説明

4−置換ピロリジン−2−オン及びそれらの使用

本発明は、式(III)の光学的に富む又は実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オン及び2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体の合成のためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−置換−ピロリジン−2−オン及び2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体の製造のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体、例えば、(2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−プロピル−ピロリジン−1−イル]ブタンアミド(I)及び(2S)−2−[(4S)−4−(2,2−ジフルオロビニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミド(II)等は、ブリバラセタム(brivaracetam)(I)及びセレトラセタム(seletracetam)(II)の国際的な一般名でそれぞれ知られており、医薬としてのこれらの方法及び使用は、公開番号WO01/62726の国際特許出願において記載されている。これらの誘導体は特に神経障害の治療に適している。
【0003】
【化1】

【0004】
それぞれWO01/64637及びWO03/014080で公開された国際特許出願は、ピロリジン−2−オンを使用する2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体の製造方法を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、驚くべきことに、光学的に富む4−置換−ピロリジン−2−オン又は光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンが、2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体の合成のための出発物質として使用できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、式(III)、
【化2】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルである)の光学的に富む4−置換−ピロリジン−2−オンに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、直鎖(分枝していない)、分枝若しくは環状部分、又はこれらの組合せを有する飽和1価炭化水素基を表す基である。好ましいアルキルは1〜3個の炭素を含む。場合により、アルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、エステル、アシル、シアノ、アシルオキシ、酸、アミド又はアミノ基からなる群から独立に選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピルであり、少なくとも1つのハロゲン原子で場合により置換されている。
【0008】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を有する、非置換若しくは置換分枝、非分枝若しくは環状炭化水素基又はこれらの組合せを表す。好ましいアルケニルは2〜4個の炭素を含む。「アルケニル」部分は、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、エステル、アシル、シアノ、アシルオキシ、カルボン酸、アミド又はアミノ基からなる群から独立に選択される1〜5個の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0009】
好ましいアルケニルは少なくとも1つのハロゲンで置換される。更に好ましいアルケニルは少なくとも2つのハロゲンで置換される。最も好ましいアルケニルは2,2−ジフルオロビニルである。
【0010】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子を表す。好ましいハロゲンはフッ素又は臭素である。
【0011】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシ」は、式−OHの基を表す。
【0012】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、式−OR(Rは、上で定義されているC1〜4アルキルである)の基を表す。
【0013】
本明細書で使用される用語「アシル」は、式RCO−(Rは、上で定義されているC1〜4アルキルを表す)の基を表す。
【0014】
本明細書で使用される用語「エステル」は、式−COOR(Rは、上で定義されているC1〜4アルキルを表す)の基を表す。
【0015】
本明細書で使用される用語「シアノ」は、式−CNの基を表す。
【0016】
本明細書で使用される用語「アシルオキシ」は、式−O−COR(Rは、上で定義されているC1〜4アルキル又はアリール基である)の基を表す。
【0017】
本明細書で使用される用語「アリール」は、1つの水素の除去により芳香族炭化水素から誘導される有機基、例えば、フェニルを表す。
【0018】
本明細書で使用される用語「カルボン酸」は、式−COOHの基を表す。
【0019】
本明細書で使用される用語「アミノ基」は、式−NH、NHR又はNR(R及びRは、本明細書において上で定義されているアルキル基である)の基を表す。
【0020】
本明細書で使用される用語「アミド」は、式−NH−CO−、−NHR又は−NR−CO(R及びRは、本明細書において上で定義されているアルキル基である)の基を意味する。
【0021】
式(III)の化合物は、それらの構造(1)で示される少なくとも1つの立体中心(stereogenic center)を有する。立体中心は、R又はS配置で存在してもよく、前記R及びSの表記は、Pure.Appl.Chem.、45(1976年)11頁〜30頁に記載されている規則に従って使用される。
【0022】
特定の化合物を参照する場合に本明細書で使用される表現「光学的に富む」は、化合物の50%を超え、好ましくは75%を超え、更に好ましくは85%を超え、最も好ましくは94%を超えて、所与の配置(R)又は(S)において(1)で示される立体中心を有することを意味する。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明は、式(III)、
【化3】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルである)の実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンに関する。
【0024】
特定の化合物を参照する場合に本明細書で使用される表現「実質的に光学的に純粋な」は、化合物の少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、更に好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも98%、なお最も好ましくは少なくとも99%が、所与の配置(R)又は(S)において(1)で示される立体中心を有することを意味する。
【0025】
光学的に富む又は実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンは、治療のために使用されてもよい、又は種々の疾患の治療のための医薬の製造のために使用されてもよい2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体の合成のために特に有用である。
【0026】
好ましくは、Rはn−プロピル又はC2〜4アルケニルである。
【0027】
更に好ましくは、Rはn−プロピル又はC2〜4アルケニルであり、前記C2〜4アルケニルは少なくとも1つのハロゲンで置換されている。
【0028】
最も好ましくは、Rはn−プロピル又はCアルケニルであり、前記Cアルケニルは少なくとも1つのハロゲンで置換されている。
【0029】
特定の実施形態では、Rはn−プロピル又はCアルケニルであり、前記Cアルケニルは少なくとも2つのハロゲンで置換されている。
【0030】
最良のRはn−プロピル又は2,2−ジフルオロビニルである。
【0031】
好ましくは、Rがn−プロピルである場合は、式(III)の化合物の少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、更に好ましくは、少なくとも97%、最も好ましくは、少なくとも98%、なお最も好ましくは、少なくとも99%が、配置(R)において(1)で示される立体中心を有する。
【0032】
好ましくは、Rが2,2−ジフルオロビニルである場合は、式(III)の化合物の少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、更に好ましくは、少なくとも97%、最も好ましくは、少なくとも98%、なお最も好ましくは、少なくとも99%が、配置(S)において(1)で示される立体中心を有する。
【0033】
特定の実施形態では、本発明は、式(IIIa):
【化4】


の化合物(R)−4−プロピル−ピロリジン−2−オンに関する。
【0034】
好ましくは、化合物(IIIa)は実質的に光学的に純粋である。
【0035】
その他の特定の実施形態では、本発明は、式(IIIb)の化合物(S)−4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オンに関する。
【0036】
【化5】

