説明

GM−CSFの放出の延長

【課題】医薬投与系のための新規ポリマーブレンドの提供。
【解決手段】異なる分子量を有し、放出すべき化合物がその中に分散されている、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマーからなる群から選択される3つ以上のポリマーのブレンドを含む、微粒子。さらに、アルギネート、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるポリマーから形成される、含水したヒドロゲルの最終重量の90%までの量の水を吸収する合成重合ヒドロゲル中に分散したGM-CSFを含む、ヒドロゲル微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)ための、放出を制御し、延長したミクロスフェア処方物の領域である。
【背景技術】
【0002】
GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)は、造血祖細胞の増殖および分化を促進する造血性増殖因子である。GM-CSFのクローン化された遺伝子は、細菌、酵母、および哺乳動物細胞で発現されてきた。内因性ヒトタンパク質は、約22,000ダルトンの分子量を有するモノマーの糖タンパタ質である。酵母発現系で産生されたGM-CSFは、Leukline(商標)としてImmunex Corporation, Seattle ,Wasingtonから市販されている。それは、19,500、16,800、および15,500ダルトンの分子量を有する3つの主な分子種によって特性づけられる127アミノ酸の糖タンパク質である。
【0003】
一般に、GM-CSFは、白血球に対する至適効果を得るために少なくとも6〜7日間にわたり投与される。いくつかの環境下で、約1週間にわたるGM-CSFの連続的な、0次、または1次速度論的放出を提供する処方物を有することが所望される。さらに、GM-CSFの放出維持処方物は、標準的な液体処方物にはない有利な治療的用途を有し得る。しかし、GM-CSFの放出維持処方物は、現在は利用可能でない。
【0004】
放出制御処方物は、薬物送達について周知である。生分解性および非生分解性ポリマーの両方は、一定期間にわたりカプセル化された薬物の放出を得る目的で、種々の直径、多孔性、および薬物充填のミクロカプセル、ミクロスフェア、または微粒子を形成するために使用されてきた。開発されてきた多くの処方物は、注射による投与のために設計されてきたが、放出制御処方物の大部分は、腸溶性のコーティングを有するか、または経口投与のために開発されてきた胃腸管を通過するのに耐性の処方物である。
【0005】
標準的な処方物を用いて直線的放出制御を達成することは困難である。ほとんどの処方物は、微粒子を形成するポリマーの拡散および/または分解による非常に迅速な放出を提供するか、または一般に一定期間後安定期に達するある種の直線的放出後のバースト放出を提供するかのいずれかのために設計される。Orsoliniらの米国特許第5,192,741号は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)から形成されるミクロスフェアからの制御放出を得ることにおける困難性に関する論文の代表である。
【0006】
同様に、LuおよびPark J.Pharm.Sci.Technical 49,13-19(1995)は、ミクロカプセルの使用を記載している。ミクロスフェアを用いて良好な放出特性を得ることが出来ないこと、そしてミクロスフェア中のタンパク質の安定性が問題であることに留意のこと。与えられた容量に依存してその効果が広範に変化し得る場合は、GM-CSFは非常に強力な化合物であるので、放出されている薬物の安定期後のバーストよりも、むしろより直線的な放出を得るためのいくつかの環境において有利であり得る。
【0007】
制御放出に関する多くの特許の代表は、PLGAキャリアからのペプチドの多面的放出を開示するHutchinsonの米国特許第4,767,628号である。使用されたポリマーのブレンドは、多面的放出を回避するための大規模マトリックス送達系である。Ticeらの米国特許第4,897,268号は、同じ組成物における異なるPLGAの使用を開示するが、直線的放出を達成するために異なるPLGAから作製したミクロスフェアをブレンドしている。Yamamotoらの米国特許第4,849,228号は、伝えられるところでは非常に優れた放出特性を有する、非常に低い一塩基酸成分を有するPLGAミクロスフェアをクレームする。
【0008】
Schering CorporationによるPCT WO 94/01133は、ポリアンヒドライド、ポリホスファゼン、およびコラーゲンのような種々のポリマーを用いて調製したGM-CSFのミクロスフェアを開示する。Medgenix Group S.A.によるPCT WO 91/12882は、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)のようなポリマーを用いて調製した水溶性物質の制御放出のためのミクロスフェアを開示する。
【0009】
Sandoz Patent GMBHによるPCT WO 95/06077は、ポリ(エチレンカーボネート)を含む重合物質および重合物質から作製された薬学的組成物を開示する。Schwarz Pharma AGによるDE 44 06 172 A1は、電解質置換ポリオールおよびポリ(ヒドロキシ酸)から調製した500,000までの分子量を有する分岐ポリエステルを開示する。
【発明の開示】
【0010】
従って、本発明の目的は、注射による患者への投与後の1日より多い期間にわたり、0次速度論、1次放出速度論、または多面的放出速度論を伴う、制御され、延長された放出を提供するGM-CSFをカプセル化した処方物を提供することである。
経口投与、経粘膜、局所、または注射による投与のためのGM-CSFの送達のための処方物を提供することは本発明のさらなる目的である。
【0011】
発明の要旨
放出制御、延長制御GM-CSFのための処方物は開発されている。これらは、経口投与、経粘膜投与、局所投与、または注射によって投与された場合、1日〜少なくとも1週間にわたる放出の維持を生じる賦形剤および薬物充填剤を有する生分解性の、合成ポリマー(例えば、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、およびそのコポリマー)の組合せから形成された固体微粒子に基づく。好ましい実施態様において、微粒子は、それらの投与の経路に依存して異なる直径を有する。注射によって投与される微粒子は、10と100ミクロンの間のサイズ範囲の、針を通過するために十分に小さい直径を有する。経口投与される微粒子は、小腸におけるパイエル板による取り込みを促進するために、直径は10ミクロン未満である。
【0012】
他の実施態様は、薬物がインビボで分布する放出速度論または様式を変化させるために開発されてきた。例えば、いくつかの場合において、穏やかな炎症反応を惹起するポリマー(例えば、ポリマー自身またはポリマー中のわずかな混入物のいずれかによって化学誘引物質として作用するPLGAおよびポリアンヒドライド)が選択される。別の実施態様において、GM-CSFは、皮下でまたは放出制御のための特定の部位で注射され得るヒドロゲル中に投与される。
【0013】
微粒子またはヒドロゲルは、造血細胞(特に、白血球)の増殖を刺激するための有効量が患者に投与される。注射によって投与される、最も好ましいミクロスフェアが存在する。
実施例は、0次、1次、または多面的放出速度論をで長期間にわたりGM-CSFを放出する微粒子の調製を示す。放出速度論の型は、特定の臨床的適用について決定される。データは、所望の放出特性を達成することだけでなく、カプセル化されたGM-CSFの非常に高レベルの生物活性を回復することもまた可能であることを示す。実施例はまた、ヒドロゲルからの放出を実証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
GM-CSFの放出制御処方物には多くの利点がある。これらの中には、患者および医者にとって一回の注射でよいこと、反復注射に付随するGM-CSFの全身濃度のピークおよび谷間が避けられること、GM-CSFの全用量が減少する可能性、およびGM-CSFの薬理学的効果が増強する可能性がある。GM-CSFの放出制御処方物によってまた、以前には開発されていなかった、ワクチンのアジュバントのような様式でGM-CSFを使用する機会が提供される。
【0015】
放出制御処方物
本明細書で使用する、GM-CSFの「持続的な(sustaind)」または「継続的な(extended)」放出は、連続的または断続的、直線的または非直線的であり得る。これは、所望の効果を生じるために、単独で、または組み合わせて、または連続的に投与される、1つ以上のタイプのポリマー組成物、薬物増量剤、賦形剤または分解増強剤の含有物、または他の改変剤を用いて達成され得る。0次または直線的放出は、一般に、経時的に放出されるGM-CSFの量が、所望の時間枠(例えば、6〜7日)の間、量/単位時間の関数として比較的一定のままであることを意味すると解釈される。多相的は、一般に、放出が一回を超える「バースト」で起こることを意味すると解釈される。
【0016】
本明細書で使用する「微粒子」は、1mm未満、より代表的には100ミクロン未満の直径を有する粒子をいう。微粒子は、ミクロスフェアおよびミクロカプセルもいい得る。ミクロスフェアは固形の球状の微粒子である。ミクロカプセルは異なるポリマー、薬物、または組成物のコアを有する球状の微粒子である。本明細書中で他に述べない限りは、微粒子は、固形の粒子をいい、ミクロカプセルはいわない。
【0017】
微粒子の処方のためのポリマー
多くのポリマーが、薬物送達の制御のために使用されている。ポリマーは、代表的には、エチレンビニルアセテートおよびポリ(アクリル酸)のような熱可塑性の合成ポリマー(これらは身体への移植後少なくとも2年または3年の期間にわたって、比較的同じ形態を維持するために、一般に、非生分解性であると考えられている)、およびポリ(ヒドロキシ酸)のような生分解性ポリマー(ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびそれらのコポリマー、ポリアンヒドライド、ポリオルトエステル、ならびに特定のタイプのタンパク質および多糖ポリマーを含む)である。本明細書で使用する、用語生体侵食性または生分解性は、一旦pH6〜8の生理学的溶液に約25℃と38℃との間の温度で曝露されると、約5年未満および最も好ましくは約1年未満の所望の適用(通常はインビボ治療法)において受容し得る期間内で、溶解または分解するポリマーを意味する。
【0018】
好ましいポリマー材料は、生分解性でかつ少なくとも移植後の6〜7日の間、放出を制御するに十分な形態を保持する材料である。ポリ(ヒドロキシ酸)、特にポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(「PLGA」)は、数十年間、分解性縫合糸の製造に使用されてきたので、特に好ましいポリマーである。ポリマーは、身体の水性環境に曝露された後に、加水分解によって分解される。ポリマーは、加水分解されて乳酸およびグリコール酸のモノマー(これらは細胞の代謝の通常の副産物である)を生じる。
