説明

A3アデノシン受容体アンタゴニストおよびA3アデノシン受容体部分アゴニスト

式(I):


(式中R1〜R5は本明細書中に記載した通りである)のA3アデノシン受容体アンタゴニストおよび/またはA3アデノシン受容体部分アゴニスト、ならびにその医薬組成物およびその使用方法が開示される。該アンタゴニストまたは部分アゴニストは、癌、緑内障、炎症性疾患、喘息、脳卒中、心筋梗塞、アレルギー反応、鼻炎、ツタウルシ誘発性反応、じんま疹、強皮症、関節炎、脳細動脈径収縮、気管支収縮、および心筋虚血を含む多数の疾患の治療、ならびに心虚血の予防に使用される。式(I)の放射性標識化合物、ならびに組織および器官の診断的画像化におけるその使用もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年8月1日に出願された米国仮特許出願第61/085,588号の利益を主張し、その開示は参照によって援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アデノシンの受容体にはA1、A2A、A2B、およびA3と称される4つのサブタイプがある。A3アデノシン受容体は、主として中枢神経系、脳、精巣、および免疫系において見出され、これらの場所で該受容体は、肥満細胞からの、即時型過敏反応のメディエータの放出の調節に関与しているようである(Ramkumarら, J. Biol. Chem., 268, 16887〜16890 (1993))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
A3アデノシン受容体選択的アンタゴニストは、脳保護薬、抗喘息薬、または抗炎症薬として働くはずであると考えられている。A3アデノシン受容体選択的アンタゴニストは、緑内障の治療、例えば眼圧を減少させることにおいても役立つはずであると考えられている。研究活動は、A3アデノシン受容体アンタゴニストの分野において顕著であり;例えば米国特許第6,066,642号および第6,528,516号、ならびにWO 2008/055711を参照されたい。したがって、新規なA3アデノシン受容体アンタゴニストを見出したいという要求が存在する。
【0004】
さらに、A3アデノシン受容体部分アゴニストは、心臓保護において有益であり、抗虚血効果を生じる。部分アゴニストはまた、完全アゴニストよりも副作用が少ない傾向もある。また、部分アゴニストは、完全アゴニストと比較して、受容体の脱感作を生じさせることが少ない。したがって、部分アゴニストは、より長時間受容体を活性化することができ、より長時間持続する応答を達成することができる。したがって、新規なA3アデノシン受容体部分アゴニストを見出したいという要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、化合物、医薬組成物、および該化合物の使用方法を提供する。本発明の化合物は、A3アデノシン受容体のアンタゴニストまたは部分アゴニストであり、プリン母核のN6位、2位、および9位に、ならびに任意に8位に置換基を有するプリン類似体である。該化合物は、A3アデノシン受容体に対する高い効力および選択性を与える、プリン母核の9位にある束縛された環、すなわち剛直なビシクロ[3.1.0]ヘキサン環を有するとともに、該ビシクロヘキサン環の4’位に置換基を欠いている。多くの該化合物において4’置換基が存在しないことにより、A3アデノシン受容体の活性化が欠如することになる。多くの該化合物は、部分アゴニストとして作用する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本発明の実施態様による化合物7b〜13bを調製するための反応スキームを示す。a)7つの工程(Joshiら Nucleosides, Nucleotides, and Nucleic Acids 2008, 27, 279およびJoshiら J. Org. Chem. 2005, 70, 439を参照);b)TBDPS-Cl、イミダゾール、DMF;c)NaOH、H2O、MeOH、還流;d)2-メルカプトピリジンN-オキシド、DCC、トルエン;e)(Me3Si)3SiH、AIBN、トルエン;f)Bu4NF、THF;g)2,6-ジクロロプリン、PPh3、DIAD、THF;h)RNH2、EtOH;i)TFA/H2O/MeOH。
【図2】図2は、本発明の実施態様による化合物19a〜19gを調製するための反応スキームを示す。
【図3】図3は、本発明の実施態様による化合物22a〜22g、ならびに化合物20a〜20gおよび21a〜21gを調製するための反応スキームを示す。
【図4】図4は、ヒトA3ARを発現するCHO細胞の膜でのグアニンヌクレオチド結合アッセイ([35S]GTPγS)における本発明の化合物7bによる機能的なアンタゴニズムを示す。
【図5】図5は、hA3ARを発現するCHO細胞の細胞膜でのアデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase membranes)アッセイにおける、本発明の実施態様による化合物7bおよび9bの機能的なアゴニズムを示す。100%の効率を示す完全アゴニストのNECA(5’-N-エチルカルボキサミドアデノシン)は比較で示したものである。
【図6】化合物7bのそのN6-3-ヨードベンジル置換基上での(放射性)ヨウ素化を、図6に示したような「非放射性(cold)」ヨウ素化反応による3-(トリメチルスタンニル)ベンジル前駆体のヨウ素化脱スタンニル反応(iododestannylation)によって、高収率で達成した。
【図7a】図7Aは、マウスA3アデノシン受容体に対する[125I]7bの非特異的結合、特異的結合、および全体の結合を示す。図7Bは、この化合物の濃度の関数としての特異的結合の程度を示す。
【図7b】図7Aは、マウスA3アデノシン受容体に対する[125I]7bの非特異的結合、特異的結合、および全体の結合を示す。図7Bは、この化合物の濃度の関数としての特異的結合の程度を示す。
【図8】図8は、ラットにおける注射後15分、60分、および120分の時点でのBr-76標識化合物9bの体内分布を示す。Y軸は、1グラムあたりの%初回量(%Initial Dose)を表し、X軸は種々の器官を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明は、化合物が、A3アデノシン受容体に対するアンタゴニストとしての高い効力および選択性、またはA3アデノシン受容体の部分アゴニストとしての高い効力を与える、9位にある環が束縛された置換基、すなわち剛直なビシクロ[3.1.0]ヘキサン環を有するとともに、二環式ヘキサン環の4’位に置換基を欠いている、という概念に基づく。
【0008】
したがって、本発明は、式I:
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、
R1は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ヒドロキシル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8シクロアルキルC1〜C6アルキル、C3〜C8ジシクロアルキルC1〜C6アルキル、C7〜C12ビシクロアルキルC1〜C6アルキル、C7〜C14トリシクロアルキルC1〜C6アルキル、C6〜C14アリール、C6〜C14アリールC1〜C6アルキル、C6〜C14ジアリールC1〜C6アルキル、C6〜C14アリールC1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルカルボニル、スルホニル、C1〜C6アルキルスルホニル、C6〜C14アリールスルホニル、ヘテロシクリルC1〜C6アルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリールC1〜C6アルキル、4-[[[4-[[[(2-アミノC1〜C6アルキル)アミノ]-カルボニル]-C1〜C6アルキル]アニリン]カルボニル]C1〜C6アルキル]C6〜C14アリール、およびC6〜C14アリールC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、R1のアリール部分またはヘテロシクリル部分は任意に、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、C1〜C6アルキルアミノカルボニル、C1〜C6ジアルキルアミノカルボニル、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールオキシ、ヒドロキシC1〜C6アルキル、ヒドロキシC2〜C6アルケニル、ヒドロキシC2〜C6アルキニル、カルボキシC1〜C6アルキル、カルボキシC2〜C6アルケニル、カルボキシC2〜C6アルキニル、アミノカルボニルC1〜C6アルキル、アミノカルボニルC2〜C6アルケニル、アミノカルボニルC2〜C6アルキニル、およびC≡C-(CH2)n-COR7からなる群から選択される1個以上の置換基で置換され、式中R7は、OH、OR8、およびNR9R10からなる群から選択され、式中R8は、C1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8シクロアルキルC1〜C6アルキル、C3〜C8ジシクロアルキルC1〜C6アルキル、C7〜C12ビシクロアルキルC1〜C6アルキル、C7〜C14トリシクロアルキルC1〜C6アルキル、C6〜C14アリール、C6〜C14アリールC1〜C6アルキル、C6〜C14およびジアリールC1〜C6アルキル(C6-C14 and diaryl C1-C6alkyl)からなる群から選択され;R9およびR10は独立して、水素、C1〜C6アルキル、および(CH2)nR11からなる群から選択され、式中R11はNR12R13であり、式中R12およびR13は独立して、水素、C1〜C6アルキル、およびCOR14からなる群から選択され、式中R14は、水素またはC1〜C6アルキルであり;式中nは1〜10の整数であり;R1のアルキル部分またはシクロアルキル部分は任意に、ハロ、アミノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールオキシ、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C2〜C6ヒドロキシアルケニル、C2〜C6ヒドロキシアルキニル、アミノカルボニルC1〜C6アルコキシ、およびC6〜C14アリールC1〜C6アルコキシからなる群から選択される1個以上の置換基で置換され;
R2は、水素、ハロ、アミノ、ヒドラジド、メルカプト、C1〜C20アルキルアミノ、C6〜C14アリールアミノ、C6〜C14アリールオキシ、C1〜C20アルキル、C1〜C20アルコキシ、C1〜C20チオアルコキシ、ピリジルチオ、C7〜C12シクロアルキルC1〜C20アルキル、C7〜C12ビシクロアルキルC1〜C20アルキル、C7〜C12ビシクロアルケニルC1〜C20アルキル、C6〜C14アリールC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C7〜C12シクロアルキルC2〜C20アルケニル、C7〜C12ビシクロアルキルC2〜C20アルケニル、C7〜C12ビシクロアルケニルC2〜C20アルケニル、C6〜C14アリールC2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-O-C1〜C6アルキル、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-NH-(CH2)n-NH2、-C≡C-(CH2)m-C1〜C6アルキル、-C≡C-(CH2)m-アリール(式中mおよびnは独立して1〜10である)、C7〜C12シクロアルキルC2〜C20アルキニル、C7〜C12ビシクロアルキルC2〜C20アルキニル、C7〜C12ビシクロアルケニルC2〜C20アルキニル、C6〜C14アリールC2〜C20アルキニルからなる群から選択され、R2のアルキル部分、シクロアルキル部分、またはアリール部分は任意に、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、硫黄、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、およびトリアルキルシリルからなる群から選択される1個以上の置換基で置換され;
