説明

CIZ1複製タンパク質

本発明は、癌治療におけるインターベンションのための標的として、Ciz1 DNA複製タンパク質の活性を調節する因子を同定するためのスクリーニング方法に関し、上記活性を調節する因子を包含する。本発明はまた、増殖性疾患(例えば、癌)の予後および診断における、DNA複製タンパク質、およびそのRNA転写物の使用に関する。本発明の1つの局面に従って、DNA複製を調節する因子の同定のための標的としての、Ciz1ヌクレオチド配列もしくはCiz1ポリペプチド配列、またはその任意のフラグメントもしくは改変体の使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA複製タンパク質の活性を、癌治療における介入のための標的として調節する因子の同定のためのスクリーニング方法に関する。本発明は、上記活性を調節する因子を包含する。
【0002】
本発明はまた、増殖性疾患(例えば、癌)の予後判定および診断における、上記DNA複製タンパク質およびそのRNA転写産物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(導入)
DNA複製の開始は、哺乳動物細胞周期における主要な制御点であり、癌において誤調節される多くの遺伝子産物の作用点である(HanahanおよびWeinberg,2000)。この開始プロセスは、プレ複製複合体タンパク質のアセンブリを伴い、この複合体は、細胞周期のG1期の間に、複製起点において、起点認識複合体(ORC)、Cdc6、Cdt1およびMcmタンパク質を含む。この後、第2のタンパク質群の作用が生じる。この作用により、DNAポリメラーゼおよびその補助因子(PCNAを含む)のローディング、およびS期への遷移が促進される。この開始プロセスは、サイクリン依存性プロテインキナーゼ2(Cdk2)、Cdc7−dbf4およびCdt1インヒビターであるゲミニンによって調節される(概説については、BellおよびDutta,2002を参照)。S期の細胞の核において、複製フォークが、一緒にクラスター形成して、数百個の複製「焦点」すなわち複製工場を形成する(Cook、1999)。複製因子は、核中の構造フレームワークと連結しているようであるが、この連結を形成する分子の性質および複製フォーク活性におけるこれらの役割は、不明のままである。
【0004】
真核生物DNA複製に関与するタンパク質の同定、およびその細胞周期の間のそれらの活性を調節する基本経路の分析は、ほぼ酵母遺伝学によって駆動されてきた。これらのタンパク質および経路は、一般的には、酵母からヒトまで保存されている。しかし、多岐にわたる発生経路に沿って分化する多細胞生物において、さらなる複雑な層が、明らかにされている。例えば、脊椎動物において、ニューロン分化に関与するいくつかのタンパク質はまた、G1→S期遷移を調節する(Ohnumaら、2001)。これらは、cdkインヒビターであるp21CIP1/WAF1/SDI1を含み、これは、増殖停止後の希突起神経膠細胞の分化に関係付けられており(Zezulaら、2001)、そして他の細胞型の最終分化に関係付けられている(Parkerら、1995)。
【0005】
DNA複製の開始は、哺乳動物細胞からの単離された核および細胞質ゾル抽出物を用いて、インビトロで再構成され得る(Krude、2000;Krudeら、1997;Lamanら、2001;Stoeberら、1998)。さらに、サイクリンEまたはサイクリンAのいずれかと複合体形成した組換えCdk2を使用して、複製複合体のアセンブリおよびDNA合成の活性化が、独立して再構成され得る(Coverleyら、2002)。本発明者らは、サイクリンA−cdk2によりインビトロで触媒される上記活性化工程を研究し、比較的研究されていないタンパク質であるp21−Cip1相互作用ジンクフィンガータンパク質(Ciz1)が、この開始プロセスのこの段階の間に機能することを示した。ヒトCiz1は、サイクリンE−p21を用いる改変型酵母ツーハイブリッドスクリーニングを使用して、以前に同定された。生化学分析によって、p21との相互作用が支持された(Mitsuiら、1999)。転写における潜在的役割が提唱されたが、実証はされておらず、Ciz1には、他の機能は割り当てられていない。より最近には、Ciz1遺伝子が、インビボ腫瘍形成モデルを使用して、ヒト髄芽細胞腫由来cDNAライブラリーから単離された(WarderおよびKeherly,2003)。本発明者らの分析は、Ciz1が、DNA複製の開始において積極的な役割を果たすことを初めて示す。
【0006】
クロマチン結合型タンパク質に対する多数の変化が、DNA合成が組換えサイクリンA−cdk2によりインビトロで活性化された場合に生じる。本発明は、cdc6関連抗原であるp85が、DNA複製の開始と相関し、かつサイクリンA−cdk2により調節されるという知見に関する。このタンパク質は、マウス胚ライブラリーからクローン化され、マウスCiz1として同定された。
【0007】
インビトロ分析によって、Ciz1タンパク質が、DNA複製の開始を正に調節すること、このタンパク質の活性は、スレオニン191/2におけるcdkリン酸化により調節され、これによりこのタンパク質は、開始を制御するcdk依存性経路に関連付けられることが、示された。胚形態のマウスCiz1は、推定される体細胞形態と比較して、選択的スプライシングされる。ヒトCiz1はまた、選択的スプライシングされ、マウスCiz1と同じエキソンにおいて変動がある。組換え胚形態のCiz1タンパク質は、哺乳動物のDNA複製の開始を促進すること、および小児癌は、「胚様」形態のCiz1を発現することが、見出されている。1つの理論に拘束されることは望まないが、本発明者らは、Ciz1のミススプライシングが、発生における不適切な時点で、胚様形態のCiz1を生成することを提唱する。このことは、不適切に調節されたDNA複製を促進し、癌細胞系列の形成または進行に寄与する。
【0008】
遺伝子および/または遺伝子産物を特異的に除去すると主張する多数の技術が、近年開発されている。例えば、標的mRNA分子に結合することによりその分子をブロックまたは不活化するためのアンチセンス核酸分子の使用は、遺伝子産物の生成を阻害するための有効な手段である。
【0009】
遺伝子機能を特異的に除去するためのかなりより最近の技術は、二本鎖RNA(阻害RNA(RNAi)とも呼ばれる)を細胞中に導入することを介し、これは、このRNAi分子中に含まれる配列と相補的なmRNAの破壊をもたらす。このRNAi分子は、互いにアニーリングして二本鎖RNA分子を形成したRNAの2つの相補鎖(センス鎖およびアンチセンス鎖)を含む。このRNAi分子は、代表的には、除去されるべき遺伝子のエキソン配列またはコード配列に由来する。
【0010】
核酸およびタンパク質は両方とも、その塩基配列またはアミノ酸配列によって規定される、直鎖状配列構造を有し、そしてまた、その直鎖状配列とこれらの分子が位置する環境とにより部分的に決定される3次元構造を有する。従来の治療分子は、標的分子に結合してアゴニスト効果またはアンタゴニスト効果を生じる、低分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、または抗体)である。核酸分子はまた、治療的有用性を有し得る必須の結合特性を因子に提供することに関して、能力を有することが明らかになっている。これらの核酸分子は、代表的には、アプタマーと呼ばれる。アプタマーは、小さく、通常は安定化されている、核酸分子であり、標的分子の結合ドメインを含む。
【0011】
アプタマーは、少なくとも1つの改変型ヌクレオチド塩基を含み得る。用語「改変型ヌクレオチド塩基」は、共有結合改変型塩基および/または糖を含むヌクレオチドを包含する。例えば、改変型ヌクレオチドは、3’位でヒドロキシル基以外の低分子量有機基に共有結合している糖を有するヌクレオチド、および5’位でリン酸基以外の低分子量有機基に共有結合している糖を有するヌクレオチドを包含する。従って、改変型ヌクレオチドとしてはまた、2’置換糖(例えば、2’−O−メチルリボ−ス;2’−O−アルキルリボ−ス;2’−O−アリルリボ−ス;2’−S−アルキルリボ−ス;2’−S−アリルリボ−ス;2’−フルオロリボ−ス;2’−ハロリボ−スまたは2’−アジドリボ−ス);炭素環式糖アナログ;α−アノマー糖;エピマー糖(例えば、アラビノース、キシロース、もしくはリキソース)、ピラノース糖、フラノース糖、およびセドヘプツロースが挙げられ得る。
【0012】
改変型ヌクレオチドは、当該分野で公知であり、例えば、アルキル化プリンおよび/またはアルキル化ピリミジン;アシル化プリンおよび/またはアシル化ピリミジン;または他の複素環が挙げられるが、これらは限定として挙げるのではない。これらの種類のピリミジンおよびプリンは、当該分野で公知であり、これには、プソイドイソシトシン;N4,N4−エタノシトシン;8−ヒドロキシ−N6−メチルアデニン;4−アセチルシトシン;5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル;5−フルオロウラシル;5−ブロモウラシル;5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル;5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル;ジヒドロウラシル;イノシン;N6−イソペンチルアデニン;1−メチルアデニン;1−メチルプソイドウラシル;1−メチルグアニン;2,2−ジメチルグアニン;2−メチルアデニン;2−メチルグアニン;3−メチルシトシン;5−メチルシトシン;N6−メチルアデニン;7−メチルグアニン;5−メチルアミノメチルウラシル;5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル;β−D−マンノシルキューオシン;5−メトキシカルボニルメチルウラシル;5−メトキシウラシル;2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン;ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル;プソイドウラシル;2−チオシトシン;5−メチル−2−チオウラシル;2−チオウラシル;4−チオウラシル;5−メチルウラシル;N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル;ウラシル5−オキシ酢酸;キューオシン;2−チオシトシン;5−プロピルウラシル;5−プロピルシトシン;5−エチルウラシル;5−エチルシトシン;5−ブチルウラシル;5−ペンチルウラシル;5−ペンチルシトシン;および2,6−ジアミノプリン;メチルプソイドウラシル;1−メチルグアニン;1−メチルシトシンが挙げられる。
【0013】
アプタマーは、当該分野で公知の標準的な固相合成技術または溶液相合成技術を使用して、従来のホスホジエステル連結ヌクレオチドを使用して合成され得る。ヌクレオチド間の結合は、代替的な連結分子を使用し得る。例えば、式P(O)Sの連結基(チオエート);式P(S)Sの連結基(ジチオエート);式P(O)NR’2の連結基;式P(O)R’の連結基;式P(O)OR6の連結基;式COの連結基;または式CONR’2の連結基(ここで、Rは、H(もしくは塩)またはアルキル(1〜12C)であり、R6はアルキル(1〜9C)である)は、隣接するヌクレオチドに−O−または−S−を介して連結される。
【0014】
遺伝子および/または遺伝子産物を特異的に切断するといわれる他の技術は、タンパク質分子の機能を調節すること、またはタンパク質分子の活性を妨げることに焦点を当てている。タンパク質は、例えば、既存の低分子ライブラリーから取り出される化学インヒビターによって、標的にされ得る。
【0015】
抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)は、例えば、様々なタンパク質アイソフォームに対して、マウスまたはラットにおいて惹起され得る。抗体(免疫グロブリンとしてもまた公知である)は、外来分子(抗原)に対して特異性を有するタンパク質分子である。免疫グロブリン(Ig)は、2対のポリペプチド鎖、1対の軽(L)(低分子量)鎖(κまたはλ)、および1対の重(H)鎖(γ、α、μ、δおよびε)からなり、4つすべてがジスルフィド結合によって一緒に結合している、構造的に関連するタンパク質のクラスである。H鎖およびL鎖の両方が、抗原の結合に寄与し、あるIg分子から別のIg分子に高度に可変性である領域を有する。さらに、H鎖およびL鎖は、非可変性であるかまたは定常である領域を含む。
【0016】
L鎖は、2つのドメインからなる。カルボキシ末端ドメインは、所定の型のL鎖間で本質的に同一であり、「定常」(C)領域と称される。アミノ末端ドメインは、あるL鎖から別のL鎖に変化し、抗体の結合部位に寄与する。その可変性に起因して、「可変」(V)領域と称される。
【0017】
Ig分子のH鎖は、いくつかのクラス(α、μ、σ、α、およびγ(これらにはいくつかのサブクラスが存在する))からなる。2つの同一のH鎖およびL鎖の1以上の単位からなる集合したIg分子は、その分子が保有するH鎖からその名前を得る。従って、以下の5つのIgアイソタイプが存在する:IgA、IgM、IgD、IgEおよびIgG(H鎖における相違に基づいて4つのサブクラス(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)を有する)。さらに、抗体構造およびそれらの種々の機能に関する詳細は、Using Antibodies:A Laboratory manual、Cold Spring Harbour Laboratory Pressにおいて見出され得る。
【0018】
キメラ抗体は、マウス抗体またはラット抗体のV領域のすべてがヒト抗体C領域と結合されている組換え抗体である。ヒト化抗体は、げっ歯類抗体V領域に由来する相補性決定領域と、ヒト抗体V領域に由来するフレームワーク領域とが融合している組換えハイブリッド抗体である。ヒト抗体に由来するC領域もまた、使用される。相補性決定領域(CDR)は、抗体の重鎖および軽鎖の両方のN末端ドメイン内の領域であり、この領域に対して、V領域のバリエーションの大多数が制限される。これらの領域は、抗体分子の表面でループを形成する。これらのループは、抗体と抗原との間の結合面を提供する。
【0019】
非ヒト動物に由来する抗体は、外来抗体に対する免疫応答およびその循環からの除去を誘発する。キメラ抗体およびヒト化抗体のいずれも、組換えハイブリッド抗体内に減少した量のげっ歯類(すなわち、外来)抗体が存在するので、ヒト被験体に注射された場合に抗原性を減少させるが、ヒト抗体領域は免疫応答を不当に減少させない。このことは、より弱い免疫応答および抗体の除去の減少を生じる。このことは、ヒト疾患の処置において治療用抗体を使用する場合に、明らかに望ましい。ヒト化抗体は、「外来」抗体領域をあまり有さないように設計され、従って、キメラ抗体よりも抗原性が小さいと考えられる。
【0020】
タンパク質レベルで標的する他の技術としては、タンパク質に特異的に結合するランダムに生成したペプチドの使用、およびタンパク質またはタンパク質改変体に結合し、その機能を改変する任意の他の分子の使用が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
DNA複製プロセスを理解することは、癌治療の分野において最大の関心事である。癌細胞が、化学療法剤に対して耐性になり得、免疫系による検出を回避し得ることが公知である。新しい因子を同定し得るように、癌治療のための標的を同定することに対する必要性が存在し続けている。DNA複製プロセスは、癌治療における薬物介入のための第一の標的を示す。DNA複製を調節し、癌細胞系統の形成または進行に寄与する遺伝子産物を同定し、それらの機能に影響を及ぼす因子を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の記述)
