説明

ADAMTS−8タンパク質およびその使用

本発明は、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体を用いて、アグリカンまたは他のプロテオグリカン分子を切断する方法に関する。本発明は、ADAMTS−8のタンパク質分解活性を阻害または強化できるADAMTS−8調節因子を同定する方法にも関する。加えて、本発明は、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの誘導体もしくは調節因子を含む医薬組成物に関する。これらの医薬組成物は、プロテオグリカンの切断または代謝の欠損または異常を特徴とする疾患を治療するのに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年4月16日出願の米国特許仮出願第60/562687号に基づく権利を主張し、この開示を全体として出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、ADAMTS−8タンパク質、ならびにそれらの誘導体および調節因子と、プロテオグリカンの切断または代謝の欠損または異常を特徴とする疾患をそれらの物質を用いて治療する方法と、に関する。
【背景技術】
【0003】
ADAMTS(トロンボスポンジンモチーフを有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ)ファミリーには、共通のドメイン構造に基づいて相互に関連した少なくとも19のメンバーが含まれる。ADAMファミリーのメンバーとは対照的に、ADAMTSタンパク質は、膜貫通ドメインをもたず、少なくとも1つのトロンボスポンジン1様モチーフを含有している。典型的なADAMTSタンパク質は、N末端からC末端に向けて、シグナル配列、プロドメイン、メタロプロテアーゼ触媒ドメイン、ジスインテグリン様ドメイン、中央トロンボスポンジンI型リピート、システインリッチドメイン、およびスペーサードメインを含有している。Calら、GENE、283:49−62(2002年)を参照。多くのADAMTSタンパク質が、スペーサードメインの後に1つまたは複数のトロンボスポンジン1様リピートも含有している。ADAMTSタンパク質は、スペーサードメインおよびトロンボスポンジン1様リピート内での相互作用を介して、細胞外マトリックス成分と結合できる。KunoおよびMatsushima、J.Biol.CHEM.、273:13912−13917(1998年)参照。
【0004】
ADAMTSファミリーメンバーの小さな部分集団の生理学的役割が解明されており、あるケースでは、その発現異常とヒト疾病との関連が示唆されている。ADAMTS−2、ADAMTS−3、およびADAMTS−14は、プロコラゲナーゼとして機能すると報告されている。ADAMTS−2は、I型およびII型プロコラーゲンのプロセシングを行うプロコラーゲンI N−プロテナーゼ(pNPI)として同定されている。I型コラーゲンプロセシングが行われないと、アミノ末端プロペプチドを保持しているコラーゲン原線維(pN−コラーゲンI)の蓄積がもたらされる。pN−コラーゲンIから構築された原線維は、正常なレベルの張力を生み出さず、それによって、疾患に関連した結合組織欠損を引き起こす。Ehlers−Danlos症候群VIIC型は、I型プロコラーゲンからコラーゲンへのプロセシングができず、その結果、関節の完全性欠損と皮膚の脆弱性とを引き起こす劣性のヒト遺伝病である。ウシ、ヒツジ、およびネコの一部の品種で見られる関連疾患はデルマトスパラキシス(「皮膚の裂傷」)と呼ばれている。これらの疾患は、両方ともADAMTS−2活性の減失と結びついている。ADAMTS−2活性の非存在下で1型コラーゲンのアミノ−プロペプチド切断が残留していることによって、ADAMTS−14もin vitroでI型コラーゲンを切断できるという発見が導かれた。ADAMTS−3が主要なプロコラーゲンII N−プロペプチダーゼであると提唱されている。ADAMTS−13は、フォンウィルブラント因子(vWF)における、A2ドメイン内の特定のTyr−Met結合を切断する血漿プロテアーゼとして同定されている。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、微小血管血栓症、血小板数低下、および貧血を特徴とする症候群である。内皮細胞から放出された大型のvWF(UL−vWF)多量体が適切に切断されないことによってTTPがもたらされるのであろうと推測されている。4家族のTTP血統の遺伝子解析によって、ADAMTS−13遺伝子の変異がこの障害の主要原因であることが実証された。
【0005】
ADAMTS−1、ADAMTS−4、ADAMTS−5、およびADAMTS−9は、異なった程度の効率で細胞外マトリックスプロテオグリカンを切断できることが示されている。例えば、ADAMTS−1、ADAMTS−4、およびADAMTS−5は、アグリカンの球間ドメイン(IGD)におけるGlu373−Ala374結合を切断することができる。Catersonら、MATRIX BIOLOGY、19:333−344(2000年)参照。このタンパク質分解活性はアグレカナーゼ活性と呼ばれ、Glu373−Ala374結合がアグレカナーゼ切断部位として知られている。アグレカナーゼ活性を有するタンパク質はアグレカナーゼと呼ばれる。Glu373−Ala374結合は、変形性関節炎などの退行性骨関節症の際にin vivoで加水分解される。軟骨分解中におけるIGDの主要な切断はアグレカナーゼによるものであると示唆する証拠がある。上記のCatersonらを参照のこと。ADAMTS4は、成人脳で豊富なプロテオグリカンであるブレビカンの切断で役割を果たしていることも見出されており、また、ADAMTS1と共にベーシカンを切断することも示されている。
【0006】
ADAMTS−8は、Meth2としても知られており、血管新生との関連が示唆されている。組換え体ADAMTS−8が内皮細胞の増殖をin vitroで阻害できること、そして、in vivoアッセイで血管新生を阻害できることを示す研究がある。例えば、Vazquezら、J.BIOL.CHEM.、274:23349−23357(1999年)を参照。ADAMTS−8は、in vitroおよびin vivoで血管新生を阻害でき、その効率はトロンボスポンジン−1またはエンドスタチンよりも高いが、ADAMTS−1よりは低いようである。ADAMTS−8ではいかなるタンパク質分解活性も同定されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、プロテオグリカンを切断するための、単離されたADAMTS−8タンパク質の使用に関する。この目的に適した方法は、プロテオグリカン分子を切断する単離されたADAMTS−8タンパク質と、プロテオグリカンを接触させる工程を含む。多くの実施形態で、切断されるプロテオグリカン分子がアグリカン分子であり、このアグリカン分子のGlu373−Ala374結合を、単離されたADAMTS−8タンパク質が切断する。本発明で用いられるADAMTS−8タンパク質は、完全長の成熟ADAMTS−8タンパク質でありうる。一例では、ADAMTS−8タンパク質は、配列番号28におけるアミノ酸214〜890を含むものまたはこれからなるものである。別の例では、ADAMTS−8タンパク質は、GenBank受託番号AF060153によってコードされているが、シグナルペプチドおよびプロドメインを欠失している。
【0008】
本発明は、プロテオグリカンを切断するための、単離されたADAMTS−8誘導体の使用にも関する。これらのADAMTS−8誘導体は、ADAMTS−8メタロプロテアーゼ触媒ドメインを含み、完全長の成熟ADAMTS−8タンパク質のプロテオグリカン切断活性(例えばアグレカナーゼ活性)を保持するものである。そのようなADAMTS−8誘導体をプロテオグリカン分子(例えばアグリカン分子)と接触させると、プロテオグリカン分子が切断される。一例では、本発明で用いられるADAMTS−8メタロプロテアーゼ触媒ドメインは、配列番号28におけるアミノ酸214〜439を含むもの、またはこれからなるものである。ADAMTS−8誘導体は、ADAMTS−8ジスインテグリン様ドメインおよび/またはADAMTS−8中央トロンボスポンジンI型リピートをさらに含みうる。
【0009】
本発明に適したADAMTS−8誘導体は、任意の従来の手段によって調製することができる。多くの場合、そのようなADAMTS−8誘導体は、シグナルペプチドもプロドメインも含んでいない。ADAMTS−8誘導体は、完全長ADAMTS−8タンパク質における選択されたアミノ酸残基の欠失、挿入、または置換によって調製することができる。一実施形態では、本発明で用いられるADAMTS−8誘導体は、配列番号28におけるアミノ酸214〜588を含むもの、またはこれからなるものである。これに相当するアミノ酸配列からなるADAMTS−7またはADAMTS−9誘導体は、元の完全長タンパク質のアグレカナーゼ活性を保持することが示されている。
【0010】
別の態様では、本発明は、プロテオグリカンを切断するための、組換え産生されたADAMTS−8タンパク質またはそれらの誘導体の使用に関する。この目的に適した方法は、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの誘導体を組換え発現ベクターから発現する工程を含む。発現されたADAMTS−8タンパク質または誘導体は、プロテオグリカン分子(例えばアグリカン分子)と接触した際にそれを切断する。本明細書に記載のいかなるADAMTS−8タンパク質も、または誘導体も組換え産生することができる。多くの実施形態で、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの誘導体をコードする組換え体ベクターが哺乳動物細胞で発現され、発現されたタンパク質または誘導体が、それらの細胞によって培地または細胞外マトリックス領域に分泌される。一例では、本発明で用いられる組換え発現ベクターは、配列番号28におけるアミノ酸214〜890をコードする配列を含む。別の例では、本発明で用いられる組換え発現ベクターは、配列番号28におけるアミノ酸214〜588をコードする配列を含む。さらに別の例では、本発明で用いられる組換え発現ベクターは、GenBank受託番号AF060153のタンパク質コード配列を含む。
【0011】
本発明に従って切断されるプロテオグリカンは、組織、組織培養、または細胞培養中に存在するものでありうる。単離または組換え産生されたADAMTS−8タンパク質または誘導体は、非経口、静脈内、局所的、皮内、経皮、または皮下投与によって、あるいはADAMTS−8タンパク質または誘導体をコードする発現ベクターをその組織部位にある選択された細胞の中に導入することによってなど、任意の従来の手段によって組織部位に送達することができる。
【0012】
本発明は、さらに、ADAMTS−8調節因子を同定する方法に関する。これらの方法は、
対象の薬剤の存在下または非存在下で、ADAMTS−8タンパク質または誘導体をプロテオグリカン分子(例えばアグリカン分子)と接触させる工程と、
上記薬剤の存在下または非存在下で、上記ADAMTS−8タンパク質または誘導体のプロテオグリカン切断活性(例えばアグレカナーゼ活性)を測定する工程と
を含む。上記薬剤の存在下における、前記薬剤の非存在下と比較したプロテオグリカン切断活性(例えばアグレカナーゼ活性)の変化によって、上記薬剤が上記ADAMTS−8タンパク質または誘導体のアグリカン切断活性を調節できることが示される。ADAMTS−8調節因子を得るためのスクリーニングには、本明細書に記載のいずれのADAMTS−8タンパク質または誘導体も使用できる。本発明によって同定された調節因子は、ADAMTS−8タンパク質のプロテオグリカン切断活性(例えばアグレカナーゼ活性)を阻害(例えば低下または除去)または強化することができる。
【0013】
本発明は、プロテオグリカン切断(例えばアグリカン切断)の欠損または異常を特徴とする疾患を治療するための、ADAMTS−8調節因子の使用にも関する。この目的に適した方法は、治療有効量のADAMTS−8調節因子を、それを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む。ADAMTS−8調節因子が望ましい組織部位に到達でき、その部位のプロテオグリカン切断活性を改変するのに効果的であるならば、いかなる投与経路を用いてもよい。本発明によって同定されたいかなるADAMTS−8調節因子も、プロテオグリカンの欠損または異常を治療するのに用いることができる。
【0014】
組織部位のプロテオグリカン切断活性の調節は、単離されたADAMTS−8タンパク質または誘導体を導入することによって、あるいは、組換え体ADAMTS−8タンパク質または誘導体をその部位で発現することによって行うことができる。さらに、細胞外マトリックス領域の選択された細胞におけるADAMTS−8の発現を阻害することによって、細胞外マトリックス領域のプロテオグリカン切断活性を調節することができる。この目的に適した方法には、ADAMTS−8 RNAi配列またはアンチセンス配列を、選択された細胞に導入または発現することが含まれるが、これらに限定されない。多くの場合、用いられるRNAi配列またはアンチセンス配列は、ADAMTS−8遺伝子に特異的であって、他のプロテアーゼ遺伝子の発現を阻害できないものである。
【0015】
本発明は、ADAMTS−8タンパク質、またはそれらの誘導体もしくは調節因子を含む医薬組成物にも関する。
【0016】
本発明の他の特徴、対象、および利点は以下の詳細な説明で明らかである。しかし、詳細な説明は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、限定ではなく、例示のみを目的として提示されていることを理解するべきである。当業者には、本発明の範囲内にある様々な変更および改変が詳細な説明から明らかになろう。
【0017】
(図面の簡単な記載)
図面は、何ら限定するものではなく、例示のために提示するものである。
【0018】
図1は、ADAMTSファミリーメンバーの系統樹を図示する。複数のADAMTSタンパク質のアミノ酸配列を、CLUSTALWを用いて比較し、TreeViewを用いて示した。この系統樹は、配列の関連性に基づいてタンパク質を分類している。
【0019】
図2Aは、CHO培養上清から単離されたADAMTS−8タンパク質のStrep−tag(登録商標)精製(IBA、独国)で得たタンパク質画分の10%SDS−PAGEを示す。このSDS−PAGEはクーマシーブリリアントブルーで染色した。レーン:1、CHO細胞培養上清;レーン2、限外濾過で得られたフロースルー画分(濾過液);レーン3、濃縮限外濾過残留画分;レーン4、ストレプトアクチンカラムフロースルー画分;レーン5〜9、ストレプトアクチンカラム洗浄画分;レーン10〜15、ストレプトアクチンカラム溶出分画。
【0020】
図2Bは、抗Strep−TagIIポリクローナル抗血清(IBA)を用いた、図2AのSDS−PAGEのウエスタンブロットである。
【0021】
図3Aは、ヒトADAMTS−8遺伝子由来のcDNA断片プローブでプロービングした、76の異なった人体組織から調製されたmRNA多組織発現アレイを示す。
【0022】
図3Bは、図3Aの多組織発現アレイで使用されたmRNAの取得源を示す。空白の欄は、それらの座標にmRNAがスポットされなかったことを示す。ADAMTS−8mRNAの相対量が多かった組織は、肺(A8)、大動脈(B4)、および胎児心臓(B11)であり、低レベルのADAMTS−8mRNAが検出可能であったのは、虫垂(G5)、脳の様々な領域(A1〜G1、C3〜H3、およびB3)であった。
【0023】
図4は、無疾患の軟骨および骨関節炎(OA)の軟骨のヒト臨床標本における、リアルタイムPCRで測定されたADAMTS−8mRNA発現レベルのヒストグラムを示す。試料W−04からW−13は、OAを患っていない(「無疾患」)膝関節軟骨を表す。試料77M〜96Mは、視覚的に現れていない後期段階OA関節軟骨(「軽度OA」)の領域を表す。試料88S〜98Sは、重度に影響が現れている後期段階OA関節軟骨(「重度OA」)の領域を表す。各試料のADAMTS−8mRNA存在量は、ADAMTS−8に関して測定された平均データを、GAPDHに関して同一試料で測定された平均データ割ることによって、正規化された値として示されている。
【0024】
図5は、モノクローナル抗体AGG−C1を用いた競合阻害ELISAの結果を示す。ストレプトアビジンコーティングされたマイクロタイタープレートを、ビオチン化されたaggc1ペプチドでコーティングした。阻害アッセイは、以下の競合物質、すなわち、合成ペプチドGGLPLPRNITEGE(配列番号22、黒塗り四角)、GGLPLPRNITEGEARGSVILTVK−CONH(配列番号23、中空四角)、ADAMTS−4消化されたアグリカン(黒塗り円)、および「非消化」アグリカン(中空円)を用いて行った。
【0025】
図6Aは、モノクローナル抗体BC−3を用いた、ADAMTS−4消化およびADAMTS−8消化されたウシアグリカンのウエスタンブロットである。ADAMTS−4またはADAMTS−8の存在下または非存在下でウシアグリカンを37℃で16時間インキュベートした。消化産物をSDS−PAGEによって分離し、モノクローナル抗体BC−3を用いたウエスタンイムノブロッティングによって可視化した。レーン1、酵素無添加;レーン2、ADAMTS−4消化されたアグリカン(酵素:基質モル比1:20);レーン3〜7、各レーン上に示された酵素:基質モル比でADAMTS−8消化されたアグリカン。球状タンパク質標準物質の移動位置をブロットの左側に示す。