【0037】
好ましくは、化合物(IIIa)は実質的に光学的に純粋である。
【0038】
実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オン(IIIa)及び(IIIb)は、それぞれブリバラセタム(I)及びセレトラセタム(II)の合成のために特に有用である。
【0039】
式(III)の実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンは、相当するラセミ体4−置換−ピロリジン−2−オンのキラル分離により得られてもよい。好ましくは、その様なキラル分離は、Daicel Chemical Industries,Ltd.(Japan)から市販されている、CHIRALPAC(登録商標)AD、CHIRALPAC(登録商標)AD−H、CHIRALCEL(登録商標)OD、CHIRALCEL(登録商標)OD−H、CHIRALCEL(登録商標)OJ、CHIRALCEL(登録商標)OJ−H、CHIRALCEL(登録商標)OG、CHIRALCEL(登録商標)OG−H、CHIRALCEL(登録商標)OB−Hからなる群から選択される固定相で達成される。
【0040】
4−置換−ピロリジン−2−オンラセミ体の分離は、種々の溶出溶剤で達成されてもよい。溶出溶剤の例は、アルカン、アルコール及びこれらの混合物である。通常、本発明によれば、これらの溶剤の混合物は、使用されるカラムの型及び分離される4−置換−ピロリジン−2−オンに依存する比で使用される。
【0041】
好ましくは、90/10、85/15又は50/50の比のアルカン/アルコールの混合物が、分離される4−置換−ピロリジン−2−オンによって使用される。更に好ましくは、アルカンは、n−ヘキサン、2−メチル−ペンテン、n−ヘプタン、又はこれらの混合物から選択され、アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール又はこれらの混合物から選択される。アルコールの好ましい混合物は、75/25又は50/50の比のn−プロパノール/エタノール及び75/25又は50/50の比のn−プロパノール/メタノールである。
【0042】
一般的に、溶剤及び固定相の選択は、分離される基体によって当業者には明らかである。
【0043】
或いは、分離工程は、式(III)の所望の実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンを得るためにその後に脱保護される、実質的に光学的に純粋な保護された一般式(IIId)及び(IIIe)の2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体を得るために保護された2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体、例えば、一般式(IIIc)の2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体に生じてもよい。
【0044】
【化6】

【0045】
(IIIc)の分離は、一般的に、50/50の比のアルカン/アルコール混合物、好ましくは50/50の比のヘキサン又はヘプタンとエタノール、イソプロパノール又はn−プロパノールとの混合物、最も好ましくは50/50の比のヘプタン/イソプロパノールの混合物を使用して達成される。
【0046】
脱保護は、当業者に公知の従来の方法により、一般式(IIId)及び(IIIe)の2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体と酸、好ましくはトリフルオロ酢酸との反応により生じてもよい。
【0047】
多数の種々の保護基が使用されてもよく、その選択は当業者には明らかである。
【0048】
4−置換−ピロリジン−2−オンラセミ体は、当業者に公知の従来の方法により、例えば、Gouliaev A.H.、Monster J.B.、Vedso M.、Senning A.、Org.Prep.Proceed.Int.(1995年)、27、273頁〜303頁又はWO2005/054188で公開された国際特許出願において記載されているように調製してもよい。
【0049】
一態様では、本発明は、式(IV)
【化7】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルであり;
は、C1〜4アルキル又はC2〜4アルケニルであり;
Xは、−CONR、−COOR又は−CNであり;
は水素又はC1〜4アルキルであり;
は水素又はC1〜4アルキルであり;
は水素又はC1〜4アルキルである)
の2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体の調製方法であって、式(III)
【化8】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルである)
の光学的に富む4−置換−ピロリジン−2−オンを反応させる工程を含む方法に関する。
【0050】
特定の実施形態では、本発明は、式(IV)
【化9】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルであり;
は、C1〜4アルキル又はC2〜4アルケニルであり;
Xは、−CONR、−COOR又は−CNであり;
は水素又はC1〜4アルキルであり;
は水素又はC1〜4アルキルであり;
は水素又はC1〜4アルキルである)
の2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体の調製方法であって、式(III)、
【化10】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルである)
の光学的に富む4−置換−ピロリジン−2−オンと、式(V)
【化11】


(式中、Rは、C1〜4アルキル又はC2〜4アルケニルであり;
は、−CONR、−COOR又は−CNであり;
は水素又はC1〜4アルキルであり;
は水素又はC1〜4アルキルであり;
は水素又はC1〜4アルキルであり;
Yは、ハロゲン、スルホネート基又は−Nから選択される脱離基である)
の化合物との反応を含む方法に関する。
【0051】
好ましくは、本発明による式(IV)の2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体の調製方法は、式(III)の実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンを反応させる工程を含む。
【0052】
本明細書で使用される「脱離基」と言う用語は、当業者による同じ意味を有し(Advanced Organic Chemistry:reactions、mechanisms and structure−Third Edtion by Jerry March、John Wiley and Sons Ed.;1985年 179頁)、基質分子(substrate molecule)の一部であってそれに結合した基を表し、基質分子が置換反応(例えば、求核原子を伴う)される反応において、脱離基は置き換えられる。
【0053】
本明細書で使用される「スルホネート基」と言う用語は、式−O−SO−R(Rは、本明細書において上で定義されているアルキル又はアリールである)の基を表す。好ましいスルホネート基は、メタンスルホネート、パラ−トルエンスルホネート基又はトリフルオロメタンスルホネートである。
【0054】
式(V)(Yは−Nである)の化合物は、例えば、次の参考文献:J.Chem.Soc.Chem.Commun.1976年、234頁;J.Am.Chem.Soc.1949年、71、1096頁;J.Am.Chem.Soc.1990年、112(17)、6388頁;Helv.Chem.Acta、1963年、46、927頁において記載されている方法により、又は当業者に公知の任意の従来の方法により酸の存在下でNaNOとの反応により、相当するアミノ基からin situ生成されてもよい。
【0055】
化合物(III)と化合物(V)との反応は、溶剤中で塩基の存在下で生じる。好ましい塩基は、水素化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムt−ブトキシド及びカリウムt−ブトキシドからなる群から選択される。
【0056】
好ましい溶剤は、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメトキシエタン及びトルエンからなる群から選択される。
【0057】
反応は、一般的に、0〜25℃の間に含まれる温度で生じる。
【0058】
式(III)の光学的に富む又は実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンと式(V)の化合物との反応により、通常、式(VI)
【化12】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルであり;
は、C1〜4アルキル又はC2〜4アルケニルであり;
は、−CONR、−COOR又は−CNであり;
は水素又はC1〜4アルキルであり;
は水素又はC1〜4アルキルであり;
は水素又はC1〜4アルキルである)
の化合物を得る。
【0059】
本発明による化合物(III)、(IV)、(V)及び(VI)においては、好ましくは、Rはn−プロピル又はC2〜4アルケニルである。更に好ましくは、Rはn−プロピル又はC2〜4アルケニルであり、前記C2〜4アルケニルは少なくとも1つのハロゲンで置換されている。最も好ましくは、Rはn−プロピル又はCアルケニルであり、前記Cアルケニルは少なくとも1つのハロゲンで置換されている。特に、Rはn−プロピル又はCアルケニルであり、前記Cアルケニルは少なくとも2つのハロゲンで置換されている。最良のRはn−プロピル又はジフルオロビニルである。
【0060】
好ましくは、RはC1〜4アルキルである。更に好ましくは、Rはエチルである。
【0061】
好ましくは、Xは−CONRである。
【0062】
好ましくは、Rは水素である。
【0063】
好ましくは、Rは水素である。
【0064】
好ましくは、XはCOORである。
【0065】
好ましくは、RはC1〜4アルキルである。更に好ましくは、Rはメチルである。
【0066】
好ましくは、本発明によれば、Yはハロゲン又はスルホネート基である。更に好ましくは、本発明によれば、Yはハロゲンである。更に好ましくは、本発明によれば、Yは臭素である。
【0067】
光学的に富む又は実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンの使用は、反応過程で発生した2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体(IV)及び(VI)の望ましくない立体異性体の割合を減少させる利点を提供し、これによって全体の方法の生産性を増加する。
【0068】
有利には、本発明による式(IV)
【化13】


