説明

A/D変換制御装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】デジタル値からアナログ入力電圧を算出する際の算出精度をより向上させることができるA/D変換制御装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】基準電圧生成部408は、複数のアナログ基準電圧を生成し、A/D変換部405は、生成された複数のアナログ基準電圧および外部機器から入力されるアナログ入力電圧をデジタル基準値に変換し、CPU402は、複数のアナログ基準電圧および当該複数のアナログ基準電圧が変換された複数のデジタル基準値に基づいて、当該複数のデジタル基準値の間のデジタル値に変換されるアナログ入力電圧を補完する演算式を生成し、生成した演算式を用いて、変換されたデジタル値に対するアナログ入力電圧を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル値からのアナログ入力電圧の算出精度を高めるA/D変換制御装置に係わり、特に、定着部での定着性能を向上させる制御を行う画像形成装置において、制御を正確に行うことができる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着ローラは、外部電源(商用電源等)からの電力により発熱するハロゲンヒータ等を使用した定着ヒータによって所定の温度に加熱されている。また、動作待機中などの入力電源の電力使用状況に余裕がある時に、充電可能な電気二重層コンデンサ等の補助電源に充電を行い、入力電源のみでは不足する電力を必要とする場合に、補助電源に蓄電した電力によって定着ヒータを加熱し、定着ローラの加熱を補助する方式も従来から採用されている。
【0003】
近年、省エネルギーの観点から、動作待機時に大電力を消費する定着ヒータの動作を停止させ、復帰時には、外部電源と補助電源からの双方の電力により定着ヒータを動作させ、定着ローラ温度を短時間で加熱(ウオームアップ)する方式が開発されている。短時間で定着ローラの加熱が行われると、定着ローラ周囲温度および定着ローラに記録媒体を加圧する加圧ローラが十分に昇温されていない為に、ウオームアップ直後の画像形成時には、転写紙および加圧ローラに定着ローラの熱が放熱され急速に定着ローラ温度が低下する。特に、周囲温度が低い状態に長時間放置された場合には、転写紙および加圧ローラ温度も低くなっている為、温度低下が発生しやすい。また、外部電源電圧が低い場合にも、定着ヒータへの供給電圧が小さくなる為、ヒータの発熱量が小さくなり、定着ローラの温度低下が発生しやすくなる。
【0004】
上述したような待機状態からのウオームアップ直後における画像形成時の定着ローラ温度低下を改善する為に、定着ローラ温度低下時にも、補助電源から供給される電力を使用した定着ヒータを動作させ、定着ローラの加熱を補助する方式も使用されている。但し、全ての条件下で、ウオームアップと定着ローラ温度低下を補助する為には、補助電源の供給可能な電源容量を大きくする必要があるが、充電時間・電力・コストの増大および搭載可能な大きさに制限がある等の課題が生じる。
【0005】
また搭載可能な補助電源容量に制限があり、定着ローラ温度のみの制御で補助電源をウオームアップ時の定着ローラ加熱に使用した場合、入力電源電圧低下時および低温環境下等では定着ローラのウオームアップ時間も長くかかる為、補助電源の電力消費量も多くなり、ウオームアップ直後での画像形成時の定着ローラ温度低下を補助出来るだけの電力が残されていない場合が発生する。
【0006】
これらの課題を解決する為、外部電源電圧、補助電源電圧、周囲環境温度、定着・加圧ローラ温度等を検出し、定着ローラの短時間ウオームアップ用と画像形成時の定着ローラ温度低下補助用とに使用する最適な補助電源の使用電力配分を復帰時に決定し、定着ヒータを制御する方法が既に提案されている(後述する図1と図2の説明を参照)。
【0007】
ここで、外部電源電圧、補助電源電圧、周囲環境温度、定着・加圧ローラ温度等のアナログ信号を検出する方法としては、装置制御用のCPUに内蔵または接続されたA(アナログ)/D(デジタル)変換器を使用する方法が一般的であるが、制御を正確に行う為には、アナログ信号を高精度で検出する必要がある。特に、入力電源電圧の検出においては、入力電源電圧AC100Vに対して±1V程度の精度で検出する必要があり、CPUに内蔵された比較的精度の悪いA/D変換器等を使用する場合、A/D変換時に発生する変換誤差をより小さくなる様に補正することが必要となる。
【0008】
しかし、従来の画像形成装置では、入力電源(商用交流電源)電圧、補助電源電圧、周囲環境温度、定着・加圧ローラ温度等のアナログ信号を検出する方法としては、制御用CPUに内蔵または外部に接続されたA/D変換器を使用しているため、制御を正確に行う為には、アナログ信号を高精度で補正する必要がある。特に、入力電源電圧の検出においては、入力電源電圧AC90〜110Vに対して±1V程度の高精度で検出出来る必要があるが、交流電圧をA/D変換器に入力可能な直流電圧に変換する検出回路にも誤差が含まれる為、後段のA/D変換時に発生する変換誤差をより小さくする方法が必要となる。
【0009】
具体的には、A/D変換器には、変換時に発生する変換誤差(オフセット誤差、フルスケール誤差、非直線性誤差等)がある為、デジタル値に変換誤差が含まれてしまう。ここで、オフセット誤差とは、A/D変換器によりA/D変換されたデジタル値が最小値(例えば、0)となるアナログ入力電圧である。また、フルスケール誤差は、A/D変換器によりA/D変換可能なデジタル値の最大値(FS)となるアナログ入力電圧である。非直線性誤差は、A/D変換器に入力されたアナログ入力電圧に対するデジタル値が非直線的に変化することにより発生する誤差である。例えば、10ビットのA/D変換器で変換誤差が10LSBあるとすると、検出結果である入力電圧の換算値には、10/1023(約1%)の変換誤差が含まれてしまうことになる。更に、A/D変換器の基準電源の誤差も変換値に加わる。アナログ信号を高精度で検出する方法としては、変換誤差の小さい高性能なA/D変換器と高精度な基準電源を組み合わせて使用する方法が一般的であるが、制御用CPUに内蔵または接続されたA/D変換器を使用する方法に比べて高価である。
【0010】
このように、画像形成装置の制御用CPUに内蔵または接続されたA/D変換器をアナログ信号の検出に使用する方法では、A/D変換器の変換精度が低いという課題があった。
【0011】
そこで、A/D変換後のバラツキを小さくするための従来技術として、例えば、特許文献1には、複数の入力ポートを切り替えてA/D変換するA/D変換器において、A/D変換用の基準電圧より電圧の変動が小さい高精度の電圧を生成し、その高精度の電圧をA/D変換したデジタル値により、他の入力ポートの入力電圧をA/D変換したデジタル値を補正することが開示されている。
【0012】
次に、図11および図12を用いて、本発明に係るA/D変換制御装置のバックグラウンドについて詳細に説明する。図11および図12は従来の画像形成装置における制御部の構成を示す図であり、一般的なA/D変換器の使用態様に基づいた制御部の構成例(図11)と、上記特許文献1に開示されたA/D変換器の使用態様に基づいた制御部の構成例(図12)を示す図である。
