説明

C−FMSキナーゼの阻害剤

本発明は、式(I)
【化1】


[式中、A、R、R、X、YおよびWは、本明細書に示す通りである]
で表される化合物ばかりでなくこれらの溶媒和物、水化物、互変異性体または製薬学的に受け入れられる塩に関し、これらは蛋白質チロシンキナーゼ、特にc−fmsキナーゼを阻害する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
他の出願との関連
本出願は、2004年4月26日付けで出願したUSSN 10/831,216(現在では )[2003年4月25日付けで出願した仮出願番号60/465,204の利点を35U.S.C.§119(e)の下で請求した]の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、蛋白質チロシンキナーゼ阻害剤として機能する新規な化合物に関する。より詳細には、本発明は、c−fmsキナーゼの阻害剤として機能する新規な化合物に関する。
【0003】
蛋白質キナーゼは、アデノシン5’三燐酸(ATP)の末端ホスフェートを蛋白質のチロシン、セリンおよびトレオニン残基が有するヒドロキシ基に移す転移に触媒作用を及ぼすことでシグナル伝達経路の鍵となる成分として働く酵素である。その結果として、蛋白質キナーゼの阻害剤および基質は蛋白質キナーゼが活性化する結果として生理学的に起こる事を評価するに価値有るツールである。哺乳動物に正常または変異蛋白質キナーゼが過剰に発現するか或は不適切に発現することが数多くの疾患(癌および糖尿病を包含)の発症に重要な役割を果たすことが立証されている。
【0004】
蛋白質キナーゼは下記の2種類に分類分け可能である:チロシン残基を優先的に燐酸化する蛋白質キナーゼ(蛋白質チロシンキナーゼ)およびセリンおよび/またはトレオニン残基を優先的に燐酸化する蛋白質キナーゼ(蛋白質セリン/トレオニンキナーゼ)。蛋白質チロシンキナーゼは多様な機能を果たし、その機能は細胞の増殖および分化の刺激から細胞増殖の阻止の範囲に及ぶ。それらは受容体蛋白質チロシンキナーゼまたは細胞内蛋白質チロシンキナーゼのいずれかであるとして分類分け可能である。受容体蛋白質チロシンキナーゼは細胞外リガンド結合領域および固有のチロシンキナーゼ活性を有する細胞内触媒領域を有し、20のサブファミリーに分けられる。
【0005】
上皮細胞増殖因子(「EGF」)ファミリーの受容体チロシンキナーゼ[HER−1、HER−2/neuおよびHER−3受容体を包含]は、細胞外結合領域、膜貫通領域および細胞内細胞質触媒領域を含有する。受容体との結合によって、多数の細胞内チロシンキナーゼ依存燐酸化プロセスの開始がもたらされ、それによって最終的に腫瘍遺伝子の転写がもたらされる。このファミリーの受容体は乳癌、結腸直腸癌および前立腺癌と関係している。
【0006】
インスリン受容体(「IR」)とインスリン様成長因子I受容体(「IGF−1R」)は構造的および機能的に関連しているが、それらが及ぼす生物学的効果は異なる。IGF−1Rの過剰発現は乳癌に関係している。
【0007】
血小板由来成長因子(「PDGF」)受容体は細胞反応(増殖、移動および生存を包含)を媒介し、そしてそれには、PDGFR、幹細胞因子受容体(c−kit)およびc−fmsが含まれる。そのような受容体はアテローム性動脈硬化症、線維症および増殖性硝子体網膜症などの如き疾患に関係している。それらはIII型受容体チロシンキナーゼファミリーであり、それらはPDGFであるか或はPDGFでない可能性もある。
【0008】
線維芽細胞増殖因子(「FGR」)受容体は、血管形成、四肢増殖、いろいろな種類の
細胞の増殖および分化に関与する4種類の受容体で構成されている。
【0009】
内皮細胞の効力のある分裂促進因子である血管内皮細胞増殖因子(「VEGF」)をいろいろな腫瘍(卵巣癌を包含)が多量に産生する。VEGFの公知受容体はVEGFR−1(Flt−1)、VEGFR−2(KDR)、VEGFR−3(Flt−4)と表示される。関連した群の受容体であるtie−1およびtie−2キナーゼが血管内皮細胞および造血細胞内に同定された。VEGF受容体は脈管形成および血管新生に関係している。
【0010】
また、細胞内蛋白質チロシンキナーゼは非受容体型蛋白質チロシンキナーゼとしても知られる。そのようなキナーゼが24種類以上同定されて、11のサブファミリーに分類分けされた。セリン/トレオニン蛋白質キナーゼも細胞蛋白質チロシンキナーゼと同様に主に細胞内に存在する。
【0011】
蛋白質チロシンキナーゼ活性が異常であることに関連した病理学的状態の例は糖尿病、血管新生、乾癬、再狭窄、眼疾患、統合失調症、関節リウマチ、心疾患および癌である。従って、効力のある選択的低分子蛋白質チロシンキナーゼ阻害剤の必要性が存在する。特許文献1、2、3、4、5、6および7は、そのような阻害剤を合成する最近の試みを示すものである。
【特許文献1】米国特許第6,383,790号
【特許文献2】米国特許第6,346,625号
【特許文献3】米国特許第6,235,746号
【特許文献4】米国特許第6,100,254号
【特許文献5】PCT国際出願WO 01/47897
【特許文献6】PCT国際出願WO 00/27820
【特許文献7】PCT国際出願WO 02/068406
【発明の開示】
【0012】
発明の要約
本発明は、c−fmsキナーゼの効力のある阻害剤を提供することで、そのような効力のある選択的低分子蛋白質チロシンキナーゼ阻害剤の現在の必要性を取り扱うものである。本発明は、式I:
【0013】
【化1】

【0014】
[式中、
Aは、
各々が場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、スルホンアミドアルキル、グアニジノアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよいフェニル、ナフチルもしくはビフェニル、または
N、OまたはSから選択されるヘテロ原子を1から4個有しかつ場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、スルホンアミドアルキル、グアニジノアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよい5員から7員の単環式もしくは8員から10員の二環式複素芳香環、
であり、
は、−H、アリール、−COR、−COR、−COOR、−CONR、−SOまたは−SONRであり、
Xは、−CO−、−C(=NH)−、−CS−、−CON(R)−、−CS(NR)−、−SO−または−CR−であり、
Yは、−S−、−SO−、−SO−、−O−または直接結合であり、
は、各々が場合により1個以上のハロゲンで置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールであり、そして
Wは、
各々が場合によりC1−4アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−NHCOR、−NHSO、−NO、−SOR、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよいフェニル、ナフチルもしくはビフェニル、または
N、OまたはSから選択されるヘテロ原子を1から4個有しかつ場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−OCO−アルキルアミノ、−OCO−アルキルアミド、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRで置換されていてもよい5員から6員の単環式もしくは8員から10員の二環式複素環もしくは複素芳香環、
である]
で表される新規な化合物またはこれらの溶媒和物、水化物、互変異性体もしくは製薬学的に受け入れられる塩に向けたものである。
【0015】
前記式Iで表される化合物は特にc−fms蛋白質チロシンキナーゼの効力のある阻害剤である。
【0016】
本発明は、また、式Iで表される少なくとも1種の化合物を治療的に有効な量で投与することで哺乳動物における蛋白質チロシンキナーゼ活性を阻害する方法にも関する。
発明の詳細な説明
本発明は、式I:
【0017】
【化2】