本発明の1つの局面に従って、DNA複製を調節する因子の同定のための標的としての、Ciz1ヌクレオチド配列もしくはCiz1ポリペプチド配列、またはその任意のフラグメントもしくは改変体の使用が提供される。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「フラグメント」または「改変体」は、Ciz1の全長ヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列に由来するか、またはそのスプライス改変体に由来する任意の核酸配列またはアミノ酸配列をいうように使用される。本発明の1つの実施形態において、フラグメントは、Ciz1のDNA複製活性を保持するために、十分な長さであり、かつ/または全長Ciz1に対して十分に相同である。代替的実施形態において、不活性なCiz1フラグメントが使用される。用語「フラグメント」または「改変体」はまた、本明細書中に記載されるCiz1 RNA転写物およびタンパク質アイソフォーム(もしくはその部分)に関する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「調節する」は、DNA複製を、特定の因子の非存在下で通常観察されるレベル以上に増加させるか、またはそのレベル以下に減少させるかのいずれか(すなわち、因子の使用に直接的に関連するかまたは間接的に関連するかのいずれかの、DNA複製活性における任意の変化)をいうように使用される。用語「調節する」はまた、DNA複製の空間的組織化または時間的組織化の変化への言及を包含する。
【0025】
本発明の代替的局面に従って、DNA複製を調節する因子の同定のためのスクリーニング方法が提供され、ここで、そのスクリーニング方法は、Ciz1ヌクレオチド配列もしくはCiz1ポリペプチド配列、またはその任意のフラグメントもしくは改変体の使用を包含する。
【0026】
好ましくは、上記スクリーニング方法は、以下:
a)図14、15、または21のいずれかに示される核酸配列を含む核酸分子;
b)(a)中の核酸配列にハイブリダイズし、かつCiz1活性またはその改変体の活性を有する核酸分子;
c)遺伝暗号が原因でa)およびb)中の配列、ならびに試験されるべき候補因子に対して縮重している核酸配列を有する核酸分子;
d)Ciz1遺伝子座でのゲノム配列に由来する核酸分子、または該ゲノム配列にハイブリダイズする核酸分子
からなる群より選択される核酸分子に対する因子の効果を検出または測定する工程
を包含する。
【0027】
本発明の1つの実施形態において、上記核酸分子は、上記核酸配列のうちの少なくとも1つの核酸残基の欠失、置換または付加によって改変されている。
【0028】
あるいは、上記スクリーニング方法は、以下の工程:
(i)以下:
a)図14、15、または21のいずれかに示される核酸配列を含む核酸分子;
b)(a)の核酸配列にハイブリダイズし、かつCiz1活性またはその改変体の活性を有する核酸分子;
c)遺伝暗号が原因でa)およびb)中の配列、ならびに試験されるべき候補因子に対して縮重している核酸配列を有する核酸分子;
d)Ciz1遺伝子座でのゲノム配列に由来する核酸分子、または該ゲノム配列にハイブリダイズする核酸分子
からなる群より選択される核酸分子によってコードされるポリペプチド分子、またはその活性フラグメントを含む調製物を形成する工程;ならびに
(ii)該ポリペプチドの活性に対する前記因子の効果を検出または測定する工程
を包含する。
【0029】
DNA複製の検出のためのアッセイは、当該分野で公知である。Ciz1に存在するか、またはペプチドフラグメントに由来する活性、およびその活性に対する潜在的治療剤の効果が、インビトロまたはインビボでアッセイされる。
【0030】
Ciz1タンパク質活性についてのインビトロアッセイは、同期化され、単離されたG1期の核と、サイクリン依存性キナーゼを補充されたS期抽出物またはG1期抽出物のいずれかとを含む。Ciz1またはCiz1に由来するペプチドフラグメントを含むことは、これらの条件においてDNA複製の開始を刺激し、そして視覚的に(インビトロ反応の間に取り込まれた蛍光ヌクレオチドを有する核を記録することによって)かまたは放射性ヌクレオチドの取り込みを測定することによって、モニタリングされ得る。Ciz1タンパク質機能を妨害する治療試薬についてのアッセイは、これらのアッセイにおけるDNA複製の阻害を探索することを含む。Ciz1の、核への局在化、クロマチン結合、安定性、改変、およびタンパク質−タンパク質相互作用に対する因子の影響もまた、これらのアッセイにおいてモニタリングされ得る。
【0031】
インビボアッセイは、Ciz1もしくはCiz1に由来するフラグメントを過剰発現するか、またはCiz1もしくはCiz1に由来するフラグメントを過小に発現して、変化された細胞増殖をもたらす細胞モデルおよびマウスモデルの作製を包含する。このトランスジェニック動物の調製は、一般的に、当該分野で公知であり、当業者の技術範囲内である。治療試薬についてのアッセイは、Ciz1およびその改変体をRNAレベルで標的することによって、Ciz1タンパク質活性に影響を与えるかまたはCiz1生成を妨害するかのいずれかである薬物の存在下および非存在下での、細胞周期時間、DNA複製の開始、および癌の発症の分析を包含する。
【0032】
本発明の好ましい方法において、前述のハイブリダイゼーション条件は、ストリンジェントである。
【0033】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション/洗浄の条件は、当該分野で周知である。例えば、0.1×SSC、0.1%SDS中での、60℃での洗浄後に安定な核酸ハイブリッド。核酸の配列が既知である場合に最適なハイブリダイゼーション条件が計算され得ることは、当該分野で周知である。代表的に、ハイブリダイゼーション条件は、4〜6×SSPE(20×SSPEは、1Lに溶解された175.3gのNaCl、88.2gのNaHPOO、および7.4gのEDTAを含有し、そのpHは7.4に調整される);5〜10×デンハルト溶液(50×デンハルト溶液は、5gのFicoll(Type 400、Pharmacia)、5gのポリビニルピロリドン、および5gのウシ血清アルブミンを含有する);100μg〜1.0mg/mlの超音波処理されたサケ/ニシンDNA;0.1〜1.0%ドデシル硫酸ナトリウム;必要に応じて、40〜60%脱イオンホルムアミドを用いる。ハイブリダイゼーション温度は、核酸標的配列のGC含量に依存して変動するが、代表的に、42℃〜65℃の間である。
【0034】
本発明の好ましい方法において、前述のポリペプチドは、このポリペプチド配列の少なくとも一アミノ酸残基の欠失、置換または付加によって改変される。
【0035】
改変型かまたは改変体(すなわち、フラグメントポリペプチド)と参照ポリペプチドとは、任意の組合せで存在し得る一以上の置換、付加、欠失、短縮によってアミノ酸配列が異なり得る。好ましい改変体には、保存的アミノ酸置換によって参照ポリペプチドと異なる改変体がある。このような置換は、所定のアミノ酸を、同様の特徴の別のアミノ酸で置換する置換である。以下の、アミノ酸の非限定的なリストは、保存的置換(類似)とみなされる:a)アラニン、セリンおよびスレオニン;b)グルタミン酸およびアスパラギン酸;c)アスパラギンおよびグルタミン;d)アルギニンおよびリジン;e)イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリン、ならびにf)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン。好ましいのは、参照ポリペプチド(これから改変体が変化する)と、同じ生物学的機能および活性を保持する改変体である。あるいは、改変体は、変化した生物学的機能を有する改変体(例えば、アンタゴニストとして働く改変体、いわゆる「ドミナントネガティブ」改変体)を包含する。
【0036】
あるいは、または加えて、非保存的置換は、所望の生物活性を生じ得る(参考として援用される、Cain SA,Williams DM,Harris V,Monk PN.Selection of novel ligands from a whole−molecule randomly mutated C5a library.Protein Eng.2001 Mar;14(3):189−93を参照このと)。
【0037】
本発明に従う機能的に等価なポリペプチド配列は、一以上のアミノ酸残基が、保存的アミノ酸残基もしくは非保存的アミノ酸残基で置換された改変体であるか、または一以上のアミノ酸残基が置換基を含有する改変体である。保存的置換は、以下である:脂肪族アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIleの間の一つから別のものへの置換;ヒドロキシル(hydroxl)残基SerとThrとの交換;酸性残基AspとGluとの交換;アミド残基AsnとGlnとの間での置換;塩基性残基LysとArgとの間での交換;ならびに芳香族残基PheとTyrとの間での置換。
【0038】
加えて、本発明は、本明細書中で開示されるようなヌクレオチド配列もしくはポリペプチド配列と少なくとも50%の同一性を有するヌクレオチド配列もしくはポリペプチド配列、またはそのフラグメントおよび機能的に等価なポリペプチドを特徴とする。一実施形態において、このヌクレオチド配列もしくはポリペプチド配列は、本明細書に例示されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列と、少なくとも75%〜85%の同一性を有し、より好ましくは少なくとも90%の同一性を有し、なおより好ましくは少なくとも95%の同一性を有し、さらにより好ましくは少なくとも97%の同一性を有し、そして最も好ましくは少なくとも99%の同一性を有する。
【0039】
本発明の好ましい方法において、前述の核酸分子は、図16もしくは図17のCiz1のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または図20Aおよび図20Bに記載される改変体を含む、Ciz1の任意の改変体をコードする核酸配列を包含する。本発明のさらなる好ましい方法において、前述の核酸分子は、図16もしくは図17のCiz1のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または図20Aおよび図20Bに記載される改変体を含む、アミノ酸配列Ciz1の改変体をコードする核酸配列からなる。
【0040】
本発明のさらなる好ましい方法において、前述のポリペプチド分子は、図16もしくは図17のCiz1のアミノ酸配列か、または図20Aおよび図20Bに記載される改変体を含む、Ciz1の改変体を包含する。本発明のさらなる好ましい方法において、前述のポリペプチド分子は、図16もしくは図17のCiz1のアミノ酸配列か、または図20Aおよび図20Bに記載される改変体を含む、Ciz1の改変体からなる。
【0041】
本発明のさらなる好ましい方法において、前述のポリペプチドは、細胞(好ましくは哺乳動物細胞)または動物によって発現され、そして前述のスクリーニング方法は、細胞ベースのスクリーニング方法である。
【0042】
好ましくは、前述の細胞は、Ciz1ポリペプチドを天然に発現する。あるいは、前述の細胞は、Ciz1ポリペプチド(または、例えば、癌細胞系統に見出されるその改変体分子)をコードする核酸分子によってトランスフェクトされる。
【0043】
本発明のさらなる局面に従って、本発明に従う方法によって得られる因子が提供される。
【0044】
好ましくは、前述の因子は、Ciz1媒介性DNA複製のアンタゴニストである。あるいは、前述の因子は、Ciz1媒介性DNA複製のアゴニストである。
【0045】
本発明のさらなる好ましい方法において、前述の因子は、ポリペプチド;ペプチド;アプタマー;化学物質;抗体;核酸;またはポリペプチドプローブもしくはヌクレオチドプローブからなる群より選択される。
【0046】
好ましくは、この因子は、標的に相補的である配列、または標的への特異的結合を生ずるに十分な相同性のある配列を含み、そして診断目的で核酸またはタンパク質のレベルを検出するために使用され得る。
【0047】
あるいは、本発明の方法によって同定される因子は、治療剤であり、そして疾患の処置のために使用され得る。
【0048】
本発明の一実施形態において、この因子は抗体分子であり、そして図16、図17または図20によって表される配列のいずれかに結合する。
【0049】
好ましくは、前述の抗体は、モノクローナル抗体である。
【0050】
あるいは、前述の因子は、上記(i)の核酸配列のいずれかによってコードされるmRNAに結合し、それによってこのmRNAをブロックするかまたは不活性化する、アンチセンス核酸分子である。
【0051】
代替的実施形態において、前述の因子は、RNAi分子であり、これは互いにアニーリングして二本鎖RNA分子を形成する、二つのRNA相補鎖(センス鎖およびアンチセンス鎖)を含む。好ましくはこのRNAi分子は、Ciz1遺伝子のエキソン配列に由来するか、または別の重複遺伝子に由来する。
【0052】
一実施形態においては、スプライシングされていないmRNAがRNAiに標的とされて、スプライシング改変体の生成を阻害する。別の実施形態においては、このスプライシング改変体mRNAは、非改変mRNAに影響することなく除去される。
【0053】
本発明の好ましい方法において、上記ペプチドは、オリゴペプチドである。好ましくは、上記オリゴペプチドは、少なくとも10アミノ酸長である。好ましくは、上記オリゴペプチドは、少なくとも20アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、50アミノ酸長である。
【0054】
本発明のさらに好ましい方法において、上記ペプチドは、改変型ペプチドである。
【0055】
改変型アミノ酸としては、例として、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン、N−アセチルリジン、N−メチルリジン、N,N−ジメチルリジン、N,N,N−トリメチルリジン、シクロヘキシアラニン、D−アミノ酸、オルニチンが挙げられるが、これらに限定されないことが、当業者にとって明らかである。他の改変としては、ハロ(例えば、F、Br、I)、ヒドロキシもしくはC〜Cアルコキシから選択される1個、2個もしくは3個の置換基で必要に応じて置換されたCアルキルR基、CアルキルR基もしくはCアルキルR基を含むアミノ酸が挙げられる。
【0056】
あるいは、上記ペプチドは、アセチル化および/またはアミド化によって改変される。
【0057】
本発明の好ましい方法において、上記ポリペプチドまたはペプチドは、環化によって改変される。環化は、当該分野で公知である(Scottら、Chem Biol(2001)8:801〜815;Gellermanら、J.Peptide Res(2001)57:277〜291;Duttaら、J.Peptide Res(2000)8:398〜412;NgokaおよびGross,J Amer Soc Mass Spec(1999)10:360〜363を参照のこと)。
【0058】
本発明のさらなる局面によると、例えば、Ciz1またはその改変体を阻害し、それによって標的とされるべきタンパク質を発現する細胞の標的化を可能にするアンチセンスまたはRNAi分子のための、送達手段としてのベクターが提供される。
【0059】
本発明の一実施形態において、ウイルスベクターが、送達手段として使用される。
【0060】
好ましくは、上記ベクターは、ヌクレオチド配列を含む発現カセットを含み、このヌクレオチド配列は、
a)図14、図15、および図21に示されるCiz1アミノ酸配列をコードする核酸配列;
b)(a)の核酸配列にハイブリダイズする核酸分子;
c)遺伝コードが原因でa)およびb)中の配列ならびに上記配列のうちのいずれかと相補的な任意の配列に対して縮重している核酸配列を有する、核酸分子;
d)Ciz1プレmRNAをコードする核酸配列(すなわち、ゲノム配列);
からなる群より選択され、上記発現カセットは、プロモーター配列に対して転写的に連結されている。
【0061】
好ましくは、上記発現カセットを含むベクターは、真核生物遺伝子発現のために適合される。代表的には、上記適合としては、例として、細胞特異的発現/組織特異的発現を媒介する転写制御配列(プロモーター配列)の提供が挙げられるが、これに限定されない。これらのプロモーター配列は、細胞特異的/組織特異的であっても、誘導性であっても、構成的であってもよい。;
プロモーターエレメントはまた、代表的には、所謂TATAボックス、および転写開始部位を選択するように機能するRNAポリメラーゼ開始選択配列を含む。これらの配列はまた、特に、RNAポリメラーゼによる転写開始選択を促進するように機能するポリペプチドに結合する。
【0062】
適合としてはまた、選択マーカーおよび自己複製配列の提供が挙げられ、これらは両方とも、真核生物細胞または原核生物宿主のいずれかにおける上記ベクターの維持を促進する。自律的に維持されるベクターは、エピソーム性ベクターと呼ばれる。ベクターによりコードされる遺伝子の発現を促進するさらなる適合としては、転写終結配列の提供が挙げられる。