【0013】
図11において、制御部1100は、CPU(Central Processing Unit)1102、ROM(Read Only Memory)1103、RAM(Random Access Memory)1104、A/D変換部1105、入力切替部1106、A/D変換制御部1107、およびI/O制御部1109を有するワンチップマイコン1101と、電圧を生成する基準電圧生成部1108と、を備える。ROM1103は、制御部1100の基本処理プログラムや、定着装置やスキャナ等、従来の画像形成装置が備える各部の制御プログラムおよびこれらのプログラムを実行するのに必要なデータを格納している読み取り専用記憶装置である。RAM1104は、プログラム実行時に必要なデータを一時的に保存可能な記憶装置である。
【0014】
電源部1111は、制御部1100のワンチップマイコン1101を駆動すると共に、基準電圧生成部1108の基準電源の入力としても使用される。基準電圧生成部1108により生成された電圧は、A/D変換部1105に入力され、A/D変換用の基準電圧として使用される。
【0015】
更に、制御部1100には、定着制御用の各部の温度検出・電圧検出を行う為のアナログ信号を生成するセンサ1110、I/O制御部1109を介してワンチップマイコン1101と接続され、定着ローラ加熱用の定着ヒータをON/OFFする定着ヒータ駆動回路1112等が接続されている。
【0016】
A/D変換部1105は、アナログスイッチ等の半導体スイッチにより構成された入力切替部1106により、複数のアナログ信号入力を時分割にて切り替えながら順次デジタルデータに変換することができる。入力切替部1106の入力切替は、A/D変換部1105の動作に合わせてA/D変換制御部1107により制御される。
【0017】
図12は、図11に示す制御部1100に対してA/D変換誤差を補正する上記特許文献1に開示されているA/D変換器の変換誤差補正方法を適用した画像形成装置の制御部1200を示す概略構成図である。なお、制御部1200の構成については、図11に示す制御部1100とほぼ同様であるため、制御部1100と異なる部分のみを説明する。電源部1202は、制御部1200のワンチップマイコン1101を駆動するとともに、基準電圧生成部1201への入力として使用される。さらに、電源部1202は、A/D変換部1105に入力され、A/D変換用の基準電圧として使用される。基準電圧生成部1201により生成された電圧(基準電源)は、入力切替部1106を介してA/D変換部1105に入力され、A/D変換部1105の変換誤差補正用に使用される。
【0018】
図13は、一般的なA/D変換器が有する変換誤差について示した変換特性図である。図11に示すA/D変換部1105により変換されたデジタル値からアナログ入力電圧を算出する一般的な方法としては、図13に示す理想A/D変換特性に基づいて、デジタル値からアナログ入力電圧を算出する方法がある。この方法では、デジタル値が最小値(0)を取るときのアナログ入力電圧は0Vであり、デジタル値が最大値(FS)を取るときのアナログ入力電圧は、A/D変換部1105の基準電圧(Vref)に等しいものとして、算出する。
【0019】
A/D変換するアナログ入力電圧(温度センサまたは電圧センサ等のセンサ1110からの入力)をV、そのデジタル値をDとすると、図13に示す理想A/D変換特性によってデジタル値Dから算出したアナログ入力電圧Vの換算値V’を算出する為には、以下に示す演算式1を使用する。
【0020】
V’=Vref/FS×D ・・・・・・演算式1
しかし、アナログ入力電圧をデジタル値に変換するA/D変換器は、上述したように、一般的にA/D変換器内部の回路特性により、オフセット誤差・フルスケール誤差・非直線性誤差が含まれる為、実際のアナログ入力電圧(V)をA/D変換して得たデジタル値(D)を用いて、図13に示す理想A/D変換特性に基づいてアナログ入力電圧を算出した電圧(V’)と、図13に示す実際のA/D変換特性に基づいてアナログ入力電圧を算出した電圧(V)と、には、図13に示すような変換誤差が生じてしまう。
【0021】
また、A/D変換器の基準電圧(Vref)が、演算式に含まれる為、Vrefも高い精度が要求される。高精度なA/D変換器では、これらの変換器内部の変換誤差を小さくしたり、変換誤差を調整可能な機能を有するものもあるが、回路が複雑になる為一般的に高価である。また制御も複雑になる等の課題もある。
【0022】
そこで、図12の構成の様に、既知のアナログ入力電圧をA/D変換したデジタル値を基準として、他のアナログ入力電圧に対応するデジタル値を補正する方法が提案されている。この特許文献1に開示された従来技術によれば、既知の高精度なアナログ入力電圧(V)をA/D変換して得られたデジタル値(D)を基準として、或るA/D変換する未知のアナログ入力電圧(V1)のデジタル値(D1)からアナログ入力電圧(V1)の換算値(V1’)を算出している。
【0023】
この算出方法を、演算式で表すと以下に示す演算式2となる。
【0024】
V1’=V/D×D1 ・・・・・・演算式2
演算式2によるA/D変換特性を、図13において「従来技術によるA/D変換特性」として示す。この方法によれば、Vrefの変動の影響を受けずにアナログ入力電圧の換算値を得ることが出来る。
【0025】
【特許文献1】特開2005−26830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
上述したように、画像形成装置において、接続される外部電源の環境(自家発電機等の電源の利用や画像形成装置と他の機器との蛸足配線による接続等による入力電圧の低下)により変化するアナログ入力電圧に適した定着ヒータの電力制御を行う為には、上述したように精度の良いアナログ入力電圧の算出を行う必要がある。
【0027】
上記の特許文献1には、一般的なA/D変換器において、A/D変換用の基準電圧よりも高精度のアナログ入力電圧のデジタル値を元にしてアナログ入力電圧のデジタル値を補正することが開示されているが、一つの高精度なアナログ入力電圧およびそのデジタル値を元にしているために、生成した演算式2を用いて、広範囲の電圧値をもつアナログ入力電圧をA/D変換した値に対してバラツキが生じ、A/D変換の精度において課題を生じる。詳細については、後述するが、A/D変換器が有する非直線性誤差に対する配慮がなされていない。
【0028】
具体的には、演算式2によるA/D変換特性(図13に示す従来技術によるA/D変換特性)には、A/D変換器の持つ変換誤差、特に非直線性誤差の考慮がされていない為、既知のアナログ入力電圧(V)の設定によっては、A/D変換する未知のアナログ入力電圧(V1)がVrefに近づくほど変換誤差が大きくなり、フルスケール誤差を上回る可能性があるという課題がある。
【0029】
