FRPライニング金属管の製造法
【課題】 FRPプリプレグを巻き付けたマンドレルと、薄肉な金属管との相互間における熱膨張量の差を利用して、耐久強度と安定性に富むFRPライニング金属管を短時間での効率良く量産する。
【解決手段】 アルミ合金又はステンレス鋼を素材とする金属管(10)と、アルミ合金のマンドレル(M)とを用意して、上記マンドレル(M)へFRPプリプレグ(F)を、その外径(d2)が上記金属管(10)の内径(d1)と0.1〜0.3mmの一定間隙(S1)を保つ積層状態に巻き付け一体化して、その金属管(10)の内部へ差し込み貫通させた上、上記FRPプリプレグ(F)をこれに含浸された熱硬化性樹脂が硬化するまでの加熱過程において、上記金属管(10)よりも多大に熱膨張するマンドレル(M)からの内圧により、上記内外相互間隙(S1)を埋め尽す如く金属管(10)の内周面ヘ張り付け一体化させるように定めた。
【解決手段】 アルミ合金又はステンレス鋼を素材とする金属管(10)と、アルミ合金のマンドレル(M)とを用意して、上記マンドレル(M)へFRPプリプレグ(F)を、その外径(d2)が上記金属管(10)の内径(d1)と0.1〜0.3mmの一定間隙(S1)を保つ積層状態に巻き付け一体化して、その金属管(10)の内部へ差し込み貫通させた上、上記FRPプリプレグ(F)をこれに含浸された熱硬化性樹脂が硬化するまでの加熱過程において、上記金属管(10)よりも多大に熱膨張するマンドレル(M)からの内圧により、上記内外相互間隙(S1)を埋め尽す如く金属管(10)の内周面ヘ張り付け一体化させるように定めた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷用ロールを初め、フィルムや紙などのシート類繰り出し・巻き取り用ロール、液晶パネルやフラットパネルディスプレーなどのパネル類搬送用ロール、その他の各種回転ロールに使って有効なFRP(繊維強化樹脂)ライニング金属管の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
高剛性(耐摩耗性)と軽量さ(低慣性モーメント)が特に要求される各種高速回転(例えば約1000〜2000r.p.m)ロール用のFRPライニング金属管を製造する方法として、特開2000−141485号が提案されている。
【0003】
この製造法では、予じめエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が含浸された炭素繊維プリプレグを芯棒(マンドレル)へ巻き付けて、その芯棒を先ずアルミ合金やステンレス鋼などから成る金属管の内部へ挿入し、次いで上記プリプレグが軟化する温度まで加熱して、その芯棒を膨張させることにより、上記金属管への内張り状態に押し付け、更に加熱温度を上げて、上記プリプレグを完全に硬化させ、最後に常温まで冷却することにより、その芯棒を収縮復元させて抜き出すようになっている。
【0004】
つまり、炭素繊維プリプレグの加熱による軟化と、芯棒の膨張・収縮とを利用している点で、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【特許文献1】特開2000−141485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記公知発明の芯棒はゴム管又は熱膨張率の高いナイロン樹脂棒から成り、その明細書段落〔0010〕に「SUS管を100℃まで昇温した状態で、シリコンゴム管の一方の端を封じ、もう片方の端から圧縮空気を吹き込む事で、シリコンゴムを膨張させた。シリコンゴムの膨張で樹脂が軟化したプリプレグを、薄肉SUS管の内側に押し付けた状態で、樹脂の硬化温度である120℃まで上昇させて12時間放置し、樹脂を硬化させた。常温まで冷却後、シリコンゴム管の空気を抜き収縮させた後、シリコンゴム管を抜いた。」と記載されているように、シリコンゴム管の開口一端部を封止して、残る開口他端部から圧縮空気を吹き込まなければ、そのシリコンゴム管を膨張させることができず、製造工程上甚だ煩雑であり、そのための特別な付帯装置も必要となる。
【0006】
又、シリコンゴム管から成る芯棒の場合、これを膨張させる前の状態では、その外周面からの加圧力に耐えることが困難であるため、これに炭素繊維プリプレグのUDテープ材を直交する数プライ層として、精密・確固に安定良く巻き付けることができず、仕上がり状態の品質にバラツキを生じることは必至である。
【0007】
更に、上記プリプレグをSUS管の内側へ押し付けた状態のもとに、その熱硬化性樹脂が完全に硬化するまでの加熱温度:120℃と、12時間の放置時間を要するため、作業効率が非常に悪く、量産効果を発揮させることもできない。
【0008】
他方、芯棒の材質として上記ゴム管のほかに、熱膨張率の高いナイロン樹脂棒も挙げられているが、これは熱可塑性であるため、上記12時間という長時間に亘って、高温に耐えることができず、その意味からも120℃の加熱温度で足りる所謂低温硬化タイプの炭素繊維プリプレグが採用されたものと考えられる。
【0009】
しかし、茲に低温硬化タイプの炭素繊維プリプレグは特殊・高価な材料であり、通常130〜150℃で硬化するタイプの安価な炭素繊維プリプレグのみならず、ガラス繊維クロスプリプレグも採用することができず、製造法としての汎用性に劣る。ガラス繊維クロスプリプレグでも、130〜150℃の加熱温度において硬化するタイプの熱硬化性樹脂が使用されている通例だからである。
【0010】
更に、上記ナイロン樹脂棒はその文字どおりのナイロン樹脂のみから成り、別個な金属によって軸支されていないため、上記加熱温度を長時間受けて、形崩れするおそれもあり、その炭素繊維強化樹脂を金属管の内周面へ均一な張り付け膜として、安定・強固にライニングすることができない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこのような諸問題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1ではFRPライニング金属管の製造法として、アルミ合金又はステンレス鋼を素材とする金属管と、その金属管の薄くとも約3倍に厚肉化されたアルミ合金のマンドレルとを用意して、
【0012】
上記マンドレルへFRPプリプレグを、その外径が上記金属管の内径と0.1〜0.3mmの一定間隙を保つ積層状態に巻き付け一体化して、その金属管の内部へ差し込み貫通させた上、
【0013】
上記FRPプリプレグをこれに含浸された熱硬化性樹脂が硬化するまでの加熱過程において、上記金属管よりも多大に熱膨張するマンドレルからの内圧により、上記内外相互間隙を埋め尽す如く金属管の内周面ヘ張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の構成では、マンドレルに巻き付け一体化したFRPプリプレグの最外層へ、霧吹きや湿した拭き布などによって水分を付与した後、低密度ポリエチレンのフィルムから成る熱溶融性テープを巻き付けて、
【0015】
FRPプリプレグの加熱過程において溶融した上記テープが、その下地の水分から蒸発した気体を封じ込めた発泡剤又はホットメルト接着剤と化して、上記FRPプリプレグの最外層を金属管の内周面へ能動的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする。
【0016】
又、請求項3の構成ではマンドレルに巻き付け一体化するFRPプリプレグの最外層へ、熱膨張性マイクロスフェアーから成る発泡剤が混練された熱硬化性樹脂を塗り付けて、
【0017】
FRPプリプレグの加熱過程において膨張する上記発泡剤により、そのFRPプリプレグの最外層を金属管の内周面ヘ積極的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする。
【0018】
請求項4の構成では、最外層の熱硬化性樹脂に熱膨張性の発泡剤が混練されたシート状のFRPプリプレグを、マンドレルに巻き付け一体化して、
【0019】
FRPプリプレグの加熱過程において膨張する上記発泡剤により、そのFRPプリプレグの最外層を金属管の内周面ヘ積極的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする。
【0020】
更に、請求項5の構成ではFRPプリプレグをCFRPプリプレグ又はGFRPプリプレグとして、マンドレルへ金属管の長さよりも長く巻き付け一体化することにより、その最外層の両端部を金属管の両端部から一定量づつ張り出し露呈する状態に保ち、
