説明

5−HT7受容体拮抗薬

本発明は、5-HT7受容体に対して薬理活性を有する化合物、更に詳細には幾つかの2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン置換スルホンアミド化合物、上記化合物の製造方法、上記化合物を含んでなる医薬組成物、およびCNS障害のような5-HTが関与する疾患の治療、および/または予防のためのそれらの使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、5-HT7受容体に対して薬理活性を有する化合物、更に詳細には幾つかの2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン置換スルホンアミド化合物、上記化合物の調製方法、上記化合物を含んでなる医薬組成物、および治療法における、詳細にはCNS障害のような5-HT7が関与する疾患の治療および/または予防のためのそれらの使用に関する。
【0002】
発明の背景
新規治療剤の探求は、標的疾患に関連したタンパク質および他の生体分子の構造を一層詳細に理解することによって近年大幅に促進されてきた。広汎な研究の主題となってきたタンパク質の一つの重要な種類は、5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン, 5-HT)受容体の群である。1993年に発見された5-HT7受容体はこの群に属しており、重要な新薬の標的として大いに関心を集めてきた(Terron, J.A. Idrugs, 1998, vol. 1, no. 3, pages 302-310: “The 5HT7 receptor: A target for novel therapeutic avenues?”)。
【0003】
5-HT7受容体は、ラット、マウス、モルモット、およびヒトcDNAからクローニングされており、高度な種間相同性(約95%)を示すが、その配列は他の5-HT受容体とは相同性が低い(40%未満)という点において特有のものである。その発現形態、詳細には中枢神経系(CNS)(視床下部(詳細には、視交叉上核)および視床において最高)および他の末梢組織(脾臓、腎臓、腸、心臓、および冠状動脈)の構造は、5-HT7受容体が様々な機能および病理に関係していることを示している。この考えは、三環性抗鬱薬、定型および非定型抗精神病薬、および幾つかの5-HT2受容体拮抗薬のような数種類の治療薬は、組換えおよび機能的な5-HT7受容体のいずれに対しても中-高親和性を示すという事実によって補強される。
【0004】
機能的には、5-HT7受容体は、哺乳類における概日リズムの調節に関係している(Lovenberg, T.W. et al. Neuron, 1993, 11:449-458 “A novel adenylyl cyclase-activating serotonin receptor (5-HT7) implicated in the regulation of circadian rhythms”)。概日リズムの崩壊は、とりわけ鬱病、季節性情動障害、睡眠障害、交代勤務従業員症候群、および時差ぼけなど多数のCNS障害に関係していることが知られている。
【0005】
分布および初期薬理学データも、5-HT7受容体が血管拡張に関与していることを示唆している。これは、イン・ビボにおいて明らかにされている(Terron, J.A., Br J Pharmacol, 1997, 121:563-571 “Role of 5-HT7 receptors in the long lasting hypotensive response induced by 5-hydroxytryptamine in the rat”)。従って、選択的な5-HT7受容体作動薬は、新規な高血圧薬としての潜在能力を有する。
【0006】
5-HT7受容体は、脳血管の平滑筋弛緩による片頭痛の病態生理学とも関係していた(Schoeffter, P. et al., 1996, Br J Pharmacol, 117:993-994; Terron, J.A., 2002, Eur. J. Pharmacol, 439:1-11 “Is the 5-HT7 receptor involved in the pathogenesis and prophylactic treatment of migraine?”)。同様に、腸および結腸組織平滑筋弛緩における5-HT7の関与により、この受容体が過敏性腸症候群の標的となっている(De Ponti, F. et al., 2001, Drugs, 61:317-332 “Irritable bowel syndrome. New agents targeting serotonin receptor subtypes”)。最近、これは尿失禁にも関係づけられている(British J. of Pharmacology, Sept. 2003, 140(1) 53-60: “Evidence for the involvement of central 5HT-7 receptors in the micurition reflex in anaesthetized female rats”)。
【0007】
5HT7受容体の作動薬または拮抗薬の潜在的な治療への応用を考慮して、選択的リガンドを見出すことに大きな努力が払われてきた。この分野における集中的な研究努力にも拘わらず、選択的5-HT7拮抗薬活性を有する化合物はごく僅かしか報告されていない(Wesolowska, A., Polish J. Pharmacol., 2002, 54:327-341, “In the search for selective ligands of 5-HT5, 5-HT6 and 5-HT7 serotonin receptors”)。
【0008】
WO97/48681号にはスルホンアミド誘導体が開示されており、これはCNS障害の治療のための5-HT7受容体拮抗薬である。硫黄原子は、芳香族基およびN含有ヘテロ環状基であって、場合によって酸素または硫黄から選択される更なるヘテロ原子を含むものに連結している。
【0009】
WO97/29097号には、5-HT7受容体の拮抗作用において有益である、障害の治療のためのスルホンアミド誘導体が記載されている。硫黄原子は、芳香族基およびC1-C6アルキル置換N原子に連結している。
【0010】
WO97/49695号には、更に硫黄原子に結合したNも完全に置換されており、例えばピペリジンの一部を形成しているスルホンアミド誘導体も記載されている。
【0011】
WO03/048118号には、5HT7受容体拮抗薬のもう一つの群が記載されている。この文献には、アリールおよびヘテロアリールスルホンアミド誘導体であって、スルホンアミド基が更にアミノ置換基を有するシクロアルカンまたはシクロアルケン環上の置換基であるものが記載されている。硫黄原子に結合したNは、完全に置換されている。
【0012】
WO99/24022号には、CNS障害に対して用い、かつセロトニン受容体、詳細には5-HT7に結合するためのテトラヒドロイソキノリン誘導体が開示されている。
【0013】
WO00/00472号には、5-HT7受容体拮抗薬である化合物について言及されている。この化合物は、テトラヒドロイソキノリンのようなN含有縮合ヘテロ環を含む。
【0014】
欧州特許第21580号および欧州特許第76072号には、抗不整脈活性を有し、式R2N(CH2)n-NH-SO2R1に対応するスルホンアミド化合物が記載されているが、5-HT7活性は述べられていない。
【0015】
欧州特許第937715 A1号には、セロトニン受容体サブタイプ5-HT2と比較して5-HT7に選択的に結合するテトラヒドロベンゾインドール化合物に言及されている。
【0016】
それにも拘わらず、受容体5-HT7に対して効果的かつ選択的な薬理活性を有し、良好な「ドラッグアビリティー(drugability)」特性、すなわち投与、分布、代謝、および排泄に関して良好な薬学特性を有する化合物を見出すことが求められている。
【発明の概要】
【0017】
本発明者らは、5-HT7受容体の特に選択的な阻害剤である構造的に独特な種類のスルホンアミド化合物の群を見出した。これらの化合物は、アルキレン直鎖を介してスルホンアミド残基と連結した2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン残基を示す。本発明者らは、これらの化合物のIC-50値がヒト5-HT7受容体においては1-200nMのnM範囲であり、5-HT1A、5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、5-HT3、5-HT4、5-HT5A、D1、D2、D3、D4、アドレナリン作動性α1A、α1B、α1B、β1、およびβ2受容体と比較してこれらの受容体に対して選択性を示すことを見出した。
【0018】
一つの態様においては、本発明は、下記式Iの化合物、その薬学上許容可能な塩、その異性体、そのプロドラッグ、またはその溶媒和物に関する:
【化1】