本発明の目的は、デジタル値からのアナログ入力電圧の算出精度を高めることができるA/D変換制御装置および画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、複数のアナログ基準電圧を生成する第1生成手段と、生成された前記複数のアナログ基準電圧を複数のデジタル基準値に変換しかつ外部機器から入力されるアナログ入力電圧をデジタル値に変換するA/D変換手段と、前記複数のアナログ基準電圧および前記複数のデジタル基準値に基づいて、当該複数のデジタル基準値の間のデジタル値に変換される前記アナログ入力電圧を補完する演算式を生成する第2生成手段と、生成した前記演算式を用いて、変換されたデジタル値に対する前記アナログ入力電圧を算出する算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0031】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記第2生成手段は、前記アナログ入力電圧を算出するデジタル値に最も近くかつ当該デジタル値以下の前記デジタル基準値および当該デジタル基準値に変換された前記アナログ基準電圧、および当該デジタル値に最も近くかつ当該デジタル値以上の前記デジタル基準値および当該デジタル基準値に変換された前記アナログ基準電圧に基づいて、前記演算式を生成することを特徴とする。
【0032】
また、請求項3にかかる発明は、請求項1または2にかかる発明において、前記第1生成手段は、前記アナログ入力電圧と同一の前記アナログ基準電圧を含み、当該アナログ入力電圧より電圧変動が小さい前記複数のアナログ基準電圧を生成することを特徴とする。
【0033】
また、請求項4にかかる発明は、請求項1から3のいずれか一にかかる発明において、前記第1生成手段は、前記アナログ入力電圧の上限値以上かつ前記A/D変換手段によりデジタル値の最大値に変換される電圧より小さい前記アナログ基準電圧を生成することを特徴とする。
【0034】
また、請求項5にかかる発明は、請求項1から4のいずれか一にかかる発明において、前記第1生成手段は、前記アナログ入力電圧の下限値以上かつ前記A/D変換手段によりデジタル値の最小値に変換される電圧より大きい前記アナログ入力電圧を生成することを特徴とする。
【0035】
また、請求項6にかかる発明は、請求項1から5のいずれか一にかかる発明において、前記A/D変換手段により変換可能なデジタル値の範囲を、前記複数のアナログ基準電圧を変換した前記複数のデジタル基準値により複数の区間に分割する分割手段をさらに備え、前記第2生成手段は、分割された区間内の前記複数のアナログ基準電圧および当該複数のアナログ基準電圧を変換した前記複数のデジタル基準値に基づいて、区間毎に前記演算式を生成することを特徴とする。
【0036】
また、請求項7にかかる発明は、請求項1から6のいずれか一に記載のA/D変換制御装置により画像形成装置の各部の状態を示すデジタル値から算出したアナログ入力電圧を用いて当該画像形成装置の各部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、複数のアナログ基準電圧をA/D変換した複数のデジタル基準値および当該複数のアナログ基準電圧に基づいて、当該複数のデジタル基準値の間のデジタル値のアナログ入力電圧を補完する演算式を生成し、生成した演算式によりデジタル値に対するアナログ入力電圧を算出することにより、A/D変換器が持つA/D変換特性によりアナログ入力電圧をデジタル値に変換した際に発生する変換誤差、特に非直線性誤差を考慮してデジタル値からアナログ入力電圧を算出することができるので、デジタル値からアナログ入力電圧を算出する際の算出精度をより高めることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本実施形態に係るA/D変換制御装置について、図1〜図10Bを参照しながら以下詳細に説明する。まず初めに、本実施形態に係るA/D変換制御装置を用いた画像形成装置を構成するデジタル複写機の概要について、図1を参照しながら説明する。
【0039】
図1は、本実施形態に係るA/D変換制御装置を用いた画像形成装置を構成するデジタル複写機の概要を示す図である。デジタル複写機1の縦断面図であり、このデジタル複写機1は本実施形態に関する画像形成装置を具現するものであり、いわゆる複合機である。デジタル複写機1は、複写機能と、これ以外の機能、例えば、プリンタ機能、ファクシミリ機能とを備えていて、図示しない操作部のアプリケーション切り替えキーの操作により、複写機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能である。これにより、複写機能の選択時には複写モードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリントモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。なお、本実施形態では、デジタル複写機にA/D変換制御装置を用いた例について説明するが、A/D変換器によりA/D変換されたデジタル値から算出したアナログ入力電圧を用いて画像形成装置の各部を制御するものであれば、ファクシミリ、コピー機、プリンタ等の画像形成装置にも適用することができる。
【0040】
次に、デジタル複写機1の概略構成および複写モードの際の動作について説明する。図1において、自動原稿送り装置(以下、ADFという)101において、原稿台102に画像面を上にして置かれた原稿は、図示しない操作部上のスタートキーが押下されると、給紙ローラ103、給送ベルト104によってコンタクトガラス105上の所定の位置に給送される。ADF101は、一枚の原稿の給送完了毎に原稿枚数をカウントアップするカウント機能を有する。コンタクトガラス105上の原稿は、画像読取装置106によって画像情報が読み取られた後に、給送ベルト104、排送ローラ107によって排紙台108上に排出される。
【0041】
原稿セット検知器109で原稿台102上に次の原稿が存在することが検知された場合には、同様に原稿台102上の一番下の原稿が給紙ローラ103、給送ベルト104によってコンタクトガラス105上の所定の位置に給送される。このコンタクトガラス105上の原稿は、画像読取装置106によって画像情報が読み取られた後に、給送ベルト104、排送ローラ107によって排紙台108上に排出される。ここに、給送ローラ103、給送ベルト104および排送ローラ107は搬送モータによって駆動される。
【0042】
第1給紙装置110、第2給紙装置111および第3給紙装置112は、それぞれ選択されたときに、その積載された転写紙を給紙し、この転写紙は縦搬送ユニット116によって感光体に当接する位置まで搬送される。感光体は、例えば感光体ドラム117が用いられていて、図示しないメインモータにより回転駆動される。
【0043】
画像読取装置106で原稿から読み取られた画像データは、図示しない画像処理装置で所定の画像処理が施された後、書き込みユニット118によって光情報に変換され、感光体ドラム117には図示しない帯電器により一様に帯電された後に書き込みユニット118からの光情報で露光されて静電潜像が形成される。この感光体ドラム117上の静電潜像は、現像装置119により現像されてトナー像となる。書き込みユニット118、感光体ドラム117、現像装置119や、その他の図示しない感光体ドラム117回りの周知の装置などにより、プリンタエンジンを構成している。
【0044】
