説明

CMP研磨装置における研磨剤の調合装置及び供給装置

【課題】研磨剤の乾燥を防止する手段を採用することにより、研磨剤の凝集・凝固することをなくした、CMP研磨装置における研磨剤の調合装置及び供給装置を提供する。
【解決手段】CMP研磨装置における研磨剤の調合装置又は供給装置10であって、研磨剤調合用又は供給用のタンク12と、タンク内部に配設される湿度センサ14と、タンク内に加湿空気を供給する加湿空気供給手段16と、を有する。湿度センサ14によりタンク12内の湿度が計測され、該計測結果により加湿空気供給手段16から供給される加湿空気量が制御され、タンク12内が所望の湿度に調整される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はCMP(Chemical Mechanical Polishing :化学的機械研磨)研磨装置における研磨剤の調合装置及び供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体集積回路のデザインルールの縮小化に伴って、層間膜等の平坦化プロセスにCMPが多用されるようになってきた。該CMPに使用される研磨剤は、微細粒子をpH調整剤等の試薬を含む水溶液に分散させた固液分散系のものがほとんどである。これらの微細粒子としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、酸化セリウム等が一般的に使用されている。
【0003】また、研磨装置における研磨剤の調合装置は、図2に断面図で示されるような構成であるものが一般的である。なお、この研磨剤の調合装置は研磨剤の供給を行うスラリータンク(研磨剤の供給装置)としても機能する。
【0004】同図において、研磨剤の調合装置1は、上蓋を挿通して配管2、3、4が槽の内部に挿入されている。また、槽の底には配管5が連結されている。配管2は研磨剤原液(研磨剤メーカーから購入した状態のもの)を供給するためのものであり、配管3は添加剤を供給するためのものである。配管5は研磨剤を排出し研磨装置に供給するためのものであり、配管4は研磨剤を槽内に戻すためのものである。
【0005】配管4、5はCMP研磨装置に連結され、研磨剤を循環させつつ研磨剤の調合装置1からCMP研磨装置への研磨剤の供給を行う。そして、配管4と配管5との間には、配管6が連結されていて、研磨剤の調合装置1とCMP研磨装置との間を循環する配管4と配管5とのバイパスとなっている。なお、付帯設備として、ポンプ7及びバルブ8、9が設けられている。
【0006】研磨剤の調合は、配管2より研磨剤原液を、配管3より添加剤をそれぞれ供給し、図示しないスターラにより攪拌することにより行う。また、研磨剤の調合装置1内の研磨剤の量が減少してきたときも、同様に研磨剤原液と添加剤を供給して調合を行う。
【0007】一方、このように研磨剤の調合装置1で研磨剤の初期調合を行わず、外部で別途調合した研磨剤を供給する例もある。この場合には、研磨剤原液及び/又は添加剤の追加を行うときにのみ配管2及び/又は配管3を使用している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の研磨剤の調合装置1においては、研磨剤が乾燥し、凝集・凝固することを防止できないという問題点を有する。すなわち、研磨剤を供給していくと、使用した分だけ研磨剤の調合装置1内の液面が下降する。その際、研磨剤を使用する前の液面から、研磨剤を使用した分だけ下降した液面までの壁面に研磨剤が付着する。
【0009】その付着した研磨剤は、その後壁面において乾燥し、凝集・凝固する。その凝集・凝固した研磨剤は、壁面から落下し、研磨剤(液)の中に混在することとなる。このように、凝集・凝固した後、研磨剤(液)の中に混在することとなった大粒径の研磨剤は、CMPを実施した際ウェーハに傷(マイクロスクラッチ)を発生させ、ウェーハの品質を低下させたり、ウェーハの歩留りを低下させたりする。
【0010】このような現象の対策として、特開平11−165259号に記載されているように、調合槽の壁部に冷却部を設けたりして調合槽の壁部に水滴を付着させ、研磨剤の乾燥を防止する構成が開示されている。しかし、この構成は装置的に複雑にならざるを得ず、管理も煩雑である。
【0011】一方、このような手段を設けず、凝集・凝固した後、研磨剤(液)の中に混在することとなった大粒径の研磨剤をフィルタにより濾過する対策も採用されている。しかし、濾過に完全を期すとフィルタの目詰まりが早く、その反面、目詰まりが少ないフィルタを使用すると濾過が不十分となり、マイクロスクラッチの発生を避けられない。