【0018】
[式中、
Aは、
各々が場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、スルホンアミドアルキル、グアニジノアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよいフェニル、ナフチルもしくはビフェニル、または
N、OまたはSから選択されるヘテロ原子を1から4個有しかつ場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、スルホンアミドアルキル、グアニジノアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよい5員から7員の単環式もしくは8員から10員の二環式複素芳香環、
であり、
は、−H、アリール、−COR、−COR、−COOR、−CONR、−SOまたは−SONRであり、
Xは、−CO−、−C(=NH)−、−CS−、−CON(R)−、−CS(NR)−、−SO−または−CR−であり、
Yは、−S−、−SO−、−SO−、−O−または直接結合であり、
は、各々が場合により1個以上のハロゲンで置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールであり、そして
Wは、
各々が場合によりC1−4アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−NHCOR、−NHSO、−NO、−SOR、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよいフェニル、ナフチルもしくはビフェニル、または
N、OまたはSから選択されるヘテロ原子を1から4個有しかつ場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−OCO−アルキルアミノ、−OCO−アルキルアミド、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−S
、−SOまたは−SONRで置換されていてもよい5員から6員の単環式もしくは8員から10員の二環式複素環もしくは複素芳香環、
であり、
およびRは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロアリールである]
で表される新規な化合物またはこれらの溶媒和物、水化物、互変異性体もしくは製薬学的に受け入れられる塩に向けたものである。
【0019】
好適なサブセットの化合物は、式II:
【0020】
【化3】