【0021】
その張り出し露呈する最外層の両端部を残して、上記FRPプリプレグの両端木口面とマンドレルの表面との境界段差部へ、引き続き延伸ポリプロピレンのブリーダーテープを肉盛り状態に巻き付けた上、
【0022】
上記FRPプリプレグを約130℃〜150℃の温度により加熱し、その熱硬化性樹脂の硬化後に上記一定量づつの張り出し両端部を切り捨てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の上記構成によれば、FRPプリプレグをその熱硬化性樹脂が硬化するまでの加熱進行中、金属管とマンドレルは何れも内外方向(求心方向と放射方向)へ熱膨張することになるが、その際金属管とFRPプリプレグとの内外相互間隙は予じめ0.1〜0.3mmに設定されているため、併せてマンドレルの厚みは金属管における厚みの約3倍以上として厚肉化されているため、その金属管よりも多量に熱膨張するマンドレルの大きな内圧が、一旦熱硬化性樹脂の溶融したFRPプリプレグに作用して、そのFRPプリプレグを金属管の内周面へ、上記間隙を完全に埋め尽す如く張り付け一体化させることができ、その最終的に硬化した張り付け状態での優れたFRPライニング金属管を得られるのである。
【0024】
他方、上記FRPプリプレグの完全な硬化後に、常温まで冷却すれば、金属管とマンドレルは当初の太さまで収縮復元することになるが、そのマンドレルの復元収縮量は金属管のそれよりも多く、その結果上記内外相互間隙の設定数値範囲とも相俟って、金属管への内張りライニング状態に硬化したFRPプリプレグの内部から、上記マンドレルを支障なく円滑に抜き出すこともでき、冒頭の公知発明に比し、FRPライニング金属管を短時間での効率良く製造し得るのであり、量産効果の向上に役立つ。
【0025】
又、FRPプリプレグの巻き付け芯となるマンドレルは、冒頭に述べた公知発明のゴム管やナイロン樹脂棒と異なり、剛性なアルミ合金から成るものとして、その素材に固有の線膨張係数と上記厚肉化に基き熱膨張するため、形崩れするおそれがないことは勿論、その表面へFRPプリプレグのUDテープ材やクロス材を精密・確固に安定良く巻き付け一体化することができ、製品−FRPライニング金属管の品質にバラツキを生じるおそれもなく、量産効果がますます向上する。
【0026】
特に、請求項2の構成を採用するならば、安全な水分の付与と、その後ありふれた熱溶融性テープの巻き付けにより、上記FRPプリプレグの加熱を活用し、独立気泡の発泡剤又はホットメルト接着剤を生成することができ、従って特別の発泡剤を使用する必要がなく、量産効果がますます向上する。
【0027】
そして、このような発泡剤又はホットメルト接着剤と化した熱溶融性テープは、一旦溶融した熱硬化性樹脂との一体膜になり、上記マンドレルの熱膨張による多大な内圧とも相俟って、そのFRPプリプレグの最外層を金属管の内周面へ能動的に張り付け一体化させることができ、耐久強度と安定性に優れた製品−FRPライニング金属管を得られる効果がある。
【0028】
請求項3や請求項4に記載の特別な発泡剤を使用することも可能であり、これらの構成によれば、発泡剤の積極的な熱膨張作用と、上記マンドレルからの多大な熱膨張力(内圧)とが相乗的に働くため、やはりFRPプリプレグの最外層を金属管の内周面へ、安定良く強固に張り付け一体化させることができ、優れた製品を得られることになる。
【0029】
更に、請求項5の構成を採用するならば、FRPプリプレグにおける最外層の両端部を一定量づつ張り出し露呈する状態に残して、肉盛り状態に巻き付けられたブリーダーテープにより、そのFRPプリプレグの熱硬化性樹脂が両端木口面から溶け出すことを封止できる一方、空気はその張り出し露呈する最外層の両端部から押し出すことができ、高品質な製品を得られる効果がある。
【0030】
又、そのFRPプリプレグの加熱温度が約130℃〜150℃に設定されているため、冒頭に述べた公知発明と異なり、ありふれた安価な130℃〜150℃硬化タイプのCFRPプリプレグやGFRPクロスプリプレグを制約なく採用することができ、汎用性と量産効果の向上に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面に基いて本発明の詳細を説明すると、その本発明の第1実施形態を示した図1〜14において、(10)はアルミ合金又はステンレス鋼を素材とする薄肉な金属管であり、その外径が60mm以下の場合には約1〜2mmの厚み(t1)として、同じく外径が60mmを越える場合には約1.5〜3.0mmの厚み(t1)として準備されるが、図示の一例では外径が60.5mm、内径(d1)が57.5mm、厚み(t1)が1.5mmのステンレス鋼から成る金属管(10)を採用している。
【0032】
(F)はこのような金属管(10)へ追って内張り状態にライニングされるFRP(繊維強化樹脂)プリプレグとして、CFRP(炭素繊維強化樹脂)のUDテープ材又はGFRP(ガラス繊維強化樹脂)のクロス材に、予じめエポキシ樹脂やフェノール樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂が含浸され、その半硬化状態(プリプレグ)に形成されたものであり、その厚み(t2)が薄くとも上記金属管(10)の約2.5倍に関係設定されている。この点、図示の一例では外径(d2)が57mm、内径が45mm、厚み(t2)が6mmのCFRPプリプレグを採用している。
【0033】
又、(M)は上記FRPプリプレグ(F)の巻き付け芯となるマンドレル(金型)であって、その厚み(t3)が薄くとも上記金属管(10)の約3倍に厚肉化されたアルミ合金管から成り、その金属管(10)よりも大きく熱膨張できるようになっている。その場合、図示の一例では外径(d3)が45mm、内径が35mm、厚み(t3)が5mmのマンドレル(M)を採用している。
【0034】
そこで、本発明のFRPライニング金属管(A)を製造する当っては、上記厚肉なマンドレル(M)の表面へ予じめ耐熱用の離型剤(図示省略)を塗布しておき、これを回転させることによって、その表面へ上記FRPプリプレグ(F)を図3のように巻き付け一体化する。
【0035】
即ち、そのFRPプリプレグ(CFRPプリプレグ)(F)のUDテープ材(繊維を一方向に引き揃えたプリプレグ)(F1)(F2)(F3)(F4)をマンドレル(M)との関係上、順次90度の方向性に2プライ、0度の方向性に5〜7プライ、再び90度の方向性に同じく2プライ、再び0度の方向性に同じく5〜7プライとして、図4のような交互の縦横積層状態に巻き付けるのである。
【0036】
茲に、巻き付けプライ数は製品の使用目的や用途などに応じて選定できるが、FRPプリプレグ(F)と上記金属管(10)との内外相互間隙(S1)が0.1〜0.3mmの数値範囲となるように保つ。その0.3mmよりも広いと、金属管(10)並びにマンドレル(M)における熱膨張率との関係上、後述する張り付けライニング状態の耐久強度や安定性が低下するおそれがあり、他方0.1mmよりも狭いと、そのFRPプリプレグ(F)の巻き付けられたマンドレル(M)を、金属管(10)の内部へ円滑に差し込み貫通させることができないからである。
【0037】
その場合、図5、6に抽出した部分拡大図では、最内層(11)を形作る1プライ目の巻き付け始端部(a)と、同じく2プライ目の巻き付け終端部(b)とのオーバーラップ状態を示しているにとどまるが、その90度の方向性にある最内層(11)のみならず、これと同じ方向性にある第3中間層(13)や、0度の方向性にある第2中間層(12)と最外層(14)についても、そのUDテープ材(F1)〜(F4)の巻き付け始端部(a)と巻き付け終端部(b)とは、例えば約2〜5mmの一定量(X)だけオーバーラップする状態に保っておくことにより、追って加熱軟化したFRPプリプレグ(F)が、マンドレル(M)からの熱膨張力(内圧)を受けて径大化することに備える。
【0038】
上記マンドレル(M)に巻き付けられたFRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ、次に図7のような霧吹きや湿した拭き布などによって水分(15a)を付与した上、低密度ポリエチレン(LDPE)のフィルムから成る熱溶融性テープ(15b)を巻き付ける。この点、図示の一例では幅が25mm、厚みが30μmの熱溶融性テープ(15b)を5プライだけ巻き付けることにより、0.15mmの厚みに積層させている。
【0039】