搬送ベルト120は、用紙搬送の手段および転写の手段を兼ねていて電源から転写バイアスが印加され、縦搬送ユニット116からの転写紙を感光体ドラム117と等速で搬送しながら感光体ドラム117上のトナー像を転写紙に転写する。この転写紙は、定着装置121によりトナー像が定着され、排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。感光体ドラム117は、トナー像転写後に図示しないクリーニング装置により残存トナーのクリーニングがなされる。
【0045】
以上の動作は、通常のモードで用紙の片面に画像を複写するときの動作であるが、両面モードで転写紙の両面に画像を複写する場合には、各給紙トレイ113〜115のいずれかより給紙されて表面に上述のように画像が形成された転写紙は、排紙ユニット122により排紙トレイ123側ではなく、両面入紙搬送路124側に切り替えられ、反転ユニット125によりスイッチバックされて表裏が反転され、両面搬送ユニット126へ搬送される。
【0046】
この両面搬送ユニット126へ搬送された転写紙は、両面搬送ユニット126により縦搬送ユニット116へ搬送され、縦搬送ユニット116により感光体ドラム117に当接する位置まで搬送され、感光体ドラム117上に上述と同様に形成されたトナー像が裏面に転写されて、定着装置121でトナー像が定着されることにより両面コピーとなる。この両面コピーは排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。
【0047】
また、転写紙を反転して排出する場合には、反転ユニット125によりスイッチバックされて表裏が反転された転写紙は、両面搬送ユニット126に搬送されずに反転排紙搬送路127を経て排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。
【0048】
プリントモードでは、前述の画像処理装置からの画像データの代りに、外部からの画像データが書き込みユニット118に入力されて、前述と同様に転写紙上に画像が形成される。
【0049】
さらに、ファクシミリモードでは、画像読取装置106からの画像データが図示しないファクシミリ送受信部により相手に送信され、相手からの画像データがファクシミリ送受信部で受信されて前述の画像処理装置からの画像データの代りに書き込みユニット118に入力されることにより、前述と同様に転写紙上に画像が形成される。
【0050】
また、このデジタル複写機1には、図示しない大量用紙供給装置(以下、LCTという)と、およびソート、穴あけ、ステイプルなどを行うフィニッシャーと、原稿読み取りのためのモード、複写倍率の設定、給紙段の設定、フィニッシャーで後処理の設定、オペレータに対する表示などを行う操作部とを備えている。
【0051】
次に、本実施形態に関する画像形成装置における定着装置121の構成について図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に関するデジタル複写機における定着装置の構成を示す図である。図2に示すように、定着装置121は、本実施形態に係るA/D変換制御装置に関連する構成であって定着機能を奏するものであり、加熱部材である定着ローラ201に、シリコンゴム等の弾性部材からなる加圧ローラ202が、図示しない加圧手段により一定の加圧力で押し当てられている。定着部材と加圧部材は、一般的にローラ状である場合が多いが、例えば、いずれか一方又は両方を無端ベルト状に構成するようにしてもよい。この定着装置121には、ヒータHT1,HT2が任意の位置に設けられる。例えば、このヒータHT1,HT2は、定着ローラ201の内部に配置されて定着ローラ201を内側から加熱する。
【0052】
定着ローラ201および加圧ローラ202は、図示しない駆動機構により回転駆動される。温度センサTH21は、定着ローラ201の表面に当接され、定着ローラ201の表面温度(定着温度)を検出する。温度センサTH22は、加圧ローラ202の表面に当接され、加圧ローラ202の表面温度を検出する。トナー206を担持した転写紙等の媒体であるシート207は、定着ローラ201と加圧ローラ202とのニップ部を通過する際に、定着ローラ201と加圧ローラ202による加熱および加圧でトナー206が定着される。
【0053】
第2の発熱部材である定着ヒータHT2は、定着ローラ201の基準となる最大温度Ttに達していないときにオン(ON)にされて、定着ローラ201を加熱する主たるヒータである。第1の発熱部材である定着ヒータHT1は、省エネのためのオフモード時からコピー可能となるまでの立ち上がり時や、定着ローラ201の温度が前述の最大温度Ttより低い所定温度Tminを割り込みそうなときなどにONにされて、定着ローラ201を加熱する補助的なヒータである。
【0054】
次に、本実施形態に関する定着装置の温度制御について、図3を参照しながら以下説明する。図3は、デジタル複写機1に使用される汎用の定着制御部のブロック構成を示す図である。補助電源301は電気二重層コンデンサ302を利用した補助電源であり、通常のAC電源303から補助電源301を充電し、定着ヒータHT1を点灯させるために使用して、コピー可能となるまでの立ち上がり時間を短縮し、あるいは温度落ち込みを防ぐ。これは、立ち上がり時間などはヒータの容量により決まってしまうが、AC電源303から供給可能な電力には限りがあるため、このような構成としている。
【0055】
AC電源303から供給されるAC電源は、制御部304により遮断回路305、充放電切替回路306を制御して、充電器307により、電気二重層コンデンサ302へ充電することが可能である。また定着ヒータHT1への電源供給も、制御部304により充放電切替回路306を制御することにより実現できる。さらに、AC電源303から供給されるAC電源は、制御部304により遮断回路308を制御して、定着装置121の定着ヒータHT2へも供給される。
【0056】
制御部304は、温度センサTH21にて定着ローラ201の温度、温度センサTH22にて加圧ローラ202の温度、温度センサTH23にて画像形成装置の置かれている環境温度(室温あるいは機内温度)、電圧センサ309にてAC電源303の電圧、電圧センサ310にて電気二重層コンデンサ302の電圧を検出し、状況に応じた定着ヒータHT1,HT2のON/OFF制御を行い、定着ローラ201の温度を最適状態に制御する。
【0057】
次に、本実施形態に係るA/D変換制御装置及びこれを備えたデジタル複写機について図4と図5を参照しながら説明する。図4は本実施形態に係るA/D変換制御装置を用いたデジタル複写機の制御部を示す構成図である。図5は本実施形態に係るA/D変換制御装置を用いたデジタル複写機の制御部におけるA/D変換制御装置のより詳細な構成を示す図である。
【0058】
