説明

4−フルオロ−α−[2−メチル−1−オキソプロピル]γ−オキソ−N−β−ジフェニルベンゼンブタンアミドの製造方法

実質的に純粋な4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドを調製するための新規な方法。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
本発明は、HMG-CoA酵素阻害剤であるアトルバスタチンの合成のために有用な重要な中間体である、4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミド(式I)を調製する方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
米国特許第5,124,482号および同第5,216,174号は、4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドの製造を開示し、またアトルバスタチンの製造のためのその使用は、米国特許第4,681,893号に最初に開示された。アトルバスタチンカルシウムは、米国特許第5,273,995号に開示された。
【0003】
多くの特許出願/公報、即ち、米国特許第5,003,080、米国特許第5,169,857号、WO 01/85702、米国特許第5,354,772号、およびEP 0 304 063が、アトルバスタチンカルシウムの製造方法を開示している。
【0004】
「4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミド」(式I)として知られるアトルバスタチンの合成法における重要な中間体が、米国特許第5,124,482号に開示された。この式Iの化合物は、アトルバスタチンを得るために更に処理することができるが、最終生成物であるアトルバスタチンの純度は、式Iの純度に大きく依存する。
【0005】
4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドの製造方法は、米国特許第5,216,174号にも開示されている。式Iの化合物の調製方法また、研究論文(J. Labelled Cpd. Radiopharm. 42, 121-127, 1999)にも開示されており、ここでは、式Iの化合物の合成の際の痕跡量の水の存在が、不純物である「式Iの化合物の脱フッ素化誘導体」の形成を導くことが述べられている。
【0006】
上記先行技術の方法は、α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミド、およびジフルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドのような不純物の発生という主要な欠点を有する。先行技術文献に従えば、この反応は、不純物の形成を回避するために、制御された条件下(例えば高度の無水条件下)で行われることを必要とする。先行技術はまた、水の存在は、たとえ痕跡量であっても不純物を生じると述べている。事実、脱フッ素化アトルバスタチンはアトルバスタチンにおける既知の不純物の一つであり、これはアトルバスタチンの製造に使用される4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミド中の、α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミド等の存在に起因するものである。
【0007】
従って、これら不純物の形成を生じることがなく、かつ合成の際に維持されるべき制御条件を必要としない、4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドを調製するために使用することができる別の方法を見出すことが必要とされている。
【0008】
本発明は、上記問題に対する解決策を提供するものであり、先行技術の方法に対する更に好ましい代替法を提供するものである。
【0009】
本発明の目的は、実質的に純粋なアトルバスタチンを得るために使用できる、実質的に純粋な式Iの化合物を合成するための、別の工業的規模で実施できる方法を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、実質的に純粋な4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミド(次式I)を調製するための新規な方法であって:
【化5】

【0011】
次式IIの化合物と、
【化6】

【0012】
次式IIIの化合物とを、
【化7】

【0013】
塩基の存在下で反応させることによる方法を詳述する。好ましくは、前記塩基は炭酸ナトリウム、および/または炭酸ナトリウムとジイソプロピルエチルアミンの混合物である。
【発明の詳細な説明】
【0014】
4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミド(式I)は、多くの薬物分子、特にHMG Co-Aレダクターゼ阻害剤を調製するための重要な中間体である。該HMG Co-Aレダクターゼ阻害剤は、酵素3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素Aデダクターゼ(HMG CoAレダクターゼ)の阻害剤として有用であり、従って、脂質低下剤またはコレステロール低下剤として有用である。
【0015】
その第一の側面において、本発明の方法は、HMG CoAレダクターゼ阻害剤の調製のために有用な中間体を調製するための、新規で改善された商業的に実施可能なクリーンな方法である。
【0016】
本発明は、実質的に純粋な次式Iの化合物を調製する方法であって:
【化8】

【0017】
次式IIの化合物を、
【化9】

【0018】
塩基の存在下において、次式IIIの化合物
【化10】

【0019】
と反応させることを具備してなる方法を開示する。
【0020】
上記方法において、前記塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、またはこれらの二以上の適切な混合物から選択される方法。
【0021】
上記方法において、前記式Iの化合物は、実質的に純粋なアトルバスタチンを得るために更に処理される方法。
【0022】
実質的に純粋な式Iの化合物:
【化11】