【0019】
ポリマーの分解速度は、ポリマー分子量、ポリマー鎖におけるラクチドモノマー対グリコリドモノマーの比、およびモノマーサブユニットの立体規則性(LおよびDの立体異性体の混合物は、ポリマーの結晶性を破壊し、ポリマー分解を増強する)を含むいくつかの因子に依存して、数週間から1年を超える期間まで変動し得る。異なる分子量、および/または異なるラクチド対グリコリド比を有するPLGAをブレンドすることによって、特に有用な結果が得られる。分子量およびモノマー比を最適化して、所定の期間にわたって放出速度論を調節し得る。より高い分子量では、より長期間その構造的完全性を保持するポリマーマトリクスがもたらされる;一方、より低い分子量では、より速い放出およびより短いマトリクスの寿命の両方がもたらされる。
【0020】
本明細書中で記載する好ましい実施態様において、ミクロスフェアは、少なくとも2つ、そしてより好ましくは3つ以上の、生分解性ポリマー、好ましくは加水分解に不安定なポリマー、最も好ましくは異なる分子量および/またはモノマー比のポリ(ヒドロキシ酸)のブレンドを含む。好ましい実施態様において、3つの異なる分子量のPLGAがブレンドされて、所定の期間(少なくとも1日から約60日の範囲)にわたり直線的な放出を有する組成物を形成する。約1〜21日の放出を得るためのより好ましい実施態様において、PLGAは、1000と20,000との間、より好ましくは5,000と10,000との間、20,000と35,000との間、より好ましくは25,000と30,000との間、そして35,000と70,000との間の分子量を有する。約1週間にわたる放出のための最も好ましい実施態様において、約6,000、30,000、および41,000の分子量を有するPLGAが組み合わされる。
【0021】
PLAポリマーは、通常、乳酸の環状エステルから調製される。乳酸のL(+)型およびD(-)型の両方が使用され、PLAポリマーならびにD(-)乳酸およびL(+)乳酸の光学的に不活性なDL-乳酸混合物を調製し得る。ポリラクチドを調製する方法は、特許文献に良く記載されている。以下の米国特許は、適切なポリラクチド、それらの特性およびそれらの調製を詳細に記載している:Doroughの米国特許第1,995,970号;Schneiderの同第2,703,316号;Salzbergの同第2,758,987号、Zeileの同第2,951,828号;Higginsの同第2,676,945号;ならびにTrehuの同第2,683,136号、同第3,531,561号。
【0022】
白血球へのGM-CSFの送達を標的化することが所望されるので、GM-CSFがアジュバントとして単独または抗原と組み合わせて使用されている場合は特に、ポリマーは、まさに放出制御以外の性質に基づいて選択され得る。例えば、特定のポリマーは、炎症性であり、従って白血球、マクロファージ、および他の「白血球」細胞を誘引することが知られている。「化学誘引物質」ポリマーの例としては、ポリヒドロキシ酸(PL、PG、PLGA)、ポリアンヒドライド、ポリ(オルトエステル)、およびポリホスファゼンが挙げられる。
【0023】
微粒子が経粘膜送達または経口送達を意図される場合は、生体接着性であるポリマーを選択することが所望され得る。生体接着性のポリマーの例としては、親水性ポリマー、特にカルボキシル基を含むポリ(アクリル酸)のようなポリマーが挙げられる。その平滑な表面が侵食されると、外表面にカルボキシル基が曝露される、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリアンヒドライド、およびポリオルトエステル)のような迅速に生体に侵食されるポリマーが有用である。代表的な天然のポリマーは、ゼイン、アルブミン、およびコラーゲンのようなタンパク質、ならびにセルロース、デキストラン、およびアルギン酸のような多糖がある。
【0024】
他の典型的な合成ポリマーとしては、ポリアミド、ポリカルボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン、セルロース(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、およびニトロセルロースを含む)、アクリルエステルおよびメタクリルエステルのポリマー、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリアンヒドライド、ポリオルトエステルブレンド、およびそのコポリマーが挙げられる。
【0025】
ヒドロゲルの形成のためのポリマー
有用であり得る他のポリマー性物質としては、アルギネートのような天然に存在する多糖のようなヒドロゲル、ならびにいくつかのポリアクリル酸、ポリホスファゼン、ポリエチレングリコール-PLGAコポリマー、および水の最終重量の90%まで吸収する他の合成生分解性ポリマーのような合成のヒドロゲル物質が挙げられる。
【0026】
身体内への移植のためにGM-CSFと混合されるポリマー性物質は、ヒドロゲルを形成しなければならない。ヒドロゲルは、有機ポリマー(天然または合成)が共有結合、イオン結合、または水素結合によって架橋して、ゲルを形成するための水分子を捕獲する3次元的開格子構造を生じるときに形成される物質として定義される。ヒドロゲルを形成するために使用され得る物質の例としては、アルギネート、ポリホスファゼン、およびポリアクリレートのような多糖(これらは、イオン的に架橋する)、あるいPluronicsTMまたはTetronicsTM、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマーのようなブロックコポリマー(これらは、温度またはpHによってそれぞれ架橋する)が挙げられる。他の物質としては、フィブリンのようなタンパク質、ポリビニルピロリドンようなポリマー、ヒアルロン酸、およびコラーゲンが挙げられる。Hubbellらの米国特許第5,286,495号および同第5,410,016号は、生体適合性のヒドロゲルの形成に有用な物質を記載している。
【0027】
一般に、荷電側鎖またはその1価のイオン塩を有するこれらのポリマーは、水性溶液(例えば、水、緩衝化塩溶液、または水性アルコール溶液)中で少なくとも部分的に可溶性である。カチオンと反応し得る酸性の側鎖を有するポリマーの例は、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、ポリ(ビニルアセテート)、およびスルホン化ポリマー(例えば、スルホン化ポリスチレン)である。アクリル酸またはメタクリル酸とビニルエーテルモノマーまたはポリマーとの反応によって形成される酸性の側鎖を有するコポリマーもまた使用され得る。酸性基の例には、カルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化(好ましくはフッ化)アルコール基、フェノール性水酸基、および酸性水酸基がある。
【0028】
アニオンと反応し得る塩基性側鎖を有するポリマーの例には、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、およびいくつかのイミノ置換ポリホスファゼンがある。ポリマーのアンモニウム塩または4価の塩もまた、骨格窒素またはペンダントイミノ基から形成され得る。塩基性側鎖の例は、アミノ基およびイミノ基である。
アルギン酸カルシウムおよび特定の他のポリマーは、順応性がありそしてGM-CSFをカプセル化するために使用され得るイオン性ヒドロゲルを形成し得る。アルギネートは、水中、室温で2価のカチオンとイオン的に架橋して、ヒドロゲルマトリクスを形成し得る。架橋により生成されたヒドロゲルは、2価のカチオンを有する、アルギン酸のアニオン塩(海草から単離された炭水化物ポリマー)であり、その強度はカルシウムイオンまたはアルギネートのいずれかの濃度の増加にともなって増加する。
【0029】
荷電側鎖を有する水溶性ポリマーは、反対の電荷の多価イオン(ポリマーが酸性側鎖を有する場合は多価のカチオン、またはポリマーが塩基性側鎖を有する場合は多価のアニオンのいずれか)を含む水溶液と、ポリマーとを反応することによって架橋される。ヒドロゲルを形成するための酸性側鎖を有するポリマーの架橋に好ましいカチオンは、2価または3価のカチオン(例えば、銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、およびスズ)であるが、2、3、または4官能基の有機カチオン(例えば、アルキルアンモニウム塩(例えば、R3N+、-C6-+NR3))もまた使用され得る。これらのカチオンの塩の水溶液をポリマーに添加して、軟らかい、高度に膨潤性のヒドロゲルおよび膜が形成される。カチオンの濃度が高くなるほど、または価が高くなるほど、ポリマーの架橋の程度が高まる。0.005Mほどの低い濃度でも、ポリマーが架橋されることが示されている。より高い濃度は、塩の溶解度で制限される。
【0030】
ヒドロゲルを形成するためのポリマーの架橋に好ましいアニオンは、低分子量のジカルボン酸のような2価または3価のアニオン(例えば、テレフタル酸、硫酸イオン、および炭酸イオン)である。これらのアニオンの塩の水溶液をポリマーに添加して、カチオンに関して記載したような、軟らかく、高度に膨潤性のヒドロゲルおよび膜を形成する。
種々のポリカチオンが複合体化のために使用され得、それにより、半透性表面膜中にポリマーヒドロゲルを安定化させ得る。使用され得る物質の例として、3,000〜100,000の間の好ましい分子量を有する、アミン基またはイミン基のような塩基性反応基を有するポリマー(例えば、ポリエチレンイミンおよびポリリジン)が挙げられる。
【0031】
これらは市販されている。1つのポリカチオンはポリ(L-リジン)である;合成ポリアミンの例は:ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルアミン)、およびポリ(アリルアミン)である。ポリサッカライド、キトサンのような天然のポリカチオンもある。ポリマーヒドロゲル上の塩基性表面基との反応によって半透性膜を形成するために使用され得るポリアニオンとして、アクリル酸、メタクリル酸、およびアクリル酸の他の誘導体のポリマーおよびコポリマー、スルホン化ポリスチレンのようなペンダントSO3H基を有するポリマー、ならびにカルボン酸基を有するポリスチレンが挙げられる。
【0032】
これらのポリマーは市販されているか、または当業者に公知の方法を用いて合成され得る。例えば、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts,E.Goethals編(Pergamen Press,Elmsford,NY 1980)を参照のこと。
【0033】
GM-CSF
GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)は、造血前駆細胞の増殖および分化を促進する造血増殖因子である。GM-CSFのクローン化された遺伝子は、細菌、酵母、および哺乳動物細胞において発現されている。内因性タンパク質は、約22,000ダルトンの分子量を有する単遺伝子性(monomeric)の糖タンパク質である。細菌細胞中で発現される組換え調製物はグリコシル化されていない。酵母発現系で産生されるGM-CSFは、Immunex Corporation,Seattle,WashingtonによりLeukine(商標)として売られている。Leukine(商標)は凍結乾燥形態で固体である。これは、19,500、16,800、および15,500ダルトンの分子量を有する3つの主要な分子種によって特徴づけられる127アミノ酸の糖タンパク質である。
