に使用した。
【0176】
組換えタンパク質:
組換えヒトVEGF165、マウスVEGF164、ヒトニューロトロフィン-4(NT4)、ヒトおよびマウス血管内皮増殖因子受容体-2 Fcキメラ(KDR-FcおよびFlk-1-Fc)は、R&D systems(ミネソタ州、ミネアポリス)から購入した。標的タンパク質のビオチン化は、EZ-Link(商標)Sulfo-NHS-LC-LC-Biotin(Pierce、イリノイ州)の存在において、1xPBS中で4℃にて2時間行った。1x PBSに対して透析することにより、過剰量のEZ-Link(商標)Sulfo-NHS-LC-LC-Biotinを除去した。ビオチン化のレベルは質量分析によって決定し、標的タンパク質濃度はCoomassie Protein Plus Assay(Pierce、イリノイ州)を使用して測定した。
【0177】
プライマー:
ライブラリーの構築および選択されたクローンの突然変異誘発において最終的に使用するため、以下のオリゴヌクレオチドを化学合成により調製した。
T7 TMV Fn:
T7 TMV N末端欠失:
MK165-4 A20:
N末端フォワード:
BCDEリバース:
BCDEフォワード:
DEFGリバース:
DEFGフォワード:
C末端ポリA:
Hu3'FLAGSTOP:
VR28FG-50:
F1U2:
F2:
F3159:
F4:
F5159:
F5-X5:
F6:
F7X6159:
F8:
C2asaiA20:
C2RT:
hf01 BCリバース:
hf01 DEリバース:
hf01 FGリバース:
BCDE rev:
BCDE for:
hf01 DE-FGフォワード:
Front FGリバース:
hf01 RT FlagポリAリバース:
5-RI-hKDR-1B:
3-EPO/hKDR-2312B:
5-RI-mKDR-1:
3-EPO-mKDR-2312:
5-RI-hTrkB-1:
3-EpoR/hTrkB-1310:
5-hKDR/EPO-2274B:
5-mKDR/EPO-2274:
3-XHO-EpoR-3066:
5'hTrkB/EpoR-1274:
【0178】
緩衝液
本明細書に記載する実験では、以下の緩衝液を使用した。緩衝液A(100 mM TrisHCl、1 M NaCl、0.05% Tween-20、pH 8.0);緩衝液B(1X PBS、0.02% Triton X100);緩衝液C(100 mM TrisHCl、60 mM EDTA、1 M NaCl、0.05% Triton X100、pH 8.0);緩衝液Ca(100 mM TrisHCl、1 M NaCl、0.05% Triton X100、pH 8.0);緩衝液D(2 M NaCl、0.05% Triton);緩衝液E(1X PBS、0.05% Triron X100、pH 7.4);緩衝液F(1X PBS、0.05% Triton X100、100 mMイミダゾール、pH 7.4);緩衝液G(50 mM HEPES、150 mM NaCl、0.02% TritonX-100、1 mg/mlウシ血清アルブミン、0.1 mg/mlサケ精子DNA、pH 7.4);緩衝液H(50 mM HEPES、150 mM NaCl、0.02% TritonX-100、pH 7.4);緩衝液I(1xPBS、0.02% TritonX-100、1 mg/mlウシ血清アルブミン、0.1 mg/mlサケ精子DNA、pH 7.4);緩衝液J(1xPBS、0.02% TritonX-100、pH 7.4);緩衝液K(50 mM NaH2PO4、0.5 M NaCl、5%グリセロール、5 mM CHAPS、25 mMイミダゾール、1x Complete(商標) Protease Inhibitor Cocktail(Roche)、pH 8.0);緩衝液L(50 mM NaH2PO4、0.5 M NaCl、5%グリセロール、25 mMイミダゾール、pH 8.0);緩衝液M(1xPBS、pH 7.4、25 mMイミダゾール、pH 7.4);緩衝液N(1xPBS、250 mMイミダゾール、pH 7.4);緩衝液O(10 mM HEPES、150 mM NaCl、0.005% Tween 20、pH 7.4)。
【0179】
一次ライブラリーの構築:
骨格としてヒトフィブロネクチンの10番目のドメインを使用するライブラリーの構築は、以前に記載されている(Xu et al., 2002、前記)。それぞれ23〜29位、52〜55位、および77〜86位に相当する3つのループ領域を、コード計画としてNNS(標準的なヌクレオチド混合物、式中、N=A、G、T、Cの等モル混合物;S=GおよびCの等モル混合物)を用いてランダム化した。23〜29位および77〜86位(2ループライブラリー)または77〜86位(1ループライブラリー)でのみランダム化した領域を含む同様のライブラリーも構築した。これらのライブラリーをほぼ等モル量で混合した。この混合ライブラリーは約1x1013個のクローンを含み、VR28が同定されたKDR選択で用いられた。
【0180】
変異誘発ライブラリーの構築:
高頻度変異誘発PCR。VR28クローンにおける骨格の変異T(69)IをPCRによって野生型配列に修正したが(以下を参照)、KDRに対するVR28結合剤の結合特性に変化は認められなかった。以前に記載された条件を用いて、VR28のループ領域に変異を導入した(Vartanian et al, Nuc. Acid Res. 24:2627-2631, 1996)。各ループ隣接するプライマー対(N末端フォワード/BCDEリバース、BCDEフォワード/DEFGリバース、DEFGフォワード/C末端ポリA)を用いて、VR28鋳型において3ラウンドの高頻度変異誘発PCRを行った。重複伸長ならびに隣接プライマーT7TMV FnおよびMK165-4 A20を使用したPCRにより、得られた断片を組み立てた。最終PCR反応によるクローンのDNA配列を決定し、ライブラリーが正しく構築されていることを確認した。骨格領域では1.5%の変異誘発率であるのに対し、ループ領域では最大で30%の変異誘発率が認められた。
【0181】
オリゴ突然変異誘発。PCRによるVR28のFGループのオリゴ突然変異誘発には、VR28FG-50プライマー、DEFGリバースプライマー、および隣接プライマーを使用した。FGループをコードする各ヌクレオチドの位置において、プライマーVR28FG-50は、VR28ヌクレオチド50%、および4つの全ヌクレオチド(N)またはGもしくC(S)の等量混合物50%を含んだ。この計画は、VR28 FGループのアミノ酸の約67%が別のアミノ酸でランダムに置換されるように設計されたもので、これはDNA配列決定によって確認された。
【0182】
159 (Q8L)ランダム化サブライブラリー。クローン159 (Q8L)クローンのFGループのオリゴ突然変異誘発、3段階伸長、および増幅を行った。一次伸長では、プライマー対(a:F1U2/F2、b:F3159/F4、c:F5159/F6、d:F7X6159/F8)を等濃度(各100 pmol)で混合し、10サイクル増幅した。二次伸長では、一次反応物の1/20を組み合わせ(a/bおよびc/d)、増幅をさらに10サイクル継続した。完全に相補的な断片の再アニーリングよりも伸長の方に増幅を偏らせるため、断片ab用のF1U2フォワードプライマーまたは断片cd用のC2asaiA20リバースプライマー50 pmolを用いて、半構築物産物(各0.5 pmol)の線形増幅をさらに20サイクル行った。最後に、伸長された半構築物断片abおよびcdを組み合わせて、さらなる成分を含めずに20サイクル増幅した。プライマーF7X6159は、クローン159 (Q8L)の最初の6コード位置それぞれにおいてNNSを含み、それ以外はクローン159 (Q8L)と同一であった。最終PCR反応によるクローンのDNA配列を決定して、ライブラリー159 (Q8L)-FGX6が正しく構築されていることを確認した。サブライブラリーは約1x109個のクローンを含んだ。
【0183】
159 (Q8L)-FGX6ライブラリーを6ラウンド選択した後のプール(PR6)のDEループをランダム化するため、プライマーF1U2/F4およびF5X5/C2asaiA20を用いてPCRにより2つの半構築物断片を調製した。F5X5プライマーは、DEループの4つの位置および56位においてNNSを含んだ。次いで、伸長された断片abおよびcdを組み合わせて、さらなる成分を含めずに20サイクル増幅した。
【0184】
フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質への点突然変異、欠失、およびランダム(NNS)ループ配列の導入:
VR28クローンを鋳型として使用した2段階PCRで、VR28結合剤の骨格変異T(69)Iを野生型配列に修正した。プライマーN末端フォワード/DEFGリバースおよびDEFGフォワード/C末端ポリAを用いて得られた半構築物断片を組み合わせて、プライマーT7TMV FnおよびMK165-4 A20を用いてVR28(I69T)クローン全体(本文中ではVR28と表す)を構築した。クローン159(Q8L)におけるN末端変異の修正は、プライマーN末端フォワード/C末端ポリAを用いたPCR、およびその後のプライマーT7TMV FnおよびMK165-4 A20を用いた伸長によって行った。
【0185】
フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質のN末端への欠失Δ1-8の導入は、プライマーT7 TMV N末端欠失およびMK165-4 A20を用いた増幅によって行った。
【0186】
NNSループ配列を含むEクローンのキメラの構築を、2段階PCRで行った。プライマーT7 TMV N末端欠失/BCDE rev(a:EクローンのBCループ);N末端フォワード/hf01 BCリバース(b:BC NNS);BCDE for/Front FGリバース(c:EクローンのDEループ);BCDE for/hf01 DEリバース(d:DE NNS);hf01 DE-FGフォワード/hf01 RT-FlagポリAリバース(e:EクローンのFG);hf01 DE-FGフォワード/hg01 FGリバース(f:FG NNS)を用いて、ループ領域を増幅した。断片b/c/e、a/d/e、a/c/fを組み合わせ、伸長、ならびにプライマーT7Tmv N末端欠失およびhf01 RTFlagポリAリバースを用いる増幅によって、プール全体を構築した。
【0187】
構築物はすべてDNA配列決定により確認および/または解析した。すべての構築物および変異誘発ライブラリーは、インビトロでのRNA-タンパク質融合生成および精製のため、5'隣接領域にT7 TMVプロモーターおよび3'隣接領域にFlagタグまたはHis6タグ配列を含んだ。
【0188】
RNA-タンパク質融合生成
選択の各ラウンドでは、MegaScript転写キット(Ambion)を用いてPCR DNAを37℃で4時間転写した。37℃で20分間DNase I(Ambion)消化することによって、鋳型DNAを除去した。フェノール/クロロホルム抽出、およびその後のNAP-25カラム(Amersham)でのゲルろ過により、RNAを精製した。ピューロマイシンリンカーPEG 6/10(5' Pso u agc gga ugc XXX XXX CC Pu 3'、式中、Pso=C6-ソラレン、u、a、g、c=2'OMe-RNA、C=標準的アミダイト、X:スペーサーホスホアミダイト9(9-O-ジメトキシトリチル-トリエチレングリコール,1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホアミダイト);Pu=ピューロマイシン-CPG)は、以前に記載されている通りに合成した(Kurz et al, Nuc. Acid Res. 28:83, 2000)。リンカーを、0.1 M NaCl、25 mM TrisHCl、pH 7.0中で85℃から4℃に徐々に温度を下げていくことで、ライブラリーRNAとアニーリングさせた。次いで、リンカーとRNAをUV光(365 nm)に15分間曝露して架橋した。架橋された混合物(600 pmol RNA)を、35S標識メチオニンの存在下で、ウサギ網状赤血球溶血液翻訳キット(Ambion)を用いるインビトロ翻訳反応物中に含め、30℃で60分間インキュベートした。融合形成を増強するため、0.5 M KClおよび0.05 M MgCl2を反応物に添加し、4℃で30分間インキュベートした。オリゴ-dTセルロース(Sigma)クロマトグラフィーを用いて、融合分子を以下のように精製した。翻訳および融合混合物を緩衝液A(100 mM TrisHCl、1 M NaCl、0.05% Tween-20、pH 8.0)に希釈して、オリゴdTセルロースに添加した。スラリーを4℃で1時間回転し、スピンカラムに移した。オリゴdTセルロースビーズをカラム上で10カラム体積の緩衝液Aで洗浄し、3カラム体積のH2Oで溶出した。逆転写反応は、プライマーHu3'FLAGSTOPを使用して、SuperScript II Reverse Transcriptionキット(Invitrogen)を用いて42℃で1時間行った。別法として選択の過程で、反応性システインを介した非特異的結合の可能性を減少させるため、チオール基を1 mM 2-ニトロ-5-チオシアナト安息香酸(NTCB)またはN-エチルマレイミド(NEM)と反応させた。反応は室温で1時間行った。融合分子を、M2アガロース(Sigma)を用いて抗FLAGアフィニティークロマトグラフィーによりさらに精製した。M2ビーズを反応物に添加し、緩衝液B(1X PBS、0.02% Triton X100)中で4℃で1時間回転した。次いで、ビーズをスピンカラムに供し、5カラム体積の緩衝液Bで洗浄し、3カラム体積の緩衝液Gに溶解した100μM FlagペプチドDYKDDDDK(Sigma)で融合分子を溶出した。試料中の35Sメチオニンのシンチレーション計測によって測定した比放射能に基づいて、融合物の収量を算出した。
【0189】
159 (Q8L)ランダム化ライブラリーに関しては、Kingfisher(商標)(ThermoLabSystems)での合理化半自動化手順によりRNA-タンパク質融合物を調製した。工程は、以下に記載する数段階を除いて、上記の手順と同様であった。RNA-タンパク質融合分子の精製は、磁性オリゴdTビーズ(GenoVision)において、緩衝液C(100 mM TrisHCl、60 mM EDTA、1 M NaCl、0.05% Triton X100、pH 8.0)中で行った。ビーズを10反応体積の緩衝液Ca(100 mM TrisHCl、1 M NaCl、0.05% Triton X100、pH 8.0)で洗浄し、融合タンパク質を1体積のH2Oで溶出した。逆転写(RT)は、プライマーCR2Tを使用して行った。融合タンパク質は、Ni-NTA磁気ビーズ(Qiagen)を用いて、Hisタグアフィニティークロマトグラフィーによりさらに精製した。RT反応物を緩衝液D(2 M NaCl、0.05% Triton)中でNi-NTAビーズと共に室温で20分間インキュベートし、次いでビーズを10反応体積の緩衝液E(1X PBS、0.05% Triron X100、pH 7.4)で洗浄し、融合分子を1体積の緩衝液F(1X PBS、0.05% Triton X100、100 mMイミダゾール、pH 7.4)で溶出した。
【0190】
選択:
KDRに対する一次選択。プロテインAビーズおよびFcタンパク質への非特異的結合を減少させるため、選択前に、融合ライブラリー(1 ml中に約1013クローン)を、200nMヒトIgG1を予め固定化したプロテインAビーズ(Dynal)150μlと共に30℃で1時間インキュベートした(前排除)。次いで、上清を緩衝液G(50 mM HEPES、150 mM NaCl、0.02% TritonX-100、1 mg/mlウシ血清アルブミン、0.1 mg/mlサケ精子DNA、pH 7.4)中で、KDR-Fcキメラと共に反転回転させながら30℃で1時間インキュベートした。KDR-Fcの最終濃度は、ラウンド1では250 nM、ラウンド2〜4では100 nM、ならびにラウンド5および6では10 nMであった。標的をプロテインAビーズ300μl(ラウンド1)またはプロテインAビーズ100μl(ラウンド2〜6)上に、反転回転させながら30℃で30分間捕獲し、緩衝液G(50 mM HEPES、150 mM NaCl、0.02% TritonX-100、pH 7.4)1 mlで5回洗浄した。結合した融合分子を、0.1 M KOH 100μlで1 M TrisHCl、pH 8.0 50μl中に溶出した。隣接プライマーT7TMV FnおよびMK165-4 A20を用いて、PCRにより溶出物からDNAを増幅した。
【0191】
KDR結合剤VR28の親和性および特異性成熟。上記したように、高頻度変異誘発PCRまたはオリゴ特異的突然変異誘発によりクローンVR28に変異を誘発し、融合サブライブラリーを構築した。プロテインAビーズによる前排除の後、上記の手順に従って緩衝液I(1xPBS、0.02% TritonX-100、1 mg/mlウシ血清アルブミン、0.1 mg/mlサケ精子DNA、pH 7.4)中で選択を4ラウンド行った。プライマーT7TMV FnおよびMK165-4 A20を用いて、PCRにより溶出物からDNAを増幅した。オリゴ突然変異誘発に由来するライブラリーでは、低い標的濃度(選択の最初の4ラウンドでは0.1 nM KDR)を使用し、次いで選択のさらなる3ラウンドについては1 nMマウスVEGF-R2(Flk-1)を導入した。最後の3ラウンドでは、PCRにプライマーT7 TMV N末端欠失およびMK165-4 A20を使用した。
【0192】
KDR結合剤159の特異性成熟では、クローン159 Q(8)LのFGループの最初の6つの位置を、上記のようにPCRによってランダム化した。ビオチン化マウスVEGF-R2(70 nM)に対する融合サブライブラリーの結合は、緩衝液I中で室温で30分間行った。選択手順の残りは、Kingfisher(商標)(ThermoLabSystems)で継続した。ビオチン化標的をストレプトアビジンコーティング磁気ビーズ(Dynal)50μl上に捕獲し、ビーズを10倍量の緩衝液Iおよび1倍量の緩衝液J(1xPBS、0.02%TritonX-100、pH 7.4)で洗浄した。結合した融合分子を、0.1 M KOH 100μlで1 M TrisHCl、pH 8.0 50μl中に溶出した。プライマーF1U2およびC2asaiA20を用いて、PCRにより溶出物からDNAを増幅した。4ラウンドの選択の後、さらなる2ラウンドには、以下の通りに7 nM Flk-1に対する解離速度/再結合選択を適用した。ビオチン化マウスFlk-1との結合反応を30分進行させた後、100倍過剰量の非ビオチン化Flk-1を添加し、弱い結合剤の解離を見越して反応をさらに6時間継続した。ビオチン化標的をストレプトアビジンビーズ(Dynal)50μl上に捕獲し、緩衝液J 1 mlで5回洗浄した。結合した融合分子を、75℃で5分間インキュベートすることにより溶出した。上清を7 nM Flk-1への再結合に供し、標準的な選択手順を継続した。最終溶出プールに由来するDNAをDEループランダム化(上記を参照)に供し、融合サブライブラリーを7 nMマウスVEGF-R2に対して3ラウンド選択した。4ラウンド目に、1 nMヒトVEGF-R2への再結合による解離速度選択に供した。プライマーF1U2およびC2asaiA20を用いて、PCRにより溶出物から最終DNAを増幅した。
【0193】
放射性平衡結合アッセイ
解析用に35S標識結合タンパク質を調製するため、リンカーの連結段階を除くこと以外はRNA-タンパク質融合精製に関して上記した通りにmRNAを調製した。35S標識Metの存在下でウサギ網状赤血球溶血液翻訳キット(Ambion)を使用して、mRNAを30℃で1時間発現させた。発現されたタンパク質を、上記のようにM2-アガロースFlagビーズ(Sigma)で精製した。この手順によって、核酸尾部を含まないコードタンパク質が生成された。直接結合アッセイでは、0〜200 nMの濃度のVEGF-R2-Fc融合物を一定濃度の精製タンパク質(0.2または0.5 nM)に添加し、緩衝液B中で30℃で1時間インキュベートした。Kingfisher(商標)を使用して、室温でさらに10分間、プロテインA磁気ビーズにより受容体-結合剤複合体を捕獲した。ビーズを6反応体積の緩衝液Bで洗浄した。0.1M KOH 100μLでビーズからタンパク質を溶出した。50μLの反応混合物および溶出液をLumaPlate-96(Packard)上で乾燥させ、プレート上の35Sの量をTopCount NXT装置(Packard)で測定した。標的に結合したフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質の量を、反応混合物中の放射能に対する、プロテインA磁気ビーズから溶出された放射能の割合として評価した。KDR-Fcの非存在下での結合を測定することによって、ビーズに対するフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質の非特異的結合を決定したが、非特異的結合は投入量の1〜2%未満を示した。特異的結合は全結合から非特異的結合を減算することによって得た。GraphPad Prizmソフトウェア(GraphPad Software, Inc、カリフォルニア州、サンディエゴ)を用いてデータを解析し、一部位非線形結合方程式により適合化した。
【0194】
フィブロネクチンに基づく可溶性骨格タンパク質結合剤の発現および精製:
大腸菌で発現させるため、各クローンの残基1〜101およびその後に続くHis6タグをpET9d由来ベクターにクローニングし、大腸菌BL21 (DE3) PlysS細胞(Invitrogen)で発現させた。一晩培養液20 mlを用いて、50μg/mLカナマイシンおよび34μg/mLクロラムフェニコールを含むLB培地1リットルに接種した。培養液をA600が0.4〜0.6になるまで37℃で培養した。培養物を1 mMイソプロピル-β-チオガラクトシド(IPTG、Invitrogen)で誘導した後、37℃でさらに3時間培養し、4℃にて3,000 gで30分間遠心分離することにより回収した。細胞ペレットを50 mLの溶解緩衝液K(50 mM NaH2PO4、0.5 M NaCl、5%グリセロール、5 mM CHAPS、25 mMイミダゾール、1x Complete(商標) Protease Inhibitor Cocktail(Roche)、pH 8.0)緩衝液Lに再懸濁し、氷上で80 Wにて10秒間休止させながら15秒間のパルスで4回超音波処理した。4℃にて30,000 gで30分間遠心分離することにより、可溶性画分を分離した。洗浄緩衝液L(50 mM NaH2PO4、0.5 M NaCl、5%グリセロール、25 mMイミダゾール、pH 8.0)で予め平行化したTALON(商標) SuperflowTM Metal Affinity Resin(Clontech)10 mLと共に、上清を4℃で1時間回転した。次いで、10カラム体積の緩衝液Lおよび30カラム体積の緩衝液M(1xPBS、pH 7.4、25 mMイミダゾール、pH 7.4)で樹脂を洗浄した。タンパク質を5カラム体積の緩衝液N(1xPBS、250 mMイミダゾール、pH 7.4)で溶出し、1xPBSに対して4℃で透析した。沈殿物は0.22μmでろ過することで(Millipore)除去した。
【0195】
フィブロネクチンに基づく可溶性骨格タンパク質のBIAcore解析:
標的に対するフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質結合タンパク質の結合速度論を、BIAcore 2000バイオセンサー(Pharmacia Biosensor)を用いて測定した。ヒトおよびマウスVEGF-R2-FC融合物をCM5センサーチップ上に固定化し、可溶性結合タンパク質を緩衝液O(10 mM HEPES、150 mM NaCl、0.005% Tween 20、pH 7.4)中の0〜100 nMの濃度で注入した。各濃度でセンサーグラムを取得し、プログラム、BIA Evaluation 2.0(BIAcore)を用いて評価して、速度定数ka(kon)およびkd(koff)を決定した。速度定数koff/konの比から親和定数KDを算出した。
【0196】
阻害実験では、ヒトVEGF165をCM-5チップの表面上に固定化し、0〜100nMの様々な濃度の可溶性結合タンパク質の存在下で、20 nM濃度のKDR-Fcを注入した。チップへのKDR-Fc結合が50%のみ観察された時の濃度で、IC50を決定した。
【0197】
VEGFR結合ポリペプチドの可逆的リフォールディング:
100 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.5)中のM5FLタンパク質において、示差走査熱量測定(DSC)解析を行った。最初のDSC実行(スキャン1)は、N-DSC II熱量計(Calorimetry Sciences Corp)で1分間に1℃の速度で温度に5〜95℃の傾斜をつけ、続いて10℃まで逆スキャンすることによって(表示せず)行い、その後2回目を実行した(スキャン2)。これらの条件下で、データは2つの転移モデルを用いて最適に適合化された(Originソフトウェア(OriginLab Corp)を使用して、Tm=77℃および67℃)。図10を参照されたい。
【0198】
M5FLタンパク質のPEG化:
C100型のM5FLタンパク質は、100位のSerがシステインに変異されたM5FLの完全な配列を有し、タンパク質を精製するために用いられるさらなるC末端Hisタグを含む。精製されたM5FLタンパク質を、様々なマレイミド誘導体化PEG形態(Shearwater)を結合することによって、単一のシステイン残基の位置で修飾した。反応して得られたタンパク質を、4〜12%ポリアクリルアミドゲルで泳動した(図11)。
【0199】
細胞株の作製:
プラスミドの構築。KDR、Flk-1、またはヒトTrkBの細胞外ドメインに融合されたヒトエリスロポエチン受容体(EpoR)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインから構成されるキメラ受容体をコードするプラスミドを、2段階PCR手順によって構築した。受容体遺伝子全体をコードするプラスミドから、細胞外ドメインをコードするPCR産物を増幅した:KDR(アミノ酸1〜764)は、プライマー5-RI-hKDR-1B/3-EPO/hKDR-2312Bを用いてクローンPR1371_H11(OriGene Technologies、メリーランド州、ロックビル)から導出し、Flk-1(アミノ酸1〜762)は、プライマー5-RI-mKDR-1/3-EPO/mKDR-2312を用いてクローン#4238984(IMAGE)から導出し、ヒトTrkB(アミノ酸1〜430)は、プライマー5-RI-hTrkB-1/3-EpoR/hTrkB-1310を用いてクローン#X75958(Invitrogen Genestorm)から導出した。EpoR膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン(アミノ酸251〜508)をコードするPCR産物は、共通プライマー3-XHO-EpoR-3066、ならびに受容体断片PCR産物の末端に相補的な短い配列相補性を付加した3つの遺伝子特異的プライマー5-hKDR/EPO-2274B(KDR)、5-mKDR-EPO-2274(Flk-1)、および5'hTrkB/EpoR-1274(ヒトTrkB)のうちの1つを用いてクローン#M60459(Invitrogen Genestorm)から増幅した。次いで、キメラ遺伝子の半分をコードするPCR産物を混合し、3-XHO-EpoR-3066および増幅の前のサイクルで使用した各遺伝子に特異的な5'プライマー(5-RI-hKDR-1B、5-RI-mKDR-1、および5-RI-hTrkB-1)を用いて増幅した。得られたPCR産物をEcoRIおよびXhoIで消化し、pcDNA3.1(+)(Invitrogen)にクローニングして、プラスミドphKE8(ヒトKDR/EpoR融合物)、pmKE2(flk-1/EpoR融合物)、およびphTE(TrkB/EpoR融合物)を作製した。
【0200】
フローサイトメトリー用の細胞株の作製。Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して、CHO-K1細胞(American Type Culture Collection、バージニア州、マナッサス)に、pcDNA 3.1(Invitrogen)のみ、pmKE2のみ、またはpcDNA 3.1と全長ヒトKDRをコードするプラスミド(Origene Inc.、クローンPR1371-H11)の混合物を安定にトランスフェクションした。安定なトランスフェクタントを選択して、0.5 mg/mlジェネティシン(Invitrogen)の存在下で維持した。トランスフェクションされた集団を抗KDRポリクローナル抗血清(R&D Systems)で染色した後に蛍光活性化細胞選別することによって、CHO-KDRと称するヒトKDR発現クローンおよびCHO-Flkと称するマウスVEGFR-2/EpoRキメラ発現集団を取得した。CHO-KDRおよびCHO-Flk細胞株は、日常的に、10%(v/v)ウシ胎児血清(FBC)、0.5 mg/mlジェネティシン、100 U/mlペニシリン、0.25μg/mlアンホテリシンB、100μg/mlストレプトマイシン、および2 mM L-グルタミンを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Gibco)で培養した。
【0201】
Ba/F3細胞株の作製。前B細胞株Ba/F3(DSMZ、ドイツ、ブラウンシュワイク)に、ヒトエリスロポエチン受容体の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに融合されたヒトまたはマウスVEGFR-2の細胞外ドメインからなる受容体キメラ(上記を参照)であるphKE8またはpmKE2をトランスフェクションすることにより、VEGFR-2によるVEGF結合に応答して増殖する細胞株を作製した。Ba/F3細胞は、WEHI-3B細胞の10%馴化培地(DSMZ;イスコフ改変ダルベッコ培地(Gibco)/10% FBS/25μM β-メルカプトエタノールで培養)を必須増殖因子の供給源として添加した最小Ba/F3培地(10% FBS、100 U/mlペニシリン、0.25μg/mlアンホテリシンB、100μg/mlストレプトマイシン、および2 mM L-グルタミンを含むRPMI-1640(Gibco))で維持した。プラスミドpmKE2またはphKE8をエレクトロポレーションした後、安定なトランスフェクタントを0.75 mg/mlジェネティシン中で選択した。ジェネティシン耐性集団を、100 ng/mlヒトVEGF165(R&D Systems)を含む最小Ba/F3培地に移し、得られたVEGF依存性集団をBa/F3-FlkおよびBa/F3-KDRと命名した。NT-4による刺激に応答性であるキメラTrkB受容体を発現する対照細胞株(Ba/F3-TrkB)も同様に、プラスミドphTEおよびヒトNT-4(R&D Systems)を用いて作製した。
【0202】
フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質の細胞表面結合の解析:
細胞表面KDRおよびFlk-1に対するフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質の結合を、フローサイトメトリーによりVEGF-R2発現細胞および対照細胞において同時に解析した。CHO-pcDNA細胞(対照)をトリプシン-EDTAを用いてディッシュから解離し、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコPBS(D-PBS-;Invitrogen)で洗浄し、1.5μM CMTMR(5-(and-6)-(((4-クロロメチル)ベンゾイル)アミノ)-テトラメチルローダミン)(Molecular Probes)で37℃で30分間染色した。細胞をD-PBS-で洗浄し、37℃でさらに30分間インキュベートし、次に氷上でブロッキング緩衝液(D-PBS-/10%ウシ胎児血清)に再懸濁した。CHO-KDRまたはCHO-Flk細胞を、CMTMRを省くこと以外は同様に処理した。V底96ウェルプレートの各ウェル中で、75,000個のCMTMR染色CHO-pcDNA3細胞を、同数の非染色CHO-KDRまたはCHO-Flk細胞と混合した。抗体およびフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質はすべて、25μl/ウェルのブロッキング緩衝液で希釈し、各処理は4℃で1時間行った。His6をタグ化したフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質で細胞混合物を染色し、冷D-PBS-で2回洗浄し、次いで2.5μg/ml抗His6 MAb(R&D Systems)で処理し、洗浄し、4μg/ml Alexa Fluor 488結合抗マウス抗体(Molecular Probes)で染色した。抗KDRマウスモノクローナル抗体(Accurate Chemical、ニューヨーク州、ウェストベリー)または抗flk-1ヤギポリクローナル抗体(R&D Systems)で処理する細胞については、抗His6段階を省略し、抗体結合は種に適したAlexa Fluor 488結合二次抗体(Molecular Probes)で検出した。染色後、細胞を200μl/ウェルのD-PBS-/1% FBS/1μg/ml 7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD;Molecular Probes)に再懸濁し、488 nMレーザーを備えたFACSCalibur(Becton Dickinson、カリフォルニア州、サンノゼ)でフローサイトメトリーにより解析した。死細胞(7-AAD陽性)を排除するためにゲートをかけた後、CMTMR陰性または陽性集団にそれぞれゲートをかけて、VEGFR-2発現細胞およびCHO-pcDNA3細胞をAlexa Fluor 488蛍光について独立して測定した。対照実験から、CMTMRによる染色は染色細胞の表面上におけるAlexa Fluor 488結合抗体の検出を妨げないことが示された。
【0203】
細胞表面結合はまた、上記の二次抗体を用いて蛍光顕微鏡により評価した。これらの研究のため、抗体をカルシウムおよびマグネシウムを含むD-PBS(D-PBS+)/10% FBSで希釈した。細胞は24ウェルまたは96ウェルプレートで培養し、倒立蛍光顕微鏡で観察するために染色後はD-PBS+中で保存した。