【0023】
0.2%未満のα-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドを含有する、実質的に純粋な式Iの化合物。
【0024】
0.1%未満のジフルオロα-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドを含有する、実質的に純粋な式Iの化合物。
【0025】
本発明は、既知の方法に対して以下の利点を有する。
【0026】
1.クリーンな方法である;
2.経済的である;
3.工業的規模で実施可能である;
4.使用する試薬は無害で、容易に入手でき、且つ経済的である;
5.α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドのような不純物を殆ど含まない、実質的に純粋な生成物を生じる;
6.実質的に純粋な式Iの化合物を更に処理して、脱フッ素化アトルバスタチンのような不純物を殆ど含まない実質的に純粋なアトルバスタチンを得ることができる。
【0027】
以下の非限定的実施例は、本発明の化合物を調整するための、発明者による好ましい方法を例示するものである。
【実施例】
【0028】
実施例1
4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドの調製:
1-(4-フルオロ-フェニル)-2-フェニル-エタノン(1.5g)のDMF(20 ml)中の溶液に、 炭酸ナトリウム(2.5 g)を加え、15分間撹拌した。この反応混合物に、2-ブロモ-4-メチル-3-オキソ-ペンタン酸フェニルアミド(2 g)を加え、18時間撹拌した。反応混合物を更に、約90℃で5時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却した後、水(100 ml)を加え、該混合物を酢酸エチル(2×20 ml)で抽出した。合体した有機層を水および塩水で洗浄し、濃縮した。残渣を熱イソプロピルアルコール(15 ml)に溶解し、室温に冷却した。生成物を濾過して乾燥した。収量:1.5 g。
【0029】
生成物をHPLCにより分析したところ、α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミド(式Iの化合物の脱フッ素化誘導体)の含量は0.01%であることが分かった。
【0030】
実施例2
4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミド:
炭酸ナトリウム(5 g)およびジイソプロピルエチルアミン(16 ml)の懸濁液のDMF(100 ml)中の懸濁液に、1-(4-フルオロ-フェニル)-2-フェニル-エタノン(10 g)を添加し、30分間撹拌した。更に、ブロモ-4-メチル-3-オキソ-ペンタン酸フェニルアミド(13.5 g)を加え、室温で18時間撹拌した。その後、ジイソプロピルエチルアミン(8 ml)および炭酸ナトリウム(2.5 g)を添加し、10分間撹拌した。更に、ブロモ-4-メチル-3-オキソ-ペンタン酸フェニルアミド(3.3 g)を添加し、室温で5時間撹拌した。この反応混合物を90〜95℃で6時間還流させた。反応混合物を室温にまで冷却した後、水(200 ml)を添加し、含有物を酢酸エチル(250 ml)で抽出した。有機層を水で洗浄し、濃縮した。残渣をイソプロピルアルコールから再結晶させて、4-フルオロ-α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドを得た。収量:12g。
【0031】
生成物をHPLCにより分析したところ、α-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミド(式Iの化合物の脱フッ素化誘導体)の含量は0.05%であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋な次式Iの化合物を調製する方法であって:
【化1】

次式IIの化合物を、
【化2】

塩基の存在下において、次式IIIの化合物
【化3】

と反応させることを具備してなる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、またはこれらの二以上の適切な混合物から選択される方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、実質的に純粋なアトルバスタチンを得るために、式Iの化合物が更に処理される方法。
【請求項4】
実質的に純粋な次式Iの化合物:
【化4】

【請求項5】
請求項4に記載の実質的に純粋な化合物であって、0.2%未満のα-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドを含有する化合物。
【請求項6】
請求項5に記載の実質的に純粋な化合物であって、0.1%未満のジフルオロα-[2-メチル-1-オキソプロピル]γ-オキソ-N-β-ジフェニルベンゼンブタンアミドを含有する化合物。

【公表番号】特表2008−510797(P2008−510797A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529139(P2007−529139)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/IN2004/000264
【国際公開番号】WO2006/021968
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(502315536)バイオコン・リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】Biocon Limited
【Fターム(参考)】