説明

A2ARアゴニストとしての置換4−{3−[6−アミノ−9−(3,4−ジヒドロキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−9H−プリン−2−イル]−プロプ−2−イニル}−ピペリジン−1−カルボン酸エステル

本発明は、A2Aアデノシン受容体(AR)の選択的アゴニストである、置換4-{3-[6-アミノ-9-(3,4-ジヒドロキシ-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-9H-プリン-2-イル]-プロプ-2-イニル}-ピペリジン-1-カルボン酸エステルおよびそれを含有する薬学的組成物を提供する。これらの化合物および組成物は医用薬剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利の表明
本発明は、米国国立衛生研究所からの米国助成金番号1 R41 AR052960の下での政府の支援により行った。政府は本発明に対して一定の権利を有し得る。
【0002】
発明の分野
本発明は、A2Aアデノシン受容体(AR)の選択的アゴニストである、置換4-{3-[6-アミノ-9-(3,4-ジヒドロキシ-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-9H-プリン-2-イル]-プロプ-2-イニル}-ピペリジン-1-カルボン酸エステルおよび薬学的組成物に関する。これらの化合物および組成物は医用薬剤として有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
放射性リガンド結合アッセイおよび生理応答に基づいて、A2Aアデノシン受容体(AR)のアゴニストとしてますます強力かつ/または選択的な化合物の漸進的開発がなされてきた。例えば、Lindenらに対する米国特許第6,232,297号(特許文献1)では、下記一般式を有する化合物が記載されている:

式中、各RはHであり得、Xはエチルアミノカルボニルであり得、R1は4-メトキシカルボニルシクロヘキシルメチル(DWH-146e)であり得る。これらの化合物はA2Aアゴニストであると報告されている。
【0004】
Lindenらに対する米国特許第7,214,665号(特許文献2)では、下記一般式を有する化合物が記載されている:

式中、R7はHであり得、Xはエーテルまたはアミドであり得、CR1R2はCH2であり得、Zは複素環であり得る。これらの化合物はA2Aアゴニストであると報告されている。
【0005】
Riegerらに対する米国特許出願公開第2006/004088号(特許文献3)では、下記一般式を有する化合物が記載されている:

式中、R7はHであり得、Xはシクロアルキル置換のエーテルまたはアミドであり得、CR1R2はCH2であり得、Zは複素環であり得る。これらの化合物はA2Aアゴニストであると報告されている。
【0006】
Riegerらに対する米国特許出願公開第2007/0270373号(特許文献4)では、下記一般式を有する化合物が記載されている:

式中、NR1R2はNH2であり得、R4はエーテルまたはアミドであり得、R5はエチニルであり得、YはOまたはNR1であり得、Zはアリールまたはヘテロアリールであり得る。これらの化合物はA2Aアゴニストであると報告されている。
【0007】
上記を考慮したとしても、治療用途に有用なA2アデノシン受容体アゴニストが引き続き求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,232,297号
【特許文献2】米国特許第7,214,665号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/004088号
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0270373号
【発明の概要】
【0009】
本発明は、A2Aアデノシン受容体のアゴニストとして作用する、置換4-{3-[6-アミノ-9-(3,4-ジヒドロキシ-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-9H-プリン-2-イル]-プロプ-2-イニル}-ピペリジン-1-カルボン酸エステルまたは立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
本発明はまた、本発明の化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される賦形剤との組み合わせで含む薬学的組成物を提供する。
【0011】
本発明は、本発明の化合物および組成物を使用する処置および診断の新規方法を提供する。
【0012】
本発明は、医学的治療における使用のための本発明の新規化合物を提供する。
【0013】
本発明はまた、A2A受容体が関与しておりかつ該受容体のアゴニズムが治療上の利点を与える哺乳動物における病態または症状の処置用の医薬の製造のための、本発明の新規化合物の使用を提供する。
【0014】
本明細書に記載の置換4-{3-[6-アミノ-9-(3,4-ジヒドロキシ-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-9H-プリン-2-イル]-プロプ-2-イニル}-ピペリジン-1-カルボン酸エステルの発見を考慮して、本発明のこれらのおよび他の局面が達成された。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、アデノシンA2A受容体においてアゴニストとして作用する新規置換4-{3-[6-アミノ-9-(3,4-ジヒドロキシ-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-9H-プリン-2-イル]-プロプ-2-イニル}-ピペリジン-1-カルボン酸エステル、ならびに、A2A受容体が関与しておりかつ該受容体のアゴニズムが治療上の利点を与える疾患および状態を処置する方法において該化合物を使用するための方法を提供する。例えば、哺乳動物組織における炎症活動の処置、または鎌状赤血球症の処置のために、化合物を使用することができる。炎症組織活性は、病理学的作用物質が原因であり得るか、あるいは、物理的外傷、化学的外傷もしくは熱的外傷、あるいは臓器移植、組織移植もしくは細胞移植などの医学的手順、血管形成術(PCTA)、虚血/再灌流後の炎症、または移植術の外傷が原因であり得る。本発明の化合物は、他の抗炎症治療薬との組み合わせ、または抗病原体薬との組み合わせで使用することもできる。
【0016】
一態様では、本発明は式I、IIもしくはIIIの新規化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を提供する:

式中、
R1およびR2はHおよびC1-3アルキルより独立して選択され;
Zはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、テトラヒドロフラニル、アゼチジン-2-オニル、ピロリジニルおよびピロリジン-2-オニルより選択され;
Zは0〜2個のZ2で置換され;
Z1はテトラヒドロフラニル、アゼチジン-2-オニル、ピロリジニルおよびピロリジン-2-オニルより選択され;
Z1は0〜2個のZ2で置換され;
Z2はF、C1-4アルキル、CF3、OCF3、(CH2)aOR3、(CH2)aNR3R3、NO2、(CH2)aCN、(CH2)aCO2R3および(CH2)aCONR3R3より独立して選択され;
R3はHおよびC1-6アルキルより独立して選択され;
R4はCH2ORおよびC(O)NRRより選択され;
各RはH、C1-4アルキル、シクロブチルおよび(CH2)aシクロプロピルより独立して選択され;
aは0、1および2より選択され;
qは1、2および3より選択される。
【0017】
別の態様では、本発明は式Iの化合物であり、
R1およびR2がHであり;
Z2がF、C1-2アルキル、CF3、OCF3およびOR3より独立して選択され;
R3がHおよびC1-2アルキルより独立して選択され;
R4がC(O)NRRであり;
各RがH、C1-4アルキル、シクロプロピル、シクロブチルおよび-CH2-シクロプロピルより独立して選択され;
qが1である、
新規化合物を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は以下より選択される新規化合物を提供する。

【0019】
別の態様では、本発明は式IIの化合物であり、
R1およびR2がHであり;
Zが0〜1個のZ2で置換され;
Z2がF、C1-2アルキル、CF3、OCF3およびOR3より独立して選択され;
R3がHおよびC1-2アルキルより独立して選択され;
R4がC(O)NRRであり;
各RがH、C1-4アルキル、シクロプロピル、シクロブチルおよび-CH2-シクロプロピルより独立して選択される、
新規化合物を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は以下より選択される新規化合物を提供する。

【0021】
別の態様では、本発明は以下より選択される新規化合物を提供する。

【0022】
別の態様では、本発明は式IIIの化合物であり、
R1およびR2がHであり;
Z1が0〜1個のZ2で置換され;
Z2がF、C1-2アルキル、CF3、OCF3およびOR3より独立して選択され;
R3がHおよびC1-2アルキルより独立して選択され;
R4がC(O)NRRであり;
各RがH、C1-4アルキル、シクロプロピル、シクロブチルおよび-CH2-シクロプロピルより独立して選択され;
qが0である、
新規化合物を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は以下より選択される新規化合物を提供する。


