説明

5HT4−アンタゴニストとしてのヒドロキシカルボニルフェニル置換4−(アミノメチル)−ピペリジンベンズアミド

【化1】


本発明は、5HT−拮抗性を有する新規な式(I)の化合物に関する。本発明はさらにそのような新規な化合物の製造方法、該新規な化合物を含んでなる製薬学的組成物ならびに該化合物の薬剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5HT−拮抗性を有する新規な式(I)の化合物に関する。本発明はさらにそのような新規な化合物の製造方法、該新規な化合物を含んでなる製薬学的組成物ならびに該化合物の薬剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、5HT−拮抗性を有する3−もしくは4−置換4−(アミノメチル)−ピペリジン誘導体の二環式ベンズアミドを開示している。
【特許文献1】国際公開第00/37461号パンフレット
【発明の開示】
【0003】
本発明の化合物は、異なるL基部分の存在により、上記引用の当該技術分野において既知の化合物と構造的に異なる。
【0004】
予期せぬことに、本式(I)の化合物は特許文献1に開示された化合物と比較して向上した代謝安定性を有する。
【0005】
本発明は、式(I)
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、
−R−R−は式
−O−CH−O− (a−1)
−O−CH−CH− (a−2)
−O−CH−CH−O− (a−3)
−O−CH−CH−CH− (a−4)
−O−CH−CH−CH−O− (a−5)
−O−CH−CH−CH−CH− (a−6)
−O−CH−CH−CH−CH−O− (a−7)
−O−CH−CH−CH−CH−CH− (a−8)
の2価の基であり、ここで該2価の基において、場合により同じかもしくは異なる炭素原子上の1もしくは2個の水素原子はC1−6アルキル又はヒドロキシにより置き換えられていることができ;
は水素、ハロ、C1−6アルキル又はC1−6アルキルオキシであり;
は水素、ハロ、C1−6アルキル;シアノもしくはC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキル;C1−6アルキルオキシ;シアノ;アミノ又はモノもしくはジ(C1−6アルキル)アミノであり;
は水素又はC1−6アルキルであり、且つ−OR基はピペリジン部分の3−もしく
は4−位に位置し;
Lは式
−Alk−R (b−1)
−Alk−X−R (b−2)
−Alk−Y−C(=O)−R (b−3)
の基であり、ここで各AlkはC1−12アルカンジイルであり;そして
はアリールであり;
はアリールであり;
XはO、S、SO又はNRであり;該Rは水素又はC1−6アルキルであり;
はアリールであり;
Yは直接結合、O、S又はNR10であり、ここでR10は水素又はC1−6アルキルであり;そして
アリールはヒドロキシカルボニルからそれぞれ独立して選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルを示す]
の化合物、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態あるいはその製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩に関する。
【0008】
前記の定義において用いられる場合、ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの総称であり;C1−4アルキルは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状及び分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、1−メチル−エチル、2−メチルプロピルなどを定義し;C1−6アルキルはC1−4アルキル及び5もしくは6個の炭素原子を有するその高級同族体、例えば2−メチル−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含むものとし;C1−12アルカンジイルは1〜12個の炭素原子を含有する2価の直鎖状もしくは分枝鎖状炭化水素基、例えばメタンジイル、1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイル、1,5−ペンタンジイル、1,6−ヘキサンジイル、1,7−ヘプタンジイル、1,8−オクタンジイル、1,9−ノナンジイル、1,10−デカンジイル、1,11−ウンデカンジイル、1,12−ドデカンジイルならびにそれらの分枝異性体を定義する。C1−4アルカンジイルは1〜4個の炭素原子を含有する2価の直鎖状もしくは分枝鎖状炭化水素基、例えばメタンジイル、1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル及び1,4−ブタンジイルを定義する。
【0009】
本明細書前記で用いられる場合、「立体化学的異性体」という用語は、式(I)の化合物が有し得るすべての可能な異性体を定義する。他にことわるか又は指示しなければ、化合物の化学的名称は、基となる分子構造のすべてのジアステレオマー及びエナンチオマーを含有するすべての可能な立体化学的異性体の混合物を示す。さらに特定的に、ステレオジェン中心はR−もしくはS−立体配置を有することができ;2価環状(部分的)飽和基上の置換基はシス−もしくはトランス−立体配置のいずれかを有することができる。二重結合を含む化合物は、該二重結合においてE又はZ−立体化学を有し得る。式(I)の化合物の立体化学的異性体は明らかに本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0010】
本明細書上記で言及される製薬学的に許容され得る酸及び塩基付加塩は、式(I)の化合物が形成することができる治療的に活性な無毒性酸及び塩基付加塩の形態を含んでなるものとする。製薬学的に許容され得る酸付加塩は、塩基の形態をそのような適した酸で処理することにより簡単に得ることができる。適した酸には例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸又は臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など;あるいは有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(すなわちエタン二酸)、マロン酸、コハク酸(すなわちブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸などが含まれる。
【0011】
逆に適した塩基を用いる処理により、該塩の形態を遊離の塩基の形態に転換することができる。
【0012】
酸性プロトンを含有する式(I)の化合物を、適した有機及び無機塩基を用いる処理により、それらの無毒性金属もしくはアミン付加塩の形態に転換することもできる。適した塩基塩の形態は、例えばアンモニウム塩、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基との塩、例えばベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、ヒドラバミン塩ならびに例えばアルギニン、リシンなどのようなアミノ酸との塩を含む。
【0013】
本明細書上記で用いられる付加塩という用語は、式(I)の化合物ならびにその塩が形成することができる溶媒和物も含んでなる。そのような溶媒和物は、例えば水和物、アルコラートなどである。
【0014】
式(I)の化合物のいくつかはそれらの互変異性体においても存在し得る。そのような形態は、上記の式において明白に指示されてはいないが、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0015】
当該技術分野において既知の方法で製造することができる式(I)の化合物のN−オキシド形態は、1もしくは数個の窒素原子がN−オキシドに酸化されている式(I)の化合物を含むものとする。特にピペリジン−窒素がN−酸化されているN−オキシドが意図されている。
【0016】
興味深い化合物の群は、以下の制限の1つもしくはそれより多くが適用される式(I)の化合物から成る:
a)−R−R−が式(a−5)の基である;及び/又は
b)Rが水素、ハロ、メチル又はメトキシである;及び/又は
c)Rが水素、ハロ又はメチルである;及び/又は
d)Rがフルオロである;及び/又は
e)アリールがヒドロキシカルボニルで置換されたフェニルを示す;及び/又は
f)Rが水素又はメチルであり、且つ−OR基がピペリジン環の3−もしくは4−位に位置する;及び/又は
g)Rが水素又はメチルであり、且つ−OR基がピペリジン環の3−位に位置する;及び/又は
h)Rが水素又はメチルである−OR基がピペリジン環の3−位に位置し、且つピペリジン部分の4−位上のメチレンに関してトランス位置にある;及び/又は
i)Rが水素又はメチルである−OR基がピペリジン環の3−位に位置し、且つピペリジン部分の4−位上のメチレンに関してトランス位置にあり、そして該ピペリジン部分の絶対立体配置が(3S,4S)である;及び/又は
j)Lが式(b−2)の基であり、ここでAlkはC1−4アルカンジイルであり、XはOを示し、Rはアリールであり、ここでアリールはヒドロキシカルボニルで置換されたフェニルである。
【0017】
他の興味深い化合物は、
−R−R−が式
−O−CH−CH−CH−O− (a−5)
の2価の基であり、
が水素、ハロ、C1−6アルキル又はC1−6アルキルオキシであり;
が水素、ハロ又はC1−6アルキルであり;
が水素又はC1−6アルキルであり、且つ−OR基がピペリジン部分の3−もしくは4−位に位置し;
Lが式
−Alk−X−R (b−2)
の基であり、ここで各AlkはC1−12アルカンジイルであり;そして
がアリールであり;
XがOであり;
アリールがヒドロキシカルボニルで置換されたフェニルを示す
式(I)の化合物である。
【0018】
特別な化合物は、好ましくはヒドロキシ又はメトキシを示す−OR基が、トランス立体配置を有するピペリジン部分の3−位に位置する、すなわち−OR基がピペリジン部分上のメチレンに関してトランス位置にある式(I)の化合物である。
【0019】
さらに特別な化合物は、2価の基−R−R−が式(a−5)の基であり、−OR基がヒドロキシを示し、且つ(3S−トランス)立体配置を有するピペリジン部分の3−位に位置する式(I)の化合物であり、それは該ピペリジン部分の絶対(3S,4S)立体配置に相当する。
【0020】
好ましい化合物は、Lが式(b−2)の基であり、ここでAlkはC1−4アルカンジイルであり、Rはアリールであり、ここでアリールはヒドロキシカルボニルで置換されたフェニルであるさらに特別な化合物である。
【0021】
より好ましい化合物は、Alkが1,3−プロパンジイル又は1,4−ブタンジイルであり、Rがアリールであり、ここでアリールはフェニル部分の3−もしくは4−位に位置するヒドロキシカルボニルで置換されたフェニルである好ましい化合物である。
【0022】
最も好ましい化合物は、Alkが1,3−プロパンジイルであるより好ましい化合物である。
【0023】
式(I)の化合物は、式(II)の中間体を式(III)のカルボン酸誘導体又は場合によりその反応性官能基誘導体、例えばカルボニルイミダゾール誘導体、アシルハライドもしくは混合無水物と反応させることにより製造することができる。該アミド−結合形成は適した溶媒中で、場合によりトリエチルアミンのような塩基の存在下に、反応物を攪拌することにより行なうことができる。置換基R、R及びR中に存在するヒドロキシカルボニル基は通常、上記の反応順においてエステルの形態で保護され、それはアミド−結合形成反応の後に塩基性条件下における加水分解により除去される。
【0024】
【化2】