(式中、Xは−CONRであり、R及びRは水素である)の2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体の調製方法は、式(VI)
【化14】


(式中、Xは−COORであり、RはC1〜4アルキルである)の化合物のアンモノリシスを更に含む。
【0069】
好ましくは、Rはメチルである。
【0070】
アンモノリシスは、国際特許出願WO03/014080に記載されている条件により、又は当業者に公知の任意のその他の従来の方法により行われてもよい。
【0071】
式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物は、(1)及び(2)で示される、これらの構造において少なくとも2つの立体中心を有する。立体中心は、R又はS配置で存在してもよく、前記R及びSの表記は、Pure.Appl.Chem.、45(1976年)11頁〜30頁に記載されている規則により使用される。
【0072】
式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物は、独立に、ジアステレオ異性体の混合物であってもよい。
【0073】
好ましくは、式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物は、独立に、エピマーの混合物である。
【0074】
本明細書で使用される「エピマー」と言う用語は、ジアステレオ異性体を参照する場合は、2つのジアステレオ異性体が互いに異なる配置において1つの立体中心だけを有するものと定義される。
【0075】
最も好ましくは、式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物は、独立に、立体中心(2)に関するエピマーの混合物である。
【0076】
前記混合物は1に等しい比でエピマーを含んでもよい。有利には、前記混合物は1とは異なる比でエピマーを含む。
【0077】
式(IV)の化合物の好ましいエピマー及び式(VI)の化合物の好ましいエピマーは、(S)配置において立体中心(2)を有するエピマーである。
【0078】
特定の実施形態では、本発明による式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物は、ジアステレオ異性的に富むものである。
【0079】
特定の化合物を参照する場合に本明細書で使用される「ジアステレオ異性的に富む」と言う表現は、化合物の少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、更に好ましくは、少なくとも97%、最も好ましくは、少なくとも98%、なお最も好ましくは、少なくとも99%が、所与の配置(R)又は(S)において(1)で示される立体中心を有すること及び化合物の50%を超え、好ましくは75%を超え、更に好ましくは85%を超え、最も好ましくは94%を超えて、所与の配置(R)又は(S)において(2)で示される立体中心を有することを意味する。
【0080】
更に好ましくは、本発明による式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物は、実質的にジアステレオ異性的に純粋である。
【0081】
特定の化合物を参照する場合に本明細書で使用される「実質的にジアステレオ異性的に純粋」と言う表現は、化合物の少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、更に好ましくは、少なくとも97%、最も好ましくは、少なくとも98%、なお最も好ましくは、少なくとも99%が、所与の配置(R)又は(S)において(1)で示される立体中心を有すること及び化合物の少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、更に好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも98%、なお最も好ましくは、少なくとも99%が、所与の配置(R)又は(S)において(2)で示される立体中心を有することを意味する。
【0082】
アンモノリシスは、式(VI)の化合物のジアステレオ異性体の混合物について、式(VI)の化合物のエピマーの混合物について、式(VI)のジアステレオ異性的に富む化合物について又は式(VI)のジアステレオ異性的に純粋な化合物について行われてもよい。
【0083】
通常、式(VI)のジアステレオ異性的に富む化合物のアンモノリシスにより、式(IV)のジアステレオ異性的に富む化合物を得る。
【0084】
通常、式(VI)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物のアンモノリシスにより、式(IV)のジアステレオ異性的に純粋な化合物を得る。
【0085】
好ましくは、アンモノリシスは式(VI)の化合物のエピマーの混合物で達成される。
【0086】
一般的に、式(IV)の化合物の立体中心(1)の配置及び立体中心(2)の配置は、それぞれ、式(VI)の化合物の立体中心(1)及び立体中心(2)と同じである。
【0087】
式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物及び式(VI)のジアステレオ異性的に純粋な化合物は、当業者に公知の任意の従来の技法により、それぞれ、式(IV)の化合物又は式(VI)の化合物のジアステレオ異性体の混合物の分離により、或いは別法により、それぞれ、式(IV)の化合物又は式(VI)の化合物のエピマーの混合物の分離により得られてもよい。
【0088】
好ましくは、前記分離は、当業者に公知の従来の方法によりアキラル又はキラル固定相を使用して、クロマトグラフィーにより達成される。
【0089】
式(IV)のジアステレオ異性的に富む化合物及び式(VI)のジアステレオ異性的に富む化合物は、当業者に公知の従来の技法により、それぞれ、式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物及び式(VI)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物に転換されてもよい。これは、例えば、当業者に公知の従来の方法による分離又は再結晶化により達成されてもよい。
【0090】
好ましくは、式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物及び式(VI)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物は、それぞれ、式(IV)のジアステレオ異性的に富む化合物及び式(VI)のジアステレオ異性的に富む化合物の分離により得られる。
【0091】
したがって、更なる態様では、本発明による方法は分離工程を含む。
【0092】
式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物の立体中心(1)の配置及び立体中心(2)の配置は同じか異なっていてもよい。式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物の立体中心(2)の好ましい配置は(S)である。
【0093】
最も好ましくは、式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物及び式(VI)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物は、配置(S)において(2)で示される立体中心の少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、更に好ましくは、少なくとも97%、最も好ましくは、少なくとも98%、なお最も好ましくは、少なくとも99%を有する。
【0094】
式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物及び式(VI)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物はエピマー化されて、上記で定義されている式(IV)の化合物又は式(VI)の化合物のエピマーの混合物をそれぞれ得てもよい。前記エピマーの混合物は、式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物又は式(VI)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物を得るために更に分離されてもよい。
【0095】
一般的に、本発明によれば、前記エピマー化によりエピマーの混合物を得る。通常、エピマーの比は100未満、好ましくは3未満、更に好ましくは2未満、最も好ましくは1に等しい。
【0096】
したがって、本発明による方法は、好ましくは、エピマー化工程を更に含む。
【0097】
一般的に、エピマー化は、望ましくない配置における立体中心(2)を有する、式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物又は式(VI)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物において達成される。
【0098】
したがって、好ましくは、エピマー化工程は、立体中心(2)が配置(R)を有する、式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物又は式(VI)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物において達成される。
【0099】
更に好ましくは、前記エピマー化は、立体中心(2)が配置(R)を有する、式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物において達成される。
【0100】
最も好ましくは、前記エピマー化は、立体中心(2)が配置(R)を有する、式(IV)(Xは−CONHである)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物において達成される。
【0101】
前記エピマー化工程は、式(IV)又は式(VI)の望ましくない実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物の再循環を可能にすることができ、これにより工業的規模での廃棄物を減少させ、したがって生産高を増加する。
【0102】
エピマー化は、一般的に、溶剤中で、式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物又は式(VI)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物と塩基との反応により達成される。
【0103】
通常、塩基は、水素化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムt−ブトキシド及びカリウムt−ブトキシドからなる群から選択される。
【0104】
がC2〜4アルケニルである場合、塩基は、好ましくはナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムt−ブトキシド及びカリウムt−ブトキシドである。これらの塩基は、塩基のC2〜4アルケニルへの添加の結果としてもたらされる可能性のある望ましくない副生成物の生成を回避する。
【0105】
驚くべきことに、その様な添加は、例えば、ナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシドを式(IV)の化合物又は式(VI)の化合物(RはC2〜4アルケニル、特に2,2−ジフルオロビニルである)と反応させる場合に生じてもよいことが分かった。
【0106】
好ましい溶剤は、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメトキシエタン及びトルエンからなる群から選択される。更に好ましい溶剤はイソプロパノールである。
【0107】
特定の実施形態では、本発明は、合成中間体として式(III)の光学的に富む4−置換−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0108】
更に特定の実施形態では、本発明は、合成中間体として式(III)の実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0109】
その他の態様では、本発明は、式(IVa)又は(VIa)のジアステレオ異性的に富む化合物の合成のための式(III)の実質的に光学的に純粋な又は光学的に富む4−置換−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0110】
【化15】