【0024】
別の態様では、本発明は以下より選択される新規化合物を提供する。


【0025】
別の態様では、本発明は以下より選択される新規化合物を提供する。


【0026】
別の態様では、本発明は式IIIの化合物であり、
R1およびR2がHであり;
Z1が0〜1個のZ2で置換され;
Z2がF、C1-2アルキル、CF3、OCF3およびOR3より独立して選択され;
R3がHおよびC1-2アルキルより独立して選択され;
R4がC(O)NRRであり;
各RがH、C1-4アルキル、シクロプロピル、シクロブチルおよび-CH2-シクロプロピルより独立して選択され;
qが1である、
新規化合物を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は以下より選択される新規化合物を提供する。



【0028】
別の態様では、本発明は以下より選択される新規化合物を提供する。



【0029】
別の態様では、本発明は以下より選択される新規化合物を提供する。


【0030】
本発明は、医学的治療における使用のための、好ましくは、例えばアレルギー、外傷、または虚血/再灌流傷害により生じる炎症反応などの炎症の処置、または炎症からの哺乳動物組織の保護における使用のための新規化合物、および、炎症に関連する哺乳動物における病態または症状が原因の炎症反応の処置用の医薬の製造のための、本発明の化合物の使用を提供する。
【0031】
本発明は、本化合物において生じる原子のすべての同位体を含むよう意図されている。同位体は、同一の原子番号を有するが異なる質量数を有する原子を含む。一般例でありかつ非限定的なものとして、水素の同位体としてはトリチウムおよび重水素が挙げられる。炭素の同位体としてはC-13およびC-14が挙げられる。
【0032】
本発明はまた、これらの化合物と少なくとも1つの抗炎症化合物との組み合わせの使用を含む。そのような化合物の一例はIV型ホスホジエステラーゼ阻害剤であり、この組み合わせを使用して、白血球が媒介する炎症反応の相乗的低下を引き起こすことができる。
【0033】
本発明はまた、有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される希釈剤または担体との組み合わせで、また任意的に抗炎症化合物との組み合わせで含む薬学的組成物を提供する。組成物を単位剤形として提示することができる。担体は液体担体であり得る。組成物を経口投与、静脈内投与、眼内投与、非経口投与、エアロゾル投与または経皮投与に適応させることができる。
【0034】
本発明の組成物はIV型ホスホジエステラーゼ阻害剤、または別の抗炎症化合物(例えばPDE阻害剤以外)をさらに含み得る。IV型ホスホジエステラーゼ阻害剤は例えばロリプラム、シロミラストまたはロフルミラストであり得る。
【0035】
さらに本発明は、A2Aアデノシン受容体の活性が関与しておりかつ該受容体のアゴニズムが望まれる哺乳動物における病態または症状を処置するための治療的方法であって、そのような治療を必要とする哺乳動物に有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与する段階を含む方法を提供する。A2Aアデノシン受容体の活性化が好中球、マスト細胞、単球/マクロファージ、血小板T細胞および/または好酸球に影響を与えることで炎症を阻害すると考えられる。これらの炎症細胞の阻害により組織侵襲後の組織保護が得られる。
【0036】
さらに本発明は、生物学的疾患を処置するための治療的方法であって、有効量の好適な抗生物質、抗真菌薬または抗ウイルス薬をA2Aアデノシン受容体アゴニストとの組み合わせで投与する段階を含む方法を提供する。抗病原体薬が不明の場合、A2Aアゴニストを単独で使用して、抗生物質耐性菌、またはSARSもしくはエボラを引き起こすものなどのある種のウイルスによる感染中に生じ得る炎症を減少させることができる。任意的に、本方法はIV型PDE阻害剤を投与する段階を含む。A2Aアデノシン受容体アゴニストは、炭疽、野兎病、大腸菌(Escherichia coli)、ペストなどの生物テロ兵器の処置において抗生物質と共に投与する際に、敗血症、例えばヒト尿毒症症候群が引き起こす炎症などの状態の処置のための補助的治療を与えることができる。本発明はまた、炭疽、野兎病、大腸菌およびペストなどの致死性の細菌感染症、真菌感染症およびウイルス感染症の処置のための補助的治療であって、抗菌薬、抗真菌薬または抗ウイルス薬を選択的A2Aアデノシン受容体アゴニストとの組み合わせで投与する段階を含む治療を提供する。
【0037】
本発明は、炎症を誘発する生物学的疾患を単独または疾患死滅薬との組み合わせのいずれかで処置するための治療的方法を提供する。これらは、炭疽、野兎病、ペスト、ライム病および炭疽を引き起こす細菌を含むがそれに限定されない、抗生物質との組み合わせでの細菌を含む。抗ウイルス治療の有り無しでRSV、重症急性呼吸器症候群(SARS)、インフルエンザおよびエボラを引き起こすものを含むがそれに限定されないウイルスも含まれる。抗酵母薬または抗真菌薬の有り無しでの酵母感染症および真菌感染症も含まれる。
【0038】
抗菌薬、抗真菌薬または抗ウイルス薬とA2Aアデノシン受容体アゴニストとを共投与する(例えば同時に)ことができ、あるいは同時にまたは混合物として投与することもでき、あるいは続けて投与することもできる。A2Aアデノシン受容体アゴニストの続けての投与は、薬剤の前、薬剤の投与後数分以内または最大約48時間以内であり得る。好ましくは、A2Aアデノシン受容体アゴニストの投与は約24時間以内、より好ましくは約12時間以内である。
【0039】
本発明の方法は、敗血症性ショックに加えて、敗血症、重症敗血症、および潜在的に全身炎症反応症候群の患者の処置にも有用である。A2Aアデノシン受容体アゴニストは炎症カスケード初期に複数の抗炎症効果を発揮し、したがって、そのようなアゴニストの短い過程は、吸入炭疽、野兎病、大腸菌およびペストを含むヒトの重篤で生命を脅かす感染性障害および炎症性障害において著明な利点を生み出すことができる。
【0040】
髄膜炎、腹膜炎および関節炎の実験モデルにおいてインビボでA2A受容体アゴニストの抗炎症効果が実証された。細菌性敗血症の潜在的に致死性の症候群は、急性期治療室におけるますます一般的な問題になっている。敗血症および敗血症性ショックは、現在米国における主要な死因の11番目であり、発生頻度が増加している。現在の推定値は、米国において年間約900,000件の敗血症の新規症例(約60%がグラム陰性)が生じており、推定粗死亡率が35%であることを示している。さらに、最近の治験で評価した死亡率が約25%である一方、患者の約10%は基礎疾患により死亡している。年間約200,000件の症例においてショックが発生しており、それに起因する死亡率は46%である(死亡92,000件)。敗血症は医療支出において年間推定50〜100億ドルを占めている。非冠動脈疾患集中治療室の入院患者のうち、敗血症が最も一般的な死因であることが、現在広く認識されている。敗血症症候群は非常に重要な公衆衛生問題である。A2AARアゴニストは、罹患率および死亡率を減少させる新規かつ独自の補助的治療のアプローチとしての用途を有することが期待されている。この治療薬が全身の炭疽、野兎病、大腸菌およびペストの予後を改善すると考えられる。
【0041】
本発明のA2Aアデノシン受容体のアゴニストは、好中球、マクロファージ、およびT細胞活性化を阻害することにより、細菌感染症およびウイルス感染症が引き起こす炎症を減少させることができる。その化合物は、抗生物質または抗ウイルス薬との組み合わせで、敗血症もしくは溶血尿毒症症候群または他の炎症性状態を予防するか、またはそれが原因の死亡率を減少させることができる。アデノシンA2Aアゴニストの効果はロリプラムなどのIV型ホスホジエステラーゼ阻害剤により増強される。
【0042】
本発明はまた、医学的治療における使用のための(例えば、炭疽、野兎病、大腸菌、ペスト、または他の細菌感染症もしくはウイルス感染症などの潜在的に致死性の細菌感染症の処置、ならびに細菌感染症および/またはウイルス感染症が引き起こす全身中毒の処置における補助としての使用のための)本発明の化合物、ならびに、細菌もしくはウイルスが引き起こす炎症を減少させるための医薬の製造、またはヒトなどの哺乳動物におけるその処置のための、本発明の化合物の使用を提供する。本発明の化合物は、細菌作用物質またはウイルス作用物質が炎症を直接引き起こすかまたは例えば抗生物質もしくは抗ウイルス薬での処置の結果として引き起こす、全身中毒の処置にも有用である。
【0043】
敗血症は、毒素を産生する細菌またはウイルスによる血流の重篤な感染が引き起こす重症の疾病である。炎症として現れ得る感染症を、細菌またはウイルスの病原体は、直接引き起こすこともあれば、その処置、すなわち抗菌薬もしくは抗ウイルス薬での処置が原因の病原体の死によって引き起こすこともある。敗血症は、感染症に対する身体の応答と見なすこともできる。感染症は、身体に侵入する微生物もしくは「病原菌」(普通は細菌)が引き起こし得るものであり、特定の身体領域に限定されることがあり(例えば歯膿瘍)、または血流中に広がることもある(「敗血症(septicemia)」または「敗血症(blood poisoning)」と多くの場合呼ばれる)。
【0044】
全身中毒または炎症性ショックは敗血症性ショック; 菌血症性ショック; エンドトキシンショック; 敗血症性(Septicemic)ショック; またはウォームショックと多くの場合呼ばれる。
【0045】
敗血症性ショックは、重篤な感染が低血圧および低血流を導く場合に生じる、重篤で異常な状態である。脳、心臓、腎臓および肝臓などの生命維持臓器が適切に機能しないことがあるか、または不全に陥ることがある。敗血症性ショックは、非常に高齢の人々および非常に若い人々において最も多くの場合生じる。それは基礎疾病を有する人々においても生じる。任意の細菌生物が敗血症性ショックを引き起こし得る。真菌およびウイルスもこの状態を引き起こし得る。細菌、真菌またはウイルスが放出する毒素は、直接の組織損傷を引き起こし得るし、低血圧および/または臓器機能低下を導き得る。これらの毒素は、敗血症性ショックの原因となる身体からの活発な炎症反応も生み出し得る。
【0046】
別の局面では、本発明はまた、重症急性呼吸器症候群(SARS)を処置する方法であって、そのような治療を必要とする哺乳動物に有効抗炎症量のA2Aアデノシン受容体のアゴニストを任意的にはロリプラムなどのPDE-IV阻害剤と共に投与する段階を含む方法を提供する。
【0047】
本発明はまた、鎌状赤血球症を処置する方法であって、鎌状赤血球症に罹患している対象に本明細書に記載のA2Aアゴニストを投与する段階による方法を提供する。
【0048】
本発明は、ヒトまたは家畜などの哺乳動物における冠動脈狭窄の存在を検出しかつ重症度を評価するための化合物、およびその使用方法を提供する。好ましくは、本発明の化合物は、冠動脈疾患の検出および評価用の薬理学的ストレスイメージングにおいて有用な薬理学的ストレス誘導剤またはストレッサーとして使用される。ストレス誘導剤として有用な本発明の具体的化合物は、A2Aアデノシン受容体において強力かつ選択的であるだけでなく、短時間作用性であるため、イメージングプロセス後に身体により速やかに除去される。
【0049】