(上記式中、
Wは、置換または未置換アルキル、置換または未置換アルケニル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロシクリルであり、
R1、R2、R3、R4、R4B、R5、R5B、R6、およびR7は、それぞれ独立して水素、置換または未置換アルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アルケニル、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロシクリル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-HC=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9、またはハロゲンによって形成される群から選択され、
Lは、水素、置換または未置換アルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アルケニル、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロシクリル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-HC=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、または-N=CR8R9であり、R4とR4Bとの対またはR5とR5Bとの対は一緒になってカルボニル基を形成してもよく、
tは、1、2、または3であり、
R8およびR9は、それぞれ独立して水素、置換または未置換アルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アルケニル、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロシクリル、置換または未置換アルコキシ、置換または未置換アリールオキシ、ハロゲンから選択され、
nは、2、3、4、または5である)。
【0019】
もう一つの態様においては、本発明は、上記において定義した通りの化合物、その薬学上許容可能な塩、その鏡像異性体、そのプロドラッグ、またはその溶媒和物、および薬学上許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルを含んでなる医薬組成物に関する。
【0020】
更にもう一つの態様においては、本発明は、5-HT7依存性疾患または疾病、すなわち痛み、睡眠障害、交代勤務従業員症候群、時差ぼけ、鬱病、季節性情動障害、片頭痛、不安、精神病、統合失調症、認知および記憶障害、虚血事象から生じる神経変性、高血圧のような循環器疾患、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、痙攣性結腸、または尿失禁のような中枢および末梢セロトニン制御機能の機能不全によって引き起こされる疾患の治療のための薬剤の製造における上記において定義した通りの化合物の使用に関する。
【発明の具体的説明】
【0021】
本発明の典型的化合物は、5-HT1A、5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、5-HT3、5-HT4、5-HT5A、D1、D2、D3、D4、アドレナリン作動性α1A、α1B、α1B、β1、およびβ2受容体のような他の5-HT受容体、タキキニンNK-1鎮静剤(opiate)、GABA、エストロゲン、グルタメート、アデノシン、ニコチン、ムスカリン受容体、並びにカルシウム、カリウム、およびナトリウムチャンネル、並びに神経伝達物質輸送体(セロトニン、ドパミン、ノルエピネフリン、GABA)と比較して5-HT7受容体を効果的かつ選択的に阻害する。
【0022】
式(I)の化合物の上記定義において、下記の用語は下記の意味を有する。
【0023】
「アルキル」は、炭素原子および水素原子からなり、不飽和を含まず、1-8個の炭素原子を有し、単結合によって分子の残りに結合している直鎖状または分岐鎖状炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルなどを表す。アルキル基は、場合によってアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、シアノ、カルボニル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプト、アルキルチオなどの1個以上の置換基によって置換されていてもよい。アリールによって置換されると、ベンジルおよびフェネチルのような「アラルキル」基が得られる。
【0024】
「アルケニル」は、少なくとも2個のC原子を有し、かつ1個以上の不飽和結合を有するアルキル基を表す。
【0025】
「シクロアルキル」は、安定な3-10員の単環または二環性基であって、飽和または部分的に飽和しており、シクロヘキシルまたはアダマンチルのような炭素原子と水素原子のみからなるものを表す。本明細書において特に断らない限り、「シクロアルキル」という用語は場合によってアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニルなどのような1個以上の置換基によって置換されているシクロアルキル基を包含することを意味する。
【0026】
「アリール」は、非縮合および/または縮合したアリール基を含む多環基を包含する単環および多環基を表す。典型的なアリール基は、1-3個の非縮合または縮合環と、6-約18個の炭素環原子とを含み、例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、フェナントリル、またはアントラシル基である。アリール基は、場合によってヒドロキシ、メルカプト、ハロ、アルキル、フェニル、アルコキシ、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシル、アルコキシカルボニルなどの置換基によって置換されていてもよい。
【0027】
「ヘテロシクリル」は、炭素原子と、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1-5個のヘテロ原子とからなる安定な3-15員の環状基、好ましくは1個以上のヘテロ原子を有する4-8員環、更に好ましくは1個以上のヘテロ原子を有する5-6員環を表す。本発明の目的に対しては、複素環は単環性、二環性、または三環性の環系であることがあり、これは縮合環系を包含することがあり、ヘテロシクリル基の窒素、炭素、または硫黄原子は場合によって酸化されていることがあり、窒素原子は場合によって四級化していることがあり、ヘテロシクリル基は部分的にまたは完全に飽和しているか、または芳香族性であってもよい。このような複素環の例としては、アゼピン、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、フラン、イソチアゾール、イミダゾール、インドール、ピペリジン、ピペラジン、プリン、キノリン、チアジアゾール、テトラヒドロフラン、クマリン、モルホリン、ピロール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、トリアゾール、イミダゾールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「アルコキシ」は、式-ORaの基であって、Raが上記において定義した通りのアルキル基であるもの、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどを表す。
【0029】
「アルコキシカルボニル」は、式-C(O)ORaの基であって、ここでRaが上記において定義した通りのアルキル基であるもの、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニルなどを表す。
【0030】
「アルキルチオ」は、式-SRaの基であって、Raが上記において定義した通りのアルキル基であるもの、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオなどを表す。
【0031】
「アミノ」は、式-NH2、-NHRa、または-NRaRbの基であって、場合によって四級化しているものを表す。
【0032】
「ハロ」または「ハル」は、ブロモ、クロロ、ヨード、またはフルオロを表す。
【0033】
本発明の化合物における置換基についての本明細書における言及内容は、1個以上の適当な基、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードのようなハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、アシルなどのC1-6アルカノイル基のようなアルカノイル、カルボキサミド、1-約12個の炭素原子、または1-約6個の炭素原子、更に好ましくは1-3個の炭素原子を有するアルキル基などのアルキル基、1個以上の不飽和結合と2-約12個の炭素または2-約6個の炭素原子とを有する基などのアルケニルおよびアルキニル基、1個以上の酸素結合と1-約12個の炭素原子または1-約6個の炭素原子とを有するアルコキシ基、フェノキシなどのアリールオキシ、1個以上のチオエーテル結合と1-約12個の炭素原子または1-約6個の炭素原子とを有する残基などのアルキルチオ基、1個以上のスルフィニル結合と1-約12個の炭素原子または1-約6個の炭素原子とを有するアルキルスルフィニル基などのアルキルスルフィニル基、1個以上のスルホニル結合と1-約12個の炭素原子または1-約6個の炭素原子とを有するアルキルスルホニル基などのアルキルスルホニル基、1個以上のN原子と1-約12個の炭素原子または1-約6個の炭素原子とを有する基などのアミノアルキル基、6個以上の炭素を有する炭素環状アリール、特にフェニルまたはナフチルおよびベンジルのようなアラルキルによって利用可能な位置において置換されていることがある特定の残基を表す。特に断らない限り、場合によって置換基はその基のそれぞれの置換可能な位置に置換基を有することができ、それぞれの置換は互いに独立している。
【0034】
本発明の特定の個々の化合物としては、実施例における化合物1-86が塩または遊離塩基として挙げられる。
【0035】
一つの態様においては、上記式Iの化合物における2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレンは置換されておらず、R1-R7は全てHである。これらの化合物においては、良好な活性の結果が得られる。
【0036】
もう一つの態様においては、R2およびR3はアルコキシ、好ましくはメトキシであり、2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレンの残りの置換基(R1およびR4-R7)はHである。
【0037】
もう一つの態様においては、R2はアルコキシ、好ましくはメトキシであり、2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレンの残りの置換基(R1およびR3-R7)はHである。
【0038】
もう一つの態様においては、スルホンアミドに結合した基Wは、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロシクリル、好ましくは置換または未置換フェニルのような芳香族である。Wがアルキル、アルコキシ、および/またはハロ置換フェニルである場合には、良好な結果が得られた。特に、同一または異なる1個以上のハロ置換基を有するハロ置換基フェニルが好ましい。
【0039】
もう一つの態様においては、nが3または4であることが重要である。
【0040】
W、R1-R7、およびnについての上記態様および好ましいものを組み合わせて、更に好ましい化合物を得ることができる。
【0041】
好ましく選択される上記態様の典型的化合物は、4-クロロ-2,5-ジメチル-N-[4-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-ブチル]-ベンゼンスルホンアミド塩酸塩、2,5-ジクロロ-N-[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-ベンゼンスルホンアミド塩酸塩、2,5-ジクロロ-N-[3-(7,8-ジメトキシ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-ベンゼンスルホンアミド塩酸塩、2-クロロ-N-[3-(7,8-ジメトキシ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-4,5-ジフルオロ-ベンゼンスルホンアミド塩酸塩である。
【0042】
上記式(I)によって表される本発明の化合物としては、鏡像異性体またはキラル中心の存在によって、多重結合の存在によっては異性体(例えば、Z、E)を挙げることができる。単純な異性体、鏡像異性体、またはジアステレオ異性体、およびそれらの混合物は、本発明の範囲内にある。
【0043】
特に断らない限り、本発明の化合物は、1個以上の同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物を包含することも意味する。例えば、水素を重水素またはトリチウムにより置換、または炭素を13C-もしくは14C-濃縮炭素または15N-濃縮窒素により置換した場合を除き本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。
【0044】
「薬学上許容可能な塩、溶媒和物、プロドラッグ」という用語は、任意の薬学上許容可能な塩、エステル、溶媒和物、または患者に投与した場合に本明細書に記載の化合物を(直接的にまたは間接的に)提供することができる任意の他の化合物を表す。しかしながら、薬学上許容可能でない塩は薬学上許容可能な塩の調製に有用なことがあるので、これらの塩も本発明の範囲内にある。塩、プロドラッグ、および誘導体の調製は、当該技術分野において知られている方法によって行うことができる。
【0045】
例えば、本明細書において提供される化合物の薬学上許容可能な塩は、塩基性または酸性残基を含む親化合物から通常の化学的方法によって合成される。一般に、これらの塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸または塩基型を、水もしくは有機溶媒中または二者の混合液中において、化学量論的量の適当な塩基または酸と反応させることによって調製される。通常は、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水媒質が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩のような無機酸付加塩、および例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、およびp-トルエンスルホン酸塩のような有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、アルミニウム、およびリチウム塩のような無機塩、および例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、グルカミン、および塩基性アミノ酸塩のような有機アルカリ塩が挙げられる。
【0046】
特に好ましい誘導体またはプロドラッグは、本発明の化合物を患者に投与する場合に(例えば、経口投与した化合物を一層容易に血中に吸収させることによって)、これらの化合物の生物学的同等性(bioavailability)を増加させるか、または親化合物に関連した生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への親化合物の送達を高めるものである。
【0047】
式(I)の化合物のプロドラッグである任意の化合物は、本発明の範囲内である。「プロドラッグ」という用語はその最も広義で用いられ、イン・ビボにおいて本発明の化合物に転換される誘導体を包含する。これらの誘導体は当業者には容易に見出され、分子中に存在する官能基によっては、限定無しに、本発明の化合物の下記の誘導体、すなわちエステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩、スルホン酸エステル、カルバミン酸塩、およびアミドが挙げられる。
【0048】
本発明の化合物は、遊離化合物としてまたは溶媒和物としての結晶形態であってもよく、いずれの形態も本発明の範囲内あるものと考えられる。溶媒和の方法は、一般に当該技術分野において知られている。適当な溶媒和物は、薬学上許容可能な溶媒和物である。特定の態様においては、溶媒和物は水和物である。
【0049】
式(I)の化合物、それらの塩、またはそれらの溶媒和物は、好ましくは薬学上許容可能な、または実質的に純粋な形態である。薬学上許容可能な形態とは、とりわけ希釈剤および担体のような通常の医薬添加物を除外して薬学上許容可能な水準の純度を有し、かつ通常の投薬段階において有毒であると考えられる物質を含まないことを意味する。原薬の純度水準は、好ましくは50%を上回り、更に好ましくは70%を上回り、最も好ましくは90%を上回る。好ましい態様においては、純度水準は式(I)の化合物、またはその塩、その溶媒和物、またはそのプロドラッグの95%を上回る。
【0050】
式(I)の化合物は、下記式(II)の化合物:
【化2】