図4において、基準電圧生成部408の複数の基準電源1〜n(アナログ基準電圧)は、電源部411から供給される電圧から、シャントレギュレータ等の高精度の基準電圧生成回路にて既知の電圧源として生成され、入力切替部406を介してA/D変換部405に入力される。なお、本実施形態では、高精度の基準電圧生成回路にてアナログ基準電圧を生成しているがこれに限定するものではない。例えば、基準電圧生成部408は、シャントレギュレータ等を用いずに、複数のアナログ基準電圧を生成してもよい。また、電源部411は、制御部304のワンチップマイコン401を駆動すると共に、直接あるいは、ノイズ除去用のフィルタ等を介してA/D変換部405に入力され、A/D変換用の基準電圧として使用される。また、制御部304には、I/O制御部409を介してワンチップマイコン401と接続され、定着ローラ加熱用の定着ヒータをON/OFFする定着ヒータ駆動回路412等が接続されている。
【0059】
図5において、ワンチップマイコン401の電源入力端子VDDには、電源部411のプラス側(+)の端子が接続され、ワンチップマイコン401のグランド入力端子GNDには、電源部411のマイナス側(−)の端子が接続される。ワンチップマイコン401は、電源部411より供給される電源電圧に基づいて駆動する。
【0060】
また、電源部411のプラス側の端子とA/D変換部405のアナログ回路電源入力端子AVDDおよびA/D変換用基準電源入力端子AREFとが接続され、電源部411のマイナス側の端子とA/D変換部405のアナロググランド入力端子AGNDとが接続される。ワンチップマイコン401のA/D変換部405は、入力端子AREFに印加される基準電圧に基づいて、A/D変換部405の入力端子AINに印加される入力電圧をデジタル値に変換する。
【0061】
ここで、A/D変換部405の入力端子AINに印加される入力電圧は、複数の基準電源1〜nからの出力(電源部411からのA/D変換用の基準電圧よりも高精度の電圧を供給する高精度の基準電圧生成回路からのアナログ基準電圧)と、定着装置の温度または入力電源の電圧等のアナログ入力電圧を出力するセンサ410からの出力と、が択一的に選択されたものである。
【0062】
電源部411から供給される電圧から、シャントレギュレータ等の高精度の基準電圧生成回路にて既知のアナログ基準電圧を生成する基準電圧生成部408の複数の基準電源1〜nのプラス側の端子は、ワンチップマイコン401の入力切替部406のチャンネルAN1〜ANnに入力される。基準電圧生成部408の複数の基準電源1〜nのマイナス側の端子は、ワンチップマイコン401のGND端子およびA/D変換部405のAGND端子に接続される。
【0063】
センサ410のプラス側端子は、ワンチップマイコン401の入力切替部406のチャンネルAN0に入力される。センサ410のマイナス側の端子は、ワンチップマイコン401のGND端子およびA/D変換部405のAGND端子に接続される。
【0064】
CPU402は、ROM403に格納されたプログラムに従い、A/D変換制御部407を介して、入力切替部406およびA/D変換部405の制御を行う。
【0065】
入力切替部406によりチャンネルAN0〜ANnからA/D変換する入力の1つを選択(スイッチを閉じる)することにより、選択された入力チャンネルに入力された電圧は、A/D変換部405の入力端子AINに入力される。A/D変換部405の入力端子AINに入力された電圧は、A/D変換部405の入力端子AREFの電圧と入力端子AGNDの電圧に基づいて、デジタル値に変換される。変換されたデジタル値は、CPU402によりA/D変換部405から読み出され、RAM404に格納される。このように、入力切替部406を制御することにより、1つのA/D変換部405を使用して複数の入力を順に切り替えてA/D変換出来る様に構成されている。
【0066】
図6は、AC電源303の出力電圧を検出する電圧センサ309(図4に示すセンサ410は、定着装置の温度を検出する温度センサの他に、AC電源の電圧を検出する電圧センサをも表す)の回路図である。すなわち、AC電源303を別途定められた巻数比のトランス601に入力することで、電圧センサ309側とAC電源303側とを絶縁し、また、電圧センサ309の内部回路で使用するのに都合の良い電圧レベルまで降圧する。さらに、このトランス601の2次側の出力電圧をダイオードブリッジ602で全波整流し、平滑コンデンサ605で平滑した電圧をそのまま、又は、分圧抵抗603,604で分圧してから、バッファ606によるインピーダンス変換回路等の所定のインターフェイスを介して、アナログ入力電圧として制御部304に入力する。
【0067】
AC電源303の電圧と電圧センサ309の出力電圧との間には、一定の比例関係または、相関関係がある様に調整されている。これにより、制御部304では電圧センサ309の出力電圧からAC電源303の電圧を判定することができる。
【0068】
図7は、本実施形態に係るA/D変換制御装置における複数のアナログ基準電圧を生成する基準電圧生成部408の回路構成を示す図である。基準電圧生成部408は、電源部411のプラス側の端子とシャントレギュレータ701のカソード端子(K)とが抵抗702を介して接続され、電源部411のマイナス側の端子とシャントレギュレータ701のアノード端子(A)とが接続される。また、シャントレギュレータ701のリファレンス端子(Ref)は、シャントレギュレータ701のカソード端子とアノード端子を抵抗703,704にて分圧した分圧点に接続される。シャントレギュレータ701のカソード端子とアノード端子間には、動作安定用のコンデンサ705が接続される。さらに、シャントレギュレータ701のカソード端子に印加される電圧(アナログ基準電圧)が制御部304内のワンチップマイコン401の入力端子AN2に入力される。シャントレギュレータ701のカソード端子に印加される電圧を抵抗706,707で分圧した電圧(アナログ基準電圧)が制御部304内のワンチップマイコン401の入力端子AN1に入力される。また、シャントレギュレータ701のアノード端子とワンチップマイコン401内のA/D変換部405のアナロググランド入力端子AGNDとが接続される。
【0069】
シャントレギュレータ701は、リファレンス端子の電圧Vrefが、例えば2.5Vになるように、カソード端子に流れ込む電流を調整する。図7に示す回路では、カソード端子とアノード端子間に接続された抵抗703,704により分圧された電圧がVrefとなる様に制御され、カソード端子の電圧は、抵抗703,704の分圧比によって決定される。抵抗703と抵抗704の比が、R:1の場合、カソード端子のアナログ基準電圧V2は、V2=Vref×(R+1)となる。さらに、カソード端子のアナログ基準電圧V2は、抵抗706,707により分圧され、アナログ基準電圧V1が生成される。抵抗706と抵抗707の比が、S:1の場合、分圧点のアナログ基準電圧V1は、V1=V2/(S+1)となる。
【0070】
シャントレギュレータ701のカソード端子のアナログ基準電圧V2とワンチップマイコン401の入力端子AN2とが接続されており、その入力端子AN2にはアナログ基準電圧V2の電圧が印加される。シャントレギュレータ701のカソード端子のアナログ基準電圧V2を抵抗706,707で分圧された分圧点に、ワンチップマイコン401の入力端子AN1が接続されており、その入力端子AN1にはアナログ基準電圧V1が印加される。なお、抵抗702は、電源部411の電圧とシャントレギュレータ701のカソード端子のアナログ基準電圧V2の電圧差を消費させるために設けられる。
【0071】