【0204】
Ba/F3細胞増殖アッセイ:
Ba/F3細胞を最小Ba/F3培地で3回洗浄し、15.8 ng/mlの増殖因子(Ba/F3-KDR、Ba/F3-flk、またはBa/F3-TrkB細胞それぞれについてヒトVEGF165、マウスVEGF164、またはhNT-4)を含む同じ培地に再懸濁し、96ウェル組織培養プレートのウェル当たり、5 x 104個のBa/F3-KDR細胞、または2 x 104個のBa/F3-flkもしくはBa/F3-TrkB細胞を含む95μlを添加した。試験タンパク質のPBSによる段階希釈物5μlを各ウェルに添加し、最終量をBa/F3培地/5% PBS/15 ng/ml増殖因子100μlとした。37℃で72時間インキュベートした後、各ウェルにCellTiter 96(登録商標) Aqueous One Solution Reagent(Promega)20μlを添加して37℃で4時間インキュベートし、マイクロタイタープレートリーダー(Molecular Dynamics)を用いて490 nmの吸光度を測定することにより、増殖を測定した。
【0205】
HUVEC細胞増殖アッセイ:
継代2〜6代目のHUVEC細胞(Clonetics、メリーランド州、ウォーカーズビル)をEGM-2培地(Clonetics)で培養した。5000細胞/ウェルを200μlの飢餓培地(0.2%ウシ胎児血清および1xペニシリン/ストレプトマイシン/ファンギゾン溶液(Gibco)を添加した等量のDMEM(Gibco)およびF-12K培地(ATCC))に再懸濁し、96ウェル組織培養プレートにプレーティングして、48時間インキュベートした。フィブロネクチンに基づく結合タンパク質をウェルに添加して37℃で1時間インキュベートし、次いでヒトVEGF165を最終濃度16 ng/mlになるように添加した。48時間インキュベートした後、1.9 mg/ml CellTiter96(登録商標) AQueous MTS試薬(Promega)と44μg/mlフェナジンメトサルフェート(Sigma)の混合物を30μl/ウェル添加し、Ba/F3細胞について上記したように490 nmの吸光度を測定することにより、細胞生存度を測定した。
【0206】
実施例12:抗体軽鎖に基づくVEGFR結合ポリペプチド
図21Aおよび21Bは、抗体軽鎖可変領域(VL)フレームワーク/骨格に基づくVEGFR結合ポリペプチド(SEQ ID NO:241〜310)のアミノ酸配列を示す。
【0207】
軽鎖可変ドメインタンパク質は、10Fn3由来タンパク質との使用について記載した通りに、PROfusion(商標)システムを用いて作製した。
【0208】
本明細書で引用した参考文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0209】
(表1)好ましい特異的ペプチド配列
【0210】
(表2)KDR&FLK結合剤
【0211】
(表3)KDR結合剤
【0212】
(表4)特徴づけられたVEGF-R2結合クローンの配列
【0213】
(表5)放射性平衡結合アッセイで決定されたKDR-Fcに対するトリネクチン(trinectin)結合剤の親和性
【0214】
(表6)放射性平衡結合アッセイで決定されたKDRおよびFlk-1に対するトリネクチン結合剤の親和性
【0215】
(表7)BIAcoreアッセイによるka、kd、およびKdの決定
【0216】
(表8)KDR(CHO KDR)およびFlk-1(CHO Flk-1)発現細胞に対する結合
【0217】
(表9)KDR(Ba/F3-KDR)およびFlk-1(Ba/F3-Flk)発現細胞のVEGF誘導性増殖の抑制
【0218】
(表10)HUVEC細胞のVEGF誘導性増殖の抑制
【0219】
(表11)
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】6ラウンドのKDR選択から得られたKDR結合単一クローンの特徴を示すグラフおよび画像である。図1Aは、放射性平衡結合アッセイで解析した、25 nM KDR-Fcに対するフィブロネクチンに基づく結合タンパク質の特異的結合を示すグラフである。図1Bは、100倍過剰量のVEGF165の存在下における、KDR-Fcと選択されたフィブロネクチンに基づく結合タンパク質の特異的結合の阻害を示すグラフである。この図から示されるように、特定の結合タンパク質はVEGF165と競合的にKDR-Fcに結合し、クローン8によって例証される他の結合タンパク質はVEGF165と競合しなかった。図1Cは、BIAcoreで解析した、選択されたフィブロネクチンに基づく結合タンパク質の存在下における、KDR-Fcと固定化されたVEGF165との相互作用の阻害を示すグラフである。図1Dは、免疫蛍光法によって検出された、KDR発現細胞および対照細胞に対するVR28の結合を示す画像である。
【図2】VR28 KDR結合剤の親和性成熟の選択プロファイルを示すグラフである。左側に、KDR-FcおよびFlk1-Fc(非常に低く、表示されていないバー)に対するVR28クローンの結合を示す。中央に、未精製の突然変異誘発プールおよびその後のKDR-Fcに対する濃縮ラウンドの結合を示す。右側に、Flk-1-Fcに対するさらなる濃縮ラウンドの結合を示す。結合は、1 nM KDR FcまたはFlk1-Fcを用いて、放射性平衡結合アッセイにより投入量の割合として評価した。
【図3】VR28結合剤の抗KDR親和性成熟の4ラウンド目に由来するKDR結合単一クローンの特徴を示すグラフである。図3Aは、放射性平衡結合アッセイにおける、KDR-Fcに対するVR28(-■-)、および親和性成熟されたK1(-▲-)、K6(-▼-)、K9(-◆-)、K10(-●-)、K12(-□-)、K13(-△-)、K14(-▽-)、K15(-◇-)の飽和結合を示す。図3Bは、KDR-Fcに対するN末端欠失を有するおよび有さないクローンの結合を示す。フィブロネクチンに基づく結合タンパク質のN末端における欠失Δ1-8は、KDR-Fcに対する結合を改善した。データは、N末端欠失を有するおよび有さない23個の独立したクローンの平均したKDR-Fc結合を表す。
【図4】選択されたクローンのKDRおよびFlk-1に対する結合を示すグラフである。VR28、ならびにヒトKDRに対する4ラウンドの親和性成熟後(Kクローン)、およびヒト(KDR)およびマウス(flk-1)に対する7ラウンドの親和性成熟後(Eクローン)に選択されたクローンの特異的結合。VEGFR-2-Fcキメラを放射性平衡結合アッセイで比較した。データは3回の独立した実験の平均を表す。ここに示すように、マウスおよびヒトVEGFR-2タンパク質の両方に対して成熟させることにより、両タンパク質に結合する結合剤が生成される。
【図5】VR28結合剤の親和性成熟の7ラウンド目に由来するVEGFR-2結合単一クローンの特徴を示すグラフである。KDR(図5A)およびFlk1(図5B)-Fcキメラに対するVR28(-■-)、および特異性成熟されたE3(-▲-)、E5(-▼-)、E6(-◆-)、E9(-●-)、E18(-□-)、E19(-△-)、E25(-▽-)、E26(-◇-)、E28(-○-)、E29(-×-)クローンの飽和結合を、放射性平衡結合アッセイで試験した。
【図6】VR28結合剤の親和性成熟の7ラウンド目に由来する単一クローンによるVEGFR-2結合の特徴を示すグラフである。図6Aは、ヒトおよびマウスVEGFR-2に対する二重特異性を有する結合剤における、マウスVEGFR-2(Flk1)への結合にとっての79位および82位のアルギニンの重要性を示す。これらの位置をR以外のアミノ酸で置換した場合(X79=E、Q、W、P;X82=L、K)、Flk1への結合は顕著に減少したが、KDRへの結合は減少しなかった。図6Bは、フィブロネクチンに基づくKDR結合タンパク質における標的への結合にとっての、これらタンパク質の3つの可変ループ(BC、DE、およびFG)すべての重要性を示す。各ループをNNS配列によって1度に置換すると、KDRおよびFlk1に対する結合が影響された。結合データはE6およびE26クローンによる平均である。
【図7】ヒトKDR受容体(図7A)およびEpoR-Flk1キメラ(図7B)を発現するCHO細胞に対する、選択されたフィブロネクチンに基づく結合タンパク質の結合を示すグラフである。E18(-■-)、E19(-▲-)、E26(-▼-)、E29(-◆-)、および野生型(-□-)のフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質を試験した。対照CHOに対する結合は認められなかった(データは示さず)。
【図8】様々な量のフィブロネクチンに基づく結合タンパク質:E18(-■-)、E19(-▲-)、E26(-▼-)、E29(-◆-)、M5(-●-)、野生型(-□-)、および抗KDRまたは抗flk-1 Ab(-△-)の存在下における、KDRおよびFlk1を発現するBa/F3-KDR細胞(図8A)およびBa/F3-Flk-1細胞(図8B)のVEGF誘導性増殖の抑制を示すグラフである。データは2回の独立した実験の平均を表す。
【図9】様々な量のフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質:E18(-■-)、E19(-▲-)、E26(-▼-)、E29(-◆-)、M5(-●-)、野生型(-□-)の存在下におけるHUVEC増殖アッセイの結果を示すグラフである。示されるように、KDR結合タンパク質は増殖を約40%まで減少させた。
【図10】最適緩衝液中でのM5FLの可逆的リフォールディングを示すグラフのセットである。
【図11】PEG化型M5FLのSDS-PAGE解析を示す画像である。M、分子量マーカー[Sea Blue Plus、Invitorogen];‐、M5FLのみ;20、20 kD PEGを含むM5FL;40、40 kD PEGを含むM5FL。
【図12】様々な量のM5FL(-◆-)、M5FL PEG20(-■-)、およびM5FL PEG40(-▲-)それぞれによる、Ba/F3-KDR細胞のVEGF誘導性増殖の抑制を示すグラフである。PEG化は本アッセイにおいてM5FL活性にほとんど影響しない。
【図13】内皮細胞におけるVEGFR-2シグナル伝達のウェスタン解析を示す。ホスホVEGFR-2−リン酸化VEGFR-2の可視化。VEGFR-2−試料添加対照。ホスホERK1/2−リン酸化ERK1/2(MAPK)の可視化。ERK1−試料添加対照。結果から、130 pM CT-01がVEGF-AによるVEGFR-2活性化およびシグナル伝達を遮断することが実証された。
【図14】様々な10Fn3由来分子(例えば、M5FL、F10、CT-01)がVEGF-AおよびVEGF-Dシグナル伝達を遮断し得ることを示す。
【図15】静脈内投与および腹腔内投与した125I未変性CT-01、125I PEG化CT-01の比較を示す。CT-01は12 kDaタンパク質であり、血液から急速に排除される。40 kDa PEGを付加することにより、排除速度は1/10に低下し、AUCは10倍増大する。ラットにおける16時間という半減期は、ヒトにおける週に2回の投薬に相当する。投与経路が腹腔内であるCT-01-PEG40は、静脈内投与のたった50%のAUCを有する。
【図16】正常ラットにおける125I-CT01PEG40の組織分布を示す。125I-CT01PEG40の組織分布から、主に肝臓、次に腎臓を介する分泌が示される。これは、高分子量PEG型に期待されるものである。CT-01PEG40の長期蓄積は検出されない。
【図17】血管透過性を測定するMilesアッセイ法の概略図である。
【図18】Milesアッセイにより、CT-01がVEGFをインビボで遮断することを示す。結果から、5 mg/kg CT01-PEG40がVEGF投与を遮断することが示される。
【図19】B16-F10マウスメラノーマ腫瘍アッセイを用いて、CT-01が腫瘍増殖を抑制することを示す。
【図20】U87ヒト神経膠芽腫を用いて、CT-01が腫瘍増殖を抑制することを示す。
【図21】抗体軽鎖フレームワーク/骨格に基づくVEGFR結合ポリペプチドの配列(SEQ ID NO:241〜310)を示す。
【図22】免疫グロブリン折りたたみを有する単一ドメインポリペプチド(免疫グロブリンのVHドメイン、左側)および免疫グロブリン様折りたたみを有する単一ドメインポリペプチド(10Fn3ドメイン、右側)の構造構成を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)結合ポリペプチド、および血管内皮増殖因子(VEGF)によって媒介される生物活性を阻害するためのこれらのポリペプチドの使用法に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、「Inhibitors of Vascular Endothelial Growth Factor Receptors」という名称で2003年12月5日に出願した米国仮特許出願第60/527,886号の出願日の恩典を主張する。上記参照出願の教示はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血管新生は、既存の毛細血管または後毛細管細静脈から新たな血管が形成される過程であり;これは、排卵、胚発生、創傷修復、および心筋での側枝血管の生成を含む多くの生理学的過程の重要な構成要素である。血管新生はまた、腫瘍の増殖および転移、糖尿病網膜症、ならびに黄斑変性症などの多くの病理学的状態の中核をなす。多くの場合、この過程は、様々なサイトカインおよび増殖因子に応答した既存の血管内皮細胞の活性化から始まる。癌においては、腫瘍から放出さるサイトカインまたは血管新生因子が、特定の細胞表面受容体と相互作用することによって血管内皮細胞を刺激する。活性化された内皮細胞は血管の基底膜を分解する酵素を分泌し、内皮細胞が腫瘍組織に浸潤できるようになる。このような状態になったならば、内皮細胞は分化して既存の血管の新たな血管側枝を形成する。新たな血管は腫瘍に栄養分を提供し、よってさらなる増殖が促進され、また新たな血管は転移経路を提供する。
【0004】
今日までに、特に強力な因子VEGFを含む多くの血管新生因子が同定されている。VEGFは最初、濾胞星状細胞の馴化培地および種々の細胞株から精製された。最近になって、VEGFの多くの構造類似体および選択的スプライシング型が同定された。様々な形態のVEGFが、高親和性リガンドとして一連のVEGF受容体(VEGFR)に結合する。VEGFRはチロシンキナーゼ受容体であり、その多くは血管新生の重要な調節因子である。VEGFRファミリーは以下の3つの主要なサブタイプを含む:VEGFR-1、VEGFR-2(ヒトでは、キナーゼインサートドメイン受容体、「KDR」としても知られる)、およびVEGFR-3。VEGFの形態の中で、VEGF-A、VEGF-C、およびVEGF-Dは、VEGFR-2と結合し、これを活性化することが知られている。
【0005】
同族受容体を介して作用するVEGFは、血管新生過程において血管内皮特異的マイトジェンとして機能し得る。さらに、VEGFおよびVEGFRは、癌などの不適切な血管新生によって特徴づけられる状況において上方制御されているという実質的な証拠が存在する。その結果、多くの研究が、VEGFまたはVEGFRを標的にするおよび阻害する治療法の同定に重点を置いている。
【0006】
VEGFまたはVEGFRを標的にするまたは阻害する現在の治療アプローチには、抗体、ペプチド、および小分子キナーゼ阻害剤が含まれる。これらのうち抗体が、リガンドおよび細胞受容体のインビボ認識および阻害のために最も広く用いられている。高度に特異的な抗体は、受容体-リガンド相互作用を阻止し、それによってその成分の生物活性を中和するため、およびまた表面上に同族受容体を発現している細胞に毒物を特異的に送達するために用いられている。抗体は効果的ではあるものの、生成するのに組換え哺乳動物細胞における発現に依存する、大きく複雑な分子である。抗体はまた、補体経路の活性化および抗体介在性細胞傷害性を含む、望ましくない場合が多い様々な副作用をもたらす。その結果、不適切な血管新生によって特徴づけられる癌などの疾患の治療として、VEGF/VEGFR経路を特異的に阻害し得る有効な治療法の必要性が残っている。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
一つには、本開示は、VEGFR-2受容体、特にヒトVEGFR-2(KDRとしても知られる)およびマウスVEGFR-2(Flk-1としても知られる)に結合する新規な単一ドメインポリペプチドを提供する。本明細書に記載するVEGFR-2結合タンパク質は、例えば、インビボまたはインビトロでVEGFR-2を検出するために使用できる。さらに、本明細書に記載する特定のVEGFR-2結合タンパク質は、VEGFR-2媒介性生物活性に関連する疾患を治療するために使用できる。例えば、KDRはVEGFの血管新生促進作用を媒介するため、本開示の特定のKDR結合タンパク質はヒト患者において血管新生を抑制するために使用できる。本開示の特定のVEGFR-2結合タンパク質は、癌、炎症性疾患、自己免疫疾患、および網膜症などの疾患を治療するために使用できる。組織の細胞の過剰増殖に関連した多くの疾患は血管新生成分を含むと考えられ、したがって本明細書に記載する特定のVEGFR-2結合タンパク質を用いてそのような疾患を治療し得ることが期待される。
【0008】
本明細書に記載する単一ドメインポリペプチドは一般にVEGFR-2などの標的に結合するポリペプチドであり、標的結合活性は、抗原結合活性が一般に重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの両方によってもたらされる抗体および一本鎖抗体とは区別されて、単一構造ドメイン内に存在する。本開示はまた、標的に結合する単一ドメインポリペプチドを含み得るより大きなタンパク質を提供する。例えば、結合活性が増加した複合分子を作製するために、複数の単一ドメインポリペプチドを結合することができる。同様に、単一ドメインポリペプチドを多くの他のポリペプチドに(例えば、融合タンパク質として)結合することができる。特定の局面において、単一ドメインポリペプチドは、免疫グロブリンドメインおよび免疫グロブリン様ドメインによって例証される、少なくとも2つのβシートに内に分布する少なくとも5〜7個のβストランドまたはβ様ストランドを含み得る。β様ストランドとは、単一ドメインポリペプチドの安定化に関与するが、必ずしもβストランドの高次構造をとるとは限らないアミノ酸の鎖である。β様ストランドがタンパク質の安定化に関与しているかどうかは、その鎖を欠失させるかまたは鎖の配列を変更し、タンパク質の安定性が減少するかどうかを解析することによって評価し得る。安定性は、例えば熱変性および再生実験によって評価することができる。好ましくは、単一ドメインポリペプチドは2つ以下のβ様ストランドを含む。β様ストランドは通常αヘリックス高次構造をとらず、ランダムコイル構造をとり得る。免疫グロブリンドメインまたは免疫グロブリン様ドメインでは、β様ストランドは、そうでなければ最もN末端側のβストランドまたは最もC末端側のβストランドによって占有される構造内の位置に存在する場合が最も多い。タンパク質配列の内部に位置する場合に通常βストランドを形成するアミノ酸鎖は、N末端またはC末端に近い位置に位置する場合、明白にはβストランドではなく、本明細書においてβ様ストランドと称する高次構造をとり得る。
【0009】
特定の態様において、本開示は、VEGFR-2に結合する単一ドメインポリペプチドを提供する。好ましくは、単一ドメインポリペプチドはヒトKDR、マウスFlk-1、またはその両方に結合する。単一ドメインポリペプチドは、少なくとも2つのβシートの間に分布する少なくとも7つのβストランドまたはβ様ストランド、および2つのβストランドまたはβ様ストランドを結合する、VEGFR-2への結合に関与する少なくとも1つのループ部分を含む構造構成を有する約80〜約150アミノ酸を含み得る。すなわち、ループ部分は2つのβストランド、2つのβ様ストランド、または1つのβストランドと1つのβ様ストランドを結合し得る。典型的に、1つまたは複数のループ部分はVEGFR-2結合に関与するが、1つのまたは複数のβストランドまたはβ様ストランド部分、特にループ部分に最も近接して位置するβストランドまたはβ様ストランド部分もまたVEGFR-2結合に関与する可能性がある。単一ドメインポリペプチドは、免疫グロブリンドメインまたは免疫グロブリン様ドメインである構造単位を含み得る。単一ドメインポリペプチドはVEGFR-2の任意の部分に結合し得るが、VEGFR-2の細胞外ドメインに結合するポリペプチドが好ましい。結合は、平衡定数(例えば、解離、KD)に関して、および速度定数(例えば、結合速度定数、Kon、および解離速度定数、koff)に関して評価され得る。単一ドメインポリペプチドは典型的に、10-6M未満、または10-7M、5x 10-8M、10-8M未満、もしくは10-9M未満のKDでVEGFR-2に結合するように選択される。VEGFR-2結合ポリペプチドは、VEGFファミリーの1つ、2つ、またはそれ以上のメンバー、特にVEGF-A、VEGF-C、およびVEGF-Dとの結合に関して競合し得り、血管内皮細胞の増殖、血管の透過化、および血管内皮細胞の運動性の増加などの1つまたは複数のVEGFR-2媒介性生物学的事象を抑制し得る。VEGFR-2結合ポリペプチドは、治療目的に、およびVEGFR-2の検出または結合が関与する任意の目的に使用することができる。治療に使用するためのポリペプチドは一般に、5x10-8M未満、10-8M未満、または10-9M未満のKDを有するが、koffが十分に低いかまたはkonが十分に高い場合にはより高いKD値も許容され得る。特定の態様において、VEGFR-2に結合する単一ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、およびSEQ ID NO:4からなる群より選択される共通VEGFR-2結合配列を含む。好ましくは、そのような配列はループ、特にFGループ内に位置している。
【0010】
特定の態様において、単一ドメインポリペプチドは、免疫グロブリン(Ig)可変ドメインを含む。Ig可変ドメインは、例えば、ヒトVLドメイン、ヒトVHドメイン、およびラクダVHHドメインからなる群より選択され得る。Ig可変領域の1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のループはVEGFR-2への結合に関与し得り、典型的にCDR1、CDR2、またはCDR3として知られるループのいずれかがVEGFR-2結合に関与する。
【0011】
特定の態様において、単一ドメインポリペプチドは免疫グロブリン様ドメインを含む。免疫グロブリン様ドメインの1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のループは、VEGFR-2への結合に関与し得る。好ましい免疫グロブリン様ドメインは、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)ドメインである。そのようなドメインは、N末端からC末端の順に、βストランドまたはβ様ストランド、A;ループ、AB;βストランド、B;ループ、BC;βストランド C;ループ CD;βストランド D;ループ DE;βストランド F;ループ FG;およびβストランドまたはβ様ストランド Gを含み得る。構造構成の例として、図22を参照されたい。任意に、ループAB、BC、CD、DE、EF、およびFGのいずれかまたはすべてがVEGFR-2結合に関与し得るが、好ましいループはBC、DE、およびFGである。好ましいFn3ドメインはヒトフィブロネクチンに由来するFn3ドメインであり、特に10Fn3と称されるフィブロネクチンの10番目のFn3ドメインである。本明細書に開示するいずれのVEGFR-2結合ポリペプチドも、天然10Fn3と同一のアミノ酸配列を有さないこと;配列はVEGFR-2結合タンパク質が得られるように改変されているが、タンパク質は10Fn3の基本的な構造特性を有すること、および特に、天然10Fn3との認識できる配列相同性を保持するものをそれでもなお本明細書では「10Fn3ポリペプチド」と称することに留意されたい。この命名法は、例えば、特定の標的タンパク質に対して作製された組換え抗体VLドメインは任意の天然VLドメインと同一ではない場合もあるが、それにもかかわらずこのタンパク質がVLタンパク質と承認される、抗体分野において認められる命名法と類似している。10Fn3ポリペプチドは、SEQ ID NO:5に示すヒト10Fn3ドメインと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%同一であってよい。可変性の大部分は一般に、1つまたは複数のループ内に存在する。そのような可変性が生理的条件においてポリペプチドの安定性を破壊しないならば、10Fn3ポリペプチドのβストランドまたはβ様ストランドはそれぞれ本質的に、SEQ ID NO:5の対応するβストランドまたはβ様ストランドの配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一であるアミノ酸配列からなってよい。10Fn3ポリペプチドは、SEQ ID NO:5の対応するループの配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一であるアミノ酸配列から本質的になるループAB、CD、およびEFの配列をそれぞれ有し得る。多くの場合、ループBC、DE、およびFGのいずれかまたはすべては、SEQ ID NO:5と比較して保存性が低い。例えば、ループBC、DE、およびFGはすべて、SEQ ID NO:5の対応するループと20%、10%未満、または0%の同一性であってよい。
【0012】
特定の態様において、本開示は、VEGFR-2に結合する免疫グロブリン様折りたたみを有するドメインを含む非抗体ポリペプチドを提供する。非抗体ポリペプチドは20 kDa未満または15 kDa未満の分子量を有し得り、一般に(例えば、アミノ酸配列の変更により)Fn3骨格などの参照または「骨格」タンパク質に由来する。非抗体ポリペプチドは、10-6M未満、または10-7M未満、5x10-8M未満、10-8M未満、もしくは10-9M未満のKDでVEGFR-2と結合し得る。未改変の参照タンパク質はVEGFR-2に意味をもって結合しないか、または10-6Mを超えるKDで結合する。非抗体ポリペプチドは、特に5x10-8M未満、10-8M未満、または10-9M未満のKDを有する場合にVEGFシグナル伝達を阻害し得るが、koffが十分に低い場合には(例えば、5x10-4 S-1)それよりも高いKD値も許容され得る。免疫グロブリン様折りたたみは10Fn3ポリペプチドであってよい。
【0013】
特定の態様において、本開示は、VEGFR-2に結合する免疫グロブリン折りたたみを有する単一ドメインを含むポリペプチドを提供する。ポリペプチドは20 kDa未満または15 kDa未の分子量を有し得り、一般に(例えば、アミノ酸配列の変更により)免疫グロブリンの可変ドメインに由来する。ポリペプチドは、10-6M未満、または10-7M未満、5x10-8 M未満、10-8M未満、もしくは10-9M未満のKDでVEGFR-2と結合し得る。ポリペプチドは、特に5x10-8M未満、10-8M未満、または10-9M未満のKDを有する場合にVEGFシグナル伝達を阻害し得るが、koffが十分に低いかまたはkonが十分に高い場合にはそれよりも高いKD値も許容され得る。特定の好ましい態様において、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインに由来する免疫グロブリン折りたたみを有し、VEGFR-2に結合し得る単一ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:241〜310からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0014】
特定の好ましい態様において、本開示は、SEQ ID NO:192〜194のいずれかのアミノ酸配列を含むVEGFR-2結合タンパク質を提供する。SEQ ID NO:194のアミノ酸配列を含むポリペプチドの場合、関心対象のPEG部分または他の部分を93位にシステインに共有結合することができる。PEG部分はまた、ポリペプチド内のアミン部分に共有結合することもできる。アミン部分は、例えば、ポリペプチドのN末端に見出される1級アミンまたはリジンもしくはアルギニンなどのアミノ酸内に存在するアミン基であってよい。特定の態様において、PEG部分は、a) N末端、b) N末端と最もN末端側のβストランドまたはβ様ストランドの間;c) 標的結合部位と反対側のポリペプチド面上に位置するループ;d) C末端と最もC末端側のβストランドまたはβ様ストランドの間;およびe) C末端からなる群より選択されるポリペプチド上の位置に結合される。
【0015】
特定の局面において、本開示は、VEGFR-2結合を媒介する短いペプチド配列を提供する。そのような配列は、単離された形態で、または免疫グロブリもしくは免疫グロブリン様ドメインなどの特定のタンパク質構造内に挿入された場合に、VEGFR-2結合を媒介し得る。そのような配列の例には、SEQ ID NO:1〜4として開示される配列、およびSEQ ID NO:1〜4と少なくとも85%、90%、または95%同一であり、かつVEGFR-2結合活性を保持する他の配列が含まれる。したがって本開示は、SEQ ID NO:1〜4のいずれかの配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、VEGFR-2に結合し、かつVEGFR-2への結合に関してVEGF種と競合する実質的に純粋なポリペプチドを提供する。そのようなポリペプチドの例には、SEQ ID NO:6〜183、186〜197、および199のいずれかの配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれる。好ましくは、そのようなポリペプチドはVEGFの生物活性を阻害し、10-6M未満、または10-7M未満、5x10-8M未満、10-8M未満、もしくは10-9M未満のKDでVEGFR-2と結合し得る。
【0016】
特定の態様においては、本明細書に記載するVEGFR-2結合ポリペプチドのいずれかを、例えば、同様にVEGFR-2に結合する部分(例えば、第2の同一なまたは異なるVEGFR-2結合ポリペプチド)、異なる標的に結合する部分(例えば、二重特異性性結合剤を作製するため)、標識部分、タンパク質の精製を容易にする部分、または改善された薬物動態を提供する部分を含む、1つまたは複数のさらなる部分と結合することができる。薬物動態の改善は、認知される治療必要性に従って評価され得る。おそらくは投薬後にタンパク質が血清中に利用できる状態で残存する時間を延長することによって、生物学的利用能を増加させることおよび/または投薬間の時間を延長することが望ましい場合が多い。場合によっては、長期にわたるタンパク質の血清濃度の継続性を改善すること(例えば、投与の直後および次の投与の直前のタンパク質の血清濃度の相違を減少させること)が望ましい。血液からのタンパク質排除を遅延させる傾向がある部分には、ポリエチレングリコール、糖(例えば、シアル酸)、および許容性の良好なタンパク質部分(例えば、Fc断片または血清アルブミン)が含まれる。単一ドメインポリペプチドは、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、またはヒト)におけるポリペプチドの排除速度を未修飾ポリペプチドの1/3未満に減少させる部分に結合させることができる。薬物動態の改善の他の尺度には血中半減期が含まれ得り、血中半減期はα相とβ相に分類される場合が多い。適切な部分を付加することによって、これらの相の一方または両方を改善することができる。ポリエチレングリコールを使用する場合、1つまたは複数のPEG分子をタンパク質の異なる位置に結合することができ、そのような結合は、アミン、チオール、または他の適切な反応基との反応によって達成され得る。PEG化は、適切な反応基をタンパク質に導入して、PEG化が優先的に起こる部位を作製する、部位特異的PEG化によって達成され得る。好ましい態様において、タンパク質は、所望の位置でシステイン残基を有し、システインにおける部位特異的PEG化が可能になるように改変される。PEGの分子量は広範囲にわたり様々であってよく、PEGは分岐していても直鎖状であってもよい。特に本開示は、PEG化が10Fn3ポリペプチドの標的結合活性と適合し得ること、およびさらにPEG化によってそのようなポリペプチドの薬物動態が改善されることを証明する。したがって、1つの態様において本開示は、そのようなポリペプチドが結合し得る標的にかかわらず、PEG化型の10Fn3ポリペプチドを提供する。
【0017】
特定の態様において、本開示は、本明細書に開示するVEGFR-2結合ポリペプチドのいずれかを含む製剤を提供する。製剤は、VEGFR-2結合ポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む治療製剤であってよい。製剤はまた、抗癌剤または抗血管新生剤などのさらなる活性物質を含む複合製剤であってよい。
【0018】
特定の局面において、本開示は、細胞中のVEGF生物活性を阻害するため、またはVEGFR-2によって媒介される生物活性を阻害するために、VEGFR-2結合タンパク質を使用する方法を提供する。細胞はインビボに存在してもエクスビボに存在してもよく、例えば生体の細胞、培養細胞、または組織試料中の細胞であってよい。本方法は、細胞を、本明細書において開示するVEGFR-2阻害ポリペプチドのいずれかと、そのような生物活性を阻害するのに十分な量でおよび十分な時間接触させる段階を含み得る。
【0019】
特定の局面において、本開示は、VEGFまたはVEGFR-2の阻害に応答する病態を有する患者を治療する方法を提供する。そのような方法は、患者に、本明細書に記載するVEGFR-2阻害ポリペプチドのいずれかの有効量を投与する段階を含み得る。病態は、不適切な血管新生によって特徴づけられる病態であってよい。病態は過剰増殖性病態であってよい。治療に適した病態(または疾患)の例には、自己免疫疾患、炎症性疾患、網膜症(特に増殖性網膜症)、および癌が含まれる。疾患、特に自己免疫疾患、炎症性疾患、網膜症、および癌からなる群より選択される疾患を治療する医薬品を調製するために、本明細書に記載するVEGR-2阻害ポリペプチドのいずれかを使用することができる。
【0020】
