説明

CAT端末に取り付ける簡易履歴管理装置

【課題】簡単に読み出しやコピーが出来る磁気カードを使ったCAT端末システムなどにおいて、システムに大掛かりな変更をすることなく安価にセキュリティーレベルを改善する方法を提供する。
【解決手段】従来の磁気カードを使ったシステムのホスト側は変更せずに、端末側で使う磁気カードにICカードチップを組み合わせたカード複合カードを使い、CAT端末に隣接されたスロット内のICカードリーダライタでICチップ部のデータを読み出し、ホストコンピュータから送られてくるデータで印刷されたジャーナルの情報と照合することによりカードの真贋判断をできるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカード用チップを磁気カードと組み合わせて、磁気カードを読む際に同時にICチップを読ませることにより、磁気カードのオンラインシステムとICチップのオフライン認証を組み合わせた認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1950年に米国実業家がレストランへ財布を忘れて行ったことから発案されて利用が始まったとされる磁気カードは安価に製造でき、扱いも簡単であるため、広く普及している。一般に携帯カードは偽造防止の目的で特殊印刷や磁気ストライプによる不可視対策の工夫がなされて来た。銀行のマネーカード、各種クレジットカードなどの悪用防止が必要な用途では、早くから磁気カードが採用され、暗証番号との併用によってのみサービスを受けることができるようにされてきた。しかし、扱いが簡単な点から、ある程度の技術と装置があれば偽造できてしまうようになり、セキュリティー問題が浮上した。特にパチンコやテレホンカードなどは組織的に偽造され大きな社会問題になった。こうした背景から、より偽造が困難でセキュリティーの高いICカードへの関心が高まっている。
【0003】
しかし、既存の磁気カードシステムをいきなりICカードシステムに入れ替えることは費用対効果を考えて躊躇する場合が多く、折衷案として磁気カードにICチップを貼り付け或いは埋め込むことにより複合カードを用いるケースが増えている。
【0004】
前記複合カードを運用するには、磁気カードシステムとは別にICチップのリーダライタが必要になり、利便性を考慮して、磁気カード読取装置、暗証番号入力装置、ICカード読取装置の複合装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、従来の磁気カードを使ったキャッシュカードに電子通貨機能を持つICチップを併用し、磁気カードリーダとICカードリーダの両方を搭載した電子貨幣用処理機を使って磁気ストライプとICチップの両方を読み取る方法も提案されている。(特許文献2)
【特許文献1】特願2000−79306号公報
【特許文献2】特願平11−322660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複合カードを運用するにあたり、出来るだけ既存のCAT端末などの磁気カードシステムをそのまま使い、かつ利便性やセキュリティーを向上させることが望まれる。
【0007】
つまり、磁気カードシステムにおいて、そのままの機能ではICチップを併用することは困難であり、磁気カードシステムとICカードシステムは互換性が無いので、2つの全く違うシステムを併用して磁気カードからICカードへ段階的に移行することはシステム刷新に係る費用を考えると非現実的であった。つまり、磁気カードからICカードに移行する為には、ICカードシステム利用者の不便を犠牲にして一気にシステムを変更する以外に方法は無かった。
【0008】
前述した通り、カード自体の工夫として、磁気カードの脆弱なセキュリティーを改善する目的で磁気カードにICカード機能を付加した複合カードが提案されてはいるが、相変わらずシステム側はオンラインを基本としているので、導入にあたっては、カードだけの変更ではなくシステム全体を更新する必要があり、これがICカード移行へのバリアとなっている。
【0009】