したがって、本発明は、ヒト対象などの哺乳動物における冠動脈狭窄の存在および重症度を検出するための方法であって、(1) ある量の本発明の1つまたは複数の化合物を投与する段階、ならびに(2) 該冠動脈狭窄の重症度を検出および/または決定する技術を該哺乳動物に対して行う段階を含む方法を提供する。
【0050】
本発明は、医学的診断手順における使用のための、好ましくはヒト対象における冠動脈狭窄の存在を検出しかつ重症度を評価することにおける使用のための、本発明の化合物を提供する。本発明は、冠動脈疾患を診断しかつその程度を評価するための臨床灌流イメージング技術と共に使用される可能性がある薬理学的血管拡張薬の製造のための、本発明の化合物の使用を提供する。好ましい灌流イメージング技術は、平面または単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)γカメラシンチグラフィー、陽電子放射型断層撮影(PET)、核磁気共鳴(NMR)イメージング、磁気共鳴画像法(MRI)イメージング、灌流コントラスト心エコー法、デジタルサブトラクション血管造影(DSA)および超高速X線コンピュータ断層撮影(CINE CT)である。
【0051】
本発明はまた、有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される希釈剤または担体との組み合わせで含む薬学的組成物を提供する。好ましくは、組成物は単位剤形として提示されるものであり、非経口注入、例えば静脈内注入に適応させることができる。
【0052】
別途記載がない限り以下の定義を使用する。
【0053】
哺乳動物または対象としてはヒト、ウマ、ブタ、イヌおよびネコが挙げられる。
【0054】
「置換された」という用語は、指定原子の通常の原子価を越えずかつ置換により安定な化合物が得られることを条件に、指定原子上の任意の1個または複数個の水素が指示群からの選択によって置き換えられていることを意味する。置換基がケト(すなわち、=O)である場合、原子上の2個の水素が置き換えられる。ケト置換基は芳香族部分上には存在しない。
【0055】
ハロとはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードのことである。
【0056】
アルキルは直鎖アルキル基と分岐アルキル基との両方を意味するが、「プロピル」などの個々の基に対する言及は直鎖基のみを包含し、「イソプロピル」などの分岐鎖異性体は具体的に言及される。具体的には、C1-6アルキルは、任意の分岐鎖の形態のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、3-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシルなどであり得る。
【0057】
基、置換基および範囲について以下に列挙する具体的かつ好ましい値は、例示のみを目的としており、それらは他の定義された値、または基および置換基に関する定義された範囲内の他の値を排除するものではない。
【0058】
「処置する」または「処置」は哺乳動物における疾患状態の処置を網羅しており、以下が挙げられる: (a) 哺乳動物において疾患状態が生じることを、特にそのような哺乳動物が疾患状態にかかりやすいがそれを有するとはまだ診断されていない場合に防ぐこと; (b) 疾患状態を阻害すること、例えばその進行を停止させること; および/または(c) 疾患状態を軽減すること、例えば所望のエンドポイントに達するまで疾患状態の退行を引き起こすこと。処置としては、疾患の症状の寛解(例えば疼痛または不快感の減少)であって、疾患(例えば原因、伝染、発現など)に直接影響を与えることもそうでないこともある寛解も挙げられる。
【0059】
本明細書で使用する「との組み合わせで」という用語は、抗拒絶反応薬とA2Aアデノシン受容体アゴニストとの共投与を意味する。薬剤とA2Aアデノシン受容体アゴニストとの共投与としては、薬物およびアゴニストの同時投与、混合物としての投与または連続投与のいずれかが挙げられる。A2Aアデノシン受容体アゴニストの連続投与は、薬剤の投与前、薬剤の投与前数分以内または最大約48時間以内のいずれかであり得る。A2Aアデノシン受容体アゴニストは薬剤の後に投与してもよい。好ましくは、A2Aアデノシン受容体アゴニストの投与は約24時間以内、より好ましくは約12時間以内である。
【0060】
一般に、本発明の化合物はIUPACまたはCAS命名法に従って命名される。当業者に周知の略語を使用することができる(例えばフェニルは「Ph」、メチルは「Me」、エチルは「Et」、時間は「h」、室温は「rt」)。
【0061】
本発明の化合物が2つ以上のキラル中心を有し、光学活性体およびラセミ体として単離可能であることを、当業者は認識するであろう。好ましくは、本発明のリボシド部分はD-リボースから誘導される。いくつかの化合物は多形を示し得る。本発明が、本明細書に記載の有用な特性を有する本発明の化合物の任意のラセミ体、光学活性体、多形体もしくは立体異性体、またはその混合物を包含すると理解すべきであり、どのようにして光学活性体を調製するか(例えば、再結晶技術もしくは酵素技術によるラセミ体の分割、光学活性出発原料からの合成、キラル合成、またはキラル固定相を用いるクロマトグラフィー分離によって)、またどのようにして本明細書に記載の試験を使用するかまたは当技術分野で周知の他の同様の試験を使用してアデノシンアゴニスト活性を決定するかは、当技術分野で周知である。
【0062】
任意的にIV型PDE阻害剤と共に本発明の化合物により処置(予防的処置を含む)可能な炎症反応としては、以下が原因の炎症がある: (a) エリテマトーデス、多発性硬化症、子宮内膜症による不妊症、糖尿病を導く膵島の破壊と下腿潰瘍を含む糖尿病の炎症性の結果とを含むI型糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、骨粗鬆症および関節リウマチなどの自己免疫刺激(自己免疫疾患); (b) 喘息、枯草熱、鼻炎、ツタウルシ、春季カタルおよび他の好酸球媒介性状態などのアレルギー疾患; (c) 乾癬、接触性皮膚炎、湿疹、感染性皮膚潰瘍、開放創治癒、蜂巣炎などの皮膚疾患; (d) 敗血症、敗血症性ショック、脳炎、感染性関節炎、エンドトキシンショック、グラム陰性ショック、ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応、炭疽、ペスト、野兎病、エボラ、帯状疱疹、毒素ショック、脳性マラリア、細菌性髄膜炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ライム病、HIV感染症、(TNFα増強HIV複製、逆転写酵素阻害剤活性のTNFα阻害)を含む感染性疾患; (e) 消耗性疾患: がんおよびHIVに対して続発性の悪液質; (f) 移植片拒絶および移植片対宿主疾患を含む臓器移植、組織移植または細胞移植(例えば骨髄、角膜、腎臓、肺、肝臓、心臓、皮膚、膵島); (g) アムホテリシンB処置の有害作用、免疫抑制治療、例えばインターロイキン2処置の有害作用、OKT3処置、造影色素、抗生物質の有害作用、GM-CSF処置の有害作用、シクロスポリン処置の有害作用、ならびにアミノグリコシド処置、免疫抑制が原因の口内炎および粘膜炎の有害作用を含む、薬物治療の有害作用; (h) 虚血、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、血管形成術後の再狭窄、炎症性大動脈瘤、血管炎、脳卒中、脊椎損傷、うっ血性心不全、出血性ショック、虚血/再灌流傷害、くも膜下出血後の血管攣縮、脳血管発作後の血管攣縮、胸膜炎、心膜炎、および糖尿病の心血管合併症などの、炎症反応が誘導するかまたは悪化させる循環疾患を含む心血管状態; (i) 腹膜透析が原因の心膜炎を含む透析; (j) 痛風; ならびに(k) 火傷、酸、アルカリなどが原因の化学的外傷または熱的外傷。
【0063】
さらなる疾患としては蹄葉炎および蹄葉炎疾患などのウマ障害が挙げられる。
【0064】
虚血/再灌流傷害が血管形成術または血栓溶解により引き起こされる炎症反応を制限するための本化合物の使用が特に関心の対象となりかつ有効である。哺乳動物レシピエントに対する臓器移植、組織移植または細胞移植、すなわち同種組織または異種組織の移植が原因の炎症反応、循環病態および血管形成術、ステント配置、シャント配置または移植術を含むその処置が原因の自己免疫疾患および炎症性状態を制限するための本化合物の使用も特に関心の対象となりかつ有効である。意外にも、炎症反応の開始後に、例えば、炎症反応を開始させる病理または外傷を対象が患った後に、本発明の1つまたは複数の化合物の投与が有効であることがわかる。
【0065】
リガンド結合受容体部位を含む組織または細胞は、具体的な受容体サブタイプに対する試験化合物の選択性、血液または他の生理学的体液中の生理活性化合物の量を測定するために使用可能であり、あるいは、受容体部位活性化に関連する疾患または状態の処置のための潜在的治療薬を、該薬剤と該リガンド-受容体複合体とを接触させ、かつリガンドの置換および/もしくは薬剤の結合の程度または該薬剤に対する細胞応答(例えばcAMP蓄積)を測定することにより同定するためのツールとして使用可能である。
【0066】
以下の略語が本明細書において使用されている:
2-Aas 2-アルキニルアデノシン
125I-ABA N6-(4-アミノ-3-125ヨード-ベンジル)アデノシン
APCI 大気圧化学イオン化
CCPA 2-クロロ-N6-シクロペンチルアデノシン;
Cl-IB-MECA N6-3-ヨード-2-クロロベンジルアデノシン-5'-N-メチルウロンアミド;
CPA N6-シクロペンチルアデノシン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DMSO-d6 重水素化ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
eq 当量
GPCR Gタンパク質共役受容体; hA2AAR 組換えヒトA2Aアデノシン受容体;
IADO 2-ヨードアデノシン
125I-APE 2-[2-(4-アミノ-3-[125I]ヨードフェニル)エチルアミノ]アデノシン;
NECA 5'-N-エチルカルボキサミドアデノシン;
IB-MECA N6-3-ヨードベンジルアデノシン-5'-N-メチルウロンアミド;
2-ヨードアデノシン 5-(6-アミノ-2-ヨード-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロ-フラン-2カルボン酸エチルアミド
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HRMS 高分解能質量分析
125I-ZM241385 125I-4-(2-[7-アミノ-2-[2-フリル][1,2,4]トリアゾロ[2,3-a][1,3,5]トリアジン-5-イル-アミノ]エチル)フェノール;
INECA 2-ヨード-N-エチルカルボキサミドアデノシン
LC/MS 液体クロマトグラフィー/質量分析
m.p. 融点
MHz メガヘルツ
MRS 1220 N-(9-クロロ-2-フラン-2-イル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]キナゾリン-5-イル)-2-フェニルアセトアミド;