【0026】
図6Bは、モノクローナル抗体AGG−C1を用いた、ADAMTS−8消化されたウシアグリカンのウエスタンブロットである。ウシアグリカンを、無酵素、または様々なモル比のADAMTS−8と共に37℃で16時間インキュベートした。消化産物をSDS−PAGEによって分離し、モノクローナル抗体AGG−C1を用いたウエスタンイムノブロッティングによって可視化した。各消化における酵素:基質相対モル比は示されている通りである。
【0027】
図6Cは、モノクローナル抗体AGG−C1を用いた、ADAMTS−4消化されたウシアグリカンのウエスタンブロットを示す。ウシアグリカン(12.5pmol)を無酵素、あるいは、それぞれ0.05ng、0.1ng、0.25ng、0.5ng、または1ngのADAMTS−4と共に37℃で16時間インキュベートされた。消化産物をSDS−PAGEによって分離し、AGG−C1を用いたウエスタンイムノブロッティングによって可視化した。各消化における酵素:基質相対モル比は示されている通りである。
【0028】
図7は、アグレカナーゼ活性の競合阻害ELISAの結果を示す。検量線は、様々な量の組換え体ADAMTS−4と共にウシアグリカンを37℃で16時間インキュベートし、それに続いて、各消化物にモノクローナル抗体AGG−C1を添加することによって作成した。競合阻害ELISAで45%の阻害をもたらす量のアグリカン切断産物を産生するのに約1ngのADAMTS−4を必要とする。
【0029】
(詳細な説明)
本発明は、プロテオグリカン分子を切断するための、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの誘導体の使用に関する。本発明は、ADAMTS−8のタンパク質分解活性を阻害または強化できるADAMTS−8調節因子を同定する方法にも関する。加えて、本発明は、ADAMTS−8タンパク質、またはそれらの誘導体もしくは調節因子を含む医薬組成物を提供する。これらの医薬組成物は、プロテオグリカンの切断または代謝の欠損または異常を特徴とする状態を治療するのに用いることができる。
【0030】
本発明の様々な態様を以下のセクションに詳細に説明する。以下のセクションの使用は、本発明の限定を意図するものではない。各セクションは本発明のいかなる態様にも適用できる。この出願では、別段の記載がない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。
【0031】
(I.ADAMTS−8タンパク質およびそれらの機能的誘導体)
本発明は、アグリカンまたは他のプロテオグリカン分子を切断するための、成熟ADAMTS−8タンパク質の使用に関する。成熟ADAMTS−8タンパク質は、シグナルペプチドとプロドメインとを欠失している。適当な成熟ADAMTS−8タンパク質の例には、完全長の成熟ADAMTS−8タンパク質(例えば、GenBank受託番号AF060153によってコードされている、フューリンプロセシイングされたADAMTS−8タンパク質)、およびオルタナティブRNAスプライシングまたは補助的ドメインのタンパク質分解性プロセシングによって生成された成熟ADAMTS−8アイソフォーム)が含まれるが、これらに限定されない。オルタナティブRNAスプライシングは、1つまたは複数のC末端トロンボスポンジン1様リピートの欠失をもたらし、ADAMTSファミリーの特定のメンバーで観察されている。成熟過程におけるC末端補助的ドメインのタンパク分解性の除去は、ADAMTSファミリーの特定のメンバーで報告されている。
【0032】
本発明は、アグリカンまたは他のプロテオグリカン分子を切断するための、プロセシングされていないADAMTSタンパク質の使用も企図する。これらのプロセシングされていないタンパク質は、シグナルペプチドまたはプロドメインを含んでいる。多くの場合、プロセシングされていないADAMTS−8タンパク質は、適当な宿主細胞の中で組換え発現され、培地または細胞外マトリックス領域に分泌される。これらの分泌タンパク質は、通常シグナル配列を欠失している。これらのタンパク質をさらに処理することによって、プロドメインを除去することができる。
【0033】
本発明で用いられるADAMTS−8タンパク質は、GenBank受託番号AF060153によってコードされているものなどの天然存在のタンパク質でも、天然に存在するそれらのタンパク質分解産物でもよい。一例では、本発明で用いられるADAMTS−8タンパク質は、配列番号28におけるアミノ酸214〜890を含むものである。
【0034】
本発明は、アグリカンまたは他のプロテオグリカン分子を切断するための、天然に存在するADAMTS−8タンパク質の変種の使用にも関する。これらの変種は、元のタンパク質のプロテオグリカン切断活性(例えばアグレカナーゼ活性)を保持するものである。変種のアミノ酸配列は、元のタンパク質の配列に実質的に同一である。一例では、変種のアミノ酸配列は、元のタンパク質に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上の全域的配列同一性または類似性を有する。配列同一性または類似性は、当技術分野で知られている様々な方法を用いて決定することができる。例えば、配列の同一性または類似性は、Altschulら、J.MOL.BIOL.、215、403−410(1990年)に記載のBLAST(Basic Local Alignment Tool)、Needlemanら、J.MOL.BIOL.、48:444−453(1970年)のアルゴリズム、Meyersら、COMPUT.APPL.BIOSCI.、4:11−17(1988年)のアルゴリズム、おとびドットマトリクス解析などの標準的アラインメントアルゴリズムを用いて決定することができる。この目的に適したソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information(Bethesda、MD))提供のBLASTプログラムと、DNASTAR社(Madison、WI)提供のMegAlignが含まれるが、これらに限定されない。場合によっては、GCG(the Genetics Computer Group)社のGAPプログラム(Needleman−Wunschアルゴリズム)を用いて、配列の同一性または類似性を決定する。プログラムによって指定されているデフォルト値を用いることができる(例えば、配列の一方におけるギャップ開始のペナルティが11であり、ギャップ伸長のペナルティが8である)。類似したアミノ酸は、BLOSUM62置換マトリクスを用いて定義することができる。
【0035】
ADAMTS−8タンパク質変種は、対立遺伝子変異および多型など、天然に存在するものでも、人為的に構築されたものでもよい。多数の例で、タンパク質の構造または生物活性を有意に改変せずに、タンパク質配列に保存的アミノ酸置換を導入することができる。保存的アミノ酸置換は、残基の極性、電荷量、溶解性、疎水性、親水性、または両親媒性の類似性に基づいて導入することができる。例えば、保存的アミノ酸置換は、リジン(LysまたはK)、アルギニン(ArgまたはR)、およびヒスチジン(HisまたはH)などの塩基性側鎖を有するアミノ酸相互;アスパラギン酸(AspまたはD)およびグルタミン酸(GluまたはE)などの酸性側鎖を有するアミノ酸相互;アスパラギン(AsnまたはN)、グルタミン(GlnまたはQ)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、およびチロシン(TyrまたはY)などの無電荷極性側鎖を有するアミノ酸相互;ならびに、アラニン(AlaまたはA)、グリシン(GlyまたはG)、バリン(ValまたはV)、ロイシン(LeuまたはL)、イソロイシン(IleまたはI)、プロリン(proまたはP)、フェニルアラニン(PheまたはF)、メチオニン(MetまたはM)、トリプトファン(TrpまたはW)、およびシステイン(CysまたはC)などの非極性側鎖を有するアミノ酸相互で行うことができる。他の適当なアミノ酸置換を表1に例示する。
【表1】

【0036】
置換には、天然に存在しないアミノ酸残基も使用できる。これらのアミノ酸残基は、通常、生物システム中での合成ではなく、化学ペプチド合成によって組み込まれる。
【0037】
加えて、ADAMTS−8変種は、分子の安定性を増強するアミノ酸置換を含むものでもよい。また、他の望ましいアミノ酸置換(保守的または非保存的)もADAMTS−8タンパク質に導入することができる。例えば、ADAMTS−8タンパク質のタンパク質分解活性に重要なアミノ酸残基を同定することができ、タンパク質分解活性を増強または低減できる置換を選択することができる。
【0038】
さらに、ADAMTS−8変種は、グリコシル化部位の改変を含むものでもよい。これらの改変は、O結合型またはN結合型のグリコシル化部位に関与するものでありうる。例えば、アスパラギン結合グリコシル化認識部位のアミノ酸残基を置換または除去することができ、その結果、グリコシル化の部分的または完全な廃止がもたらされる。アスパラギン結合グリコシル化認識部位は、通常、適切な細胞性グリコシル化酵素によって認識されるトリペプチド配列を含む。これらのトリペプチド配列は、例えば、アスパラギン−X−トレオニンまたはアスパラギン−X−セリンでよく、配列中、通常、Xは任意のアミノ酸である。グリコシル化認識部位の1番目または3番目のアミノ酸位置の一方または両方における様々なアミノ酸置換または欠失(あるいは2番目の位置のけるアミノ酸欠失)によって、改変されたトリペプチド配列の非グリコシル化をもたらすことができる。さらに、細菌内での発現は、グリコシル化部位が改変されていないままでも、非グリコシル化タンパク質の産生をもたらす。
【0039】
他のタイプの改変も、ADAMTS−8変種に導入することができる。これらの改変は、翻訳後修飾などの天然存在の過程によって導入されたものでも、人為的過程または合成過程によって導入されたものでもよい。修飾は、ペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖、アミノ酸末端、およびカルボキシル末端を含めた、ポリペプチドのいかなる箇所でも起こりうる。同じタイプの修飾が、変種のいくつかの部位に、同程度または異なった程度で存在しうる。変種は、多数の異なったタイプの改変を含みうる。本発明に適した改変には、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合化、ヘム部分の共有結合化、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合化、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合化、ホスファチジルイノシトールの共有結合化、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化反応、ヨウ化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニン化などの、タンパク質への転移RNA媒介型のアミノ酸付加、ユビキチン結合、またはこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。ポリペプチド変種は、分岐したもの(例えばユビキチン結合の結果)でも、環状のものでもよく、環状のものは分岐を有するものでも、分枝をもたないものでもよい。
【0040】
本発明で用いられるADAMTS−8変種は、1つまたは複数の領域で元のADAMTS−8タンパク質に実質的に同一であるが、他の領域では異なるものでありうる。ADAMTS−8変種は、元のADAMTS−8タンパク質の全域的ドメイン構造を保持しているものでありうる。一実施形態では、天然存在のADAMTS−8配列の少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50アミノ酸残基、またはさらに多くのアミノ酸残基を改変することによって変種を調製する。改変の例には、置換、欠失、および挿入が含まれるが、これらに限定されない。置換は、保守的置換でも、非保存的置換でも、あるいはこれら両方を含むものでもよい。これらの改変は、元のタンパク質のタンパク質分解活性(例えばアグレカナーゼ活性)に有意な影響を与えない。例えば、変種は、元のADAMTS−8タンパク質の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはこれより大きなタンパク質分解活性(例えばアグレカナーゼ活性)を保持するものでありうる。変種は、元のADAMTS−8タンパク質と比較して、増強しているタンパク質分解活性(例えば増強したアグレカナーゼ活性)を有するものでもよい。
【0041】
本発明はさらに、アグリカンまたはプロテオグリカン分子を切断するための、ADAMTS−8誘導体の使用にも関する。これらのADAMTS−8誘導体は、1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失または改変を有する改変ADAMTS−8タンパク質である。一例では、ADAMTS−8誘導体は、完全長ADAMTS−8タンパク質における補助的ドメインのかなりの部分の欠失を含んでいる。別の例では、ADAMTS−8誘導体は、スペーサードメインおよびC末端トロンボスポンジン1様リピートの、完全長ADAMTS−8タンパク質からの欠失を含んでいる。スペーサードメインおよびC末端トロンボスポンジン1様リピートの後のいかなる領域も除去される可能性がある。
【0042】
一実施形態では、本発明で用いられるADAMTS−8誘導体は、配列番号28におけるPhe588以降にあるアミノ酸残基のかなりの部分の欠失を含むものである。これに相当する配列を欠失したADAMTS−7またはADAMTS−9末端欠失体は、元の完全長タンパク質のアグレカナーゼ活性を保持することが示されている。完全長ADAMTS−8タンパク質から除去されるアミノ酸残基は、Phe588のC末端側にあるアミノ酸残基の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%を含むものでありうるが、これらに限定されない。除去されるアミノ酸残基は、システインリッチドメイン、スペーサードメイン、C末端トロンボスポンジン1様リピート、または、それ以降もしくはそれらの間に位置する任意の領域から選択することができる。除去される残基は、隣接したものでも、隣接していないものでもよい。一例では、ADAMTS−8誘導体は、配列番号28におけるアミノ酸214〜588を含むもの、またはこれらからなるものである。
【0043】
ADAMTS−8タンパク質のN末端領域にあるアミノ酸残基も改変できる。例えば、シグナル配列、プロドメイン、メタロプロテアーゼ触媒ドメイン、ジスインテグリン様ドメイン、または中央トロンボスポンジンI型リピート中の選択された特定の残基を、ADAMTS−8タンパク質のタンパク質分解活性(例えばアグレカナーゼ活性)を有意に減少させないで、除去または別の方法で改変することができる。
【0044】
ADAMTS−8タンパク質またはその機能的誘導体のN−末端またはC末端に追加のポリペプチドを融合させることもできる。これらのポリペプチドの非限定的な例には、ペプチドタグ、酵素、抗体、受容体、リガンド/受容体結合タンパク質、またはこれらの組合せが含まれる。この目的に適した抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体、非特異的抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え体抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体、接木抗体、またはin vitro生成抗体が含まれるが、これらに限定されない。抗体断片を用いることもできる。これらの抗体断片の例には、Fab、F(ab’)、Fv、Fd、またはdAbが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
ADAMTS−8タンパク質またはその誘導体にペプチドタグを付加することもできる。適当なペプチドタグには、Strep−tag(登録商標)(IBA)、ポリヒスチジンもしくはポリーヒスチジングリシンタグ、FLAGエピトープタグ、KT3エピトープペプチド、インフルエンザHAタグポリペプチド、c−mycタグ、単純ヘルペス糖タンパク質D、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質、ストレプトアビジンタグ、チューブリンエピトープペプチド、T7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ、およびグルタチオンS−トランスフェラーゼが含まれるが、これらに限定されない。これらのペプチドタグに対する抗体は、様々な販売会社から容易に入手できる。代表的な抗体には、インフルエンザHAタグポリペプチドに対する抗体12CA5と、c−mycタグに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7、および9E10抗体とが含まれる。ペプチドタグの利便性を強化するために、ペプチドタグと元のタンパク質との間にペプチドリンカーを付加することができる。