【0063】
これらの適合は、当該分野で周知である。発現ベクターの構築および組換えDNA技術一般に関する、かなりの量の刊行文献が存在する。Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,Cold Spring Harbour,NYおよびその中の参考文献;Marston,F(1987)DNA Cloning Techniques:A Practical Approach Vol III IRL Press,Oxford UK;DNA Cloning:FM Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照されたい。
【0064】
本発明によると、増殖性傷害の同定のための診断方法が、提供され、この方法は、そのゲノム配列またはタンパク質配列における、Ciz1遺伝子、Ciz1スプライス改変体および変異の存在または発現を検出する工程を包含する。
【0065】
好ましくは、上記診断方法は、以下の工程:
(i)試験されるべき被験体から単離したサンプルを、Ciz1活性を有するポリペプチドまたはCiz1活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子に特異的に結合する因子と、接触させる工程;ならびに
(ii)上記サンプル中の上記ポリペプチドまたは核酸に対する上記因子の結合を検出または測定する工程;
(iii)逆転写PCRまたはリアルタイムPCRを使用して、Ciz1アイソフォーム発現をモニターし、発現レベルを測定する工程;
(iv)上記分子の変化した立体構造特性に基づいて、核酸変異またはアミノ酸変異の存在を測定する工程;
のうちの1つ以上を包含する。
【0066】
一次実施形態において、本発明の診断方法は、インビボで実行される。
【0067】
代替的実施形態において、本発明の診断方法は、エキソビボまたはインビトロで実行される。
【0068】
好ましくは、上記診断方法は、サンプル中のCiz1 RNAまたはCiz1タンパク質改変体の定量的測定を提供する。
【0069】
本発明の一実施形態において、Ciz1 RNAもしくはCiz1タンパク質またはそれらの改変体を調節する因子を、薬剤として使用することを提供する。
【0070】
好ましくは、上記薬剤は、本発明のスクリーニング方法によって同定される因子を、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、もしくは希釈剤と、組み合わせてかまたは会合して含む。
【0071】
好ましくは、上記薬剤は、経口投与用もしくは局所投与用、または注射による投与用である。本発明の代替的実施形態において、上記薬剤は、エアロゾルとして投与される。
【0072】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、増殖性疾患の処置において使用するための医薬の製造のための、本発明に従う因子の使用が提供される。好ましくは、上記増殖性疾患は、癌である。
【0073】
好ましくは、上記癌は、小児癌であり、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、バーキットリンパ腫、髄芽細胞腫、ユーイング肉腫家族腫瘍(ESFT)からなる群より選択される。
【0074】
代替的実施形態において、上記癌は、癌腫、腺癌、リンパ腫、または白血病である。
【0075】
代替的実施形態において、上記疾患は、肝臓癌、肺癌、もしくは皮膚癌、または肝臓転移、肺転移、もしくは皮膚転移である。
【0076】
本発明のさらなる局面によると、増殖性疾患を処置するための方法が、提供され、この方法は、動物(好ましくはヒト)に、本発明に従う方法によって入手可能な因子を投与する工程を包含する。
【0077】
本発明の代替的局面によると、細胞分裂または細胞増殖を遅くするための医薬の製造のための、本発明に従う因子の使用が提供される。
【0078】
本発明はまた、合理的な薬物設計におけるCiz1アミノ酸配列およびタンパク質構造の使用、ならびにCiz1に特異的に結合する薬剤に関する化学ライブラリーのスクリーニングに対するCiz1ヌクレオチドおよびそのアミノ酸配列またはそれらの改変体の使用を包含する。
【0079】
本発明はまた、本発明の方法によって同定された診断薬、予後薬または治療薬を備えるキットを包含する。
【0080】
本発明の代替的実施形態において、アレイに基づく配列決定チップが、変化したCiz1の検出のために使用される。
【0081】
(発明の詳細な説明)
ここで、本発明の実施形態は、以下の図を参照して単なる例として記載される。
【0082】
(Ciz1の同定)
本発明者らは、その挙動がインビトロでのDNA複製の開始に関連する未知の抗原を同定し、そして研究するための組換えヒトCdc6に対して惹起させたポリクローナル抗体(抗体V1)を発見した(Coverleyら、2000;Stoeberら、1998;Williamsら、1998)。この抗原は、100kDaの見かけの分子量を有し(p85と呼ばれる)、3T3細胞からの抽出物において容易に検出可能である(図1A)。
【0083】
DNA合成は、「複製能のある」後期G1期の核、G1抽出物および組換え型サイクリンA−cdk2を用いて、細胞を含まない複製実験において達成され得る。これらの条件下で、核は、活性なプロテインキナーゼの濃度に厳密に依存する様式で、新生DNAへと標識されたヌクレオチドを組み込む(図1B)。最適な濃度の上および下では、DNA複製の開始は起こらない。しかし、開始と逆に相関する他の事象が生じる(Coverleyら、2002)。ここで、本発明者らは、DNA合成の活性化(図1B)およびMcm2リン酸化(移動度の増加を生じる、図1C)を用いて、細胞を含まない複製実験における組換え型サイクリンA−cdk2の効果を較正し、DNA合成の活性化とのp85の挙動を相関させる。
【0084】
開始を誘導する濃度のサイクリンA−cdk2を含有する反応から再び単離したG1核において、p85抗原は、より低いかまたはより高い濃度のキナーゼに曝露された核と比較して、より優勢である(図1D)。このことは、p85が、DNA合成の活性化と同時に起こる様式で、サイクリンA−cdk2によりある程度のレベルにおいて調節されることを示唆する。細胞を含まない開始プロセスにおけるこの段階と密接に関連する他の抗原はなく、したがって、本発明者らは、マウスp85についての遺伝子をクローニングするために、抗体V1を用いた。
【0085】
11日目のマウス胚由来のcDNA発現ライブラリーに適用される場合、抗体V1は、複数回のスクリーニングを生き残った2つのクローンを見出した(方法を参照のこと)。1つは、マウスCdc6をコードし、一方で、他のものは、ヒトCiz1(Mitsuiら、1999)のマウスホモログの716個のアミノ酸をコードした。全長ヒトCiz1および全長マウスCiz1は、アミノ酸レベルで全体で約70%の相同性を有し、最も大きい(80%を超える)相同性は、N末端領域およびC末端領域にある。Ciz1は、ラットおよびフグにおいて存在するホモログとして、脊椎動物の間で保存されるが、高度な相同性または類似のドメイン構造を有するタンパク質は、下等真核生物において同定され得ず、Ciz1が脊椎動物の発生において特殊化された役割を果たすように進化した可能性を生じる。
【0086】
ヒトCiz1に関する以前の刊行物(Mitsuiら、1999)は、細胞周期タンパク質p21−CIP1との相互作用を実証し、DNA複製因子ではなく転写因子としての提唱された役割の調査をもたらした。本特許出願の優先日より後に刊行された第二の論文(WarderおよびKeherly、2003)は、Ciz1の腫瘍形成における役割を示唆するが、DNA複製における役割を実証せず、そしてCiz1スプライシング改変体発現の重要性を認識しない。
【0087】
(複数のCiz1のアイソフォーム)
予測されたマウスCiz1のオープンリーディングフレームおよびマウス乳腫瘤ライブラリー(BC018483)由来のcDNAは、本発明者らの胚クローン(AJ575057)(本明細書中以下でECiz1と称される(図2A))には存在しない3つの領域を含む。ECiz1におけるこれらの3つの可変領域は、エキソン2/3、6および8の選択的スプライシングの結果であるようである(図2B)。マウス黒色腫クローンAK089986は、ECiz1と同じ3つの領域のうちの2つを欠き(図2A)、一方で、第三のものは、N末端ポリグルタミン伸長部(これもまた、ヒト骨髄芽球腫由来のクローンに存在しない)をコードする。エキソン3/4由来の第四の配列ブロックは、マウスES細胞由来のCiz1転写産物、およびマウス原始生殖細胞におけるエキソン4に存在しない(図7)。ヒトCiz1はまた、RNAレベルで選択的にスプライシングされて、マウスCiz1と同じ4つの配列ブロックの組み合わせを排除する転写産物を与える(以下を参照のこと)。実際に、マウスCiz1 cDNAにおける全ての公知のバリエーションは、ヒトにおける密接な類似物を有し、これらのいくつかは、アミノ酸レベルで同一である。このことは、異なるCiz1アイソフォームが、機能的重要性を有することを示唆する。第五の可変領域(マウスにおいてはまだ観察されていない)は、主として癌腫由来のヒトCiz1転写産物において選択的にスプライシングされる。
【0088】
これらのデータは、Ciz1のより短い形態(選択的にスプライシングされるエキソンを欠くもの)が、発生の初期において、および生殖系列を生じる細胞系統において、最も普及していることを示唆する。図7に示される分析において、完全に発達した新生児心臓由来のCiz1のみが、選択的スプライシングを示さず、一方で、すべての胚細胞型が、選択的にスプライシングされた形態を含む。さらに、公共のデータベース(ヒトまたはマウス)における完全なCiz1 cDNAのみが、非胚細胞型由来であり、そして胚供給源由来のもののみが、選択的にスプライシングされる。従って、Ciz1スプライス改変体発現は、まだ完全には分化していない細胞型において優先的に起こるようである。
【0089】
顕著なことに、小児の癌由来のCiz1 cDNAもまた、選択的にスプライシングされる(以下を参照のこと)。このことにより、本発明者らは、適切なCiz1アイソフォームの、発達における正しい時点での発現の失敗が、不適切に調節されたCiz1活性をもたらすことを仮定する。このことは、計画されていない増殖および細胞形質転換に寄与し得る。
【0090】
(ECiz1は、インビトロでのDNA複製を刺激する)
S期の細胞からの細胞質ゾル抽出物へと曝露すると、G1後期の核は、DNA複製を開始し、そして新生DNAを合成し始める(Krudeら、1997)。本発明者らは、この無細胞アッセイを使用して、ECiz1および誘導される組換えフラグメントの、DNA合成に対する効果を試験した(図3)。全長ECiz1タンパク質は、インビトロで複製される核の数を、30%(+/−0.9%)から46%(+/−5.5%)へと一貫して増加させた。このことは、Ciz1が、S期抽出物中の開始の制限物であることを示唆する(図3A)。2つのみの他のクラスのタンパク質(サイクリン依存性キナーゼ、Coverleyら、2002;Krudeら、1997;Lamanら、2001、およびCdc6タンパク質、Coverleyら、2002;Stoeberら、1998)が、無細胞開始を刺激することが以前に見出された。従って、ECiz1は、複製プロセスに関与することがまだ公知ではなかったタンパク質で、この特性を有する最初のタンパク質である。組換えECiz1の、無細胞開始に対するポジティブな効果は、内因性Ciz1が、哺乳動物細胞中でのDNA複製においてポジティブな役割を果たすことを立証する。
【0091】
無細胞開始の刺激は、濃度依存性であり、S期抽出物において、約1nM ECiz1にピーク活性を有する(図3B)。このことは、他の組換えタンパク質を用いた、以前の無細胞分析(Coverleyら、2002;Krudeら、1997)を反映し、この以前の分析において、開始の刺激は、代表的に、ピークになり、次いで、低下して、高濃度での刺激されていないレベルまで戻る。ECiz1に関して、高濃度にて活性が低下することの理由は、未だに明らかではない。しかし、変異誘発研究(以下を参照のこと)は、この制限機構が、より高次のタンパク質複合体の組成における一般的な不均衡に起因するよりむしろ、活性かつ特異的であるようであることを示唆する。
【0092】
(ECiz1のダウンレギュレーションは、スレオニン191/192に関連する)
Ciz1は、インビボにおいて、リンタンパク質であるようである。なぜなら、Ciz1は、多数の推定リン酸化部位を含み、そして3T3細胞抽出物がλホスファターゼで処理された場合に、変化した移動度を示すからである(図示せず)。マウスCiz1は、2つのRXLサイクリン結合モチーフおよび5つの推定cdkリン酸化部位を含み、これらは、全ての公知の改変体に存在する。これらのうちの4つは、ECiz1の、インビトロ複製活性を含むN末端フラグメントに存在し(以下を参照のこと)、そして1つは、エキソン6が短いDSSSQ配列モチーフを排除するように選択的にスプライシングされた部位に隣接する(図2A、C)。このモチーフは、マウスとヒトとの両方において、100%同一であり、そして選択的にスプライシングされるので、本発明者らは、条件的封入が、Ciz1活性を調節するように働き得ると判断し、このタンパク質のこの領域を、潜在的に重要であると同定した。従って、本発明者らは、遺伝アプローチを無細胞複製アッセイと組み合わせることによって、4残基上流であり、そしてまた、マウスおよびヒトにおいて保存されるcdk部位に焦点を合わせることを選択した。ECiz1から開始して、191位および192位の2つのスレオニンを、2つのアラニンに変化させて、Eciz1T(191/2)A(図2D)を生成した。インビトロにおいて、DNA複製活性について試験される場合、ECiz1T(191/2)Aは、ECiz1と同程度に、後期G1核の開始を刺激した(図3C)。しかし、ECiz1とは異なり、開始の刺激は、少なくとも3桁に及ぶ広範な濃度にわたって維持された。従って、過剰のECiz1の活性を制限する機構は、無細胞環境において存在し、そして作動する。別の構築物において、293位のスレオニンもまた、アラニンに変化させて、ECiz1T(293)Aを生成したが(図2D)、この変化は、インビトロにおいてアッセイされたECiz1活性に対してほとんど影響を有さなかった(図3D)。
【0093】
これらの結果は、ECiz1活性のダウンレギュレーションが、スレオニン191/2に関連し、そしておそらく、サイクリン依存性キナーゼによって媒介されるこの部位におけるリン酸化によって引き起こされることを実証する。このことは、Ciz1活性を、全ての主要な細胞周期事象(DNA複製の開始を含む)を制御するcdk依存性経路に結び付ける。
【0094】
ほとんどの複製前複合タンパク質および多くの複製フォークタンパク質は、しばしば、サイクリン依存性キナーゼによって、インビボでリン酸化される(BellおよびDutta、2002;Fujita,1999)。本発明者らのデータは、p85−Ciz1抗原の核蓄積が、サイクリンA−cdk2によって(直接的にかまたは間接的に)調節されること、を示唆し、そしてこれらのデータは、スレオニン191/192における特異的なコンセンサスcdkリン酸化部位が、Ciz1活性の制御に関与することを示す。この部位がリン酸化不可能にされる場合、Ciz1活性は、無細胞アッセイにおける広範な濃度にわたって維持される。従って、Ciz1活性は、通常、この部位における改変によってダウンレギュレートされる。他の保存されたcdkリン酸化部位の機能、およびCiz1の選択的にスプライシングされたN末端部分におけるRXLサイクリン結合モチーフの条件的封入の効果は、まだ決定されていない。従って、Ciz1活性とcdk依存性リン酸化との間の、ここで明らかになった単純なネガティブな関係が、一部始終ではないようである。しかし、本発明者らの分析は、これまでは、Ciz1を、全ての主要な細胞周期移行を制御するcdk依存性経路に結び付け、従って、Ciz1がDNA複製の開始に関与するという、本発明者らの主要な結論と一致する。
【0095】
(インビトロ複製活性は、N末端に存在する)