【0021】
[式中、
Aは、場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、スルホンアミドアルキル、グアニジノアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよいフェニルであり、そして
Yは、直接結合、−O−または−S−であり、
は、各々が場合により1個以上のハロゲンで置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールであり、
Wは、各々が場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−OCO−アルキルアミノ、−OCO−アルキルアミド、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRで置換されていてもよいフリル、イミダゾールもしくはピロリルであり、
およびRは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロアリールである]
で表される化合物またはこれらの溶媒和物、水化物、互変異性体もしくは製薬学的に受け入れられる塩である。
【0022】
式IIで表される好適な化合物の一群は、
Aがフェニルであり、
Yが直接結合、−O−または−S−であり、
が各々が場合により1個以上のハロゲンで置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールであり、そして
Wが場合により−CNまたは−NOで置換されていてもよいフランである、
化合物群である。
【0023】
式IIで表される特に好適な化合物の一群は、
Aがフェニルであり、
Yが直接結合であり、
がシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールであり、
Wがシアノフランである、
化合物群である。
【0024】
式IIで表される特に好適な化合物の例は下記である:
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−シクロヘキソ−1−エニル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸ビフェニル−2−イルアミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸[2−(5−メチル−フラン−2−イル)−フェニル]−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−フラン−2−イル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−チオフェン−2−イル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−チオフェン−3−イル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−フラン−3−イル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−シクロヘキシル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸[2−(1H−ピラゾール−3−イル)−フェニル]−アミド、および
これらの製薬学的に受け入れられる塩。
【0025】
式IIで表される特に好適な化合物の別の群は、
Aがフェニルであり、
Yが−O−または−S−であり、
が場合により5個以下のハロゲンで置換されていてもよいアルキルであり、
Wがニトロフランである、
化合物群である。
【0026】
特に好適な化合物の追加的例は下記である:
5−ニトロ−フラン−2−カルボン酸[2−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロ−エチルスルファニル)−フェニル]−アミド、
5−ニトロ−フラン−2−カルボン酸(2−エトキシフェニル)−アミド、および
これらの製薬学的に受け入れられる塩。
【0027】
本発明は、また、哺乳動物における蛋白質チロシンキナーゼ活性を阻害する方法に関し、この方法は、式Iで表される少なくとも1種の化合物を治療的に有効な量で投与することによる方法である。好適なチロシンキナーゼはc−fmsである。
【0028】
本発明は式Iで表される化合物全部の鏡像異性体、ジアステレオマーおよび互変異性体形態ばかりでなくそれらのラセミ混合物も包含すると考えている。加うるに、式Iで表される化合物の数種はプロドラッグ、即ち有効薬剤の誘導体でもあり得、これは、有効薬剤に比べて優れた送達能力および治療値を有する。プロドラッグは生体内で酵素または化学プロセスによって有効薬剤に変化する。
【0029】
I. 定義
用語「アルキル」は、特に明記しない限り、炭素原子数が12以下の直鎖および分枝鎖両方の基を指し、これらに限定するものでないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシルを包含する。
【0030】
用語「シクロアルキル」は、炭素原子数が3から8の飽和もしくは部分不飽和環を指す。その環に場合によりアルキル置換基が存在していてもよい。その例にはシクロプロピル、1,1−ジメチルシクロブチル、1,2,3−トリメチルシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘキセニルが含まれる。
【0031】
用語「ヘテロシクリル」は、N、OまたはSから選択されるヘテロ原子を少なくとも1個含有する炭素原子数が3から7の非芳香(即ち飽和もしくは部分不飽和)環を指す。その環に場合によりアルキル置換基が存在していてもよい。その例にはテトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、ピペリジル、2,5−ジメチルピペリジル、モルホリニル、ピペラジニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、イミダゾリジニルおよびイミダゾリニルが含まれる。
【0032】
用語「ヘテロシクリルアルキル」は、ヘテロシクリル置換基を含有するC1−6アルキル基を指す。その例にはジヒドロピラニルエチルおよび2−モルホリニルプロピルが含まれる。
【0033】
用語「ヒドロキシアルキル」は、アルキル鎖に沿った炭素原子のいずれかにヒドロキシル基が少なくとも1個結合していることを指す。
【0034】
用語「アミノアルキル」は、アルキル鎖に沿った炭素原子のいずれかに第一級もしくは第二級アミノ基が少なくとも1個結合していることを指し、用語「アミノアルキル」を用語「アルキルアミノ」と互換的に用いることもあり得る。
【0035】
用語「アルコキシアルキル」は、アルキル鎖に沿った炭素原子のいずれかにアルコキシ基が少なくとも1個結合していることを指す。
【0036】
用語「ポリアルコキシアルキル」は長鎖アルコキシ化合物を指し、大きさが控えめであるか或は単分散しているポリエチレングリコールを包含する。
【0037】
用語「チオアルキル」は、アルキル鎖に沿った炭素原子のいずれかに硫黄基が少なくとも1個結合していることを指す。その硫黄基の酸化状態は如何なる酸化状態であってもよく、それにはスルホキサイド、スルホンおよびスルフェートが含まれる。
【0038】
用語「カルボキシアルキル」は、アルキル鎖に沿った炭素原子のいずれかにカルボキシレート基が少なくとも1個結合していることを指す。用語「カルボキシレート基」はカルボン酸およびカルボン酸のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルエステルを包含する。
【0039】
用語「複素芳香」または「ヘテロアリール」は、環のいずれかがN、OまたはS(この窒素および硫黄原子は許容される如何なる酸化状態で存在していてもよい)から選択されるヘテロ原子を1から4個含有していてもよい5員から7員の単環式もしくは8員から10員の二環式の芳香環系を指す。その例にはベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キノリニル、チアゾリルおよびチエニルが含まれる。
【0040】
用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール置換基を有するC1−6アルキル基を指す。その例にはフリルエチルおよび2−キノリニルプロピルが含まれる。
【0041】
用語「ヘテロ原子」は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子(この窒素および硫黄原子は許容される如何なる酸化状態で存在していてもよい)を指す。
【0042】
用語「アルコキシ」は、特に明記しない限り、酸素原子と結合している炭素原子数が12以下の直鎖もしくは分枝鎖基を指す。その例にはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシおよびブトキシが含まれる。
【0043】
用語「アリール」は、環内に炭素を6から12個含有する単環式もしくは二環式芳香環系を指す。その環に場合によりアルキル置換基が存在していてもよい。その例にはベンゼン、ビフェニルおよびナフタレンが含まれる。
【0044】
用語「アラルキル」は、アリール置換基を含有するC1−6アルキル基を指す。その例にはベンジル、フェニルエチルまたは2−ナフチルメチルが含まれる。
【0045】
用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール置換基を含有するC1−6アルキル基を指す。その例にはフリルメチルおよびピリジルプロピルが含まれる。
【0046】
用語「アリールオキシ」は、酸素原子がアリール置換基と結合していることを指す。その例にはフェノキシおよびベンジルオキシが含まれる。
【0047】
用語「アリールアルコキシ」は、アルコキシ基がアリール置換基と結合していることを指す。その例にはフェニルメチルエーテルが含まれる。
【0048】
用語「アシル」は、基−C(O)R[ここで、Rはアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルである]を指す。「アシル化剤」は−C(O)R基を分子に付加させる作用剤である。
【0049】
用語「スルホニル」は、基−S(O)[ここで、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルである]を指す。「スルホニル化剤」は−S(O)基を分子に付加させる作用剤である。
【0050】
II. 治療用途
前記式Iで表される化合物は蛋白質チロシンキナーゼ、例えばc−fmsなどの効力のある新規な阻害剤に相当し、そのようなキナーゼの作用の結果としてもたらされる疾患の予防および治療で用いるに有用であり得る。
【0051】
本発明は、また、蛋白質チロシンキナーゼを阻害する方法も提供し、この方法は、前記蛋白質チロシンキナーゼを有効阻害量の式Iで表される化合物の中の少なくとも1種と接触させることを含んで成る。好適なチロシンキナーゼはc−fmsである。蛋白質チロシンキナーゼを阻害する1つの態様では、式Iで表される化合物の中の少なくとも1種を公知のチロシンキナーゼ阻害剤と一緒にする。
【0052】
本発明のいろいろな態様において、前記式Iで表される化合物で阻害する蛋白質チロシ
ンキナーゼは細胞内、哺乳動物内または生体外に存在する。哺乳動物(ヒトを包含)の場合、式Iで表される化合物の中の少なくとも1種の製薬学的に受け入れられる形態を治療的に有効な量で投与する。
【0053】
本発明は、更に、哺乳動物(ヒトを包含)における癌を治療する方法も提供し、この方法は、式Iで表される少なくとも1種の化合物の製薬学的に受け入れられる組成物を治療的に有効な量で投与することによる方法である。典型的な癌には、これらに限定するものでないが、卵巣癌、子宮癌、乳癌、結腸癌、胃癌、ヘアリー細胞白血病および非小細胞肺癌が含まれる。本発明の1つの態様では、式Iで表される少なくとも1種の化合物を有効量の化学療法薬と組み合わせて有効量で投与する。
【0054】
本発明は、また、哺乳動物(ヒトを包含)における心臓血管および炎症疾患を治療する方法も提供し、この方法は、式Iで表される化合物の中の少なくとも1種の製薬学的に受け入れられる形態を治療的に有効な量で投与することによる方法である。有効に治療可能な疾患の例には、アテローム性動脈硬化症、心臓肥大、糸球体腎炎、関節リウマチ、乾癬、糖尿病、腫瘍関連血管新生、再狭窄、統合失調症およびアルツハイマー型認知症が含まれる。
【0055】
本発明の化合物を蛋白質チロシンキナーゼ阻害剤として用いる時、これを約0.5mgから約10g、好適には約0.5mgから約5gの投薬範囲内の有効量で日に1回または分割して投与してもよい。その投薬量は投与経路、受益者の健康、体重および年齢、治療頻度および同時治療および非関連治療の存在の如き要因の影響を受けるであろう。
【0056】
前記式Iで表される化合物は公知の製薬学的に受け入れられる担体のいずれかを含有して成る製薬学的組成物に調製可能である。典型的な担体には、これらに限定するものでないが、適切な溶媒、分散用媒体、被膜、抗菌剤、抗菌・カビ剤および等張剤のいずれも含まれる。本製剤の成分になり得る典型的な賦形剤には、また、充填剤、結合剤、崩壊剤および滑剤も含まれる。
【0057】
前記式Iで表される化合物の製薬学的に受け入れられる塩には、無機もしくは有機酸もしくは塩基から生じる通常の無毒の塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。そのような酸付加塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、クエン酸塩、樟脳酸、ドデシル硫酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、しゅう酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、こはく酸塩、硫酸塩および酒石酸塩が含まれる。塩基塩にはアンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばナトリウムおよびカリウム塩など、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウム塩など、有機塩基との塩、例えばジシクロヘキシルアミン塩など、およびアミノ酸、例えばアルギニンなどとの塩が含まれる。また、塩基性窒素含有基に第四級化を例えばアルキルハライドなどを用いて受けさせることも可能である。
【0058】
本発明の製薬学的組成物は、これの意図した目的を達成する如何なる手段で投与されてもよい。その例には、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、口腔または眼経路による投与が含まれる。別法としてか或は同時に、投与を経口経路で実施することも可能である。非経口投与に適した製剤には、水溶性形態の本活性化合物、例えば水溶性塩などが入っている水溶液、酸性溶液、アルカリ性溶液、デキストロース−水溶液、等張性炭水化物溶液およびシクロデキストリン包接錯体が含まれる。
【0059】
III. 製造方法
【0060】
【化4】