【0046】
付加されるポリペプチドと元のタンパク質との間に、タンパク質分解によって切断可能な部位を導入することができる。これらの切断可能部位は、元のタンパク質の、付加されたポリペプチドからの分離を可能にする。この目的に適した酵素には、Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
添加されるポリペプチドは、タンパク質精製、検出、固定、折りたたみ、またはターゲッティングを促進するか、あるいは他の望ましい目的に役立つように用いることができる。これらのポリペプチドは、融合タンパク質の発現、溶解性、または安定性を増強するのに用いることもできる。多くの実施形態で、付加されるポリペプチドは、融合タンパク質のタンパク質分解活性(例えばアグレカナーゼ活性)に有意な影響を与えない。
【0048】
(II.ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチド)
様々な方法を用いて、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドを調製することができる。これらのポリヌクレオチドは、DNAでも、RNAでも、発現可能な他の核酸分子でもよい。それらは、一本鎖でも、二本鎖でもよい。
【0049】
一実施形態では、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体のコード配列を調製するのに、GenBank受託番号AF060153を用いる。標準的な組換えDNA技法を用いて、GenBank受託番号AF060153のタンパク質コード配列に欠失または他の改変を導入することができる。例示的なDNA欠失/改変技術には、PCR媒介変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的「ループアウト」変異誘発、PCRオーバラップ伸長、時間制御されたエキソヌクレアーゼIII消化、メガプライマー法、逆PCR、および自動DNA合成が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
欠失ライブラリーを用いることもできる。これらの欠失ライブラリーは、N末端欠失、C末端欠失、または内部欠失ADAMTS−8タンパク質のコード配列を含有する。欠失ライブラリーを構築する例示的方法には、Puesら、NUCLEIC ACIDS RES.、25:1303−1305(1997年)に記載のものが含まれるが、これに限定されない。EZ::TN Plasmid−Based Deletion MachineおよびpWEB::TNC(商標)Deletion Cosmid Transposition Kit(Epicentre社、Madison、WI)などの市販の欠失キットも、ADAMTS−8欠失ライブラリーを作製するのに用いることができる。元のADAMTS−8タンパク質のタンパク質分解活性を保持する欠失体を選択することができる。
【0051】
本発明で用いられるポリヌクレオチドは、それらのin vivoでの安定性が増大するように改変することができる。可能な改変には、5’末端または3’末端への隣接配列の付加;バックボーンのホスホジエステラーゼ結合の代わりにホスホロチオエート結合または2−o−メチル結合を使用すること;ならびに、イノシン、ケオシン、およびワイブトシンなどの非伝統的な塩基や、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジンのアセチル修飾、メチル修飾、チオ修飾、または他の修飾型の包含が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明は、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体をコードする発現ベクターにも関する。これらの発現ベクターは、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体をコードするタンパク質コード配列に作用可能に連結した5’または3’非翻訳調節配列を含む。発現ベクターの設計は、宿主細胞の選択および望ましい発現レベルなどの因子に応じて異なる。適切な表現ベクターの非限定的な例には、細菌発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫細胞発現ベクター、および哺乳動物発現ベクターが含まれる。レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、アストロウイルス、コロナウイルス、オルソミクソウイルス、パポーバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、またはトガウイルスベクターなどのウイルスベクターも使用できる。本発明によって用いられる発現ベクターは、構成的プロモーターによって制御されるものでも、誘導性プロモーターによって制御されるものでもよい。
【0053】
本発明は、組織特異的プロモーターまたは発生調節プロモーターの使用も企図する。適切な組織特異的プロモーターの例には、軟骨特異的プロモーター、脳特異的プロモーター、肺特異的プロモーター、大動脈特異的プロモーター、虫垂特異的プロモーター、肝臓特異的プロモーター、リンパ球特異的プロモーター、膵臓特異的プロモーター、乳腺特異的プロモーター、軟骨細胞特異的プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、グリア細胞特異的プロモーターおよびT細胞特異的プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。発生調節プロモーターの例には、α胎児性タンパク質プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。組織特異的プロモーターまたは発生調節プロモーターの使用は、所定の組織または特定の発生段階における、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体の選択的発現を可能にする。
【0054】
ADAMTS−8タンパク質またはそれらの誘導体の発現には、調節可能な発現システムを用いることもできる。この目的に適したシステムには、Tet−on/offシステム、エクジソンシステム、プロゲステロンシステム、およびラパミシンシステムが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
(III.ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体の発現および精製)
ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体をコードする発現ベクターは、発現用の宿主細胞に安定的または一時的に導入することができる。発現されたタンパク質は、従来の手段を用いて宿主細胞から単離することができる。この目的に適した宿主細胞には、真核細胞(例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、または酵母)および原核細胞(例えば細菌)が含まれるが、これらに限定されない。適当な真核細胞宿主細胞の非限定的な例には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、HeLa細胞、COS細胞、293細胞、およびCV1細胞が含まれる。真核細胞宿主細胞は、通常、グリコシル化などの望ましい翻訳後修飾を、発現されるタンパク質に施す。適当な原核細胞の宿主細胞の非限定的な例には、大腸菌(E.coli)(例えば、HB101、MC1O61)、枯草菌(B.subtilis)、およびシュードモナスが含まれる。本発明で用いられる宿主細胞は、細胞系でも、初代細胞培養でも、組織培養でもよい。それらの細胞は、トランスジェニック動物またはキメラ動物体内の細胞でもよい。適当な宿主細胞、ならびに培養形質移入/形質転換、増幅、スクリーニング、産物産生、および精製方法の選択は、当技術分野における一般的な技術レベルの範囲内にある日常的実験計画の問題である。
【0056】
一実施形態では、発現されたタンパク質を培養培地中に分泌する哺乳動物宿主細胞で、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体を発現させる。アフィニティークロマトグラフィー(免疫アフィニティークロマトグラフィーを含める)、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、HPLC、タンパク質沈殿(免疫沈降反応を含める)、差次的可溶化、電気泳働、遠心法、結晶化、またはこれらの任意の組合せなどの標準的な単離/精製技法を用いて、分泌産物を単離または精製することができる。発現されたタンパク質の単離を容易にするためストレプトアビジンタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジンタグ、またはグルタチオンS−転移酵素などの精製タグを用いることができる。精製タグは、精製後に発現されたタンパク質から切断できる。精製タグは、分泌されなかったADAMTS−8タンパク質を細胞溶解液から単離または精製するのにも用いることができる。
【0057】
別の実施形態では、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの機能的誘導体が原核細胞の宿主細胞内で発現され、これらの細胞のインクルージョンボディーに濃縮される。濃縮されたタンパク質は、インクルージョンボディーから可溶化し、リフォールディングさせ、その後、上述の方法を用いて単離することができる。
【0058】
単離されたADAMTS−8タンパク質またはその誘導体は、SDS−PAGEまたはイムノブロットなどの標準的な技法を用いて分析または確認できる。単離されたタンパク質は、タンパク質シーケンシングまたは質量分析によって分析することもできる。一例では、SDS−PAGE中の対象タンパク質バンドをゲルから手操作で切り取り、その後、還元およびアルキル化し、トリプシンまたはエンドペプチダーゼLys−C(Promega社、Madison、WI)で消化する。この消化は、自動インゲル消化ロボットを用いてin situで行うことができる。消化の後、ペプチド抽出物を濃縮し、マイクロエレクトロスプレイ逆相HPLCによって分離する。ペプチド分析はFinnigan LCQイオントラップ質量分析計(ThermoQuest社、San Jose、CA)で行うことができる。MS/MSデータの自動分析は、Finnigan Bioworksデータ解析パッケージ(ThermoQuest社、San Jose、CA)に組み込まれているSEQUESTコンピュータアルゴリズムを用いて行うことができる。
【0059】
本発明は、無細胞の転写および翻訳系による、ADAMTS−8タンパク質またはそれらの誘導体の発現にも関する。適当な無細胞発現系には、麦芽抽出物、網赤血球溶解物、およびHeLa核抽出物が含まれるが、これらに限定されない。発現されたタンパク質は、上述の方法を用いて、単離または精製することができる。
【0060】
(IV.タンパク質分解活性の検出)
アグレカナーゼ活性は、蛍光ペプチドアッセイ、ネオエピトープウエスタンブロット、アグリカンELISA、または活性アッセイを用いて評価できる。これらのうち最初の2つのアッセイは、アグリカンのIGDにおけるGlu373−Ala374結合の切断能力を検出するのに適している。
【0061】
蛍光ペプチドアッセイでは、ADAMTS−8タンパク質(またはそれらの誘導体)を、アグレカナーゼ切断部位のアミノ酸配列を含有する合成ペプチドと共にインキュベートする。合成ペプチドのN末端またはC末端のいずれかを蛍光色素で標識し、もう一方の末端はクエンチャーを含有する。ペプチドの切断によって蛍光色素とクエンチャーとが分離し、それによって蛍光が誘発される。タンパク質の相対アグレカナーゼ活性を、相対蛍光を用いて決定することができる。
【0062】
ネオエピトープウエスタンブロットでは、ADAMTS−8タンパク質(またはそれらの誘導体)を、完全なアグリカンと共にインキュベートする。その後、SDS−PAGEによって分離する前に、切断産物にいくつかの生化学的処理を施す。この生化学処理には、例えば、透析、コンドロイチナーゼ処理、凍結乾燥、および再構成が含まれる。SDS−PAGE中のタンパク質試料を膜(ニトロセルロース紙など)に移し、ネオエピトープ特異的抗体で染色する。ネオエピトープ抗体は、アグリカンのタンパク質分解性切断によって曝露された新規のN末端またはC末端アミノ酸配列を特異的に認識する。この抗体は、元の分子すなわち切断されていない分子上のエピトープには結合しない。適当なネオエピトープ抗体には、MAb BC−13、MAb BC−3、およびI19C抗体が含まれるが、これらに限定されない。例えば、上記のCatersonら;および、Hashimotoら、FEBS LETTERS、494:192−195(2001年)を参照のこと。一例では、切断されたアグリカン断片を、アルカリ性ホスファターゼ結合二次抗体、ニトロブルーテトラゾリウム色素原、およびブロモクロロインドリルリン酸基質(NBT/BCIP)を用いて可視化する。バンドの相対密度が相対アグレカナーゼ活性を示す。
【0063】
アグリカン分子中のいかなる切断を検出するのにもアグリカンELISAを用いることができる。このアッセイでは、ADAMTS−8タンパク質(またはその誘導体)を、予めプラスチックウェルに固定された完全なアグリカンと共にインキュベートする。ウェルを洗浄し、その後、アグリカンを検出する抗体と共にインキュベートする。ウェルを二次抗体で発色させる。元の量のアグリカンがウェル中に残っている場合には、濃い抗体染色が得られるであろう。ADAMTS−8タンパク質(またはその誘導体)によってアグリカンが消化された場合には、付着していたアグリカン分子がウェルから離れ、それによって、後の抗体染色が減弱される。このアッセイは、ADAMTS−8タンパク質(またはその誘導体)がアグリカンを切断できるかどうか検出することができる。このアッセイを用いて、相対切断活性は測定することもできる。
【0064】
活性分析では、最初にマイクロタイタープレートをヒアルロン酸(ICN)でコーティングし、それに続いて、コンドロイチナーゼ処理されたウシアグリカンでコーティングする。コンドロイチナーゼは、例えばSeikagaku Chemicals社から入手できる。このアグリカンコーティングされたプレートに、ADAMTS−8タンパク質(またはその誘導体)を含有する培養培地を添加する。IGD中のGlu373−Ala374で切断されたアグリカンを洗い流す。残っている切断されていないアグリカンを3B3抗体(ICN)と、それに続く抗IgM−HRP二次抗体(Southern Biotechnology社)とによって検出することができる。最後の発色は、例えば、3,3”,5,5”テトラメチルベンジジン(TMB、BioFx Laboratories社)を用いて行うことができる。
【0065】
ブレビカン、ベーシカン、ニューロカン、または他のプロテオグリカンもしくは細胞外マトリックスタンパク質に対するタンパク質分解活性も、従来の手段を用いて評価することができる。例えば、Somervilleら、J.BIOL.CHEM.、278:9503−9513(2003年)(ベーシカナーゼ活性のアッセイについて記載する)を参照。これらの方法は、通常、ADAMTS−8タンパク質(またはその誘導体)をプロテオグリカン分子と接触させ、それに続いて、プロテオグリカン分子のいかなる切断も検出するものである。
【0066】
(V.ADAMTS−8の阻害物質、アンチセンスポリヌクレオチド、およびRNAi配列の開発)
本発明はADAMTS−8阻害物質の同定に関する。この目的に適したスクリーニングアッセイは、ADAMTS−8タンパク質(またはその誘導体)を、対象化合物の存在下または非存在下でプロテオグリカン基質と接触させる工程を含む。ADAMTS−8タンパク質(またはその誘導体)のタンパク質分解活性を、この化合物の存在下または非存在下で評価することによって、この化合物がタンパク質分解活性に何らかの阻害作用を有するかどうか判定する。例えば、上記のHashimotoらを参照。ADAMTS−8阻害物質の同定を容易にするために、ハイスループットスクリーニングアッセイまたは化合物ライブラリーを用いることができる。ADAMTS−8の賦活物質も同様に同定することができる。
【0067】
三次元構造分析またはコンピュータ援用薬品設計を用いて、ADAMTS−8阻害物質を同定することもできる。後者の方法は、ADAMTS−8タンパク質およびそれらのプロテオグリカン基質(例えばアグリカン)の三次元構造に基づいて、阻害物質への結合部位の決定を行うものである。ADAMTS−8上の結合部位またはその基質に対して反応する分子を選択する。その後、候補分子に何らかの阻害作用があるかどうか判定するために、それらをアッセイする。プロテアーゼ阻害物質の開発に適した他の方法も、ADAMTS−8阻害物質の同定に用いることができる。
【0068】