【0025】
置換基R、R及びR中に存在するヒドロキシカルボニル基は通常、上記の反応順においてエステルの形態で保護され、それはアミド−結合形成反応の後に塩基性条件下における加水分解により除去される。
【0026】
一般に式(IV)の中間体を用いて式(V)の中間体をN−アルキル化することにより式(I)の化合物を製造することもでき、ここでWは適した離脱基、例えばハロ、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードであるか、又はいくつかの場合には、Wはスルホニルオキシ基、例えばメタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシなどの反応性離脱基であることもできる。反応は、反応に不活性な溶媒、例えばアセトニトリル、2−ペンタノール、イソブタノール、ジメチルアセトアミド又はDMF中で、且つ場合により適した塩基、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、N−メチルピロリドン又はトリエチルアミンの存在下で行なうことができる。攪拌は反応の速度を増すことができる。反応は室温〜反応混合物の還流温度の範囲の温度で簡便に行なうことができる。
【0027】
【化3】

【0028】
置換基R、R及びR中に存在するヒドロキシカルボニル基は通常、上記の反応順においてエステルの形態で保護され、それはアミド−結合形成反応の後に塩基性条件下における加水分解により除去される。
【0029】
式(V)の中間体は、PGが当該技術分野において既知の適した保護基、例えばtert−ブトキシカルボニル又はベンジル基あるいは光除去可能な基を示す式(VII)の中間体を式(III)の酸又はその適した反応性官能基誘導体、例えばカルボニルイミダゾール誘導体と反応させ、続いてかくして生成する中間体を当該技術分野において既知の方法により脱保護する、すなわちPGを除去することにより製造することができる。
【0030】
【化4】