【0061】
スキーム1に、式Iで表される化合物の一般的製造方法を示す。
【0062】
Yが直接結合である式1−2で表される化合物は、式1−1で表されるアミノ化合物にオルソハロゲン置換、好適には臭素置換を受けさせた後にホウ素酸またはホウ素酸エステルを使用[Suzuki反応、この場合のRYMはRB(OH)またはホウ素酸エステルである]または錫反応体を使用[Stille反応、この場合のRYMはRSn(アルキル)である]した金属触媒使用連成反応を実施することで得ることができる(論評に関してはN.Miyaura、A.Suzuki、Chem.Rev.、95:2457(1995)、J.K.Stille、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、25:508024(1986)およびA.Suzuki、Metal−Catalyzed Coupling Reactions、F.Deiderich、P.Stang編集、Wiley−VCH、Weinheim(1988)を参照)。そのような臭素置換に好適な条件は、N−ブロモスクシニミド(NBS)を適切な溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)またはアセトニトリルに入れて用いる条件である。金属触媒使用連成、好適にはSuzuki反応は、標準的な方法に従い、好適にはパラジウム触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)など、塩基水溶液、例えばNaCO水溶液などおよび適切な溶媒、例えばトルエン、エタノール、ジメトキシエタン(DME)またはDMFなどの存在下で実施可能である。
【0063】
Yが−O−または−S−である式1−2で表される化合物は、式1−3(式中、Lは脱離基、例えばハロゲン、好適にはフルオロまたはクロロなどである)で表される化合物に求核芳香置換をアルコールROHを用いて受けさせることでエーテル(Y=−O−)を生じさせるか或はチオールRSHを用いて受けさせることでスルフィド(Y=−S−)を生じさせた後にニトロ基に還元を受けさせることで得ることができる。求核芳香置換は適切な塩基、例えばトリエチルアミン(NEt)またはKCOなどの存在下の適切な溶媒、例えばDMFなど中で実施可能である。ニトロの還元は標準的な合成方法(論評に関してはM.Hudlicky、Reduction in Organic Chemistry、Wiley、NY(1984)を参照)に従って実施可能であり、それには、パラジウム触媒を用いた水素化分解または鉄(0)およびNHClを用いた処理などの如き好適な方法が含まれる(例えばS.Mitsumori他、J.Med.Chem.、46:2436−45(2003)を参照)。
【0064】
Yが−SO−または−SO−である式1−2で表される化合物は、式1−3で表される化合物にこの上に記述した如きチオールを用いた求核芳香置換を受けさせた後に硫黄に酸化を受けさせそしてニトロ基に還元を受けさせることで得ることができる。スルホキサイドは、適切な酸化剤、例えば1当量のMCPBAなどを用いた酸化またはNaIOを用いた処理などで得ることができ(例えばJ.Regan他、J.Med.Chem.、46:4676−86(2003)を参照)、そしてスルホンは、MCPBAを2当量用いるか或は4−メチルモルホリンN−オキサイドおよび触媒量の四酸化オスミウムを用いた処理で得ることができる(例えばPCT出願WO 01/47919を参照)。別法として、Yが−SO−である式1−2で表される化合物は、ニトロハロ化合物にスルフィネートアニオンWSOM(M=Li、NaまたはK;例えばL.FieldおよびR.D.Clark、Organic Synthesis、Collective Vol.IV:674−677、John Wiley and Sons,Inc.(1963)を参照)を用いた求核芳香置換を受けさせた後にニトロ基に還元をこの上に記述した如く受けさせることで得ることができる。
【0065】
Xが−CO−である式1−4で表される化合物の調製は、アミド結合を生じさせるに適した標準的な手順(論評に関してはM.BodanskyおよびA.Bodansky、The Practice of Peptide Synthesis、Springer−Verlag、NY(1984)を参照)に従って式1−2で表される化合物をカルボン酸WCOOHと反応させるか或は酸クロライドWCOClまたは活性エステルWCORq(ここで、Rqは脱離基、例えばペンタフルオロフェニルまたはN−スクシニミドなどである)と反応させることで実施可能である。WCOOHを用いた連成に好適な反応条件は下記である:Wがフランの時には、塩化オクザリルをDCMに入れてDMFを触媒として用いることで酸クロライドWCOClを生じさせた後に連成をトリアルキルアミン、例えばDIEAなどの存在下で起こさせ、Wがピロールの時には、塩酸1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDCI)および塩酸1−ヒドロキシベンゾトリアゾール−6−スルホンアミドメチル(HOBt)を用い、そしてWがイミダゾールの時の好適な条件は、ヘキサフルオロ燐酸ブロモトリピロリジノホスホニウム(PyBrOP)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)をDCMに入れて用いる条件である。
【0066】
Xが−SO−である式1−4で表される化合物の調製は、塩化スルホニルWSOClまたは臭化スルホニルWSOBrと式1−2で表される化合物を適切な塩基、例えばNEtなどの存在下で反応させることで実施可能である。
【0067】
Xが−C(=NH)−である式1−4で表される化合物は、式1−2で表される化合物とイミデートWC(C=NH)ORs(ここで、RsはC−Cアルキル、好適にはメチルまたはエチルである)を塩基、例えばNEtなどの存在下で反応させることで得ることができる。別法として、式1−2で表される化合物とニトリルWCNをルイス酸、例えばトリメチルアルミニウム(R.Garigipati、Tetrahedron Lett.、31:1969−71(1990)を参照)、塩化銅(I)(G.Rousselet他、Tetrahedron Lett.、34:6395(1993)を参照)またはLn(III)塩(J.Fosberg他、J.Org.Chem.、52:1017(1987)を参照)の存在下で反応させることで式1−4で表される化合物を生じさせることも可能である。最後に、Xが−CO−の時にこの上に概略を示した手順を用いて式1−2で表される化合物と酸WCOHを連成させてアミドを生じさせた後にNHCl/MeAlを用いた処理をこの上に記述した如く[Garigipati(同上)]実施することでそのような化合物を得ることができる。
【0068】
Xが−CON(R)−である式1−4で表される化合物は、尿素を生じさせるに適し
た標準的合成手順に従い、式1−2で表される化合物をRがHであるイソシアネートWNCOまたは塩化カルバミルWN(R)COCl(この場合のRはHではない)と酸捕捉剤、例えばトリアルキルアミン(例えばDIEAなど)の存在下で反応させることで得ることができる。
【0069】
Xが−CR−である式1−4で表される化合物は、式1−4で表される化合物とアルデヒドWCHO(この場合のRおよびRはHである)またはケトンWCOR(この場合のRはHである)を適切な還元剤、例えばトリアセトキシホウ水素化ナトリウムなどの存在下で反応させることで得ることができる(例えばA.F Abdel−Magid他、J.Org.Chem.、61:3849−62(1969)を参照)。別法として、式WCR−L(式中、Lは適切な脱離基、例えば−Br、−I、−Cl、−OMsまたは−OTsなどである)で表される化合物と式1−2で表される化合物を塩基、例えばKCOまたはNEtなどの存在下で反応させることで式1−4で表される化合物を生じさせることも可能である。
【0070】
Xが−CS−または−CS(NR)−である式1−4で表される化合物は、Xが−CO−または−CON(R)−である式1−4で表される化合物にそれぞれP(例えばJ.S.Davidson、Synthesis.、359−61(1979)を参照)またはLawesson試薬(S.−O.,Lawesson他、Bull.Soc.Chim.Belg.87、223、293(1978)、論評に関してはM.P.CavaおよびM.I.Levinson、Tetrahedron、41:5061(1985)を参照)を用いた処理を受けさせることで得ることができる。
【0071】
式I中の環Aに存在させてもよい任意の置換は出発材料1−1または1−3に存在していてもよくそしてそのような場合にはそれがスキーム1に概略を示した合成全体に渡って保持されるであろうと理解する。別法として、以下に記述するいろいろな方法を用いて式Iで表される化合物にいろいろな置換基を導入することで式Iに関して挙げた任意の置換をもたらすことも可能であり、特に、それらを用いて更にまた式II、IIIおよびIVで表される化合物を生じさせることも可能である。式1−1または1−3中の環Aに存在させる脱離基に置換を受けさせる時期はスキーム1の前またはスキーム1中の如何なる段階であってもよい。そのような脱離基(好適にはフルオロまたはクロロ)に求核攻撃の目的で式1−3のニトロ基による活性化を受けさせる時、それらにアンモニアおよびアジドアニオンを用いるか或はアミン、アルコール、チオールおよび他の求核剤を用いた直接的求核芳香置換を適切な塩基、例えばKCO、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)またはNEtなどの存在下で受けさせてもよい。そのような脱離基が金属触媒を用いた連成に適する(好適にはブロモまたはトリフルオロメタンスルホニルオキシ)場合には、いろいろなクロスカップリング反応(例えばYが直接結合であるRYを導入することに関してこの上で考察した如きSuzukiまたはStille反応など)を実施してもよい。使用可能な他の金属触媒使用連成反応には、芳香および複素芳香アミノ化およびアミド化が含まれる(論評に関してはS.L.Buchwald他、Top.Curr.Chem.、219:131−209(2001)およびJ.F.Hartwig「Organopalladium Chemistry for Organic Synthesis」、Wiley Interscience、NY(2002)を参照)。
【0072】
ある場合には、式1−4の置換基にさらなる誘導体化を以下に記述する如く受けさせることで式Iの多種多様な例を生じさせることも可能である。式1−4で表される化合物に持たせた保護基の除去は標準的な合成方法に従って実施可能であり(Theodora W.GreeneおよびPeter G.M.Wuts、John Wiley and
Sons,Inc.、NY(1991))、その後、それにさらなる誘導体化を受けさ
せてもよい。1−4で表される化合物から式1−5で表される化合物を生じさせるさらなる誘導体化の例には、これらに限定するものでないが、式1−4で表される化合物が第一級もしくは第二級アミンを含有する場合にそのアミンをアルデヒドもしくはケトンと還元剤、例えばトリアセトキシホウ水素化ナトリウムなどの存在下で反応(この上に示したAbdel−Magidの文献を参照)させることで還元的にアルキル置換を起こさせてもよいか、酸クロライドまたはカルボン酸およびこの上に記述した如きアミド結合形成剤と反応させることでアミドを生じさせてもよいか、塩化スルホニルと反応させることでスルホンアミドを生じさせてもよいか、イソシアネートと反応させることで尿素を生じさせてもよいか、ハロゲン化アリールもしくはヘテロアリールとこの上に記述した如きパラジウム触媒の存在下で反応(この上に示したBuchwaldおよびHartwigの文献を参照)させることでアリールおよびヘテロアリールアミンを生じさせてもよいことが含まれる。加うるに、式1−4で表される化合物がハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールを含有する場合、そのような化合物にホウ素酸(例えばこの上に記述した如きSuzukiまたはStille連成)またはアミンもしくはアルコール(BuchwaldまたはHartwig型の連成、この上に示したBuchwaldおよびHartwigの文献を参照)を用いた金属触媒使用反応を受けさせることも可能である。式1−4で表される化合物がシアノ基を含有する場合、この基に加水分解を酸性もしくは塩基性条件下で受けさせることでアミドもしくは酸を生じさせてもよい。塩基性アミンに酸化を受けさせてN−オキサイドを生じさせてもよく、そして逆に、N−オキサイドに還元を受けさせて塩基性アミンを生じさせることも可能である。式1−4で表される化合物が非環状もしくは環状いずれかのスルフィドを含有する場合(式IIIで表される化合物の場合のように)、そのスルフィドにさらなる酸化を受けさせることで相当するスルホキサイドまたはスルホンを生じさせることも可能である(この上にYが−S−または−SO−である化合物に関してこの上に記述した如く)。
【実施例1】
【0073】
【化5】

