説明

2線式交流スイッチ

【課題】2線式交流スイッチの低消費電力化を実現する。
【解決手段】
交流電源と負荷とを結ぶ電路に挿入される2線式交流スイッチであって、スイッチ端子S1、S2と、スイッチ端子間のオンオフを制御するためのゲート端子G1、G2と、基板端子Subとを有し、スイッチ端子間に双方向に電流を流すことができ、スイッチ端子S1が交流電源1に接続され、スイッチ端子S2が負荷2に接続される半導体スイッチからなるメインスイッチ3と、メインスイッチの基板端子Subを接地するかフローティングにするかを切り替えるサブスイッチ9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2線式交流スイッチに関し、特に双方向に電流を流すことができる半導体スイッチを備えた2線式交流スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調光機能、リモコン機能、人センサー機能などを有する高機能な2線式交流スイッチが商品化されている。これに使用されるスイッチには、双方向に電流を流すことができ、且つ、正負両極性で耐圧を確保できることが要求される。近年、半導体デバイス材料として、窒化ガリウム(GaN)に代表される窒化物系半導体や、炭化珪素(SiC)といったワイドバンドギャップ半導体の実用化に向けた研究開発が活発に行われるようになり、低消費電力を実現できるワイドバンドギャップ半導体の双方向スイッチを使用した2線式交流スイッチが考案されている(参考文献1、2)。
【0003】
図14はIII族窒化物半導体の双方向スイッチを使用した2線式交流スイッチを示す回路図である。双方向スイッチ3は、双方向に電流を流す構成を有するとともに当該電流の流れをオン又はオフする、III族窒化物半導体から構成されるダブルゲートのスイッチ素子であり、スイッチング(導通/非導通)の対象となるスイッチ端子S1及びスイッチ端子S2と、電流の流れのオン及びオフを制御するための2つのゲート端子G1、G2と、この双方向スイッチ3を形成している基板と電気的に接続された基板端子Sub(以下、「Sub端子」と称する場合がある)とを有する。ここで、商用交流電源1と、負荷2と、双方向スイッチ3(そのスイッチ端子S1及びスイッチ端子S2)とは、閉回路を構成するように、直列に接続されている。
【0004】
全波整流器4は、双方向スイッチ3に並列に接続され、商用交流電源1から供給される交流電力を全波整流するブリッジダイオード等である。
電源回路5は、全波整流器4から出力される全波整流後の電圧を平滑化し、直流電源を供給する回路である。第1のゲート駆動回路7、第2のゲート駆動回路8及び制御回路6に必要な電源は、電源回路5から供給されている。
【0005】
制御回路6は、第1のゲート駆動回路7及び第2のゲート駆動回路8を制御する回路である。具体的には、商用交流電源1から負荷2に電力を供給する場合には、第1のゲート駆動回路7及び第2のゲート駆動回路8に、それぞれ、双方向スイッチ3のゲート端子G1及びゲート端子G2に対して閾値電圧より高い電圧をもつ制御信号を出力させることによって双方向スイッチ3をオン状態にさせ、一方、商用交流電源1から負荷2への電力供給を遮断する場合には、第1のゲート駆動回路7及び第2のゲート駆動回路8に、それぞれ、双方向スイッチ3のゲート端子G1及びゲート端子G2に対して閾値電圧より低い電圧をもつ制御信号を出力させることによって双方向スイッチ3をオフ状態にさせる。
【0006】
より詳しくは、外部設定部11より、商用交流電源1から負荷2に電力を供給するか否かを示す信号が制御回路6に伝達される。その伝達された信号に基づいて、制御回路6は、第1のゲート駆動回路7の入力端子SIN1及び第2のゲート駆動回路8の入力端子SIN2に、制御信号を出力する。
第1のゲート駆動回路7及び第2のゲート駆動回路8は、制御回路6からの制御信号に基づいて、それぞれ、その出力端子OUT1及びOUT2から双方向スイッチ3のゲート端子G1及びG2に制御信号を出力することにより、双方向スイッチ3のスイッチング動作を制御する。具体的には、第1のゲート駆動回路7及び第2のゲート駆動回路8から、それぞれ、双方向スイッチ3(より詳しくは、そのゲート)の閾値電圧より高い電圧がゲート端子G1とゲート端子G2に印加されると、双方向スイッチ3のスイッチ端子S1とスイッチ端子S2との間が導通状態になり、負荷2に電力が供給される。一方、第1のゲート駆動回路7及び第2のゲート駆動回路8の少なくとも一方から、それぞれ、双方向スイッチ3(より詳しくは、そのゲート)の閾値電圧より低い電圧がゲート端子G1、ゲート端子G2に印加されると、双方向スイッチ3のスイッチ端子S1とスイッチ端子S2との間が非導通状態になり、負荷2への電力供給が遮断される。これにより、III族窒化物半導体から構成される双方向スイッチ3を用いた2線式交流スイッチが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号 WO2010-073092_A1