【0034】
GM-CSFは、Conlonらの米国特許第5,078,996号に記載される。GM-CSFのアナログは、Deeleyらの米国特許第5,229,496号、同第5,393,870号、および同第5,391,485号に記載されている。好ましい実施態様において、GM-CSFは、約14,000〜20,000の分子量を有する組換えタンパク質であり、タンパク質を過グリコシル化(hyperglycosylate)する酵母中で作製され、これは、このタンパク質を用いて観察される非特異的吸収の量をおそらく制限する。GM-CSF融合タンパク質がまた使用され得る。GM-CSF融合タンパク質の例として、IL-3および他のリンホカインまたは増殖因子との融合タンパク質が挙げられる。
【0035】
微粒子の調製
ミクロスフェアまたは固形の微粒子が、当業者に公知の多くの任意の技術を用いて調製され得る。GM-CSFは、通常、プロセシングに対して(特に、有機溶媒の存在下で、これは、微粒子に取り込まれる前のGM-CSFと比較して非常に高レベルの生物活性(代表的には、90%より多い)を有するGM-CSFを含む微粒子形成を促進する)安定であるようである。調製方法の例として、溶媒蒸発、スプレー乾燥、溶媒抽出、および当業者に公知の他の方法が挙げられる。上記のように、ヒドロゲルは代表的には、イオン架橋、イオンもしくはポリイオンの添加、または光架橋または化学的架橋の他の形態によって形成される。
【0036】
ミクロスフェア調製物
生体侵食性ミクロスフェアは、例えば以下に記載されるような薬物送達のためのミクロスフェアを作製するために開発された任意の方法を用いて調製され得る:MathiowitzおよびLanger,J.Controlled Release 5,13-22(1987); Mathiowitzら、Reactive Polymers 6,275-283(1987); ならびにMathiowitzら、J.Appl.Polymer Sci. 35,755-774(1988)。方法の選択は、ポリマーの選択、サイズ、外部の形状、および例えば、以下に記載されるような所望の結晶性に依存する:Mathiowitzら、Scanning Microscopy 4,329-340(1990); Mathiowitzら、J.Appl.Polymer Sci. 45,125-134(1992); およびBenitaら、J.Pharm.Sci. 73 1721-1724(1984)。方法として、溶媒蒸発、相分離、スプレー乾燥、および高温溶解カプセル化が挙げられる。米国特許第3,773,919号;同第3,737,337号;および同第3,523,906号は、ミクロスフェアを作製するための方法の代表である。
【0037】
好ましい方法が、Lawterらの米国特許第5,000,886号に記載されている。GM-CSFは水溶液中に分散され、次いでこれはポリマーの有機溶液と混合される。分散物はポリマーおよびGM-CSFの非溶媒に添加され、次いで微粒子は揮発性のシリコーン液へのポリマー溶媒の抽出によって硬化される。
【0038】
溶媒蒸発において、例えば以下に記載されるように、ポリマーは揮発性有機溶媒中に溶解される:Mathiowitzら、(1990)、Benita、およびJeffeの米国特許第4,272,398号。GM-CSF(可溶性形態または微細粒子として分散されたかのいずれか)はポリマー溶液に添加され、そして混物は、ポリ(ビニルアルコール)のような界面活性剤を含む水相に懸濁される。得られたエマルジョンは有機溶媒のほとんどが蒸発するまで撹拌され、固形のミクロスフェアが残る。
【0039】
一般に、ポリマーは塩化メチレン中に溶解され得る。いくつかの異なるポリマー濃度(例えば、0.01〜0.50g/mlの間)が使用され得る。GM-CSFを含む溶液のローディング後、溶液は、200mlの激しく撹拌している、1%(w/v)ポリ(ビニルアルコール)(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を含む蒸留水に懸濁される。撹拌の4時間後、有機溶媒はポリマーから蒸発され、そして生じたミクロスフェアは水で洗浄され、そして凍結乾燥器で一晩乾燥される。
【0040】
異なるサイズ(1〜1000ミクロンの間)および形状を有するミクロスフェアは、ポリエステルおよびポリスチレンのような比較的安定なポリマーに有用なこの方法によって得ることができる。しかし、ポリアンヒドライドのような不安定なポリマーは、水にさらされることによって分解し得る。これらのポリマーについて、高温融解カプセル化および溶媒除去が好まれ得る。
【0041】
溶媒除去は、ポリアンヒドライドを用いるのが特に有用である。この方法において、薬物を、塩化メチレンのような揮発性の有機溶媒中の選択されたポリマーの溶液中に分散または溶解させる。次いで、混合物を、シリコーンオイルのようなオイル中で撹拌によって懸濁し、エマルジョンを形成させる。24時間以内に、溶媒は油相へ拡散し、そしてエマルジョン小滴が硬化し固体のポリマーミクロスフェアになる。溶媒のエバポレーションと異なり、この方法は、高融点でかつ広範囲の分子量を有するポリマーから微粒子を作製するために用いられ得る。直径1〜300ミクロンを有するミクロスフェアは、この手順を用いて得られ得る。球の外部形態は、使用したポリマーのタイプに高く依存している。
【0042】
噴霧乾燥では、ポリマーを塩化メチレンに溶解する(0.04g/ml)。既知量の活性薬物をポリマー溶液中に懸濁するか(不溶性の場合)、あるいは共溶解する(可溶性の場合)。次いで、溶液または分散液を噴霧乾燥する。直径1〜10ミクロン範囲のミクロスフェアが、ポリマーの選択に依存した形態で得られ得る。
【0043】
アルギン酸またはポリホスファゼンまたは他のジカルボン酸ポリマーのようなゲルタイプポリマーから作製されるハイドロゲル微粒子は、水溶液中にポリマーを溶解し、材料を懸濁して取り込ませ混合物とし、そしてポリマー混合物を微滴形成デバイス(microdroplet forming device)(これは窒素ガス噴射を備えている)に通して押し出すことによって調製され得る。得られた微粒子を、緩やかに撹拌しているイオン硬化バス中へ滴下する(例えば、Salibら、Pharmazeutische Industrie 40-11A、1230(1978)によって記載されるように)。
【0044】
このシステムの利点は、微粒子の表面を、作製後、ポリリジンのようなポリカチオン性のポリマーでコーティングすることで、さらに改変できることである(例えば、Limら、J.Pharm.Sci.70,351-354(1981)に記載されるように)。Limらが記載しているように、アルギン酸の場合、ハイドロゲルは、アルギン酸とカルシウムイオンとをイオン的に架橋させ、次いで、作製後、微粒子の外側表面とポリリジンのようなポリカチオンとを、架橋させることで形成され得る。ミクロスフェア粒子サイズは、さまざまなサイズ押し出し装置、ポリマー流速およびガス流速を使用して制御される。
【0045】
キトサン微粒子は、ポリマーを酸性溶液に溶解し、そして三リン酸塩(tripolyphosphate)と架橋させることによって調製され得る。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)ミクロスフェアは、ポリマーを酸溶液中に溶解し、そして微粒子を鉛イオンで沈澱させることで調製される。アルギン酸/ポリエチレンイミド(PEI)は、アルギン酸微粒子上のカルボキシル基の量を減少させるように調製され得る。
【0046】
GM-CSFのロード
送達できるGM-CSFのロード範囲は、代表的に約0.001〜10重量%である。GM-CSFは、重合マトリックス中へ0.001重量%〜10重量%までの割合で取り込まれ得る。
好ましい実施態様では、GM-CSFは、2重量%でPLGAブレンド中へ取り込まれる。
ロードは、処置される疾病、およびGM-CSFが放出される時間に依存する。ワクチンアジュバンドとして使用するためには、より少ない投与量が必要であり、0.001〜0.1%の範囲である。重篤な感染症の処置のための微粒子は、代表的に2重量%の薬物をロードする微粒子で送達される。
【0047】
放出を変化させる微粒子への添加剤
ポリマー加水分解は酸性または塩基性pHで加速されるので、酸性または塩基性賦形剤の含有がポリマー侵食速度を調節するために使用され得る。賦形剤は、粒子として添加され得、取り込まれたGM-CSFと混合され得るかまたはポリマー中に溶解され得る。
【0048】
分解増強剤は、ポリマー重量に関する重量に基づく。それらは、蛋白質相に添加され得るか、分離相(例えば、粒子として)として添加され得るか、または化合物に依存するポリマー相へ共溶解され得る。全ての場合において、その量は0.1〜30%(W/Wポリマー)とされるべきである。分解増強剤のタイプは、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウムのような無機酸、クエン酸、安息香酸、ヘパリンおよびアスコルビン酸のような有機酸、炭酸ソーダ、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、および水酸化亜鉛のような無機塩基、およびプロタミン硫化物、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンのような有機塩基、ならびにTweenTMおよびPluronicTMのような界面活性剤を包含する。
【0049】
管孔形成剤は、マトリックスに微小構造を加えるために使用する(すなわち、無機塩および糖のような水溶性化合物)。それらは粒子として添加される。その範囲は1〜30%(w/wポリマー)とされるべきである。
賦形剤はまた、放出持続期間に依存して効力を維持するために、GM-CSFへ添加し得る。安定剤は、炭水化物、アミノ酸、脂肪酸、および界面活性剤を包含し、当業者に公知である。さらに、GM-CSFの溶解度を改変する賦形剤(例えば、塩、複合体化剤(アルブミン、プロタミン))は、微粒子からの蛋白質の放出速度を制御するために使用され得る。
【0050】
GM-CSFについての安定剤は、重量基準でGM-CSFに対する安定剤の重量比に基づく。例は、ショ糖、乳糖、マンニトール、デキストラン、およびヘパリンのような炭水化物、アルブミンおよびプロタミンのような蛋白質、アルギニン、グリシンおよびスレオニンのようなアミノ酸、TweenTMおよびPluronicTMのような界面活性剤、塩化カルシウムおよびリン酸ナトリウムのような塩、および脂肪酸、リン脂質、および胆汁酸塩のような脂質を包含する。
その比率は、一般的に炭水化物:蛋白質、アミノ酸:蛋白質、蛋白質安定剤:蛋白質、および塩:蛋白質は1:10〜4:1;界面活性剤:蛋白質は1:1000〜1:20;そして脂質:蛋白質は1:20〜4:1である。
【0051】
処置されるべき臨床微候
