説明

GDNFのスプライスバリアントおよびその用途

本発明は、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質およびその遺伝子に関し、より詳細には、新規なスプライスバリアントであるプレ(γ)プロGDNFによってコードされており、生物学的制御下で分泌される、GDNFタンパク質の新規スプライスバリアントに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質およびそのcDNAに関し、より詳細には、GDNFタンパク質の新規なスプライスバリアントである(γ)プロGDNFに関する。(γ)プロGDNFは新規なmRNAスプライスバリアントであるプレ(γ)プロGDNFによってコードされており、神経活動依存的に分泌されるものである。更に本発明は、(γ)プロGDNFタンパク質、そのcDNAおよびそれらの部分の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
GDNFとは、末梢交感神経ニューロン、副交感神経ニューロン、腸管神経ニューロンおよび感覚ニューロンのみならず、中脳ドーパミンニューロンおよび運動ニューロンの発生と生存を支える神経栄養因子である。パーキンソン氏病(PD)の種々の動物モデルにおいて、GDNFはドーパミンニューロンの神経毒誘導性の死を防止し、軸索新芽形成を促進することで機能回復をもたらすことができる。2つのGDNFスプライスバリアント、即ち、プレ(α)プロGDNF(以前はGDNFαと呼ばれていた)およびプレ(β)プロGDNF(以前はGDNFβと呼ばれていた)が報告されている(Suter-Crazzolara and Unsicker, Neuroreport, 5:2486-2488 (1994))。これらのスプライスバリアントはGDNF mRNAの選択的スプライシングによって産生される。
【0003】
神経栄養因子を含む多くのタンパク質が、前駆体であるプレプロ成熟タンパク質の形で合成される。ERシグナルペプチドからなるプレ領域は、シグナルペプチチダーゼによって翻訳の際に切り落とされ、プロ成熟タンパク質は合成された直後にERのルーメン内に放出される。成熟タンパク質のタンパク質切断は細胞内または細胞外マトリクス、あるいはその両方で起こりうる。プロ成熟タンパク質は切断されずに、切断された成熟タンパク質とは異なる機能を有することもある。例えば、成熟した脳由来神経栄養因子(BDNF)およびプロBDNFの両方が神経細胞から分泌される。成熟BDNFはTrkB受容体に結合して、神経の生存、分化およびシナプス修飾を誘導するが、一方、プロBDNFはp75NTR受容体およびソルチリン受容体に結合し、アポトーシスを誘導する(詳細はThomas and Davies, Curr. Biol., 15:262-264 (2005)、Teng et al., J. Neurosci., 25:5455-5463 (2005)を参照)。
【0004】
GDNFスプライスバリアントは、アミノ末端シグナル配列(プレ領域)および成熟ドメインから切断されるプロ配列を含んでいる(Lin et al., Science, 260:1130-1132 (1993))(図1)。(β)プロGDNFのプロ領域は、(α)プロGDNFのプロ領域よりも26アミノ酸(aa)短い(Trupp et al., J. Cell Biol., 130:137-148 (1995))。これらスプライスバリアントの産生する成熟GDNFタンパク質はほぼ同一である。成熟GDNFは134アミノ酸(aa)からなり、2つの推定N−グリコシル化部位と共に、TGF−βタンパク質ファミリーの他のメンバーと相対的に同じ間隔で位置する7つの保存されたシステインを保有する(Lin et al., Science, 260:1130-1132 (1993)、Eigenbrot and Gerber, Nat. Struct. Biol., 4:435-438 (1997)、Chang et al., Endocri. Rev., 23:787-823 (2002))(図1)。生物学的に活性な成熟GDNF二量体は、単量体の対になっていないシステインの間の共有ジスルフィド結合によって形成される(Eigenbrot and Gerber, Nat. Struct. Biol. 4:435-438 (1997))。
【0005】
科学的な文章において、GDNF mRNAおよびGDNFタンパク質という名称は、全長プレ(α)プロGDNF mRNA、および(α)プロGDNFタンパク質のタンパク質切断によって産生される成熟GDNFタンパク質に対して使用されてきた。この成熟GDNFタンパク質は広範に渡り研究されており、PubMedにはGDNFを引用する文献が2500件以上存在する。GDNFは、神経突起の長さ、細胞の大きさ、およびドーパミン作動性ニューロンの数に対する増加能のみならず、培地からの高親和性ドーパミン取り込みに基づいて同定された(Lin et al., Science, 260:1130-1132 (1993))。GDNFは、PD動物モデルにおける黒質ドーパミン作動性ニューロンの毒物誘導性変性に対する防御およびPD患者の治療において強力な因子である(Airaksinen and Saarma, Nat. Rev. Neurosci. 3:383-394 (2002) および Bespalov and Saarma, Trends Pharmacol. Sci. 28:68-74 (2007)に報告有り)。更にGDNFは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、依存症、アルコール中毒症およびうつ病の動物モデルの処置において治療的役割を担っている(Bohn, Exp. Neurol., 190:263-275 (2004)、Messer et al., Neuron, 26:247-257 (2000)、He et al., J. Neurosci., 25:619-628 (2005)、Angelucci et al., Int. J. Neuropsychopharmacol., 6:225-231 (2003)に報告有り)。GDNFには神経系の外でも重要な役割がある。GDNFは腎臓の発生においてモルフォゲンとして働き、精原細胞の分化を制御する(Sariola and Saarma, J. Cell Sci. 116:3855-3862 (2003)に報告有り)。
【0006】
(α)プロGDNFタンパク質は、例えば、米国特許第6,362,319号およびヨーロッパ特許第0 610 254号に開示されており、GDNFの短縮型は米国特許第6,184,200号およびヨーロッパ特許第0 920 448号に開示されている。成熟GDNFタンパク質を使用したパーキンソン氏病治療の臨床試験が行われてきた。前臨床研究では有望な結果(Gill et al., Nat. Med., 9:589-595 (2003)、Slevin et al., J. Neurosurg., 102:401 (2005))が得られたものの、フェーズI/II試験の結果は残念なものだった。パーキンソン氏病症状の改善は統計学的に有意なものではなく、安全性に潜在的な危険があると報告された。従って、成熟GDNFタンパク質による臨床試験は完全に停止した(Lang et al., Ann. Neurol., 59:459-466 (2006))。
【0007】
プレ(β)プロGDNF mRNAスプライスバリアントの存在は、1994年にラット組織についてSuter-CrazzolaraとUnsicker(Neuroreport, 5:2486-2488)によって初めて報告され、1997年にはMatsushita et al.(Gene, 203:149-157 (1997))によってマウス組織、1998年にはGrimm et al.(Hum. Mol. Genet., 12:1873-1886 (1998))によってヒト組織について報告された。mRNA発現データに加え、Trupp et al.(J. Cell Biol., 130:137-148 (1995))は、プレ(β)プロGDNF cDNAのコードする分泌GDNFタンパク質は、E10ニワトリ傍脊椎交感神経ニューロンにおいてロバストな生存、広範にわたる神経突起の伸張および細胞体サイズの増加を促進することを示した。
【0008】
発明の概要
本願に記載した発明は、プレ(α)プロGDNFおよびプレ(β)プロGDNFと呼ばれる公知のGDNF mRNA スプライスバリアントの他に、プレ(γ)プロGDNFと命名した第3の選択的スプライスバリアントが存在することを示している(図3と4)。ヒト プレ(α)プロGDNFおよびプレ(β)プロGDNFのオープンリーディングフレーム(ORF)はエキソン2から開始するが、プレ(γ)プロGDNFスプライスバリアントはエキソン2配列の全長を欠失しており、エキソン1に選択的タンパク質翻訳開始コドンCTGを含有する(図2)。
【0009】
プレ(γ)プロGDNF mRNAのコードする(γ)プロGDNFタンパク質のプレプロ領域は全長47アミノ酸(aa)であり、(α)プロGDNFのプレプロ領域よりも30aa短い(図1)。プレ(γ)プロGDNFのプレプロ領域のC末端26aaはエキソン3にコードされているため、プレ(α)プロGDNFとプレ(β)プロGDNFの対応する領域と同一である。エキソン1のコードする、(γ)プロGDNFの始めの21aaはこのスプライスバリアントに固有である(図2)。3種のGDNFスプライスバリアントの産生する成熟GDNFタンパク質は、いずれもほぼ同一である(図1)。
【0010】
我々の結果は、(α)プロGDNF、(β)プロGDNFおよび(γ)プロGDNFがプロGDNFタンパク質としてだけでなく、プロGDNFのタンパク質切断によって発生する成熟タンパク質としても分泌されていることを示している。(α)プロGDNFおよび成熟GDNFの分泌は構成的であるが、(β)プロGDNFおよび(γ)プロGDNFの分泌は神経活動依存的である、即ち、神経刺激および神経生理学的刺激によって制御されている。このような特徴ゆえに、(α)プロGDNFとそのcDNAよりも、(β)プロGDNFおよび(γ)プロGDNFならびにそれらをコードするcDNAの方が、PDの遺伝子療法的処置におけるより有力な治療分子である。
【0011】
従って、本発明の主な対象は、配列番号2に示したアミノ酸配列を包含し、ヒト プレ(γ)プロGDNFスプライスバリアントによってコードされている、単離精製したヒト(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントである。比較として、配列番号4に示したアミノ酸配列を包含し、マウス プレ(γ)プロGDNFスプライスバリアントによってコードされている、マウス(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントも単離精製した。
【0012】
本発明の更なる対象は、アミノ末端のロイシン残基をメチオニン残基で置換した、ヒト(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントの修飾体である。修飾タンパク質のアミノ酸配列を配列番号6に示した。
【0013】
本発明の別の対象は、配列番号2の1番〜134番アミノ酸と共に、(γ)プロ配列、即ち、配列番号2のアミノ酸−47番〜−1番からなる配列の一部分であって、制御能を有するがシグナル配列を欠いた部分を包含する、ヒト プレ(γ)プロGDNFの成熟部分ポリペプチドである。
【0014】
本発明の対象は、ヒト(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントのプレプロアミノ酸配列および修飾プレプロ配列、即ち、それぞれ配列番号19および配列番号21に示したアミノ酸配列にも及ぶ。配列番号21に示したプレプロ配列の(γ)プロ部分であって、制御能を有するものも本発明に含まれる。
【0015】
ヒト(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントの短縮型ポリペプチド、即ち、成熟部分ポリペプチドのN末端の38個のアミノ酸を欠失したもの(配列番号24)、および短縮型ポリペプチドの上述したLeu−Met修飾体(配列番号26)は本発明の更なる対象である。
【0016】
また、ヒト(γ)プロGDNFスプライスバリアントのV34M変異体(配列番号27)、およびそのLeu−Met修飾体(配列番号29)も本発明の対象に含まれる。
【0017】
本発明の更なる態様は、単離精製され且つV38M変異を有する、ヒト グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質スプライスバリアント(プレ(β)プロGDNF)、および成熟部分ポリペプチドのN末端から38個のアミノ酸を欠失した該プレ(β)プロGDNFの短縮型である。これらタンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号31と配列番号35に示した。更に、プレ(β)プロGDNFスプライスバリアントおよびそれをコードするポリヌクレオチド(配列番号51に示した)の、神経障害または神経変性疾患の治療、特に遺伝子療法における用途も本発明の一態様である。
【0018】
本発明は更に、単離精製され且つV64M変異を有する、ヒト グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質スプライスバリアント(プレ(α)プロGDNF)を企図する。そのアミノ酸配列を配列番号33に示した。
【0019】
本発明の更なる対象は、上述した形態のGDNFタンパク質スプライスバリアントをコードする、単離したポリヌクレオチドである。
【0020】
(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントに特異的に結合する抗体も本発明の更に別の対象である。(α)プロGDNFタンパク質スプライスバリアント、(β)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントおよび/または(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントのプロ部分に特異的に結合する抗体も提供する。更に、プレ(α)プロGDNFタンパク質スプライスバリアント、プレ(β)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントまたはプレ(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントのプレプロ領域に特異的に結合する抗体も企図する。
【0021】
本発明の好ましい1つの態様においては、組み換え型のヒト プレ(γ)プロGDNFスプライスバリアントがコードするタンパク質を提供する。
【0022】
プレ(γ)プロGDNF分子およびそれをコードする配列の相同体が他の哺乳動物から取得可能であることを認識されたい。一例として、配列番号4に示したアミノ酸配列を包含するマウス(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントを提供する。
【0023】
発明の詳細な説明