そして、このようなFRPプリプレグ(F)に加え、熱溶融性テープ(15b)も巻き付けられた上記マンドレル(M)を、予じめ用意された上記金属管(10)の内部へ、図8のように差し込み貫通させるのである。図示の一例ではステンレス鋼から成る金属管(10)の内径(d1)が57.5mm、FRPプリプレグ(CFRPプリプレグ)(F)の外径(d2)が上記5プライのテープ(15)も含むそれとして57.15mmであるため、これらの巻き付けられたマンドレル(M)を、上記金属管(10)の内部へ支障なく差し込み貫通させることができる。
【0040】
その場合、金属管(10)の長さ(L1)とFRPプリプレグ(F)の長さ(L2)との関係については図8に併せて示す如く、FRPプリプレグ(F)の両端部が金属管(10)の両端部から、例えば約5〜10mmの一定量(W)づつ張り出すように予じめ設定されている。
【0041】
茲に、FRPプリプレグ(F)の最外層(14)を一定量(W)づつ張り出し露呈させた状態に残して、次にそのFRPプリプレグ(F)の両端木口面と、上記マンドレル(M)の表面との境界段差部へ、耐熱性や離型性がある延伸ポリプロピレン(OPP)のブリーダーテープ(16)を、図9、10のような肉盛り状態に巻き付けて、後述の加熱時にFRPプリプレグ(F)の熱硬化性樹脂が、その両端木口面から余分に溶け出さないように封止すると共に、上記FRPプリプレグ(F)の一定量(W)づつ露呈した最外層(14)から空気が円滑に押し出される状態に保つ。
【0042】
そして、図10のような状態から約130℃〜150℃の温度を保つ加熱炉(図示省略)へ挿入し、所要時間(例えば約3〜4時間)だけ加熱することにより、上記FRPプリプレグ(F)を完全に硬化させるのである。
【0043】
そうすれば、その加熱の進行過程において、上記マンドレル(M)に巻き付けられているFRPプリプレグ(F)の熱硬化性樹脂が、一旦溶融軟化して流動性状となるため、当初曲げ応力を加えられていたUDテープ材(F1)〜(F4)が自由になり、そのUDテープ材(F1)〜(F4)にはフラットな状態へ復元しようとする力が発生する。
【0044】
又、上記マンドレル(M)と金属管(10)も加熱を受けて、各々図2の矢印で示す内外方向(求心方向と放射方向)へ膨張するが、そのマンドレル(M)の厚み(t3)は金属管(10)のそれに比して、薄くとも約3倍に関係設定されているため、その金属管(10)よりも多量に熱膨張するマンドレル(M)の大きな勢力(内圧)を受けたFRPプリプレグ(F)のUDテープ材(F1)〜(F4)が図6のように、その巻き付け始端部(a)と巻き付け終端部(b)との押し広げられる拡張状態に径大化し、そのFRPプリプレグ(F)の最外層(14)はやがて金属管(10)の内周面へ張り付き溶着一体化する結果となり、図1、2と図11、12との対比から明白なように、当初存在していたFRPプリプレグ(F)と金属管(10)との内外相互間隙(S1)が、完全に埋め尽されるのである。
【0045】
しかも、上記FRPプリプレグ(F)の最外層(14)に巻き付けられていた熱溶融性テープ(15b)は、低密度ポリエチレンのフィルムから成り、約70℃を越えると溶融する一方、その下地の水分(15a)も加熱されて蒸発するため、図13に拡大して示す如く、その溶融したテープ(15b)に無数の気体が独立気泡として封じ込められ、その状態のもとで上記マンドレル(M)からの多大な熱膨張力(内圧)を受けることになる。
【0046】
つまり、水分(15a)から蒸発した気体を封入した溶融状態の上記テープ(15b)が、言わば発泡剤(17)又はホットメルト接着剤と化して、FRPプリプレグ(F)の溶けた熱硬化性樹脂と一体の膜になり、その能動的な働きによってFRPプリプレグ(F)の最外層(14)を金属管(10)への内張り状態にライニングする結果となる。その発泡剤(17)として能動的に働く上記テープ(15b)は、FRPプリプレグ(F)と金属管(10)との内外相互間隙(S1)から空気を自づと押し出すことになるため、その両者の層間剥離を生ずるおそれもなく、耐久強度に富む安定な焼きバメ状態を得られるのである。
【0047】
何れにしても、上記FRPプリプレグ(F)の完全な硬化後には、加熱炉から取り出して、常温まで冷却する。そうすれば、金属管(10)のみならず、マンドレル(M)も当初の太さまで収縮復元することになるが、既に述べた通り、マンドレル(M)の厚み(t3)は金属管(10)のそれに比し、薄くとも約3倍に設定されているため、その冷却時の復元収縮量も多く、これに対してFRPプリプレグ(F)の線膨張係数は極めて小さく、実質的に膨張・収縮しない関係上、その硬化したFRPプリプレグ(F)の内部からマンドレル(M)を支障なく円滑に抜き出すことができる。
【0048】
つまり、図示の一例として挙げた数値において、当初金属管(ステンレス鋼管)(10)とFRPプリプレグ(CFRPプリプレグ)(F)との内外相互間に存在していた0.25mmの間隙(S1)が、その熱膨張により埋め尽くされる一方、その当初マンドレル(アルミ合金管)(M)への巻き付け状態に密着していた上記FRPプリプレグ(F)が、マンドレル(M)の収縮復元によって、そのマンドレル(M)との内外相互間に間隙(S2)を発生することになるため、金属管(10)への内張りライニング状態に硬化したFRPプリプレグ(F)の内部から、マンドレル(M)を抜き出せるわけである。
【0049】
上記硬化したFRPプリプレグ(F)からマンドレル(M)を抜芯した最後には、未だ上記ブリーダーテープ(16)が付属している半成状態の金属管(10)とFRPプリプレグ(F)の両端部を、図14のように切り捨てることにより、一定な有効長さ(L)の製品:FRPライニング金属管(A)として完成させれば良い。
【0050】
尚、FRPプリプレグ(F)に含浸されている熱硬化性樹脂の溶融し得る加熱温度を受けたマンドレル(M)と金属管(10)は、何れも内外方向(放射方向と求心方向)へ膨張するが、その際FRPプリプレグ(F)と金属管(10)との内外相互間隙(S1)が予じめ0.1〜0.3mmに設定されている関係上、又マンドレル(M)の厚み(t3)は金属管(10)における厚み(t1)の約3倍以上として厚肉化されている関係上、その金属管(10)よりも多いマンドレル(M)の熱膨張量により、最終的に硬化したFRPプリプレグ(F)を金属管(10)の内周面へ、完全な張り付け状態にライニング一体化することができ、その限りでは上記熱溶融性テープ(15b)の巻き付けと、その下地となる水分(15a)の付与を省略してもさしつかえない。
【0051】
因みに、アルミ合金(A5052)の線膨張係数は約23.6×10-6/℃、ステンレス鋼(SUS304)の線膨張係数は約17.5×10-6/℃、CFRP(PAN系繊維T300〜T800、Vf:60)の線膨張係数は約0.2〜0.4×10-6/℃、GFRP(Vf:60)の線膨張係数は約7×10-6/℃である。
【0052】
次に、図15〜19は本発明の第2実施形態に係り、その図示の一例では金属管(10)として外径が55mm、内径(d1)が51mm、厚み(t1)が2mmのアルミ合金管を、マンドレル(M)として外径(d3)が45mm、内径が33mm、厚み(t3)が6mmの同じアルミ合金管を、又FRPプリプレグ(F)として外径(d2)が50.5mm、内径が45mm、厚み(t2)が2.75mmのGFRPクロスプリプレグを採用している。
【0053】
図1〜14に示した上記第1実施形態の場合、低密度ポリエチレンのフィルムから成る熱溶融性テープ(15b)とその下地の水分(15a)を、加熱により膨張する発泡剤(17)又はホットメルト接着剤として機能させている構成のため、特別な発泡剤を必要とせず、製造コストダウンに役立つ利点があるが、上記熱溶融性テープ(15b)と水分(15a)に代る特別の発泡剤(18)を採用しても勿論良い。
【0054】
この点、本発明の第2実施形態ではその発泡剤(18)として、「EXPANCEL/ エクスパンセル」(商品名)と称する熱膨張性マイクロスフェアーを採用している。これはガスバリアー性の熱可塑性樹脂製外殻に、少量の液状炭化水素を内包した平均粒径:約10〜17μm、真比重:1000〜1300kg/m2 の球状粒子であり、約100〜200℃に加熱されると、その体積が40倍以上に膨張する。
【0055】