また、シャントレギュレータ701のリファレンス電圧Vrefの電圧精度が例えば±0.5%となるようなシャントレギュレータ701を使用し、分圧抵抗703,704および分圧抵抗706,707に抵抗値精度が例えば±0.1%の高精度な抵抗を使用することにより、基準電圧生成部408は高精度のアナログ基準電圧V1およびアナログ基準電圧V2を生成することができる。
【0072】
図7では、アナログ基準電圧V1,V2の2つの電圧を生成する例を示したが、カソード電圧を分圧する抵抗を複数組用意することにより、容易に高精度な任意のアナログ基準電圧をさらに追加生成可能であり、出力電圧の設定を変えた図7の回路を複数用意しても良い。また、シャントレギュレータ701の代わりに、出力電圧精度が例えば±1%の高精度な降圧型のレギュレータICを使用して生成した出力電圧を抵抗分圧することによっても、可能である。
【0073】
図8は、本実施形態に係るA/D変換制御装置におけるA/D変換動作及び制御動作について説明するフローチャートである。まず、ステップS801において、制御部304に搭載されるワンチップマイコン401のA/D変換部405は、基準電圧生成部408より供給される複数の高精度のアナログ基準電圧V1〜Vnをデジタル基準値D1〜Dnに変換する。そして、CPU402は、ワンチップマイコン401のRAM404に、既知のアナログ基準電圧V1〜Vnに対応したデジタル基準値D1〜Dnとして記録する。
【0074】
次に、ステップS802において、ワンチップマイコン401のA/D変換部405は、センサ410からの実際のアナログ入力電圧VINをデジタル値に変換する。そして、CPU402は、ワンチップマイコン401のRAM404に、デジタル値DOUTとして記録する。
【0075】
次に、ステップS803において、CPU402は、ステップS802で得られたセンサ410からの実際のアナログ入力電圧VINのデジタル値DOUTと同じかあるいは最も近い小さな値を、ステップS801においてRAM404に記録された既知のアナログ基準電圧V1〜Vnに対応したデジタル基準値D1〜Dnから探し、そのデジタル基準値DLとそれに対応する既知のアナログ基準電圧VLを、ワンチップマイコン401のRAM404に記録する。見つからない場合は、デジタル基準値DL=0、既知のアナログ基準電圧VL=0Vとして、記録する。
【0076】
次に、ステップS804において、CPU402は、ステップS802で得られたセンサ410からの実際のアナログ入力電圧VINのデジタル値DOUTと同じかあるいは最も近い大きな値を、ステップS801においてRAM404に記録された既知のアナログ基準電圧V1〜Vnに対応したデジタル基準値D1〜Dnから探し、そのデジタル基準値DHとそれに対応する既知のアナログ基準電圧VHを、ワンチップマイコン401のRAM404に記録する。見つからない場合は、CPU402は、デジタル基準値DH=A/D変換部405により変換可能なデジタル基準値の最大値(FS)、既知のアナログ基準電圧VH=A/D変換用の基準電圧(Vref)として、記録する。
【0077】
次に、ステップS805において、CPU402は、ステップS803およびステップS804にて得られたセンサ410からの実際のアナログ入力電圧VINのデジタル値DOUTに最も近いデジタル基準値DLおよびその既知のアナログ基準電圧VL、およびデジタル基準値DHおよびその既知のアナログ基準電圧VHに基づいて、その2点間を直線で補完する演算式1を生成し、生成した演算式1により、センサ410からの実際のアナログ入力電圧VINのデジタル値DOUTに対するアナログ入力電圧VIN’を算出する。なお、本実施の形態では、2点間を直線で補完する演算式により、デジタル値DOUTに対するアナログ入力電圧VIN’を算出しているがこれに限定するものではない。例えば、ステップS803およびステップS804において3つ以上の既知のアナログ基準電圧に対応するデジタル基準値を探し、3つ以上の既知のアナログ基準電圧およびそれに対応するデジタル基準値に基づいて、3つ以上の点を直線または曲線で補完する演算式により、デジタル値DOUTに対するアナログ入力電圧VIN’を算出してもよい。
【0078】
VIN’=VL+(VH-VL)/(DH-DL)×(DOUT-DL) ・・・・・・演算式1
そして、ステップS806において、ワンチップマイコン401のCPU402は、ステップS805で得られたアナログ入力電圧VIN’をセンサ410からのアナログ入力電圧VINとして使用し、所定の制御(例えば、定着ヒータ制御等)を行う。
【0079】
図9は、本実施形態に関するA/D変換部のA/D変換特性を示す図である。図4と図5に示す本実施形態の特徴を示す、A/D変換の制御部304における基準電圧生成部408にて2つの高精度なアナログ基準電圧V1およびアナログ基準電圧V2を生成し、生成したアナログ基準電圧V1およびアナログ基準電圧V2を使用して高精度のA/D変換する場合について考察する。このとき、アナログ基準電圧V1とアナログ基準電圧V2およびA/D変換用の基準電圧(Vref)には、Vref>V2>V1の関係がある。
【0080】
例えば、アナログ基準電圧V1をA/D変換し得られたデジタル基準値をD1とし、アナログ基準電圧V2をA/D変換し得られたデジタル基準値をD2とする。CPU402は、得られたデジタル基準値D1とデジタル基準値D2に基づいてA/D変換特性の区間(A/D変換部405によりA/D変換可能なデジタル値の範囲(0〜FS))を複数の区間に分割し、分割された区間内の複数のデジタル基準値および当該複数のデジタル基準値に対するアナログ基準電圧に基づいて、各区間ごとにA/D変換特性を補完する演算式を生成する。
【0081】
図5におけるセンサ410の出力電圧すなわちA/D変換するアナログ入力電圧をVIN、そのA/D変換したデジタル値をDOUTとすると、デジタル基準値D1とデジタル基準値D2により分けられた区間ごとに、当該区間のA/D変換特性を補完する演算式を得る。デジタル値DOUTからアナログ入力電圧VIN’を補完する演算式は以下の通りである。
【0082】
デジタル値DOUTがデジタル基準値D1以下の場合(区間1)
デジタル基準値が最小値(0)を取るときのアナログ基準電圧は0V、デジタル基準値がD1を取るときのアナログ基準電圧はV1として以下の演算式3を得る。
【0083】
VIN’=V1/D1×DOUT ・・・・・・演算式3
また、デジタル値DOUTがデジタル基準値D1以上かつデジタル基準値D2以下の場合(区間2)
デジタル基準値がD1を取るときのアナログ基準電圧はV1、デジタル基準値がD2を取るときのアナログ基準電圧はV2として、以下の演算式4を得る。
【0084】
VIN’=V1+(V2-V1)/(D2-D1)×(DOUT-D1) ・・・・・・演算式4
また、デジタル値DOUTがデジタル基準値D2以上の場合(区間3)
デジタル基準値がD2を取るときのアナログ基準電圧はV2、デジタル基準値が最大値(FS)を取るときのアナログ基準電圧は、A/D変換用の基準電圧(Vref)として以下の演算式5を得る。
【0085】
VIN’=V2+(Vref-V2)/(FS-D2)×(DOUT-D2) ・・・・・・演算式5
