説明

CMP研磨方法、CMP研磨装置、及び半導体デバイスの製造方法

【課題】 基板表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去した後に、層間絶縁膜に染み込んだ有機物質を効率的に除去することが可能なCMP研磨方法を提供する。
【解決手段】 界面活性剤を含む洗浄液で洗浄して、残留するスラリーと研磨残留物を除去すると、界面活性剤を含む洗浄液中の有機物が層間絶縁膜3の中に染み込む。そこで、この後、有機溶媒、又は有機溶媒を含んだ溶液により基板を洗浄し、層間絶縁膜3中に染み込んだ有機物の洗浄除去を行う。層間絶縁膜3は疎水化処理を施されているが、有機溶媒であるのでそれに影響されずに層間絶縁膜3中に染み込んで有機物を溶解し、洗浄除去することができる。その後、基板1を乾燥させ、表面に付着した有機溶媒又は有機溶媒を含む溶液を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成される半導体集積回路の層間絶縁膜材料として疎水化された多孔質物質(通常ポーラスlow-k材料と呼ばれる)を用いたものに対して、CMP研磨により配線材料及びバリア金属を除去するCMP研磨方法、及びこのCMP研磨方法を実施可能なCMP研磨装置、さらには、このCMP研磨方法を用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの低消費電力化および高速化の要求から、層間絶縁膜として低誘電率材料(low-k材料)の導入が検討されている。また、高集積化及びチップサイズの縮小化に伴い、配線の微細化及び多層配線化の要求から、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法による平坦化、ダマシンプロセスによる配線形成が必須の工程となっている。
【0003】
図8に、基板の上に形成された疎水化された多孔質物質(SiO)からなる層間絶縁膜にトレンチを形成し、トレンチ内に銅配線を埋め込んだものをCMP研磨により除去する工程を示す。
【0004】
図8(a)は、銅配線部をCMP研磨する前の状態を示している。下層配線51の上にエッチングストッパ52が形成され、その上に疎水化された多孔質物質からなる層間絶縁膜53が形成されている。層間絶縁膜53の上には、層間絶縁膜53へのスラリーや、界面活性剤を含む洗浄液の流入を防止するためのキャップ膜54が設けられている、キャップ膜54は、SiO、SiOC、SiC等により形成されている。キャップ膜54の上及び層間絶縁膜53が除去されたトレンチ部を覆うようにバリア金属である拡散防止層55が設けられ、その上及び前記トレンチ部中に配線となる銅56が埋め込まれている。拡散防止層55は、銅56が層間絶縁膜53中に拡散するのを防止するものであり、TaとTaNの2層構造から成り立っている。
【0005】
図8(a)に示す状態から、CMP研磨により上層部の銅56と拡散防止層55を除去し、図8(b)に示すように前記トレンチ部の銅56のみを残して配線とする。その後、表面を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄することにより、表面に残留するスラリーや研磨残留物、金属汚染を洗浄して除去する。この際、キャップ膜54は、層間絶縁膜53中に洗浄液が入り込むのを防止する役割を果たしている。その後、水によるリンスや流水による洗浄を行って界面活性剤を含む洗浄液を除去し、最後に基板を乾燥させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体デバイスのさらなる高速動作や低消費電力化のためには、キャップ膜54を薄くしたり無くしたりして、この部分の静電容量を小さくすることが要求されている。キャップ膜54を無くした場合は勿論、薄くした場合でも、キャップ膜54がまだら状に形成され、場所によりキャップ膜54が形成されない部分が発生する。すると、スラリーや、界面活性剤を含む洗浄液が、多孔質である層間絶縁膜53中に染み込むという問題がある。
【0007】
層間絶縁膜53中に染み込んだスラリーや、界面活性剤を含む洗浄液は、その後に行われる水による洗浄では取り除くことが困難である。それは、これらが有機物を含み、水による洗浄では除去しにくいばかりでなく、層間絶縁膜53が疎水化処理を受けていることによるものである。