特定の局面において、本開示は、試料中のVEGFR-2を検出する方法を提供する。方法は、ポリペプチド-VEGFR-2複合体が形成され得る条件下で、試料を本明細書に記載するVEGFR-2結合ポリペプチドと接触させる段階;および複合体を検出し、それによって試料中のVEGFR-2を検出する段階を含み得る。検出は、例えば、X線検査、免疫学的アッセイ、蛍光検出、質量分析、または表面プラズモン共鳴など、当技術分野において周知である任意の技法を用いて実施し得る。試料は、生検試料、特に腫瘍の生検試料、疑わしい腫瘍、または望ましくない血管新生を起こしていることが疑われる組織などの生物試料である場合が多い。試料は、ヒトまたは他の哺乳動物に由来し得る。VEGFR-2結合ポリペプチドは、放射性部分、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、ハプテン部分などで標識することができる。VEGFR-2結合ポリペプチドは、固体支持体上に固定化してもよい。
【0021】
本開示の別の局面は、本明細書に掲示するポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸に関する。特定の態様において、核酸は、SEQ ID NO:6〜183、186〜197、199、および241〜528のいずれかからなる群より選択されるポリペプチドをコードする核酸配列を含み得る。特定の態様において、核酸は、ストリンジェントな条件においてSEQ ID NO:184の核酸配列とハイブリダイズし、ヒトKDRと1x10-6M未満のKDで結合するポリペプチドをコードする核酸配列を含む。特定の態様において、核酸は、SEQ ID NO:184およびSEQ ID NO:185からなる群より選択される核酸配列を含み得る。
【0022】
本開示のさらなる局面は、プロモーターと機能的に連結された、本明細書に開示するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターに関する。本開示の別の局面は、本明細書に開示する核酸を含む細胞に関する。また、本開示のポリペプチドをコードする核酸を発現させる段階を含む、VEGFR-2、例えばKDRと結合するポリペプチドを生成する方法を提供する。特定の態様において、核酸は、SEQ ID NO:6〜183、186〜197、199、および241〜528のいずれかからなる群より選択されるポリペプチドをコードする配列を含み得る。特定の局面において、核酸は、ストリンジェントな条件においてSEQ ID NO:184の核酸配列とハイブリダイズする配列を含む。特定の態様において、核酸は、SEQ ID NO:184およびSEQ ID NO:185からなる群より選択される核酸配列を含む。特定の態様において、核酸は細胞内で発現される。または、核酸は無細胞系で発現される。
【0023】
特定の局面において、本開示は、ポリペプチドがどの標的に結合するように操作されるかにかかわらず、任意の10Fn3ポリペプチドに適用できる発見を提供する。上記のように、本開示は、PEGを用いて、標的結合を大きく妨げることなく10Fn3ポリペプチドの薬物動態の改善に成功し得ることを実証する。したがって本開示は、標的に結合し、かつ非PEG化ポリペプチドと比較して改善された薬物動態を有するPEG化10Fn3ポリペプチドを提供する。さらなる態様において、本開示は、10Fn3ポリペプチドの最初の8アミノ酸を欠失させることで、標的結合親和性が増加し得ることを実証する。したがって本開示は、最初の8アミノ酸(SEQ ID NO:5の配列を参照にして番号付けされたアミノ酸)を欠く10Fn3ポリペプチドを提供する。翻訳および適切なプロセシングを促進するために、1つまたは2つのアミノ酸を欠失型のポリペプチドに付加し得ることが理解される。本開示は、10Fn3ポリペプチドの皮下投与によって、ポリペプチドの血流への放出が遅延されること、および10Fn3ポリペプチドの最大血清濃度が減少することを実証する。したがって本開示は、皮下投与によって患者に10Fn3ポリペプチドを投与する方法を提供する。この投与経路は、静脈内投与と比較して放出の遅延を達成するために、および/または同等の投与量を静脈内投与することによって達成される最大血清濃度と比較して、10Fn3ポリペプチドの最大血清濃度を少なくとも25%または少なくとも50%減少させるために有用であり得る。投与する10Fn3ポリペプチドは、ポリエチレングリコール部分など、10Fn3ポリペプチドの血中半減期を延長させる(または排除速度を減少させる、もしくは同様に別の薬物動態パラメータに影響を及ぼす)部分と結合することができる。好ましくは、投与する10Fn3ポリペプチドは、SEQ ID NO:5と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0024】
特定の局面において、本開示は、第1哺乳動物に由来する予め選択された標的タンパク質、および第2哺乳動物に由来するその相同体に結合する単一ドメインポリペプチドを提供する。そのような単一ドメインポリペプチドは、第1哺乳動物がヒトであり、第2哺乳動物が、マウス、ラット、モルモット、イヌ、または非ヒト霊長動物など、前臨床試験を行うのに望ましい哺乳動物である場合に、特に有用である。本開示は、そのような二重特異性を有するように単一ドメインポリペプチドを操作できること、ならびに二重特異性によって、ヒト細胞、ヒト対象、および動物モデルにおいて同じポリペプチドを試験できることで、薬物開発が簡便になることを実証する。好ましくは、二重特異性ポリペプチドが作製できるように、第1哺乳動物の予め選択された標的タンパク質と第2哺乳動物に由来するその相同体のアミノ酸配列は、十分に類似している。例えば、予め選択された標的タンパク質および第2哺乳動物に由来する相同体は、少なくとも50アミノ酸の領域にわたり少なくとも80%、90%、または95%の同一性を共有し得り、任意には全タンパク質配列にわたり、または膜タンパク質の場合には細胞外ドメインの配列にわたり、少なくとも80%、90%、または95%の同一性を共有し得る。この種類の二重特異性結合特性を有する単一ドメインポリペプチドは、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様ドメインを含み得り、好ましくは、1x10-6M、1x10-7M、5x10-8M、1x10-8M、または1x10-9M未満の解離定数で、予め選択されたヒト標的タンパク質およびその相同体の両方に結合する。
【0025】
発明の詳細な説明
1. 概要
本明細書はとりわけ、VEGFR-2受容体に結合する新規な単一ドメインポリペプチドの同定および生成について記載する。ヒトではKDRおよびマウスではFLK-1とも称されるVEGFR-2は、VEGFシグナル伝達の血管新生促進効果の主要なメディエーターである。VEGFR-2にはVEGF-A、VEGF-C、およびVEGF-Dが結合し、VEGFR-2はこれらによって活性化される。血管内皮細胞では、VEGFR-2の活性化によって細胞の増殖および遊走が促進され、インビボでは、VEGFR-2の活性化によって血管新生が誘発され、また脈管構造の透過性が増加する。血管新生の増大は腫瘍増殖および様々な網膜症の重要な特徴として確立しており、脈管構造の透過性の増加は多くの炎症反応における重要な事象である。
【0026】
本開示は、VEGFR-2に結合する何百もの単一ドメインポリペプチドを提供するが、その多くはインビトロおよび/またはインビボVEGFアンタゴニスト活性を示す。VEGFアンタゴニスト活性を有する単一ドメインポリペプチドは、多くの治療用途において有用であると考えられる。抗KDR抗体は、癌および癌に起因する合併症から増殖性網膜症、炎症性疾患、および線維症にわたる疾患および病態に対して、インビボ有用性を有するとして確立されている。本明細書に提示するインビボおよびインビトロデータによれば、単一ドメインポリペプチドは同じ疾患範囲の治療において有用であると考えられる。
【0027】
治療用途に加えて、VEGFR-2結合単一ドメインポリペプチドは、VEGFR-2を検出することが望ましい任意の状況において使用することができる。例えば、造血系統の特に有用な細胞を含む多くの幹細胞はVEGFR-2を発現する。KDR結合ポリペプチドを特に標識形式で使用して、幹細胞を検出することおよび細胞選別を容易にすることができる。インビボでは、標識VEGFR-2結合ポリペプチドを用いて、VEGFR-2が発現されている組織を画像化することができる。VEGFR-2発現の上昇は、特に高レベルの血管新生活性または炎症活性を表している組織に特有である。組織試料の組織学的解析もまた、VEGFR-2の検出から恩恵を受け得る。例えば、抗VEGFR-2または抗VEGF治療の有効可能性を評価するために、腫瘍生検試料においてVEGFR-2発現を検出することが望ましい場合がある。興味深いことに、本明細書に開示するVEGFR-2結合タンパク質の多くは、ナノモル濃度の解離定数でVEGFR-2に結合するにもかかわらず、VEGFR-2媒介性生物学的事象に有意な効果を及ぼし得ない。したがってそのような結合タンパク質は、VEGFR-2媒介性事象を有意に撹乱することなくVEGFR-2を発現する細胞を選択的に標識することが望ましい場合が多い、インビボ可視化法または細胞標識法において有用であり得る。
【0028】
本開示は、VEGFR-2への結合に重要である新規単一ドメインポリペプチドおよびアミノ酸モチーフを同定するための、核酸-タンパク質融合物(RNA-タンパク質およびDNA-タンパク質融合物)を利用する、PROfusion(商標)と称されるインビトロディスプレイ技術の使用について記載する。核酸-タンパク質融合技術とは、タンパク質をそのコード遺伝情報と共有結合させるディスプレイ技術である。PROfuion(商標)技術を用いて、ヒトフィブロネクチンタイプ3ドメイン(10Fn3)に基づく骨格を使用して構築された、または抗体軽鎖の可変ドメインから構築された単一ドメインポリペプチドをコードする核酸の集合体をスクリーニングした。発現されるポリペプチドは骨格タンパク質の「ライブラリー」と称されるが、これを高親和性でVEGFR-2と結合し得るポリペプチドに関してスクリーニングした。本発明者らは、骨格タンパク質のこのライブラリーから、VEGFR-2に結合し、場合によってはVEGF生物活性を阻害する新規な単一ドメインポリペプチドを単離した。さらに、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様骨格内に位置する多くの独立してランダム化したループが、VEGFR-2結合に関与する共通配列の関連セットに収束する傾向があることが見出された。したがって、これらの共通配列を有するポリペプチドは、これらが同定されたタンパク質状況から分離された場合でさえも、VEGFR-2結合剤として有用であることが予想される。例えば、SEQ ID NO1〜4を参照されたい。そのようなポリペプチドは、独立した小ペプチドVEGFR-2結合剤として使用し得り、または他のタンパク質、特に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様折りたたみを共有するタンパク質内に位置し得る。
【0029】
上記したように、本開示は、VEGFR-2への高親和性結合、VEGF-A、VEGF-C、またはVEGF-Dの1つまたは複数に関するアンタゴニスト作用、および薬物動態の改善などの特定の所望の特性を有する単一ドメインポリペプチドが、有効な抗癌剤として使用され得ることを実証する。抗癌剤としてのそのようなポリペプチドの有効性は、癌における血管新生の役割に関連していることが予想されるが、本発明者らは任意の特定の機構に縛られることを望まない。形式上、本単一ドメインポリペプチドが、血管新生過程とは無関係の理由で癌に対して有効であるという可能性もある。
【0030】
本発明者らの知る限り、本開示は、インビボでの治療効果を達成するためにFn3に基づくポリペプチドを使用する、初めて成功した試みである。インビボ有効性を達成するためになされた改善および発見の多くは、Fn3に基づく他のポリペプチドにも広く適用できると考えられる。すなわち、Fn3に基づくポリペプチドのリガンド結合特性は一般に、溶媒接近ループ領域内に位置する比較的少数のアミノ酸によって決定されるが、Fn3に基づくポリペプチドの薬物動態特性などの他の特性は、リガンド結合に直接関与せず、また標的タンパク質にかかわらずタンパク質間で保存されているタンパク質の大部分によって決定される傾向がある。これは、CDR領域と称される少数のループが抗原結合を媒介し、インビボ抗体挙動の他の特性は主として保存されたフレームワーク領域および定常ドメインによって決定される抗体にも当てはまる。
【0031】
「阻害する」とは、本明細書においては以下のいずれかに関して使用される場合が多い、現象の測定可能な減少を意味する:ポリペプチド処理していない対照試料と比較した、VEGFとVEGFRとの相互作用、VEGFもしくはVEGFR媒介性血管新生、血管新生、血管新生の症状、VEGFR含有細胞の生存度、VEGF依存性Ba/F3細胞の生存度、またはVEGFもしくはVEGFR媒介性細胞増殖。活性または相互作用の減少が少なくとも10%、好ましくは20%、30%、40%、または50%、より好ましくは60%、70%、80%、90%、またはそれ以上である場合、ポリペプチドはVEGFまたはVEGFR-2媒介性活性を阻害することになる。
【0032】
「VEGF結合活性」とは、任意のVEGF受容体を介して作用する、しかし特にVEGFR-2受容体を介してシグナル伝達する任意のVEGFファミリーメンバーの任意の機能を意味する。VEGFファミリーには、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、および胎盤増殖因子(PIGF)、ならびにVEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF189、およびVEGF206を含むVEGFの種々の選択的スプライシング型が含まれる(Tischer et al., J. Biol. Chem, 266:11947-11954, 1991)。チロシンキナーゼ受容体のVEGFRファミリーには、VEGFR-1(Flt-1としても知られる)、VEGFR-2(KDR(ヒト型)またはFlk-1(マウス型)としても知られる)、およびVEGFR-3(Flt-4としても知られる)が含まれる。VEGFリガンドはVEGF受容体に結合し、例えば血管新生、脈管形成、内皮細胞増殖、血管拡張、および細胞遊走を誘導する。VEGFリガンドはまた、同族受容体への結合を介してアポトーシスを抑制し得る。VEGFR-2は、血管新生に最も関与しているVEGFRであると考えられている。VEGFR-2またはKDR媒介性生物活性とは、VEGFR-2またはKDRの拮抗作用によって生物活性の測定可能な減少が起こるような、VEGFR-2またはKDRが著しく関与する任意の生物学的機能である。VEGFおよびVEGFRの生物活性は、当技術分野において周知である標準的なアッセイ法によって測定することができる。例には、リガンド結合アッセイ法およびスキャッチャードプロット解析;受容体二量体化アッセイ法;細胞リン酸化アッセイ法;チロシンキナーゼリン酸化アッセイ法(例えば、Meyer et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 995:200-207, 2003);BrdU標識実験および細胞計数実験などの内皮細胞増殖アッセイ法;VEGF依存性細胞増殖アッセイ法;ならびに血管新生アッセイ法が含まれる。血管新生を測定する方法は標準的であり、例えばJain et al.(Nat. Rev. Cancer 2:266-276, 2002)に記載されている。血管新生は、非分岐血管区域の数(単位面積当たりの区域の数)、機能的血管密度(単位面積当たりの灌流血管の全長)、血管径、脈管の形成、または血管容量密度(単位面積当たりの、各区域の長さおよび直径に基づいて計算された全血管容量)を測定することにより評価することができる。VEGF媒介性増殖および血管新生の例示的なアッセイ法は、米国特許第6,559,126号、Lyden et al, Nature Medicine 7:1194 (2001)、Jacob et al, Exp. Pathol. 15:1234 (1978)、およびBae et al, J. Biol. Chem. 275:13588 (2000)に見出され得る。これらのアッセイは精製受容体もしくはリガンドまたはその両方を用いて行うことができ、またインビトロでもインビボでも行うことができる。これらのアッセイはまた、遺伝子導入されたまたは天然のリガンドもしくは受容体またはその両方を用いて細胞内で行うことができる。VEGFの生物活性を阻害するポリペプチドは、VEGFの生物活性の少なくとも10%の減少、好ましくは20%、30%、40%、または50%、より好ましくは60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の減少をもたらす。生物活性の阻害はまた、IC50によって測定され得る。好ましくは、VEGFまたはVEGFR-2の生物活性を阻害するポリペプチドは、100 nM未満、より好ましくは10 nM未満、最も好ましくは1 nM未満のIC50を有する。
【0033】
2. ポリペプチド
本明細書に記載する方法を用いて、2つの関連するタンパク質構造群:免疫グロブリン折りたたみを有するタンパク質および免疫グロブリン様折りたたみを有するタンパク質に由来する単一ドメインVEGFR-2結合ポリペプチドを作製することに成功した。「ポリペプチド」とは、長さ、翻訳後修飾、または機能にかかわらず、2つまたはそれ以上のアミノ酸の任意の配列を意味する。「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において互換的に用いられる。ポリペプチドは、天然アミノ酸、および参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,559,126号に記載されているような非天然アミノ酸を含み得る。ポリペプチドはまた、種々の標準的な化学的方法のいずれかで修飾され得る(例えば、アミノ酸を保護基で修飾することができる;カルボキシ末端アミノ酸を末端アミド基にすることができる;アミノ末端残基を、例えば親油性を増強させる基で修飾することができる;または安定性もしくはインビボ半減期を増大させるために、ポリペプチドを化学的にグリコシル化するかもしくは別の方法で修飾することができる)。ポリペプチド修飾は、ポリペプチドへの環式化合物などの別の構造または他の分子の結合を含み得り、また立体配置が変化した(すなわち、RもしくはS;またはLもしくはD)1つまたはそれ以上のアミノ酸を含むポリペプチドを含み得る。「単一ドメインポリペプチド」という用語は、対象ポリペプチドの標的結合活性(例えば、VEGFR-2結合活性)が、例えば、抗原結合活性が一般に重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの両方によってもたらされる抗体および一本鎖抗体とは区別されて、単一構造ドメイン内に存在することを示すために用いられる。結合活性が増加した複合分子を作製するために、本明細書に開示するような複数の単一ドメインポリペプチドを結合し得ることが意図される。同様に、単一ドメインポリペプチドを、蛍光ポリペプチド、標的化ポリペプチド、および異なる治療効果を有するポリペプチドなどの多くの他のポリペプチドに(例えば、融合タンパク質として)結合することができる。
【0034】
免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様骨格の単一ドメインポリペプチドは、特定の構造特性を共有する傾向がある。例えば、ポリペプチドは約80〜約150アミノ酸を含み得り、アミノ酸は一連のβストランドまたはβ様ストランドに構造的に構成されて、βストランドまたはβ様ストランドが介在ループ部分によって結合されたβシートを形成する。重鎖可変ドメインおよび10Fn3ドメインの構造構成の例を図22にす。βシートは単一ドメインポリペプチドの安定な核を形成し、また一方でβストランドまたはβ様ストランドを結合するループから構成される2つの「面」を形成する。本明細書に記載するように、これらのループを変更して要望に合わせたリガンド結合部位を作製することができ、適切な対照を使用することで、タンパク質の全体的な安定性を破壊することなくそのような変更物を作製することができる。抗体では、これらのループのうちの3つは周知の相補性決定領域(または「CDR」)である。
【0035】
単一ドメインポリペプチドを形成するための骨格は、生理的条件において高度に可溶性であり安定であるべきである。免疫グロブリン骨格の例は、単一ドメインVHもしくはVL骨格および単一ドメインラクダVHHドメイン(ラクダで見出された重鎖可変ドメインの形態)、または天然で見出されるもしくは実験室において操作された他の免疫グロブリン可変ドメインである。本明細書に開示する単一ドメイン形式では、免疫グロブリンポリペプチドは、結合活性を獲得するために第2ポリペプチドと二量体を形成する必要がない。したがって、第2タンパク質とのジスルフィド架橋結合を媒介するシステインを天然に含む任意のそのようなポリペプチドは、システインを除去するように変更され得る。または、単一ドメインポリペプチドにPEGなどのさらなる部分を結合するのに使用するため、システインは保持され得る。
【0036】
他の骨格は、非抗体骨格タンパク質であってよい。「非抗体骨格タンパク質またはドメイン」とは、免疫グロブリン様折りたたみを有する非抗体ポリペプチドを意味する。「抗体様折りたたみ」とは、2層の逆平行βシートを含み、2つのβシートの平らな疎水面が相互に向かい合って詰め込まれた約80〜150アミノ酸残基のタンパク質ドメインを意味する。そのような骨格の例は「フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質」であり、これはフィブロネクチンタイプIIIドメイン(Fn3)に基づくポリペプチドを意味する。フィブロネクチンは、細胞外基質の形成および細胞間相互作用において重要な役割を果たす大きなタンパク質であり;これは、3つのタイプ(タイプI、II、およびIII)の小さなドメインの多くの繰り返しからなる(Baron et al., 1991)。Fn3自体は、細胞接着分子、細胞表面ホルモン受容体およびサイトカイン受容体、シャペロニン、ならびに糖質結合ドメインの一部を含む大きなサブファミリーの模範例である。総説に関しては、Bork & Doolittle, Proc Natl Acad Sci U S A. 1992 Oct 1;89(19):8990-4;Bork et al., J Mol Biol. 1994 Sep 30;242(4):309-20;Campbell & Spitzfaden, Structure. 1994 May 15;2(5):333-7;Harpez & Chothia, J Mol Biol. 1994 May 13;238(4):528-39)を参照されたい。
【0037】
好ましくは、フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質は「10Fn3」骨格であり、これは、1つまたは複数の溶媒接近ループ、特にBCループ(アミノ酸20〜30)、DEループ(アミノ酸52〜56)、およびFGループ(アミノ酸77〜87)として同定される3つのループの1つまたは複数がランダム化されるまたは変異された、ヒトフィブロネクチンタイプIIIタンパク質の10番目のモジュールに基づくポリペプチド変種を意味する(番号付けの図式はヒトフィブロネクチンの10番目のタイプIIIドメインの配列に基づき、アミノ酸Val-Ser-Asp-Val-Proがアミノ酸番号1〜5を表す)。ヒトフィブロネクチンタイプIIIドメインの野生型の10番目のモジュールのアミノ酸配列は:
である。したがって、野生型BCループはDAPAVTVRの配列を含み;野生型DEループはGSKSTの配列を含み、野生型FGループはGRGDSPASSKPの配列を含む。BC、DE、およびFGループに隣接する配列はまた、例えば表1〜3においてフレームワーク1、2、3、および4と称される。
【0038】
様々な改良変異体10Fn3骨格が同定されている。Asp7の改良は、負に荷電していないアミノ酸残基(例えば、Asn、Lysなど)によって置換される。これらの変異体はいずれも、中性pHにおける変異体10Fn3の、野生型よりも高い安定性を促進する効果を有する。10Fn3骨格における有益であるかまたは中立である種々のさらなる改変が開示されている。例えば、Batori et al. Protein Eng. 2002 Dec;15(12):1015-20;Koide et al., Biochemistry 2001 Aug 28;40(34):10326-33を参照されたい。
【0039】
さらに、10Fn3骨格に対するいくつかの新たな改変を本明細書に開示する。特に重要なことには、野生型ヒト10Fn3の最初の8アミノ酸を欠失させることで、VEGFR-2結合がおよそ3倍に改善されることが見出された。最初の8アミノ酸は、BC、DE、およびFGループに近接した位置に折りたたまれる傾向があるため、この変異体はまた、異なる標的に対する結合に関して選択される他の10Fn3骨格においても標的結合を改善することが期待される。したがって、最初の8アミノ酸を欠いた10Fn3骨格をコードする核酸のライブラリーを構築して、この改良ライブラリーにおいてスクリーニングを行うことができる。
【0040】
変種および野生型10Fn3タンパク質はどちらも、同じ構造、すなわち7つのβストランドドメイン配列(A〜と称される)、および7つのβストランドドメイン配列を結合する6つのループ領域(ABループ、BCループ、CDループ、DEループ、EFループ、およびFGループ)によって特徴づけられる。N末端およびC末端に近接して位置するβストランドは、溶液中でβ様高次構造をとり得る。SEQ ID NO:5では、ABループは残基15〜16に相当し、BCループは残基22〜30に相当し、CDループは残基39〜45に相当し、DEループは残基51〜55に相当し、EFループは残基60〜66に相当し、FGループは残基76〜87に相当する。図22に示されるように、BCループ、DEループ、およびFGループはすべて、ポリペプチドの同じ面に位置する。同様に、免疫グロブリンも骨格も、少なくとも7つのβストランドまたはβ様ストランド、しばしば9つのβストランドまたはβ様ストランドを有する傾向がある。
【0041】
本明細書に開示する単一ドメインポリペプチドは、少なくとも2つのβシートの間に分布する少なくとも5〜7個のβストランドまたはβ様ストランド、および2つのβストランドまたはβ様ストランドを結合する少なくとも1つのループ部分を有し得り、ループ部分はVEGFR-2、特にKDRへの結合に関与し、その結合は1x10-6M未満、好ましくは1x10-8M未満の解離定数によって特徴づけられる。本明細書に記載する、5x10-9M未満の解離定数を有するポリペプチドは、VEGFシグナル伝達を抑制するためのインビボでの治療的使用に特に望ましい。1x10-6M〜5x10-9Mの解離定数を有するポリペプチドは、VEGFR-2タンパク質のエクスビボまたはインビボでの検出または標識に使用するのに望ましいと考えられる。
【0042】
任意に、VEGFR-2結合タンパク質は、同じ種に由来する他の関連タンパク質と比較してVEGFR-2に特異的に結合する。「特異的に結合する」とは、標的タンパク質(例えば、VEGFR-2)を認識しこれと相互作用するが、試料、例えば生物試料中の他の分子を実質的に認識せずこれと相互作用しないポリペプチドを意味する。好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、少なくとも500 nM程度のKDでVEGFRと特異的に結合する。好ましくは、ポリペプチドは、1 pM〜500 nM、より好ましくは1 pM〜100 nM、より好ましくは1 p<〜10 nM、最も好ましくは1 pM〜1 nMまたはそれよりも低いKDでVEGFRと特異的に結合する。
【0043】
一般に、選択された標的に結合し得る特異的なポリペプチド変種を同定するために、骨格単一ドメインポリペプチドのライブラリーをスクリーニングする。これらのライブラリーは、例えばファージディスプレイライブラリーまたはPROfusion(商標)ライブラリーであってよい。
【0044】
例示的な態様において、本発明者らは、新規なインビトロRNA-タンパク質融合ディスプレイ技術を利用して、ヒト(KDR)およびマウス(Flk-1)VEGFR-2の両方に結合し、VEGFに依存的な生物活性を阻害するポリペプチドを単離した。これらのポリペプチドは、フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質のライブラリー(Koide et al, JMB 284:1141 (1998))、およびVH分子の集団に由来するCDR3ドメインと交換することによってCDR3の多様性が増加したVLドメインのライブラリーから同定された。10Fn3は、SEQ ID NO:5に示されるように約94個のアミノ酸残基を含む。
【0045】
さらに、上記のように、10Fn3のN末端のアミノ酸配列も同様に変異または欠失させることができる。例えば、BC、DE、およびFGループのランダム化は、全長10Fn3の状況で、またはN末端の1〜8アミノ酸の欠失または変異を有する10Fn3の状況で起こり得る。例えば、8位のLをQに変異させることができる。多様なライブラリーを作製するためにランダム化した後、フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質を、タンパク質、この場合はVEGFRに対して高親和性を有するポリペプチドを選択するスクリーニングアッセイにおいて使用することができる。(RNA-タンパク質融合技術およびフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質ライブラリースクリーニング法の詳細については、参照により本明細書に組み入れられるSzostak et al.、米国特許第6,258,558号;第6,261,804号;第6,241,553号;第6,281,344号;第6,207,446号、第6,518,018号;国際公開公報第00/34787号;WO第01/64942号;WO第02/032925号;およびRoberts and Szostak, Proc Natl. Acad. Sci. 94:12297-12302, 1997を参照されたい。)
【0046】
本明細書に記載する最初の選択では、23〜29、52〜55、および77〜86位にある10Fn3の3つの領域をランダム化し、ヒトVEGFR-2の細胞外ドメイン(ヒトIgG1Fcに融合したKDRのアミノ酸1〜764)に対するインビトロ選択に使用した。mRNAディスプレイ(RNA-タンパク質融合)およびインビトロ選択を使用して、本発明者らは約10兆個の変種を有する10Fn3に基づくライブラリーをサンプリングした。最初の選択により、KDR(ヒトVEGFR-2)への結合に関してVEGFと拮抗する、中程度の親和性(KD=10〜200 nM)を有するポリペプチドが同定された。続いて、最初の選択に由来する単一クローン(KD=11〜13 nM)を、突然変異誘発およびさらなる選択に供した。この親和性成熟過程により、60 pM〜2 nMの解離定数を有する新たなVEGFR結合ポリペプチドが得られた。KDR結合剤を表3に示す。さらに、本発明者らはまた、始めはFlk-1に対する検出可能な結合親和性を有さなかったKDR結合剤の突然変異誘発した集団から、Flk-1、マウスKDR相同体に結合し得るポリペプチドを単離し、結果的にヒトおよびマウスVEGFR-2の両方に対する二重特異性を示すポリペプチドを単離した。これらのポリペプチドは、KDRまたはFlk-1細胞外ドメインを提示する細胞に結合することが示される。これらのポリペプチドはまた、VEGF依存性増殖アッセイにおいて細胞増殖を抑制した。KDRおよびFlk-1に結合するポリペプチドを表2に示し、好ましいKDR結合剤およびKDR/Flk-1結合剤の選択を表1に示す。
【0047】
本発明者らは、これらの選択で同定されたVEGFR-2結合ポリペプチドを用いて、VEGFR-2に対するポリペプチドの結合に必要なFGループアミノ酸共通配列を決定した。この配列を以下のSEQ ID NO:1〜4に記載する。
【0048】
SEQ ID NO:1〜4などのVEGFR-2結合ポリペプチドは、単独で(単離ペプチドとして)、10Fn3単一ドメインポリペプチドの一部として、(全長アミノ末端または欠失アミノ末端を有する)全長フィブロネクチンもしくはその断片の一部として、免疫グロブリン(特に単一ドメイン免疫グロブリン)の状況において、免疫グロブリン様折りたたみを有する別のタンパク質の状況において、または別の非関連タンパク質の状況において製剤化することができる。ポリペプチドはまた、それ自体はVEGFRへの結合に寄与しない異種タンパク質との融合タンパク質の一部として製剤化することができる。さらに、本発明のポリペプチドはまた核酸と融合させることも可能である。ポリペプチドまた、単量体、二量体、または多量体として操作され得る。
【0049】
好ましい共通VEGFR-2結合ペプチドの配列:
SEQ ID NO:1‐(L/M)GXN(G/D)(H/R)EL(L/M)TP
[Xは任意のアミノ酸であってよく;(/)は同じ位置の選択的アミノ酸を表す]
SEQ ID NO:2‐XERNGRXL(L/M/N)TP
[Xは任意のアミノ酸であってよく;(/)は同じ位置の選択的アミノ酸を表す。]
SEQ ID NO:3‐(D/E)GXNXRXXIP
[Xは任意のアミノ酸であってよく;(/)は同じ位置の選択的アミノ酸を表す。]
SEQ ID NO:4‐(D/E)G(R/P)N(G/E)R(S/L)(S/F)IP
[Xは任意のアミノ酸であってよく;(/)は同じ位置の選択的アミノ酸を表す。]
【0050】
好ましいVEGFR-2結合10Fn3ポリペプチドの配列:
【0051】
上記のCT-01分子は最初の8アミノ酸の欠失を有し、N末端またはC末端にさらなるアミノ酸を含み得る。例えば、さらなるMG配列をN末端に置くことができる。Mは通常切断されて、N末端にはGEV…配列が残る。通常の8アミノ酸をN末端に再付加することでも、所望の特性を有するKDR結合タンパク質が生成される。N末端のメチオニンは通常切断されて、配列:
が得られる。
【0052】
