HEPA(H−10)性能の合成不織及びナノ繊維複合濾過媒体
【課題】機械的ストレスがかかる可能性のある場合でも、優れた濾過効率を有する複合濾過媒体構造体を提供する。
【解決手段】複合濾過媒体構造体10は、スパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含むベース基材12を含んでいる。また、この複合濾過媒体構造体10は、エレクトロブロースピニング法によってベース基材の一面上に設けられたナノ繊維層20を含んでいる。1つの態様において、ベース基材12及びナノ繊維層20は、ASHRAE 52.2−1999試験法に従って測定して85%以上の濾過効率を与えるように構成されている。
【解決手段】複合濾過媒体構造体10は、スパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含むベース基材12を含んでいる。また、この複合濾過媒体構造体10は、エレクトロブロースピニング法によってベース基材の一面上に設けられたナノ繊維層20を含んでいる。1つの態様において、ベース基材12及びナノ繊維層20は、ASHRAE 52.2−1999試験法に従って測定して85%以上の濾過効率を与えるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にフィルターエレメントに関し、より特定的には、波形又はエンボス加工した複合不織濾過媒体を有するフィルターエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
ある公知の濾過媒体複合構築物では、基材を製造するために湿式(wet-laid)製紙法を用い、かつ濾過媒体基材の片面又は両面に軽量のナノ繊維コーティングを設けるためにエレクトロスピニング技術を用いる。通例、媒体基材は100〜120g/m2の坪量を有し、ナノ繊維層は0.5g/m2以下の坪量を有する。
【0003】
軽量ナノ繊維層によっては高い機械的ストレスがかかる可能性があることが知られている。かかるストレスがかかることは、500nm未満、より典型的には100nmの直径を有する繊維から形成されたナノ繊維層にとっては重大である可能性がある。また、公知のエレクトロスピニングしたナノ繊維層は、図1に示されているように基材に取り付けたときに二次元の構造であり、厚さが単一の繊維層である。従来のエレクトロスピニングした繊維では、ナノ繊維とベース媒体間の分極引力に基づく比較的弱い引力結合のためにナノ繊維が濾過媒体から脱落する繊維脱落(shedding)が起こり得ることが知られている。かかる媒体は濾過性能が低下する可能性がある。
【0004】
濾過媒体複合構築物を用いて、各種の装置に清浄な空気を供給することができる。かかる装置として、タービンブレードを挙げることができる。典型的な公知の濾過媒体は、公知の作動流量でASHRAE 52.2−1999の試験手順で試験したときに、通例7.0mmH2Oより大きい圧力低下で0.3〜0.4μmの粒子を約55%捕捉するという新しい又は清浄な作動効率を有し得る。
【0005】
タービンブレードを含有する装置の例を考えると、タービンブレードを清浄に維持しようとすることは当然の論理である。タービンブレードを清浄化するための現在の1つの方法では、タービンを定期的にオフラインにしてブレードを清浄に水洗する必要がある。タービンの停止時間は、その間タービンが作動せず、従って発電が削減されるので費用がかかる可能性がある。公知の濾過媒体より高い効率の濾過媒体を提供して、タービンブレードを清浄化するためのタービン停止時間を低減又は削除することができれば望ましいであろう。
【0006】
現行の技術の最良の性能は、エレクトロスピニングした繊維表面層で被覆された標準的な湿式(wet laid)ベース媒体を用いてF−9にランク付けされている。今までのところ、最大の効率は、エレクトロスピニング法により、100%0.30μmDOP粒子を用いて検査したときに最大75%の効率程度に制限されている。これは、湿式ベース媒体の1つの表面上にエレクトロスピニングした繊維の重い層、又はベース媒体の両面にナノ繊維層を使用することによって達成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7316723号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の幾つかの例示的な態様を基本的に理解できるように、以下に本発明の簡単な概要を述べる。この概要は本発明の外延を概観するものではない。また、この概要は本発明の重要な要素を特定するものでも本発明の範囲を画定するものでもない。この概要の唯一の目的は、後に述べるより詳細な説明の前置きとして、本発明の幾つかの概念を簡略化した形態で示すことにある。
【0009】
1つの態様で、本発明は、ベース基材を含む複合濾過媒体構造体を提供する。このベース基材はスパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含んでいる。複合濾過媒体構造体はエレクトロブロースピニング法(electro-blown spinning)によりベース基材の一面上に設けたナノ繊維層を含んでいる。ベース基材とナノ繊維層はASHRAE 52.2−1999試験法に従って測定して少なくとも85%の濾過効率を与えるように構成されている。