この疎水化処理は、後の工程において、層間絶縁膜53に水分が染み込まないようにするための処理であり、層間絶縁膜53を構成する多孔質SiOの終端部に形成されるOH基をメチル基等により置き換えることにより行われる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、基板上に形成される半導体集積回路の層間絶縁膜材料として疎水化された多孔質物質を用いたものに対して、配線材料及びバリア金属を除去するためのCMP研磨を行った後、前記基板表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去した後に、層間絶縁膜に染み込んだ有機物質を効率的に除去することが可能なCMP研磨方法、及びこのCMP研磨方法を実施可能なCMP研磨装置、さらには、このCMP研磨方法を用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための第1の手段は、基板上に形成される半導体集積回路の層間絶縁膜材料として疎水化された多孔質物質を用いたものに対して、配線材料及びバリア金属を除去するためのCMP研磨を行った後、前記基板表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去し、さらに、その後、前記基板表面に対して、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄処理、及び加熱処理の少なくとも一方を行うことを特徴とするCMP研磨方法である。
【0010】
本手段においては、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄処理、及び加熱処理の少なくとも一方を行っている。後に実施例で示すように、有機溶媒、又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄を行うことにより、層間絶縁膜に染み込んだ有機物質を効率的に洗浄除去することが可能となる。有機溶媒を含んだ溶液を洗浄に用いる場合には、有機溶媒の濃度が低いと効果が小さくなるが、どの程度の濃度以上にすればよいかは、有機溶媒を含んだ溶液の種類に応じて、適宜決定することができる。
【0011】
又、加熱処理により、層間絶縁膜に染み込んだ有機物質を熱分解し、気体として除去することができる。この場合、加熱温度は、層間絶縁膜に染み込んだ有機物質が熱分解する温度以上にする必要があるが、その温度は適宜決定することができ、高い方が効率がよい。
しかし、形成される半導体デバイスの性能に影響を与えない温度以下とする必要がある。
【0012】
なお、有機溶媒、又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄と加熱処理の両方を行う場合は、加熱処理を後に行うことにより、洗浄によって濡れた基板の乾燥を同時に行うことができる。又、加熱処理は、後工程で基板のプリベーク処理が行われる場合は、これにより代用することもでき、この場合は、基板のプリベーク処理が特許請求の範囲の加熱処理に相当するものとなる。
【0013】
又、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄処理の前、加熱処理だけを行う場合は加熱処理の前に、従来と同じように、基板表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去した後に、水による洗浄を行うようにしてもよく、このような場合も特許請求の範囲に含まれる。
【0014】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記有機溶媒として、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、多価アルコール及びその誘導体類、含窒素有機化合物、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、フッ素化合物のうち少なくとも1種類の有機溶媒を含んだものを用いることを特徴とするものである。
【0015】
これらの有機溶媒のうち、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、多価アルコール及びその誘導体類、含窒素有機化合物は、水及び有機物の両方を溶解するので、洗浄用の有機溶媒として特に好ましい。又、これらの有機溶媒のうち、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、フッ素化合物は、有機物の溶解度が高いので、有機物除去用の有機物質として特に好ましい。
【0016】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段であって前記加熱処理が減圧加熱処理であることを特徴とするものである。
【0017】
基板の表面には銅の配線がむき出しとなっており、これらが加熱処理の際に酸化される恐れがある。よって、銅の酸化を防止するために、加熱処理として減圧加熱処理を採用することが好ましい。
【0018】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段であって、前記加熱処理に際し、前記基板を不活性ガス中に置くことを特徴とするものである。
【0019】
前述のように、加熱処理に伴う銅の酸化を防止するためには、加熱処理に際し、基板をNや、Ar、Heガス等の不活性ガス中に置くことがさらに好ましい。
【0020】
前記課題を解決するための第5の手段は、CMP研磨され、表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去された基板を、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄処理する洗浄処理装置を有することを特徴とするCMP研磨装置である。
