説明

DC−DCコンバータの2次側電源の制御装置およびDC−DCコンバータの2次側電源の制御方法

【課題】 ポンピングに応じたエネルギの回生を図ることができ、また部品サイズやコストの面で有利にポンピングを低減することができる「DC−DCコンバータの2次側電源の制御装置およびDC−DCコンバータの2次側電源の制御方法」を提供する。
【解決手段】 電源作成用のDC−DCコンバータ2が作成する2次側直流電源の制御をするための制御装置1であって、2次側直流電源の+側電源の電位と−側電源の電位の差分を−側電源の電位を反転した上でとることによって電位差を検出する電位差検出回路11と、+側電源からエネルギを回生する第1のDC−DCコンバータ12と、−側電源からエネルギを回生する第2のDC−DCコンバータ13とを備え、電位差の偏りに応じて、第1のDC−DCコンバータ12または第2のDC−DCコンバータ13がエネルギを回生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2次側電源につき、プラス側電源の電位とマイナス側電源の電位の電位差を絶対値でとった場合に、電位差に偏りが発生するDC−DCコンバータに係るDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置およびDC−DCコンバータの2次側電源の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DC−DCコンバータは電子機器等の電源を作成するために広く一般に用いられている。DC−DCコンバータは例えば図5に示すように、車載用オーディオパワーアンプ(以下、単にAMPと称す)が必要とする電源を作成するために用いられる。図5に示す例でDC−DCコンバータはメイン電源であるバッテリとAMPとの間に配置され、バッテリ(Batt)からの直流入力電圧をAMPが必要とする直流出力電圧に変換した上でAMPに供給している。
DC−DCコンバータに関し、エネルギを回生するという点で本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献1で提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−056992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電源作成用のDC−DCコンバータでは、DC−DCコンバータが作成する電源を使用する機器(例えばAMP)の動作状態によって、2次側電源のプラス側(以下、単に+側とも称す)電源とマイナス側(以下、単に−側とも称す)電源との間で消費電流に偏りが生じることがあり、これにより+側電源と−側電源の電位の差分を絶対値でとることによって算出される電位差に偏り(ポンピング)が発生することがあった。特にAMPについては昨今高効率の要求が高いため、ディジタルアンプ(以下、D−AMPと称す)が採用されることが多くなっているが、このD−AMPとDC−DCコンバータとの組合せではポンピングが顕著に現れることが多かった。
【0005】
このため従来は、例えばAMPで使用する各素子につき、上昇する電圧幅を事前に見越したうえで、これに対して耐圧が十分高いものを選定し採用することで、ポンピングの対策をしていた。
またこのポンピング現象は、電源の2次側平滑回路に使用するコンデンサの容量によっても左右され、具体的には容量が大きいほどポンピングで発生する電圧の上昇が抑制される。このため従来は、例えば2次側平滑回路に使用するコンデンサに容量が大きいものを選定し採用することで、ポンピングの対策をしていた。
しかしながらこれらの対策は部品の大型化に繋がり、また過剰スペックの部品選定によるスペース効率の悪化やコストアップが発生していた。
【0006】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ポンピングに応じたエネルギの回生を図ることができ、また部品サイズやコストの面で有利にポンピングを低減することができるDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置およびDC−DCコンバータの2次側電源の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、電源作成用のDC−DCコンバータが作成する2次側直流電源の制御をするためのDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置であって、前記2次側直流電源のプラス側電源の電位とマイナス側電源の電位の差分を前記プラス側電源の電位または前記マイナス側電源の電位のうち、いずれか一方を反転した上でとることによって電位差を検出する電位差検出回路と、前記プラス側電源からエネルギを回生する第1のDC−DCコンバータと、前記マイナス側電源からエネルギを回生する第2のDC−DCコンバータとを備え、前記電位差の偏りに応じて、前記第1のDC−DCコンバータまたは前記第2のDC−DCコンバータがエネルギを回生することを特徴とする。