本明細書に開示するポリペプチドは、特に標的タンパク質と相互作用しないと考えられるタンパク質の部分において、1つまたは複数の保存的置換によって修飾され得る。免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様ドメイン内の5%、10%、20%、もしくはさらに30%程度、またはそれ以上のアミノ酸が、標的に対するタンパク質の親和性を実質的に変更することなく、保存的置換によって変更され得ると考えられる。そのような変化はインビボにおけるポリペプチドの免疫原性を変更するかもしれず、免疫原性が減少する場合、そのような変化は望ましい。本明細書で使用する「保存的置換」とは、対応する参照残基と物理的または機能的に類似した残基である。すなわち、保存的置換とその参照残基は、類似した大きさ、形状、電荷、共有結合または水素結合を形成する能力を含む化学的特性などを有する。好ましい保存的置換は、許容される点突然変異に関してDayhoff et al., Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352 (1978 & Supp.)において定義された基準を満たす置換である。保存的置換の例は以下の群内の置換である:(a) バリン、グリシン;(b) グリシン、アラニン;(c) バリン、イソロイシン、ロイシン;(d) アスパラギン酸、グルタミン酸;(e) アスパラギン、グルタミン;(f) セリン、スレオニン;(g) リジン、アルギニン、メチオニン;および(h) フェニルアラニン、チロシン。
【0053】
本明細書に開示するポリペプチドはまた、効力、生物学的利用能、化学的安定性、および/または有効性を改善するために修飾してもよい。例えば、本発明の1つの態様では、生物活性およびポリペプチド構造の化学的安定性を改良するために、D-アミノ酸ペプチドまたはレトロエナンチオ(retroenantio)ペプチド配列が作製され得る(例えば、Juvvadi et al., J. Am. Chem. Sco. 118: 8989-8997, 1996;Freidinger et al., Science, 210: 656-658,1980を参照のこと)。ラクタム制約(Freidinger、前記を参照のこと)、および/またはジペプチド代用物としてのアザビシクロアルカンアミノ酸もまた、天然ペプチドの生物学的特性および薬理学的特性を改善するために利用され得る(例えば、Hanessian et al., Tetrahedron 53:12789-12854, 1997を参照のこと)。
【0054】
チオアミド、二級アミンおよび三級アミン、特に複素環などのアミド結合代用物(Spatola, A.F.、「Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins」 Wenstein, B. Ed. Marcel Dekker, New York, 1983 Vol. 7, pp 267-357の総説を参照のこと)もまた、ポリペプチド骨格の酵素分解を妨げて、それにより活性を改善するために利用され得る。環状ポリペプチドは酵素分解に対する感受性が非常に低いことから、直鎖ポリペプチドの環状ポリペプチド類似体への変換を利用して、代謝的安定性を改善することも可能である(一般的に、Veber et al. Nature 292:55-58, 1981を参照のこと)。
【0055】
ポリペプチドはまた、代謝を遅延させるまたは妨げるため、および親油性を増大させるために、エステルおよびアミドとしての末端基キャッピングを利用して修飾することもできる。種々のリンカーによって結合されたペプチドの二量体もまた、活性および特性を増強し得る(例えば、Y. Shiomohigashi et al、Peptide Chemistry 1988, Proceedings of the 26th Symposium on Peptide Chemistry, Tokyo, October 24-26, pgs. 47-50. 1989を参照のこと)。非天然アミノ酸などのポリペプチド修飾のさらなる例に関しては、米国特許第6,559,126号を参照されたい。
【0056】
インビボで使用する場合、PEG化に適した形態が作製され得る。例えば、N末端の8アミノ酸を欠くCT-01型について以下に示すように、システインを含むC末端尾部が付加され、発現される(C末端にEIDKPCQが付加される)
以下に記載するインビボ実験では、この分子のPEG化型を使用する。システインの代わりにセリンを有する対照型もまた使用した:
【0057】
同じC末端尾部を、SEQ ID NO:193に示すN末端8アミノ酸を有するCT-01型に付加することもできる。
【0058】
所望のKDR結合特性を有するさらなる変種が単離された。以下のコア配列はいくぶん異なるFGループを有し、例えば、N末端MG配列、欠失された8アミノ酸を回復するN末端配列、および/またはPEG化用のシステインを提供するためのC末端尾部と共に発現させることができる。
別のそのような変種はコア配列:
を有する。
【0059】
さらに、同様の方法により、VLフレームワーク内の好ましい単一ドメイン免疫グロブリンポリペプチドも単離され、これを図21に開示する。
【0060】
本発明には、本明細書に記載するポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列もまた含まれる。当業者によって理解されるように、3塩基目の縮重により、ほぼすべてのアミノ酸が、コードヌクレオチド配列において2つ以上のトリプレットコドンで示され得る。さらに、わずかな塩基対変化はコードされるアミノ酸配列において保存的置換をもたらし得るが、遺伝子産物の生物活性を実質的に変更しないと考えられる。したがって、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸配列は、わずかに配列を修飾することができ、それでもなおそれぞれの遺伝子産物をコードし得る。
【0061】
さらに、本発明のポリペプチドを、さらに変異させて、より高い親和性でVEGFRと結合するポリペプチドをスクリーニングし得るリードポリペプチドとして使用することができる。一例では、本明細書に記載するポリペプチドは、さらに変異させるかまたはランダム化して、リードポリペプチドと異なるアミノ酸変異を有するポリペプチドを作製するリードポリペプチドとして使用される。次いで、さらにランダム化されたポリペプチドを用いて、本明細書に記載するVEGF生物活性を阻害する(例えば、VEGFRに結合し、同じ受容体へのVEGFの結合を阻止する)ポリペプチドをスクリーニングすることができる。
【0062】
3. 核酸およびポリペプチドの生成
本発明のポリペプチドは、当技術分野において周知である任意の標準的な方法を用いて生成することができる。
【0063】
一例において、ポリペプチドは、ポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、cDNA)を組換え発現ベクターに挿入し、発現を促進する条件下においてDNA配列を発現させることによる組換えDNA法により作製される。本明細書に開示するCT-01ポリペプチドをコードする核酸配列の例には以下のものがある:
【0064】
本明細書に開示する種々のポリペプチドのいずれかをコードする核酸は、化学的に合成することができる。コドン使用頻度は、細胞内での発現を改善するように選択され得る。そのようなコドン使用頻度は、選択した細胞種に依存することになる。大腸菌(E. coli)および他の細菌、ならびに哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞、および昆虫細胞について、特定のコドン使用頻度パターンが開発されている。例えば、Mayfield et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Jan 21;100(2):438-42;Sinclair et al. Protein Expr Purif. 2002 Oct;26(1):96-105;Connell ND. Curr Opin Biotechnol. 2001 Oct;12(5):446-9;Makrides et al. Microbiol Rev. 1996 Sep;60(3):512-38;およびSharp et al. Yeast. 1991 Oct;7(7):657-78を参照されたい。
【0065】
核酸操作の一般的な技法は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2 ed., 1989, またはF. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Green Publishing and Wiley-Interscience: New York, 1987)、および定期的な最新情報に記載されている。ポリペプチドをコードするDNAは、哺乳動物、ウイルス、または昆虫遺伝子に由来する適切な転写または翻訳調節エレメントに連結する。そのような調節エレメントには、転写プロモーター、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終結を調節する配列が含まれる。宿主における複製能は通常、複製開始点によって付与され、形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子がさらに組み入れられる。
【0066】
組換えDNAはまた、タンパク質の精製に有用であると考えられる任意の種類のタンパク質タグ配列を含み得る。タンパク質タグの例には、これらに限定されるわけではないが、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、またはGSTタグが含まれる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主との使用に適したクローニングベクターおよび発現ベクターは、Cloning Vectors: A Laboratory Manual, (Elsevier, New York, 1985)に見出すことができ、その関連する開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0067】
当業者に周知であるように、発現構築物は、宿主細胞に適した方法を用いて宿主細胞に導入する。核酸を宿主細胞に導入する様々な方法が当技術分野において周知であり、これにはエレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化リビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(ベクターが感染物質の場合)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0068】
適切な宿主細胞には、原核生物、酵母、哺乳動物細胞、または細菌細胞が含まれる。適切な細菌には、例えば大腸菌またはバシラス種といったグラム陰性菌またはグラム陽性菌が含まれる。好ましくはS. セレビシエ(S. cerevisiae)などのサッカロミセス種に由来する酵母もまた、ポリペプチドの産生に使用することができる。種々の哺乳動物または昆虫細胞培養系もまた、組換えタンパク質を発現させるために使用することができる。昆虫細胞において異種タンパク質を産生させるためのバキュロウイルス系については、Luckow and Summers, (Bio/Technology, 6:47, 1988)に概説されている。適切な哺乳動物宿主細胞株の例には、内皮細胞、COS-7サル腎臓細胞、CV-1、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、ヒト胎児腎臓細胞、HeLa、293、293T、およびBHK細胞株が含まれる。精製ポリペプチドは、適切な宿主/ベクター系を培養して組換えタンパク質を発現させることによって調製される。多くの用途のため、本明細書に開示するポリペプチドの多くの小さなサイズのものは、発現の好ましい方法として大腸菌で発現される。次いで、培地または細胞抽出物からタンパク質が精製される。
【0069】
本明細書に開示するタンパク質はまた、細胞翻訳系を用いて生成することもできる。そのような目的では、ポリペプチドをコードする核酸は、インビトロ転写が行われてmRNAが産生されるように、および利用する特定の無細胞系(哺乳動物もしくは酵母無細胞翻訳系などの真核生物、または細菌無細胞翻訳系などの原核生物)でmRNAの無細胞翻訳が行われるように、修飾されなければならない。
【0070】
VEGFR結合ポリペプチドはまた、化学合成によって作製することもできる(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed., 1984, The Pierce Chemical Co., Rockford, ILに記載されている方法による)。タンパク質の修飾もまた化学合成によって作製され得る。
【0071】
本発明のポリペプチドは、タンパク質化学の分野において周知であるタンパク質の単離/精製法によって精製され得る。非限定的な例には、抽出、再結晶、塩析(例えば、硫酸アンモニウムまたは硫酸ナトリウムを用いる)、遠心分離、透析、限外ろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲルろ過、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動、向流分配、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。精製後、ポリペプチドは、ろ過および透析を含むがこれらに限定されない当業者に周知の様々な方法のいずれかにより、異なる緩衝液に交換するおよび/または濃縮することができる。
【0072】
精製されたポリペプチドは、好ましくは少なくとも85%の純度、より好ましくは少なくとも95%の純度、最も好ましくは少なくとも98%の純度である。純度の正確な数値にかかわらず、ポリペプチドは薬学的産物として使用するのに十分純粋である。
【0073】
4. ポリペプチドの翻訳後修飾
特定の態様において、本発明の結合ポリペプチドはさらに翻訳後修飾を含み得る。例示的な翻訳後タンパク質修飾には、リン酸化、アセチル化、メチル化、ADP-リボシル化、ユビキチン化、グリコシル化、カルボニル化、sumo化、ビオチン化、またはポリペプチド側鎖もしくは疎水基の付加が含まれる。結果として、修飾された可溶性ポリペプチドは、脂質、多糖または単糖、およびリン酸などの非アミノ酸成分を含み得る。グリコシル化の好ましい形式は、ポリペプチドに1つまたは複数のシアル酸部分を結合するシアル化である。シアル酸部分は、溶解度および血中半減期を改善すると共に、タンパク質の免疫原性の可能性を減少させる。例えば、Raju et al. Biochemistry. 2001 Jul 31;40(30):8868-76を参照されたい。ポリペプチドの機能性に及ぼすそのような非アミノ酸成分の効果は、VEGFR-2またはVEGF機能におけるその拮抗作用の役割、例えば血管新生または腫瘍増殖に及ぼすその抑制効果について試験され得る。
【0074】
本発明の1つの特定の態様において、修飾型の対象可溶性ポリペプチドは、非タンパク質ポリマーに対する対象可溶性ポリペプチドの結合を含む。1つの特定の態様において、ポリマーは、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号;または第4,179,337号に記載されているようなポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンである。本発明の修飾ポリペプチドの例には、PEG化M5FLおよびPEG化CT-01が含まれる。
【0075】
PEGは、市販されている、または当技術分野で周知の方法に従ってエチレングリコールの開環重合によって調製され得る、周知の水溶性ポリマーである(Sandler and Karo, Polymer Synthesis, Academic Press, New York, Vol. 3, pages 138-161)。「PEG」という用語は、大きさまたはPEGの末端における修飾にかかわらず、任意のポリエチレングリコール分子を包含するために広く用いられ、式:
X-O(CH2CH2O)n-1CH2CH2OH(1)
(式中、nは20〜2300であり、XはHまたは末端修飾、例えばC1-4アルキルである)によって表され得る。1つの態様において、本発明のPEGは一方の末端がヒドロキシまたはメトキシで終結する、すなわちXはHまたはCH3(「メトキシPEG」)である。PEGは、結合反応に必要な;分子の化学合成によって生じる;または分子の部分に最適距離を保つためのスペーサーである化学基を含み得る。さらに、このようなPEGは、互いに結合した1つまたは複数のPEG側鎖からなってよい。2つ以上のPEG鎖を有するPEGは、分岐型(multiarmedまたはbranched)PEGと称される。分岐型PEGは、例えば、グリセロール、ペンタエリスリトール、およびエチレンオキシドを含む種々のポリオールにポリエチレンオキシドを付加することによって調製される。例えば、ペンタエリスリトールおよびエチレンオキシドから、4分岐型PEGを調製することができる。分岐型PEGは、例えば、EP-A第0 473 084号および米国特許第5,932,462号に記載されている。PEGの1つの形態には、リジンの1級アミノ基を介して連結された2つのPEG側鎖(PEG2)が含まれる(Monfardini, C., et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)。
【0076】
PEGは周知であるが、本発明者らの知る限り、PEG化10Fn3ポリペプチドがPEG化され、リガンド結合活性を保持し得ることが初めて実証される。好ましい態様において、PEG化10Fn3ポリペプチドは、特にN末端またはC末端のシステイン部分にPEGを結合させることによる、部位特異的PEG化によって作製される。したがって本開示は、少なくとも1つのループが標的結合に関与する、約80〜約150アミノ酸を有する10Fn3ドメイン;および共有結合されたPEG部分を含む、改善された薬物動態特性を有する標的結合10Fn3ポリペプチドであって、100 nM未満のKDで標的と結合し、哺乳動物において30 mL/hr/kg未満の排除速度を有する10Fn3ポリペプチドを提供する。PEG部分は、Cys残基への結合によるなど、部位特異的PEG化によって10Fn3ポリペプチドに結合することができ、Cys残基は、10Fn3ポリペプチドのN末端、またはN末端と最もN末端側のβストランドもしくはβ様ストランドの間、または10Fn3ポリペプチドのC末端、またはC末端と最もC末端側のβストランドもしくはβ様ストランドの間に位置し得る。Cys残基は、他の位置、特に標的結合に関与しないループのいずれかに位置してもよい。PEG部分はまた、アミンへの結合によるなど、他の化学反応によって結合することもできる。
【0077】
ペプチドまたはタンパク質へのPEG結合は一般に、PEGの活性化および活性化PEG中間体の標的タンパク質/ペプチドへ、またはその後活性化されて標的タンパク質/ペプチドに結合されるリンカーへの直接的結合を含む(Abuchowski, A. et al, J. Biol. Chem., 252, 3751 (1997)およびJ. Biol. Chem., 252, 3582 (1997)、Zalipsky, et al.、ならびにHarris et. al.: Poly(ethylene glycol) Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications; (J. M. Harris ed.) Plenum Press: New York, 1992; Chap.21 and 22を参照のこと)。PEG分子を含む結合ポリペプチドは複合化タンパク質の別名でも知られ、一方PEG分子の結合を欠くタンパク質は非複合化と称され得ることに留意されたい。
【0078】
VEGFR-2結合ポリペプチドに結合させるために、例えば、約1,000ダルトン(Da)〜100,000 Da(nは20〜2300)の様々な分子量型のPEGが選択され得る。PEGにおける反復単位の数「n」は、ダルトンで記載される分子量に関して概算される。活性化リンカー上のPEGの分子量を組み合わせたものが薬学的使用に適していることが好ましい。したがって、1つの態様において、PEG分子の分子量は100,000 Daを超えない。例えば、3つのPEG分子をリンカーに結合する場合、各PEG分子が12,000 Da(nはそれぞれ約270)という同じ分子量を有するならば、リンカー上のPEGの全分子量は約36,000 Da(n全体は約820)である。またリンカーに結合するPEGの分子量は異なってもよく、例えばリンカー上の3つの分子うち、2つのPEG分子はそれぞれ5,000 Da(nはそれぞれ約110)であってよく、1つのPEG分子は12,000 Da(nは約270)であってよい。
【0079】
本発明の特定の態様において、VEGFR-2結合ポリペプチドは、式:-CO-(CH2)x-(OCH2CH2)m-ORの1つのポリ(エチレングリコール)基と共有結合され、ポリ(エチレングリコール)基の-CO(すなわち、カルボニル)が結合ポリペプチドのアミノ基の1つとアミド結合を形成する:Rは低級アルキルであり;xは2または3であり;mは約450〜約950であり;nおよびmは、複合体から結合ポリペプチドを引いた分子量が約10〜40 kDaになるように選択される。1つの態様では、結合ポリペプチドのリジンのε-アミノ基が利用可能な(遊離)アミノ基である。
【0080】
上記の複合体は、式(II):P-NHCO-(CH2)x-(OCH2CH2)m-OR(II)(式中、Pは本明細書に記載する結合ポリペプチドの基であり(すなわち、式(II)に示されるカルボニルとアミド結合を形成する1つまたは複数のアミノ基を含まない);Rは低級アルキルであり;xは2または3であり;mは約450〜約950であり、複合体から結合ポリペプチドを引いた分子量が約10〜40 kDaになるように選択される)によってより具体的に示すことができる。本明細書において、「m」の所与の範囲は位置づけの意味を有する。「m」の範囲はいずれの場合にも、PEG基の分子量によって正確に決定される。
【0081】
当業者は、例えば、PEG化結合ポリペプチドを治療にどのように使用するか、所望の投与量、循環時間、タンパク質分解に対する耐性、免疫原性、および他の考慮事項に基づいて、PEGの適切な分子量を選択することができる。PEG、およびタンパク質の特性を増強させるためのその使用に関する考察については、N. V. Katre, Advanced Drug Delivery Reviews 10:91-114 (1993)を参照されたい。
【0082】
本発明の1つの態様においては、PEG分子は活性化されて、結合ポリペプチド上のアミノ基、リジンなどと反応し得る(Bencham C. O. et al., Anal. Biochem. , 131, 25 (1983);Veronese, F. M. et al., Appl. Biochem., 11, 141 (1985).;Zalipsky, S. et al., Polymeric Drugs and Drug Delivery Systems, adrs 9-110 ACS Symposium Series 469 (1999);Zalipsky, S. et al., Europ. Polym. J., 19, 1177-1183 (1983);Delgado, C. et al., Biotechnology and Applied Biochemistry, 12, 119-128 (1990))。
【0083】
1つの特定の態様では、PEG-結合ポリペプチド複合体を形成するために、PEGの炭酸エステルが用いられる。PEGとの反応においてN,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)が用いられて、活性化混合PEG-スクシンイミジルカーボネートが形成され得り、次にこれをリンカーの求核基または結合ポリペプチドのアミノ基と反応させることができる(米国特許第5,281,698号および米国特許第5,932,462号を参照のこと)。同様の種類の反応において、1,1'-(ジベンゾトリアゾリル)カーボネートおよびジ-(2-ピリジル)カーボネートをPEGと反応させて、それぞれPEG-ベンゾトリアゾリルおよびPEG-ピリジル混合カーボネート(米国特許第5,382,657号)を形成することができる。
【0084】
10Fn3ポリペプチドのPEG化は、最先端の方法に従って、例えば結合ポリペプチドと求電子的に活性のあるPEG(供給業者;Shearwater Corp.、米国、www.shearwatercorp.com)との反応によって行うことができる。本発明の好ましいPEG試薬は、例えば、プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(PEG-SPA)、ブタン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル(PEG-SBA)、またはmPEG2-NHSなどの分岐型N-ヒドロキシスクシンイミドである(Monfardini, C., et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)。このような方法は、結合ポリペプチドリジンのε-アミノ基または結合ポリペプチドのN末端アミノ基におけるPEG化に用いられ得る。
【0085】
別の態様において、PEG分子は、結合ポリペプチド上のスルフヒドリル基に結合することができる(Sartore, L., et al., Appl. Biochem. Biotechnol., 27, 45 (1991);Morpurgo et al., Biocon. Chem., 7, 363-368 (1996);Goodson et al., Bio/Technology (1990) 8, 343;米国特許第5,766,897号)。米国特許第6,610,281号および第5,766,897号は、スルフヒドリル基に結合できる例示的な反応性PEG種について記載している。
【0086】
PEG分子を結合ポリペプチド上のシステイン残基に結合するいくつかの態様では、システイン残基は結合ポリペプチドに固有のものであり、他の態様においては、1つまたは複数のシステイン残基が結合ポリペプチド内に挿入される。システイン残基を作製するために、結合ポリペプチドコード配列内に変異を導入することができる。これは、例えば、1つまたは複数のアミノ酸残基をシステインに変異させることによって達成され得る。システイン残基に変異するための好ましいアミノ酸には、セリン、スレオニン、アラニン、および他の親水性残基が含まれる。好ましくは、システインに変異させる残基は表面露出残基である。一次配列またはタンパク質に基づいて残基の表面露出度を予測するアルゴリズムは、当技術分野において周知である。または、結合ポリペプチドを設計し進化させる基礎としたフレームワークの結晶構造が解析されているならば(Himanen et al., Nature . (2001) 20-27;414(6866):933-8)、結合ポリペプチドのアミノ酸配列を比較することにより表面残基を予測することができ、ひいては表面露出残基を同定することができる。1つの態様において、システイン残基は、結合ポリペプチドのN末端および/もしくはC末端に、もしくはその近傍に、またはループ領域内に導入される。
【0087】
いくつかの態様において、PEG化結合ポリペプチドは、N末端アミノ酸のαアミノ基に共有結合されたPEGを含む。部位特異的N末端還元的アミノ化について
は、Pepinsky et al., (2001) JPET, 297,1059、および米国特許第5,824,784に記載されている。他の利用可能な求核アミノ基を利用するタンパク質の還元的アミノ化へのPEG-アルデヒドの使用については、米国特許第4,002,531号、Wieder et al., (1979) J. Biol. Chem. 254,12579、およびChamow et al., (1994) Bioconjugate Chem. 5, 133に記載されている。
【0088】
別の態様において、PEG化結合ポリペプチドはリンカーに共有結合した1つまたは複数のPEG分子を含み、このリンカーは次に結合ポリペプチドのN末端のアミノ残基のαアミノ基に結合されている。そのようなアプローチは、米国特許公報第2002/0044921号およびWO第94/01451号に記載されている。
【0089】
1つの態様において、結合ポリペプチドはC末端でPEG化される。特定の態様において、タンパク質は、C末端アジド-メチオニンを導入し、続いてシュタウディンガー反応によりメチル-PEG-トリアリルホスフィン化合物を結合することによって、C末端でPEG化される。このC末端結合法は、Cazalis et al., C-Terminal Site-Specific PEGylation of a Truncated Thrombomodulin Mutant with Retention of Full Bioactivity, Bioconjug Chem. 2004;15(5)1005-1009に記載されている。
【0090】
結合ポリペプチドのモノPEG化はまた、WO第94/01451号に記載されている一般的な方法に従って生成することもできる。WO第94/01451号は、修飾された末端アミノ酸α-炭素反応基を有する組換えポリペプチドを調製する方法について記載している。本方法の工程は、組換えポリペプチドを形成する段階、およびそのN末端α-アミンおよびC末端α-カルボキシルを1つまたは複数の生物学的に付加された保護基で保護する段階を含む。次いで、ポリペプチドを化学保護剤と反応させて、反応性側鎖基を選択的に保護し得り、それによって側鎖基が修飾されるのを防ぐ。続いて、ポリペプチドを生物学的保護基に特異的な切断試薬で切断し、未保護の末端アミノ酸α-炭素反応基を形成する。未保護の末端アミノ酸α-炭素反応基を、化学修飾剤で修飾する。次に、側鎖が保護された末端修飾単一コピーポリペプチドの側鎖基を脱保護して、末端が修飾された組換え単一コピーポリペプチドを形成する。本方法における工程の数および順序は、ポリペプチドのN末端および/またはC末端アミノ酸の選択的修飾を達成するために変更することができる。
【0091】
結合反応における結合ポリペプチドと活性化PEGの比率は、約1:0.5〜1:50、約1:1〜1:30、約1:5〜1:15であってよい。本方法においては、結合ポリペプチドに対するPEGの共有結合的付加を触媒するため、様々な水溶性緩衝液を用いることができる。1つの態様において、使用する緩衝液のpHは約7.0〜9.0である。別の態様では、pHはわずかに塩基性範囲にあり、例えば約7.5〜8.5である。例えばリン酸緩衝液など、中性pHに近いpKaを有する緩衝液も使用することができる。
【0092】
サイズ排除(例えば、ゲルろ過)およびイオン交換クロマトグラフィーなど、
当技術分野において周知である従来の分離および精製技法を用いて、PEG化結合ポリペプチドを精製することができる。SDS-PAGEにより生成物を分離することも可能である。分離され得る生成物には、モノ、ジ、トリ、ポリ、および非PEG化結合ポリペプチド、ならびに遊離のPEGが含まれる。モノPEG複合体の割合は、組成物中のモノPEGの割合を増加させるために、溶出ピーク周囲の広い画分をプールすることにより調節することができる。約90%のモノPEG複合体が、収率および活性の良好なバランスを示す。例えば少なくとも92%、または少なくとも96%の複合体がモノPEG種である組成物が望ましいと考えられる。本発明の1つの態様において、モノPEG複合体の割合は90%〜96%である。
【0093】
1つの態様において、本発明のPEG化結合ポリペプチドは、1つ、2つ、またはそれ以上のPEG部分を含む。1つの態様において、PEG部分は、タンパク質の表面上にある、および/または標的リガンドと接触する表面から離れたアミノ酸残基に結合される。1つの態様において、PEG結合ポリペプチド中のPEGの組み合わせた分子量または全分子量は約3,000 Da〜60,000 Daであり、任意に約10,000 Da〜36,000 Daである。1つの態様において、PEG化結合ポリペプチド中のPEGは実質的に線状の直鎖PEGである。
【0094】
本発明の1つの態様において、PEG化結合ポリペプチド中のPEGは、ヒドロキシルアミンアッセイ(例えば、室温における8〜16時間の450 mMヒドロキシルアミン(pH 6.5))によりPEG化アミノ酸残基から加水分解されず、したがって安定である。1つの態様においては、組成物の80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%を超える割合が、安定なモノPEG結合ポリペプチドである。
【0095】
別の態様において、本発明のPEG化結合ポリペプチドは、好ましくは、非修飾タンパク質に付随する生物活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、または100%を保持する。1つの態様において、生物活性とは、KD、kon、またはkoffによって評価される、VEGFR-2に結合する能力を指す。1つの特定の態様において、PEG化結合ポリペプチドタンパク質は、非PEG化結合ポリペプチドと比較してVEGFRへの結合の増加を示す。
【0096】
PEG修飾ポリペプチドの血清排除速度は、非修飾結合ポリペプチドの排除速度と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはさらには90%減少し得る。PEG修飾ポリペプチドは、非修飾タンパク質の半減期(t1/2)と比較して延長された半減期を有し得る。PEG結合ポリペプチドの半減期は、非修飾結合ポリペプチドの半減期と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、400%、もしくは500%、またはさらには1000%延長され得る。いくつかの態様において、タンパク質半減期は、緩衝生理食塩溶液中または血清中など、インビトロで決定される。他の態様においては、タンパク質半減期は、動物の血清または他の体液中でのタンパク質の半減期のようなインビボ半減期である。
【0097】
5. 治療用製剤および投与方法
本発明は、VEGF生物活性の阻害に応答する病態を治療する、または前病態を予防する方法を扱う。好ましい例は、不適切な血管新生によって特徴づけられる病態である。投与の方法および投与量は、特定のポリペプチドの種類および治療する特定の病態に応じて異なるが、当業者によって容易に決定され得る。一般に、規制機関は、治療として用いられるタンパク質試薬が、許容される程度に低レベルの発熱物質しか含まないように製剤化されることを義務付けている。したがって、治療用製剤は一般に、実質的に発熱物質を含まないか、または適切な規制機関(例えば、FDA)によって決定された許容されるレベル未満の発熱物質しか含まない点で、他の製剤とは区別される。