【0021】
本手段においては、CMP研磨装置に洗浄処理装置が付属しているので、CMPの動作(界面活性剤を含む洗浄液での洗浄まで)と、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄処理とを一連の工程で行うことができる。
【0022】
前記課題を解決するための第6の手段は、CMP研磨され、表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去された基板を、加熱処理する加熱処理装置を有することを特徴とするCMP研磨装置である。
【0023】
本手段においては、CMP研磨装置に加熱処理装置が付属しているので、CMPの動作(界面活性剤を含む洗浄液での洗浄まで)と、加熱処理とを一連の工程で行うことができる。
【0024】
前記課題を解決するための第7の手段は、CMP研磨され、表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去された基板を、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄処理する洗浄除去装置と、前記基板を加熱処理する加熱処理装置とを有することを特徴とするCMP研磨装置である。
【0025】
本手段においては、CMP研磨装置に洗浄処理装置と加熱処理装置が付属しているので、CMPの動作(界面活性剤を含む洗浄液での洗浄まで)と、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄処理と、加熱処理とを一連の工程で行うことができる。
【0026】
前記課題を解決するための第8の手段は、前記第1の手段から第4の手段のいずれかのCMP研磨方法を用いて、配線材料及びバリア金属を除去する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。
【0027】
本手段においては、多孔質の層間絶縁膜に有機物質が染み込んでいないものとすることができるので、半導体デバイスとしての性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、基板上に形成される半導体集積回路の層間絶縁膜材料として疎水化された多孔質物質を用いたものに対して、配線材料及びバリア金属を除去するためのCMP研磨を行った後、前記基板表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去した後に、層間絶縁膜に染み込んだ有機物質を効率的に除去することが可能なCMP研磨方法、及びこのCMP研磨方法を実施可能なCMP研磨装置、さらには、このCMP研磨方法を用いた半導体デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態であるCMP研磨方法を適用する基板の概要を示す図であり、CMP研磨が終了した状態を示すものである。図1(a)下層配線1の上にエッチングストッパ2が形成され、その上に疎水化された多孔質物質(SiO)からなる層間絶縁膜3が形成されている。層間絶縁膜3の上には、キャップ膜4が設けられている、キャップ膜4は、SiO、SiOC、SiC等により形成されている。層間絶縁膜3が除去されたトレンチ部を覆うように拡散防止層5が設けられ、前記トレンチ部中に配線となる銅6が埋め込まれている。拡散防止層5は、TaとTaNの2層構造から成り立っている。この構造は、図8(b)に示したものと基本的に同じであるが、キャップ膜4が薄い(約20nm程度)ので、キャップ膜4が層間絶縁膜3の表面を完全には覆っておらず、ところどころに層間絶縁膜3がむき出しとなっている部分がある。図1(b)に示すものは、キャップ膜4が形成されていない点が図1(a)に示したものと異なっているだけである。
【0030】
いずれのものも、層間絶縁膜3の少なくとも1部が表面に露出しているので、研磨スラリー中の有機物が層間絶縁膜3中に染み込んでいる。これらの基板を、従来と同じように、界面活性剤を含む洗浄液で洗浄して、残留するスラリーと研磨残留物を除去する。すると、界面活性剤を含む洗浄液中の有機物が層間絶縁膜3の中に染み込む。層間絶縁膜3は疎水化処理を施されているが、界面活性剤の作用により疎水性が弱まるので、この工程では特に有機物が層間絶縁膜3の中に染み込みやすい。
【0031】
本発明の第1の実施の形態であるCMP研磨方法においては、この後、有機溶媒、又は有機溶媒を含んだ溶液により基板を洗浄し、層間絶縁膜3中に染み込んだ有機物の洗浄除去を行う。層間絶縁膜3は疎水化処理を施されているが、有機溶媒であるのでそれに影響されずに層間絶縁膜3中に染み込んで有機物を溶解し、洗浄除去することができる。その後、基板を乾燥させ、表面に付着した有機溶媒又は有機溶媒を含む溶液を除去する。乾燥の方法としては、スピン乾燥や、ある程度の加熱を行うようにしてもよいが、窒素の気体ブローにより乾燥させてもよい。加熱と気体ブローを同時に行ってもよい。