【0010】
別の態様で、本発明は、ベース基材を含む複合濾過媒体構造体を提供する。このベース基材はスパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含んでいる。複合濾過媒体構造体はエレクトロブロースピニング法によりベース基材の一面上に設けたナノ繊維層を含んでいる。ナノ繊維層は約2.0〜約3.0g/m2の坪量を有している。
【0011】
もう1つ別の態様で、本発明は、複合濾過媒体の作成方法を提供する。この方法は、スパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維から不織布基材を形成することを含んでいる。また、この方法は、ポリマー溶液をエレクトロブロースピニングして不織布の少なくとも一面上に複数のナノ繊維を形成して複合濾過媒体を形成することによりナノ繊維層を設け、それにより複合濾過媒体が約85%以上の濾過効率を有するようにすることを含んでいる。
【0012】
本発明の上記及び他の態様は、添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより本発明が属する技術分野の当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、湿式基材上にエレクトロスピニングしたナノ繊維層の従来技術の例の顕微鏡写真である。
【図2】図2は、本発明の1つの態様によるスパンボンドした二成分基材上のエレクトロブローしたナノ繊維膜層の第1の例の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、図2のナノ繊維膜層及びスパンボンドした二成分基材を用いた一例の複合濾過媒体の概略断面図である。
【図4】図4は、図3に示す濾過媒体に使用した二成分繊維の端部顕微鏡写真である。
【図5】図5は、図3に示すスパンボンドした二成分基材の平面顕微鏡写真である。
【図6】図6は、図3に示すスパンボンドした二成分基材の結合パターンの概略平面図である。
【図7】図7は、図3に示す複合濾過媒体の波形構造の態様の例の断面図である。
【図8】図8は、一例の態様に従って図3の複合濾過媒体をエンボス加工するためのエンボスローラーの概略図である。
【図9】図9は、図3に示す濾過媒体に使用した二成分繊維の断面の顕微鏡写真である。
【図10】図10は、図6に示す濾過媒体を含むフィルターカートリッジの側面図である。
【図11A】図11Aは、図3の濾過媒体を用いる第1の例のフィルターエレメントの透視図である。
【図11B】図11Bは、図3の濾過媒体を用いる第2の例のフィルターエレメントの透視図である。
【図12】図12は、図10に示すフィルターカートリッジの一部分の拡大透視図である。
【図13】図13は、図3の態様例による分別効率対様々な坪量におけるベース媒体基材の粒度のグラフである。
【図14】図14は、図3の一例の態様に従うナノ繊維層を有するものと有しないもののベース媒体基材の分別効率対粒度の、ナノ繊維層を有するものと有しないものの比較のベース媒体基材と比較して示すグラフである。
【図15】図15は、本発明と標準的な媒体を比較してASHRAE 52.2分別効率対粒度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の1以上の態様を具体化する例示としての実施形態を図面に記載し例証する。これらの図示された例は本発明を限定するものではない。例えば、本発明の1以上の態様は他の実施形態、さらには他の型の装置に利用することができる。また、幾つかの専門用語は便宜上のためにのみ本明細書中で使用されており、本発明に制限を加えるものではない。さらにまた、図面中、同じ参照番号は同じ要素を指定するのに使用される。
【0015】
本発明の1以上の態様に従う高性能複合濾過媒体及びその複合濾過媒体の作成方法の例を以下で詳細に説明する。一般に、複合濾過媒体は二成分系合成不織ベース基材とナノ繊維の1以上の表面層とを含んでいる。1つの特定の例において、かかる複合濾過媒体は、フィルターエレメント又はカートリッジ中に設置し、パルス式のガスタービン吸入フィルターハウジング又は類似の工業用濾過システムに使用したときに高まった濾過性能を提供する。また、1つの例において、この新しい複合濾過媒体は、波形成形及びプリーツ加工及び全体の組立のようなその後の工程を伴うフィルターカートリッジ又はフィルターエレメント中に設定することもできる。濾過媒体の波形成形により、複合濾過媒体の「清浄な」及び「汚れた」面側の両方で低い制限空気流のための大きい容積の通路が得られる。1つの例において、複合濾過媒体はthe American Society of Heating,Refrigerating and Air−Conditioning Engineers(ASHRAE)52.1の試験手順で試験したときに0.3〜0.4μm粒子の約85%の保持捕捉という初期濾過効率を提供し得、これは公知の濾過媒体と比較して約10%の性能増大である。その上、この複合媒体は公知の濾過媒体より低い圧力低下で85%の効率を提供し得る。1つの例において、複合濾過媒体は6.0mm水未満の抵抗(すなわち圧力低下)を有する。