【特許文献2】国際公開番号 WO2010-146433_A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、双方向スイッチは、Sub端子をフローティングにして使用するとオン抵抗が大きくなり、双方向スイッチがオン状態で消費電力が大きくなるという課題がある。また、Sub端子を接地して使用するとオン抵抗は小さくすることが可能であるが、ゲート端子G1、ゲート端子G2、スイッチ端子S1及びスイッチ端子S2からSub端子にリーク電流が流れるため、双方向スイッチのオフ時のリーク電流が大きくなり、双方向スイッチのオフ時の消費電力が大きくなるという課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、2線式交流スイッチの低消費電力化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る2線式交流スイッチは、交流電源と負荷とを結ぶ電路に挿入される2線式交流スイッチであって、第1及び第2のスイッチ端子と、前記第1及び第2のスイッチ端子間のオンオフを制御するための第1及び第2のゲート端子と、基板端子とを有し、前記第1及び第2のスイッチ端子間に双方向に電流を流すことができ、前記第1のスイッチ端子が前記交流電源に接続され、前記第2のスイッチ端子が前記負荷に接続される半導体スイッチからなるメインスイッチと、前記メインスイッチの基板端子を接地するかフローティングにするかを切り替えるサブスイッチと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、双方向に電流を流すことが可能な半導体スイッチであるメインスイッチの基板端子の接続をメインスイッチの動作状態に合わせてサブスイッチで切替える事により、従来よりも低消費電力化を実現でき、より大きい負荷に接続して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図
【図2】双方向スイッチ3の構造を示す断面図
【図3】図1の2線式交流スイッチの動作を示すタイミングチャート
【図4】双方向スイッチ3の特性を示す図
【図5】本発明の実施の形態の変形例を示すタイミングチャート
【図6】本発明の実施の形態の変形例を示す回路図
【図7】本発明の実施の形態の変形例を示す回路図
【図8】本発明の実施の形態の変形例を示す回路図
【図9】図1および図7の概念図
【図10】図6および図8の概念図
【図11】本発明の実施の形態の変形例を示す回路図
【図12】図11の2線式交流スイッチの動作を示すタイミングチャート
【図13】本発明の実施の形態の変形例を示すタイミングチャート
【図14】従来の2線式交流スイッチの回路図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の2線式交流スイッチの実施の形態について、図面を参照して説明する。
<回路構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図である。この2線式交流スイッチ10は、商用交流電源1と照明器具等の負荷2とを結ぶ電路に挿入される交流スイッチであり、双方向スイッチ3と、全波整流器4と、電源回路5と、第1のゲート駆動回路7と、第2のゲート駆動回路8と、制御回路6と、半導体スイッチ9を備える。
【0014】
本実施の形態は、半導体スイッチ9がSub端子と接地端子とを結ぶ電路に挿入されている。回路構成に関してはこれ以外の点は図14と同じなので説明を省略する。
半導体スイッチ9は、メインスイッチである双方向スイッチ3のSub端子を接地するかフローティングにするかを切り替えるためのサブスイッチである。半導体スイッチ9がオンのときは双方向スイッチ3のSub端子は接地され、オフのときは双方向スイッチ3のSub端子はフローティングになる。ここで、フローティングとは、数100MΩ〜数1000MΩ程度の高抵抗を介した接地を含むものとする。本実施の形態では、半導体スイッチの一例として電界効果トランジスタを採用している。
【0015】
<双方向スイッチの構造>