(上記式中、R1-R7およびnは、式(I)において定義した通りである)
と下記式(III)の化合物:
【化3】

(上記式中、Wは式(I)において定義した通りであり、Xはハロゲン、好ましくはClである)
とのカップリングによって調製することができる。
【0051】
式(II)と(III)との化合物の反応は、好ましくはジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンのような有機塩基の存在下においてジクロロメタンのような非プロトン性溶媒中において行われるが、これに限定されない。
【0052】
式(III)の化合物は市販されているか、または従来の方法によって調製することができる。
【0053】
式(II)の化合物は、下記の反応を用いて式(IV)の化合物または式(V)の化合物から調製することができる。
【化4】

【0054】
これら二つの化合物の調製は、後述する。
【0055】
式(IV)の化合物から式(II)への化合物
L=CH2L'であれば、式(IV)の化合物を、カルボン酸誘導体(L'COX)(ここで式中、Xはハロゲン(ClまたはBr)のような良好な脱離基である)またはL'の無水物(L'COOCOL')を用いてアシル化した後、還元することができる(スキーム1)。アシル化は、ピリジンのような適当な塩基およびジクロロメタンのような溶媒の存在下において、またはNaHCO3のような無機塩基を用いるジクロロメタン/水の混合物からなる二相系(bifasic system)を用いて行うことができる。カルボニル基は、LiAlH4のような水素化物によって還元できる。
スキーム1
【化5】

【0056】
Lがアルキルまたはシクロアルキルである場合には、式(II)の化合物は、スキーム2に示されるような適当な塩基と溶媒の存在下においてBr、I、アリール、またはアルキルスルホン酸塩などのような良好な脱離基を含む様々なアルキル化合物を用いるIVのアルキル化によって得ることもできる。有用な塩基としては、金属炭酸塩または重炭酸塩(NaHCO3、K2CO3など)が挙げられるが、これらに限定されない。典型的溶媒としては、DMFまたはTHFのような非プロトン性の液体が挙げられる。
スキーム2
【化6】

【0057】
Lが、アリールまたはヘテロアリールである場合には、N-アリール化は、トルエンまたはジオキサンのような乾燥溶媒と、Cs2CO3またはtBuOKのような適当な塩基との存在下において、Pd、Cuのような金属と、ホスフィンのようなリガンドとからなる触媒系を用いるX-L(式中、Xはハロゲンであるか、またはアルキルまたはアリールスルホン酸塩である)とのクロスカップリング反応によって行うことができる(スキーム3)。
スキーム3
【化7】

【0058】
式(V)の化合物から式(II)の化合物
前記合成は、適当な溶媒中において、塩基の存在下にて式(V)のアミンをジアルキル化剤(VI)により処理した後、Lにより置換した第一アミン(VII)のアルキル化によって逐次的に行うことができる。この反応順序をスキーム4において示す。
スキーム4
【化8】

【0059】
有用なアルキル化剤の例は、YがBr、I、アリール、またはアルキルスルホン酸塩などの良好乃至優れた脱離基であり、XがBrまたはClのような良好な脱離基であるものである。有用な塩基としては、K2CO3またはCs2CO3、金属水酸化物、ヒンダードアルコキシド、または第三有機アミンが挙げられるが、これらに限定されない。典型的な溶媒としては、DMFまたはTHFのような極性の非プロトン性液体、またはアルコールのようなプロトン性液体が挙げられる。第二のアルキル化の速度は、特にXがClである場合には、NaIまたはKIのようなヨウ化物の触媒量を添加することによって高めることができる。
【0060】
式(II)の化合物は、式(V)の化合物からLおよびBr、I、アルキル、またはアリールスルホン酸塩などの良好な脱離基を含むアルキル鎖により置換した第二アミン(VIII)を用いるアルキル化によって調製することもできる。スキーム5において、VIIIのアミノ基を保護して、副反応を避けるように保護されるべきである。保護基の幾つかの例としては、BOC、Fmocなどの様々なカルバミン酸塩、アセタミドのような様々なアミド、およびN-ベンジル、N-アリルなどのようなアルキルおよびアリールアミン誘導体が挙げられる。これらの保護基の脱保護は、通常の方法を用いて行うことができる。アルキル化は、上記と同じ溶媒および塩基を用いて行うことができる。式(VIII)の化合物のアミノ基の保護は、その反応性が式(V)の化合物のアミノ基の反応性より大幅に低くなる場合には回避することができる。
スキーム5
【化9】

【0061】
式(V)の化合物から式(II)の幾つかの化合物へのもう一つの方法(スキーム6)は、上記スキームにおいて引用したのと同様に、適当な溶媒および塩基中においてハロアルキルアミド(IX)を用いるアルキル化によって行うことができる。中間体(X)は、LiAlH4またはボランのような水素化物の存在下において還元することができる。
スキーム6
【化10】

【0062】
式(V)の化合物から式(II)の化合物へのもう一つの方法(スキーム7)は、とりわけDMFのような非プロトン性溶媒とトリエチルアミンのような有機塩基との存在下において、式(XI)の化合物と、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)もしくは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、カルボニルジイミダゾール、O-ベンゾトリアゾール-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウム-ヘキサフルオロ-ホスフェート(HBTU)、またはベンゾトリアゾール-N-オキソトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP))とを用いて行うことができる。次に、LiAlH4のような水素化物の存在下において、テトラヒドロフランのような乾燥溶媒中において式(XII)の化合物の二つのアミド基を還元することにより、スキーム7において示されるように式(II)の化合物を得ることができる。
スキーム7
【化11】

【0063】
式(V)の化合物の調製
式(V)のアミンは、下記の方法および手法によって調製することができる。引用された記載方法の参考文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用される。
【0064】
スキーム8において示される式(V)の様々な置換化合物は、式(Va)の化合物から得ることができる。HClのような濃酸の存在下において、高圧での水素化による、またはウォルフ-キッシュナー(Wolff-Kischner)反応においてヒドラジンを用いる、またはHClおよびZnを用いるクレメンゼン型条件を用いる全還元により、式(Vb)の化合物を得ることができる。NaBH4のような水素化物を用いる部分還元により、式(Vc)のアルコールを得ることができ、これは水素化によって式(Vb)の化合物に還元することもできる。
スキーム8
【化12】

【0065】
ケトン(Va)における置換の導入は、とりわけリチウム試薬(R4BLi)のような有機金属試薬を用いる求核攻撃を行うことにより化合物(Vd)を得ることができ、アミン(RR'NH)と、NaBH(OAc)3のような水素化物とを用いる還元的アミノ化を行うことにより(Ve)を得ることができ、またはウィッティッヒ型(Wittig-type)反応におけるホスホネートのホスホニウムイリドを用いるC-C結合形成を行うことにより(Vf)などを得ることができる。これらの方法の幾つかは、アミノ基を保護する必要がある。用いられる保護基は、上記の基であってもよい。これら全ての化合物は、通常の有機反応により更に誘導体形成することができる。
【0066】
式(Va)の化合物は、β-アミノ酸(XIII)からフリーデル-クラフツアシル化(Friedel-Crafts acylation)によって得ることができる(スキーム9)。このアシル化は、ポリリン酸、メタンスルホン酸などの強酸、またはAlCl3などのルイス酸の存在下において、高温(100-200℃)により行える。式(Va)の未置換化合物2a,3,4,5-テトラヒドロ-2H-3-アザ-アセナフチレン-1-オンは、J. Org. Chem. 1987, 52, 616-622およびHeterocycles, 1989, 29(12), 2399-2402において記載の方法に準じて2-(l,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-1-イル)酢酸から調製することができる。しかしながら、これらの方法は、従来の加熱の代わりにマイクロ波放射線の使用によって改良されている(後述する実施例参照)。
スキーム9
【化13】