【0032】
有機溶媒の例として、アルコール類はプロペニルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、1−プロパノール、メタノール、1−ヘキサノールなどが、アルデヒド類はアセチルアルデヒドなどが、ケトン類はアセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトンなどが、エステル類はギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、乳酸エチルなどが、エーテル類はジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグリムなど、アミド類はN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドンなど、多価アルコール及びその誘導体類はエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等、含窒素有機化合物としては、アセトニトリル、アミルアミン、イソプロピルアミン、イミダゾール、ジメチルアミン等、水および有機物の両方を溶解する有機溶媒が挙げられる。炭化水素類としては、メシチレン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン等が、ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、塩化メチル、四塩化炭素等、フッ素化合物としては、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロベンゼン等、有機物の溶解度が高い有機溶媒が挙げられる。
又、有機溶媒自体の残留を防ぐため、沸点が300℃以下であることが好ましく、さらには200℃以下であることがより望ましい。
【0033】
有機溶媒又は有機溶媒を含む溶液による洗浄においては、層間絶縁膜3に付着した有機付着物を効率よく除去するため、有機溶媒の加熱や、洗浄ブラシによる擦り洗いを行ったり、1MHz以上の超音波振動を与えて洗浄の補助を行ってもよい。
なお、有機溶媒又は有機溶媒を含む溶液による洗浄の前に、従来法と同じように、基板を界面活性剤を含んだ溶液により洗浄した後に水洗浄を行うようにしても構わない。
【0034】
本発明の第2の実施の形態であるCMP研磨方法においては、図1に示す状態の基板を、従来と同じように、有機溶媒、又は有機溶媒を含んだ溶液により洗浄した後、加熱処理を行うことにより、層間絶縁膜3中に染み込んだ有機物を熱分解して除去する。すなわち、層間絶縁膜3中に染み込んだ有機物の熱分解温度以上に基板を加熱することにより、これらの有機物を熱分解する。熱分解温度は高い方が効率がよいが、半導体デバイスの機能を阻害しない温度以下である必要があり、通常は400℃以下の温度である。加熱処理と前述の乾燥のための加熱が異なるのは、加熱処理では有機物の分解が起こる温度まで加熱するのに、乾燥による加熱では、このような高温まで加熱せず、有機溶媒、又は有機溶媒を含んだ溶液を蒸発させるだけである点である。
加熱処理の際に、配線材料である銅の酸化を防ぐために、減圧加熱をするか、NやAr、He等の不活性ガス中で加熱することが好ましい。不活性ガス中で減圧加熱を行ってもよい。
【0035】
又、第1の実施の形態で述べた、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄処理の後で、さらに加熱処理を行うと良好な効果が得られる。なお、加熱処理のみを行う場合には、従来法と同じように、基板を界面活性剤を含んだ溶液により洗浄した後に水洗浄を行い、その後に加熱処理を行ってもよい。
【0036】
又、CMP研磨工程の後に、基板のプリベーク工程が入る場合には、このプリベーク工程を加熱処理として利用してもよい。
【0037】
以下本発明の実施の形態の1例であるCMP研磨装置を図2を用いて説明する。実施の形態であるCMP研磨装置は研磨部11と、砥粒金属汚染洗浄部12、有機溶媒洗浄部13、ウエハ加熱処理部14、第一搬送部15、第二搬送部16から成り、各部は隔壁によって分離されている。
【0038】
研磨部11には、研磨テーブル115と、半導体ウエハを保持しつつ研磨テーブルに押しつける研磨ヘッド114とを備えたCMP研磨機構が設置されている。研磨テーブル115はモータに連結されるとともにその上面には研磨布が貼設されている。また研磨ヘッド114は回転用モータと昇降用シリンダとを備え昇降可能になっているとともにその軸心の回わりに回転可能になっている。研磨テーブル115上には、スラリー供給ノズル116より研磨剤を含む砥液が供給されるようになっている。
【0039】
一方、研磨機構への半導体ウエハの供給は、ウエハ搬送ロボット151によってウエハカセット17に置かれた半導体ウエハを取り出して、第一仮置き台111に渡し、ウエハ反転機構を備えるウエハ搬送ロボット112によって半導体ウエハを反転させて研磨面を下に向けた状態で、第二仮置き台113に渡す。この後、研磨ヘッド114が旋回し、半導体ウエハを研磨ヘッドに受け渡すことで行われる。