【0098】
本発明の治療化合物は、薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤と共に単位剤形として投与することができる。投与は、非限定的な例として、非経口(例えば、静脈内、皮下)、経口、または局所投与であってよい。さらに、裸のDNA送達、組換え遺伝子およびベクター、患者の細胞のエクスビボ操作を含む細胞に基づく送達などのような、本発明のポリペプチドをコードする核酸を使用する任意の遺伝子治療法を用いることも可能である。
【0099】
化合物は、経口投与に関しては、丸剤、錠剤、カプセル剤、液体、または徐放錠;あるいは静脈内、皮下、または非経口投与に関しては、液体;局所投与に関しては、ゲル、ローション剤、軟膏剤、クリーム、またはポリマーもしくは他の徐放賦形剤の形態であってよい。
【0100】
当技術分野で周知の製剤化方法は、例えば「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」(20th ed., ed. A.R. Gennaro AR., 2000, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA)に見出される。非経口投与用製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水、生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物性油、または水素化ナフタレンを含み得る。化合物の放出を調節するには、生体適合性があり生物分解性のあるラクチド重合体、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体を用いることができる。ナノ粒子製剤(例えば、生分解性ナノ粒子、固体脂質ナノ粒子、リポソーム)を用いて、化合物の体内分布を調節することも可能である。有用と考えられる非経口送達系には、他に、エチレン-ビニルアセテート共重合体粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入系、およびリポソームが含まれる。製剤中の化合物の濃度は、投与する薬剤の投与量および投与経路を含む多くの要因によって異なる。
【0101】
ポリペプチドは任意に、製薬業界で通常用いられる、薬学的に許容される塩(非毒性酸付加塩など)または金属錯体として投与してもよい。酸付加塩の例には、酢酸、乳酸、パモン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、またはトリフルオロ酢酸などの有機酸;タンニン酸、カルボキシメチルセルロースなどのポリマー酸;および塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸が含まれる。金属複合体は、亜鉛、鉄などを含む。1つの態様において、ポリペプチドは、熱安定性を高めるために酢酸ナトリウムの存在下で製剤化される。
【0102】
経口用製剤には、薬学的に許容される非毒性賦形剤との混合物中に有効成分を含む錠剤が含まれる。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤または増量剤(例えば、スクロースおよびソルビトール)、潤滑剤、流動促進剤、および付着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油、またはタルク)であってよい。
【0103】
経口用製剤はまた、チュアブル錠、または有効成分が不活性固体希釈剤と混合されている硬ゼラチンカプセル、または有効成分が水もしくは油媒体と混合されている軟ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
【0104】
治療上有効な用量とは、投与されるものに対して治療効果をもたらす用量を指す。正確な用量は治療する疾患に依存することになり、周知の技法を用いて当業者によって確定され得る。一般的に、ポリペプチドは、1日当たり約0.01μg/kg〜約50 mg/kg、好ましくは1日当たり約0.01 mg/kg〜約30 mg/kg、最も好ましくは1日当たり約0.1 mg/kg〜約20 mg/kg投与される。ポリペプチドは毎日投与することもできるし(例えば、1日に1回、2回、3回、または4回)、より低い頻度で(例えば1日おきに1回、週または月に1回または2回)投与することもできる。さらに、当技術分野で周知であるように、年齢、ならびに体重、一般的な健康状態、性別、食習慣、投与時間、薬物間相互作用、および疾患の重症度に対する調節が必要であると考えられ、これは当業者による日常的な実験により確定されることになる。
【0105】
6. 例示的な使用
本明細書に記載するVEGFR-2結合ポリペプチドおよびそれらの関連変種は、多くの治療用途および診断用途に有用である。これらには、VEGFR-2への結合に関して競合することによるかまたはVEGFR-2への結合を遮断することによるVEGFの生物活性の阻害、および細胞、好ましくはVEGFR-2を発現している細胞への毒性部分または画像化部分の送達が含まれる。
【0106】
これらの分子の大きさが小さいことおよび構造が安定であることは、薬剤の製造、迅速な排除が望ましい特定用途における体内からの迅速な排除、またはそのような特徴を有する分子を用いることで適合し得るもしくは改善される新規送達系への製剤化に関して特に有用であり得る。
【0107】
本発明のポリペプチドは、VEGF生物活性の阻害剤としての有効性に基づき、以下を含むがそれらに限定されない、不適切な血管新生に関連した多くの病態に対して有効である:自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患、または乾癬);心疾患(例えば、アテローム性動脈硬化または血管再狭窄);網膜症(例えば、増殖性網膜症、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症、または血管新生緑内障)、腎疾患(例えば、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症候群;移植片拒絶;炎症性腎疾患;糸球体腎炎;メサンギウム増殖性糸球体腎炎;溶血性尿毒症症候群;および高血圧性腎硬化);血管芽細胞腫;血管腫;甲状腺過形成;組織移植;慢性炎症;メーグス症候群;心嚢液貯留;胸水;自己免疫疾患;糖尿病;子宮内膜症、慢性喘息、望ましくない線維症(特に肝線維症)、および癌、ならびに胸水および腹水などの癌に起因する合併症。好ましくは、本発明のVEGFR結合ポリペプチドは、過剰増殖性疾患または癌および癌の転移拡散の予防処置に用いられ得る。癌の非限定的な例には、膀胱癌、血液癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、軟骨癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、リンパ節癌、神経組織癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、骨格筋癌、皮膚癌、脊髄癌、脾臓癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、気管癌、泌尿生殖器癌、尿管癌、尿道癌、子宮癌、または膣癌が含まれる。治療可能なさらなる病態は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,524,583号に見出すことができる。VEGFR-2結合ポリペプチドの使用に関して記載している他の参照には、McLeod DS etal., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002 Feb;43(2):474-82;Watanabe et al. Exp Dermatol. 2004 Nov;13(11):671-81;Yoshiji H et al., Gut. 2003 Sep;52(9):1347-54;Verheul et al., Oncologist. 2000;5 Suppl 1:45-50;Boldicke et al., Stem Cells. 2001;19(1):24-36が含まれる。
【0108】
本明細書に記載するように、血管新生関連疾患には、例えば固形腫瘍、白血病などの血液由来腫瘍、および腫瘍転移を含む血管新生依存性癌;良性腫瘍、例えば血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫;免疫性炎症および非免疫性炎症などの炎症性疾患;慢性関節リウマチおよび乾癬;眼血管新生疾患、例えば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシス;オスラーウェバー症候群;心筋血管新生;プラーク新血管新生;毛細血管拡張症;血友病性関節症;血管線維腫;ならびに創傷肉芽形成および創傷治癒;毛細血管拡張症、乾癬、強皮症、化膿性肉芽腫、冠動脈側枝、虚血肢血管新生、角膜疾患、ルベオーシス、関節炎、糖尿病性新血管新生、骨折、脈管形成、造血が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0109】
VEGFR-2結合ポリペプチドは、単独で、または化学療法、放射線療法、免疫療法、外科的介入、またはこれらの任意の組み合わせなどの1つまたは複数のさらなる治療と組み合わせて投与することができる。長期療法は、上記の他の治療戦略における補助療法と同様に可能である。
【0110】
そのような方法の特定の態様において、1つまたは複数のポリペプチド治療薬は、共に(同時に)または異なった時間に(順次に)投与することができる。さらに、ポリペプチド治療薬は、癌を治療するまたは血管新生を抑制する別の種類の化合物と共に投与することができる。
【0111】
特定の態様において、本発明の本治療薬は単独で使用することができる。または、本治療薬は、増殖性疾患(例えば、腫瘍)の治療または予防を対象とした他の従来の抗癌治療アプローチと組み合わせて使用することができる。例えば、そのような方法は、予防的癌防止、手術後の癌の再発および転移の予防において、ならびに他の従来の癌治療の補助剤として使用することができる。本発明は、従来の癌治療(例えば、化学療法、放射線療法、光線療法、免疫療法、および手術)の有効性が、本ポリペプチド治療薬の使用により増強され得ることを認識する。
【0112】
様々な従来化合物が、抗腫瘍活性を有することが示されている。これらの化合物は、固形腫瘍を縮小させる、転移およびさらなる増殖を妨げる、または白血病もしくは骨髄悪性腫瘍における悪性腫瘍の数を減少させるために、化学療法における薬学的薬剤として使用されている。化学療法は様々な種類の悪性腫瘍の治療に有効であるが、多くの抗腫瘍化合物は望ましくない副作用を誘発する。2つまたはそれ以上の異なる治療を組み合わせた場合、治療は相乗的に作用して、それぞれの治療の投与量を減じることが可能となり、それによってそれぞれの化合物を高い投与量で使用した場合に起こる有害な副作用を低減できることが示されている。他の例においては、ある治療に抵抗性である悪性腫瘍は、2つまたはそれ以上の異なる治療の組み合わせに反応する場合がある。
【0113】
本発明のポリペプチド治療薬を別の従来の抗腫瘍薬と組み合わせて同時にまたは順次に投与する場合、そのような治療薬は、抗腫瘍薬の治療効果を増強する、またはそのような抗腫瘍薬に対する細胞の抵抗性を克服することが判明する場合がある。これによって抗腫瘍薬の投与量を減じることができ、ひいては望ましくない副作用が軽減されるか、または耐性細胞において抗腫瘍薬の有効性が回復する。
【0114】
併用抗腫瘍療法に用いられ得る薬学的化合物には、単に例証するために過ぎないが以下のものが含まれる:アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンポテシン(campothecin)、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン(ironotecan)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビン。
【0115】
特定の化学療法抗腫瘍化合物は、その作用機序によって例えば以下の群に分類され得る:代謝拮抗剤/抗癌剤、例えばピリミジン類似体(5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、およびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸拮抗剤、ならびに関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、および2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));天然物を含む抗増殖剤/抗分裂剤、例えばビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、微小管破壊剤(例えば、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポシロン、およびナベルビン)、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンポテシン、カルボプラチン、クロランブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、サイトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミド、およびエトポシド(VP16));抗生物質、例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシン;酵素(L-アスパラギンを全身的に代謝し、自身のアスパラギンを合成する能力をもたない細胞を除去するL-アスパラギナーゼ);抗血小板薬;抗増殖/抗分裂アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロランブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、スルホン酸アルキル-ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン(trazenes)-ダカルバジン(DTIC);抗増殖/抗分裂代謝拮抗剤、例えば葉酸類似体(メトトレキセート);白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)、およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩、および他のトロンビン阻害剤);線維素溶解薬(例えば組織プラスミノゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走薬(antimigratory agent);抗分泌薬(ブレベルジン(breveldin));免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP-470、ゲニステイン)、および増殖因子阻害剤(例えば、VEGF阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);、アンジオテンシン受容体遮断薬;酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)アムサクリン、カンポテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド(eniposide)、エピルビシン、エトポシド、イダルビシンおよびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン);増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能障害誘導剤およびカスパーゼ活性化因子;ならびにクロマチン破壊剤。
【0116】
特定の態様において、併用抗血管新生療法に用いられ得る薬学的化合物には、以下のものが含まれる:(1) bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)などの「血管新生分子」の放出阻害剤;(2) 抗βbFGF抗体などの血管新生分子の中和剤;および(3) コラゲナーゼ阻害剤、基底膜代謝回転阻害剤、血管新生抑制ステロイド、真菌由来血管新生阻害剤、血小板因子4、トロンボスポンジン、D-ペニシラミンおよび金チオマレートなどのリウマチ薬、ビタミンD3類似体、α-インターフェロンなどを含む、血管新生刺激に応答する内皮細胞の阻害剤。血管新生の提案されているさらなる阻害剤については、Blood et al., Bioch. Biophys. Acta., 1032:89-118 (1990)、Moses et al., Science, 248:1408-1410 (1990)、Ingber et al., Lab. Invest., 59:44-51 (1988)、ならびに米国特許第5,092,885号、第5,112,946号、第5,192,744号、第5,202,352号、および第6573256を参照されたい。さらに、血管新生を抑制するために使用され得る多種多様な化合物が存在し、例えば、エンドスタチンタンパク質または誘導体、アンジオスタチンのリジン結合断片、メラニンまたはメラニン促進化合物、プラスミノーゲン断片(例えば、プラスミノーゲンのクリングル1〜3)、トロポニンサブユニット、ビトロネクチンαVβ3の拮抗剤、サポシンBに由来するペプチド、抗生物質または類似体(例えば、テトラサイクリンまたはネオマイシン)、ジエノゲスト含有組成物、ペプチドに結合されたMetAP-2抑制コアを含む化合物、化合物EM-138、カルコンおよびその類似体、ならびにnaaladアーゼ阻害剤がある。例えば、米国特許第6,395,718号、第6,62,075号、第6,465,431号、第6,475,784号、第6,482,802号、第6,482,810号、第6,500,431号、第6,500,924号、第6,518,298号、第6,521,439号、第6,525,019号、第6,538,103号、第6,544,758号、第6,544,947号、第6,548,477号、第6,559,126号、および6,569,845号を参照されたい。
【0117】
併用療法の性質に応じて、本発明のポリペプチド治療薬の投与は、他の療法が施されている間および/またはその後に続けることができる。ポリペプチド治療薬の投与は、単回投与または複数回投与で行われ得る。場合によっては、ポリペプチド治療薬の投与は従来の療法の少なくとも数日前に開始され、他の例では、投与は従来の療法の直前またはそれと同時に開始される。
【0118】
本明細書に記載するVEGFR-2結合タンパク質はまた、検出可能に標識して、画像化用途または診断用途の目的で、VEGFR-2を発現している細胞と接触させるために使用することができる。診断目的では、本発明のポリペプチドは好ましくは固体支持体上に固定化される。好ましい固体支持体には、カラム(例えば、アガロースに基づくアフィニティーカラムなどのアフィニティーカラム)、マイクロチップ、またはビーズが含まれる。
【0119】
診断用途の1つの態様では、不適切な血管新生によって特徴づけられる病態を有する疑いのある患者に由来する、血清または組織生検試料などの生物試料を、VEGFR-2のレベルを検出するために本発明の検出可能に標識されたポリペプチドと接触させる。次いで、検出されたVEGFR-2のレベルを、同様に標識ポリペプチドと接触させた正常試料において検出されたVEGFR-2のレベルと比較する。VEGFR-2のレベルの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の増加は、不適切な血管新生によって特徴づけられる病態の診断上の指標と見なされ得る。
【0120】
特定の態様において、本発明のVEGFR-2結合ポリペプチドは、検出され得る標識にさらに結合される(例えば、標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、または酵素補助因子であってよい)。活性部分は以下のような放射性物質であってよい:鉄キレートなどの放射性重金属、ガドリニウムまたはマンガンの放射性キレート、酸素、窒素、鉄、炭素、またはガリウムの陽電子放射体、43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、68Ga、123I、125I、131I、132I、または99Tc。そのような部分に結合された結合剤は画像化剤として使用することができ、ヒトなどの哺乳動物における診断上の使用のために有効な量で投与され、次いで画像化剤の局在性および蓄積が検出される。画像化剤の局在性および蓄積は、ラジオシンチグラフィー、核磁気共鳴画像化法、コンピュータ断層撮影法、または陽電子放出断層撮影法によって検出され得る。VEGFRを対象にしたVEGFR-2結合ポリペプチドを使用する免疫シンチグラフィーを用いて、癌および脈管構造を検出および/または診断することができる。例えば、99テクネジウム、111インジウム、または125ヨウ素で標識したVEGFR-2マーカーに対する結合ポリペプチドのいずれかは、そのような画像化に効率的に使用することができる。当業者には明白であるように、投与する放射性同位元素の量は放射性同位元素に依存する。当業者は、活性部分として使用する所与の放射性核種の比放射能およびエネルギーに基づいて、投与すべき画像化剤の量を容易に製剤化することができる。典型的に、画像化剤の用量当たり0.1〜100ミリキュリー、好ましくは1〜10ミリキュリー、最も頻繁には2〜5ミリキュリーが投与される。したがって、放射性部分に結合された標的化部分を含む、画像化剤として有用である本発明の組成物は、0.1〜100ミリキュリー、いくつかの態様において好ましくは1〜10ミリキュリー、いくつかの態様において好ましくは2〜5ミリキュリー、いくつかの態様においてより好ましくは1〜5ミリキュリーを含む。
【0121】
本発明のVEGFR-2結合ポリペプチドはまた、VEGFR-2を発現している細胞または組織にさらなる治療薬(これらに限定されるわけではないが、薬剤化合物、化学療法化合物、および放射線治療化合物)を送達するために使用することができる。一例では、VEGFR-2を発現している腫瘍細胞または組織に化学療法薬を標的化送達するために、VEGFR-2結合ポリペプチドを化学療法薬と融合させる。
【0122】
本発明のVEGFR-2結合ポリペプチドは、研究、診断、および治療用途を含む様々な用途に有用である。例えば、本ポリペプチドを用いて、受容体またはその一部を単離および/または精製すること、ならびに受容体の構造(例えば、高次構造)および機能を研究することができる。
【0123】
特定の局面では、本発明の種々の結合ポリペプチドを使用し、例えば内皮細胞(例えば、静脈内皮細胞)において、またはVEGFR-2遺伝子をトランスフェクションした細胞において、VEGFR-2の発現を検出または測定することができる。したがって、本ポリペプチドは、診断または研究目的での、細胞選別および画像化(例えば、フローサイトメトリーおよび蛍光活性化細胞選別)などの用途において有用性を有する。
【0124】
特定の態様において、結合ポリペプチドまたはその断片は、診断目的のために標識されても標識されなくてもよい。典型的に診断アッセイは、VEGFR-2に対する結合ポリペプチドの結合によって生じる複合体の形成の検出を伴う。結合ポリペプチドまたは断片は、抗体と同様に直接標識することができる。これらに限定されないが、放射性核種、蛍光剤、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害剤、およびリガンド(例えば、ビオチン、ハプテン)を含む種々の標識を使用することができる。多くの適切な免疫測定法が当業者に周知である(例えば、米国特許第3,817,827号;第3,850,752号;第3,901,654号;および第4,098,876号を参照のこと)。非標識の場合には、結合ポリペプチドは凝集アッセイなどのアッセイに使用することができる。非標識結合ポリペプチドはまた、結合ポリペプチドと反応する標識抗体または他の適切な試薬(例えば、標識プロテインA)などの、結合ポリペプチドを検出するために使用し得る別の(1つまたは複数の)適切な試薬と組み合わせて使用することも可能である。
【0125】
1つの態様において、本発明の結合ポリペプチドは酵素免疫法において使用することができ、その場合、本ポリペプチドは酵素に結合させておく。VEGFR-2タンパク質を含む生物試料を本結合ポリペプチドと混合すると、結合ポリペプチドとVEGFR-2タンパク質との間に結合が生じる。1つの態様において、VEGFRタンパク質を発現している細胞(例えば、内皮細胞)を含む試料を本抗体と混合すると、結合ポリペプチドと、結合ポリペプチドによって認識されるVEGFR-2タンパク質を有する細胞との間に結合が生じる。これらの結合した細胞を非結合試薬から分離し得り、例えば、酵素が作用した場合に色または他の検出可能な変化を生じる酵素の基質と試料を接触させることによって、細胞に特異的に結合した結合ポリペプチド-酵素複合体の存在を検出することができる。別の態様では、本結合ポリペプチドは非標識であってよく、本結合ポリペプチドを認識する二次標識ポリペプチド(例えば、抗体)を添加することができる。
【0126】
特定の局面において、生物試料中のVEGFR-2タンパク質の存在の検出に使用するためのキットもまた調製することができる。そのようなキットは、VEGFR-2タンパク質またはそのような受容体の一部に結合するVEGFR-2結合ポリペプチド、および結合ポリペプチドと受容体タンパク質またはその一部との複合体の存在を検出するのに適した1つまたは複数の補助試薬を含む。本発明のポリペプチド組成物は、単独で、または他のエピトープに特異的なさらなる抗体と組み合わせて、凍結乾燥形態で提供することができる。結合ポリペプチドおよび/または抗体は標識されていてもされていなくてもよく、補助成分(例えば、Tris、リン酸、および炭酸などの緩衝液、安定剤、賦形剤、殺生物剤、および/または例えばウシ血清アルブミンなどの不活性タンパク質)と共にキット内に含めることができる。例えば、結合ポリペプチドおよび/または抗体は、補助成分との凍結乾燥混合物として提供されてもよいし、または補助成分は使用者が組み合わせるように個別に提供されてもよい。一般にこれらの補助物質は、活性結合ポリペプチドまたは抗体の量に基づいて約5重量%未満存在し、通常はポリペプチドまたは抗体濃度に基づいて全量で少なくとも約0.001重量%存在する。結合ポリペプチドに結合し得る二次抗体を使用する場合には、そのような抗体を、例えば別のバイアルまたは容器に入れてキット中に提供することができる。二次抗体は存在する場合、典型的に標識されており、上記の抗体製剤と同様の方法で製剤化することができる。
【0127】
同様に本発明は、VEGFR-2の発現を検出および/または定量化する方法であって、細胞またはその画分(例えば、膜画分)を含む組成物を、VEGFR-2またはこの受容体の一部に結合する結合ポリペプチドとこれらへの結合に適した条件下で接触させ、結合をモニターする方法に関する。結合ポリペプチドとVEGFR-2またはその一部との間で複合体が形成されたことを示す結合ポリペプチドの検出は、受容体の存在を示す。ポリペプチドの細胞への結合は、実施例に記載する方法などの標準的な方法によって決定することができる。この方法を用いて、個体の細胞におけるVEGFR-2発現を検出することができる。任意に、内皮細胞の表面上でのVEGFR-2の定量的発現を、例えばフローサイトメトリーによって評価することができ、染色強度を疾患の感受性、進行、またはリスクと相関づけることができる。
【0128】
本発明はまた、特定の疾患に対する哺乳動物の感受性を検出する方法に関する。例えば、本方法を用いて、細胞上に存在するVEGFR-2の量および/または哺乳動物におけるVEGFR-2陽性細胞の数に基づいて進行する疾患に対する哺乳動物の感受性を検出することができる。1つの態様において、本発明は、腫瘍に対する哺乳動物の感受性を検出する方法に関する。この態様では、正常個体においてVEGFR-2を発現する細胞を含む被験試料をVEGFR-2またはその一部と結合する結合ポリペプチドと、それらへの結合に適した条件下で接触させる。腫瘍に対する個体の感受性を示す結合および/または結合の量を検出するが、受容体が高レベルであるほど腫瘍に対する個体の感受性が高い。
【0129】
実施例:
以下の実施例は本発明を説明する目的で提供するものであり、限定するものと解釈されるべきではない。
【0130】
実施例1. KDR結合分子の最初の同定
ヒトフィブロネクチンの10番目のタイプ3ドメインの骨格に基づき、23〜29位、52〜55位、および77〜86位(アミノ酸番号はSEQ ID NO:5を参照にする)の3つの領域をランダム化して、約1013個のRNA-タンパク質融合変種のライブラリーを構築した(3ループライブラリー;Xu et al., Chemistry & Biology 9:933-942, 2002)。23〜29位および77〜86位(2ループライブラリー)または77〜86位(1ループライブラリー)でのみランダム化した領域を含む同様のライブラリーを構築した。これらの3つのライブラリーの混合物を、ヒトVEGFR-2の細胞外ドメイン(KDR、ヒトIgG1 Fcに融合した細胞外ドメイン、残基1〜764)に対するインビトロ選択に使用した。この用途のために、ループのアミノ酸の位置を残基23〜30(BCループ)、52〜56(DEループ)、および77〜87(FGループ)と定義する。6ラウンドの選択の後、DNA配列決定により標的結合集団を解析したが、これらはいくつかの複製物が存在するが多様であることが判明した。15個の独立したクローンによってコードされるタンパク質をKDRに対する結合に関してスクリーニングし(図1A)、続いて最も良好な結合剤をVEGFの存在下における標的結合の阻害について解析した(図1B)。KDR-VEGF結合を阻害する複数のクローンが同定され、これらのクローンが天然リガンド(VEGF)結合部位においてまたはその近傍でKDRと結合することが示唆された。2つの結合分子(VR28およびVR12)がVEGF-KDR相互作用を直接阻害する能力を、固定化VEGFおよびKDR-Fcを含む移動相を用いて、選択した結合タンパク質を含めてまたは含めずに、BIAcoreアッセイで評価した。VR28、それよりも低い程度でVR12は用量依存的様式でVEGFへのKDR結合を阻害したが、非競合クローン(VR17)は阻害しなかった(図1C)。最後に、精製組換えKDRに対する結合に加えて、VR28はまたKDR発現組換えCHO細胞に結合するが、対照CHO細胞には結合しないようであった(図1D)。
【0131】
VR28クローンの結合ループの配列を表4の1行目に示す。
【0132】
VR28は配列を決定した結合集団の中で最も豊富なクローンではなかったが(配列を決定した28クローンのうち1コピー)、KDRに対するその結合親和性は、放射性平衡結合アッセイ(図3および表5)およびBIAcoreアッセイ(表7)で決定された解離定数11〜13 nMを有して、この結合集団の試験したクローンの中で最良であった。分子の残りの骨格部分は、野生型10Fn3とは相違がなかった(結合に影響しない69位における偶発的な骨格変化を修正した後)。しかし、VR28は、VEGF依存性細胞増殖アッセイにおいてVEGF-KDRシグナル伝達の阻害をほとんど示さなかった。したがって、ナイーブライブラリーからの選択により、生化学的結合研究においてVEGFとKDRの相互作用を妨げる抗体模倣体が得られたが、生物学的シグナル伝達アッセイにおける中和機能には親和性の改善が有用であった。
【0133】
実施例2. クローンVR28の親和性成熟
結合ループ内のみでの配列変更に焦点を置いた突然変異誘発戦略を利用した。始めにどのループが最も改善をもたらす可能性が高いかを試験するため、ループ特異的高頻度変異誘発PCRを行い、VR28の各ループに独立して最大で30%の変異を導入した。KDRに対して選択を3ラウンド行った後、KDR-Fcに対する結合が改良された複数のクローンが認められた。選択プールの配列解析から、変異の大部分はFGループ内に蓄積し、BCループおよびDEループはほぼ原型のまま残っていることが明らかになった。この結果から、FGループがさらなる修飾の最も適した標的であることが示された。
【0134】
したがって、オリゴヌクレオチド突然変異誘発によりFGループ内のVR28配列を変更することによって、約1012個の変種の新規ライブラリーを構築した。FGループの位置のそれぞれについて(残基77〜86[VAQNDHELIT(SEQ ID NO:198)および次のプロリン(残基87)])、VR28コードDNAおよびNNSの50:50混合物を各位置に導入した。約80クローンのランダムな試料をDNA配列解析したところ、予想通りクローン当たり平均して6アミノ酸の変化が明らかになった。標的に対してより高い親和性を有するクローンを支持するために、選択過程において低いKDR-Fc濃度を使用した。4ラウンドの選択過程における標的結合のプロファイルを図2に示す。4ラウンドの選択後、結合集団をサブクローニングして解析した。表5および図3Aに、個々の結合クローンの親和性測定値を要約する。KDR-Fcに対して測定された結合定数は、VR28(11 nM)の10〜30倍改善されて<0.4〜<1.8 nMであった。
【0135】
そのいくつかを表4(Kクローン)に示すが、配列解析から、結合集団は多様であるが、クローン間にいくつかの共通モチーフが同定されることが明らかになった。最も顕著なことには、Pro87およびLeu84が(VR28に見られるように)ほとんどすべてのクローンに認められ、これらの残基が結合部位の構造に必須であることが示唆された。配列決定したクローンにおいてH82KまたはH82Rの変化のみが認められたことから、82位には正に荷電したアミノ酸が必要であると考えられ、または78位には脂肪族アミノ酸が主を占めていた。D81は多くの場合Gに変異されており、その結果この位置における負の荷電が消失し、可動性が増加した。さらに、選択された集団における全体的な変異の割合は、選択前のプールに匹敵しており、FGループは変化に対して非常に開放的であることが示唆された。
【0136】