細胞増殖のための全身送達 GM-CSFは、白血球の増殖を増加させる必要のある患者の処置について認可されている。データは、GM-CSFがまたワクチンアジュバントとしても有用であることを示している(Morrisseyら、J.Immunology 139,1113-1119(1987))。GM-CSF微粒子はまた、感染の傾向のある患者(例えば、リスクの高い内臓手術を受ける患者、外傷を受けた人、およびHIV保有個体)の処置に使用され得る。GM-CSFのプロトコルおよび臨床的効力は当業者に周知である。本明細書に記載されるように、そのプロトコルは、微粒子またはハイドロゲルからの放出プロフィールから生じる送達速度および投与量の変化に反映して、適切に改変される。
【0052】
GM-CSFについての放出プロフィールに関するインビトロデータ、および効力は、インビボデータの予測を表しているようである(同一ではないが)。以下の実施例で示されるように、アカゲザルのデータは、GM-CSFの投与後4日以内の白血球数の最大増加を示す。一方、インビトロの結果は、取り込まれたGM-CSFの完全な放出に6〜7日必要であることを示した。GM-CSFの使用の利点は、蛋白質自身が非常に安定であり、いくつかのプロセスのいずれか1つを用いて微粒子へ取り込んだ後、生物学的活性の少なくとも60%、多くの場合90〜100%が保持されていることである。
【0053】
アジュバントとしての局所投与
ワクチン応答の増強はGM-CSFのみの使用により得られ得るが、より好ましくは、GM-CSFの制御放出と組み合わせたポリマーの選択により得られる。特定のポリマーが白血球に対する化学誘引物質として働くことが知られている。PLGAは、ポリアンヒドライドおよびポリオルトエステルのように、軽度に炎症性である。GM-CSFのマトリックスとしての化学誘引物質ポリマーの選択を通して、約1週間にわたる制御放出を生じる形態で、最大ワクチン増強が得られ得る。この実施態様では、放出は、微粒子またはハイドロゲルだけでなく、さまざまな形態の重合マトリックスから得られ得る。GM-CSFおよびポリマーは、GM-CSFのアジュバント効果および白血球へのGM-CSFのターゲティングを増強するように相乗作用さえし得る。
【0054】
GM-CSFはまた、腫瘍ワクチンとして使用するために、腫瘍抗原、または抗原もしくはそれらの表面を発現する腫瘍細胞と共に注入され得る。
【0055】
局所的または経粘膜的(transmucosal)投与
ヒドロゲル処方物は、局所的適用に特に有用である。例えば、GM-CSFは、Braunsteinら、J.Invest.Dermatol. 103,601-604(1994)により、ヒト皮膚においてケラチノサイト増殖を刺激することが示されており、従って局所的創傷治癒剤として利用され得る。GM-CSFの微小粒子の粘膜送達もまた、粘膜の免疫の刺激において有効であり得る。なぜなら、このタンパク質は、抗体産生において役割を果たすことが示されているからである(Grabsteinら、J.Mol.Cell.Immunol. 2,199-207(1986))。
【0056】
GM-CSF微小粒子の投与
造血祖細胞の増殖の刺激のための好ましい実施態様において、1〜2ヶ月の期間にわたって分解する微小粒子に含まれるGM-CSFが投与される。微小粒子サイズは、好ましくは、10〜60ミクロンの範囲であり、平均35ミクロンの直径を有し、そして懸濁媒体の補助と同時に注入される。1つの実施態様において、懸濁媒体は、22ゲージ針を用いる、3%メチルセルロース、4%マンニトール、および0.1% TweenTM80からなる。別の実施態様において、3%メチルセルロースは、1%カルボキシメチルセルロースに置き換えられる。1mlの粘着性懸濁媒体が、7日間にわたって125μg/m2/日を送達するのに十分なGM-CSFを含む100mgの微小粒子を懸濁するために必要とされる。より多くの用量は、より多くの微小粒子を注入することにより達成され得る。例えば、250μg/m2/日の用量は、2回の1ml注入(それぞれは、100mgの微小粒子を含む)を必要とする。
【実施例】
【0057】
本発明は、以下の限定しない実施例の参照によりさらに理解される。
実施例1相分離プロセスを用いるミクロスフェアの調製
A.Lot#14223-133、サンプル「A」
カプセル化ポリマーは、0.43 dL/g(30℃で0.5% w/vのヘキサフルオロイソプロパノール溶液中で測定された)の固有粘度、および45:55のグリコリド:ラクチド比を有する、ポリ(グリコリド-co-d,l ラクチド)であった。開始剤としてのグリコール酸および触媒としての塩化第一スズ二水和物を用いて調製した。コポリマー内でのラクトイル基およびグリコイル基の分布は、C13 MNRおよび溶解度測定によりランダムであることが示された。残存ラクチド含量を、真空ストリッピングによって減少させた。カプセル化ポリマー溶液を、100gのポリマーを900gの塩化メチレンに添加し、そしてポリマーが溶解するまで混合物を撹拌することにより調製した。
【0058】
0.978mlのGM-CSF溶液(100mM tris緩衝液中で63.3mg/ml)を、カプセル化ポリマー溶液の20g部分に添加した。混合物を、10-mmヘッドを用いるホモジナイザーで、10,000RPMで2分間撹拌し、油中水型(W/O)エマルジョンを作製した。
【0059】
18.0gのDow Corning(商標)244液(ポリジメチルシロキサン)を、W/Oエマルジョンに添加し、そして混合物を10,000RPMで2分間ホモジナイズした。次いで、混合物を10,000RPMで2分間ホモジナイズした。次いで、混合物を、750RPMでの撹拌下で2.4kgのDow Corning(商標)244液(オクタメチルシクロテトラシロキサン)に添加して、ミクロスフェアを硬化させた。90分間撹拌を続けた。ミクロスフェアを、1μmステンレススチール網と合わせた濾過器を用いて収集し、次いで真空下で乾燥した。
【0060】
粒子サイズ分布を、Malvern 2600 Particle Sizerを用いて分析した。約50mgのミクロスフェアを、約10mlのDow Corning(商標)244液中に懸濁しそして2分間音波処理して、ミクロスフェアを十分に分散させた。次いで、この懸濁液の2、3滴を、Dow Corning(商標244液を含む光学セルに添加した。次いで、粒子サイズ分布を測定した。サンプルは、66.7μmの容量中央値直径を有し、10%のミクロスフェアは、24.1μm未満であり、90%のミクロスフェアは、118.6μm未満であった。
【0061】
B.Lot#14223-134、サンプル「B」カプセル化ポリマーおよび塩化メチレン中のその溶液は、「A」に記載したものと同一である。
0.320mlのGM-CSF溶液(100mM tris緩衝液中で63.3mg/ml)を、カプセル化ポリマー溶液の20g部分に添加した。混合物を、10-mmヘッドを用いるホモジナイザーを用いて、10,000RPMで2分間撹拌し、油中水型(W/O)エマルジョンを作製した。
【0062】
18.0g1のDow Corning(商標)360液(ポリジメチルシロキサン)を、W/Oマルジョンに添加し、そして混合物を10,000RPMで2分間ホモジナイズした。次いで、混合物を、90分間750RPMでの攪拌下で2.4kgのDow Corning(商標)244液(オクタメチルシクロテトラシロキサン)に添加して、ミクロスフェアを硬化させた。ミクロスフェアを収集し、乾燥し、そして粒子サイズ分布を「A」に記載のように分析した。サンプルは、43.8μmの容量中央値直径を有し、10%のミクロスフェアは、7.0μm未満であり、90%のミクロスフェアは、77.9μm未満であった。
【0063】
図1Aに示すように、サンプル「A」および「B」は、PLGAミクロスフェアが3相様式でGM-CSFを放出するように作製され得ることを証明する。第1の相において、タンパク質を、約5日間にわたって連続的に放出する。この相の後、35日目まで最小GM-CSF放出期間が続く。この時に、GM-CSFの別のパルスを、このシステムから放出する。各相の持続期間を、ミクロスフェアを調製するために使用されるポリマーの型により制御し得る。
【0064】
C.Lot#9663-96A、サンプル「B4」
カプセル化ポリマーは、以下の60:20:20の混合物であった。1)ポリ(グリコリド-co-d,l ラクチド)(これは、47:53のグリコリド:ラクチド比および0.72dL/gの固有粘度(30℃での0.5% w/vのヘキサフルオロイソプロパノール溶液中で測定された)を有する)(ポリマーI)、2)ポリ(グリコリド-co-d,l ラクチド)(これは、50:50のグリコリド:ラクチド比および0.33dL/gの固有粘度(25℃での0.1% w/vのクロロホルム溶液中で測定された)を有する)(ポリマーII)、および3)ポリ(d,l ラクチド)(1938の平均分子量(末端基滴定により測定された)を有する)(ポリマーIII)。ポリマーIIおよびポリマーIIIを、使用する前に再沈澱させた。カプセル化ポリマー溶液を、1.20gのポリマーI、0.40gのポリマーII、および0.40gのポリマーIIIを18.00gの塩化メチレンに添加し、そしてポリマーが溶解するまで、混合物を撹拌することにより調製した。
【0065】
0.481mlのGM-CSF溶液(100mM tris緩衝液中で84.8mg/ml)を、カプセル化ポリマー溶液に添加し、10,000RPMで60秒間20-mmヘッドを用いてホモジナイズして、油中水型(W/O)エマルジョンを作製した。W/Oエマルジョンを含むビーカーを、3ブレードテフロン(登録商標)撹拌器を備えるミキサー下に置き、そして1000RPMで攪拌した。20mlのDow Corning(商標)360液をW/Oエマルジョンに添加する一方、これをシリンジポンプを用いて1分間にわたって1000RPMで撹拌した。次いで、混合物を、400RPMで90分間、攪拌下で2.0kgのDow Corning(商標)244液に添加して、ミクロスフェアを硬化させた。
【0066】
ミクロスフェアを収集し、乾燥し、そして粒子サイズ分布を上記のように分析した。サンプルは、31.8μmの容量中央値直径を有し、10%のミクロスフェアは、14.1μm未満であり、90%のミクロスフェアは、52.2μm未満であった。
【0067】
D.Lot#9663-135C、サンプル「04」
カプセル化ポリマーは、以下の60:20:20の混合物であった。1)ポリ(グリコリド-co-d,l ラクチド)(これは、47:53のグリコリド:ラクチド比および0.72dL/gの固有粘度(30℃での0.5% w/vのヘキサフルオロイソプロパノール溶液中で測定された)を有する)(ポリマーI)、2)ポリ(グリコリド-co-d,l ラクチド)(これは、50:50のグリコリド:ラクチド比および0.33dL/gの固有粘度(25℃での0.1% w/vのクロロホルム溶液中で測定された)を有する)(ポリマーII)、および3)ポリ(d,l ラクチド)(1938の平均分子量(末端基滴定により測定された)を有する)(ポリマーIII)。ポリマーIIおよびポリマーIIIを、使用する前に再沈澱させた。カプセル化ポリマー溶液を、1.20gのポリマーI、0.40gのポリマーII、および0.40gのポリマーIIIを18.00gの塩化メチレンに添加し、そしてポリマーが溶解するまで、混合物を撹拌することにより調製した。
【0068】