【0111】
その他の態様では、本発明は、式(IVb)又は(VIb)のジアステレオ異性的に富む化合物の合成のための式(III)の実質的に光学的に純粋な又は光学的に富む4−置換−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0112】
【化16】

【0113】
化合物(VIa)及び(VIb)において、Rは、本明細書において上で定義されている通りである。
【0114】
特に、本発明は、ブリバラセタム(I)の合成のための4−プロピル−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0115】
好ましくは、本発明は、ブリバラセタム(I)の合成のための、光学的に富む4−プロピル−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0116】
更に好ましくは、本発明は、ブリバラセタム(I)の合成のための、実質的に光学的に純粋な4−プロピル−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0117】
最も好ましくは、本発明は、ブリバラセタム(I)の合成のための、(R)−4−プロピル−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0118】
その他の態様では、本発明は、セレトラセタム(II)の合成のための、4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0119】
好ましくは、本発明は、セレトラセタム(II)の合成のための、光学的に富む4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0120】
更に好ましくは、本発明は、セレトラセタム(II)の合成のための、実質的に光学的に純粋な4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0121】
最も好ましくは、本発明は、セレトラセタム(II)の合成のための、(S)−4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オンの使用に関する。
【0122】
特定の実施形態では、本発明はブリバラセタム(I)
【化17】


の調製方法に関連し、前記方法は、実質的に光学的に純粋な(R)−4−プロピル−ピロリジン−2−オン(IIIa)を反応させる工程を含む。
【0123】
更に特定の実施形態では、本発明は、ブリバラセタム(I)の調製方法に関連し、前記方法は、実質的に光学的に純粋な(R)−4−プロピル−ピロリジン−2−オン(IIIa)と、式(V)、
【化18】


(式中、Yは、ハロゲン、スルホネート基又は−Nから選択される脱離基であり;
はエチルであり;
はCOORであり;
はC1〜4アルキルである)
の化合物との反応を含む。
【0124】
好ましくは、Rはメチルである。
【0125】
好ましくは、本発明によれば、Yはハロゲン又はスルホネート基である。更に好ましくは、本発明によれば、Yはハロゲンである。最も好ましくは、本発明によれば、Yは臭素である。
【0126】
好ましくは、ブリバラセタム(I)の調製方法は、式(VIa)
【化19】


(式中、RはC1〜4アルキルである)
の化合物のアンモノリシスを更に含み、ブリバラセタム(I)及び化合物(VII)
【化20】


の混合物を与える。
【0127】
化合物(VIa)において、Rは好ましくはメチルである。
【0128】
更に好ましくは、ブリバラセタム(I)の調製方法は、ブリバラセタム(I)及び上で定義されている化合物(VII)の分離を更に含む。
【0129】
最も好ましくは、ブリバラセタム(I)の調製方法は、式(VII)の化合物の、ブリバラセタム(I)及び上で定義されている式(VII)の化合物の混合物へのエピマー化を更に含み、前記エピマー化は、その後にその他の分離工程が続く。
【0130】
なお更に好ましい実施形態では、ブリバラセタム(I)の調製方法は、前記エピマー化及び前記その他の分離工程の繰返しを含む。
【0131】
その他の特定の実施形態では、本発明は、セレトラセタム(II)
【化21】


の調製方法に関連し、前記方法は、実質的に光学的に純粋な(S)−4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オン(IIIb)を反応させる工程を含む。
【0132】
更に特定の実施形態では、本発明は、セレトラセタム(II)の調製方法に関連し、前記方法は、実質的に光学的に純粋な(S)−4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オンと、式(V)、
【化22】


(式中、Yは、ハロゲン、スルホネート基及び−Nから選択される脱離基であり;
はエチルであり;
はCOORであり;
はC1〜4アルキルである)
の化合物との反応を含む。
【0133】
好ましくは、Rはメチルである。
【0134】
好ましくは、本発明によれば、Yはハロゲン又はスルホネート基である。更に好ましくは、本発明によれば、Yはハロゲンである。最も好ましくは、本発明によれば、Yは臭素である。
【0135】
好ましくは、セレトラセタム(II)の調製方法は、式(VIb)
【化23】