MS 質量分析
NECA N-エチルカルボキサミドアデノシン
NMR 核磁気共鳴
RP-HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
TBAF フッ化テトラブチルアンモニウム
TBS tert-ブチルジメチルシリル
TBDMSCl tert-ブチルジメチルシリルクロリド
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
p-TSOH パラ-トルエンスルホン酸
XAC 8-(4-((2-アミノエチル)アミノカルボニル-メチルオキシ)フェニル)-1-3-ジプロピルキサンチン。
【0067】
本発明の実施において有用である具体的なIV型ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤としては、米国特許第4,193,926号に開示および記載のラセミおよび光学活性4-(ポリアルコキシフェニル)-2-ピロリドンが挙げられる。ロリプラムが好適なIV型PDE阻害剤の一例である。
【0068】
本発明はさらに、本発明の化合物を以下からなる群より選択される1つまたは複数のメンバーとの組み合わせで含む薬学的組成物を提供する: (a) ジロートン; ABT-761; フェンロイトン; テポキサリン; Abbott-79175; Abbott-85761; 式(5.2.8)のN-(5-置換)-チオフェン-2-アルキルスルホンアミド; 式(5.2.10)の2,6-ジ-tert-ブチルフェノールヒドラゾン; 式(5.2.11)のZeneca ZD-2138; 式(5.2.12)のSB-210661; ピリジニル置換2-シアノナフタレン化合物L-739,010; 2-シアノキノリン化合物L-746,530; インドールおよびキノリン化合物MK-591、MK-886およびBAY x 1005からなる群より選択されるロイコトリエン生合成阻害剤、5-リポキシゲナーゼ(5-LO)阻害剤および5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)アンタゴニスト; (b) フェノチアジン-3-オン化合物L-651,392; アミジノ化合物CGS-25019c; ベンゾオキサゾールアミン化合物オンタゾラスト; ベンゼンカルボキシイミドアミド化合物BIIL 284/260; 化合物ザフィルルカスト、アブルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、ベルルカスト(MK-679)、RG-12525、Ro-245913、イラルカスト(iralukast)(CGP 45715A)およびBAY x 7195からなる群より選択されるロイコトリエンLTB4、LTC4、LTD4およびLTE4の受容体アンタゴニスト; (d) 5-リポキシゲナーゼ(5-LO)阻害剤; および5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)アンタゴニスト; (e) 5-リポキシゲナーゼ(5-LO)の二重阻害剤および血小板活性化因子(PAF)のアンタゴニスト; (f) テオフィリンおよびアミノフィリン; (g) COX-1阻害剤(NSAID); および一酸化窒素NSAID; (h) COX-2選択的阻害剤ロフェコキシブ; (i) プレドニゾン、プレドニゾロン、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸モメタゾンからなる群より選択される、全身副作用の減少を伴う吸入グルココルチコイド; (j) 血小板活性化因子(PAF)アンタゴニスト; (k) 内在性の炎症性実体に対して活性なモノクローナル抗体; (l) エタネルセプト、インフリキシマブおよびD2E7からなる群より選択される抗腫瘍壊死因子(TNFα)薬; (m) VLA-4アンタゴニストを含む接着分子阻害剤; (n) シクロスポリン、アザチオプリンおよびメトトレキサートからなる群より選択される免疫抑制薬; または(O) コルヒチンからなる群より選択される抗痛風薬。
【0069】
薬学的に許容される塩の例としては、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸によって形成される有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩およびα-グリセロリン酸塩がある。塩酸塩(hydroCl)、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩および炭酸塩を含む好適な無機塩も形成可能である。
【0070】
薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知の標準的手順を使用して、例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物と、生理学的に許容されるアニオンを与える好適な酸とを反応させることで得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウムもしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩を作製することもできる。
【0071】
本発明の化合物を、薬学的組成物として調剤し、ヒト患者などの哺乳動物宿主に、選択される投与経路、すなわち経口もしくは非経口、静脈内、筋肉内、局所または皮下経路に適応した種々の形態で投与することができる。
【0072】
したがって、本化合物を、不活性希釈剤または同化可能な食用担体などの薬学的に許容される媒体との組み合わせで全身投与、例えば経口投与することができる。それを硬もしくは軟シェルゼラチンカプセルに封入できるか、錠剤に圧縮できるか、または患者の食事の食物に直接組み入れることができる。治療用経口投与では、活性化合物を、1つまたは複数の賦形剤と組み合わせて、経口摂取用錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用することができる。そのような組成物および製剤は少なくとも0.1%の活性化合物を含有するはずである。当然、組成物および製剤の割合は変動し得るものであり、好都合には所与の単位剤形の重量の約2〜約60%であり得る。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、有効投与量レベルが得られる量である。
【0073】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などはトラガントゴム、アラビアゴム、コーンスターチもしくはゼラチンなどの結合剤; リン酸二カルシウムなどの賦形剤; コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤; ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤; およびショ糖、果糖、乳糖もしくはアスパルテームなどの甘味料、またはペパーミント、ウインターグリーン油もしくはサクランボ香味料などの香味料も含有し得る。単位剤形がカプセル剤である場合、上記種類の材料に加えて、植物油またはポリエチレングリコールなどの液体担体を含有し得る。各種の他の材料がコーティングとして、またはそうでなければ固体単位剤形の物理的形態を変更するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤またはカプセル剤をゼラチン、ワックス、セラックまたは糖などでコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてのショ糖または果糖、防腐剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにサクランボ味またはオレンジ味などの香味料を含有し得る。当然、任意の単位剤形の調製に使用する任意の材料が薬学的に許容され、使用される量において実質的に無毒であるはずである。さらに、活性化合物を持続放出製剤およびデバイスに組み入れることができる。
【0074】
また、活性化合物を注入または注射によって静脈内投与または腹腔内投与することができる。活性化合物またはその塩の溶液を、任意で非イオン性界面活性剤と混合した水中で調製することができる。分散液もグリセリン、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびその混合物中、ならびに油中で調製することができる。普通の貯蔵および使用条件下で、これらの製剤は、微生物の成長を防ぐための防腐剤を含有する。
【0075】
注射または注入に好適な薬学的剤形としては、注射用または注入用の滅菌溶液または懸濁液の即時調製に適応し、任意でリポソームに被包されている、有効成分を含む滅菌水溶液または水性懸濁液、あるいは滅菌粉末を挙げることができる。いずれの場合でも、最終剤形は、製造および貯蔵条件下で滅菌であり、流体であり、かつ安定でなければならない。液体担体または媒体は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、無毒のグリセリルエステル、およびその好適な混合物を例えば含む溶媒または液体分散媒体であり得る。例えば、リポソームの形成、分散液の場合の必要な粒径の維持、または界面活性剤の使用により、適当な流動性を維持することができる。微生物の作用の阻止をさまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、緩衝液または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収を組成物中での吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0076】
所要量の活性化合物を適切な溶媒中に、先に列挙した各種の他の成分を必要に応じて組み入れた後、濾過滅菌を行うことで、滅菌注射用溶液が調製される。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過した溶液中に存在する有効成分と任意のさらなる所望の成分との粉末を与える、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0077】
局所投与では、本化合物を純粋な形態で、すなわちそれが液体である場合に適用することができる。しかし、固体、液体であり得るかまたは皮膚科学的パッチ中に存在し得る皮膚科学的に許容される担体との組み合わせで、組成物または製剤としてそれを皮膚に投与することが一般に望ましい。
【0078】
有用な固体担体としてはタルク、粘土、結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉化固体が挙げられる。有用な液体担体としては、本化合物を任意で無毒の界面活性剤によって有効なレベルで溶解または分散させることができる、水、アルコールもしくはグリコール、または水-アルコール/グリコールブレンドが挙げられる。芳香などの補助剤、およびさらなる抗菌薬を加えて、所与の用途での特性を最適化することができる。得られた液体組成物を、吸収性パッドから適用するか、絆創膏および他の包帯の含浸に使用するか、またはポンプ型もしくはエアロゾル噴霧器を用いて患部上に噴霧することができる。