0.462mlのGM-CSF溶液(100mM tris緩衝液中で88.4mg/ml)を、カプセル化ポリマー溶液に添加し、10,000RPMで60秒間20-mmヘッドを用いてホモジナイズして、油中水型(W/O)エマルジョンを作製した。W/Oエマルジョンを1000RPMで撹拌した。20mlのDow Corning(商標)360液をW/Oエマルジョンに添加する一方、これをシリンジポンプを用いて1分間にわたって撹拌した。次いで、混合物を、400RPMで90分間、攪拌下で2.0kgのDow Corning(商標)244液に添加し、ミクロスフェアを硬化させた。
【0069】
ミクロスフェアを収集し、乾燥し、そして粒子サイズ分布を上記のように分析した。サンプルは、39.5μmの容量中央値直径を有し、10%のミクロスフェアは、14.9μm未満であり、90%のミクロスフェアは、65.1μm未満であった。
【0070】
E.Lot#9490-168、サンプル「V4」、無菌プロセス
ミクロスフェアを以下のように無菌的に調製した。ガラス器(Glassware)、ミキサーシャフトおよびヘッド、ならびにステンレススチール容器を、使用する前にオートクレーブした。
【0071】
カプセル化ポリマーは、以下の60:20:20の混合物であった。1)ポリ(グリコリド-co-d,l ラクチド)(これは、47:53のグリコリド:ラクチド比および0.72dL/gの固有粘度(30℃での0.5% w/vのヘキサフルオロイソプロパノール溶液中で測定された)を有する)(ポリマーI)、2)ポリ(グリコリド-co-d,l ラクチド)(これは、50:50のグリコリド:ラクチド比および0.33dL/gの固有粘度(25℃での0.1% w/vのクロロホルム溶液中で測定された)を有する)(ポリマーII)、および3)ポリ(d,l ラクチド)(1938の平均分子量(末端基滴定により測定された)を有する)(ポリマーIII)。ポリマーIIおよびポリマーIIIを、使用する前に再沈澱させた。カプセル化ポリマー溶液を、3.00gのポリマーI、1.00gのポリマーII、および1.00gのポリマーIIIを45.00gの塩化メチレンに添加し、そしてポリマーが溶解するまで、混合物を撹拌することにより調製した。この溶液の20.00gを、微小カプセル化のためにグラスファイバープレフィルターおよび0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターに通して濾過した。
【0072】
約100gのDow Corning(商標)360液を、アルミニウムホイルをかぶせたガラスビーカー中で160℃で1時間加熱し、次いで、室温まで冷却した。
2.0kgのDow Corning(商標)244液を、「Millipak(商標)20」0.22μmフィルターに通し濾過し、硬化容器に入れた。
【0073】
0.485mlのGM-CSF溶液(100mM tris緩衝液中で87.3mg/ml、0.2μmのフィルターを通して濾過した)を、20gの濾過されたカプセル化ポリマー溶液に添加し、10,000RPMで60秒間、20-mmヘッドを用いてホモジナイズして、油中水型(W/O)エマルジョンを作製した。
W/Oエマルジョンを含むビーカーを、3ブレードテフロン(登録商標)撹拌器を備えるミキサー下に置き、そして1000RPMで攪拌した。20mlのDow Corning(商標)360液をW/Oエマルジョンに添加する一方、これをシリンジポンプを用いて1分間にわたって1000RPMで撹拌した。
【0074】
次いで、混合物を、4000RPMでの攪拌下で2.0kgのDow Corning(商標)244液に添加して、ミクロスフェアを硬化させた。撹拌を90分間続けた。
ミクロスフェアを収集し、乾燥し、そして粒子サイズ分布をMalvern 2600 Particle Sizerを用いて測定した。次いで、粒子サイズ分布を測定した。サンプルは、32.5μmの容量中央値直径を有し、10%のミクロスフェアは、14.7μm未満であり、90%のミクロスフェアは、54.8μm未満であった。
【0075】
実施例2逆相高速液体クロマトグラフィーを用いたミクロスフェアに組み込まれたGM-CSFの分析
GM-CSFを、最初に酢酸、塩化メチレン、およびリン酸緩衝化生理食塩水を用いてミクロスフェアから抽出した。新たに添加されたストックGM-CSFを含むブランクミクロスフェアからなるコントロールを、同時に抽出した。次いで、抽出物を、糖形態(glycoform)分布についてRP-HPLCにより評価した。
【0076】
組換えヒト(rhu)GM-CSFグリコシル化改変体を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。カラムは、VydacからのC18 10ミクロン、300Åカラム(4.6mm×25cm)である。GM-CSFの糖形態を、25〜65%の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)/0.1% TFA中のアセトニトリル/一定の200mM NaClを含む水の移動相勾配を用いる本方法において分解し得る。
結果は、コントロールのGM-CSF糖形態分布は、抽出プロトコルにより変化せず、そしてミクロスフェアに組み込まれたGM-CSFのRP-HPLCプロフィールは変化しないままであることを示す。
【0077】
実施例3ミクロスフェア調製物からのGM-CSF放出速度論
GM-CSFミクロスフェアの放出速度論を、以下の方法を用いて分析した。ミクロスフェアロット(lot)を、2〜8℃でそれらの最初の容器に保存した。インビトロ放出研究を、調製の2、3日以内に開始した。スクリーニングについての研究を2連で、精度および正確さにおける増大した信頼についての研究を3連で開始した。放出緩衝液は、防腐剤として0.02%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、12mM リン酸ナトリウム、3.7mMリン酸カリウム、150mM塩化ナトリウム、pH7.0、0.22μm濾過)であったが、放出されたGM-CSFの生物活性分析を計画する場合、アジ化物を取り除き、そして可能な限り無菌的に放出研究を行うことを推奨する。研究における収集時間の間隔は、2時間、6時間、24時間、48時間、72時間、5日、7日、10日、および14日での時間を含み得る。
【0078】
インビトロ放出アッセイを開始するために、約50〜75mgのミクロスフェアを、デバイスのテフロン(登録商標)ジャケット内にある9mm ID×13mm OD×5mmのテフロン(登録商標)スペーサーに入れた。このスペーサーを、ミクロスフェアを通して放出緩衝液の循環を可能にする13mm直径、10μmメッシュステンレス網を用いて、両端で固定した。
【0079】
このロードされたデバイスを、6mlの放出緩衝液を有する広い30mlのポリプロピレン試験チューブに入れた。ロードされたデバイスおよび放出緩衝液を含む開いたチューブを、緩いフタまたはKimwipes(商標)で覆って輪ゴムで固定し、そして真空乾燥器に入れた。約2時間の真空への曝露は、全ての閉じこめられた空気の泡も取り除くのに役立ち、そしてミクロスフェアの最初の湿潤を促進する。次いで、チューブにフタをし、そして100rpmに設定した軌道(orbital)シェーカーで37℃でインキュベートした。
【0080】
適切な時間の間隔で、放出緩衝液を、デカンテーションにより、予め秤量した標識した15mlのプロピレン試験チューブに回収した。得られた容量を重量により決定した(1ml=ほぼ1g)。次いで、新鮮な放出緩衝液(6ml)を添加したデバイスを、37℃の軌道シェーカーに戻した。
ミクロスフェア放出サンプルを、GM-CSFの放出を定量するために、Bio-Radの総タンパク質アッセイにより評価した。他のタンパク質が存在しないので、総タンパク質アッセイを使用し得る。
【0081】
放出速度論分析の結果を、図1Bおよび3Aに示す。実施例1において調製されたサンプル「B4」、「04」、および「V4」は、約6日間にわたってGM-CSFを連続的に放出するためのPLGAミクロスフェアが作製され得ることを示す。この放出は、この時間にわたって直線的であり、そして0次に接近する。さらに、GM-CSFは、図3Bに示すように(放出されたGM-CSFは完全に活性であると考えられ得る、所定のバイオアッセイの標準偏差)生物活性の本質的に完全な保持とともに放出される。これらの実施例はまた、3つの調製物から生じた非常に類似したGM-CSF放出プロフィールにより証明されるように、ミクロスフェア作製プロセスが高度に再生可能であることを示す。
【0082】
実施例4マウスモデルにおけるhuGM-CSFのインビトロ放出プロフィール
A.Lot#9402-94、サンプル「O」
ミクロスフェアを以下のように無菌的に調製した: ガラスワイヤー、ミキサーシャフトおよびヘッド、ならびにステンレススチール容器を、使用する前にオートクレーブした。4.0kgのDow Corning(商標)244液(オクタメチルシクロテトラシロキサン)を、「MillpakTM40」0.22μmフィルターを通して濾過し、硬化容器に入れた。約100gのDow Corning(商標)360液(ポリメチルシロキサン、350センチストローク)を、アルミニウムホイルをかぶせたガラスビーカー中で160℃で80分間加熱し、次いで、室温まで冷却した。
【0083】
塩化メチレン中の10%ポリ(グリコリド-co-d,l ラクチド)溶液の40g部分を、微小カプセル化のために、ポリビニリデンフルオライド0.22μmフィルターに通して濾過した。ポリマーは、0.43dL/gの固有粘度(30℃での0.5% w/vのヘキサフルオロイソプロパノール溶液中で測定された)および45:55のグリコリド:ラクチド比を有した。開始剤としてグリコール酸および触媒として塩化第一スズ二水和物を用いて調製した。コポリマー内のラクトイル基およびグリコイル基の分布は、C13 NMRおよび溶解度測定によりランダムであることが示された。残存ラクチド含有量を、真空ストリッピングにより減少させた。
【0084】
0.664mlのGM-CSF溶液(100mM tris中で約63.1mg/ml、0.2μmフィルターを通して濾過した)を、40gの濾過されたポリマー溶液に添加し、10,000RPMで60秒間20-mmヘッドを用いるホモジナイザーを用いて撹拌して、油中水型(W/O)エマルジョンを作製した。36mlの熱処理したDow Corning(商標)360液をW/Oエマルジョンに添加し、そして混合物を5000RPMで90秒間ホモジナイズした。次いで、混合物を、500RPMの攪拌下で、4.0kgの濾過されたDow Corning(商標)244液に添加し、ミクロスフェアを硬化させた。撹拌を1時間続けた。ミクロスフェアを収集し、乾燥し、そして粒子サイズ分布を上記のように分析した。サンプルは、56.0μmの容量中央値直径を有し、10%のミクロスフェアは、26.3μm未満であり、90%のミクロスフェアは、91.6μm未満であった。
【0085】
ミクロスフェアを、最初に、7日間を超える期間にわたってhuGM-CSFの連続放出を保証するために、インビトロ放出特性について分析した(図2A)。次いで、ミクロスフェアを秤量し、そして50mgのミクロスフェア/シリンジで3ccシリンジにロードした。ミクロスフェアのための注入ビヒクルは、3%(w/w)メチルセルロース、0.1%Tween 80、および4%マンニトール(最終浸透圧=292mOsm/kg)を含む、低粘度グレードのメチルセルロースの水溶液であった。