(式中、RはC1〜4アルキルである)
の化合物のアンモノリシスを更に含み、セレトラセタム(II)及び化合物(VIII)
【化24】


の混合物を与える。
【0136】
化合物(VIb)において、Rは好ましくはメチルである。
【0137】
更に好ましくは、セレトラセタム(II)の調製方法は、セレトラセタム(II)及び上で定義されている式(VIII)の化合物の分離を更に含む。
【0138】
最も好ましくは、セレトラセタム(II)の調製方法は、式(VIII)の化合物の、セレトラセタム(I)及び上で定義されている式(VIII)の化合物の混合物へのエピマー化を更に含み、前記エピマー化は、その後にその他の分離工程が続く。
【0139】
なお更に好ましい実施形態では、セレトラセタム(II)の調製方法は、前記エピマー化及び前記その他の分離工程の繰返しを含む。
【実施例】
【0140】
以下の実施例は例示目的のためにのみ提供され、決して本発明を限定することを意図するものではなく、又はそのように解釈されるべきではない。当業者は、以下の実施例の通常の改変及び変更は本発明の精神又は範囲を逸脱することなく為し得ることを理解する。
【0141】
実施例1及び2の化合物の特徴付けは、以下の技法及び条件を使用して達成される:
NMRスペクトルは、Aspect 3000コンピュータ及び5mmH/13C二重プローブヘッドを備えたBruker AC 250 Fourier Transform NMR分光計又はSG Indigoコンピュータ及び5mmインバースジオメトリーH/13C/15N三重プローブヘッドを備えたBruker DRX 400 FT NMRで記録される。化合物は、313K又は300Kのプローブ温度で、20mg/mlの濃度で、DMSO−d(又はCDCl)溶液で検討される。装置はDMSO−d(又はCDCl)の重水信号を追跡する。化学シフトは、国際標準として採用されているTMSから低磁場側(downfield)でのppmで与えられる。
【0142】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、次のシステムの1つを使用して行われる:
INERTSIL ODS 3 C18、DP 5μm、250x4.6mmカラムを備え付けたAgilent 1100シリーズHPLCシステム。勾配は、100%溶剤A(アセトニトリル、水、HPO(5/95/0.001、v/v/v))〜100%溶剤B(アセトニトリル、水、HPO(95/5/0.001、v/v/v))で、100%Bを4分保持で、6分とした。流量は2.5ml/分に設定される。クロマトグラフィーは35℃で行われる。
【0143】
HPLC Waters Symetry C18、250x4.6mmカラムを備え付けたHP 1090シリーズHPLCシステム。勾配は、100%溶剤A(MeOH、水、HPO(15/85/0.001M、v/v/M))〜100%溶剤B(MeOH、水、HPO(85/15/0.001M、v/v/M))で、100%Bを10分保持で、10分とした。流量は1ml/分に設定される。クロマトグラフィーは40℃で行われる。
【0144】
LC/MS方式での質量分析測定は次の通りに行われる:
HPLC条件
分析は、INERTSIL ODS 3、DP 5μm、250x4.6mmカラムを備え付けた WATERS Alliance HPLCシステムを使用して行われる。
【0145】
勾配は、100%溶剤A(アセトニトリル、水、TFA(10/90/0.1、v/v/v))〜100%溶剤B(アセトニトリル、水、TFA(90/10/0.1、v/v/v))で、100%Bを4分保持で、7分とした。流量は2.5ml/分に設定され、API源の直前に1/25のスプリットが使用される。
【0146】
MS条件
サンプルは、約250μg/mlの濃度で、アセトニトリル/水、70/30、v/vに溶解する。APIスペクトル(+又は−)は、FINNIGAN(San Jose、CA、USA)LCQイオントラップ質量分析計を使用して行われる。APCI源は450℃で、キャピラリーヒーターは160℃で操作した。ESI源は3.5kVで、キャピラリーヒーターは210℃で操作した。
【0147】
DIP/EI方式での質量分析測定は次の通りに行われる:
サンプルは、プローブを5分で50℃から250℃に加熱することにより気化される。EI(電子衝撃)スペクトルは、FINNIGAN(San Jose、CA、USA)TSQ 700タンデム4極質量分析計を使用して記録される。発生源温度は150℃に設定される。
【0148】
GC/MS方式でTSQ 700タンデム4極質量分析計(Finnigan MAT、San Jose、CA、USA)での質量分析測定は、スプリット/スプリットレスインジェクター及びJ&W Scientific(Folsom、CA、USA)のDB−5MS溶融シリカカラム(15m x 0.25mm I.D.、1μm)を備えたガスクロマトグラフのモデル3400(Varian、Walnut Creek、CA、USA)で行われる。ヘリウム(純度99.999%)がキャリヤーガスとして使用される。インジェクター(CTC A200S自動サンプラー)及び移送ラインは、それぞれ、290及び250℃で操作する。サンプル(1μl)はスプリットレス方式で注入され、オーブン温度は次の様にプログラムされる:50℃で5分間、280℃まで上昇し(23℃/分)、10分間保持。TSQ 700分光計は、電子衝撃(EI)又は化学イオン化(CI/CH)方式で操作する(質量範囲33〜800、走査時間1.00秒)。発生源温度は150℃に設定される。
【0149】
比旋光度は、Perkin−Elmer341旋光計で記録される。回転角は、MeOH中の1%溶液で、25℃で記録される。幾つかの分子に対しては、溶解度の問題により溶剤はCHCl又はDMSOである。
【0150】
融点は、Buchi 535又は545 Tottoli−type融解計で決定され、校正はされず、又はPerkin−ElmerDSC 7での開始温度で決定される。
【0151】
分取クロマトグラフ分離は、Novasep軸流圧縮カラム(内径80mm)、70〜150ml/分の流量を使用して、シリカゲル60Merck、粒径15〜40μm、照会番号1.15111.9025で行われる。シリカゲル及び溶剤混合物の量は個々の手順において説明される通り。
【0152】
分取キラルクロマトグラフ分離は、±350ml/分で、低級アルコール及びC〜C直鎖、分枝又は環状アルカンの種々の混合物で、屋内組立て装置を使用してDAICEL CHIRALPAK(登録商標)AD 20μm、100*500mmカラムで行われる。溶剤混合物は個々の手順において説明される通り。
【0153】
実施例3及び4の化合物の特徴付けは、以下の技法及び条件を使用して達成される:
NMRスペクトルは、重水素化クロロホルム(CDCl)中の溶液としてBruker 400MHz分光計で記録される。化学シフトは、テトラメチルシランから低磁場側
での100万分の1(ppm、δ)で表示され、重水素化溶剤(CDCl)に対して参照される。
【0154】
H NMRデータは、化学シフト、多重度(s、一重項;d、二重項;t、三重項;q、四重項;m、多重項;app、見掛け及び/又は多重共鳴)、ヘルツ(Hz)でのカップリング定数(J)及びプロトン数の順番で報告された。
【0155】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)スペクトルは、Sunfire C18(3.5μm 2.1x150mm)カラムを装着したAlliance Waters 2695で記録される。GRAD90/10は、勾配を、10分で、開始溶剤組成物(溶剤A(HO、80% v/v)、溶剤B(CHCN、10% v/v)及び溶剤C(HO+1%HPO v/v、10% v/v)〜最終溶剤組成物(溶剤A(HO、0% v/v)、溶剤B(CHCN、90% v/v)及び溶剤C(HO+1%HPO v/v、10% v/v))とした勾配方法であり、開始溶剤組成物において5分の再平衡期間が続く。溶離液の組成が、溶剤A(HO+1%HPO v/v、80% v/v)及び溶剤B(CHCN+1%HPO v/v、20% v/v)である定組成法におけるISO80。溶離液の組成が、溶剤A(HO+1%HPO v/v、85% v/v)及び溶剤B(CHCN+1%HPO v/v、15% v/v)である定組成法におけるISO85。
【0156】
ガスクロマトグラフィースペクトルは、Altech GC DB−5MS(15m x 0.25mm)カラムを備えたAgilent 6890シリーズで記録される。
【0157】
質量分析法(MS):APIスペクトルは、FINNIGAN(San Jose、CA、USA)LCQイオントラップ質量分析計を使用して行われた。APCI源は450℃で、キャピラリーヒーターは160℃で操作した。ESI源は3.5kVで、キャピラリーヒーターは210℃で操作した。
【0158】
融点は、DSC Perkin−Elmer Pyris 1で記録される。
【0159】
(実施例1)
実質的に光学的に純粋な(R)−及び(S)−4−プロピル−ピロリジン−2−オン(IIIa)及び(IIIg)の合成
1.a.3−ニトロメチル−ヘキサン酸エチルエステル(B)の合成
【化25】

【0160】
0℃に冷却したニトロメタン(858ml、15.822モル、5当量)中のヘキス−2−エン酸エチルエステル(A)(450g、3.164モル、1当量)の撹拌溶液に、窒素下で、481.8g(3.164モル、1当量)の1.8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)を滴状添加する。反応混合物を室温で3時間反応させ、6M塩化水素水溶液で急冷してpH=4とする。溶液をジエチルエーテルで抽出する(500ml+2x300ml)。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して油状残渣(672.13g、HPLC純度=78.9%)を得、これをジクロロメタンで溶出する液体クロマトグラフィーで精製する。639.41gの3−ニトロメチル−ヘキサン酸エチルエステル(B)を得る(収率=99.4%)。
GC/MS:MH=204
【0161】
1.b.4−プロピル−ピロリジン−2−オン(C)の合成
【化26】