略語
aa アミノ酸
ALS 筋萎縮性側索硬化症
AtT−20細胞系 マウス脳下垂体腫瘍細胞系
BDNF 脳由来神経栄養因子
BHK−21 ベビーハムスター腎細胞系
bp 塩基対
BSA ウシ血清アルブミン
CDR 相補性決定領域
CHO細胞系 チャイニーズハムスター卵巣細胞系
COS−7 SV40形質転換サル腎細胞系
DMEM ダルベッコ変法イーグル培地
ELISA 酵素免疫吸着アッセイ
ER 小胞体
FCA フロイント完全アジュバント
FCS ウシ胎仔血清
FIA フロイント不完全アジュバント
GDNF グリア細胞系由来神経栄養因子
GFP 緑蛍光タンパク質
HC 海馬
HEK−293細胞系 ヒト胚性腎細胞系
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
HS ウマ血清
KLH スカシ貝ヘモシアニン
LTR 長い末端反復配列
MALDI TOF−MS マトリックス支援レーザー脱離イオン化
飛行時間型質量分析計
MPL−TDM モノホスホリル脂質A合成−トレハロース
ジコリノミコレート
NGF 神経成長因子
nt ヌクレオチド
ORF オープンリーディングフレーム
PBS リン酸緩衝食塩水
PC−6.3細胞系 ラット褐色細胞腫由来細胞系PC12クローン
PD パーキンソン氏病
PFA パラホルムアルデヒド
RT 室温
RT−PCR 逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応
SD 標準偏差
TMB 3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン
TGF−β トランスフォーミング増殖因子β
UTR領域 非翻訳領域
【0024】
プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFと呼ばれるGDNF mRNAスプライスバリアントをコードする3種のcDNAを、マウス腎組織と脳組織、ならびにヒトの脳組織、腎組織と子宮組織からRT−PCR解析を用いて同定した。これらcDNA分子を更に特徴付けるために、導入および発現用ベクターにこれらをクローニングし、シーケンシングした。
【0025】
3種のGDNFスプライスバリアントmRNAの違いは、GDNFタンパク質のプレプロ領域をコードするエキソン1と2にあり、プロ領域の最後の26aaをコードするエキソン3のORFおよび成熟GDNFは全3種のGDNFスプライスバリアントで同一だった。プレ(β)プロGDNF mRNAは、プレ(α)プロGDNFのそれと比べてエキソン2の3’末端の78bpを欠失している(Grimm et al., Hum. Mol. Genet., 7:1873-1886 (1998))。プレ(γ)プロGDNF mRNAは、エキソン2の全長を欠失しており、プレ(α)プロGDNFおよびプレ(β)プロGDNFと比べて、エキソン1の3’末端に61bpの特徴的な配列を含んでいる。
【0026】
ヒトおよびマウスの(β)プロGDNFおよび(γ)プロGDNFが分泌されるか否かを調べるために、それぞれのGDNFスプライスバリアントをコードするcDNAを用いた一過性のトランスフェクションおよびウエスタンブロット解析によって、これらの発現と分泌を種々の細胞系で検討した。その結果、ヒトとマウスの両方の(β)プロGDNFおよびそれらの成熟GDNFがCHO細胞系、HEK−293細胞系、PC−6.3細胞系およびAtT−20細胞系で分泌されることが判明した。更に、マウス(γ)プロGDNFおよびその成熟GDNFはCHO細胞系、PC−6.3細胞系およびBHK−21細胞系でも分泌され、CTG翻訳開始コドンがATG開始コドンで置換されているヒト(γ)プロGDNFおよびその成熟GDNFはBHK−21細胞系で分泌された。
【0027】
マウスおよびヒトの(α)プロGDNFおよび(β)プロGDNFの分泌が構成的なのか、神経活動で刺激されるのか(即ち、活動依存的なのか)を調べるために、脱分極化していない分化PC−6.3細胞および脱分極化した分化PC−6.3細胞におけるそれらの発現と分泌を一過性のGDNF cDNAトランスフェクション、ウエスタンブロット解析およびELISA解析を用いて検討し、ラットHC初代培養細胞におけるそれらの発現と分泌を一過性のトランスフェクションおよびELISA解析を用いて検討した。結果は、(α)プロGDNFは構成的に分泌されているが、(β)プロGDNFの分泌は活動依存性であり、(β)プロGDNFプロ領域の26bpの欠失は活動依存性分泌に必須であることを示した。(γ)プロGDNFもプロ領域の同じ26bpを欠失しており、この分泌もまた活動依存性であることが示唆されている。
【0028】
用語の定義
特に断りがない限り、全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者が一般的に理解する意味と同じである。以下の定義は明確性を増すために記載した。
【0029】
「単離した」ものが分子である場合、この「単離した」という用語は、ある分子が本来存在する自然環境中の成分から同定され、分離および/または回収されたものであり、したがって、「人の手によって」天然の状態から改変されたものであることを意味する。例えば、単離したポリヌクレオチドは、ベクターや物質組成物の一部であってもよいし、また、細胞に含まれるものでもよく、ベクター、物質組成物、または特定の細胞はポリヌクレオチドが本来存在した環境ではないため、そのような場合も「単離した」ということができる。「単離した」という用語は、本発明のポリヌクレオチド配列の特性を示さないことが技術的にわかっているゲノムライブラリーやcDNAライブラリー、全細胞から得た全RNAまたはmRNA製品、ゲノムDNA製品、流れ負荷全細胞ゲノムDNA製品やその他の組成物を指すことはない。
【0030】
「核酸分子」には、DNA分子(例えば、cDNAやゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチド類似体を使用して作製したDNAやRNAの類似体、および誘導体、断片およびホモログが含まれる。核酸分子は一本鎖でも二本鎖でもよいが、二本鎖DNAを含むものが好ましい。
【0031】
「単離した核酸分子」は、核酸の天然原料に存在する他の核酸分子から分離したものである。単離した核酸は、核酸を誘導した生物のゲノムDNAにおいて、天然では核酸に隣接している配列(即ち、核酸の5’末端と3’末端に位置する配列)を含んでいないことが好ましい。更に、cDNA分子などの単離した核酸分子を組み換え技術で製造した場合には、他の細胞成分や培養液を実質的に含有しないことが可能であり、また化学合成した場合には、化学的前駆体や他の薬品を実質的に含有しないことも可能である。
【0032】
「コードする」とは、遺伝子、cDNAやmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列が、生物学的機構によって他のポリマーやマクロ分子の合成の際にテンプレートとして働くという固有の性質であり、他のポリマーやマクロ分子とは、定義されたヌクレオチド配列を有するもの(即ち、rRNA、tRNAとmRNA)、または定義されたアミノ酸配列及びそれに起因する生物学的特性を有するものである。従って、遺伝子は、遺伝子に対応するmRNAの転写と翻訳によって細胞または他の生物系の中でタンパク質が製造される場合には、タンパク質をコードしている。mRNA配列と同一であり、通常は配列表で提供されるヌクレオチド配列であるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のためのテンプレートとして用いられる非コード鎖は、共にタンパク質あるいはその遺伝子またはcDNAの他の産物をコードしていると言える。
【0033】
特に記載しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、一群の縮重配列であって、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質とRNAをコードするヌクレオチド配列にはイントロンが含まれてもよい。
【0034】
遺伝子の「コード領域」は、遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基と遺伝子の非コード鎖のヌクレオチド残基とからなり、それぞれのヌクレオチド残基は、遺伝子の転写によって製造されるmRNA分子のコード鎖と相同または相補的である。
【0035】
「ゲノムDNA」は、遺伝子と相同なヌクレオチド配列を有するDNA鎖である。従ってゲノムDNAは、細胞または生物に含まれるゲノムの完全な相補鎖である。
【0036】
「オリゴヌクレオチド」は一連の連結したヌクレオチド残基を含むものであり、このようなオリゴヌクレオチドは、PCR反応や他の応用法に使用するのに十分な数のヌクレオチド塩基を有している。短いオリゴヌクレオチド配列をゲノム配列やcDNA配列に基づいて作製するか、そこから設計し、オリゴヌクレオチドと同一、類似または相補的なDNAまたはRNAを特定の細胞または組織について増幅、確認または存在を明らかにするために使用する。オリゴヌクレオチドは核酸の一部を含むものである。
【0037】
「変異体(variant)」とは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるが、その本質的な特性を維持するポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。一般的に変異体は、全体的に非常に類似しており、多くの領域において、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと同一である。
【0038】
「スプライスバリアント」とは、1つの遺伝子から転写される複数の異なる成熟mRNA分子である。スプライシングの過程を選択的スプライシングと呼び、これは真核細胞で起こりうる現象である。1つの遺伝子から転写翻訳された種々の異なるスプライスバリアントタンパク質の機能は顕著に異なる場合がある。
【0039】
「ストリンジェンシー」ホモログ(即ち、ヒト以外の生物種から誘導したプレ(γ)プロGDNFスプライスバリアント分子をコードする核酸)または他の関連配列(例えば、パラログ)は、当業界で周知の核酸ハイブリダイゼーションおよびクローニングの方法を用いて、特定のヒト配列の全部又は一部をプローブとした、低度、中度または高度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーションで得ることができる。
【0040】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅技術は、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをテンプレートとし、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いることによって、プレ(γ)プロGDNFスプライスバリアントを増幅することができる。こうして得た核酸を適当なベクターにクローニングし、DNA配列解析によって特徴付けることができる。更にプレ(γ)プロGDNF配列に対応するオリゴヌクレオチドは、標準的な合成方法、例えば自動DNA合成装置によって製造することもできる。
【0041】
「プライマー」とは、指定したポリヌクレオチドテンプレートに特異的にハイブリダイズすることができ、相補的なポリヌクレオチドの合成開始点を提供することのできるポリヌクレオチドである。このような合成は、合成を誘導する条件下、即ち、ヌクレオチド、相補的なポリヌクレオチドテンプレート、そしてDNAポリメラーゼなどの合成用試薬の存在下にポリヌクレオチドプライマーが置かれた時に生じる。典型的なプライマーは一本鎖であるが、二本鎖でもよい。
【0042】
典型的なプライマーはデオキシリボ核酸であるが、種々の用途において、広範にわたる合成および天然のプライマーが有用である。テンプレートにハイブリダイズして合成開始点として機能するように設計されたプライマーはテンプレートと相補的であるが、テンプレートの配列を完全に反映する必要はない。このような場合、プライマーのテンプレートへの特異的なハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プライマーは、例えば発色性、放射性または蛍光性の成分で標識し、検出可能な成分として使用することができる。
【0043】
本願で使用する「ベクター」という用語は、外因性の核酸をコードする全てのプラスミドやウイルスを意味する。この用語には、ウイルス粒子や細胞への核酸の移送を助ける非プラスミド性や非ウイルス性の化合物、例えば、ポリリシン化合物なども含まれると理解されたい。ベクターは、所望のタンパク質またはその変異体(mutant)をコードする核酸を細胞に送達するための送達用ベヒクルとして適切なウイルスベクターでもよいし、同じ目的に適した非ウイルスベクターでもよい。DNAを細胞や組織に送達するためのウイルスベクターおよび非ウイルスベクターの具体例は当業界でよく知られており、例えば、Ma et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 12744-12746 (1997))に記載されている。ウイルスベクターの例としては、組み換えワクシニアウイルス、組み換えアデノウイルス、組み換えレトロウイルス、組み換えアデノ随伴ウイルス、組み換えトリポックスウイルス、組み換えバキュロウイルス、組み換えパピローマウイルス、組み換えレンチウイルスなど(Cranage et al., EMBO J. 5.3057-3063 (1986)、PCT出願公報 W094/17810、PCT出願公報 W094/23744)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。非ウイルスベクターの例としては、細菌、真菌、哺乳類、昆虫、植物または酵母に由来のベクター、リポソーム、DNAのポリアミン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
「プローブ」とは、種々の長さの核酸配列、好ましくはその特定の用途に応じて少なくとも約10ヌクレオチド(nt)、100nt、またはそれ以上(例えば、6000nt)のものである。プローブは、同一、類似または相補的な核酸配列を検出するためのものである。より長いプローブは、天然原料または組み換え原料から得ることができ、特異性が高く、短いオリゴマープローブよりもハイブリダイズするのに時間がかかる。プローブは一本鎖でも二本鎖でもよく、PCR、膜によるハイブリダイゼーション技術、またはELISA様の技術において特異性を示すように設計することができる。プローブは、生物試料中の核酸分子にもハイブリダイズするので、染色体地図の作成、連鎖解析、組織の同定および/またはタイピング、ならびに種々の法医学的および診断的な本発明の方法に直ちに応用することができる。
【0045】
「ホモログ」とは、他の生物種から誘導した特定遺伝子の核酸配列またはアミノ酸配列である。
【0046】
「パーセント(%)核酸配列同一性」とは、複数の配列のアライメントを行い、必要であれば、最大の配列同一性を達成するためのギャップを導入した後の候補配列に含まれる、特定タンパク質と同一であるヌクレオチドのパーセントである。
【0047】
ORFとは、開始コドン(ATGまたはCTG)を有し、3つの「終止」コドン(TAA、TAGまたはTGA)のいずれか1つで終止するヌクレオチド配列である。
【0048】
「抗体」という用語は最も広義で使用しており、特にモノクローナル抗体、多価特異性を有する抗体組成物、二重特異性抗体、ダイアボディおよび一本鎖分子のみならず、所望の生物活性を有する限り、抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)とFv)もこの定義に含まれる。更に、上述した抗体およびその誘導体をコードするDNA断片やcDNAも含まれる。
【0049】
本願で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、一群の実質的に相同な抗体から得られた抗体である、即ち、一群に含まれる個別の抗体は、微量しか存在しない天然で発生しうる変異を除けば、全て同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。更に、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を含む通常の(ポリクローナル)抗体製品と比べて、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原に存在する単一の決定基に対するものである。その特異性に加えモノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンに汚染されていない培養ハイブリドーマで合成される点が有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の一群から得られたものという抗体の性質を表しており、特定の方法で抗体を製造することが必要であると理解してはいけない。例えば、本発明で使用するモノクローナル抗体は、初めてKohler et al., Nature, 256: 495 (1975)に発表されたハイブリドーマ法、あるいは組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号(Cabilly et al.)を参照)で製造することができる。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)とMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991) に記載の技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0050】
本願におけるモノクローナル抗体には、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)のみならず、所望の生物活性を有する限り、その断片も含まれる。キメラ抗体とは、その重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の生物種から誘導した抗体の対応する配列と同一または相同であるか、あるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属するが、鎖の残りは、別の生物種から誘導した抗体の対応する配列と同一または相同であるか、あるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属するものである(Cabilly et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:3273-3277 (1984)、Cabilly et al., Gene, 40:157-161 (1985); Cabilly et al., Gene, 85:553-557 (1989)、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。
【0051】
本発明の抗体は更にポリクローナル抗体も包含する。ポリクローナル抗体の製造方法は当業者には公知である。ポリクローナル抗体は哺乳動物で製造することができる。例えば、免疫剤を、所望によりアジュバントと共に種々の動物(ウサギ、マウス、ラットなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない)に投与することで、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含有する血清の産生を誘導する。概して、免疫剤および/またはアジュバントは、哺乳動物に対して複数回の皮下注射または腹腔内注射によって投与される。免疫剤としては、プレプロGDNFポリペプチド、その適当な画分またはその融合タンパク質が挙げられる。免疫を受ける哺乳動物において免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫剤を結合することが有用である。このような免疫原性のタンパク質としては、スカシ貝ヘモシアニン、血清アルブミン、ウシ サイログロブリンおよび大豆トリプシン阻害因子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明で使用可能なアジュバントの例としては、フロイントの完全アジュバントおよびMPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫化のプロトコルは、過度な実験なしに当業者が選択することができる。その後、哺乳動物から採血し、血清のプレプロGDNF力価を計測する。所望により、抗体力価が上昇するまで哺乳動物に追加免疫を与えてもよい。
【0052】
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または非ヒト免疫グロブリンから誘導した最小配列を含むその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)や、抗体の他の抗原結合性サブ配列)である。大部分のヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)の相補性決定部位(CDR)内の残基を、所望の特異性、親和性と結合容量(capacity)を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト動物種の抗体(ドナー抗体)の残基で置換したものである。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基を、対応する非ヒト残基で置換する。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入したCDRやフレームワーク配列にも存在しない残基を含んでいてもよい。このような修飾は、抗体の性能を更に改良し、最適化するために行われる。通常、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つ存在する可変ドメインの実質的に全てを含んでおり、可変ドメインにおいては、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列である。最適なヒト化抗体は、更に免疫グロブリン、典型的にはヒト免疫グロブリン、の定常領域(Fc)の少なくとも一部も含んでいる。詳細については、Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986)、Reichmann et al., Nature, 332:323-329 (1988)、とPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)を参照。ヒト化抗体には、霊長類化抗体も含まれ、このような抗体の抗原結合領域は、マカクザルを目的の抗原で免疫して製造した抗体から誘導したものである。
【0053】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)とは、生きた生物を使用せずに酵素学的にDNAを複製するための技術である。この技術は、温度媒介性反応酵素であるDNAポリメラーゼを用いて、少量のDNAを指数関数的に増幅することを可能にする。
【0054】
逆転写−PCR(RT−PCR)とは、特定のリボ核酸(RNA)分子を増幅するための技術である。RNA鎖を始めに相補的DNA(cDNA)に逆転写し、次にPCRで増幅する。
【0055】
DNAシーケンシングとは、与えられたDNA断片の配列と呼ばれるヌクレオチドの順番を決定するための方法である。
【0056】
発現ベクターとは、標的細胞に特定DNA配列を導入し、発現させるための環状DNA分子である。発現プラスミドの構築とは、例えば、所望の遺伝子のORFを含有する特定のDNA断片を発現ベクターにクローニングする操作である。
【0057】
トランスフェクションとは、外来DNAを細胞に導入することを意味する、トランスフェクションには、発現プラスミドの進入を可能にする一過性の穴を細胞に設けることも含まれる。一度、発現プラスミドが細胞に進入すると、このDNA配列にコードされているタンパク質が細胞の転写および翻訳機構によって産生される。プラスミドDNAは細胞ゲノムには取り込まれず、発現は一過性である。
【0058】
細胞培養とは、細胞系または組織から単離した初代細胞を制御した条件下で培養することである。細胞は、細胞培養器内の適当な温度と混合気体の存在下で、培地の中で増殖および維持される。
【0059】
ウエスタンブロット解析とは、与えられたサンプル内のタンパク質を検出する方法である。質量によって変性タンパク質を分離するためにゲル電気泳動を使用する。分離後にはタンパク質をメンブランに移し、タンパク質を認識する抗体を用いてそこで検出する。
【0060】
酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)とは、2種の抗体を用いてサンプル中の抗体または抗原の存在を検出するための技術である。第1の抗体は抗原特異的であり、もう一方は抗原−抗体複合体と反応するもので、酵素にカップリングしている。この第2の抗体は、発色性基質、放射性基質または蛍光発生基質によるシグナルの発生をもたらすものでもよい。
【0061】
免疫蛍光解析においては、特定のタンパク質エピトープの検出に一次抗体を使用する。この一次抗体を、酵素、放射性標識または発蛍光団を用いて標識された二次抗体で検出する。免疫蛍光標識した細胞や組織サンプルは、蛍光顕微鏡または共焦点顕微鏡で解析する。
【0062】
本発明は、GDNF遺伝子の新規なスプライスバリアントであるプレ(γ)プロGDNFの発見に基づくものである。本願の実施例は、プレ(γ)プロGDNF mRNAがヒト脳で発現されており(図4)、このスプライスバリアントのコードするタンパク質の分泌は、生物学的および生理学的に厳格な制御下にあることを示しており、これらはパーキンソン氏病、ALS、依存症、アルコール中毒症、虚血症、癲癇およびうつ病の治療において、(γ)プロGDNFタンパク質が(α)プロGDNFよりも強力な治療用分子であることを指し示している。更に、プレ(γ)プロGDNF mRNAの発現を肺と子宮で特徴付けた(データは示さない)。
【0063】
治療
プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFには、GDNF活性に関連した疾患または異常、あるいはGDNF応答性が有利に働く疾患または異常の治療のためのin vivoの遺伝子治療となる哺乳動物、特にヒトへの投与において有用である。特に好ましいのは神経障害、更に好ましくは中枢神経異常、パーキンソン氏病、アルツハイマー病、ALS、脊髄損傷、依存症、およびアルコール中毒症である。
【0064】
タンパク質の発現または活性の調節を達成するための遺伝子操作も特に本発明が企図する手法である。目的のトランスジーンを動物内に導入する時は、適切であればいかなるベクターを用いてもよい。公知文献に開示されたベクターの例としては、例えばレンチウイルスベクター(ただしこれに限定されない)などの非増殖性レトロウイルスベクター(Kim et al., J. Virol., 72(1): 811-816 (1998); Kingsman and Johnson, Scrip Magazine, October, 1998, pp. 43-46.)、アデノウイルスベクター(例えば、米国特許第5,824,544号、米国特許第5,707,618号、米国特許第5,792,453号、米国特許第5,693,509号、米国特許第5,670,488号、米国特許第5,585,362号、Quantin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 2581-2584 (1992)、Stratford-Perricadet et al., J. Clin. Invest., 90: 626-630 (1992)およびRosenfeld et al., Cell, 68: 143-155 (1992)を参照)、レトロウイルスベクター(例えば、米国特許第5,888,502号、米国特許第5,830,725号、米国特許第5,770,414号、米国特許第5,686,278号、米国特許第4,861,719号を参照)、アデノ随伴ウイルスベクター(例えば、米国特許第5,474,935号、米国特許第5,139,941号、米国特許第5,622,856号、米国特許第5,658,776号、米国特許第5,773,289号、米国特許第5,789,390号、米国特許第5,834,441号、米国特許第5,863,541号、米国特許第5,851,521号、米国特許第5,252,479号およびGnatenko et al., J. Investig. Med., 45: 87-98 (1997)を参照)、アデノウイルスとアデノ随伴ウイルスとのハイブリッドベクター(例えば、米国特許第5,856,152号を参照)またはワクシニアウイルスベクターまたはヘルペスウイルスベクター(例えば、米国特許第5,879,934号、米国特許第5,849,571号、米国特許第5,830,727号、米国特許第5,661,033号および米国特許第5,328,688号を参照)、リポフェクチン仲介遺伝子導入系(BRL製)、リポソームベクター(例えば、米国特許第5,631,237号“Liposomes comprising Sendai virus proteins (センダイウイルスタンパク質を包含するリポソーム)”)、in vivoにおいて遺伝子発現を制御可能なウイルスベクター、およびこれらの組み合わせである。なお上記文献の記載は全て本明細書に組み込まれているものとする。また、好ましい態様においては、非増殖性アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよびレンチウイルスを用いる。
