説明

Bcl−2の発現抑制をするオリゴ二本鎖RNAとそれを含有する医薬組成物

本発明は、アポトーシス抑制因子として知られるBcl−2タンパク質の発現をノックダウンするためのオリゴ二本鎖RNAとそれを含む医薬組成物に関する。癌などの疾患においてはBcl−2タンパク質が過剰発現していることが知られており、この過剰発現により、癌細胞は増殖を続け、また、抗癌剤などに対する薬物耐性をも引き起こす。本発明は、bcl−2 mRNAを分解に導く高い活性を有するオリゴ二本鎖RNAを提供すると共に、当該オリゴ二本鎖RNAと適切な担体との複合体を含む、Bcl−2タンパク質の過剰発現を抑制するための医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アポトーシスの抑制因子として働くBcl−2タンパク質の発現抑制(ノックダウン)に用いるためのオリゴ二本鎖RNA、および、Bcl−2タンパク質のノックダウンまたはアポトーシスの促進が所望される疾患を治療および/または予防するための当該オリゴ二本鎖RNAを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
Bcl−2タンパク質はアポトーシス(プログラム細胞死)の抑制因子として働くため、癌遺伝子として知られている(例えば、田中 信之、“Molecular Medicine”、2002年、39巻、6号、p.638−644参照)。Bcl−2タンパク質の大量発現によりアポトーシスが抑制されることは、例えば、DNAに損傷を受けた細胞がアポトーシスを起こさなくなることによる癌化、および血液学的悪性疾患などの原因となると考えられている。実際に、Bcl−2タンパク質はリンパ肉腫、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸癌および直腸癌などの様々な固形癌の部位に大量に産生されている(例えば、Y.Tsujimoto、“Proceedings of the National Academy of Sciences USA”、1989年3月、86巻、6号、p.1958−1962;T.J.McDonnellら、“Cancer Research”、1992年12月15日、52巻、24号、p.6940−6944;H.Joensuuら、“American Journal of Pathology”、1994年11月、145巻、5号、p.1191−1198;N.Ikegakiら、“Cancer Research”、1994年1月1日、54巻、1号、p.6−8;および、M.P.Bronnerら、“American Journal of Pathology”、1995年1月、146巻、1号、p.20−26を参照)。また、Bcl−2タンパク質が大量に産生される細胞においては、そのアポトーシス抑制作用から、抗癌剤によっても細胞死が誘導されないため、様々な抗癌剤に対する薬物耐性を引き起こされる。したがって、固形癌および血液学的悪性疾患などのアポトーシスの促進が必要な疾患においてBcl−2タンパク質の発現を抑えることは効果的な治療および/または予防となりうる。
【0003】
これまでに、Bcl−2タンパク質の発現を抑制する方法として、アンチセンス法が研究されてきた(例えば、国際公開第98/56905号パンフレット;特表平11−501509号公報;特表2001−505401号公報;特表2001−502172号公報;および、国際公開第02/17852 A2号パンフレットを参照)。アンチセンス法は標的RNAの相補鎖を有するアンチセンスDNAを細胞内に導入することで、標的RNAとアンチセンスDNAのRNA−DNA二重鎖を形成させ、RNase Hの作用により標的RNAを切断することで、タンパク質の発現を抑制する方法である。しかしながら、アンチセンス法において利用するRNase Hは核内に存在するため、アンチセンスDNAを核内にまで移行させなければならない。また、アンチセンスDNAは一般的に20塩基程度の一本鎖オリゴDNAであるが、血清を含む培地中や生体内、特に血中ではヌクレアーゼにより分解される。したがってDNAのリン酸結合部位をホスホロチオエート型に置換するなど様々な化学修飾によりヌクレアーゼ抵抗性を持たせる必要がある点で煩雑である。さらに、アンチセンスDNAによるBcl−2タンパク質の発現抑制によって細胞増殖を有効に抑えるためには、アンチセンスDNAを数百nM〜数十μMのオーダーで使用しなくてはならない。
【0004】
RNAi(RNA interference)は、二本鎖RNA(dsRNA)を細胞に導入することにより、導入したdsRNAと相補的なmRNAが特異的に分解され、したがって当該mRNAのコードする遺伝子産物の合成が抑制される現象である。RNAiは最初に線虫(C.elegans)において発見された現象(例えば、A.Fireら、“Nature”、1998年、391巻、p.806−811参照)であったが、その後、ショウジョウバエ(Drosophila)、原虫(Trypanosoma)、ヒドラ、植物(A.thaliana)、およびアフリカツメガエル(Xenopus)、さらには哺乳動物細胞ではマウス胚性幹細胞(ES細胞)、卵細胞および初期胚においても観察された(例えば、国際公開第02/44321 A2号パンフレット;国際公開第01/68836 A2号パンフレット;特表2002−516062号公報を参照)。
【0005】
一方、分化した哺乳動物細胞においては、線虫などと同様のRNAiによるタンパク質発現抑制効果を得る目的で、30bp以上のdsRNAを導入してもRNAiの効果は観察されなかった。これは、30bp以上のdsRNAの侵入がウイルス感染として認識されることにより、インターフェロン応答として知られている2つの経路が活性化されたためである。一つの経路は、インターフェロンがdsRNA依存的プロテインキナーゼ(PKR)を誘導し、このPKRがdsRNAと結合して活性化し、翻訳開始因子eIF2αをリン酸化することによって翻訳を阻害する経路である。もう一方の経路はインターフェロンが2’−5’−オリゴアデニル酸合成酵素(2−5A合成酵素)を誘導し、これがRNase Lを活性化することでmRNAなどの1本鎖RNAを切断する経路である。これらの経路が活性化されると、細胞内の全ての遺伝子発現が低下する。したがって、30bp以上のdsRNAの導入は、インターフェロン応答により細胞内の全ての遺伝子発現を低下させるため、標的遺伝子に特異的な発現抑制(ノックダウン)効果が得られなかったのである(例えば、K.Ui−Teiら、“FEBS Letters”、2000年、479巻、p.79−82を参照)。
Tuschlらの研究グループがショウジョウバエの細胞抽出液を用いたin vitro系で、加えたdsRNAが21から23塩基対のdsRNAに分解されていることを見いだし、それらの分解されたRNAが標的であるmRNAの配列認識のガイドとして働く仲介物質であることが示唆された(例えば、P.D.Zamoreら、“Cell”、2000年3月31日、101巻、1号、p.25−33を参照)。そして、実際に化学合成した21から22塩基の二本鎖のRNAを上記の反応系に添加することにより、標的mRNAが切断されることが確かめられた。Tuschlらのグループは、このようなRNAiによるタンパク質発現抑制活性を有する短い二本鎖のRNAを、siRNA(short interfering RNA)と名づけた(例えば、S.M.Elbashirら、“Genes & Development”、2001年1月15日、15巻、2号、p.188−200を参照)。またsiRNAは、それを構成するそれぞれのRNA鎖の3’末端に2〜3塩基の一本鎖の状態で存在する部分、すなわち、いわゆる突出部を有するものが上記の反応系で強いタンパク質発現抑制活性をもつことが報告されている。さらにTuschlらのグループは、siRNAが上記のインターフェロン応答の問題なしに、分化した哺乳動物細胞においても配列特異的な遺伝子発現抑制活性を示すことを報告した(例えば、国際公開第01/75164 A2号パンフレット、およびS.M.Elbashirら、“Nature”、2001年5月24日、411巻、p.494−498を参照)。したがって、siRNAを用いることで、哺乳動物においても、RNAiを利用した標的遺伝子のノックダウンによる、標的遺伝子がコードするタンパク質の発現抑制を行うことが可能となった。
【0006】
RNAiを利用したタンパク質発現抑制において、標的のmRNAを切断するために必要なタンパク質として、RISC(RNA−induced silencing complex;ヌクレオチド分解酵素複合体)と呼ばれるタンパク質複合体が考えられている。RISCは二本鎖であるsiRNAの3’突出部を認識してsiRNAを複合体内に取り込み、ターゲットのmRNA配列を認識するためのガイドとしていると考えられている。すなわち、この複合体はsiRNAと同じ配列を持つmRNAを認識して結合し、RNase III様の酵素活性によってsiRNAの中央部でmRNAを切断すると考えられている。
【0007】
RISCは細胞質で形成するため、RNAiを利用して標的遺伝子をノックダウンする方法においては、siRNAを細胞質に導入すればよい、すなわち、核まで移行させなくてもよい、という利点がある。また、siRNAは天然型のヌクレオチドの構成で十分な効果が得られ、修飾は必須ではない。さらに、導入するRNAの量はアンチセンス法で導入するアンチセンスDNAの量と比較して桁違いに少なくても十分な効果を有することからも、簡便で効果的な方法として着目されている。siRNAを用いたRNAiに関する総説については、以下の文献を参照されたい(例えば、森田 隆および吉田 佳世、「タンパク質 核酸 酵素」、2002年、47巻p.1939−1945;牛田 千里、「タンパク質 核酸 酵素」、2001年、46巻、p.1381−1386;田原 宏昭、「タンパク質 核酸 酵素」、2001年、46巻、p.2017−2024;井垣 達吏および三浦 正幸、「遺伝子医学」、2002年、6巻、p.455−460;および、J.Martinezら、“Cell”、2002年9月6日、110巻、5号、p.563−574を参照)。また、アンチセンス鎖だけでもRNAi効果の発現が認められたという報告もある(例えば、J.Martinezら、“Cell”、2002年9月6日、110巻、5号、p.563−574を参照)。
【0008】
siRNAの細胞質への導入方法としては、カチオン性リポソームまたはその他のカチオン性担体などの担体をベクターとして用いる方法、およびリン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法またはマイクロインジェクション法など細胞に直接導入する方法、などが用いられている。また、siRNAを細胞内で発現するようsiRNAをコードする配列を組み込んだ発現ベクターを細胞内に導入する方法も研究されている(例えば、M.Miyagishiら、“Nature Biotechnology”、2002年5月、20巻、5号、p.497−500;N.S.Leeら、“Nature Biotechnology”、2002年5月、20巻5号、p.500−505;および、T.R.Brummelkampら、“Science”、2002年4月19日、296巻、p.550−553を参照)。
【0009】
bcl−2 mRNAに対するsiRNAに関しては、いくつかの報告(たとえば、国際公開第02/055692 A2号パンフレット;国際公開第02/055693 A2号パンフレット;T.Futamiら、“Nucleic Acids Research,Supplement”、2002年、2号、p.251−252;D.P.CiocaとY.Aoki、“Cancer Gene Therapy”、2003年、10号、p.125−133;および、M.JiangとJ.Milner、“Genes and Development”、2003年、17号、p.832−837を参照)があるが、いずれも、本発明のオリゴ二本鎖RNAとは異なる配列を有しているか、または具体的な配列が示されていない。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、アポトーシスの抑制因子として働くBcl−2タンパク質の発現を抑制することができるオリゴ二本鎖RNAを提供する。また、本発明は、癌または血液学的悪性疾患などのアポトーシスの促進が所望される疾患を治療および/または予防するための医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[図1]図1は、一次スクリーニングで得られたオリゴ二本鎖RNAをA431細胞内にトランスフェクションして、24時間培養した後の、その細胞におけるbcl−2 mRNA量をRT−PCRにより準定量した結果を示す。縦軸は陰性対照GL3をトランスフェクションしたときのbcl−2 mRNA量を1とした時、それぞれのオリゴ二本鎖RNAのトランスフェクション時のbcl−2 mRNA量を示す。横軸は検討を行ったオリゴ二本鎖RNAの名称を示す。
[図2]図2aおよびbは、オリゴ二本鎖RNAとしてB717、B043およびB533をA431細胞内にトランスフェクションして24時間培養した後の、その細胞におけるbcl−2 mRNA量(図2a)および構成的発現遺伝子であるGADPHのmRNA量(図2b)をRT−PCRにより準定量した結果を示す。図2cは、B717、B043およびB533を終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションして72時間培養した後の、その細胞におけるBcl−2タンパク質の発現をウエスタンブロッティングにより評価した結果を示す。
[図3]図3は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロッティングで行った結果を示す。上段は終濃度3nMで、下段は終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションして72時間培養した後の結果である。
[図4]図4は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロッティングで行った結果を示す。上段は終濃度3nMで、下段は終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションして72時間培養した後の結果である。
[図5]図5は、選択したオリゴ二本鎖RNAの細胞増殖に対する効果をセルカウンティングアッセイにより評価した結果を示す。細胞はA431細胞を用い、オリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした後、6日間培養した後の細胞数を測定した。縦軸は、オリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションしていないA431細胞の細胞数を100%としたときの、それぞれのオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションしたときの細胞数の割合を示す。横軸は、トランスフェクションしたときの終濃度を示す。
[図6]図6は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロッティングで行った結果を示す。オリゴ二本鎖RNAの終濃度3nMおよび10nMでA431細胞内にトランスフェクションして72時間培養した後の結果である。
[図7]図7は、A549細胞移植後100日までのマウスの生存数を示す。●は対照群、○はオリゴ二本鎖RNA B717を週1回投与した群、および、▲はオリゴ二本鎖RNA B717を週3回投与した群の結果である。
[図8]図8は、A549細胞移植後100日までのマウスの生存数を示す。細い線は対照群、太い線はオリゴ二本鎖RNA B043を投与した群の結果である。
[図9]図9は、A549細胞移植後69日までのマウスの生存数を示す。細い線は対照群、点線はオリゴ二本鎖RNA B043を1mg/kg体重で投与した群、グレーの線はオリゴ二本鎖RNA B043を3mg/kg体重で投与した群、および太い線はオリゴ二本鎖RNA B043を10mg/kg体重で投与した群の結果である。
[図10]図10は、A549細胞移植後69日までのマウスの生存数を示す。細い線は対照群、太い線はオリゴ二本鎖RNA B043を週5回の頻度で計12回投与した群、および点線はオリゴ二本鎖RNA B043を週5回の頻度で計5回投与した群の結果である。なお、点線は太い線と重なっている。
[図11]図11は、PC−3細胞移植後36日までのマウスの腫瘍体積を示す。◆は対照群、□はオリゴ二本鎖RNA B043を投与した群、▲はオリゴ二本鎖RNA B717を投与した群の結果である。
[図12]図12は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロティングで行った結果を示す。上段は終濃度100nMで、下段は終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションしたものの結果を表す。
[図13]図13は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロティングで行った結果を示す。上段は終濃度10nMで、下段は終濃度3nMでA431細胞内にトランスフェクションしたものの結果を表す。
[図14]図14は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロティングで行った結果を示す。上段は終濃度100nMで、下段は終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションしたものの結果を表す。
[図15]図15は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロティングで行った結果を示す。上段は終濃度100nMで、下段は終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションしたものの結果を表す。
[図16]図16は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロティングで行った結果を示す。上段は終濃度100nMで、下段は終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションしたものの結果を表す。
[図17]図17は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロティングで行った結果を示す。上段は終濃度10nMで、下段は終濃度3nMでA431細胞内にトランスフェクションしたものの結果を表す。
[図18]図18は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロティングで行った結果を示す。上段は終濃度100nMで、下段は終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションしたものの結果を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
Bcl−2の発現抑制をするオリゴ二本鎖RNA
本発明者らは、bcl−2 mRNAの配列として、遺伝子データベースに登録されているものを比較検討したところ、GenBankアクセッション番号BC027258として登録されているbcl−2の完全長mRNAの配列がコンセンサスであることを確認した。このGenBankアクセッション番号BC027258の塩基配列(配列番号197)に基づいて、一次、二次、三次スクリーニングを行い、Bcl−2タンパク質の発現を抑制する活性を有する、オリゴ二本鎖RNAを選択した。
【0013】
本明細書においてオリゴ二本鎖RNAとは、15から27塩基対の二重鎖形成部を有する、15から31ヌクレオチドのRNA(一部にデオキシリボヌクレオチドないし修飾ヌクレオチドを含みうる;以下この段落について同じ)の対であって、このRNAの対の細胞内への導入によりオリゴ二本鎖RNAと相補的なmRNAを切断することで、そのmRNAがコードする遺伝子産物の合成が抑制される活性を有するRNAの対と定義される。
【0014】
また、本明細書においてオリゴ二本鎖RNAは、Tuschlらが報告しているsiRNAに限るものではない。例えば、本発明のオリゴ二本鎖RNAにおいては、3’末端の突出部は必ずしも必要とせず、片方の鎖の塩基数も19〜25塩基に限るものではない。本発明のオリゴ二本鎖RNAは、15〜31ヌクレオチドの対であり、17〜23ヌクレオチドの対が好ましく、また、25〜27ヌクレオチドの対も好ましい。
【0015】
また、本明細書で二重鎖形成部とは、本発明のオリゴ二本鎖RNAにおいて、当該オリゴ二本鎖RNAを構成する核酸の対が二重鎖を形成している部分であって、bcl−2 mRNAに対応するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む部分をいう。そして、それぞれのRNA鎖の二重鎖形成部につづく3’側または5’側に一本鎖がある場合には、これを突出部と呼ぶ。
【0016】
スクリーニングの詳細は実施例に示すが、簡単に述べると:一次スクリーニングは、bcl−2 mRNAのORF(Open Reading Frame)内から、約9塩基毎に始まる19塩基のセンス鎖RNAとその相補鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAで構成されるプールからスクリーニングを行った。二次スクリーニングでは、一次スクリーニングで高いBcl−2タンパク質発現抑制活性の見られたオリゴ二本鎖RNAに対応するbcl−2のmRNAの配列を中心に、3塩基毎にずらした配列を有するオリゴ二本鎖RNAのスクリーニングを行った。三次スクリーニングでは、二次スクリーニングで高いBcl−2タンパク質発現抑制活性の見られたオリゴ二本鎖RNAに対応するbcl−2のmRNAの配列を中心に、1塩基毎にずらした配列を有するオリゴ二本鎖RNAのスクリーニングを行った。また、オリゴ二本鎖RNAにおける様々な長さの突出部を有する配列、および塩基数の短い配列についても、そのBcl−2発現抑制活性を評価して、スクリーニングを行った。
【0017】
選択した配列を含むオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価は、後述の実施例に詳細を示すが、当該オリゴ二本鎖RNAを培養系の癌細胞などにカチオン性リポソームなどを用いてトランスフェクションし、所定時間培養した後、当該癌細胞におけるBcl−2タンパク質発現量およびその低下度をウエスタンブロッティングで評価することにより行った。また、bcl−2 mRNA量をRT−PCRにより準定量し、および/または、細胞増殖を抑制する効果をセルカウンティングアッセイにより、評価した。
【0018】
本発明者らは上記スクリーニングの結果、配列番号1ないし配列番号81、配列番号240ないし配列番号256、および配列番号274ないし配列番号280から選ばれる塩基配列を有する核酸、および当該塩基配列と相補鎖を形成する配列を含む、配列番号82ないし配列番号162、配列番号257ないし配列番号273、および配列番号281ないし配列番号287から選ばれる塩基配列を有する核酸の対からなるオリゴ二本鎖RNAを用いたときにBcl−2タンパク質の発現が大きく低下することを見いだした。さらに、上記の配列を有するオリゴ二本鎖RNAにおいては、突出部の有無に関わらず、また、二重鎖形成部が短くてもBcl−2タンパク質の発現を抑制できることを見いだした。
【0019】
3’突出部の配列は活性に影響しないことを本発明者らは明らかにしたので、本発明は、Bcl−2タンパク質の発現を抑制することができるオリゴ二本鎖RNAであって、配列番号1ないし配列番号81、配列番号240ないし配列番号256、および配列番号274ないし配列番号280から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなるセンス鎖RNA、およびその相補鎖として、配列番号82ないし配列番号162、配列番号257ないし配列番号273、および配列番号281ないし配列番号287から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなるアンチセンス鎖RNAの対で形成される二本鎖RNAを構成する塩基対、またはその少なくともいずれか一方の端が合計4塩基対まで削除されていてもよい15〜19塩基対を二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAを提供する。
【0020】
本発明の一態様において、本発明のオリゴ二本鎖RNAは、二重鎖形成部のRNA対のうち、一方または両方の配列中の塩基の一部に、1ないし複数の欠失、置換、挿入または付加を有していてもよい。本発明の別の態様において、本発明のオリゴ二本鎖RNAは、二重鎖形成部のRNA対のうち、一方もしくは両方のリボヌクレオチドの一部またはセンス鎖の全部がデオキシリボヌクレオチドないし修飾ヌクレオチドに置換されていてもよい。
【0021】
本発明の望ましい態様は、センス鎖RNAおよびアンチセンス鎖RNAの対が、配列番号11および配列番号92、配列番号30および配列番号111、配列番号36および配列番号117、配列番号43および配列番号124、配列番号55および配列番号136、配列番号62および配列番号143、または、配列番号77および配列番号158、に示される塩基配列の対において、それぞれ3’末端の2塩基のdTを除いた部分を二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAである。
【0022】
本発明のオリゴ二本鎖RNAは少なくとも一方のRNAの3’末端または5’末端にヌクレオチドを1ないし4塩基を突出部として有していても、有していなくてもよい。特に、上記配列番号に係る塩基配列の対で示される7つのオリゴ二本鎖RNAに関しては、突出部がなくとも強いBcl−2タンパク質発現抑制活性を有する。
【0023】
突出部を有する場合には、突出部を構成するヌクレオチドはリボヌクレオチドであってもよく、または、デオキシリボヌクレオチドであってもよい。特に望ましい態様は、突出部としてヌクレオチドを2塩基有するオリゴ二本鎖RNAである。さらに望ましくは、突出部としてdTdT、UU、二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと一致する配列、または、二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと相補鎖を形成しうる配列である。
【0024】
本発明のオリゴ二本鎖RNAは、ヌクレアーゼ耐性など、生体内における安定性を高めるために、そのヌクレオチドを構成しているリボースまたはリン酸バックボーンなどの、少なくとも一部が修飾されていてもよい。修飾される場合、望ましい修飾は、糖の2’位の修飾、糖のその他の部分の修飾、オリゴ二本鎖RNAのリン酸バックボーンの修飾等である。糖の2’位の修飾は、リボースの2’水酸基をH、OR、R、R’OR、SH、SR、NH、NHR、NR、N、CN、F、Cl、Br、Iなどに置換する修飾である。ここで、Rはアルキルまたはアリール、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を、R’はアルキレン、好ましくは炭素数1〜6のアルキレンを示す。糖のその他の部分の修飾体は、4’チオ体などが挙げられる。リン酸バックボーンの修飾体としては、ホスホロチオエート体、ホスホロジチオエート体、アルキルホスホネート体、ホスホロアミデート体などが挙げられる。
【0025】
特に望ましい本発明のオリゴ二本鎖RNAは、B043、B436、B469、B533、B614、B631およびB717であり、以下にこれらの配列を示す。
【0026】
B043:
センス鎖