R3およびR4は独立して、ヒドロキシル、アミノ、チオール、ウレイド、C1〜C6アルキルカルボニルアミノ、ヒドロキシC1〜C6アルキル、およびヒドラジニルからなる群から選択され;
R5は、水素、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、ヘテロアリール、およびC1〜C6アミノアルキルからなる群から選択される]
の化合物、またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0011】
用語「アリール」は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびビフェニルなどの芳香族部分を指す。用語「ヘテロシクリル」は、炭素、ならびにO、NおよびSなどの1個以上のヘテロ原子、ならびに任意の水素を含み、任意に1個以上の芳香環と結合した、飽和もしくは不飽和または複素環式芳香族であってもよい、3〜7員の環を指す。ヘテロシクリル基の例としては、ピリジル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピラジニル、ピロリル(pyrolyl)、ピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピロリジニル、フラニル、テトラヒドロフラニル、チエニル、フリル、チオフェニル、テトラヒドロチオフェニル、プリニル、ピリミジニル、チアゾリル、チアゾリジニル、チアゾリニル、オキサゾリル、テトラゾリル、テトラジニル、ベンゾオキサゾリル、モルホリニル、チオモルホリニル、キノリニル、およびイソキノリニルが挙げられる。ヘテロアリールアルキルの例としては、2-メチル置換された基または3-メチル置換された基などのヘテロアリールメチル、例えばチエニルメチル、ピリジルメチル、およびフリルメチルが挙げられる。
【0012】
アルキル基、アルコキシ基、およびアルキルアミノ基は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。アリール基が置換基、例えばハロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、およびその他のもので置換される場合、芳香環の水素がその置換基で置換され、このことは任意の利用可能な水素、例えば2位、3位、4位、5位、および/または6位で行われてもよく、ここで1位は、本発明の化合物において該アリール基が結合する箇所である。
【0013】
用語「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を指す。
【0014】
ビシクロアルキルの例としては、ノルボルニル、s-endoノルボルニル、カルバメチルシロペンチル(carbamethylcylopentyl)、およびビシクロヘキシルが挙げられる。トリシクロアルキルの例は、アダマンチルである。
【0015】
語句「塩」または「医薬上許容される塩」は、慣用の化学的方法によって、塩基性または酸性の部分を含む親化合物から合成された非毒性の塩を含むことを意図したものである。一般に、かかる塩は、遊離酸または遊離塩基の形態のこうした化合物を、水中もしくは有機溶媒中またはこれら2つの混合物中で、化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることによって、調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。適切な塩の一覧は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing Company, Easton, PA, 1990, 1445頁, およびJournal of Pharmaceutical Science, 66, 2〜19 (1977)に見出される。例えば、該塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)の塩であってもよく、アルカリ土類金属(例えばカルシウム)の塩であってもよく、アンモニウム塩であってもよい。
【0016】
本発明の医薬組成物に使用するための医薬上許容される塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸などの鉱酸に由来するもの、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、マレイン酸、およびアリールスルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸)などの有機酸に由来するもの、が挙げられる。
【0017】
本発明の1つの実施態様によれば、R1は、C6〜C14アリールC1〜C6アルキルおよびC6〜C14アリールC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、R1のアリール部分は任意に、ハロ、アミノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールオキシ、ヒドロキシC1〜C6アルキル、ヒドロキシC2〜C6アルケニル、ヒドロキシC2〜C6アルキニル、アミノカルボニルC1〜C6アルコキシ、およびC6〜C14アリールC1〜C6アルコキシからなる群から選択される1個以上の置換基で置換され;特定の実施態様においては、R1は、ベンジル、フェニルシクロプロピル、または1-ナフチルメチルからなる群から選択され、R1のフェニル部分またはナフチル部分は任意に、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、フェノキシ、ヒドロキシC1〜C6アルキル、ヒドロキシC2〜C6アルケニル、およびヒドロキシC2〜C6アルキニルからなる群から選択される1個以上の置換基で置換される。
【0018】
本発明の特定の実施態様において、R1は、ベンジル、フェニルシクロプロピル、または1-ナフチルメチルであり、R1のフェニル部分またはナフチル部分は任意に、ハロ、ヒドロキシル、およびアルコキシからなる群から選択される1個以上の置換基で置換される。R1の例は、ベンジル、ならびにハロおよびC1〜C6アルコキシからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されたベンジルである。
【0019】
上記の実施態様のいずれかにおいて、R1は、3-クロロベンジル、3-ブロモベンジル、3-ヨードベンジル、2-ヒドロキシ-5-メトキシ-ベンジル、および2,5-ジメトキシベンジルからなる群から選択される。1つの実施態様において、該フェニルシクロプロピルは、trans-2-フェニル-1-シクロプロピルである。
【0020】
上記の実施態様のいずれかにおいて、R2は、ハロ、具体的にはクロロ、ブロモ、もしくはヨードであるか、またはR2は、-C≡C-(CH2)m-CH3、-C≡C-(CH2)m-アリール、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-O-CH3、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-NH-(CH2)n-NH2であり、式中mおよびnは独立して1〜10であり、ここで一部の実施態様においてmおよびnは2〜6であり、一部の他の実施態様においてmおよびnは3〜5であり、かつ式中CH3またはアリール基は任意に、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、硫黄、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、およびトリアルキルシリルからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されており;あるいはその医薬上許容される塩である。
【0021】
上記の実施態様のいずれかにおいて、R3およびR4は、具体的にはヒドロキシルである。
【0022】
上記の実施態様のいずれかにおいて、R5は、具体的には水素である。
【0023】
本発明の任意の実施態様における用語「1個以上の置換基」は、1個、2個、3個、4個、またはこれよりも多くの置換基を指す。
【0024】
本発明の化合物の具体的な例は、R2がクロロであり、R1が3-クロロベンジル、3-ヨードベンジル、3-ブロモベンジル、1-ナフチルメチル、2,5-ジメトキシ-ベンジル、2-ヒドロキシ-5-メトキシベンジル、またはtrans-2-フェニル-シクロプロピルであり、R3およびR4がヒドロキシルであり、R5が水素である化合物である。
【0025】
上述した化合物の多くは、研究されるパラメータに応じて、A3アデノシン受容体に対して、アンタゴニストの性質および部分アゴニストの性質を有する。アンタゴニストまたはアゴニストの定義は、細胞系および研究されるパラメータ、受容体密度、種などに高度に依存する。
【0026】
本発明の化合物は、任意の適切な方法によって調製することができる。例えば、図1は、化合物7b〜13bの調製方法を示す。図2は、化合物19a〜19gの調製方法を示す。図3は、化合物20a〜20gおよび21a〜21gの調製方法を示す。
【0027】
本発明はさらに、上述の化合物および医薬上許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。本発明は、医薬上許容される担体および有効量(例えば予防的有効量を含む治療的有効量)の本発明の1種以上の前述の化合物またはその塩を含む、医薬組成物を提供する。
【0028】
医薬上許容される担体は、従来使用されているどのようなものであってもよく、溶解度および化合物との反応性がないことなどの物理化学的考慮事項、ならびに投与経路のみによって制限される。以下に説明する医薬組成物に加え、本発明の化合物が、シクロデキストリン包接錯体などの包接錯体、またはリポソームとして製剤化することができることは、当業者によって理解されるであろう。
【0029】
本明細書中に記載した医薬上許容される担体、例えばビヒクル、補助剤、賦形剤または希釈剤は、当業者に周知であり、公衆に容易に利用可能となっている。医薬上許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性なものであり、かつ使用条件下で有害な副作用も毒性も有しないものであることが好ましい。
【0030】
担体の選択は、部分的には、特定の活性薬剤、および組成物を投与するために使用される特定の方法によって、決まることになる。したがって、本発明の医薬組成物には多種多様の適切な製剤が存在する。経口投与、エアロゾル投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内(interperitoneal)投与、くも膜下腔内投与、直腸投与、および膣内投与のための以下の製剤は、例示的であるに過ぎず、なんら限定するものではない。
【0031】