【0067】
β-アミノ酸(XIII)は、置換フェニルエチルアミンから出発する逐次またはワン・ポット(one-pot)合成によって調製できる。
【0068】
多工程合成(スキーム10)は、ホルムアルデヒドを用いるピクテット-スペングラー(Pictet-Spengler)反応を用いて出発し、置換テトラヒドロイソキノリン(XIV)を生成することができる。Nに対してベンジルα位の酸化は、NBSにより臭素化した後、塩基の存在下にて脱離することによって置換ジヒドロイソキノリン(XV)を生成することができる。R5およびR5Bを有するα,α-二置換酢酸を用いるアルドール(aldolic)反応によって、β-アミノ酸(XIII)を得ることができる。
スキーム10
【化14】

【0069】
この反応は、高温(100-150℃)においての脱カルボキシル化であるため、置換マロン酸を用いる場合に特に好ましいが、その場合は一つの置換(R5またはR5B)のみを導入することができる。他の置換はスキーム11に示されるようにHでなければならない。
スキーム11
【化15】

【0070】
ワン・ポット(one-pot)合成は、R5およびR5Bによりα,α-二置換した3-オキソプロパン酸誘導体の存在下においてピクテット-スペングラー反応によって行える(スキーム12)。
スキーム12
【化16】

【0071】
式(V)の化合物を得るための他の可能な方法は、スキーム13a)において示されるようにビシュラー-ナピーラルスキー(Bischler-Napieralsky)反応によりフェニルエチルアミンと、R5およびR5Bにおいてα,α-二置換したマロン酸誘導体とから出発する。式(XVI)の化合物のイミン結合の選択的還元により式(V)の所望な化合物を得ることができ、これは更に誘導体形成することができる。還元工程がロジウムまたはルテニウムのような遷移金属と、ホスフィンまたはホスファンのようなキラルリガンドとによって形成される錯体によって触媒される不整水素化からなる場合には、この方法により式(V)のキラル化合物を得ることもできる。ケトンまたはイミンの不整水素化の方法論は、J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 4916、J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 5142、J. Org. Chem. 1998, 63, 6084において記載されている。式(Va)または(V)のキラル化合物を得るためのもう一つの適当な方法は、スキーム13b)に示されている。イソキノリンから出発し、鏡像選択的(enantioselective)アシル-マンニッヒ型(acyl-Mannich-type)反応をキラルチオ尿素誘導体によって触媒してキラルジヒドロイソキノリンを得て、これを加水分解、窒素原子の脱保護(Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 6700-6704)、およびフリーデル-クラフツ(Friedel-Crafts)アシル化による環化によって式(Va)の化合物とすることができる(スキーム9)。
スキーム13
【化17】

【0072】
好都合な場合には、式(V)の様々な置換化合物をスキーム14において示される多工程合成によって式(XVII)の化合物から得ることができる。式(XVII)の化合物は、市販されているか、または従来の方法によって調製される。
スキーム14
【化18】

【0073】
反応順序は、R6およびR7において置換したアミノケタールを用いる式(XVII)の化合物の還元的アミノ化により開始することができる。未保護アルデヒドまたはケトンの代わりにケタールを用いることは、二官能価アミンの重合のような副反応を回避する上で好都合である。生成したイミン(XVIII)の水素化による還元によって、アミノケタール(XIX)が生成する。塩酸のような酸媒質中でのケタールの還元により、ケト化合物(XX)または直接ジヒドロイソキノリン(XXI)が得られ、これは水素化によって還元して式(V)の所望な化合物を得ることができる。式(Va)の未置換化合物、l,2,2a,3,4,5-ヘキサヒドロ-2H-3-アザ-アセナフチレン、およびR2=R3=OCH3により置換した化合物7,8-ジメトキシ-l,2,2a,3,4,5-ヘキサヒドロ-3-アザ-アセナフチレンは、J. Org. Chem. 1971, 36(1), 111-117において記載されている。
【0074】
式(IV)の化合物の調製
式(IV)の化合物は、下記の反応および手法を用いて式(V)の化合物から調製することができる。
【0075】
前記反応は、用いられる試薬および材料に適しており、かつ変換に適当な溶媒中において行われる。分子上に存在する官能価は、提案される変換と一致すべきである。これは、ときには本発明の所望な化合物を得るために別のものに優先して特定の方法を選択する必要がある。好ましい方法としては、下記のものが挙げられるが、これらのものに限定されない。
【0076】
式(IV)の化合物は、スキーム15に示されるようにアルキル化によって調製することができる。
スキーム15
【化19】

【0077】
第一工程においては、式(V)のアミンを、適当な塩基および溶媒の存在下において市販のN-(n-ハロアルキル)フタルイミド(XXII)と反応させる。有用な塩基としては、K2CO3またはCs2CO3のような金属炭酸塩、金属水酸化物、ヒンダードアルコキシド、または第三有機アミンが挙げられるが、これらに限定されない。第二工程においては、エタノールのような極性のプロトン性溶媒中のヒドラジン、および塩酸を用いるアルキル化化合物(XXIII)のヒドラジン分解により、所望な式(IV)の化合物が得られる。
【0078】
式(IV)の化合物への同様な経路を、スキーム16に示す。
スキーム16
【化20】

【0079】
式(V)の化合物のN-(n-ハロアルキル)フタルイミド(XXII)によるアルキル化の代わりにカルボキシアルキルフタルイミド誘導体(XXIV)によるアシル化が、幾つかの場合に好都合なことがある。XがClまたはBrであるか、または他の良好な脱離基である場合には、アシル化に用いられる塩基はトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミンのような第三有機アミンであってもよく、ヒドラジン分解は前記スキーム15のように行ってもよい。XがOHである場合には、カップリング試薬を用いてカルボキシ基を活性化しなければならない。DCC、EDC、HBTU、TBTU、BOP、PyBOPなどの多数のカップリング試薬が、カルボン酸とアミンとからアミド結合を形成することが文献において知られている。このようなカップリング反応のための適当な塩基としては、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンなどの第三アミンが挙げられる。活性種は通常は単離されないが、アミンパートナー(V)とイン・サイチュー(in situ)において反応させることができる。
【0080】
フタルイミド(XXV)のヒドラジン分解の後、アミド中間体(XXVI)を適当な溶媒、典型的にはTHF中においてボランまたは水素化アルミニウムリチウムのような還元剤により還元することができる。
【0081】
式(IV)の化合物への同様な方法を、スキーム17に示す。
スキーム17
【化21】

【0082】
フタルイミドアルキルアルデヒド(XXVII)による還元的アミノ化の後に、ヒドラジン分解を行うことができる。アルデヒド(XXVII)によるアミン(V)の縮合は、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムNaBH(OAc)3または水素化シアノホウ素ナトリウム(NaBH4CN)のような水素化物の存在下において行うことができる。フタルイミド中間体(XXVIII)をスキーム15および16において記載した通りに処理し、式(IV)の所望な化合物を得る。
【0083】
これら全てのスキームにおいて、フタルイミドの代わりに窒素原子に対する他の保護基を用いることができる。幾つかの例としては、マレイミドまたはスクシンイミドのような他の環状イミド、BOC(一つの例はスキーム18において示されている)、Fmocなどの様々なカルバミン酸塩、アセタミドのような様々なアミド、およびN-ベンジル、N-アリルなどのアルキルおよびアリールアミン誘導体が挙げられる。これらの保護基の脱保護は、従来の方法を用いて行うことができる。
スキーム18
【化22】

【0084】
このスキームは、R4と、R4Bとが一緒になってケト基を形成する場合には特に有用であり、アルキル性鎖のアミノ基の脱保護のための上記スキームにおいて必要とされ、ケトンを変更することができる還元工程が回避される。
【0085】
好都合な場合には、式(IV)の化合物はスキーム19において示した通りに調製することができる。
スキーム19
【化23】

【0086】
市販のハロアルキルニトリル(XXIX)による式(V)の化合物のアルキル化は、上記スキームに引用された様々な塩基および溶媒の存在下において行うことができる。(XXX)のシアノ基の還元には、THF中のLiAlH4のような通常の還元剤を用いることができる。エタノール中のPd/Cによる接触水素化物も可能である。
【0087】
幾つかの場合には、カルボキシニトリルによるアシル化のアミドの形成は、対応するハロニトリルによるアルキル化の代わりに好ましい(スキーム20)。
スキーム20
【化24】

【0088】
式(XXXI)の化合物(式中、XはClまたはBrのような良好な脱離基である)による式(V)の化合物のアシル化は、適当な塩基および溶媒の存在下において行われ、これは上記スキームに記載されている。XXXIIのシアノおよびケト基の還元は、LiAlH4またはボランのような還元剤の過剰量の存在下において同時に行うことができる。XがOHである場合には、カップリング試薬を用いてカルボキシ基を活性化しなければならない。用いられるカップリング試薬は、前記スキーム16と同じである。
【0089】
XがHである場合にも、スキーム20は可能である。還元的アミノ化は、適当な塩基および溶媒の存在下において式(V)のアミンを式XXXIのアルデヒドによって縮合し、イミンまたはエナミン中間体を形成した後、水素化物のような還元剤により還元することによって行う。
【0090】
式(Ib)の化合物から式(I)の化合物への調製
L=アリールまたはヘテロアリールである場合には、式(I)の化合物は、接触クロスカップリング(catalytic cross coupling)反応条件を用いて、ハロゲン、アルキル、またはアリールスルホン酸塩のような電子吸引性かつ良好な脱離基(Y)を含むアリールまたはヘテロアリールによる式(Ib)の化合物のカップリングによって得ることもできる(スキーム21)。式(Ib)の化合物は、L=Hである場合の式(I)の化合物の調製について記載した方法に従って式(III)の化合物による式(IV)の化合物のカップリングによって合成することができる。
スキーム21
【化25】