アンチセンス鎖

B436:
センス鎖

アンチセンス鎖

B469:
センス鎖

アンチセンス鎖

B533:
センス鎖

アンチセンス鎖

B614:
センス鎖

アンチセンス鎖

B631:
センス鎖

アンチセンス鎖

B717:
センス鎖

アンチセンス鎖

本発明のオリゴ二本鎖RNAは、細胞にトランスフェクションしたとき、Bcl−2タンパク質の発現を、当該オリゴ二本鎖RNAが存在しない場合に比べて抑制することができる。アンチセンスDNAを用いたBcl−2タンパク質の発現抑制においては、一般的にアンチセンスDNAを数百nMから数十μMの濃度で必要とするのと比較して、本発明のオリゴ二本鎖RNAは、数nM〜数百nMの濃度でも、細胞にトランスフェクションした後、24時間以上、例えば72時間培養した段階でBcl−2タンパク質発現をオリゴ二本鎖RNAが存在しない場合と比較して抑制することができる。望ましくは、オリゴ二本鎖RNAを3〜10nMの濃度でA431細胞(上皮癌細胞)にトランスフェクションした後、72時間培養した段階でBcl−2タンパク質発現をオリゴ二本鎖RNAが存在しない場合と比較して抑制することができる。
【0027】
本発明のオリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖単独またはアンチセンス鎖単独の一本鎖の核酸も本発明の範囲内である。すなわち、配列番号1ないし配列番号162から選ばれるいずれか1つの塩基配列において3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなるRNAを二重鎖形成部として含む核酸である。
【0028】
本発明の一態様において、本発明の核酸は、二重鎖形成部のRNA配列中の塩基の一部に、1ないし複数の欠失、置換、挿入または付加を有していてもよい。
【0029】
本発明の核酸は、二重鎖形成部のRNAの3’末端にヌクレオチドを1ないし4塩基を突出部として有していても、有していなくてもよい。突出部のヌクレオチドはリボヌクレオチドであってもよく、または、デオキシリボヌクレオチドであってもよい。特に望ましい態様は、突出部としてヌクレオチドを2塩基有する核酸である。さらに望ましくは、突出部としてdTdT、UU、二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと一致する配列、または、二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと相補鎖を形成しうる配列である。
【0030】
また、本発明の核酸は、配列番号163ないし配列番号196、ならびに、配列番号198ないし配列番号239から選ばれるいずれか1つの塩基配列を有する核酸である。
【0031】
本発明の別の態様において、本発明の核酸は、二重鎖形成部のRNA配列のリボヌクレオチドの一部がデオキシリボヌクレオチドないし修飾ヌクレオチドに置換されていてもよい。
【0032】
また、配列番号1ないし配列番号162、および配列番号240ないし配列番号287から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列を有し、さらに当該塩基配列中のウリジン(U)がチミン(T)である塩基配列をデオキシリボヌクレオチドとして含む核酸も本発明の範囲内である。これらの核酸は、本発明のオリゴ二本鎖RNAを生産するためのプラスミドに組み込まれてもよく、または、本発明のオリゴ二本鎖RNAをインビトロ転写反応で得るためのテンプレートDNAとして用いてもよい。または、アンチセンスプローブとして用いてもよい。さらに、上記の核酸はその塩基配列中に1ないし複数の欠失、置換、挿入または付加した塩基を含み、かつ、当該核酸がテンプレートとなって転写反応などにより生成したRNAが、オリゴ二本鎖RNAを構成したときにBcl−2タンパク質発現抑制活性を有する、という特徴を有する核酸であってもよい。
【0033】
さらに、本発明は、上記のスクリーニングで得られた特に望ましい本発明のオリゴ二本鎖RNA:B043(配列番号11および配列番号92)、B436(配列番号30および配列番号111)、B469(配列番号36および配列番号117)、B533(配列番号43および配列番号124)、B614(配列番号55および配列番号136)、B631(配列番号62および配列番号143)、およびB717(配列番号77および配列番号158)のオリゴ二本鎖RNAの19塩基対の二重鎖形成部を含む、25から27塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖RNAから、Bcl−2タンパク質発現抑制活性を有するオリゴ二本鎖RNAをスクリーニングする方法を提供する。
【0034】
また、本発明は、B043、B436、B469、B533、B614、B631、およびB717からなる群から選択されるオリゴ二本鎖RNAの19塩基対の二重鎖形成部を含む、25から27塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖RNAであって、Bcl−2タンパク質発現抑制活性を有するオリゴ二本鎖RNAをも提供する。
【0035】
本発明者は上記Bcl−2タンパク質発現抑制活性を測定した結果、配列番号288ならびに配列番号295ないし配列番号300から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTおよび5’末端の6塩基を除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて6塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部に一致する配列を有する核酸、および当該塩基配列と相補鎖を形成する配列を含む、配列番号319ならびに配列番号326ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTおよびそれに続く6塩基を除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて6塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部に相補的な配列を有する核酸との対からなる二重鎖形成部を含むオリゴ二本鎖RNAを用いたときにBcl−2タンパク質の発現が大きく低下することを見いだした。
【0036】
本発明の好ましい態様は、センス鎖RNAおよびアンチセンス鎖RNAの対が、配列番号288および配列番号319の塩基配列、配列番号289および配列番号320の塩基配列、配列番号290および配列番号321の塩基配列、配列番号291および配列番号322の塩基配列、配列番号292および配列番号323の塩基配列、配列番号293および配列番号324の塩基配列、配列番号294および配列番号325の塩基配列、配列番号295および配列番号326の塩基配列、配列番号296および配列番号327の塩基配列、配列番号297および配列番号328の塩基配列、配列番号298および配列番号329の塩基配列、配列番号299および配列番号330の塩基配列、または配列番号300および配列番号331の塩基配列に示される塩基配列の対において、それぞれ3’末端の2塩基のdTを除いた部分を二重鎖形成部として含む25塩基対のオリゴ二本鎖RNAである。
【0037】
突出部を有する場合には、突出部を構成するヌクレオチドはリボヌクレオチドであってもよく、または、デオキシリボヌクレオチドであってもよい。特に望ましい態様は、突出部としてヌクレオチドを2塩基有するオリゴ二本鎖RNAである。さらに望ましい態様は、センス鎖RNAの3’末端突出部としてdTdT、UUまたは二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAの一部と一致する配列を有し、アンチセンス鎖RNAの3’末端突出部としてdTdT、UUまたは二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAの一部に相補的な配列を有するオリゴ二本鎖RNAである。
【0038】
また、本発明者は、本発明の一態様において、配列番号288ないし配列番号300から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて2塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部に一致する塩基配列を有する核酸、および当該塩基配列と相補鎖を形成する配列を含む、配列番号319ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて2塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部に相補的な塩基配列を有する核酸の対からなる二本鎖RNAである27塩基対のオリゴ二本鎖RNAを用いたときに、Bcl−2タンパク質の発現が大きく低下することを見いだした。
【0039】
本発明の好ましい態様は、センス鎖RNAおよびアンチセンス鎖RNAの対が、配列番号303および配列番号332の塩基配列、または配列番号304および配列番号334の塩基配列からなる二本鎖RNAで構成される27塩基対のオリゴ二本鎖RNAである。
【0040】
また、本発明の一態様において、本発明のオリゴ二本鎖RNAは、二重鎖形成部のRNA対のうち、一方または両方の配列中の塩基の一部に、1ないし複数の欠失、置換、挿入または付加を有していてもよい。
【0041】
さらに、本発明の別の態様において、本発明のオリゴ二本鎖RNAは、二重鎖形成部のRNA対のうち、一方もしくは両方のリボヌクレオチドの一部またはセンス鎖の全部がデオキシリボヌクレオチドないし修飾ヌクレオチドに置換されていてもよい。
【0042】
本発明の望ましい態様は、センス鎖RNAおよびアンチセンス鎖RNAの対が、配列番号305および配列番号319の塩基配列、配列番号306および配列番号319の塩基配列、配列番号307および配列番号319の塩基配列、配列番号308および配列番号319の塩基配列、配列番号309および配列番号319の塩基配列、配列番号310および配列番号319の塩基配列、配列番号311および配列番号319の塩基配列、配列番号312および配列番号320の塩基配列、配列番号313および配列番号321の塩基配列、配列番号314および配列番号322の塩基配列、配列番号315および配列番号323の塩基配列、配列番号316および配列番号324の塩基配列、または、配列番号317および配列番号325の塩基配列に示される塩基配列の対において、それぞれ3’末端の2塩基のdTを除いた部分を二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAである。
【0043】
本発明のオリゴ二本鎖RNAは、ヌクレアーゼ耐性など、生体内における安定性を高めるために、そのヌクレオチドを構成しているリボースまたはリン酸バックボーンなどの、少なくとも一部が修飾されていてもよい。修飾される場合、望ましい修飾は、糖の2’位の修飾、糖のその他の部分の修飾、オリゴ二本鎖RNAのリン酸バックボーンの修飾等である。糖の2’位の修飾は、リボースの2’水酸基をH、OR、R、R’OR、SH、SR、NH2、NHR、NR2、N3、CN、F、Cl、Br、Iなどに置換する修飾である。ここで、Rはアルキルまたはアリール、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を、R’はアルキレン、好ましくは炭素数1〜6のアルキレンを示す。糖のその他の部分の修飾体は、4’チオ体などが挙げられる。リン酸バックボーンの修飾体としては、ホスホロチオエート体、ホスホロジチオエート体、アルキルホスホネート体、ホスホロアミデート体などが挙げられる。
【0044】
特に望ましい本発明のオリゴ二本鎖RNAは、B037−25、B038−25、B039−25、B−040−25、B041−25、B042−25、B043−25、B430−25、B463−25、B527−25、B608−25、B625−25およびB711−25であり、以下にこれらの配列を示す。
B037−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B038−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B039−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B040−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B041−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B042−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B043−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B430−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B463−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B527−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B608−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B625−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