ADAMTS−8阻害物質は、例えば、タンパク質、ペプチド、抗体、化学化合物、または小分子でありうる。一実施形態では、本発明によって同定されるADAMTS−8阻害物質は、ADAMTS−8タンパク質のタンパク質分解活性(例えばアグレカナーゼ活性)を少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%以上阻害できるものである。別の実施形態では、本発明によって同定されるADAMTS−8阻害物質は、ADAMTS−8タンパク質のタンパク質分解活性を特異的に阻害でき、MMPなど、他の非ADAMTSプロテアーゼを阻害しないものである。さらに別の実施形態では、本発明によって同定されるADAMTS−8阻害物質は、ADAMTS−8タンパク質のタンパク質分解活性を特異的に阻害でき、他のADAMTSファミリーメンバーを阻害しないものである。「特異的に阻害する」によって、ある阻害物質が標的タンパク質の活性を低減または消失させることができるが、他のタンパク質の活性には有意な影響を与えないことを意味する。一部の例では、ADAMTS−8タンパク質に特異的な阻害物質が、他のプロテアーゼの活性を10%、5%、または1%未満阻害するものである。多の一部の例では、ADAMTS−8タンパク質に特異的な阻害物質が、他のプロテアーゼに対して検出可能な影響をもたないものである。
【0069】
本発明のADAMTS−8阻害物質は、試料中のADAMTS−8タンパク質の存在または不在を判定するか、あるいはそれを定量化するのに用いることができる。ADAMTS−8タンパク質の存在または発現レベルを疾患と相関させることによって、当業者は、疾患またはその重度を判定するための診断用生物学的マーカーとして、ADAMTS−8タンパク質を用いることができる。
【0070】
ADAMTS−8阻害物質の、診断目的での使用を意図している場合、例えば、リガンドグループ(例えば、ビオチン、または特異的な結合パートナーを有する他の分子)または検出可能なマーカーグループ(例えば、蛍光色素、発色団、放射性原子、高電子密度試薬、または酵素)で阻害物質を修飾するのが望ましい場合がある。特異的な結合パートナーを有する分子には、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジン、IgGとプロテインA、ならびに、当技術分野で知られている多数の受容体−リガンド対が含まれるが、これらに限定されない。ADAMTS−8阻害物質に結合した酵素マーカーは、それらの酵素活性によって検出することができる。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼは、テトラメチルベンジジン(TMB)を、分光光度計で定量化可能な青色色素に変換する能力によって検出することができる。
【0071】
本発明は、ADAMTS−8配列に対してアンチセンスであるポリヌクレオチドにも関する。アンチセンスポリヌクレオチドは、ADAMTS−8タンパク質をコードするセンスポリヌクレオチドと水素結合を形成することができる。アンチセンスポリヌクレオチドは、ADAMTS−8配列のコード領域または非コード領域に相補的なものでありうる。アンチセンスポリヌクレオチドは、ADAMTS−8転写産物の鎖全体に相補的なものでも、その一部分のみに相補的なものでもよい。アンチセンスポリヌクレオチドは、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド残基またはそれより多くのヌクレオチド残基を含むものでありうる。
【0072】
アンチセンスポリヌクレオチドを調製するのに、当技術分野で知られているいかなる方法を用いてもよい。一実施形態では、天然存在のヌクレオチドを用いてアンチセンスポリヌクレオチドを化学的に合成する。別の実施形態では、分子の生物学的安定性、またはアンチセンスとセンスポリヌクレオチドとの間で形成される二本鎖分子の物理的安定性を増大させるために、修飾ヌクレオチドを用いてアンチセンスポリヌクレオチドを合成する。修飾ヌクレオチドの例には、ホスホロチオエート誘導体、アクリジン置換ヌクレオチド、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデン4エキシン(isopentenyladen4exine)、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンが含まれるが、これらに限定されない。アンチセンスポリヌクレオチドは、天然存在のヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドの両方を用いて調製することもできる。
【0073】
さらに別の実施形態では、発現ベクターを用いて生物学的にアンチセンスポリヌクレオチドを産生する。これらの発現ベクターは、そこから転写されたRNAが標的ポリヌクレオチドに対してアンチセンス方向のものとなるような方向にポリヌクレオチドをコードする。
【0074】
別の実施形態では、アンチセンス分子がα−アノマーポリヌクレオチド分子である。α−アノマーポリヌクレオチド分子は、相補的なRNAと特異的な二本鎖ハイブリットを形成することができ、その中では、通常のβ−ユニットとは逆に、鎖が相互に対して平行に走行している。さらに別の実施形態では、アンチセンス分子が2’−o−メチルリボヌクレオチドまたはキメラRNA−DNA類似体を含んでいる。
【0075】
さらに別の実施形態では、アンチセンス分子がリボザイムである。リボザイムは、それらが相補的な領域を有する一本鎖ポリヌクレオチド(例えばmRNA)を切断できる触媒RNA分子である。当技術分野で知られている様々な方法を用いて、ADAMTS−8 RNAに特異的なリボザイムを設計または選択することができる。
【0076】
さらに別の実施形態では、アンチセンス分子は、ADAMTS−8遺伝子の調節領域と三重らせん構造を形成することができ、それによって、ADAMTS−8遺伝子の転写が阻止される。
【0077】
アンチセンスポリヌクレオチドは、通常、医薬組成物中で、あるいはin situで発現ベクターから産生されて対象に投与される。一例では、アンチセンスポリヌクレオチドを組織部位(例えば関節軟骨)に直接注射する。別の例では、アンチセンスポリヌクレオチドを全身投与する。全身投与用には、最初に、それらが選択された細胞の表面に発現された受容体または抗原に特異的に結合できるように、アンチセンス分子を修飾することができる。アンチセンス分子をコードする発現ベクターは、任意の従来の手段で組織部位に投与することができる。アンチセンス分子の細胞内濃度が十分なものにするため、発現ベクターでは、pol IIまたはpol IIIプロモーターなどの強力なプロモーターを用いることができる。直接投与またはベクター産生されたアンチセンス分子は、細胞のmRNAまたはゲノムDNAにハイブリッド形成または結合でき、それによって、ADAMTS−8タンパク質の翻訳または転写を阻害する。
【0078】
本発明は、ADAMTS−8タンパク質の発現を阻害するための、RNA干渉(「RNAi」)の使用をさらに企図する。RNAiは、mRNAレベルでの遺伝子サイレンシング機構を提供する。本発明のRNAi配列は、いかなる望ましい長さを有するものでもよい。多くの場合、このRNAi配列は、連続した少なくとも10、15、20、25ヌクレオチド、またはそれより多くのヌクレオチドを有する。標的mRNA転写産物を分解する機能的なサイレンシング複合体を形成できるならば、RNAi配列は、dsRNAでも、他のタイプのポリヌクレオチドでもよい。
【0079】
一実施形態では、本発明のRNAi配列は、siRNA(short interfering RNA)を含むか、あるいはこれからなる。多くの適用で、siRNAは約19〜25ヌクレオチドを有するdsRNAである。siRNAは、RNアーゼIIIに関連した核酸分解酵素であるDicerによって、より長いdsRNA分子が分解されることによって内因的に産生されることがある。siRNAは、細胞内に外因的に導入することも、発現ベクターから転写させることもできる。siRNAが産生されたならば、それはタンパク質成分と集合して、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)として知られている、エンドリボヌクレアーゼを含有する複合体を形成する。活性のRISCは、相補的なmRNA転写物を切断し、破壊する。この配列特異的mRNA分解の結果として、遺伝子サイレンシングがもたらされる。
【0080】
siRNA媒介の遺伝子サイレンシングを実現するために、少なくとも2通りの方法を用いることができる。第1の方法では、siRNAsをin vitro合成し、その後、それを細胞内に導入して遺伝子発現を一時的に阻害する。合成siRNAは、RNAiを実現する簡単かつ効率的な方法を提供する。多くの実施形態で、siRNAは、左右対称のジヌクレオチド3’オーバーハング(例えば、UUまたはdTdT 3’オーバーハング)を有する約19〜23ヌクレオチドを含有する混合短鎖オリゴヌクレオチドの二本鎖分子である。これらのsiRNAは、DNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)を活性化させずに、哺乳動物細胞で標的の遺伝子翻訳を特異的に阻害することができる。PKRの活性化は、多数のタンパク質の翻訳の非特異的な阻害を引き起こすことが報告されている。
【0081】
第2の方法では、siRNAをベクターから発現させる。このアプローチは、トランスジェニック動物または細胞で、siRNAを安定的または一時的に発現させるのに用いることができる。一実施形態では、siRNA転写がポリメラーゼIII(pol III)転写ユニットから起こるようにsiRNA発現ベクターを構築する。多くの場合、Pol III転写ユニットは、2bpオーバーハング(例えばUU)の、ヘアピンsiRNAへの付加−siRNA機能に有用な性質−を導く、短いATリッチな転写終結部位を用いる。Pol III発現ベクターは、siRNAsを発現するトランスジェニック動物の作製にも使用できる。加えて、選択された細胞または組織でsiRNAを発現するのに組織特異的プロモーターを用いることもできる。組織特異的なノックアウト動物を作製するのにも、同様なアプローチを用いることができる。別の実施形態では、長い二本鎖RNA(dsRNA)を最初にベクターから発現させる。長いdsRNAは、その後、DicerによってsiRNAにプロセシングされて、遺伝子特異的なサイレンシングを生み出す。
【0082】
siRNA設計には、多数の3’ジヌクレオチドオーバーハング(例えばUU)が使用可能である。一部の場合では、一本鎖のG残基でsiRNAがRNアーゼによって切断される危険を低下させるために、オーバーハング中でのG残基の使用を回避する。
【0083】
一実施形態では、本発明のsiRNAのGC含量が約30〜50%である。別の実施形態では、RNA pol IIIプロモーターから発現されるsiRNAを設計する際に、標的配列中でTまたはAが4塩基を超えて連続して伸長するのを避ける。さらに別の実施形態では、標的mRNA配列が強度に構造化されたり、調節タンパク質が結合したりしないようにsiRNAを選択する。さらに別の実施形態では、仮想的標的部位を適切なゲノムデータベースと比較し、他のコード配列に対して、連続した16〜17塩基対を超える相同性を有する標的配列を考慮から外すことができる。
【0084】
さらに別の実施形態では、短いスペーサー配列によって分離された2つの逆向き反復配列を有するように、そして、転写終結部位として働くひと続きのTが終端となるようにsiRNAを設計する。この設計では、短鎖ヘアピンsiRNAに折りたたまれることが予測されるRNA転写物が産生される。望ましい結果を実現するために、siRNA標的配列の選択、推定上のヘアピンのステムをコードする逆向き反復配列の長さ、逆向き反復配列の順序、ヘアピンのループをコードするスペーサー配列の長さおよび組成、ならびに5’オーバーハングの有無を変化させることができる。
【0085】
別の実施形態では、標的センス鎖と、それに続く、短いスペーサー、標的アンチセンス鎖、および転写ターミネーターとして働く5〜6塩基のTとを含有するように、ヘアピンsiRNA発現カセットを構築する。siRNA発現コンストラクト中のセンス鎖およびアンチセンス鎖の順序は、ヘアピンsiRNAの遺伝子サイレンシング活性に影響を与えずに変えることができる。しかし、場合によっては、順序を逆転させることによって、遺伝子サイレンシング活性の部分的低下が起こることがある。
【0086】
さらに別の実施形態では、siRNA発現カセットのステムとして使用されるヌクレオチド配列の長さが約19〜29の範囲にある。ループのサイズは、3〜23ヌクレオチドの範囲でありうる。他のステム長またはループサイズも使用できる。
【0087】
siRNA標的の選択には、様々な方法が利用可能である。一例では、AAジヌクレオチドを求めてmRNA配列をスキャンし、AAのすぐ下流にある19ヌクレオチドを記録することによって、siRNA標的を選択する。別の例では、標的配列はGGで始まり、BLAST検索によって分析した際に他の遺伝子と有意の配列相同性を共有しないという条件の下に、siRNA標的配列の選択を純粋に経験的に決定する。さらに別の例では、内因性mRNA中のアクセス可能な部位が、合成オリゴデオキシリボヌクレオチド/RNアーゼH法による分解の標的となりうるという観察に基づいて、siRNA標的配列の選択を行う(Leeら、Nature Biotechnology、20:500−505(2002年))。
【0088】
一実施形態では、RNAiの標的配列は、ADAMTS−8コード配列に基づいて選択された21量体配列断片である。各標的配列の5’末端は、ジヌクレオチド「NA」を含み、配列中「N」は任意の塩基でよく、「A」はアデニンを表す。残りの19量体配列は、35%から55%の間のGC含量を有する。加えて、残りの19量体配列は、4塩基連続したAまたはT(すなわち、AAAAまたはTTTT)、3塩基連続したGまたはC(すなわち、GGGまたはCCC)または7つ一列の「GC」を含有しない。
【0089】
RNAi標的配列設計には、追加の規準も含めることができる。例えば、残りの19量体配列のGC含量を45%から55%までの間に限定することができる。さらに、3塩基連続した同一の塩基(すなわち、GGG、CCC、TTT、またはAAA)、または5塩基以上のパリンドローム配列を有するいかなる19量体配列も除外することができる。さらに、残りの19量体配列は、他の遺伝子に対して低い配列相同性を有するように選択することができる。一例では、仮想的標的配列を、BLASTNによって、NCBIのヒトUniGeneクラスター配列データベースに対して検索する。ヒトUniGeneデータベースは、遺伝子指向クラスターの重複のないセットを含有している。各UniGeneクラスターは特有の遺伝子を表す配列を含んでいる。BLASTN検索によって他のヒト遺伝子にヒットしない19量体配列を選択することができる。検索中には、e値を最も厳密な値(「1」など)に設定することができる。
【0090】
多数の方法を用いて、本発明のsiRNA配列の有効性を評価することができる。例えば、ADAMTS−8を発現する細胞に、本発明のsiRNA配列を導入することができる。細胞内のADAMTS−8ポリペプチドまたはmRNAのレベルを検出することができる。siRNA配列を導入した後に、ADAMTS−8の発現レベルが低下すれば、それは、導入されたsiRNA配列が、RNA干渉を誘導するのに効果的であることを示す。
【0091】
他の遺伝子の発現レベルも、siRNA配列を導入した前後にモニターすることができる。ADAMTS−8遺伝子の発現に対して阻害作用を有するが、他の遺伝子にはもたないsiRNA配列を選択することができる。加えて、ADAMTS−8遺伝子を阻害するために、様々なsiRNA配列を同一の細胞に導入することができる。
【0092】
(VI.疾患治療)
本発明は、プロテアーゼ関連の疾患を処理するための、ADAMTS−8調節因子の使用に関する。ADAMTS−8調節因子には、ADAMTS−8抗体、ADAMTS−8阻害物質、ADAMTS−8アンチセンスまたはRNAi配列、およびADAMTS−8アンチセンスまたはRNAi配列をコードまたは含有するベクターが含まれるが、これらに限定されない。本発明で治療可能なプロテアーゼ関連の疾患には、癌、炎症性関節病、変形性関節炎、慢性関節リウマチ、敗血症性関節炎、歯周疾患、角膜潰瘍形成、蛋白尿、アテローム硬化斑裂創に由来する冠動脈血栓、動脈瘤性大動脈疾患、炎症性腸疾患、クローン病、肺気腫、成人型呼吸窮促迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、脳および造血器悪性腫瘍、骨粗鬆症、パーキンソン病、片頭痛、うつ病、末梢ニューロパシー、ハンチントン病、多発性硬化症、眼血管新生、黄斑変性症、大動脈瘤性心筋梗塞、自己免疫異常、外傷性関節損傷に続く変形性軟骨減失、頭部外傷、ジストロフィー型表皮水疱症、脊髄損傷、急性および慢性神経変性疾患、骨減少症、顎関節病、神経の脱髄性疾患、臓器移植の毒性および拒絶反応、悪液質、過敏症、組織潰瘍形成、再狭窄、ならびに、細胞外マトリックスタンパク質またはプロテオグリカン分子の異常な分解を特徴とする他の疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