【0065】
半透性の、移植可能な膜状装置は、特定の環境において薬物を送達するのに有用な手段である。例えば、可溶性の(β)プロGDNFまたは(γ)プロGDNF、あるいはキメラを分泌する細胞を上記の装置に封入し、患者、例えば、パーキンソン氏病を患う患者の脳に移植することができる。米国特許第4,892,538号(Aebischer et al.)、米国特許第5,011,472号(Aebischer et al.)、米国特許第5,106,627号(Aebischer et al.)、PCT出願WO 91/10425、PCT出願WO 91/10470、Winn et al., Exper. Neurology, 113:322-329 (1991)、Aebischer et al., Exper. Neurology, 111:269-275 (1991)、および Tresco et al., ASAIO, 38:17-23 (1992)を参照されたい。
【0066】
したがって、本発明は、神経の損傷またはその他の(β)プロGDNFまたは(γ)プロGDNF反応性細胞の損傷を予防または治療する方法であって、(β)プロGDNFまたは(γ)プロGDNFを分泌する細胞を、治療を必要とする患者の体内へ移植することを包含する方法に関する。また、本発明は、本願に記載した神経の損傷または他の細胞の損傷を予防または治療するために移植する装置であって、半透膜とそこに封入された(β)プロGDNFまたは(γ)プロGDNFを分泌する細胞とを包含し、該半透膜は(β)プロGDNFまたは(γ)プロGDNFに対して透過性であるが、細胞にとって有害な患者由来の因子に対しては不透性である装置に関する。(β)プロGDNFまたは(γ)プロGDNFを製造するようにex vivoで形質転換した患者自身の細胞は、所望により、上記のようなカプセル封入を行うことなく、患者に直接移植することができる。生細胞の膜封入の方法は当業者にはよく知られたものであり、封入細胞の調製と封入細胞の患者への移植は過度な実験を行わずとも実施可能である。
【0067】
したがって、本発明には、神経の損傷を予防または治療する方法であって、(β)プロGDNFまたは(γ)プロGDNFを産生する能力を天然に有する細胞、または生物工学的に分泌するようにした細胞を、治療を必要とする患者の体内に移植することを包含する方法が含まれる。患者がヒトの場合、分泌された(β)プロGDNFまたは(γ)プロGDNFは、可溶性のヒト(β)プロGDNFまたは(γ)プロGDNFであることが好ましい。移植物は、非免疫原性であるか、免疫原性の移植細胞が免疫系により認識されるのを防ぐものであるか、またはこの両方であることが好ましい。CNSに送達するのに好ましい移植部位は線条体である。
【0068】
ウイルスベクターを用いる態様において好ましいポリヌクレオチドは、目的の標的組織における発現を促進する適切なプロモーターとポリアデニル化配列を含んでいる。本発明において哺乳動物細胞による発現に適したプロモーター/エンハンサーとしては、例えば、サイトメガロウイルスのプロモーター/エンハンサー(Lehner et al., J. Clin. Microbiol., 29:2494-2502 (1991) および Boshart et al., Cell, 41:521-530 (1985));ラウス肉腫ウイルスのプロモーター(Davis et al., Hum. Gene Ther., 4:151 (1993));シミアンウイルス40のプロモーター、レトロウイルスの長い末端反復配列(LTR)、ケラチン14のプロモーターおよびαミオシンH鎖プロモーターが挙げられる。
【0069】
遺伝子治療用途においては、例えば欠損遺伝子の代わりに、治療に有効な遺伝子産物のin vivo合成を行うために遺伝子を細胞内に導入する。「遺伝子治療」には、単一の治療によって永続効果が得られる従来の遺伝子治療と、治療に有効なDNAまたはmRNAを1回または繰り返して投与することを含む遺伝子治療剤の投与との両方がある。アンチセンスRNAとアンチセンスDNAはin vivoにおいて特定の遺伝子の発現を阻害するための治療物質として用いることができる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞膜による取り込みが限定されるためその細胞内濃度が低いにも関らず、細胞内に導入されて阻害剤として働くことが明かになっている(Zamecnik et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:41434146 (1986))。オリゴヌクレオチドは、例えば、負の電位を帯びたリン酸ジエステル基を、電位を帯びていない基で置換するといった修飾によって、取り込み量を高めることができる。
【0070】
生細胞に核酸を導入する際に利用可能な方法はいろいろある。使用する方法は、核酸をin vitroの培養細胞に導入するか、あるいは目的宿主内の細胞にex vivoまたはin vivoで導入するかによって異なる。In vitroでの哺乳動物細胞への核酸導入に適した方法としては、リポソームを利用する方法(Nicolau and Sene, Biochim. Biophys. Acta, 721:185-190 (1982)、Fraley, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3348-3352 (1979)、Felgner, Sci. Am., 276(6):102-6 (1997) および Felgner, Hum. Gene Ther., 7(15):1791-3, (1996))、エレクトロポレーション法(Tur-Kaspa, et al., Mol. Cell Biol., 6:716-718, (1986) および Potter, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81:7161-7165, (1984))、直接マイクロインジェクション法(Harland and Weintraub, J. Cell Biol., 101:1094-1099 (1985))、細胞融合、DEAE−デキストラン法(Gopal, Mol. Cell Biol., 5:1188-1190 (1985))、リン酸カルシウム沈殿法(Graham and Van Der Eb, Virology, 52:456-467 (1973)、Chen and Okayama, Mol. Cell Biol., 7:2745-2752, (1987) および Rippe, et al., Mol. Cell Biol., 10:689-695 (1990))、細胞の超音波処理法(Fechheimer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:8463-8467 (1987))、高速マイクロプロジェクタイルを用いた遺伝子ボンバードメント法(gene bombardment using high velocity microprojectiles)(Yang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:9568-9572 (1990))などが挙げられる。現在、in vivo遺伝子導入法として好ましい方法としては、ウイルス(概してレトロウイルス)ベクターによるトランスフェクションおよびウイルスコートタンパク質−リポソームを介したトランスフェクション(Dzau et al., Trends in Biotechnology, 11:205-210 (1993))などが挙げられる。状況によっては、標的細胞の細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体、あるいは標的細胞に提示された受容体に対するリガンドなどの標的細胞をターゲティングする物質を、核酸材料と共に用いることが望ましい。リポソームを用いる場合、エンドサイトーシスに関与する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質をターゲティングおよび/または取り込みの促進に用いてもよく、そのようなタンパク質としては、特定の細胞種に対して屈性を示すキャプシッドタンパク質やその断片、サイクリングの際に内在化するタンパク質に対する抗体、および細胞内局在化をターゲットとして細胞内半減期を延ばすタンパク質などが挙げられる。なお、受容体を介したエンドサイトーシスに関する技術については、例えば、Wu et al., J. Biol. Chem., 262: 4429-4432 (1987) および Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:3410-3414 (1990)に開示されている。現在までに公知の遺伝子標識および遺伝子治療のプロトコルに関する文献としては、Anderson et al., Science, 256:808-813 (1992)を参照されたい。
【0071】
本発明の具体的な態様においては、発現構築物は、リポソームに封入されていてもよい。リポソームは、リン脂質二重膜および内部の水性媒体を特徴とする小胞状の構造体である。多重層リポソームは、水性媒体で隔てられた複数の脂質層を有する。このようなリポソームは、リン脂質を過剰量の水溶液に懸濁すると自然に形成される。脂質成分は、自己再配列を経て閉鎖構造を形成し、脂質二重層の間に水とそれに溶解した溶質を封入する(Ghosh and Bachhawat,“In Liver Diseases, Targeted Diagnosis And Therapy Using Specific Receptors And Ligands (肝臓病における、特異的な受容体とリガンドを用いる標的診断および治療法)”, Wu, G., Wu, C., ed., New York: Marcel Dekker、pp. 87-104 (1991))。陽イオンリポソームにDNAを添加すると、位相変化(topological transition)が生じて、リポソームは光学的に複屈折性を示す液晶性凝縮小球となる(Radler, et al., Science, 275:810-814 (1997))。このようなDNA−脂質複合体は、遺伝子治療や遺伝子送達に用いる非ウイルスベクターとなる可能性がある。
【0072】
また本発明においては、「リポフェクション」法を含む様々な市販のアプローチも考えられる。本発明のある態様においては、リポソームは赤血球凝集性のウイルス(HVJ)と複合体を形成していてもよい。これにより、細胞膜との融合が容易になり、リポソームに封入されたDNAが細胞へ入り込むのを促進することが報告されている(Kaneda, et al., Science, 243: 375-378 (1989))。他の態様においては、リポソームは、細胞核の非ヒストン染色体タンパク質(HMG−1)(Kato, et al., J. Biol. Chem., 266:3361-3364 (1991))との複合体として、またはHMG−1と共に使用してもよい。更に他の態様においては、リポソームは、HVJおよびHMG−1の両方との複合体を形成するか、または3種を共に使用してもよい。In vitroおよびin vivoにおいて核酸の導入と発現に有効に用いることができる発現構築物は、本発明に適用可能である。
【0073】
治療用遺伝子をコードする核酸を細胞内に送達するのに用いることができる他のベクター送達システムとしては、受容体仲介送達ベヒクルが挙げられる。このようなシステムは、ほぼ全ての真核細胞に見られる受容体仲介エンドサイトーシスによる巨大分子の選択的な取り込みを利用する。種々の受容体は細胞種特異的に分布するため、このようなシステムを用いた送達は高い特異性を示す(Wu and Wu, Adv. Drug Del. Rev., 12:159-167 (1993))。
【0074】
本発明の他の1つの態様においては、発現構築物は、単に裸の組み換えDNAまたはプラスミドからなるものでもよい。構築物の導入は、物理的または化学的に細胞膜を透過させる上記のいずれの方法によって行ってもよい。これはin vitroでの導入に特に適するが、in vivoでの使用に適用してもよい。Dubensky, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81:7529-7533 (1984)には、ポリオーマウイルスのDNAをリン酸カルシウム(CaPO4)沈殿物の形態で成体マウスおよび新生マウスの肝臓と脾臓に注射して、能動的なウイルス複製および急性感染に成功したことが報告されている。Benvenisty and Neshif, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 83:9551-9555 (1986)にも、リン酸カルシウム(CaPO4)沈殿したプラスミドの腹腔内直接投与がトランスフェクトした遺伝子の発現をもたらすことが報告されている。
【0075】
裸のDNA発現構造物を細胞に導入するための本発明の他の1つの態様では、粒子衝突法が使用できる。この方法は、DNAで被覆したマイクロプロジェクタイルが細胞膜を貫通し、細胞を殺すことなく細胞内に侵入するほどの高速に加速する技術によるものである(Klein, et al., Nature, 327:70-73 (1987))。小さい粒子を加速するための装置がいくつか開発されている。そのような装置の1つは、高圧放電を用いて電流を発生させ、その結果として原動力を提供する技術に基づくものである(Yang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 87:9568-9572 (1990))。使用するマイクロプロジェクタイルは、タングステンや金のビーズのような、生物学的に不活性な物質からなる。
【0076】
当業者は、in vivoex vivoの状況下で、どのように遺伝子送達を適用するかを認識している。ウイルスベクターに関しては、通常、ウイルスベクターの原液を調製する。ウイルスの種類と達成可能な力価により、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011または1×1012の感染性粒子を患者に送達する。リポソームまたはその他の非ウイルス性の処方物(formulation)についても、相対的な取り込み効率を比較することにより、同様の数値が外挿できる。薬学的に許容される組成物となる処方物については後述する。
【0077】
様々な細胞種に対する様々な投与方法が考えられる。実用的には、いかなる細胞、組織または器官の種類に関しても、全身送達(systemic delivery)が考えられる。他の態様においては、種々の直接的、局所的そして部分的なアプローチを用いることができる。例えば、細胞、組織または器官に発現ベクターまたはタンパク質を直接注射することができる。
【0078】
また、別の態様においては、ex vivoの遺伝子治療が考えられる。Ex vivoの態様においては、細胞を患者から取り出し、少なくともある程度の期間にわたり、体外で維持する。この期間中に、取り出した細胞に治療を施し、その後、細胞を患者の体内に再導入する。
【0079】
In vivoの標的細胞への遺伝子伝播の方法は以下の工程を含んでいる。(1)その発現がCNSの疾患または機能不全に関連した、適切な1種または数種の導入遺伝子の選択、(2)遺伝子伝播に適した、効率的なベクターの選択および開発、(3)標的細胞のin vivo形質導入および導入遺伝子発現が安定におよび効率的に行われることの実証、(4)遺伝子療法の工程によって重度の有害な作用が生じないことの実証、(5)宿主動物において所望の表現型が達成されることの実証。
【0080】
他のベクターを用いてもよいが、本発明で使用する好ましいベクターはウイルスベクターおよび非ウイルスベクターである。選択するベクターは以下の条件を満足するものである。1)ベクターは標的細胞に感染するものでなければならず、よって、適切な宿主域を有するウイルスベクターを選択しなければならない、2)導入する遺伝子は、細胞内における安定な持続および発現を達成するために、長期間にわたって(細胞死を招くことなく)細胞内に存続可能であり、発現されるものである、3)ベクターは標的細胞に対して全くもしくは極少量の損傷しか与えない。
【0081】
哺乳動物成体の脳細胞は非分裂性であるため、選択した組み換え発現ベクターは、非分裂性細胞にトランスフェクト可能であり、そこで発現されるものでなければならない。現在では、このような特性を有するベクターに、アデノウイルスやアデノ随伴ウイルス(AAV)などのDNAウイルス、HIV由来のレンチウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウマ免疫不全ウイルス(EIV)などの特定のRNAウイルスが含まれる。このような特性を有する他のベクターとしては、単純ヘルペスウイルス(HSV)が挙げられる。しかし、上記ウイルスのうちの数種(例えば、AAVとHSV)は毒性および/または免疫原生を有する。近年、HIV由来レンチウイルスベクターシステムが開発され、他のレトロウイルスと同様に、導入遺伝子を宿主細胞の細胞核に挿入する(発現の安定性を向上させる)ことが可能でありながらも、他のレトロウイルスとは異なり、非分裂性細胞の細胞核に導入することができる。レンチウイルスベクターは、直接注入の後に脳細胞を安定にトランスフェクトし、ウイルスタンパク質由来の検出可能な発病を生じることなく、外来導入遺伝子を安定に発現する(Naldini, et al., Science, 272:263-267 (1996)を参照、この記載をもってこの論文の内容を本願に導入したものとする)。HIV−1レトロウイルスベクターを初めて構築した研究者らの教示に従えば、通常の知識を有する当業者は、本発明の方法における使用に適したレンチウイルスベクターを構築することができる(レトロウイルスの構築に関するより一般的な文献としては、例えば、Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual(遺伝子伝播と発現、実験マニュアル), W. Freeman Co. (NY 1990)およびMurray, E J, ed., Methods in Molecular Biology(分子生物学の手法), Vol. 7, Humana Press (NJ 1991)を参照)。
【0082】
組み換えAAVベクターの使用は効率的である。なぜならその感染は比較的長期持続性であり、毒性導入遺伝子が組み換えられていない限り、通常は毒性ではない。AAVはヘルパー依存性のパルボウイルスであり、4.7kbの一本鎖DNAゲノムとそれを取り巻く単純な、無エンベロープ性の正二十面体のタンパク質の殻からなる。ヒトの成人人口の約85%がAAVに対して血清陽性である。しかしながら、AAV感染に関連付けられた病理はない。AAVは、ヘルパーウイルスとなるアデノウイルスまたはヘルペスウイルスに依存してAAVによる生産的な感染を達成する。ヘルパーウイルスが存在しない場合には、AAVゲノムは毒性の攻撃(UV照射、ヒドロキシ尿素暴露)に応答して増幅する。毒性の攻撃またはヘルパーウイルスが存在しない場合には、野生型AAVはヒトの染色体19に部位特異的に組み込まれる。これは染色体組み込み部位におけるAAV−染色体複合体の形成を仲介するAAV Repタンパク質によって生じる現象である。ウイルスゲノムのパッケージングと組み込みのために、2つの145塩基対の逆位末端配列(ITR)を残し、ウイルスゲノムの大部分(96%)を除去する。組み換えAAVの効率的な伝播のための技術として、当業界で組換えAAV、すなわちrAAVが開発された。それはミニアデノウイルスゲノムプラスミドという、1つのプラスミドの中にAAVのパッケージング機能とアデノウイルスのヘルパー機能がコードされたものである。更に、高度に精製されたrAAVを単離するためのrAAVの方法は、rAAV保存液の滴定と同様に、比較的簡単であり、迅速に処理することが可能である。rAAV仲介導入遺伝子発現をトレースする際には、緑蛍光タンパク質(GFP)と呼ばれる、非常によく特徴付けられた238アミノ酸の蛍光タンパク質をrAAV内にバイシストロニックに配置して使用することが多い。種々のプロモーターを介したrAAV仲介遺伝子伝播による選択的且つ特異的な発現も同定されている。我々が組み換えAAVを構築する際には、市販のAAVヘルパーフリーシステム(Stratagene)を使用した。プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFを、一般的な組み換えDNA技術を用いてAAVシステムのベクター/プラスミドにクローニングする。
【0083】
プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNF−ATGを発現するウイルスベクター
本発明で使用するための神経系成長因子の組み換え発現用ベクターの構築は、当業者には詳細な説明の必要のない一般的な技術によって達成することができる。AAVベクターを構築するための詳細はここに記載した。更なる情報については、通常の知識を有する当業者は、Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual(分子クローニング:実験マニュアル), Cold Spring Harbor Laboratory, (NY 1982)内の記載を参照してもよい。
【0084】
簡単に説明すると、組み換え発現ベクターの構築には、通常の連結技術を使用する。構築したベクター内に正しい配列が含まれていることを確認するためには、連結混合物を宿主細胞の形質転換に使用し、成功した形質転換体を、適切な場合には、抗生物質で選択する。形質転換体からベクターを用意し、制限酵素および/またはシーケンシングによる、例えば、Messing et al.の方法(Nucleic Acids Res., 9:309 (1981))、Maxam et al.の方法(Methods in Enzymology, 65:499 (1980))、または当業者によく知られているほかの適切な方法で分析する。切り出した断片のサイズによる分離は、例えば、Maniatis et al.(Molecular Cloning, pp. 133-134 (1982))に記載の一般的なゲル電気泳動によって行う。
【0085】
cDNA(プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNF−ATG)の発現は、転写、翻訳または翻訳後のレベルで制御する。転写開始は、遺伝子発現に初期の重要な事象である。転写はプロモーター配列およびエンハンサー配列に依存し、これら配列と相互作用する特定の細胞因子による影響を受ける。多くの原核生物遺伝子の転写単位はプロモーターと、場合によってはエンハンサーまたは制御因子からなる(Banerji et al., Cell 27:299 (1981)、Corden et al., Science, 209:1406 (1980)、およびBreathnach and Chambon, Ann. Rev. Biochem. 50:349 (1981))。レトロウイルスの場合、レトロウイルスゲノムの複製に関わる制御因子は長い末端反復配列(LTR)に存在する(Weiss et al., eds., The molecular biology of tumor viruses: RNA tumor viruses(腫瘍ウイルスの分子生物学:RNA腫瘍ウイルス), Cold Spring Harbor Laboratory, (NY 1982))。モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)のLTRはプロモーター配列とエンハンサー配列を含んでいる(Jolly et al., Nucleic Acids Res., 11:1855 (1983)、Capecchi et al., Enhancer and eukaryotic gene expression(エンハンサーと真核生物遺伝子発現)内, Gulzman and Shenk, eds., pp. 101-102, Cold Spring Harbor Laboratories (NY 1991))。他の強力なプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)や他の野生型ウイルスプロモーターが含まれる。
【0086】
rAAVの製造および使用する方法、ならびにin vivoの種々の細胞にrAAVを送達する方法については、米国特許第5,720,720号、第6,027,931号、第6,071,889号、およびWO 99/61066に開示されており、これらの記載は本願に組み込まれているものとする。種々の血清型のAAVが入手可能であり、組織指向性を示す。従って、使用すべき適切な血清型は、形質導入する組織に依存する。
【0087】
アデノ随伴ウイルス(AAV)および選択したプロモーターを使用して神経系において成功した、局所的な長期にわたる非毒性の導入遺伝子発現については、Klein et al., Experimental Neurology, 150:183-194 (1998), “Neuron-Specific Transduction in the Rat Septohippocampal or Nigrostriatal Pathway by Recombinant Adeno-associated Virus Vectors(組み換えアデノ随伴ウイルスベクターによる、ラットの中隔海馬経路または黒質線条体経路におけるニューロン特異的な形質導入)”を参照することができる。
【0088】
神経栄養因子であるNGF、GDNFとBDNFの有意に持続性の安定な発現が可能な組み換えAAVを使用した遺伝子療法の方法、およびその結果として得られた神経科学的に定量的な治療効果については、Klein et al., Neuroscience, 90:815-821 (1999), “Long-term Actions of vector-derived Nerve Growth Factor or Brain-derived Neurotrophic Factor on Choline Acetyltransferase and Trk Receptor Levels in the Adult Rat Basal Forebrain(成体ラット前脳基底部におけるコリンアセチルトランスフェラーゼレベルおよびTrk受容体レベルに対する、ベクター誘導性神経成長因子および脳誘導性神経栄養因子の長期活動)”を参照。
【0089】
より重要なパラメーターが、標的組織に送達するプレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFの用量である。ウイルスベクターの場合、プレ(β)プロGDNF濃度およびプレ(γ)プロGDNF濃度は、神経栄養組成物に含まれるウイルス粒子/mlと定義することができる。ウイルス発現ベクターを用いたプレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFの送達に最適な条件としては、プレ(γ)プロGDNFの各単位用量に2.5〜25μlのプレ(γ)プロGDNF組成物が含まれ、組成物は、薬学的に許容される液体中のウイルス発現ベクターを含み、1mlのプレ(β)プロGDNF組成物またはプレ(γ)プロGDNF組成物当たり、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNFを発現するウイルス粒子を1010〜1015個提供する。このように高い力価は、特にAAVの時に有用である。レンチウイルスの場合は、通常、力価はより低く、108〜1010形質導入単位/ml(TU/ml)である。
【0090】
実施例
【実施例1】
【0091】
GDNFスプライスバリアントcDNAのクローニングとRT-PCRによるGDNFスプライスバリアントmRNAの発現分析
プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFのcDNAを、RT-PCRによって、マウスの肝臓および脳細胞から(第1ペアーとしてプライマー42と43およびネスト化プライマーとしてプライマー46と47を使用して)クローニングし、ヒトの肝臓、子宮および脳細胞から(第1ペアーとしてプライマー53と49およびネスト化プライマーとしてプライマー48と54を使用して)クローニングした(図3および4)。マウスの全RNAは、RNA抽出キット(Ambion)を用いて単離し、ヒトRNAは、Clontech社より入手した。ファーストストランドcDNAは、オリゴ(dT)(Promega)でプライミングした、異なる組織から得られた全RNA(5μg)をテンプレートとして、逆転写酵素(SuperscriptII、Invitrogen)により合成した。
【0092】
マウスおよびヒトのプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFのクローニングに用いたプライマーは、以下の通りである:

マウスGdnf遺伝子の5’側の第1のプライマー(プライマー42)
5’−GCTCCTGCCCGAGGTC−3’(配列番号7)

マウスGdnf遺伝子の3’側の第1のプライマー(プライマー43)
5’−CCTTTCTTCGCACTGTAGCAG−3’(配列番号8)

マウスGdnf遺伝子の5’側のネスト化プライマー(プライマー46)
5’−GTCCGGATGGGTCTCCTGG−3’(配列番号9)

マウスGdnf遺伝子の3’側のネスト化プライマー(プライマー47)
5’−CACAGCAGTCTCTGGAGCCG−3’(配列番号10)

ヒトGDNF遺伝子の5’側の第1のプライマー(プライマー53)
5’−GACCTGTTGGGCGGGGCTC−3’(配列番号11)

ヒトGDNF遺伝子の3’側の第1のプライマー(プライマー49)
5’−CCTGGGAACCTTGGTCCCTTTC−3’(配列番号12)

ヒトGDNF遺伝子の5’側のネスト化プライマー(プライマー48)
5’−GCTCCAGCCATCAGCCCGG−3’(配列番号13)

ヒトGDNF遺伝子の3’側のネスト化プライマー(プライマー54)
5’−CACAGCAGTCTCTGGAGCCGG−3’(配列番号14)
【0093】
PCR反応は、50μlまたは25μl容量で実施した。50μl容量の場合、2/5容量の逆転写反応液と、耐熱性TaqDNAポリメラーゼおよびTgoDNAポリメラーゼ(Roche)を含む酵素混合物3.75単位を使用し、25μl容量の場合、1/5容量の逆転写反応液と、上記酵素混合物1.86単位を使用し、エキスパンドロングディスタンステンプレート(Expand Long Distance Template)PCRシステムキット(Roche)を用い、このキットの製造元の取扱説明書に従ってPCR反応を行った。第1のPCR反応に引き続き、ネスト化PCR反応を行った。この際、第1PCR反応の反応液1〜2μlをネスト化PCR反応のテンプレートとして用いた。第1PCR反応とネスト化PCR反応のいずれにおいても、DNAを以下の条件下で増幅した:94℃(2分);94℃(10秒)、62℃(30秒)、68℃(1分)を10サイクル;94℃(15秒)、62℃(30秒)、68秒(1分20秒)を25サイクル;68℃(7分)、4℃(5分)を1サイクル。得られた増幅RT-PCR産物を、2%アガロースゲル上に展開し、PCR断片の直接シーケンシングを行うか、PCR断片をpCR2.1ベクター(Invitrogen)にクローニングした後、配列を確認した。DNA断片は、ABI 3100 キャピラリーシークエンサーと、その製造元が推奨するダイターミネーター(Dye Terminator)(v3.1)
キット(Applied Biosystems)を用いてシーケンシングを行った。
【0094】
ゲル抽出ヒトPCR断片のシーケンシングには、GDNF遺伝子の5’側のプライマーとして5’−GCTCCAGCCATCAGCCCGG−3’(配列番号15)、GDNF遺伝子の3’側のプライマーとして5’−CACAGCAGTCTCTGGAGCCGG−3’(配列番号16)を用いた。マウスのPCR断片のシーケンシングには、GDNF遺伝子の5’側のプライマーとして5’−GTCCGGATGGGTCTCCTGG−3’(配列番号9)と、GDNF遺伝子の3’側のプライマーとして5’−CACAGCAGTCTCTGGAGCCG−3’(配列番号10)を用いた。
【0095】
各mRNAの発現を分析するために、マウスとヒトのプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFを、制限酵素XhoIおよびHindIIIによってpCR2.1ベクターから開裂させ、同じ制限酵素によって開裂させたpEGFP−N1発現ベクターに連結した。挿入したPCR断片のシーケンシングには、5’側のプライマーとして5’−CAACGGGACTTTCCAAAATG−3’(配列番号37)と3’側のプライマーとして3’−GGACACGCTGAACTTGTGG−5’(配列番号38)を使用した。
【0096】
更なる発現分析のために、ヒトのプレ(α)プロGDNFおよびプレ(β)プロGDNFをpAAV-MCSおよびpAAV−IRES−hrGFP発現ベクター(Stratagene)内にクローニングし、それによりpAAV−MCS-プレ(α)プロGDNF、pAAV−MCS-プレ(β)プロGDNF、pAAV−IRES−hrGFP-プレ(α)プロGDNFおよびpAAV−IRES−hrGFP-プレ(β)プロGDNFの発現構築物を得た。クローニングに用いたプライマーは以下の通りである:

5’側のプライマー(89)
5’−CAACAAGGATCCATGAAGTTATGGGATGTCGTGG−3’(配列番号39)

3’側のプライマー(90)
3’−CCACCACTCGAGTCAGATACATCCACACCTTTTAG−5’(配列番号40)
【0097】
発現分析のために、ヒト プレ(γ)プロGDNFの翻訳開始コドンCTGを、従来の翻訳開始コドンATGで置換した後、cDNAを、pAAV-MCS発現ベクター(Stratagene)内にクローニングすることにより、pAAV-MCS-プレ(γ)プロGDNF-ATG発現構築物を得た。クローニングに用いたプライマーは以下の通りである:

5’側のプライマー(91)
5’−CAACAAGGATCCATGGGACTTGGGGCACCTGGAGTTAATG−3’(配列番号17)

3’側のプライマー(92)
5’−CCACCACTCGAGTCAGATACATCCACACCTTTTAGCGG−3’(配列番号18)
【0098】
プライマー89と90またはプライマー91と92は、Dynazyme DNAポリメラーゼ(Finnzymes)とDynazyme10×緩衝液とを利用したPCR反応に用いた。PCR反応液の総量は50μlであり、テンプレートとして、pEGFP-N1内のヒト プレ(α)プロGDNFまたはプレ(β)プロGDNFを40ng含んでいた。DNAは、以下の条件下で増幅した: 95℃(5分);95℃(45秒)、56℃(45秒)、72℃(1分)を25サイクル;72℃(7分),4℃(7分)を1サイクル。増幅したPCR産物は、制限酵素BamHIおよびXhoIで開裂させ、同じ制限酵素で開裂させたpAAV−MCSベクター(Stratagene)に連結し、配列を確認した。
【0099】
挿入したPCR断片のシーケンシングに用いたプライマーは、5’側の5’−ATTCTGAGTCCAAGCTAGGC−3’(配列番号41)および3’側の3’−TAGAAGGACACCTAGTCAGA−5’(配列番号42)であった。
【実施例2】
【0100】
細胞培養
CHO、HEK-293、PC-6.3およびAtT-20細胞系は、抗生物質と共に10% FCS(Gibco)(CHOおよびHEK-293細胞)、10% HS(Gibco)および5% FCS(PC-6.3細胞)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、または10% FCS、4.5g/lグルコースおよび1.5g/l炭酸ナトリウム(AtT-20細胞)を含むDMEM中で培養した。BHK-21細胞系は、抗生物質と共に7.5% FCS、0.04%トリプトースリン酸ブロス(Difco)および1% グルタミン酸塩(Gibco)を含む最小培地(MEM)中で培養した。得られた細胞を、マウス プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNFのcDNA、もしくはヒト プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNFのcDNAを含むpEGFP-N1(Invitrogen)発現ベクターでトランスフェクトした。他の実験系においては、リポフェクタミン2000(Invitrogen)トランスフェクションプロトコルを用いて、ヒト プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNF-ATGのcDNAを含むpAAV-MCSまたはpAAV-IRES-hrGFPベクターをトランスフェクトした。ウェスタンブロット分析においては、トランスフェクトした細胞をOptiMEM(Sigma)培地中で48時間培養し、その後、培地を回収し、細胞からタンパク質抽出物を得た。分泌タンパク質(培地)は、Amicon Ultra-4 遠心用フィルターユニット(Millipore)を用いて濃縮するか、マウス抗GDNF抗体を用いて免疫沈降させた。タンパク質抽出物は、15% SDS−ポリアクリルアミドゲル上に展開し、D20抗体(Santa Cruz)を用いたウェスタンブロットにより分析した。免疫蛍光検査分析においては、トランスフェクトした細胞を、正常な栄養培地で24時間培養した後、固定化ならびに膜透過化処理を行った。細胞を、一次抗体および二次抗体で染色し、その画像を、顕微鏡(AX70 Provis、Olympus)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、Olympus)にて取得した。
【0101】
結果
上記実験の結果、ヒトおよびマウスの両方の(γ)プロGDNF、(β)プロGDNFおよびこれらの成熟GDNFがCHO細胞系から分泌され(図5および6)、更には、HEK-293、PC-6.3およびAtT-20細胞系からも分泌された。マウス(γ)プロGDNFおよびその成熟GDNFは、BHK-21(図7)、CHOおよびPC-6.3細胞系からも分泌され、そしてヒト(γ)プロGDNF-ATG(CTG翻訳開始コドンがATGで置換されている)とその成熟GDNFは、BHK-21およびCOS-7細胞系から分泌された(図8)。
【実施例3】
【0102】
分化したPC-6.3細胞および海馬初代培養細胞からのヒト プレ(α)プロGDNFおよびプレ(β)プロGDNFの分泌

PC-6.3細胞の分化と刺激
トランスフェクションの後、PC-6.3を、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、5% HS(Gibco)、2.5% FCSおよび50ng/ml NGFを含む分化培地中にて培養した。72時間後に培地を除去し、(場合により50mM KClを含む)無血清DMEMで置換した。トランスフェクションに用いた発現構築物は、pEGFP内のヒトとマウスのプレ(α)プロGDNFおよびプレ(β)プロGDNFであった。ELISA分析においては、終止コドンを欠くラット プレプロBDNF(ドイツ国、マインツ市、Johannes-Gutenberg大学のDr. Volkmar Lessmanの提供による)を含むpEGFP-N1発現ベクター(Invitrogen)を、活動依存性分泌の陽性コントロールとして使用した(Haubensak et al., J. Cell Sci., 111:1483-93 (1998))。この構築物は、上記の他の構築物と同様の手順でクローニングした。ウェスタンブロット分析においては、5時間後に培地(上清)を回収し、Amicon Ultra-4遠心用フィルターユニット(Millipore)を用いて濃縮した。タンパク質抽出物を15%SDS-ポリアクリルアミドゲル上に展開し、GDNFを認識するD20抗体(Santa Cruz)を用いたウェスタンブロットにより分析した。ELISA分析においては、2時間後に培地を回収し、GDNF Emax ImmunoAssay System(Promega)またはBDNF Emax ImmunoAssay System(Promega)を用いて分析した。
【0103】
トランスフェクトされた、分化したPC-6.3細胞の免疫蛍光分析
pEGFP-N1発現ベクター(Invitrogen)内に、終止コドンを有するcDNAをクローニングすることにより、ヒトのプレ(α)プロGDNFまたはプレ(β)プロGDNFを含む発現構築物を得た。PC-6.3細胞は、トランスフェクション前の3日間に亘って、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、5% HS(Gibco)、2.5% FCSおよび50ng/ml NGFを含む分化培地中にて分化させた。トランスフェクションに用いた発現構築物は、pEGFP内のヒトおよびマウスのプレ(α)プロGDNFとプレ(β)プロGDNFであった。トランスフェクションの24時間後に細胞は、4%PFAで固定化するか、最初に50mM KClおよび50μg/mlシクロヘキシミドで2時間刺激してタンパク質合成を停止させ、その後、4%PFAで固定化した。全細胞を0.5% BSA(Sigma)でブロックし、0.1% Triton X-100(Sigma)による膜透過処理に付した。細胞は、一次抗体であるポリクローナル抗GDNF(GeneWay Biotech Inc.、希釈率1:750)および成熟ゴルジ体用のモノクローナル抗GM130(Abcam、希釈率1:100)と共に室温で0.5%BSAと共に1時間培養し、洗浄して、その後、二次抗体であるCy2接合ロバ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch laboratories)およびCy3接合ロバ抗ラビットIgG(Jackson ImmunoResearch laboratories)と共に培養した。最後に、カバーガラスをImmu-mount(Thermo electron corporation)と共にマウントした。その画像を、顕微鏡(AX70 Provis、オリンパス社製)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、オリンパス社製)にて取得した。
【0104】
海馬初代ニューロンの培養、トランスフェクションおよび細胞の脱分極
海馬ニューロンを調製するために、E18ラットの海馬を解剖した。組織を、0.25%トリプシンのHBSS溶液で10〜15分間、37℃で消化した。その後、DNaseI(1mg/ml)を追加し、得られた試料をシリコン化ガラスピペットで吸い上げることで粉砕した。細胞は、10mMのグルコース(Sigma)を含むHBBSで三度洗浄した。得られた懸濁液において、ラットニューロンヌクレオフェクター(Nucleofector)キット(Amaxa biosystems)を使用して、該キットの製造元の推奨に従い、ヒトまたはマウスのプレ(α)プロGDNFもしくはプレ(β)GDNFのcDNAを含むpEGFP-N1(Invitrogen)発現ベクターで細胞をトランスフェクトした。細胞は、ポリ−D−リシン臭化水素塩(Sigma)でコートした培養皿上に播種して、L−グルタミン酸塩(Gibco Invitrogen)および1×のB-27(Gibco Invitrogen)を添加したNeurobasal培地(Gibco Invitrogen)中で培養した。4日間培養を行った後、培地を除去し、(場合により50mM KClを含む)Neurobasal培地(Gibco Invitrogen)で置換した。15〜30分後に、培地を回収し、GDNF濃度を、GDNF EmaxR イムノアッセイシステム(Promega)を用い、製造元の推奨に従って分析した。
【0105】
結果
免疫蛍光検査分析の結果から、分化したPC−6.3細胞において、刺激の前後でプレ(α)プロGDNFおよびプレ(β)プロGDNFのコードするタンパク質の局在に明らかな相違があることが分かる。刺激しなかったPC−6.3細胞においては、プレ(α)プロGDNFのコードするGDNFは、小胞体+/−ゴルジ体よりも、ゴルジ複合体単独により高頻度に局在していた(図9)。これに対して、プレ(β)プロGDNFのコードするGDNFの大部分が小胞体+/−ゴルジ体に局在し、ゴルジ複合体単独に局在したものは僅かであった。KCl刺激後、(β)プロGDNFおよびその成熟GDNFは、(α)プロGDNFおよびその成熟GDNFと比較して、より速やかに小胞体区画に移動した(図9)。ウェスタンブロット分析の結果から、ヒトおよびマウスの両方のプレ(α)プロGDNF cDNAのコードするGDNFは、分化した神経様PC−6.3細胞から構成的に分泌されるが、それに対して、(β)プロGDNF cDNAのコードするGDNFの分泌は活動依存的であることが分かる(図10および11)。この結果は、ラットBDNFを陽性コントロールとして使用したELISA分析によっても確認された(図12)。これらの結果は、(β)プロGDNFおよびそれをコードするcDNAは、(α)プロGDNFおよびそのcDNAよりも、PDの遺伝子治療用分子として、遙かに有望である可能性を示唆している。
【0106】
考察
完全な黒質線条体ドーパミン系における組み換えレンチウイルスベクター送達による長期に亘るin vivoでのプレ(α)プロGDNF発現は、ドーパミン合成における必須酵素であるチロシンヒドロキシラーゼの選択的ダウンレギュレーションを発生させる(Georgievska, et al., J. Neurosci., 24:6437-6445 (2004)、Sajadi, et al., J. Neurochem., 93:1482-1486 (2005))。更に、6−ヒドロキシドパーミン障害パーキンソン病ラットの線条体への組み換えレンチウイルスベクター送達による継続的なin vivoでのプレ(α)プロGDNF発現は、維持されている線条体ドーパミン終末におけるチロシンヒドロキシラーゼのダウンレギュレーションを誘発する(Georgievska, et al., Exp. Neurol., 177:461-474 (2002))。これは、おそらくは、ドーパミンニューロンが、継続的GDNF刺激下においてチロシンヒドロキシラーゼ酵素活性の低下によるドーパミン合成の増加と放出を代償することができるという代償機構によるものであろう。パーセフィンは、GDNFファミリーの神経栄養因子の一つである。高濃度のパーセフィンが神経毒であることは、実験により明確にされている(Tomac, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 99:9521-9526 (2002))。最近のヒト以外の霊長類に対する実験も、高濃度のGDNFが脳毒性を誘発することを示している(Lang, et al., Ann. Neurol., 59:459-466 (2006))。従って、将来の治療においては、高濃度のGDNFを避け、GDNFのレベルを生理学的に制御できる系とすることが好ましい。我々が行ったin vitroでの実験結果は、プレ(β)プロGDNFのコードするGDNFの分泌は、生物学的刺激によって制御され、プレ(α)プロGDNFのコードすGDNFの分泌は構成性であることを示している。このため、(β)プロGDNFおよびそれをコードするcDNAは、(α)プロGDNFおよびそのcDNAよりも、PDの遺伝子治療用分子として遙かに有望である。
【実施例4】
【0107】
ウィルスベクターの構築およびウィルス粒子の産生
ウィルスベクターを構築するために、AAVヘルパー・フリー・システム(Stratagene)を、製造元の利用説明書に従って使用する。適切な制限酵素を使用して、ヒト プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNF−ATGのコード配列を、pAAV−MCSのマルチクローニング部位またはpAAV−IRES−hrGFPベクターに導入し、pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNF、pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNFまたはpAAV−MCS−プレ(γ)プロGDNF−ATG、もしくはpAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNF、pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNFまたはpAAV−IRES−hrGFP−プレ(γ)プロGDNF−ATGを得る。上記のベクターは、pHelperおよびpAAV−RCベクターと共にAAV−293細胞に共トランスフェクトし、それによりプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNF−ATGを発現する組み換えAAV粒子を作製する。従って、GFP発現対照ウィルス粒子を作製するためには、ベクターpAAV−IRES−hrGFPを使用する。
【0108】
組み換えウィルス粒子は、AAVヘルパー・フリー・システム(Stratagene)の製造元による使用説明書に従って作製および精製する。組み換えウィルスの画分は、−80℃で保存する。ウィルス粒子の数は、サザンブロットによって決定する。
【実施例5】
【0109】
パーキンソン病の神経保護動物モデルにおけるin vivo遺伝子伝播

動物: 体重250〜280gの雄ウィスターラット(Harlan)を3匹または4匹のグループに分け、12時間:12時間の明暗サイクル、室温22℃の条件下で飼育する。水道水およびラット・チョー(Rat Chow)(Altromin 1324、Chr. Petersen A/S)を随意に摂取できるようにする。
【0110】
ウィルス注入および6−OHDA障害の誘発: 全ての定位注射は、PaxinosとWatsonのアトラス(The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates(ラット脳の脳定位座標). Academic press, San Diego, 1997)に従って、ブレグマと硬膜に対応する座標(A/P + 1.0、L/M + 2.7、D/V −4)を用いて、左線条体に対して行った。定位手術は、イソフルラン麻酔下(導入時4.5 %、手術時2.5%)で、公知の2段階法(Kearns et al., J. Neurosci., 17:7111-7118 (1997))により行う。対象動物に、GFPもしくはプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNFのcDNAを組み込んだ組み換えAAVベクターを注射する(n=5〜7/グループ)。組み換えAAVベクター注射14日後に、再度、動物を麻酔し、20μgの6−OHDA(Sigma)(この量は遊離塩基換算であり、0.02%アスコルビン酸を加えた3または4μlの氷冷生理食塩水に溶解して使用)を、ブレグマと硬膜に対応する座標(A/P + 1.0、L/M + 2.7、D/V −4)を用いて、線条体に1回注射する。注射速度は、1μl/分であり、注射器は抜き取る前に更に3分間放置する。6−OHDAの注射に先立って、6−OHDAのノルアドレナリン神経終末への取り込みを防止して神経終末を破壊から保護するために、デシプラミン(desipramine)(Sigma、濃度15mg/kg、腹腔内投与量1ml/kg)を投与する。
【0111】
行動試験:rAAVベクター注射10日後、そして6−OHDA注射の4週間後にも、ラットに、アンフェタミン(2.5mg/kg、腹腔内)を注射して、自動ロータメーターボウル(ペンシルバニア州、アレンタウン、Colbourn Instruments, Inc.)中で、120分に亘り旋回反応をモニターする。旋回運動の観察の後、脳を潅流し、免疫組織化学検査のために回収する。
【0112】
チロシンヒドロキシラーゼの免疫組織化学的解析: 6−OHDA注射の28日後、ラットを、ペントバルビタールナトリウムで深く麻酔し、PBSおよび引き続き200mlの氷冷 4% パラホルムアルデヒド(PFA)で心臓潅流する。脳は解剖して更に上記と同じ固定液で3〜4時間固定し、25%ショ糖に移して48時間静置した。凍結ミクロトーム上で、40μmの連続切片を作製した。チロシンヒドロキシラーゼ(TH)の免疫組織化学的解析を公知の手法(Kirik et al., Eur. J. Neurosci., 13:1589-1599 (2001))に従って行う。
【0113】
形態学的解析、SN細胞数: SNpc内のTH陽性細胞の数を、光学的細胞分画法(optical fractionator method)(West, et al., Anat. Rec., 231:482-497 (1991))を用いて推定する。SNpcは、公知の手法(Sauer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 92:8935-8939 (1995))により、Olympus BX51 顕微鏡に取り付けられたステレオインベスティゲーター(Stereo Investigator)プラットホーム(MicroBrightField)を用いて分析する。簡単に説明すると、各ラットについて、中間終止核(medial terminal nucleus)(MTN)が存在するSNpcの中心部分(PaxinosとWatsonのアトラス (Paxinos, G. & Watson, C., 1997, The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates(ラット脳の脳定位座標). Academic press, San Diego)におけるレベル A/P −5.3mm)から、3個所を選択して定量する。参照するエリアを、それぞれ低出力(4×)で輪郭を付し、細胞を高倍率(60×、オイル浸漬)の対物レンズを使用して計数する。細胞数は、平均数/1切片として表す。細胞数の計測は、光学的分画法と、解剖装置の原則並びに公平な計測ルールとを組み合わせて行う。
【0114】
統計学的分析:神経保護研究において、同側性の回転数とTH陽性細胞の数は一方向ANOVAにより分析し、その後、Tukey/Kramerの事後検定を行う。
【実施例6】
【0115】
パーキンソン病の神経再生動物モデルにおけるin vivo遺伝子伝播