B711−25:
センス鎖:

アンチセンス鎖:

本発明のオリゴ二本鎖RNAは、細胞にトランスフェクションしたとき、当該オリゴ二本鎖RNAが存在しない場合に比べて、Bcl−2タンパク質の発現を抑制することができる。アンチセンスDNAを用いたBcl−2タンパク質の発現抑制においては、一般的にアンチセンスDNAを数百nMから数十μMの濃度で必要とするのと比較して、本発明のオリゴ二本鎖RNAは、数nM〜数百nMの濃度でも、細胞にトランスフェクションした後、24時間以上、例えば72時間培養した段階で、オリゴ二本鎖RNAが存在しない場合と比較して、Bcl−2タンパク質発現を抑制することができる。望ましくは、オリゴ二本鎖RNAを3〜10nMの濃度でA431細胞(上皮癌細胞)にトランスフェクションした後、72時間培養した段階でオリゴ二本鎖RNAが存在しない場合と比較して、Bcl−2タンパク質発現を抑制することができる。
【0045】
本発明の核酸を構成するセンス鎖単独またはアンチセンス鎖単独の一本鎖の核酸も本発明の範囲内である。すなわち、配列番号288ならびに配列番号295ないし配列番号300から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTおよび5’末端の6塩基を除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて6塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部と一致する塩基配列を有する核酸、若しくは、配列番号319ならびに配列番号326ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTおよびそれに続く6塩基を除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて6塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部と相補的な塩基配列を有する核酸である。
【0046】
本発明の一態様において、本発明の核酸は、二重鎖形成部のRNA配列中の塩基の一部に、1ないし複数の欠失、置換、挿入または付加を有していてもよい。
【0047】
本発明の核酸は、突出部のヌクレオチドはリボヌクレオチドであってもよく、または、デオキシリボヌクレオチドであってもよい。特に望ましい態様は、突出部としてヌクレオチドを2塩基有する核酸である。さらに望ましくは、突出部としてdTdT、UU、二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAに一致する配列、または、二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAに相補的な配列である。
【0048】
好ましくは、本発明の核酸は、配列番号288ないし配列番号300、ならびに、配列番号319ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列を有する核酸である。
【0049】
また、本発明の核酸は、配列番号288ないし配列番号300から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて2塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部と一致する塩基配列を有する核酸、若しくは、配列番号319ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて2塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部に相補的な塩基配列を有する核酸である。
【0050】
好ましくは、本発明の核酸は、配列番号303ないし配列番号304、ならびに、配列番号332ないし配列番号334から選ばれるいずれか1つの塩基配列を有する核酸である。
【0051】
本発明の別の態様において、配列番号288ないし配列番号300、ならびに、配列番号319ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列を有し、当該塩基配列中のリボヌクレオチドの一部がデオキシリボヌクレオチドないし修飾ヌクレオチドに置換されている塩基配列を含む核酸も本発明の範囲内である。
【0052】
また、配列番号288ないし配列番号300、ならびに、配列番号319ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列を有し、さらに当該塩基配列中のウリジン(U)がチミン(T)である塩基をデオキシリボヌクレオチドとして含む核酸も本発明の範囲内である。これらの核酸は、本発明のオリゴ二本鎖RNAを生産するためのプラスミドに組み込まれてもよく、または、本発明のオリゴ二本鎖RNAをインビトロ転写反応で得るためのテンプレートDNAとして用いてもよい。または、アンチセンスプローブとして用いてもよい。さらに、上記の核酸はその塩基配列中に1ないし複数の欠失、置換、挿入または付加した塩基を含み、かつ、当該核酸がテンプレートとなって転写反応などにより生成したRNAが、オリゴ二本鎖RNAを構成したときにBcl−2タンパク質発現抑制活性を有する、という特徴を有する核酸であってもよい。
【0053】
本発明のRNAおよびDNAは、当業者に既知のホスホアミダイト法またはトリエステル法により固相で、または液相で合成できる。最も一般的な態様はホスホアミダイト法による固相合成法であり、核酸自動合成機または手動にて合成することができる。固相での合成が終了した後は、固相からの脱離、保護基の脱保護および目的物の精製等を行う。精製により、純度90%以上、好ましくは95%以上の核酸を得るのが望ましい。オリゴ二本鎖RNAとして用いる場合には、合成・精製したセンス鎖、アンチセンス鎖を適当な比率、例えば、アンチセンス鎖1当量に対して、センス鎖0〜10当量、好ましくは0.5〜2当量、更に好ましくは0.9〜1.1当量、最も好ましくは等モル量、で混合した後、アニーリングして用いてもよいし、または、混合したものをアニーリングする工程を省いて直接用いてもよい。アニーリングは、典型的には、センス鎖、アンチセンス鎖をほぼ等モル量で混合した後、94℃程度で5分程度加熱したのち、室温まで徐冷することにより行うが、当業者に知られる他の条件により行ってもよい。
【0054】
本発明のオリゴ二本鎖RNAはカチオン性リポソーム、その他のトランスフェクション用のベクターなどの担体を用いて細胞内にトランスフェクションしてもよい。また、本発明の別の態様においては、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法またはマイクロインジェクション法などにより、直接細胞内に導入してもよい。
【0055】
医薬組成物
本発明は、本発明のオリゴ二本鎖RNAと当該オリゴ二本鎖RNAを細胞内に移行させるのに有効な担体との複合体を含むことを特徴とする医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物はBcl−2タンパク質の過剰発現が原因となっている疾患、アポトーシスの促進が所望される疾患、または血液学的悪性疾患などの治療および/または予防のために用いることができる。これらの疾患は、具体的には、リンパ腫及び白血病の両方を含む血液学的悪性疾患、および固形腫瘍、例えば、肝臓癌、皮膚癌、乳癌、肺癌、消化器癌、前立腺癌、子宮癌、膀胱癌などである。
【0056】
オリゴ二本鎖RNAとの複合体を形成する担体は、オリゴ二本鎖RNAを細胞内に移行させるのに有効な、カチオン性リポソームおよびカチオン性ポリマーなどのカチオン性担体、またはウイルスエンベロープを利用した担体などを用いてよい。カチオン性リポソームとして望ましいものは、2−O−(2−ジエチルアミノエチル)カルバモイル−1,3−O−ジオレオイルグリセロールを含有するリポソーム(以下リポソームAと表記する)、オリゴフェクトアミン(Invitrogen)、リポフェクチン(Invitrogen)、リポフェクトアミン(Invitrogen)、リポフェクトアミン2000(Invitrogen)、DMRIE−C(Invitrogen)、GeneSilencer(Gene Therapy Systems)、TransMessenger(QIAGEN)、TransIT TKO(Mirus)、などである。カチオン性ポリマーとして望ましいものは、JetSI(Qbiogene)、Jet−PEI(ポリエチレンイミン;Qbiogene)などである。ウイルスエンベロープを利用した担体として望ましいものは、GenomeOne(HVJ−Eリポソーム;石原産業)などである。
【0057】
本発明の医薬組成物に含まれるオリゴ二本鎖RNAと担体の複合体は、当業者に既知の方法により調製することができる。簡単に述べると、適当な濃度の担体分散液とオリゴ二本鎖RNA溶液とを混合して調製する。カチオン性担体を用いる場合、オリゴ二本鎖RNAは水溶液中で負電荷を帯びているため、常法により水溶液中で混合することによってオリゴ二本鎖RNAとカチオン性担体は容易に複合体を形成する。複合体形成のために用いる水性溶媒としては、注射用水、注射用蒸留水、生理食塩水などの電解質液、ブドウ糖液、マルトース液などの糖液などを用いてよい。また、複合体を形成させる際のpHおよび温度などの条件は当業者が適宜選択できる。例えば、リポソームAの場合、10%マルトース水溶液中の16mg/mlのリポソーム分散液に、10%マルトース水溶液中のオリゴ二本鎖RNA溶液を、pH7.4、25℃で撹拌しながら徐々に添加して調製できる。
【0058】
複合体は、必要ならば超音波分散装置や高圧乳化装置などを用いて分散処理を行うことにより、均一な組成物とすることもできる。当業者であれば、担体とオリゴ二本鎖RNAの複合体の調製に最適な方法および条件は、用いる担体に依存するので、上記の方法にとらわれることなく、用いる担体に最適な方法を選択できる。
【0059】
本発明の医薬組成物に含まれるオリゴ二本鎖RNAと担体の複合体の配合比は、オリゴ二本鎖RNA1重量部に対して担体1〜200重量部が適当である。望ましくは、オリゴ二本鎖RNA1重量部に対して2.5〜100重量部、さらに望ましくは10〜20重量部である。
【0060】
本発明の医薬組成物にはオリゴ二本鎖RNAと担体の複合体の他に、医薬的に許容できるキャリアーまたは希釈剤などを含んでいてもよい。医薬的に許容できるキャリアーまたは希釈剤などは、本質的に化学的に不活性および無害な組成物であり、本発明の医薬組成物の生物学的活性に全く影響を与えないものである。そのようなキャリアーまたは希釈剤の例は、塩溶液、糖溶液、グリセロール溶液、エタノールなどがあるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明の医薬組成物は、治療および/または予防に有効量の複合体を含み、かつ、患者に適切に投与できるような形態で提供される。本発明の医薬組成物の製剤形態は、例えば注射剤、点滴剤などの液剤、例えば軟膏、ローション剤などの外用剤、または凍結乾燥製剤であってもよい。
【0062】
液剤の場合、本複合体が、0.001〜25%(w/v)の濃度範囲内で存在しているものが適当であり、好ましくは0.01〜5%(w/v)の濃度範囲内で存在し、より好ましくは0.1〜2%(w/v)の濃度範囲内で存在するのが適当である。本発明の医薬組成物は医薬的に許容される任意の添加剤、例えば、乳化補助剤、安定化剤、等張化剤、pH調製剤を適当量含有していてもよい。具体的には、炭素数6〜22の脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸)やその医薬的に許容される塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩);アルブミン、デキストランなどの乳化補助剤;コレステロール、ホスファチジン酸などの安定化剤;塩化ナトリウム、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロースなどの等張化剤;塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミンなどのpH調製剤;などを挙げることができる。医薬的に許容される任意の添加剤は、本複合体の分散前でも分散後でも適当な工程で添加することができる。
【0063】
凍結乾燥製剤は、オリゴ二本鎖RNAと担体との複合体を分散処理した後、凍結乾燥処理することにより調製することができる。凍結乾燥処理は、常法により行うことができる。例えば、上記の分散処理後の複合体溶液を無菌状態にて所定量をバイアル瓶に分注し、約−40〜−20℃の条件で予備乾燥を約2時間程度行い、約0〜10℃で減圧下に一次乾燥を行い、次いで、約15〜25℃で減圧下に二次乾燥して凍結乾燥することができる。そして、一般的にはバイアル内部を窒素ガスで置換し、打栓して本発明医薬組成物の凍結乾燥製剤を得ることができる。
【0064】
本発明の凍結乾燥製剤は、一般には任意の適当な溶液(再溶解液)の添加によって再溶解し使用することができる。このような再溶解液としては、注射用水、生理食塩水などの電解質液、ブドウ糖液、その他一般輸液を挙げることができる。この再溶解液の液量は、用途などによって異なり、特に制限されないが、凍結乾燥前の液量の0.5〜2倍量、または500ml以下が適当である。
【0065】
本発明の医薬組成物は、投与単位形態で投与することが望ましく、ヒトを含む動物に対し、静脈内投与、動脈内投与、経口投与、組織内投与、経皮投与、経粘膜投与または経直腸投与することができ、患者の症状に合わせた適切な方法により投与してよい。特に静脈投与、経皮投与、経粘膜投与が好ましい。また、癌内局所投与などの局所投与することもできる。これらの投与方法に適した剤型、例えば各種の注射剤、経口剤、点滴剤、吸収剤、点眼剤、軟膏剤、ローション剤、坐剤等で投与されるのはもちろんである。
【0066】
例えば、本発明の医薬組成物の用量は、薬物、剤型、年齢や体重などの患者の状態、投与経路、病気の性質と程度などを考慮した上で決定することが望ましいが、通常は、成人に対してオリゴ二本鎖RNA量として1日当たり、0.1mg〜10g/日/ヒトの範囲が、好ましくは1mg〜500mg/日/ヒトの範囲が一般的である。場合によっては、これ以下でも十分であるし、また逆にこれ以上の用量を必要とすることもある。また1日1〜数回投与、または1〜数日の間隔で投与することができる。
【0067】
また、本発明の別の態様においては、本発明のオリゴ二本鎖RNAを生じるために用いられるDNAを医薬的に許容される添加剤などと一緒に医薬組成物とすることができる。ここで、本発明のオリゴ二本鎖RNAを生じるために用いられるDNAは、本発明のオリゴ二本鎖RNAの二重鎖形成部の塩基配列をデオキシリボヌクレオチドとして有する(ここで、ヌクレオチド配列中のウリジンはチミンに変換される)DNAを含む、本発明のオリゴ二本鎖RNAを生産するためのプラスミドなどを意味する。このような医薬組成物は患者に投与されると、患者の生体内において本発明のオリゴ二本鎖RNAを生じるので、前述した本発明のオリゴ二本鎖RNAと適切な担体を含む医薬組成物と同様の効果を有する、すなわち、Bcl−2の過剰発現が原因となっている疾患などの治療および/または予防に有効である。投与形態および投与経路は、本発明のオリゴ二本鎖RNAと担体の複合体を含む医薬組成物の場合と同様に、患者の症状に合わせた適切な方法により投与してよく、用量もまた同様に、薬物、剤型、年齢や体重などの患者の状態、投与経路、病気の性質と程度などを考慮した上で決定してよい。