【0012】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、研磨剤の乾燥を防止する手段を採用することにより、研磨剤の凝集・凝固することをなくした、CMP研磨装置における研磨剤の調合装置及び供給装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明は、CMP研磨装置における研磨剤の調合装置又は供給装置であって、研磨剤調合用又は供給用のタンクと、該タンク内部に配設される湿度センサと、該タンク内に加湿空気を供給する加湿空気供給手段と、を有し、前記湿度センサにより前記タンク内の湿度が計測され、該計測結果により前記加湿空気供給手段から供給される加湿空気量が制御され、前記タンク内が所望の湿度に調整されることを特徴とするCMP研磨装置における研磨剤の調合装置又は供給装置を提供する。
【0014】本発明によれば、研磨剤調合用等のタンク内の湿度を計測できるセンサによりタンク内の湿度が計測され、該計測結果により供給される加湿空気量が制御される。したがって、調整される湿度の精度が高く、かつ、自動的に湿度の計量が行え、また、自動的に加湿空気の供給が行える。
【0015】本発明のような構成を採用せず、加湿空気供給手段(たとえば、市販の加湿器)を用いてタンク内に加湿空気を供給することによりタンクの内壁を濡れた状態に維持させることはできる。しかし、無制限に行うと、槽内の研磨剤が結露水で希釈される不具合となる。また、タンク内の温湿度は経時的に変化するので、これに柔軟に対応させる必要がある。
【0016】本発明は、このように従来例にない構成、効果を有するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に従って本発明に係るCMP研磨装置における研磨剤の調合装置又は供給装置(以下、研磨剤の調合装置等と略称する。)の好ましい実施の形態について詳説する。
【0018】図1は、研磨剤の調合装置等10の全体構成を示す概略図である。同図に示すように研磨剤の調合装置等10は、主として、研磨剤調合用又は供給用のタンク12、湿度センサ14、加湿空気供給手段16、及び、これらを制御する制御手段18、等とで構成されている。
【0019】研磨剤調合用等のタンク12は円筒形状をしたものである。タンク12の材質としては、たとえば、ポリプロピレン、金属に四フッ化エチレンの樹脂コートを施したもの等が使用できる。タンク12の上蓋(図示略)を挿通して配管20、22が内部に連通されている。配管20は研磨剤原液(研磨剤メーカーから購入した状態のもの)を供給するためのものであり、配管22は添加剤を供給するためのものである。
【0020】また、上蓋を挿通して配管24が設けられている。この配管24は研磨剤を排出しCMP研磨装置に供給するべくポンプ26に接続され、CMP研磨装置へと配管される。タンク12の底には配管28が連結されており、配管28の端末に配されるバルブ30を操作することによりドレン排出ができる。
【0021】タンク12の上蓋には加湿空気配管60が接続されており、後述する加湿チャンバ40からの加湿空気がタンク12内に供給できるようになっている。
【0022】タンク12には図示しないスターラが設けられ、研磨剤を攪拌できるようになっている。スターラによる攪拌は、モータで駆動されるシャフトの先端に設けられたプロペラを回転させることにより行う。
【0023】湿度センサ14としては、タンク12内の湿度を検出し、電気信号として取り出せるものであれば各種タイプの湿度センサが使用できる。このような湿度センサとしては、たとえば、トゥ・プラス社製の湿度センサ、型番:TA205(コントローラ14Aとしては、理化工業社製、型番:REX−F400を使用)が使用できる。この湿度センサの表示範囲は0〜100%であり、アナログ出力としては0〜1Vが得られる。
【0024】コントローラ(変換器)14Aからのアナログ出力はコンピュータ70に送られる。また、コントローラ14Aからのアナログ出力はデータロガー(図示略)にも送られ記録される。