Ciz1は、タンパク質を核内に繋留し得る、いくつかのC末端特徴を保有する。matrin3ドメインは、核マトリックスとの相互作用を示唆し、そして3つのジンクフィンガーは、核酸との相互作用を示唆する。実際に、最近の証拠は、ヒトCiz1が、弱い配列特異的様式で、DNAを結合することを示唆する(WarderおよびKeherley,2003)。C末端ドメインがECiz1複製活性のために重要であるか否かを決定するために、本発明者らは、このタンパク質を2つのフラグメントに分割した(図2D)。Nterm442(これは、NLS、2つの保存されたcdk部位、1つのジンクフィンガー、および可変スプライシングが観察された全ての公知の部位を含む)は、ECiz1と同程度に、そして同じ濃度で、開始を刺激する(図3E)。対照的に、C末端部分(Cterm274)は、残余の複製活性を含まない(図3F)。従って、matrin3ドメイン、サイクリン依存性キナーゼリン酸化部位のうちの1つおよびジンクフィンガーのうちの2つは、インビトロにおいてアッセイされる場合、ECiz1のDNA複製活性のために必要とはされない。しかし、この分析は、ECiz1の活性を、トランスで、誤局在化の結果が検出されにくい条件下で測定することが注目されるべきである。従って、matrin3ドメインおよびジンクフィンガーが、インビボで作用して、Ciz1活性を、核における特定の部位に指向し、これによって、Ciz1活性の範囲を制限することは、可能なままである。
【0096】
(内因性Ciz1)
抗体V1は、Cdc6ならびにp85−Ciz1を認識(図1A)し、それゆえ、内因性Ciz1の細胞内局在を可視化することを目的とする免疫蛍光実験には適切ではない。それゆえ、本発明者らは、組換えECiz1フラグメントNterm442に対する2つの新たなウサギポリクローナル抗血清(抗Ciz1 1793および抗Ciz1 1794と命名された)を作製した。予想されたように、精製されたNterm442は、ウエスタンブロットにおいて抗Ciz1抗体1793および抗Ciz1抗体1794によって認識されるが、これはまた、抗体V1によっても認識され(図4A)、このことは、p85(p100)が実際にCiz1であるという結論を支持する。
【0097】
増殖中の3T3細胞由来のタンパク質抽出物に適用した場合、抗Ciz1 1793は、125kDaおよび100kDaのMrで2つの抗原を認識し(図4B)、この相対比率は、調製物毎に変化した。100kDaバンドは、抗体V1によって認識されるサイクリン−A応答性抗原と同時に移動し(図1および図4B)、このことは、両方の抗体が、インビボで同じタンパク質を認識することを示唆する。本発明者らは、抗体V1および1793によって認識されるp100−Ciz1バンドが同じタンパク質であることを、免疫沈降によって確認した(図4C)。抗体V1は、1793によるウエスタンブロットにおいて認識された100kDaバンドを沈降し、その逆もそうであった。さらに、同じ実験において、1793、およびより低い程度で抗体V1は、1793によってウエスタンブロットにおいて認識された125kDa抗原を沈降させた。まとめて考えると、本発明者らの観察は、100kDaバンドが実際にCiz1(以前はp85として公知)であることを示し、これらは、Ciz1タンパク質が、細胞周期を進行している細胞において少なくとも2つの形態で存在することを示唆する。
【0098】
上記の免疫沈降の証拠に加えて、いくつかの他の観察によって、p125もまた、Ciz1の1形態であるとの結論が導かれた。第1に、本発明者らの両方の抗Ciz1抗体(1793および1794)は、共通してこのバンドを有する。両方の抗体は、免疫蛍光実験において、同じパターンの核染色を生じ、そしてこれは、Ciz1 siRNAで処理された細胞において破壊される(以下を参照のこと)。第2に、p100およびp125の相対比は、調製物毎に変動し、それゆえ、この相対比は、タンパク質分解切断の結果であり得る。第3に、本発明者らの結果は、抗ヒトCiz1モノクローナル抗体が、HEK293細胞において120kDaおよび95kDaの見かけのMrを有する2つの抗体を検出したMitsuiら(1999)の結果と顕著に類似する。彼らは、120kDa形態のヒトCiz1タンパク質がプロセシングされて95kDa形態を生成することを提唱した。そして本発明者らの結果は、この提唱と一致する。
【0099】
マウス細胞およびヒト細胞において抗体1793によって認識された125kDaバンドは、非形質転換ヒト細胞(Wi38−以下を参照のこと)およびマウス細胞(NIH3T3−示さず)由来の物質の高分解能電気泳動の間に3本のCiz1関連バンドに分離した。これは、Ciz1タンパク質の翻訳後修飾またはCiz1転写産物の選択的スプライシングの結果であり得る。
【0100】
(Ciz1の細胞内分布)
抗Ciz1 1793を用いて、3T3細胞(図5A)およびHeLa細胞(示さず)中のCiz1タンパク質(p85およびp125)の細胞内分布を可視化した。両方の細胞型において、1793は、核特異的抗原と反応し、そしてこれは、組換えNterm442フラグメントを含めることによってブロックされた(図5B)。比較のために示したCdc6(図5A)とは異なり、Ciz1は、この細胞周期進行中の集団の全ての3T3細胞において明確に検出可能である。それゆえ、量のわずかな変動またはアイソフォームは、この方法によっては検出されないが、Ciz1は、中期を通して核中に存在する。界面活性剤での処理後、全体的核Ciz1染色は、全ての核において減少した。このことは、Ciz1が、可溶性画分として、および不溶性核構造体に結合しての両方で核に存在することを示唆する。
【0101】
可溶性タンパク質を洗浄した場合、この不溶性の固定化抗原は、高倍率では、斑点状の核内斑点パターンに分離する(図5C、D)。Ciz1斑点は、DNA合成がS期で生じる部位である、複製「点」または複製「工場」と類似のサイズ範囲および分布を示す。Ciz1が複製工場の部位と同時に生じるか否かをみるために、本発明者らは、Ciz1斑点の位置を、PCNA(S期の細胞における複製複合体の一成分である)の位置と比較した(図5C)。共焦点切片では、PCNA点は、Ciz1点よりも少ないが、これらは、ほぼ全てCiz1と同時に生じる(図5D、図5E、図5F)。これは特に、中間サイズ範囲の点については顕著である。合わせた画像では、PCNA点の位置とCiz1点の位置との間の重複は、黄色のスポットを生じ、一方、残りのPCNAと同時に生じないCiz1点は、赤色である。緑色(PCNA単独)の点は、実質的に存在せず、このことは、Ciz1が、DNA複製工場が形成された全ての部位に存在することを示唆する。
【0102】
Ciz1はまた、PCNAを含まない部位に存在し(図5D)、そしてPCNAとは異なり、Ciz1点は、中期を通して持続する(図5A)。これらの観察の1つの解釈は、Ciz1が、S期にPCNA含有複製工場が形成され得る核内の位置を標識するが、これらの部位の全てが同時に使用されるわけではないということである。異なるCiz1点が、S期の種々の時点においてDNA複製の活性部位になるか否か、または他の核の活性もまたCiz1が結合した部位において生じるか否かは決定されていないままである。実際、この時期において、Ciz1の100kDa形態および125kDaの改変体が異なる活性を有し、そしてこれらが異なる機能を有する核部位に存在するということもまた依然として可能性が残る。
【0103】
(Ciz1は、細胞増殖に必須である)
これまでに、本発明者らは、p85(p100)−Ciz1の挙動が無細胞アッセイにおけるDNA複製の開始と相関すること、組換えCiz1が開始頻度を刺激すること、およびCiz1がDNA複製機構と同じ核部位に存在することを示した。しかし、これらのデータは、Ciz1が増殖中の細胞において必須の機能を有することを示さない。これを試験するために、本発明者らは、RNA干渉(RNAi)を用いて、NIH3T3細胞中のCiz1転写産物レベルを選択的に減少させた。Ciz1内の4つの標的配列を選択し(図2を参照のこと)そして短鎖干渉(si)RNA分子をインビトロで生成した。細胞に適用した場合、4つ全てのCiz1 siRNAは、増殖を制限し(図6A)、そして48時間後にCiz1タンパク質レベルの明らかな減少を引き起こした(図6B)。増殖に対するCiz1低減の効果は、トランスフェクションの23時間後と40時間後との間で明らかになる。このことは、Ciz1 RNAなしでの最初の細胞周期が比較的影響を受けないことを示唆する。40時間までに、コントロール細胞およびCiz1 siRNA処理細胞は有意に異なり、Ciz1低減集団においてはさらなる増殖がなかった。Ciz1低減の特異性を確認するために、増殖が有意に阻害される前に、転写産物レベルを24時間においてモニタリングした(図6C)。この時点で、Ciz1転写産物は、GAPDH siRNAで処理したコントロール細胞において42%のレベルまで低下した。これらの実験は、Ciz1が細胞増殖に必要とされ、そしてDNA複製の主な機能と一致することを示す。
【0104】
これをさらに試験するために、細胞を、siRNA処理の48時間後にBrdUでパルス標識して、DNA合成に関与した細胞の割合を決定した(図6D)。Ciz1レベルが低下した場合、BrdU標識の割合もまた減少した。このことは、DNA合成が、これらの条件下で阻害される示唆する。さらに、Ciz1低減集団における、BrdUを取り込まない細胞(この集団の約15%)は、より弱く標識された。それゆえ、いくつかのCiz1 siRNA処理細胞では、おそらく不完全な低減に起因して、S期は、完全に阻害されるよりも遅延する。
【0105】
Ciz1 siRNAによるDNA合成の阻害は、核機能の全般的破壊の二次的結果であり得る。それゆえ、本発明者らは、そのレベルが細胞周期依存性様式で調節される他の複製タンパク質をある範囲でより詳細に調べて、低減細胞がランダムに停止するのかまたは特定の点で集積するのかをみた。
【0106】
真核生物DNA複製の開始の間、複製Mcm複合体タンパク質は、G1後期にCdc6依存性様式で複製起源に集合する。その後、DNAポリメラーゼおよびそれらの補助因子(PCNAを含む)は、クロマチンに結合するようになり、そして起源が活性化される。これは、Cdc6の大多数の核輸送およびタンパク質分解、そしてDNA合成が進行するのに従う、クロマチンからのMcm複合体の段階的移動と関連する(BellおよびDutta,2002)。Ciz1の作用点を同定するために、本発明者らは、免疫蛍光を用いて、Mcm3およびPCNAをモニタリングした。Ciz1低減細胞(図6E、F)では、両方のタンパク質が、界面活性剤耐性核構造体に結合した核において検出可能であった。それゆえ、これらの因子は、Ciz1に直接は結合しないようであり、その集合はCiz1依存性でもないようである。実際、4つの独立した実験では、界面活性剤耐性クロマチンに結合したMcm3を有する細胞の平均数は、事実上、31%(+/−6%)から51%(+/−5%)へと増加した(図6E)。増加したMcm3は、Ciz1依存性工程が、複製前の複合体の集合後に(しかし、S期の完了の前に)生じることを示す。同じ細胞集団では、PCNA陽性の割合もまた、32%(+/−5%)から49%(+/−6%)へと増加し(図6F)、PCNAの集合後のCiz1作用点を狭めた。従って、Ciz1は、S期を通した進行を阻害するように作用することができないながら、Mcm3およびPCNAを適所に残して、開始プロセスにおける後期段階の間のDNA複製を促進するように作用する可能性が最も高い。
【0107】
まとめると、本発明者らの無細胞の調査、および細胞を基礎にした調査は、Ciz1の主要な機能について一貫した画像を描く。それらは、Ciz1がDNA複製工場の新規な成分であることを示唆し、そしてそれらは、Ciz1が哺乳動物細胞周期において正の役割を演じ、DNA複製の開始を促進するように作用することを示す。
【0108】
3つの本発明者らの調査のラインは、Ciz1が、複製前複合体形成後、開始プロセス中の後期段階の間に必要であることを示唆している。第1に、p85(p100)−Ciz1抗原は、DNA合成を活性化するサイクリンA−cdk2濃度に曝された核中で蓄積し、Ciz1が初期の複製複合体アセンブリステップの間(Coverleyら、2002)よりむしろ、このステップの間に機能することを示す。第2に、後期G1核を用いる機能的研究は、組換えECiz1が、標識されたヌクレオチドをインビトロで取り込む核の数を増加することを示す。従って、Ciz1は、DNA合成を開始するように釣り合わされている核を、活性にDNAを合成する核に転換するステップで活性でなければならない。第3に、RNA干渉研究は、Mcm複合体形成後、およびPCNAがDNA上にアセンブルされるようになった後であるが、これらタンパク質が置換される前の、Ciz1依存性ステップを示す。これらの別個の調査のラインは、Ciz1を開始の後期段階に置くCiz1の作用の点について顕著に類似する結論に至る。
【0109】
(治療戦略としての抗Ciz1 siRNA)
本発明者らの分析は、Ciz1が細胞増殖に必須であり、しかも、Ciz1を標的にすることが、増殖を抑制するための実行可能な戦略であることを示す。種々の癌で本発明者らが観察するCiz1の選択的スプライス形態(以下を参照のこと)は、Ciz1が、集団内の細胞のサブセット中の増殖を抑制するために選択的な方法で標的され得ることを意味している。
【0110】
例として、これは、小細胞肺癌腫細胞中で、C末端配列GTTGAGGAGGAACTCTGCAAGCAGを欠いているときにCiz1転写物中で生成される接続配列にsiRNAを標的することによるか、または特異的な化学的インヒビターを選択するために対応するVEEELCKQ配列を欠くCiz1タンパク質を用いることにより、なされ得る。
【0111】
従って、本発明はまた、診断マーカー、予後指標または治療標的としての選択的スプライス配列が存在しないときにCiz1転写物およびCiz1タンパク質中に生成される接続配列の使用を提供する。
【0112】
(胚形態Ciz1は核に局在化する)
潜在的に可変であるエキソン全域にわたるRT−PCR分析は、3T3細胞が全長Ciz1を優勢に発現することを示唆し、そこで、内因性Ciz1に関する本発明者らの免疫局在化研究(図5)は、いくつかの配列ブロックを欠き、そしておそらくそれ故、そのタンパク質を局在化するために用いられる情報を欠く、ECiz1の挙動を必ずしも反映しない。ECiz1と全長Ciz1との局在化を直接比較するために、増大されたGFPタグ構築物を、3T3細胞中にトランスフェクトし(図8A)、そしてマウスの前核中にマイクロインジェクトした(図8B)。すべての場合において、タグ化Ciz1およびタグ化ECiz1は専ら核にあり、その一方、GFP単独を発現するコントロール構築物は、核および細胞質中に存在した。GFP−Ciz1およびGFP−Ciz1は両者とも、生存細胞中で、免疫蛍光によって固定された細胞中で観察された複製中心に類似する副核中心として見えた。従って、ECiz1から存在しない3つの配列ブロックは、Ciz1の核局在化に寄与するように見えなかった。
【0113】
トランスフェクション後3日間に亘り、GFP−Ciz1およびGFP−ECiz1でトクランスフェクトした細胞中では細胞分裂は観察されなかった。これらのデータは、機能的Ciz1の過剰発現が、(調節経路をインタクトで有する細胞において)細胞周期に対して阻害効果を有することを示唆する。
【0114】
(融合)
Ciz1のC末端の1/3が除去されたGFPタグ化構築物が3T3細胞中にトランスフェクトされたとき、ECiz1と全長Ciz1との間の差異が観察された(図8C)。48時間までに、FL Ciz1 N末端(442相当)は、大きな核内斑点(blob)へと融合し、これは、3日目までまたそれより遅く、ECiz1 N末端442トランスフェクション集団中でのみ見えるようになった。この時点より前は、ECiz1 N末端442は、核に特異的であるが拡散したパターンとして局在化した。従って、融合する能力は、Ciz1とECiz1との間で定量可能に異なり、そしてそれ故、3つの選択的にスプライスされたエキソンのうちの1つ(2/3、6または8)によって影響される。
【0115】
全長Ciz1およびECiz1でトランスフェクトされた細胞のように、C末端の1/3が除去された構築物でトランスフェクトされた細胞は、3日間のモニタリング期間の間に増えるようには見えなかった。
【0116】
(C末端ドメインはCiz1を核構造に係留する)
上記で説明したように、Ciz1とECiz1 N末端との間の差異は、C末端ドメインもまた存在するときマスクされる(図8A)。さらに、C末端フラグメント単独は、GFPタグをクロマチンに向け、Ciz1またはECiz1のようなスポット状(中心)ではない不規則パターンを形成するが、これは、有糸分裂の間に染色体に付着したままである(図8D)。これは、C末端ドメインが、核中の構造的フレームワーク上にCiz1を固定化することに関与していることを示唆する。注目すべきことに、C末端フラグメントで一時的にトランスフェクトした細胞は、分裂し続け、緑の蛍光の段階的な希釈を生じた。