特許文献1には、磁気カードにICチップを貼り付ける方法が記載されているが、磁気ストライプに記録されたデータと同じものをICチップにデータ圧縮して格納する作業が必要なので、高価な専用発行機が必要となるという問題がある。また、段落[0007]に「カードが偽造されているか否かを判定する際には、磁気ストライプから読み取られたカード情報をICチップと制御装置のいずれか一方によってデータ圧縮又は暗号化し、データ圧縮又は暗号化されたカード情報とICチップ内に保存されていたデータ圧縮又は暗号化されたカード情報とを比較照合してカードの真贋を判定する。」と記載されているように、もしオフランインで運用しようとすると、ICチップに暗号化と複合化する回路や真贋判定処理部を持たせた高価なICチップを使う必要がある。このような高度な演算をICチップで行うには、ICチップ内に通常のCPUだけでなくコプロッセッサを搭載する必要があり暗号化の鍵をエンベッドするなど複雑な発行工程になり発行に要する時間が長くなる。結果として、発行処理が簡単な汎用の非接触ICチップに比較してひと桁以上高い価格になってしまうので、CAT端末など金融系システムへ導入するには費用負担が大きすぎて採用は難しくなる。また、オンラインで使う場合には各端末側あるいはネットワークを介したホスト側にカード管理サーバを置く必要がある。よって、既存の磁気カードシステムを使おうとすると端末側に新規に管理サーバを増設するかホスト側に改造が必要となる。
【0010】
特許文献2には、磁気カード読取装置とICカード読取/書込装置とを備えたICカード取引装置であって、該磁気カード読取装置へ磁気カードを挿入する磁気カード挿入部での 磁気カードの挿入の向きと、該ICカード読取/書込装置へICカードを挿入するICカード挿入部でのICカードの挿入の向きとを互いに異ならせ、磁気カード読取装置とICカード読取/書込装置とを備えたICカード取引装置であって、該磁気カード読取装置が磁気カードが読み取ってから所定時間内に該ICカード読取/書込装置がICカードを読み取らないとき、該磁気カード読取装置が磁気カードを読み取る前の初期状態に戻る構成としている。この場合は、本体に磁気カードシステムを使うために、ICカードも読み込ませて、ICカードが無いと磁気だけではシステムにログインができない仕組みにしているが、機能としては銀行口座から電子通貨のICカードにチャージする機能のみで、通常の出金や振込みなどの機能にはICカードのセキュリティーは使っていない。また、磁気カード挿入口とICカード挿入口も別々になっているので操作が面倒である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する為に、第1発明においては、ICチップを付加した磁気ストライプカードをカード挿入口から筐体内のスリットに案内し、前記磁気ストライプカードに磁気記録されているカードデータを磁気ヘッドで再生した後に前記スリットの出口部からカードを排出し、該カードデータを含む情報を通信回線を介して所定のセンタに送信して与信審査を受け、与信審査結果をジャーナル印刷する印刷手段を持つCAT端末に取り付ける簡易履歴管理装置であって、ICチップと通信できる通信手段を持つことと、CAT端末機能とは関係なく前記スロットにカードを通した履歴を記録する記憶手段を持つことと、受信表示手段を持たせることにした。これにより、安価な装置で簡易的にカードを使った履歴を残すことが出来るようになる。
【0012】
また、第2発明では、オンラインではなく、従来から欧州の公衆電話や電子マネーQuick(http://www.quick.at/)やGeldkarte(http://www.geldkarte.de/)などで採用されているオフライン認証システムの考え方を拡張して目視認証を導入することにより、システムを変更することなく、CAT端末に補助装置を設けるだけの改造でセキュリティーの高いシステムが提供できるようにした。
【0013】
具体的には、印刷手段を有し、磁気ストライプとICチップを搭載する複合カードをカード挿入口から筐体内のスリットに案内し、前記磁気ストライプに磁気記録されているカードデータを磁気ヘッドで再生した後に前記スリットの出口部からカードを排出し、該カードデータを含む情報を通信回線を介して所定のセンタに送信して認証を受ける磁気カード読取装置に、ICカードリーダライタを当接して使うオフライン認証システムであって、前記スリットの入口または出口にICカードリーダライタを備えたスリット及びストッパを持つことと、オンラインで前記所定のセンタから送られてきて前記印刷手段で印刷された印刷データ内容と、オフラインで前記ICチップからICカードリーダライタが読み出してディスプレイ表示されるデータの相関性を照合して視覚的に認証できるようにした。これにより、既存の磁気カードシステムを変更することなく、ICチップとヒューマンインターフェース(視覚認証)によってカードの真贋判断をすることができるようになる。
【0014】