【0025】加湿空気供給手段16は、密閉槽である加湿チャンバ40、加湿チャンバ40の底部外側に固着される霧化ユニット42、42、霧化ユニット42、42を駆動する起電回路44、44、起電回路44、44の電力供給配線46、起電回路44に固着され起電回路44の保護回路に使用される温度センサ48、加湿チャンバ40内に配され、加湿チャンバ40内の純水の水位を検出するレベルセンサ50、加湿チャンバ40を挿通して内部に連通されている純水配管52、純水配管52に接続され純水供給源(図示略)から供給される純水のON−OFFを行うバルブ54、バルブ54をON−OFFさせるソレノイド54A、加湿チャンバ40を挿通して内部に連通されているエア配管56、エア配管56に接続されエア供給源(図示略)から供給されるエアのON−OFFを行うバルブ58、バルブ58をON−OFFさせるソレノイド58A、加湿チャンバ40から加湿空気をタンク12に供給する加湿空気配管60、余分の加湿空気を排出するオーバーフロー配管62、ドレーン排出用のドレーン配管64、及び、ドレーン配管64に取り付けられたドレーンバルブ66とで構成される。
【0026】加湿チャンバ40は、下部に純水が蓄えられ、霧化ユニット42、42の駆動により飽和水蒸気を発生させ、この飽和水蒸気がエア供給源から供給されるエアと混合されて加湿空気となり、加湿空気配管60を経てタンク12に供給される構成のものである。
【0027】加湿チャンバ40を構成する材質としては、純水への汚染がなく、霧化ユニット42、42の駆動に耐え得るものであれば制限はないが、たとえば、ステンレス鋼が好適に使用できる。
【0028】霧化ユニット42は、加湿チャンバ40の底部外側に固着されるとともに、起電回路44により駆動されて振動し、純水を霧化する機能を果たすものである。起電回路44に固着されている温度センサ48は、起電回路44の過熱を検知し、起電回路44を保護するための保護回路(図示略)に使用されている。
【0029】レベルセンサ50は、加湿チャンバ40内の純水の水位を検知するためのもので、水位の検知信号が制御手段18に送られ、制御手段18によりソレノイド54Aが駆動され、バルブ54のON−OFFにより純水の供給量が制御される。これにより、加湿チャンバ40内の純水の水位が所期の値に維持される構成となっている。
【0030】エア配管56から供給されるエアは、湿度センサ14からの信号を受けた制御手段18によりソレノイド58Aが駆動され、バルブ58のON−OFFにより供給量が制御される構成となっている。
【0031】オーバーフロー配管62は、オーバーフロー用に使用される。また、ドレーン配管64及びドレーンバルブ66は加湿チャンバ40内のクリーニング時等に使用される。
【0032】制御手段18は、研磨剤の調合装置等10全体をコントロールするコンピュータ70と、コンピュータ70からの指令を受けてバルブ54、58のON−OFFを行うソレノイド54A、58Aの制御を行うシーケンサ72等とで構成されている。また、制御手段18は、霧化ユニット42の起電回路44の制御を行うように構成されている。
【0033】制御手段18のコンピュータ70は、その他、配管20から供給される研磨剤原液、及び、配管22から供給される添加剤の供給をコントロールするように構成されている。
【0034】前記のように構成された研磨剤の調合装置等10における運転方法は次のとおりである。純水供給源(図示略)から供給される純水がバルブ54、純水配管52を経て加湿チャンバ40に供給され、加湿チャンバ40の下部に純水が蓄えられる。同時に、エア供給源(図示略)から供給されるエアがバルブ58、エア配管56を経て加湿チャンバ40に供給される。
【0035】霧化ユニット42、42の駆動により飽和水蒸気が発生し、この飽和水蒸気がエア供給源から供給されるエアと混合されて加湿空気となり、加湿空気配管60を経てタンク12に供給される。
【0036】タンク12内の湿度は湿度センサ14により検出され、制御手段18により所期の値を維持するように、霧化ユニット42、42の駆動、純水の供給量、エアの供給量、等がコントロールされる。
【0037】これにより、タンク12の内壁は常に濡れた状態になる。したがって、研磨剤を供給していくと、使用した分だけタンク12内の液面が下降するが、研磨剤を使用する前の液面から、研磨剤を使用した分だけ下降した液面までの壁面に研磨剤が付着しても、その付着した研磨剤がその後壁面において乾燥し、凝集・凝固することはない。
【0038】その結果、凝集・凝固した研磨剤が発生することはなく、大粒径の研磨剤によるウェーハの傷(マイクロスクラッチ)が発生したり、ウェーハの品質が低下したり、ウェーハの歩留りが低下したりすることはない。
【0039】タンク12内の相対湿度は、100%であれば効果は充分であるが、相対湿度が90%以上で管理されていれば問題が発生することはない。相対湿度が85%程度でも略問題とはならない。相対湿度が80%程度でも従来例と比較すれば効果は認められる。したがって、タンク12内の相対湿度は80%以上とするのが好ましい。