ヒトフィブロネクチンの10Fn3ドメインのN末端におけるいくつかの残基は、構造決定によって示唆されるようにFGループに近接して位置する(Main et al, Cell 71:671-678, 1992)。2つの領域が近接していることは、標的結合に負の影響を及ぼす可能性があると考えられる。N末端領域における2つの偶発的な変異、L8PおよびL8Qは、おそらくFGループに対するN末端の位置の変化に起因して、多くの選択されたクローンの中でKDRへのより良好な結合をもたらした。N末端の影響をさらに試験するために、23個の異なるKDR結合剤について、βシートの前のN末端の最初の8残基が欠失された結合分子を作製した。次いで、欠失していない対応物と標的結合を比較した。図3Bに示すように、KDR-Fcに対する結合は欠失させることで平均して約3倍良好であった。
【0137】
実施例3. ヒト(KDR)およびマウス(Flk-1)VEGFR-2に対する二重特異性を有する結合剤の選択
VR28および親和性成熟した変種(Kクローン)の大部分は、図4に示すように、KDRのマウス相同体、Flk 1に結合し得なかった。しかし、KDRとFlk 1は高レベルの配列同一性を共有しているため(85%、Claffey et al., J. Biol. Chem. 267:16317-16322 (1992)、Shima et al., J. Biol. Chem. 271:3877-3883 (1996))、KDRおよびFlk 1の両方に結合し得る抗体模倣体が単離されることが考えられる。そのような二重結合剤は、同じ分子を動物モデルにおける機能研究において、次いでヒトにおける機能研究において試験できることから、望ましい。
【0138】
FGループの突然変異誘発およびKDRに対する4ラウンドの選択後のクローン集団を、Flk 1に対してさらに3ラウンド選択した。図2に示すように、ラウンド5からラウンド7にかけてFlk 1に対する結合の増加が認められ、Flk 1結合剤の濃縮が示された。複数の個々のクローンについて結合を解析した結果、KDRのみに対して選択されたクローン(Kクローン)とは対照的に、Flk 1に対するさらなる選択に由来するほとんどのクローン(Eクローン)は、KDRおよびFlk 1の両方と相互作用し得ることが明らかになった。放射性平衡結合アッセイ(表6および図5)およびBIAcore(表7)により決定された両標的に対する結合定数から、個々のクローンは両標的に高親和性で結合し得ることが示される。
【0139】
例えば、E 19はKDRに対して60 pMおよびFlk-1に対して340 pMというKdを有する。これらの結果から、選択過程における単純な標的変換戦略によって、おそらくは両標的によってかけられる選択圧を介して、Flk-1に結合し得ない中程度のKDR結合剤であるVR28の変異誘発集団から、KDRおよびFlk-1の両方に対する二重特異性を有する分子が単離され得ることが実証される。選択されたフィブロネクチンに基づく結合タンパク質は、高い標的濃度においてもVEGFR1に対する実質的な結合は認められず、VEGFR-2(KDR)に対して高度に特異的である。
【0140】
配列解析から、いくつかのモチーフはKDR結合剤プールで認められたモチーフと類似しているが(残基84および87それぞれにおけるLeuおよびPro;残基82におけ正に荷電したアミノ酸、主にArg)、いくつかのモチーフは維持されていないことが(78位における脂肪族)明らかになった。さらに、モチーフERNGR(残基78〜82)がFlk-1に結合するほぼすべてのクローンに存在した(表4);このモチーフは、KDR結合プール中にはほとんど認められなかった。R79およびR82は、この位置に異なる残基が存在する場合、Flk-1への結合は大きく減少し、KDRへの結合は減少しないことから、Flk-1への高親和性結合に特に重要であると考えられる(図6A)。KDRおよびFlk-1への結合における各ループの重要性を決定するため、表4に示すクローンE6およびE26のループを、NNSランダム化配列によって1度に1ループ置換した。図6Bに示すように、置換後、タンパク質はもはやKDRにもFlk-1にも結合できない。これらの結果から、各ループは標的に対する結合に必要であることが示され、標的との相互作用には3つのループすべてが協同的に関与することが示唆される。
【0141】
両標的に結合し得るクローンを得るために、別の突然変異誘発戦略を独立して使用した。KDRと高親和性で(Kd=2 nM;表7)結合しFlk-1と低親和性で(Kd>3000 nM)結合する、VR28の高頻度変異誘発PCR親和性成熟の産物であるクローン159Q(8)L(表4)を、開始点として選択した。FGループの最初の6アミノ酸を十分にランダム化し(NNS)、残りの5残基(ELFTP)は原型のまま残した。Flk-1に対して選択を6ラウンド行った後、結合プールをDEループ(52〜56位)において再度ランダム化し、Flk-1に対してさらに3ラウンドおよびKDRに対して1ラウンドの選択を行った。このようにして、KDRおよびFlk-1の両方に対する多くの高親和性結合分子が得られた(表4および図4)。例えば、クローンM5FLは、KDRに対する高い結合親和性を維持しつつ(Kd=890 pM)、元のクローンの1000倍の改善である2.1 nMのKdでFlk-1に結合し得る。興味深いことに、VR28の変異誘発集団から選択されたFlk-1結合分子において認められたERNGRモチーフは、FGループのこの領域を十分にランダム化したにもかかわらず、クローン159Q(8)Lの変異誘発および選択に由来する複数のクローン中にも同様に存在した。2つの独立したライブラリーから同様の結合分子が単離されたことから、親和性成熟過程は、FGループ内に位置する最適なFlk-1結合モチーフを単離するのに強力であることが示唆される。
【0142】
実施例4. インビトロにおける細胞表面結合およびVEGF活性の中和
大腸菌が産生する結合分子を用いて、細胞培養モデル系におけるKDRおよびFlk-1結合分子の機能性を評価した。抗His6タグマウス抗体(大腸菌が発現するタンパク質はHisタグと共に発現された)および抗マウス蛍光標識抗体からなる検出系を使用して、結合分子が、低いナノモル濃度のEC50でKDRまたはFlk-1を発現する哺乳動物細胞に特異的に結合することが示された(図7および表8)。
【0143】
より重要なことには、エリスロポエチン受容体シグナル伝達ドメインに結合された細胞外KDRまたはFlk-1ドメインを発現する組換えBA/F3細胞(DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikoorganismen und Zellkulturen GmbH)を用いた場合、これらの分子は、KDR発現細胞については3〜12 nMおよびFlk-1発現細胞については2〜5 nMのIC50を有して、用量依存的様式でVEGF刺激による細胞増殖を抑制した。図8および表9に示すように、抑制の強度は対照抗KDRモノクローナル抗体および抗Flk-1モノクローナル抗体と同程度であると考えられる。
【0144】
HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)の増殖のVEGF阻害に関して、多くのクローンをさらに試験した。HUVEC細胞は、VEGFに反応する体内の細胞と密接に関連した天然のヒト細胞である。図9および表10に示すように、野生型フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質はこのヒト由来細胞系においてVEGF活性の阻害に関して不活性であるのに対し、フィブロネクチンに基づく結合タンパク質はこの系においてもVEGF活性を阻害する活性を有した。
【0145】
実施例5. M5FLタンパク質の熱安定性および可逆的リフォールディング
示差走査熱量測定(DSC)により、KDR結合剤M5FLの熱安定性を明らかにした。標準的なPBS緩衝液条件(リン酸ナトリウム pH 7.4、150mM NaCl)下では、M5FLは56℃で単一の不可逆的熱融解転移を有することが判明した。その後、酢酸ナトリウム pH 4.5が、M5FLタンパク質の溶解度に好ましい緩衝液であると同定された。この緩衝液(100 mM)中でのDSC実験から、M5FLはこれらの条件下でより安定であり(Tm=67〜77℃)、融解転移が可逆的であることが実証された(図10)。可逆的融解転移を用いてタンパク質治療薬の長期保存を支持する好ましい条件が同定されており(Remmele et al, Biochemistry 38:5241 (1999))、よってNa-酢酸 pH4.5はM5FLタンパク質の保存に最適な緩衝液であると同定された。
【0146】
実施例6. PEG化M5FLタンパク質のインビトロ結合および細胞に基づく活性
C末端伸長を有するM5FLタンパク質を大腸菌発現系で産生させて、以下のタンパク質配列を得た(Cys100に斜線を施し、C末端伸長に下線を引いてある;かなりの割合のタンパク質が最初のメチオニンを欠いて産生される):
【0147】
100位のシステイン残基の単一のスルフヒドリルを用いて、標準的なマレイミド化学法によりPEG変種に結合し、2つの異なるPEG化型M5FLを得た。直鎖状20 kD PEGおよび分岐型40 kD PEG(Shearwater Corporation)をM5FLと結合して、それぞれM5FL-PEG20およびM5FL-PEG40を作製した。陽イオン交換クロマトグラフィーにより、未反応のタンパク質およびPEGからPEG化タンパク質形態を精製した。2つのPEG型M5FLの共有結合を、SDS-PAGE(図11)および質量分析によって確認した。
【0148】
BIAcoreチップ上にアミド化学法によって固定化したヒトおよびマウスVEGF受容体標的タンパク質を用いて、表面プラズモン共鳴法(SPR)(BIAcore)によりインビトロ親和性測定を行った。いずれの標的タンパク質に対しても、20 kDおよび40 kD PEG化M5FL型は未修飾のM5FLよりも遅い結合速度(Ka)を有し、解離定数(kd)にはほぼ影響がないことが判明した(表11)。
【0149】
実施例4に記載したBa/F3系を用いて、PEG化M5FL調製物の機能性を試験した。図12は、それぞれの結合剤の濃度の関数としてのA490(細胞増殖の程度を表す)のプロットを示す。曲線はほぼ同一であり、どちらのPEG化型の生物活性にもPEG化の影響がほぼないことが示された。
【0150】
KDR結合ポリペプチドのサブセットについてKon、koff、およびKDを解析し、BaF3細胞に基づくVEGF阻害アッセイのEC50と比較した。散布図から、konはEC50と十分に相関するが、koffは十分に相関しないことが示された。105s-1以上のkonを有するKDR結合タンパク質の90%超は、10 nM以下のEC50を有した。KDはkonとkoffの比であり、予想通りEC50と中程度の相関を示す。
【0151】
CT-01を含む多くのKDR結合タンパク質を、VEGFR-1、VEGFR-2、およびVEGFR-3への結合に関して評価した。タンパク質はVEGFR-2に対する高度の特異性を示した。
【0152】
実施例6:KDR結合タンパク質CT-01の調製物はヒト内皮細胞においてVEGFR-2シグナル伝達を阻害する。
上記実施例に記載した方法を受けて、10Fn3に基づくさらなるKDR結合タンパク質を作製した。上記の実施例5でM5FLタンパク質の開発に関して記載したように、BIAcore結合アッセイを用いてヒトKDRおよびマウスFlk-1に対するKDについて、およびBa/F3アッセイにおけるIC50について試験した。CT-01と命名したタンパク質は、これらのアッセイそれぞれにおいて所望の特性を示し、よってさらなる解析に使用した。
【0153】
CT-01を導出した最初のクローンは、配列:
を有した。FGループ配列に下線を引いてある。
【0154】
上記のような親和性成熟により、CT-01のコア型が生成された。
【0155】
上記のCT-01分子は最初の8アミノ酸の欠失を有し、N末端またはC末端にさらなるアミノ酸を含み得る。例えば、さらなるMG配列をN末端に置くことができる。Mは通常切断されて、N末端にはGEV…配列が残る。通常の8アミノ酸をN末端に再付加することでも、所望の特性を有するKDR結合タンパク質が生成される。N末端のメチオニンは通常切断されて、配列:
が得られる。
【0156】
インビボで使用するには、PEG化に適した形態を作製することができる。例えば、N末端の8アミノ酸を欠く形態について以下に示すように、システインを含むC末端尾部を付加して、これを発現させた。
以下に記載するインビボ実験では、この分子のPEG化型を使用する。システインの代わりにセリンを有する対照型もまた使用した。
【0157】
同じC末端尾部を、SEQ ID NO:193に示すN末端8アミノ酸を有するCT-01型に付加することもできる。
【0158】
所望のKDR結合特性を有するさらなる変種が単離された。以下のコア配列はいくぶん異なるFGループを有し、例えば、N末端MG配列、欠失された8アミノ酸を回復するN末端配列、および/またはPEG化用のシステインを提供するためのC末端尾部と共に発現させることができる。
別のそのような変種はコア配列:
を有する。
【0159】
これらの変種を比較することによって、FGループの共通配列:(D/E)GXNXRXXIP(SEQ ID NO:3)が示される。より詳細には、共通配列は(D/E)G(R/P)N(G/E)R(S/L)(S/F)IP(SEQ ID NO:4)として表すことができる。
【0160】
実施例7: CT-01はヒト内皮細胞においてVEGFR-2シグナル伝達を阻害する。
図13に示すように、VEGFR-2を介したVEGF-Aシグナル伝達は、VEGFR-2の細胞内ドメインのリン酸化、およびその後のホスホリパーゼCγ(PLCγ)、プロテインキナーゼC(PKC)、Raf-1、MEK1/2、ERK1/2が関与する経路の活性化によって媒介され、内皮細胞増殖をもたらす。
【0161】
本明細書に開示するKDR結合剤がこのシグナル伝達経路の活性化を抑制するかどうかを評価するため、ヒト微小血管内皮細胞をVEGFR結合ポリペプチド(例えば、CT-01)で30分間処理し、VEGF-Aで5分間刺激した。ホスホ-VEGFR-2、非ホスホ-VEGFR-2、ホスホ-ERK1/2、および非ホスホ-ERK1/2に特異的な抗体を用いて、全細胞溶解物をSDS-PAGEおよびウェスタン解析により解析した。
【0162】
図13に示すように、130 pM CT-01はホスホ-VEGFR-2の形成を抑制し、また下流のリン酸化ERK1/2の形成を減少させる。リン酸化ERK1/2は完全には排除されないが、これはおそらく、ERK1/2は多くのさらなるシグナル伝達経路からシグナルを受け取るという事実による。
【0163】
実施例8:フィブロネクチンに基づくKDR結合タンパク質のVEGF-AおよびVEGF-Dによるシグナル伝達の阻止
VEGFR-2は3つのVEGF種、VEGF-A、VEGF-C、およびVEGF-Dの受容体である。KDRを介するVEGF-AおよびVEGF-D媒介性シグナル伝達に及ぼすフィブロネクチンに基づくKDR結合タンパク質の影響を評価する実験を行った。
【0164】
Flk-1媒介性シグナル伝達に依存するBa/F3細胞株を作製した。図14の左側のパネルに示すように、細胞生存度は、著しく高レベルのVEGF-Dが必要であるものの、細胞をVEGF-AまたはVEGF-Dで処理することにより維持することができた。
【0165】
図14の中央のパネルに示すように、細胞を15 ng/ml VEGF-Aの存在下で維持し、本明細書に開示するM5FLもしくはCT-01タンパク質、またはDC-101抗Flk-1抗体と接触させた。試薬はそれぞれVEGF-Aが媒介する細胞生存度を逆行させ、これにより、Flk-1を介したVEGF-Aシグナル伝達が阻止されたことが示される。
【0166】
図14の右側のパネルに示すように、細胞を300 ng/ml VEGF-Dの存在下で維持し、本明細書に開示するM5FLもしくはF10タンパク質、または抗VEGF-A抗体と接触させた。M5FLおよびF10はVEGF-Dが媒介する細胞生存度を逆行させ、これにより、Flk-1を介したVEGF-Dシグナル伝達が阻止されたことが示される。抗VEGF-A抗体は影響を及ぼさす、本アッセイの特異性が実証される。
【0167】
実施例9:薬物動態
薬物動態研究:未変性CT-01またはPEG化型(40 kDa PEG、CT-01PEG40)を125Iでヨウ素化した。ヨウ素化タンパク質10〜20 mCiを成体雄ラットの静脈内または腹腔内に投与し、表示の時間にヨウ素化タンパク質レベルを測定した。組織分布研究では、15分、2時間、および6時間後にラットを屠殺し、放射能レベルを測定した。図15および16を参照されたい。非修飾CT-01は、血液から迅速に排除される12 kDaタンパク質である。69.9 mL/hr/kgの排除、最大血清濃度9.1 mgを有して、曲線下面積(AUC)値は14.6 hr*mg/mLである。初期半減期(α)は0.3時間であり、第二相半減期(β)は13.5時間である。これと比較して、静脈内PEG化CT-01は、主に初期相の排除の劇的な減少が原因で、血中における存在が著しく増加した。AUCは10倍超増大して193となり、排除速度は1/10未満に低下して5.2となり、Cmaxは12.9 mg/mlである。α半減期は1時間まで延長され、β半減期は16.2時間まで延長される。ラットにおけるこれらに薬物動態はヒトにおける週に2回の投与計画に相当し、この投与の程度は十分に許容可能な範囲内にある。
【0168】
PEG化CT-01の腹腔内(i.p.)投与は貯蔵様薬物動態を有した。CT-01の血中濃度の最初の急増は認められなかった。代わりに、CT-01の量はよりゆっくりと増加し、ゆっくりと減少した。静脈内投与時のCT-01濃度の最初の急増に起因する副作用の問題がある場合、そのような薬物動態は望ましいと考えられる。10Fn3に基づく他の薬剤も、i.p.投与で同様に挙動を示す可能性が高い。したがって、これは、10Fn3に基づく薬剤による時間遅延投薬を達成するための一般化可能な様式であると考えられる。
【0169】
図16に示すように、肝臓がPEG化型CT-01を分泌する主な経路である。CT-01の長期蓄積は検出されなかった。
【0170】
20 kDA PEG部分に結合したCT-01を用いた場合にも、同様の結果が得られた。
【0171】
実施例10:CT-01のインビボ有効性
図17に概説するMilesアッセイを用いて、腫瘍効果研究のための用量、スケジュール、および投与パラメータを評価する。VEGF投与の4時間前に、Balb/c雌マウスの腹腔内に緩衝液または1、5、および20 mg/kgのCT-01PEG40を投与した。背中の皮膚にVEGF-Aを皮内局所投与することにより、エバンスブルー色素の血管漏出が誘導される(図17および18)。
【0172】
KDR結合剤で処理したマウスは、VEGF媒介性血管漏出のレベルの統計的に有意な減少を示した。CT-01の5 mg/kgおよび20 mg/kg用量は有意な結果を示した。したがって、マウス腫瘍モデル研究には5 mg/kg用量を選択した。
【0173】
実施例11:CT-01の腫瘍増殖抑制
B16-F10マウスメラノーマ腫瘍アッセイ:
1日目に、2x106個のB16-F10マウスメラノーマ腫瘍細胞をC57/BL雄マウスの皮下に移植した。6日目に、触知腫瘤が検出された。腫瘍が測定可能な大きさになった8日目に、媒体対照、5、15、または40 mg/kg CT-01PEG40の腹腔内連日投与を開始した。最低用量である5 mg/kgは腫瘍増殖を減少させた。18日目に、15および40 mg/kgで処理したマウスは、腫瘍増殖の50%および66%の減少を示した。図19を参照されたい。
【0174】
U87ヒト神経膠芽腫アッセイ:
5x106個のU87ヒト神経膠芽腫腫瘍細胞を雄ヌードマウスの皮下に移植した。腫瘍体積が約50 mm3に到達した時点で、処置を開始した(0日目)。媒体対照、3、10、または30 mg/kg CT-01PEG40を一日おきに(EOD)静脈内投与した。抗Flk-1抗体DC101を、最適投与計画に関して発表されている通り、40 mg/kgで週に2回投与した。最低用量である3 mg/kgは腫瘍増殖を減少させた。12日目に、10および30 mg/kgで処理したマウスは、腫瘍増殖の50%の減少を示した。図20を参照されたい。有効性は抗Flk-1抗体の有効性と匹敵する。
【0175】
以下の材料および方法を実施例1〜11に記載した実験に使用した。
【0176】
組換えタンパク質:
組換えヒトVEGF165、マウスVEGF164、ヒトニューロトロフィン-4(NT4)、ヒトおよびマウス血管内皮増殖因子受容体-2 Fcキメラ(KDR-FcおよびFlk-1-Fc)は、R&D systems(ミネソタ州、ミネアポリス)から購入した。標的タンパク質のビオチン化は、EZ-Link(商標)Sulfo-NHS-LC-LC-Biotin(Pierce、イリノイ州)の存在において、1xPBS中で4℃にて2時間行った。1x PBSに対して透析することにより、過剰量のEZ-Link(商標)Sulfo-NHS-LC-LC-Biotinを除去した。ビオチン化のレベルは質量分析によって決定し、標的タンパク質濃度はCoomassie Protein Plus Assay(Pierce、イリノイ州)を使用して測定した。
【0177】
プライマー:
ライブラリーの構築および選択されたクローンの突然変異誘発において最終的に使用するため、以下のオリゴヌクレオチドを化学合成により調製した。
T7 TMV Fn:
T7 TMV N末端欠失:
MK165-4 A20:
N末端フォワード:
BCDEリバース:
BCDEフォワード:
DEFGリバース:
DEFGフォワード:
C末端ポリA:
Hu3'FLAGSTOP:
VR28FG-50:
F1U2:
F2:
F3159:
F4:
F5159:
F5-X5:
F6:
F7X6159:
F8:
C2asaiA20:
C2RT:
hf01 BCリバース:
hf01 DEリバース:
hf01 FGリバース:
BCDE rev:
BCDE for:
hf01 DE-FGフォワード:
Front FGリバース:
hf01 RT FlagポリAリバース:
5-RI-hKDR-1B:
3-EPO/hKDR-2312B:
5-RI-mKDR-1:
3-EPO-mKDR-2312:
5-RI-hTrkB-1:
3-EpoR/hTrkB-1310:
5-hKDR/EPO-2274B:
5-mKDR/EPO-2274:
3-XHO-EpoR-3066:
5'hTrkB/EpoR-1274:
【0178】
緩衝液
本明細書に記載する実験では、以下の緩衝液を使用した。緩衝液A(100 mM TrisHCl、1 M NaCl、0.05% Tween-20、pH 8.0);緩衝液B(1X PBS、0.02% Triton X100);緩衝液C(100 mM TrisHCl、60 mM EDTA、1 M NaCl、0.05% Triton X100、pH 8.0);緩衝液Ca(100 mM TrisHCl、1 M NaCl、0.05% Triton X100、pH 8.0);緩衝液D(2 M NaCl、0.05% Triton);緩衝液E(1X PBS、0.05% Triron X100、pH 7.4);緩衝液F(1X PBS、0.05% Triton X100、100 mMイミダゾール、pH 7.4);緩衝液G(50 mM HEPES、150 mM NaCl、0.02% TritonX-100、1 mg/mlウシ血清アルブミン、0.1 mg/mlサケ精子DNA、pH 7.4);緩衝液H(50 mM HEPES、150 mM NaCl、0.02% TritonX-100、pH 7.4);緩衝液I(1xPBS、0.02% TritonX-100、1 mg/mlウシ血清アルブミン、0.1 mg/mlサケ精子DNA、pH 7.4);緩衝液J(1xPBS、0.02% TritonX-100、pH 7.4);緩衝液K(50 mM NaH2PO4、0.5 M NaCl、5%グリセロール、5 mM CHAPS、25 mMイミダゾール、1x Complete(商標) Protease Inhibitor Cocktail(Roche)、pH 8.0);緩衝液L(50 mM NaH2PO4、0.5 M NaCl、5%グリセロール、25 mMイミダゾール、pH 8.0);緩衝液M(1xPBS、pH 7.4、25 mMイミダゾール、pH 7.4);緩衝液N(1xPBS、250 mMイミダゾール、pH 7.4);緩衝液O(10 mM HEPES、150 mM NaCl、0.005% Tween 20、pH 7.4)。
【0179】
一次ライブラリーの構築:
骨格としてヒトフィブロネクチンの10番目のドメインを使用するライブラリーの構築は、以前に記載されている(Xu et al., 2002、前記)。それぞれ23〜29位、52〜55位、および77〜86位に相当する3つのループ領域を、コード計画としてNNS(標準的なヌクレオチド混合物、式中、N=A、G、T、Cの等モル混合物;S=GおよびCの等モル混合物)を用いてランダム化した。23〜29位および77〜86位(2ループライブラリー)または77〜86位(1ループライブラリー)でのみランダム化した領域を含む同様のライブラリーも構築した。これらのライブラリーをほぼ等モル量で混合した。この混合ライブラリーは約1x1013個のクローンを含み、VR28が同定されたKDR選択で用いられた。
【0180】
変異誘発ライブラリーの構築:
高頻度変異誘発PCR。VR28クローンにおける骨格の変異T(69)IをPCRによって野生型配列に修正したが(以下を参照)、KDRに対するVR28結合剤の結合特性に変化は認められなかった。以前に記載された条件を用いて、VR28のループ領域に変異を導入した(Vartanian et al, Nuc. Acid Res. 24:2627-2631, 1996)。各ループ隣接するプライマー対(N末端フォワード/BCDEリバース、BCDEフォワード/DEFGリバース、DEFGフォワード/C末端ポリA)を用いて、VR28鋳型において3ラウンドの高頻度変異誘発PCRを行った。重複伸長ならびに隣接プライマーT7TMV FnおよびMK165-4 A20を使用したPCRにより、得られた断片を組み立てた。最終PCR反応によるクローンのDNA配列を決定し、ライブラリーが正しく構築されていることを確認した。骨格領域では1.5%の変異誘発率であるのに対し、ループ領域では最大で30%の変異誘発率が認められた。
【0181】
オリゴ突然変異誘発。PCRによるVR28のFGループのオリゴ突然変異誘発には、VR28FG-50プライマー、DEFGリバースプライマー、および隣接プライマーを使用した。FGループをコードする各ヌクレオチドの位置において、プライマーVR28FG-50は、VR28ヌクレオチド50%、および4つの全ヌクレオチド(N)またはGもしくC(S)の等量混合物50%を含んだ。この計画は、VR28 FGループのアミノ酸の約67%が別のアミノ酸でランダムに置換されるように設計されたもので、これはDNA配列決定によって確認された。
【0182】
159 (Q8L)ランダム化サブライブラリー。クローン159 (Q8L)クローンのFGループのオリゴ突然変異誘発、3段階伸長、および増幅を行った。一次伸長では、プライマー対(a:F1U2/F2、b:F3159/F4、c:F5159/F6、d:F7X6159/F8)を等濃度(各100 pmol)で混合し、10サイクル増幅した。二次伸長では、一次反応物の1/20を組み合わせ(a/bおよびc/d)、増幅をさらに10サイクル継続した。完全に相補的な断片の再アニーリングよりも伸長の方に増幅を偏らせるため、断片ab用のF1U2フォワードプライマーまたは断片cd用のC2asaiA20リバースプライマー50 pmolを用いて、半構築物産物(各0.5 pmol)の線形増幅をさらに20サイクル行った。最後に、伸長された半構築物断片abおよびcdを組み合わせて、さらなる成分を含めずに20サイクル増幅した。プライマーF7X6159は、クローン159 (Q8L)の最初の6コード位置それぞれにおいてNNSを含み、それ以外はクローン159 (Q8L)と同一であった。最終PCR反応によるクローンのDNA配列を決定して、ライブラリー159 (Q8L)-FGX6が正しく構築されていることを確認した。サブライブラリーは約1x109個のクローンを含んだ。
【0183】
159 (Q8L)-FGX6ライブラリーを6ラウンド選択した後のプール(PR6)のDEループをランダム化するため、プライマーF1U2/F4およびF5X5/C2asaiA20を用いてPCRにより2つの半構築物断片を調製した。F5X5プライマーは、DEループの4つの位置および56位においてNNSを含んだ。次いで、伸長された断片abおよびcdを組み合わせて、さらなる成分を含めずに20サイクル増幅した。
【0184】
フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質への点突然変異、欠失、およびランダム(NNS)ループ配列の導入:
VR28クローンを鋳型として使用した2段階PCRで、VR28結合剤の骨格変異T(69)Iを野生型配列に修正した。プライマーN末端フォワード/DEFGリバースおよびDEFGフォワード/C末端ポリAを用いて得られた半構築物断片を組み合わせて、プライマーT7TMV FnおよびMK165-4 A20を用いてVR28(I69T)クローン全体(本文中ではVR28と表す)を構築した。クローン159(Q8L)におけるN末端変異の修正は、プライマーN末端フォワード/C末端ポリAを用いたPCR、およびその後のプライマーT7TMV FnおよびMK165-4 A20を用いた伸長によって行った。
【0185】
フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質のN末端への欠失Δ1-8の導入は、プライマーT7 TMV N末端欠失およびMK165-4 A20を用いた増幅によって行った。
【0186】
NNSループ配列を含むEクローンのキメラの構築を、2段階PCRで行った。プライマーT7 TMV N末端欠失/BCDE rev(a:EクローンのBCループ);N末端フォワード/hf01 BCリバース(b:BC NNS);BCDE for/Front FGリバース(c:EクローンのDEループ);BCDE for/hf01 DEリバース(d:DE NNS);hf01 DE-FGフォワード/hf01 RT-FlagポリAリバース(e:EクローンのFG);hf01 DE-FGフォワード/hg01 FGリバース(f:FG NNS)を用いて、ループ領域を増幅した。断片b/c/e、a/d/e、a/c/fを組み合わせ、伸長、ならびにプライマーT7Tmv N末端欠失およびhf01 RTFlagポリAリバースを用いる増幅によって、プール全体を構築した。
【0187】
構築物はすべてDNA配列決定により確認および/または解析した。すべての構築物および変異誘発ライブラリーは、インビトロでのRNA-タンパク質融合生成および精製のため、5'隣接領域にT7 TMVプロモーターおよび3'隣接領域にFlagタグまたはHis6タグ配列を含んだ。
【0188】
RNA-タンパク質融合生成
選択の各ラウンドでは、MegaScript転写キット(Ambion)を用いてPCR DNAを37℃で4時間転写した。37℃で20分間DNase I(Ambion)消化することによって、鋳型DNAを除去した。フェノール/クロロホルム抽出、およびその後のNAP-25カラム(Amersham)でのゲルろ過により、RNAを精製した。ピューロマイシンリンカーPEG 6/10(5' Pso u agc gga ugc XXX XXX CC Pu 3'、式中、Pso=C6-ソラレン、u、a、g、c=2'OMe-RNA、C=標準的アミダイト、X:スペーサーホスホアミダイト9(9-O-ジメトキシトリチル-トリエチレングリコール,1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホアミダイト);Pu=ピューロマイシン-CPG)は、以前に記載されている通りに合成した(Kurz et al, Nuc. Acid Res. 28:83, 2000)。リンカーを、0.1 M NaCl、25 mM TrisHCl、pH 7.0中で85℃から4℃に徐々に温度を下げていくことで、ライブラリーRNAとアニーリングさせた。次いで、リンカーとRNAをUV光(365 nm)に15分間曝露して架橋した。架橋された混合物(600 pmol RNA)を、35S標識メチオニンの存在下で、ウサギ網状赤血球溶血液翻訳キット(Ambion)を用いるインビトロ翻訳反応物中に含め、30℃で60分間インキュベートした。融合形成を増強するため、0.5 M KClおよび0.05 M MgCl2を反応物に添加し、4℃で30分間インキュベートした。オリゴ-dTセルロース(Sigma)クロマトグラフィーを用いて、融合分子を以下のように精製した。翻訳および融合混合物を緩衝液A(100 mM TrisHCl、1 M NaCl、0.05% Tween-20、pH 8.0)に希釈して、オリゴdTセルロースに添加した。スラリーを4℃で1時間回転し、スピンカラムに移した。オリゴdTセルロースビーズをカラム上で10カラム体積の緩衝液Aで洗浄し、3カラム体積のH2Oで溶出した。逆転写反応は、プライマーHu3'FLAGSTOPを使用して、SuperScript II Reverse Transcriptionキット(Invitrogen)を用いて42℃で1時間行った。別法として選択の過程で、反応性システインを介した非特異的結合の可能性を減少させるため、チオール基を1 mM 2-ニトロ-5-チオシアナト安息香酸(NTCB)またはN-エチルマレイミド(NEM)と反応させた。反応は室温で1時間行った。融合分子を、M2アガロース(Sigma)を用いて抗FLAGアフィニティークロマトグラフィーによりさらに精製した。M2ビーズを反応物に添加し、緩衝液B(1X PBS、0.02% Triton X100)中で4℃で1時間回転した。次いで、ビーズをスピンカラムに供し、5カラム体積の緩衝液Bで洗浄し、3カラム体積の緩衝液Gに溶解した100μM FlagペプチドDYKDDDDK(Sigma)で融合分子を溶出した。試料中の35Sメチオニンのシンチレーション計測によって測定した比放射能に基づいて、融合物の収量を算出した。
【0189】