経口投与に適した製剤は、(a)溶液、例えば有効量の化合物の溶解した、水、生理食塩水またはオレンジジュースなどの希釈剤など;(b)それぞれ所定量の活性成分を固体または顆粒として含む、カプセル剤、サシェ剤(sachets)、錠剤、ロゼンジ、およびトローチ剤;(c)散剤;(d)適切な液体での懸濁液;および(e)適切な乳濁液からなり得る。液体製剤は、医薬上許容される界面活性剤、懸濁剤もしくは乳化剤を加えているか、または加えていない、水およびアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、およびポリエチレンアルコール(polyethylene alcohols))などの希釈剤を含んでいてもよい。カプセル剤の形態は、例えば界面活性剤、滑沢剤および不活性な賦形剤、例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウムおよびコーンスターチなどを含む、通常のハードシェルまたはソフトシェルのゼラチンタイプのものであってもよい。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微結晶性セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、およびその他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、ならびに薬理学的に適合性のある担体のうちの1種以上のものを含んでいてもよい。ロゼンジの形態は、香味料、通常スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガント中に活性成分を含んでもよく、トローチ(pastilles)は、不活性な基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムなどの中に活性成分を含んでもよく、乳濁液、ゲルなどは、活性成分に加えて、当該技術分野で知られている担体を含んでもよい。
【0032】
本発明の化合物は、単独で、または他の適切な成分と組み合わせて、吸入によって投与されるエアロゾル製剤にすることができる。こうしたエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される噴射剤の中に配置することができる。該化合物はまた、ネブライザーまたはアトマイザーにおけるような、加圧されない製剤のための医薬として製剤化することもできる。
【0033】
非経口投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、および製剤を意図するレシピエントの血液と等張性にする溶質を含んでもよい、水性および非水性の等張性無菌注射液、ならびに懸濁剤、溶解補助剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含んでもよい、水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。化合物は、医薬上許容される界面活性剤、例えば石鹸もしくは洗剤など、懸濁剤、例えばペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、もしくはカルボキシメチルセルロースなど、または乳化剤、および他の医薬補助剤(pharmaceutical adjuvants)を加えて、または加えずに、水、生理食塩水、デキストロースおよび関係する糖の水溶液、アルコール、例えばエタノール、イソプロパノールもしくはヘキサデシルアルコールなど、グリコール、例えばプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなど、グリセロールケタール、例えば2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールなど、エーテル、例えばポリ(エチレングリコール)400など、油、脂肪酸、脂肪酸エステルもしくはグリセリド、またはアセチル化脂肪酸グリセリドを含む、無菌の液体または液体混合物などの医薬担体を用いた生理学的に許容される希釈剤を用いて投与することができる。
【0034】
非経口製剤に使用することができる油としては、石油、動物油、植物油、または合成油が挙げられる。油の具体的な例としては、ピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン、および鉱油が挙げられる。非経口製剤に使用するための適切な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、適切な脂肪酸エステルの例である。非経口製剤に使用するための適切な石鹸としては、脂肪酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩およびトリエタノールアミン塩が挙げられ、適切な洗剤としては、(a)陽イオン洗剤、例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライドおよびアルキルピリジニウムハライドなど、(b)陰イオン洗剤、例えばアルキルスルホナート、アリールスルホナートおよびオレフィンスルホナート、アルキルスルファート、オレフィンスルファート、エーテルスルファートおよびモノグリセリドスルファート、およびスルホスクシナートなど、(c)非イオン性洗剤、例えば脂肪族(fatty)アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミドおよびポリオキシエチレン-ポリプロピレン共重合体など、(d)両性洗剤、例えばアルキル-β-アミノプロピオナートおよび2-アルキル-イミダゾリン第四級アンモニウム塩など、ならびに(3)これらの混合物、が挙げられる。
【0035】
非経口製剤は、典型的には、溶液中に約0.5〜約25重量%の活性成分を含むことになる。かかる製剤に、適切な保存剤および緩衝剤を使用することができる。注射部位での刺激を最小限にし、またはなくすために、かかる組成物は、約12〜約17の親水親油バランス(hydrophile-lipophile balance)(HLB)を有する1種以上の非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。かかる製剤における界面活性剤の量は、約5〜約15重量%の範囲である。適切な界面活性剤としては、ソルビタンモノオレアートなどのポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成される、エチレンオキシドと疎水性基部との高分子量付加物が挙げられる。非経口製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数用量を密封した容器で提示することができ、注射のために使用の直前に無菌の液体担体、例えば水を加えることしか必要としない、凍結乾燥した(freeze-dried)(凍結乾燥した(lyophilized))状態で貯蔵することができる。即席の注射液および懸濁液は、上述した種類の無菌の散剤、顆粒剤および錠剤から調製することができる。
【0036】
本発明の化合物は、注射製剤にすることができる。注射組成物用の効果的な医薬担体の必要条件は、当業者に周知である。Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J. B. Lippincott Co., Philadelphia, Pa., BankerおよびChalmers編, 238〜250頁 (1982), およびASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel, 第4版, 622〜630頁 (1986)を参照されたい。
【0037】
さらに、本発明の化合物は、乳化基剤または水溶性基剤などの種々の基剤と混合することによって、坐剤にすることができる。膣内投与に適した製剤は、活性成分に加えて、当該技術分野で適切であることが知られている担体を含む、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫状物質、または噴霧剤の製剤(formulas)として提示することができる。
【0038】
本発明はまた、有効量の本発明の化合物または医薬上許容される塩を動物に投与することを含む、動物、例えば哺乳動物の疾患の治療方法も提供し、該疾患は、癌、緑内障、炎症性疾患、喘息、脳卒中(stroke)、心筋梗塞、アレルギー反応、鼻炎、ツタウルシ誘発性反応(poison ivy induced responses)、じんま疹、強皮症、関節炎、脳細動脈径収縮(brain arteriole diameter constriction)、気管支収縮、および心筋虚血からなる群から選択される。本発明はまた、有効量の本発明の化合物または医薬上許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、A3アデノシン受容体の選択的不活性化またはA3アデノシン受容体の部分的活性化を必要とする動物において、A3アデノシン受容体を選択的に不活性化するか、またはA3アデノシン受容体を部分的に活性化するための方法も提供する。本発明の方法は、任意の適切な哺乳動物、特にヒトに適用することができる。
【0039】
用語「動物」は、動物界の任意のメンバーを指す。諸実施態様において、「動物」は、成長の任意の段階のヒトを指す。諸実施態様において、「動物」は、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、および蠕虫(worms)を含む。一部の実施態様において、非ヒト動物は、哺乳動物、例えば、齧歯動物、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、またはブタである。動物は、トランスジェニック動物であってもよく、遺伝子改変動物であってもよく、クローンであってもよい。
【0040】
本発明はさらに、細胞を有効量の1種以上の本発明の化合物またはその医薬上許容される塩と接触させることを含む、細胞においてA3アデノシン受容体を不活性化する方法、またはかかる受容体を部分的に活性化する方法を提供する。接触は、インビトロのものであってもよく、インビボのものであってもよい。インビトロで接触させる場合、任意の適切な方法によって接触させることができ、その多くは当該技術分野において知られている。例えば、細胞を培養液中に提供することができ、本発明の化合物をそれ自体で、または化合物の適切な溶媒の溶液として、該培養液中に導入してもよい。
【0041】
本発明はさらに、上述の化合物または塩、具体的には式Iの化合物または塩(式中R1は3-ブロモベンジルまたは3-ヨードベンジルであり、R2はハロであり、R3およびR4はヒドロキシルであり、R5は水素である)を動物に投与することを含む、心臓の虚血性障害の予防または減少を必要とする動物において、心臓の虚血性障害を予防するか、または減少させるための、心臓保護方法を提供する。
【0042】
化合物またはその塩は、任意の適切な用量で使用することができる。適切な用量および投薬計画は、常套の範囲発見技術によって決定することができる。通常、治療は、最適な用量よりも少ない、少なめの投薬量を用いて開始する。その後、投薬量を、その状況下での最適な効果に達するまで、わずかな増分ずつ増大させる。所望される場合、便宜上、1日の投薬量全体を分割し、その日の間に1部分ずつ投与することができる。特定の化合物の適切な用量によって、および適切な投与によって、本発明は広範な反応を提供する。典型的には、投薬量は、約0.001〜約1000 mg/治療される動物のkg体重/日の範囲である。例えば、諸実施態様において、化合物または塩は、所望の治療効果を得るために、1日に1回以上、1日あたり、対象の体重について、約100 mg/kg〜約300 mg/kg、約120 mg/kg〜約280 mg/kg、約140 mg/kg〜約260 mg/kg、約150 mg/kg〜約250 mg/kg、約160 mg/kg〜約240 mg/kgを投与することができる。
【0043】