治療には、治療上の処置、および予防または防止上の処置の両方が含まれうる。治療を必要とするものには、特定の医学的障害を既に有する個体、および最終的に障害を得る可能性のある個体が含まれる。多くの例で、望ましい治療は、疾患の臨床的症状を予防するため、あるいは寛解させるために、ADAMTS−8のタンパク質分解活性または遺伝子発現を調節するものである。ADAMTS−8調節因子は、例えば、ADAMTS−8とそのプロテオグリカン基質との相互作用を阻止すること、ADAMTS−8の触活性を低減または消失させること、あるいは、ADAMTS−8遺伝子の転写または翻訳を低減または消失させることによって機能しうる。
【0094】
一実施形態では、ADAMTS−8調節因子(例えば、抗体か阻害剤類)を医薬組成物中に入れてヒトまたは動物に投与する。医薬組成物は、通常、薬学的に許容される担体と、治療有効量のADAMTS−8調節因子とを含む。薬学的に許容される担体の例には、薬事規制に適合した溶媒、溶解補助剤、充填剤、安定化剤、結合剤、吸収剤、塩基、緩衝剤、潤滑剤、徐放性媒体、希釈剤、乳化剤、湿潤剤、潤滑剤、分散媒、剤皮、抗菌薬または抗真菌薬、等張剤、吸収遅延剤および同様のものが含まれる。薬学的作用物質用の担体および薬剤の使用は当技術分野で周知のものである。補助薬も組成物中に組み入れることができる。
【0095】
本発明の医薬組成物は、意図されている投与経路に適合するように処方することができる。投与経路の例には、非経口、静脈内、皮内、皮下、経口、吸入、経皮、直腸、経粘膜、局所、および全身投与が含まれる。一例では、インプラントを用いることによって投与を行う。
【0096】
一実施形態では、非経口、皮内、または、皮下適用に使用される溶液または懸濁液が、以下の成分、すなわち、水、塩性水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラオキシ安息香酸エステルなどの抗菌薬;アスコルビン酸または硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸などの緩衝剤;および、塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの張度調節剤を含有する。医薬組成物のpHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整できる。一例では、非経口製剤を、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、または多用量バイアルに封入する。
【0097】
本発明の医薬組成物は、その中に含まれるADAMTS−8調節因子が、標的ADAMTS−8活性または発現を低減または消失させるのに十分な量となるようにして、患者または動物に投与することができる。ADAMTS−8抗体または阻害物質の適切な治療用量は、5mgから100mgまで、15mgから85mgまで、30mgから70mgまで、または40mgから60mgまでの範囲でありうるが、これらに限定されない。5mg未満または100mg超の用量も使用できる。ADAMTS−8抗体または阻害物質の投与は、単回投与で行うことも、複数回投与で行うこともできる。投与は、1日1回、毎週1回、毎月1回の間隔で行うことができるが、これらに限定されない。ADAMTS−8抗体または阻害物質を投与する投与計画は、例えば、標的に対する抗体/阻害物質の親和性、抗体/阻害物質の半減期、および患者の状態の重篤度に基づいて調整することができる。一実施形態では、抗体または阻害物質の循環レベルを最大にするために、大量瞬時投与で投与する。別の実施形態では、大量瞬時投与の後に、持続注入を用いる。
【0098】
細胞培養または実験動物モデルにおける標準的な薬学的手順によって、ADAMTS−8調節因子の毒性および治療効率を測定することができる。例えば、LD50(集団の50%に対して致命的である用量)およびED50(集団の50%に対して治療上有効である用量)を測定することができる。毒性効果をもつ用量と、治療効果をもつ用量との比が治療係数であり、LD50/ED50という比率として計算できる。一例では、大きな治療係数を示す調節因子を選択する。
【0099】
細胞培養アッセイまたは動物実験から得られたデータは、ヒトで使用するための用量の範囲を処方するのに使用できる。多くの場合、そのような化合物または調節因子の用量は、毒性をまったく伴わないか、あるいはほとんど伴わず、その循環濃度がED50を示す範囲内にある。用量は、使用する剤形および投与経路によって、この範囲内で変化してもよい。本発明に従って使用されるいかなる調節因子の治療有効量も、最初に、細胞培養アッセイまたは動物モデルから推算することができる。一実施形態では、動物モデルにおいて、細胞培養アッセイで決定されたIC50(すなわち、症候の阻害が最大限度の半分に達する試験阻害物質の濃度)を示す血漿中循環濃度の範囲になるように、用量を処方することができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定できる。いかなる特定の用量の影響も、適当なバイオアッセイによってモニターすることができる。バイオアッセイの例には、DNA複製アッセイ、転写ベースのアッセイ、GDFタンパク質/受容体結合アッセイ、クレアチンキナーゼアッセイ、前脂肪細胞の分化に基づいたアッセイ、脂肪細胞のグルコース摂取に基づいたアッセイ、および免疫学的アッセイが含まれる。
【0100】
症状の部位、疾患の重度、患者の年齢、性別、および食餌、任意の炎症の重度、投与時間、ならびに他の臨床因子などの様々な因子に基づいて、主治医が、本発明の医薬組成物を投与する投与計画を決定することができる。特定の実施形態では、全身投与または注射投与を、最小限度に効果的な用量で開始し、予め選択されたタイムコースで、明白な効果が観測されるまで、用量を増大させるであろう。次に、生じうるいかなる有害事象にも配慮しながら、用量を徐々に増大させるであろう。これによって、対応する効果の増大を生み出すレベルに限定する。最終組成物への、他の既知因子の添加も、用量に影響を与えうる。
【0101】
本発明は、アグリカンまたは他のプロテオグリカンの異常蓄積によって引き起こされるか、あるいはそれらに関連した疾患の治療も企図する。一実施形態では、この治療は、そのような疾患を患うヒトまたは動物に、ADAMTS−8タンパク質またはその機能的誘導体を含む医薬組成物を投与することを含む。別の実施形態では、プロテオグリカンの異常蓄積を修正するのに、ベクターベースの治療を用いる。これらの治療は、通常、ADAMTS−8タンパク質またはその機能的誘導体をコードする発現ベクターまたは遺伝子デリバリーベクターを、それらを必要とするヒトまたは動物に導入することを含む。
【0102】
上述の実施形態および下記の実施例は、限定ではなく、例示を目的としていることを理解するべきである。本明細書の説明から、本発明の範囲内にある様々な変更および改変が当業者には明らかであろう。
(実施例1)
【0103】
(系統樹の作成)
系統樹を作成するために、以下のヒトADAMTSファミリーメンバータンパク質を収集した。すなわち、ADAMTS−1/AB037767、ADAMTS−2/AJ003125(系統樹に使用した配列と比較して、公表されている配列は以下の変化を有していた:W643C、P1001L、およびS1089C)、ADAMTS−3/AF247668、ADAMTS−4/AF148213、ADAMTS−5/AF142099、ADAMTS−6/米国特許出願公開第20020120113号の「配列番号2」、ADAMTS−7/AF140675、ADAMTS−8/AF060153(系統樹に使用した配列と比較して、公表されている配列は以下の変化を有していた:L11P、F13L、L21P、P23Δ、L24Δ、およびL129Q、ここで、Δは欠失を意味する)、ADAMTS−9/AF261918(系統樹に使用した配列と比較して、公表されている配列は以下の変化を有していた:G46SおよびS96T)、ADAMTS−10/国際公開第WO02/60942号の「配列番号9」(系統樹に使用した配列と比較して、公表されている配列は以下の変化を有していた:V267I)、ADAMTS−12/AJ250725、ADAMTS−13/AJ305314、ADAMTS−14/AF358666(系統樹に使用した配列と比較して、公表されている配列は以下の変化を有していた:L937M)、ADAMTS−15/AJ315733、ADAMTS−16/国際公開第WO02/31163号の「配列番号4」、ADAMTS−17/AJ315735(系統樹に使用した配列と比較して、公表されている配列は以下の変化を有していた:アミノ酸配列713ALKD716がアミノ酸配列713GYIEAAVIPAGARRIRVVEDKPAHSFLALKD743(配列番号1)で置換されていた)、ADAMTS−18/AJ311903、ADAMTS−19/AJ311904、およびADAMTS−20/国際公開第WO01/83782号の「配列番号57」である。19のタンパク質配列ファイルを単一の多配列FASTAファイルにつなぎ合わせ、CLUSTALW1.81(例えば、www.ebi.ac.ukのウェブサイトを参照)の入力として使用し、IRIX64上で動作させた。CLUSTALWはデフォルト設定で動作させた。この結果得られた.dndツリーファイルをTREEVIEW1.6.6(Page、COMPUT.APPL.BIOSCI.、12:357−358(1996年);および、taxonomy.zoology.gla.ac.uk/rod/treeview.htmlのウェブサイト)の入力として使用して、系統樹を生成した。
【0104】
ADAMTSファミリーメンバーの系統樹を図1に示す。この系統樹は、配列の関連性に基づいてタンパク質を分類している。プログラムによって一緒に分類されたADAMTSファミリーメンバーを、特徴付けされているADAMTSファミリーメンバーの既知な機能情報と比較した。例えば、ADAMTS−2、3、および14は、プロコラーゲンプロセシング酵素であると予測される。これらのファミリーメンバーは、相互の配列相同性が最も類似しており、系統樹上で独特のクラスターを形成する。別の事例では、ADAMTS−13における変異が、vWFプロセシングの欠損を引き起こし、その結果、血栓性血小板減少性紫斑症となることが示された。このファミリーメンバーは、系統樹上でそれ自体のみからなるノードを形成する。加えて、ADAMTS−1、4、5および9は、アグリカンを異なった効率で切断することが示された。配列相同性の分析によって、これらのアグリカン分解性ADAMTSすべてと、ADAMTS−8、15、および20を含有するクラスターの存在が実証された。これは、ADAMTS−8もアグリカン切断活性を有する可能性があることを示唆する。次に、ADAMTS−8がアグリカンを切断する能力を有するかどうか決定するために、ADAMTS−8をクローニングし、発現させ、精製した。
【0105】
これまで、少なくとも19のADAMTSファミリーメンバーが同定されている。これらのADAMTSタンパク質のうち、機能が特定されているのは半分未満であり、少なくとも10メンバーが、機能が未知のまま残っている。ファミリーメンバー相互の配列類似性に基づいた系統樹(図1)の構築によって、類似の機能を有する(例えば、実証済みのアグリカン分解活性またはプロコラーゲンプロセシング活性)ADAMTSファミリーメンバーが一緒に分類されたことが観察された。これは、系統樹における推定上の「アグリカン分解性」ノードの他のメンバーが有意なアグレカナーゼ活性を有するかもしれないこと、そして、ADAMTS−4またはADAMTS−5よりも大きな、変形性関節炎との疾患関連性を示しうることを示唆した。以下の実施例で実証されるように、「アグリカン分解性」ノードの別のメンバーであるADAMTS−8は、変形性関節炎に関連したGlu373−Ala374結合で、アグリカンを切断することができ、したがって、このタンパク質では、配列相同性によって予測された構造/機能関連性が妥当している。
(実施例2)
【0106】
(ADAMTS−8発現ベクターの構築)
ADAMTS−8のDNA配列は、上記のVazquezらによってGenBankに寄託されている(受託番号AF060153)。遺伝子を単離するため、ADAMTS−8のオープンリーディングフレームにまたがる4セットのオリゴヌクレオチドプライマー対を設計した。
【0107】
第1のプライマー対には、ATGTTCCCCGCCCCCGCCGCCCCCCGGTG(配列番号2)、およびGGATCCCCCGAGGCGCTCGATCTTGAACT(配列番号3)が含まれる。第2のプライマー対には、GGATCCGGCCGGGCGACCGGGGGC(配列番号4)、およびCTCTAGAAGCTCTGTGAGATACATGGCGCT(配列番号5)が含まれる。第3のプライマー対には、CTCTAGACGGCGGGCACGGAGACTGTCTCCTGGATGCCCCTGGTGCGGCCCTGCCCCTCCCCACA(配列番号6)、およびACGTGTATTTGACTTTTGGGGGGAAGACCTCGCCAGGGACTGTCAGGAGCTGCACTGTCAGAGGCTC(配列番号7)が含まれる。第4のプライマー対には、CACACGTTCTTTGTTCCTAATGACGTGGACTTTAG(配列番号8)、およびGCGGCCGCTCACAGGGGGCACAGCTGGCTTTC(配列番号9)が含まれる。
【0108】
製造会社の指示に従ってClontech社販売のGCキットを使用し、成体肺cDNAライブラリー上でPCR増幅を行った。PCR産物の増幅は、Perkin Elmer 9600で行った。50μlのPCR反応液を、1分間のプレインキュベーション工程で95℃まで加熱し、その直後に、95℃でのインキュベーション15秒と、それに続く68℃でのインキュベーション2分間からなるサイクルを25サイクル行った。この結果得られたPCR産物を精製し、適当な制限酵素(それぞれEcoR I/BamH I、BamH I/Xba I、Xba I/Afl III、Afl III/Not I)で消化し、CHO発現ベクターpHTop(pEDの誘導体)中に併せて連結した。PCRインサートは、DNAシーケンシングによって確認した。
【0109】
ADAMTS−8発現コンストラクトを、Strep−tag(登録商標)配列(IBA社)の付加によって修飾した。このタグは、5アミノ酸のリンカー(GSGSA(配列番号10))をコードする3’伸長と、それに続く、8アミノ酸のStrep−tag(WSHPQFEK(配列番号11))をコードする追加配列とを有するPCRプライマーを用いて付加した。これらの13アミノ酸を、ADAMTS−8オープンリーディングフレームの最終アミノ酸へのC末端翻訳融合物として付加した。このPCRプライマー対は、順方向プライマーであるCTTCTAGACGGCGGGCACGGAGAC(配列番号12)、および逆方向プライマーであるTTCTAGAGCGGCCGCCTTATTTTTCGAACTGCGGGTGGCTCCAAGCAGATCCGGATCCCAGGGGGCATAGCTGGCTTTCGCA(配列番号13)からなっていた。PCR産物の増幅は、Perkin Elmer 9600で行った。DNAポリメラーゼとしてPfu Turbo Hotstart(Stratagene社)を使用し、反応条件は製造会社の指示に従った。最初に、PCR反応物を94℃まで2分間加熱し、それに続いて、94℃で15秒/70℃で2分間のサイクルを25サイクル行った。最終サイクルの後に、PCR反応物を72℃に5分間維持した。PCR産物を精製し、適当な制限酵素(Bgl II/Not I)で消化し、適切なADAMTS−8断片を共にpHTop発現ベクター中に連結させた。
【0110】
AF060153をクローニングされた配列と比較した際に、数アミノ酸の変異が同定された。観察された変化は、シグナルペプチドとプロドメインとに限定されていた。ADAMTS−8単離体のシグナル配列における変異のうち2つは、GenBankデータベース配列登録(受託番号AAB74946)にも見出された。ADAMTS−8単離体で観察された、対立遺伝子変異によるものと特定できなかった変化(例えば、F13およびF14の欠失、ならびにL129Q)によって、25アミノ酸のシグナルペプチドと、プロドメイン中の単一アミノ酸変化とが生じた。これらの変化は、それらの位置のおかげで、成熟タンパク質の発現にも、活性にも影響を与えなかった。それらは、発現コンストラクト中にそのまま変えずに残した。このタンパク質の成熟部分の予測タンパク質配列は、AF060153と同一であった。
(実施例3)
【0111】
(ADAMTS−8発現用のCHO細胞系の確立)
ADAMTS−8を発現する安定細胞系を確立するのに、CHO/A2細胞を用いた。CHO/A2細胞系は、TetレプレッサーとヘルペスウイルスのVP16転写ドメインとからなる融合タンパク質である転写活性化因子tTAの安定した組み込みによって、CHO DUKX B11から得た。ADAMTS−8/pHTop発現ベクターは、ADAMTS−8配列の上流に6つのtetオペレーターリピートを含有している。pHTop中のTetオペレータにtTAが結合することによって、下流遺伝子の転写が活性化される。ジヒドロ葉酸リダクターゼをコードする遺伝子も、pHTop発現ベクター中に含有されており、それによって、メトトレキセート耐性による安定形質変換体の選択が可能となっている。製造会社が推奨するリポフェクション(InVitrogen社製のリポフェクチン)用プロトコールを用いて、pHTop/ADAMTS−8 DNAでCHO/A2細胞に形質移入することによって、細胞外ADAMTS−8を発現するCHO細胞系を確立した。クローンは0.02μMメトトレキサート中で選択した。CHO培養上清中のADAMTS−8抗原をモニターすることによって、ADAMTS−8タンパク質を最も高いレベルで発現している細胞系を選択した。ADAMTS−8抗原のモニターは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)(Southern Biotech社)に結合した抗Strep−tag抗体を用いたウエスタンブロットと、それに続く、ECL化学発光(Amersham Biosciences社)およびオートラジオグラフィーとによって行った。