【0091】
幾つかの場合には、L=アルキルまたはシクロアルキルであっても、式(I)の化合物は、スキーム22において示した通りヨウ化エチルのようなアルキル化剤の存在下において、THFのような非プロトン性の乾燥溶媒中においてNaHのような強塩基を用いるスルホンアミド基の窒素のアルキル化によって式(Ib)の化合物から好都合に調製することもできる。
スキーム22
【化26】

【0092】
このスキームは、R4と、R4Bとが一緒になってケト基を形成する場合には特に有用であり、他のスキームにおいて必要とされ、ケトンを変更することができる還元工程が回避される。R4と、R4Bとが一緒になってケト基を形成する場合には、スキーム2(上記参照)も式(IV)の化合物から式(II)の化合物を得るための適当な方法である。
【0093】
しかしながら、R4と、R4Bとが一緒になってケト基を形成する場合には、式(I)の化合物は、ケト基の保護基を用いる場合を除き、上記スキームに記載の全ての方法を用いて調製し、他の還元が必要な工程において、この基の還元を回避することもできる。幾つかの例としては、ジメチルもしくはジイソプロピルのような非環状ケタールまたは1,3-ジオキサンもしくは1,3-ジオキソランのような環状ケタールが挙げられる。保護および脱保護工程は、従来の方法を用いて行ってもよい。
【0094】
下記の説明および実施例により、本発明の化合物の調製を説明する。
【0095】
得られた反応生成物は、所望ならば結晶化、クロマトグラフィー、および粉砕(trituration)のような従来の方法によって精製することができる。本発明の化合物の調製のための上記方法が立体異性体の混合物を生じる場合には、これらの異性体を調製用クロマトグラフィーのような従来の手法によって分離することができる。キラル中心がある場合には、化合物はラセミ形態により調製してもよく、または個々の鏡像異性体を鏡像特異的(enantiospecific)合成によって、または分割によって調製してもよい。
【0096】
一つの好ましい薬学上許容可能な形態は、医薬組成物における結晶形態などを含む結晶形態である。塩および溶媒和物の場合には、追加的イオンおよび溶媒残基も毒性の無いものでなければならない。本発明の化合物は異なる多形形態において存在することがあり、本発明はそれら全ての形態を包含するものと考えられる。
【0097】
本発明のもう一つの態様は、5-HT7依存性疾患の治療または予防方法であって、このような治療を必要とする患者に治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。治療することができる5-HT7依存性疾患は、睡眠障害、交代勤務従業員症候群、時差ぼけ、鬱病、季節性情動障害、片頭痛、不安、精神病、統合失調症、痛み、認知および記憶障害、虚血事象から生じる神経変性、高血圧のような循環器疾患、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、痙攣性結腸ま、たは尿失禁のような中枢および末梢セロトニン制御機能の機能不全によって引き起こされる疾患である。
【0098】
本発明は、本発明の化合物、その薬学上許容可能な塩、その誘導体、そのプロドラッグ、またはその立体異性体を、薬学上許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルと一緒に含んでなる、患者に投与するための医薬組成物も提供する。
【0099】
医薬組成物の例としては、経口、局所、または非経口投与用の固体(錠剤、ピル、カプセル、顆粒など)または液体(溶液、懸濁液、または乳剤)組成物が挙げられる。
【0100】
好ましい態様においては、医薬組成物は固体または液体の経口形態である。経口投与に適当な投薬形態は、錠剤、カプセル、シロップ、または溶液であってもよく、結合剤、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントゴム、またはポリビニルピロリドン、充填剤、例えば、ラクトース、砂糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン、錠剤化滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、崩壊剤、例えば、澱粉、ポリビニルピロリドン、澱粉グリコール酸ナトリウムまたは微晶質セルロースのような当該技術分野において知られている通常の賦形剤、またはラウリル硫酸ナトリウムのような薬学上許容可能な湿潤剤を含んでもよい。
【0101】
固形の経口組成物は、混合、充填、または錠剤成形の従来の方法によって調製することができる。反復混合操作を用いて、多量の充填剤を用いる組成物中に活性成分を分布させることができる。このような操作は、当該技術分野においては通常のものである。錠剤は、例えば、湿式または乾式造粒によって調製し、場合によって通常の薬務において周知の方法に準じて、特に腸溶性コーティングによりコーティングすることができる。
【0102】
医薬組成物は、適当な単位投薬形態により滅菌溶液、懸濁液、または凍結乾燥生成物のような非経口投与に適合させることもできる。充填剤、緩衝剤、または界面活性剤のような適当な賦形剤を用いることができる。
【0103】
記載される処方物は、スペインおよび米国薬局方、および同様な参考テキストに記載され、または引用されているような標準的方法を用いて調製される。
【0104】
本発明の化合物または組成物は、静脈内輸液、経口製剤、および腹腔内並びに静脈内投与のような任意の適当な方法によって投与することができる。患者の便宜および治療しようとする疾患の慢性的特質のため、経口投与が好ましい。
【0105】
一般に、本発明の化合物の有効投与量は、選択される化合物の相対的効力、治療を行う疾患の重篤度、および患者の体重によって変化する。しかしながら、活性化合物は、典型的には一日1回以上、例えば、一日に1、2、3、または4回投与され、典型的な一日に総投与量は0.1-1000mg/kg/日の範囲である。
【0106】
本発明の化合物および組成物を他の薬物と共に用いて併用療法を提供してもよい。他の薬物は、同一組成物の一部を形成し、または同時にまたは異なる時間に投与するための違った組成物として提供することができる。
【0107】
下記の実施例は、本発明の更なる例示としてのみ示されるものであり、それらは本発明を限定する定義として考えるべきではない。
【実施例】
【0108】
一般式(I)の化合物は、当業者に知られている従来の有機化学の方法によって調製し、幾つかの例を以下に記載する。一般式(V)、(IV)、および(II)の中間体の幾つかの調製も、以下に示す。
【0109】
実施例A:
これは、一般式(Va)の化合物の一つの例である。2a,3,4,5-テトラヒドロ-2H-3-アザ-アセナフチレン-1-オンは、J. Org. Chem. 1987, 52, 616-622およびHeterocycles, 1989, 29(12), 2399-2402に記載の方法に準じて2-(l,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-1-イル)酢酸から調製することができ、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用される。しかしながら、これらの方法は、従来の加熱の代わりにマイクロ波放射線の使用により改良された。
【0110】
2a,3,4,5-テトラヒドロ-2H-3-アザ-アセナフチレン-1-オン
【化27】

ポリリン酸(30g)を、2-(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-1-イル)酢酸(2g)を1,1,2,2-テトラクロロエタン(6ml)に懸濁したものに加え、混合物を150℃および150Wにより作動するCEM Explorerマイクロ波装置により45分間反応させた。粗生成物を氷/水の混合物に投入してPPAを分解し、25%アンモニアによりアルカリ性にし、ジクロロメタンにより抽出した。合わせた有機層をNa2SO4により乾燥し、真空蒸発させて褐色固形生成物(1.7g, 収率94%)を得て、これをジクロロメタン/メタノールのグラディエントを用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、2a,3,4,5-テトラヒドロ-2H-3-アザ-アセナフチレン-1-オンとして同定される淡褐色固形生成物を得た。
1H NMR (300 MHz, クロロホルム-D)δppm 2.47 (dd, J=17.13, 6.30Hz, 1H) 2.55 (s, 1H) 2.90 (m, 2H) 2.99 (dd, J=17.06, 6.66Hz, 1H) 3.25 (ddd, J=12.70, 9.11, 7.32Hz, 1H) 3.44 (ddd, J=12.74, 5.56, 3.22Hz, 1H) 4.21 (t, J=6.37Hz, 1H) 7.29 (m, 2H) 7.45 (t, J=4.25Hz, 1H)
MS (APCI (M+H)+): 174
【0111】
実施例B:
これは、一般式(V)の化合物の一つの例である。l,2,2a,3,4,5-ヘキサヒドロ-3-アザ-アセナフチレンは、J. Med. Chem. 1988, 31(2), 433-443に記載の方法に準じて、またはHeterocycles, 1989, 29(12), 2399-2402に記載の方法に準じて調製することができ、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用される。これらの方法は、一つの工程のみであり、更に良好な収率を得るために若干変更した。
【0112】
l,2,2a,3,4,5-ヘキサヒドロ-3-アザ-アセナフチレン塩酸塩
【化28】