別の実施態様によれば、本発明は、薬物/組織分布を判定するアッセイ、一次速度論的同位体効果による酸化的代謝の操作、標的受容体の媒介と関連する疾患または容態を治療するための潜在的な治療薬の同定、に使用するための、同位体で標識した上述の化合物、例えば放射性同位体または非放射性同位体で標識した化合物を提供する。本発明の化合物は、放射性同位体を用いて調製することができる。任意の適切な原子を放射性同位体で置換することができ、例えば炭素原子、水素原子、ハロゲン原子、硫黄原子、窒素原子、または酸素原子を対応する同位体で置換することができる。したがって、例えばハロゲン原子を18F、36Cl、75Br、76Br、77Br、82Br、122I、123I、125I、または131Iで置換することができる。単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(Single Photon Emission Computerized Tomography)(SPECT)、磁気共鳴分光法(Magnetic Resonance Spectroscopy)(MRS)、または陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography)(PET)などの画像化技術を用いて検出され得る放射性標識化合物の使用は、当該技術分野で知られている。例えば、米国特許第6,395,742号および第6,472,667号を参照されたい。
【0044】
さらなる実施態様によれば、本発明は、式I:
【0045】
【化2】

【0046】
[式中、
R1は、C6〜C14アリール、C6〜C14アリールC1〜C6アルキル、C6〜C14ジアリールC1〜C6アルキル、C6〜C14アリールC1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールスルホニル、ヘテロシクリルC1〜C6アルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリールC1〜C6アルキル、4-[[[4-[[[(2-アミノC1〜C6アルキル)アミノ]-カルボニル]-C1〜C6アルキル]アニリン]カルボニル]C1〜C6アルキル]C6〜C14アリール、およびC6〜C14アリールC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、R1のアリール部分またはヘテロシクリル部分は、1個以上の放射性ハロゲン原子で置換され;
R2は、水素、ハロ、アミノ、ヒドラジド、メルカプト、C1〜C20アルキルアミノ、C6〜C14アリールアミノ、C6〜C14アリールオキシ、C1〜C20アルキル、C1〜C20アルコキシ、C1〜C20チオアルコキシ、ピリジルチオ、C7〜C12シクロアルキルC1〜C20アルキル、C7〜C12ビシクロアルキルC1〜C20アルキル、C7〜C12ビシクロアルケニルC1〜C20アルキル、C6〜C14アリールC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C7〜C12シクロアルキルC2〜C20アルケニル、C7〜C12ビシクロアルキルC2〜C20アルケニル、C7〜C12ビシクロアルケニルC2〜C20アルケニル、C6〜C14アリールC2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、カルボキシアルキルC2〜C20アルキニル、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-O-C1〜C6アルキル、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-NH-(CH2)n-NH2、-C≡C-(CH2)m-C1〜C6アルキル、-C≡C-(CH2)m-アリール(式中mおよびnは独立して1〜10である)、C7〜C12シクロアルキルC2〜C20アルキニル、C7〜C12ビシクロアルキルC2〜C20アルキニル、C7〜C12ビシクロアルケニルC2〜C20アルキニル、C6〜C14アリールC2〜C20アルキニルからなる群から選択され、R2のアルキル部分、シクロアルキル部分、またはアリール部分は任意に、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、硫黄、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、およびトリアルキルシリルからなる群から選択される1個以上の置換基で置換され;
R3およびR4は独立して、ヒドロキシル、アミノ、チオール、ウレイド、C1〜C6アルキルカルボニルアミノ、ヒドロキシC1〜C6アルキル、およびヒドラジニルからなる群から選択され;
R5は、水素、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、ヘテロアリール、およびC1〜C6アミノアルキルからなる群から選択される]
の放射性標識化合物、またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0047】
本発明の放射性標識化合物または塩のR1におけるハロゲン原子は、任意の適切な同位体、例えば18F、76Brまたは125I、好ましくは76Brまたは125Iとすることができる。
【0048】
特定の実施態様において、本発明は、R1が3-ブロモベンジルまたは3-ヨードベンジルであり、R2がハロであり、R3およびR4がヒドロキシルであり、R5が水素である、放射性標識化合物または塩を提供する。
【0049】
したがって、本発明はさらに、有効量の上述の放射性標識化合物または塩を動物に投与し、動物の器官または組織の画像を得ることを含む、動物の組織または器官におけるA3アデノシン受容体の診断的画像化(diagnostic imaging)方法を提供する。画像は、任意の適切な画像化技術、例えばSPECT、MRSおよび/またはPETによって得ることができる。
【0050】
本発明はまた、A3アデノシン受容体の可能なアゴニストまたはアンタゴニストについての患者の治療法を決定するための診断方法も提供し、該治療法は、
(a)上述の放射性標識化合物または塩を投与すること;
(b)患者から生体試料を得ること;
(c)A3アデノシン受容体の発現レベルを測定すること;
(d)該受容体の発現レベルを正常集団の発現レベルと比較すること;および
(e)該患者の発現レベルが、正常集団の発現レベルよりも高い場合、その発現が正常集団の発現よりも患者において高かったアデノシン受容体のアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む治療計画を決定すること
を含む。
【0051】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、当然、なんら本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【実施例】
【0052】
実施例1
この実施例は、本発明の実施態様に従う化合物の調製方法を示す。D-リボースをTBDPS-Clを用いて保護し、続いてアルカリ加水分解し、こうして酸2を得た。水素供与体として非毒性のトリス(トリメチルシリル)シランを用いて酸2の還元的脱炭酸反応を行い、シリルエーテル3を40%の収率で生成させた。シリルエーテル3をTBAFを用いて脱保護した。得られたアルコール4をMitsonobu反応によって、重要なジクロロプリン誘導体6に変換させた(図1)。誘導体6を過剰の対応する一級アミンと反応させて、N6置換および2’,3’-イソプロピリデン保護がなされた誘導体化合物7a〜13aを得、続いて酸触媒脱保護によりN6-3-ハロベンジル誘導体および関連するアリールメチル誘導体である7b〜13bを得た。
【0053】
(1R, 2S, 3R, 4R, 5R)-3,4-O-(イソプロピリデン)-2-O-(tert-ブチルジフェニルシリル)-2,3,4-トリヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン-1-カルボン酸(2)
アルコール1(標準的な手順(上掲のJoshiら)に従ってD-リボースから調製した;1.22 g、5 mmol)およびイミダゾール(140 mg、2 mmol)のDMF(3 mL)溶液に、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド(2.70 g、10 mmol)およびトリエチルアミン(2.0 g、20 mmol)を室温で攪拌しながら加えた。この溶液を60℃で16時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し、4:1の酢酸エチルとヘキサンの混合物(50 mL)で希釈し、水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(0〜10%の酢酸エチル/ヘキサン)によって精製し、(1R, 2S, 3R, 4R, 5R)-2,3-O-(イソプロピリデン)-4-O-(tert-ブチルジフェニルシリル)-2,3,4-トリヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン-1-カルボン酸エチルを得た。化合物をMeOH(5 mL)に溶解し、2 NのNaOH水溶液(5 mL)を加え、反応混合物を2時間還流した。この反応混合物をNaH2PO4で中和し、DCMで抽出した。合わせたDCM溶液を乾燥させ、蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題の化合物2(1.65 g、73%)を得た。1H NMR (CDCl3), δ: 7.72 (d, 4H, J=7.8 Hz), 7.39 (m, 6H), 5.05 (d, 1H, J=6.3 Hz), 4.43 (t, 1H, J=6.0 Hz), 4.08 (t, 1H, J=6.6 Hz), 2.26 (m, 1H), 1.97 (s, 3H), 1.56 (s, 3H), 1.52 (m, 1H), 1.21 (s, 3H), 1.08 (s, 9H)。
【0054】
(1S, 2S, 3R, 4R, 5R)-3,4-O-(イソプロピリデン)-2-O-(tert-ブチルジフェニルシリル)-2,3,4-トリヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン(3)
酸2(363 mg、0.80 mmol)、2-メルカプトピリジンN-オキシド(112 mg、0.88 mmol)、およびAIBN(40 mg、0.24 mmol)の乾燥無酸素トルエン(4 mL)溶液に、1 MのDCCの無酸素トルエン溶液(0.96 mL)を加えた。この反応混合物を25℃で4時間攪拌し、トリス(トリメチルシリル)シラン(0.50 mL、1.6 mmol)を加え、反応混合物を85℃で4時間加熱した。この反応混合物を蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(0〜10%の酢酸エチル/ヘキサンの混合物)によって分離して、表題の化合物3(121 mg、40%)を得た。1H NMR (CDCl3), δ: 7.76 (d, 4H, J=7.8 Hz), 7.39 (m, 6H), 4.66 (t, 1H, J=6.0 Hz), 4.44 (t, 1H, J=6.6 Hz), 4.03 (t, 1H, J=6.6 Hz), 1.6 (m, 1H), 1.57 (s, 3H), 1.45 (m, 1H), 1.33 (s, 1H), 1.20 (s, 3H), 1.09 (s, 9H), 0.58 (m, 1H)。
【0055】
(1R, 2R, 3S, 4S, 5S)-2.3-O-(イソプロピリデン)-2,3,4-トリヒドロキシ-ビシクロ[3.1.0]ヘキサン(4)、方法B
シリルエーテル3(102 mg、0.25 mmol)のTHF(1 mL)溶液に、1 Mのtert-ブチルアンモニウムフルオリドのTHF溶液(1 mL)を加えた。この反応混合物を20℃で16時間放置し、蒸発させた。残渣を酢酸エチル(20 mL)で希釈し、少量のブラインで洗浄した。この酢酸エチル溶液を乾燥させ、蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題の化合物4(33 mg、84%)を得た。1H NMRおよびMSは方法Aのもとで提供される。
【0056】
化合物7b〜13bの調製手順の概略