【0117】
(異所性Ciz1は、S期への未成熟エントリーを促進する)
本発明者らは、トランスフェクション後、最初の日の間に生じる事象を調べた。トランスフェクトされた細胞(緑)中のS期の画分を、非トランスフェクション細胞中のS期の画分と、BrdUで種々の間隔で標識することにより比較した。0〜22時間(図8E)、0〜12時間および0〜7時間(示さず)を含む長い標識時間体の間、一致して、非トランスフェクション細胞に比較して、より多くのCiz1トランスフェクション細胞およびECiz1トランスフェクション細胞がDNA合成に従事した。これは、Ciz1およびECiz1が、G1→S遷移に対して正の影響を有し、S期へのスケジュールされないエントリーを促進することを示唆する。類似の結果が、トランスフェクション前に密にプレートされた3T3細胞集団で得られた。これは、正常細胞周期の一部としてS期に従事した非トランスフェクション集団にある画分を最小にするためになされた。これらの条件の下、トランスフェクション集団と非トランスフェクション集団との間の差異は最大になり、DNA複製の開始に対する異所性Ciz1の効果を明瞭に示した。
【0118】
逆に、細胞が、トランスフェクション後22時間(図8E)、または10時間または12時間(示さず)で投与された短パルスの間に、BrdUで標識されたとき、この標識された画分は、一貫して、Ciz1トランスフェクション集団およびECiz1トランスフェクション集団で減少した。これは、異所性Ciz1またはECiz1によって誘導されるS期は異常であり、遅延または廃されたDNA合成が、BrdUへの曝露の短時間帯の間に細胞を標識するには十分でないことを示唆する。
【0119】
従って、異所性Ciz1および異所性ECiz1は、培養細胞中のS期に対し2つの効果を有している。それらは、DNA複製を促進するが、これは、遅延または廃されたDNAを生じる。
【0120】
(改変された増殖能力をもつクローン)
本発明者らはまた、3週間の期間に亘り3T3細胞のトランスフェクション集団をモニターした。GFP−N末端442または非選択的スプライス等価物でトランスフェクションされ、かつG418での選択下で維持された細胞では、数百の細胞を含む大きな増殖巣が観察された(図9A)。これらのクラスターは多数のGFP発現細胞を含み、このことは、(複製活性が存在する)ECiz1のN末端部分の過剰発現が致死的ではないことを示し、そしてこの過剰発現が、非トランスフェクション細胞と比較して、接触阻害の損失および単層形成の不能を含む、改変された増殖表現型に至ることを示唆している。このCiz1依存性の改変された挙動は、腫瘍形成に寄与し得る。推定のクロマチン相互作用ドメインを欠く、マウスCiz1の類似する短縮型バージョンは、マウス黒色腫から先に単離された(図2)。
【0121】
(ヒトCiz1および癌)
(公開データベース中のCiz1 cDNA)
上記で述べたように、ヒトCiz1は、RNAレベルで選択的にスプライスされ、マウス胚Ciz1と同じ3つのエキソンを欠く転写物を生じる。7つのヒトCiz1 cDNAが、Mitsuiら(1999)、WarderおよびKeherly(2003)および大規模ゲノム分析プロジェクト(NIH−MGCプロジェクト、NEDOヒトcDNA配列決定プロジェクト)によって提出された公開データベースに記録されている(図10)。1つだけが正常成体組織由来であり、そしてこれは、すべての推定されたエキソンを含む(AB030835)。残りは、胚細胞由来である(AK027287)か、または特に4つの異なるタイプの小児癌由来である(髄芽細胞腫、AF159025、AF0234161、網膜芽細胞腫、AK023978、神経芽細胞腫、BC004119およびバーキットリンパ腫、BC021163)。この胚形態および癌由来形態は、本発明者らの胚マウスクローンと同じ3つの領域から、およびエキソン4に対応する第4の領域からの、配列ブロックを欠く。従って、この制限されたデータは、選択的スプライス形態が、発生の初期により優勢であることを示唆する。この相関関係は、先には科学的文献には記載されていない。小児癌における選択的にスプライスされたCiz1の存在は、Ciz1誤スプライシングが不適切な細胞増殖に関連し得る可能性を挙げる。
【0122】
例えば、可変エキソンの1つは、マウスECiz1およびヒト髄芽細胞腫に存在しない、短い保存されたDSSSQ配列をコードする。これは、本発明者らがECiz1機能の調節に関係することを示したコンセンサスcdkリン酸化部位に直接隣接する。DSSSQ配列の条件付き包含は、Ciz1をプロテインキナーゼのATM/ATRファミリーによる調節の対象にし得、このプロテインキナーゼは、SQ配列においてタンパク質をリン酸化し、それによって、DNA損傷に応答してCiz1開始機能を抑制する。
【0123】
(発現される配列タグの分析)
小児癌における選択的にスプライシングされたCiz1の存在は、Ciz1 ESTの詳細な分析を促進した。NCBI ユニジーンクラスターHs.23476(ヒトCiz1)に含まれる567個の発現配列タグ(EST)が存在する。これらは、幅広い範囲の正常および疾患の組織および細胞株に由来する。配列は、翻訳されて、ヒトCiz1の予測全長アミノ酸配列に対してマッピングされた。アミノ酸置換、欠失、フレームシフトおよび翻訳の早期の終了を生じる配列の変化が記録された。
【0124】
選択的にスプライシングされたCiz1改変体はまた、ESTデータセットに見出され、本明細書中に記録される。ヒトおよびマウスのCiz1において選択的にスプライシングされることが以前に報告された4つの配列ブロック(図2)は、EST配列、およびエキソン14由来の配列VEEELCKQを欠く以前に検出されなかった改変体において観察された。これらの繰り返される改変体配列ブロックの全てが、適切なスプライシング部位によって制限される。6番目の可変配列ブロックは、以下:
【0125】
【数1】

【0126】
の包含によって引き起こされる、1つの癌由来のライブラリーにおいて同定された。
【0127】
ESTは、成体起源、幼児起源または胚起源の新生物細胞間で生じる最初の区分を用いて、それらが由来する細胞型に従って、グループ分けされる。胚起源または成体起源の正常組織由来のESTが、比較のために含まれる。EST由来のCiz1タンパク質マップを図11A〜Eに示し、選択的にスプライシングされたエキソンを図11Fにまとめる。
【0128】
ヒトCiz1のN末端における3つの配列ブロックは、髄芽細胞種および神経芽細胞種由来の転写物に存在せず(図11A)、そして他の癌由来のCiz1転写物からの転写物にはときどき存在しない。本発明者らはまた、第3の小児癌、ユーイング肉腫(以下を参照のこと)において類似の選択的スプライシングを見出した。小児癌に関係する選択的にスプライシングされた配列は、エキソン2/3(少なくとも2つのバージョン)、エキソン4およびエキソン6に由来する。
【0129】
Qリッチ縮重リピートの1つ以上のコピーが存在しないエキソン8改変体は、(胚起源または成体神経起源の)正常細胞由来の転写物および種々の癌由来の転写物において注目された。この領域における選択的スプライシングは、不適切な活性を有するCiz1を生成し得、従って、エキソン8改変体発現、またはこの領域のスプライシングに影響する点変異の存在は、癌の診断マーカーまたは予後マーカーとして有用であり得る。エキソン8の選択的にスプライシングされた縮重リピートを、以下に詳細に記載し、図11Fにまとめる。
【0130】
ヒトCiz1タンパク質のC末端の半分において、2つの配列ブロックは、種々にスプライシングされる。これらのうちの1つは、5つの肺癌および肺カルチノイドライブラリーのうちの3つ由来の転写物、および3つの他の癌腫由来の転写物から失われている(しかし、他の細胞型由来の転写物からは非常にまれである)。
【0131】
第2の改変体配列ブロックは、類表皮癌腫ライブラリー(MGC102)由来の転写物における外部配列の不適切な包含に起因する。
【0132】
Ciz1タンパク質において形成されるこれらの配列および連結配列、これらのセグメントが排除される場合または含まれる場合のCiz1転写物は、幅広い範囲の異なる癌において細胞増殖の選択的阻害のための潜在的標的である。残りの非改変体配列は、細胞増殖の非選択的阻害のための潜在的標的である。
【0133】
スプライシング改変体に加えて、他の非典型的Ciz1転写物は、好ましくは、いくつかの癌において存在することが見出された。横紋筋肉腫において、Ciz1は、早期に終了し、C末端核結合ドメインを欠く予測タンパク質を導く。これは、不適切なDNA複製を導き得、従って、この型の癌における治療標的またはマーカーであり得る。
【0134】
いくつかの転写物は、推定サイクリン依存性キナーゼ(cdk)リン酸化部位にアミノ酸置換を導く点変異を含む。頸癌ライブラリーMGC12において、これは、2回生じる。本発明者らは、2つのcdkリン酸化部位がCiz1活性の制限に関係することを示し(図3CおよびD)、これは、癌細胞における増殖の調節解除におけるこれらの変異を関係させる。これらのうちの1つが、上記の癌由来の変異と同じである(図11E)。Ciz1に点変異を有する癌由来の転写物はまた、RNA干渉によって標的化され得るか、または診断指標または予後指標としての価値を有し得る。
【0135】
(小児癌におけるCiz1改変体発現の調査)
Ciz1改変体発現を、公知のCiz1可変性の3つの領域にわたるプライマーセットを用いるRTPCRを使用して、6つのユーイング肉腫ファミリー腫瘍細胞株(ESFT)および2つの神経芽細胞株において調査した(図12A)。この分析は、Ciz1改変体発現のパターンが、神経芽細胞と比較して、非形質転換株と比較して、ESFT細胞において異なるが、同じ腫瘍由来の細胞株のセットにおいて明らかに非常に類似していることを示した。従って、Ciz1改変体発現は、これらの癌についての診断の可能性または予後の可能性を有し得る。同じ腫瘍型由来の株のセット内のより小さな改変は、予後的価値を有し得る。
【0136】
増幅された転写物をサブクローニングし、そして配列決定することによって、本発明者らは、試験された6つ全てのESFT株がCiz1のエキソン4マイナス形態を発現することを見出した。Ciz1が細胞増殖に必須である(以下を参照のこと)ので、これは、ESFT細胞の選択的制限のための可能性のある経路を提供する。試験された2つの神経芽細胞株由来の転写物は、まれにエキソン4を欠くが、しばしば、エキソン6によってコードされるDSSSQモチーフの配列を欠く(図12B)。
【0137】
この実験の分析は、小児癌が、エキソン4、6およびおそらくエキソン2/3の可変の包含を伴って、Ciz1の形態を発現することを確認する。
【0138】
エキソン8およびVEEELCKQコード配列を含む配列の1つの形態を含む配列の2つのバージョンを、ESFT、神経芽細胞腫およびコントロールにおいて検出し、これは、これらの領域が、これらの小児癌においてCiz1の調節解除に寄与しないことを示唆する。
【0139】
全ての場合において、Ciz1 RT−PCR産物は、コントロール(Wi38、HEK293、NIH3T3細胞、および初代ヒト骨芽細胞)と比較して、癌細胞株由来のRNAサンプルを用いて実行した反応において最も多量に存在した。これは、腫瘍におけるCiz1改変体の増加した発現と一致する。
【0140】
(前立腺癌細胞株のCiz1タンパク質発現の分析)
正常非形質転換ヒト肺線維芽細胞(およびマウスNIH3T3細胞)は、ウエスタンブロットにおいて抗Ciz1ポリクローナル抗体1793によって検出されるCiz1の2つの主要な形態を発現する(図13A)。より大きな(約125kDa)バンドは、Wi38細胞において等しい割合で存在する3つの異なるバンドに分解するが、前立腺癌細胞株PC3およびLNCAP(およびESFT細胞株−示さない)において非常に一様でない割合で存在する。本発明者らは、これらのタンパク質アイソフォームが、可変にスプライシングされるエキソンの発現によって生成することを推定する。両方の腫瘍細胞株がまた、Wi38細胞よりもCiz1抗原を含み、これは、これらの癌細胞株におけるCiz1の過剰発現と一致する。
【0141】
まとめると、本発明者らの結果(ゲノムデータの実験分析およびバイオインフォマティクス分析)は、幅広い範囲のヒト癌において誤調節されるという結論を支持する。本発明者らは、Ciz1タンパク質が、DNA複製プロセスにおいてポジティブな役割を果たし、従って、変異体Ciz1が、細胞形質転換の結果であるというよりも、細胞形質転換に寄与し得ることを示した。Ciz1の調節解除が、このプロセスにおける共通の工程である場合、このCiz1の調節解除は、治療剤の開発における非常に魅力的な標的を示す。
【0142】
本発明者らはまた、特定の癌に特定の変化を関連付けており、これにより、Ciz1が診断マーカーまたは予後マーカーとして有用である可能性を実現する。これらの変化としては、以下が挙げられる:
・小児癌におけるタンパク質のN末端部分(インビトロにおける複製活性を有する)における可変スプライシング。
【0143】
・Ciz1複製活性の抑制に関連することが公知であるサイクリン依存性キナーゼリン酸化部位における点変異。
【0144】
・前立腺癌腫細胞株におけるCiz1−p125形態の非典型的な発現および核酸結合特性(おそらく、エキソン8または他のエキソンの縮重リピートのスプライシング調節の誤りに起因する)。
【0145】
・肺における小細胞癌および他の癌腫におけるCiz1のC末端における異なったモチーフ(VEEELCKQ)の条件的除外(おそらく、Ciz1タンパク質の核内局在に関連する)。
【0146】
・Wi38正常胚肺線維芽細胞、ヒト骨芽細胞RNAおよびマウスNIH3T3線維芽細胞と比較した場合の、従来試験した全ての癌由来細胞株における、Ciz1タンパク質およびRNAのレベルの上昇(ウエスタンブロットおよびRT−PCRによって検出される)。
【0147】
図14〜図21に示した配列は、治療試薬、診断試薬または予後試薬の開発のために役立つ。
【0148】
(材料と方法)
(クローニング)
11日齢マウス胚由来のlamba triplEx 5’伸長全長富化cDNA発現ライブラリー(Clonetech ML5015t)を、推奨プロトコール(Clonetech)に従ってE.coli Xl1blueに感染させるために使用した。プラークを、10mM IPTG(Sigma)に事前に浸した0.45ミクロンのニトロセルロースフィルター上に乗せた。抗体非存在下での30分間のブロッキング後、アフィニティ精製抗体V1を、約3×10個のプラークに、PBS、10%無脂肪乳粉末、0.4% Tween20中1/1000希釈で適用した。2時間後、フィルターを同じ緩衝液で3回洗浄し、反応性プラークを、標準的手順に従い、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合体化した抗ウサギ二次抗体(Sigma)を用い、化学発光を増強して(ECL,Amersham)、可視化した。43個の独立したプラークを調べたが、2株のファージのみが、さらなる3周のスクリーニングで残った。これらを、BM25.8内への形質転換によってpTrip1Exへ変換して、配列決定した。1つは、マウスCdc6(クローンP)をコードし、他方(クローンL)は、ヒトCiz1に相同な未知のマウスタンパク質をコードしていた。本発明者らは、これを胚性Ciz1(ECiz1)と呼び、これを、EMBLに登録番号AJ575057の下で登録した。
【0149】
(細菌発現)
pGEXベースの細菌発現構築物(Amersham)を使用し、インビトロ分析のためにECiz1タンパク質を産生した。pGEX−ECiz1を、クローンL由来の2.3kbのSmaI−XbaI(平滑末端)フラグメントをpGEX−6P−3のSmaI部位内に挿入することによって産生した。pGEX−Nterm442を、1.35kbのXmaI−XhoIフラグメントをXmaI−XhoI切断したpGEX−6P−3内に挿入することによって産生し、そしてpGEX−Cterm274を、0.95kbのXhoIフラグメントをXhoI切断したpGEX−6P−3内に挿入することによって産生した。pGEX−T(191/2)Aを、pGEX ECiz1から、以下のプライマーを用いた部位特異的変異誘発(Stratagene Quikchange)によって産生した:
【0150】
【数2】

【0151】
pGEX−T(293)Aを、以下のプライマーを用いて産生した:
【0152】
【数3】