図2は、双方向スイッチ3の構造を示す断面図である。図2に示すように、双方向スイッチ3は、導電性のシリコン(Si)基板126の上に形成された厚さが約1μmのバッファ層127と、バッファ層127の上に形成された半導体積層体(第1の半導体層128と第2の半導体層129)とを有している。バッファ層127は、交互に積層された厚さが10nm程度の窒化アルミニウム(AlN)と厚さが10nm程度の窒化ガリウム(GaN)とからなる。半導体積層体は、基板126側から順次積層された、第1の半導体層128と、第1の半導体層128と比べてバンドギャップが大きい第2の半導体層129とから構成される。本実施の形態においては、第1の半導体層128は、厚さが2μm程度のアンドープの窒化ガリウム(GaN)層である。第2の半導体層129は、厚さが20nm程度のn型の窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層である。これにより、極めてオン抵抗が低い双方向スイッチが実現される。
【0016】
GaNからなる第1の半導体層128とAlGaNからなる第2の半導体層129とのヘテロ界面近傍には、自発分極及びピエゾ分極による電荷が生じる。これにより、シートキャリア濃度が1×1013cm−2以上で、且つ、移動度が1000cmV/sec以上の2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域が生成される。
半導体積層体の上、つまり、第1の半導体層128と第2の半導体層129との上には、互いに間隔をおいて第1のオーミック電極123Aと第2のオーミック電極123Bとが形成されている。第1のオーミック電極123A及び第2のオーミック電極123Bは、いずれも、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)とが積層されており、上述したチャネル領域とオーミック接触している。図2には、コンタクト抵抗を低減するために、第2の半導体層129の一部を除去すると共に第1の半導体層128を40nm程度掘り下げて、第1のオーミック電極123A及び第2のオーミック電極123Bが第1の半導体層128と第2の半導体層129との界面に接するように形成した例が示されている。なお、第1のオーミック電極123A及び第2のオーミック電極123Bは、第2の半導体層129の上に形成してもよい。
【0017】
第1のオーミック電極123Aの上に、AuとTiからなる第1のオーミック電極配線122Aが形成されており、第1のオーミック電極123Aと電気的に接続されている。同様に、第2のオーミック電極123Bの上にAuとTiからなる第2のオーミック電極配線122Bが形成されており、第2のオーミック電極123Bと電気的に接続されている。
【0018】
第2の半導体層129の上における、第1のオーミック電極123Aと第2のオーミック電極123Bとの間の領域には、双方向スイッチ103のダブルゲートを構成する第1のp型半導体層125A及び第2のp型半導体層125Bとが互いに間隔をおいて形成されている。第1のp型半導体層125Aの上には第1のゲート電極124Aが形成され、第2のp型半導体層125Bの上には第2のゲート電極124Bが形成されている。第1のゲート電極124A及び第2のゲート電極124Bは、いずれも、パラジウム(Pd)と金(Au)との積層体からなり、第1のp型半導体層125A及び第2のp型半導体層125Bとオーミック接触している。
【0019】
第1のオーミック電極配線122A、第1のオーミック電極123A、第2の半導体層129、第1のp型半導体層125A、第1のゲート電極124A、第2のp型半導体層125B、第2のゲート電極124B、第2のオーミック電極123B及び第2のオーミック電極配線122Bを覆うように窒化シリコン(SiN)からなる保護膜130が形成されている。
【0020】
シリコン基板126の裏面には、ニッケル(Ni)とクロム(Cr)と銀(Ag)とが積層された厚さ800nm程度の裏面電極131が形成されており、裏面電極131はシリコン基板126とオーミック接合している。