6(20 mg、0.06 mmol)のDCM(0.1 mL)溶液に、アミン(スキーム3におけるRNH2、0.5 mmol)を加えた。この反応混合物を室温で16時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(30〜100%の酢酸エチル/ヘキサン)によって分離して対応する6-アルキルアミノプリン誘導体を得、これをMeOH(4 mL)、TFA(0.2 mL)および水(2 mL)の混合物に溶解した。反応混合物を70℃で16時間攪拌し、次いで蒸発させた。残渣を水とともに2回蒸発させ、その残渣をフラッシュクロマトグラフィー(50〜100%の酢酸エチル)によって精製した。
【0057】
(1’R, 2’R, 3’S, 4’R, 5’S)-4’-[2-クロロ-6-(3-ヨードベンジルアミノ)プリン]-2’,3’-O-ジヒドロキシビシクロ-[3.1.0]ヘキサン(7b)
収量15 mg (51% 1H NMR (CD3OD), δ: 8.16 (s, 1H), 7.49 (s, 1H), 7.60 (d, 1H, 8.5 Hz), 7.40 (d, 1H, 8.5 Hz), 7.10 (t, 1H, 8.5 Hz), 4.71 (s, 2H), 3.90 (d, 3.3 Hz, 1H), 3.65 (s, 1H), 2.05-1.95 (m, 1H), 1.67-1.63 (m, 1H), 1.36 (s, 1H), 1.31-1.27 (m, 1H), 0.95-0.87 (m, 1H), 0.77-0.75 (m, 1H)。HRMS、C18H18ClIN5O2+(M+H)+の計算値: 498.0194; 実測値, 498.0194。HPLC: RT、溶媒系Aで21.6分(98%), 系Bで17.0分(98%)。
【0058】
(1’R, 2’R, 3’S, 4’R, 5’S)-4’-[2-クロロ-6-(3-クロロベンジルアミノ)プリン]-2’,3’-O-ジヒドロキシビシクロ-[3.1.0]ヘキサン(8b)
収率58%。1H NMR (CD3OD), δ: 8.16 (br.s., 1H), 7.41 (s, 1H), 7.29 (m, 3H), 4.79 (s, 1H), 4.75 (br. s, 2H), 4.70 (br. t., 1H, J=5.4 Hz), 3.86 (d, 1H, J=6.6 Hz), 1.97 (m, 1H), 1.65 (m, 1H), 1.30 (m, 1H), 0.75 (m, 1H)。HRMS (ESI MS m/z): C18H18Cl2N5O2+(M+H)+の計算値, 406.0832; 実測値, 406.0825。HPLCのRT、溶媒系Aで20.3分(98%), 系Bで15.6分(98%)。
【0059】
(1’R, 2’R, 3’S, 4’R, 5’S)-4’-[2-クロロ-6-(3-ブロモベンジルアミノ)プリン]-2’,3’-O-ジヒドロキシビシクロ-[3.1.0]ヘキサン(9b)
収率65%。1H NMR (CD3OD): 8.03 (s, 1H), 7.45 (s, 1H), 7.29 (m, 2H), 7.12 (t, 1H, J=7.8 Hz), 4.68 (s, 1H), 4.63 (br. s, 2H), 4.59 (br. t., 1H, J=5.4 Hz), 3.79 (d, 1H, J=6.6 Hz), 1.86 (m, 1H), 1.55 (m, 1H), 1.20 (m, 1H), 0.64 (m, 1H)。HRMS (ESI MS m/z)、C18H18BrClN5O2+(M+H)+の計算値, 450.0327; 実測値450.0315。HPLCのRT、溶媒系Aで20.74分(98%), 系Bで16.1分(99%)。
【0060】
(1’R, 2’R, 3’S, 4’R, 5’S)-4’-[2-クロロ-6-(1-ナフチルアミノ)プリン]-2’,3’-O-ジヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン(10b)
収率48%。1H NMR (CD3OD): 8.13 (br.d., 2H, J=7.8 Hz), 7.84 (m, 2H), 7.49 (m, 4H), 5.21 (s, 1H), 4.79 (br. s, 1H), 4.78 (br. s, 2H), 4.67 (br. t., 1H, J=5.1 Hz), 3.88 (d, 1H, J=6.6 Hz), 1.93 (m, 1H), 1.62 (m, 1H), 1.25 (m, 1H), 0.73 (m, 1H)。HRMS (ESI MS m/z)、C22H21ClN5O2+(M+H)+の計算値, 422.1378; 実測値422.1385。HPLCのRT、溶媒系Aで21.5分(97%), 系Bで17.0分(98%)。
【0061】
(1’R, 2’R, 3’S, 4’R, 5’S)-4’-[2-クロロ-6-(2,5-ジメトキシベンジルアミノ)プリン]-2’,3’-O-ジヒドロキシビシクロ-[3.1.0]ヘキサン(11b)
収率44%。1H NMR (CD3OD): 8.4 (非常にbr. s, 1H), 6.95 (s, 1H, J=2.7 Hz), 6.89 (d, 1H, J=9.3 Hz), 6.78 (dd, 1H, J=2.7, 9.0 Hz), 4.80 (s, 1H), 4.75 (br. m, 3H), 3.87 (d, 1H, J=6.3 Hz), 3.83 (s, 3H), 3.71 (s, 3H), 1.95 (m, 1H), 1.64 (m, 1H), 1.29 (m, 1H), 0.74 (m, 1H)。HRMS (ESI MS m/z)、C20H23ClN5O4+(M+H)+の計算値, 432.1433; 実測値432.1439。HPLCのRT、溶媒系Aで18.7分(98%), 系Bで16.6分(98%)。
【0062】
(1’R, 2’R, 3’S, 4’R, 5’S)-4’-[2-クロロ-6-(2-ヒドロキシ-5-メトキシベンジルアミノ)プリン]-2’,3’-O-ジヒドロキシビシクロ-[3.1.0]ヘキサン(12b)
収率39%。1H NMR (CD3OD): 8.07 (s, 1H), 6.60-6.82 (m, 3H), 4.69 (s, 1H), 4.59 (br. t., 1H, J=6.0 Hz), 4.56 (br. s, 2H), 3.79 (d, 1H, J=6.6 Hz), 3.61 (s, 3H) 1.86 (m, 1H), 1.55 (m, 1H), 1.20 (m, 1H), 0.65 (m, 1H)。HRMS (ESI MS m/z)、C19H21ClN5O4+(M+H)+の計算値, 418.1277; 実測値, 418.1277。HPLCのRT、溶媒系Aで16.0分(100%), 系Bで11.0分(98%)。
【0063】
(1’R, 2’R, 3’S, 4’R, 5’S)-4’-[2-クロロ-6-(trans-2-フェニルシクロプロピルアミノ)プリン]-2’,3’-O-ジヒドロキシビシクロ-[3.1.0]ヘキサン(13b)
収率52%。1H NMR (CD3OD): 8.16 (非常にbr.s., 1H), 7.0-7.48 (m, 5H), 4.79 (s, 1H), 4.68 (br. s, 2H), 3.88 (d, 1H, J=5.7 Hz), 2.17 (m, 1H) 1.97 (m, 1H), 1.65 (m, 1H), 1.29 (m, 2H), 0.74 (m, 1H)。HRMS (ESI MS m/z)、C20H21ClN5O2+(M+H)+の計算値, 398.1378; 実測値, 398.1372。HPLCのRT、溶媒系Aで20.3分(99%), 系Bで15.6分(98%)。
【0064】
実施例2
この実施例は、本発明の1つの実施態様に従う化合物がA3アデノシン受容体に結合する能力を示す。結合親和性の値を表1に示す。
【0065】
受容体結合アッセイおよび機能性アッセイ
[125I]N6-(4-アミノ-3-ヨードベンジル)アデノシン-5’-N-メチルウロンアミド(I-AB-MECA;2000 Ci/mmol)、[3H]環状AMP(40 Ci/mmol)、および他の放射性リガンドはPerkin-Elmer Life and Analytical Science (マサチューセッツ州ボストン)から購入した。[3H]CCPA(2-クロロ-N6-シクロペンチルアデノシン)は受注合成製品(Perkin Elmer)であった。試験化合物はDMSO中5 mMのストック溶液として調製し、凍結させて保管した。
【0066】
細胞培養液および膜の調製:組換え型ヒトA3ARを発現するCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞を、10%のウシ胎仔血清、100 単位/mLのペニシリン、100 μg/mLのストレプトマイシン、2 μmol/mLのグルタミン、および800 μg/mLのゲネチシンを補充したDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)中で培養した。ラットA3ARを発現するCHO細胞は、DMEMおよびF12(1:1)中で培養した。細胞をトリプシン処理によって収集した。ホモジナイズおよび懸濁させた後、細胞膜を500 gで10分間遠心分離し、そのペレットを10 mMのMgCl2、1 mMのEDTAおよび0.1 mg/mLのCHAPS(3[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-プロパンスルホン酸)を含む50 mMのトリス・HCl緩衝液(pH 8.0)中に再懸濁させた。この懸濁液を電動ホモジナイザーを用いて10秒間ホモジナイズし、次いで4℃、20,000 gで20分間再遠心分離した。得られたペレットをアデノシンデアミナーゼ(3 単位/mL)の存在下で緩衝液中に再懸濁させ、この懸濁液を結合実験まで-80℃で保管した。タンパク質濃度をブラッドフォード(Bradford)アッセイを用いて測定した。Bradford, M.M. Anal. Biochem. 1976, 72, 248。
【0067】
A1受容体およびA2A受容体についての結合アッセイ:ヒトA1受容体に対する結合については、(a)Schwabe, U.; Trost, T. Naunyn-Schmiedeberg’s Arch. Pharmacol. 1980, 313, 179、(b)Perreira, M.; Jiang, J.K.; Klutz, A.M.; Gao, Z.G.; Shainberg, A.; Lu, C.; Thomas, C.J.; Jacobson, KA. J. Med. Chem. 2005, 48, 4910を参照されたい。
【0068】
[3H]R-PIA(N6-[(R)-フェニルイソプロピル]アデノシン、2 nM)または[3H]CCPA(0.5 nM)を、50 mMのトリス・HCl緩衝液(pH 7.4;MgCl2は10 mM)中25℃で60分間、ヒトA1受容体を安定に発現するCHO細胞に由来する細胞膜(40 μg/管)とともに、200 μlの全アッセイ容積中の試験リガンドの濃度を増大させて、インキュベートした。10 μMのCPA(N6-シクロペンチルアデノシン)を用いて非特異的結合を測定した。ヒトA2A受容体の結合(Jarvis, M. F.; Schutz, R.; Hutchison, A. J.; Do, E.; Sills, M. A.; Williams, M. J. Pharmacol. Exp. Ther. 1989, 251, 888〜893)については、ヒトA2A受容体を安定に発現するHEK-293細胞に由来する細胞膜(20 μg/管)を、10 mMのMgCl2を含む50 mM、pH 7.4のトリス・HCl200 μl中25℃で60分間、[3H]CGS21680(2-[p-(2-カルボキシエチル)フェニル-エチルアミノ]-5’-N-エチルカルボキサミド-アデノシン、15 nM)とともに、試験リガンドの濃度を増大させて、インキュベートした。NECA(10 μM)を使用して、非特異的結合を規定した。GF/Bフィルターによるろ過によって反応を終結させた。
