説明

AM/FM受信機およびそのノイズ低減方法

【課題】パルスノイズの除去性能を高める。
【解決手段】受信信号中のパルスノイズを検出してパルスノイズを低減するAM/FM受信機であって、受信対象局に周波数で隣接する隣接局の受信信号レベルと受信対象局の受信信号レベルとのレベル差に基づいて複数のノイズ除去手段のうちの一つを選択するための選択信号を出力するノイズ除去手法選択部31と、受信信号の検波信号に対して、複数のそれぞれ処理の異なるノイズ除去手段によるノイズ除去をそれぞれ行うノイズゲート33、34と、ノイズ除去手法選択部31が出力する選択信号によってノイズゲート33、34から一つのノイズ除去手段を選択して出力信号を得るノイズ除去結果切り替え部32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AM/FM受信機に関し、特に受信時におけるパルスノイズの低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディジタル信号処理によるAM/FM受信機の普及に伴い、製品が搭載される頻度の高い車輌内においてイグニッションノイズ、ドアミラー開閉ノイズ、ワイパーモータノイズ(動作ノイズ)等のパルス状に印加されたノイズが、外乱として復調出力(検波後出力)に含まれる場合が増えている。この場合、聴取する信号がパルスノイズによって乱されるため、パルスノイズを除去する能力を向上させる技術への要求が高まっている。
【0003】
図8は、特許文献1に記載のFM受信機の構成を示すブロック図である。図8において、FM受信機は、IF Filter(中間周波数フィルタ)11と、AGC(Automatic Gain Controller)121と適応等価器122で構成されるMPC(マルチパスキャンセラ)12と、MPC12とIF Filter11の出力を切り替えるスイッチ14と、Hilbert変換部151とArcTan演算部152で構成されるFMDET(検波器)15と、VAR(検波直前包絡線分散検出部)16と、ADJ/ALT(隣接局検出部)17と、S-meter(シグナルメータ、電界強度検出部)18と、適応等価器(Control Sequencer)19と、DIP(IF信号凹み検出部)20と、19K AM Mod(包絡線うねり検出部)21と、Stereo(ステレオデコーダ)23と、USN(超音波成分検出部)24と、DEV(過変調検出部)25と、を備える。さらに、FM受信機は、PN(パルスノイズ検出部)26と、ノイズ除去部22と、遅延量制御部13とを備える。
【0004】
中間周波数フィルタ11は、受信信号のうち、所定の帯域における周波数を選択的に通す。マルチパスキャンセラ12は、中間周波数フィルタ11から出力される受信信号からマルチパスの影響を除去するための適応等化器122を有する。検波器15は、マルチパスキャンセラ12からの受信信号を検波する。パルスノイズ検出部26は、検波器15が出力する検波信号からノイズを検出して対応する制御信号を生成する。ノイズ除去部22は、制御信号に応じて、検波器15が出力する検波信号からノイズを除去する。遅延量制御部13は、適応等化器122の遅延量に応じて、ノイズ除去部22の動作タイミングを、パルスノイズ検出部26を介して制御する。
【0005】
センタータップ位置検出部131は、適応等化器122に入力される各係数から、センタータップに対応する最大の係数を見つけ出し、その位置と大きさから遅延量を算出する。この算出された遅延量に基づいて、ノイズ除去部22をイネーブルするためのゲート信号のタイミングを調整することで、ノイズ除去部22を有効に動作させることが可能となる。
【0006】
なお、関連して、特許文献2、3には、中間周波数信号に対する制御によってノイズを低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−093695号公報
【特許文献2】特開平08−307289号公報
【特許文献3】特開2010−098413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下の分析は本発明において与えられる。
【0009】