第1のp型半導体層125A及び第2のp型半導体層125Bは、それぞれ厚さが300nm程度で、マグネシウム(Mg)がドープされたp型のGaNからなる。第1のp型半導体層125A及び第2のp型半導体層125Bと、第2の半導体層129とによりpn接合がそれぞれ形成される。これにより、第1のオーミック電極123Aと第1のゲート電極124Aとの間の電圧が例えば0V以下の場合には、第1のp型半導体層125Aからチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができる。同様に、第2のオーミック電極123Bと第2のゲート電極124Bとの間の電圧が、例えば0V以下の場合には、第2のp型半導体層125Bからチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができる。従って、いわゆるノーマリーオフ動作をするダブルゲートのスイッチ素子が実現できる。また、第1のp型半導体層125Aと第2のp型半導体層125Bとの間の距離は、第1のオーミック電極123A及び第2のオーミック電極123Bに印加される最大電圧に耐えられるように設計する。
【0021】
なお、第1のオーミック電極123Aと接続された端子S1、第1のゲート電極124Aと接続された端子G1、第2のゲート電極124Bと接続された端子G2及び第2のオーミック電極123Bと接続された端子S2は、それぞれ、図1のスイッチ端子S1、ゲート端子G1、ゲート端子G2及びスイッチ端子S2に対応する。また、裏面電極131と接続された端子Subは、図1の基板端子Subに対応する。
【0022】
<動作>
図3は、図1の2線式交流スイッチの動作を示すタイミングチャートである。図3中、VACは商用交流電源1の電圧、VS2S1は双方向スイッチ3のスイッチ端子間の電圧、IS2S1は双方向スイッチ3のスイッチ端子間に流れる電流、VG1は双方向スイッチ3のゲート端子G1に入力される制御信号、VG2は双方向スイッチ3のゲート端子G2に入力される制御信号、Sub端子接続切替えスイッチ信号は半導体スイッチ9のゲート端子に入力される制御信号である。本実施の形態では位相制御により商用交流電源1から負荷2に供給される電力を調整している。図3で制御信号VG1、VG2がパルスを繰り返しているのは位相制御をしているからである。
【0023】
図3に示すタイミングチャートでは、双方向スイッチ3のゲート端子G1とゲート端子G2に繰返しパルスが印加されている間(双方向スイッチ3がオン状態の間)は、制御回路6は半導体スイッチ9にオン信号を印加してSub端子を接地するように制御している。一方、双方向スイッチ3のゲート端子G1とゲート端子G2に繰返しパルスが印加されない間(双方向スイッチ3がオフ状態の間)は、制御回路6は半導体スイッチ9にオフ信号を印加してSub端子がフローティングになるように制御している。
【0024】
<効果>
図4に示すように、双方向スイッチ3は、Sub端子をフローティングにして使用するとオン抵抗が大きくなり、双方向スイッチがオン状態で消費電力が大きくなる。また、Sub端子を接地して使用するとオン抵抗は小さくすることが可能であるが、ゲート端子G1、ゲート端子G2、スイッチ端子S1及びスイッチ端子S2からSub端子にリーク電流が流れるため、双方向スイッチ3のオフ時のリーク電流が大きくなり、双方向スイッチ3のオフ時の消費電力が大きくなる。
【0025】
本実施の形態では、双方向スイッチ3のオンオフの状態に合わせて半導体スイッチ9のオンオフを切り替えることで、双方向スイッチ3がオンのときはSub端子を接地し、双方向スイッチ3がオフのときはSub端子をフローティングにすることができる。これにより、双方向スイッチ3がオンのときはオン抵抗を低下させるとともに、双方向スイッチ3がオフのときはリーク電流を低下させることができる。したがって、双方向スイッチ3の消費電力、ひいては2線式交流スイッチ10の消費電力を低下させることができる。また、双方向スイッチ3がオフのときはSub端子をフローティングにするので、Sub端子からのサージに対して双方向スイッチ3を保護することができる。
【0026】
また、近年、材料限界を打破して導通損失を低減するために、GaNに代表されるIII族窒化物半導体又は炭化珪素(SiC)等のワイドギャップ半導体を用いた半導体素子の導入が検討されている。ワイドギャップ半導体は絶縁破壊電界がシリコン(Si)と比べて約1桁高い。窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)と窒化ガリウム(GaN)とのヘテロ接合界面には自発分極及びピエゾ分極により電荷が生じる。これにより、アンドープ時においても1×1013cm−2以上のシートキャリア濃度と1000cmV/sec以上の高移動度の2次元電子ガス(2DEG)層が形成される。このため、AlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(AlGaN/GaN−HFET)は、低オン抵抗及び高耐圧を実現するパワースイッチングトランジスタとして期待されている。