例えば、図9において、高精度なアナログ基準電圧と同じアナログ入力電圧V1をA/D変換し得られたデジタル値D1を得たとする。図9に示す理想A/D変換特性によりデジタル値D1に対するアナログ入力電圧を算出する方法では、算出したアナログ入力電圧はV1’となり変換誤差が生じる。しかし、本実施形態の演算式3または演算式4が示すA/D変換特性を用いてアナログ入力電圧を算出する方法によれば、デジタル値D1に対するアナログ入力電圧はV1となり変換誤差は生じない。
【0086】
本実施形態におけるA/D変換特性によりアナログ入力電圧VIN’を算出する方法によれば、A/D変換するアナログ入力電圧VINが、基準電圧生成部408にて生成されるアナログ基準電圧V1およびアナログ基準電圧V2に近づくほど、アナログ入力電圧VIN’は高精度にて算出可能となる。
【0087】
図5におけるセンサ410の出力電圧を目標に近づける制御、あるいは、センサ410の出力電圧が閾値を前後した場合に動作を切り替える制御を行う画像形成装置においては、その目標値あるいは閾値の電圧を基準電圧生成部408にて生成することにより、基準電圧生成部408の出力電圧の精度に応じた高精度での制御が可能となる。
【0088】
上述したように、本実施形態におけるA/D変換特性(図9に示す区間1および区間2)においては、演算式にA/D変換用の基準電圧(Vref)が含まれない為、A/D変換用の基準電圧の変動による影響を抑制できる。特に、基準電圧生成部408が、A/D変換するアナログ入力電圧VINの使用上限電圧以上かつフルスケール誤差を差し引いた電圧以下のアナログ基準電圧V2を生成することにより、フルスケール誤差を含まない高精度の検出が可能となる。
【0089】
この場合、A/D変換器用の基準電源Vrefに高精度の電源を用意する必要がない。また、図9に示す区間1にのみオフセット誤差が含まれる為、基準電圧生成部408が、A/D変換するアナログ入力電圧VINの使用下限電圧以下かつオフセット誤差以上のアナログ基準電圧V1を生成することにより、オフセット誤差を含まない高精度の検出が可能となる。さらに、基準電圧生成部408にて生成するアナログ基準電圧を追加し、区間2をさらに細分化することにより高精度に検出可能なポイントを容易に増やすことも可能である。この場合、区間2においての非直線性誤差もさらに小さくすることが出来る。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置は、図5に示すA/D変換部405、CPU402、メモリ(ROM403、RAM404)を含み、高精度の基準電源を複数有し、複数の基準電源からの各出力電圧とセンサ410からの出力電圧の択一的選択を行ってA/D変換部405へ出力する入力切替部406を有し、さらに、A/D変換部405、基準電圧生成部408、その他の回路への電源を供給する電源部411を有し、さらに、A/D変換するためのアナログ入力電圧を出力するセンサ(温度センサ、入力電源の電圧センサなど)410を有する構成を備えたものであり、そして、高精度の基準電源から複数の高精度のアナログ基準電圧をA/D変換部405に入力し、それぞれをA/D変換してデジタル基準値を求め、さらに、センサ410の出力電圧(アナログ入力電圧)をA/D変換し、前述の複数のデジタル基準値と供給された複数の高精度のアナログ基準電圧とに基づいた演算式を使用して、センサ410の出力電圧をA/D変換したデジタル値から、センサ410の出力電圧を算出することを特徴とするものである。
【0091】
これによって、A/D変換器がもつA/D変換特性によりアナログ入力電圧をデジタル値に変換した際に発生する変換誤差、特に、非直線性の誤差を考慮してデジタル値からアナログ入力電圧を算出することができるので、デジタル値からアナログ入力電圧を算出する際の算出精度をより高めることができる。また、高精度の基準電圧供給部408からの複数のアナログ基準電圧の内で最も高い出力電圧と最も低い出力電圧の範囲をセンサ410から入力されたアナログ入力電圧を算出する有効使用電圧範囲とすることによって、A/D変換部405のもつフルスケール誤差やオフセット誤差を含まない高精度のセンサ410の出力結果を得ることができるので、デジタル値からアナログ入力電圧を算出する際の算出精度を高めることができ、さらに、A/D変換部405に印加される電源電圧の変動による影響を抑制することができる。また、高精度の基準電圧供給部408からの複数の高精度のアナログ基準電圧の少なくとも1つについては、センサ410からの出力電圧の内で最も高精度に検出すべきアナログ入力電圧と同一の電圧にすることによって、A/D変換部405の非直線性誤差を生じさせないようにすることができるので、アナログ入力電圧の算出精度をより高めることができる。
【0092】
(変形例)
上述の実施形態では、定着ローラの温度を検出する温度センサやAC電源の電圧を検出する電圧センサからのアナログ入力電圧をA/D変換したデジタル値から当該アナログ入力電圧を算出し、算出したアナログ入力電圧を用いて定着装置への補助電源の使用電力配分を決定する例について説明したが、これに限定するものではない。例えば、画像形成装置が備える画像読取装置が補助電源からの電力供給を受けて駆動する場合には、補助電源から画像読取装置への使用電力配分を決定する場合にも、本実施形態にかかるA/D変換制御装置により算出したアナログ入力電圧を用いて、画像読取装置の制御を行うこともできる。なお、補助電源から画像読取装置へ電力供給する構成以外は、上述の実施形態とほぼ同様であるため、上述の実施形態と異なる部分の処理のみを説明する。
【0093】
ここで、本変形例のデジタル複写機1が備える画像読取装置106、定着装置121、その他負荷への電力供給処理の概略について図10Aおよび図10Bを用いて説明する。図10Aは、本変形例にかかるデジタル複写機による電力供給処理の一例を示す説明図である。図10Bは、AC電源および補助電源から負荷への電力供給レベルの一例を示す説明図である。
【0094】
AC電源303は、画像読取装置106、定着装置121、プリンタエンジンや各種モータ等のその他の負荷を駆動する主電源である。補助電源301は、AC電源303からの電力供給を受けて充電され、充電された電力により負荷を駆動する充放電可能な蓄電手段である。図10A上では、補助電源301は、キャパシタであるが蓄電池である場合もある。キャパシタの具体例としては比較的に静電容量が大きいアルミ電解コンデンサや電気二重層コンデンサが挙げられる。スイッチ1001は、AC電源303から補助電源301への充電のオン/オフと、補助電源301からの給電のオン/オフと、を切り替えるものである。スイッチ1001は、例えば、補助電源301側の共通接点と、AC電源303側の接点、画像読取装置106側の接点およびどちらにも繋がっていない接点のいずれかと、を接続するスイッチである。また、2つ以上のリレーやFETを組み合わせてスイッチ1001の機能を実現しても良い。本実施形態では、電源装置は、立ち上げ時などの通常時、スイッチ1001をオフして、AC電源303から画像読取装置106を含むシステム系、その他の負荷、および定着装置121に給電する。また、AC電源303から供給される電力に余裕があるときには、スイッチ1001をAC電源303側の接点に接続して補助電源301の充電を行う。一方、電源装置は、画像読取装置106と定着装置121とを同時に動かす場合などの補助電源使用時、スイッチ1001を画像読取装置106側の接点に接続して、補助電源301からの給電により画像読取装置106を駆動し、AC電源301から定着装置121へ給電する電力量を増やしている。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態に係るA/D変換制御装置を用いた画像形成装置を構成するデジタル複写機の概要を示す図である。