【0031】
さらに当該技術分野において既知の基の変換反応に従い、式(I)の化合物を互いに転換することにより、式(I)の化合物を製造することができる。
【0032】
出発材料及び中間体のいくつかは既知化合物であり、商業的に入手可能であるか、又は当該技術分野において一般に既知の通常の反応法に従って製造することができる。例えば国際公開第99/02156号パンフレット又は国際公開第00/37461号パンフレットに記載されている方法に従い、式(II)又は(VI)の中間体を製造することができる。
【0033】
式(VI)の中間体は、国際公開第99/02156号パンフレット又は国際公開第00/37461号パンフレットにおいて、そこに記載されている式(VIII)の中間体に関して記載されている一般的方法に従って製造することができる。
【0034】
上記で記載した方法で製造される式(I)の化合物は、エナンチオマーのラセミ混合物の形態で合成され得、それを当該技術分野において既知の分割法に従って互いから分離することができる。式(I)のラセミ化合物を、適したキラル酸との反応により対応するジアステレオマー塩の形態に転換することができる。該ジアステレオマー塩の形態を、続いて例えば選択的又は分別結晶化により分離し、アルカリによりそこからエナンチオマーを遊離させる。式(I)の化合物のエナンチオマーの形態を分離する別の方法は、キラル固定相を用いる液体クロマトグラフィーを含む。該純粋な立体化学的異性体を、適した出発材料の対応する純粋な立体化学的異性体から誘導することもでき、但し、反応は立体特異的に起こる。好ましくは、特定の立体異性体が望まれる場合、該化合物は立体特異的製造方法により合成されるであろう。これらの方法は有利にはエナンチオマー的に純粋な出発材料を用いるであろう。
【0035】
式(I)の化合物、そのN−オキシド形態、製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩及び立体異性体は、実施例C.1に記載される通り5HT−拮抗性を有する。
【0036】
さらに式(I)の化合物は、実施例C.2に記載される通り、向上した代謝安定性を示した。これらの有利な代謝安定性は、シトクロムP450酵素、例えばCYP1A2、CYP3A4、CYP2D6、CYP2C9及びCYP2C19のレベル上での薬剤−薬剤相互作用の危険を低下させ、従って本化合物は向上した薬剤安全性の側面を有する。さらに、これらの有利な代謝安定性は、1日当たり2〜4回の摂取の管理における活性成分の通常の投与の代わりに、1日1回の式(I)の化合物の投与を可能にすることができ、それによって、より多くの患者にコンプライアンスを与える。
【0037】
本発明の化合物の5HT−拮抗性の観点から、本化合物を一般に過剰運動性、過敏性腸症候群(IBS)、便秘−もしくは下痢−優勢(predominant)IBS、疼痛−及び非−疼痛−優勢IBS、腸過敏症のような胃腸状態の処置もしくは予防ならびに胃腸過敏症及び/又は過剰活性に伴う疼痛の減少において用いることができる。
【0038】
式(I)の化合物は、障害のある、妨げられたもしくは損なわれた胃適応、例えば消化不良の防止もしくは予防においても有用であると思われる。消化不良症状は、例えば上胃部圧(epigastric pressure)、食欲不振、満腹感、早期満足(early satiety)、吐気、嘔吐、鼓腸及びガスおくび(gaseous eructation)である。
【0039】
式(I)の化合物は神経性過食症及び過食症のような他の5HT−関連障害の処置においても有用であり得る。
【0040】
式(I)の化合物の有用性の観点から、本発明は過敏性腸症候群(IBS)のような胃腸状態に苦しむ人間を含む温血動物(本明細書で一般に患者と呼ばれる)の処置方法も提供することになる。結局、過剰運動性、過敏性腸症候群(IBS)、便秘−もしくは下痢−優勢IBS、疼痛−及び非−疼痛−優勢IBS、腸過敏症のような状態に苦しむ患者を助けるため、ならびに胃腸過敏症及び/又は過剰活性に伴う疼痛を減少させるための処置方法を提供する。
【0041】
式(I)の化合物は、消化管上部運動性(upper gut motility)に関連するもののような他の胃腸障害においても有用な可能性がある。特にそれらは胃−食道逆流疾患の胃症状、例えば胸焼け(偶発的胸焼け、夜行性胸焼け及び食事−誘導胸焼けを含む)の処置において有用な可能性がある。
【0042】
さらに式(I)の5HT−拮抗性化合物は、膀胱過敏症、過剰活性膀胱(overactive bladder)、下部尿路症状(lower urinary tract symptoms)、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺炎、排尿筋反射亢進、排出口閉塞、頻尿、夜間頻尿症、尿意緊迫、骨盤過敏症、切迫尿失禁、尿道炎、前立腺痛、膀胱炎、突発性膀胱過敏症、尿失禁又は過敏性腸症候群と関連する尿失禁の処置もしくは予防においても有用な可能性があり得る。これに関し、式(I)の5HT−拮抗性化合物をアルファ−アドレノセプターアンタゴニスト、例えばアルフゾシン(alfuzosin)、インドラミン(indoramin)、タムスロシン(tamsulosin)、ドキサゾシン(doxazosin)、テラゾシン(terazosin)、アバノクイル(abanoquil)又はプラゾシン(prazosin)と組み合わせ、そのようなアルファ−アドレノセプターアンタゴニストと式(I)の5−HT−レセプターアンタゴニストを含んでなる製薬学的組成物を得るのが有利であり得る。
【0043】
従って本発明は、薬剤として用いるための式(I)の化合物、そして特に過剰運動性、IBS、便秘−もしくは下痢−優勢IBS、疼痛−及び非−疼痛−優勢IBS、腸過敏症のような胃腸状態の処置ならびに胃腸過敏症及び/又は過剰活性に伴う疼痛の減少用の薬剤の製造のための式(I)の化合物の使用を提供する。予防的及び治療的処置の両方が意図されている。
【0044】
本発明の化合物の5HT−拮抗性の観点から、本化合物は人間における5HT−関連CNS障害の処置もしくは予防においても有用であり得る。特に式(I)の化合物を薬物乱用、認知障害、例えばアルツハイマー病、老年痴呆;行動障害、例えば精神分裂病、躁病、強迫障害及び精神活性物質使用障害;気分障害、例えばうつ病、双極性情動障害、不安及びパニック障害;自律神経機能の調節の障害、例えば高血圧及び睡眠障害;食欲不振及び過食症を含む強迫障害ならびに神経精神医学的障害、例えばジル・ド・ラ・ツレット症候群及びハンチングトン病を含むがこれらに限られない多様なCNS障害の処置に用いることができる。
【0045】
本発明の製薬学的組成物の調製のために、塩基もしくは酸付加塩の形態にある特定の化合物の活性成分として有効な量を、製薬学的に許容され得る担体と緊密な混合物において合わせ、その担体は、投与のために望ましい調製物の形態に依存して多様な形態をとることができる。望ましくはこれらの製薬学的組成物は、好ましくは経口的、直腸的又は非経口的注入による投与に適した単位投薬形態にある。例えば経口的投薬形態における組成物の調製において、通常の製薬学的媒体のいずれか、例えば懸濁剤、シロップ、エリキサー及び溶液のような経口用液体調製物の場合、水、グリコール、油、アルコールなど;あるいは粉剤、丸薬、カプセル及び錠剤の場合、澱粉、糖類、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などのような固体担体を用いることができる。それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセルは最も有利な経口的投薬単位形態物を与え、その場合には固体の製薬学的担体が用いられるのは明らかである。非経口用組成物の場合、担体は通常少なくとも大部分において無菌水を含んでなるが、例えば溶解性を助けるための他の成分が含まれることができる。例えば担体が食塩水、グルコース溶液又は食塩水とグルコース溶液の混合物を含んでなる注入可能な溶液を調製することができる。注入可能な懸濁剤も調製することができ、その場合には適した液体担体、懸濁化剤などを用いることができる。経皮投与に適した組成物において、担体は場合により浸透促進剤及び/又は適した湿潤剤を含んでなることができ、それらは場合により皮膚に有意な悪影響を引き起こさない小さい割合におけるいずれかの性質の適した添加剤と組み合わされていることができる。該添加剤は皮膚への投与を容易にすることができるか、及び/又は所望の組成物の調製の助けとなることができる。これらの組成物を種々の方法で、例えば経皮パッチとして、スポット−オン(spot−on)として、軟膏として投与することができる。(I)の酸付加塩は、対応する塩基の形態より高い水溶性のために、明らかに水性組成物の調製により適している。