そこで、このような発泡剤(18)の未膨張状態にある粒子を、上記FRPプリプレグ(F)と同じ熱硬化性樹脂に約10重量パーセントだけ混合・攪拌して、その攪拌した混合液を極性の強い溶剤(好ましくはメチルエチルケトン)で適度に稀釈した上、これをFRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ塗り付けておく。但し、その塗り付けはFRPプリプレグ(F)をマンドレル(M)へ巻き付けた後に行なっても良く、その巻き付け前の最外層(14)となるUDテープ材(F4)やクロス材へ、予じめ練り込んでおいてもさしつかえない。
【0056】
何れにしても、このようなFRPプリプレグ(F)が巻き付けられたマンドレル(M)を、その後第1実施形態の上記製造工程に準じて、予じめ用意された金属管(10)の内部へ差し込み貫通させ、約130℃〜150℃の温度を保つ加熱炉(図示省略)により、所要時間(例えば約3〜4時間)だけ加熱して、上記FRPプリプレグ(F)を完全に硬化させるのである。
【0057】
そうすれば、その加熱が進むに連れて、上記マンドレル(M)と金属管(10)はやはり図16の矢印で示す内外方向へ膨張するが、上記FRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ熱硬化性樹脂との混練状態に塗布されている球状粒子の発泡剤(18)も、その外殻の軟化により体積が劇的に膨張し、図19のような中空の粒子を含む膜となって、上記金属管(10)の内周面へ張り付き、当初存在していたFRPプリプレグ(F)と金属管(10)との内外相互間隙(S1)が、積極的に埋め尽くされるのであり、最終的に硬化したFRPプリプレグ(F)が図17、18のような金属管(10)への内張り状態にライニングされた製品−FRPライニング金属管(A)を得ることができる。しかも、その製品−FRPライニング管(A)に外部応力が加えられた際の耐衝撃性を、上記発泡剤(17)の張り付き膜により発揮させ得る効果もある。
【0058】
尚、図15〜19の第2実施形態におけるその他の構成は上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図15〜19に図1〜14との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略するが、上記の特別な発泡剤(18)としては熱膨張性のマイクロスフェアーのみに限らず、FRPプリプレグ(F)が硬化する過程での加熱温度により膨張し得る適当な発泡剤(18)を採用し、これをそのFRPプリプレグ(F)の熱硬化性樹脂に予じめ混練したシート材として、そのFRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ適当なプライ数だけ巻き付け積層させても良く、これによれば上記最内層(11)や第2、3中間層(12)(13)と同じ巻き付け作業に統一できる利点があり、作業上の簡素化に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態として、加熱前における金属管とマンドレルとの関係を示す半欠截断面図である。
【図2】図1の2−2線に沿う拡大断面図である。
【図3】マンドレルに対するFRPプリプレグの巻き付け工程を示す説明図である。
【図4】マンドレルに対するFRPプリプレグの巻き付け状態を示す斜面図である。
【図5】FRPプリプレグにおける巻き付け始端部と同終端部とのオーバーラップ状態を示す部分拡大断面図である。
【図6】FRPプリプレグにおける加熱後の拡張状態を示す図5に対応する部分拡大断面図である。
【図7】FRPプリプレグに対する水分の付与と熱溶融性テープの巻き付け状態を示す斜面図である。
【図8】金属管の内部に対するマンドレルの差し込み貫通状態を示す斜面図である。
【図9】ブリーダーテープの肉盛り状態を示す部分拡大正面図である。
【図10】図9の全体を示す正面図である。
【図11】加熱後のFRPプリプレグが金属管の内周面へ張り付いたライニング状態を示す半欠截断面図である。
【図12】図11の12−12線に沿う拡大断面図である。
【図13】熱溶融性テープの発泡過程を示す説明図である。
【図14】硬化したFRPプリプレグからマンドレルを抜芯した状態を示す正面図である。
【図15】本発明の第2実施形態として、加熱前における金属管とマンドレルとの関係を示す図1に対応する半欠截断面図である。
【図16】図15の16−16線に沿う拡大断面図である。
【図17】加熱後のFRPプリプレグが金属管の内周面へ張り付いたライニング状態を示す図11に対応する半欠截断面図である。
【図18】図17の18−18線に沿う拡大断面図である。
【図19】特別な発泡剤の熱膨張過程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
(10)・金属管
(11)・最内層
(12)・第2中間層
(13)・第3中間層
(14)・最外層
(15a)・水分
(15b)・熱溶融性テープ
(16)・ブリーダーテープ
(17)・発泡剤(ホットメルト接着剤)
(18)・発泡剤
(A)・FRPライニング金属管
(F)・FRPプリプレグ
(F1)(F2)(F3)(F4)・UDテープ材
(M)・マンドレル
(t1)(t2)(t3)・厚み
(S1)(S2)・間隙
(X)・オーバーラップ量
(W)・張り出し量
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷用ロールを初め、フィルムや紙などのシート類繰り出し・巻き取り用ロール、液晶パネルやフラットパネルディスプレーなどのパネル類搬送用ロール、その他の各種回転ロールに使って有効なFRP(繊維強化樹脂)ライニング金属管の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
高剛性(耐摩耗性)と軽量さ(低慣性モーメント)が特に要求される各種高速回転(例えば約1000〜2000r.p.m)ロール用のFRPライニング金属管を製造する方法として、特開2000−141485号が提案されている。
【0003】
この製造法では、予じめエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が含浸された炭素繊維プリプレグを芯棒(マンドレル)へ巻き付けて、その芯棒を先ずアルミ合金やステンレス鋼などから成る金属管の内部へ挿入し、次いで上記プリプレグが軟化する温度まで加熱して、その芯棒を膨張させることにより、上記金属管への内張り状態に押し付け、更に加熱温度を上げて、上記プリプレグを完全に硬化させ、最後に常温まで冷却することにより、その芯棒を収縮復元させて抜き出すようになっている。
【0004】
つまり、炭素繊維プリプレグの加熱による軟化と、芯棒の膨張・収縮とを利用している点で、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【特許文献1】特開2000−141485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記公知発明の芯棒はゴム管又は熱膨張率の高いナイロン樹脂棒から成り、その明細書段落〔0010〕に「SUS管を100℃まで昇温した状態で、シリコンゴム管の一方の端を封じ、もう片方の端から圧縮空気を吹き込む事で、シリコンゴムを膨張させた。シリコンゴムの膨張で樹脂が軟化したプリプレグを、薄肉SUS管の内側に押し付けた状態で、樹脂の硬化温度である120℃まで上昇させて12時間放置し、樹脂を硬化させた。常温まで冷却後、シリコンゴム管の空気を抜き収縮させた後、シリコンゴム管を抜いた。」と記載されているように、シリコンゴム管の開口一端部を封止して、残る開口他端部から圧縮空気を吹き込まなければ、そのシリコンゴム管を膨張させることができず、製造工程上甚だ煩雑であり、そのための特別な付帯装置も必要となる。
【0006】
又、シリコンゴム管から成る芯棒の場合、これを膨張させる前の状態では、その外周面からの加圧力に耐えることが困難であるため、これに炭素繊維プリプレグのUDテープ材を直交する数プライ層として、精密・確固に安定良く巻き付けることができず、仕上がり状態の品質にバラツキを生じることは必至である。
【0007】
更に、上記プリプレグをSUS管の内側へ押し付けた状態のもとに、その熱硬化性樹脂が完全に硬化するまでの加熱温度:120℃と、12時間の放置時間を要するため、作業効率が非常に悪く、量産効果を発揮させることもできない。
【0008】
他方、芯棒の材質として上記ゴム管のほかに、熱膨張率の高いナイロン樹脂棒も挙げられているが、これは熱可塑性であるため、上記12時間という長時間に亘って、高温に耐えることができず、その意味からも120℃の加熱温度で足りる所謂低温硬化タイプの炭素繊維プリプレグが採用されたものと考えられる。