【0079】
また、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪アルコール、変性セルロースまたは変性ミネラル材料などの増粘剤を液体担体と共に使用することで、ユーザーの皮膚に直接適用するための塗り広げ可能なペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、石鹸剤などを形成することもできる。
【0080】
本発明の化合物を皮膚に送達するために使用可能である有用な皮膚科学的組成物の例はJacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)およびWortzman(米国特許第4,820,508号)に開示されている。
【0081】
本発明の化合物の有用な投与量は、そのインビトロ活性および動物モデルでのインビボ活性を比較することで決定することができる。マウスおよび他の動物の有効投与量をヒトに外挿するための方法は当技術分野で公知である。例えば米国特許第4,938,949号を参照。IV型PDE阻害剤の有用な投与量は当技術分野で公知である。例えば米国特許第5,877,180号、第12段を参照。
【0082】
一般に、ローションなどの液体組成物中の本発明の化合物の濃度は約0.1〜25重量%、好ましくは約0.5〜10重量%である。ゲルまたは粉末などの半固体組成物または固体組成物中の濃度は約0.1〜5重量%、好ましくは約0.5〜2.5重量%である。
【0083】
処置における使用に必要な、化合物、またはその活性塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の塩だけでなく投与経路、処置される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態によっても変動し、最終的には付き添いの医師または臨床家の裁量による。
【0084】
しかし一般に、好適な用量は、1日体重1kg当たり約0.5〜約100μg、例えば約10〜約75μg、例えば1日レシピエントの体重1キログラム当たり3〜約50μgの範囲、好ましくは6〜90μg/kg/日の範囲、最も好ましくは15〜60μg/kg/日の範囲である。
【0085】
化合物は単位剤形で好都合に投与され、例えば単位剤形当たり有効成分を5〜1000μg、好都合には10〜750μg、最も好都合には50〜500μg含有する。
【0086】
理想的には、約0.1〜約10nM、好ましくは約0.2〜10nM、最も好ましくは約0.5〜約5nMの活性化合物のピーク血漿中濃度を実現するように有効成分を投与すべきである。これは、例えば、任意で生理食塩水中の有効成分の0.05〜5%溶液の静脈内注射、または約1〜100μgの有効成分を含有するボーラスとしての経口投与によって実現することができる。望ましい血中レベルを、約0.01〜5.0μg/kg/時間とする持続注入、または約0.4〜15μg/kgの有効成分を含む間欠注入によって維持することができる。
【0087】
所望の用量を、単一用量で、または適切な間隔で投与される分割用量として、例えば1日当たり2つ、3つ、4つまたはそれ以上の副用量として好都合に提示することができる。副用量それ自体を、例えばいくつかの別々の大まかな間隔の投与に、例えば吸入器からの複数の吸入にさらに分割可能であり、または眼に対する複数の液滴の適用によりさらに分割可能である。例えば、炎症を起こす侵襲後に長期間、本組成物を静脈内投与することが望ましい。
【0088】
A2Aアデノシン受容体アゴニストとして作用する本発明の所与の化合物の能力を、当技術分野で周知の薬理学モデルを使用するかまたは以下に記載の試験を使用して決定することができる。
【0089】
本化合物およびそれを含有する組成物は、薬理学的ストレッサーとして投与され、また心筋灌流の局面を測定するいくつかの非侵襲的診断手順のいずれか1つとの組み合わせで使用される。例えば、静脈内アデノシンを、心筋虚血の重症度を評価するタリウム-201心筋灌流イメージングとの組み合わせで使用することができる。この場合、いくつかの異なる放射性医薬品のいずれか1つをタリウム-201の代わりにすることができる(例えばテクネチウム-99m標識放射性医薬品(すなわちTc-99m-セスタミビ、Tc-99m-テボロキシム)、I-123-IPPAまたはBMIPPなどのヨウ素-123標識放射性医薬品、ルビジウム-82、窒素-13など)。同様に、本化合物の1つを、薬理学的ストレッサーとして、心筋収縮不全の重症度を評価するラジオアイソトープ心室造影との組み合わせで投与することができる。この場合、ラジオアイソトープ心室造影試験は、右心室および/または左心室の初回通過または同期平衡試験であり得る。同様に、本発明の化合物を、薬理学的ストレッサーとして、局所的壁運動の異常の存在を評価する心エコー法との組み合わせで投与することができる。同様に、活性化合物を、薬理学的ストレッサーとして、狭窄冠血管の機能的重要性を評価する心カテーテルなどによる冠血流の侵襲的測定との組み合わせで投与することができる。
【0090】
哺乳動物における心筋灌流の異常を診断する方法であって、以下の段階を含む方法も提供される: (a) 該哺乳動物に先に記載の量の化合物または組成物を非経口投与する段階; および(b) 冠動脈狭窄の存在の検出、冠動脈狭窄の重症度の評価、またはその両方を行う技術を哺乳動物に対して行う段階。心筋機能不全は、例えば冠動脈疾患、心室機能不全、ならびに無疾患の冠血管および/または狭窄冠血管を通じる血流の差であり得る。冠動脈疾患の存在を検出しかつ重症度を評価する技術は、例えば放射性医薬品心筋灌流イメージング、心室機能イメージング、または冠血流速度を測定するための技術であり得る。放射性医薬品心筋灌流イメージングは、例えば平面シンチグラフィー、単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放射型断層撮影(PET)、核磁気共鳴(NMR)イメージング、灌流コントラスト心エコー法、デジタルサブトラクション血管造影(DSA)および超高速X線コンピュータ断層撮影(CINE CT)であり得る。放射性医薬品は放射性医薬品心筋灌流イメージングとの組み合わせで使用可能であり、放射性医薬品は、例えばタリウム-201、テクネチウム-99m、窒素-13、ルビジウム-82、ヨウ素-123および酸素-15からなる群より選択される放射性核種を含み得る。放射性医薬品心筋灌流イメージングがシンチグラフィーである場合、放射性医薬品はタリウム-201であり得る。心室機能イメージング技術は、例えば心エコー法、コントラスト心室造影またはラジオアイソトープ心室造影であり得る。冠血流速度を測定するための方法は、例えばドップラー血流カテーテル、デジタルサブトラクション血管造影および放射性医薬品イメージング技術であり得る。これらの診断方法は以下の段階も含み得る: (a) 先に記載の量の化合物または組成物を静脈内注入またはボーラス注入によりヒトに投与することで冠動脈拡張を与える段階; (b) タリウム-201またはテクネチウム-99mを含む放射性医薬品をヒトに投与する段階; および(c) 冠動脈疾患の存在を検出しかつ重症度を評価するためにヒトに対してシンチグラフィーを行う段階。放射性医薬品は、例えばTc-99m-セスタミビであり得る。
【0091】
本方法は、冠動脈拡張を与える上で有効な用量(約0.25〜500、好ましくは1〜250mcg/kg/分)で静脈内注入により本発明の1つまたは複数の化合物を投与する段階を典型的に包含する。しかし、侵襲的設定におけるその使用は0.5〜50mcgのボーラス用量での薬物の冠内投与を包含し得る。
【0092】
好ましい方法は、ヒトにおける冠動脈疾患の存在を検出しかつ/または重症度を評価する心筋灌流イメージングとの組み合わせでの実行用の代替物としての本発明の化合物の使用であって、心筋灌流イメージングが平面シンチグラフィーもしくは単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放射型断層撮影(PET)、核磁気共鳴(NMR)イメージング、灌流コントラスト心エコー法、デジタルサブトラクション血管造影(DSA)または超高速X線コンピュータ断層撮影(CINE CT)を使用する放射性医薬品心筋灌流イメージングを含むいくつかの技術のいずれか1つにより行われる使用を含む。
【0093】
ヒトにおける虚血性心室機能不全の存在を検出しかつ/または重症度を評価するイメージングとの組み合わせでの実行用の代替物としての本発明の化合物の使用を含む方法であって、虚血性心室機能不全が心エコー法、コントラスト心室造影またはラジオアイソトープ心室造影を含むいくつかのイメージング技術のいずれか1つにより測定される方法も提供される。心筋機能不全は冠動脈疾患、心室機能不全、無疾患の冠血管および狭窄冠血管を通じる血流の差などであり得る。
【0094】
ヒトにおける冠動脈の血管拡張能力(貯蔵能力)を評価するために冠血流速度を測定するための手段との組み合わせでの冠動脈充血剤(coronary hypremic agent)としての本発明の化合物の使用を含む方法であって、冠血流速度がドップラー血流カテーテルまたはデジタルサブトラクション血管造影を含むいくつかの技術のいずれか1つにより測定される方法も提供される。
【0095】
以下の詳細な実施例を参照して本発明をさらに説明するが、それは本発明の例示のために示されるものであり、本発明を限定するようには意図されていない。
【実施例】
【0096】
プロトンの核磁気共鳴スペクトル(1H NMR)を300 MHz Varian Gemini 2000(または同様の機器)分光光度計上で記録した。化学シフト値をテトラメチルシランに対してppm(百万分率)で表す。データ報告に関してs=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線。質量スペクトルをFinnigan LCQ Advantage上で記録した。分析用HPLCを以下に記載のようにShimazdu LC10またはLC20システム(x150mm)上で行った。分取HPLCを、室温で操作するShim-pack VP-ODS C18 (20x100mm)カラム付きのShimadzu Discovery HPLC上で行った。化合物を、水(0.1% TFA含有)対メタノールの20〜80%勾配によって30mL/分で15分間にわたって溶出させ、SPD10A VP可変波長検出器を使用して254nmでUV検出した。ここで提示するすべての最終化合物は、HPLCによる純度が98%を超えると決定された。フラッシュクロマトグラフィーを、Silicyle 60Aゲル(230〜400メッシュ)上で、またはニューハンプシャー州マンチェスターのRT Scientificからの再利用可能なクロマトグラフィーカラムおよびシステムを使用して行った。別途記述がない限り、すべての反応を窒素雰囲気下、炎光乾燥ガラス器具中で行った。
【0097】
実施例1
4-{3-[6-アミノ-9-(5-シクロプロピルカルバモイル-3,4-ジヒドロキシ-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-9H-プリン-2-イル]-プロプ-2-イニル}-ピペリジン-1-カルボン酸シクロブチルエステル