【0046】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、前記の製薬学的組成物を投薬単位形態物において調製するのが特に有利である。本明細書及び請求項で用いられる投薬単位形態物は、1回の投薬量として適した物理的に分離された単位を指し、各単位は所望の治療効果を生むために計算されたあらかじめ決められた量の活性成分を、必要な製薬学的担体と一緒に含有する。そのような単位投薬形態物の例は錠剤(刻み付き又はコーティング錠を含む)、カプセル、丸薬、粉剤小包、ウェハース、注入可能な溶液又は懸濁剤、小さじ一杯、大さじ一杯など、ならびに分離されたそれらの複数である。
【0047】
経口的投与のために、製薬学的組成物は、製薬学的に許容され得る賦形剤、例えば結合剤(例えば予備ゼラチン化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸カルシウム);滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えばポテトデンプン又はナトリウムデンプングリコレート);あるいは湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)を用いて通常の手段により調製される固体投薬形態物、例えば錠剤(嚥下のみ及びチュアブル形態の両方)、カプセル又はゲルカップ(gelcups)の形態をとることができる。当該技術分野において周知の方法により、錠剤をコーティングすることができる。
【0048】
経口的投与のための液体調製物は、例えば溶液、シロップ又は懸濁剤の形態をとることができるか、あるいはそれらを使用前に水もしくは他の適したビヒクルを用いて構成するための乾燥製品として与えることができる。そのような液体調製物は通常の手段により、場合により製薬学的に許容され得る添加剤、例えば懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又は水素化食用脂肪);乳化剤(例えばレシチン又はアラビアゴム);非−水性ビヒクル(例えばアーモンド油、油性エステル又はエチルアルコール);ならびに防腐剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル又はソルビン酸)を用いて調製することができる。
【0049】
製薬学的に許容され得る甘味料は、好ましくは少なくとも1種の強力甘味料、例えばサッカリン、サッカリンナトリウムもしくはカルシウム、アスパルテーム、アセスルフェームカリウム、シクラミン酸ナトリウム、アリテーム、ジヒドロカルコン甘味料、モネリン、ステビオシド又はスクラロース(4,1’,6’−トリクロロ−4,1’,6’−トリデオキシガラクトスクロース)、好ましくはサッカリン、サッカリンナトリウムもしくはカルシウムならびに場合によりバルク甘味料(bulk sweetener)、例えばソルビトール、マンニトール、フルクトース、スクロース、マルトース、イソマルト、グルコース、水素化グルコースシロップ、キシリトール、カラメル又はハチミツを含んでなる。
【0050】
強力甘味料は、簡便には低濃度で用いられる。例えばサッカリンナトリウムの場合、濃度は最終的調製物の合計体積に基づいて0.04%〜0.1%(w/v)の範囲であることができ、好ましくは低−投薬量調製物において約0.06%及び高−投薬量調製物において約0.08%である。バルク甘味料は、約10%〜約35%、好ましくは約10%〜15%(w/v)の範囲の比較的多い量において有効に用いられ得る。
【0051】
低−投薬量調製物中の苦い味の成分を隠蔽することができる製薬学的に許容され得る風味料は、好ましくは果実風味料、例えばチェリー、ラズベリー、黒スグリ又はイチゴ風味料である。2種の風味料の組み合わせは非常に良い結果を与えることができる。高−投薬量調製物の場合、より強い風味料、例えばカラメルチョコレート風味料、ミントクール風味料、ファンタジー風味料などの製薬学的に許容され得る強い風味料が必要であり得る。各風味料は、0.05%〜1%(w/v)の範囲の濃度で最終的組成物中に存在すること
ができる。該強い風味料の組み合わせは有利に用いられる。好ましくは、調製物の酸性条件下で味及び色のいずれの変化もしくは喪失も経ない風味料が用いられる。
【0052】
本発明の調製物は、場合により抗−鼓腸薬(anti−flatulent)、例えばシメチコン、アルファ−D−ガラクトシダーゼなどを含むことができる。
【0053】
本発明の化合物をデポ調製物として調製することもできる。そのような長時間作用性調製物を移植により(例えば皮下にもしくは筋肉内に)、又は筋肉内注入により投与することができる。かくして例えば化合物を適したポリマー性もしくは疎水性材料(例えば許容され得る油中の乳剤として)又はイオン交換樹脂を用いて、あるいはわずかにしか可溶性でない誘導体として、例えばわずかにしか可溶性でない塩として調製することができる。
【0054】
本発明の化合物を注入、簡便には静脈内、筋肉内もしくは皮下注入による、例えばボーラス注入(bolus injection)又は継続的静脈内輸液による非経口的投与用に調製することができる。注入用の調製物を単位投薬形態で、例えばアンプル中で、又は防腐剤が加えられた多投薬量容器中で与えることができる。組成物は油性もしくは水性ビヒクル中の懸濁剤、溶液又は乳剤のような形態をとることができ、調製剤、例えば等張化剤、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤を含有することができる。あるいはまた活性成分は、使用前に適したビヒクル、例えば無菌の発熱物質を含まない水を用いて構成するための粉末形態にあることができる。
【0055】
本発明の化合物を、例えば通常の座薬基剤、例えばココアバター又は他のグリセリドを含有する座薬又は貯留浣腸(retention enemas)のような直腸用組成物において調製することもできる。
【0056】
鼻内投与のために、本発明の化合物を例えば液体スプレーとして、粉剤としてあるいは滴剤の形態で用いることができる。
【0057】
一般に治療的に有効な量は、体重のkg当たり約0.0001mg〜約1mg、好ましくは体重のkg当たり約0.001mg〜約0.5mgであろうことが意図されている。実験部分
下記に記載する方法において、以下の略語が用いられた:「ACN」はアセトニトリルを示し;「THF」はテトラヒドロフランを示し;「DCM」はジクロロメタンを示し;「DIPE」はジイソプロピルエーテルを示し;「DMF」はジメチルホルムアミドを示し、「DMA」はジメチルアセトアミドを示す。
【0058】
いくつかの化学品の場合に化学式を、例えば水酸化ナトリウムの場合にNaOH、炭酸ナトリウムの場合にNaCO、炭酸カリウムの場合にKCO、酸化銅(II)の場合にCuO、亜硝酸ナトリウムの場合にNaNO、ジクロロメタンの場合にCHCl、メタノールの場合にCHOH、アンモニアの場合にNH、塩酸の場合にHCl、テトラフルオロホウ酸ナトリウムの場合にNaBFを用いた。
【0059】
Chiralcel ADは、日本のDaicel Chemical Industries,LTdから購入されるキラル固定相カラム材料である。
A.中間体の製造
[実施例A.1]
【0060】
【化5】