特許文献1に記載のFM受信機は、希望局の近傍の隣接局が希望局と同レベルの強度で存在する場合にFM受信機の出力(復調信号)が隣接局の妨害を受け、ひずみが大きくなる。あるいは、近傍局の内容が混ざった隣接局妨害を受けた復調信号のため、ノイズ除去区間を2点補間した場合に開始点、終了点の両方または、いずれかが隣接局の影響を受ける。このため、隣接局による妨害がある場合、ノイズ除去(ノイズキャンセラ)処理を行ったにもかかわらず、ノイズを十分低減することができない場合が生じる。
【0010】
次に、このような場合の一例を説明する。図9、図10は、図8のIF Filter(中間周波数フィルタ)11に対してFM無変調信号が入力され、2msec間隔でパルスノイズが混入し、200kHzの隣接局の妨害を受けた場合のノイズ除去を行う前の復調出力とノイズ除去を行った後の復調出力の波形を示す図である。図9、図10において、縦軸は、出力信号の振幅の大きさを示し、FM100%変調の信号を復調した場合、振幅の最大値が±0.25となるよう正規化され、横軸は復調信号の出力時間を示す。ここでは、225msecから230msecまでの5msec期間の復調出力を示している。
【0011】
図9(a)は、隣接局が無い場合の復調出力である。FM無変調信号の復調出力であるため、パルスノイズの影響が無い場合、振幅の無い0付近の出力となる。ここでは、上記のパルスノイズが付加されたため、復調出力は、2msec間隔で混入したパルスノイズの影響で、2msec間隔に三角状の振幅のノイズが混入していることが示される。
【0012】
図9(b)は、図9(a)と同じ入力条件でパルスノイズを従来のノイズ除去手法で除去した結果である。図9(a)で記載されていた2msec間隔の三角状の振幅が直線補間処理によって除去されていることが示される。
【0013】
図10(a)は、図9(a)と同じパルスノイズ混入かつ、希望局と隣接局の信号レベルが近接している場合の復調出力である。図9(a)と同様に2msec間隔で復調出力に三角状の振幅を有するノイズが示されるが、パルスの幅は、隣接局の信号レベルによって図9(a)の約2倍程度に広がっている。
【0014】
図10(b)は、図10(a)と同じ入力条件で、パルスノイズを従来のノイズ除去手法で除去した結果である。前述のとおり従来のパルスノイズ除去手法は、図9(a)の三角状の振幅を有するノイズを除去する目的で構成されており、除去時間は、三角状の振幅期間で固定されている。したがって、ノイズの幅が広がっている三角状の振幅を有するノイズの除去が難しいことが示される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つのアスペクト(側面)に係るAM/FM受信機は、受信信号中のパルスノイズを検出してパルスノイズを低減するAM/FM受信機であって、受信対象局に周波数で隣接する隣接局の受信信号レベルと受信対象局の受信信号レベルとのレベル差に基づいて複数のノイズ除去手段のうちの一つを選択するための選択信号を出力するノイズ除去手法選択部と、受信信号の検波信号に対して、複数のそれぞれ処理の異なるノイズ除去手段によるノイズ除去をそれぞれ行うノイズゲート群と、ノイズ除去手法選択部が出力する選択信号によってノイズゲート群から一つのノイズ除去手段を選択して出力信号を得るノイズ除去結果切り替え部と、を備える。
【0016】
本発明の他のアスペクト(側面)に係るAM/FM受信機のノイズ低減方法は、AM/FM受信機が受信信号中のパルスノイズを検出してノイズを低減する方法であって、受信対象局に周波数で隣接する隣接局の受信信号レベルと受信対象局の受信信号レベルとのレベル差を比較するステップと、受信信号の検波信号に対して、複数のそれぞれ処理の異なるノイズ除去手段によるノイズ除去をそれぞれ行うステップと、複数のノイズ除去手段のうちの一つをレベル差に基づいて選択するステップと、受信信号の検波信号に対して選択されたノイズ除去手段を介して出力信号を得るステップと、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、隣接局妨害によるパルスノイズを除去する複数のノイズ除去手法を、隣接局の信号レベルを基に選択するため、パルスノイズの除去性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例に係るFM受信機の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例のパルスノイズ除去部の動作を表すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施例のパルスノイズ除去部におけるノイズ除去方式の組み合