【図2】本実施形態に関するデジタル複写機における定着装置の構成を示す図である。
【図3】デジタル複写機に使用される汎用の定着制御部のブロック構成を示す図である。
【図4】本実施形態に係るA/D変換制御装置を用いたデジタル複写機の制御部を示す構成図である。
【図5】本実施形態に係るA/D変換制御装置を用いたデジタル複写機の制御部におけるA/D変換制御装置のより詳細な構成を示す図である。
【図6】AC電源の出力電圧を検出する電圧センサ(図4に示すセンサは、定着装置の温度を検出する温度センサの他に、AC電源の電圧を検出する電圧センサをも表す)の回路図である。
【図7】本実施形態に係るA/D変換制御装置における複数のアナログ基準電圧を生成する基準電圧生成部の回路構成を示す図である。
【図8】本実施形態に係るA/D変換制御装置におけるA/D変換動作及び制御動作について説明するフローチャートである。
【図9】本実施形態に関するA/D変換部のA/D変換特性を示す図である。
【図10A】本変形例にかかるデジタル複写機による電力供給処理の一例を示す説明図である。
【図10B】AC電源および補助電源から負荷への電力供給レベルの一例を示す説明図である。
【図11】従来の画像形成装置における定着制御部の構成を示す図であり、一般的なA/D変換器の使用態様に基づいた定着制御部の構成例を示す図である。
【図12】特許文献1に開示されたA/D変換器の使用態様に基づいた制御部の構成例を示す図である。
【図13】一般的なA/D変換器が有する変換誤差について説明した変換特性図である。
【符号の説明】
【0096】
1 デジタル複写機
101 ADF
102 原稿台
103 給紙ローラ
104 給送ベルト
105 コンタクトガラス
106 画像読取装置
107 排送ローラ
108 排紙台
109 原稿セット検知器
110 第1給紙装置
111 第2給紙装置
112 第3給紙装置
113〜115 給紙トレイ
116 縦搬送ユニット
117 感光体ドラム
118 書き込みユニット
119 現像装置
120 搬送ベルト
121 定着装置
122 排紙ユニット
123 排紙トレイ
124 両面入紙搬送路
125 反転ユニット
126 両面搬送ユニット
127 反転排紙搬送路
201 定着ローラ
202 加圧ローラ
206 トナー
207 シート
HT1,HT2 ヒータ
TH21,TH22,TH23 温度センサ
301 補助電源
302 電気二重層コンデンサ
303 AC電源
304,1100,1200 制御部
305 遮断回路
306 充電切替回路
307 充電器
308 遮断回路
309,310 電圧センサ
401,1101 ワンチップマイコン
402,1102 CPU
403,1103 ROM
404,1104 RAM
405,1105 A/D変換部
406,1106 入力切替部
407,1107 A/D変換制御部
408,1108,1201 基準電圧生成部
409,1109 I/O制御部
410,1110 センサ
411,1111,1202 電源部
412,1112 定着ヒータ駆動回路
601 トランス
602 ダイオードブリッジ
603,604 分圧抵抗
605 平滑コンデンサ
606 バッファ
701 シャントレギュレータ
702,703,704,706,707 抵抗
705 コンデンサ
1001 SW

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアナログ基準電圧を生成する第1生成手段と、
生成された前記複数のアナログ基準電圧を複数のデジタル基準値に変換しかつ外部機器から入力されるアナログ入力電圧をデジタル値に変換するA/D変換手段と、
前記複数のアナログ基準電圧および前記複数のデジタル基準値に基づいて、当該複数のデジタル基準値の間のデジタル値に変換される前記アナログ入力電圧を補完する演算式を生成する第2生成手段と、
生成した前記演算式を用いて、変換されたデジタル値に対する前記アナログ入力電圧を算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とするA/D変換制御装置。
【請求項2】
前記第2生成手段は、前記アナログ入力電圧を算出するデジタル値に最も近くかつ当該デジタル値以下の前記デジタル基準値および当該デジタル基準値に変換された前記アナログ基準電圧、および当該デジタル値に最も近くかつ当該デジタル値以上の前記デジタル基準値および当該デジタル基準値に変換された前記アナログ基準電圧に基づいて、前記演算式を生成することを特徴とする請求項1に記載のA/D変換制御装置。
【請求項3】
前記第1生成手段は、前記アナログ入力電圧と同一の前記アナログ基準電圧を含み、当該アナログ入力電圧より電圧変動が小さい前記複数のアナログ基準電圧を生成することを特徴とする請求項1または2に記載のA/D変換制御装置。
【請求項4】
前記第1生成手段は、前記アナログ入力電圧の上限値以上かつ前記A/D変換手段によりデジタル値の最大値に変換される電圧より小さい前記アナログ基準電圧を生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載のA/D変換制御装置。
【請求項5】
前記第1生成手段は、前記アナログ入力電圧の下限値以上かつ前記A/D変換手段によりデジタル値の最小値に変換される電圧より大きい前記アナログ入力電圧を生成することを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載のA/D変換制御装置。
【請求項6】
前記A/D変換手段により変換可能なデジタル値の範囲を、前記複数のアナログ基準電圧を変換した前記複数のデジタル基準値により複数の区間に分割する分割手段をさらに備え、
前記第2生成手段は、分割された区間内の前記複数のアナログ基準電圧および当該複数のアナログ基準電圧を変換した前記複数のデジタル基準値に基づいて、区間毎に前記演算式を生成することを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載のA/D変換制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載のA/D変換制御装置により画像形成装置の各部の状態を示すデジタル値から算出したアナログ入力電圧を用いて当該画像形成装置の各部を制御することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−89360(P2009−89360A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186425(P2008−186425)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】