【0061】
2−プロパノン(360ml)中の2,3−ジヒドロキシ−5−メチル安息香酸メチル(0.198モル)、1,3−ジブロモプロパン(0.198モル)及びKCO(0.396モル)の混合物を6時間攪拌し、還流させ、次いで冷却し、溶媒を蒸発させた。混合物を氷水中に注ぎ出し、濾過した。濾液を酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離剤:シクロヘキサン/酢酸エチル 80/20から70/30)、中間体(1)を与えた。
【0062】
【化6】

【0063】
NaOH溶液2N(370ml)及びTHF(370ml)の混合物中の中間体(1)(0.1129モル)の混合物を室温で15時間攪拌した。THFを蒸発させ、HCl 12Nを用いて混合物を酸性化した。沈殿を濾過し、水で洗浄し、乾燥し、21.9gの中間体(2)(融点74℃)を与えた。
[実施例A.2]
【0064】
【化7】

【0065】
2−プロパノン(2500ml)中の2,3−ジヒドロキシ−4−メチル−安息香酸メチルエステル(1.2モル)、1,3−ジブロモ−プロパン(152ml)及びKCO(380g)の混合物を20時間攪拌し、還流させた。反応混合物を冷却し、濾過し、濾液を蒸発させ、300mgの中間体(3)を与えた。
【0066】
【化8】

【0067】
NaOH(2M)(1800ml)及びTHF(500ml)中の中間体(3)(1.12モル)の混合物を3時間攪拌し、還流させた。反応混合物を冷却し、有機溶媒を蒸発させた。HClを用いて水性濃厚物を酸性化し、得られる沈殿を濾過し、水で洗浄し、乾燥し、403gの中間体(4)を与えた。
[実施例A.3]
【0068】
【化9】

【0069】
2−プロパノン(500ml)中の5−クロロ−2,3−ジヒドロキシ−安息香酸メチルエステル(0.3モル)、1,3−ジブロモ−プロパン(0.42モル)及びKCO(0.66モル)の混合物を20時間攪拌し、還流させ、次いで熱濾過し、濾液を蒸発させた。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:DCM)。所望の画分を集め、溶媒を蒸発させた。トルエンを加え、回転蒸発器上で共沸させ、69gの8−クロロ−3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−カルボン酸メチル(中間体5)を与えた。
【0070】
【化10】

【0071】
水(650ml)中の中間体(5)(0.25モル)及びKOH(1モル)の混合物を2時間攪拌し、還流させた。反応混合物を冷却し、HClを用いて酸性化し、得られる沈殿を濾過し、水で洗浄し、乾燥し、48gの8−クロロ−3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−カルボン酸(中間体6)を与えた。
[実施例A.4]
【0072】
【化11】

【0073】
DMF(2500ml)中の2,3−ジヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸メチルエステル(0.45モル)、1,3−ジブロモプロパン(0.72モル)、KCO(155g)及びCuO(3.6g)の混合物を120℃〜130℃で7時間攪拌し、冷却し、濾過した。溶媒を蒸発させた。HCl(0.5Nの水溶液,1000ml))を加えた。混合物をDCM(750ml)で2回抽出した。有機層を分離し、乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル/DCM 70/30/15)。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させた。残留物をDIPEから結晶化させ、3,4−ジヒドロ−9−メトキシ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−カルボン酸メチル(中間体7)を与えた。
【0074】
【化12】

【0075】
THF(250ml)中の中間体(7)の溶液にNaOH溶液(500ml,2N)を加えた。混合物を室温で終夜攪拌した。溶媒を部分的に蒸発させた。残留物をDCMで抽出した。混合物をその層に分離させた。濃HCl溶液を用い、水層をpH=1〜2まで酸性化した。固体を濾過し、水で洗浄し、乾燥し、35.5gの9−メトキシ−3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−カルボン酸(中間体8)を与えた。
[実施例A.5]
【0076】
【化13】

【0077】
酢酸(2000ml)中の5−クロロ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸メチルエステル(0.49モル)の混合物を攪拌し、還流させた。酢酸(600ml)中のN−クロロスクシンイミド(0.49モル)の溶液を還流において滴下した。反応混合物を30分間攪拌し、還流させた。余分の(extra)酢酸(100ml)中のN−クロロスクシンイミド(0.075モル)の溶液を還流において滴下した。反応混合物を30分間攪拌し、還流させ、次いで冷却し、水(500ml)中に注ぎ出した。残留物をトルエンで抽出した(3回)。分離された有機層を水で洗浄し、乾燥し、蒸発させた。残留物をDIPE及び石油エーテルから結晶化させ、70gの中間体(9)を与えた。
【0078】
【化14】