動物:体重250〜280gの雄ウィスターラット(Harlan)を3匹または4匹のグループに分け、12時間:12時間の明暗サイクル、室温22℃の条件下で飼育する。水道水およびラット・チョー(Rat Chow)(Altromin 1324, Chr. Petersen A/S)を随意に摂取できるようにする。
【0116】
ウィルス注入および6−OHDA障害の誘発: 全ての定位注射は、PaxinosとWatsonのアトラス(The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates(ラット脳の脳定位座標). Academic press, San Diego, 1997)に従って、ブレグマと硬膜に対応する座標(A/P + 1.0、L/M + 2.7、D/V −4)を用いて、左線条体に対して行う。定位手術は、イソフルラン麻酔下(導入時4.5 %、手術時2.5%)で、公知の2段階法(Kearns et al., J. Neurosci., 17:7111-7118 (1997))により行う。対象動物に、20μg 6−OHDA (Sigma)(この量は遊離塩基換算であり、0.02%アスコルビン酸を加えた3piの氷冷生理食塩水に溶解して使用)を、ブレグマと硬膜に対応する座標(A/P + 1.0、L/M + 2.7、D/V −4)を用いて、線条体に1回注射する。注射速度は、1μl/分であり、注射器は抜き取る前に更に3分間放置する。6−OHDAの注射に先立って、6−OHDAのノルアドレナリン神経終末への取り込みを防止して神経終末を破壊から保護するために、デシプラミン(desipramine)(Sigma)(濃度15mg/kg、腹腔内投与量1ml/kg)を投与する。6−OHDA注射の28日後、ラットを再度麻酔して、GFPもしくはプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNF−ATGのcDNAを組み込んだrAAVベクターを注射する(n=5〜7/グループ)。6−OHDA注射21日後に、また更にrAAV−プレ(α)プロGDNF、rAAV−プレ(β)プロGDNF、またはrAAV−プレ(γ)プロGDNF−ATGの送達の1、2、4および8週間後に、ラットにアンフェタミン(2.5mg/kg、腹腔内)を注射して、自動ロータメーターボウル(ペンシルバニア州、アレンタウン、Colbourn Instruments, Inc.)中で、120分に亘り旋回反応をモニターする。旋回運動の観察の後、脳を潅流し、免疫組織化学検査のために回収する。行動試験、チロシンヒドロキシラーゼの免疫組織化学的解析、形態学的解析、および黒質細胞のカウントを上記および次の方法で行う。
【0117】
チロシンヒドロキシラーゼの免疫組織化学的解析: AVV注射の8週間後、ラットを、ペントバルビタールナトリウムで深く麻酔し、PBSおよび引き続き200ml 氷冷 4% PFAで心臓潅流する。脳は解剖して、更に上記と同じ固定液で3〜4時間固定し、25%ショ糖に移して48時間静置した。凍結ミクロトーム上で、40μmの連続切片を作製した。チロシンヒドロキシラーゼ(TH)の免疫組織化学的解析を公知の手法(Kirik et al., Eur. J. Neurosci., 13:1589-1599 (2001))に従って行う。
【0118】
形態学的解析、SN細胞数: SNpcにおけるTH陽性細胞の数を、光学的分画法(optical fractionator method)(West, et al., Anat. Rec., 231:482-497 (1991))を用いて推定する。SNpcは、公知の手法(Sauer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 92:8935-8939 (1995))により、Olympus BX51 顕微鏡に取り付けられたステレオインベスティゲーター(Stereo Investigator)プラットホーム(MicroBrightField)を用いて分析する。簡単に説明すると、各ラットについて、中間終止核(medial terminal nucleus)(MTN)が存在するSNpcの中心部分(PaxinosとWatsonのアトラス (Paxinos, G. & Watson, C., 1997, The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates(ラット脳の脳定位座標). Academic press, San Diego)におけるレベル A/P −5.3mm)から、3個所を選択して定量する。参照するエリアを、それぞれ低出力(4×)で輪郭を付し、細胞を高倍率(60×、オイル浸漬)の対物レンズを使用して計数する。細胞数は、平均数/1切片として表す。細胞数の計測は、光学的分別法と、解剖装置の原則並びに衡平な計測ルールとを組み合わせて行う。
【実施例7】
【0119】
癲癇の動物モデルにおける、プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNFのウィルス送達の利用

電極の埋め込みとウィルスの脳室内注射: 雄スプラーグドーリーラット(Sprague Dawley rats)(200〜300g)をペントバルビタールナトリウム(50mg/kg)で麻酔し、定位固定装置(stereotaxic frame)に入れる。テフロン被覆ステンレス鋼ワイヤー製の双極電極を、右扁桃体基底外側核に埋め込む(ブレグマから−2.8mm前後方、+4.9mm外側;および−8.6mm背側)(Paxinos and Watson, The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates(ラット脳の脳定位座標). New York: Academic Press, Paper Back, 1997)。対照ラットには、4〜8μlの対照ウィルス(AAV−GFP)を、他のラットには、4〜8μlのプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNF−ATGを発現するAVVを、先端を右側脳室(−0.8mm前後方、+1.5mm外側、および−3.6mm背側)(Paxinos and Watson, The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates(ラット脳の脳定位座標). New York: Academic Press, Paper Back, 1997)に埋め込んだカニューレにより定位的に投与する。カニューレと電極は、歯科用セメントおよび複数のアンカースクリューを用いて頭蓋骨に強固に固定し、アース線をアンカースクリューの1つに取り付ける(Binder et al.,J. Neurosci., 19:1424-1436 (1999))。術後、キンドリング刺激を与える前に、ラットを4日間回復させる。
【0120】
キンドリング: キンドリング刺激は、それぞれ60Hz 1秒の、脳波図上で認められる発作の閾値(electrographic seizure threshold)(EST)よりも100μA高い振幅での一連の1ミリ秒二相矩形波からなる。ESTは、刺激の最初の日に、100μAから始めて、1分間隔で100μAずつ刺激を強めることによって決定する(Kokaia et al., Eur. J. Neurosci., 11:1202-1216 (1999))。1日に2回ラットに刺激を与えることを11日間行う(刺激の合計回数は22回)。刺激毎に、行動学的(発作分類)および電気生理学[脳波図上で認められる発作の継続時間(electrographic seizure duration (ESD))]パラメータを、治療について知らされていない観察者によって記録する。行動学的発作分類は、Racineの分類(Racine, 1972)に従って記録する。この分類は以下の通りである: クラス0 − 行動的変化無し、クラス1 − 顔面クローヌス、 クラス2 − 点頭(head nodding)、クラス3 − 一側前肢クローヌス(unilateral forelimb clonus)、 クラス4 − 両側性前肢クローヌスによる立ち上がり(rearing with bilateral forelimb clonus)、およびクラス5 − 立ち上がりと転倒(姿勢制御能の喪失)。
【0121】
動物の分析:最後の刺激の4時間後、24時間後または1週間後に、動物を断頭する。組織を塩化トリフェニルテトラゾリウムで染色し、in situ標識分析により、皮質組織のアポトーシス細胞を検出する。
【実施例8】
【0122】
脳卒中の動物モデルにおける、rAAV−プレ(α)プロGDNF、rAAV−プレ(β)プロGDNFおよびrAAV−プレ(γ)プロGDNF−ATGによるin vivoの遺伝子伝播

rAAV−プレ(α)プロGDNF、rAAV−プレ(β)プロGDNFまたはrAAV−プレ(γ)プロGDNF−ATGの皮質への送達: プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNF−ATGを発現する組み換えAVVベクターの脳卒中の遺伝子治療への利用可能性を調査するために、30分間または90分間一過性両側総頚動脈結紮(transient bilateral common carotid artery ligation)したラットの皮質にプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNF−ATGを発現するrAVVベクターを注入する(Arvidsson et al., Neurobiol. Dis., 14:542-556 (2003))。rAVVベクターを注入した動物の皮質組織において、プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNF−ATGのレベルが、GFPを発現するrAVV(rAAV−GFP)を注入した対照動物と比較して有意に高かった場合には、rAVVは、プレ(α)プロGDNF遺伝子、プレ(β)プロGDNF遺伝子またはプレ(γ)プロGDNF−ATG遺伝子を送達、発現することができることを意味する。
【0123】
広域前脳虚血の誘発: 虚血発作時の体重が280〜290gの雄ウィスターラット(Taconic M&B A/S)23匹を、12時間:12時間の明暗サイクルの条件下で、食料と水を随意に摂取できるようにして飼育する。一晩断食させた後、ラットに3.5%ハロタンを吸入させ、その後、1〜2%のハロタンを含むN2O:O2(70:30)を人工的に通風させることによって麻酔する。血液サンプルの採取、血圧の記録および薬剤注入のためのカニューレを、それぞれラットの尾動脈および静脈に挿入する。直腸近辺に温度計を設置して体温を測定し、加熱パッドを用いて37℃付近に維持する。頚動脈を取り出し、その後、50IUのヘパリンを投与し、ハロタン濃度を0.5%まで下げ、臭化ベクロニウム(オランダ国、ボクステル、Organon Teknika B.V.)を、筋弛緩薬として2mg/hで静脈注入した。その後の30分間の定常状態の間に、生理学的パラメータおよび脳波図(EEG)をモニターする。虚血は、両側総頸動脈の閉塞と、頸静脈からの血液抜き取りによる低血圧(動脈圧:40〜50mmHg)との組み合わせにより誘発する。血流は、返血および血管閉塞クリップの除去の10分後に回復する。直後の血液再循環時に、全身性アシドーシスを防止するために、炭酸水素ナトリウム(0.5ml、濃度50mg/ml)を静脈投与する(Arvidsson et al., Neuroscience, 106:27-41 (2001))。
【0124】
動物の分析: 再灌流の4時間後、24時間後および1週間後に、動物を断頭する(各グループはn=6)。偽手術されたラット(n=5)も同様に処置するが、総頸動脈の閉塞は行わない。組織を塩化トリフェニルテトラゾリウムで染色し、in situ標識分析により、皮質組織のアポトーシス細胞を検出する。

F
【実施例9】
【0125】
コリン作動性細胞死の動物モデルにおけるin vivoの遺伝子伝播
In vivo遺伝子送達を利用した神経変性の防止のためのプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNF−ATG発現AVVベクターの送達のレベルとパラメータを決定するために、コリン作動性細胞死のin vivoラットモデルを使用し、動物へのウィルスベクターの注射を行った。動物モデルを得るにあたり、前脳基底核コリン作動性神経細胞死を誘発するために、成体の雄ウィスターラットに対して脳弓切断(fornix transections)を行う。プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNF−ATGベクター(pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNF、pAAV−MCS-プレ(β)プロGDNFまたはpAAV−MCS-プレ(γ)プロGDNF−ATG)もしくは対照EGFPベクターを、前脳基底部コリン作動系に、1010〜1012粒子/ml含む2.5〜10μlのストックベクター溶液(神経栄養組成物)として注射する。粒子は、3〜5分かけて、右脳半球の以下の座標に注入した: 脳表面からAP−0.3、ML−0.5、DV−6。皮膚を縫合して、ラットは2〜4週間生存させる。
【実施例10】
【0126】
家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の動物モデルにおけるin vivoの遺伝子伝播

一般的事項: 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンの選択的変性を伴う、極めて進行性が高い致死的疾患である。GDNFは、ALSおよび他の運動ニューロン疾患に対する有望な治療薬であるとされている。AVVが、安全性が確認された有用な遺伝子送達システムとして開発されたため、我々は、ALSモデルであるG93Aマウスにおける、AVVベクターの仲介によるGDNF cDNAの筋内送達の治療効力を調査する。家族性ALSモデルであるG1Hトランスジェニックマウスは、Gly93Ala変異を有するヒト スーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase)(SOD1)を保有している(Gurney et al. Science, 264:1772-1775 (1994))。プレ(α)プロGDNFスプライスアイソフォームを含むAVVが、ALSに対する安全性も確立された有用な遺伝子送達システムとして開発されたため(Wang et al., Gene Ther., 9:381-383 (2002))、我々は、ALSモデルであるG93Aマウスにおける、プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNF、およびプレ(γ)プロGDNF-ATGのcDNAのAVVベクター(rAAV-プレ(α)プロGDNF、rAAV-プレ(β)プロGDNF、およびrAAV-プレ(γ)プロGDNF)を媒介とした筋内送達の治療効力を調査する。
【0127】
動物およびウィルス注入: G93AヒトSOD1変異(SOD1G93A)を有する雄のトランスジェニックマウスを、The Jackson Laboratory (メイン州、バーハーバー)より得る。AVVベクタープラスミドは、上で詳細に説明したものを使用する。
【0128】
生後9〜10週で、ALSマウスを、rAAV−プレ(α)プロGDNFベクター、rAAV−プレ(β)プロGDNFベクター、およびrAAV−プレ(γ)プロGDNFベクターをそれぞれ注入する3つの治療グループ(各グループはn=10)、ならびにAAV−GFPベクターおよびベヒクルをそれぞれ注入する2つの対照グループ(各グループはn=5)にランダムに振り分けた。尚、ベクターまたはベヒクルの注入は、四肢(腓腹筋および上腕三頭筋)に対して行い、投与量は、腓腹筋に対して25μlであり、上腕三頭筋に対して15μlである。
【0129】
行動試験: マウスを、試験前3日間、ロータロッド装置(Rota−Rod/7650またはマウス用Rota−Rod踏み車)に慣れさせる。検出のために、マウスを5、10および20rpmで回転するロッドに乗せ、マウスがロッド上に留まった時間を自動的に記録する。発症時期は、従来の知見に従い、20rpm回転時にマウスがロッド上に5分間留まれなかった時とする(Li et al., Science, 288: 335-339 (2000))。マウスが5分を越してロッド上に留まった場合には、試験を終了し、記録を5分とする。試験は、マウスが試験の課題を遂行できなくなるまで、2日毎に行った。死亡時期については、ラットを、その背中から背臥位に置いた際に、30秒以内に自ら姿勢を正常に正せなくなった際の年齢として記録した(Li et al., Science, 288: 335-339 (2000))。
【0130】
形態学的解析: 筋肉切片(10μm)を冷却したアセトンで固定し、一次抗体としてのウサギ抗GDNF D20ポリクローナル抗体(1:500; Santa Cruz)および二次抗体としてのビオチン化抗ウサギ抗体(1:400; Santa Cruz)と共に培養した。その後、切片を、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体法(Vectastain ABCキット、Vector Laboratories)により、3,3’−ジアミノベンジジンを色原体として使用して可視化する。
【0131】
筋肉を二重免疫蛍光染色するために、筋肉切片を順次、ブロッキング溶液、ウサギ抗GDNF D20ポリクローナル抗体(1:500; Santa Cruz)、FITC結合ヤギ抗ウサギIgG (1:200; Santa Cruz)、およびテトラメチルローダミン結合−α−ブンガロトキシン(Molecular Probes)と共にインキュベートする。切片は、共焦点レーザー顕微鏡TCS NT(ドイツ国、ハイデルベルク、Leica)で観察し、写真を撮影する。
【0132】
脊髄の形態学的解析の目的で、ニッスル染色、SMI−32免疫染色またはCTB免疫染色用の連続横断切片(30μm)を得る。浮動性切片は、マウス オン マウスキット(Mouse-on-Mouse(M.O.M) kit)(Vector Laboratories)を使用し、その製造元のプロトコルに従いSMI−32免疫組織化学染色する。CTB免疫反応性解析用に処理した切片は、5%ウサギ血清にてブロッッキングし、抗CTB抗体(希釈率:1:1000、CTBに対するヤギ抗血清)と共にインキュベートする。切片は、標準的ABC法により可視化する。
【0133】
形態測定分析および細胞数計測: 形態測定分析は、Olympus BX51顕微鏡とKS 400イメージ解析ソフトウェア(Zeiss)を利用してCCDカメラにて取得したイメージに対して行う。筋肉繊維の平均面積は、ランダムに選択したエリアにおいて筋繊維数が1,000を超すものに関して計算する。脊髄に存在する運動ニューロンの数を比較するために、公知の手法(Lewis et al., Nat. Genet., 25:402-405 (2000))にしたがって、ニッスル染色ならびにSMI−32免疫染色およびCTB免疫染色された脊髄の頚膨大から腰仙膨大に亘る切片のニューロンの数を計測する。各マウスにつき、6つの連続する切片のそれぞれに関して少なくとも20個所を計測対象とする。但し、以下の基準を満たす大きな細胞形状を有するもののみを対象とする:脊髄中心管からの側線より下の脊髄前角に位置し、核小体を有する明確な核を有し、少なくとも1つの太い突起を有する。
【実施例11】
【0134】
脊髄損傷の動物モデルにおけるin vivoの遺伝子伝播

一般的事項: 損傷した脊髄への神経栄養因子の送達は、神経の生存と再生を刺激することが証明されている。このことは、十分な栄養因子供給の欠如が、哺乳類の脊髄における自発的再生の欠落の1つの要因であることを示している。以前に、脊髄損傷成体ラットにおける、組み換えアデノウィルス(AdCMVgdnfまたはAdCMVlacZ)の仲介によるプレ(α)プロGDNFの送達および機能回復と中枢神経細胞萎縮の試験を行った。その結果、アデノウィルスの仲介によるプレ(α)プロGDNFの送達は、脊髄損傷ラットにおいて、皮質脊髄運動ニューロンの逆行性萎縮を防止し、運動機能を改善できることが分かった(Tang et al., Neuroreport, 15:425-429 (2004))。
【0135】
神経栄養因子を供給する遺伝子送達アプローチを利用して、プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFまたはプレ(γ)プロGDNFを発現するAVVベクター(rAAV−プレ(α)プロGDNF、rAAV−プレ(β)プロGDNFまたはrAAV−プレ(γ)プロGDNF)を、脊髄損傷部位に注入する。脊髄損傷成体ラットについて、皮質脊髄路(CST)再生を解剖学的に分析し、感覚−運動機能の改善を行動分析した。
【0136】
動物: 全ての実験は、ヘルシンキ大学の実験動物センター(Laboratory Animal Center)で行う。そこでは、全ての実験動物研究およびプロトコルは、フィンランド国法、EU指令(86/609)、欧州協定(ETS 123)および遺伝子技術に関するフィンランド国内法に従う。雌成体ルイスラット(160〜190gm)を、4〜6匹のグループに分け、標準仕様ケージにて、12時間:12時間の明暗サイクル、標準的な随意の食事および水摂取方法にて飼育する。ラットを、ヒプノルム(Hypnorm)(120μl/体重200g)(Janssen Pharmaceutics)とドルミカム(Dormicum)(0.75mgを含む150μl/体重200g)(Roche Pharmaceuticals)を皮下注射して麻酔する。比較的長い処置による眼の乾燥を防ぐためにビタミンA含有眼軟膏を塗布する。虹彩切除ハサミおよび鋭く尖った刃物を使用して、Liebscher et al.の手順(Liebscher et al., Ann. Neurol., 58:706−719 (2005))に従い、胸郭レベルT8において、CSTの主要部を含む脊髄の背側半分とCSTの背外側および腹側内側部分とを含む個所にT型の損傷を与えた。
【0137】
ウィルスの送達: ラットを、4群に分けて(それぞれ、rAAV−プレ(α)プロGDNF、rAAV−プレ(β)プロGDNF、rAAV−プレ(γ)プロGDNFおよびAAV−GFPを使用)、同様の外科処置ならびに行動手順で処置する。実験は、以下のように二重盲検法にて行う:ラットにランダムなコード番号を付し、異なる群のラットをケージ内で混合する。全ての実験者は、実験の全段階(手術、健康管理、行動試験、ならびに再生、発芽および損傷のサイズの評価を含む)において、処置内容は知らされない。
【0138】
手術前に、全てのラットを、ベースライン測定値を得る前4週間に亘って行動試験に慣れさせるように扱い、そして訓練する。4種のAVV注射に際し、ラットをランダムに以下の実験グループに分けた:損傷+rAAV−プレ(α)プロGDNF、損傷+rAAV−プレ(β)プロGDNF、損傷+rAAV−プレ(γ)プロGDNF、損傷+対照AAV−GFP。AVV注射は、損傷を与えた直後に、傷を1μlの生理溶液で洗浄してから開始する。2週間後に、行動評価を開始し、週毎に繰り返す。5週間後に、CSTについて一方向トレース実験を行う。手術の9週間後、行動学的プロトコル終了の後、形態学的解析を行う。
【0139】
BBB歩行運動スコア: 全ての試験は、デジタルビデオカメラでモニターし、二重盲検法にて分析した。手術前4週間の準備訓練の後、ベースライン測定値を得る。手術後、行動評価を週毎に行う。ラットは自由に行動できる状態にし、2人の観察者が、ラットが後肢を使う能力を4分間に亘って評価する。関節運動、足底接地(paw placement)、体重の支持、および前肢と後肢の協調を、21ポイントBBB歩行運動スケール(Basso et al., J. Neurotrauma, 12:1−12 (1995))に従って判定する。
【0140】
水泳試験: 水泳試験のための機構は、長方形のプレキシガラス容器(150×40×13cm)である。容器中の水(23〜25℃)の水位は、ラットが容器の底に触れることを防ぐのに十分な高さとする。無傷のラットは、前肢を顎下に固定しての、後肢と尾による水かきである(Stolz et al., Behav. Brain Res., 106:127-132 (1999))。各ラットにつき計5回の試験を行い、それをプールの底に45°の角度で設置された鏡を使用してモニターし、ラットを横並びに下から同時に撮影する。水泳の成績を、以下の動きを記録することによって分析した: 前肢の使用:2ポイント=不使用(正常)、1ポイント=前肢の片方を全距離に亘って使用、もしくは前肢の両方を半分の距離に亘って使用、0ポイント=前肢の両方を常に使用;後肢の距離(躰支持のベース):2ポイント=距離小、後肢は躰の下、1ポイント=脚は躰の外側だが、足は躰の下に留まっている、0ポイント=距離大、脚と足の両方が躰の外側;後肢のストローク:2ポイント=力強いストローク、1ポイント=中程度のストローク、0ポイント=弱いストロークもしくはストローク無し;尾の動き:2ポイント=尾全体が標準的な強い動き、1ポイント=部分的な動き、0ポイント=非常に弱いか、動き無し。従って、正常な泳ぎの場合には、7〜8ポイントとなり、日常的に訓練を受けているラットであれば到達する値である。
【0141】
神経繊維数の計測および発芽評価
CSTの主要部分から再生される神経繊維の数を、最終倍率400倍にて、脊髄の矢状断面全般にわたり、体軸方向の幅0.25mm、損傷個所に対して0.5mm、2mmおよび5mm尾側の3つの特定領域について計測した。スコア(0=発芽無し、3=非常に強い発芽)の記録は、実験の意図を知らされていない(blinded)経験を積んだ観察者により、密度、異常発達、損傷またはその近辺への曲進、長さ、損傷の頭側直近におけるCST発芽の樹枝状分岐を判定することで行われる。
【実施例12】
【0142】
GDNFプレ−プロ領域に対する抗体320/(α)プロGDNF、321/プロGDNFおよび322/(β)プロGDNFの作製