【0069】
ヒトA3受容体についての結合アッセイ:競合的結合アッセイについて、各管は、50 μLの膜懸濁液(20 μgのタンパク質)、25 μLの[125I]I-AB-MECA(1.0 nM)(Olah, M.E., Gallo-Rodriguez, C., Jacobson, K.A., Stiles, G.L. Mol. Pharmacol. 1994, 45, 978)、および増大する濃度の試験リガンドを含む、10 mMのMgCl2、1 mMのEDTAを含むトリス・HCl緩衝液(50 mM、pH 8.0)25 μLを含むものであった。緩衝液中10 μMのCl-IB-MECAを用いて非特異的結合を測定した。これらの混合物を37℃で60分間インキュベートした。MT-24セルハーベスター(Brandell、米国メリーランド州ゲイザースバーグ(Gaithersburgh))を用いて減圧下でWhatman GF/Bフィルターによりろ過することによって、結合反応を終結させた。9 mLの氷冷緩衝液を用いてフィルターを3回洗浄した。放射能をBeckman 5500Bγ計数器で測定した。Cheng, Y.; Prusoff, W. H. Biochem. Pharmacol. 1973, 22, 3099に記載された通りに、IC50値をKi値に変換した。
【0070】
環状AMP蓄積アッセイ:競合的タンパク質結合法を用いて、細胞内環状AMPレベルを測定した。Nordstedt, C.; Fredholm, B. B. Anal. Biochem. 1990, 189, 231; Post, S. R.; Ostrom, R. S.; Insel, P. A. Methods Mol. Biol. 2000, 126, 363。組換え型のヒトA3ARもしくはラットA3AR、またはヒトA1ARもしくはヒトA2BARを発現したCHO細胞をトリプシン処理によって収集した。遠心分離し、培養液中に再懸濁させた後、1.0 mLの培養液で細胞を24ウェルプレート中に植え込んだ。24時間後、培養液を除去し、50 mMのpH 7.4のHEPESを含む1 mLのDMEMを用いて細胞を3回洗浄した。次いで、ロリプラム(10 μM)およびアデノシンデアミナーゼ(3 単位/mL)の存在下、細胞をアゴニストNECAおよび/または試験化合物(例えば7b)で処理した。45分後、ホルスコリン(10 μM)をその培養液に加え、さらに15分間インキュベーションを続けた。上清を除去することによって反応を終結させ、200 μLの0.1 M氷冷HClを加えて細胞を溶解させた。この細胞溶解物を再懸濁させ、-20℃で保管した。環状AMPの産生量を測定するために、[3H]環状AMP(2 nM)を含むK2HPO4/EDTA緩衝液(K2HPO4が150 mM;EDTAが10 mM)、20 μLの細胞溶解物、および30 μLの0.1 M HClまたは50 μLの環状AMP溶液(検量線のための0〜16 pmol/200 μL)とともに、プロテインキナーゼA(PKA)をインキュベートした。Whatman GF/Cフィルターによる急速ろ過によって、結合した放射能(radioactivity)を分離し、冷緩衝液で1回洗浄した。結合した放射能を液体シンチレーション分光法によって測定した。
【0071】
[35S]GTPγS結合アッセイ:記述された方法のバリエーションによって[35S]GTPγS結合を測定した。(a)Lorenzen, A.; Lang H.; Schwabe U. Biochem. Pharmacol. 1998, 56, 1287。(b)Jacobson, K.A.; Ji, X.-d.; Li, A.H.; Melman, N.; Siddiqui, M.A.; Shin, K.J.; Marquez, V.E.; Ravi, R.G. J. Med. Chem. 2000, 43, 2196。各アッセイ管は、50 mMのトリス・HCl(pH 7.4)、1 mMのEDTA、1 mMのMgCl2、1 μMのGDP、1 mMのジチオトレイトール、100 mMのNaCl、3 U/mlのADA、0.2 nMの[35S]GTPγS、0.004%の3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホナート(CHAPS)、および0.5%のウシ血清アルブミンを含む、200 μLの緩衝液からなるものであった。膜懸濁液(天然のヒトA1ARまたはヒトA3ARのいずれかを安定に発現するCHO細胞、5 μgタンパク質/管)を試験管に加えてインキュベーションを開始し、該インキュベーションは25℃で30分間2連で行った。0.02%のCHAPSを含む、50 mMのトリス・HCl、5 mMのMgCl2(pH 7.4)に予め浸漬したWhatman GF/Bフィルターによる急速ろ過によって反応を停止させた。このフィルターを3 mLの同じ緩衝液で2回洗浄し、保持された放射能を液体シンチレーション計数を用いて測定した。[35S]GTPγSの非特異的結合を、10 μMの非標識GTPγSの存在下で測定した。化合物はいずれも刺激作用が10%よりも大きくなく;したがってこれらの化合物はA3アデノシン受容体のアンタゴニストである。
【0072】
【表1】

【0073】
生物学的アッセイの1つの方法によれば、(N)-メタノカルバ(methanocarba)系列の化合物7b〜9b(3-ハロベンジル)は、0.7〜1.4 nMの結合Ki値を有する、強力なA3ARアンタゴニストであった。化合物9b(3-ブロモベンジル類似体)は、0.73 nMのKi値で結合する、この系列の最も強力なA3ARアンタゴニストであることが判明し、高い選択性を示した(A1ARおよびA2AARと比較してそれぞれ2400倍および2190倍)。最もA3AR選択的な化合物は、A1ARおよびA2AARと比較してそれぞれ2900倍および4250倍の選択性を有する3-クロロ類似体8bであった。N6-ベンジル基の置換のSARはさらに、ジメトキシ置換(11b)、第二の環へのフェニル環の縮合(10b)、および炭素1個分の伸長(すなわち回転が束縛された2-フェニルシクロプロピル類似体13bにおける)がすべて、A3ARに対して、ナノモルの結合親和性で許容されることを示した。11bの脱メチル化類似体である化合物12bは、A3ARに対する結合がわずかに弱かった。
【0074】
A3ARの活性化によって誘導される[35S]GTPγS結合の機能性アッセイにおいて、7bは、29.8 nMのIC50で、1 μMのNECA(5′-N-エチルカルボキサミドアデノシン)による刺激作用を完全に阻害した(図1)。NECAによるアデニル酸シクラーゼの阻害の応答曲線の7bによる右へのシフトをシルド(Schild)解析すると、8.9 nMのKB値が得られた。
【0075】
複数の機能上の基準を用いてA3ARを刺激する能力を比較すると、種々の結果が得られた。cAMPアッセイにおいては、化合物7bおよび9bは、それぞれ44±6および46±4の相対的効力パーセントで、A3ARに対して部分的アゴニズムを示し、EC50値はそれぞれ12±1 nMおよび4.2±0.6 nMであった。
【0076】
実施例3
この実施例は、本発明の実施態様に従う放射性ヨウ素化化合物の調製方法を示す。125Iを有する化合物7bを以下のように調製した。化合物7bのそのN6-3-ヨードベンジル置換基上での(放射性)ヨウ素化を、図6に示したような「非放射性(cold)」ヨウ素化反応による3-(トリメチルスタンニル)ベンジル前駆体のヨウ素化脱スタンニル反応(iododestannylation)によって、高収率で達成した。
【0077】
材料および計測手段
特に言及した場合を除き、ヘキサメチルスズ(hexamethyltin)および薬理学的薬剤を含む他の試薬は、Sigma-Aldrich Chemical Companyから購入した。NaOH(1.0×10-5 M)中の[125I]ヨウ化ナトリウム(17.4 Ci/mg)は、Perkin-Elmer Life and Analytical Scienceによって供給されたものである。1H NMRスペクトルは、溶媒としてCDCl3およびCD3ODを用いて、Varian Gemini 300分光計により得た。化学シフトは、CDCl3についてはテトラメチルシラン(δ0.00)、CD3ODについては水(δ3.30)に対するδ値(ppm)で表す。TLC分析は、AldrichからのシリカゲルF254(0.2 mm)で前もってコーティングされたアルミニウムシートで行った。HPLCの移動相は、流速1.0 ml/分の、20分間で20/80から60/40に達する、CH3CN/テトラブチルアンモニウムホスファート(tetrabutyl ammonium phosphate)(5 mM)からなるものであった。高分解能質量測定を、Waters HPLCシステムと連結したMicromass/Waters LCT Premierエレクトロスプレー飛行時間型(TOF)質量分析計で行った。
【0078】
23:(1’R, 2’R, 3’S, 4’R, 5’S)-4’-[2-クロロ-6-(3-トリメチルスタンニルベンジルアミノ)プリン]-2’,3’-O-ジヒドロキシビシクロ-[3.1.0]ヘキサンの調製(1)
7b(8.95 mg、0.018 mmol)、PdCl2(PPh3)2(2.7 mg)およびヘキサメチルスズ(hexamethyltin)(11 μL、0.054 mmol)を一緒に無水ジオキサン(2 ml)中で混合し、得られた反応混合物を70℃で2時間攪拌した。該混合物を減圧下で濃縮した。生成物を、溶離液としてCHCl3:MeOH(10:1)を用いることによって、フラッシュクロマトグラフィーによって精製し、スタンニル誘導体23(9.3 mg、90%)を油状物として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3), 7.81 (s, 1H), 7.53 (s, 1H), 7.34 (m, 2H), 7.33 (m, 1H), 6.49 (br s, 1H), 4.88 (br s, 2H), 4.00 (m, 2H), 3.71 (s, 1H), 3.65 (m, 1H), 3.47 (m, 1H), 2.02 (m, 1H), 1.96 (s, 1H), 1.64 (m, 1H), 1.28 (m, 2H), 0.81 (m, 1H), 0.29 (s, 9H)。HRMS (M + 1)+: C21H27ClIN5O2Sn+(M+H)+の計算値535.6338, 実測値536.0823。HPLC: Rt=22.1分。HPLCの系: 25分間で80/20から60/40に達し、その後2分間イソクラチックである、5 mMのTBAP/CH3CN; 流速は1 ml/分。
【0079】
Vaidyanathan G.ら, Nat. Protocols 1: 707〜713 (2006)に開示された手順に従って、トリメチルスタンニル中間体23(0.1 mg)をNaOH(1.0×10-5 M)中の[125I]ヨウ化ナトリウムと反応させて、[125I]7bを得た。
【0080】
図7Aは、マウスA3アデノシン受容体に対する[125I]7bの非特異的結合、特異的結合、および全体の結合を示す。図7Bは、化合物の濃度の関数としての特異的結合の程度を示す。この化合物は、マウスA3アデノシン受容体のアゴニストであった。
【0081】
実施例4
この実施例は、本発明の実施態様に従う76Br標識化合物9bである放射性標識リガンドの調製方法を示す。75As(3He、2n)が76Brの核反応を生じさせることを利用して、臭素76をヒ素金属ターゲットから調製した。同時に生成するBr75を崩壊させた後で(t1/2=1.6時間)、76Brを処理した。
【0082】