【0079】
2−プロパノン(1000ml)中の中間体(9)(0.3モル)、1,3−ジブロモプロパン(0.35モル)及びKCO(0.7モル)の混合物を30時間攪拌し、還流させた。反応混合物を冷却し、水(2000ml)で希釈し、DCMで2回抽出した。分離された有機層を水で洗浄し、乾燥し、溶媒を蒸発させた。残留物をDIPE及び石油ベンジンから結晶化させ、55gの中間体(10)を与えた。
【0080】
【化15】

【0081】
水(1000ml)中の中間体(10)(0.2モル)及びKOH(1モル)の混合物を90分間攪拌し、還流させた。反応混合物を冷却し、HClを用いて酸性化し、得られる沈殿を濾過し、水で洗浄し、乾燥し、46gの中間体(11)を与えた。
[実施例A.6]
【0082】
【化16】

【0083】
酢酸(250ml)及びN−ブロモスクシンイミド(0.11モル)中の5−クロロ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸メチルエステル(0.1モル)の混合物を4時間攪拌し、還流させた。反応混合物を冷却し、水(500ml)中に注ぎ出した。沈殿を濾過し、乾燥し、23gの中間体(12)を与えた。
【0084】
【化17】

【0085】
2−プロパノン(1300ml)中の中間体(12)(0.7モル)、1,3−ジブロモプロパン(0.94モル)及びKCO(1.55モル)の混合物を20時間攪拌し、還流させた。反応混合物を冷却し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物を石油エーテル中で固化させ、濾過し、乾燥し、240gの中間体(13)を与えた。
【0086】
【化18】

【0087】
水(160ml)中の中間体(13)(0.053モル)及びKOH(0.2モル)の混合物を90分間攪拌し、還流させた。反応混合物を冷却し、水層をDCMで抽出した。HClを用いて水層を酸性化し、得られる沈殿を濾過し、水で洗浄し、乾燥し、13gの中間体(14)を与えた。
[実施例A.7]
【0088】
【化19】

【0089】
2−プロパノン(900ml)及びDMA(600ml)中の5−ニトロ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸メチルエステル(0.3モル)、KCO(0.66モル)、1,3−ジブロモプロパン(0.42モル)及びテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(4.5g)の混合物を30時間攪拌し、還流させた。反応混合物を室温で2日間攪拌し、次いで濾過した。溶媒を蒸発させ、残留物を水とDCMに分配した。分離された有機層を乾燥し、濾過し、濃縮した。残留物をDIPE中に懸濁させ、濾過し、乾燥し、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離剤:CHCl/CHOH 9
8/2)、33.5gの中間体(15)を与えた。
【0090】
【化20】

【0091】
THF(250ml)中の中間体(15)(0.11モル)の混合物を、チオフェン−溶液(1ml)の存在下に、触媒として炭素上のパラジウム10%(3g)を用いて水素化した。水素(3当量)の吸収の後、触媒をジカライト上で濾過し、濾液を濃縮し、24.7gの中間体(16)を与えた。
【0092】
【化21】

【0093】
水(10ml)中の濃HCl(10ml)の混合物に、中間体(16)(0.0448モル)を5℃で分けて加えた。混合物を0℃とした。水(10ml)中のNaNO(0.048モル)の溶液を0℃で滴下した。混合物を0℃〜5℃の温度で1時間攪拌し、次いで濾過した。濾液を0℃に冷却し、次いで水(20ml)中のNaBF(0.076モル)の溶液に加えた。混合物を0℃で30分間攪拌した。沈殿を濾過し、最少量の水、次いでジエチルエーテル/水(50/50)、次いでジエチルエーテルで洗浄し、真空下に、室温で乾燥し、12.10gの中間体(17)を与えた。
【0094】
【化22】

【0095】
トルエン(120ml)中の中間体(17)(0.0387モル)及びフッ化ナトリウム(0.1549モル)の混合物を終夜攪拌し、還流させ、次いで室温とした。沈殿を濾過した。濾液をトルエンで洗浄し、蒸発乾固した。残留物をDCM中に取り上げた。溶媒を蒸発乾固した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離剤:DCM)、2.8gの中間体(18)を与えた。
【0096】
【化23】

【0097】
NaOH溶液(2N,25ml)及びTHF(25ml)中の中間体(18)(0.0
124モル)の混合物を室温で終夜攪拌した。THFを蒸発させ、酢酸エチルを加えた。混合物を酢酸エチルで抽出し、次いでHClを用いてpH2が得られるまで酸性化した。沈殿を濾過し、水、次いでジエチルエーテルで洗浄し、乾燥し、2.16gの中間体(19)を与えた。
[実施例A.8]
【0098】
【化24】

【0099】
メタノール(100ml)中の(トランス)−3−ヒドロキシ−4−[[(フェニルメチル)アミノ]メチル]−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル[国際公開第00/37461号パンフレットに中間体(1−d)として記載されている](0.023モル)の混合物を、触媒として炭素上のパラジウム(10%,1g)を用いて水素化した。水素(1当量)の吸収後、触媒を濾過し、濾液を蒸発させた。残留物をDIPE+ACN中で固化させ、濾過し、乾燥し、4gの(トランス)−4−(アミノメチル)−3−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル(中間体20,融点178℃)を与えた。
[実施例A.9]
【0100】
【化25】

【0101】
(トランス)−3−ヒドロキシ−4−[[(フェニルメチル)アミノ]メチル]−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル[国際公開第00/37461号パンフレットに中間体(1−d)として記載されている](2.73モル)をChiralcel AD上のキラルカラムクロマトグラフイーにより分離し、精製した(溶離剤:ヘキサン/エタノール 80/20)。所望の画分を集め、溶媒を蒸発させた。トルエンを加え、回転蒸発器上で共沸させ、377gの(3S−トランス)−3−ヒドロキシ−4−[[(フェニルメチル)アミノ]メチル]−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル(中間体21)を与えた。
【0102】
【化26】

【0103】
メタノール(100ml)中の中間体(21)(0.028モル)の混合物を、触媒として炭素上のパラジウム(10%,2g)を用いて水素化した。水素(1当量)の吸収の後、触媒を濾過し、濾液を蒸発させ、4.7gの(3S−トランス)−4−(アミノメチル)−3−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルを与えた(中間体(22);[α]20=+4.37(c=CHOH中で5ml当たり24.03mg))。
[実施例A.10]
【0104】
【化27】