【0008】
また本発明は前記電位差検出回路が、前記マイナス側電源の電位を反転した上で前記プラス側電源の電位から前記マイナス側電源の電位を減じることで、前記電位差を検出する場合に、前記電位差がプラスである場合に、前記第1のDC−DCコンバータがエネルギを回生し、前記電位差がマイナスである場合に、前記第2のDC−DCコンバータがエネルギを回生する構成であってもよい。
【0009】
また本発明は前記第1のDC−DCコンバータが前記プラス側電源から前記マイナス側電源にエネルギを回生するとともに、前記第2のDC−DCコンバータが前記マイナス側電源から前記プラス側電源にエネルギを回生する構成であってもよい。
【0010】
また本発明は前記電源作成用のDC−DCコンバータがディジタルアンプの電源を作成する構成であってもよい。
【0011】
また本発明は電源作成用のDC−DCコンバータが作成する2次側直流電源につき、プラス側電源の電位とマイナス側電源の電位の差分を前記プラス側電源の電位または前記マイナス側電源の電位のうち、いずれか一方を反転した上でとることにより電位差を検出するとともに、該電位差の偏りに応じて、前記プラス側電源或いは前記マイナス側電源からエネルギを回生することを特徴とするDC−DCコンバータの2次側電源の制御方法である。
【0012】
また本発明の2次側電源の制御方法は前記プラス側電源からエネルギを回生する場合には、前記プラス側電源から前記マイナス側電源にエネルギを回生し、前記マイナス側電源からエネルギを回生する場合には、前記マイナス側電源から前記プラス側電源にエネルギを回生する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポンピングに応じたエネルギの回生を図ることができ、また部品サイズやコストの面で有利にポンピングを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【0015】
図1は本実施例に係るDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置(以下、単に制御装置と称す)1をDC−DCコンバータ2およびAMP3とともに模式的に示す図であり、図1に示す各構成は図示しない車両に搭載されている。DC−DCコンバータ2は電源作成用のDC−DCコンバータであり、メイン電源であるバッテリ(Batt)からの直流入力電圧をAMP3が必要とする直流出力電圧に変換することにより、2次側電源を作成する。AMP3はD−AMPであり、DC−DCコンバータ2が作成した2次側電源を電源として動作する。
【0016】
電位差検出回路11は+側電源の電位と−側電源の電位の差分を+側電源の電位または−側電源の電位のうち、いずれか一方を反転した上でとることによって、電位差を検出するための構成であり、+側電源と−側電源とに接続されている。本実施例では電位差検出回路11は−側電源の電位を反転した上で+側電源の電位から−側電源の電位を減じることで、電位差を検出するように構成されている。また電位差検出回路11は検出した電位差の偏りを判断し、電位差がプラスである場合(電位差の振幅がプラス側で大きい場合)には、第1のDC−DCコンバータ12を動作させるための第1のDC−DC制御信号を第1のDC−DCコンバータ12に出力し、検出した電位差がマイナスである場合(電位差の振幅が−側で大きい場合)には、第2のDC−DCコンバータ13を動作させるための第2のDC−DC制御信号を第2のDC−DCコンバータ13に出力する。なお、電位差は略零となるのが通常であり、電位差の偏り(ポンピング)は、AMP3の動作によって、DC−DCコンバータ2の2次側電源の+側電源と−側電源との間で消費電流に偏りが発生したときに発生する。
【0017】
第1のDC−DCコンバータ12は、+側電源からエネルギを回生するための構成である。第1のDC−DCコンバータ12は本実施例では具体的には+側電源から−側電源にエネルギを回生するように構成されており、このため入力側が+側電源に、出力側が−側電源にそれぞれ接続されている。第1のDC−DCコンバータ12は、電位差検出回路11からの第1のDC−DC制御信号に基づき動作するように構成されており、これにより電位差検出回路11が検出した電位差の偏りに応じて、電位差がプラスである場合にエネルギを回生する。
【0018】
第2のDC−DCコンバータ13は、−側電源からエネルギを回生するための構成である。第2のDC−DCコンバータ13は本実施例では具体的には−側電源から+側電源にエネルギを回生するように構成されており、このため入力側が−側電源に、出力側が+側電源にそれぞれ接続されている。第2のDC−DCコンバータ13は、電位差検出回路11からの第2のDC−DC制御信号に基づき動作するように構成されており、これにより電位差検出回路11が検出した電位差の偏りに応じて、電位差がマイナスである場合にエネルギを回生する。