【0074】
撹拌子およびVigreauxカラムを取り付けておいたフラスコにAr下で2−ホルミル−5−フランカルボン酸(2.8g、20ミリモル)、塩酸ヒドロキシルアミン(2.7g、40ミリモル)および無水ピリジン(50mL)を加えた。その混合物を85℃に加熱し、無水酢酸(40mL)を加えた後、その混合物を3時間撹拌した。60℃になるまで冷却した後、水(250mL)を加え、そしてその混合物を室温(RT)で70時間撹拌した。その混合物を濃塩酸で酸性にしてpH2にした後、3:1のジクロロメタン−イソプロパノール(8x100mL)を用いて抽出した。その有機層を一緒にして水(100mL)そして食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、真空下で濃縮することで表題の化合物を黄褐色の固体として得た(1.26g、46%)。H−NMR(CDOD;400MHz):δ14.05(br s、1H)、7.74(d、1H、J=3.8Hz)、7.42(d、1H、J=3.8Hz)。
【実施例2】
【0075】
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−フラン−2−イル−フェニル)−アミド
【0076】
【化6】

【0077】
a)2−フラン−2−イル−アニリン
【0078】
【化7】

【0079】
2−ブロモアニリン(100mg、0.58ミリモル)と2−フランホウ素酸(65mg、0.58ミリモル)の混合物にAr下で脱気を受けさせておいた2MのNaCO水溶液(3.0mL、6.0ミリモル)、Pd(PPh(34mg、0.030ミリモル)、エタノール(3mL)およびトルエン(6mL)を加えた。その混合物を80℃で3時間撹拌した。室温になるまで冷却した後、酢酸エチル(EtOAc)(20mL)および飽和NaHCO水溶液(20mL)を加え、そしてその有機層に濃縮を真空下で受けさせた。その残留物に濃縮をジクロロメタンおよびメタノールを用いて受けさせた後、シリカゲルを用いた調製用TLC(ヘキサン中10%の酢酸エチル)による精製を受けさせることで表題の化合物を明褐色の油として得た(45mg、51%)。H−NMR(CDCl;400MHz):δ7.50−6.50(m、7H)、4.23(br s、2H)。
b)5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−フラン−2−イル−フェニル)−アミド
【0080】
【化8】