【0153】
全てのクローンの読み取り枠の完全性を、配列評価した。
【0154】
組換えCiz1、Ciz1フラグメントおよび点変異を、BL21−pLysS(Stratagene)内で、グルタチオンS−トランスフェラーゼ−タグ化タンパク質として産生した。これを、超音波処理し清浄化した細菌溶解物から、グルタチオンセファロース4B(Amersham)への結合によって精製した。組換えタンパク質を、GSTタグから、精密プロテアーゼを用いて(製造業者Amershamによって推奨されるように)切断することにより、緩衝液(50mM Tris−HC(pH7.0)、150mM NaCl、1mM DTT)中に溶出した。このタンパク質沈殿の収率は、0.2〜2.0mg/mlであった。複製アッセイのために、100mM Hepes(pH7.8)、1mM DTT、50%グリセロール中で連続希釈を行い、その結果、1ml以下のタンパク質溶液を10ml複製アッセイに添加して、示した濃度を得た。以前の観察(Mitsuiら,1999;WarderおよびKeherly,2003)と一致して、組換えCiz1、および生成されたフラグメントN−term442は、SDS−PAGEにおいて、異常に高分子量で移動した。サイクリンA−cdk2を、以前に記載されたように(Coverleyら,2002)、細菌中で産生した。
【0155】
(抗Ciz1抗体)
ウサギポリクローナル抗体V1(Coverleyら,2000;Stoeberら,1998;Williamsら,1998)を、細菌的に発現されたヒトCdc6の内部フラグメント(アミノ酸145〜360に対応する)に対して惹起し、標準的手順(HarlowおよびLane,1988)によりアフィニティ精製した。この抗体は、内在性p100−Ciz1およびまたECiz1 Nterm442フラグメントに対して強く反応する。Nterm442とCdc6アミノ酸145〜360とのアラインメントは、共有エピトープがマウスCiz1における294〜298または304〜312であり得ることを示唆する。組換えNterm442を使用し、1793および1794と名付けられた2つのCiz1特異的ポリクローナル抗血清(Abcam)を生成した。1793は、本明細書中に記載される実験において慣用的に使用されている。その特異性を、抗体Vを用いた相反免疫沈降およびウエスタンブロット分析、内在性エピトープの反応性をブロックするNterm442の取り込み(抗体緩衝液(PBS中10mg/ml BSA、0.02% SDS、0.1% Triton X100)中25μg/ml)、およびsiRNA媒介性のCiz1欠乏(1793核染色を特異的に低下させる)によって評価した。
【0156】
(免疫沈降)
非同時性増殖中の3T3細胞を、複製抽出物について、PBS中で洗浄し、抽出緩衝液(20mM Hepes(pH7.8)、5mM酢酸カリウム、0.5mM塩化マグネシウム)中ですすぎ、EDTA非含有プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)で補強し、そして掻きとって回収した。細胞を、0.1% TritonX100で溶解し、そして界面活性剤耐性ペレット画分を、抽出緩衝液中0.3M NaClに抽出した。100μlの抽出物につき、5μlの1793または2μlの抗体Vを使用し、1時間4℃でインキュベートした。抗原−抗体複合体を、100μlのタンパク質G−セファロース(Sigma)で抽出し、ビーズを、50mM Tris(pH7.8)、1mM EDTA、0.1% NP40、150mM NaClで5回洗浄した。複合体を、ローディング緩衝液(100mM DTT、2% SDS、60mM Tris(pH6.8)、0.001%ブロモフェノールブルー)中で煮沸し、そして6.5% SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析した。
【0157】
(免疫蛍光)
細胞を、カバーガラス上で増殖させ、PBS中0.05% Triton X100への短い事前曝露を行うかまたは行わずに、4%パラホルムアルデヒド中で固定した。内在性Ciz1を、標準的手順に従い、抗体緩衝液中1/2000に希釈した1793血清で検出した。Mcm3を、モノクローナル抗体sc9850(1/1000)で、Cdc6をモノクローナルsc9964(1/100)で、そしてPCNAをモノクローナル抗体PC10(1/100)(全てSanta Cruz Biotechnology)で、検出した。二重染色蛍光共焦点画像の共局在分析を、記載されるように実施した(RubbiおよびMilner,2000;van Steenselら,1996)。
【0158】
(細胞同期性)
マウス3T3細胞を、以前に記載されるように(Coverleyら,2002)、静止状態からの解放によって同期させた。解放の17時間後(「後期G1」と呼ぶ)に回収した細胞から調製した核を、本明細書中に記載される全ての無細胞複製実験において使用した。これにより、S期の核、複製能のある後期G1の核および非応答性初期G1/G0の核を、異なる割合で含む集団を得た。レシピエント、中期G1 3T3抽出物を、15時間目に調製した(これらは代表的に、約5%のS期細胞を含む)。本明細書中に記載される一連の無細胞複製実験は、大量の標準化抽出物を必要とするため、HeLa細胞を使用した。何故なら、HeLa細胞は、大量に、容易に同期化するからである。S期HeLa抽出物を、2回の連続的チミジン誘導性S期ブロックから2時間解放された細胞(Krudeら,1997に記載される)から調製した。
【0159】
(無細胞DNA複製)
DNA複製アッセイを、記載されるように実施した(Coverleyら,2002;Krudeら,1997)。簡潔に言うと、10μlの中期G1期またはS期の抽出物(エネルギー再生系、核酸およびビオチン化dUTPで補充される)および5×10後期G1期核を、60分間37℃でインキュベートした。反応物を、サイクリンA−cdk2(図1BおよびC)を含むバキュロウイルス溶解物で補強した。ここで、0.1μlの溶解物は、1nM精製キナーゼと同じ特異的活性を有する(Coverleyら,2002)。全ての組換えタンパク質を、100mM Hepes(pH7.8)、1mM DTT、50%グリセロール中で連続希釈し、それにより、1μl以下を10μlの複製アッセイに添加し、示した濃度を得た。反応を、50μlの0.5% Triton X100で停止し、50μlの8%パラホルムアルデヒドの添加によって5分間固定した。カバーガラスへ移した後、核をストレプトアビジン−FITC(Amersham)で染色し、Toto−3−ヨウ化物(Molecular Probes)で対比染色した。標識化した核の割合を、1000×解像度で観察することによって定量し、蛍光焦点または激しい一様な標識を有する全ての核を、ポジティブとして記録した。ヨウ化プロピジウムで対比染色したサンプルのインビトロ複製する核の画像を、600×解像度での共焦点顕微鏡検査により作製した。核タンパク質の分析のために、開始条件への15分間の曝露(冷PBSでの2倍の希釈反応および穏やかな遠心分離による)後、核を再度単離した。
【0160】
(データ分析および提示)
開始アッセイにおいて使用する前に、同期したG1期の核の各調製物を試験し、既にS期にある核の割合を確立する(「%S」)。これを行うために、核を抽出物中でインキュベートする。この抽出物は、(静止状態からの解放の15時間後に回収されるG1中期細胞からの)DNA合成の開始を誘導し得ないが、(インビボで開始される)起点からの伸長DNA合成を効率的に支持する。核の伸長画分は、インビトロ開始アッセイ中に、標識されたヌクレオチドを効率的に取り込むが、有益ではない。慣用的には、この画分は、予め確立され、生データから減算される。20%未満がS期である同期した集団を、開始アッセイのために使用する。
【0161】
3T3細胞を、本明細書中で使用されるプロトコールによって静止状態から解放する場合、集団全体のわずか70%がS期に入る(Coverleyら,2002)。しかし、インビトロで最も観察された複製は、50%近くであり;通常、ECiz1とのインキュベーションによって得られる。本明細書中で使用される3T3核のG1集団について、17%がS期であり(%S)、そしてインビトロでの任意のアッセイにおいて複製される最大数は、51%(%複製)であった。従って、この集団の34%が、インビトロでの複製を開始する能力がある(%C)。従って、図3B〜Fにおける各データ点について、%開始=(%複製−%S)/%C×100である。
【0162】
(RNA干渉)
内因性Ciz1を、増殖するNIH3T3細胞において、インビトロ転写されたsiRNA(Ambion Silencerキット)を用いて、マウスCiz1の4つの領域に対して標的化した。siRNAを生成するために使用されるオリゴヌクレオチド配列は、以下である:
【0163】
【数4】

【0164】
Ciz1転写物全体にわたって分布する標的配列を、低い二次構造予測およびエキソン内への局在に基づいて選択した。これは、可変的にスプライシングされることが公知であるもの(siRNA 9)を除いて、Ciz1の全ての公知の形態(配列4、8、11)で一貫して発現される。ネガティブコントロールは、未処理、擬似処理(siRNAを含まないトランスフェクション試薬)およびGAPDH siRNA(Ambion)で処理した細胞であった。Cy3標識化siRNA(Ambion)を使用してトランスフェクション効率を推定し、これが95%を超えることを見出した。RNA干渉実験を、500μlの培地(4% FCSを補充したglutamax含有DMEM)中の1ウェルあたり2×10細胞で開始し、24ウェル様式で実施した。siRNAを、プレーティングの12時間後に、送達用のオリゴフェクタミン(oligofectamine)試薬(Invitrogen)を使用して添加した。他で述べられない限り、siRNAは、第1用量の24時間後に、新しい培地中で送達される第2用量を含む2つの用量として、対で(培地中の総濃度2nM)使用した。第1曝露の48時間後に、細胞数、S期標識化、および免疫染色によって結果を評価した。ノーザンブロットを、単回用量のsiRNAで24時間処理した細胞から単離したRNA(反応中、5倍までスケールアップした)において行った。RNAを、Trizol Reagent(Invitrogen)を用いて調製し、そしてサンプルを、1%アガロースで電気泳動し、NorthernMaxキット試薬(Ambion)を製造業者の指示書に従って用いて、Hybond N+ナイロン膜(Amersham)に転写し、そしてcDNAプローブと、50℃で連続的にハイブリダイズさせた。各ハイブリダイゼーションの間に、0.5% SDS溶液を90℃で使用して膜を剥がし、室温までゆっくりと冷却した。プローブを、Random Primers DNAラベリングシステム(Gibco BRL)を使用して[32P]−dCTP標識し、以下の順序で使用した:i.ECiz1に由来する1.35kb Xma1−Xho1フラグメント、ii.ヒトβアクチンcDNA(Clontech)およびiii.マウスGAPDH cDNA(RNWAY研究所)。この膜を、使用したプローブに依存して55℃〜65℃で、2×SSC、0.2% SDS中で各30〜60分間2回洗浄し、その後、0.2×SSC、0.2% SDS中で30分間1回洗浄した。ハイブリダイゼーションシグナルを、Amersham Biosciences Typhoon 9410可変様式イメージャー、およびImage Quant TLソフトウェア(v2002)を使用して定量した。バンド強度を、任意の単位(カッコ内)で表し、Ciz1およびGAPDHについての結果を、βアクチンについての結果に対して正規化し、%で表す。
【0165】
(S期標識)
インビボでDNA合成を行う核の画分を、20μMのブロモデオキシウリジン(BrdU、Sigma)を培養培地に補充することによって、20分間モニターした。酸処理後、取り込まれたBrdUを、製造業者の指示書に従ってFITC結合体化抗BrdUモノクローナル抗体(Alexis Biochemicals)によって可視化した。核を、Hoescht 33258を用いて対比染色し、そして高(1000×)解像度下で記録した。
【0166】
(緑色蛍光タンパク質タグ化Ciz1)
全長マウスCiz1 cDNAを、UK HGMP Resource Centreから入手し(MGCクローン27988)、配列を完全に検証した。このクローン由来の2.8kbのSmaI−XbaI(平滑末端)全長Ciz1フラグメント、およびpTrip1ExクローンL由来の2.3kbのSmaI−XbaI(平滑末端)ECiz1フラグメントを、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)を用いて、pEGFP−C3(Clontech)のSmaI部位にインフレームで切断した。挿入のないpEGFP−C3を、コントロールとして使用した。構築物を、製造業者の指示書に従ってTransIT−293(Mirus)を用いてNIH3T3細胞内にトランスフェクトするか、またはある細胞期の受精マウス卵の雄性前核内に微量注入した。全長EGFP−Ciz1またはEGFP−ECiz1でトランスフェクトした増殖中の3T3細胞を、生細胞蛍光顕微鏡検査によって、トランスフェクション3日後まで分析した。DNA合成を、細胞培養培地中にヌクレオチドアナログBrdUを含めることによって、図面の説明において示されるような種々の時点について、トランスフェクション後最初の24時間の間にモニターした。上述のように、BrdUに曝される間にDNA合成を行う任意の細胞を、抗BrdUモノクローナル抗体で染色し、赤色の核を生成した。
【0167】
また、Ciz1トランスフェクト細胞を、標準培養培地(DMEM Glutamax + 10%ウシ胎仔血清)中、50μg/ml G418での選択下で、1ヶ月まで維持し、形態の変化した細胞集団を得た。
【0168】
(EST配列分析)
癌細胞における再発性の変化を同定する目的で、NCBIユニジーンクラスターHs.23476(ヒトCiz1)に対する個々の発現配列タグ(EST)マッピングを、Genejockeyを使用して翻訳し、予測アミノ酸配列を全長Ciz1についての予測配列と比較した。品質の低いDNA配列を反映する誤差(例えば、長い配列決定の終わりに生じる誤差)を除外するために、中断されない配列の末端から8アミノ酸より遠くに位置する変化のみを、この分析に含めた。読み取りの後半における二度目の変化により回復したフレームシフト、および終止コドンが後に続くフレームシフトを、中断されない配列が後に続く場合にのみ含めた。従って、配列誤差の大部分は、この分析から除外される。しかし、残存する多くの点変異(フレームシフトおよび終止を含む)が、配列決定の間に導入された誤差を反映することが予測される。従って、この分析は、点変異が1より多く出現した場合にのみ点変異に重点が与えられる、明らかな傾向を目指す。
【0169】
本発明者らは、Ciz1ユニジーンクラスターに対してマッピングした567配列に関して、ほとんど(全ての小児癌、前立腺癌および肺癌、白血病およびリンパ腫ならびに広範な非疾患組織)を分析した。いくつかはマッピングしなかった。なぜなら、それらは、非常に短い読み取りであるからであり、すなわち翻訳の際に非常に短いアミノ酸配列を生じ、そして本発明者らが検出した少数の読み取りについて、Ciz1コーディング配列に対して相同性が全く検出されなかったからである。インビボで使用される読み取り枠の指標を全く有さずに、3つ全てのフレームで相同性の拡大を生じる多重フレームシフトが原因で、少数のESTを、複数のフレームシフトを分析から除外した。これらは全て、癌誘導物質由来(通常は腺癌)である。
【0170】
(Cizアイソフォーム発現のRT−PCR分析)
推奨される手順に従ってトリゾール(trizol)試薬を用いて、RNAを単離し、DNase処理し、そしてランダムヘキサマーおよびsuperscript IIを用いて逆転写し、次いで以下のCiz1特異的プライマーを用いて増幅した:
【0171】
【数5】

【0172】
(癌細胞株におけるCiz1タンパク質アイソフォームの分析)
細胞を、10% FCSを含むDMEM中でサブコンフルエントまで増殖させ、EDTAを含まないプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)を補充した冷hepes緩衝化生理食塩水中でリンスし、次いで掻きとって回収し、0.1% Triton X100を補充した。界面活性剤不溶性物質(核を含む)を、穏やかな遠心分離によってペレット化して、上清画分(SN)とペレット画分(P)とを得た。これらを、還元SDS−PAGEサンプル緩衝液中で煮沸し、そしてタンパク質を、8% SDS−PAGEでの電気泳動によって解析した。ニトロセルロースへの転写後、Ciz1アイソフォームを、抗Ciz1抗体1793で検出した。この分析において使用した全ての方法は、他で十分に記載されている。