【0068】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例に示される範囲に限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
実施例1 スクリーニングとその評価
i)オリゴ二本鎖RNAの調製
オリゴ二本鎖RNAを構成する核酸の合成は、自動核酸合成装置を用いた標準的なホスホアミダイト法による固相合成で行った。合成は、Dharmacon社(米国 コロラド州)又は日本バイオサービス(埼玉県)に合成を依頼するか、または本発明者らが行った。
【0070】
本発明者らが行った手順を簡単に述べる。自動DNA合成機(アプライド・バイオシステムズ、Expedite 8909)を用いて、標準的なホスホアミダイト法により所望の塩基配列を形成するよう、モノマーを逐次縮合した。濃水酸化アンモニウム−エタノール(3:1)混合液を用いてCPG(controlled pore glass)よりヌクレオチド鎖を開裂させ、さらに同溶液中で55℃、18時間おいて脱保護した。その後、1Mテトラブチルアンモニウムフルオライドのテトラヒドロフラン溶液を用いて室温で20時間処理し、2’位のシリル基を脱保護した。得られたオリゴリボヌクレオチドを逆相クロマトグラフィーにて精製した。さらに、80%酢酸水溶液にて室温で30分処理し、5’位のDMTr基を脱保護した後、イオン交換クロマトグラフィーにて再度精製した。脱塩後に得られたオリゴヌクレオチドは、キャピラリーゲル電気泳動により90%以上が目的の全長物質であることを確認した。
【0071】
こうしてオリゴ二本鎖RNAを構成する核酸の各々を合成し、二重鎖形成部が相補的な2本の核酸を、後述するように等モルで混合することでオリゴ二本鎖RNAとして用いた。
【0072】
ii)スクリーニングにおける評価方法
スクリーニングにおける評価は、オリゴ二本鎖RNAを担体と共に各種癌細胞に導入し、タンパク質の発現量をウエスタンブロッティングで定量することにより、および、mRNAの量をRT−PCR(Reverse transcription−polymerase chain reaction)により準定量することにより行った。
【0073】
オリゴ二本鎖RNAと担体の複合体の調製
担体として2−O−(2−ジエチルアミノエチル)カルバモイル−1,3−O−ジオレオイルグリセロールと精製卵黄レシチンを含むリポソームAを用い、オリゴ二本鎖RNAとの複合体を調製した。オリゴ二本鎖RNA1重量部に対してリポソームA16重量部を混合して複合体を調製した。以下に、オリゴ二本鎖RNAの終濃度10μMの複合体溶液、2mlの調製について示す。ただし、オリゴ二本鎖RNA複合体の濃度は、オリゴ二本鎖RNAが完全に二本鎖形成していると仮定したときに複合体に含まれているオリゴ二本鎖RNAのモル濃度で示している。
【0074】
300μMになるように注射用水に溶解したセンス鎖およびアンチセンス鎖それぞれ66.6μlを試験管中で混合した。これに866.8μlの10%マルトースを添加し、両鎖をそれぞれ20μMの濃度で含む溶液1mlを調製した。これをオリゴ二本鎖RNA溶液とした。
【0075】
16mg/mlのリポソームA分散液268μlに10%マルトース732μlを添加し、4.3mg/mlのリポソームA分散液1mlを調製した。このリポソーム分散液1mlに上記オリゴ二本鎖RNA溶液1mlを、撹拌しながら徐々に添加した。以上の操作により、オリゴ二本鎖RNAの終濃度が10μMであるオリゴ二本鎖RNA−リポソーム複合体溶液を調製した。この複合体を600Wのバス型超音波装置を用いて2分間分散処理することにより複合体の粒子を均一にした。
【0076】
ウエスタンブロッティング
上記のオリゴ二本鎖RNA−リポソーム複合体を用いてオリゴ二本鎖RNAが細胞内にトランスフェクションされることで、Bcl−2タンパク質の発現が抑制されるかどうかをウエスタンブロッティングによりBcl−2タンパク質の量の変化を評価することで評価した。
【0077】
6cm径のシャーレにA431細胞(上皮癌細胞)、A375細胞(メラノーマ細胞)、MDA−MB−231細胞(乳癌細胞)、またはA549(肺癌)細胞を2×10cells/dishで播種し、10%FBS(ウシ胎仔血清)を含むDMEM培地(Sigma,D6046)中、37℃、5%CO条件下で一晩培養した。翌日、培養ディッシュから培地を吸引し、2.7mlの10%FBS含有DMEM培地(Sigma,D6046)を加えて培地交換した。そこに、10%マルトース水溶液中で混合したオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比はオリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)溶液を0.3ml添加し、終量を3mlとした。このときのオリゴ二本鎖RNAの最終濃度は3nMまたは10nMである。37℃の5%COインキュベーター内にて72時間培養した。細胞をPBS(Phosphate buffered saline)で2回洗浄し、セルスクレーパーを用いて1.5mlチューブに移した。1000×gで2分間遠心分離し、上清を取り除いた後、20〜100μlのLysis buffer(50mM Tris−HCl,pH7.5,150mM NaCl,1% NP−40)を加えて細胞を溶解した。氷上で30分間静置し、100,000×gで15分間遠心後、上清を新しいチューブに移し、電気泳動用サンプルとした。
【0078】
電気泳動はポリアクリルアミドゲル(ATTO NPG−520L又はE−T520L)を用い、1レーンあたり総タンパク質の量を15μgとしたサンプルをアプライした。泳動終了後、ポリビニリデンフルオラド(PVDF)膜にゲル内のタンパク質を転写し、5%スキムミルク含有PBST(PBST−MLK;ここで、PBSTの組成は、0.1%Tween20含有PBS)中室温で1時間ブロッキングした。まず、Bcl−2タンパク質の検出を行った。ブロッキングが終了したPVDF膜をPBST−MLKで500倍に希釈したマウス抗ヒトBcl−2モノクローナル抗体(DAKO M0887)中にて、4℃で一晩振盪して一次抗体と結合させた。PVDF膜をPBSTで洗浄後、PBST−MLKで1500倍に希釈したHRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)標識抗マウスIg抗体(DAKO P0447)中にて室温で2時間振盪し、二次抗体と結合させた。PBSTで洗浄後、Western Lightning Chemiluminescence Reagent Plus(Perkin Elmer)を用いて発光させ、フィルムに露光した。
【0079】
Bcl−2タンパク質の検出終了後、同じPVDF膜を蒸留水で洗浄し、Bcl−2と同様にActinタンパク質の検出を行った。一次抗体にはヤギ抗ヒトActin抗体(Santa Cruz sc−1616)を、二次抗体にはHRP標識抗ヤギIg抗体(DAKO P0449)を用いた。それぞれPBST−MLKで2500倍、3000倍に希釈して使用した。
【0080】
バンドの濃さの判断は、ルシフェラーゼの発現を抑制するオリゴ二本鎖RNA(GL3)をトランスフェクションした時のBcl−2タンパク質のバンドの濃さを陰性対照に、Bcl−2タンパク質発現抑制活性を有するB717オリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした時のBcl−2タンパク質のバンドの濃さを陽性対照として、目視により行った。目視の結果、バンドの濃さが陽性対照と同等である場合には「+」、陽性対照よりも薄い場合には「++」、陰性対照よりも薄いが、陽性対照よりも濃い場合には「+−」とした。なお、二重鎖形成部が25塩基対以上のオリゴ二本鎖RNAの場合には、処理濃度が10nMにおいて陰性対照よりも十分に薄い場合には「++」、僅かに薄い場合には「+」とし、処理濃度が100nMにおいて、陰性対照よりも僅かに薄い場合には「+−」とした。
【0081】
本明細書において、「活性を保持する」とは、上記と同様に、試験対象のオリゴ核酸RNAをトランスフェクションした時のBcl−2タンパク質のバンドの濃さ(活性)が「+−」「+」「++」以上であることを意味する。
【0082】
RT−PCRによるmRNA量の準定量
オリゴ二本鎖RNAのトランスフェクションによるBcl−2タンパク質発現抑制作用はmRNAの発現抑制に起因するかどうかを調べるため、bcl−2のmRNAの発現量をRT−PCRによる準定量により評価した。
【0083】
6cm径のシャーレにA431細胞(上皮癌細胞)を2×10cells/dishで播種し、10%FBS(ウシ胎仔血清)を含むDMEM培地(Sigma,D6046)中、37℃、5%CO条件下で一晩培養した。翌日、培養ディッシュから培地を吸引し、2.7mlの10%FBS含有DMEM培地(Sigma,D6046)を加えて培地交換した。そこに、10%マルトース水溶液中で混合したオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比はオリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)溶液を0.3ml添加し、終量を3mlとした。このときのオリゴ二本鎖RNAの最終濃度は10nMである。COインキュベーター内にて24時間培養した。細胞をPBSで2回洗浄した後、0.5mlのIsogen(ニッポンジーン)を用いて細胞を溶解し、1.5mlチューブに移した。200μlのクロロホルムを加え、水層と有機層とに分離し、水層からトータルRNAを単離した。
【0084】
トータルRNA2μgを鋳型に、Thermoscript RT−PCR System(Gibco BRL 11146−016)を用いて逆転写反応を行い、cDNAを作成した。この逆転写反応液中に含まれるcDNAをPCR反応の鋳型に用い、キャピラリーPCR法による検出定量システム(ライトサイクラー、ロッシュ・ダイアグノスティックス)を用いてbcl−2および構成的発現遺伝子であるGADPH(D−glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)特異的なPCR増幅を行い、mRNA量の準定量を行った。bcl−2のPCR増幅には100ngのトータルRNA由来のcDNAを、GADPHのPCR増幅には0.5ngのトータルRNA由来のcDNAをそれぞれ鋳型に用いた。陰性対照としてはルシフェラーゼの発現を抑制するオリゴ二本鎖RNA(GL3)でトランスフェクションしたものを用いた。サンプルのmRNA量は陰性対照における、bcl−2のmRNA量またはGADPHのmRNA量を1としたときの相対的な割合として評価した。
【0085】
iii)スクリーニング
Bcl−2タンパク質をコードするmRNAの配列として、登録されているものを比較検討したところ、GenBankアクセッション番号BC027258として登録されているbcl−2の完全長mRNAの配列がコンセンサスであることを確認した。このGenBankアクセッション番号BC027258の塩基配列(以下、bcl−2 mRNAという:配列番号197)に基づいて、後述の実施例に示す一次、二次、三次スクリーニングにより、Bcl−2タンパク質の発現を抑制する活性を有するオリゴ二本鎖RNAを探索した。
【0086】
スクリーニングに用いたオリゴ二本鎖RNAは、19塩基のセンス鎖RNAおよびこれに相補的なアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として有し、それぞれの3’末端にdTdTの突出部を有するようにした。また、スクリーニングに用いたオリゴ二本鎖RNAは「Bxxx」で表し、ここで、「xxx」はオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖の5’末端の塩基のbcl−2 mRNAにおける翻訳開始点からの位置の番号を表すこととした。
【0087】
一次スクリーニング
一次スクリーニングにおけるオリゴ二本鎖RNAのプールは、bcl−2 mRNAのORF(Open Reading Frame)内から、9塩基毎に始まる19塩基のセンス鎖RNAと、その相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAで構成されるものとした。ただし、BLASTサーチの結果、用いるオリゴ二本鎖RNA中に、bcl−2 mRNA以外のmRNAについての連続17塩基以上の相補配列が存在する場合には、適宜、1ないし2塩基シフトさせ、bcl−2 mRNA以外のmRNAとの相補配列が16塩基以下の配列を使用した。
【0088】
一次スクリーニングの結果、B002(配列番号1および配列番号82)、B010(配列番号2および配列番号83)、B028(配列番号3および配列番号84)、B037(配列番号6および配列番号87)、B046(配列番号14および配列番号95)、B055(配列番号15および配列番号96)、B065(配列番号16および配列番号97)、B073(配列番号17および配列番号98)、B084(配列番号18および配列番号99)、B136(配列番号19および配列番号100)、B172(配列番号20および配列番号101)、B199(配列番号21および配列番号102)、B207(配列番号22および配列番号103)、B253(配列番号23および配列番号104)、B262(配列番号24および配列番号105)、B280(配列番号25および配列番号106)、B325(配列番号26および配列番号107)、B352(配列番号27および配列番号108)、B397(配列番号28および配列番号109)、B433(配列番号29および配列番号110)、B442(配列番号32および配列番号113)、B451(配列番号33および配列番号114)、B469(配列番号36および配列番号117)、B478(配列番号39および配列番号120)、B516(配列番号40および配列番号121)、B523(配列番号41および配列番号122)、B539(配列番号46および配列番号127)、B558(配列番号49および配列番号130)、B576(配列番号50および配列番号131)、B586(配列番号51および配列番号132)、B595(配列番号52および配列番号133)、B604(配列番号53および配列番号134)、B613(配列番号54および配列番号135)、B622(配列番号59および配列番号140)、B631(配列番号62および配列番号143)、B642(配列番号65および配列番号146)、B649(配列番号66および配列番号147)、B654(配列番号67および配列番号148)、B658(配列番号68および配列番号149)、B667(配列番号69および配列番号150)、B676(配列番号70および配列番号151)、B703(配列番号73および配列番号154)、B712(配列番号76および配列番号157)、B717(配列番号77および配列番号158)、およびB721(配列番号79および配列番号160)のオリゴ二本鎖RNAにBcl−2タンパク質発現を抑える活性が認められた。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性をウエスタンブロッティングにより評価した結果をこの節の最後に示した表1に示す。
【0089】
一次スクリーニングでBcl−2タンパク質発現を抑える活性のあったオリゴ二本鎖RNAのうち、特に活性の高かった以下の9つのオリゴ二本鎖RNAを以下に示す。
【0090】
B037:
センス鎖