2a,3,4,5-テトラヒドロ-2H-3-アザ-アセナフチレン-1-オン(2g, 11.5mmol)を、10% Pd/Cを含む6N塩酸(150ml)に溶解したものを、50psiのH2により24時間水素化した。触媒を濾別し、溶液を20% NaOHによって塩基性にし、ジクロロメタン(3x150ml)により抽出した。有機層をNa2SO4上において乾燥し、濃縮乾固してl,2,2a,3,4,5-ヘキサヒドロ-3-アザ-アセナフチレンと同定された無色油状生成物(1.6g, 収率85%)を得た。2.8N塩酸/エタノールを添加して、塩酸塩を白色固形生成物として生成し、濾別によって集めた。
1H NMR (300 MHz, クロロホルム-D)δppm 1.69 (qd, J=11.23, 8.30Hz, 1H) 2.46 (m, 1H) 2.75 (m, 3H) 2.88 (m, 1H) 3.16 (ddd, J=12.82, 10.50, 6.23Hz, 1H) 3.43 (ddd, J=12.82, 6.23, 1.95Hz, 1H) 4.06 (dd, J=10.62, 6.47Hz, 1H) 6.93 (d, J=7.32Hz, 1H) 7.04 (m, 1H) 7.12 (t, J=7.32Hz, 1H)
MS (APCI (M+H)+): 160
【0113】
実施例C:
これは、一般式(V)の化合物から一般式(IV)への化合物の一つの例である。
【0114】
2,3-ジヒドロ-ベンゾフラン-5-スルホン酸[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アミド塩酸塩
a) 2-[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-イソインドール-l,3-ジオン
【化29】

l,2,2a,3,4,5-ヘキサヒドロ-3-アザ-アセナフチレン(1.1g, 6.92mmol)、N-(4-ブロモプロピル)フタルイミド(1.97g, 7.33mmol)、および炭酸カリウム(2.8g, 20.76モル)を乾燥N,N'-ジメチルホルムアミド(10ml)中において混合したものを、室温において一晩攪拌した。混合物を真空濃縮し、残渣を水(10ml)に溶解し、酢酸エチル(3x10ml)により抽出し、水によって洗浄した。有機層を乾燥させ、蒸発させて、生成物(2.20g, 収率92%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.48 - 1.64 (m, 1H) 1.85 (dt, J=13.66, 6.87Hz, 2H) 2.15 - 2.27 (m, 2H) 2.27 - 2.38 (m, 1H) 2.63 - 2.78 (m, 4H) 3.15 (dd, J=11.72, 5.86Hz, 1H) 3.21 - 3.29 (m, 1H) 3.54 - 3.71 (m, 2H) 6.83 (d, J=6.88Hz, 1H) 6.94 - 7.08 (m, 2H) 7.75 - 7.87 (m, J=11.57, 9.19, 4.21, 2.42Hz, 4H)
MS (APCI (M+H)+): 347
【0115】
b) 3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピルアミン二塩酸塩
【化30】

2-[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-イソインドール-1,3-ジオン(2g, 5.78mmol)と、ヒドラジン水和物(2.9g, 57.8モル)とをエタノール(60ml)に溶解したものを、1時間還流させた。反応混合物を冷却し、追加量のエタノール(30ml)と濃HCl(7ml)とにより処理した。次に、反応混合物を4時間還流し、冷蔵庫に一晩置いた。沈殿物を濾去し、溶媒を蒸発させた。残渣を水(15ml)に再溶解し、25%アンモニアによってアルカリ性にした。次に、CH2Cl2(3x120ml)によって抽出し、有機層をNa2SO4上において乾燥させ、蒸発乾固した。粗生成物を酢酸エチルに溶解した。次に、2.8モル塩酸のエタノール溶液を加えた。生成した沈殿物を濾過によって集め、所望な生成物(0.80g, 収率64%)をベージュ色固形生成物として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 2.14 (m, 3H) 2.63 (m, 1H) 2.90 (m, 4H) 3.15 (m, 3H) 3.48 (m, 2H) 3.80 (m, 1H) 4.59 (m, 1H) 7.07 (d, J=7.47Hz, 1H) 7.16 (d, J=7.47Hz, 1H) 7.25 (t, J=7.47Hz, 1H) 8.22 (s, 2H) 10.99 (br, 1H) MS (APCI (M+H)+): 217
【0116】
実施例D:
これは、一般式(V)の化合物から一般式(II)への化合物の一つの例である。
[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-m-トリル-アミン
a) 3-(3-クロロ-プロピル)-l,2,2a,3,4,5-ヘキサヒドロ-3-アザ-アセナフチレン
【化31】

1,2,2a,3,4,5-ヘキサヒドロ-3-アザ-アセナフチレン塩酸塩(500mg, 2.56mmol)をN,N'-ジメチルホルムアミド(5ml)に溶解したものに、NaHCO3(620mg, 12.8mmol)と、1-ブロモ-3-クロロプロピル(420mg, 2.68mmol)とを加え、混合物を室温において一晩攪拌した。混合物を真空濃縮し、残渣を水(15ml)に溶解し、酢酸エチル(3x15ml)により抽出し、水によって洗浄した。有機層を乾燥して蒸発させ、所望な生成物(250mg, 収率70%)を得た。
MS (APCI (M+H)+): 236
【0117】
b) [3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-m-トリル-アミン二塩酸塩
【化32】

m-トリルアミン(21.7mg, 0.20mmol)を乾燥DMF(2ml)に溶解したものに、K2CO3(31mg, 0.22mmol)、NaI(33mg, 0.22mmol)、および3-(3-クロロ-プロピル)-l,2,2a,3,4,5-ヘキサヒドロ-3-アザ-アセナフチレン(50mg, 0.21mmol)を加え、混合物を90℃において一晩攪拌した。混合物を真空濃縮し、残渣を水(5ml)に溶解し、酢酸エチル(3x5ml)により抽出し、水によって洗浄した。有機層を乾燥させ、蒸発させた。残渣を酢酸エチル(1ml)に溶解し、2.8 N塩酸を加えた。淡褐色固形沈澱物を濾過によって集め、所望な生成物(40mg, 収率66%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 2.09 (m, 3H) 2.25 (s, 3H) 2.61 (m, 1H) 2.88 (d, J=7.82Hz, 2H) 3.10 (m, 2H) 3.24 (m, 2H) 3.41 (m, 2H) 3.82 (m, 2H) 4.60 (m, 1H) 6.82 (m, 2H) 7.07 (d, J=7.42Hz, 1H) 7.16 (m, 2H) 7.25 (m, 2H) MS (APCI (M+H)+): 307
【0118】
実施例E:
これは、一般式(IV)の化合物から一般式(II)の化合物への一つの例である。
【0119】
エチル-[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アミン
a) N-[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アセタミド
【化33】

3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピルアミン(516mg, 2.39mmol)を、CH2Cl2(2.7ml)とNaHCO3(飽和溶液, 2.7ml)とを激しく攪拌した混合物に溶解した。無水酢酸(348.9mg, 3.42mmol)を加えた後、室温において90分間攪拌した。次に、層を分離した。水(6ml)を重炭酸塩層に加え、CH2Cl2(3x6ml)により抽出した。合わせた有機層を、Na2SO4により乾燥し、濾過し、蒸発乾固して、アセチル化化合物として同定された淡褐色固形生成物(535mg, 収率87%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.58 (m, 3H) 1.75 (s, 3H) 2.17 (m, 2H) 2.36 (m, 1H) 2.71 (m, 5H) 3.04 (ddd, J=12.60, 6.96, 3.00Hz, 2H) 3.16 (m, 1H) 3.28 (m, 1H) 6.87 (d, J=7.18Hz, 1H) 7.02 (m, 2H) 7.80 (br, 1H)
MS (APCI (M+H)+): 259
【0120】
b) エチル-[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アミン二塩酸塩
【化34】

N-[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アセタミド(478mg, 1.85mmol)をTHF(乾燥, 13ml)に溶解し、1M LiALH4(3.7ml, 3.7mmol)を乾燥THFに懸濁したものに、アルゴン雰囲気下において滴加した。混合物を一晩還流した。水および1N NaOHを粗生成物に加えた。生成した塩をセライト上において濾過し、濾液をCH2Cl2により抽出し、Na2SO4により乾燥し、真空蒸発させた。得られた無色油状生成物(427mg, 収率94%)を、CH2Cl2/メタノールのグラディエントを用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。次に、2.8M塩酸のエタノール溶液を加えた。生成した沈殿物を濾過によって集め、所望な生成物(436mg, 収率75%)を白色固形生成物として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.21 (t, J=7.18Hz, 3H) 2.14 (m, 3H) 2.65 (m, 1H) 2.91 (m, 6H) 3.17 (m, 3H) 3.48 (m, 2H) 3.84 (d, J=11.28Hz, 1H) 4.60 (m, 1H) 7.08 (d, J=7.32Hz, 1H) 7.17 (d, J=7.18Hz, 1H) 7.26 (m, 1H) 9.17 (br, 2H) 10.88 (br, 1H)
MS (APCI (M+H)+): 245
【0121】
実施例F:
これは、一般式(V)の化合物から一般式(II)の化合物への一つの例である。
【0122】
エチル-[3-(7,8-ジメトキシ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アミン
a) N-[3-(7,8-ジメトキシ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-3-オキソ-プロピル]-アセタミド
【化35】