【0009】
しかし、茲に低温硬化タイプの炭素繊維プリプレグは特殊・高価な材料であり、通常130〜150℃で硬化するタイプの安価な炭素繊維プリプレグのみならず、ガラス繊維クロスプリプレグも採用することができず、製造法としての汎用性に劣る。ガラス繊維クロスプリプレグでも、130〜150℃の加熱温度において硬化するタイプの熱硬化性樹脂が使用されている通例だからである。
【0010】
更に、上記ナイロン樹脂棒はその文字どおりのナイロン樹脂のみから成り、別個な金属によって軸支されていないため、上記加熱温度を長時間受けて、形崩れするおそれもあり、その炭素繊維強化樹脂を金属管の内周面へ均一な張り付け膜として、安定・強固にライニングすることができない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこのような諸問題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1ではFRPライニング金属管の製造法として、アルミ合金又はステンレス鋼を素材とする金属管と、その金属管の薄くとも約3倍に厚肉化されたアルミ合金のマンドレルとを用意して、
【0012】
上記マンドレルへFRPプリプレグを、その外径が上記金属管の内径と0.1〜0.3mmの一定間隙を保つ積層状態に巻き付け一体化して、その金属管の内部へ差し込み貫通させた上、
【0013】
上記FRPプリプレグをこれに含浸された熱硬化性樹脂が硬化するまでの加熱過程において、上記金属管よりも多大に熱膨張するマンドレルからの内圧により、上記内外相互間隙を埋め尽す如く金属管の内周面ヘ張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の構成では、マンドレルに巻き付け一体化したFRPプリプレグの最外層へ、霧吹きや湿した拭き布などによって水分を付与した後、低密度ポリエチレンのフィルムから成る熱溶融性テープを巻き付けて、
【0015】
FRPプリプレグの加熱過程において溶融した上記テープが、その下地の水分から蒸発した気体を封じ込めた発泡剤又はホットメルト接着剤と化して、上記FRPプリプレグの最外層を金属管の内周面へ能動的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする。
【0016】
又、請求項3の構成ではマンドレルに巻き付け一体化するFRPプリプレグの最外層へ、熱膨張性マイクロスフェアーから成る発泡剤が混練された熱硬化性樹脂を塗り付けて、
【0017】
FRPプリプレグの加熱過程において膨張する上記発泡剤により、そのFRPプリプレグの最外層を金属管の内周面ヘ積極的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする。
【0018】
請求項4の構成では、最外層の熱硬化性樹脂に熱膨張性の発泡剤が混練されたシート状のFRPプリプレグを、マンドレルに巻き付け一体化して、
【0019】
FRPプリプレグの加熱過程において膨張する上記発泡剤により、そのFRPプリプレグの最外層を金属管の内周面ヘ積極的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする。
【0020】
更に、請求項5の構成ではFRPプリプレグをCFRPプリプレグ又はGFRPプリプレグとして、マンドレルへ金属管の長さよりも長く巻き付け一体化することにより、その最外層の両端部を金属管の両端部から一定量づつ張り出し露呈する状態に保ち、
【0021】
その張り出し露呈する最外層の両端部を残して、上記FRPプリプレグの両端木口面とマンドレルの表面との境界段差部へ、引き続き延伸ポリプロピレンのブリーダーテープを肉盛り状態に巻き付けた上、
【0022】
上記FRPプリプレグを約130℃〜150℃の温度により加熱し、その熱硬化性樹脂の硬化後に上記一定量づつの張り出し両端部を切り捨てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の上記構成によれば、FRPプリプレグをその熱硬化性樹脂が硬化するまでの加熱進行中、金属管とマンドレルは何れも内外方向(求心方向と放射方向)へ熱膨張することになるが、その際金属管とFRPプリプレグとの内外相互間隙は予じめ0.1〜0.3mmに設定されているため、併せてマンドレルの厚みは金属管における厚みの約3倍以上として厚肉化されているため、その金属管よりも多量に熱膨張するマンドレルの大きな内圧が、一旦熱硬化性樹脂の溶融したFRPプリプレグに作用して、そのFRPプリプレグを金属管の内周面へ、上記間隙を完全に埋め尽す如く張り付け一体化させることができ、その最終的に硬化した張り付け状態での優れたFRPライニング金属管を得られるのである。
【0024】
他方、上記FRPプリプレグの完全な硬化後に、常温まで冷却すれば、金属管とマンドレルは当初の太さまで収縮復元することになるが、そのマンドレルの復元収縮量は金属管のそれよりも多く、その結果上記内外相互間隙の設定数値範囲とも相俟って、金属管への内張りライニング状態に硬化したFRPプリプレグの内部から、上記マンドレルを支障なく円滑に抜き出すこともでき、冒頭の公知発明に比し、FRPライニング金属管を短時間での効率良く製造し得るのであり、量産効果の向上に役立つ。
【0025】
又、FRPプリプレグの巻き付け芯となるマンドレルは、冒頭に述べた公知発明のゴム管やナイロン樹脂棒と異なり、剛性なアルミ合金から成るものとして、その素材に固有の線膨張係数と上記厚肉化に基き熱膨張するため、形崩れするおそれがないことは勿論、その表面へFRPプリプレグのUDテープ材やクロス材を精密・確固に安定良く巻き付け一体化することができ、製品−FRPライニング金属管の品質にバラツキを生じるおそれもなく、量産効果がますます向上する。
【0026】
特に、請求項2の構成を採用するならば、安全な水分の付与と、その後ありふれた熱溶融性テープの巻き付けにより、上記FRPプリプレグの加熱を活用し、独立気泡の発泡剤又はホットメルト接着剤を生成することができ、従って特別の発泡剤を使用する必要がなく、量産効果がますます向上する。
【0027】
そして、このような発泡剤又はホットメルト接着剤と化した熱溶融性テープは、一旦溶融した熱硬化性樹脂との一体膜になり、上記マンドレルの熱膨張による多大な内圧とも相俟って、そのFRPプリプレグの最外層を金属管の内周面へ能動的に張り付け一体化させることができ、耐久強度と安定性に優れた製品−FRPライニング金属管を得られる効果がある。
【0028】
請求項3や請求項4に記載の特別な発泡剤を使用することも可能であり、これらの構成によれば、発泡剤の積極的な熱膨張作用と、上記マンドレルからの多大な熱膨張力(内圧)とが相乗的に働くため、やはりFRPプリプレグの最外層を金属管の内周面へ、安定良く強固に張り付け一体化させることができ、優れた製品を得られることになる。
【0029】
更に、請求項5の構成を採用するならば、FRPプリプレグにおける最外層の両端部を一定量づつ張り出し露呈する状態に残して、肉盛り状態に巻き付けられたブリーダーテープにより、そのFRPプリプレグの熱硬化性樹脂が両端木口面から溶け出すことを封止できる一方、空気はその張り出し露呈する最外層の両端部から押し出すことができ、高品質な製品を得られる効果がある。
【0030】
又、そのFRPプリプレグの加熱温度が約130℃〜150℃に設定されているため、冒頭に述べた公知発明と異なり、ありふれた安価な130℃〜150℃硬化タイプのCFRPプリプレグやGFRPクロスプリプレグを制約なく採用することができ、汎用性と量産効果の向上に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面に基いて本発明の詳細を説明すると、その本発明の第1実施形態を示した図1〜14において、(10)はアルミ合金又はステンレス鋼を素材とする薄肉な金属管であり、その外径が60mm以下の場合には約1〜2mmの厚み(t1)として、同じく外径が60mmを越える場合には約1.5〜3.0mmの厚み(t1)として準備されるが、図示の一例では外径が60.5mm、内径(d1)が57.5mm、厚み(t1)が1.5mmのステンレス鋼から成る金属管(10)を採用している。
【0032】