わせの例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施例のパルスノイズ除去部によってノイズが低減された波形の例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係るFM受信機の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施例のパルスノイズ除去部の動作を表すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施例のパルスノイズ除去部におけるノイズ除去方式の組み合わせの例を示す図である。
【図8】従来のFM受信機の構成を示すブロック図である。
【図9】従来のFM受信機におけるノイズ除去処理によってノイズ低減された波形を示す図である。
【図10】従来のFM受信機におけるノイズ除去処理によってノイズ低減が不十分である波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、概説する。なお、以下の概説に付記した図面参照符号は、専ら理解を助けるための例示であり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0020】
本発明の一実施形態に係るAM/FM受信機は、受信信号中のパルスノイズを検出してパルスノイズを低減するAM/FM受信機であって、受信対象局に周波数で隣接する隣接局の受信信号レベルと受信対象局の受信信号レベルとのレベル差に基づいて複数のノイズ除去手段のうちの一つを選択するための選択信号を出力するノイズ除去手法選択部(図1の31)と、受信信号の検波信号に対して、複数のそれぞれ処理の異なるノイズ除去手段によるノイズ除去をそれぞれ行うノイズゲート群(図1の33、34)と、ノイズ除去手法選択部が出力する選択信号によってノイズゲート群から一つのノイズ除去手段を選択して出力信号を得るノイズ除去結果切り替え部(図1の32)と、を備える。
【0021】
AM/FM受信機において、複数のノイズ除去手段は、ノイズ除去の対象となるノイズ除去期間を拡大する機能を有することが好ましい。
【0022】
AM/FM受信機において、複数のノイズ除去手段(図1の33に相当)の一つは、ノイズ除去期間の始点および終点における信号レベルを直線補間して補間信号をノイズ除去期間において出力する機能を有することが好ましい。
【0023】
AM/FM受信機において、複数のノイズ除去手段の他の一つ(図1の34に相当)は、ノイズ除去期間の始点における信号レベルをノイズ除去期間に亘って保持して出力する機能を有することが好ましい。
【0024】
AM/FM受信機において、ノイズ除去結果切り替え部の出力信号に対して、高域を除去しない信号と、高域を抑制した信号とを、隣接局の受信信号レベルに応じた比率で加算処理して出力する高域処理部(図5の35に相当)をさらに備えるようにしてもよい。
【0025】
以上のようなAM/FM受信機によれば、隣接局のレベル検出処理と複数のノイズ除去方式との組合せによって、検出されたレベルからノイズ除去処理の種類を選択し、復調信号に隣接局妨害の影響があっても、ノイズ除去効果を向上させることができる。
【0026】
以下、実施例に即し、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の第1の実施例に係るFM受信機の構成を示すブロック図である。図1において、図8と同一の符号は、同一物を表し、その説明を省略し、本発明に係る主要部のみについて説明する。本実施例のFM受信機は、図8のノイズ除去部22、パルスノイズ検出部26、遅延量制御部13に替えてパルスノイズ除去部30およびパルスノイズ検出部26aを備える。パルスノイズ除去部30は、ノイズ除去手法選択部31、ノイズ除去結果切り替え部32、ノイズゲート33、34で構成される。
【0028】
ノイズゲート33、34は、FMDET(検波器)15が出力する検波信号に対してそれぞれ異なるノイズ除去処理を行うブロックであって、例えば、前値補間、直線補間、ゼロ挿入、フィルタによる帯域制限等によってパルスノイズ除去を行う。ノイズ除去手法選択部31は、ADJ/ALT(隣接局検出部)17から出力される隣接局の信号レベルを基に、上記の複数のノイズ処理から最適な1つの処理方法を選択するための信号をノイズ除去結果切り替え部32、ノイズゲート33、34に出力する。パルスノイズ検出部26aは、FMDET(検波器)15が出力する検波信号およびDIP(IF信号凹み検出部)20が出力する信号に基づいてノイズゲート33、34の動作タイミング、すなわちノイズ除去区間を設定する。ノイズ除去結果切り替え32は、ノイズ除去手法選択部31の処理結果に応じて、ノイズゲート33、34から出力されるノイズ処理された信号の切り替えを行うスイッチ機能を有し、ノイズが低減された信号をStereo(ステレオデコーダ)23に出力する。