N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.14g, 5.93mmol)と、トリエチルアミン(4ml)とをN,N-ジメチルホルムアミド(30ml)に懸濁したものを、室温において攪拌した。次に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.698g, 4.56mmol)、7,8-ジメトキシ-l,2,2a,3,4,5-ヘキサヒドロ-3-アザ-アセナフチレン塩酸塩(1.0g, 4.56mmol)、およびN-アセチル-3-アミノプロパン酸(0.657g, 5.0mmol)を加え、粗生成物を室温において15時間攪拌した。次に、水(60ml)と、CH2Cl2(60ml)とを粗生成物に加えた。有機層を分離し、水相をCH2Cl2(2x60ml)により抽出した。全ての有機層を集めて、0.1N HCl(3x60ml)、飽和NaHCO3(3x60ml)、および水(3x40ml)によって洗浄した。Na2SO4により乾燥、濾過、および真空濃縮を行ったところ、ベージュ色油状生成物(1.32g, 収率87%)を得た。この油状生成物を酢酸エチルにより結晶させ、ベージュ色固形生成物(1.0g, 収率66%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.76 (s, 3H) 2.46 (m, 2H) 2.60 (m, 4H) 2.81 (m, 3H) 3.25 (m, 2H) 3.70 (s, 3H) 3.72 (s, 3H) 3.95 (m, 1H) 4.68 (m, 1H) 6.72 (s, 1H) 7.88 (t, J=5.35Hz, 1H)
MS (APCI (M+H)+): 333
【0123】
b) エチル-[3-(7,8-ジメトキシ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アミン二塩酸塩
【化36】

N-[3-(7,8-ジメトキシ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-3-オキソ-プロピル]アセタミド(370mg, 1.1mmol)をTHF(乾燥, 10ml)に溶解し、1M LiALH4(11 ml, 11mmol)を乾燥THFに懸濁したものにアルゴン雰囲気下において滴加した。混合物を4時間還流した。飽和酒石酸ナトリウム(20ml)の溶液を粗生成物に加え、混合物を1時間攪拌した。次に、酢酸エチル(3x20ml)により抽出し、Na2SO4上において乾燥し、濾過し、蒸発乾固して、油状生成物(304mg,収率90%)を得て、これを2.8N HCl/EtOHの溶液および酢酸エチルにより沈澱させ、エチル-[3-(7,8-ジメトキシ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アミン二塩酸塩(333mg, 収率80%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.20 (t, J=7.10Hz, 3H) 2.13 (m, 3H) 2.61 (m, 1H) 2.93 (m, 8H) 3.17 (m, 2H) 3.48 (m, 1H) 3.73 (s, 3H) 3.75 (s, 3H) 3.79 (m, 1H) 4.50 (q, J=9.08Hz, 1H) 6.77 (s, 1H) 9.12 (br, 2H) 10.72 (br, 1H)
MS (APCI (M+H)+): 305
【0124】
実施例G:
これは、一般式(Va)の化合物から一般式(IV)の化合物への一つの例である。
【0125】
3-(3-アミノ-プロピル)-2a,3,4,5-テトラヒドロ-2H-3-アザ-アセナフチレン-1-オン
a) [4-(7,8-ジメトキシ-1-オキソ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)- ブチル]-カルバミン酸第三ブチルエステル
【化37】

7,8-ジメトキシ-2a,3,4,5-テトラヒドロ-2H-3-アザ-アセナフチレン-1-オン(0.950g, 4.1mmol)、K2CO3(1.89g, 13.6mmol)、およびNaI(0.061g, 0.4mmol)をDMF(20ml)に懸濁したものに、(4-ブロモ-ブチル)-カルバミン酸第三ブチルエステル(1.09g, 4.32mmol)を徐々に加え、混合物を一晩攪拌した。次に、水(40ml)と、酢酸エチル(40ml)とを加え、層を分離した。水相を酢酸エチル(2x40ml)により抽出した。有機層を集めて、水(3x40ml)により洗浄した。Na2SO4による乾燥、濾過、および真空濃縮の後、褐色油状生成物を得て、これをCH2Cl2/メタノール(CH2Cl2 100%から98%まで)のグラディエントを用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、褐色固形生成物(0.730g, 収率45%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.41 (s, 9H) 1.58 (m, 3H) 2.41 (m, 2H) 2.68 (m, 2H) 2.92 (m, 3H) 3.14 (m, 2H) 3.38 (m, 1H) 3.58 (m, 1H) 3.85(s, 3H) 4.04 (s, 3H) 4.84 (m, 1H) 6.92 (s, 1H)
MS (APCI (M+H)+): 405
【0126】
b) 3-(4-アミノ-ブチル)-7,8-ジメトキシ-2a,3,4,5-テトラヒドロ-2H-3-アザ-アセナフチレン-1-オン二塩酸塩
【化38】

[4-(7,8-ジメトキシ-1-オキソ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-ブチル]- カルバミン酸第三ブチルエステル(498mg, 1.22mmol)を、CH2Cl2(10ml)とエタノール(2ml)との混合物に溶解し、2N HClのEt2O溶液を加えた(6 ml, 12mmol)。褐色沈殿物が生じ、これを濾過によって集めた(367mg, 収率80%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.61 (m, 2H) 1.87 (m, 2H) 2.81 (m, 2H) 3.10 (m, 6H) 3.48 (m, 2H) 3.82 (s, 3H) 3.87 (s, 3H) 4.75 (m, 1H) 7.30 (s, 1H) 8.02 (s, 3H) 11.33 (br, IH)
MS (APCI (M+H)+): 305
【0127】
実施例H:
2,3-ジヒドロ-ベンゾフラン-5-スルホン酸[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アミド塩酸塩 (28)
【化39】

2,3-ジヒドロ-ベンゾフラン-5-スルホニルクロリド(24.05mg, 0.11mmol)を、3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピルアミン二塩酸塩(28.92mg, 0.1mmol)と、N,N'-ジイソプロピルエチルアミン(51.7mg, 0.4mmol)とをCH2Cl2(10ml)に溶解したものに加え、混合物を室温において一晩攪拌した。生成した溶液を水(3x10ml)によって洗浄し、Na2SO4上において乾燥し、蒸発乾固した。遊離塩基を酢酸エチル(1ml)に溶解した。次に、2.8M塩酸のエタノール(0.10ml)溶液を加えた。生成物を結晶化させ、濾過によって集め、真空乾燥して、白色固形生成物(33mg, 77%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.92 (m, 4H) 2.56 (m, 1H) 2.83 (m, 4H) 3.09 (m, 3H) 3.24 (m, 2H) 3.39 (m, 1H) 3.77 (d, J=11.13Hz, 1H) 4.62 (m, 3H) 6.93 (d, J=8.49Hz, 1H) 7.08 (d, J=7.47Hz, 1H) 7.17 (m, 1H) 7.26 (t, J=7.47Hz, 1H) 7.60 (m, 3H) 10.27 (br, IH)
MS (APCI (M+H)+): 399
【0128】
実施例I:
N-[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-N-m-トリル- ベンゼン-スルホンアミド塩酸塩 (97)
【化40】

ベンゼンスルホニルクロリド(48.6mg, 0.28mmol)を、[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-m-トリル-アミン二塩酸塩(43.0mg, 0.11mmol)と、N,N'-ジイソプロピルエチルアミン(2ml)とをCH2Cl2(2ml)に溶解したものに加え、混合物を室温において一晩攪拌した。生成した溶液を水(3x10ml)により洗浄し、Na2SO4上において乾燥し、蒸発乾固した。遊離塩基を酢酸エチル(1ml)に溶解した。次に、2.8M塩酸のエタノール(0.10ml)溶液を加えた。生成物を結晶化し、濾過によって集め、真空乾燥して、白色固形生成物(20.0mg, 収率36%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.89 (m, 3H) 2.27 (s, 3H) 2.56 (m, 1H) 2.90 (d, J=7.18Hz, 2H) 3.08 (m, 2H) 3.20 (td, J=11.94, 5.71Hz, 1H) 3.41 (m, 2H)3.69 (m, 2H) 3.76 (m, 1H) 4.62 (q, J=9.52Hz, 1H) 6.86 (d, J=7.76Hz, 1H) 6.94 (s, 1H) 7.08 (d, J=7.47Hz, 1H) 7.17 (m, 2H) 7.27 (t, J=7.62Hz, 2H) 7.59 (m, 4H) 7.73 (t, J=6.88Hz, IH) 10.24 (br, IH)
MS (APCI (M+H)+): 447
【0129】
実施例J:
N-エチル-4-メチル-N-[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-ベンゼンスルホンアミド塩酸塩 (89)
【化41】