(F)はこのような金属管(10)へ追って内張り状態にライニングされるFRP(繊維強化樹脂)プリプレグとして、CFRP(炭素繊維強化樹脂)のUDテープ材又はGFRP(ガラス繊維強化樹脂)のクロス材に、予じめエポキシ樹脂やフェノール樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂が含浸され、その半硬化状態(プリプレグ)に形成されたものであり、その厚み(t2)が薄くとも上記金属管(10)の約2.5倍に関係設定されている。この点、図示の一例では外径(d2)が57mm、内径が45mm、厚み(t2)が6mmのCFRPプリプレグを採用している。
【0033】
又、(M)は上記FRPプリプレグ(F)の巻き付け芯となるマンドレル(金型)であって、その厚み(t3)が薄くとも上記金属管(10)の約3倍に厚肉化されたアルミ合金管から成り、その金属管(10)よりも大きく熱膨張できるようになっている。その場合、図示の一例では外径(d3)が45mm、内径が35mm、厚み(t3)が5mmのマンドレル(M)を採用している。
【0034】
そこで、本発明のFRPライニング金属管(A)を製造する当っては、上記厚肉なマンドレル(M)の表面へ予じめ耐熱用の離型剤(図示省略)を塗布しておき、これを回転させることによって、その表面へ上記FRPプリプレグ(F)を図3のように巻き付け一体化する。
【0035】
即ち、そのFRPプリプレグ(CFRPプリプレグ)(F)のUDテープ材(繊維を一方向に引き揃えたプリプレグ)(F1)(F2)(F3)(F4)をマンドレル(M)との関係上、順次90度の方向性に2プライ、0度の方向性に5〜7プライ、再び90度の方向性に同じく2プライ、再び0度の方向性に同じく5〜7プライとして、図4のような交互の縦横積層状態に巻き付けるのである。
【0036】
茲に、巻き付けプライ数は製品の使用目的や用途などに応じて選定できるが、FRPプリプレグ(F)と上記金属管(10)との内外相互間隙(S1)が0.1〜0.3mmの数値範囲となるように保つ。その0.3mmよりも広いと、金属管(10)並びにマンドレル(M)における熱膨張率との関係上、後述する張り付けライニング状態の耐久強度や安定性が低下するおそれがあり、他方0.1mmよりも狭いと、そのFRPプリプレグ(F)の巻き付けられたマンドレル(M)を、金属管(10)の内部へ円滑に差し込み貫通させることができないからである。
【0037】
その場合、図5、6に抽出した部分拡大図では、最内層(11)を形作る1プライ目の巻き付け始端部(a)と、同じく2プライ目の巻き付け終端部(b)とのオーバーラップ状態を示しているにとどまるが、その90度の方向性にある最内層(11)のみならず、これと同じ方向性にある第3中間層(13)や、0度の方向性にある第2中間層(12)と最外層(14)についても、そのUDテープ材(F1)〜(F4)の巻き付け始端部(a)と巻き付け終端部(b)とは、例えば約2〜5mmの一定量(X)だけオーバーラップする状態に保っておくことにより、追って加熱軟化したFRPプリプレグ(F)が、マンドレル(M)からの熱膨張力(内圧)を受けて径大化することに備える。
【0038】
上記マンドレル(M)に巻き付けられたFRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ、次に図7のような霧吹きや湿した拭き布などによって水分(15a)を付与した上、低密度ポリエチレン(LDPE)のフィルムから成る熱溶融性テープ(15b)を巻き付ける。この点、図示の一例では幅が25mm、厚みが30μmの熱溶融性テープ(15b)を5プライだけ巻き付けることにより、0.15mmの厚みに積層させている。
【0039】
そして、このようなFRPプリプレグ(F)に加え、熱溶融性テープ(15b)も巻き付けられた上記マンドレル(M)を、予じめ用意された上記金属管(10)の内部へ、図8のように差し込み貫通させるのである。図示の一例ではステンレス鋼から成る金属管(10)の内径(d1)が57.5mm、FRPプリプレグ(CFRPプリプレグ)(F)の外径(d2)が上記5プライのテープ(15)も含むそれとして57.15mmであるため、これらの巻き付けられたマンドレル(M)を、上記金属管(10)の内部へ支障なく差し込み貫通させることができる。
【0040】
その場合、金属管(10)の長さ(L1)とFRPプリプレグ(F)の長さ(L2)との関係については図8に併せて示す如く、FRPプリプレグ(F)の両端部が金属管(10)の両端部から、例えば約5〜10mmの一定量(W)づつ張り出すように予じめ設定されている。
【0041】
茲に、FRPプリプレグ(F)の最外層(14)を一定量(W)づつ張り出し露呈させた状態に残して、次にそのFRPプリプレグ(F)の両端木口面と、上記マンドレル(M)の表面との境界段差部へ、耐熱性や離型性がある延伸ポリプロピレン(OPP)のブリーダーテープ(16)を、図9、10のような肉盛り状態に巻き付けて、後述の加熱時にFRPプリプレグ(F)の熱硬化性樹脂が、その両端木口面から余分に溶け出さないように封止すると共に、上記FRPプリプレグ(F)の一定量(W)づつ露呈した最外層(14)から空気が円滑に押し出される状態に保つ。
【0042】
そして、図10のような状態から約130℃〜150℃の温度を保つ加熱炉(図示省略)へ挿入し、所要時間(例えば約3〜4時間)だけ加熱することにより、上記FRPプリプレグ(F)を完全に硬化させるのである。
【0043】
そうすれば、その加熱の進行過程において、上記マンドレル(M)に巻き付けられているFRPプリプレグ(F)の熱硬化性樹脂が、一旦溶融軟化して流動性状となるため、当初曲げ応力を加えられていたUDテープ材(F1)〜(F4)が自由になり、そのUDテープ材(F1)〜(F4)にはフラットな状態へ復元しようとする力が発生する。
【0044】
又、上記マンドレル(M)と金属管(10)も加熱を受けて、各々図2の矢印で示す内外方向(求心方向と放射方向)へ膨張するが、そのマンドレル(M)の厚み(t3)は金属管(10)のそれに比して、薄くとも約3倍に関係設定されているため、その金属管(10)よりも多量に熱膨張するマンドレル(M)の大きな勢力(内圧)を受けたFRPプリプレグ(F)のUDテープ材(F1)〜(F4)が図6のように、その巻き付け始端部(a)と巻き付け終端部(b)との押し広げられる拡張状態に径大化し、そのFRPプリプレグ(F)の最外層(14)はやがて金属管(10)の内周面へ張り付き溶着一体化する結果となり、図1、2と図11、12との対比から明白なように、当初存在していたFRPプリプレグ(F)と金属管(10)との内外相互間隙(S1)が、完全に埋め尽されるのである。
【0045】
しかも、上記FRPプリプレグ(F)の最外層(14)に巻き付けられていた熱溶融性テープ(15b)は、低密度ポリエチレンのフィルムから成り、約70℃を越えると溶融する一方、その下地の水分(15a)も加熱されて蒸発するため、図13に拡大して示す如く、その溶融したテープ(15b)に無数の気体が独立気泡として封じ込められ、その状態のもとで上記マンドレル(M)からの多大な熱膨張力(内圧)を受けることになる。
【0046】
つまり、水分(15a)から蒸発した気体を封入した溶融状態の上記テープ(15b)が、言わば発泡剤(17)又はホットメルト接着剤と化して、FRPプリプレグ(F)の溶けた熱硬化性樹脂と一体の膜になり、その能動的な働きによってFRPプリプレグ(F)の最外層(14)を金属管(10)への内張り状態にライニングする結果となる。その発泡剤(17)として能動的に働く上記テープ(15b)は、FRPプリプレグ(F)と金属管(10)との内外相互間隙(S1)から空気を自づと押し出すことになるため、その両者の層間剥離を生ずるおそれもなく、耐久強度に富む安定な焼きバメ状態を得られるのである。
【0047】
何れにしても、上記FRPプリプレグ(F)の完全な硬化後には、加熱炉から取り出して、常温まで冷却する。そうすれば、金属管(10)のみならず、マンドレル(M)も当初の太さまで収縮復元することになるが、既に述べた通り、マンドレル(M)の厚み(t3)は金属管(10)のそれに比し、薄くとも約3倍に設定されているため、その冷却時の復元収縮量も多く、これに対してFRPプリプレグ(F)の線膨張係数は極めて小さく、実質的に膨張・収縮しない関係上、その硬化したFRPプリプレグ(F)の内部からマンドレル(M)を支障なく円滑に抜き出すことができる。
【0048】