【0162】
300g(1.476モル)の3−ニトロメチル−ヘキサン酸エチルエステル(B)をメタノール(500ml)で希釈する。この混合物を1Lのオートクレーブに移す。反応混合物を、55℃で、50barの水素圧下で28時間反応させる。触媒をセライト(celite)で濾過し、メタノールで洗浄する。濾液を500mlのジクロロメタンと一緒に回収する。次いで、溶液を水で抽出する(2x400ml)。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して油状残渣(177.12g、HPLC純度=82.6%)を得、これを蒸留(110℃、7.10−2mbar)で精製する。147.82gの(C)を得る(収率=78.7%)。
GC/MS:M=127
【化27】

【0163】
1.c.実質的に光学的に純粋な(R)及び(S)−4−プロピル−ピロリジン−2−オン(IIIa)及び(IIIg)の合成
【化28】

【0164】
343gの4−プロピル−ピロリジン−2−オン(C)を、プロパノール8%、エタノール2%、ヘキサン90%、DEA0.1%で溶出するCHIRALPAK(登録商標)ADカラム(100x500mm)での液体クロマトグラフィーにより分離する。
【0165】
キラルHPLC(溶剤混合物:n−プロパノール/エタノール:80/20)
(IIIg):保持時間=6.65分
(IIIa):保持時間=7.81分
150.4gの(IIIg)が単離される(収率=43%)
146.0gの(IIIa)が単離される(収率=42.5%)
式(IIIa)の化合物の[α]=+2.33°
式(IIIg)の化合物の[α]=−2.16°
【0166】
(実施例2)
実質的に光学的に純粋な(S)及び(R)−4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)ピロリジン−2−オン(IIIb)及び(IIIf)の合成
2.a.トルエン−4−スルホン酸−4,4,4−トリフルオロ−ブト−2−エニルエステル(E)の合成
【化29】

【0167】
水(2L)中の水酸化ナトリウム(524g、13.1モル)及びベンジルトリエチルアンモニウムブロミド(88g、0.32モル)の溶液を、トルエン(2.8L)中の酢酸−4,4,4−トルフルオロブト−2−エニル−エステル(D)(882g、5.25モル)の撹拌溶液に室温で添加する。
【0168】
反応混合物をGCでモニターし、室温で一晩中撹拌する。トルエン(3L)中のp−トルエンスルホニルクロライド(950g、4.98モル)の溶液を、温度が25℃より下に維持される様な速度でゆっくりと滴状添加する。
【0169】
反応混合物を室温で4時間撹拌し、水で洗浄する。有機層を無水MgSOで乾燥し、乾固まで濃縮し、1380gの(E)を得る(収率=94%)。
GC/MS:M280
【0170】
2.b.(2,4−ジメトキシ−ベンジル)−4,4,4−(トリフルオロ−ブト−2−エニ)−アミン(F)の合成
【化30】

【0171】
トルエン(2L)中のトルエン−4−スルホン酸−4,4,4−トリフルオロ−ブト−2−エニルエステル(E)(642g、2.29モル)の溶液を、トルエン(4L)中の2,4−ジメトキシ−ベンジルアミン(401g、2.40モル)及び炭酸カリウム(700g、5.06モル)の撹拌反応混合物に65℃でゆっくりと添加する。混合物を65℃で一晩中撹拌し、HCl溶液で抽出する(2x5L、1N)。
【0172】
トルエン(4x7L)で洗浄した酸水性層に、pH>8がこの層で測定されるまで炭酸カリウムを添加する。この層をトルエン(2x7L)で抽出する。
【0173】
有機層を無水MgSOで乾燥し、濃縮して、495gの(F)を得る(収率=78%)。
LC/MS:MH=276
【0174】
2.c.N−(2,4−ジメトキシ−ベンジル)−N−(4,4,4−トリフルオロ−ブト−2−エニル)−マロンアミド酸メチルエステル(G)の合成
【化31】

【0175】
濃硫酸(344g、3.5モル)を、0℃で、アセトニトリル(7L)中のカリウムモノエチルマロネート(695g、4.08モル)に滴状添加する。溶液を0℃で30分間撹拌する。N,N′−カルボニルジイミダゾール(659g、4.06モル)を、0℃で反応混合物に添加する。混合物を、0℃で30分間撹拌し、(F)(625g、2.27モル)を添加する。0℃で30分後に、不溶沈殿物を濾過により除去する。濾液を乾固まで濃縮する。残渣にトルエンを添加し、この溶液を水及びHCl溶液(1N)で洗浄する。有機層を無水MgSOで乾燥し、濃縮して、888gの(G)を得る(収率=100%)。
LC/MS:MH=376
【0176】
2.d.4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−1−(2,4−ジメトキシ−ベンジル)−2−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エチルエステル(H)の合成
【化32】

【0177】
ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド(92g、1.04モル)及び炭酸カリウム(188g、1.36モル)を、アセトン(4L)中の(G)(779g、2.00モル)の撹拌還流溶液に添加する。
【0178】
4時間後、200gの炭酸カリウムを添加する。反応混合物を撹拌し、一晩中還流する。200gの炭酸カリウムを2回(4時間毎に)添加する。不溶沈殿物を濾過により除去する。濾液を無水MgSOで乾燥し、濃縮して、748gの(H)を得る。生成物は、そのまま次の反応で使用する。
LC/MS:MH=370(2つのピーク)
【0179】
2.e.4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−1−(2,4−ジメトキシ−ベンジル)−2−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸(K)の合成
【化33】

【0180】
水(4L)中の炭酸カリウム(581g、4.20モル)の溶液を、メタノール(1L)中の(H)の撹拌還流溶液に添加する。混合物を18時間撹拌し、トルエンで洗浄し(2x5L)、濃HCl(750mL)でpH<2まで酸性化する。水性層を酢酸エチルで抽出する。この有機層を水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、濃縮して、615gの(K)を得る(収率=89%)。
LC/MS:MH=342(2つのピーク)
【0181】
2.f.4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−1−(2,4−ジメトキシ−ベンジル)ピロリジン−2−オン(IIIc)の合成
【化34】

【0182】
メチルイソブチルケトン(MIBK−5L)中の(K)の懸濁液を、116℃で一晩中加熱する。溶剤を蒸発して、564gの(IIIc)を得る。生成物は、更なる精製なしで次の反応に使用する。
LC/MS:MH=298
【化35】

【0183】
2.g.(R)−4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−1−(2,4−ジメトキシ−ベンジル)−ピロリジン−2−オン(IIId)及び(S)−4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−1−(2,4−ジメトキシ−ベンジル)−ピロリジン−2−オン(IIIe)の合成
【化36】

【0184】
(IIId)及び(IIIe)は、カラムCHIRALPAK(登録商標)AS−H(溶出溶剤としてi−PrOH50%−ヘプタン50%の混合物)での液体クロマトグラフィーによる(IIIc)の分離により得られる。
キラルHPLC:(IIId):保持時間=14.65分;[α]:+4.37°
(IIIe):保持時間=22.56分;[α]:−3.76°
【0185】
2.h.実質的に光学的に純粋な(S)−4−(ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オン(IIIb)の合成
【化37】