(実施例4)
【0112】
(ADAMTS−8の精製)
ADAMTS−8を発現する安定CHO細胞系の培養上清(300ml)を収集し、10kDa MWCO(分子量カットオフ)フィルターを装着したstir cell(Amicon社)を用いた限外濾過によって、3倍に(10ml)濃縮した。いかなる混入ビオチンも除去するために、Sigma社のビーズ状架橋6%アガロース(1ml)に固定されたアビジンを、濃縮された培養上清と4℃で1時間混合した。これに続く遠心分離によって上清を回収し、1mlのStrep−Tactinカラム(IBA社)中に添加した。1mlアリコートの緩衝液W(100mMトリス、pH8.0、150mM NaCl)でカラムを5回洗浄し、2.5mMデスチオビオチン(Sigma社)を含有する緩衝剤Wで、結合していたタンパク質を、ラムから溶出させた。濃縮培養上清、カラムフロースルー、洗浄液、および溶出分画のアリコートを、10% SDS−PAGEゲル分析(図2A)と、それに続く、抗Strep−Tag IIポリクローナル抗血清(IBA社)およびオートラジオグラフィーによるECL検出を用いたウエスタン分析(図2B)とによって分析した。
【0113】
図2Aは、CHO培養上清から得たADAMTS−8タンパク質のStrep−tag精製によって得られたタンパク質画分の10%SDS−PAGEを図示する。このSDS−PAGEはクーマシーブリリアントブルーで染色した。レーン1はCHO細胞培養上清を示す。レーン2は、限外濾過で得られたフロースルー画分(濾過液)を示す。レーン3は、濃縮された限外濾過残留画分である。レーン4は、Strep−Tactinカラムのフロースルー画分を表す。レーン5〜9は、Strep−Tactinカラムの洗浄画分である。レーン10〜15は、Strep−Tactinカラムの溶出画分を示す。
【0114】
図2Bは、図2AのSDS−PAGEの対応するウエスタンブロットを示す。このウエスタン分析では、抗Strep−Tag IIポリクローナル抗血清(IBA社)を用いた。
【0115】
Strep−tagを含有する、プロセシングされていないADAMTS−8およびフューリンでプロセシングされたADAMTS−8の予測分子量は、グリコシル化による移動度の変化を考慮しない場合、それぞれ95kDaおよび75kDaである。精製の主要産物は、SDS−PAGE上で、見かけの分子量110kDaおよび95kDaで移動し(図2A、レーン12)、ウエスタンブロット上でStrep−tag抗体に結合した(図2B、レーン12)2本のバンドであった。CHO/A2細胞で、可溶性のPACE(フューリンすなわち対塩基性アミノ酸切断酵素(paired basic amino acid cleaving enzyme))をADAMTS−8発現コンストラクトと同時発現させたところ、110kDaのプロADAMTS−8バンドが消失し、それに伴って、95kDaバンドの量が増大した。これは、110kDaバンドが分泌されたプロADAMTS−8を表すものであったことを示唆する。成熟ADAMTS−8タンパク質には、5箇所の推定N−結合型グリコシル化部位があり、これらは、成熟ADAMTS−8の見かけの分子量が、予測されている75kDaから、観測された95kDaに増加していることを説明するものである。精製タンパク質画分のウエスタン分析は、完全長タンパク質の優勢を示し、分子量の低下した免疫反応性バンドは小さな部分でしかなかった(図2Bのレーン12)。これらの少量産物は、成熟ADAMTS−8タンパク質の分解または自己触媒の結果でありうる。プロADAMTS−8およびプロセシングされた成熟ADAMTS−8を両方とも含有する溶出画分を、これに続く活性分析に用いた。
【0116】
この例では、完全長ADAMTS−8cDNAにカルボキシ末端Strep−tagをコードする配列を追加して、CHO細胞で発現させた。タンパク質は効率的に発現され、培養上清中に分泌された。完全長タンパク質は、培養上清中に蓄積され、さらに小さい産物にはタンパク分解されなかった。この観察は、カルボキシ末端タグが保持されていることによって支持された。カルボキシ末端タグの保持は、抗Strep−tag抗体を用いたウエスタンブロットによって判定されそれらに、これらのタンパク質の大部分がStrep−Tactin樹脂に結合できることによって確認された。対照的に、比較に用いられた組換え体ADAMTS−4は、C末端側ドメイン内の部位で自発的にタンパク分解され、それによって、スペーサードメインをもたない末端切除分子を産生した。E362Q活性部位変異によって触媒活性が破壊されている改変型ADAMTS4は、この自発的のC末端切除を示さなかった(Flanneryら、J.BIO.CHEM.、277:42775−42780(2002年))ので、ADAMTS−4の末端切除は、自己タンパク質分解イベントのようである。加えて、組換え体ADAMTS−5(アグレカナーゼ−2)は、そのC末端を自己切断することができる。組換え体ADAMTS−12も、特徴的な2次C末端タンパク質分解を示す(Calら、J.BIOL.CHEM.、276:17932−17940(2001年))。但し、出版された報告からは、これが自己タンパク質分解イベントであるのか、あるいは他のプロテアーゼによって媒介されたものであるのか明らかでない。さらに、報告によれば、293T細胞におけるADAMTS−1の発現によって、このタンパク質の3つの型、すなわち、プロADAMTS−1を表すp110型、完全長成熟ADAMTS−1と推定されているp87型、および、スペーサードメイン内でC末端切除された成熟ADAMTS−1を構成するp65型が生じる(Rodrigues−Manzanequeら、J.BIOL.CHEM.、275:33471−33479(2000年))。ADAMTS−4での観察と一致して、ADAMTS−1の活性部位突然変異体はC末端切除を行わなかった。これは、自己タンパク質分解機構がC末端ドメイン除去の原因であることを示唆する。
【0117】
これらのデータに基づくと、この例で単離された組換え体ADAMTS−8のほとんどがC末端ドメインを保持し、自己タンパク質分解も、別のプロテアーゼによる切断もされていないようであったことは、驚くべきことであった。この組換え体ADAMTS−8タンパク質のタンパク質分解活性は、α−2マクログロブリン結合アッセイを用いて確認した。したがって、ADAMTS−8のカルボキシ末端トロンボスポンジンドメインおよびスペーサードメインは、それ自身の触媒活性または他のプロセシング酵素による2次プロセシングに対して類になく強い抵抗性を有し、それ故に、安定した完全長ADAMTSタンパク質の触媒効率を評価する独特の機会を提供する。
(実施例5)
【0118】
(関節軟骨からのRNAの分離)
非骨関節炎のヒト関節軟骨は、Clinomics社(Pittsfield、MA)から入手し、骨関節炎のヒト関節軟骨は、New England Baptist病院(Boston、MA)から入手した。試料は、収集時に液体窒素中で瞬間冷凍し、−80℃で保存した。RNAの単離には、液体窒素下、15HzのSpex Certiprep冷凍製粉機(6750型)で、1グラムの冷凍関節軟骨を細かく2回粉砕した(各1分間、それぞれの粉砕の間に2分間の冷却工程を置いた)。その後、McKennaら、ANAL.BIOCHEM.、286:80−85(2000年)の方法に従い、以下の改変を用いて、RNAを単離した。粉砕された軟骨を、2.5μlの2−メルカプトエタノール(2−ME)を含有する4M氷冷グアニジウムイソチオシアン酸塩(GITC、Gibco−BRL社)4mLに懸濁した。直ちに、最高速度のPolytronホモジナイザー(Kinematica AG社)を用いて、氷上で、1分間、懸濁液をホモジナイズした。ホモジナイズされた軟骨溶解物を1500×g、4℃で10分間遠心し、上清を保存し、この結果得られたペレットは、もう一度再び、前と同様に4mlのGITC/2−ME中で均質化ホモジナイズし、再度、1500×g、4℃で10分間遠心した。各ホモジネートから得られた上清画分を併せ、プールした上清画分に25%トリトンX100(Sigma社販売の100%原液を無RNアーゼdH0で25%に希釈した)0.65mlを添加した。氷上で15分間インキュベートした後、無RNアーゼの3M NaOAc緩衝液pH5.5(Ambion社)8mlを添加し、この溶液を氷上でさらに15分間インキュベートした。その後、酸性フェノール:クロロホルム5:1、pH4.5(Ambion)15mlを用い、激しく1分間混合し、氷上で15分間インキュベートし、15000×g、4℃で20分間遠心分離することによって、ホモジネートの抽出を行った。その後、水相を回収し、上述の同じ手順を用いて、酸性フェノール:クロロホルムで再抽出した。2回目の酸性フェノール:クロロホルム抽出で得られた水相に、フェノール:クロロホルム:IAA25:24:1、pH6.7/8.0(Ambion社)15mlで3回目の抽出を行った。すなわち、激しく1分間混合し、氷上で15分間インキュベートし、15000×g、4℃で、20分間遠心した。水相を回収し、100% 2−プロパノール0.8容量を添加した。溶液を混合し、氷上で5分間インキュベートし、15000×g、4℃で、30分間遠心した。この結果得られた上清をデカンテーションによって慎重に除去し、緩衝液RLT+2−ME(Qiagen社、RNeasyキット)0.9mlにペレットを再懸濁した。その後、この工程以降、完了まで、上記のMcKennaらによって記載されたプロトコールに従った。
(実施例6)
【0119】
(ADAMTS−8の生体内分布)
ヒト多組織発現アレイ(MTE、Clontech社)mRNAドットブロットを393bpのADAMTS−8断片でプロービングした。このADAMTS−8断片は、ADAMTS−8配列(GenBank受託番号AF060153)の塩基対2463から塩基対2070までに相当するBglII/HindIII消化断片であった。この断片は、ジスインテグリンドメインの一部と、中央TSP1型モチーフの一部を含有している。この断片の配列をクエリーとして用いて、NCBIの基礎的局所アラインメント検索ツール、バージョン2(NCBI−BlastN)を用いたGenBankの検索を行った。BlastN検索は、データベースの他のヒト転写産物と、ADAMTS−8プローブ配列との間にいかなる有意の相同性も見出さなかった。これは、このプローブ断片が、MTEハイブリダイゼーション条件下で、他のヒト転写産物と交差反応しないであろうことを示唆する。
【0120】
ADAMTS−8プローブ断片を精製し、Amersham Pharmacia Biotech社のReady−To−Go DNA Labelling Beads(−dCTP)を製造業者の指示に従って使用して放射性標識した。Nickカラム(Amersham Pharmacia Biotech社)を製造業者の指示に従って使用して、プライマーおよび取りこまれなかった放射性ヌクレオチドから、放射性標識された断片を精製し、その後、MTEのプロービングに用いた。MTEのハイブリダイゼーションおよびそれに続く洗浄の条件は、放射性標識されたcDNAプローブ用に、製造会社が提唱する条件に従った(Clontech MTE Array User Manual)。
【0121】
図3Aは、76の様々なヒト組織からのmRNAを用いたMTEハイブリダイゼーション分析の結果を示す。様々な組織からのmRNAの配置を示す符号を図3Bに示す。空白の欄は、それらの座標にmRNAがスポットされなかったことを示す。MTEハイブリダイゼーション分析は、ADAMTS−8の生体内分布が、アグリカン分解性のADAMTS−1およびADAMTS−4転写産物よりも狭く、総合的な転写産物存在量が少ないことを示す。ADAMTS−1およびADAMTS−4転写産物は、広い生体内分布を有する。最も高いレベルのADAMTS−8発現を示した組織の1つは、成体肺(図3、A行8列)であり、それより低レベルの発現が胎児肺(図3、G行11列)で見出された。成体心臓(図3、列4)での発現は検出可能であったが、高い発現レベルを示した大動脈(図3、B行4列)を除けば低レベルであった。胎性心臓(図3、B行11列)は、中程度の転写産物存在量を示した。また、脳、虫垂、および膀胱の様々な小区分で、中程度から低レベルの発現が見られた(例えば、G5、A1〜G1、C3〜H3、およびB3)。様々な癌細胞系(図3、10列)が、低レベルまたは検出不能なレベルの発現を示した。
(実施例7)
【0122】
(リアルタイムPCR)
TaqMan(Applied Biosystems社)を用いた定量的リアルタイムPCRを行うことによって、ヒト関節軟骨における組織発現を明らかにした。Applied Biosystems社のPrimer Expressプログラムを用いて、以下のADAMTS−8プライマーおよびプローブ、すなわち、5PプライマーGGACCGCTGCAAGTTGTTCT(配列番号14)、3PプライマーGGACACAGATGGCCAGTGTT(配列番号15)、およびプローブCCATCAATCACCTTGGCCTCGAACA(配列番号16)を設計した。ADAMTS−8用のプローブは、エキソン/イントロン境界とオーバーラップしており、ゲノムDNAにはハイブリッド形成できないようにした。GAPDHへのプライマーおよびプローブを設計した。それらは以下の通り、すなわち、5PプライマーCCACATCGCTCAGACACCAT(配列番号17)、3PプライマーGCGCCCAATACGACCAAA(配列番号18)、およびプローブGGGAAGGTGAAGGTCGGAGTCAACG(配列番号19)であった。TaqManプローブ(Wyeth Research Core Technologies Group社よって合成された)は、5P−レポーター色素6−FAMおよび3P−クエンチャーTAMRAを含有していた。
【0123】
変形性関節炎を患っていない患者(無疾患)の膝関節、ならびに、変形性関節炎を患っている患者の膝関節における、中程度の病変領域、および重度の病変領域から関節軟骨RNAは単離した。精製された関節軟骨RNAをcDNAに変換し、その後、以下のプロトコールに従ってリアルタイムPCRを行い、mRNAを逆転写した後に、無疾患の第1cDNA鎖、および骨関節炎の関節軟骨の第1cDNA鎖のTaqMan分析を行った。ファージTプロモーター部位と24塩基のポリTテール(GGCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGGCGGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号20))とを含有するプライマー200pmolと共に全RNA(5μg)を70℃で10分間インキュベートした。その後、10単位/μlのSuperscript II(Invitrogen社)を使用し、20μlの反応混合物中、50℃で1時間、RNAの逆転写を行った。反応混合物は、0.25μg/μlの全RNA、10pmol/μl T24プライマー、1×1st Strand緩衝液(Invitrogen社)、10mM DTT(Invitrogen社)、0.5mM dNTPs(Invitrogen社)、および1単位/μl SUPERase−In(Ambion社)を含有していた。第1鎖の合成に続いて、第2鎖の合成を行った。反応混合物の最終容量を150μlにした。この反応物は、第1鎖混合物と、以下の試薬(最終濃度)−すなわち、1×2nd Strand緩衝液(Invitrogen社)、0.2mM dNTPs(Invitrogen社)、0.067単位/μl大腸菌(E.coli)DNAリガーゼ(New England Biolabs社)、0.27単位/μl DNAポリメラーゼI(Invitrogen社)、および0.013単位/μl RNアーゼH(Invitrogen社)とを含有していた。第2鎖合成反応物を16℃で2時間インキュベートした。インキュベーションにおける最後の5分間に、最終濃度0.067単位/μlのT4DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)を添加した。インキュベーションの後、反応物のEDTA濃度を16.67mMにし、結果として得られたcDNAを、PerSeptive Biosystems社のBioMag Carboxyl Terminatedビーズを用いて精製した。第2鎖反応混合物を、10%PEG−8000/1.25M NaClにし、これをBioMagビーズ(予め0.5M EDTAで洗浄しておく)10μlに添加した。cDNAと、洗浄済みのBioMagビーズを混合し、室温で10分間インキュベートした。GibcoBRL社のMagna−Sep磁石の補助を用い、300μlの70%エタノールで2回このビーズを洗浄した。最後の洗浄の後、ビーズを室温で2分間空気乾燥させた。10mMトリス酢酸(pH7.8)を用いて、精製されたcDNAをビーズから溶出させた。溶出液を希釈したアリコートの280nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定することによって、溶出されたcDNAを定量化した。100ngの関節軟骨cDNAを使用し、デュプリケートで、ADAMTS−8プローブ/プライマーセットの各TaqMan PCR反応を行った。GAPDHプローブ/プライマーセット(Applied Biosystems社)を用いて、組織間の発現レベルを正規化した。反応成分は、Applied Biosystems社のTaqMan Universal PCR Master Mixから、製造会社の指示に従って調製され、プライマーの最終濃度は900nmol/μl、プローブの最終濃度は250nmol/μlであった。反応物を50℃で2分間、その後、95℃で10分間インキュベートし、その後、95℃で15秒間および60℃で1分間のサイクルを40サイクル行った。最終サイクルの後に、反応物を25℃で2分間維持した。