つまり、図示の一例として挙げた数値において、当初金属管(ステンレス鋼管)(10)とFRPプリプレグ(CFRPプリプレグ)(F)との内外相互間に存在していた0.25mmの間隙(S1)が、その熱膨張により埋め尽くされる一方、その当初マンドレル(アルミ合金管)(M)への巻き付け状態に密着していた上記FRPプリプレグ(F)が、マンドレル(M)の収縮復元によって、そのマンドレル(M)との内外相互間に間隙(S2)を発生することになるため、金属管(10)への内張りライニング状態に硬化したFRPプリプレグ(F)の内部から、マンドレル(M)を抜き出せるわけである。
【0049】
上記硬化したFRPプリプレグ(F)からマンドレル(M)を抜芯した最後には、未だ上記ブリーダーテープ(16)が付属している半成状態の金属管(10)とFRPプリプレグ(F)の両端部を、図14のように切り捨てることにより、一定な有効長さ(L)の製品:FRPライニング金属管(A)として完成させれば良い。
【0050】
尚、FRPプリプレグ(F)に含浸されている熱硬化性樹脂の溶融し得る加熱温度を受けたマンドレル(M)と金属管(10)は、何れも内外方向(放射方向と求心方向)へ膨張するが、その際FRPプリプレグ(F)と金属管(10)との内外相互間隙(S1)が予じめ0.1〜0.3mmに設定されている関係上、又マンドレル(M)の厚み(t3)は金属管(10)における厚み(t1)の約3倍以上として厚肉化されている関係上、その金属管(10)よりも多いマンドレル(M)の熱膨張量により、最終的に硬化したFRPプリプレグ(F)を金属管(10)の内周面へ、完全な張り付け状態にライニング一体化することができ、その限りでは上記熱溶融性テープ(15b)の巻き付けと、その下地となる水分(15a)の付与を省略してもさしつかえない。
【0051】
因みに、アルミ合金(A5052)の線膨張係数は約23.6×10-6/℃、ステンレス鋼(SUS304)の線膨張係数は約17.5×10-6/℃、CFRP(PAN系繊維T300〜T800、Vf:60)の線膨張係数は約0.2〜0.4×10-6/℃、GFRP(Vf:60)の線膨張係数は約7×10-6/℃である。
【0052】
次に、図15〜19は本発明の第2実施形態に係り、その図示の一例では金属管(10)として外径が55mm、内径(d1)が51mm、厚み(t1)が2mmのアルミ合金管を、マンドレル(M)として外径(d3)が45mm、内径が33mm、厚み(t3)が6mmの同じアルミ合金管を、又FRPプリプレグ(F)として外径(d2)が50.5mm、内径が45mm、厚み(t2)が2.75mmのGFRPクロスプリプレグを採用している。
【0053】
図1〜14に示した上記第1実施形態の場合、低密度ポリエチレンのフィルムから成る熱溶融性テープ(15b)とその下地の水分(15a)を、加熱により膨張する発泡剤(17)又はホットメルト接着剤として機能させている構成のため、特別な発泡剤を必要とせず、製造コストダウンに役立つ利点があるが、上記熱溶融性テープ(15b)と水分(15a)に代る特別の発泡剤(18)を採用しても勿論良い。
【0054】
この点、本発明の第2実施形態ではその発泡剤(18)として、「EXPANCEL/ エクスパンセル」(商品名)と称する熱膨張性マイクロスフェアーを採用している。これはガスバリアー性の熱可塑性樹脂製外殻に、少量の液状炭化水素を内包した平均粒径:約10〜17μm、真比重:1000〜1300kg/m2 の球状粒子であり、約100〜200℃に加熱されると、その体積が40倍以上に膨張する。
【0055】
そこで、このような発泡剤(18)の未膨張状態にある粒子を、上記FRPプリプレグ(F)と同じ熱硬化性樹脂に約10重量パーセントだけ混合・攪拌して、その攪拌した混合液を極性の強い溶剤(好ましくはメチルエチルケトン)で適度に稀釈した上、これをFRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ塗り付けておく。但し、その塗り付けはFRPプリプレグ(F)をマンドレル(M)へ巻き付けた後に行なっても良く、その巻き付け前の最外層(14)となるUDテープ材(F4)やクロス材へ、予じめ練り込んでおいてもさしつかえない。
【0056】
何れにしても、このようなFRPプリプレグ(F)が巻き付けられたマンドレル(M)を、その後第1実施形態の上記製造工程に準じて、予じめ用意された金属管(10)の内部へ差し込み貫通させ、約130℃〜150℃の温度を保つ加熱炉(図示省略)により、所要時間(例えば約3〜4時間)だけ加熱して、上記FRPプリプレグ(F)を完全に硬化させるのである。
【0057】
そうすれば、その加熱が進むに連れて、上記マンドレル(M)と金属管(10)はやはり図16の矢印で示す内外方向へ膨張するが、上記FRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ熱硬化性樹脂との混練状態に塗布されている球状粒子の発泡剤(18)も、その外殻の軟化により体積が劇的に膨張し、図19のような中空の粒子を含む膜となって、上記金属管(10)の内周面へ張り付き、当初存在していたFRPプリプレグ(F)と金属管(10)との内外相互間隙(S1)が、積極的に埋め尽くされるのであり、最終的に硬化したFRPプリプレグ(F)が図17、18のような金属管(10)への内張り状態にライニングされた製品−FRPライニング金属管(A)を得ることができる。しかも、その製品−FRPライニング管(A)に外部応力が加えられた際の耐衝撃性を、上記発泡剤(17)の張り付き膜により発揮させ得る効果もある。
【0058】
尚、図15〜19の第2実施形態におけるその他の構成は上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図15〜19に図1〜14との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略するが、上記の特別な発泡剤(18)としては熱膨張性のマイクロスフェアーのみに限らず、FRPプリプレグ(F)が硬化する過程での加熱温度により膨張し得る適当な発泡剤(18)を採用し、これをそのFRPプリプレグ(F)の熱硬化性樹脂に予じめ混練したシート材として、そのFRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ適当なプライ数だけ巻き付け積層させても良く、これによれば上記最内層(11)や第2、3中間層(12)(13)と同じ巻き付け作業に統一できる利点があり、作業上の簡素化に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態として、加熱前における金属管とマンドレルとの関係を示す半欠截断面図である。
【図2】図1の2−2線に沿う拡大断面図である。
【図3】マンドレルに対するFRPプリプレグの巻き付け工程を示す説明図である。
【図4】マンドレルに対するFRPプリプレグの巻き付け状態を示す斜面図である。
【図5】FRPプリプレグにおける巻き付け始端部と同終端部とのオーバーラップ状態を示す部分拡大断面図である。
【図6】FRPプリプレグにおける加熱後の拡張状態を示す図5に対応する部分拡大断面図である。
【図7】FRPプリプレグに対する水分の付与と熱溶融性テープの巻き付け状態を示す斜面図である。
【図8】金属管の内部に対するマンドレルの差し込み貫通状態を示す斜面図である。
【図9】ブリーダーテープの肉盛り状態を示す部分拡大正面図である。
【図10】図9の全体を示す正面図である。
【図11】加熱後のFRPプリプレグが金属管の内周面へ張り付いたライニング状態を示す半欠截断面図である。
【図12】図11の12−12線に沿う拡大断面図である。
【図13】熱溶融性テープの発泡過程を示す説明図である。
【図14】硬化したFRPプリプレグからマンドレルを抜芯した状態を示す正面図である。
【図15】本発明の第2実施形態として、加熱前における金属管とマンドレルとの関係を示す図1に対応する半欠截断面図である。
【図16】図15の16−16線に沿う拡大断面図である。
【図17】加熱後のFRPプリプレグが金属管の内周面へ張り付いたライニング状態を示す図11に対応する半欠截断面図である。
【図18】図17の18−18線に沿う拡大断面図である。
【図19】特別な発泡剤の熱膨張過程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
(10)・金属管
(11)・最内層
(12)・第2中間層
(13)・第3中間層
(14)・最外層
(15a)・水分
(15b)・熱溶融性テープ
(16)・ブリーダーテープ
(17)・発泡剤(ホットメルト接着剤)
(18)・発泡剤
(A)・FRPライニング金属管