ペプチド合成
それぞれに対する抗体を生成するための以下の3つのペプチドを調製した。

ペプチドA320: CGKRLLEAPAEDHSLGHRRVP(配列番号46)(320/(α)プロGDNF抗体用)、
ペプチドA321: CPEDYPDQFDDVMD(配列番号47)(321/プロGDNF抗体用)、および
ペプチドA322: CHTASAFPLPAANM(配列番号48)(322/(β)プロGDNF抗体用)。
【0143】
ペプチドの調製は、Fmoc化学手法を用いたペプチド固相合成法(SPPS)に基づいて行う。「Fmoc」は、クロロぎ酸9−フルオレニルメチル(9H-(f)luoren-9-yl(m)eth(o)xy(c)arbonyl)の略語であり、アミノ酸のNαにFmoc保護基を付加して不要な反応を防ぎ、酸性条件下で安定化させることを示す。合成は、ペプチドのC末端からN末端にかけて、自動合成装置を使用し、0.1mmolスケールで、標準的手法(Benoiton、Chemistry of Peptide Synthesis(ペプチド合成の化学)、Taylor & Francis Group、2005)に従って行った。合成中、アミノ酸側鎖の官能基は、永久的な保護基により保護されており、これは合成完了後に開裂させるが、合成中の全ての化学薬品に対して安定である。開裂後、ペプチド純度をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)技術により調節し(ペプチドは、アセトニトリルに溶解した)、HPLCから溶出する異なる画分をMALDI TOF−MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)で制御し、凍結乾燥装置にて凍結乾燥した。さらに、2mgのペプチドを、免疫化のためにHPLCで精製した(純度>95%)。ペプチド−樹脂は、−20℃で保管し、ペプチドパウダーは+4℃で保管した。
【0144】
KLHの結合
2mgの高純度ペプチドを、後に行う免疫化における免疫反応を刺激するためのキャリアタンパク質KLH(スカシ貝ヘモシアニン)に結合した。KLHは、その大きな分子量(MWは4.5×105〜1.3×107)、強い免疫原性、および結合使用可能なリシンの存在故に、ここでの目的に適している。ペプチドへの結合のために、マレイミド活性化KLHを使用した。マレイミド基は、ペプチドのN末端に付加したシステイン(但し、部位特異的結合を確実にし、ペプチドを免疫反応に曝すために、ペプチド1分子につきシステイン1つのみを付加し、内部システインは避ける)のSH基と反応する。反応は、中性条件下で行い、後に透析によって精製した。最終的な反応溶液は、PBSにより結合物の濃度を0.5mg/mlとした。結合工程は、結合工程の前後に回収したサンプル(KLHを有するペプチドとKLHを有さないペプチド)を用いたエルマン試験によって制御した。エルマン試験においては、エルマン試薬(5,5'−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB))を用いて、スルフヒドリル基含有ペプチドのKLHに対する結合効率を評価する(Walker、The Protein Protocols Handbook(タンパク質プロトコルハンドブック)、2nd edition、Humana Press inc. 2002、pp 595-596)。
【0145】
免疫化
免疫化スケジュール: 0日目−免疫前血清および第1回免疫化、14日目−第2回免疫化、35日目−第3回免疫化、45日目−予備採血およびELISA試験、56日目−第4回免疫化、66日目−最終採血およびELISA試験。最初の免疫化は、フロイント完全アジュバント(FCA)を用いて行い、他の免疫化はフロイント不完全アジュバント(FIA)を用いて行った。フロイントアジュバントは、油中水滴型エマルションであって、FCAは結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の死菌も含んでおり、これらは免疫反応を増進するために使用した。アジュバントは、KLH−ペプチド結合物溶液と1:1の比率になるよう慎重に混合して、2個所に皮下注射した。1つのプロジェクトに2匹のウサギを使用した。気管支静脈(air vain)から血液を採取して、血液凝固−遠心分離に付して血清を調製する。免疫前血清の量は、〜1ml、ELISA試験のための予備血清の量は、〜0.3ml、最終血清の量は、〜30mlであった。
【0146】
ELISA
適切な量のペプチドA320、A321またはA322をウシ血清アルブミン(BSA)に結合した(手順はKLHの結合と同様)。このペプチド−BSA結合物を、高容量タンパク質結合マイクロタイタープレートに塗布した(各サンプルにつき2回塗布した)。免疫前血清、予備血清および最終血清を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合した二次抗体となる抗ウサギIgG抗体を使用し、基質として3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を使用した、標準的なELISAによって検出した。光学密度は、ELISA−readerを使用し、450nmで測定した。
【0147】
IgG特異的精製
IgGの精製は、マブゾーベントR(MAbsorbent)技術により行った。マブゾーベントR合成アフィニティーリガンド吸着材は、血清、血漿、腹水、哺乳類細胞培養上清またはトランスジェニック材料からの抗体の精製における有用性が確認されており、従来のタンパク質A精製に替わる革新的な選択肢である。抗血清からの抗体の精製は、抗体をマブゾーベントA1P/A2Pに結合させることによって行う。マブゾーベント合成アフィニティーリガンド吸着材は、組み換えタンパク質Aおよび天然タンパク質Aを「模倣」する。しかし、上記のマブゾーベント吸着剤は、IgGの全てのサブクラスに結合する点でタンパク質Aとは異なる。マブゾーベント吸着剤は、多岐にわたるヒトおよび哺乳類のポリクローナル抗体(ウシ、マウス、ヒツジ、ヤギ、ウマおよびウサギを含む)や完全モノクローナル抗体、キメラヒト化抗体、抗体断片に効率的に結合する。
【0148】
最初に、空のカラムおよびマブゾーベント吸着剤と共に提供される取り扱い説明書に従ってカラムを準備した。簡単に説明すると、吸着材のスラリーをゆっくり混合し、カラムに添加し、結合バッファーにより平衡化した。
【0149】
次に、結合バッファーで希釈した抗血清を適量カラムに添加してインキュベートし、流し出した。血清中の抗体は、マブゾーベントA1P/A2Pに結合した。カラムを洗浄し、アフィニティー吸着材から抗体を溶出させ、各2mlの画分に回収した。その後、新たな精製のためにカラムを再度平衡化した。この工程は、必要量の抗血清が精製されるまで繰り返しても良い。平衡化と結合は中性pHで行い、溶出は酸性条件下で行った。抗体の回収後、全ての画分をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析し、抗体濃度をBCATMタンパク質アッセイ技術によって測定した。最終的に、抗体はPBS中、−20℃で保管した。
【0150】
エピトープ特異的精製
エピトープ特異的アフィニティー精製のために、NHS−活性化セファロースRマトリックス技術を用いた。NHS―活性化セファロースは、抗原(本実験においてはペプチド)と安定なアミド結合を形成し、後に、血清中の抗体を結合する。抗体は溶出し、回収する。この方法は、特定のペプチドに対する血清中の抗体を精製するのに役立つ。
【0151】
最初に、空のカラムおよびNHS−活性化セファロースRマトリックスと共に提供される取り扱い説明書に従ってカラムを準備した。簡単に説明すると、NHS−活性化セファロースRマトリックスを空のカラムに添加し、洗浄して保存液を除去した。カップリング溶液中に溶解した抗原をカラムに添加し、インキュベーション期間中にセファロースの活性基に結合させた。その後、溶媒中における未反応の活性基はTrisバッファーを加えて静置することによりブロックした。その後、2種類の異なるバッファー(pHが異なり、例えば、第1バッファーのpHが8〜9で、第2バッファーのpHが3〜4)でカラムを洗浄した。
【0152】
次に、予め用意したカラムを結合バッファーで平衡化し、PBSで希釈した抗血清を適量、カラムにロードした。カラム中のスラリーを数分放置して、抗体を抗原に結合させた。カラムを、バッファーのpH値をpH8〜6.5の範囲で変えながら洗浄し、酸性条件下で抗体を溶出させ、画分を1mlずつ回収した。回収の後、全ての画分をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析し、抗体濃度をBCATMタンパク質アッセイ技術によって測定した。最終的に、抗体はPBS中、−20℃で保管した。
【0153】
プロGDNF抗体の特異性の特徴付
プロGDNF抗体の特異性は、ウェスタンブロット分析および免疫蛍光分析により確認した。免疫蛍光分析においては、10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞をカバーガラスつきの4穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で0.8μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションに使用した発現構築物は、pEGFP−N1ベクター(Invitrogen)内のヒトおよび/またはマウスのプレ(α)プロGDNFとプレ(β)プロGDNF、およびpAAV−MCSベクター内の、ATGをタンパク質コード開始コドンとして有するヒト プレ(γ)プロGDNFであった。pAAV−MCSベクター内のプロドメインを欠くヒト プレGDNF(フィンランド国、ヘルシンキ大学、Dr. Pia Runeberg−Roosの提供による)を対照として使用した。この構築物は、上記の他の構築物と同様の手順でクローニングした。空のpEGFP−N1ベクターによる組み換えGFPタンパク質の発現を、擬似トランスフェクション対照とした。トランスフェクションの4時間後に培地を10% FCSと抗生物質を添加した新たなDMEMに交換した。トランスフェクションの24時間後に細胞を4% パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、0.1% Triton X-100(Sigma)による膜透過処理に付した。細胞は、一次抗体である、GDNFプロドメイン用のポリクローナル320/(α)プロGDNF抗体(希釈率1:200)、ポリクローナル321/プロGDNF抗体(希釈率1:200)またはポリクローナル322/(β)プロGDNF抗体(希釈率1:200)、および成熟GDNF用のモノクローナルマウス抗GDNF抗体(希釈率1:100)と共に、0.5%BSAの存在下、室温で1時間培養し、洗浄して、その後、二次抗体であるCy2結合ロバ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch laboratories)およびCy3結合ロバ抗ラビットIgG(Jackson ImmunoResearch laboratories)と共に培養した。細胞核はヘキストで染色し、最後に、カバーガラスをImmu-mount(Thermo electron corporation)と共にマウントした。画像を、顕微鏡(AX70 Provis、オリンパス社製)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、オリンパス社製)にて取得した。ウェスタンブロット分析においては、10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションに使用した発現構築物は、pEGFP−N1ベクター(Invitrogen)内のヒトおよびマウスのプレ(α)プロGDNFとプレ(β)プロGDNF、pAAV−IRES−hrGFPベクター(Stratagene)内のヒト プレ(α)プロGDNFとプレ(β)プロGDNF、およびpAAV-MCSベクター(Stratagene)内のヒト プレ(α)プロGDNFとプレ(β)プロGDNFであった。pAAV−MCSベクター内のプロドメインを欠くヒト プレGDNFを対照として使用した。この構築物は、上記の他の構築物と同様の手順でクローニングした。空のpEGFP−N1ベクターによる組み換えGFPタンパク質の発現を、擬似トランスフェクション対照とした。トランスフェクションの4時間後に培地をOptiMEM培地に交換した。細胞と培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、培地を濃縮し、15%の変性SDS−PAGEゲルでサンプルを分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、GDNFプロドメイン用のポリクローナル320/(α)プロGDNF抗体(希釈率1:500)またはポリクローナル321/プロGDNF抗体(希釈率1:500)、および成熟GDNF用のポリクローナルD20抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)、さらに引き続きHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。
【0154】
結果
免疫蛍光分析の結果、321/プロGDNF抗体は、(α)プロGDNF、(β)プロGDNFおよび(γ)プロGDNFのGDNFプロドメインを認識するが、プロ領域を欠いたGDNFタンパク質や組み換えGFPタンパク質は認識しないことが分かった。さらに、トランスフェクトしていない細胞には、特異的な染色は見られない。(α)プロGDNFおよび(β)プロGDNFのみならずプロ領域を欠いたGDNFタンパク質も、成熟GDNFを認識するマウス抗GDNF抗体により検出される(図13)。免疫蛍光分析の結果、320/(α)プロGDNF抗体は、(α)プロGDNFのGDNFプロドメインを認識するが、(β)プロGDNF、(γ)プロGDNFおよびプロ領域を欠いたGDNFや組み換えGFPタンパク質は認識しないことが分かった。(α)プロGDNFおよび(β)プロGDNFのみならずプロ領域を欠いたGDNFタンパク質も、成熟GDNFを認識するマウス抗GDNF抗体により検出される。マウス抗GDNF抗体による染色に加えて、プレ(β)プロGDNFのcDNAでトランスフェクトした細胞においては、若干のGFPシグナル(緑)が見られるが(図14)、これは、おそらくpEGFP−N1ベクターからの漏れによるものと思われる。免疫蛍光分析の結果、322/(β)プロGDNF抗体は、(β)プロGDNFのGDNFプロドメインを認識するが、(α)プロGDNF、(γ)プロGDNFおよびプロ領域を欠いたGDNFや組み換えGFPタンパク質は認識しないことが分かった。(α)プロGDNFおよび(β)プロGDNFのみならずプロ領域を欠いたGDNFタンパク質も、成熟GDNFを認識するマウス抗GDNF抗体により検出される。マウス抗GDNF抗体による染色に加えて、プレ(β)プロGDNFのcDNAをトランスフェクトした細胞においては、若干のGFPシグナルが見られるが(図15)、これは、おそらくpEGFP−N1ベクターからの漏れによるものと思われる。
【0155】
ウェスタンブロット分析の結果、321/プロGDNF抗体は、(α)プロGDNFおよび(β)プロGDNFのGDNFプロドメインを認識するが、プロ領域を欠いたGDNFタンパク質や組み換えGFPタンパク質は認識しないことが分かった。さらに、321/プロGDNF抗体は、(α)プロGST融合タンパク質および(β)プロGST融合タンパク質を認識する。成熟GDNFに対する抗GDNF D20抗体は、(α)プロGDNF、(β)プロGDNF、及びプロ領域を欠いたGDNFタンパク質を認識する(図16)。ウェスタンブロットにおいては、322/(α)プロGDNF抗体は(α)プロGDNFのGDNFプロドメインを認識するが、(β)プロGDNFやプロ領域を欠いたGDNFタンパク質は認識しない。成熟GDNFに対する抗GDNF D20抗体は、(α)プロGDNF、(β)プロGDNF、及びプロ領域を欠いたGDNFタンパク質を認識する(図17)。
【実施例13】
【0156】
プレ(γ)プロGDNFに特異的な抗体の作製
プレ(γ)プロGDNFペプチドに固有のアミノ酸配列を有するペプチドを、実施例12で使用したような公知の技術により調製する。
【0157】
KLHの結合
高純度ペプチドを、後に行う免疫化工程において免疫反応を刺激するために、キャリアタンパク質KLH(スカシ貝ヘモシアニン)に結合する。ペプチドへの結合のために、マレイミド活性化KLHを使用する。マレイミド基は、ペプチドのN末端に付加したシステイン(但し、部位特異的結合を確実にし、ペプチドを免疫反応に曝すために、ペプチド1分子につきシステイン1つのみを付加し、内部システインは避ける)のSH基と反応する。反応は、中性条件下で行い、後に透析によって精製する。最終的な反応溶液は、PBSにより結合物の濃度を0.5mg/mlとする。結合工程は、実施例12に記載したように、結合工程の前後に回収したサンプル(KLHを有するペプチドとKLHを有さないペプチド)を用いたエルマン試験によって制御する。エルマン試験においては、エルマン試薬(5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB))を用いて、スルフヒドリル基含有ペプチドのKLHに対する結合効率を評価する(Walker, The Protein Protocols Handbook(タンパク質プロトコルハンドブック), 2nd edition, Humana Press inc. 2002、pp 595-596)。
【0158】
免疫化
ウサギを以下のプロトコルに従って免疫化する:0日目−免疫前血清および第1回免疫化、14日目−第2回免疫化、35日目−第3回免疫化、45日目−予備採血およびELISA試験、56日目−第4回免疫化、66日目−最終採血およびELISA試験。最初の免疫化は、フロイント完全アジュバント(FCA)を用いて行い、他の免疫化はフロイント不完全アジュバント(FIA)を用いて行う。フロイントアジュバントは、油中水滴型エマルションであって、FCAは結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の死菌も含んでおり、これらは免疫反応を増進するために使用する。アジュバントは、KLH−ペプチド結合物溶液と1:1の比率になるよう慎重に混合して、2個所に皮下注射する。気管支静脈(air vain)から血液を採取して、血液凝固−遠心分離に付して血清を調製する。免疫前血清の量は、〜1ml、ELISA試験のための予備血清の量は、〜0.3ml、最終血清の量は、〜30mlである。
【0159】
ELISA
適切な量の免疫化用ペプチドをウシ血清アルブミン(BSA)に結合する(手順はKLHの結合と同様)。このペプチド−BSA結合物は、高容量タンパク質結合マイクロタイタープレートに塗布する(各サンプルにつき2回塗布する)。続いて、プレート上の空いている結合部位をBSAでブロックした。希釈液を、免疫前血清、予備血清および(最終ELISA実施中の)最終血清から調製し、ウェルに加える。結合サンプルは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合した二次抗体となる抗ウサギIgG抗体を使用して検出し、所謂「サンドイッチ」を作製する。陰性の対照としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を2つのウェルで使用し、各工程の後にプレートをインキュベートして、洗浄する。最後に、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)添加後に、HRPとの比色反応が起こり、光学密度は、ELISA−readerを使用し、450nmで測定する。
【0160】
抗体精製
IgGの精製は、マブゾーベントR(MAbsorbent)技術により行う。抗血清からの抗体の精製は、抗体をマブゾーベントA1P/A2Pに結合させることによって行う。マブゾーベント合成アフィニティーリガンド吸着材は、組み換えタンパク質Aおよび天然タンパク質Aを「模倣」する。最初に、空のカラムおよびマブゾーベント吸着剤と共に提供される取り扱い説明書に従ってカラムを準備する。簡単に説明すると、吸着材のスラリーをゆっくり混合し、カラムに添加し、結合バッファーにより平衡化する。
【0161】
次に、結合バッファーで希釈した抗血清を適量カラムに添加してインキュベートし、流し出した。血清中の抗体は、マブゾーベントA1P/A2Pに結合する。カラムを洗浄し、アフィニティー吸着材から抗体を溶出させ、各2mlの画分に回収する。その後、新たな精製のためにカラムを再度平衡化する。この工程は、必要量の抗血清が精製されるまで繰り返しても良い。平衡化と結合は中性pHで行い、溶出は酸性条件下で行う。抗体の回収後、全ての画分をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析し、抗体濃度をBCATMタンパク質アッセイ技術によって測定する。最終的に、抗体はPBS中、−20℃で保管する。
【0162】
エピトープ特異的アフィニティー精製のために、NHS−活性化セファロースRマトリックス技術を用いる。NHS―活性化セファロースは、抗原(本実験においてはペプチド)と安定なアミド結合を形成し、後に、血清中の抗体を結合する。抗体は溶出し、回収する。この方法は、特定のペプチドに対する血清中の抗体を精製するのに役立つ。
【0163】
最初に、空のカラムおよびNHS−活性化セファロースRマトリックスと共に提供される取り扱い説明書に従ってカラムを準備する。簡単に説明すると、NHS−活性化セファロースRマトリックスを空のカラムに添加し、洗浄して保存液を除去した。カップリング溶液中に溶解した抗原をカラムに添加し、インキュベーション期間中にセファロースの活性基に結合させる。その後、溶媒中における未反応の活性基はTrisバッファーを加えて静置することによりブロックする。その後、2種類の異なるバッファー(pHが異なり、例えば、第1バッファーのpHが8〜9で、第2バッファーのpHが3〜4)でカラムを洗浄する。
【0164】
次に、予め用意したカラムを結合バッファーで平衡化し、PBSで希釈した抗血清を適量、カラムにロードする。カラム中のスラリーを数分放置して、抗体を抗原に結合させた。カラムを、バッファーのpH値をpH8〜6.5の範囲で変えながら洗浄し、酸性条件下で抗体を溶出させ、画分を1mlずつ回収する。回収の後、全ての画分をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析し、抗体濃度をBCATMタンパク質アッセイ技術によって測定する。最終的に、抗体はPBS中、−20℃で保管する。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFのmRNAによってコードされるタンパク質の構造の模式図である。アミノ末端のシグナル配列はタンパク質の翻訳の際に切断されるものであるが、明瞭化するために含まれている。各領域内のアミノ酸は、成熟分子内のものを非常に薄い網掛けで示し、プロ領域のものを薄い網掛けで示し、プレ領域のものを濃い網掛けで示した。プレ(γ)プロGDNFにおいては、プレプロ領域を薄い網掛けで示した。7つの保存されたシステイン残基の相対的な位置は黒い縦線で示した。GDNFの2つの推定N−グリコシル化部位は矢印で示した。
【図2】プレ(α)プロGDNFスプライスバリアント、プレ(β)プロGDNFスプライスバリアントおよびプレ(γ)プロGDNFスプライスバリアントの特徴を示す図。GDNF cDNAにおいては、スプライスバリアントのORFを濃い網掛けで示し、非翻訳領域(UTR)領域を薄い網掛けで示した。プレ(α)プロGDNFおよびプレ(β)プロGDNFのORFはエキソン2と3に分割され、プレ(γ)プロGDNFにおいてORFはエキソン1と3に分割される。プレ(β)プロGDNFスプライスバリアントはエキソン2の3’領域内の78bpを欠失している。プレ(γ)プロGDNFスプライスバリアントは、固有の61bpの配列をエキソン1に有し、更に選択的タンパク質翻訳開始コドンCTGを有している。成熟GDNFはエキソン3にコードされており、3種のスプライスバリアントにおいてほぼ同一である。
【図3】腎組織におけるマウスGDNF mRNA発現のRT−PCRによる分析。レーン1:胎生期13(E13)の腎組織、レーン2:E15の腎組織、レーン3:E17の腎組織、レーン4:出生後1日(P1)の腎組織、レーン5:P5の腎組織、レーン6:P6の腎組織、レーン7:空のレーン、レーン8:陰性のPCR用対照。プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFのバリアントは矢印で示した。プレ(α)プロGDNFおよびプレ(β)プロGDNFのバリアントは、サンプルE13〜P1で検出された。プレ(γ)プロGDNFバリアントはサンプルE13、E15およびP1で検出された。
【図4】成体の脳組織におけるヒトGDNF mRNA発現のRT−PCRによる分析。レーン1と2:ヒト成体脳組織、レーン3:陽性のPCR用対照、レーン4:陰性のPCR用対照。プレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFのバリアントは矢印で示した。
【図5】CHO細胞で発現させたマウス(α)プロGDNFタンパク質およびマウス(β)プロGDNFタンパク質の分析。マウス プレ(α)プロGDNFまたはマウス プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地をOptiMEM培地に交換した。細胞と培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、マウス抗GDNF抗体(3.3μg/サンプル)を用いてGDNFを免疫沈降させ、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ウサギ抗GDNF抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。レーン1:マウス プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトした細胞の細胞溶解物、レーン2:マウス プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした細胞の細胞溶解物、レーン3:トランスフェクトしていない細胞(陰性の対照)の細胞溶解物、レーン4:マウス プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトした細胞の培地、レーン5:マウス プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした細胞の培地、レーン6:トランスフェクトしていない細胞(陰性の対照)の培地。
【図6】CHO細胞で発現させたヒト(α)プロGDNFタンパク質およびヒト(β)プロGDNFタンパク質の分析。ヒト プレ(α)プロGDNFまたはヒト プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地をOptiMEM培地に交換した。細胞と培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ウサギ抗GDNF抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。レーン1:ヒト プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトした細胞の細胞溶解物、レーン2:ヒト プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした細胞の細胞溶解物、レーン3:トランスフェクトしていない細胞(陰性の対照)の細胞溶解物、レーン4:ヒト プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトした細胞の培地、レーン5:ヒト プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした細胞の培地、レーン6:トランスフェクトしていない細胞(陰性の対照)の培地。
【図7】BHK細胞で発現させたマウス(γ)プロGDNFタンパク質の分析。マウス プレ(β)プロGDNFまたはマウス プレ(γ)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したBHK細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地をOptiMEM培地に交換した。細胞と培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ウサギ抗GDNF抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。レーン1:マウス プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした細胞の培地、レーン2:マウス プレ(γ)プロGDNFでトランスフェクトした細胞の培地、レーン3:トランスフェクトしていない細胞(陰性の対照)の培地。
【図8A】BHK細胞およびCOS−7細胞に発現させたヒト(γ)プロGDNFタンパク質の分析。ヒト プレ(γ)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有し、ATGまたはCTGをタンパク質コード開始コドンとして有するプレ(γ)プロGDNFcDNAを、pAAV−MCS発現ベクター(Stratagene)またはpEGFP−N1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したBHK細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地をOptiMEM培地に交換した。培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ウサギ抗GDNF抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。レーン1:ヒト プレ(γ)プロGDNFとATG翻訳開始コドンを含むpAAV−MCSベクターでトランスフェクトしたBHK細胞の培地、レーン2:ヒト プレ(γ)プロGDNFと共にCTG翻訳開始コドンと終止コドンを含むpEGFP−N1ベクターでトランスフェクトしたBHK細胞の培地。
【図8B】BHK細胞およびCOS−7細胞に発現させたヒト(γ)プロGDNFタンパク質の分析。ヒト プレ(γ)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有し、ATGまたはCTGをタンパク質コード開始コドンとして有するプレ(γ)プロGDNFcDNAを、pAAV−MCS発現ベクター(Stratagene)またはpEGFP−N1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したBHK細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地をOptiMEM培地に交換した。培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ウサギ抗GDNF抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。レーン1:ヒト プレ(γ)プロGDNFとATG翻訳開始コドンを含むpAAV−MCSベクターでトランスフェクトしたCOS−7細胞の培地、レーン2:トランスフェクトしていないCOS−7細胞(陰性の対照)の培地。
【図9A】分化PC−6.3細胞におけるGDNFの細胞内局在の免疫蛍光分析。ヒト プレ(α)プロGDNFまたはヒト プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。PC-6.3細胞は、トランスフェクション前の3日間に亘って、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、5% HS(Gibco)、2.5% FCSおよび50ng/ml神経栄養因子(NGF)を含む分化培地中にて分化させた。トランスフェクションの24時間後に細胞は、4%PFAで固定化するか、最初に50mM KClおよび50μg/mlシクロヘキシミドで2時間刺激してタンパク質合成を停止させ、その後、4%PFAで固定化した。全細胞を0.5% BSA(Sigma)でブロッキングし、0.1% Triton X-100(Sigma)による膜透過処理に付した。細胞は、一次抗体であるポリクローナル抗GDNF抗体(GeneWay Biotech Inc.、希釈率1:750)および成熟ゴルジ体用のモノクローナル抗GM130抗体(Abcam、希釈率1:100)と共に、0.5%BSAの存在下、室温で1時間培養し、洗浄して、その後、二次抗体による染色を繰り返した。画像を、顕微鏡(AX70 Provis、オリンパス社製)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、オリンパス社製)にて取得した。非刺激PC−6.3細胞の細胞内に局在するプレ(α)プロGDNF(白)またはプレ(β)プロGDNF(グレー)のコードするタンパク質の定量。ゴルジ体単独または小胞体+/−ゴルジ体(=3)に存在するタンパク質のパーセントを示した。*、P=0.0023。エラーバーはSDである。
【図9B】分化PC−6.3細胞におけるGDNFの細胞内局在の免疫蛍光分析。ヒト プレ(α)プロGDNFまたはヒト プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。PC-6.3細胞は、トランスフェクション前の3日間に亘って、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、5% HS(Gibco)、2.5% FCSおよび50ng/ml NGFを含む分化培地中にて分化させた。トランスフェクションの24時間後に細胞は、4%PFAで固定化するか、最初に50mM KClおよび50μg/mlシクロヘキシミドで2時間刺激してタンパク質合成を停止させ、その後、4%PFAで固定化した。全細胞を0.5% BSA(Sigma)でブロッキングし、0.1% Triton X-100(Sigma)による膜透過処理に付した。細胞は、一次抗体であるポリクローナル抗GDNF抗体(GeneWay Biotech Inc.、希釈率1:750)および成熟ゴルジ体用のモノクローナル抗GM130抗体(Abcam、希釈率1:100)と共に、0.5%BSAの存在下、室温で1時間培養し、洗浄して、その後、二次抗体による染色を繰り返した。画像を、顕微鏡(AX70 Provis、オリンパス社製)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、オリンパス社製)にて取得した。分化PC−6.3細胞の細胞内に局在するプレ(α)プロGDNFおよびプレ(β)プロGDNFのコードするタンパク質の定量。ゴルジ体単独、小胞体+/−ゴルジ体または小胞体単独(=3)に存在するタンパク質のパーセントを示した。細胞は未処理(0h)、または50mM KClおよび50μg/mlシクロヘキシミドで2時間処理した(2h)。
【図10】分化PC−6.3細胞から回収した細胞培地に含まれるマウスGDNFのウエスタンブロット分析。マウス プレ(α)プロGDNFまたはマウス プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。10%ウマ血清(HS)および5%ウシ胎仔血清(FCS)と抗生物質を添加したDMEMで培養したPC−6.3細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を、5% HS、2.5% FCSおよび50ng/ml神経成長因子(NGF)と抗生物質を含むDMEMである分化培地に交換した。72時間後にはPC−6.3細胞を25mM KClを含むDMEMで5時間処理することによって脱分極化した。対照細胞(脱分極化しないもの)はDMEMで処理した。培地(上清)を回収し、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ウサギ抗GDNF抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。細胞倍地については、プロGDNF、プロセッシングされた中間体プロGDNFおよび成熟GDNFのバンドを矢印で示した。レーン1:マウスプレ(α)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化していないPC−6.3細胞の培地、レーン2:マウスプレ(α)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化PC−6.3細胞の培地、レーン3:マウスプレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化していないPC−6.3細胞の培地、レーン4:マウスプレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化PC−6.3細胞の培地。
【図11】分化PC−6.3細胞から回収した細胞培地に含まれるヒトGDNFのウエスタンブロット分析。ヒト プレ(α)プロGDNFまたはヒト プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpAAV−MCS発現ベクター(Stratagene)にクローニングすることで得た。10% HSおよび5% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したPC−6.3細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を、5% HS、2.5% FCSおよび50mg/ml NGFと抗生物質を含むDMEMである分化培地に交換した。72時間後にはPC−6.3細胞を50mM KClを含むDMEMで5時間処理することによって脱分極化した。対照細胞(脱分極化しないもの)はDMEMで処理した。培地(上清)を回収し、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ウサギ抗GDNF抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。レーン1:ヒト プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化していないPC−6.3細胞の培地、レーン2:ヒト プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化PC−6.3細胞の培地、レーン3:ヒト プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化していないPC−6.3細胞の培地、レーン4:ヒト プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化PC−6.3細胞の培地。
【図12A】PC−6.3細胞培地のGDNF濃度を決定するためのELISA解析。マウス プレ(α)プロGDNFまたはマウス プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。終止コドンを欠いたラット プレプロBDNFを含むpEGFP-N1発現ベクター(Invitrogen)を対照として使用した。10%HSおよび5%FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したPC−6.3細胞を24穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で0.8μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を、5% HS、2.5% FCSおよび50mg/ml NGFと抗生物質を含むDMEMである分化培地に交換した。72時間後にはPC−6.3細胞を50mM KClを含むDMEMで2時間処理することによって脱分極化した。対照細胞(脱分極化しないもの)はDMEMで処理した。培地(上清)を回収し、GDNFはGDNF Emax ImmunoAssay System(Promega)を用いて分析し、BDNFはBDNF Emax ImmunoAssay System(Promega)を用いて分析した。カラム1:ヒト プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化PC−6.3細胞の培地、カラム2:ヒト プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化していないPC−6.3細胞の培地、カラム3:ヒト プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化PC−6.3細胞の培地、カラム4:ヒト プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトした脱分極化していないPC−6.3細胞の培地。(=3)。*、P=0.092227。エラーバーはSDである。
【図12B】PC−6.3細胞培地のGDNF濃度を決定するためのELISA解析。マウス プレ(α)プロGDNFまたはマウス プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。終止コドンを欠いたラット プレプロBDNFを含むpEGFP-N1発現ベクター(Invitrogen)を対照として使用した。10%HSおよび5%FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したPC−6.3細胞を24穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で0.8μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を、5% HS、2.5% FCSおよび50mg/ml NGFと抗生物質を含むDMEMである分化培地に交換した。72時間後にはPC−6.3細胞を50mM KClを含むDMEMで2時間処理することによって脱分極化した。対照細胞(脱分極化しないもの)はDMEMで処理した。培地(上清)を回収し、GDNFはGDNF Emax ImmunoAssay System(Promega)を用いて分析し、BDNFはBDNF Emax ImmunoAssay System(Promega)を用いて分析した。カラム1:ラット プレプロBDNFでトランスフェクトした脱分極化PC−6.3細胞の培地、カラム2:ラット プレプロBDNFでトランスフェクトした脱分極化していないPC−6.3細胞の培地(=3)。*、P=0.00307。エラーバーはSDである。
【図13A】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFのプロドメインを認識する321/プロGDNF抗体の特異性に関する免疫蛍光分析。マウス プレ(α)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。ヒト プレ(β)プロGDNF、タンパク質コード開始コドンとしてATGを有するヒト プレ(γ)プロGDNF、およびヒト プレGDNFのそれぞれを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAを、pAAV−MCS発現ベクター(Stratagene)にクローニングすることで得た。緑蛍光タンパク質(GFP)は空のpEGFP−N1ベクターから発現させた。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞をカバーガラスつきの4穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で0.8μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を10% FCSと抗生物質を添加したDMEMに交換した。トランスフェクションの24時間後に細胞を4% パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、0.1% Triton X-100(Sigma)による膜透過処理に付した。細胞は、一次抗体である、GDNFプロドメイン用のポリクローナル321/プロGDNF抗体(希釈率1:200)および成熟GDNF用のモノクローナルマウス抗GDNF抗体(希釈率1:100)と共に、0.5%BSAの存在下、室温で1時間培養し、洗浄して、その後、二次抗体による染色を同様に繰り返した。細胞核はヘキストで染色した。画像を、顕微鏡(AX70 Provis、オリンパス社製)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、オリンパス社製)にて取得した。マウス(α)プロGDNF、ヒト(β)プロGDNF、ヒト(γ)プロGDNF、およびプロ領域を欠いたヒト成熟GDNFをCHO細胞で過剰発現させ、321/プロGDNF抗体(赤)および抗GDNF抗体(緑)による2重免疫蛍光染色に付した。トランスフェクトしていない細胞を対照として用いた。細胞核は青で示した。