【0086】
バイアルに各1gの滅菌濾過された注入ビヒクル溶液をロードした。注入のために、18ゲージ針を、空の3ccシリンジに取り付け、そして0.5〜0.6mlの注入ビヒクルを取り出すために使用した。次いで、針をシリンジから取り出し、そしてビヒクルを含むシリンジを、「シリンジコネクター」を通してミクロスフェアを含むシリンジに取り付けた。シリンジを各注入において25回前後に押すことにより、混合を達成した。次いで、空のシリンジおよびシリンジコネクターを取り除いた。次いで、22ゲージ針を、注入のために準備された懸濁されたミクロスフェアを含むシリンジに取り付けた。
【0087】
マウスにおける放出研究 放出研究を、以下のようにマウスにおいて行った。オスB6マウス(6週齢)を、Jackson Laboratories(Bar Harbor,ME)から入手し、そして研究を始める前に、さらに10週間Immunex動物研究所施設で飼育した。17群のマウスをこの研究に使用し、1群あたり3匹のマウスを使用した。試験群について、500μgのhuGM-CSF(1重量%)を含む50mgのミクロスフェアを、0.5mlのメチルセルロース注入ビヒクル中で皮下に注入した。これらの注入を受けるマウスの群を、1時間、2時間、6時間、24時間、3日、5日、7日、および9日の間隔で屠殺した。
【0088】
ネガティブコントロールとして、huGM-CSFのボーラスを、500μgまたは50μgのhuGM-CSFのいずれかの用量で皮下に注入した。500μg用量は、50mg注入のミクロスフェアに含まれる全量のhuGM-CSFを示し、そして50μg用量は、インビトロで1日にわたって50mgのミクロスフェアにより放出されるhuGM-CSFの近似量を示した。ボーラス注入を受けるマウスの群を、注入の1時間、2時間、6時間、および24時間後に屠殺した。
【0089】
マウスの屠殺後、血液サンプルを得、そして4℃で凝固させた。次いで、血清を採集し、そして血餅を捨てた。残存する細胞破片を遠心分離により取り除き、次いで血清サンプルを、さらに分析するまで-70℃で凍結した。
【0090】
【表1】

【0091】
血清サンプルを、huGM-CSF濃度の決定のために溶解し、そしてELISAによって分析した。GM-CSF酵素関連イムノアッセイ(EIA)は、未知のサンプル中の組換えヒト(rhu)GM-CSFのレベルを定量するために設計されたアッセイである。抗-GM-CSFマウスモノクローナル抗体を、96ウェルポリスチレンプレート上に一晩吸着させる。洗浄後、標準曲線およびサンプルをプレートに添加し、そしてインキュベートする。プレートを洗浄して過剰な結合していないrhu-GM-CSFを全て除去する。
【0092】
次いで、rhu-GM-CSFに対するポリクローナル抗体を各ウェルに添加し、そしてインキュベートする。プレートを洗浄して結合していないポリクローナル抗体を全て除去し、そして西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)酵素に結合させたロバ抗-ヒツジIgG抗体を含む溶液を各ウェルに添加する。インキュベーション後、プレートを洗浄して、存在するヒツジ抗体に結合しなかった過剰なHRP-結合抗体を全て除去する。HRP結合体について色素生産性物質を含む展開溶液をプレートに添加する。発色は、存在するHRP-結合体の量に直接比例する。正確な波長での光学密度読み取りは、各ウェルについて数値を与える。これらのウェルを、標準曲線の値と比較し得、rhu-GM-CSFのレベルの定量を可能にする。モノクローナル抗GM-CSF抗体はImmunexから入手し得る。ロバ抗ヒツジIgG抗体HRP結合体は、Jackson Immunoresearch Laboratoriesから入手する。
【0093】
血清サンプルをまた、細胞増殖アッセイTF-1によって生物活性について分析した。TF1バイオアッセイを用いて、ヒトGM-CSFの存在および量を検出する。TF1バイオアッセイはヒト赤白血病細胞株TF1を、試験サンプル中のhuGM-CSF、hu IL-3、またはrhu PIXY321の存在を検出するために利用する。これらの細胞は、増殖についてhuGM-CSFに依存し、そしてhuGM-CSFを補充した培地中で維持される。huGM-CSF、hu IL-3、またはrhu PIXY321のこれらの細胞への添加は、用量依存性増殖を刺激し、既知のhuGM-CSF、hu IL-3、またはrhu PIXY321の濃度の標準との比較として、試験サンプル中のhuGM-CSF、hu IL-3、またはrhu PIXY321の定量を可能にする。
【0094】
各マイクロウェルをトリチウム化したチミジン(3H-TdR)で4時間37℃で「パルスすること」によって、増殖の量を測定する。増殖TF-1細胞は、細胞が分裂する際に、培地中に添加された(3H-TdR)をそれらのDNAに組み込む。次いで、各ウェル由来の細胞を、標識されたGM-CSFをトラップするガラス繊維フィルターペーパー上に回収する。次いで、各フィルターペーパー上にトラップされた3H-TdRの量をβカウンター上で計数する。各ウェルについて、1分あたりの計測数(cpm)は、huGM-CSF、hu IL-3、またはru PIXY321への応答において活性化されたTF-1細胞による増殖の量に直接比例する。得られた分当たりの計数は、細胞コロニーを刺激したGM-CSFの量に直接比例する。
【0095】
放出サンプル中のGM-CSFの生物活性を決定するために、全てのサンプルを希釈して0.2ngのGM-CSF/mlとし、そして分析に供する。ユニット/mlで示される得られた活性を、同時に分析したGM-CSFの未処理のストックサンプルの活性と比較する。理論的には、全てのサンプルはストックサンプルと比較してほぼ100%の活性を有するはずである。アッセイのコントロール値の間は、20〜25%程度の範囲であり得、細胞増殖に基づくアッセイとしては異常ではない精度レベルである。
【0096】
各時点で維持される比活性の割合は、ミクロスフェアに取り込まれなかった同じロットのストックhuGM-CSFの比活性で、それぞれの時点で測定される比活性を割ることによって決定した。
【0097】
放出実験の結果を図2Aに示す。これは、インビトロ放出速度論のグラフであり、約10日間の期間にわたる放出を示す。図2Bは、時間の関数としての、マウス血清huGM-CSFレベル(ELISAにより決定した)の循環のグラフである。500および50μgのボーラス注射の両方が、マウス血清から迅速に除去された。マウス血清中の検出可能なhuGM-CSFの迅速な減少のために、β除去(β elimination)半減期のおおよその推定のみがなされ得る(t1/2β=1.57時間);しかし、この推定は、以前に報告されたマウスモデルにおけるhuGM-CSF循環の半減期に厳密に一致する。ミクロスフェアに受容されたマウス中の血清huGM-CSFのレベルは注射後の最初の6時間にわたり迅速に低下し(218から35ng/ml)、次いで実験の残りの9日間にわたり比較的定常に維持された。ミクロスフェアのこのロットのインビトロ放出プロフィール(9日後、約30%放出)であれば、おそらく、huGM-CSFは、インビボ実験が終了する9日間を超えてミクロスフェアから放出されている。
【0098】
図2Cに示すように、インビボ放出データを、インビトロ放出データと以下のように比較した:(1)最初に、インビトロ放出データを、べき級数に適合するように数学的にモデル化した;(2)次いで、理論的なインビボ血清huGM-CSF濃度プロフィールを単一の線分モデルにおける質量バランスを利用して計算した(すなわち、任意の時間でのマウス中のhuGM-CSF濃度=以前の時点でのマウス中のhuGM-CSF濃度+その時間にわたるミクロスフェアから放出されたhuGM-CSFの量−その同じ時間にわたる通常の生理学的排除機構により排除されるhuGM-CSFの量)。インビトロ放出および実測のインビボ血清huGM-CSFレベルとに基づく、得られる血清濃度の比較を、図2Cに示す。この図で示すように、実測のインビボ血清huGM-CSFレベルはインビトロ放出から予想されるレベルよりも低かったが、プロフィールは形状において類似であり、そしてより遅い時点での値において明らかに近接していた。
【0099】
インビボにおいて、ミクロスフェアから放出されるhuGM-CSFの生物活性を、TF-1バイオアッセイによって評価した。特異的な生物活性の割合は、1時間で67%の高さから段階的に低下して9日後に33%の低さまでで変化した。
【0100】
実施例5霊長類モデルにおける、ミクロスフェアからのヒトGM-CSFの放出
huGM-CSFを含むミクロスフェアを、アカゲザルモデル(Lot #9490-168、サンプル「V4」)でのインビボ注射のために調製した。最初に、ミクロスフェアをタンパク質充填(アミノ酸分析により1.48%wt/wt)、放出速度論(図3Aを参照のこと)、およびTF-1バイオアッセイによる放出物質の生物活性(図1Bおよび3Bを参照のこと)についてインビトロで特徴付けた。インビトロ放出プルフィールに基づいて、霊長類に約25μg/kg/日を7日間受容させるようにミクロスフェアを検量した。シリンジを、注射の際に生じる残留液のために5%の過剰分(1ccのツベルクリンシリンジについて50μlの残留液容量)を含むミクロスフェアで充填した。3つの霊長類に、GM-CSFを含むミクロスフェアを有する注射を受容させた。
【0101】
1つの霊長類を、ミクロスフェアを含まないプラシーボミクロスフェアを受容させた。各霊長類に注射したミクロスフェアの量は、それぞれ、3.2kg、2.9kg、3.4kg、および3.0kgの動物について、39.4mg、35.5mg、42.1mg、および36.8mgであった。
ミクロスフェアのための注射ビヒクルは、3%(wt/wt)のメチルセルロース、0.1%のTween 80、および4%のマンニトールを含む、低い粘度のメチルセルロースの水溶液であった。
【0102】
注射の3日および1日前、注射の日、ならびに注射後10日間、毎日血清サンプルを回収し、そして白血球数(WBC)、絶対(absolute)好中球計数(ANC)、および血小板計数について分析した。毎日の血球数を図3Cに示す。
WBCおよびACNは、GM-CSF含有ミクロスフェアを受容した各動物において1日目から4日目において明らかに上昇した。プラシーボ注射を受容した霊長類について、血球細胞数の変化は測定されなかった。
【0103】
この実施例は、インビボで、PLGAミクロスフェアから放出される組換えヒトGM-CSFが非ヒト霊長類モデルにおける生物学的応答を誘発し得ることを示す。
サルにおいてみられる、より高度に局在化した炎症応答は、好中球、マクロファージ、樹上突起細胞、および単球の補充の結果として、注射部位で有意に局在した膨張(直径1〜2cmの塊)によって特徴づけられる。
【0104】
実施例6PLGAゲルからのGM-CSFの放出