制御装置1は電位差検出回路11と第1のDC−DCコンバータ12と第2のDC−DCコンバータ13とで実現されている。
【0019】
次に電位差検出回路11の構成について図2を用いて詳述する。電位差検出回路11は、反転増幅器111と差動増幅器112とコンパレータ113とを有して構成されている。反転増幅器111は−側電源の電位を反転して差動増幅器112に出力する。差動増幅器112は+側電源の電位から反転後の−側電源の電位を減じることによって電位差を検出し、検出した電位差をコンパレータ113に出力する。コンパレータ113は電位差の振幅を判断し、振幅が+側で大きい場合には、第1のDC−DC制御信号を出力し、振幅が−側で大きい場合には、第2のDC−DC制御信号を出力する。
【0020】
次に第1および第2のDC−DCコンバータ12、13の構成について図3を用いて詳述する。図3(a)および(b)に示すように、第1および第2のDC−DCコンバータ12、13はともに一般的な絶縁タイプの電源構成となっており、第1のDC−DCコンバータ12はスイッチング素子121、トランス122、整流素子123を、第2のDC−DCコンバータ13をスイッチング素子131、トランス132、整流素子133をそれぞれ有して構成されている。第1のDC−DC制御信号はスイッチング素子121に、第2の制御信号はスイッチング素子131にそれぞれ入力され、これにより第1および第2のDC−DCコンバータ12、13がそれぞれ動作する。
【0021】
第1のDC−DCコンバータ12ではスイッチング素子121が+側電源およびGND間に設けられており、第1のDC−DC制御信号に基づきDC−DCコンバータ12が動作することによって、+側電源およびGND間の直流電圧がスイッチング素子121、トランス122および整流素子123を介して変換された上で−側電源に供給される。これによりエネルギの回生が図られるとともに、ポンピングが低減される。
第2のDC−DCコンバータ13ではスイッチング素子131がGNDおよび−側電源間に設けられており、第2のDC−DC制御信号に基づきDC−DCコンバータ13が動作することによって、GNDおよび−側電源間の直流電圧がスイッチング素子131、トランス132および整流素子133を介して変換された上で+側電源に供給される。これによりエネルギの回生が図られるとともに、ポンピングが低減される。
【0022】
次にポンピングによる2次側電源の電圧変動について図4を用いて詳述する。ポンピングが発生した場合、2次側電源の+側電源の電圧および−側電源の電圧はそれぞれ図示のように変動して、波形Aおよび波形Bを形成する。これに対して電位差は波形Aから波形Bを絶対値で減じた波形Cによって表される。そしてこの波形Cが形成する領域のうち、+側の領域R1が第1のDC−DCコンバータ12を動作する領域となり、−側の領域R2が第2のDC−DCコンバータ13を動作する領域となる。すなわち、このような電位差の偏りに応じて、電位差検出回路11が第1または第2のDC−DC制御信号を出力するとともに、第1または第2のDC−DCコンバータ12、13が電位差の偏りに応じてエネルギを回生し、これによりポンピングの低減が図られる。
【0023】
なお、電圧波形の周波数は出力信号に依存し、特に低周波数(例えば20Hz)になるに従い、その振幅が大きくなる傾向にある。
またポンピング発生時の電圧は次の数1に示す式で表すことができる。
(数1)
ΔVc=Qr/C
=Vom(4Vdd−πVom)/(8×π×f×C×R×Vdd)
Qr :正弦波半波の時間でCが受け取る総電荷量[C]
ΔVc :電源電圧変動幅[V]
Vom :出力信号最大電圧値[V]
Vdd :電源電圧[V]
:出力信号周波数[Hz]
:負荷抵抗値[ohm]
:平滑電源のコンデンサ容量[F]
ΔVcが最大となるのは、Vom=2×Vdd/πのときで、このときΔVcは次の数2に示す式で表すことができる。
(数2)
ΔVc(max)=Vdd/(2×π×f×R×C)
【0024】
以上のように制御装置1は、ポンピングに応じたエネルギの回生を図りつつ、ポンピングを低減することができ、これにより原理的に電力消費がゼロに近い状態でポンピングの対策をすることができる。またこれにより、AMP3で使用する素子の耐圧マージンを下げることができ、この結果、素子の耐圧を必要な性能に合わせて選定することができることから、コストダウンや部品サイズの小型化のほか性能向上にも繋がる。また電源の2次側平滑回路に使用するコンデンサの容量を下げることもでき、これによってもコストダウンや部品サイズの小型化が図られる。またこのようなメリットは制御装置1の構成上、制御装置1が新たに追加になったことを考慮しても得ることができると考えられ、このため制御装置1は部品サイズやコストの面で有利にポンピングを低減することができる。