THF中攪拌下のトリホスゲン(0.34当量)に、不活性雰囲気下0℃で、アルコール(1.0当量)およびジメチルアニリン(1.1当量)を乾燥THF中溶液としてゆっくりと加えた。10分後、反応液を室温に加温し、さらに3時間攪拌する。次に乾燥DCMを加え、混合物をN-ヒドロキシスクシンアミド(1.3当量)の乾燥DCM溶液に0℃でゆっくりと注いだ。反応液を室温にゆっくりと加温し、終夜攪拌した。水を混合物に加え、さらに3時間攪拌後、溶液をEtOAcで希釈した。有機層を水で3回、ブラインで1回洗浄した後、乾燥させ(MgSO4)、濃縮した。得られた油状物(炭酸塩と対称無水物との混合物であり得る)を次の工程に直接取り入れた。

【0098】
ピペリジン誘導体(0.75当量)を乾燥THFに溶解させ、TEA(過剰)を不活性雰囲気下、室温でゆっくりと加えた。炭酸塩化合物(1.0当量)をTHFで希釈し、ピペリジン溶液に滴下した。混合物を24時間攪拌した後、濃縮して、シリカゲルクロマトグラフィー(100%ヘキサンからヘキサン中80% DCMまでの勾配)に適用した。得られた油状物(収率約60%)をさらに使用するまで4℃で貯蔵した。