【0124】
図4は、無疾患の軟骨および骨関節炎(OA)の軟骨のヒト臨床標本における、リアルタイムPCRで測定されたADAMTS−8mRNA発現レベルのヒストグラムを示す。試料W−04からW−13は、OAを患っていない(「無疾患」)膝関節軟骨を表す。試料77M〜96Mは、視覚的に現れていない後期段階OA関節軟骨(「軽度OA」)の領域を表す。試料88S〜98Sは、重度に影響が現れている後期段階OA関節軟骨(「重度OA」)の領域を表す。各試料のADAMTS−8mRNA存在量は、ADAMTS−8に関して測定された平均データを、GAPDHに関して同一試料で測定された平均データ割ることによって、正規化された値として示されている。TaqMan分析の結果は、少なくともこの研究で用いられた後期のOA軟骨では、骨関節炎の軟骨と比較して、無疾患の軟骨の平均転写産物レベルに有意差がなかったことを示した。しかし、OA軟骨試料96Mでは、ADAMTS−8の発現レベルが有意に高かった。この観測は、軟骨組織におけるADAMTS−8発現が高くなっている選択された患者を治療する、個人化されたアプローチを支持するものである。
(実施例8)
【0125】
(モノクローナル抗体AGG−C1(MAb AGG−C1)の産生)
合成ペプチドCGGPLPRNITEGE(ペプチドaggc1、配列番号21)を担体タンパク質であるKLHに結合させ、この結合体を、標準的なハイブリドーマ技術によるモノクローナル抗体産生用の免疫原として用いた。簡潔には、完全フロイントアジュバント中の免疫原20μgをBALB/cマウスに皮下注射して免疫処置を行った。不完全フロインドアジュバント中のペプチドを用いて、注射を(隔週で)2回反復した。免疫処置されたマウスで、試験採血し、免疫処置に用いたペプチドと、ADAMTS−4消化されたウシ関節軟骨アグリカンとの両方に対する血清の反応性をELISAによって評価した(Flanneryら、同上)。ハイブリドーマ融合の3日前に、最も高い抗体価を示すマウスに、アジュバントを用いない最終免疫処置を施した。このマウスの脾細胞を単離して、FO骨髄腫細胞(ATCC(American Type Culture Collection)、Manassas、VA)に融合させ、HAT選択培地(Sigma−Aldrich社、St.Louis、MO)中で培養した。ハイブリドーマ培養上清を、ELISAによってKLH−CGGPLPRNITEGE抗原に対して、そして、ウエスタンブロットによってADAMTS−4消化されたアグリカンに対してスクリーニングした。限界希釈によって、陽性ハイブリドーマクローンをサブクローニング用に選択した。AGG−C1と命名された単一ハイブリドーマ細胞系を培養で増殖させた。Mouse Monoclonal Antibody Isotypingキット(Roche社、Indianapolis、IN)を用いて、抗体アイソタイプがIgG1(κ軽鎖)であると決定し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって、1リットルの培地からIgGを精製した。
(実施例9)
【0126】
(競合阻害ELISAアッセイ)
MAb AGG−C1が適切なアグリカンネオエピトープを特異的に認識したことを実証するために競合阻害ELISA実験を行った。ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレート(Pierce社Rockford、IL)を、N末端でビオチン化されたペプチドaggc1(b−aggc1)を用い、各ウェルをb−aggc1(100ng/ml)100μlと共に室温で1時間インキュベートすることによってコーティングした。0.01%トゥイーン−20を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS−トゥイーン)で4回洗浄した後、ウェルのブロッキングを、室温で1時間、2%BSAを含有するPBS−トゥイーン100μlで行い、それに続いて、4回洗浄した。
【0127】
MAb AGG−C1のネオエピトープ特性を評価するため、MAb AGG−C1(0.04μg/ml)、ならびに、合成ペプチドであるGGLPLPRNITEGE(配列番号22)1.0〜1000nmol/mlGGLPLPRNITEGEARGSVILTVK−CONH2(配列番号23)、および消化されていないアグリカンまたはADAMTS−4消化されたアグリカンからなる競合混合物(100μl)を室温で1時間プレインキュベートした。その後、混合物をb−aggc1コーティングされたウェルに移した。室温でさらに1時間インキュベートした後、PBS−トゥイーンでプレートを4回洗浄し、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス2次IgG(1:10000)100μlと共に室温で1時間インキュベートした。最後にPBS−トゥイーンで4回洗浄した後、マイクロウェルペルオキシダーゼ基質のTMB1成分(BioFX Laboratories社、Owings Mills、MD)と共に、ウェルをインキュベートした。0.18M H2SO4を添加することによって発色を終止させ、450nmにおける吸光度を分光光度計でモニターした。
【0128】
検量線を作成するために、ADAMTS−4(0.001ng〜5ng)を用いて、ウシアグリカン(50μl中に25μg)を37℃で16時間消化させた。その後、各消化物にMAb AGG−C1(最終抗体濃度0.04μg/ml)を添加し、これらの混合物を、室温で1時間プレインキュベートし、その後、これをb−aggc1でコーティングされたプレートに移し、ELISAを完了させた。
【0129】
図5は、MAb AGG−C1を用いた競合阻害ELISAの結果を示す。用量依存的な競合が、合成ペプチドGGLPLPRNITEGE(配列番号22、このペプチドのC末端はアグリカンコアタンパク質のE373に対応する)、およびADAMTS4消化されたアグリカンで観測された(それぞれ黒塗りの四角および黒塗りの円)。合成ペプチドGGPLPRNITEGEARGSVILTVK(配列番号23)および消化されていないアグリカンは、このアッセイで競合しなかった(それぞれ、中空の四角および中空の円)。
【0130】
図7は、アグレカナーゼ活性の別の競合阻害ELISAを示す。検量線は、様々な量の組換え体ADAMTS−4と共にウシアグリカンを37℃で16時間インキュベートし、それに続いて、各消化物にモノクローナル抗体AGG−C1を添加することによって作成した。類似のアッセイが、ADAMTS−8の相対アグレカナーゼ活性を見積もるために行われた。ADAMTS−4の0.0135pMが拮抗阻害ELISAにおける45%の阻害を生成しなければならなかったところでは、ADAMTS−8の46.6±4.8pMは類似の活動水準に達しなければならなかった。
(実施例10)
【0131】
(ADAMTS−8消化およびADAMTS−4消化されたアグリカンのウエスタンブロッティング)
変形性関節炎に関連したアグレカナーゼ活性を定義する、アグレカナーゼ切断部位(Glu373−Ala374)でアグリカンを切断するADAMTS−8の能力を、2つの異なったモノクローナル抗体、すなわち、MAb BC−3およびMAb AGG−C1を用いて実証した。MAb BC−3は、ネオエピトープN末端配列374ARGXX...(配列番号24)を特異的に検出する。MAb AGG−C1は、ネオエピトープC末端配列...NITEGE373(配列番号25)を特異的に検出する。両方のネオエピトープとも、アグリカンの球間ドメイン内におけるGlu373−Ala374ペプチド結合のアグレカナーゼ切断によって生成される。
【0132】
図6A〜6Cは、MAb BC−3およびMAb AGG−C1を用いた、ADAMTS−4消化およびADAMTS−8消化されたアグリカンのウエスタンブロット分析の結果を示す。図6Aは、MAb BC−3を用いたウエスタンブロットを示す。レーン1では、酵素が添加されていない。レーン2は、酵素:基質モル比1:20でADAMTS−4消化されたアグリカンを示す。レーン3〜7は、それぞれ、酵素:基質モル比1:2、1:0.5、1:0.2、1:0.1、および1:0.07でADAMTS−8消化されたアグリカンを示す。MAb BC−3免疫反応性のバンドの強度は、アグリカン基質に対するADAMTS−8タンパク質の量が増加するのに伴って増大した(図6A、レーン3〜7)。これは、アグリカン切断がOAに関連した位置で起きたことを示す。しかし、基質に相対して必要な酵素の量は、ADAMTS4を用いた場合よりも多かった(図6Aのレーン3〜7をレーン2と比較する)。
【0133】
図6Bは、AGG−C1を用いたウエスタンブロットである。各消化における酵素:基質相対モル比は示されている通りである。1:1から1:0.3までの範囲の酵素:基質比を用いたMAb AGG−C1免疫反応性のバンドを図6Bに示した。同じアッセイで、ADAMTS4も、MAb AGG−C1免疫反応性のバンドを産生するが、それはずっと低い酵素:基質比のものであった(図6C、レーン2〜6)。球状タンパク質標準物質の移動位置を各ブロットの左側に示す。
【0134】
陰性対照として、最大2.5μgまでのrhMMP−13で消化されたアグリカン(25μg)のウエスタンブロットを行ったところ、免疫反応性ペプチドが産生されなかった。これは、アグリカンのMMP切断で生成されるネオエピトープ配列...DIPEN341(配列番号26)をMAb AGG−C1が認識しないことを実証するものである。さらに、ADAMTS−8で用いたのと同程度の酵素:基質比でMMP−13消化されたアグリカンは、MAb−BC14とは免疫反応性であったが、MAb BC−3によっては認識されなかった。MAb−BC14は、MMPによって産生されるネオエピトープ配列342FFG...(配列番号27)を認識し、MAb BC−3は、アグレカナーゼによって産生されるネオエピトープ配列373ARGXX...(配列番号24)を認識する。
【0135】
ウエスタンブロット分析の詳細な手順を以下に示す。100mM NaClおよび5mM CaClを含有している50mMトリス、pH7.3中で、精製されたADAMTS−8またはADAMTS−4と共に、ウシ関節性軟骨アグリカンを37℃で16時間インキュベートした。コンドロイチナーゼABC(Seikagaku America社、Falmouth、MA;1mU/μgアグリカン)ケラタナーゼ(Seikagaku社;1mU/μgアグリカン)およびケラタナーゼII(Seikagaku社;0.02mU/μgアグリカン)の存在下、37℃で2時間インキュベートすることによって、消化産物を脱グリコシル化した。消化産物を4〜12%ビス−トリスNuPAGE SDS PAGEゲル(Invitrogen社、Carlsbad、CA)で分離し、その後、電気泳動によってニトロセルロースに移した。MAb AGG−C1(0.04μg/ml)またはMAb BC−3(Catersonら、同上)ウエスタンブロット法によって免疫反応性の産物を検出した。続いて、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウス2次IgG(Promega社、Madison、WI、1:7500)を膜と共にインキュベートし、免疫反応性のバンドをNBT/BCIP基質(Promega社)を用いて可視化した。すべての抗体インキュベーションを、室温で1時間行った。イムノブロットは、最適な発色を実現するために、基質と共に室温で5〜15分インキュベートした。
【0136】
報告によれば、ADAMTS4(アグレカナーゼ1)およびADAMTS5(アグレカナーゼ2)の他に、他の2つのADAMTSファミリーメンバー(ADAMTS1およびADAMTS9)も軟骨アグリカンを、このタンパク質内のどこかで切断することができる。そして、これらは両方とも系統樹上で、アグレカナーゼ1、アグレカナーゼ2、およびADAMTS−8と同じノードに分類されている。図6A〜6Cは、アグレカナーゼとしてのADAMTS−8の活性の効率が、これらの他のADAMTSファミリーメンバーのものに匹敵していることを示す。加えて、組換え体ヒトADAMTS−8で消化されたアグリカンのBC−3ウエスタンブロット(C末端アグリカン切断断片の産生をモニターする)およびAGG−C1ウエスタンブロット(N末端切断断片の産生をモニターする)は、ADAMTS−8処理によって適切なネオエピトープが産生されることを示し、産生された両方のアグリカン断片は元の状態のままで、さらに分解されていないようであり、アグリカンにおけるG1−G2球間ドメイン内での特異的切断を示しているので、ADAMTS−8アグレカナーゼ活性は、Glu373−Ala374部位に特異的なようである。
【0137】
図6A〜6Cは、ADAMTS−8によるウシ関節性の軟骨アグリカンの切断が酵素:基質比1:0.5で起こることも、BC−3ネオエピトープMAbを用いて実証している。そして、おそらくは、さらに低い比率でも、AGG−C1ネオエピトープMAbを用いて容易に検出される可能性がある。アグリカンのGlu373−Ala374ペプチド結合を切断するこの効率は、ADAMTS−1およびADAMTS−9で報告されているアグレカナーゼ活性に勝るとも劣らないものである。
【0138】
同じウエスタンブロット上で、アグリカンのADAMTS−8切断をADAMTS−4と比較することによって、試験条件下では、Glu373−Ala374ペプチド結合で軟骨アグリカンを切断するADAMTS−8の効率が、ADAMTS4より低いようであると判明した。ADAMTS4のカルボキシ末端タンパク質分解性プロセシングは、触媒ドメインから推定上のC末端ECM結合ドメインを除去し、細胞外マトリックス中に存在するGAGに対する親和性を低下させることによって、そのタンパク質分解活性を活性化し、また、酵素を可動化する役割を果たしているかもしれないと示唆されている。したがって、C末端側ドメインの永続的な存在によってADAMTS−8酵素活性が阻害されており、C末端切除されたADAMTS−8が高いアグレカナーゼ活性を示す可能性も存在している。この問題に取り組むため、C末端トロンボスポンジンドメインおよびスペーサードメインのコード配列が欠失している改変されたADAMTS−8 cDNAを構築し、発現させた。このC末端切除された組換え体ADAMTS−8は、効率的に発現され、分泌された。そして、精製されたタンパク質は、α2−マクログロブリンアッセイによって、活性であると判定されたが、アグリカン基質では、完全長の組換え体ADAMTS−8ほど活性でないようであると、AGG−C1ウエスタンブロット法によって判定された。しかし、in vivoで軟骨アグリカンを切断するには、C末端のGAG結合ドメインをADAMTS−8が保持する能力は、軟骨マトリックスへの酵素の局在を維持し、それによって酵素の実効濃度を増大させることによって、ADAMTS−8をより効率的にしているようである。ADAMTS−8mRNAが正常なヒト関節軟骨および骨関節炎のヒト関節軟骨の両方で存在する(図4)ことは、ADAMTS−8がin vivoでアグレカナーゼとして機能している可能性をさらに支持するものである。
【0139】
ニューロカン、ブレビカン、またはベーシカンなどの他の関連したヒアルロナン結合プロテオグリカンがADAMTS−8によって、より効率的に切断される可能性もある。ADAMTS−8mRNAは、脳の様々な小区分で容易に検出可能である。これは、ニューロカンおよびブレビカンの発現パターンと一致している。マウスADAMTS−8は、最初、血管新生アッセイで阻害性であることを示した2つのADAMTSファミリーメンバー(もう一方はADAMTS−1であった)の1つであるMeth2として記載された(Vazquezら、同上)。ADAMTS−8mRNAが発現されている数少ない部位であり、かつ最も豊富な部位の1つが大動脈であり、これはベーシカンが豊富な組織である。ベーシカンは、細胞接着、増殖、および移動で様々な役割を果たしている重要な血管細胞外マトリックスタンパク質である。したがって、ADAMTS−8がベーシカナーゼ(versicanase)として内皮で機能し、もしかしたら、ベーシカンをG1ドメインの後で切断し、それをマトリックスから放出するのかもしれないという推測は魅力的なものである。増殖中の内皮細胞からの、そのようなADAMTS8媒介性の、ベーシカンの減失は、観測されたADAMTS−8の抗血管新生活性を説明するものでありうる。この可能性は、Glu441−Ala442結合で切断された大動脈ベーシカン断片がin vivoで見出されるという観察によって支持されている。これは、発明者らが本研究で示すADAMTS−8の切断特異性と対応するものである。ベーシカナーゼ活性は、ADAMTS−1およびADAMTS−4で既に示されており、それによって、ADAMTS−8が何らかのレベルの効率および特異性でベーシカンを切断できるかもしれないという可能性がさらに大きくなっている。