また、前記磁気カード読取装置にCAT端末を使うようにした。CAT端末は安全な通信回線を使っているので、通信路でのハッキングが防止できて、本願発明の目視認証と併用することでカードの真贋が明確になれば不正なカードの使用を予防できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の第1実施例であり、ディスプレイ部にLED表示を持つリーダライタ6がCAT端末1に当接されている。クレジットカードなどの複合カード2がCAT端末1のスロット3に挿入され、スロットル出口方向(図では下方向)に向かってカード端面がスロットルの底面に平面で接しながら滑らせることにより、まず複合カード2の磁気ストライプ15が読み込まれ、引き続き複合カードがICカードリーダライタのスロットルに入ると、前記ICカードリーダライタ6のアンテナ5と通信をしてリーダライタ6とICチップ12が相互認証をする。相互認証の結果、正しいICチップであることが判明するとOKのLEDが点灯し、ICチップと何らかの通信は可能であったが認証が不成立であった場合はNGのLEDが点灯する。
【0016】
ICカードリーダライタ6はEEPROMなどの内部メモリに上記ICチップ12の認証の履歴を残し、適宜外部にデータ提供できるような記憶手段を持つことが考えられる。前記履歴は、例えばディスプレイ7に別のLEDを増設して、履歴頻度に応じてLEDを点灯させたり、ある一定期間の履歴回数をLEDの点滅回数で表示することも考えられる。
【0017】
また、前記ディスプレイ7にはふたつのLEDだけしか表示していないが、複数のLEDグループを搭載して、OKやNGの他に例えばルーレット機能や音響手段などを設けることにより視聴覚的な付加機能をつけることも考えられる。
【0018】
図2は本発明の第1実施例の動作フローチャートである。
【0019】
図3は本発明の第2実施例であり、CAT端末1、複合カード2、ICチップのリーダライタ6、リーダライタのアンテナ5、ICチップのリーダライタのディスプレイ表示11が店舗側のシステムで、これを通信回線8を介して、顧客データーベース10を持つホストコンピュータ9と交信することができるシステムになっている。
【0020】
図4は本発明の第2実施例における動作フローチャートである。スロット3に複合カード2が挿入されると、まず磁気ストライプ15が読み込まれ、CAT端末のキーボード16から金額を入力した後に送信を開始する。ここでCAT端末は通信回線8を介してホストコンピュータ9に接続され、データの照合を受ける。照合に失敗した場合は、ここで処理が終了する。照会が成功した場合には、ホストコンピュータ9から通信回線8を介してCAT端末に照会結果が送信され、CAT端末のディスプレイ表示11に表示されると共にCAT端末のプリンタからジャーナルが印刷される。ここで、前記複合カードがICカード登録されていた場合には、あらかじめホストコンピュータ9の顧客データーベース10にICチップについて登録されているので、登録してあるということを示す記載、例えば“ICカード登録済”などの文字がディスプレイに表示される、および或いはジャーナルに印刷される。一方、CAT端末1のスロット3を抜けた複合カード2は補助装置4のスロットに導入され、リーダライタ6のアンテナ5を介して無線通信を始め、認証の後にICチップ12に記録されているデータを読み出し、リーダライタ6のディスプレイ表示7にデータを表示する。ここで、CAT端末1のオペレータは、CAT端末の表示11および印刷されたジャーナルに“ICカード登録済”と印字されていることと、補助装置4のディスプレイ表示7に正しいカード情報が表示されていることを両方視覚的に認識することにより、このカードが正しいカードであることが確認できる。
【0021】
図5は、磁気カードに登録済みのICチップを組み合わせる作業工程の例である。ここでは、アンテナ13の付いたICチップ12を使い、別に用意したICカードリーダを使って、まず顧客データーベース10を参照しながらオペレータがカード情報をデータ入力14する。このデータ入力済みのICチップ12およびアンテナ13を磁気ストライプ15を搭載した発行済みのクレジットカードに貼り付けることで複合カード2を構成する。
【0022】
なお、このデータ入力作業はオペレータが行う作業を別のコンピュータシステムで代行することも考えられるし、新規カード作成の場合であれば、ICチップへの書き込みは磁気カードと同時に書き込むことも考えられる。
【0023】
図6(a)はCAT端末1に補助装置4を接続した図である。スロット3から挿入した複合カード2を下方向にスライドさせることにより、磁気ストライプ15が読み込まれて、キーボード16から入力される金額データと共にCAT端末1から通信回線8を介してホストコンピュータ9にデータが送信され、データが照合される。照合結果はホストコンピュータ9から通信回線8を介してCAT端末1に戻され、CAT端末1のディスプレイ表示11で確認できる。一方、スロット3を抜けた複合カード2は補助装置4のスロットに導入され、スロット終端のストッパ17でカード先端が停止する。停止位置で、ICチップのアンテナ13とリーダライタのアンテナ5はお互いに通信可能な距離と位置にあり、リーダライタ6のアンテナ5から発射されて電力エネルギーとしての電磁波が供給される。ICチップ12の内部には、整流器とコンデンサが備えられ、アンテナ13から受ける電磁波を整流して、コンデンサにより交流分が除去されて直流電源としてICチップの各部に供給され、まずICチップ12がリセットされ、その後に所定のアプリケーションプログラムが起動する。ICチップ12とリーダライタ6の通信が開始されると、ICチップ12がリーダライタ6により認証を受け、ICチップ12に保存されているデータが読み出され、ICチップ12に保存されているデータの一部がリーダライタのディスプレイ表示7で認識可能となる。
