説明

CPA算出方法、CPA算出装置および画像処理装置

【課題】グラム表示からCPA算出までの一連の操作を自動化できるようにし、これにより操作員の負荷の軽減を図ったCPA算出方法、CPA算出装置および画像処理装置を提供すること。
【解決手段】音響グラム表示画像データを二値化したうえで画素膨張処理を施し、でシフト領域を前処理する。次に、前処理されたシフト領域の境界線を追跡してシフト領域を分割したのち、分割されたシフト領域を細線化処理してデジタルラインとする。次に、得られたデジタルラインを線分近似したのち上限周波数F1、下限周波数F2、中心周波数F0を求め、これらのパラメータを用いてCPAレンジRdを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソノブイなどにより取得した目標の音響データを解析してCPA(Closest Point of Approach)を算出するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中目標から放射される音響信号を周波数分析してCPAレンジを求める技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。この種の技術においては、データ解析に際して専らグラム表示が用いられることが多い(例えば特許文献2を参照)。これらの装置は哨戒機などに搭載されて機上で用いられることが多い。
【特許文献1】特開2000−180546号公報
【特許文献2】特開2000−19192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら既存の技術においては、音響システムから入力されるグラム表示のドプラシフトを監視し、ドプラシフトの傾きを手作業で計測することによりCPAを求めるようにしていた。このため操作員(哨戒機の搭乗員など)の負荷が大きく、何らかの対処が望まれている。
この発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、グラム表示からCPA算出までの一連の操作を自動化できるようにし、これにより操作員の負荷の軽減を図ったCPA算出方法、CPA算出装置および画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明の一態様によれば、目標からの放射音に基づき生成される音響グラム表示画像から前記目標へのCPAを算出するCPA算出方法であって、前記音響グラム表示画像に含まれる画像データを二値化したのち画素膨張処理を施してシフト領域データを生成する前処理ステップと、前記シフト領域データの境界線を追跡してシフト領域を分割するシフト領域分割ステップと、前記分割されたシフト領域に細線化処理を施してデジタルラインを生成する細線化処理ステップと、前記デジタルラインを線分近似する近似ステップと、前記線分近似されたデジタルラインから、前記音響グラム表示画像における下限周波数と、上限周波数と、中心周波数とを少なくとも含むパラメータを抽出する抽出ステップと、前記抽出されたパラメータを用いてCPAの半径を算出する算出ステップとを具備することを特徴とするCPA算出方法が提供される。
このような手段を講じることにより、グラム表示からCPA算出までの一連の操作が例えばソフトウェア処理により自動化される。従って操作員の負荷の軽減を図ることができるようになる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、グラム表示からCPA算出までの一連の操作を自動化できるようになり、よって操作員の負荷の軽減を図ったCPA算出方法、CPA算出装置および画像処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、この発明に係わるCPA算出装置が用いられるシステムの一例を示す図である。図1において、対潜哨戒機などの航空機10は、海上に投下されたソノブイ20からの電波を受信する。ソノブイ20は、海中の潜水艦30から放射される放射音をモニタし、音響データを生成する。生成された音響データは電波回線を介して航空機10に伝送される。
【0007】
図2は、この発明に係わるCPA算出装置の実施の形態を示す機能ブロック図である。図2に示す機上装置40は航空機10に搭載され、ソノブイ20からの電波を受信してCPAを算出する。機上装置40において、ソノブイ20からの電波は受信部41で受信される。受信部41は受信信号から音響データを復調し、信号処理部42に入力する。信号処理部42は受信した音響データから、目標の音響グラム表示画像を生成する。この音響グラム表示画像は画像処理部50に入力され、ドプラシフト解析処理を施される。
【0008】
画像処理部50は、HOTLinkなどのインタフェースにより転送される音響グラム表示画像データをインタフェース部51を介して受信する。この音響グラム表示画像データは記憶部53に一時的に記憶され、入出力部44を介したオペレータ操作により適宜読み出されて表示部43に表示される。記憶部53にはCPA演算処理プログラム53aも記憶されており、このプログラムに基づくCPU(Central Processing Unit)52の演算処理により、目標へのCPAが算出される。
【0009】
図3は、図2のCPU52の処理手順を示すフローチャートである。図3の手順が進行する中で、表示部43には図4に示すような画像が表示される。図3において、図4(a)の音響グラム表示画像データが入力されると(ステップS1)、CPU52はこの画像データを二値化したうえで画素膨張処理を施し、でシフト領域を前処理する(ステップS2)。この手順では図4(b)の画像が得られる。
【0010】
次にCPU52は、前処理されたシフト領域の境界線を追跡してシフト領域を分割する(ステップS3)。次にCPU52は、分割されたシフト領域を細線化処理してデジタルラインとする(ステップS4)。この手順では図4(c)の画像が得られる。次にCPU52は、図4(d)に示すように、得られたデジタルラインを線分近似したのち(ステップS5)、CPAの計算に必要なパラメータである上限周波数F1、下限周波数F2、中心周波数F0を求める(ステップS6)。そして、これらのパラメータを用いて次式によりCPAの半径(CPAレンジ)Rdが算出される(ステップS7)。
【数1】