【0029】
次に、本発明の主要部であるパルスノイズ検出部26aおよびパルスノイズ除去部30の動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施例のパルスノイズ除去部の動作を表すフローチャートである。
【0030】
図3は、図2のフローチャートにおいてノイズの判定とノイズ除去方式の組み合わせの具体的な例を示す図である。図3において、縦軸は検出された隣接局の種類を表し、横軸は検出された隣接局とのレベル差および対応したノイズ除去方式を表す。そして、縦軸および横軸の内容に対応して、ノイズ除去手法選択部31で使用する処理判断に使用する閾値と、ノイズゲート33、34で使用する直線補間、前置補間等のノイズ除去方式の具体名で判定する組み合わせが例示される。
【0031】
図2において、最初にADJ/ALT(隣接局検出部)17は、受信対象局(希望局)の信号レベルと、隣接局の信号レベルを測定する(ステップS101)。
【0032】
ノイズ除去手法選択部31は、隣接局のうちレベルの大きい局を判断し(ステップS102)、レベルの大きい局が希望局周波数より高い周波数を持つ局の場合はステップS103に進み、希望局周波数より低い周波数を持つ局の場合はステップS105に進む。
【0033】
レベルの大きい局が希望局周波数より高い周波数を持つ局である場合と判断された場合(ステップS102のYES)、希望局レベルと隣接局レベルを比較し(ステップS103)、希望局の信号レベルに対して隣接局の信号レベルが閾値1以上大きい場合(ステップS103のYES)、ノイズ除去結果切り替え32は、ノイズゲート34で拡張したノイズ除去区間において前値保持する手法(前値補間)を選択して処理を終了する(ステップS104)。
【0034】
ステップS103において、希望局の信号レベルに対して隣接局の信号レベルが閾値1より小さい場合(ステップS103のNO)、希望局の信号レベルと隣接局の信号レベルが近接しているかを閾値2を用いて判断する(ステップS110)。
【0035】
隣接局の信号レベルが近接していると判断された場合(ステップS110のYES)、ノイズ除去結果切り替え32は、ノイズゲート33でノイズ除去区間を2倍に拡張した上で直線補間する手法を選択して処理を終了する(ステップS111)。
【0036】
ステップS110において、希望局の信号レベルと隣接局の信号レベルが近接していないと判断された場合(ステップS110のNO)、希望局の信号レベルに対して隣接局の信号レベルが小さいことを表し、ノイズ除去結果切り替え32は、ノイズゲート33でノイズ除去区間において直線補間する手法を選択して処理を終了する(ステップS112)。
【0037】
また、隣接局が希望局周波数より低い周波数を持つ局であると判断された場合(ステップS102のNO)、希望局レベルと隣接局レベルを比較する(ステップS105)。
【0038】
希望局の信号レベルに対して隣接局の信号レベルが閾値1以上大きい場合(ステップS105のYES)、ノイズ除去結果切り替え32は、ノイズゲート34で拡張したノイズ除去区間において前値保持する手法(前値補間)を選択して処理を終了する(ステップS106)。
【0039】
ステップS105において、希望局の信号レベルに対して隣接局の信号レベルが閾値1より小さい場合(ステップS105のNO)、希望局の信号レベルと隣接局の信号レベルが近接しているかを閾値2を用いて判断する(ステップS107)。
【0040】
隣接局の信号レベルが近接していると判断された場合(ステップS107のYES)、ノイズ除去結果切り替え32は、ノイズゲート33でノイズ除去区間を2倍に拡張した上で直線補間する手法を選択して処理を終了する(ステップS108)。
【0041】
ステップS107において、希望局の信号レベルと隣接局の信号レベルが近接していないと判断された場合(ステップS107のNO)、希望局の信号レベルに対して隣接局の信号レベルが小さいことを表し、ノイズ除去結果切り替え32は、ノイズゲート33でノイズ除去区間において直線補間する手法を選択して処理を終了する(ステップS109)。