【0024】
図6(b)は補助装置4のA−A断面図であり、複合カード2が補助装置4のスリットに導入されるとICチップ12に接続されたアンテナ13がリーダライタのアンテナ5に接近して、交信可能磁界領域に入ってリーダライタ6と交信し、上記のプロトコルを開始する。
【0025】
本発明にあっては、既存の磁気カードにICチップを組み合わせる方法としては、実施例にあるような貼り付け方式でもよいし、あるいはプラスチックカードの製造工程においてICチップを埋め込みあるいは射出成形などで一体成形しても良い。
【0026】
なお、ホストコンピュータに登録してジャーナルに印刷する内容は、ICチップを添付した磁気カードに共通の内容(例えば“ICカード登録済”)だけでなく、特定の情報、例えばICチップのシリアル番号や他のICチップと識別出来る特定データでも良い。
【0027】
履歴データとは、単にICチップを読んだ回数だけではなく、カードに付加されるのポイントなどの情報も含めて履歴データと見なす。
【産業上の利用可能性】
【0028】
既存の磁気カードに非接触ICチップを組み合わせ、このICチップに磁気カードの情報を書き込み、更にホストコンピュータのデーターベースに前記ICチップが特定できる情報を登録することにより、ホストコンピュータシステムを変更することなく磁気カードの真贋判定ができるので、大きな投資をすることなく磁気カード偽造団などによる“なりすまし”被害の発生を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施例におけるCAT端末と補助装置を使ったシステム例
【図2】第1実施例における動作フローチャート
【図3】第2実施例におけるCAT端末と補助装置を使ったシステム例
【図4】第2実施例における動作フローチャート
【図5】磁気カードに登録したICチップを組み合わせる作業工程の例
【図6】(a)CAT端末と補助装置の平面図 (b) 補助装置のA−A断面図
【符号の説明】
【0030】
1…CAT端末、2…複合カード、3…スロット、4…補助装置、5…リーダライタのアンテナ、6…ICカードリーダライタ、7…ICカードリーダライタのディスプレイ表示、8…通信回線、9…ホストコンピュータ、10…顧客データーベース、11…CAT端末のディスプレイ表示、12…ICチップ、13…ICチップのアンテナ、14…データ入力工程、15…磁気ストライプ、16…CAT端末のキーボード。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップを付加した磁気ストライプカードをカード挿入口から筐体内のスリットに案内し、前記磁気ストライプカードに磁気記録されているカードデータを磁気ヘッドで再生した後に前記スリットの出口部からカードを排出し、該カードデータを含む情報を通信回線を介して所定のセンタに送信して与信審査を受け、与信審査結果をジャーナル印刷する印刷手段を持つCAT端末に取り付ける簡易履歴管理装置であって、ICチップと通信できる通信手段を持つことと、CAT端末機能とは関係なく前記スロットにカードを通した履歴を保存する記憶手段を持つことと、受信表示手段を持つことを特徴とするCAT端末に取り付ける簡易履歴管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の簡易履歴管理装置において、オンラインで前記所定のセンタから送られてきて前記CAT端末の印刷手段で印刷された印刷データ内容と、オフラインで前記ICチップからICチップリーダライタで読み出されてディスプレイ表示されるデータの相関性を照合して視覚的に認証できることを特徴とするCAT端末に取り付ける簡易履歴管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−85457(P2006−85457A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269870(P2004−269870)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(599007716)
【Fターム(参考)】