159 (Q8L)ランダム化ライブラリーに関しては、Kingfisher(商標)(ThermoLabSystems)での合理化半自動化手順によりRNA-タンパク質融合物を調製した。工程は、以下に記載する数段階を除いて、上記の手順と同様であった。RNA-タンパク質融合分子の精製は、磁性オリゴdTビーズ(GenoVision)において、緩衝液C(100 mM TrisHCl、60 mM EDTA、1 M NaCl、0.05% Triton X100、pH 8.0)中で行った。ビーズを10反応体積の緩衝液Ca(100 mM TrisHCl、1 M NaCl、0.05% Triton X100、pH 8.0)で洗浄し、融合タンパク質を1体積のH2Oで溶出した。逆転写(RT)は、プライマーCR2Tを使用して行った。融合タンパク質は、Ni-NTA磁気ビーズ(Qiagen)を用いて、Hisタグアフィニティークロマトグラフィーによりさらに精製した。RT反応物を緩衝液D(2 M NaCl、0.05% Triton)中でNi-NTAビーズと共に室温で20分間インキュベートし、次いでビーズを10反応体積の緩衝液E(1X PBS、0.05% Triron X100、pH 7.4)で洗浄し、融合分子を1体積の緩衝液F(1X PBS、0.05% Triton X100、100 mMイミダゾール、pH 7.4)で溶出した。
【0190】
選択:
KDRに対する一次選択。プロテインAビーズおよびFcタンパク質への非特異的結合を減少させるため、選択前に、融合ライブラリー(1 ml中に約1013クローン)を、200nMヒトIgG1を予め固定化したプロテインAビーズ(Dynal)150μlと共に30℃で1時間インキュベートした(前排除)。次いで、上清を緩衝液G(50 mM HEPES、150 mM NaCl、0.02% TritonX-100、1 mg/mlウシ血清アルブミン、0.1 mg/mlサケ精子DNA、pH 7.4)中で、KDR-Fcキメラと共に反転回転させながら30℃で1時間インキュベートした。KDR-Fcの最終濃度は、ラウンド1では250 nM、ラウンド2〜4では100 nM、ならびにラウンド5および6では10 nMであった。標的をプロテインAビーズ300μl(ラウンド1)またはプロテインAビーズ100μl(ラウンド2〜6)上に、反転回転させながら30℃で30分間捕獲し、緩衝液G(50 mM HEPES、150 mM NaCl、0.02% TritonX-100、pH 7.4)1 mlで5回洗浄した。結合した融合分子を、0.1 M KOH 100μlで1 M TrisHCl、pH 8.0 50μl中に溶出した。隣接プライマーT7TMV FnおよびMK165-4 A20を用いて、PCRにより溶出物からDNAを増幅した。
【0191】
KDR結合剤VR28の親和性および特異性成熟。上記したように、高頻度変異誘発PCRまたはオリゴ特異的突然変異誘発によりクローンVR28に変異を誘発し、融合サブライブラリーを構築した。プロテインAビーズによる前排除の後、上記の手順に従って緩衝液I(1xPBS、0.02% TritonX-100、1 mg/mlウシ血清アルブミン、0.1 mg/mlサケ精子DNA、pH 7.4)中で選択を4ラウンド行った。プライマーT7TMV FnおよびMK165-4 A20を用いて、PCRにより溶出物からDNAを増幅した。オリゴ突然変異誘発に由来するライブラリーでは、低い標的濃度(選択の最初の4ラウンドでは0.1 nM KDR)を使用し、次いで選択のさらなる3ラウンドについては1 nMマウスVEGF-R2(Flk-1)を導入した。最後の3ラウンドでは、PCRにプライマーT7 TMV N末端欠失およびMK165-4 A20を使用した。
【0192】
KDR結合剤159の特異性成熟では、クローン159 Q(8)LのFGループの最初の6つの位置を、上記のようにPCRによってランダム化した。ビオチン化マウスVEGF-R2(70 nM)に対する融合サブライブラリーの結合は、緩衝液I中で室温で30分間行った。選択手順の残りは、Kingfisher(商標)(ThermoLabSystems)で継続した。ビオチン化標的をストレプトアビジンコーティング磁気ビーズ(Dynal)50μl上に捕獲し、ビーズを10倍量の緩衝液Iおよび1倍量の緩衝液J(1xPBS、0.02%TritonX-100、pH 7.4)で洗浄した。結合した融合分子を、0.1 M KOH 100μlで1 M TrisHCl、pH 8.0 50μl中に溶出した。プライマーF1U2およびC2asaiA20を用いて、PCRにより溶出物からDNAを増幅した。4ラウンドの選択の後、さらなる2ラウンドには、以下の通りに7 nM Flk-1に対する解離速度/再結合選択を適用した。ビオチン化マウスFlk-1との結合反応を30分進行させた後、100倍過剰量の非ビオチン化Flk-1を添加し、弱い結合剤の解離を見越して反応をさらに6時間継続した。ビオチン化標的をストレプトアビジンビーズ(Dynal)50μl上に捕獲し、緩衝液J 1 mlで5回洗浄した。結合した融合分子を、75℃で5分間インキュベートすることにより溶出した。上清を7 nM Flk-1への再結合に供し、標準的な選択手順を継続した。最終溶出プールに由来するDNAをDEループランダム化(上記を参照)に供し、融合サブライブラリーを7 nMマウスVEGF-R2に対して3ラウンド選択した。4ラウンド目に、1 nMヒトVEGF-R2への再結合による解離速度選択に供した。プライマーF1U2およびC2asaiA20を用いて、PCRにより溶出物から最終DNAを増幅した。
【0193】
放射性平衡結合アッセイ
解析用に35S標識結合タンパク質を調製するため、リンカーの連結段階を除くこと以外はRNA-タンパク質融合精製に関して上記した通りにmRNAを調製した。35S標識Metの存在下でウサギ網状赤血球溶血液翻訳キット(Ambion)を使用して、mRNAを30℃で1時間発現させた。発現されたタンパク質を、上記のようにM2-アガロースFlagビーズ(Sigma)で精製した。この手順によって、核酸尾部を含まないコードタンパク質が生成された。直接結合アッセイでは、0〜200 nMの濃度のVEGF-R2-Fc融合物を一定濃度の精製タンパク質(0.2または0.5 nM)に添加し、緩衝液B中で30℃で1時間インキュベートした。Kingfisher(商標)を使用して、室温でさらに10分間、プロテインA磁気ビーズにより受容体-結合剤複合体を捕獲した。ビーズを6反応体積の緩衝液Bで洗浄した。0.1M KOH 100μLでビーズからタンパク質を溶出した。50μLの反応混合物および溶出液をLumaPlate-96(Packard)上で乾燥させ、プレート上の35Sの量をTopCount NXT装置(Packard)で測定した。標的に結合したフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質の量を、反応混合物中の放射能に対する、プロテインA磁気ビーズから溶出された放射能の割合として評価した。KDR-Fcの非存在下での結合を測定することによって、ビーズに対するフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質の非特異的結合を決定したが、非特異的結合は投入量の1〜2%未満を示した。特異的結合は全結合から非特異的結合を減算することによって得た。GraphPad Prizmソフトウェア(GraphPad Software, Inc、カリフォルニア州、サンディエゴ)を用いてデータを解析し、一部位非線形結合方程式により適合化した。
【0194】
フィブロネクチンに基づく可溶性骨格タンパク質結合剤の発現および精製:
大腸菌で発現させるため、各クローンの残基1〜101およびその後に続くHis6タグをpET9d由来ベクターにクローニングし、大腸菌BL21 (DE3) PlysS細胞(Invitrogen)で発現させた。一晩培養液20 mlを用いて、50μg/mLカナマイシンおよび34μg/mLクロラムフェニコールを含むLB培地1リットルに接種した。培養液をA600が0.4〜0.6になるまで37℃で培養した。培養物を1 mMイソプロピル-β-チオガラクトシド(IPTG、Invitrogen)で誘導した後、37℃でさらに3時間培養し、4℃にて3,000 gで30分間遠心分離することにより回収した。細胞ペレットを50 mLの溶解緩衝液K(50 mM NaH2PO4、0.5 M NaCl、5%グリセロール、5 mM CHAPS、25 mMイミダゾール、1x Complete(商標) Protease Inhibitor Cocktail(Roche)、pH 8.0)緩衝液Lに再懸濁し、氷上で80 Wにて10秒間休止させながら15秒間のパルスで4回超音波処理した。4℃にて30,000 gで30分間遠心分離することにより、可溶性画分を分離した。洗浄緩衝液L(50 mM NaH2PO4、0.5 M NaCl、5%グリセロール、25 mMイミダゾール、pH 8.0)で予め平行化したTALON(商標) SuperflowTM Metal Affinity Resin(Clontech)10 mLと共に、上清を4℃で1時間回転した。次いで、10カラム体積の緩衝液Lおよび30カラム体積の緩衝液M(1xPBS、pH 7.4、25 mMイミダゾール、pH 7.4)で樹脂を洗浄した。タンパク質を5カラム体積の緩衝液N(1xPBS、250 mMイミダゾール、pH 7.4)で溶出し、1xPBSに対して4℃で透析した。沈殿物は0.22μmでろ過することで(Millipore)除去した。
【0195】
フィブロネクチンに基づく可溶性骨格タンパク質のBIAcore解析:
標的に対するフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質結合タンパク質の結合速度論を、BIAcore 2000バイオセンサー(Pharmacia Biosensor)を用いて測定した。ヒトおよびマウスVEGF-R2-FC融合物をCM5センサーチップ上に固定化し、可溶性結合タンパク質を緩衝液O(10 mM HEPES、150 mM NaCl、0.005% Tween 20、pH 7.4)中の0〜100 nMの濃度で注入した。各濃度でセンサーグラムを取得し、プログラム、BIA Evaluation 2.0(BIAcore)を用いて評価して、速度定数ka(kon)およびkd(koff)を決定した。速度定数koff/konの比から親和定数KDを算出した。
【0196】
阻害実験では、ヒトVEGF165をCM-5チップの表面上に固定化し、0〜100nMの様々な濃度の可溶性結合タンパク質の存在下で、20 nM濃度のKDR-Fcを注入した。チップへのKDR-Fc結合が50%のみ観察された時の濃度で、IC50を決定した。
【0197】
VEGFR結合ポリペプチドの可逆的リフォールディング:
100 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.5)中のM5FLタンパク質において、示差走査熱量測定(DSC)解析を行った。最初のDSC実行(スキャン1)は、N-DSC II熱量計(Calorimetry Sciences Corp)で1分間に1℃の速度で温度に5〜95℃の傾斜をつけ、続いて10℃まで逆スキャンすることによって(表示せず)行い、その後2回目を実行した(スキャン2)。これらの条件下で、データは2つの転移モデルを用いて最適に適合化された(Originソフトウェア(OriginLab Corp)を使用して、Tm=77℃および67℃)。図10を参照されたい。
【0198】
M5FLタンパク質のPEG化:
C100型のM5FLタンパク質は、100位のSerがシステインに変異されたM5FLの完全な配列を有し、タンパク質を精製するために用いられるさらなるC末端Hisタグを含む。精製されたM5FLタンパク質を、様々なマレイミド誘導体化PEG形態(Shearwater)を結合することによって、単一のシステイン残基の位置で修飾した。反応して得られたタンパク質を、4〜12%ポリアクリルアミドゲルで泳動した(図11)。
【0199】
細胞株の作製:
プラスミドの構築。KDR、Flk-1、またはヒトTrkBの細胞外ドメインに融合されたヒトエリスロポエチン受容体(EpoR)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインから構成されるキメラ受容体をコードするプラスミドを、2段階PCR手順によって構築した。受容体遺伝子全体をコードするプラスミドから、細胞外ドメインをコードするPCR産物を増幅した:KDR(アミノ酸1〜764)は、プライマー5-RI-hKDR-1B/3-EPO/hKDR-2312Bを用いてクローンPR1371_H11(OriGene Technologies、メリーランド州、ロックビル)から導出し、Flk-1(アミノ酸1〜762)は、プライマー5-RI-mKDR-1/3-EPO/mKDR-2312を用いてクローン#4238984(IMAGE)から導出し、ヒトTrkB(アミノ酸1〜430)は、プライマー5-RI-hTrkB-1/3-EpoR/hTrkB-1310を用いてクローン#X75958(Invitrogen Genestorm)から導出した。EpoR膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン(アミノ酸251〜508)をコードするPCR産物は、共通プライマー3-XHO-EpoR-3066、ならびに受容体断片PCR産物の末端に相補的な短い配列相補性を付加した3つの遺伝子特異的プライマー5-hKDR/EPO-2274B(KDR)、5-mKDR-EPO-2274(Flk-1)、および5'hTrkB/EpoR-1274(ヒトTrkB)のうちの1つを用いてクローン#M60459(Invitrogen Genestorm)から増幅した。次いで、キメラ遺伝子の半分をコードするPCR産物を混合し、3-XHO-EpoR-3066および増幅の前のサイクルで使用した各遺伝子に特異的な5'プライマー(5-RI-hKDR-1B、5-RI-mKDR-1、および5-RI-hTrkB-1)を用いて増幅した。得られたPCR産物をEcoRIおよびXhoIで消化し、pcDNA3.1(+)(Invitrogen)にクローニングして、プラスミドphKE8(ヒトKDR/EpoR融合物)、pmKE2(flk-1/EpoR融合物)、およびphTE(TrkB/EpoR融合物)を作製した。
【0200】
フローサイトメトリー用の細胞株の作製。Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して、CHO-K1細胞(American Type Culture Collection、バージニア州、マナッサス)に、pcDNA 3.1(Invitrogen)のみ、pmKE2のみ、またはpcDNA 3.1と全長ヒトKDRをコードするプラスミド(Origene Inc.、クローンPR1371-H11)の混合物を安定にトランスフェクションした。安定なトランスフェクタントを選択して、0.5 mg/mlジェネティシン(Invitrogen)の存在下で維持した。トランスフェクションされた集団を抗KDRポリクローナル抗血清(R&D Systems)で染色した後に蛍光活性化細胞選別することによって、CHO-KDRと称するヒトKDR発現クローンおよびCHO-Flkと称するマウスVEGFR-2/EpoRキメラ発現集団を取得した。CHO-KDRおよびCHO-Flk細胞株は、日常的に、10%(v/v)ウシ胎児血清(FBC)、0.5 mg/mlジェネティシン、100 U/mlペニシリン、0.25μg/mlアンホテリシンB、100μg/mlストレプトマイシン、および2 mM L-グルタミンを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Gibco)で培養した。
【0201】
Ba/F3細胞株の作製。前B細胞株Ba/F3(DSMZ、ドイツ、ブラウンシュワイク)に、ヒトエリスロポエチン受容体の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに融合されたヒトまたはマウスVEGFR-2の細胞外ドメインからなる受容体キメラ(上記を参照)であるphKE8またはpmKE2をトランスフェクションすることにより、VEGFR-2によるVEGF結合に応答して増殖する細胞株を作製した。Ba/F3細胞は、WEHI-3B細胞の10%馴化培地(DSMZ;イスコフ改変ダルベッコ培地(Gibco)/10% FBS/25μM β-メルカプトエタノールで培養)を必須増殖因子の供給源として添加した最小Ba/F3培地(10% FBS、100 U/mlペニシリン、0.25μg/mlアンホテリシンB、100μg/mlストレプトマイシン、および2 mM L-グルタミンを含むRPMI-1640(Gibco))で維持した。プラスミドpmKE2またはphKE8をエレクトロポレーションした後、安定なトランスフェクタントを0.75 mg/mlジェネティシン中で選択した。ジェネティシン耐性集団を、100 ng/mlヒトVEGF165(R&D Systems)を含む最小Ba/F3培地に移し、得られたVEGF依存性集団をBa/F3-FlkおよびBa/F3-KDRと命名した。NT-4による刺激に応答性であるキメラTrkB受容体を発現する対照細胞株(Ba/F3-TrkB)も同様に、プラスミドphTEおよびヒトNT-4(R&D Systems)を用いて作製した。
【0202】
フィブロネクチンに基づく骨格タンパク質の細胞表面結合の解析:
細胞表面KDRおよびFlk-1に対するフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質の結合を、フローサイトメトリーによりVEGF-R2発現細胞および対照細胞において同時に解析した。CHO-pcDNA細胞(対照)をトリプシン-EDTAを用いてディッシュから解離し、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコPBS(D-PBS-;Invitrogen)で洗浄し、1.5μM CMTMR(5-(and-6)-(((4-クロロメチル)ベンゾイル)アミノ)-テトラメチルローダミン)(Molecular Probes)で37℃で30分間染色した。細胞をD-PBS-で洗浄し、37℃でさらに30分間インキュベートし、次に氷上でブロッキング緩衝液(D-PBS-/10%ウシ胎児血清)に再懸濁した。CHO-KDRまたはCHO-Flk細胞を、CMTMRを省くこと以外は同様に処理した。V底96ウェルプレートの各ウェル中で、75,000個のCMTMR染色CHO-pcDNA3細胞を、同数の非染色CHO-KDRまたはCHO-Flk細胞と混合した。抗体およびフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質はすべて、25μl/ウェルのブロッキング緩衝液で希釈し、各処理は4℃で1時間行った。His6をタグ化したフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質で細胞混合物を染色し、冷D-PBS-で2回洗浄し、次いで2.5μg/ml抗His6 MAb(R&D Systems)で処理し、洗浄し、4μg/ml Alexa Fluor 488結合抗マウス抗体(Molecular Probes)で染色した。抗KDRマウスモノクローナル抗体(Accurate Chemical、ニューヨーク州、ウェストベリー)または抗flk-1ヤギポリクローナル抗体(R&D Systems)で処理する細胞については、抗His6段階を省略し、抗体結合は種に適したAlexa Fluor 488結合二次抗体(Molecular Probes)で検出した。染色後、細胞を200μl/ウェルのD-PBS-/1% FBS/1μg/ml 7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD;Molecular Probes)に再懸濁し、488 nMレーザーを備えたFACSCalibur(Becton Dickinson、カリフォルニア州、サンノゼ)でフローサイトメトリーにより解析した。死細胞(7-AAD陽性)を排除するためにゲートをかけた後、CMTMR陰性または陽性集団にそれぞれゲートをかけて、VEGFR-2発現細胞およびCHO-pcDNA3細胞をAlexa Fluor 488蛍光について独立して測定した。対照実験から、CMTMRによる染色は染色細胞の表面上におけるAlexa Fluor 488結合抗体の検出を妨げないことが示された。
【0203】
細胞表面結合はまた、上記の二次抗体を用いて蛍光顕微鏡により評価した。これらの研究のため、抗体をカルシウムおよびマグネシウムを含むD-PBS(D-PBS+)/10% FBSで希釈した。細胞は24ウェルまたは96ウェルプレートで培養し、倒立蛍光顕微鏡で観察するために染色後はD-PBS+中で保存した。
【0204】
Ba/F3細胞増殖アッセイ:
Ba/F3細胞を最小Ba/F3培地で3回洗浄し、15.8 ng/mlの増殖因子(Ba/F3-KDR、Ba/F3-flk、またはBa/F3-TrkB細胞それぞれについてヒトVEGF165、マウスVEGF164、またはhNT-4)を含む同じ培地に再懸濁し、96ウェル組織培養プレートのウェル当たり、5 x 104個のBa/F3-KDR細胞、または2 x 104個のBa/F3-flkもしくはBa/F3-TrkB細胞を含む95μlを添加した。試験タンパク質のPBSによる段階希釈物5μlを各ウェルに添加し、最終量をBa/F3培地/5% PBS/15 ng/ml増殖因子100μlとした。37℃で72時間インキュベートした後、各ウェルにCellTiter 96(登録商標) Aqueous One Solution Reagent(Promega)20μlを添加して37℃で4時間インキュベートし、マイクロタイタープレートリーダー(Molecular Dynamics)を用いて490 nmの吸光度を測定することにより、増殖を測定した。
【0205】
HUVEC細胞増殖アッセイ:
継代2〜6代目のHUVEC細胞(Clonetics、メリーランド州、ウォーカーズビル)をEGM-2培地(Clonetics)で培養した。5000細胞/ウェルを200μlの飢餓培地(0.2%ウシ胎児血清および1xペニシリン/ストレプトマイシン/ファンギゾン溶液(Gibco)を添加した等量のDMEM(Gibco)およびF-12K培地(ATCC))に再懸濁し、96ウェル組織培養プレートにプレーティングして、48時間インキュベートした。フィブロネクチンに基づく結合タンパク質をウェルに添加して37℃で1時間インキュベートし、次いでヒトVEGF165を最終濃度16 ng/mlになるように添加した。48時間インキュベートした後、1.9 mg/ml CellTiter96(登録商標) AQueous MTS試薬(Promega)と44μg/mlフェナジンメトサルフェート(Sigma)の混合物を30μl/ウェル添加し、Ba/F3細胞について上記したように490 nmの吸光度を測定することにより、細胞生存度を測定した。
【0206】
実施例12:抗体軽鎖に基づくVEGFR結合ポリペプチド
図21Aおよび21Bは、抗体軽鎖可変領域(VL)フレームワーク/骨格に基づくVEGFR結合ポリペプチド(SEQ ID NO:241〜310)のアミノ酸配列を示す。
【0207】
軽鎖可変ドメインタンパク質は、10Fn3由来タンパク質との使用について記載した通りに、PROfusion(商標)システムを用いて作製した。
【0208】
本明細書で引用した参考文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0209】
(表1)好ましい特異的ペプチド配列
【0210】
(表2)KDR&FLK結合剤
【0211】
(表3)KDR結合剤
【0212】
(表4)特徴づけられたVEGF-R2結合クローンの配列
【0213】
(表5)放射性平衡結合アッセイで決定されたKDR-Fcに対するトリネクチン(trinectin)結合剤の親和性
【0214】
(表6)放射性平衡結合アッセイで決定されたKDRおよびFlk-1に対するトリネクチン結合剤の親和性
【0215】
(表7)BIAcoreアッセイによるka、kd、およびKdの決定
【0216】
(表8)KDR(CHO KDR)およびFlk-1(CHO Flk-1)発現細胞に対する結合
【0217】
(表9)KDR(Ba/F3-KDR)およびFlk-1(Ba/F3-Flk)発現細胞のVEGF誘導性増殖の抑制
【0218】
(表10)HUVEC細胞のVEGF誘導性増殖の抑制
【0219】
(表11)
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】6ラウンドのKDR選択から得られたKDR結合単一クローンの特徴を示すグラフおよび画像である。図1Aは、放射性平衡結合アッセイで解析した、25 nM KDR-Fcに対するフィブロネクチンに基づく結合タンパク質の特異的結合を示すグラフである。図1Bは、100倍過剰量のVEGF165の存在下における、KDR-Fcと選択されたフィブロネクチンに基づく結合タンパク質の特異的結合の阻害を示すグラフである。この図から示されるように、特定の結合タンパク質はVEGF165と競合的にKDR-Fcに結合し、クローン8によって例証される他の結合タンパク質はVEGF165と競合しなかった。図1Cは、BIAcoreで解析した、選択されたフィブロネクチンに基づく結合タンパク質の存在下における、KDR-Fcと固定化されたVEGF165との相互作用の阻害を示すグラフである。図1Dは、免疫蛍光法によって検出された、KDR発現細胞および対照細胞に対するVR28の結合を示す画像である。
【図2】VR28 KDR結合剤の親和性成熟の選択プロファイルを示すグラフである。左側に、KDR-FcおよびFlk1-Fc(非常に低く、表示されていないバー)に対するVR28クローンの結合を示す。中央に、未精製の突然変異誘発プールおよびその後のKDR-Fcに対する濃縮ラウンドの結合を示す。右側に、Flk-1-Fcに対するさらなる濃縮ラウンドの結合を示す。結合は、1 nM KDR FcまたはFlk1-Fcを用いて、放射性平衡結合アッセイにより投入量の割合として評価した。
【図3】VR28結合剤の抗KDR親和性成熟の4ラウンド目に由来するKDR結合単一クローンの特徴を示すグラフである。図3Aは、放射性平衡結合アッセイにおける、KDR-Fcに対するVR28(-■-)、および親和性成熟されたK1(-▲-)、K6(-▼-)、K9(-◆-)、K10(-●-)、K12(-□-)、K13(-△-)、K14(-▽-)、K15(-◇-)の飽和結合を示す。図3Bは、KDR-Fcに対するN末端欠失を有するおよび有さないクローンの結合を示す。フィブロネクチンに基づく結合タンパク質のN末端における欠失Δ1-8は、KDR-Fcに対する結合を改善した。データは、N末端欠失を有するおよび有さない23個の独立したクローンの平均したKDR-Fc結合を表す。
【図4】選択されたクローンのKDRおよびFlk-1に対する結合を示すグラフである。VR28、ならびにヒトKDRに対する4ラウンドの親和性成熟後(Kクローン)、およびヒト(KDR)およびマウス(flk-1)に対する7ラウンドの親和性成熟後(Eクローン)に選択されたクローンの特異的結合。VEGFR-2-Fcキメラを放射性平衡結合アッセイで比較した。データは3回の独立した実験の平均を表す。ここに示すように、マウスおよびヒトVEGFR-2タンパク質の両方に対して成熟させることにより、両タンパク質に結合する結合剤が生成される。
【図5】VR28結合剤の親和性成熟の7ラウンド目に由来するVEGFR-2結合単一クローンの特徴を示すグラフである。KDR(図5A)およびFlk1(図5B)-Fcキメラに対するVR28(-■-)、および特異性成熟されたE3(-▲-)、E5(-▼-)、E6(-◆-)、E9(-●-)、E18(-□-)、E19(-△-)、E25(-▽-)、E26(-◇-)、E28(-○-)、E29(-×-)クローンの飽和結合を、放射性平衡結合アッセイで試験した。
【図6】VR28結合剤の親和性成熟の7ラウンド目に由来する単一クローンによるVEGFR-2結合の特徴を示すグラフである。図6Aは、ヒトおよびマウスVEGFR-2に対する二重特異性を有する結合剤における、マウスVEGFR-2(Flk1)への結合にとっての79位および82位のアルギニンの重要性を示す。これらの位置をR以外のアミノ酸で置換した場合(X79=E、Q、W、P;X82=L、K)、Flk1への結合は顕著に減少したが、KDRへの結合は減少しなかった。図6Bは、フィブロネクチンに基づくKDR結合タンパク質における標的への結合にとっての、これらタンパク質の3つの可変ループ(BC、DE、およびFG)すべての重要性を示す。各ループをNNS配列によって1度に置換すると、KDRおよびFlk1に対する結合が影響された。結合データはE6およびE26クローンによる平均である。
【図7】ヒトKDR受容体(図7A)およびEpoR-Flk1キメラ(図7B)を発現するCHO細胞に対する、選択されたフィブロネクチンに基づく結合タンパク質の結合を示すグラフである。E18(-■-)、E19(-▲-)、E26(-▼-)、E29(-◆-)、および野生型(-□-)のフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質を試験した。対照CHOに対する結合は認められなかった(データは示さず)。
【図8】様々な量のフィブロネクチンに基づく結合タンパク質:E18(-■-)、E19(-▲-)、E26(-▼-)、E29(-◆-)、M5(-●-)、野生型(-□-)、および抗KDRまたは抗flk-1 Ab(-△-)の存在下における、KDRおよびFlk1を発現するBa/F3-KDR細胞(図8A)およびBa/F3-Flk-1細胞(図8B)のVEGF誘導性増殖の抑制を示すグラフである。データは2回の独立した実験の平均を表す。
【図9】様々な量のフィブロネクチンに基づく骨格タンパク質:E18(-■-)、E19(-▲-)、E26(-▼-)、E29(-◆-)、M5(-●-)、野生型(-□-)の存在下におけるHUVEC増殖アッセイの結果を示すグラフである。示されるように、KDR結合タンパク質は増殖を約40%まで減少させた。
【図10】最適緩衝液中でのM5FLの可逆的リフォールディングを示すグラフのセットである。
【図11】PEG化型M5FLのSDS-PAGE解析を示す画像である。M、分子量マーカー[Sea Blue Plus、Invitorogen];‐、M5FLのみ;20、20 kD PEGを含むM5FL;40、40 kD PEGを含むM5FL。
【図12】様々な量のM5FL(-◆-)、M5FL PEG20(-■-)、およびM5FL PEG40(-▲-)それぞれによる、Ba/F3-KDR細胞のVEGF誘導性増殖の抑制を示すグラフである。PEG化は本アッセイにおいてM5FL活性にほとんど影響しない。
【図13】内皮細胞におけるVEGFR-2シグナル伝達のウェスタン解析を示す。ホスホVEGFR-2−リン酸化VEGFR-2の可視化。VEGFR-2−試料添加対照。ホスホERK1/2−リン酸化ERK1/2(MAPK)の可視化。ERK1−試料添加対照。結果から、130 pM CT-01がVEGF-AによるVEGFR-2活性化およびシグナル伝達を遮断することが実証された。
【図14】様々な10Fn3由来分子(例えば、M5FL、F10、CT-01)がVEGF-AおよびVEGF-Dシグナル伝達を遮断し得ることを示す。
【図15】静脈内投与および腹腔内投与した125I未変性CT-01、125I PEG化CT-01の比較を示す。CT-01は12 kDaタンパク質であり、血液から急速に排除される。40 kDa PEGを付加することにより、排除速度は1/10に低下し、AUCは10倍増大する。ラットにおける16時間という半減期は、ヒトにおける週に2回の投薬に相当する。投与経路が腹腔内であるCT-01-PEG40は、静脈内投与のたった50%のAUCを有する。
【図16】正常ラットにおける125I-CT01PEG40の組織分布を示す。125I-CT01PEG40の組織分布から、主に肝臓、次に腎臓を介する分泌が示される。これは、高分子量PEG型に期待されるものである。CT-01PEG40の長期蓄積は検出されない。
【図17】血管透過性を測定するMilesアッセイ法の概略図である。
【図18】Milesアッセイにより、CT-01がVEGFをインビボで遮断することを示す。結果から、5 mg/kg CT01-PEG40がVEGF投与を遮断することが示される。
【図19】B16-F10マウスメラノーマ腫瘍アッセイを用いて、CT-01が腫瘍増殖を抑制することを示す。
【図20】U87ヒト神経膠芽腫を用いて、CT-01が腫瘍増殖を抑制することを示す。
【図21】抗体軽鎖フレームワーク/骨格に基づくVEGFR結合ポリペプチドの配列(SEQ ID NO:241〜310)を示す。
【図22】免疫グロブリン折りたたみを有する単一ドメインポリペプチド(免疫グロブリンのVHドメイン、左側)および免疫グロブリン様折りたたみを有する単一ドメインポリペプチド(10Fn3ドメイン、右側)の構造構成を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトKDRに結合する実質的に純粋な単一ドメインポリペプチドであって、以下を含む構造構成を有する約80〜約150アミノ酸を含み:
a) 少なくとも2つのβシートの間に分布する少なくとも5〜7個のβストランドまたはβ様ストランド;および
b) βストランドまたはβ様ストランドである2つのストランドを結合する、KDRへの結合に関与する少なくとも1つのループ部分;
ここで、1x10-6M未満の解離定数(KD)でヒトKDRタンパク質の細胞外ドメインに結合する、単一ドメインポリペプチド。
【請求項2】
免疫グロブリン可変ドメインを含む、請求項1記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項3】
免疫グロブリン可変ドメインがヒトVLドメイン、ヒトVHドメイン、およびラクダVHHドメインからなる群より選択される、請求項2記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項4】
各ループ部分が2つのβストランドを結合する、KDRへの結合に関与する3つのループ部分を含む、請求項2記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項5】
免疫グロブリン様ドメインを含む、請求項1記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項6】
免疫グロブリン様ドメインがフィブロネクチンタイプIII(Fn3)ドメインである、請求項5記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項7】
Fn3ドメインがN末端からC末端の順に以下を含む、請求項1記載の単一ドメインポリペプチド:
a) βストランドまたはβ様ストランド、A;
b) ループ、AB;
c) βストランド、B;
d) ループ、BC;
e) βストランド C;
f) ループ CD;
g) βストランド D;
h) ループ DE;
i) βストランド F;
j) ループ FG;および
k)βストランドまたはβ様ストランド、G。
【請求項8】
ループFGがKDR結合に関与する、請求項7記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項9】