【0081】
2−シアノ−5−フランカルボン酸(実施例1で調製したまま、41mg、0.30ミリモル)にアルゴン下でジクロロメタン(10mL)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(100μL)および塩化オクザリル(29μL、0.33ミリモル)を加えた後、その混合物を35分間撹拌した。溶媒を真空下で除去した後、その残留物に濃縮をトルエン(2x5mL)を用いて受けさせ、それをDMF(4mL)で取り上げた後、2−フラン−2−イルアニリン(この上の段階で調製したまま、50mg、0.3ミリモル)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(157μL、0.901ミリモル)をDMF(2mL)に入れることで生じさせた溶液に加えた。3.25時間後に酸クロライド(0.30ミリモル、この上に示したようにして調製)の相当する2番目の部分を加え、そしてその混合物を室温で67時間撹拌した。その混合物を飽和重炭酸ナトリウム(50mL)の中に注ぎ込んだ後、ジクロロメタン(3x20mL)で抽出した。その有機層を水(50mL)そして食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、真空下で濃縮した。その残留物をシリカゲルを用いた調製用薄層クロマトグラフィー(TLC)にかけてヘキサン中30%の酢酸エチルで溶離させることによる精製を実施することで表題の化合物を明黄褐色の固体として得た(9.5mg、11%)。H−NMR(CDCl;400MHz):δ9.90(br s、1H)、8.49(dd、1H、J=7.4、1.1Hz)、7.68(dd、1H、J=1.8、0.7Hz)、7.38(m、1H)、7.30(d、1H、J=3.7Hz)、7.23(d、1H、J=3.7Hz)、7.20(dd、1H、J=7.5、1.2Hz)、6.71(dd、1H、J=3.4、0.7Hz)、6.61(m、1H)。LC−MS(ESI、m/z):C1611として計算した値:279.1(M+H);測定値:279.1。
【実施例3】
【0082】
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−フラン−3−イル−フェニル)−アミド
【0083】
【化9】

【0084】
a)2−フラン−3−イル−アニリン
【0085】
【化10】

【0086】
3−ブロモアニリン(200mg、1.16ミリモル)と3−フランホウ素酸(130mg、1.16ミリモル)の混合物にアルゴン下で2MのNaCO水溶液(6.0mL、12ミリモル)、Pd(PPh(68mg、0.06ミリモル)、エタノール(6mL)およびトルエン(12mL)を加えた。その混合物を80℃で3時間撹拌した。室温になるまで冷却した後、EtOAc(50mL)および飽和NaHCO水溶液(50mL)を加えて、層分離を起こさせた。その有機層に濃縮を真空下で受けさせ、その結果として得た残留物に濃縮をジクロロメタンおよびメタノールを用いて受けさせた後、シリカゲルを用いた調製用TLC(ヘキサン中10%の酢酸エチル)による精製を受けさせることで表題の化合物を明褐色の油として得た(109mg、59%)。H−NMR(CDCl;400MHz):δ7.66(dd、1H、J=1.9、1.6Hz)、7.52(t、1H、J=1.7Hz)、7.21(dd、1H、J=7.6、1.6Hz)、7.13(m、1H)、6.82−6.80(m、1H)、6.78−6.76(m、1H)、7.64(dd、1H、J=1.8、0.8Hz)、3.85(br s、2H)。
b)5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−フラン−3−イル−フェニル)−アミド
【0087】
【化11】

【0088】
2−シアノ−5−フランカルボン酸(実施例1で調製したまま、93mg、0.68ミリモル)にAr下でジクロロメタン(20mL)、DMF(50μL)および塩化オクザリル(65μL、0.75ミリモル)を加えた後、その混合物を25分間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残存する褐色固体をDMF(4mL)で取り上げた後、2−(3−フリル)−アニオン(この上の段階で調製したまま、109mg、0.68リモル)とDIEA(355μL、2ミリモル)をDMF(8mL)に入れることで生じさせた溶液に加えた。その混合物を室温で2時間30分撹拌した後、60℃で17時間撹拌した。その混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)の中に注ぎ込んだ後、ジクロロメタン(3x30mL)で抽出した。その有機層を水(50mL)そして食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、真空下で濃縮した。その粗残留物をシリカゲルを用いた調製用TLCにかけてヘキサン中30%の酢酸エチルで溶離させることによる精製を実施することで表題の化合物を明黄褐色の固体として得た(23mg、12%)。H−NMR(CDCl;400MHz):δ8.41(br s、1H)、8.36(d、1H、J=8.4Hz)、7.66−7.64(m、2H)、7.42−7.36(m、2H)、7.29−7.20(m、3H)、7.23(d、1H、J=3.7Hz)、7.20(dd、1H、J=7.5、1.2Hz)、6.71(dd、1H、J=3.4、0.7Hz)、6.65(m、1H)。LC−MS(ESI、m/z):C1611として計算した値:279.1(M+H);測定値:279.1。
【実施例4】
【0089】
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸ビフェニル−2−イルアミド
【0090】
【化12】

【0091】
2−シアノ−5−フランカルボン酸(実施例1で調製したまま、100mg、0.73ミリモル)にアルゴン下でジクロロメタン(20mL)、DMF(50μL)および塩化オクザリル(70μL、0.8ミリモル)を加えた後、その混合物を1時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残存する暗黄色油をジクロロメタン(10mL)で取り上げた後、2−アミノビフェニル(56mg、0.33リモル)とDIEA(173μL、0.993ミリモル)をジクロロメタン(5mL)に入れることで生じさせた溶液に加えた。その混合物を室温で17時間撹拌し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(500mL)の中に注ぎ込んだ後、ジクロロメタン(3x10mL)で抽出した。その有機層を水(50mL)そして食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、真空下で濃縮した。その結果として得た残留物をシリカゲルを用いた調製用TLCにかけてヘキサン中30%の酢酸エチルで溶離させることによる精製を実施することで表題の化合物をオフホワイトの固体として得た(24mg、11%)。H−NMR(CDCl;400MHz):δ8.44(dd、1H、J=8.2、0.9Hz)、8.32(br s、1H)、7.57−7.24(m、9H)、7.42−7.36(m、2H)、7.21(d、1H、J=3.7Hz)、7.14(d、1H、J=3.7Hz)。LC−MS(ESI、m/z):C1813として計算した値:289.1(M+H);測定値:288.9。
【実施例5】
【0092】
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸[2−(1H−ピラゾール−3−イル)−フェニル]−アミド
【0093】
【化13】

【0094】
a)2−(1H−ピラゾール−3−イル)−フェニルアミン
【0095】
【化14】

【0096】
3−(2−ニトロフェニル)−1H−ピラゾール(Butt Park Ltd.)(100mg、0.53ミリモル)にメタノール(10mL)を加えた後、その溶液に脱気をAr下で受けさせた。その溶液に炭素に10%担持されているパラジウム(100mg)を加えた後、その混合物を水素(1気圧)下室温で50分間撹拌した。その混合物をセライトの短いカラムに通して濾過し、生成物をメタノールでカラムから流出させた後、溶媒を真空下で除去することで表題の化合物を無色結晶性固体として得た(84mg、定量的収率)。H−NMR(CDCl;400MHz):δ7.55(d、1H、J=2.3Hz)、7.51(m、1H)、7.14(m、1H)、7.79−6.75(m、2H)、6.62(m、1H、J=2.4)。LC−MS(ESI、m/z):C10として計算した値:160.1(M+H);測定値:160.1。
b)5−シアノ−フラン−2−カルボン酸[2−(1H−ピラゾール−3−イル)−フェニル]−アミド
【0097】
2−シアノ−5−フランカルボン酸(実施例1で調製したまま、69mg、0.5ミリモル)にAr下でジクロロメタン(10mL)、DMF(50μL)および塩化オクザリル(48μL、0.55ミリモル)を加えた後、その混合物を1時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、その残留物に濃縮をトルエン(5mL)を用いて受けさせた後、それをジクロロメタン(5mL)で取り上げた。その溶液を2−(1H−ピラゾール−3−イル)−アニリン(この上の段階で調製したまま)(80mg、0.5リモル)とDIEA(2
61μL、1.5ミリモル)をジクロロメタン(5mL)に入れることで生じさせた溶液に撹拌しながら加えた。その混合物を室温で2.5時間撹拌し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)の中に注ぎ込んだ後、ジクロロメタン(3x30mL)で抽出した。その有機層を水(20mL)そして食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、真空下で濃縮した。その結果として得た残留物をシリカゲルを用いた調製用TLCにかけてジクロロメタン中10%のメタノールで溶離させることによる精製を実施することで表題の化合物をオフホワイトの固体として得た(39mg、28%)。H−NMR(CDCl;400MHz):δ8.41(br s、1H)、8.36(d、1H、J=8.4Hz)、7.66−7.64(m、2H)、7.42−7.36(m、2H)、7.29−7.20(m、3H)、7.23(d、1H、J=3.7Hz)、7.20(dd、1H、J=7.5、1.2Hz)、6.71(dd、1H、J=3.4、0.7Hz)、6.65(m、1H)。LC−MS(ESI、m/z):C1511として計算した値:279.1(M+H);測定値:279.0。
【実施例6】
【0098】
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−シクロヘキソ−1−エニル−フェニル)−アミド
【0099】
【化15】