【0099】
ヨード誘導体(1.0当量)をDMF:ACN:TEA 5:5:1溶液(全溶媒を激しく脱気)に溶解させ、不活性雰囲気下、室温で攪拌した。パラジウム触媒(約5mol%)およびヨウ化銅[I](1.05当量)を加えた後、アルキン誘導体(4.0当量)を加えた。得られた暗色溶液を終夜攪拌した後、濃縮して、シリカゲルクロマトグラフィー(100% DCMからDCM中10% MeOHまでの勾配)に適用した。得られた油状物を分取HPLCによりさらに精製して帯黄白色固体(収率約30%)を得た。

LRMS ESI (M+H+) 540.35。
HPLC: 水中MeOH 20〜95%勾配、40℃で4分、合計6分。保持時間=3.04分(6分法)。
【0100】
実施例2
N-シクロプロピル2-{3-[1-((テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)カルボニル)ピペリジン-4-イル]プロピン-1-イル}アデノシン-5'-ウロンアミド

実施例1に示すC-2カップリング用の一般的手順に従って、テトラヒドロフラン-3-イル4-(プロプ-2-イニル)ピペリジン-1-カルボキシレート(1.620g、6.83mmol)をN-シクロプロピル2-ヨードカルボキサミドアデノシン(0.101g、0.226mmol)の溶液に加えた。収量54mg、43%。LRMS ESI (M+H+) 556.3。HPLC室温 = 6.0分。
【0101】
実施例3
N-シクロプロピル2-{3-[1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルオキシ)カルボニル)ピペリジン-4-イル]プロピン-1-イル}アデノシン-5'-ウロンアミド

実施例1に示すC-2カップリング用の一般的手順に従って、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル4-(プロプ-2-イニル)ピペリジン-1-カルボキシレート(3.290g、13.09mmol)をN-シクロプロピル2-ヨードカルボキサミドアデノシン(0.100g、0.224mmol)の溶液に加えた。収量41mg、32%。LRMS ESI (M+H+) 570.3。HPLC室温 = 6.5分。
【0102】
細胞培養および膜調製
50% N2/50% O2の雰囲気下、10%ウシ胎仔血清、2.5μg/mlアムホテリシンBおよび50μg/mlゲンタマイシンを補充したグレース培地中でSf9細胞を培養した。ウイルス感染を2.5x106細胞/mLの密度で行い、使用する各ウイルスについて感染多重度を2とした。感染細胞を感染後3日間収集し、昆虫PBS(PBS pH6.3)中で2回洗浄した。次に、細胞を溶解緩衝液(20mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、3mM MgCl2、1mM β-メルカプトエタノール(BME)、5μg/mLロイペプチン、5μg/mLペプスタチンA、1μg/mLアプロチニンおよび0.1mM PMSF)中で再懸濁させ、-80℃で貯蔵用にスナップ凍結させた。細胞を氷上で解凍し、溶解緩衝液中で全体積30mLにし、N2空洞化(600psi、20分間)により破裂させた。低速遠心分離を行って任意の未溶解細胞を除去した(1000 x g、10分間)後、高速遠心分離(17,000 x g、30分間)を行った。最終遠心分離からのペレットを、20mM HEPES pH8、100mM NaCl、1%グリセリン、2μg/mLロイペプチン、2μg/mLペプスタチンA、2 μg/mLアプロチニン、0.1mM PMSFおよび10μM GDPを含有する緩衝液中で、小さいガラスホモジナイザーを使用して均質化した後、26ゲージ針に通した。膜をアリコートし、液体N2中でスナップ凍結させ、-80℃で貯蔵した。ヒトA1 AR(CHO K1細胞)またはA3 AR(HEK 293細胞)を安定に発現させる細胞からの膜を(Robeva et al., 1996)記載のように調製した。
【0103】
放射性リガンド結合アッセイ
Sf9細胞膜中の組換えヒトA2A受容体に対する放射性リガンド結合を、放射標識アゴニスト125I-APE (Luthin et al., 1995)または放射標識アンタゴニスト125I-ZM241385(125I-ZM)のいずれかを使用して行った。A1およびA3 ARの高親和性GTPγS感受性状態を検出するために、本発明者らはアゴニスト125I-ABA(Linden et al., 1985; Linden et al., 1993)を使用した。結合実験を、1 U/mLアデノシンデアミナーゼおよび5mM MgCl2を有し、50μM GTPγSの有り無しでの、全体積0.1mLのHE緩衝液(20mM HEPESおよび1mM EDTA)中で、5μg(A2A)または25μg(A1およびA3)の膜タンパク質を用いて三つ組で行った。膜を放射性リガンドと共にMillipore Multiscreen(登録商標)96ウェルGF/Cフィルタープレート中、室温で3時間(アゴニストの場合)または2時間(アンタゴニストの場合)インキュベートし、細胞ハーベスター(Brandel、メリーランド州ゲイサーズバーグ)上での急速な濾過によりアッセイを終了させた後、氷冷10mM Tris-HCl(pH 7.4)、10mM MgCl2を用いて30秒間にわたって4 x 150μl洗浄を行った。非特異的結合を50μM NECAの存在下で測定した。競合結合アッセイを、0.5〜1nM 125I-APE、125I-ZM241385または125I-ABAを使用して(Robeva et al., 1996)記載のように行った。各段階希釈後にピペットチップを変えて強力な疎水性化合物のチップ上への移動を防ぐことが時として重要であることを、本発明者らは発見した。単一部位に対する競合化合物結合のKi値を、(Linden, 1982)に既に記載のように放射性リガンドおよび競合化合物の欠乏について補正したIC50値から導き出した。