(実施例11)
【0140】
(発現ベクター)
本発明で哺乳動物発現ベクターpMT2 CXMを用いることができる。pMT2 CXMベクターは、p91023(b)の誘導体であるが、前者は、テトラサイクリン耐性遺伝子の代わりにアンピシリン耐性遺伝子を含有し、さらに、cDNAクローンを挿入するためのXho I部位を含有しているという点で、pMT2 CXMベクターはp91023(b)と異なっている。pMT2 CXMの機能エレメントには、アデノウイルスVA遺伝子、SV40の複製起点(72bpのエンハンサーを含む)、アデノウイルス主要後期プロモーター(アデノウイルスの後期mRNAに存在する5’スプライス部位およびアデノウイルストリパータイトリーダー配列の大部分を含む)、3’スプライシング受容部位、DHFR挿入配列、SV40初期ポリアデニル化部位(SV40)、および大腸菌中での増殖に必要なpBR322配列が含まれている。
【0141】
プラスミドpMT2 CXMは、pMT2−VWFのEcoR I消化によって得た。pMT2−VWFは、American Type Culture Collection(ATCC)(Rockville、MD(米国))に、受託番号ATCC67122として寄託されている。EcoR I消化によって、pMT2−VWF中に存在するcDNA挿入配列が切除され、直鎖型のpMT2が生成する。これを連結して、大腸菌HB101またはDH−5をアンピシリン耐性に形質転換するのに用いることができる。プラスミドpMT2DNAは、従来の方法で調製することができる。次に、ループアウト/イン変異誘発を用いて、pMT2 CXMを構築する。これは、SV40の複製起点およびpMT2のエンハンサー配列近傍のHind III部位との比較における塩基1075から1145までを除去する。加えて、これによって、制限エンドヌクレアーゼXho Iの認識部位を含有する配列が挿入される。pMT23と名付けられたpMT2CXMの誘導体は、制限エンドヌクレアーゼPst I、EcoR I、Sal I、およびXho Iの認識部位を含有している。プラスミドpMT2 CXMおよびpMT23DNAは、従来の方法によって調製できる。
【0142】
pMT21に由来するpEMC2β1も、本発明の実施に適したものでありうる。pMT21はpMT2に由来し、pMT2はpMT2−VWFに由来する。上述の通り、EcoR I消化によって、pMT−VWF中に存在するcDNA挿入配列が切除され、直鎖型のpMT2が生成する。これを連結して、大腸菌HR101またはDH−5をアンピシリン耐性に形質転換するのに用いることができる。プラスミドpMT2DNAは、従来の方法で調製することができる。
【0143】
pMT21は、以下の2つの改変を通してpMT2から得られた。第1に、cDNAクローンのG/Cテーリングからの19残基のGストレッチを含む、DHFR cDNAの76bpの5’非翻訳領域が除去されている。この過程で、DHFRのすぐ上流に、Pst I、EcoR I、およびXho I部位が挿入される。
【0144】
第2に、EcoR VおよびXba Iで消化し、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片で処理し、Cla Iリンカー(CATCGATG)に連結することによって、ユニークなCla I部位を導入する。これによって、アデノウイルス関連RNA(VAI)領域から、250bpのセグメントが除去されるが、VAI RNA遺伝子の発現も、機能も妨げられない。pMT21は、EcoR IおよびXho Iで消化されて、ベクターpEMC2B1を派生させるのに使用される。
【0145】
EcoR IおよびPst Iで消化し、2752bpの断片を得ることによって、pMT2−ECAT1からEMCVリーダー配列の一部を得る。この断片をTaq Iで消化すると、508bpのEcoR I−Taq I断片が生成する。これを、低融点アガロースゲル上の電気泳働によって精製する。5’のTaq I突出末端と、3’のXho I突出末端とを有する、68bpのアダプターとその相補鎖とを合成する。
【0146】
このアダプター配列は、ヌクレオチド763から827までのEMCウイルスリーダー配列と一致する。これは、EMCウイルスリーダー配列中の位置10にあったATGをATTに変え、その後にはXho I部位が位置する。pMT21 EcoR I−Xho I断片と、EMCウイルスEcoR I−Taq I断片と、68bpオリゴヌクレオチドアダプターであるTaq I−Xho Iアダプターとの3者間連結によって、ベクターpEMC2β1が得られる。
【0147】
このベクターは、SV40の複製開始点およびエンハンサー、アデノウイルス主要後期プロモーター、アデノウイルストリパータイトリーダー配列の大部分のcDNAコピー、小さなハイブリッド介在配列、SV40ポリアデニル化シグナルおよびアデノウイルスVAI遺伝子、DHFRならびにβ−ラクタマーゼマーカーおよびEMC配列を、哺乳動物細胞で所望のcDNAの高レベル発現を導くのに適した相関関係で含有する。
【0148】
ベクターの構築で、アグレカナーゼ関連DNA配列の改変を行うこともある。例えば、コード領域の5’末端側および3’末端側に非コードヌクレオチドを除去することによって、アグレカナーゼをコードするcDNAを改変することができる。除去された非コードヌクレオチドを、発現に有益であることが知られている他の配列で置換してもよく、また、置換しなくてもよい。これらのベクターは、本発明のアグレカナーゼを発現させるために、適切な宿主細胞の中に導入する。
【0149】
一例では、アグレカナーゼのコード配列に隣接する哺乳動物調節配列を除去するか、細菌配列で置換して、アグレカナーゼ分子の細胞内発現または細胞外発現に用いる細菌ベクターを作製する。コード配列をさらに操作することもできる(例えば、他の既知なリンカーに連結するか、非コード配列をそれから除去することによって改変するか、他の既知な技法によってその中のヌクレオチドを改変する)。その後、当業者によって理解されている手順を用いて、アグレカナーゼをコードする配列を、既知な細菌ベクター中に挿入することができる。この細菌ベクターを、本発明のアグレカナーゼを発現させるための細菌宿主細胞の中に導入することができる。細菌細胞で、アグレカナーゼタンパク質の細胞外の発現を生み出す戦略については、例えば、欧州特許出願第177343号を参照のこと。
【0150】
昆虫細胞での発現に用いる昆虫ベクターを構築するために、同様な操作を行うことができる(例えば、欧州特許出願公開第155476号に記載の手順を参照)。酵母細胞における、本発明のタンパク質の細胞内発現または細胞外発現用の酵母調節配列を用いて、酵母ベクターを構築することもできる(例えば、国際公開第WO86/00639号、および欧州特許出願第123289号に記載の手順を参照)。
【0151】
哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫宿主細胞系で高レベルのアグレカナーゼタンパク質を産生する方法では、多コピーの異種アグレカナーゼ遺伝子を含有する細胞の構築を行うこともある。異種遺伝子は、増幅可能なマーカー、例えばジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)遺伝子に連結することができる。増大したコピー数のDHFR遺伝子を含有している細胞は、メトトレキサート(MTX)濃度を増大させて細胞を増殖させることによって選択することができる。このアプローチは、多数の異なった細胞型で利用することができる。
【0152】
例えば、その発現を可能にする他のプラスミド配列と適切に作用する関係にあるアグレカナーゼのDNA配列を含有するプラスミドと、DHFR発現プラスミド(pAdA26SV(A)3など)とを、カルシウムリン酸媒介形質移入、エレクトロポレーション、またはプロトプラスト融合法を含めた様々な方法によって、DHFR欠失CHO細胞(DUKX−BII)に同時導入することができる。DHFRを発現する形質転換体を、透析されたウシ胎児血清を含むアルファ培地中で選択し、それに続いて、上昇中のMTX濃度(例えば、0.02、0.2、1.0、および5μM MTXの逐次工程)で成長させることによって増幅されるものを選択する。形質転換体をクローン化し、上述したアッセイの少なくとも1つによって、生物学的に活性なアグレカナーゼの発現をモニターする。MTX耐性のレベルが増大するのに従って、アグレカナーゼタンパク質の発現レベルも増大するはずである。35Sメチオニンまたはシステインを用いたパルス標識およびポリアクリルアミドゲル電気泳動など、当技術分野で知られている標準的な技法を用いて、アグレカナーゼポリペプチドの特徴付けを行う。同様な手順に従って、他のアグレカナーゼを産生することもできる。
(実施例12)
【0153】
(発現ベクターによる形質移入)
一例として、本発明のアグレカナーゼヌクレオチド配列を、発現ベクターpED6にクローニングする。アグレカナーゼ配列を用い、リポフェクション(LF2000、Invitrogen社)によってCOS細胞およびCHO DUKX B11細胞に一時的に形質移入する(+/−別々のPED6プラスミド中にあるPACEで同時形質移入)。対象の分子それぞれについて、デュプリケートで形質移入を行う。(a)一方の形質移入セットは、活性アッセイ用の培養上清を採取するためのものであり、(b)もう一方の形質移入セットは、35−S−メチオニン/システイン代謝標識を行うためのものである。
【0154】
1日目に、セット(a)のウェルの培地を、DME培地(COS)またはアルファ培地(CHO)プラス1%熱不活性化ウシ胎児血清+/−100μg/mlヘパリンに変える。これらの培地は、活性アッセイ用に採取される。48時間後に、活性アッセイ用の培養上清を採取する。
【0155】
3日目に、セット(b)のデュプリケートウェルを、MEM(無メチオニン/無システイン)培地プラス1%熱不活性化ウシ胎児血清、100μg/mlヘパリン、および100μCi/ml 35Sメチオニン/システイン(Redivue Pro混合物、Amersham社)に変える。37℃で6時間インキュベートした後、培養上清を採取し、還元条件下、SDS−PAGEゲル上で分離する。タンパク質はオートラジオグラフィーによって可視化できる。
【0156】
以上の本発明の説明は、例示および説明を提供するが、網羅的であることが意図されたものでも、本発明を、厳密に開示したものに限定するものでもない。上記教示と一致した修正および変形が可能であり、あるいは、本発明の実施からそれらが得られることもある。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等物によって定義されることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】ADAMTSファミリーメンバーの系統樹を示す図である。
【図2】ADAMTS−8タンパク質精製のSDS−PAGEおよびウエスタンブロットを示す図である。
【図3】ヒトADAMTS−8遺伝子プローブでプロービングした、mRNA多組織発現アレイを示す図である。
【図4】無疾患の軟骨および骨関節炎(OA)の軟骨のヒト臨床標本における、リアルタイムPCRで測定されたADAMTS−8mRNA発現レベルのヒストグラムである。
【図5】モノクローナル抗体AGG−C1を用いた競合阻害ELISAの結果を示す図である。
【図6】モノクローナル抗体BC−3およびAGG−C1を用いた、ADAMTS−4消化およびADAMTS−8消化されたウシアグリカンのウエスタンブロットを示す図である。
【図7】アグレカナーゼ活性の競合阻害ELISAの結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテオグリカンを切断する方法であって、該プロテオグリカンと、該プロテオグリカンを切断する単離されたADAMTS−8タンパク質とを接触させることを含む、方法。
【請求項2】
プロテオグリカンがアグリカン分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ADAMTS−8タンパク質が成熟ADAMTS−8タンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
成熟ADAMTS−8タンパク質がGenBank受託番号AF060153によってコードされているが、シグナルペプチドおよびプロドメインを欠失している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
成熟ADAMTS−8タンパク質が配列番号28におけるアミノ酸214〜890を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
プロテオグリカンを単離されたプロテアーゼと接触させて該プロテオグリカンを切断することを含むプロテオグリカンの切断方法であって、該プロテアーゼがADAMTS−8メタロプロテアーゼ触媒ドメインを含む、方法。
【請求項7】
プロテオグリカンがアグリカン分子である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ADAMTS−8メタロプロテアーゼ触媒ドメインが配列番号28におけるアミノ酸214〜439からなる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
プロテアーゼが配列番号28におけるアミノ酸214〜588を含む、請求項6、7、または8に記載の方法。
【請求項10】
プロテアーゼを組換え発現ベクターから発現させることを含む、プロテオグリカンを切断する方法であって、該プロテアーゼがADAMTS−8メタロプロテアーゼ触媒ドメインを含み、該プロテアーゼが該プロテオグリカンを切断する、方法。
【請求項11】
プロテオグリカンがアグリカン分子であり、該組換え発現ベクターが、該プロテアーゼを分泌する哺乳動物細胞内で発現される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
組換え発現ベクターが、配列番号28におけるアミノ酸214〜890をコードする配列を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
組換え発現ベクターが、配列番号28におけるアミノ酸214〜588をコードする配列を含む、請求項10、11、または12に記載の方法。
【請求項14】
ADAMTS−8タンパク質のアグリカン切断活性の調節能を有する薬剤を同定する方法であって、
該薬剤の存在するまたは存在しない下で、該ADAMTS−8タンパク質をアグリカン分子と接触させ、
該薬剤の存在するまたは存在しない下で、該ADAMTS−8タンパク質のアグリカン切断活性を測定することを含み、
該薬剤の存在しない下でのアグリカン切断活性と比較した場合に、該薬剤の存在する下でのアグリカン切断活性が変化することで、該薬剤が該アグリカン切断活性の調節能を有することが分かる、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法に従って同定された薬剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
哺乳動物のアグリカン切断異常を治療する方法であって、請求項14に記載の方法に従って同定された薬剤を該哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項17】
ADAMTS−8タンパク質のアグリカン切断活性の調節能を有する薬剤を同定する方法であって、
該薬剤の存在するまたは存在しない下で、ADAMTS−8メタロプロテアーゼ触媒ドメインを含み、かつアグリカン切断活性を有するプロテアーゼを、アグリカン分子と接触させ、
該薬剤の存在するまたは存在しない下で、該プロテアーゼのアグリカン切断活性を測定することを含み、
該薬剤の存在しない下でのアグリカン切断活性と比較した場合に、該薬剤の存在する下でのアグリカン切断活性が変化することで、該薬剤が該アグリカン切断活性の調節能を有することが分かる、方法。
【請求項18】
哺乳動物細胞の細胞外領域におけるアグリカン切断活性を調節する方法であって、該哺乳動物細胞におけるADAMTS−8の発現を阻害することを含む、方法。
【請求項19】
阻害が、ADAMTS−8 RNAi配列またはアンチセンス配列を含むポリヌクレオチドまたはコードするポリヌクレオチドを哺乳動物細胞内に導入することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物のアグリカン切断異常を治療する方法であって、該哺乳動物の選択された細胞におけるADAMTS−8の発現を阻害することを含む、方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−534675(P2007−534675A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508500(P2007−508500)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/012539
【国際公開番号】WO2005/116197
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】