【0011】
図5は、図2の表示部43に示されるCPAの一例を示す模式図である。CPAが算出されると、表示部43には航空機20、ソノブイ20、潜水艦30を示すシンボルマークに加えて、ソノブイ20を中心としRdを半径とする円が描画される。その円上に潜水艦30のシンボルが表示されることになる。
【0012】
以上述べたようにこの実施形態では、音響グラム表示画像データを二値化したうえで画素膨張処理を施し、でシフト領域を前処理する。次に、前処理されたシフト領域の境界線を追跡してシフト領域を分割したのち、分割されたシフト領域を細線化処理してデジタルラインとする。次に、得られたデジタルラインを線分近似したのち上限周波数F1、下限周波数F2、中心周波数F0を求め、これらのパラメータを用いてCPAレンジRdを算出するようにしている。このようにしたので、グラム表示からCPA算出までの一連の操作を自動化できるようになり、これにより操作員の負荷の軽減を図ったCPA算出方法、CPA算出装置および画像処理装置を提供することが可能となる。
【0013】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係わるCPA算出装置が用いられるシステムの一例を示す図。
【図2】この発明に係わるCPA算出装置の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図3】図2のCPU52の処理手順を示すフローチャート。
【図4】図3の各処理手順において、図2の表示部43に表示される画像の一例を示す模式図。
【図5】図2の表示部43に示されるCPAの一例を示す模式図。
【符号の説明】
【0015】
10…航空機、20…ソノブイ、30…潜水艦、40…機上装置、41…受信部、42…信号処理部、43…表示部、44…入出力部、50…画像処理部、51…インタフェース部、52…CPU(Central Processing Unit)、53…記憶部、53a…CPA演算処理プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標からの放射音に基づき生成される音響グラム表示画像から前記目標へのCPA(Closest Point of Approach)を算出するCPA算出方法であって、
前記音響グラム表示画像に含まれる画像データを二値化したのち画素膨張処理を施してシフト領域データを生成する前処理ステップと、
前記シフト領域データの境界線を追跡してシフト領域を分割するシフト領域分割ステップと、
前記分割されたシフト領域に細線化処理を施してデジタルラインを生成する細線化処理ステップと、
前記デジタルラインを線分近似する近似ステップと、
前記線分近似されたデジタルラインから、前記音響グラム表示画像における下限周波数と、上限周波数と、中心周波数とを少なくとも含むパラメータを抽出する抽出ステップと、
前記抽出されたパラメータを用いてCPAの半径を算出する算出ステップとを具備することを特徴とするCPA算出方法。
【請求項2】
目標からの放射音をモニタする音響モニタ装置から通信回線を介して音響データを受信する受信部と、
前記音響データから前記目標に係わる音響グラム表示画像を生成する信号処理部と、
前記音響グラム表示画像を入力される画像処理部とを具備し、
この画像処理部は、
前記音響グラム表示画像に含まれる画像データを二値化したのち画素膨張処理を施してシフト領域データを生成し、
前記シフト領域データの境界線を追跡してシフト領域を分割し、
前記分割されたシフト領域に細線化処理を施してデジタルラインを生成し、
前記デジタルラインを線分近似し、
前記線分近似されたデジタルラインから、前記音響グラム表示画像における下限周波数と、上限周波数と、中心周波数とを少なくとも含むパラメータを抽出し、
前記抽出されたパラメータを用いて前記目標へのCPA(Closest Point of Approach)の半径を算出することを特徴とするCPA算出装置。
【請求項3】
目標からの放射音に基づき生成される音響グラム表示画像から前記目標へのCPA(Closest Point of Approach)を算出する画像処理装置であって、
前記音響グラム表示画像に含まれる画像データを二値化したのち画素膨張処理を施してシフト領域データを生成し、
前記シフト領域データの境界線を追跡してシフト領域を分割し、
前記分割されたシフト領域に細線化処理を施してデジタルラインを生成し、
前記デジタルラインを線分近似し、
前記線分近似されたデジタルラインから、前記音響グラム表示画像における下限周波数と、上限周波数と、中心周波数とを少なくとも含むパラメータを抽出し、
前記抽出されたパラメータを用いて前記目標へのCPAの半径を算出することを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−234715(P2006−234715A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52724(P2005−52724)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】