【0186】
21.69g(73ミリモル)の(IIIe)を、100mlのトリフルオロ酢酸(TFA)中で、80℃で1時間還流する。次いで、反応混合物を、窒素流下で室温まで冷却する。溶剤を減圧下で除去する。残渣を水(250ml)中に注ぎ、pH=8が得られるまで炭酸水素ナトリウムで急冷する。得られた不均質混合物を濾過し、水性相をジクロロメタンで抽出する(4x250ml)。得られた有機相をMgSOで乾燥し、濾過し、揮発分を減圧下で除去する。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤としてジクロロメタン/メタノール 98.5/1.5)を使用して精製し、6.2g(収率=58%)の(IIIb)を得る。
【化38】


(IIIb):保持時間=8.9分;[α]=−6.51°
【0187】
2.i.実質的に光学的に純粋な(R)−4−(ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オン(IIIf)の合成
【化39】

【0188】
21.42g(72ミリモル)の(IIId)を、100mlのトリフルオロ酢酸(TFA)中で、80℃で1時間還流する。次いで、反応混合物を、窒素流下で室温まで冷却する。溶剤を減圧下で除去する。残渣を水(250ml)中に注ぎ、pH=8が得られるまで炭酸水素ナトリウムで急冷する。得られた不均質混合物を濾過し、水性相をジクロロメタンで抽出する(4x250ml)。得られた有機相をMgSOで乾燥し、濾過し、揮発分を減圧下で除去する。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤としてジクロロメタン/メタノール 98.5/1.5)を使用して精製し、7.5g(収率=72%)の(IIIf)を得る。
【化40】


(IIIf):保持時間=10.1分;[α]=+6.64°
【0189】
(実施例3)
ブリバラセタム(I)の合成
3.a.(S)及び(R)2−((R)−2−オキソ−4−プロピル−ピロリジン−1−イル)−酪酸メチルエステル(VIaa)及び(VIab)の合成
【化41】

【0190】
テトラヒドロフラン(30mL)中の、鉱油(0.94g、23.4ミリモル)中の60%水素化ナトリウム懸濁液のスラリーを、窒素雰囲気下で0℃に冷却する。テトラヒドロフラン(2mL)中の実質的に光学的に純粋な(R)−4−プロピル−ピロリジン−2−オン(IIIa)(2g、15.7ミリモル)の溶液を15分間にわたり添加する。反応混合物を0℃で10分撹拌し、次いで、テトラヒドロフラン(2mL)中のメチル−2−ブロモ−酪酸メチルエステル(V)(3.69g、20.4ミリモル)の溶液を20分間にわたり添加する。反応混合物を、出発物質の最大転換まで0℃で撹拌し、次いで、反応混合物を室温まで加温し、水(20mL)で希釈する。テトラヒドロフランを蒸発により除去し、残渣を酢酸イソプロピルで抽出する(20ml+10mL)。一緒にした有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発して3g(13.2ミリモル、86%)の化合物(VIa)のエピマーの混合物を、それぞれエピマー(VIaa)及び(VIab)の混合物として得る。
【化42】


エピマー(VIaa)及び(VIab)の混合物のHPLC(GRAD 90/10):保持時間=9.84分(100%)
エピマー(VIaa)及び(VIab)の混合物のGC:保持時間=13.33分(98.9%)
エピマー(VIaa)及び(VIab)の混合物のMS(ESI):228MH+
【0191】
3.b.(VIaa)及び(VIab)の混合物の化合物のアンモノリシス
【化43】

【0192】
0℃の水性アンモニア50%w/w(18mL)中の、先の反応工程で得られた(VIaa)及び(VIab)(1.46g、6.4ミリモル)の溶液を、室温で5.5時間撹拌する。反応中に現れる白色沈殿物を濾過し、水で洗浄し、乾燥して、0.77g(3.6ミリモル、収率=56%)の、1:1比のブリバラセタム(I)及び化合物(VII)の混合物である白色固体を得る。
【0193】
【化44】


(I)及び(VII)の混合物のHPLC(GRAD 90/10);保持時間=7.67分(100%)
(I)及び(VII)の混合物の融点=104.9℃(10℃/分で40℃〜120℃まで加熱)
【0194】
化合物(I)及び(VII)は、当業者に公知の従来の技法により分離される。一般的な分取分離は、11.7gの規模の化合物(I)及び(VII)の1:1混合物:DAICEL CHIRALPAK(登録商標)AD 20μm、100*500mmカラム、30℃で300ml/分の受け入れ、50%EtOH−50%ヘプタンで行われる。この分離で、5.28g(45%)の化合物(VII)、保持時間=14分及び5.20g(44%)の化合物(I)、保持時間=23分を得る。
【化45】


化合物(I)のHPLC(GRAD 90/10);保持時間=7.78分
【化46】

【0195】
3c.(2R)−2−((R)−2−オキソ−4−プロピル−ピロリジン−1−イル)−ブチルアミド(VII)の化合物のエピマー化
化合物(VII)(200mg、0.94ミリモル)を、室温で、イソプロパノール(2mL)中のナトリウムt−ブトキシド(20mg、10%w/w)の溶液に添加する。反応混合物を室温で18時間撹拌する。溶剤を蒸発して200mg(0.94ミリモル、100%)の白色固体を得る。前記白色固体は、49.3/50.7の比のブリバラセタム(I)及び(VII)の混合物である。
HPLC(ISO80):保持時間=7.45分(49.3%)ブリバラセタム(I);保持時間=8.02分(50.7%)化合物(VII)。
【0196】
(実施例4)
セレトラセタム(II)の合成
4.a.(S)及び(R)2−[(S)−4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−2−オキソ−ピロリジン−1−イル]−酪酸メチルエステル(VIba)及び(VIbb)の合成
【化47】

【0197】
テトラヒドロフラン(28mL)中の、鉱油(0.80g、20.4ミリモル)中の60%水素化ナトリウム懸濁液のスラリーを、窒素雰囲気下で0℃に冷却する。テトラヒドロフラン(8mL)中の実質的に光学的に純粋な(S)−4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オン(IIIb)(2g、13.6ミリモル)の溶液を30分間にわたり添加する。反応混合物を0℃で10分撹拌し、次いで、テトラヒドロフラン(2mL)中の2−ブロモ−酪酸メチルエステル(V)(3.20g、17.6ミリモル)の溶液を15分間にわたり添加する。反応混合物を、0℃で4.5時間撹拌し、次いで、反応混合物を室温まで加温し、水(15mL)で希釈する。テトラヒドロフランを蒸発により除去し、残渣を酢酸イソプロピルで抽出する(2x10mL)。一緒にした有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発して3g(12.1ミリモル、89%)の化合物(VIb)を、それぞれエピマー(VIba)及びエピマー(VIbb)の混合物として得る。
【化48】


エピマー(VIba)及び(VIbb)の混合物のHPLC(GRAD 90/10):保持時間=9.07分(99.1%)
エピマー(VIba)及び(VIbb)の混合物のGC:保持時間=13.33分(98.9%)
エピマー(VIba)及び(VIbb)の混合物のMS(APCI):248MH+
【0198】
4.b.(VIba)及び(VIbb)の混合物のアンモノリシス
【化49】