【0040】
研磨ヘッド114で保持され研磨テーブル115に押しつけられて研磨された半導体ウエハは、研磨終了後に研磨ヘッド114に保持された状態で第二仮置き台113まで搬送される。そして、半導体ウエハは研磨ヘッド114から離脱され、第二仮置き台113上に置かれる。次いで、ウエハ反転機構を有するウエハ搬送ロボット161により、反転後、砥粒金属汚染洗浄部12へ搬送される。
【0041】
砥粒金属汚染洗浄部12は半導体ウエハの砥粒金属汚染の洗浄を行う砥粒金属汚染洗浄チャンバー121と、半導体ウエハのリンス乾燥を行うスピン乾燥チャンバー124を備えている。砥粒金属汚染洗浄チャンバー121では、半導体ウエハの外周部を保持して回転させながら、洗浄薬液供給ノズル122aから洗浄液を供給しつつ、スポンジローラ123を押し当て洗浄を行う。
【0042】
そして、砥粒金属汚染洗浄が終わった半導体ウエハはウエハ搬送ロボット161によってスピン乾燥チャンバー124に搬送される。スピン乾燥チャンバー124では、半導体ウエハの外周部を保持して回転させながら、リンス液供給ノズル122bから純水を供給し、リンスを行い、次いで、半導体ウエハを高速で回転させスピン乾燥を行う。砥粒金属汚染洗浄および乾燥を終了した半導体ウエハは、再びウエハ搬送ロボット161により有機溶媒洗浄部13へ搬送される。
【0043】
有機溶媒洗浄部13は半導体ウエハの有機溶媒洗浄を行う有機溶媒洗浄チャンバー131と、半導体ウエハの乾燥を行うスピン乾燥チャンバー134を備えている。有機溶媒洗浄チャンバー131では、半導体ウエハの外周部を保持して回転させながら、有機溶媒液供給ノズル132aから有機溶媒を供給しつつ、スポンジローラ133を押し当て洗浄を行う。
【0044】
そして、有機溶媒洗浄が終わった半導体ウエハはウエハ搬送ロボット161によってスピン乾燥チャンバー134に搬送される。スピン乾燥チャンバー134では、半導体ウエハの外周部を保持して回転させながら、有機溶媒液供給ノズル132bからリンス用の有機溶媒を供給し、リンスを行い、次いで、半導体ウエハを高速で回転させスピン乾燥を行う。有機溶媒染洗浄および乾燥を終了した半導体ウエハは、再びウエハ搬送ロボット161によりウエハ加熱処理部14へ搬送される。
【0045】
ウエハ加熱処理部14は半導体ウエハを加熱する加熱機構142と、ウエハ加熱チャンバー141の排気を行う排気ライン143、ウエハ加熱チャンバー141に不活性ガスを導入するガス導入ライン144を備えるウエハ加熱チャンバー141からなる。ウエハ加熱チャンバー141では、ウエハ搬送ロボット161によりウエハ保持台に搬送、保持した後、ウエハ加熱チャンバー141を閉鎖し、排気ライン143を介し真空ポンプでウエハ加熱チャンバー141内を減圧する。この後、ガス導入ライン144介し不活性ガスをウエハ加熱チャンバー141内に導入し、加熱機構142により半導体ウエハの加熱処理を行う。加熱処理を終了した半導体ウエハは、ウエハ搬送ロボット151により、再びウエハカセット17に収納される。
【0046】
以上説明した工程では、有機溶媒洗浄部13で有機溶媒による洗浄を行った後、ウエハ加熱処理部14で加熱処理を行っているが、ウエハ搬送ロボット161を操作することにより、加熱処理を省略して、有機溶媒による洗浄を行ったウエハを、ウエハ搬送ロボット151により、再びウエハカセット17に収納するようにしてもよい。逆に、有機溶媒洗浄部13で有機溶媒による洗浄を行わず、砥粒金属汚染洗浄部12で洗浄を終えたウエハを、ウエハ搬送ロボット161により、ウエハ加熱処理部14に搬送し、加熱処理を行った後、ウエハ搬送ロボット151により、再びウエハカセット17に収納するようにしてもよい。
【0047】
図3は、本発明の実施の形態である半導体デバイスの製造方法を示す図である。半導体製造プロセスをスタートすると、まずステップS200で次に挙げるステップS201〜S204の中から適切な処理工程を選択し、いずれかのステップに進む。
【0048】
ここで、ステップS201はウエハの表面を酸化させる酸化工程である。ステップS202はCVD等によりウエハ表面に絶縁膜や誘電体膜を形成するCVD工程である。ステップS203はウエハに電極を蒸着等により形成する電極形成工程である。ステップS204はウエハにイオンを打ち込むイオン打ち込み工程である。
【0049】
CVD工程(S202)もしくは電極形成工程(S203)の後で、ステップS205に進む。ステップS205はCMP工程である。CMP工程では本発明による研磨装置により、層間絶縁膜の平坦化や半導体デバイス表面の金属膜の研磨、誘電体膜の研磨によるダマシン(damascene)の形成等が行われる。
【0050】