アンチセンス鎖

B433:
センス鎖

アンチセンス鎖

B469:
センス鎖

アンチセンス鎖

B539:
センス鎖

アンチセンス鎖

B622:
センス鎖

アンチセンス鎖

B631:
センス鎖

アンチセンス鎖

B703:
センス鎖

アンチセンス鎖

B717:
センス鎖

アンチセンス鎖

B721:
センス鎖

アンチセンス鎖

Bcl−2タンパク質発現抑制活性の高かった9つのオリゴ二本鎖RNA(B037、B433、B469、B539、B622、B631、B703、B717およびB721)についてRT−PCRによるbcl−2のmRNA量を評価した。その結果を図1に示す。図中、縦軸は、陰性対照としてGL3(ホタルルシフェラーゼ)の発現を抑制するオリゴ二本鎖RNAをA431細胞にトランスフェクションした後、24時間培養した細胞のbcl−2 mRNA量を1としたときの、それぞれのオリゴ二本鎖RNA同様にトランスフェクションした後のbcl−2 mRNA量の割合を示す。一次スクリーニングで得られた9つのオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした細胞のすべてにおいて、陰性対照と比較してbcl−2のmRNA量の減少が観察された。また、以後の実験においては、陽性対照のオリゴ二本鎖RNAとしてB717を用いることにした。
【0091】
二次スクリーニング
二次スクリーニングのオリゴ二本鎖RNAのプールは、一次スクリーニングで高いBcl−2タンパク質発現抑制活性の見られたB717以外の8つのオリゴ二本鎖RNA(B037、B433、B469、B539、B622、B631、B703およびB721)、および、それらのセンス鎖の5’末端がbcl−2 mRNAにおいて該当する塩基を中心としてそれぞれ上流側および下流側に3塩基および6塩基ずらした位置から始まる19塩基のセンス鎖RNAとその相補鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAから構成されるものとした。ただし、BLASTサーチの結果、用いるオリゴ二本鎖RNA中に、bcl−2 mRNA以外のmRNAについての連続17塩基以上の相補配列が存在する場合には、適宜、1ないし2塩基シフトさせ、bcl−2 mRNA以外のmRNAとの相補配列が16塩基以下の配列を使用した。
【0092】
二次スクリーニングの結果、B031(配列番号4および配列番号85)、B034(配列番号5および配列番号86)、B037(配列番号6および配列番号87)、B040(配列番号8および配列番号89)、B043(配列番号11および配列番号92)、B433(配列番号29および配列番号110)、B436(配列番号30および配列番号111)、B439(配列番号31および配列番号112)、B463(配列番号34および配列番号115)、B466(配列番号35および配列番号116)、B469(配列番号36および配列番号117)、B472(配列番号37および配列番号118)、B475(配列番号38および配列番号119)、B533(配列番号43および配列番号124)、B536(配列番号45および配列番号126)、B539(配列番号46および配列番号127)、B543(配列番号47および配列番号128)、B545(配列番号48および配列番号129)、B616(配列番号57および配列番号138)、B619(配列番号58および配列番号139)、B622(配列番号59および配列番号140)、B625(配列番号60および配列番号141)、B628(配列番号61および配列番号142)、B631(配列番号62および配列番号143)、B634(配列番号63および配列番号144)、B636(配列番号64および配列番号145)、B697(配列番号71および配列番号152)、B700(配列番号72および配列番号153)、B703(配列番号73および配列番号154)、B706(配列番号74および配列番号155)、B709(配列番号75および配列番号156)、B719(配列番号78および配列番号159)、B721(配列番号79および配列番号160)、B724(配列番号80および配列番号161)、およびB727(配列番号81および配列番号162)のオリゴ二本鎖RNAにBcl−2タンパク質発現を抑える活性が認められた。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性をウエスタンブロッティングにより評価した結果をこの節の最後に示した表1に示す。
【0093】
二次スクリーニングでBcl−2タンパク質発現を抑える活性のあったオリゴ二本鎖RNAのうち、特に活性の高かった以下の7つのオリゴ二本鎖RNAを以下に示す。
【0094】
B037:
センス鎖

アンチセンス鎖

B043:
センス鎖

アンチセンス鎖

B436:
センス鎖

アンチセンス鎖

B469:
センス鎖

アンチセンス鎖

B533:
センス鎖

アンチセンス鎖

B616:
センス鎖

アンチセンス鎖

B631:
センス鎖

アンチセンス鎖

これらのうち、B043およびB533のオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした細胞のbcl−2のmRNA量をRT−PCRにより評価した結果を図2aに示す。図中、縦軸は、陰性対照としてGL3(ホタルルシフェラーゼ)の発現を抑制するオリゴ二本鎖RNAをA431細胞にトランスフェクションした後、24時間培養した細胞のmRNA量を1としたときの、それぞれのオリゴ二本鎖RNAで同様にトランスフェクションした際のmRNA量を示す。いずれのオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした細胞においても、陰性対照と比較してbcl−2のmRNA量の減少が観察された(図2a)。さらに、陽性対照であるB717のオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションしたときよりもbcl−2 mRNA量は減少していた(図2a)。一方、ハウスキーピング遺伝子GAPDHのmRNA量には影響が見られなかった(図2b)。また、A431細胞に、B043およびB533のそれぞれのオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした後、72時間培養した細胞中のBcl−2タンパク質の発現量を、ウエスタンブロッティングにより評価した結果を示す写真を図2cに示す。オリゴ二本鎖RNAを10nMでトランスフェクションした際には、選択されたオリゴ二本鎖RNAはBcl−2タンパク質の発現を顕著に抑制することが観察された(図2c上段)。一方、コントロールであるActinタンパク質の量には影響が見られなかった(図2c下段)。
【0095】
したがって、二次スクリーニングで得られたオリゴ二本鎖RNAはいずれも、bcl−2 mRNAを特異的に分解し、およびBcl−2タンパク質の発現を特異的に抑制していることが示された。
【0096】
三次スクリーニング
三次スクリーニングのオリゴ二本鎖RNAのプールは、二次スクリーニングで高いBcl−2タンパク質発現抑制活性のみられた4つのオリゴ二本鎖RNA(B037、B043、B533、およびB616)および、そのセンス鎖の5’末端がbcl−2 mRNAにおいて該当する塩基を中心として上流側、下流側ともに3塩基程度の範囲で1塩基ごとにずらした位置から始まる19塩基のセンス鎖RNAとその相補鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAから構成されるものとした。ただし、合成収率が低下するであろうと予測できるほどGC含量の高い配列はスクリーニングの対象から除いた。
【0097】
ウエスタンブロッティングによるBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価結果を示す写真を図3および図4に示して、スクリーニング操作におけるふるい分けの過程について説明する。図3においてNormalはオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションしていないA431細胞を、ならびに図3および図4においてGL3は陰性対照に使用したホタルルシフェラーゼの発現抑制をするオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした細胞、を示す。それぞれの写真の下段のActinタンパク質はいずれのレーンにおいても同程度に発色しており、電気泳動したサンプル量が各レーン間に大きな差がないことを示す。したがって、Bcl−2タンパク質の発色の程度を直接比較し、Bcl−2タンパク質のバンドが顕著に減少していた場合に、対応するオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性が高いと判断した。
【0098】
三次スクリーニングではB037(配列番号6および配列番号87)、B039(配列番号7および配列番号88)、B040(配列番号8および配列番号89)、B041(配列番号9および配列番号90)、B042(配列番号10および配列番号91)、B043(配列番号11および配列番号92)、B044(配列番号12および配列番号93)、B045(配列番号13および配列番号94)、B531(配列番号42および配列番号123)、B533(配列番号43および配列番号124)、B534(配列番号44および配列番号125)、B614(配列番号55および配列番号136)、B615(配列番号56および配列番号137)、および、B616(配列番号57および配列番号138)のオリゴ二本鎖RNAにBcl−2タンパク質発現を抑える活性が認められた。これらのオリゴ二本鎖RNAの活性をウエスタンブロッティングにより評価した結果をこの節の最後に示した表1に示す。
【0099】
Bcl−2タンパク質発現抑制活性の特に高かった以下の3つのオリゴ二本鎖RNAを選択した。
【0100】
B043:
センス鎖

アンチセンス鎖

B533:
センス鎖

アンチセンス鎖

B614:
センス鎖

アンチセンス鎖

これらの3つのオリゴ二本鎖RNA(B043、B533およびB614)は、10nMでトランスフェクションした際にはBcl−2タンパク質の発現をほぼ完全に抑制し、さらに3nMでトランスフェクションしてもBcl−2タンパク質の発現を有意に抑制していることが明らかとなった(図3および図4)。
表1に、一次から三次スクリーニングの過程で、タンパク質発現抑制活性の認められたオリゴ二本鎖RNAを一覧にして示す。
【0101】
【表1−a】

【0102】


【0103】


【0104】


実施例2 セルカウンティングアッセイによる細胞増殖に対するオリゴ二本鎖RNAの評価
選択したオリゴ二本鎖RNAを、癌細胞にトランスフェクションした場合の細胞増殖の抑制能を、セルカウンティングアッセイを用いて評価した。
【0105】
i)方法
96穴プレートにA431細胞(上皮癌細胞)を5×10cells/wellで播種し、10%FBS含有DMEM培地(Sigma、D6046)中で24時間培養した。培養プレートから培地を吸引し、135μlの10%FBS含有DMEM培地を添加した。そこに、10%マルトース水溶液中で混合したオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比はオリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)溶液を15μl添加し、終量を150μlとした。COインキュベーター内で6日間培養した。Cell Counting Kit−8溶液(DOJINDO)を15μlずつ添加し、COインキュベーター内で呈色反応を2時間行った。マイクロプレートリーダーを用い、450nm(参照波長は595nm)の吸光度を測定した。オリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションしていないA431細胞の細胞数を100%としたときの相対的な細胞数の割合を生細胞率として評価した。陰性対照としては、ホタルルシフェラーゼmRNAのオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした細胞を用いた。陽性対照としてはBcl−2タンパク質の発現を抑制するオリゴ二本鎖RNAの一つであるB717でトランスフェクションした細胞を用いた。Bcl−2タンパク質発現抑制活性を有するオリゴ二本鎖RNAとしては、B043およびB533について評価した。
【0106】
ii)結果
結果を図5に示す。どちらのオリゴ二本鎖RNAもトランスフェクションの際の濃度が1nM程度で細胞数が減少し始め、10nMになると細胞数が20%程度に減少した。したがって、本発明のオリゴ二本鎖RNAはBcl−2タンパク質の発現を抑制した結果、細胞増殖を抑える効果を発揮することが明らかとなった。
実施例3 一塩基変異オリゴ二本鎖RNAの効果
i)一塩基変異の効果
オリゴ二本鎖RNAの変異が及ぼす影響を調べるため、一塩基変異体を調製し、実施例1に示したウエスタンブロッティングによりそのオリゴ二本鎖RNAとしての活性を評価した。
【0107】
一塩基変異体としてのオリゴ二本鎖RNAとしては、以下の3つを調製した。一塩基変異により変化したヌクレオチドは下線で示した。
【0108】
B043−15A:
センス鎖

アンチセンス鎖

B533−18U:
センス鎖

アンチセンス鎖

B717−10U:
センス鎖

アンチセンス鎖

B043−15AはB043のセンス鎖5’末端から15番目の塩基対C−GをA−Uに、B533−18UはB533のセンス鎖5’末端から18番目の塩基対C−GをU−Aに、およびB717−10UはB717のセンス鎖5’末端から10番目の塩基対A−UをU−Aに、それぞれ変換した一塩基変異体である。
【0109】
B043−15Aの結果は図3に、B533−18UおよびB717−10Uの結果は図4に示した。いずれの一塩基変異体オリゴ二本鎖RNAも、正常型と比較すると活性は多少低下はするものの、ある程度のBcl−2タンパク質発現抑制活性を保持することを確認した。
ii)一塩基変異の位置の効果
オリゴ二本鎖RNAの変異の位置が活性に及ぼす影響を調べるため、B533のオリゴ二本鎖RNAについて変異の位置の異なる一塩基変異体を7種類調製し、実施例1にその方法を示したウエスタンブロッティングによりそのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性を評価した。
【0110】
一塩基変異体オリゴ二本鎖RNAは、B533オリゴ二本鎖RNAのセンス鎖の5’末端からの位置が2、5、8、10、12、15、18番目に一塩基変異を有するものを用いた。具体的には、B533−2AはB533のセンス鎖5’末端から2番目の塩基対U−AをA−Uに、B533−5UはB533のセンス鎖5’末端から5番目の塩基対G−CをU−Aに、B533−8UはB533のセンス鎖5’末端から8番目の塩基対C−GをU−Aに、B533−10AはB533のセンス鎖5’末端から10番目の塩基対U−AをA−Uに、B533−12UはB533のセンス鎖5’末端から12番目の塩基対A−UをU−Aに、B533−15UはB533のセンス鎖5’末端から15番目の塩基対C−GをU−Aに、およびB533−18UはB533のセンス鎖5’末端から18番目の塩基対C−GをU−Aに、それぞれ変換した一塩基変異体である。
【0111】
用いたB533オリゴ二本鎖RNAおよびその一塩基変異体オリゴ二本鎖RNAを以下に示す。
B533
センス鎖

アンチセンス鎖

B533−2A:
センス鎖

アンチセンス鎖

B533−5U:
センス鎖

アンチセンス鎖

B533−8U:
センス鎖

アンチセンス鎖

B533−10A:
センス鎖

アンチセンス鎖

B533−12U:
センス鎖

アンチセンス鎖

B533−15U:
センス鎖

アンチセンス鎖

B533−18U:
センス鎖

アンチセンス鎖

結果は表2に示した。
【0112】
【表2】

二重鎖形成部の中心の近くに一塩基変異を有するオリゴ二本鎖RNAほど、Bcl−2タンパク質の発現抑制活性が低下する傾向があった。しかしながら、最も活性が低下した、二重鎖形成部のセンス鎖からの位置が8番目、10番目および12番目に一塩基変異を有するオリゴ二本鎖RNA(B533−8U、B533−10A、B533−12U)においても、10nMの濃度で細胞にトランスフェクションした場合には、Bcl−2タンパク質の発現を明らかに抑制した。したがって、1塩基変異体であっても、Bcl−2タンパク質発現を阻害するのに有効なオリゴ二本鎖RNAであることが示唆された。
実施例4 21塩基よりも短いオリゴ二本鎖RNAの活性
オリゴ二本鎖RNAを構成する核酸の塩基数および3’末端もしくは5’末端の突出部の塩基数が、Bcl−2タンパク質発現抑制活性に対して及ぼす影響を検討した。B533の二重鎖形成部の一部を含む、それぞれ16から21塩基のセンス鎖およびアンチセンス鎖、を用いた。これらの核酸を以下の表3に示すようにそれぞれ組み合わせて、二重鎖形成部が16から19塩基対、および、3’末端の突出部が0塩基から3塩基もしくは5’末端の突出部が1塩基から2塩基であるオリゴ二本鎖RNAを用意した。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性について、実施例1にその方法を記したウエスタンブロッティングにより評価した。
【0113】
【表3】

表3に示した全ての組合せのオリゴ二本鎖RNAで、Bcl−2タンパク質発現抑制活性を有していた。したがって、オリゴ二本鎖RNAを構成する核酸の長さはBcl−2タンパク質発現抑制活性に大きな影響を及ぼさないことが示された。具体的には、オリゴ二本鎖RNAの二重鎖形成部、すなわち、オリゴ二本鎖RNAのセンス鎖とアンチセンス鎖が相補的である部分は15〜19塩基対であれば活性には大きな影響を及ぼさないことが示された。また、3’末端突出部の塩基数としては0〜3塩基、および5’末端突出部の塩基数としては0〜2塩基であれば活性に大きな影響を及ぼさないことが示唆された。
【0114】
さらに、B533−20b、B534−20bのオリゴ二本鎖RNAの3’末端突出部はdTdTではなく、二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと一致する配列および二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと相補鎖を形成しうる配列であったが、強いBcl−2タンパク質発現抑制活性を示した(表3)。したがって、3’末端突出部の配列は、bcl−2 mRNAと一致する配列および/またはbcl−2 mRNAと相補鎖を形成しうる配列であってもよいことを意味する。このことは、3’突出部の配列はdTdTに限らず、どのような配列を有していてもオリゴ二本鎖RNAとしての活性を保持すること示すものである。
実施例5 一部DNA置換体の効果
オリゴ二本鎖RNAを構成するリボヌクレオチドの一部のデオキシリボヌクレオチドへの置換が、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性に影響を与えるか否かを、一部DNA置換体オリゴ二本鎖RNAを用いて評価した。
【0115】
評価に用いるオリゴ二本鎖RNAを構成する核酸は、B043およびB533オリゴ二本鎖RNAを構成するそれぞれのセンス鎖およびアンチセンス鎖に加えて、B043およびB533オリゴ二本鎖RNAのそれぞれのセンス鎖およびアンチセンス鎖について、その一部を以下に示すようにデオキシリボヌクレオチドに置換した核酸を調製することで得た。具体的なデオキシリボヌクレオチド置換位置および配列を以下に示す。
【0116】
B043センス鎖の系統:
(1)B043 sense:

(2)B043−4nt−D sense:
B043センス鎖の3’末端の4塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。
【0117】

(3)B043−6nt−D sense:
B043センス鎖の3’末端の6塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。
【0118】

(4)B043−G−dG sense:
B043センス鎖のG塩基をすべてリボヌクレオチドからデオキシリボヌクレオチドに置換した核酸。
【0119】

(5)B043−U−dT sense:
B043センス鎖のリボヌクレオチドのU塩基をすべてデオキシリボヌクレオチドのT塩基に置換した核酸。
【0120】

B533センス鎖の系統:
(1)B533 sense:

(2)B533−4nt−D sense:
B533センス鎖の3’末端の4塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸。
【0121】

(3)B533−6nt−D sense:
B533センス鎖の3’末端の6塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸。
【0122】

(4)B533−G−dG sense:
B533センス鎖のG塩基をすべてリボヌクレオチドからデオキシリボヌクレオチドに置換した核酸。
【0123】

(5)B533−U−dT sense:
B533センス鎖のリボヌクレオチドのU塩基をすべてデオキシリボヌクレオチドのT塩基に置換した核酸。
【0124】

B043アンチセンス鎖の系統:
(1)B043 antisense:

(2)B043−4nt−D antisense:
B043アンチセンス鎖の3’末端の4塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸。
【0125】

(3)B043−2nt2nt−D antisense:
B043アンチセンス鎖の5’末端および3’末端のそれぞれ2塩基をデオキシリボヌクレオチドに置換した核酸。
【0126】

B533アンチセンス鎖の系統:
(1)B533 antisense:

(2)B533−4nt−D antisense:
B533アンチセンス鎖の3’末端の4塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸。
【0127】

(3)B533−2nt2nt−D antisense:
B533アンチセンス鎖の5’末端および3’末端のそれぞれ2塩基をデオキシリボヌクレオチドに置換した核酸。
【0128】

上記のB043センス鎖の系統から選ばれるセンス鎖およびB043アンチセンス鎖の系統から選ばれるアンチセンス鎖の対、または、B533センス鎖の系統から選ばれるセンス鎖およびB533アンチセンス鎖の系統から選ばれるアンチセンス鎖の対を評価に用いるオリゴ二本鎖RNAとした。用いたオリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖の組合せは表4に示す。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性について、実施例1に記載したウエスタンブロッティングにより評価した。
【0129】
【表4】

表4に示す組合せのオリゴ二本鎖RNAはいずれも、Bcl−2タンパク発現抑制活性を有していた。この結果は、オリゴ二本鎖RNAを構成する核酸の一部がデオキシリボヌクレオチドであっても、Bcl−2タンパク質発現抑制活性には大きな影響は与えないことを意味する。これらの一部DNA置換体オリゴ二本鎖RNAもまた、Bcl−2タンパク質発現を抑制するために利用可能であることが明らかとなった。
実施例6 3’突出部の修飾の効果
スクリーニングにおいては3’突出部としてdTdTを用いたが、このdTdTを2’−メトキシエチル体に変換したとき、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性に及ぼす影響を検討した。
【0130】
オリゴ二本鎖RNAはB717において3’突出部が2’−メトキシエチル体のTTであるB717−MOEを用いた。
【0131】
結果を図6に示す。B717−MOEのレーンとB717のレーンのBcl−2タンパク質のバンドの濃さは同程度である。これは、突出部が2’−メトキシエチル体に変換しても突出部にdTdTを有するものを同等の活性を有することを示している。したがって、3’突出部のヌクレオチドが修飾されていてもオリゴ二本鎖RNAとしての活性を保持することを確認した。
実施例7 平滑末端型オリゴ二本鎖RNAの効果
オリゴ二本鎖RNAを構成する3’末端突出部の有無が、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性に及ぼす影響を検討した。3’末端突出部を除いた18塩基対および19塩基対からなる平滑末端型オリゴ二本鎖RNAを用いて評価を行った。具体的に検討したオリゴ二本鎖RNAおよびその結果を表5に示す。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性について、実施例1にその方法を記したウエスタンブロッティングにより評価した。
【0132】
【表5】

表5に示す組合せの平滑末端型オリゴ二本鎖RNAは、いずれもBcl−2タンパク質抑制活性を示しており、平滑末端型のオリゴ二本鎖RNAにおいても3’末端突出型と同等程度の活性を保持することが示唆された。
実施例8 オリゴ二本鎖RNAを用いたin vivoでの効果(1)
ヌードマウス(BALB/c、nu/nu、オス、5週齢)の脾臓にA549細胞(10細胞/マウス)を移植し、10分後に脾臓を摘出した。移植6日後から45日後まで、実施例1で示した方法で調製したbcl−2オリゴ二本鎖RNA B717(配列番号77および158)を含むオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比;オリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)を、週1回(計6回)または週3回(計18回)の頻度で静脈内投与した。1回当たりの投与量は、オリゴ二本鎖RNAとして10mg/kg体重とした。対照群には週3回、10%マルトース溶液を投与した(計18回)。図7に移植後100日までの生存数を示す。
【0133】
両薬物投与群と対象群との間のカプランマイヤー曲線を一般化ウイルコクソン検定したところ、統計的に有意差が見られた(P<0.01)。
実施例9 オリゴ二本鎖RNAを用いたin vivoでの効果(2)
ヌードマウス(BALB/c、nu/nu、オス、5週齢)の脾臓にA549細胞(10細胞/マウス)を移植し、10分後に脾臓を摘出した。移植6日後から44日後まで、実施例1で示した方法で調製したbcl−2オリゴ二本鎖RNA B043(配列番号11および92)を含むオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比;オリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)を、週2回(計12回)の頻度で静脈内投与した。1回当たりの投与量は、オリゴ二本鎖RNAとして10mg/kg体重とした。対象群には週2回、10%マルトース溶液を投与した(計12回)。図8に移植後100日までの生存数を示す。
【0134】
B043投与群と対象群との間のカプランマイヤー曲線を一般化ウイルコクソン検定したところ、統計的に有意差が見られた(P<0.01)。
実施例10 オリゴ二本鎖RNAを用いたin vivoでの効果(3) −用量依存性−
ヌードマウス(BALB/c、nu/nu、オス、5週齢)の脾臓にA549細胞(10細胞/マウス)を移植し、10分後に脾臓を摘出した。移植6日後から44日後まで、実施例1で示した方法で調製したbcl−2オリゴ二本鎖RNA B043(配列番号11および92)を含むオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比;オリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)を、週2回(計12回)の頻度で静脈内投与した。1回当たりの投与量は、オリゴ二本鎖RNAとしてそれぞれ1mg/kg体重、3mg/kg体重、10mg/kg体重とした。対象群には週2回、10%マルトース溶液を投与した(計12回)。その結果を図9に示す。
【0135】
1mg/kg体重投与群、3mg/kg体重投与群、10mg/kg体重投与群と対象群との間の、癌移植69日後までのカプランマイヤー曲線を一般化ウイルコクソン検定したところ、統計的に有意差が見られた(それぞれP<0.05、P<0.01、P<0.01)。
実施例11 オリゴ二本鎖RNAを用いたin vivoでの効果(4) −連続投与スケジュールの検討−
ヌードマウス(BALB/c、nu/nu、オス、5週齢)の脾臓にA549細胞(10細胞/マウス)を移植し、10分後に脾臓を摘出した。移植5日後から10日後まで、または移植5日後から20日後まで、実施例1で示した方法で調製したbcl−2オリゴ二本鎖RNA B043(配列番号11および92)を含むオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比;オリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)を、週5回(計5回または12回)の頻度で静脈内投与した。1回当たりの投与量は、オリゴ二本鎖RNAとして10mg/kg体重とした。対象群には週5回、10%マルトース溶液を投与した(計12回)。その結果を図10に示す。
【0136】
癌移植69日後において、5回投与群および12回投与群共に10匹全てが生存していた。そして、両薬物投与群と対象群との間の、癌移植69日後までのカプランマイヤー曲線を一般化ウイルコクソン検定したところ、統計的に有意差が見られた(P<0.01)。
実施例12 オリゴ二本鎖RNAを用いた局所投与効果
ヌードマウス(BALB/c、nu/nu、オス、5週齢)の右脇腹皮下に、100μLのPBSに懸濁した2.5×10個のPC−3細胞を移植した。移植7日後から18日後まで、実施例1で示した方法で調製したbcl−2オリゴ二本鎖RNA B043(配列番号11および92)またはB717(配列番号77および158)を含むオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比;オリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)を、週5回(計10回)の頻度で癌周辺部の皮下へ投与した。1回当たりの投与量は、オリゴ二本鎖RNAとして0.1mg/マウスとした。対象群には週5回、10%マルトース溶液を投与した(計10回)。腫瘍体積は、腫瘍を楕円体とみなし、「体積=短径×短径×長径÷2」の式により求めた。その結果を図11に示す。
【0137】
腫瘍体積の増加は、B043投与群、B717投与群と対象群との間でいずれも癌移植14日後から36日後に渡って統計的に有意に減少した(P<0.01、ダネット検定)。
実施例13 スクリーニングで得られたbcl−2オリゴ二本鎖RNAの周辺配列のBcl−2タンパク質抑制活性の評価
二次スクリーニングの結果、高いBcl−2タンパク質発現抑制活性のみられた4つのオリゴ二本鎖RNA(B436、B469、B533、B631)の周辺配列、およびB717(スクリーニングの際、陽性対照として用いたオリゴ二本鎖RNA)の周辺配列を有するオリゴ二本鎖RNAについてのBcl−2タンパク質発現抑制活性を、実施例1に示したウエスタンブロッティングにより評価した。B436、B469、B553、B631、またはB717の周辺配列を有するオリゴ二本鎖RNAは、B436、B469、B553、またはB631オリゴ二本鎖RNAのセンス鎖の5’末端がbcl−2 mRNAにおいて該当する塩基を中心として上流側または下流側に1ないし3塩基ずらした位置から始まる19塩基のセンス鎖RNAとその相補鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAから構成される。B436、B469、B553、B631およびB717の周辺配列の具体的な塩基配列は以下の表6に示す。
【0138】
Bcl−2タンパク質発現抑制活性の評価の結果は表6に示した。
【0139】
【表6−a】

【0140】
【表6−b】

【0141】
【表6−c】

【0142】
【表6−d】

【0143】
【表6−e】

上記の周辺配列を有するオリゴ二本鎖RNAも、Bcl−2タンパク質発現抑制活性を有することが明らかになった。
実施例14 その他のオリゴ二本鎖RNAについてのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価
以下の表7にその配列を具体的に示したオリゴ二本鎖RNA(B521、B557、B584、B635、B734、B735、B736)について、実施例1に示したウエスタンブロッティングによりBcl−2タンパク質発現抑制活性を評価した。結果を表7に示す。
【0144】
【表7】