【0199】
0℃の水性アンモニア50%w/w(3mL)中の、先の反応工程で得られた(VIba)及び(VIbb)(1.8g、7.3ミリモル)の溶液を、室温で6.5時間撹拌する。反応中に現れた白色沈殿物を濾過し、水で洗浄し、乾燥して、1.0g(4.3ミリモル、59%)の、1:1比のセレトラセタム(II)及び化合物(VIII)の混合物である白色固体を得る。
【化50】


(II)及び(VIII)の混合物の融点=132.6℃(10℃/分で35℃〜220℃まで加熱)
【0200】
化合物(II)及び(VIII)は、当業者に公知の従来の技法により分離される。一般的な分取分離は、7.4gの規模の化合物(II)及び(VIII)の1:1混合物:DAICEL CHIRALPAK(登録商標)AD 20μm、100*500mmカラム、30℃で300ml/分の受け入れ、50%EtOH−50%ヘプタンで行われる。この分離で、3.70g(50%)の化合物(VIII)、保持時間=20分及び3.65g(49%)の化合物(II)、保持時間=31分を得る。
【化51】

【0201】
4c.式(VIII)の化合物のエピマー化
式(VIII)の化合物(500mg、2.16ミリモル)を、室温で、イソプロパノール(5mL)中のナトリウムt−ブトキシド(50mg、10%w/w)の溶液に添加する。反応混合物を室温で6時間撹拌し、白色沈殿物が反応中に現れる。スラリーを5℃まで冷却し、5℃で30分間撹拌する。沈殿物を濾過し、乾燥して、150mg(0.65ミリモル、30%)の白色固体を得る。前記白色固体は、47.9/52.1の比のセレトラセタム(II)及び化合物(VIII)の混合物である。
HPLC(ISO85):保持時間=7.66分(52.1%)化合物(VIII);保持時間=8.23分(47.9%)セレトラセタム(II)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)の光学的に富む4−置換−ピロリジン−2−オン
【化1】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルである)。
【請求項2】
式(III)の実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オン
【化2】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルである)。
【請求項3】
がn−プロピルである、請求項1又は2に記載の式(III)の4−置換−ピロリジン−2−オン。
【請求項4】
が2,2−ジフルオロビニルである、請求項2に記載の式(III)の4−置換−ピロリジン−2−オン。
【請求項5】
立体中心(1)が配置(R)を有する、請求項3に記載の式(III)の4−置換−ピロリジン−2−オン。
【請求項6】
立体中心(1)が配置(S)を有する、請求項4に記載の式(III)の4−置換−ピロリジン−2−オン。
【請求項7】
式(IIIa)の化合物(R)−4−プロピル−ピロリジン−2−オン。
【化3】

【請求項8】
式(IIIb)の化合物(S)−4−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−ピロリジン−2−オン。
【化4】

【請求項9】
実質的に光学的に純粋な、請求項7又は請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
式(IV)
【化5】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルであり、
は、C1〜4アルキル又はC2〜4アルケニルであり、
Xは、−CONR、−COOR又は−CNであり、
は水素又はC1〜4アルキルであり、
は水素又はC1〜4アルキルであり、
は水素又はC1〜4アルキルである)の2−オキソ−ピロリジン−1−イル誘導体の調製方法であって、式(III)
【化6】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルである)
の光学的に富む4−置換−ピロリジン−2−オンを反応させる工程を含む方法。
【請求項11】
式(III)の4−置換−ピロリジン−2−オンが実質的に光学的に純粋である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式(III)の4−置換−ピロリジン−2−オンを、式(V)
【化7】


(式中、RはC1〜4アルキル又はC2〜4アルケニルであり、
は、−CONR、−COOR又は−CNであり、
は水素又はC1〜4アルキルであり、
は水素又はC1〜4アルキルであり、
は水素又はC1〜4アルキルであり、
Yは、ハロゲン、スルホネート基又は−Nから選択される脱離基である)
の化合物と反応させる、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(III)の化合物と化合物(V)との反応が、式(VI)
【化8】


(式中、Rはエチル、n−プロピル、少なくとも1つのハロゲンで置換されたC1〜3アルキル又はC2〜4アルケニルであり、
は、C1〜4アルキル又はC2〜4アルケニルであり、
は、−CONR、−COOR又は−CNであり、
は水素又はC1〜4アルキルであり、
は水素又はC1〜4アルキルであり、
は水素又はC1〜4アルキルである)
の化合物を与える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
がn−プロピルである、請求項10から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
が2,2−ジフルオロビニルである、請求項10から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
Xが−CONRである、請求項10から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
及びRが、独立に、水素である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
が−COORである、請求項13から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
がC1〜4アルキルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式(VI)の化合物のアンモノリシスを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物が、独立に、エピマーの混合物である、請求項10から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物が、立体中心(2)に関するエピマーの混合物である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エピマーの混合物が、1に等しい比でエピマーを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物が、独立に、ジアステレオ異性的に富む、請求項10から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
式(IV)の化合物及び式(VI)の化合物が、独立に、実質的にジアステレオ異性的に純粋である、請求項10から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
式(IV)の化合物のエピマーの混合物の分離を含む、請求項25に記載の式(IV)の実質的にジアステレオ異性的に純粋な化合物の調製方法。
【請求項27】
式(IV)の化合物のエピマーの混合物を得るために、式(IV)の化合物のエピマー化を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
エピマー化される式(IV)の化合物の立体中心(2)が配置(R)にある、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
分離工程及びエピマー化工程の繰返しを含む、請求項27及び請求項28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ブリバラセタム(I)
【化9】


の調製方法であって、実質的に光学的に純粋な(R)−4−プロピル−ピロリジン−2−オン(IIIa)と、式(V)
【化10】


(式中、Yはハロゲン、スルホネート基又は−Nから選択される脱離基であり、
はエチルであり、
はCOORであり、
はC1〜4アルキルである)の化合物とを反応させる工程を含む方法。
【請求項31】
式(VII)
【化11】


の化合物のエピマー化を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
セレトラセタム(II)
【化12】


の調製方法であって、実質的に光学的に純粋な(S)−4−(2,2−ジフルオロビニル)−ピロリジン−2−オン(IIIb)と、式(V)
【化13】


(式中、Yはハロゲン、スルホネート基又は−Nから選択される脱離基であり、Rはエチルであり、XはCOORであり、RはC1〜4アルキルである)
の化合物とを反応させる工程を含む方法。
【請求項33】
式(VIII)の化合物のエピマー化を含む、請求項32に記載の方法。
【化14】

【請求項34】
Yがハロゲンである、請求項12から33までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
Yが臭素である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
合成中間体としての、式(III)の光学的に富む4−置換−ピロリジン−2−オンの使用。
【請求項37】
合成中間体としての、式(III)の実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンの使用。
【請求項38】
式(IVa)のジアステレオ異性的に富む化合物の合成のための、式(III)の実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンの使用。
【化15】

【請求項39】
式(IVb)のジアステレオ異性的に富む化合物の合成のための、式(III)の実質的に光学的に純粋な4−置換−ピロリジン−2−オンの使用。
【化16】




【公表番号】特表2009−507870(P2009−507870A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530400(P2008−530400)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008852
【国際公開番号】WO2007/031263
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】