CMP工程(S205)もしくは酸化工程(S201)の後でステップS206に進む。ステップS206はフォトリソグラフィ工程である。この工程ではウエハへのレジストの塗布、露光装置を用いた露光によるウエハへの回路パターンの焼き付け、露光したウエハの現像が行われる。さらに、次のステップS207は現像したレジスト像以外の部分をエッチングにより削り、その後レジスト剥離が行われ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くエッチング工程である。
【0051】
次に、ステップS208で必要な全工程が完了したかを判断し、完了していなければステップS200に戻り、先のステップを繰り返してウエハ上に回路パターンが形成される。ステップS208で全工程が完了したと判断されればエンドとなる。
【0052】
本発明による半導体デバイス製造方法では、CMP工程において本発明にかかるCMP研磨方法を用いているため、配線間のリーク電流密度を小さくすることができ、より性能の良い半導体デバイスを製造することができる。
【実施例】
【0053】
以下、図1(a)に示すように研磨された基板に対して、本発明の実施の形態に示したような処理を行った例を比較例と共に示す。
(実施例A)
疎水化された多孔質物質として非周期構造のシリカ膜を使用した層間絶縁膜3を有する基板を、CMP後洗浄のパーティクル汚染除去洗浄液として一般的に称されている、界面活性剤を含む水酸化トリメチルアンモニウム水溶液に1分間浸漬して、スラリーと研磨残留物を除去した。その後、以下の処理を行った。
【0054】
(実施例A1)
有機溶媒を含む溶液であるエタノール溶液に、基板を8分間浸漬し、層間絶縁膜3に浸入した有機物を除去し、その後、乾燥窒素ガスブローにより基板表面を乾燥させた。
(実施例A2)
純水に基板を8分間浸漬して洗浄を行い、その後、乾燥窒素ガスブローにより基板表面を乾燥させ、さらにその後、665PaのHe雰囲気中に置き、380℃で5分間加熱処理した。
(実施例A3)
有機溶媒を含む溶液であるエタノール溶液に、基板を8分間浸漬し、層間絶縁膜3に浸入した有機物を除去し、その後、乾燥窒素ガスブローにより基板表面を乾燥させた。さらにその後、665PaのHe雰囲気中に置き、380℃で5分間加熱処理した。
(比較例A)
純水に基板を8分間浸漬して洗浄を行い、その後、乾燥窒素ガスブローにより基板表面を乾燥させた(従来法と同じ方法である)。
【0055】
各実施例及び比較例の処理により得られた基板における、1MV/cmの電界をかけた場合のリーク電流密度を図4に示す。なお、基準(Ref.1)とされているのは、CMP研磨終了後、界面活性剤を含む水酸化トリメチルアンモニウム水溶液に浸漬する前のリーク電流密度である。
【0056】
基準とされている状態においては、リーク電流密度は低く抑えら得られているが、比較例Aにおいては、リーク電流密度が10−7[A/cm]程度に上昇している。これは、界面活性剤を含む水酸化トリメチルアンモニウム水溶液中の有機物が多孔質からなる層間絶縁膜に染み込んだためである。しかし、実施例A1、実施例A2においては、リーク電流密度が10−8[A/cm]程度となり、比較例の約1/10となっている。さらに、実施例A3においては、リーク電流は10−9[A/cm]程度となり、比較例の1/100程度に改善されている。
【0057】
(実施例B)
疎水化された多孔質物質として周期構造のシリカ膜を使用した層間絶縁膜3を有する基板を、CMP後洗浄のパーティクル汚染除去洗浄液として一般的に称されている、界面活性剤を含む水酸化トリメチルアンモニウム水溶液に1分間浸漬して、スラリーと研磨残留物を除去した。その後、以下の処理を行った。
(実施例B1)→実施例A1と同じ処理
(実施例B2)→実施例A2と同じ処理
(実施例B3)→実施例A3と同じ処理
(比較例B)→比較例Aと同じ処理
各実施例及び比較例の処理により得られた基板における、1MV/cmの電界をかけた場合のリーク電流密度を図5に示す。なお、基準(Ref.2)とされているのは、CMP研磨終了後、界面活性剤を含む水酸化トリメチルアンモニウム水溶液に浸漬する前のリーク電流密度である。
【0058】
基準とされている状態においては、リーク電流密度は低く抑えら得られているが、比較例Bにおいては、リーク電流密度が10−6[A/cm]程度に上昇している。これは、界面活性剤を含む水酸化トリメチルアンモニウム水溶液中の有機物が多孔質からなる層間絶縁膜に染み込んだためである。しかし、実施例B1、実施例B2においては、リーク電流密度が10−7[A/cm]程度となり、比較例の約1/10となっている。さらに、実施例B3においては、リーク電流は10−9[A/cm]程度となり、比較例の1/1000程度に改善されている。
【0059】
(実施例C)
実施例A1と同じ方法により、エタノール溶液の濃度を変えて処理を行い、得られた基板における、1MV/cmの電界をかけた場合のリーク電流密度の変化を調査した。層間絶縁膜3として非周期構造のシリカ膜を使用した場合の結果を図6に、周期構造のシリカ膜を使用した場合の結果を図7に示す。基準及び比較例は、実施例A、Bの場合と同じである。図6を見ると分かるように、エタノール溶液の場合、濃度が50%以上であれば、従来の方法である比較例に対して、リーク電流を1/10程度にすることができ、効果があると言える。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態であるCMP研磨方法を適用する基板の概要を示す図であり、CMP研磨が終了した状態を示すものである。