Br76の水溶液のアリコート(約10〜20 μl、18.5〜37.0 MBq)を1 mLの反応バイアルに加え、アルゴン流により溶媒を蒸発させる。Br76放射能を含む該バイアルに、トリメチルスタンニル中間体23を含むアセトニトリルを加え、続いて37%の過酢酸を含むアセトニトリルを加える。バイアルを密封し、80℃の加熱ブロックに載せ、30分間加熱する。反応終了時に、反応混合物をPhenomenex Luna C18 (2)カラム(250×4.6 mm)に載せ、100 mMの酢酸アンモニウム/アセトニトリル(60/40)を用いて1.2 mL/分の流速で溶出させる。所望の生成物を含む放射能のピーク(tR=10分)を収集し、純度および比放射能の測定のために別個のHPLCシステムで分析する。
【0083】
ラットにおいて、Br76標識化合物9bの化合物をインビボで体内に分布させることを行った。生きた動物でのすべての研究は、国立衛生研究所(NIH)の動物管理使用委員会(Animal Care and Use Committee)によって認可されたプロトコルの下で行った。成体スプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ラットに静脈内投与した後、体内分布を評価した。15分、30分、60分、および120分の時点で動物を屠殺し、γ線計測のために種々の組織を収集した。データは、図8に、1グラムあたりの注射した用量の百分率の単位で報告している。化合物は、取り込み量が低くても、A3アデノシン受容体に対してアンタゴニストの性質を示した。取り込みの低さは、動物の年齢が低いことによる可能性がある。A3ARを含有する精巣における取り込みは、注射後時間とともに増大し続けた(15分の時点での0.09%ID/gから2時間の時点での0.18%ID/gまで)。血液は、2時間にわたって入力関数(input function)を示し続けた。潜在的な精巣血液関門にもかかわらず、アンタゴニストの取り込みは時間とともに増大し、このことは化合物が、A3ARの上昇を伴う病態の、実行可能な分子画像化プローブであり得ることを示している。
【0084】
本明細書中に引用された刊行物、特許出願および特許を含むすべての参照文献は、本明細書中にそれぞれの参照文献が個別にかつ具体的に参照によって援用されることが表示され、その全体が示されている場合と同じ程度に、本明細書によって参照によって援用される。
【0085】
本明細書中に別段示さない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、発明の説明との関係における(特に以下の特許請求の範囲との関係における)用語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「該(the)」、ならびに同様の指示語の使用は、単数および複数の双方をカバーするように解釈されるべきである。別段記載しない限り、用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」は、オープンエンドの用語(すなわち「含むがそれらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中に別段示さない限り、本明細書における数値範囲の記載は、該範囲に入るそれぞれの別個の値を個々に指す略記方法として働くことを意図したものであるにすぎず、それぞれの別個の値は、それが本明細書中に個々に記載されているのと同様に本明細書中に取り込まれる。別段本明細書中に示さない限り、または別段文脈によって明らかに否定されない限り、本明細書中に記載されたすべての方法は、任意の適切な順序で行うことができる。別段特許請求しない限り、本明細書中に提供される任意の、かつすべての例または例示的な言葉(例えば「など(such as)」)の使用は、本発明をより十分に説明することを意図したものにすぎず、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。本明細書における言葉は、任意の特許請求されていない要素を本発明の実施に不可欠なものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0086】
本発明の好ましい実施態様は、本明細書中に記載しており、本発明者らが知る発明を実施するための最良の形態を含んでいる。そうした好ましい実施態様の変形形態は、前述の説明を読んだ際に当業者に明らかになり得る。本発明者らは当業者がかかる変形形態を適宜使用するものと思っており、本発明者らは本発明が本明細書において具体的に説明したのとは別の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載した対象の、適用法によって許容されるすべての改変形態および均等物を含む。また、別段本明細書中に示さない限り、または別段文脈によって明らかに否定されない限り、上記要素のすべての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせは、本発明に含まれる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


[式中、
R1は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ヒドロキシル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8シクロアルキルC1〜C6アルキル、C3〜C8ジシクロアルキルC1〜C6アルキル、C7〜C12ビシクロアルキルC1〜C6アルキル、C7〜C14トリシクロアルキルC1〜C6アルキル、C6〜C14アリール、C6〜C14アリールC1〜C6アルキル、C6〜C14ジアリールC1〜C6アルキル、C6〜C14アリールC1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルカルボニル、スルホニル、C1〜C6アルキルスルホニル、C6〜C14アリールスルホニル、ヘテロシクリルC1〜C6アルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリールC1〜C6アルキル、4-[[[4-[[[(2-アミノC1〜C6アルキル)アミノ]-カルボニル]-C1〜C6アルキル]アニリン]カルボニル]C1〜C6アルキル]C6〜C14アリール、およびC6〜C14アリールC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、R1のアリール部分またはヘテロシクリル部分は任意に、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシ、C1〜C6アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、C1〜C6アルキルアミノカルボニル、C1〜C6ジアルキルアミノカルボニル、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールオキシ、ヒドロキシC1〜C6アルキル、ヒドロキシC2〜C6アルケニル、ヒドロキシC2〜C6アルキニル、カルボキシC1〜C6アルキル、カルボキシC2〜C6アルケニル、カルボキシC2〜C6アルキニル、アミノカルボニルC1〜C6アルキル、アミノカルボニルC2〜C6アルケニル、アミノカルボニルC2〜C6アルキニル、およびC≡C-(CH2)n-COR7からなる群から選択される1個以上の置換基で置換され、式中R7は、OH、OR8、およびNR9R10からなる群から選択され、式中R8は、C1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8シクロアルキルC1〜C6アルキル、C3〜C8ジシクロアルキルC1〜C6アルキル、C7〜C12ビシクロアルキルC1〜C6アルキル、C7〜C14トリシクロアルキルC1〜C6アルキル、C6〜C14アリール、C6〜C14アリールC1〜C6アルキル、C6〜C14およびジアリールC1〜C6アルキル(C6-C14 and diaryl C1-C6alkyl)からなる群から選択され;R9およびR10は独立して、水素、C1〜C6アルキル、および(CH2)nR11からなる群から選択され、式中R11はNR12R13であり、式中R12およびR13は独立して、水素、C1〜C6アルキル、およびCOR14からなる群から選択され、式中R14は、水素またはC1〜C6アルキルであり;式中nは1〜10の整数であり;R1のアルキル部分またはシクロアルキル部分は任意に、ハロ、アミノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールオキシ、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C2〜C6ヒドロキシアルケニル、C2〜C6ヒドロキシアルキニル、アミノカルボニルC1〜C6アルコキシ、およびC6〜C14アリールC1〜C6アルコキシからなる群から選択される1個以上の置換基で置換され;
R2は、水素、ハロ、アミノ、ヒドラジド、メルカプト、C1〜C20アルキルアミノ、C6〜C14アリールアミノ、C6〜C14アリールオキシ、C1〜C20アルキル、C1〜C20アルコキシ、C1〜C20チオアルコキシ、ピリジルチオ、C7〜C12シクロアルキルC1〜C20アルキル、C7〜C12ビシクロアルキルC1〜C20アルキル、C7〜C12ビシクロアルケニルC1〜C20アルキル、C6〜C14アリールC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C7〜C12シクロアルキルC2〜C20アルケニル、C7〜C12ビシクロアルキルC2〜C20アルケニル、C7〜C12ビシクロアルケニルC2〜C20アルケニル、C6〜C14アリールC2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、カルボキシアルキルC2〜C20アルキニル、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-O-C1〜C6アルキル、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-NH-(CH2)n-NH2、-C≡C-(CH2)m-C1〜C6アルキル、-C≡C-(CH2)m-アリール(式中mおよびnは独立して1〜10である)、C7〜C12シクロアルキルC2〜C20アルキニル、C7〜C12ビシクロアルキルC2〜C20アルキニル、C7〜C12ビシクロアルケニルC2〜C20アルキニル、C6〜C14アリールC2〜C20アルキニルからなる群から選択され、R2のアルキル部分、シクロアルキル部分、またはアリール部分は任意に、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、硫黄、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、およびトリアルキルシリルからなる群から選択される1個以上の置換基で置換され;
R3およびR4は独立して、ヒドロキシル、アミノ、チオール、ウレイド、C1〜C6アルキルカルボニルアミノ、ヒドロキシC1〜C6アルキル、およびヒドラジニルからなる群から選択され;
R5は、水素、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、ヘテロアリール、およびC1〜C6アミノアルキルからなる群から選択される]
の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
R1が、C6〜C14アリールC1〜C6アルキル、ヘテロアリール、およびC6〜C14アリールC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、R1のアリール部分が任意に、ハロ、アミノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールオキシ、ヒドロキシC1〜C6アルキル、ヒドロキシC2〜C6アルケニル、ヒドロキシC2〜C6アルキニル、アミノカルボニルC1〜C6アルコキシ、およびC6〜C14アリールC1〜C6アルコキシからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されている、請求項1記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項3】