【0105】
窒素雰囲気下における反応。THF(1300ml)中のトランス−3−ヒドロキシ−4−[[[(4−メチルフェニル)スルホニル]オキシ]メチル]−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル[国際公開第00/37461号パンフレットに中間体(1−c)として記載されている](0.27モル)の溶液に水素化ナトリウム(0.3モル)を加えた。混合物を30分間攪拌した。ヨウ化メチル(0.54モル)を加え、得られる反応混合物を90分間攪拌した。少量の水を加えた。溶媒を蒸発させ、残留物を水とDCMに分配した。有機層を分離し、乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、トランス−4−[[[(4−メチルフェニル)スルホニル]オキシ]メチル]−3−メトキシ−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルを与えた(中間体23)。
【0106】
【化28】

【0107】
THF(250ml)中の中間体(23)(0.065モル)の混合物を、オートクレーブ中で125℃において液体NHを用い、16時間処理した。反応混合物を濾過し、濾液を蒸発させた。残留物を5%NaOH水溶液とDCMに分配した。有機層を分離し、乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、16gの(トランス)−4−(アミノメチル)−3−メトキシ−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルを与えた(中間体(24)。
[実施例A.11]
【0108】
【化29】

【0109】
DCM(1000ml)中の中間体(2)(0.336モル)及びトリエチルアミン(0.4モル)の混合物を5℃で攪拌し、次いでクロロギ酸エチル(0.35モル)を滴下し、反応混合物を30分間攪拌した。この混合物に、DCM(1000ml)中の中間体(22)(83g)の溶液を5℃で加え、次いで反応混合物が室温に達するのを許し、水で洗浄した。有機層を分離し、乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、150gの中間体(25)を与えた。
【0110】
【化30】

【0111】
HClで飽和した2−プロパノール(160ml)及び2−プロパノール(1400ml)中の中間体(25)(0.336モル)の混合物を1時間攪拌し、還流させた。溶媒を蒸発させ、残留物をDCMと少量のメタノールの混合物中に取り上げた。混合物をアンモニア水で洗浄し、有機層を分離し、乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させ、71gの中間体(26)を与えた。
【0112】
【表1】

【0113】
B.最終的化合物の製造
[実施例B.1]
【0114】
【化31】

【0115】
アセトニトリル(50ml)中の中間体(27)(0.0156モル)、エチル 2−(3−クロロプロポキシ)−安息香酸エステル(0.0187モル)及びKCO(0.037モル)の混合物を終夜還流させ、氷水中に注ぎ出し、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:CHCl/CHOH/NHOH 94/6/0.5)。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させ、中間体(37)(融点116℃)を与えた。
【0116】
【化32】

【0117】
THF(30ml)及び水(30ml)中の中間体(38)(0.0056モル)の混合物に、水酸化リチウム一水和物(0.0113モル)を室温で加えた。混合物を室温で終夜攪拌した。THFを蒸発させた。HCl(3N)を用いて混合物を酸性化し、DCMで抽出した。有機層を分離し、乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離剤:CHCl/CHOH/NHOH 80/20/1次いで溶離剤:CHCl/CHOH/NHOH 70/30/2)、化合物(1)(融点114℃)を与えた。
【0118】
表F−1は、実施例B.1の方法に従い、中間体(26)〜(36)の1つを以下の化合物、メチル 4−(4−クロロブトキシ)−安息香酸エステル、メチル 4−(4−クロロエトキシ)−安息香酸エステル、エチル 3(3−クロロプロポキシ)−安息香酸エステル、エチル 4−(3−クロロ−プロポキシ)−安息香酸エステル又はエチル 2−(3−クロロプロポキシ)−安息香酸エステルの1つと反応させることにより製造された化合物を挙げている。
【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
薬理学的実施例
[実施例C.1]:「5HTアンタゴニズム」
h5−HT4b−HEK293クローン9細胞を150mmのペトリ皿において培養し、冷PBSで2回洗浄した。次いで細胞をプレートからこすり落とし、50mM Tris−HCl緩衝液,pH7.4中に懸濁させ、23,500rpmにおける10分間の遠心により収穫した。ペレットを5mM Tris−HCl,pH7.4中に再懸濁させ、Ultra Turraxホモジナイザーを用いて均質化した。30,000rpmにおける20分間の遠心により膜を集め、50mM Tris−HCl pH7.4中に再懸濁させ、−80℃で保存した。実験のために、アッセイ混合物(0.5ml)は50μlのトリチウム化リガンド(5−HTアンタゴニスト[H]GR113808 0.1nM)及び0.4mlの膜調製物(ml当たり15μgのタンパク質)を含有した。全結合のために50μlの10%DMSOを加えた。非−特異的結合の決定のために、1μMの(+)−トランス−(1−ブチル−3−ヒドロキシ−4−ピペリジニル)メチル 8−アミノ−7−クロロ−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−カルボキシレート(Janssen Pharmaceuticaの所有(proprietary)5HTアゴニスト)の50μlを加えた。
【0122】
H]GR113808アッセイ緩衝液は、50mM HEPES−NaOH,pH7.4であった。混合物を25℃において30分間インキュベーションした。あらかじめ0.1%ポリエチレンイミン中に浸漬されたUnifilter 96 GF/B上における濾過によりインキュベーションを停止し、続いて50mM HEPES−NaOH,pH7.4を用いる6回の洗浄段階を行なった。
【0123】
非線形回帰分析によりリガンド濃度結合等温式(矩形双曲線(rectangular
hyperbola)を計算し、調べられたすべての化合物に関するpIC50データを下記で表C.1に挙げる。
【0124】
【表4】