【0173】
【数6】

【0174】
【数7】

【0175】
【数8】

【0176】
【数9】

【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】図1は、後期G1核に対するサイクリンA−cdk2の効果を図示する。A)抗Cdc6抗体V1は、3T3全細胞抽出物のウエスタンブロットにおいてマウスCdc6および第二抗原を検出し、約100kDaのMrを伴って移動する(Mcm3タンパク質の移動度に基づいて、これは、これまでに85kDa付近であると推定されていたので、この抗原は、p85と名付けられている−本発明者らは、明確さのために、本明細書中では、同じ名称を維持した)。P85は、溶解性画分および不溶性の核画分(インビトロ複製条件下で調製した)の両方に存在する。B)G1期抽出物による「複製コンピテントな」後期G1期核におけるDNA合成の開始は、組換えサイクリンA−cdk2で補われる。コントロールの棒グラフは、既にS期にある核の割合を示し(陰影なし)、S期細胞からの抽出物における複製を開始した核の割合を示す(陰影あり)。C)細胞を含まない複製条件下で15分後、核を洗浄し、クロマチン画分を再度単離し、SDS−PAGEによって分離し、Mcm2およびMcm3についてブロッティングした。D)同一の核を、抗体V1でブロッティングした。p85抗原は、開始誘導濃度のサイクリンA−cdk2に暴露した核においてより多く存在する。抗体V1を用いて、Ciz1として同定されたマウス胚発現ライブラリーからp85に対する遺伝子をクローニングした。
【図2−1】マウスCiz1改変体のアラインメント。予測された全長Ciz1アミノ酸配列(「全長」)は、マウス乳腺腫瘍cDNAクローン(BC018483)と同一であるが、胚Ciz1(「ECiz1」、AJ575057)および黒色腫由来クローン(AK089986)は、二つの別々の内部の配列を欠如している。さらに、ECiz1中の一番目に利用可能なメチオニンは、エキソン3の中間(Met84)に存在し、これは、N末端からポリグルタミンリッチ領域を排除する。黒色腫由来のAK089986は、全ての他のマウスのクローンおよびヒトのクローンのC末端の前の77コドンを最終部分とするので、不完全であり得る。星印は、Dに示される構築物中の部位特異的変異誘発によって変化したアミノ酸を示す。siRNAによって標的化されるコドンに対応するアミノ酸に、下線を引く。B)マウスCiz1は、少なくとも17エキソンによってコードされる。コードするエキソンは、灰色で示され、選択的に、スプライシングされた領域は、黒色であり、非翻訳領域は、白色である。二つの代替的なエキソン1配列は、いくつかのCiz1転写物に含まれる(示さず)が、二つの本明細書中で示されるものの上流の代替的な翻訳開始部位は、まだ見出されていない。
【図2−2】マウスCiz1改変体のアラインメント。予測された全長Ciz1アミノ酸配列(「全長」)は、マウス乳腺腫瘍cDNAクローン(BC018483)と同一であるが、胚Ciz1(「ECiz1」、AJ575057)および黒色腫由来クローン(AK089986)は、二つの別々の内部の配列を欠如している。さらに、ECiz1中の一番目に利用可能なメチオニンは、エキソン3の中間(Met84)に存在し、これは、N末端からポリグルタミンリッチ領域を排除する。黒色腫由来のAK089986は、全ての他のマウスのクローンおよびヒトのクローンのC末端の前の77コドンを最終部分とするので、不完全であり得る。星印は、Dに示される構築物中の部位特異的変異誘発によって変化したアミノ酸を示す。siRNAによって標的化されるコドンに対応するアミノ酸に、下線を引く。C)ECiz1における配列の特徴および推定ドメイン。予測される核局在化配列(NLS)、推定サイクリン依存性キナーゼリン酸化部位、C2H2型ジンクフィンガーおよび核マトリックスタンパク質matrin3(NakayasuおよびBerezney、1991)に対して相同性を有するC末端ドメインが示される。ECiz1を有さない配列の位置を、三角形によって示す。D)ECiz1および由来する短縮変異体および点変異体を、細胞を含まないDNA複製実験に使用した。かっこの中の数字は、Aに示すマウスCiz1の全長形態におけるアミノ酸位置に関連する。星印は、部位特異的変異誘発によって除去された推定リン酸化部位を示唆する。
【図3】図3は、Ciz1タンパク質の効果および細胞を含まないDNA複製実験において誘導されたフラグメントの効果を示し、ECiz1が、哺乳動物のDNA複製の開始を促進することを示している。A)組換えECiz1は、S期抽出物のインキュベーションの間の「複製コンピテントな」後期G1期核におけるDNA複製の開始を刺激する。ヒストグラムは、異所性のECiz1の存在または非存在下で、ビオチン化ヌクレオチドをインビトロで組み込んだ核の平均の数を、4回の独立した実験から計算した標準偏差を伴って示す(黒色)。核調製がなされた時に既にS期にあった17%の核を作製し、白色に示す。画像は、1nMのECiz1を含むか、または含まないインビトロでの核の複製を示す。全ての核を、ヨウ化プロピジウムで対比染色(赤色)する。B)組換えECiz1に対する反応は、nM範囲で、シャープな最適条件を伴って濃度依存性である。この実験およびB−Iに示される全ての実験において、結果は、複製%ではなく、開始%として表される。これは、インビトロで開始する核の数およびインビトロで開始するのに「コンピテント」である核の数から計算する(方法を参照のこと)。C)スレオニン191/2は、ECiz1 cdk部位変異体T(191/2)Aが、高濃度で、抑制を回避するときのCiz1 DNA複製活性の調節に関与している。D)Cdk部位変異体T(293)Aは、ECiz1に対して類似したプロフィールで、(しかし、より低濃度で)開始を刺激する。E)短縮ECiz1(N末端442)は、C末端配列を欠如するが、インビトロで、ECiz1と類似した程度に、開始を刺激する。F)C末端274は、このアッセイにおいて、DNA複製活性を保持しない。G)、H)、I)N末端の三分の二のECiz1タンパク質におけるさらなる欠失分析は、エキソン8の3’の短い領域が、インビトロでアッセイする場合のCiz1の機能に必要であることを示す。
【図4】抗Ciz1ポリクローナル抗体の特徴づけおよび125kDaのCiz1に関連するバンドの同定。A)精製した組換えECiz1フラグメントN末端442、および抗Cdc6抗体V1を使用する組換えN末端442のウエスタンブロット、および抗Ciz1抗体1793および1794を示すクーマシー染色したSDSポリアクリルアミドゲル。B)3T3全細胞抽出物のウエスタンブロット。抗Ciz1抗体1793によって検出された二つのバンドの内の一つは、抗体V1によって認識されるp85−Ciz1(100kDa)と同じ移動度を有していて、もう一方は、125kDaの見かけのMrを有する。抗Ciz1抗体1794は、Ciz1の125kDaの形態(および80kDa付近の第二の抗原)のみを認識する。C)抗体V1または抗Ciz1 1793を使用する3T3核抽出物由来の免疫沈降。両方の抗体ともに、p85を沈降させ、p85は、ウエスタンブロットにおける相反(reciprocal)抗体によって認識される。P125は、抗体1793によって沈降し、そして、抗体V1によってより少ない程度に沈降し、そして、これらは、ウエスタンブロットにおいて、1793によって認識される。Mcm3をコントロールとして示す。
【図5】内生Ciz1の免疫蛍光分析。Ciz1は、DNA複製の部位と重複する核内の中心に存在する。A)Triton X 100に暴露する前(未処理)または暴露後(界面活性剤処理)に固定した3T3細胞における内生Ciz1(赤色)を、抗Ciz1抗体1793を用いて検出した。核を、Hoescht 33258を用いて対比染色する(青色)。Cdc6特異的モノクローナル抗体により検出したCdc6(緑色)を、比較として示す。B)組換えCiz1の封入は、抗体1793の、界面活性剤処理した核との反応性をブロックする。C)界面活性剤耐性のCiz1(赤色)は、周期する集団の全ての核に存在するが、界面活性剤耐性のPCNA(緑色)は、S期の核のみに、存在し続ける。D)界面活性剤耐性のCiz1およびPCNAの高倍率共焦点切片、および同時局在する中心(黄色)を示す併合像である。E)示した位置(iおよびii)で、Dにおける併合像を横断する赤色および緑色の蛍光の折れ線グラフである。F)Dにおける全併合像を横断する赤色と比較した緑色中心に対する相互相関プロット(RubbiおよびMilner、2000;van Steenselら、1996)、および(挿入図)Eiiに示されるレベルでの限界(thresh−holding)蛍光後の印をつけた切片。Fへの挿入図における赤い線は、Ciz1像を、PCNAに対して90°回転させた場合の相間関係の喪失を示す。棒は、10μMである。
【図6−1】RNA干渉。Ciz1枯渇は、S期を阻害する。A)4つの部位でCiz1転写物を標的するsiRNA(図2Aを参照のこと)を、単一3nM用量として、周期する3T3細胞に個々に適用し、細胞数を、示した時間でモニタリングした。siRNA 8でトランスフェクトした(赤色の輪郭)または模擬処理した(青色の輪郭)後、16時間および40時間における細胞集団の像を、示す。B)Ciz1 siRNA(4および8)またはコントロールGAPDH siRNAに暴露した後、48時間の抗Ciz1 1793で検出したCiz1タンパク質(緑色)。
【図6−2】RNA干渉。Ciz1枯渇は、S期を阻害する。C)Ciz1 siRNA(4および8)またはコントロールGAPDH siRNAに24時間暴露した細胞におけるCiz1レベル、GAPDHのレベルおよびβアクチン転写物のレベル。かっこの中の数字は、任意の単位におけるバンドの強度を反映し、そして、Ciz1およびGAPDH転写物の全体の減少(βアクチンに対して、標準化した)を、百分率として表す。D)BrdUをDNA中に取り込んだ細胞の集団(緑色)は、Ciz1 siRNAで処理した後48時間で、Ciz1枯渇細胞において、有意に減少している。ヒストグラムは、4回の独立した実験の平均の結果を示す。E)界面活性剤耐性のMcm3を有する核(緑色)の数は、Ciz1 siRNAで処理した集団で、増加する。F)界面活性剤耐性のPCNAを有する核(緑色)の集団もまた、これらの条件下で増加する。全ての核は、対比染色され、みせかけの色(赤色)で示される。
【図7】マウス始原生殖細胞および胚幹細胞におけるCiz1エキソン3/4スプライシング改変体の発現のRT−PCR分析。エキソン3および/または4は、これらの細胞型において、選択的にスプライシングされるが、新生児の心臓においては、スプライシングされない。これらのデータは、新生児の体細胞組織において全長Ciz1が優性な形態であるという仮説、ならびに改変体が発生の初期および生殖系列組織に、より高い頻度で生じるという仮説と一致する。
【図8−1】図8 マウス3T3細胞の一過性トランスフェクション。A.GFPタグ化したCiz1構築物を、NIH3T3細胞にトランスフェクトするか、またはB.雄性前核もしくは1細胞期のマウス受精卵にマイクロインジェクションした。24時間までに、Ciz1およびECiz1は核に局在化し、亜核に斑点状のパターンを形成したが、GFP単独では、核および細胞質の両方に存在した。C.EGFPタグ化したCiz1およびECiz1ならびにC末端フラグメント(C末端274に等価)が取り除かれた派生フラグメントの亜核組織を示す、トランスフェクションの24時間後の生きた3T3細胞の核の高解像画像。C末端ドメインが存在しない場合、GFP−ECiz1は、トランスフェクションの24時間後に核内に拡散性に局在化するが、GFP−Ciz1は凝集して、核内に1つまたは2つの大きな斑点を形成する。D.細胞が有糸分裂を通過するまでは、C末端の274ドメイン単独は細胞質内である(核局在化配列の欠如および核への受動流入に起因する可能性が高い)が、一旦内側に来ると、核構造体に結合し、そして、染色体と共に凝集する。
【図8−2】図8 マウス3T3細胞の一過性トランスフェクション。E.トランスフェクションの最初の12時間後のBrdUで標識された集団におけるGFP−Ciz1(緑)、BrdU(赤)および全核(青)の代表的画像を示す。ヒストグラムは、3つの別個の標識窓についての、トランスフェクトされていない(灰色)細胞の数と比較して、BrdUを取り込んだ、トランスフェクトされた(緑)細胞の集団を示す。トランスフェクション後0〜22時間の間は、迅速に回転する細胞が、Ciz1もしくはECiz1のいずれかでトランスフェクトされた場合に、BrdU標識した分画の一定の増加を記録した。密な培養で類似の結果が得られ、ここでは、ほとんどの細胞が、細胞周期を出て、静止状態に入っていた。しかし、迅速に回転する細胞が、トランスフェクションの22時間後にBrdUに短時間(20分)パルスで曝露された場合、DNA合成に関与する細胞の数は、トランスフェクトしていないコントロールおよびGFP単独でトランスフェクトした細胞と比較して、Ciz1およびECiz1でトランスフェクトした集団において減少した。このことは、22時間までに、DNA合成がCiz1発現細胞において停止したことを示す。
【図9】図9 トランスフェクトした集団における増殖能力および細胞形態の変更。トランスフェクトした3T3細胞集団において細胞クラスターが生じる。A.細胞を、GFPをタグ化したCiz1もしくはECiz1のN末端の3分の2(N末端442)を用いてトランスフェクトし、そして、50μg/ml G418の選択下で維持した。選択下で3週間の後、細胞凝集物は、内部のGFP陽性細胞によって可視であった。
【図10】図10 小児癌におけるヒトCiz1スプライス改変体。公的データベースには7つのヒトCiz1 cDNAが存在するが、1つのみが、正常な成人組織(B細胞)に由来し、そして、これは全推定エキソンを含む。他の6つは、胚細胞または小児癌に由来する。これらのうちの5つは、エキソン2、3、6および8において(マウスECzi1のように)、そしてまた、エキソン4において(マウスES細胞、始原生殖細胞および精巣のように)可変性を伴って、選択的にスプライシングされる。6つ目(AF159025)は、第1メチオニンを欠き、アミノ酸置換を生じる単一ヌクレオチド多型を含む。推定配列(AB030835)からの全ての相違に印を付ける。
【図11A】図11 EST配列分析。各マップ上に、Ciz1タンパク質の略図が参考として含められ、これらは、選択的にスプライシングされたエキソンの位置(黒)、推定クロマチン相互作用ドメイン(灰色)および予想ジンクフィンガー(黒の縦線)を示す。全てのEST配列に、そのGenbank登録番号を添え、その配列が由来したライブラリーを括弧内に示す。選択的スプライシングの結果、Ciz1 ESTを含まない配列を、黄色で示し、フレームシフトを赤で示し、推定欠失を灰色で示す。アミノ酸置換を生じる単一ヌクレオチド多型を、黒点で示し、これらのいくつかは、本発明者らがCiz1活性の調節に重要であると示してきたコンセンサスcdkリン酸化部位(青点)に生じる。癌腫細胞株MGC102における挿入配列の位置を三角で示す。A)小児癌および成人の神経癌に由来する翻訳されたEST。
【図11B】図11 EST配列分析。各マップ上に、Ciz1タンパク質の略図が参考として含められ、これらは、選択的にスプライシングされたエキソンの位置(黒)、推定クロマチン相互作用ドメイン(灰色)および予想ジンクフィンガー(黒の縦線)を示す。全てのEST配列に、そのGenbank登録番号を添え、その配列が由来したライブラリーを括弧内に示す。選択的スプライシングの結果、Ciz1 ESTを含まない配列を、黄色で示し、フレームシフトを赤で示し、推定欠失を灰色で示す。アミノ酸置換を生じる単一ヌクレオチド多型を、黒点で示し、これらのいくつかは、本発明者らがCiz1活性の調節に重要であると示してきたコンセンサスcdkリン酸化部位(青点)に生じる。癌腫細胞株MGC102における挿入配列の位置を三角で示す。B)種々の非癌性細胞および組織に由来する翻訳されたEST。