実施例15 オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価(1)
i)オリゴ二本鎖RNAの調製
オリゴ二本鎖RNAを構成する核酸の合成は、自動核酸合成装置を用いた標準的なホスホアミダイト法による固相合成で行った。合成は、Dharmacon社(米国コロラド州)又は日本バイオサービス(埼玉県)に合成を依頼するか、または本発明者が行った。
【0145】
本発明者が行った手順を簡単に述べる。自動DNA合成機(アプライド・バイオシステムズ、Expedite 8909)を用いて、標準的なホスホアミダイト法により所望の塩基配列を形成するよう、モノマーを逐次縮合した。濃水酸化アンモニウムーエタノール(3:1)混合液を用いてCPG(controlled pore glass)よりヌクレオチド鎖を開裂させ、さらに同溶液中で55℃、18時間おいて脱保護した。
【0146】
その後、1Mテトラブチルアンモニウムフルオライドのテトラヒドロフラン溶液を用いて室温で20時間処理し、2’位のシリル基を脱保護した。得られたオリゴリボヌクレオチドを逆相クロマトグラフィーにて精製した。さらに、80%酢酸水溶液にて室温で30分処理し、5’位のDMTr基を脱保護した後、イオン交換クロマトグラフィーにて再度精製した。脱塩後に得られたオリゴヌクレオチドは、キャピラリーゲル電気泳動により90%以上が目的の全長物質であることを確認した。
【0147】
こうしてオリゴ二本鎖RNAを構成する核酸の各々を合成し、二重鎖形成部が相補的な2本の核酸を、後述するように等モルで混合することでオリゴ二本鎖RNAとして用いた。
【0148】
ii)Bcl−2タンパク質発現抑制活性の評価方法
Bcl−2タンパク質発現抑制活性の評価は、オリゴ二本鎖RNAを担体と共に各種癌細胞に導入し、タンパク質の発現量をウエスタンブロッティングにより評価した。
【0149】
オリゴ二本鎖RNAと担体の複合体の調製
担体として2−O−(2−ジエチルアミノエチル)カルバモイル1,3−O−ジオレオイルグリセロールと精製卵黄レシチンを含むリポソームAを用い、オリゴ二本鎖RNAとの複合体を調製した。オリゴ二本鎖RNA1重量部に対してリポソームA16重量部を混合して複合体を調製した。以下に、オリゴ二本鎖RNAの終濃度10μMの複合体溶液、2mlの調製について示す。ただし、オリゴ二本鎖RNA複合体の濃度は、オリゴ二本鎖RNAが完全に二本鎖形成していると仮定したときに複合体に含まれているオリゴ二本鎖RNAのモル濃度で示している。
【0150】
300μMになるように注射用水に溶解したセンス鎖およびアンチセンス鎖それぞれ66.6μlを試験管中で混合した.これに866.8μlの10%マルトースを添加し、両鎖をそれぞれ20μMの濃度で含む溶液1mlを調製した.これをオリゴ二本鎖RNA溶液とした。
【0151】
16mg/mlのリポソームA分散液268μlに10%マルトース732μlを添加し、4.3mg/mlのリポソームA分散液1mlを調製した。このリポソーム分散液1mlに上記オリゴ二本鎖RNA溶液1mlを、撹拝しながら徐々に添加した。以上の操作により、オリゴ二本鎖RNAの終濃度が10μMであるオリゴ二本鎖RNA−リポソーム複合体溶液を調製した。この複合体を600Wのバス型超音波装置を用いて2分間分散処理することにより複合体の粒子を均一にした。
【0152】
ウエスタンブロッティング
上記のオリゴ二本鎖RNA−リポソーム複合体を用いて本発明に係るオリゴ二本鎖RNAが細胞内にトランスフェクションされることで、Bcl−2タンパク質の発現が抑制されるかどうかをウエスタンブロッティングによりBcl−2タンパク質の量の変化を評価することで評価した。
【0153】
6cm径のシャーレにA431細胞(上皮癌細胞)、A375細胞(メラノーマ細胞)、MDA−MB−231細胞(乳癌細胞)、またはA549(肺癌)細胞を2×105cells/dishで播種し、10%FBS(ウシ胎仔血清)を含むDMEM培地(Sigma,D6046)中、37℃、5%CO2条件下で一晩培養した。翌日、培養ディッシュから培地を吸引し、2.7mlの10%FBS含有DMEM培地(Sigma,D6046)を加えて培地交換した。そこに、10%マルトース水溶液中で混合したオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比はオリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)溶液を0.3ml添加し、終量を3mlとした。このときのオリゴ二本鎖RNAの最終濃度は3nM、10nMまたは100nMである。37度の5%CO2インキュベーター内にて72時間培養した。細胞をPBS(Phosphate buffered saline)で2回洗浄し、セルスクレーバーを用いて1.5mlチューブに移した。1000×gで2分間遠心分離し、上清を取り除いた後、20〜100μlのLysis buffer(50mM Tris−HCl,PH7.5,150mM NaCl,1%NP−40)を加えて細胞を溶解した。氷上で30分間静置し、100,000×gで15分間遠心後、上清を新しいチューブに移し、電気泳動用サンプルとした。
【0154】
電気泳動はポリアクリルアミドゲル(ATTO E−T520L)を用い、1レーンあたり総タンパク質の量を15μgとしたサンプルをアプライした。泳動終了後、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)膜にゲル内のタンパク質を転写し、5%スキムミルク含有PBST(PBST−MLK;ここで、PBSTの組成は、0.1%Tween20含有PBS)中室温で1時間ブロッキングした。まず、Bcl−2タンパク質の検出を行った。ブロッキングが終了したPVDF膜をPBST−MLKで500倍に希釈したマウス抗ヒトBcl−2モノクローナル抗体(DAKO M0887)中にて、4℃で一晩振盪して一次抗体と結合させた。PVDF膜をPBSTで洗浄後、PBST−MLKで2000倍に希釈したHRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)標識抗マウスIg抗体(DAKO PO260)中にて室温で2時間振塗し、二次抗体と結合させた。PBSTで洗浄後、Western Lightning Chemiluminescence Reagent Plus(Perkin Elmer)を用いて発光させ、ChemiDoc(BioRad)によりBcl−2タンパク質の量を検出した。
【0155】
Bcl−2タンパク質の検出終了後、同じPVDF膜を蒸留水で洗浄し、Bcl−2と同様にActinタンパク質の検出を行った。一次抗体にはヤギ抗ヒトActin抗体(Santa Cruz SC−1616)を、二次抗体にはHRP標識抗ヤギIg抗体(DAKO PO449)を用いた。それぞれPBST−MLKで500倍、1500倍に希釈して使用した。
【0156】
ルシフェラーゼの発現を抑制するオリゴ二本鎖RNA(GL3)をトランスフェクションした時のBcl−2タンパク質のバンドの濃さを陰性対照として、これらと比較して目視で行った。二重鎖形成部が25塩基対以上のオリゴ二本鎖RNAの場合には、処理濃度が10nMにおいて陰性対照よりも十分に薄い場合には「++」、僅かに薄い場合には「+」とし、そして処理濃度が100nMにおいて陰性対照よりも僅かに薄い場合には「+−」とした。
相補鎖部分が25塩基対であるオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価
Bcl−2タンパク質発現抑制活性の評価に用いたオリゴ二本鎖RNAは、GenBankアクセッション番号BC027258の塩基配列(以下、bcl−2 mRNAという:配列番号197)に基づいて、以下のオリゴ二本鎖RNAを用意した。
【0157】
本発明者は、二重鎖形成部が25塩基の対であるオリゴ二本鎖RNAが、強いBcl−2タンパク質発現抑制活性を有するか否かを評価するため、B043−25アンチセンス鎖、およびその相補鎖である、B043−25センス鎖を用意し、オリゴ二本鎖RNAを得た。さらにB043−25アンチセンス鎖の3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる25塩基の配列をbcl−2 mRNAの相補的な配列に一致するように3’末端側に1ないし6塩基シフトした25塩基の配列の3’末端に2塩基のdTを付加したB042−25、B041−25、B040−25、B039−25、B038−25、B037−25アンチセンス鎖、および、B043−25センス鎖の3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる25塩基の配列をbcl−2 mRNAの配列に一致するように5’末端側に1ないし6塩基シフトした25塩基の配列の3’末端に2塩基のdTを付加したB042−25、B041−25、B040−25、B039−25、B038−25、B037−25センス鎖を用意し、各オリゴ二本鎖RNAを得た。
【0158】
また、Bcl−2タンパク質発現抑制活性の評価に用いたオリゴ二本鎖RNAは「BXXX−25」で表し、ここで、「XXX」はオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖の5’末端の塩基のbcl−2 mRNAにおける翻訳開始点からの位置の番号を表すこととした。上記7つのオリゴ二本鎖RNA(B037−25、B038−25、B039−25、B040−25、B041−25、B042−35およびB043−25)のBcl−2タンパク質発現抑制作用について、ウエスタンブロッティングにより評価した。
【0159】
その結果を表8に示す。
【0160】
【表8】

表8に示すオリゴ核酸RNAは、100nMでトランスフェクションした際にはBcl−2タンパク質をほぼ完全に抑制し、さらに10nMでトランスフェクションしてもBcl−2タンパク質の発現をほぼ完全に抑制することが明らかとなった(図12、13)。
【0161】
したがって、B043−25オリゴ二本鎖RNAのみならず、B043−25アンチセンス鎖の3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる25塩基の配列を、bcl−2 mRNAの相補的な配列に一致するように3’末端側に1ないし6塩基シフトした25塩基の配列に、さらに3’末端に2塩基のdTを付加したアンチセンス鎖、および、それらアンチセンス鎖の3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる25塩基の配列に相補的な配列の3’末端に2塩基のdTを付加したセンス鎖からなるオリゴ二本鎖RNAは、Bcl−2タンパク質発現抑制活性を有することが示された。
実施例16 オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価(2)
本発明者は、他の部分における相補鎖部分が25塩基対であるオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性に及ぼす影響を検討した。具体的に検討したオリゴ二本鎖RNAは、B430−25、B463−25、B527−25、B608−25、B625−25およびB711−25のオリゴ二本鎖RNAである。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性について、実施例15にその方法を記したウエスタンブロティングにより評価した。
【0162】
その結果を表9に示す。
【0163】
【表9】

表9に示すオリゴ核酸RNAは、100nMでトランスフェクションした際にはBcl−2タンパク質をほぼ完全に抑制し、さらに10nMでトランスフェクションしてもBcl−2タンパク質の発現をほぼ完全に抑制することが明らかとなった(図13)。
【0164】
したがって、相補的である部分が25塩基対であるオリゴ二本鎖RNAは、強いBcl−2タンパク質発現抑制活性を有することが示された。
実施例17 相補鎖部分が25塩基対であるオリゴ二本鎖RNA3’末端の突出部の効果
オリゴ二本鎖RNAを構成する3’末端の突出部のdTdTであるデオキシリボヌクレオチドを二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと相補鎖を形成しうる配列である突出部を有するオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性に影響を与えるか否かを、評価した。
【0165】
評価に用いるオリゴ二本鎖RNAを構成する核酸は、B037−25オリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖に加えて、B037−25オリゴ二本鎖RNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端にdTdTの替わりに二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと相補鎖を形成しうる配列を突出部として有する核酸を調製することで得た。具体的な配列を以下に示す。
B037−25センス鎖の系統:
(1) B037−25 sense:

(2) B037SSOH25 sense:

B037−25アンチセンス鎖の系統:
(1)B037−25 antisense:

(2)B037SSOH25 antisense:

具体的に検討したオリゴ二本鎖RNAおよびその結果を表10に示す。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性について、実施例15に記載したウエスタンブロティングにより評価した。
【0166】
【表10】

表10に示すオリゴ核酸RNAは、100nMでトランスフェクションした際にはBcl−2タンパク質をほぼ完全に抑制し、さらに10nMでトランスフェクションしてもBcl−2タンパク質の発現をほぼ完全に抑制することが明らかとなった(図14)。
【0167】
この結果は、オリゴ二本鎖RNAを構成する核酸の二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと相補鎖を形成しうる配列である3’末端突出部であっても、Bcl−2タンパク質発現抑制活性には大きな影響を与えないことを意味する。これらのオリゴ二本鎖RNAもまた、Bcl−2タンパク質発現を抑制するために利用可能であることが明らかとなった。このことは、3’突出部の配列はdTdTに限らず、どのような配列を有していてもオリゴ二本鎖RNAとして活性を保持することを示すものである。
実施例18 相補鎖部分が25塩基対である平滑末端型オリゴ二本鎖RNAの効果
オリゴ二本鎖RNAを構成する核酸の3’末端突出部の有無が、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性に及ぼす影響を検討した。3’末端突出部を除いた25塩基対からなる平滑末端型オリゴRNAを用いて評価を行った。具体的に検討したオリゴ二本鎖RNAおよびその結果を表11に示す。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性について、実施例15にその方法を記したウエスタンブロティングにより評価した。
【0168】
【表11】

表11に示すオリゴ核酸RNAは、100nMでトランスフェクションした際にはBcl−2タンパク質をほぼ完全に抑制し、さらに10nMでトランスフェクションしてもBcl−2タンパク質の発現をほぼ完全に抑制することが明らかとなった(図15)。
【0169】
この結果により、平滑末端型オリゴ二本鎖RNAは、いずれもBcl−2タンパク質発現抑制活性を示しており、平滑末端型のオリゴ二本鎖RNAにおいても3’末端突出型と同程度の活性を保持することが示唆された。
【0170】
実施例19センス鎖DNA体の効果
オリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖のリボヌクレオチド全部をデオキシリボヌクレオチドに置換することによって、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性が影響を受けるか否かを、センス鎖の全部がDNAであるオリゴ二本鎖RNAを用いて評価した。
【0171】
評価に用いるオリゴ二本鎖RNAを構成する核酸は、B037−25、B038−25、B039−25、B040−25、B041−25、B042−25およびB043−25オリゴ二本鎖RNAを構成するそれぞれのセンス鎖を以下に示すようにデオキシヌクレオチドに置換した核酸を調製することで得た。
【0172】
具体的な配列を以下に示す。
B037−25センス鎖の系統:
(1) B037−25 sense

(2) B037DNA25 sense:
B037センス鎖のすべての塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

B038−25センス鎖の系統:
(1) B038−25 sense:

(2) B038DNA25 sense:
B038センス鎖のすべての塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

B039−25センス鎖の系統:
(1) B039−25 sense:

(2) B039DNA25 sense:
B039センス鎖のすべての塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

B040−25センス鎖の系統:
(1) B040−25 sense:

(2) B040DNA25 sense:
B040センス鎖のすべての塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

B041−25センス鎖の系統:
(1) B041−25 sense:

(2) B041DNA25 sense:
B041センス鎖のすべての塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

B042−25センス鎖の系統:
(1) B042−25 sense:

(2) B042DNA25 sense:
B042センス鎖のすべての塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

B043−25センス鎖の系統:
(1) B043−25 sense:

(2) B043DNA25 sense:
B043センス鎖のすべての塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

具体的に検討したオリゴ二本鎖RNAおよびその結果を表12に示す。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性について、実施例15に記載したウエスタンブロティングにより評価した。
【0173】
【表12】

表12に示すオリゴ核酸RNAは、100nMでトランスフェクションした際にはBcl−2タンパク質を僅かに抑制し、さらに10nMでトランスフェクションしてもBcl−2タンパク質の発現を僅かに抑制することが明らかとなった(図16)。
【0174】
この結果は、オリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖の全部がデオキシリボヌクレオチドであっても、Bcl−2タンパク発現抑制活性を有することを確認した。これらオリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖の全部がデオキシリボヌクレオチドであるオリゴ二本鎖RNAもまた、Bcl−2タンパク質発現を抑制するために利用可能であることがわかった。
実施例20 センス鎖一部DNA置換体の効果
オリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖のリボヌクレオチドの一部をデオキシリボヌクレオチドに置換することによって、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性が影響を受けるか否かを、一部DNA置換体RNAを用いて評価した。
【0175】
評価に用いるオリゴ二本鎖RNAを構成する核酸は、B037−25オリゴ二本鎖RNAを構成するそれぞれのセンス鎖を以下に示すようにデオキシヌクレオチドに置換した核酸を調製することで得た。具体的な配列を以下に示す。
B037−25センス鎖の系統:
(1) B037−25 sense

(2) B037DNA25 sense:
B037センス鎖のすべての塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

(3) B037−25−dC−S sense:
B037センス鎖のリボヌクレオチドのC塩基をすべてデオキシリボヌクレオチドとした核酸。

(4) B037−25−dG−S sense:
B037センス鎖のリボヌクレオチドのG塩基をすべてデオキシリボヌクレオチドとした核酸。

(5) B037−25−dGC−S sense:
B037センス鎖のリボヌクレオチドのG塩基およびC塩基をすべてデオキシリボヌクレオチドとした核酸。

(6) B037−25−10D sense:
B037センス鎖の3’末端の10塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

(7) B037−25−14D sense:
B037センス鎖の3’末端の14塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

(8) B037−25−18D sense:
B037センス鎖の3’末端の18塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

B037−25アンチセンス鎖の系統:
(1) B037−25 antisense

上記B037−25センス鎖の系統から選ばれるセンス鎖およびB037−25アンチセンス鎖の対を評価に用いるオリゴ二本鎖RNAとした。
【0176】
用いたオリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖の組合せは、表13に示す。
【0177】
これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制作用については、実施例1に記載したウェスタンブロッティングにより評価した。
【0178】
【表13】

表13に示すオリゴ核酸RNAは、100nMでトランスフェクションした際にはBcl−2タンパク質をほぼ完全に抑制し、さらに10nMでトランスフェクションしてもBcl−2タンパク質の発現をほぼ完全に抑制することが明らかとなった(図17)。
【0179】
この結果は、オリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖の一部がデオキシリボヌクレオチドであっても、Bcl−2タンパク質発現抑制活性には大きな影響がないことを意味する。これらのセンス鎖一部DNA置換体オリゴ二本鎖RNAもまた、Bcl−2タンパク質発現を抑制するために利用可能であることが明らかとなった。
実施例21 リン酸ジエステル結合部分が全てホスホロチオエート体の効果
リボヌクレオチド全部をデオキシリボヌクレオチドに置換し、すべてのリン酸ジエステル結合をホスホロチオエート結合に変換したセンス鎖を有するオリゴ二本鎖RNAを用いて、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性に与える影響を評価した。
【0180】
評価に用いるオリゴ二本鎖RNAを構成する核酸は、B037−25オリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖を構成するリボヌクレオチド全部をデオキシヌクレオチドに置換し、すべてのリン酸ジエステル結合をホスホロチオエート結合に変換することで得た。
【0181】
具体的な配列を以下に示す。
B037−25センス鎖の系統:
(1) B037−25 sense

(2) B037DNA25 sense:
B037センス鎖のすべての塩基をデオキシリボヌクレオチドとした核酸(UはTとした)。

(3) B037DNA25PS sense:
B037センス鎖のすべての塩基をデオキシリボヌクレオチドとし、リン酸ジエステル結合は全てホスホロチオエートである核酸(UはTとした)。

B037−25アンチセンス鎖の系統:
(1) B037−25 antisense

具体的に検討したオリゴ二本鎖RNAおよびその結果を表14に示す。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制作用については、実施例15に記載したウェスタンブロッティングにより評価した。
【0182】
【表14】