【0025】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。例えばポンピングに応じたエネルギの回生にあたって、上述の実施例では第1のDC−DCコンバータ12が−側電源に、第2のDC−DCコンバータ13が+側電源にそれぞれエネルギを回生しているが、第1および第2のDC−DCコンバータ12、13は例えばDC−DCコンバータ2の一次側の電源にエネルギを回生してもよく、電圧の異なる他の2次側電源にエネルギを回生してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】制御装置1をDC−DCコンバータ2およびAMP3とともに模式的に示す図である。
【図2】電位差検出回路11の構成の一具体例を模式的に示す図である。
【図3】第1および第2のDC−DCコンバータ12、13の構成の一具体例を模式的に示す図である。
【図4】2次側電源の電圧変動の一例をこれに対応する電位差とともに波形で示す図である。
【図5】電源作成用のDC−DCコンバータの一般的な適用例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 制御装置
11 電位差検出回路
12 第1のDC−DCコンバータ
13 第2のDC−DCコンバータ
2 DC−DCコンバータ
3 AMP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源作成用のDC−DCコンバータが作成する2次側直流電源の制御をするためのDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置であって、
前記2次側直流電源のプラス側電源の電位とマイナス側電源の電位の差分を前記プラス側電源の電位または前記マイナス側電源の電位のうち、いずれか一方を反転した上でとることによって電位差を検出する電位差検出回路と、
前記プラス側電源からエネルギを回生する第1のDC−DCコンバータと、
前記マイナス側電源からエネルギを回生する第2のDC−DCコンバータとを備え、
前記電位差の偏りに応じて、前記第1のDC−DCコンバータまたは前記第2のDC−DCコンバータがエネルギを回生することを特徴とするDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置であって、
前記電位差検出回路が、前記マイナス側電源の電位を反転した上で前記プラス側電源の電位から前記マイナス側電源の電位を減じることで、前記電位差を検出する場合に、
前記電位差がプラスである場合に、前記第1のDC−DCコンバータがエネルギを回生し、
前記電位差がマイナスである場合に、前記第2のDC−DCコンバータがエネルギを回生することを特徴とするDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置であって、
前記第1のDC−DCコンバータが前記プラス側電源から前記マイナス側電源にエネルギを回生するとともに、
前記第2のDC−DCコンバータが前記マイナス側電源から前記プラス側電源にエネルギを回生することを特徴とするDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載のDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置であって、
前記電源作成用のDC−DCコンバータがディジタルアンプの電源を作成することを特徴とするDC−DCコンバータの2次側電源の制御装置。
【請求項5】
電源作成用のDC−DCコンバータが作成する2次側直流電源につき、プラス側電源の電位とマイナス側電源の電位の差分を前記プラス側電源の電位または前記マイナス側電源の電位のうち、いずれか一方を反転した上でとることにより電位差を検出するとともに、該電位差の偏りに応じて、前記プラス側電源或いは前記マイナス側電源からエネルギを回生することを特徴とするDC−DCコンバータの2次側電源の制御方法。
【請求項6】
請求項5記載のDC−DCコンバータの2次側電源の制御方法であって、
前記プラス側電源からエネルギを回生する場合には、前記プラス側電源から前記マイナス側電源にエネルギを回生し、
前記マイナス側電源からエネルギを回生する場合には、前記マイナス側電源から前記プラス側電源にエネルギを回生することを特徴とするDC−DCコンバータの2次側電源の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−232549(P2009−232549A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73720(P2008−73720)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】