【図11C】図11 EST配列分析。各マップ上に、Ciz1タンパク質の略図が参考として含められ、これらは、選択的にスプライシングされたエキソンの位置(黒)、推定クロマチン相互作用ドメイン(灰色)および予想ジンクフィンガー(黒の縦線)を示す。全てのEST配列に、そのGenbank登録番号を添え、その配列が由来したライブラリーを括弧内に示す。選択的スプライシングの結果、Ciz1 ESTを含まない配列を、黄色で示し、フレームシフトを赤で示し、推定欠失を灰色で示す。アミノ酸置換を生じる単一ヌクレオチド多型を、黒点で示し、これらのいくつかは、本発明者らがCiz1活性の調節に重要であると示してきたコンセンサスcdkリン酸化部位(青点)に生じる。癌腫細胞株MGC102における挿入配列の位置を三角で示す。C)白血病、リンパ腫に由来する翻訳されたEST、そして、正常な造血細胞およびリンパ球に由来する翻訳されたEST。
【図11D】図11 EST配列分析。各マップ上に、Ciz1タンパク質の略図が参考として含められ、これらは、選択的にスプライシングされたエキソンの位置(黒)、推定クロマチン相互作用ドメイン(灰色)および予想ジンクフィンガー(黒の縦線)を示す。全てのEST配列に、そのGenbank登録番号を添え、その配列が由来したライブラリーを括弧内に示す。選択的スプライシングの結果、Ciz1 ESTを含まない配列を、黄色で示し、フレームシフトを赤で示し、推定欠失を灰色で示す。アミノ酸置換を生じる単一ヌクレオチド多型を、黒点で示し、これらのいくつかは、本発明者らがCiz1活性の調節に重要であると示してきたコンセンサスcdkリン酸化部位(青点)に生じる。癌腫細胞株MGC102における挿入配列の位置を三角で示す。D)癌腫に由来する翻訳されたEST。
【図11E】図11 EST配列分析。各マップ上に、Ciz1タンパク質の略図が参考として含められ、これらは、選択的にスプライシングされたエキソンの位置(黒)、推定クロマチン相互作用ドメイン(灰色)および予想ジンクフィンガー(黒の縦線)を示す。全てのEST配列に、そのGenbank登録番号を添え、その配列が由来したライブラリーを括弧内に示す。選択的スプライシングの結果、Ciz1 ESTを含まない配列を、黄色で示し、フレームシフトを赤で示し、推定欠失を灰色で示す。アミノ酸置換を生じる単一ヌクレオチド多型を、黒点で示し、これらのいくつかは、本発明者らがCiz1活性の調節に重要であると示してきたコンセンサスcdkリン酸化部位(青点)に生じる。癌腫細胞株MGC102における挿入配列の位置を三角で示す。E)ある範囲の他の癌に由来する翻訳されたEST。
【図11F】図11 EST配列分析。各マップ上に、Ciz1タンパク質の略図が参考として含められ、これらは、選択的にスプライシングされたエキソンの位置(黒)、推定クロマチン相互作用ドメイン(灰色)および予想ジンクフィンガー(黒の縦線)を示す。全てのEST配列に、そのGenbank登録番号を添え、その配列が由来したライブラリーを括弧内に示す。選択的スプライシングの結果、Ciz1 ESTを含まない配列を、黄色で示し、フレームシフトを赤で示し、推定欠失を灰色で示す。アミノ酸置換を生じる単一ヌクレオチド多型を、黒点で示し、これらのいくつかは、本発明者らがCiz1活性の調節に重要であると示してきたコンセンサスcdkリン酸化部位(青点)に生じる。癌腫細胞株MGC102における挿入配列の位置を三角で示す。F)条件つきで導入された配列を示す、ヒトCiz1における選択的にスプライシングされた領域のまとめ。
【図12A】図12 Ewing肉腫ファミリーの腫瘍細胞株(ESFT)および神経芽細胞腫細胞株におけるCiz1のスプライス改変体の発現。A.6つの別個のESFT細胞株、2つの神経芽細胞腫細胞株およびコントロール細胞株(HEK293細胞)に由来する総RNAサンプルを、4つの異なるプライマーセットを用いて、RT−PCR分析に供した。ESFT細胞株は、以下である:1)A673、2)RDES、3)SKES1、4)SKNMC、5)TC3、6)TTC466。神経芽細胞腫細胞株は、以下である:1)IMR32、2)SKNSH。
【図12B】図12 ユーイング肉腫ファミリーの腫瘍細胞株(ESFT)および神経芽細胞腫細胞株におけるCiz1のスプライス改変体の発現。B.ESFTおよび神経芽細胞腫におけるCiz1エキソン3/4/5のPCR生成物の分析。プライマーh3およびh4の生成物(潜在的に可変のエキソン4および6にまたがる)を、より詳細に分析した。PCRフラグメントを、標準的な手順によってアガロースゲルから精製し、サブクローニングして、そして、配列決定して、フラグメントのサイズ変化の原因を同定した。7つの細胞株の各々について、1と11との間の個々のクローンを配列決定し、この結果を表にまとめる。ESFT細胞株由来のCiz1は、転写物全体の31%において、エキソン4が欠失し、いくつかのESFT細胞株については、50%近くがエキソン4を欠失する。DSSSQは、本明細書で試験された2つの神経芽細胞腫細胞株においてより一般に存在しない。
【図13A】図13 正常ヒト線維芽細胞(Wi38)および転移性前立腺癌細胞株(PC3およびLNCAP)におけるCiz1のアイソフォーム。A.非癌細胞株と比較して、両方の前立腺癌細胞株が、核分画において、過剰の最も大きいp125 Ciz1タンパク質改変体を含む。
【図13B】図13 正常ヒト線維芽細胞(Wi38)および転移性前立腺癌細胞株(PC3およびLNCAP)におけるCiz1のアイソフォーム。B.DNA複製の開始の間のタンパク質プロセシングによるp125改変体からのp85(100)の生成のためのモデル。
【図14】図14は、全長マウスmRNA配列を示す。
【図15】図15は、全長ヒトmRNA配列を示す。
【図16】図16は、全長マウスタンパク質配列を示す。
【図17】図17は、全長ヒトタンパク質配列を示す。
【図18】図18は、ヒトの選択的にスプライシングされたタンパク質配列を示す。示される配列は、スプライシングされたタンパク質配列を含まない。
【図19】図19は、ヒトの選択的にスプライシングされたmRNA配列を示す。示される配列は、スプライシングされたタンパク質配列を含まない。
【図20A】図20Aは、欠けたエキソン(missing exon)によってヒトCiz1タンパク質において作成された独特のジャンクション配列を示す。このジャンクション配列は、本発明の方法によって同定された治療剤のための標的の主要な部位を表す。
【図20B】図20Bは、欠けたエキソンによってヒトCiz1タンパク質において作成された独特のジャンクション配列を示す。このジャンクション配列は、本発明の方法によって同定された治療剤のための標的の主要な部位を表す。
【図21A】図21A〜Hは、ヒトCiz1 mRNAにおいて作成されたジャンクション配列を示す。
【図21B】図21A〜Hは、ヒトCiz1 mRNAにおいて作成されたジャンクション配列を示す。
【図21C】図21A〜Hは、ヒトCiz1 mRNAにおいて作成されたジャンクション配列を示す。
【図21D】図21A〜Hは、ヒトCiz1 mRNAにおいて作成されたジャンクション配列を示す。
【図21E】図21A〜Hは、ヒトCiz1 mRNAにおいて作成されたジャンクション配列を示す。
【図21F】図21A〜Hは、ヒトCiz1 mRNAにおいて作成されたジャンクション配列を示す。
【図21G】図21A〜Hは、ヒトCiz1 mRNAにおいて作成されたジャンクション配列を示す。
【図21H】図21A〜Hは、ヒトCiz1 mRNAにおいて作成されたジャンクション配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA複製を調節する因子の同定のための標的としての、Ciz1ヌクレオチド配列もしくはCiz1ポリペプチド配列、またはその任意のフラグメントもしくは改変体の、使用。
【請求項2】
DNA複製を調節する因子の同定のためのスクリーニング方法であって、該スクリーニング方法は、Ciz1ヌクレオチド配列もしくはCiz1ポリペプチド配列、またはその任意のフラグメントもしくは改変体の使用を包含する、スクリーニング方法。
【請求項3】
請求項2に記載のスクリーニング方法であって、該方法は、以下:
a)図14、15、または21のいずれかに示される核酸配列を含む核酸分子;
b)(a)中の核酸配列にハイブリダイズし、かつCiz1活性またはその改変体の活性を有する核酸分子;
c)遺伝暗号が原因でa)およびb)中の配列、ならびに試験されるべき候補因子に対して縮重している核酸配列を有する核酸分子;
d)Ciz1遺伝子座でのゲノム配列に由来する核酸分子、または該ゲノム配列にハイブリダイズする核酸分子
からなる群より選択される核酸分子に対する因子の効果を検出または測定する工程
を包含する、方法。
【請求項4】
前記核酸分子が、前記核酸配列のうちの少なくとも1つの核酸残基の欠失、置換または付加によって改変されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、以下:
(i)以下:
a)図14、15、または21のいずれかに示される核酸配列を含む核酸分子;
b)(a)の核酸配列にハイブリダイズし、かつCiz1活性またはその改変体の活性を有する核酸分子;
c)遺伝暗号が原因でa)およびb)中の配列、ならびに試験されるべき候補因子に対して縮重している核酸配列を有する核酸分子;
d)Ciz1遺伝子座でのゲノム配列に由来する核酸分子、または該ゲノム配列にハイブリダイズする核酸分子
からなる群より選択される核酸分子によってコードされるポリペプチド分子、またはその活性フラグメントを含む調製物を形成する工程;ならびに
(ii)該ポリペプチドの活性に対する前記因子の効果を検出または測定する工程
のうちの1つ以上を包含する、請求項2に記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、前記ポリペプチド配列のうちの少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、置換または付加によって改変されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スクリーニング方法が、細胞ベースのスクリーニング方法である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、前記Ciz1ポリペプチドを天然に発現する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が、Ciz1またはそのフラグメントもしくは改変体をコードする核酸分子でトランスフェクトされている、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法によって同定される、因子。
【請求項11】
前記因子が、Ciz1媒介性DNA複製のアンタゴニストである、請求項10に記載の因子。
【請求項12】
前記因子が、Ciz1媒介性DNA複製のアゴニストである、請求項10に記載の因子。
【請求項13】
前記因子が、以下:ポリペプチドプローブもしくは核酸プローブ;ポリペプチド;ペプチド;アプタマー;化学物質;抗体;核酸からなる群より選択される、請求項10〜12のいずれかに記載の因子。
【請求項14】
前記因子が、抗体分子であり、そして図16、17、または20に示される配列のうちのいずれかに結合する、請求項12に記載の因子。
【請求項15】
前記因子が、アンチセンス核酸分子またはRNAiであり、該因子は、Ciz1またはその任意の改変体のmRNA配列に結合し、それによって、該Ciz1またはその任意の改変体のmRNA配列をブロックまたは不活性化する、請求項12に記載の因子。
【請求項16】
前記因子が、図14、15、または21、あるいは請求項3の(i)b〜dの部分に示される配列の任意の部分に結合する、請求項15に記載の因子。
【請求項17】
アンチセンス分子またはRNAi分子を細胞に送達するための送達手段としての、ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターであって、該ベクターは、以下:
a)図14、図15、および図21に示されるCiz1アミノ酸配列をコードする核酸配列;
b)(a)の核酸配列にハイブリダイズする核酸分子;
c)遺伝暗号が原因でa)およびb)中の配列ならびに該配列のうちのいずれかと相補的な任意の配列に対して縮重している核酸配列を有する、核酸分子;
d)Ciz1プレmRNAをコードする核酸配列(すなわち、ゲノム配列);
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む、ベクター。
【請求項19】
前記発現カセットが、プロモーター配列に対して転写的に連結されている、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
増殖性障害の同定のための診断方法であって、該方法は、そのゲノム配列またはタンパク質配列における、Ciz1遺伝子、Ciz1スプライス改変体および変異の存在または発現を検出する工程を包含する、診断方法。
【請求項21】
請求項20に記載の診断方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)試験されるべき被験体から単離されたサンプルを、Ciz1活性を有するポリペプチドまたはCiz1活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子に特異的に結合する因子と、接触させる工程;
(ii)該サンプル中の該ポリペプチドまたは核酸に対する該因子の結合を検出または測定する工程;
(iii)逆転写PCRまたはリアルタイムPCRを使用して、Ciz1発現およびCiz1アイソフォーム発現をモニターし、発現レベルを測定する工程;ならびに
(iv)該分子の変化した立体構造特性に基づいて、核酸変異またはアミノ酸変異の存在を測定する工程
のうちの1以上を包含する、診断方法。
【請求項22】
薬剤として、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、もしくは希釈剤を伴う、請求項1〜9のいずれかに記載の方法によって同定される因子の、使用。
【請求項23】
増殖性疾患の処置における使用のための医薬の製造のための、請求項1〜9のいずれかに記載の方法によって同定される因子の、使用。
【請求項24】
前記増殖性疾患が癌である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記癌が、小児癌であり、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、バーキットリンパ腫、髄芽細胞腫、ユーイング肉腫家族腫瘍(ESFT)からなる群より選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記癌が、癌腫、腺癌、リンパ腫または白血病である、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
前記疾患が、肝臓癌、肺癌、もしくは皮膚癌、または肝臓転移、肺転移、もしくは皮膚転移である、請求項23に記載の使用。
【請求項28】
増殖性疾患を処置するための方法であって、該方法は、動物に、請求項1〜9のいずれかに記載の方法によって同定される因子を投与する工程を包含する、方法。
【請求項29】
細胞分裂または細胞増殖を遅くするための医薬の製造のための、請求項1〜9のいずれかに記載の方法によって同定される因子の、使用。
【請求項30】
請求項1〜9のいずれかの方法によって同定される診断剤、予後剤または治療剤を含む、キット。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図21E】
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【図21F】
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【図21G】
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【図21H】
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【公表番号】特表2006−508659(P2006−508659A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556556(P2004−556556)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005334
【国際公開番号】WO2004/051269
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505211651)ヨークシャー キャンサー リサーチ (1)
【Fターム(参考)】