R1が、ベンジル、フェニルシクロプロピル、または1-ナフチルメチルからなる群から選択され、R1のフェニル部分またはナフチル部分が任意に、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、フェノキシ、ヒドロキシC1〜C6アルキル、ヒドロキシC2〜C6アルケニル、およびヒドロキシC2〜C6アルキニルからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されている、請求項1または2に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項4】
R1が、ベンジル、フェニルシクロプロピル、または1-ナフチルメチルであり、R1のフェニル部分またはナフチル部分が任意に、ハロ、ヒドロキシル、およびアルコキシからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項5】
R1がベンジルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項6】
R1が、ハロおよびC1〜C6アルコキシからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されたベンジルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項7】
ハロが、クロロ、ブロモまたはヨードである、請求項6に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項8】
R1が、3-クロロベンジル、3-ブロモベンジル、3-ヨードベンジル、2-ヒドロキシ-5-メトキシ-ベンジル、および2,5-ジメトキシベンジルからなる群から選択される、請求項1〜4および6〜7のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項9】
フェニルシクロプロピルがtrans-2-フェニル-1-シクロプロピルである、請求項3または4に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項10】
R2がハロである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項11】
R2が、クロロ、ブロモまたはヨードである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項12】
R2が、-C≡C-(CH2)m-CH3、-C≡C-(CH2)m-アリール、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-O-CH3、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-NH-(CH2)n-NH2であり、式中mおよびnが独立して1〜10であり、式中CH3またはアリールが任意に、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、硫黄、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、およびトリアルキルシリルからなる群から選択される1個以上の置換基で置換されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項13】
R3およびR4がヒドロキシルである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項14】
R5が水素である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項15】
R2がクロロであり、R1が3-クロロベンジル、3-ヨードベンジル、3-ブロモベンジル、1-ナフチルメチル、2,5-ジメトキシベンジル、2-ヒドロキシ-5-メトキシベンジルまたはtrans-2-フェニル-シクロプロピルであり、R3およびR4がヒドロキシルであり、R5が水素である、請求項1記載の化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項17】
有効量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の疾患の治療方法であって、該疾患が、癌、緑内障、炎症性疾患、喘息、脳卒中、心筋梗塞、アレルギー反応、鼻炎、ツタウルシ誘発性反応、じんま疹、強皮症、関節炎、脳細動脈径収縮、気管支収縮、および心筋虚血からなる群から選択される、方法。
【請求項18】
有効量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、A3アデノシン受容体の部分的活性化または選択的不活性化を必要とする哺乳動物において、A3アデノシン受容体を部分的に活性化するか、または選択的に不活性化するための、方法。
【請求項19】
有効量の式(I)の化合物(式中R1は3-ブロモベンジルまたは3-ヨードベンジルであり、R2はハロであり、R3およびR4はヒドロキシルであり、R5は水素である)を投与することによって、哺乳動物においてA3アデノシン受容体が部分的に活性化される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
R2がクロロである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物がヒトである、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物または塩(式中R1は3-ブロモベンジルまたは3-ヨードベンジルであり、R2はハロであり、R3およびR4はヒドロキシルであり、R5は水素である)を動物に投与することを含む、心臓に対する虚血性障害の予防または減少を必要とする動物において、心臓に対する虚血性障害を予防するか、または減少させるための、心臓保護方法。
【請求項23】
式I:
【化2】


[式中、
R1は、C6〜C14アリール、C6〜C14アリールC1〜C6アルキル、C6〜C14ジアリールC1〜C6アルキル、C6〜C14アリールC1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールスルホニル、ヘテロシクリルC1〜C6アルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリールC1〜C6アルキル、4-[[[4-[[[(2-アミノC1〜C6アルキル)アミノ]-カルボニル]-C1〜C6アルキル]アニリン]カルボニル]C1〜C6アルキル]C6〜C14アリール、およびC6〜C14アリールC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、R1のアリール部分またはヘテロシクリル部分は、1個以上の放射性ハロゲン原子で置換され;
R2は、水素、ハロ、アミノ、ヒドラジド、メルカプト、C1〜C20アルキルアミノ、C6〜C14アリールアミノ、C6〜C14アリールオキシ、C1〜C20アルキル、C1〜C20アルコキシ、C1〜C20チオアルコキシ、ピリジルチオ、C7〜C12シクロアルキルC1〜C20アルキル、C7〜C12ビシクロアルキルC1〜C20アルキル、C7〜C12ビシクロアルケニルC1〜C20アルキル、C6〜C14アリールC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C7〜C12シクロアルキルC2〜C20アルケニル、C7〜C12ビシクロアルキルC2〜C20アルケニル、C7〜C12ビシクロアルケニルC2〜C20アルケニル、C6〜C14アリールC2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、カルボキシアルキルC2〜C20アルキニル、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-O-C1〜C6アルキル、-C≡C-(CH2)m-C(=O)-NH-(CH2)n-NH2、-C≡C-(CH2)m-C1〜C6アルキル、-C≡C-(CH2)m-アリール(式中mおよびnは独立して1〜10である)、C7〜C12シクロアルキルC2〜C20アルキニル、C7〜C12ビシクロアルキルC2〜C20アルキニル、C7〜C12ビシクロアルケニルC2〜C20アルキニル、C6〜C14アリールC2〜C20アルキニルからなる群から選択され、R2のアルキル部分、シクロアルキル部分、またはアリール部分は任意に、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、硫黄、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、およびトリアルキルシリルからなる群から選択される1個以上の置換基で置換され;
R3およびR4は独立して、ヒドロキシル、アミノ、チオール、ウレイド、C1〜C6アルキルカルボニルアミノ、ヒドロキシC1〜C6アルキル、およびヒドラジニルからなる群から選択され;
R5は、水素、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、ヘテロアリール、およびC1〜C6アミノアルキルからなる群から選択される]
の放射性標識化合物、またはその医薬上許容される塩。
【請求項24】
R1のハロゲン原子が、18F、76Brまたは125Iである、請求項23に記載の放射性標識化合物または塩。
【請求項25】
R1が3-ブロモベンジルまたは3-ヨードベンジルであり、R2がハロであり、R3およびR4がヒドロキシルであり、R5が水素である、請求項23または24に記載の放射性標識化合物または塩。
【請求項26】
有効量の請求項23〜25のいずれか1項に記載の放射性標識化合物または塩を動物に投与し、動物の器官または組織の画像を得ることを含む、動物の組織または器官におけるA3アデノシン受容体の画像化方法。
【請求項27】
画像が、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴分光法(MRS)および陽電子放出断層撮影(PET)、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される技術によって得られる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
A3アデノシン受容体の可能なアゴニストまたはアンタゴニストについての患者の治療法を決定するための診断方法であって、該治療法が、
(a)請求項23〜25のいずれか1項に記載の放射性標識化合物または塩を投与すること;
(b)患者から生体試料を得ること;
(c)A3アデノシン受容体の発現レベルを測定すること;
(d)該受容体の発現レベルを正常集団の発現レベルと比較すること;および
(e)該患者の発現レベルが、正常集団の発現レベルよりも高い場合、その発現が正常集団の発現よりも患者において高かったアデノシン受容体のアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む治療計画を決定すること
を含む、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−529917(P2011−529917A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521360(P2011−521360)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/052439
【国際公開番号】WO2010/014921
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(510002280)アメリカ合衆国 (7)
【Fターム(参考)】