【0027】
特に、AlGaN/GaNのヘテロ接合を利用して2つのゲート電極を有する構造にすることにより、1つの半導体素子で、双方向スイッチを形成することが可能となる。この構造を有した双方向スイッチは、互いに逆方向に直列に接続した2個のトランジスタと回路的には等価で、従来のトライアックよりもオン抵抗の低減が可能になり、第1のオーミック電極側から第2のオーミック電極側へ流れる電流も、第2のオーミック電極側から第1のオーミック電極側へ流れる電流も共に制御することができる。このため、III族窒化物半導体から構成される、2つのゲート電極を有する双方向スイッチは、従来使用されているトライアック単体、パワーMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)又はIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のパワートランジスタを複数個組み合わせた従来の双方向スイッチよりも小型化で、かつ、省電力化を図ることができる素子として注目されている。
【0028】
本実施の形態では、このようなIII族窒化物半導体から構成される双方向スイッチを採用しているので、小型で省電力の2線式交流スイッチを実現することができる。
<変形例>
(1)制御
上記実施の形態では、双方向スイッチ3のゲート端子G1、G2に繰り返しパルスが印加されているか否かで半導体スイッチ9のオンオフを切り替えている。しかしながら、本発明は、これに限られない。双方向スイッチ3のゲート端子G1、G2に繰り返しパルスが印加されているときは、負荷2に電力が供給されているので双方向スイッチ3はオン状態であると言えるものの、微視的には双方向スイッチ3はオンオフを繰り返している。そこで、図5に示すように、双方向スイッチ3のオンオフに合わせて半導体スイッチ9をオンオフしてもよい。
【0029】
図5に示すタイミングチャートでは、双方向スイッチ3のゲート端子G1とゲート端子G2にオン信号が印加されている間、制御回路6は半導体スイッチ9にオン信号を印加してSub端子を接地するように制御している。一方、双方向スイッチ3のゲート端子G1とゲート端子G2にオフ信号が印加される間、制御回路6は半導体スイッチ9にオフ信号を印加してSub端子がフローティングになるように制御している。
【0030】
(2)抵抗を介した接地
上記実施の形態では、双方向スイッチ3のSub端子は抵抗を介さずに接地されているが、本発明はこれに限られない。図6に示す2線式交流スイッチ10aでは、双方向スイッチ3のSub端子と接地端子とを結ぶ電路に、半導体スイッチ9と直列に抵抗12が挿入されている。抵抗12の抵抗値は、数10Ω〜数MΩ程度である。Sub端子を接地すると、オン抵抗は低下するものの、リーク電流が増加する恐れがある。図6に示すように抵抗を介した接地とすることで、両者のバランスをとることができる。なお、動作は、図3、図5のどちらを採用しても構わない。
【0031】
(3)スイッチの種類
上記実施の形態では、半導体スイッチを採用しているが、本発明はこれに限られない。図7、図8に示す2線式交流スイッチ10b、10cでは、半導体スイッチ9の代わりに機械式のリレー13を採用している。図9は、図1および図7の概念図であり、図10は、図6および図8の概念図である。ここでは、スイッチ14がSub端子と接地端子とを結ぶ電路に挿入されている。
【0032】
(4)3状態の切り替え
上記実施の形態では、双方向スイッチ3のSub端子をフローティングと接地の2状態に切り替えているが、本発明はこれに限られない。図11に示す2線式交流スイッチ10fでは、双方向スイッチ3のSub端子と接地端子とを結ぶ電路に、以下の(a)〜(c)の3状態の何れかを選択できるスイッチ15が挿入されている。
【0033】
(a)Sub端子がフローティング
(b)Sub端子が抵抗を介して接地
(c)Sub端子が抵抗を介さずに接地
図12は、図10の2線式交流スイッチの動作を示すタイミングチャートである。図12に示すタイミングチャートでは、双方向スイッチ3のゲート端子G1とゲート端子G2に繰返しパルスが印加されている間(双方向スイッチ3がオン状態の間)は、制御回路6は半導体スイッチ9にオン信号を印加してSub端子を接地するように制御している。ただし、双方向スイッチ3がオン状態になってから所定期間が経過するまでは、Sub端子が抵抗を介さずに接地され、所定期間を経過すれば、Sub端子が抵抗12を介して接地される。一方、双方向スイッチ3のゲート端子G1とゲート端子G2に繰返しパルスが印加されない間(双方向スイッチ3がオフ状態の間)は、制御回路6は半導体スイッチ9にオフ信号を印加してSub端子がフローティングになるように制御している。所定期間の長さは、負荷の種類などに応じて予め決められている。