表14に示すオリゴ核酸RNAは、100nMでトランスフェクションした際にはBcl−2タンパク質を僅かに抑制し、さらに10nMでトランスフェクションしてもBcl−2タンパク質の発現を僅かに抑制することが明らかとなった(図18)。
【0183】
この結果は、オリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖において全部の核酸がデオキシリボヌクレオチドであり、すべてのリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合であっても、Bcl−2タンパク発現抑制活性がみられることを確認した。これらオリゴ二本鎖RNAを構成するセンス鎖の全部がデオキシリボヌクレオチドであり、すべてのリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合であるオリゴ二本鎖RNAもまた、Bcl−2タンパク質発現を抑制するために利用可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明は、Bcl−2タンパク質発現を抑制する活性の高いオリゴ二本鎖の提供に貢献する。癌など、Bcl−2タンパク質の過剰発現が原因となっている疾患を治療および/または予防するための医薬組成物の提供に貢献すると共に、それらの疾患を治療および/または予防する方法の開発に貢献する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1ないし配列番号81、配列番号240ないし配列番号256、および配列番号274ないし配列番号280から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなるセンス鎖RNA、およびその相補鎖として、配列番号82ないし配列番号162、配列番号257ないし配列番号273、および配列番号281ないし配列番号287から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなるアンチセンス鎖RNA、の対で形成される二本鎖RNAを構成する塩基対、またはその少なくともいずれか一方の端が合計4塩基対まで削除されていてもよい15〜19塩基対を二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNA。
【請求項2】
二重鎖形成部の少なくとも一方のRNAの塩基配列中に、1ないし複数の欠失、置換、挿入、または付加した塩基を含み、かつBcl−2タンパク質発現抑制活性を保持する、請求項1に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項3】
二重鎖形成部の少なくとも一方のRNAを構成するリボヌクレオチドの一部またはセンス鎖RNAの全部が、デオキシリボヌクレオチドないし修飾ヌクレオチドに置換されており、かつBcl−2タンパク質発現抑制活性を保持する、請求項1に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項4】
二重鎖形成部が、配列番号11および配列番号92、配列番号30および配列番号111、配列番号36および117、配列番号43および配列番号124、配列番号55および配列番号136、配列番号62および配列番号143、または配列番号77および配列番号158の塩基配列において、それぞれ3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなるRNAの対である、請求項1から3のいずれか1項に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項5】
二重鎖形成部の少なくとも一方のRNAの3’末端または少なくとも一方のRNAの5’末端に突出部としてヌクレオチドを1ないし4塩基付加した、請求項1から4のいずれか1項に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項6】
3’末端または5’末端に突出部として付加した1ないし4塩基のヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドである、請求項5に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項7】
3’末端に突出部として付加したヌクレオチドがdTdTである、請求項5に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項8】
少なくとも一方のRNA鎖のヌクレオチドを構成するリボースまたはリン酸バックボーンの少なくとも一部が修飾されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項9】
リボースまたはリン酸バックボーンの修飾が、リボースの2’水酸基をH、OR、R、R’OR、SH、SR、NH、NHR、NR、N、CN、F、Cl、Br、およびIから選択される置換基に置換する修飾(Rはアルキルまたはアリールを、およびR’はアルキレンを示す)、リボースを4’チオ体とする修飾、ならびに、リン酸バックボーンの修飾はホスホロチオエート体、ホスホロジチオエート体、アルキルホスホネート体、またはホスホロアミデート体とする修飾、から選択される1または複数の修飾からなる、請求項8に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項10】
細胞にトランスフェクションしたとき、Bcl−2タンパク質の発現を、オリゴ二本鎖RNAが存在しない場合に比べて抑制することができる、請求項1から9のいずれか1項に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項11】
配列番号1ないし配列番号162、および配列番号240ないし配列番号287から選ばれるいずれか1つの塩基配列において3’末端の2塩基のdTを除いた部分のRNAを含む核酸。
【請求項12】
RNA塩基配列中に、1ないし複数の欠失、置換、挿入または付加した塩基を含み、かつオリゴ二本鎖RNAを構成したときにBcl−2タンパク質発現抑制活性を保持する、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
RNAのリボヌクレオチドの一部がデオキシリボヌクレオチドないし修飾ヌクレオチドに置換されている、請求項11に記載の核酸。
【請求項14】
RNAの3’末端または5’末端にヌクレオチドを1ないし4塩基付加した請求項11から13のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項15】
3’末端または5’末端に付加した1ないし4塩基のヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドである、請求項14に記載の核酸。
【請求項16】
3’末端に付加したヌクレオチドがdTdTである、請求項14に記載の核酸。
【請求項17】
配列番号163ないし配列番号196、ならびに、配列番号198ないし配列番号239から選ばれるいずれか1つの塩基配列を有する核酸。
【請求項18】
ヌクレオチド鎖を構成するリボースまたはリン酸バックボーンの一部または全体が修飾されている、請求項11から17のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項19】
配列番号1ないし配列番号162から選ばれるいずれか一つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列を有し、さらに当該塩基配列中のウリジン(U)がチミン(T)である塩基配列をデオキシリボヌクレオチドとして含む核酸。
【請求項20】
塩基配列中に、1ないし複数の欠失、置換、挿入または付加した塩基を含む核酸であって、当該核酸がテンプレートとなって、オリゴ二本鎖RNAを構成したときにBcl−2タンパク質発現抑制活性を有するRNAを発現する、請求項19に記載の核酸。
【請求項21】
オリゴ二本鎖RNAを細胞内に移行させるのに有効な担体と請求項1から9のいずれか1項に記載のオリゴ二本鎖RNAとの複合体を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項22】
オリゴ二本鎖RNAを細胞内に移行させるのに有効な担体が、カチオン性担体である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
オリゴ二本鎖RNA 1重量部に対して担体を1〜200重量部を含む、請求項21または22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
オリゴ二本鎖RNA 1重量部に対して担体を2.5〜100重量部を含む、請求項21または22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
オリゴ二本鎖RNA 1重量部に対して担体を10〜20重量部を含む、請求項21または22に記載の医薬組成物。
【請求項26】
請求項19または20に記載の核酸を含むオリゴ二本鎖RNAを生成するための核酸を含む医薬組成物。
【請求項27】
Bcl−2タンパク質の発現抑制が所望される疾患の治療および/または予防のための請求項21から26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
アポトーシスの促進が所望される疾患の治療および/または予防のための、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
癌の治療および/または予防のための請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
血液学的悪性疾患の治療および/または予防のための請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
配列番号288ならびに配列番号295ないし配列番号300から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTおよび5’末端の6塩基を除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて6塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部に一致するセンス鎖RNA、およびその相補鎖として、配列番号319ならびに配列番号326ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTおよびそれに続く6塩基を除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて6塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部に相補的なアンチセンス鎖RNAの対で形成される二本鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNA。
【請求項32】
配列番号288ないし配列番号300から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて2塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部に一致するセンス鎖RNA、およびその相補鎖として、配列番号319ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて2塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部に相補的なアンチセンス鎖RNAの対で形成される二本鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNA。
【請求項33】
二重鎖形成部の少なくとも一方のRNA鎖の塩基配列中に、1ないし複数の欠失、置換、挿入、または付加した塩基を含み、かつBcl−2タンパク質発現抑制活性を保持する、請求項31または請求項32に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項34】
二重鎖形成部が、配列番号302および配列番号333の塩基配列、配列番号303および配列番号332の塩基配列、または配列番号304および配列番号334の塩基配列からなるRNAの対である、請求項31から請求項33のいずれかに記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項35】
二重鎖形成部の少なくとも一方のRNA鎖を構成するリボヌクレオチドの一部またはセンス鎖RNAの全部が、デオキシリボヌクレオチドないし修飾ヌクレオチドに置換されており、かつBcl−2タンパク質発現抑制活性を保持する、請求項31に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項36】
二重鎖形成部が、配列番号288および配列番号319の塩基配列、配列番号289および配列番号320の塩基配列、配列番号290および配列番号321の塩基配列、配列番号291および配列番号322の塩基配列、配列番号292および配列番号323の塩基配列、配列番号293および配列番号324の塩基配列、配列番号294および配列番号325の塩基配列、配列番号295および配列番号326の塩基配列、配列番号296および配列番号327の塩基配列、配列番号297および配列番号328の塩基配列、配列番号298および配列番号329の塩基配列、配列番号299および配列番号330の塩基配列、配列番号300および配列番号331の塩基配列、配列番号305および配列番号319の塩基配列、配列番号306および配列番号319の塩基配列、配列番号307および配列番号319の塩基配列、配列番号308および配列番号319の塩基配列、配列番号309および配列番号319の塩基配列、配列番号310および配列番号319の塩基配列、配列番号311および配列番号319の塩基配列、配列番号312および配列番号320の塩基配列、配列番号313および配列番号321の塩基配列、配列番号314および配列番号322の塩基配列、配列番号315および配列番号323の塩基配列、配列番号316および配列番号324の塩基配列、または、配列番号317および配列番号325の塩基配列において、それぞれ3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなるRNAの対である、請求項31から請求項35のいずれかに記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項37】
センス鎖RNAおよびアンチセンス鎖RNAからなる二重鎖形成部の少なくとも一方のRNAの3’末端または少なくとも一方のRNAの5’末端に突出部としてヌクレオチドを1ないし4塩基付加した、請求項31または請求項34から36のいずれか1項に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項38】
RNAの3’末端または5’末端に突出部として付加した1ないし4塩基のヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドである、請求項37に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項39】
RNAの3’末端に突出部として付加したヌクレオチドがdTdTである、請求項37に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項40】
センス鎖RNAの3’末端に突出部として付加したヌクレオチドが二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと一致する1ないし4塩基の配列であり、アンチセンス鎖RNAの3’末端に突出部として付加したヌクレオチドが二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAに相補的な1ないし4塩基の配列である、請求項37に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項41】
配列番号301および配列番号332の塩基配列からなるRNAの対である、請求項40に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項42】
RNA鎖のうち少なくとも一方のヌクレオチドを構成するリボースまたはリン酸バックボーンの少なくとも一部または全部が修飾されている、請求項31から40のいずれか1項に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項43】
リボースまたはリン酸バックボーンの修飾が、リボースの2’水酸基をH、OR、R、R’OR、SH、SR、NH2、NHR、NR2、N3、CN、F、Cl、Br、およびIから選択される置換基に置換する修飾(Rはアルキルまたはアリールを、およびR’はアルキレンを示す)、リボースを4’チオ体とする修飾、ならびに、リン酸バックボーンの修飾はホスホロチオエート体、ホスホロジチオエート体、アルキルホスホネート体、またはホスホロアミデート体とする修飾、から選択される1または複数の修飾からなる、請求項42に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項44】
二重鎖形成部が、配列番号318および配列番号319の塩基配列からなるRNAの対である、請求項43に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項45】
細胞にトランスフェクションしたとき、Bcl−2タンパク質の発現を、オリゴ二本鎖RNAが存在しない場合に比べて抑制することができる、請求項31から44のいずれか1項に記載のオリゴ二本鎖RNA。
【請求項46】
配列番号288ならびに配列番号295ないし配列番号300から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTおよび5’末端の6塩基を除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて6塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部と一致する塩基配列を有する核酸。
【請求項47】
配列番号319ならびに配列番号326ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTおよびそれに続く6塩基を除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端に、あわせて6塩基を付加した、bcl−2 mRNAの一部と相補的な塩基配列を有する核酸。
【請求項48】
配列番号288ないし配列番号300から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端にbcl−2 mRNAと一致するあわせて2塩基を付加した塩基配列を有する核酸。
【請求項49】
配列番号319ないし配列番号331から選ばれるいずれか1つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列の3’末端および/または5’末端にbcl−2 mRNAに相補的なあわせて2塩基を付加した塩基配列を有する核酸。
【請求項50】
RNA塩基配列中に、1ないし複数の欠失、置換、挿入または付加した塩基を含み、かつオリゴ二本鎖RNAを構成したときにBcl−2タンパク質発現抑制活性を保持する、請求項46から請求項49のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項51】
RNAのリボヌクレオチドの一部がデオキシリボヌクレオチドないし修飾ヌクレオチドに置換されている、請求項46に記載の核酸。
【請求項52】
配列番号305ないし配列番号317から選ばれるいずれか1つの塩基配列を有する、請求項51に記載の核酸。
【請求項53】
RNAの3’末端または5’末端にヌクレオチドを1ないし4塩基付加した請求項46から請求項52のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項54】
RNAの3’末端または5’末端に付加した1ないし4塩基のヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドである、請求項53に記載の核酸。
【請求項55】
RNAの3’末端に付加したヌクレオチドがdTdTである、請求項53に記載の核酸。
【請求項56】
RNAの3’末端に付加したヌクレオチドが二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAと一致する配列、または、二重鎖形成部に続いてbcl−2 mRNAに相補的な配列である、請求項53に記載の核酸。
【請求項57】
配列番号301または配列番号332の塩基配列を有する、請求項56に記載の核酸。
【請求項58】
ヌクレオチド鎖を構成するリボースまたはリン酸バックボーンの一部または全体が修飾されている、請求項46から57のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項59】
配列番号288ないし配列番号300ならびに、配列番号319ないし配列番号331から選ばれるいずれか一つの塩基配列における3’末端の2塩基のdTを除いた部分からなる塩基配列を有し、さらに当該塩基配列中のウリジン(U)がチミン(T)である塩基をデオキシリボヌクレオチドとして含む核酸。
【請求項60】
塩基配列中に、1ないし複数の欠失、置換、挿入または付加した塩基を含む核酸であって、当該核酸がテンプレートとなって、オリゴ二本鎖RNAを構成したときにBcl−2タンパク質発現抑制活性を有するRNAを発現する、請求項59に記載の核酸。
【請求項61】
オリゴ二本鎖RNAを細胞内に移行させるのに有効な担体と請求項31から請求項45のいずれか1項に記載のオリゴ二本鎖RNAとの複合体を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項62】
オリゴ二本鎖RNAを細胞内に移行させるのに有効な担体が、カチオン性担体である、請求項61に記載の医薬組成物。
【請求項63】
オリゴ二本鎖RNA 1重量部に対して担体を1〜200重量部を含む、請求項61または請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項64】
オリゴ二本鎖RNA 1重量部に対して担体を2.5〜100重量部を含む、請求項61または請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項65】
オリゴ二本鎖RNA 1重量部に対して担体を10〜20重量部を含む、請求項61または請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項66】
請求項59または請求項60に記載の核酸を含むオリゴ二本鎖RNAを生成するための核酸を含む医薬組成物。
【請求項67】
Bcl−2タンパク質の発現抑制が所望される疾患の治療および/または予防のための請求項63から請求項64のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項68】
アポトーシスの促進が所望される疾患の治療および/または予防のための、請求項67に記載の医薬組成物。
【請求項69】
癌の治療および/または予防のための請求項67に記載の医薬組成物。
【請求項70】
血液学的悪性疾患の治療および/または予防のための請求項67に記載の医薬組成物。
【請求項71】
Bcl−2タンパク質発現抑制活性を有するオリゴ二本鎖RNAをスクリーニングする方法であって、
1)配列番号11および配列番号92、配列番号30および配列番号111、配列番号36および配列番号117、配列番号43および配列番号124、配列番号55および配列番号136、配列番号62および配列番号143、ならびに配列番号77および配列番号158で構成されるオリゴ二本鎖RNAの19塩基対の二重鎖形成部を含む、25から27塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖RNAの群をスクリーニング対象として用い、
2)1)のオリゴ二本鎖RNAを細胞にトランスフェクションした場合の、bcl−2 mRNA量の減少またはBcl−2タンパク質発現の抑制を評価する、
ことからなる、前記方法。

【国際公開番号】WO2004/106511
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506507(P2005−506507)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007378
【国際出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【出願人】(000004156)日本新薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】