【0104】
化学発光法
好中球酸化活性の尺度であるルミノール増強化学発光は、スーパーオキシド産生と顆粒酵素ミエロペルオキシダーゼの動員との両方に依存する。活性化好中球が生成する次亜塩素酸および一重項酸素などの不安定な高エネルギー酸素種から発光する。
【0105】
0.1%ヒト血清アルブミン(HA)、アデノシンデアミナーゼ(1U/mL)およびロリプラム(100nM)を含有するハンクス平衡塩類溶液に懸濁させた精製ヒト好中球(2 X 106/ml)を、水浴中、rhTNF(10U/ml)の有り無しで15分間(37C)インキュベートした。インキュベーション後、50l HAおよびルミノール(最終濃度100M)をアデノシンアゴニスト(最終アゴニスト濃度0.01〜1000nM)の有り無しで含有する壁(白壁付き透明底96ウェル組織培養プレートCostar #3670; 2ウェル/条件)にPMNの100Lアリコートを移した。プレートを5分間(37C)インキュベートした後、fMLP(HA中50l; 最終濃度1M)を全ウェルに加えた。
【0106】
ピーク化学発光を、Wallacワークステーションソフトウェアを使用して化学発光モードのVictor 1420マルチラベルカウンターによって決定した。アデノシンアゴニストの非存在下の活性パーセントとしてのピーク化学発光としてデータを提示する。EC50をPRISMソフトウェアによって決定した。3人の別々のドナーからのPMNを用いて全化合物を試験した。
【0107】
好中球酸化活性に対するA2Aアゴニストの効果
f-met-leu-phe(fMLP)、ルミノール、スーパーオキシドジスムターゼ、チトクロムC、フィブリノーゲン、アデノシンデアミナーゼおよびトリパンブルーをSigma Chemicalから得た。フィコール・ハイパックをICN(オハイオ州オーロラ)、ならびにCardinal Scientific(ニューメキシコ州サンタフェ)およびAccurate Chemicals and Scientific(ニューヨーク州Westerbury)から購入した。エンドトキシン(リポ多糖; 大腸菌K235)はList Biologicals(カリフォルニア州キャンベル)からのものとした。ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)およびカブトガニ血球抽出物アッセイキットはBioWittaker(メリーランド州ウォーカーズビル)からのものとした。ヒト血清アルブミン(HSA)はCutter Biological(インディアナ州エルクハート)からのものとした。組換えヒト腫瘍壊死因子αは大日本製薬(株)(日本、大阪)が供給した。ZM241385(4-(2-[7-アミノ-2-(2-フリル)[1,2,4]トリアゾロ[2,3-a][1,3,5]トリアジン-5-イルアミノ]エチル)フェノール)は英国チェシャー州Zeneca PharmaceuticalsのSimon Poucherからの寄贈物であった。保存液(DMSO中1mMおよび10mM)を作製し、-20℃で貯蔵した。
【0108】
ヒト好中球の調製
好中球5個当たり血小板1個未満およびエンドトキシン50pg/ml(カブトガニ血球抽出物アッセイ)を含有する精製好中球(好中球約98%、トリパンブルー排除により95%超が生存可能)を、正常ヘパリン化(10 U/ml)静脈血から、1段階フィコール・ハイパック分離手順(A. Ferrante et al., J. Immunol. Meth., 36, 109 (1980))により得た。
【0109】
予備刺激および刺激されたヒト好中球からの炎症性活性酸素種の放出
化学発光
好中球酸化活性の尺度であるルミノール増強化学発光は、スーパーオキシド産生とリソソーム顆粒酵素ミエロペルオキシダーゼの動員との両方に依存する。活性化好中球が生成する不安定な高エネルギー酸素種から発光する。0.1%ヒト血清アルブミン(1ml)を試験A2Aアゴニストと共に、ロリプラムの有り無しでかつ腫瘍壊死因子α(1U/ml)の有り無しで含有するハンクス平衡塩類溶液中で、精製好中球(5〜10 x 105/ml)を、振盪水浴中37℃で30分間インキュベートした。次に、ルミノール(1 x 10-4 M)増強f-met-leu-phe(1 mcM)で刺激した化学発光を、Chronolog(登録商標)光度計(Crono-log Corp.、ペンシルベニア州ヘイバータウン)によって37℃で2〜4分間読み取った。腫瘍壊死因子αを有しかつアゴニストまたはロリプラムを有さない試料と比較した相対ピーク発光(=曲線の高さ)として化学発光を報告する。
【0110】
すべての刊行物、特許および特許文献は、個々に参照により組み入れられるかのように、参照により本明細書に組み入れられる。各種の具体的かつ好ましい態様および技術を参照して本発明を説明してきた。しかし、本発明の精神および範囲内にとどまりながら多くの変形および修正を行うことができることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、IIもしくはIIIの化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩:

式中、
R1およびR2はHおよびC1-3アルキルより独立して選択され;
Zはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、テトラヒドロフラニル、アゼチジン-2-オニル、ピロリジニルおよびピロリジン-2-オニルより選択され;
Zは0〜2個のZ2で置換され;
Z1はテトラヒドロフラニル、アゼチジン-2-オニル、ピロリジニルおよびピロリジン-2-オニルより選択され;
Z1は0〜2個のZ2で置換され;
Z2はF、C1-4アルキル、CF3、OCF3、(CH2)aOR3、(CH2)aNR3R3、NO2、(CH2)aCN、(CH2)aCO2R3および(CH2)aCONR3R3より独立して選択され;
R3はHおよびC1-6アルキルより独立して選択され;
R4はCH2ORおよびC(O)NRRより選択され;
各RはH、C1-4アルキル、シクロブチルおよび(CH2)aシクロプロピルより独立して選択され;
aは0、1および2より選択され;
qは1、2および3より選択される。
【請求項2】
式Iの化合物であり、
R1およびR2がHであり;
Z2がF、C1-2アルキル、CF3、OCF3およびOR3より独立して選択され;
R3がHおよびC1-2アルキルより独立して選択され;
R4がC(O)NRRであり;
各RがH、C1-4アルキル、シクロプロピル、シクロブチルおよび-CH2-シクロプロピルより独立して選択され;
qが1である、
請求項1記載の化合物。
【請求項3】

より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
式IIの化合物であり、式中、
R1およびR2がHであり;
Zが0〜1個のZ2で置換され;
Z2がF、C1-2アルキル、CF3、OCF3およびOR3より独立して選択され;
R3がHおよびC1-2アルキルより独立して選択され;
R4がC(O)NRRであり;
各RがH、C1-4アルキル、シクロプロピル、シクロブチルおよび-CH2-シクロプロピルより独立して選択される、
請求項1記載の化合物。
【請求項5】

より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】

より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
式IIIの化合物であり、
R1およびR2がHであり;
Z1が0〜1個のZ2で置換され;
Z2がF、C1-2アルキル、CF3、OCF3およびOR3より独立して選択され;
R3がHおよびC1-2アルキルより独立して選択され;
R4がC(O)NRRであり;
各RがH、C1-4アルキル、シクロプロピル、シクロブチルおよび-CH2-シクロプロピルより独立して選択され;
qが0である、
請求項1記載の化合物。
【請求項8】


より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】



より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項10】


より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
式IIIの化合物であり、
R1およびR2がHであり;
Z1が0〜1個のZ2で置換され;
Z2がF、C1-2アルキル、CF3、OCF3およびOR3より独立して選択され;
R3がHおよびC1-2アルキルより独立して選択され;
R4がC(O)NRRであり;
各RがH、C1-4アルキル、シクロプロピル、シクロブチルおよび-CH2-シクロプロピルより独立して選択され;
qが1である、
請求項1記載の化合物。
【請求項12】


より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項13】


より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項14】


より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
請求項1記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項16】
医学的治療における使用のための、請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物。
【請求項17】
哺乳動物における疾患の処置に有用な医薬の製造のための、請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2011−507907(P2011−507907A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539923(P2010−539923)
【出願日】平成20年12月20日(2008.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/087875
【国際公開番号】WO2009/082720
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(509082662)ピージーエックスヘルス、リミテッド、ライアビリティー、カンパニー (4)
【氏名又は名称原語表記】PGXHEALTH,LLC
【Fターム(参考)】