【0040】以上、本発明に係るCMP研磨装置における研磨剤の調合装置及び供給装置の実施形態の例について説明したが、本発明は上記実施形態の例に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0041】たとえば、特許請求の範囲等には「加湿空気」と記載し、純水とエアより構成させたが、これと略同等の効果を奏する水(純水、超純水も含む)と窒素ガスを使用する構成も均等の範囲であり、同様に使用できる。
【0042】
【実施例】図1に示される構成の研磨剤の調合装置等10を使用してCMP研磨を行い効果を確認した。タンク12の容量は15リットルであり、研磨剤原液としてはCABOT社製のコロイダルシリカ研磨剤、型番:SS−25を使用した。研磨パッドにはロデール社製の製品名:IC1000を使用した。ワークとして、シリコンウェーハに酸化膜が形成されたものを使用した。
【0043】調合装置等10の運転時のタンク12内の設定湿度を92%にして約8時間連続してCMP研磨を行った。その状態の研磨剤を使用してテスト用のワークを研磨し、研磨後のワーク5枚のマイクロスクラッチを計測したところ、いづれのワークのマイクロスクラッチもウェーハ面内で数個(10個未満)であった。
【0044】比較例として、従来から使用していたスラリータンク(図2の構成と略同様のもの)を使用し、同一の条件(材料、研磨条件等)でCMP研磨を行い、研磨後のワーク5枚のマイクロスクラッチを計測したところ、いづれのワークのマイクロスクラッチもウェーハ面内で数千個のレベルであった。
【0045】次に、研磨剤の種類を代えて上記と同様のCMP研磨を行い効果を確認した。研磨剤原液としてはロデール社製のフュームドシリカ研磨剤、型番:ILD−1300を使用した。その他の条件は同一とした。
【0046】調合装置等10の運転時のタンク12内の設定湿度を93%にして約8時間連続してCMP研磨を行った。その状態の研磨剤を使用してテスト用のワークを研磨し、研磨後のワーク5枚のマイクロスクラッチを計測したところ、いづれのワークのマイクロスクラッチもウェーハ面内で数個(10個未満)であった。
【0047】比較例として、従来から使用していたスラリータンク(図2の構成と略同様のもの)を使用し、同一の条件(材料、研磨条件等)でCMP研磨を行い、研磨後のワーク5枚のマイクロスクラッチを計測したところ、いづれのワークのマイクロスクラッチも面内で数千個のレベルであった。
【0048】このように、研磨剤砥粒の種類に関係なく、本願発明が従来例と比較して顕著な効果を奏することを確認した。
【0049】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれば、研磨剤調合用等のタンク内の湿度を計測できるセンサによりタンク内の湿度が計測され、該計測結果により供給される加湿空気量が制御される。したがって、調整される湿度の精度が高く、かつ、自動的に湿度の計量が行え、また、自動的に加湿空気の供給が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る研磨剤の調合装置又は供給装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】従来例である研磨剤の調合装置の概要を示す断面図である。
【符号の説明】
10…研磨剤の調合装置等、12…タンク、14…湿度センサ、16…加湿空気供給手段、18…制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】CMP研磨装置における研磨剤の調合装置又は供給装置であって、研磨剤調合用又は供給用のタンクと、該タンク内部に配設される湿度センサと、該タンク内に加湿空気を供給する加湿空気供給手段と、を有し、前記湿度センサにより前記タンク内の湿度が計測され、該計測結果により前記加湿空気供給手段から供給される加湿空気量が制御され、前記タンク内が所望の湿度に調整されることを特徴とするCMP研磨装置における研磨剤の調合装置又は供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−205464(P2003−205464A)
【公開日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−4418(P2002−4418)
【出願日】平成14年1月11日(2002.1.11)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】