4-Mエチルベンゼンスルホニルクロリド(20.9mg, 0.11mmol)を、エチル-[3-(2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アミン二塩酸塩(31.7mg, 0.1mmol)と、N,N'-ジイソプロピルエチルアミン(64.6mg, 0.5mmol)とをCH2Cl2(10ml)に溶解したものに加え、混合物を室温において一晩攪拌した。生成した溶液を水(3x10ml)により洗浄し、Na2SO4上において乾燥し、蒸発乾固した。遊離塩基を酢酸エチル(1ml)に溶解した。次に、2.8M塩酸のエタノール(0.10ml)溶液を加えた。生成物を結晶化し、濾過によって集め、真空乾燥し、白色固形生成物(18.0mg, 41%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.02 (t, J=7.10Hz, 3H) 2.04 (m, 4H) 2.38 (s, 3H) 2.58 (m, 1H) 2.89 (m, 2H) 3.12 (m, 5H) 3.17 (q, J=7.18Hz, 2H) 3.42 (m, 1H) 3.85 (d, J=10.99Hz, 1H) 4.63 (q, J=9.52Hz, 1H) 7.09 (d, J=7.47Hz, 1H) 7.17 (m, 1H) 7.27 (t, J=7.47Hz, 1H) 7.42 (d, J=8.06Hz, 2H) 7.69 (d, J=8.06Hz, 2H) 10.36 (br, IH)
MS (APCI (M+H)+): 399
【0130】
実施例K:
2-クロロ-N-[3-(7,8-ジメトキシ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-N-エチル-ベンゼンスルホンアミド塩酸塩 (111)
【化42】

2-クロロベンゼンスルホニルクロリド(246.1mg, 1.17mmol)を、エチル-[3-(7,8-ジメトキシ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン-3-イル)-プロピル]-アミン二塩酸塩(400mg, 1.06mmol)と、N,N'-ジイソプロピルエチルアミン(1.01 ml, 6.4mmol)とをCH2Cl2(20ml)に溶解したものに加え、混合物を室温において一晩攪拌した。生成した溶液を水(3x20ml)により洗浄し、Na2SO4上において乾燥し、蒸発乾固した。遊離塩基を酢酸エチルに溶解した後、2.8M塩酸のエタノール(0.50ml)溶液を加えた。生成物を結晶化し、濾過によって集め、真空乾燥し、白色固形生成物(233mg, 43%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.00 (t, J=6.96Hz, 3H) 2.02 (m, 4H) 2.54 (m, 1H) 2.88 (m, 2H) 3.03 (m, 4H) 3.29 (q, J=6.96Hz, 2H) 3.43 (m, 2H) 3.72 (s, 3H) 3.75 (s, 3H) 3.78 (m, 1H) 4.51 (q, J=9.33Hz, 1H) 6.78 (s, 1H) 7.56 (m, 1H) 7.68 (qd, J=8.01, 1.46Hz, 2H) 7.98 (m, 1H) 10.24 (br, 1H)
MS (APCI (M+H)+): 479
【0131】
実施例L:
2-クロロ-N-[4-(7,8-ジメトキシ-1-オキソ-2,2a,4,5-テトラヒドロ-1H-3-アザ-アセナフチレン- 3-イル)-ブチル]-ベンゼンスルホンアミド塩酸塩 (127)
【化43】

2-クロロベンゼンスルホニルクロリド(92.4mg, 0.44mmol)を、3-(4-アミノ-ブチル)-7,8-ジメトキシ-2a,3,4,5-テトラヒドロ-2H-3-アザ-アセナフチレン-1-オン二塩酸塩(150mg, 0.40mmol)と、N,N'-ジイソプロピルエチルアミン(0.400ml)とをCH2Cl2(20ml)に溶解したものに加え、混合物を室温において一晩攪拌した。生成した溶液を水(3x20ml)により洗浄し、Na2SO4上において乾燥し、蒸発乾固した。遊離塩基を酢酸エチル(2ml)に溶解した後、2.8M塩酸のエタノール溶液を加えた。生成物を結晶化し、濾過によって集め、真空乾燥し、淡褐色固形生成物(135mg, 66%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6)δppm 1.47 (m, 2H) 1.73 (m, 2H) 2.86 (m, 2H) 3.10 (m, 6H) 3.45 (m, 2H) 3.82 (s, 3H) 3.87 (s, 3H) 4.72 (m, 1H) 7.30 (s, 1H) 7.54 (m, 1H) 7.66 (m, 2H) 7.98 (m, 2H) 10.80 (br, 1H)
MS (APCI (M+H)+): 479
【0132】
上記例に記載の方法と同様にして調製した一般式(I)を有する本発明のスルホンアミド化合物の幾つかの同定についての分光学的データを、下表1に示す。
【0133】
【表1】














































【0134】
生物学的分析法
放射性リガンド結合
放射性リガンド結合分析は、CHO細胞において発現し、PerkinElmer(Cat.: 6120512)製Flashplate(Basic FlashPlate Cat: SMP200)にコーティングしたCloned Human Serotonin Receptor, Subtype 7 (h5HT7)を用いて行った。プロトコール分析法は、本質的にはPerkinElmer Life and Analytical Sciencesによるテクニカルデータシートの推奨プロトコールであった。膜タンパク質の質量(Mass membrane protein)/ウェルは典型的には12μgであり、受容体/ウェルは約9-10fmoleであった。Flashplateを室温において1時間平衡にした後、分析混合物の成分を添加した。結合緩衝液は、下記の通りであった: 10 mM MgCl2、0.5 mM EDTA、および0.5% BSAを含む50 mM Tris-HCl, pH 7.4。放射性リガンドは、最終濃度が0.82nMの[125I]LSDであった。非特異的結合は、クロザピン50μMにより測定した。分析容積は25μlであった。TopSeal-AをFlashplateマイクロプレート上に適用し、それらを暗所において室温にて240分間インキュベートした。放射能を、カウント前に4分間のカウント遅延を置き、かつウェル当たり30秒間のカウント時間により液体シンチレーション分光光度法(Wallac 1450 Microbeta Trilux)によって定量した。競合結合データは、LIGANDプログラム(Munson and Rodbard, LIGAND: A versatile, computerized approach for characterization of ligand-binding systems. Anal. Biochem. 107: 220-239, 1980)を用いて分析し、それぞれの点について3回測定により分析を行った。典型的な化合物についての結果を、下表2に示す。
【0135】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物、その薬学上許容可能な塩、その異性体、そのプロドラッグ、またはその溶媒和物:
【化1】

(上記式中、
Wは、置換または未置換アルキル、置換または未置換アルケニル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロシクリルであり、
R1、R2、R3、R4、R4B、R5、R5B、R6、およびR7は、それぞれ独立して水素、置換または未置換アルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アルケニル、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロシクリル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-HC=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9、またはハロゲンによって形成される群から選択され、
Lは、水素、置換または未置換アルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アルケニル、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロシクリル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-HC=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、または-N=CR8R9であり、ここで、R4とR4Bとの対またはR5とR5Bとの対は一緒になってカルボニル基を形成してもよく、
tは、1、2、または3であり、
R8およびR9は、それぞれ独立して水素、置換または未置換アルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アルケニル、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロシクリル、置換または未置換アルコキシ、置換または未置換アリールオキシ、ハロゲンから選択され、
nは、2、3、4、または5である)。
【請求項2】
nが3または4であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Wが、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロシクリル、好ましくは置換または未置換フェニルから選択される芳香族基であることを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Wが、アルキル、アルコキシ、および/またはハロ置換フェニルから選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R5、R5B、R6、およびR7がHであることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R1、R4、R4B、R5、およびR5BがHであるか、またはR1、R5、およびR5BがHであり、かつR4およびR4Bが一緒になってカルボニル基を形成する、先行する請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R2およびR3がアルコキシ、好ましくはメトキシであるか、またはR2がアルコキシ、好ましくはメトキシであり、かつR3がHである、請求項5または6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1-7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、その塩、その異性体、またはその溶媒和物の調製方法であって、下記式(II)の化合物:
【化2】

(上記式中、R1-R7およびnは、式(I)において定義した通りである)
と下記式(III)の化合物:
【化3】

(上記式中、Wは、(I)において定義した通りであり、Xはハロゲン、好ましくはClである)
とのカップリングを含んでなる、方法。
【請求項9】
請求項1-7のいずれか一項に定義された化合物、その薬学上許容可能な塩、そのプロドラッグ、その異性体、またはその溶媒和物、および薬学上許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルを含んでなる、医薬組成物。
【請求項10】
経口投与のための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
薬剤の製造における、請求項1-7のいずれか一項に定義された化合物の使用。
【請求項12】
前記薬剤が5-HT7依存性疾患または疾病の治療のための、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記疾患が、睡眠障害、交代勤務従業員症候群、時差ぼけ、鬱病、季節性情動障害、片頭痛、不安、精神病、統合失調症、痛み、認知および記憶障害、虚血事象から生じる神経変性、高血圧のような循環器疾患、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、痙攣性結腸、または尿失禁である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
中枢神経障害の治療または予防方法であって、治療または予防を必要とする患者に、請求項1-7のいずれか一項に定義された化合物、その薬学上許容可能な塩、その異性体、そのプロドラッグ、またはその溶媒和物の治療上有効量を投与することを含んでなる、方法。

【公表番号】特表2008−525512(P2008−525512A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548746(P2007−548746)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/014044
【国際公開番号】WO2006/069775
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(500031124)ラボラトリオス・デル・ドクトル・エステベ・ソシエダッド・アノニマ (55)
【Fターム(参考)】