【図2】本発明の実施の形態であるCMP研磨装置の概要を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態である半導体デバイスの製造方法の工程を示す図である。
【図4】実施例Aにおける基板のリーク電流密度を示す図である。
【図5】実施例Bにおける基板のリーク電流密度を示す図である。
【図6】エタノールの濃度と基板のリーク電流密度の関係を示す図である。
【図7】エタノールの濃度と基板のリーク電流密度の関係を示す図である。
【図8】基板の上に形成された疎水化された多孔室物質からなる層間絶縁膜にトレンチを形成し、トレンチ内に銅配線を埋め込んだものをCMP研磨により除去する工程を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1…下層配線、2…エッチングストッパ、3…層間絶縁膜、4…キャップ膜、5…拡散防止層、6…銅、11…研磨部、12…砥粒金属汚染洗浄部、13…有機溶媒洗浄部、14…ウエハ加熱処理部、15…第一搬送部、16…第二搬送部、17…ウエハカセット、111…第一仮置き台、112…ウエハ搬送ロボット、113…第二仮置き台、114…研磨ヘッド、115…研磨テーブル、116…スラリー供給ノズル、121…砥粒金属汚染洗浄チャンバー、122a…洗浄薬液供給ノズル、122b…リンス液供給ノズル、123…スポンジローラ、124…スピン乾燥チャンバー、131…有機溶媒洗浄チャンバー、132a…有機溶媒液供給ノズル、132b…有機溶媒液供給ノズル、133…スポンジローラ、134…スピン乾燥チャンバー、141…ウエハ加熱チャンバー、142…加熱機構、143…排気ライン、144…ガス導入ライン、151…ウエハ搬送ロボット、161…ウエハ搬送ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される半導体集積回路の層間絶縁膜材料として疎水化された多孔質物質を用いたものに対して、配線材料及びバリア金属を除去するためのCMP研磨を行った後、前記基板表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去し、さらに、その後、前記基板表面に対して、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液による洗浄処理、及び加熱処理の少なくとも一方を行うことを特徴とするCMP研磨方法。
【請求項2】
前記有機溶媒として、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、多価アルコール及びその誘導体類、含窒素有機化合物、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、フッ素化合物のうち少なくとも1種類の有機溶媒を含んだものを用いることを特徴とする請求項1に記載のCMP研磨方法。
【請求項3】
前記加熱処理が減圧加熱処理であることを特徴とする請求項1に記載のCMP研磨方法。
【請求項4】
前記加熱処理に際し、前記基板を不活性ガス中に置くことを特徴とする請求項1に記載のCMP研磨方法。
【請求項5】
CMP研磨され、表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去された基板を、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液により洗浄処理する洗浄処理装置を有することを特徴とするCMP研磨装置。
【請求項6】
CMP研磨され、表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去された基板を、加熱処理する加熱処理装置を有することを特徴とするCMP研磨装置。
【請求項7】
CMP研磨され、表面上に残留するスラリー及び研磨残留物を界面活性剤を含む洗浄液で洗浄除去された基板を、有機溶媒又は有機溶媒を含んだ溶液により洗浄処理する洗浄除去装置と、前記基板を加熱処理する加熱処理装置とを有することを特徴とするCMP研磨装置。
【請求項8】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のCMP研磨方法を用いて、配線材料及びバリア金属を除去する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−203027(P2006−203027A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13734(P2005−13734)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究)産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】