PLGAの20%溶液(50:50のラクチドグリコライド(lactide glycolide)比、0.38dL/gの内因性粘性(I.V.))を、2gのPLGAを8gのグリセロール三酢酸(トリアセチン)中で70℃で30分間加熱することによって調製した。凍結乾燥したGM-CSFをPLGA溶液に10mg/mlで添加し、そして超音波処理して十分に混合した。スクリュートップバイアル(5ml)を3mlのPBSで満たし、そして約250μgのPLGA/GM-CSF溶液(約2.5mgのGM-CSFを含む)をピペッティングによって各バイアルに添加した。これらのバイアルを37℃で6日間、穏やかに振盪した。注射溶液は、PBSへの注射の際にゲルを形成した。4時間、8時間、1日、3日、および6日の間隔で溶液をバイアルから取り出し、そしてBioRad総タンパク質アッセイによってGM-CSF含量について分析した。
タンパク質放出速度論を図4に示す。そしてこれは約6日間にわたる一次速度論を示す。
【0105】
実施例7W/O/W-メタノール抽出プロセスを用いるミクロスフェア調製(Lot #14254-138)
カプセル化ポリマーは、1)ラクチドに対して50:50の比でグリコリドを有し、そして25℃で0.1%w/vのクロロホルム溶液中で決定された場合に0.33dL/gの固有の粘度を有するポリ(グリコリド-co-d,1ラクチド)(ポリマーI)、2)末端基滴定によって決定された場合、1786の平均分子量を有するポリ(L-ラクチド)(ポリマーII)、および3)末端基滴定によって決定された場合、1938の平均分子量を有するポリ(d,l ラクチド)(ポリマーIII)の70:20:10混合物である。このポリマーを使用前に沈澱させる。カプセル化ポリマー溶液を、1.40gのポリマーI、0.40gのポリマーII、および0.20gのポリマーIIIを、8.00gの塩化メチレンに添加すること、およびポリマーが溶解するまで混合物を撹拌することによって調製した。
【0106】
ポリビニルアルコール(PVA)の5%の水溶液を、20.00gの低分子量(M.W.=31,000〜50,000、87〜89%加水分解された)PVAを380gの脱イオン水に添加し、そしてPVAが溶解するまで加熱(約70℃まで)しながら撹拌することによって調製した。
溶液を、室温まで冷却した後、0.2μmフィルターを通して濾過した。
【0107】
0.389mlのGM-CSF溶液(100mMのtris緩衝液中、約87.3mg/ml)を、30-mlのガラスビーカー中で、8.50gのカプセル化ポリマー溶液に添加し、そして20-mmのヘッドで、6000 RPMで60秒間ホモジナイズして油中水型(W/O)エマルジョンを作製した。
上記のエマルジョンを、ステンレススチール容器中で、400gの5%PVA溶液に添加し、その間、20-mmのヘッドを用いて6000 RPMでホモジナイザーを用いて撹拌して水中油中水型(W/O/W)エマルジョンを作製した。総経過時間は1分であった。
【0108】
W/O/Wエマルジョンを含む容器を、「高剪断分散機(high shear disperser)」を備えたミキサーの下に置き、そして400 RPMで撹拌した。400gのメタノールをW/O/Wエマルジョンに45分間にわたり添加し、そしてミクロスフェアから塩化メチレンを抽出した。メタノールの添加後、撹拌をさらに45分間続けた。
ミクロスフェアを回収し、乾燥させ、そして粒子サイズ分布を上記のように決定した。
サンプルは24.1μmの容量中央値直径を有し、10%のミクロスフェアは、10.8μm未満であり、そして90%のミクロスフェアは42.3μm未満であった。
【0109】
実施例8W/O/Wメタノール抽出プロセスを用いるミクロスフェア調製(Lot #14254-160)
カプセル化ポリマーは、1)ラクチドに対して50:50の比でグリコリドを有し、そして25℃で0.1%w/vのクロロホルム溶液中で決定された場合に0.33dL/gの固有の粘度を有するポリ(グリコリド-co-d,1ラクチド)(ポリマーI)、2)末端基滴定によって決定された場合、1786の平均分子量を有するポリ(L-ラクチド)(ポリマーII)、および3)末端基滴定によって決定された場合、1938の平均分子量を有するポリ(d,l ラクチド)(ポリマーIII)の80:10:10混合物である。このポリマーを使用前に沈澱させる。カプセル化ポリマー溶液を、1.60gのポリマーI、0.20gのポリマーII、および0.20gのポリマーIIIを、8.00gの塩化メチレンに添加すること、およびポリマーが溶解するまで混合物を撹拌することによって調製した。
【0110】
ポリビニルアルコール(PVA)の5%の水溶液を、20.00gの低分子量(M.W.=31,000〜50,000、87〜89%加水分解された)PVAを380gの脱イオン水に添加し、そしてPVAが溶解するまで加熱(約70℃まで)しながら撹拌することによって調製した。
溶液を、室温まで冷却した後、0.2μmフィルターを通して濾過した。
【0111】
0.389mlのGM-CSF溶液(100mMのTris緩衝液中、約87.3mg/ml)を、30-mlのガラスビーカー中で、8.50gのカプセル化ポリマー溶液に添加し、そして20-mmのヘッドで、6000 RPMで60秒間ホモジナイズして油中水型(W/O)エマルジョンを作製した。
上記のエマルジョンを、ステンレススチール容器中で、400gの5%PVA溶液に添加し、その間、20-mmのヘッドを用いて6000 RPMでホモジナイズしながら撹拌して水中油中水型(W/O/W)エマルジョンを作製した。総経過時間は1分であった。
【0112】
W/O/Wエマルジョンを含む容器を、「高剪断分散機」を備えたミキサーの下に置き、そして400 RPMで撹拌した。次いで、400gのメタノールをW/O/Wエマルジョンに5分間にわたり一定速度でポンプし、そしてミクロスフェアから塩化メチレンを抽出した。メタノールの添加後、撹拌をさらに85分間続けた。
ミクロスフェアを回収し、乾燥させ、そして粒子サイズ分布を上記のように決定した。
サンプルは26.1μmの容量中央値直径を有し、10%のミクロスフェアは、11.6μm未満であり、そして90%のミクロスフェアは46.7μm未満であった。
【0113】
実施例9W/O/Wメタノール抽出プロセスによるミクロスフェアLot #14259-100(ヒドロゲル)の調製
カプセル化ポリマーは、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、およびポリエチレンオキシド8000の67:23:10ブロックトリポリマーである。3.27gのポリマーを、18.53gの塩化メチレンと混合し、そしてポリマーが溶解するまで撹拌した。
【0114】
ポリビニルアルコール(PVA)の1%の水溶液を、11.0gの低分子量(M.W.=31,000〜50,000、87〜89%加水分解された)PVAを1089.00gの脱イオン水に添加し、そしてPVAが溶解するまで加熱(約70℃まで)しながら撹拌することによって調製した。溶液を、室温まで冷却した後、0.2μmフィルターを通して濾過した。
【0115】
0.174mlのGM-CSF溶液(100mMのTris緩衝液中、87.1mg/ml)を、30-mlのガラスビーカー中で、カプセル化ポリマー溶液の10.00g部分に添加し、そして20-mmのヘッドで、6000 RPMで60秒間ホモジナイズして油中水型(W/O)エマルジョンを作製した。
上記のエマルジョンを、ステンレススチール容器中で、1%PVA溶液の500g部分に添加し、その間、20-mmのヘッドを用いて6000 RPMでホモジナイズしながら撹拌して水中油中水型(W/O/W)エマルジョンを作製した。総経過時間は1分であった。
【0116】
W/O/Wエマルジョンを含む容器を、「高剪断分散機」を備えたミキサーの下に置き、そして400 RPMで撹拌した。500gのメタノールをW/O/Wエマルジョンに5分間かけてポンプし、そしてミクロスフェアから塩化メチレンを抽出した。メタノールの添加後、撹拌をさらに55分間続けた。
【0117】
ミクロスフェアを回収し、乾燥させ、そして粒子サイズ分布をMalvern 2600 Particle Sizerを用いて決定した。約50mgのミクロスフェアを約10mlのメタノールに懸濁し、そして2分間超音波処理してミクロスフェアを十分に分散させた。
次いで、2、3滴のこの懸濁物を、メタノールを含む光学セルに添加した。次いで粒子サイズ分布を測定した。サンプルは、68.3μmの容量中央値直径を有し、10%のミクロスフェアは、14.3μm未満であり、そして90%のミクロスフェアは177.3μm未満であった。
【0118】
実施例10生物活性のインビトロ決定のためのミクロスフェアからのGM-CSFの抽出
ミクロスフェアからタンパク質を抽出するこの方法は、定量的かつ非破壊的の両方であり、従って組み込まれたタンパク質の完全性を決定するために使用され得る。実施例1に記載の相分離方法によって調製した約20mgのミクロスフェア(lot L3、M3、N3、K3、J3、およびE3)を、2mlのエッペンドルフチューブ中に検量した。次いで、500μlの氷酢酸を添加し、そしてチューブの蓋を閉め、そして周期的にボルテックスして完全にミクロスフェアを溶解させた。
【0119】
次いで、500μlの塩化メチレンを添加し、そしてチューブの蓋を閉め、そして約5分間周期的にボルテックスした。最後に500μlのPBSを添加し、そして再度チューブの蓋を閉め、そして約2分間連続的にボルテックスした。次に、蓋をしたチューブを高速で2分間マイクロフュージ中で遠心分離して水相と有機溶媒相との明確な分離を促進した。GM-CSFを含む上部の水相(1ml)の280nmの吸光度を測定し、そしてGM-CSFの濃度をmg/mlで、吸光度を1.08の吸光係数で割ることにより計算した。次いで、サンプルをTF1バイオアッセイのために置換して、GM-CSFの生物活性を測定した。
【0120】
図5は、ミクロスフェアから抽出されたGM-CSFの生物活性%を示す。コントロールは、同じ抽出プロセスによって行われた水性のGM-CSFサンプルである。これらの結果は、ミクロスフェアから抽出されたGM-CSFが完全な生物活性を保持していることを示す。
【0121】
実施例11PLGAミクロスフェアの調製およびPLGA分解プロフィール
100%のCytec、0.7dL/gの内因性粘性(I.V.)PLGA、100%のR104 PLA、およびPLGA:PLAの80:20混合物を含むミクロスフェアを、シリコンオイル硬化プロセスによって調製した。これらのミクロスフェアの各サンプルを、PBS中37℃で、1、2、4、6、8、10、14、28、42、および56日間インキュベートした。インキュベーション後、ミクロスフェアをテトラヒドロフラン(THF)中に溶解して1〜2%の溶液(ミクロスフェアwt/THF容量)を作製した。次いで、サンプルを、GPC運転によって30℃に維持したstyragel HR-4Eカラム(Waters)を有するWaters HPLCシステムを用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析した。
【0122】
ポリスチレンの狭い分子量範囲の標準をカラムの較正のために使用した。分解したPLGAポリマーの重量平均分子量および数平均分子量を、Millenium GPCソフトウェア(Waters)を用いて決定した。図6は、各ミクロスフェア処方物の重量平均分子量を、インキュベーション時間の関数として以下に示す。100%のCytec、0.7 I.V.PLGAから調製されたミクロスフェアの分解が14日間のインキュベーション期間を通じて不完全であるが、Cytec 0.7 I.V./R104の80:20混合物は本質的に分解されたことに留意のこと。この実施例において、R104 PLAはミクロスフェアの分解エンハンサーとして作用した。