【図13B】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFのプロドメインを認識する321/プロGDNF抗体の特異性に関する免疫蛍光分析。マウス プレ(α)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。ヒト プレ(β)プロGDNF、タンパク質コード開始コドンとしてATGを有するヒト プレ(γ)プロGDNF、およびヒト プレGDNFのそれぞれを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAを、pAAV−MCS発現ベクター(Stratagene)にクローニングすることで得た。緑蛍光タンパク質(GFP)は空のpEGFP−N1ベクターから発現させた。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞をカバーガラスつきの4穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で0.8μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を10% FCSと抗生物質を添加したDMEMに交換した。トランスフェクションの24時間後に細胞を4% パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、0.1% Triton X-100(Sigma)による膜透過処理に付した。細胞は、一次抗体である、GDNFプロドメイン用のポリクローナル321/プロGDNF抗体(希釈率1:200)および成熟GDNF用のモノクローナルマウス抗GDNF抗体(希釈率1:100)と共に、0.5%BSAの存在下、室温で1時間培養し、洗浄して、その後、二次抗体による染色を同様に繰り返した。細胞核はヘキストで染色した。画像を、顕微鏡(AX70 Provis、オリンパス社製)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、オリンパス社製)にて取得した。GFPタンパク質(緑)をCHO細胞に発現させ、321/プロGDNF抗体(赤)による免疫蛍光染色に付した。細胞核は青で示した。
【図14A】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNFのプロドメインを認識する320/(α)プロGDNF抗体の特異性に関する免疫蛍光分析。マウス プレ(α)プロGDNFおよびマウス プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。タンパク質コード開始コドンとしてATGを有するヒト プレ(γ)プロGDNF、およびヒト プレGDNFのそれぞれを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpAAV−MCS発現ベクター(Stratagene)にクローニングすることで得た。GFPは空のpEGFP−N1ベクターから発現させた。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞をカバーガラスつきの4穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で0.8μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を10% FCSと抗生物質を添加したDMEMに交換した。トランスフェクションの24時間後に細胞を4% パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、0.1% Triton X-100(Sigma)による膜透過処理に付した。細胞は、一次抗体である、(α)プロGDNFプロドメイン用のポリクローナル320/(α)プロGDNF抗体(希釈率1:200)および成熟GDNF用のモノクローナルマウス抗GDNF抗体(希釈率1:100)と共に、0.5% BSAの存在下、室温で1時間培養し、洗浄して、その後、二次抗体による染色を同様に繰り返した。細胞核はヘキストで染色した。画像を、顕微鏡(AX70 Provis、オリンパス社製)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、オリンパス社製)にて取得した。マウス(α)プロGDNF、マウス(β)プロGDNF、ヒト(γ)プロGDNF、およびプロ領域を欠いたヒト成熟GDNFをCHO細胞で過剰発現させ、320/(α)プロGDNF抗体(赤)および抗GDNF抗体(緑)による2重免疫蛍光染色に付した。細胞核は青で示した。
【図14B】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNFのプロドメインを認識する320/(α)プロGDNF抗体の特異性に関する免疫蛍光分析。マウス プレ(α)プロGDNFおよびマウス プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。タンパク質コード開始コドンとしてATGを有するヒト プレ(γ)プロGDNF、およびヒト プレGDNFのそれぞれを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpAAV−MCS発現ベクター(Stratagene)にクローニングすることで得た。GFPは空のpEGFP−N1ベクターから発現させた。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞をカバーガラスつきの4穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で0.8μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を10% FCSと抗生物質を添加したDMEMに交換した。トランスフェクションの24時間後に細胞を4% パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、0.1% Triton X-100(Sigma)による膜透過処理に付した。細胞は、一次抗体である、(α)プロGDNFプロドメイン用のポリクローナル320/(α)プロGDNF抗体(希釈率1:200)および成熟GDNF用のモノクローナルマウス抗GDNF抗体(希釈率1:100)と共に、0.5%BSAの存在下、室温で1時間培養し、洗浄して、その後、二次抗体による染色を同様に繰り返した。細胞核はヘキストで染色した。画像を、顕微鏡(AX70 Provis、オリンパス社製)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、オリンパス社製)にて取得した。GFPタンパク質(緑)をCHO細胞に発現させ、320/(α)プロGDNF抗体(赤)による免疫蛍光染色に付した。細胞核は青で示した。
【図15A】CHO細胞内のプレ(β)プロGDNFのプロドメインを認識する322/(β)プロGDNF抗体の特異性に関する免疫蛍光分析。マウス プレ(α)プロGDNFおよびマウス プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。タンパク質コード開始コドンとしてATGを有するヒト プレ(γ)プロGDNF、およびヒト プレGDNFのそれぞれを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpAAV−MCS発現ベクター(Stratagene)にクローニングすることで得た。GFPは空のpEGFP−N1ベクターから発現させた。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞をカバーガラスつきの4穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で0.8μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を10% FCSと抗生物質を添加したDMEMに交換した。トランスフェクションの24時間後に細胞を4% パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、0.1% Triton X-100(Sigma)による膜透過処理に付した。細胞は、一次抗体である、(β)プロGDNFプロドメイン用のポリクローナル322/(β)プロGDNF抗体(希釈率1:200)および成熟GDNF用のモノクローナルマウス抗GDNF抗体(希釈率1:100)と共に、0.5%BSAの存在下、室温で1時間培養し、洗浄して、その後、二次抗体による染色を同様に繰り返した。細胞核はヘキストで染色した。画像を、顕微鏡(AX70 Provis、オリンパス社製)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、オリンパス社製)にて取得した。マウス(α)プロGDNF、マウス(β)プロGDNF、ヒト(γ)プロGDNF、およびプロ領域を欠いたヒト成熟GDNFをCHO細胞で過剰発現させ、322/(β)プロGDNF抗体(赤)および抗GDNF抗体(緑)による2重免疫蛍光染色に付した。細胞核は青で示した。
【図15B】CHO細胞内のプレ(β)プロGDNFのプロドメインを認識する322/(β)プロGDNF抗体の特異性に関する免疫蛍光分析。マウス プレ(α)プロGDNFおよびマウス プレ(β)プロGDNFを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpEGFP−N1ベクター(Invitrogen)にクローニングすることで得た。タンパク質コード開始コドンとしてATGを有するヒト プレ(γ)プロGDNF、およびヒト プレGDNFのそれぞれを含む発現構築物は、終止コドンを有するcDNAをpAAV−MCS発現ベクター(Stratagene)にクローニングすることで得た。GFPは空のpEGFP−N1ベクターから発現させた。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞をカバーガラスつきの4穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で0.8μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を10% FCSと抗生物質を添加したDMEMに交換した。トランスフェクションの24時間後に細胞を4% パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、0.1% Triton X-100(Sigma)による膜透過処理に付した。細胞は、一次抗体である、(β)プロGDNFプロドメイン用のポリクローナル322/(β)プロGDNF抗体(希釈率1:200)および成熟GDNF用のモノクローナルマウス抗GDNF抗体(希釈率1:100)と共に、0.5%BSAの存在下、室温で1時間培養し、洗浄して、その後、二次抗体による染色を同様に繰り返した。細胞核はヘキストで染色した。画像を、顕微鏡(AX70 Provis、オリンパス社製)を介して電荷結合素子カメラ(DP70、オリンパス社製)にて取得した。GFPタンパク質(緑)をCHO細胞に発現させ、322/(β)プロGDNF抗体(赤)による免疫蛍光染色に付した。細胞核は青で示した。
【図16A】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFのプロドメインを認識する321/プロGDNF抗体の特異性に関するウエスタンブロット分析。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を2mlのOptiMEM培地に交換した。細胞および培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、培地を濃縮した後、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ポリクローナル321/プロGDNF抗体(希釈率は1:500)または成熟GDNF用のポリクローナルD20抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)のいずれか一方、およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。レーン1:ヒト pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン2:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン3:ヒト pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン4:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン5:ヒト pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン6:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン7:ヒト pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン8:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン9:GFPを発現する空のpEGFP−N1ベクターでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン10:ヒト pAAV−MCS−プレGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン11:GFPを発現する空のpEGFP−N1ベクターでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン12:ヒト pAAV−MCS−プレGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地。サンプルは321/プロGDNF抗体で検出した。
【図16B】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFのプロドメインを認識する321/プロGDNF抗体の特異性に関するウエスタンブロット分析。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を、2mlのOptiMEM培地に交換した。細胞および培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、培地を濃縮した後、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ポリクローナル321/プロGDNF抗体(希釈率は1:500)または成熟GDNF用のポリクローナルD20抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)のいずれか一方、およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。レーン1:ヒト pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン2:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン3:ヒト pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン4:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン5:ヒト pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン6:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン7:ヒト pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン8:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン9:GFPを発現する空のpEGFP−N1ベクターでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン10:ヒト pAAV−MCS−プレGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン11:GFPを発現する空のpEGFP−N1ベクターでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン12:ヒト pAAV−MCS−プレGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地。サンプルはD20抗体で検出した。
【図16C】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNF、プレ(β)プロGDNFおよびプレ(γ)プロGDNFのプロドメインを認識する321/プロGDNF抗体の特異性に関するウエスタンブロット分析。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を、2mlのOptiMEM培地に交換した。細胞および培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、培地を濃縮した後、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ポリクローナル321/プロGDNF抗体(希釈率は1:500)または成熟GDNF用のポリクローナルD20抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)のいずれか一方、およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。レーン1:ヒト pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン2:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン3:ヒト pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン4:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン5:ヒト pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン6:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン7:ヒト pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン8:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン9:GFPを発現する空のpEGFP−N1ベクターでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン10:ヒト pAAV−MCS−プレGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の細胞、レーン11:GFPを発現する空のpEGFP−N1ベクターでトランスフェクトしたCHO細胞の培地、レーン12:ヒト pAAV−MCS−プレGDNFでトランスフェクトしたCHO細胞の培地。(α)プロGST融合タンパク質および(β)プロGST融合タンパク質を321/プロGDNF抗体で検出した。
【図17A】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNFのプロドメインを認識する320/(α)プロGDNF抗体の特異性に関するウエスタンブロット分析。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を2mlのOptiMEM培地に交換した。細胞および培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、培地を濃縮した後、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ポリクローナル320/(α)プロGDNF抗体(希釈率は1:500)またはポリクローナルD20抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)のいずれか一方、およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。細胞は、以下の構築物でトランスフェクトした。レーン1:マウス プレ(α)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン2:ヒト プレ(α)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン3:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNF、レーン4:ヒト pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNF、レーン5:マウス プレ(β)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン6:ヒト プレ(β)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン7:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNF、レーン8:ヒト pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNF、レーン9:GFPを発現する空のpEGFP−N1ベクター、レーン10:プロ領域を欠いたpAAV−MCS−プレGDNF。320/(α)プロGDNF抗体でCHO細胞を分析した際の、細胞に関する結果。
【図17B】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNFのプロドメインを認識する320/(α)プロGDNF抗体の特異性に関するウエスタンブロット分析。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を、2mlのOptiMEM培地に交換した。細胞および培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、培地を濃縮した後、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ポリクローナル320/(α)プロGDNF抗体(希釈率は1:500)またはポリクローナルD20抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)のいずれか一方、およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。細胞は、以下の構築物でトランスフェクトした。レーン1:マウス プレ(α)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン2:ヒト プレ(α)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン3:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNF、レーン4:ヒト pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNF、レーン5:マウス プレ(β)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン6:ヒト プレ(β)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン7:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNF、レーン8:ヒト pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNF、レーン9:GFPを発現する空のpEGFP−N1ベクター、レーン10:プロ領域を欠いたpAAV−MCS−プレGDNF。320/(α)プロGDNF抗体でCHO細胞を分析した際の、培地に関する結果。
【図17C】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNFのプロドメインを認識する320/(α)プロGDNF抗体の特異性に関するウエスタンブロット分析。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を、2mlのOptiMEM培地に交換した。細胞および培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、培地を濃縮した後、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ポリクローナル320/(α)プロGDNF抗体(希釈率は1:500)またはポリクローナルD20抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)のいずれか一方、およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。細胞は、以下の構築物でトランスフェクトした。レーン1:マウス プレ(α)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン2:ヒト プレ(α)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン3:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNF、レーン4:ヒト pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNF、レーン5:マウス プレ(β)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン6:ヒト プレ(β)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン7:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNF、レーン8:ヒト pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNF、レーン9:GFPを発現する空のpEGFP−N1ベクター、レーン10:プロ領域を欠いたpAAV−MCS−プレGDNF。D20抗体でCHO細胞を分析した際の、細胞に関する結果。
【図17D】CHO細胞内のプレ(α)プロGDNFのプロドメインを認識する320/(α)プロGDNF抗体の特異性に関するウエスタンブロット分析。10% FCSと抗生物質を添加したDMEMで培養したCHO細胞を6穴プレートに播種し、各ウエルが約80%コンフルエンスに達した時点で4μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後に培地を、2mlのOptiMEM培地に交換した。細胞および培地(上清)をトランスフェクションの48時間後に回収し、培地を濃縮した後、15%の変性SDS−PAGEゲルで分離し、続いてナイロンメンブランにブロッティングし、5%牛乳のTBS−Tween(0.1%)溶液でブロッキングした。GDNFは、ECL法を用いて、ポリクローナル320/(α)プロGDNF抗体(希釈率は1:500)またはポリクローナルD20抗体(Santa Cruz、希釈率は1:500)のいずれか一方、およびHRP結合ロバ抗ウサギイムノグロブリン二次抗体(希釈率は1:2000)で検出した。細胞は、以下の構築物でトランスフェクトした。レーン1:マウス プレ(α)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン2:ヒト プレ(α)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン3:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(α)プロGDNF、レーン4:ヒト pAAV−MCS−プレ(α)プロGDNF、レーン5:マウス プレ(β)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン6:ヒト プレ(β)プロGDNF−pEGFP−N1、レーン7:ヒト pAAV−IRES−hrGFP−プレ(β)プロGDNF、レーン8:ヒト pAAV−MCS−プレ(β)プロGDNF、レーン9:GFPを発現する空のpEGFP−N1ベクター、レーン10:プロ領域を欠いたpAAV−MCS−プレGDNF。D20抗体でCHO細胞を分析した際の、培地に関する結果。
【配列表フリーテキスト】
【0166】
配列番号1 [223]: 完全なヒト プレ−ガンマ−プロGDNF
配列番号3 [223]: マウス プレ−ガンマ−プロGDNF
配列番号5 [223]: ATGを含むヒト プレ−ガンマ−プロGDNF
配列番号7 [223]: プライマー42
配列番号8 [223]: プライマー43
配列番号9 [223]: プライマー46
配列番号10 [223]: プライマー47
配列番号11 [223]: プライマー53
配列番号12 [223]: プライマー49
配列番号13 [223]: プライマー48
配列番号14 [223]: プライマー54
配列番号15 [223]: ヒトGDNFの5’プライマー
配列番号16 [223]: ヒトGDNFの3’プライマー
配列番号17 [223]: プライマー91
配列番号18 [223]: プライマー92
配列番号19 [223]: Leuを含むプレ−ガンマ−プロのaa配列
配列番号20 [223]: CTGを含むプレ−ガンマ−プロのnt配列
配列番号21 [223]: Metを含むプレ−ガンマ−プロのaa配列
配列番号22 [223]: ATGを含むプレ−ガンマ−プロのnt配列
配列番号23 [223]: CTGを含む短縮型プレ−ガンマ−プロGDNFのnt
配列番号25 [223]: ATGを含む短縮型プレ−ガンマ−プロGDNFのnt
配列番号27 [223]: Leuを含むV34M プレ−ガンマ−プロGDNFのaa
配列番号28 [223]: CTGを含むV34M プレ−ガンマ−プロGDNFのnt
配列番号29 [223]: Metを含むV34M プレ−ガンマ−プロGDNFのaa
配列番号30 [223]: ATGを含むV34M プレ−ガンマ−プロGDNFのnt
配列番号31 [223]: V38Mプレ−ベータ−プロGDNFのaa
配列番号32 [223]: V38Mプレ−ベータ−プロGDNFのnt
配列番号33 [223]: V64Mプレ−アルファ−プロGDNFのaa
配列番号34 [223]: V64Mプレ−アルファ−プロGDNFのnt
配列番号35 [223]: 短縮型プレ−ベータ−プロGDNFのaa
配列番号36 [223]: 短縮型プレ−ベータ−プロGDNFのnt
配列番号37 [223]: pEGFPの5’プライマー
配列番号38 [223]: pEGFPの3’プライマー
配列番号39 [223]: プライマー89
配列番号40 [223]: プライマー90
配列番号41 [223]: pAAV−MCSの5’プライマー
配列番号42 [223]: pAAV−MCSの3’プライマー
配列番号43 [223]: GDNFタンパク質スプライスバリアントアルファ、ベータ
またはガンマのプレプロ配列のC末端26アミノ酸領域
配列番号44 [223]: ヒト プレ−アルファ−プロGDNFのプロペプチド
配列番号45 [223]: ヒト プレ−ベータ−プロGDNFのプロペプチド
配列番号46 [223]: 抗体320のエピトープ(マウス アルファ−プロ配列に
基づく)
配列番号47 [223]: 抗体321のエピトープ(プロGDNFのC末端に基づく)
配列番号48 [223]: 抗体322のエピトープ(ベータ−プロ配列に基づく)
配列番号49 [223]: プレ−アルファ−プロGDNFのプレプロ領域
配列番号50 [223]: プレ−ベータ−プロGDNFのプレプロ領域
配列番号51 [223]: ヒト プレ−ベータ−プロGDNF
配列番号51 [223]: プロペプチド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に示したアミノ酸配列を包含する、単離精製したヒト グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質スプライスバリアント(プレ(γ)プロGDNF)。
【請求項2】
配列番号2に示したアミノ酸配列のアミノ末端のロイシン残基がメチオニン残基で置換されてなる、配列番号6に示した修飾ヒトGDNFタンパク質スプライスバリアント(プレ(γ)プロGDNF)。
【請求項3】
配列番号2の1番〜134番アミノ酸と共に、配列番号2のアミノ酸−47番〜−1番からなる配列の一部分であって、制御能を有するがシグナル配列を欠いた部分を包含する、ヒト プレ(γ)プロGDNFの成熟部分ポリペプチド。
【請求項4】
配列番号19に示したアミノ酸配列を包含する、請求項1に記載のヒトGDNFタンパク質スプライスバリアントのプレプロアミノ酸配列。
【請求項5】
配列番号21に示したアミノ酸配列を包含する、請求項2に記載のヒトGDNFタンパク質スプライスバリアントのプレプロアミノ酸配列。
【請求項6】
制御能を有する、配列番号21に示したシグナル配列の一部分。
【請求項7】
成熟部分ポリペプチドのN末端の38個のアミノ酸を欠失した、配列番号24に示したアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のヒトGDNFタンパク質スプライスバリアントの短縮型ポリペプチド。
【請求項8】
成熟部分ポリペプチドのN末端の38個のアミノ酸を欠失した、配列番号26に示したアミノ酸配列からなる、請求項2に記載のヒトGDNFタンパク質スプライスバリアントの短縮型ポリペプチド。
【請求項9】
配列番号2の39番〜134番アミノ酸と共に、配列番号2のアミノ酸−47番〜−1番であるシグナル配列の一部分であって、制御能を有する部分を包含する、ヒト プレ(γ)プロGDNFの短縮型成熟部分ポリペプチド。
【請求項10】
配列番号27に示したアミノ酸配列を包含する、請求項1に記載のヒトGDNFタンパク質スプライスバリアントのV34M変異体。
【請求項11】
配列番号29に示したアミノ酸配列を包含する、請求項2に記載のヒトGDNFタンパク質スプライスバリアントのV34M変異体。
【請求項12】
配列番号31に示したアミノ酸配列を包含する、単離精製され且つV38M変異を有する、ヒト グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質スプライスバリアント(プレ(β)プロGDNF)。
【請求項13】
成熟部分ポリペプチドのN末端から38個のアミノ酸を欠失した、配列番号35に示したアミノ酸配列からなる、短縮型ヒト グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質スプライスバリアント(プレ(β)プロGDNF)。
【請求項14】
配列番号33に示したアミノ酸配列を包含する、単離精製され且つV64M変異を有する、ヒト グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質スプライスバリアント(プレ(α)プロGDNF)。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかで定義したGDNFタンパク質スプライスバリアントまたはその一部をコードするポリヌクレオチド。
【請求項16】
配列番号1に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
配列番号5に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
配列番号20に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
配列番号22に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
配列番号23に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
配列番号25に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
配列番号28に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
配列番号30に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
配列番号32に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
配列番号36に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
配列番号34に示した核酸配列を包含する、請求項15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
発現制御分子に発現可能な状態で結合した請求項15〜26のいずれかに記載のポリヌクレオチドを包含するベクター。
【請求項28】
ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターである、請求項27に記載のベクター。
【請求項29】
ウイルスベクターが、組み換えワクシニアウイルスベクター、組み換えアデノウイルスベクター、組み換えレトロウイルスベクター、組み換えアデノ随伴ウイルスベクター、組み換えバキュロウイルスベクター、組み換えパピローマウイルスベクター、組み換えレンチウイルスベクターまたは組み換えトリ ポックスウイルスベクターであるか、in vivoにおいて遺伝子発現を制御可能なウイルスベクターであることを特徴とする、請求項28に記載のベクター。
【請求項30】
非ウイルスベクターが、細菌、真菌、哺乳類、昆虫、植物または酵母に由来のベクター、リポソーム、あるいはDNAのポリアミン誘導体であることを特徴とする、請求項28に記載のベクター。
【請求項31】
請求項27〜30のいずれかに記載のベクターを包含する、天然の環境から単離された形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項32】
GDNFタンパク質スプライスバリアントα、βまたはγのプレプロ配列のC末端26アミノ酸領域である、配列番号43に示したアミノ酸配列に特異的に結合する抗体。
【請求項33】
プレ(α)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントのプロ領域である、配列番号44に示したアミノ酸配列に特異的に結合する抗体。
【請求項34】
プレ(α)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントのプレプロ領域である、配列番号49に示したアミノ酸配列に特異的に結合する抗体。
【請求項35】
プレ(β)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントのプロ領域である、配列番号45に示したアミノ酸配列に特異的に結合する抗体。
【請求項36】
プレ(β)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントのプレプロ領域である、配列番号50に示したアミノ酸配列に特異的に結合する抗体。
【請求項37】
配列番号2または配列番号6に示したアミノ酸配列からなるプレ(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントに特異的に結合する抗体。
【請求項38】
プレ(γ)プロGDNFタンパク質スプライスバリアントのプレプロ領域である、配列番号19または配列番号21に示したアミノ酸配列に特異的に結合する抗体。
【請求項39】
神経障害または神経変性疾患の治療用である、請求項1〜14のいずれかで定義したGDNFタンパク質スプライスバリアント、および配列番号52に示したGDNFタンパク質スプライスバリアントからなる群より選ばれるGDNFタンパク質スプライスバリアントまたはその部分ペプチド。
【請求項40】
請求項1〜14のいずれかで定義したGDNFタンパク質スプライスバリアント、および配列番号52に示したGDNFタンパク質スプライスバリアントからなる群より選ばれるGDNFタンパク質スプライスバリアントまたはその部分ペプチドの、神経障害または神経変性疾患の治療剤を製造するための用途。
【請求項41】
神経障害または神経変性疾患の治療用である、請求項15のポリヌクレオチドおよび配列番号51に示したポリヌクレオチドからなる群より選ばれるポリヌクレオチド。
【請求項42】
請求項15のポリヌクレオチドおよび配列番号51に示したポリヌクレオチドからなる群より選ばれるポリヌクレオチドの、神経障害または神経変性疾患の治療剤を製造するための用途。
【請求項43】
神経障害が、中枢神経異常、脊髄損傷、依存症、アルコール中毒症、虚血症、癲癇、うつ病または脳梗塞であることを特徴とする、請求項40または42の用途。
【請求項44】
神経変性疾患が、パーキンソン氏病、アルツハイマー病または萎縮性側索硬化症(ALS)であることを特徴とする、請求項40または42の用途。
【請求項45】
請求項16〜25のいずれかのポリヌクレオチドおよび配列番号51に示したポリヌクレオチドからなる群より選ばれるポリヌクレオチドの、神経障害または神経変性疾患の治療剤を製造するための用途であって、in vivoで製造されるプレ(γ)プロGDNFタンパク質およびプレ(β)プロGDNFタンパク質の分泌が、神経刺激および神経生理学的刺激の制御下にあることを特徴とする用途。
【請求項46】
神経障害または神経変性疾患の治療方法であって、神経障害または神経変性疾患を発症した対象に治療に効果的な量のプレ(γ)プロGDNFタンパク質、プレ(β)プロGDNFタンパク質、または該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを投与することを包含する方法。
【請求項47】
プレ(γ)プロGDNFタンパク質が、請求項2、5、8または11のいずれかのタンパク質であることを特徴とする、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
プレ(β)プロGDNFタンパク質が、請求項12および13のタンパク質、ならびに配列番号52に示したタンパク質からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
治療に効果的な量のGDNFタンパク質スプライスバリアントを薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含有し、該GDNFタンパク質スプライスバリアントは、請求項1〜14のいずれかのGDNFタンパク質スプライスバリアント、および配列番号52に示したGDNFタンパク質スプライスバリアントからなる群より選ばれることを特徴とする医薬組成物。
【請求項50】
ベクターに挿入した治療に効果的な量のポリヌクレオチドを含有する医薬組成物であって、該ポリヌクレオチドは、請求項16〜26のいずれかのポリヌクレオチドおよび配列番号51に示したポリヌクレオチドからなる群より選ばれるものであり、該ベクターは、治療に効果的なGDNFタンパク質産物のin vivo合成を達成するために、神経障害または神経変性疾患を発症した患者の細胞にポリヌクレオチドを導入するのに適したものであることを特徴とする医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【公表番号】特表2011−500075(P2011−500075A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530499(P2010−530499)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050599
【国際公開番号】WO2009/053536
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510114549)
【出願人】(501130512)
【Fターム(参考)】