【0034】
(5)切り替えタイミング
上記実施の形態では、双方向スイッチ3をオフからオンに切り替えるタイミングと、双方向スイッチ3のSub端子をフローティングから接地に切り替えるタイミングとが一致しているが、本発明はこれに限られない。
図13は双方向スイッチ3のゲート端子G1とゲート端子G2に印加される制御信号とSub端子に直列に接続された半導体スイッチ9に印加される制御信号の詳細なタイミングを示した図である。図13の動作では、双方向スイッチ3をオフからオンに切り替える(2線式交流スイッチをオンにする)とき、ゲート端子G1とゲート端子G2に印加される制御信号より早いタイミングで、Sub端子に直列に接続された半導体スイッチ9にオン信号を印加している。これにより双方向スイッチ3のオン抵抗をさらに小さくすることができ、負荷に大電流を流すことができる。
【0035】
(6)その他
以上、本発明に係る2線式交流スイッチについて、実施の形態及びその変形例を用いて
説明したが、本発明は、これらの実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、これらの実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく種々の変形を施して得られる形態や、これらの実施の形態及び変形例を任意に組み合わせて得られる形態も、本発明に含まれる。
【0036】
たとえば、上記実施の形態においては、双方向スイッチ3は、ゲート電極がp型半導体層(第1のp型半導体層125A及び第2のp型半導体層125B)の上に形成されたノーマリーオフ型のダブルゲートの半導体素子であった。しかし、本発明に係る双方向スイッチのゲートは、このような構造に限定されない。たとえば、ゲートリセスを形成したり、第2の半導体層129の膜厚を薄くしたりすることにより、ノーマリーオフ特性を実現してもよい。
【0037】
また、本発明に係る双方向スイッチのゲートの構造として、ゲート電極下のp型半導体に代えて絶縁層を設けることで絶縁型のゲートとしたり、ゲート電極下のp型半導体を設けることなくゲート電極と半導体積層体とがショットキー接合するような接合型のゲートとしてもよい。
また、回路構成によっては、双方向スイッチ3は、ノーマリーオン型のダブルゲートの半導体素子として実現することも可能である。
【0038】
また、双方向スイッチ3の基板については、シリコン基板である例を示したが、本発明はシリコン基板に限定されるものではない。窒化物半導体が形成できる基板であればよく、Si基板に代えて炭化珪素(SiC)基板又はサファイア基板又は他の基板としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る2線式交流スイッチは、例えば、調光機能をもつ住宅の照明灯や換気扇の制御用の2線式交流スイッチとして有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 商用交流電源
2 負荷
3 双方向スイッチ
4 全波整流器
5 電源回路
6 制御回路
7 ゲート駆動回路
8 ゲート駆動回路
9 半導体スイッチ
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f 2線式交流スイッチ
11 外部設定部
12 抵抗
13 リレー
14 スイッチ
15 スイッチ
103 双方向スイッチ
122A、122B オーミック電極配線
123A、123B オーミック電極
124A、124B ゲート電極
125A、125B p型半導体層
126 基板
127 バッファ層
128 第1の半導体層
129 第2の半導体層
130 保護膜
131 裏面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と負荷とを結ぶ電路に挿入される2線式交流スイッチであって、
第1及び第2のスイッチ端子と、前記第1及び第2のスイッチ端子間のオンオフを制御するための第1及び第2のゲート端子と、基板端子とを有し、前記第1及び第2のスイッチ端子間に双方向に電流を流すことができ、前記第1のスイッチ端子が前記交流電源に接続され、前記第2のスイッチ端子が前記負荷に接続される半導体スイッチからなるメインスイッチと、
前記メインスイッチの基板端子を接地するかフローティングにするかを切り替えるサブスイッチと、