【0042】
次に、以上のように動作するFM受信機におけるノイズ低減の効果について説明する。図4は、パルスノイズ除去部30によってノイズ低減された波形の例を示す図である。前述の処理フローチャートにより選択されたノイズ除去手法で、図10(a)と同じ入力条件のパルスノイズを除去した結果である。
【0043】
図2のフローチャートにおいて、ステップS101の判断として、200kHz隣接局が選択される。次に、ステップS102により、隣接局のうちレベルの大きい局が、希望局周波数より高い周波数を持つ局であるため、ステップS103に進む。ステップS101で200kHz隣接局が選択されているため、ステップS103の判断処理の閾値は、図3における+6dB以上が選択されるが、ステップS103の判断条件を満たさないため、ステップS110に進む。
【0044】
ここで、ステップS110の判断処理の閾値は、ステップS101で200kHz隣接局が選択されているため、+6dB〜−6dBが選択されている。これは図10(a)の入力条件と一致するため、ノイズ除去手法としてステップS111が実行される。ステップS111は、図3においてノイズ除去区間を2倍にした直線補間方式であり、従来のノイズ除去手法で除去できなかったパルスの幅の広がった三角状のノイズが除去されることが示される。
【実施例2】
【0045】
図5は、本発明の第2の実施例に係るFM受信機の構成を示すブロック図である。図5において、図1と同一の符号は同一物を表し、その説明を省略する。本実施例のFM受信機は、実施例1に対して隣接局レベルにより選択されるノイズ除去手法を複数適用する例である。
【0046】
図5のFM受信機は、図1のパルスノイズ除去部30に替えてパルスノイズ除去部30aを備える。パルスノイズ除去部30aは、パルスノイズ除去部30に、ブレンド処理信号作成部36と、高域抑圧処理部37と、ブレンド処理部38とからなるノイズゲート35(高域処理部に相当する)を追加して備える。
【0047】
高域抑圧処理部37は、Stereo(ステレオデコーダ)23の出力信号の高域を除去するLPF(ローパスフィルタ)である。ブレンド処理信号作成部36は、ノイズ除去手法選択部31が出力する隣接局の信号レベルに応じて、高域を除去していない信号と、高域抑圧処理部37で処理された高域を抑圧された信号とを加算する比率を算出しブレンド処理部38に出力する。ブレンド処理部38は、高域を除去していない出力信号と、高域抑圧処理部37で処理された高域を抑圧された信号とを、ブレンド処理信号作成部36で算出した比率で加算処理して出力する。
【0048】
次に、本発明の主要部であるパルスノイズ除去部30aの動作について説明する。図6は、第2の実施例のパルスノイズ除去部30aの動作を表すフローチャートである。図6において、図2と同一の符号のステップは、同一の処理を行う。図7は、図6のフローチャートにおいてノイズの判定とノイズ除去方式の組み合わせの例を示す図であり、フォーマットは図3と同じである。
【0049】
ステップS105のYESに続くステップS201、ステップS103のYESに続くS204において、パルスノイズ除去部30aは、ノイズゲート34で拡張したノイズ除去区間において前値保持する手法(前値補間)を選択し、さらにノイズゲート35で高域抑圧処理を行う手法を選択して処理を終了する。
【0050】
ステップS107のYESに続くステップS202、ステップS110のYESに続くS205において、パルスノイズ除去部30aは、ノイズゲート33でノイズ除去区間を2倍に拡張した直線補間する手法を選択し、さらにノイズゲート35で高域抑圧処理を行う手法を選択して処理を終了する。
【0051】
ステップS107のNOに続くステップS203、ステップS110のNOに続くS206において、希望局の信号レベルに対して隣接局の信号レベルが小さいことになり、パルスノイズ除去部30aは、ノイズ除去手法としてノイズゲート33で直線補間する手法を選択して処理を終了する。
【0052】
以上のようなFM受信機によれば、ノイズが大きくなる条件においてノイズゲート33、34のいずれかとノイズゲート35との二種類のノイズ除去手法を直列に適用することで、パルス性ノイズの除去性能をより高めることができる。
【0053】