【0100】
a)2−シクロヘキソ−1−エニル−アニリン
【0101】
【化16】

【0102】
2−ブロモアニリン(136mg、0.79ミリモル)とシクロヘキセン−1−イル−ホウ素酸(100mg、0.79ミリモル)の混合物にアルゴン下で2Mの炭酸ナトリウム水溶液(4.0mL、8.0ミリモル)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(46mg、0.04ミリモル)、トルエン(8mL)およびエタノール(4mL)を加えた後、その混合物を80℃で4時間撹拌した。その混合物を室温になるまで冷却し、酢酸エチル(40mL)の中に注ぎ込み、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(40mL)を洗浄した後、溶媒を真空下で除去した。その結果として得た固体をシリカゲルを用いた調製用TLCにかけてアセトニトリル、ヘキサン、ジクロロメタン(10:50:40)そして再びアセトニトリル、ヘキサン、ジクロロメタン(5:30:70)で溶離させることによる精製を実施することで表題の化合物を無色のガラスとして得た(30mg、22%)。H−NMR(CDCl;400MHz):δ7.05−6.96(m、2H)、6.74−6.68(m、2H)、5.76(m、1H)、3.76(br s、2H)、3.21(m、4H)、2.40−2.14(m、4H)、1.80−1.66(m、4H)。LC−MS(ESI、m/z):C1216Nとして計算した値:174.1(M+H);測定値:174.1。
b)5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−シクロヘキソ−1−エニル−フェニル)−アミド
【0103】
2−シアノ−フラン−2−カルボン酸(実施例1で調製したまま、1.56mg、0.22ミリモル)および2−シクロヘキソ−1−エニル−アニリン(この上に示した段階で調製したまま、30mg、0.4ミリモル)を用いて実施例5の段階(b)の手順に従うことで表題の化合物を調製した。その結果として得た残留物をシリカゲルを用いた調製用TLCにかけてジクロロメタン中10%のメタノールで溶離させることによる精製を実施することで表題の化合物をオフホワイトの固体として得た(19mg、38%)。H−NMR(CDCl;400MHz):δ8.82(br s、1H)、8.42(d、1H、J=7.8、0.8Hz)、7.32−7.12(m、5H)、5.88(m、1H)、2.32−2.23(m、4H)、1.84(m、4H)。LC−MS(ESI、m/z):C1817として計算した値:293.1(M+H);測定値:293.1。
【実施例7】
【0104】
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−シクロヘキシルフェニル)−アミド
【0105】
【化17】

【0106】
a)(2−シクロヘキシルフェニル)−カルバミン酸t−ブチルエステル
【0107】
【化18】

【0108】
335mg(1.64ミリモル)の2−シクロヘキシル安息香酸を3.5mLの無水t−ブタノールに入れることで生じさせた溶液にトリエチルアミンを457μL(3.28ミリモル)に続いてジフェニルホスホリルアジドを388μL(1.80ミリモル)加えた。その混合物を5分間撹拌した後、80℃に3時間加熱した。次に、その混合物を室温に冷却した後、濃縮することで無色の油を得たが、それは放置すると結晶化した。シリカ固相が5gの抽出(SPE)用カラムを用いたクロマトグラフィー(ジクロロメタンを使用)により表題の化合物を無色の結晶性固体として330mg(73%)得た。質量スペクトル(ESI、m/z):C1725NOとして計算した値:176.1(M−Boc+2H);測定値:176.6。
b)2−シクロヘキシルアニリンのトリフルオロ酢酸塩
【0109】
【化19】

【0110】
89.1mg(0.324ミリモル)の2−(シクロヘキシルフェニル)−カルバミン酸t−ブチルエステル(この上に示した段階で調製したまま)にトリフルオロ酢酸:ジクロロメタン:水(12:12:1(体積/体積/体積))の混合物を3mL加えた後、その溶液を室温で1.5時間撹拌した。その溶液に濃縮を受けさせることで表題の化合物を無色の結晶性固体として130mg(73%)得た。質量スペクトル(ESI、m/z):C12717Nとして計算した値:176.1(M+H);測定値:176.2。
c)5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−シクロヘキシルフェニル)−アミド
【0111】
【化20】