ループBC、DE、およびFGがKDR結合に関与する、請求項7記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項10】
各βストランドが本質的にSEQ ID NO:5の対応するβストランドの配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項9記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項11】
ループAB、CD、およびEFのそれぞれが本質的にSEQ ID NO:5の対応するループの配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項10記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項12】
SEQ ID NO:5の配列と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項13】
各ループ部分がβストランドまたはβ様ストランドである2つのストランドを結合する、KDRへの結合に関与する3つのループ部分を含む、請求項5記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項14】
KDR結合に関与するループがSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、およびSEQ ID NO:4からなる群より選択される配列を有する、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項15】
哺乳動物におけるポリペプチドの排除速度を未修飾ポリペプチドの1/3未満に減少させる部分に結合された、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項16】
排除速度を減少させる部分がポリエチレングリコール部分である、請求項15記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項17】
ポリエチレングリコール部分が2〜100 kDaの分子量を有する、請求項16記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項18】
ポリエチレングリコール部分が単一ドメインポリペプチドのチオール部分またはアミン部分に共有結合されている、請求項16記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項19】
標識部分に結合されている、請求項1記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項20】
1x10-7M未満の解離定数(KD)でヒトKDRタンパク質の細胞外ドメインに結合し、KDR媒介性VEGF活性を阻害する、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項21】
VEGF-AのVEGF165アイソフォームと競合的にKDRに結合する、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項22】
VEGF-AおよびVEGF-Dと競合的にKDRに結合する、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項23】
1x10-6M未満のKDでマウスFlk1の細胞外ドメインとも結合する、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項24】
SEQ ID NO:192のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項25】
SEQ ID NO:193のアミノ酸配列を含む、請求項24記載のポリペプチド。
【請求項26】
SEQ ID NO:194のアミノ酸配列を含む、請求項24記載のポリペプチド。
【請求項27】
ポリエチレングリコール部分が93位のシステイン残基に共有結合されている、請求項26記載のポリペプチド。
【請求項28】
ポリエチレングリコール部分が約10 kDa〜約60 kDaの分子量を有する、請求項27記載のポリペプチド。
【請求項29】
KDRに結合し、KDRへの結合においてVEGF-Aと競合する、SEQ ID NO:1〜4のいずれかの配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項30】
SEQ ID NO:6〜183、186〜197、および199のいずれかの配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項29記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項31】
SEQ ID NO:6〜183、186〜197、および199のいずれかの配列を含む、請求項30記載のポリペプチド。
【請求項32】
VEGFの生物活性を阻害する、請求項29記載のポリペプチド。
【請求項33】
50 nM以下のKDでKDRと結合する、請求項29記載のポリペプチド。
【請求項34】
1x10-7M未満の解離定数(KD)でヒトKDRタンパク質の細胞外ドメインに結合し、KDR媒介性VEGF活性を阻害する、請求項29記載のポリペプチド。
【請求項35】
請求項1〜13および24〜34のいずれか一項記載のポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む治療製剤。
【請求項36】
細胞を請求項20記載のポリペプチドと、VEGF生物活性を阻害するのに十分な量でおよび十分な時間接触させる段階を含む、VEGF生物活性を阻害する方法。
【請求項37】
VEGFの生物活性を阻害する請求項20記載のポリペプチドの有効量を対象に投与する段階を含む、VEGFの阻害に応答する病態を有する対象を治療する方法。
【請求項38】
病態が不適切な血管新生によって特徴づけられる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
病態が過剰増殖性病態である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
病態が、自己免疫疾患、炎症性疾患、網膜症、および癌からなる群より選択される、請求項38記載の方法。
【請求項41】
以下の段階を含む、試料中のVEGFR-2を検出する方法:
a) ポリペプチド-VEGFR-2複合体が形成され得る条件下で、試料を請求項1〜13および24〜34のいずれか一項に記載のポリペプチドと接触させる段階;および
b) 該複合体を検出し、それによって該試料中の該VEGFR-2を検出する段階。
【請求項42】
検出がX線検査、免疫学的アッセイ、蛍光検出、質量分析、または表面プラズモン共鳴からなる群より選択される技法を用いて行われる、請求項41記載の方法。
【請求項43】
試料が生物試料である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
生物試料がヒトから採取された試料であり、VEGFR-2がKDRである、請求項41記載の方法。
【請求項45】
ポリペプチドが標識部分で検出可能に標識されている、請求項41記載の方法。
【請求項46】
標識部分が放射性部分、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、およびハプテン部分からなる群より選択される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
ポリペプチドが固体支持体上に固定化されている、請求項41記載の方法。
【請求項48】
改善された薬物動態特性を有する標的結合10Fn3ポリペプチドであって、以下を含み:
a) 該10Fn3ポリペプチドのドメインの少なくとも1つのループが標的結合に関与する、約80〜約150アミノ酸を有する10Fn3ドメイン;および
b) 共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)部分;
ここで、100 nM未満のKDで標的と結合し、哺乳動物において30 mL/hr/kg未満の排除速度を有する、Fn3ポリペプチド。
【請求項49】
PEG部分がチオール基またはアミン基に結合されている、請求項48記載の10Fn3ポリペプチド。
【請求項50】
PEG部分が部位特異的PEG化によってFn3ポリペプチドに結合されている、請求項48記載の10Fn3ポリペプチド。
【請求項51】
PEG部分がCys残基に結合されている、請求項50記載の10Fn3ポリペプチド。
【請求項52】
PEG部分が以下からなる群より選択される10Fn3ポリペプチド上の位置で結合されている、請求項48記載の10Fn3ポリペプチド:
a) N末端;
b) N末端と最もN末端側のβストランドまたはβ様ストランドの間;
c) 標的結合部位と反対側のポリペプチド面上に位置するループ;
d) C末端と最もC末端側のβストランドまたはβ様ストランドの間;および
e) C末端。
【請求項53】
PEG部分が約2 kDa〜約100 kDaの分子量を有する、請求項48記載の10Fn3ポリペプチド。
【請求項54】
SEQ ID NO:5と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項48記載の10Fn3ポリペプチド。
【請求項55】
静脈内投与と比較して放出遅延が達成されるように患者に10Fn3ポリペプチドを投与する方法であって、10Fn3ポリペプチドを皮下投与し、それによって静脈内投与と比較して血流への放出遅延が達成される段階を含む方法。
【請求項56】
10Fn3ポリペプチドの皮下投与により、同等の投与量を静脈内投与することによって達成される最大血清濃度の半分未満である10Fn3ポリペプチドの最大血清濃度が達成される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
10Fn3ポリペプチドが10Fn3ポリペプチドの血中半減期を延長させる部分に結合されている、請求項55記載の方法。
【請求項58】
部分がポリエチレングリコール部分である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
10Fn3ポリペプチドがSEQ ID NO:5と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項55記載の方法。
【請求項60】
予め選択されたヒト標的タンパク質および非ヒト種に由来するその相同体と結合する実質的に純粋な単一ドメインポリペプチドであって、以下を含む構造構成を有する約80〜約150アミノ酸を含み:
a) 少なくとも2つのβシートの間に分布する少なくとも5〜7個のβストランドまたはβ様ストランド;および
b) βストランドまたはβ様ストランドである2つのストランドを結合する、予め選択されたヒト標的タンパク質およびその相同体への結合に関与する少なくとも1つのループ部分;
ここで、5x10-8M未満の解離定数(KD)で、予め選択されたヒト標的タンパク質、および予め選択されたヒト標的タンパク質と少なくとも100アミノ酸の配列にわたって少なくとも80%同一であるその相同体と結合する単一ドメインポリペプチド。
【請求項61】
免疫グロブリン可変ドメインを含む、請求項60記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項62】
免疫グロブリン可変ドメインがヒトVLドメイン、ヒトVHドメイン、およびラクダVHHドメインからなる群より選択される、請求項61記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項63】
各ループ部分がβストランドまたはβ様ストランドであるストランドを結合する、予め選択されたヒト標的タンパク質およびその相同体への結合に関与する3つのループ部分を含む、請求項61記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項64】
免疫グロブリン様ドメインを含む、請求項60記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項65】
免疫グロブリン様ドメインがフィブロネクチンタイプIII(Fn3)ドメインである、請求項64記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項66】
Fn3ドメインがN末端からC末端の順に以下を含む、請求項65記載の単一ドメインポリペプチド:
a) βストランドまたはβ様ストランド、A;
b) ループ、AB;
c) βストランド、B;
d) ループ、BC;
e) βストランド C;
f) ループ CD;
g) βストランド D;
h) ループ DE;
i) βストランド F;
j) ループ FG;および
k)βストランドまたはβ様ストランド、G。
【請求項67】
ループFGが標的タンパク質結合に関与する、請求項66記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項68】
ループBC、DE、およびFGが標的タンパク質結合に関与する、請求項66記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項69】
各βストランドまたはβ様ストランドが本質的にSEQ ID NO:5の対応するβストランドの配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項66記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項70】
請求項1記載のポリペプチドをコードする配列を含む核酸。
【請求項71】
SEQ ID NO:6〜183、186〜197、199、および241〜310のいずれかからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項70記載の核酸。
【請求項72】
ストリンジェントな条件においてSEQ ID NO:184の核酸配列とハイブリダイズし、ヒトKDRと1x10-6M未満のKDで結合するポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸。
【請求項73】
SEQ ID NO:184およびSEQ ID NO:185からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項72記載の核酸。
【請求項74】
プロモーターと機能的に連結された請求項71記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項75】
請求項72記載の核酸を含む細胞。
【請求項76】
請求項1記載のポリペプチドをコードする配列を含む核酸を発現させる段階を含む、KDRと結合するポリペプチドを生成する方法。
【請求項77】
核酸が、SEQ ID NO:6〜183、186〜197、199、および241〜310のいずれかからなる群より選択されるポリペプチドをコードする配列を含む、請求項76記載の方法。
【請求項78】
核酸が、ストリンジェントな条件においてSEQ ID NO:184の核酸配列とハイブリダイズする配列を含む、請求項76記載の方法。
【請求項79】
核酸が細胞内で発現される、請求項76記載の方法。
【請求項80】
核酸が無細胞系で発現される、請求項76記載の方法。
【請求項1】
ヒトKDRに結合する実質的に純粋な単一ドメインポリペプチドであって、以下を含む構造構成を有する約80〜約150アミノ酸を含み:
a) 少なくとも2つのβシートの間に分布する少なくとも5〜7個のβストランドまたはβ様ストランド;および
b) βストランドまたはβ様ストランドである2つのストランドを結合する、KDRへの結合に関与する少なくとも1つのループ部分;
ここで、1x10-6M未満の解離定数(KD)でヒトKDRタンパク質の細胞外ドメインに結合する、単一ドメインポリペプチド。
【請求項2】
免疫グロブリン可変ドメインを含む、請求項1記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項3】
免疫グロブリン可変ドメインがヒトVLドメイン、ヒトVHドメイン、およびラクダVHHドメインからなる群より選択される、請求項2記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項4】
各ループ部分が2つのβストランドを結合する、KDRへの結合に関与する3つのループ部分を含む、請求項2記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項5】
免疫グロブリン様ドメインを含む、請求項1記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項6】
免疫グロブリン様ドメインがフィブロネクチンタイプIII(Fn3)ドメインである、請求項5記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項7】
Fn3ドメインがN末端からC末端の順に以下を含む、請求項1記載の単一ドメインポリペプチド:
a) βストランドまたはβ様ストランド、A;
b) ループ、AB;
c) βストランド、B;
d) ループ、BC;
e) βストランド C;
f) ループ CD;
g) βストランド D;
h) ループ DE;
i) βストランド F;
j) ループ FG;および
k)βストランドまたはβ様ストランド、G。
【請求項8】
ループFGがKDR結合に関与する、請求項7記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項9】
ループBC、DE、およびFGがKDR結合に関与する、請求項7記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項10】
各βストランドが本質的にSEQ ID NO:5の対応するβストランドの配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項9記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項11】
ループAB、CD、およびEFのそれぞれが本質的にSEQ ID NO:5の対応するループの配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項10記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項12】
SEQ ID NO:5の配列と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項13】
各ループ部分がβストランドまたはβ様ストランドである2つのストランドを結合する、KDRへの結合に関与する3つのループ部分を含む、請求項5記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項14】
KDR結合に関与するループがSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、およびSEQ ID NO:4からなる群より選択される配列を有する、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項15】
哺乳動物におけるポリペプチドの排除速度を未修飾ポリペプチドの1/3未満に減少させる部分に結合された、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項16】
排除速度を減少させる部分がポリエチレングリコール部分である、請求項15記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項17】
ポリエチレングリコール部分が2〜100 kDaの分子量を有する、請求項16記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項18】
ポリエチレングリコール部分が単一ドメインポリペプチドのチオール部分またはアミン部分に共有結合されている、請求項16記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項19】
標識部分に結合されている、請求項1記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項20】
1x10-7M未満の解離定数(KD)でヒトKDRタンパク質の細胞外ドメインに結合し、KDR媒介性VEGF活性を阻害する、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項21】
VEGF-AのVEGF165アイソフォームと競合的にKDRに結合する、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項22】
VEGF-AおよびVEGF-Dと競合的にKDRに結合する、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項23】
1x10-6M未満のKDでマウスFlk1の細胞外ドメインとも結合する、請求項1〜13のいずれか一項記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項24】
SEQ ID NO:192のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項25】
SEQ ID NO:193のアミノ酸配列を含む、請求項24記載のポリペプチド。
【請求項26】
SEQ ID NO:194のアミノ酸配列を含む、請求項24記載のポリペプチド。
【請求項27】
ポリエチレングリコール部分が93位のシステイン残基に共有結合されている、請求項26記載のポリペプチド。
【請求項28】
ポリエチレングリコール部分が約10 kDa〜約60 kDaの分子量を有する、請求項27記載のポリペプチド。
【請求項29】
KDRに結合し、KDRへの結合においてVEGF-Aと競合する、SEQ ID NO:1〜4のいずれかの配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項30】
SEQ ID NO:6〜183、186〜197、および199のいずれかの配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項29記載の実質的に純粋なポリペプチド。
【請求項31】
SEQ ID NO:6〜183、186〜197、および199のいずれかの配列を含む、請求項30記載のポリペプチド。
【請求項32】
VEGFの生物活性を阻害する、請求項29記載のポリペプチド。
【請求項33】
50 nM以下のKDでKDRと結合する、請求項29記載のポリペプチド。
【請求項34】
1x10-7M未満の解離定数(KD)でヒトKDRタンパク質の細胞外ドメインに結合し、KDR媒介性VEGF活性を阻害する、請求項29記載のポリペプチド。
【請求項35】
請求項1〜13および24〜34のいずれか一項記載のポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む治療製剤。
【請求項36】
細胞を請求項20記載のポリペプチドと、VEGF生物活性を阻害するのに十分な量でおよび十分な時間接触させる段階を含む、VEGF生物活性を阻害する方法。
【請求項37】
VEGFの生物活性を阻害する請求項20記載のポリペプチドの有効量を対象に投与する段階を含む、VEGFの阻害に応答する病態を有する対象を治療する方法。
【請求項38】
病態が不適切な血管新生によって特徴づけられる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
病態が過剰増殖性病態である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
病態が、自己免疫疾患、炎症性疾患、網膜症、および癌からなる群より選択される、請求項38記載の方法。
【請求項41】
以下の段階を含む、試料中のVEGFR-2を検出する方法:
a) ポリペプチド-VEGFR-2複合体が形成され得る条件下で、試料を請求項1〜13および24〜34のいずれか一項に記載のポリペプチドと接触させる段階;および
b) 該複合体を検出し、それによって該試料中の該VEGFR-2を検出する段階。
【請求項42】
検出がX線検査、免疫学的アッセイ、蛍光検出、質量分析、または表面プラズモン共鳴からなる群より選択される技法を用いて行われる、請求項41記載の方法。
【請求項43】
試料が生物試料である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
生物試料がヒトから採取された試料であり、VEGFR-2がKDRである、請求項41記載の方法。
【請求項45】
ポリペプチドが標識部分で検出可能に標識されている、請求項41記載の方法。
【請求項46】
標識部分が放射性部分、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、およびハプテン部分からなる群より選択される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
ポリペプチドが固体支持体上に固定化されている、請求項41記載の方法。
【請求項48】
改善された薬物動態特性を有する標的結合10Fn3ポリペプチドであって、以下を含み:
a) 該10Fn3ポリペプチドのドメインの少なくとも1つのループが標的結合に関与する、約80〜約150アミノ酸を有する10Fn3ドメイン;および
b) 共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)部分;
ここで、100 nM未満のKDで標的と結合し、哺乳動物において30 mL/hr/kg未満の排除速度を有する、Fn3ポリペプチド。
【請求項49】
PEG部分がチオール基またはアミン基に結合されている、請求項48記載の10Fn3ポリペプチド。
【請求項50】
PEG部分が部位特異的PEG化によってFn3ポリペプチドに結合されている、請求項48記載の10Fn3ポリペプチド。
【請求項51】
PEG部分がCys残基に結合されている、請求項50記載の10Fn3ポリペプチド。
【請求項52】
PEG部分が以下からなる群より選択される10Fn3ポリペプチド上の位置で結合されている、請求項48記載の10Fn3ポリペプチド:
a) N末端;
b) N末端と最もN末端側のβストランドまたはβ様ストランドの間;
c) 標的結合部位と反対側のポリペプチド面上に位置するループ;
d) C末端と最もC末端側のβストランドまたはβ様ストランドの間;および
e) C末端。
【請求項53】
PEG部分が約2 kDa〜約100 kDaの分子量を有する、請求項48記載の10Fn3ポリペプチド。
【請求項54】
SEQ ID NO:5と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項48記載の10Fn3ポリペプチド。
【請求項55】
静脈内投与と比較して放出遅延が達成されるように患者に10Fn3ポリペプチドを投与する方法であって、10Fn3ポリペプチドを皮下投与し、それによって静脈内投与と比較して血流への放出遅延が達成される段階を含む方法。
【請求項56】
10Fn3ポリペプチドの皮下投与により、同等の投与量を静脈内投与することによって達成される最大血清濃度の半分未満である10Fn3ポリペプチドの最大血清濃度が達成される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
10Fn3ポリペプチドが10Fn3ポリペプチドの血中半減期を延長させる部分に結合されている、請求項55記載の方法。
【請求項58】
部分がポリエチレングリコール部分である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
10Fn3ポリペプチドがSEQ ID NO:5と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項55記載の方法。
【請求項60】
予め選択されたヒト標的タンパク質および非ヒト種に由来するその相同体と結合する実質的に純粋な単一ドメインポリペプチドであって、以下を含む構造構成を有する約80〜約150アミノ酸を含み:
a) 少なくとも2つのβシートの間に分布する少なくとも5〜7個のβストランドまたはβ様ストランド;および
b) βストランドまたはβ様ストランドである2つのストランドを結合する、予め選択されたヒト標的タンパク質およびその相同体への結合に関与する少なくとも1つのループ部分;
ここで、5x10-8M未満の解離定数(KD)で、予め選択されたヒト標的タンパク質、および予め選択されたヒト標的タンパク質と少なくとも100アミノ酸の配列にわたって少なくとも80%同一であるその相同体と結合する単一ドメインポリペプチド。
【請求項61】
免疫グロブリン可変ドメインを含む、請求項60記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項62】
免疫グロブリン可変ドメインがヒトVLドメイン、ヒトVHドメイン、およびラクダVHHドメインからなる群より選択される、請求項61記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項63】
各ループ部分がβストランドまたはβ様ストランドであるストランドを結合する、予め選択されたヒト標的タンパク質およびその相同体への結合に関与する3つのループ部分を含む、請求項61記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項64】
免疫グロブリン様ドメインを含む、請求項60記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項65】
免疫グロブリン様ドメインがフィブロネクチンタイプIII(Fn3)ドメインである、請求項64記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項66】
Fn3ドメインがN末端からC末端の順に以下を含む、請求項65記載の単一ドメインポリペプチド:
a) βストランドまたはβ様ストランド、A;
b) ループ、AB;
c) βストランド、B;
d) ループ、BC;
e) βストランド C;
f) ループ CD;
g) βストランド D;
h) ループ DE;
i) βストランド F;
j) ループ FG;および
k)βストランドまたはβ様ストランド、G。
【請求項67】
ループFGが標的タンパク質結合に関与する、請求項66記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項68】
ループBC、DE、およびFGが標的タンパク質結合に関与する、請求項66記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項69】
各βストランドまたはβ様ストランドが本質的にSEQ ID NO:5の対応するβストランドの配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項66記載の単一ドメインポリペプチド。
【請求項70】
請求項1記載のポリペプチドをコードする配列を含む核酸。
【請求項71】
SEQ ID NO:6〜183、186〜197、199、および241〜310のいずれかからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、請求項70記載の核酸。
【請求項72】
ストリンジェントな条件においてSEQ ID NO:184の核酸配列とハイブリダイズし、ヒトKDRと1x10-6M未満のKDで結合するポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸。
【請求項73】
SEQ ID NO:184およびSEQ ID NO:185からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項72記載の核酸。
【請求項74】
プロモーターと機能的に連結された請求項71記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項75】
請求項72記載の核酸を含む細胞。
【請求項76】
請求項1記載のポリペプチドをコードする配列を含む核酸を発現させる段階を含む、KDRと結合するポリペプチドを生成する方法。
【請求項77】
核酸が、SEQ ID NO:6〜183、186〜197、199、および241〜310のいずれかからなる群より選択されるポリペプチドをコードする配列を含む、請求項76記載の方法。
【請求項78】
核酸が、ストリンジェントな条件においてSEQ ID NO:184の核酸配列とハイブリダイズする配列を含む、請求項76記載の方法。
【請求項79】
核酸が細胞内で発現される、請求項76記載の方法。
【請求項80】
核酸が無細胞系で発現される、請求項76記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【公表番号】特表2007−516707(P2007−516707A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542876(P2006−542876)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/040885
【国際公開番号】WO2005/056764
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(505072546)コンパウンド セラピューティクス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/040885
【国際公開番号】WO2005/056764
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(505072546)コンパウンド セラピューティクス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
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