【0123】
本明細書中に記載される操作および使用のための組成物および方法の改変および変更が上記から当業者に明らかである。このような改変および変更が添付の請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1a】図1aは、単一のPLGAコポリマーでの相分離によって調製したミクロスフェア中の、1%充填(四角)、および3%充填(菱形)についての、時間(日)に対するインビトロでのGM-CSFの放出の、平均放出累積%のグラフである。
【図1b】図1bは、PLAとPLGAとのブレンドでの相分離によって調製したミクロスフェア中の、1.54%充填(四角、ロットB4)、1.28%充填(菱形、ロット04)、および1.5%充填(丸、ロットV4)についての、時間(日)に対するインビトロでのGM-CSFの放出の、平均放出累積%のグラフである。
【0125】
【図2a】図2aは、単一の分子量のPLGAの相分離によって調製した「ロット0」ミクロスフェアについてのインビトロ放出速度論のグラフである。GM-CSF放出を、時間(日)に対するインビトロでの平均放出累積%として示す。
【図2b】図2bは、50mgミクロスフェア、500μgボーラス、および50μgボーラスについての、ミクロスフェアまたはボーラス注射後の、時間(日)に対するマウス血清GM-CSFレベル(ng/ml)のグラフである。
【図2c】図2cは、ミクロスフェア注射後のGM-CSFレベル(菱形)対インビトロ放出速度および実験的半減期から計算されたレベル(直線)のグラフである。
【0126】
【図3a】図3aは、異なる分子量の2つのPLGAとPLAとのブレンドを用いる相分離によって調製したロットV4ミクロスフェアについての、時間(日)に対するインビトロでのGM-CSFの放出の、平均放出累積%のグラフである。
【図3b】図3bは、ロットV4放出サンプルのTF-1生物活性(個々の時点(日)での活性%)のグラフである。
【図3c】図3cは、GM-CSFを含有するミクロスフェアを注射した霊長類における、時間(日)の関数としての白血球数(WBC)、好中球絶対数(ANC)、および血小板数のグラフである。
【0127】
【図4】図4は、PLGAゲルからのGM-CSF放出(時間(日)に対する放出累積%)のグラフである。
【図5】図5は、酢酸でPLGAミクロスフェアから抽出したGM-CSFのTF-1細胞活性のグラフである。活性%対ミクロスフェアロットをグラフで示す。
【図6】図6は、PLGA(Cytec.7 I.V.)、PLA(R104)、または2つのポリマーの80/20ブレンドのいずれかから調製した3つの型のミクロスフェアの、時間に対するPLGA分解のグラフである。時間(日)に対する重量平均分子量をグラフで示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる分子量を有し、放出すべき化合物がその中に分散されている、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマーからなる群から選択される3つ以上のポリマーのブレンドを含む、微粒子。
【請求項2】
前記ポリマーが異なる分子量を有するポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマーである、請求項1に記載の微粒子。
【請求項3】
前記ポリマーが、1000と20,000Dとの間、20,000と35,000Dとの間、および35,000と70,000Dとの間の重量平均分子量を有する、請求項2に記載の微粒子。
【請求項4】
含水したヒドロゲルの最終重量の90%までの量の水を吸収する合成重合ヒドロゲル中に分散したGM-CSFを含む、ヒドロゲル。
【請求項5】
前記ヒドロゲルが微粒子に形成されている、請求項4に記載のヒドロゲル。
【請求項6】
前記ヒドロゲルが、イオン架橋性多糖、合成生分解性ポリマー、生体適合性ポリマー、およびタンパク質からなる群から選択されるポリマーから形成される、請求項4に記載のヒドロゲル。
【請求項7】
前記ポリマーが、アルギネート、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、およびヒアルロン酸からなる群から選択される、請求項6に記載のヒドロゲル。
【請求項8】
前記ヒドロゲルが高電荷イオンと複合化し、そして安定化されている、請求項4に記載のヒドロゲル。
【請求項9】
化学誘引物質、生体適合性合成ポリマーと組み合わせたGM-CSF。
【請求項10】
抗原をさらに含む、請求項9に記載のGM-CSF。
【請求項11】
免疫刺激物質としての患者への投与に受容可能なビヒクルとしての、請求項9に記載のGM-CSF。
【請求項12】
化学誘引物質、及び免疫刺激物質としての患者への投与に受容可能なビヒクル中の生体適合性合成ポリマーと組み合わせた有効量のGM-CSFを含んで成る、患者を免疫刺激するための医薬組成物。
【請求項13】
前記GM-CSFが抗原と組み合わせて投与される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
水の最終重量の90%までを吸収する合成重合ヒドロゲル中に分散されたGM-CSFを含む、造血細胞の増殖を刺激するための医薬組成物。
【請求項15】
前記ヒドロゲルが微粒子に形成されている、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ヒドロゲルが、イオン架橋性多糖、合成生分解性ポリマー、生体適合性ポリマー、およびタンパク質からなる群から選択されるポリマーから形成される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ポリマーが、アルギネート、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、およびヒアルロン酸からなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記ヒドロゲルが高電荷イオンと複合化し、そして安定化されている、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びポリ(乳酸−グリコール酸)から成る群から選択される異なる分子量を有する3以上のポリマーのブレンドを含んで成る微粒子であって、その中に放出されるべき化合物が分散している、医薬において使用するための微粒子。
【請求項20】
注射により投与される、請求項19に記載の微粒子。
【請求項21】
経口投与される、請求項19に記載の微粒子。
【請求項22】
局所投与される、請求項19に記載の微粒子。
【請求項23】
療法において使用するための、請求項4〜8のいずれか1項に記載のヒドロゲル。
【請求項24】
患者の造血細胞の増殖の刺激のための医薬の製造における、請求項4〜8のいずれか1項に記載のヒドロゲル。
【請求項25】
ヒドロゲル中に白血球のための化学誘引物質をさらに含んで成る、請求項4に記載のヒドロゲル。
【請求項26】
水和されたヒドロゲルの最終重量の90%まで水を吸収するヒドロゲル中に分散したGM-CSF、及び患者に投与するための医薬として許容される担体を含んで成る、ヒドロゲル。
【請求項27】
化学誘引物質である、生物適合性合成ポリマーと組み合わされたGM-CSFを患者に投与するための医薬として許容される担体中に含んで成る医薬組成物。
【請求項28】
前記GM-CSFが抗原と組み合わせて投与される、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
最終重量の90%までの水を吸収する合成重合ヒドロゲル中に分散したGM-CSFを含んで成る患者を治療するための医薬組成物。
【請求項30】
前記ヒドロゲルが微粒子に形成される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記ヒドロゲルが、イオン性架橋性ポリサッカライド、合成生物分解性、生物適合性重合体、及び蛋白質から成る群から選択されるポリマーから形成される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記ポリマーが、アルギネート、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリエチレンオキシドポリプロピレングリコールブロック共重合体、及びヒアルロン酸から成る群から選択されるポリマー。
【請求項33】
前記ヒドロゲルがポリイオンと共に複合体化されそして安定化される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記ヒドロゲルが、崩壊促進剤、安定剤、溶解剤及び緩衝剤の群から選択された化合物を更に含んで成る請求項25に記載のヒドロゲル。
【請求項35】
前記ヒドロゲルが生物接着性である、請求項25に記載のヒドロゲル。
【請求項36】
前記医薬として許容される担体が、免疫刺激物質を更に含んで成る、請求項26に記載のヒドロゲル。
【請求項37】
注射により投与される、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項38】
経口投与される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項39】
局所投与される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記医薬として許容される担体が、免疫刺激物質を更に含んで成る、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記ヒドロゲルが、崩壊促進剤、安定剤、溶解剤及び緩衝剤の群から選択された化合物を更に含んで成る、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記ヒドロゲルが更に抗原を含んで成る、請求項36に記載のヒドロゲル。
【請求項43】
患者が(a)外傷を有するもの、(b)手術を受けているもの、(c)HIVに感染しているもの、(d)傷を有するもの、(e)重症の感染を有するもの、及び(f)予防注射を受けているもの、から成る群からの患者である。請求項29〜31、33、37〜39及び41のいずれか1項に記載の医薬組成物。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−308500(P2007−308500A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139387(P2007−139387)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【分割の表示】特願平9−515216の分割
【原出願日】平成8年10月10日(1996.10.10)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【出願人】(506198159)ワイス ホールディングス コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】