【0112】
5−シアノフラン−2−カルボン酸(実施例1で調製したまま)を25.5mg(0.186ミリモル)、塩化オクザリルを32.4μL(0.372ミリモル)、2−シクロヘキシル−アニリンのトリフルオロ酢酸塩を64.6mg(0.223ミリモル)およびDIEAを64.8μL(0.197ミリモル)用いて実施例5の段階(b)の手順に従うことで表題の化合物を調製した。その結果として得た残留物をシリカゲルが5gのSPEカラムを使用したクロマトグラフィー(40−80%のジクロロメタン−ヘキサンを使用)にかけることで表題の化合物を白色の固体として45.8mg(84%)得た。H−NMR(CDCl;400MHz):δ8.06(br s、1H)、7.88(m、1H)、7.34(m、1H)、7.2−7.3(m、CHClピークで部分的に不明瞭な3H)、2.66(m、1H)、1.82−1.94(m、5H)および1.29−1.53(m、5H)。質量スペクトル(ESI、m/z):C18118として計算した値:295.1(M+H);測定値:294.9。
【0113】
IV. 結果
式Iで表される選択した化合物が示すc−fms阻害能力を測定する目的で自己燐酸化蛍光偏光競合免疫測定法を用いた。この検定を黒色の96穴ミクロプレート(LJL BioSystems)を用いて実施した。用いた検定用緩衝液は100mMの4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン1−エタンスルホン酸(HEPES)(pH7.5)、1mMの1,4−ジチオ−DL−トレイトール(DTT)、0.01%(体積/体積)のTween−20であった。検定を実施する直前に化合物をジメチルスルホキサイド(DMSO)を4%含有させておいた検定用緩衝液で希釈した。各穴に化合物を5μL加えた後、検定用緩衝液にc−fms(Johnson & Johnson PRD)を33nMとMgCl(Sigam)を16.7mM入れることで生じさせた混合物を3μL添加した。検定用緩衝液中5mMのATP(Sigma)を2μL添加することでキナーゼ反応を開始させた。検定液中の最終濃度は10nMのc−fms、1mMのATP、5mMのMgCl、2%のDMSOであった。各プレート毎に対照反応を実施し、正および負対照の穴には当該化合物の代わりに検定用緩衝液(DMSO中4%になるように作成)を用いることに加えて正対照の穴には50mMのエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を1.2μL入れた。
【0114】
前記プレートを室温で45分間インキュベートした。インキュベーションが終了した時点で50mMのEDTAを1.2μL用いて反応を消滅させた(この時点で正対照の穴にはEDTAを添加しなかった、上を参照)。インキュベーションを5分間実施した後、各穴に抗−ホスホチロシン抗体(10X)とPTK緑色トレーサー(10X、渦流)とFP希釈用緩衝液がそれぞれ1:1:3の混合物を10μL入れた(全部Pan Veraから入手、カタログ番号P2837)。前記プレートにカバーを付け、室温で30分間インキュベートした後、蛍光偏光をAnalystで読み取った。その装置の設定は下記であった:485nmの励起フィルター;530nmの発光フィルター;Z高:穴の中央部;Gファクター:0.93。そのような条件下で正対照および負対照が示した蛍光偏光値はそれぞれ約300および150であり、それらを用いてc−fms反応の100%阻害および0%阻害を定義した。報告するIC50値は独立した3測定の平均である。
【0115】
表1に本発明の式IおよびIIで表される代表的な化合物を挙げる。
【0116】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
Aは、
各々が場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、スルホンアミドアルキル、グアニジノアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよいフェニル、ナフチルもしくはビフェニル、または
N、OまたはSから選択されるヘテロ原子を1から4個有しかつ場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、スルホンアミドアルキル、グアニジノアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよい5員から7員の単環式もしくは8員から10員の二環式複素芳香環、
であり、
は、−H、アリール、−COR、−COR、−COOR、−CONR、−SOまたは−SONRであり、
Xは、−CO−、−C(=NH)−、−CS−、−CON(R)−、−CS(NR)−、−SO−または−CR−であり、
Yは、−S−、−SO−、−SO−、−O−または直接結合であり、
は、各々が場合により1個以上のハロゲンで置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールであり、そして
Wは、
各々が場合によりC1−4アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−NHCOR、−NHSO、−NO、−SOR、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよいフェニル、ナフチルもしくはビフェニル、または
N、OまたはSから選択されるヘテロ原子を1から4個有しかつ場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−OCO−アルキルアミノ、−OCO−アルキルアミド、−COR、−CN、−C(N
H)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRで置換されていてもよい5員から6員の単環式もしくは8員から10員の二環式複素環もしくは複素芳香環、
であり、
およびRは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロアリールである]
で表される化合物またはこれの溶媒和物、水化物、互変異性体もしくは製薬学的に受け入れられる塩。
【請求項2】
式II:
【化2】

[式中、
Aは、場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、スルホンアミドアルキル、グアニジノアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRの中の1つ以上で置換されていてもよいフェニルであり、
Yは、直接結合、−O−または−S−であり、
は、各々が場合により1個以上のハロゲンで置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールであり、そして
Wは、各々が場合により−C1−6アルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、−CF、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、−OCF、−OCO−アルキル、−OCO−アルキルアミノ、−OCO−アルキルアミド、−COR、−CN、−C(NH)NH、−COOR、−CONR、−N(R)COR、−NO、−SO、−SOまたは−SONRで置換されていてもよいフリル、イミダゾリルもしくはピロリルであり、
およびRは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロアリールである]
で表される請求項1記載の化合物またはこれの溶媒和物、水化物、互変異性体もしくは製薬学的に受け入れられる塩。
【請求項3】
Aがフェニルであり、
Yが直接結合、−O−または−S−であり、
が各々が場合により1個以上のハロゲンで置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールであり、そして
Wが場合により−CNまたは−NOで置換されていてもよいフリルである、
請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Aがフェニルであり、
Yが直接結合であり、
がシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールであり、
Wがシアノフリルである、
請求項3記載の化合物。
【請求項5】
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−シクロヘキソ−1−エニル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸ビフェニル−2−イルアミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸[2−(5−メチル−フラン−2−イル)−フェニル]−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−フラン−2−イル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−チオフェン−2−イル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−チオフェン−3−イル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−フラン−3−イル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸(2−シクロヘキシル−フェニル)−アミド、
5−シアノ−フラン−2−カルボン酸[2−(1H−ピラゾール−3−イル)−フェニル]−アミド、および
これらの製薬学的に受け入れられる塩、
の中の1つである請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Aがフェニルであり、
Yが−O−または−S−であり、
が場合により5個以下のハロゲンで置換されていてもよいアルキルであり、
Wがニトロフリルである、
請求項3記載の化合物。
【請求項7】
5−ニトロ−フラン−2−カルボン酸[2−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロ−エチルスルファニル)−フェニル]−アミド、
5−ニトロ−フラン−2−カルボン酸(2−エトキシフェニル)−アミド、および
これらの製薬学的に受け入れられる塩、
の中の1つである請求項6記載の化合物。
【請求項8】
請求項1記載の化合物および製薬学的に受け入れられる担体を含んで成る製薬学的組成物。
【請求項9】
蛋白質チロシンキナーゼ活性を阻害する方法であって、キナーゼを有効阻害量の請求項1記載の少なくとも1種の化合物と接触させることを含んで成る方法。
【請求項10】
前記蛋白質チロシンキナーゼがc−fmsである請求項8記載の方法。
【請求項11】
哺乳動物における炎症を治療する方法であって、前記哺乳動物に請求項1記載の少なくとも1種の化合物を治療的に有効な量で投与すること含んで成る方法。
【請求項12】
哺乳動物における癌を治療する方法であって、前記哺乳動物に請求項1記載の少なくとも1種の化合物を治療的に有効な量で投与すること含んで成る方法。
【請求項13】
哺乳動物における心疾患を治療する方法であって、前記哺乳動物に請求項1記載の少なくとも1種の化合物を治療的に有効な量で投与すること含んで成る方法。
【請求項14】
哺乳動物における糸球体腎炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、人工器官不全、サルコイドーシス、うっ血性閉塞性肺疾患、膵炎、HIV感染、乾癬、糖尿病、腫瘍関連血管新生、再狭窄、統合失調症またはアルツハイマー型認知症を治療する方法であって、前記哺乳動物に請求項1記載の少なくとも1種の化合物を治療的に有効な量で投与すること含んで成る方法。
【請求項15】
製薬学的に受け入れられる担体および請求項1記載の少なくとも1種の化合物を約0.5mgから約10mg含有して成る製薬学的投薬形態物。
【請求項16】
非経口または経口投与に適した請求項15記載の投薬形態物。

【公表番号】特表2008−517944(P2008−517944A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538164(P2007−538164)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/038340
【国際公開番号】WO2006/047503
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】