【0125】
[実施例C.2]:「代謝安定性」
Gorrod et al.(Xenobiotica 5:453−462,197
5)に従い、組織の機械的均質化後の遠心分離により、細胞分画組織調製物を作った。肝臓組織を氷−冷0.1M Tris−HCl(pH7.4)緩衝液中で濯ぎ、過剰の血液を洗浄した。次いで組織をブロッティング乾燥し(blotted dry)、秤量し、手術用はさみを用いて粗く刻んだ。組織片を3体積の氷−冷0.1Mリン酸塩緩衝液(pH7.4)中で均質化した。
【0126】
組織ホモジネートを4℃において9000xgで20分間遠心した。得られる上澄み液を−80℃で保存し、「S9」と称した。
【0127】
S9画分を100.000xgで60分間さらに遠心することができる(4℃)。得られる上澄み液を注意深く吸引し、小分けし(aliquoted)、「細胞質ゾル」と称した。ペレットを0.1Mリン酸塩緩衝液(pH7.4)中に、0.5gの最初の組織重量当たりに1mlの最終的体積で再−懸濁させ、「ミクロソーム」と称した。
【0128】
すべての細胞分画画分を小分けし、すぐに液体窒素中で凍結し、使用まで−80℃で保存した。
【0129】
調べられるべき試料のために、インキュベーション混合物はPBS(0.1M)、化合物(5μM)、ミクロソーム(1mg/ml)及びNADPH−生成系(0.8mMグルコース−6−ホスフェート、0.8mM塩化マグネシウム及び0.8単位のグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)を含有した。標準試料は同じ材料を含有したが、ミクロソームが熱不活化(95度摂氏において10分間)ミクロソームで置き換えられた。標準試料における化合物の回収率は常に100%であった。
【0130】
混合物を37度摂氏で5分間予備インキュベーションした。0.8mM NADPの添加によりゼロの時点(t=0)に反応を開始し、試料を60分間インキュベーションした(t=60)。2体積のDMSOの添加により反応を停止した。次いで試料を900xgにおいて10分間遠心し、分析の前に上澄み液を室温で24時間より長く保存しなかった。すべてのインキュベーションを二重に行なった。上澄み液の分析はLC−MS分析を用いて行なわれた。Xterra MS C18(50x4.6mm,5μm,Waters,US)上で試料の溶離を行なった。Alliance 2790(供給者:Waters,US)HPLCシステムを用いた。溶離は、2.4ml/分の流量で緩衝液A(HO/アセトニトリル(95/5)中の25mM酢酸アンモニウム(pH5.2))を用いて行なわれ、溶媒Bはアセトニトリルであり、溶媒Cはメタノールであった。用いられた勾配は、有機相濃度を直線様式で0%から5分内に50%B及び50%Cを経て1分内に100%Bまで上げ、有機相濃度をさらに1.5分間一定に保つものであった。試料の全注入体積は25μlであった。
【0131】
ESP源が取り付けられたQuatro三重四重極質量分析計(Quatro triple quadrupole mass spectrometer)を検出計として用いた。源及び脱溶媒和温度はそれぞれ120及び350℃に設定され、ネブライザー及び乾燥ガスとして窒素を用いた。ポジティブ走査モード(positive scan mode)(単イオン反応)でデータを取得した。コーン電圧は10Vに設定され、滞留時間は1秒であった。
【0132】
活性ミクロソーム(E(act))の存在下における60分のインキュベーション後の化合物の%代謝(例として式を示す)として代謝安定性を表した。
【0133】
【数1】

【0134】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
−R−R−は式
−O−CH−O− (a−1)
−O−CH−CH− (a−2)
−O−CH−CH−O− (a−3)
−O−CH−CH−CH− (a−4)
−O−CH−CH−CH−O− (a−5)
−O−CH−CH−CH−CH− (a−6)
−O−CH−CH−CH−CH−O− (a−7)
−O−CH−CH−CH−CH−CH− (a−8)
の2価の基であり、ここで該2価の基において、場合により同じかもしくは異なる炭素原子上の1もしくは2個の水素原子はC1−6アルキル又はヒドロキシにより置き換えられていることができ;
は水素、ハロ、C1−6アルキル又はC1−6アルキルオキシであり;
は水素、ハロ、C1−6アルキル;シアノもしくはC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキル;C1−6アルキルオキシ;シアノ;アミノ又はモノもしくはジ(C1−6アルキル)アミノであり;
は水素又はC1−6アルキルであり、且つ−OR基はピペリジン部分の3−もしくは4−位に位置し;
Lは式
−Alk−R (b−1)
−Alk−X−R (b−2)
−Alk−Y−C(=O)−R (b−3)
の基であり、ここで各AlkはC1−12アルカンジイルであり;そして
はアリールであり;
はアリールであり;
XはO、S、SO又はNRであり;該Rは水素又はC1−6アルキルであり;
はアリールであり;
Yは直接結合、O、S又はNR10であり、ここでR10は水素又はC1−6アルキルであり;そして
アリールはヒドロキシカルボニルからそれぞれ独立して選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルを示す]
の化合物、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態あるいはその製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩。
【請求項2】
−OR基がトランス立体配置を有するピペリジン部分の3−位に位置する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
該ピペリジン部分の絶対立体配置が(3S,4S)である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Lが式(b−2)の基であり、ここでAlkはC1−4アルカンジイルであり、Rはアリールであり、ここでアリールはヒドロキシカルボニルで置換されたフェニルである請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
Alkが1,3−プロパンジイル又は1,4−ブタンジイルである請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
がアリールであり、ここでアリールはフェニル部分の3−もしくは4−位に位置するヒドロキシカルボニルで置換されたフェニルである請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
製薬学的に許容され得る担体及び治療的に活性な量の請求項1〜6のいずれかに従う化合物を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項8】
治療的に活性な量の請求項1〜6のいずれかに従う化合物を製薬学的に許容され得る担体と緊密に混合する請求項7に従う製薬学的組成物の調製方法。
【請求項9】
薬剤としての使用のための請求項1〜6のいずれかに従う化合物。
【請求項10】
a)式(II)の中間体を式(III)のカルボン酸誘導体又はその反応性官能基誘導体と反応させるか;
【化2】

b)反応に不活性な溶媒中で、且つ場合により適した塩基の存在下で、式(V)の中間体を用いて式(IV)の中間体をN−アルキル化するか;
【化3】

[上記の反応スキームにおいて、基−R−R−、R、R、R及びLは請求項1において定義された通りであり、Wは適した離脱基である];
c)あるいは当該技術分野において既知の変換反応に従って式(I)の化合物を互いに転換するか;あるいは必要に応じて、式(I)の化合物を製薬学的に許容され得る酸付加塩に転換するか、又は逆にアルカリを用いて式(I)の化合物の酸付加塩を遊離の塩基の形態に転換し;そして必要に応じて、その立体化学的異性体を製造する
式(I)の化合物の製造方法。

【公表番号】特表2007−526874(P2007−526874A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515880(P2006−515880)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006274
【国際公開番号】WO2005/003121
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】