なお、以上の各実施例ではFM受信機に関して説明したが、AM受信機でも同様なパルスノイズ除去部を備える構成とすることができる。
【0054】
なお、前述の特許文献等の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
11 IF Filter(中間周波数フィルタ)
12 MPC(マルチパスキャンセラ)
14 スイッチ
15 FMDET(検波器)
16 VAR(検波直前包絡線分散検出部)
17 ADJ/ALT(隣接局検出部)
18 S-meter(シグナルメータ、電界強度検出部)
19 適応等価器(Control Sequencer)
20 DIP(IF信号凹み検出部)
21 19K AM Mod(包絡線うねり検出部)
22 Noise Gate(ノイズ除去部)
23 Stereo(ステレオデコーダ)
24 USN(超音波成分検出部)
25 DEV(過変調検出部)
26a PN(パルスノイズ検出部)
30、30a パルスノイズ除去部
31 ノイズ除去手法選択部
32 ノイズ除去結果切り替え部
33〜35 ノイズゲート
36 ブレンド処理信号作成部
37 高域抑圧処理部
38 ブレンド処理部
121 AGC(Automatic Gain Controller)
122 適応等価器
151 Hilbert変換部
152 ArcTan演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号中のパルスノイズを検出してパルスノイズを低減するAM/FM受信機であって、
受信対象局に周波数で隣接する隣接局の受信信号レベルと前記受信対象局の受信信号レベルとのレベル差に基づいて複数のノイズ除去手段のうちの一つを選択するための選択信号を出力するノイズ除去手法選択部と、
前記受信信号の検波信号に対して、複数のそれぞれ処理の異なる前記ノイズ除去手段によるノイズ除去をそれぞれ行うノイズゲート群と、
前記ノイズ除去手法選択部が出力する前記選択信号によって前記ノイズゲート群から一つの前記ノイズ除去手段を選択して出力信号を得るノイズ除去結果切り替え部と、
を備えることを特徴とするAM/FM受信機。
【請求項2】
前記複数のノイズ除去手段は、ノイズ除去の対象となるノイズ除去期間を拡大する機能を有することを特徴とする請求項1記載のAM/FM受信機。
【請求項3】
前記複数のノイズ除去手段の一つは、前記ノイズ除去期間の始点および終点における信号レベルを直線補間して補間信号を前記ノイズ除去期間において出力する機能を有することを特徴とする請求項2記載のAM/FM受信機。
【請求項4】
前記複数のノイズ除去手段の他の一つは、前記ノイズ除去期間の始点における信号レベルを前記ノイズ除去期間に亘って保持して出力する機能を有することを特徴とする請求項3記載のAM/FM受信機。
【請求項5】
前記ノイズ除去結果切り替え部の出力信号に対して、高域を除去しない信号と、前記高域を抑制した信号とを、前記隣接局の受信信号レベルに応じた比率で加算処理して出力する高域処理部をさらに備えることを特徴とする請求項3または4記載のAM/FM受信機。
【請求項6】
AM/FM受信機が受信信号中のパルスノイズを検出してノイズを低減する方法であって、
受信対象局に周波数で隣接する隣接局の受信信号レベルと前記受信対象局の受信信号レベルとのレベル差を比較するステップと、
前記受信信号の検波信号に対して、複数のそれぞれ処理の異なるノイズ除去手段によるノイズ除去をそれぞれ行うステップと、
前記複数のノイズ除去手段のうちの一つを前記レベル差に基づいて選択するステップと、
前記受信信号の検波信号に対して前記選択されたノイズ除去手段を介して出力信号を得るステップと、
を含むことを特徴とするノイズ除去処理方法。
【請求項7】
前記出力信号に対して、高域を除去しない信号と、前記高域を抑制した信号とを、前記隣接局の受信信号レベルに応じた比率で加算処理して出力するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6記載のノイズ除去処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−191337(P2012−191337A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51809(P2011−51809)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】