(F)・FRPプリプレグ
(F1)(F2)(F3)(F4)・UDテープ材
(M)・マンドレル
(t1)(t2)(t3)・厚み
(S1)(S2)・間隙
(X)・オーバーラップ量
(W)・張り出し量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ合金又はステンレス鋼を素材とする金属管(10)と、その金属管(10)の薄くとも約3倍に厚肉化されたアルミ合金のマンドレル(M)とを用意して、
上記マンドレル(M)へFRPプリプレグ(F)を、その外径(d2)が上記金属管(10)の内径(d1)と0.1〜0.3mmの一定間隙(S1)を保つ積層状態に巻き付け一体化して、その金属管(10)の内部へ差し込み貫通させた上、
上記FRPプリプレグ(F)をこれに含浸された熱硬化性樹脂が硬化するまでの加熱過程において、上記金属管(10)よりも多大に熱膨張するマンドレル(M)からの内圧により、上記内外相互間隙(S1)を埋め尽す如く金属管(10)の内周面ヘ張り付け一体化させるように定めたことを特徴とするFRPライニング金属管の製造法。
【請求項2】
マンドレル(M)に巻き付け一体化したFRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ、霧吹きや湿した拭き布などによって水分(15a)を付与した後、低密度ポリエチレンのフィルムから成る熱溶融性テープ(15b)を巻き付けて、
FRPプリプレグ(F)の加熱過程において溶融した上記テープ(15b)が、その下地の水分(15a)から蒸発した気体を封じ込めた発泡剤(17)又はホットメルト接着剤と化して、上記FRPプリプレグ(F)の最外層(14)を金属管(10)の内周面へ能動的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする請求項1記載のFRPライニング金属管の製造法。
【請求項3】
マンドレル(M)に巻き付け一体化するFRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ、熱膨張性マイクロスフェアーから成る発泡剤(18)が混練された熱硬化性樹脂を塗り付けて、
FRPプリプレグ(F)の加熱過程において膨張する上記発泡剤(18)により、そのFRPプリプレグ(F)の最外層(14)を金属管(10)の内周面ヘ積極的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする請求項1記載のFRPライニング金属管の製造法。
【請求項4】
最外層(14)の熱硬化性樹脂に熱膨張性の発泡剤(18)が混練されたシート状のFRPプリプレグ(F)を、マンドレル(M)に巻き付け一体化して、
FRPプリプレグ(F)の加熱過程において膨張する上記発泡剤(18)により、そのFRPプリプレグ(F)の最外層(14)を金属管(10)の内周面ヘ積極的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする請求項1記載のFRPライニング金属管の製造法。
【請求項5】
FRPプリプレグ(F)をCFRPプリプレグ又はGFRPプリプレグとして、マンドレル(M)へ金属管(10)の長さ(L1)よりも長く巻き付け一体化することにより、その最外層(14)の両端部を金属管(10)の両端部から一定量(W)づつ張り出し露呈する状態に保ち、
その張り出し露呈する最外層(14)の両端部を残して、上記FRPプリプレグ(F)の両端木口面とマンドレル(M)の表面との境界段差部へ、引き続き延伸ポリプロピレンのブリーダーテープ(16)を肉盛り状態に巻き付けた上、
上記FRPプリプレグ(F)を約130℃〜150℃の温度により加熱し、その熱硬化性樹脂の硬化後に上記一定量(W)づつの張り出し両端部を切り捨てることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のFRPライニング金属管の製造法。
【請求項1】
アルミ合金又はステンレス鋼を素材とする金属管(10)と、その金属管(10)の薄くとも約3倍に厚肉化されたアルミ合金のマンドレル(M)とを用意して、
上記マンドレル(M)へFRPプリプレグ(F)を、その外径(d2)が上記金属管(10)の内径(d1)と0.1〜0.3mmの一定間隙(S1)を保つ積層状態に巻き付け一体化して、その金属管(10)の内部へ差し込み貫通させた上、
上記FRPプリプレグ(F)をこれに含浸された熱硬化性樹脂が硬化するまでの加熱過程において、上記金属管(10)よりも多大に熱膨張するマンドレル(M)からの内圧により、上記内外相互間隙(S1)を埋め尽す如く金属管(10)の内周面ヘ張り付け一体化させるように定めたことを特徴とするFRPライニング金属管の製造法。
【請求項2】
マンドレル(M)に巻き付け一体化したFRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ、霧吹きや湿した拭き布などによって水分(15a)を付与した後、低密度ポリエチレンのフィルムから成る熱溶融性テープ(15b)を巻き付けて、
FRPプリプレグ(F)の加熱過程において溶融した上記テープ(15b)が、その下地の水分(15a)から蒸発した気体を封じ込めた発泡剤(17)又はホットメルト接着剤と化して、上記FRPプリプレグ(F)の最外層(14)を金属管(10)の内周面へ能動的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする請求項1記載のFRPライニング金属管の製造法。
【請求項3】
マンドレル(M)に巻き付け一体化するFRPプリプレグ(F)の最外層(14)へ、熱膨張性マイクロスフェアーから成る発泡剤(18)が混練された熱硬化性樹脂を塗り付けて、
FRPプリプレグ(F)の加熱過程において膨張する上記発泡剤(18)により、そのFRPプリプレグ(F)の最外層(14)を金属管(10)の内周面ヘ積極的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする請求項1記載のFRPライニング金属管の製造法。
【請求項4】
最外層(14)の熱硬化性樹脂に熱膨張性の発泡剤(18)が混練されたシート状のFRPプリプレグ(F)を、マンドレル(M)に巻き付け一体化して、
FRPプリプレグ(F)の加熱過程において膨張する上記発泡剤(18)により、そのFRPプリプレグ(F)の最外層(14)を金属管(10)の内周面ヘ積極的に張り付け一体化させるように定めたことを特徴とする請求項1記載のFRPライニング金属管の製造法。
【請求項5】
FRPプリプレグ(F)をCFRPプリプレグ又はGFRPプリプレグとして、マンドレル(M)へ金属管(10)の長さ(L1)よりも長く巻き付け一体化することにより、その最外層(14)の両端部を金属管(10)の両端部から一定量(W)づつ張り出し露呈する状態に保ち、
その張り出し露呈する最外層(14)の両端部を残して、上記FRPプリプレグ(F)の両端木口面とマンドレル(M)の表面との境界段差部へ、引き続き延伸ポリプロピレンのブリーダーテープ(16)を肉盛り状態に巻き付けた上、
上記FRPプリプレグ(F)を約130℃〜150℃の温度により加熱し、その熱硬化性樹脂の硬化後に上記一定量(W)づつの張り出し両端部を切り捨てることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のFRPライニング金属管の製造法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−334805(P2006−334805A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159008(P2005−159008)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(300042694)有限会社ホーペック (3)
【出願人】(391061473)株式会社ハイメックス (9)
【出願人】(505202280)有限会社 スリーホープ (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(300042694)有限会社ホーペック (3)
【出願人】(391061473)株式会社ハイメックス (9)
【出願人】(505202280)有限会社 スリーホープ (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]