を備える2線式交流スイッチ。
【請求項2】
さらに、前記メインスイッチがオフのときは、前記基板端子をフローティングにし、前記メインスイッチがオンのときは、前記基板端子を接地するように前記サブスイッチを制御する制御回路を備える、請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項3】
前記基板端子の接地は、抵抗素子を介した接地と抵抗素子を介さない接地とで選択可能であり、
前記制御回路は、
前記メインスイッチがオンになってから所定期間が経過するまでは、前記抵抗素子を介さない接地を選択し、前記所定期間が経過すれば、前記抵抗素子を介した接地を選択する、請求項2に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項4】
さらに、前記メインスイッチがオフからオンに切り替わる前に、前記基板端子の状態をフローティングから接地に切り替えるように前記サブスイッチを制御する制御回路を備える、請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項5】
前記メインスイッチがノーマリーオフ型のスイッチである請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項6】
前記メインスイッチがノーマリーオン型のスイッチである請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項7】
前記メインスイッチは、
基板と、
前記基板上に形成され、III族窒化物半導体から構成される半導体積層体と、
前記半導体積層体上に形成され、前記第1及び第2のスイッチ端子をそれぞれ構成する第1及び第2のオーミック電極と、
前記半導体積層体上における、前記第1及び第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成され、前記第1及び第2のゲート端子をそれぞれ構成する第1及び第2のゲート電極と、
前記基板における前記第1及び第2のゲート電極とは反対側に形成され、前記基板端子を構成する基板電極と、
を備える請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項8】
前記メインスイッチは、さらに、
前記第1のゲート電極と前記半導体積層体との間に形成された、前記半導体積層体とpn接合を形成する第1の半導体層と、
前記第2のゲート電極と前記半導体積層体との間に形成された、前記半導体積層体とpn接合を形成する第2の半導体層と、
を備える請求項7に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項9】
前記第1及び第2のゲート電極が絶縁ゲート用の電極である、請求項7に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項10】
前記第1及び第2のゲート電極が前記半導体積層体とショットキー接合を形成している、請求項7に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項11】
前記メインスイッチは、さらに、
前記第1及び第2のゲート電極のそれぞれとオーミック接触するp型のIII族窒化物半導体からなるゲートを備える、請求項7に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項12】
前記基板がシリコン基板である、請求項7に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項13】
前記基板が炭化珪素基板である、請求項7に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項14】
前記基板がサファイア基板である、請求項7に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項15】
前記交流電源は、商用交流電源であり、
前記負荷は、照明器具である、
請求項1に記載の2線式交流スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−38555(P2013−38555A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172270(P2011−172270)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】