【0016】
また、この複合濾過媒体は、大規模で激しい塵埃負荷及び清浄化の難問に曝されたときに有益な耐久性を有することができ、より高い効率を達成する。かかる有益な耐久性は既存の技術に対する改善であり得る。この改良された性能(例えば、85%以上の効率)の1つの理由は、ナノ繊維の坪量が約2.0〜3.0g/m2であることであり得る。かかる坪量は公知の濾過媒体より大きいであろう。約2.0〜3.0g/m2の範囲例はナノ繊維層にとって有用な重量であることが判明した。この高めの坪量により、逆パルス清浄化において公知の濾過媒体より効果的に濾過媒体を清浄化することができる。
【0017】
図2は、ナノ繊維層20と組み合わせたスパンボンド基材12の形態の本発明の1以上の態様に従う複合濾過媒体10の1つの例を示す。ナノ繊維層20とスパンボンド基材12の組合せにより、耐久性の三次元表面濾過層が得られ、これは気流を実質的に制限したり圧力低下を増大したりすることなく高い効率と微粒子捕捉を可能にする広範囲にわたる多層蛇行経路を有する。この多層蛇行経路は小さい細孔を有し得る。かかる構造は、パルス式濾過システムにおいて、殊に最小の厚さを有する二次元ナノ繊維層と比較して、機械的な力に対して極めて耐久性であることが判明した。この示した例の場合、ナノ繊維層20の坪量は約2.0〜3.0g/m2の範囲である。スパンボンド基材12又は複数の二成分繊維30上の一例のナノ繊維層20の厚さは、図1に示すような単一層の従来技術の例の場合の典型的な最大の厚さ3μmと対照的に約10μmであることができる。
【0018】
媒体はまた、濾過及び逆清浄化操作の間濾過媒体にかかる力による濾過媒体の撓みがより少ないため、圧力低下の大きさがより少なくなる可能性もある。また、スパンボンド波形媒体基材12は等しい又はより低い圧力低下で公知の濾過媒体基材より効率的であり得る。スパンボンド媒体により、繊維30をファブリック又はファブリック基材に合体させるための結合が得られる。1つの態様において、この媒体基材12を形成するのに用いる二成分繊維30は公知の濾過媒体を形成するのに使用される繊維より微細である。その上、ベース媒体基材12とナノ繊維層20との間の接着結合は波形成形又はエンボス加工操作中の追加の熱的加工処理によって高まり得る。
【0019】
図3は、複合濾過媒体10の概略部分説明図であり、特定の例のシート様構造を示す。図から理解できるように、濾過媒体10はベース媒体基材12とナノ繊維層20を含んでいる。ベース媒体基材12は第1の面14と第2の面16を有する。1つの態様において、ナノ繊維層20は媒体基材12の第1の面14上に設置されている。例示の説明図には明白に示されていないが、ナノ繊維層20は第2の面16上に設置することもできるし、又はナノ繊維層20は第1及び第2の面14及び16の各々に設置することもできることが分かる。
【0020】
媒体基材12の詳細に関しては図4に注目されたい。本発明の1つの態様で、基材12はスパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維30から形成された不織布基材である。二成分繊維を提供するためのかかる態様は芯−鞘構造、島構造、又は並んだ構造によるものであることができる。また図4を参照して、この例示した実施形態では、二成分繊維30は芯32と、この芯32の周囲を取り囲む鞘34とを含んでいる。1つの例において、二成分繊維30は約12〜約18μmの直径を有する。
【0021】
任意の適切な二成分合成繊維30を用いて媒体基材12の不織布を作成することができる。二成分繊維30の芯32及び鞘34に適した材料としては、限定されることはないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、アラミド、及びこれらの混合物がある。二成分繊維の鞘に適した材料には、二成分繊維の芯の材料より低い融点を有する熱可塑性材料、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、アラミド、及びこれらの混合物がある。
【0022】
二成分繊維30をジェットによって溶融紡糸して複数の連続繊維とし、これらを均一に付着させて図5に示すようなランダム三次元ウェブとする。このウェブは次にカレンダーロールにより加熱及びエンボス加工することができ、ウェブを熱的に結合させて合体したスパンボンドファブリック36にする。カレンダーロールエンボス加工パターンの接触による加熱により、二成分繊維30の熱可塑性の鞘34が軟化又は溶融し、不織繊維がカレンダーロールエンボス加工パターンの接触点のみで一緒に結合する。温度は、少なくとも、二成分繊維30の鞘34のより低い融点部分の軟化又は融解が起こるように選択される。一実施形態では、この温度は約90〜約240℃である。冷却後、鞘部分34の溶融及び再固化により繊維の所望の連結が起こる。
【0023】
本発明の1つの態様はベース媒体基材12の独特の結合パターンである。この結合パターンは、カレンダーロールのエンボス加工パターンによって規定することができる。結合領域が媒体の耐久性と機能を提供すると同時に、これらの結合点が溶融したポリマーのうちの気流がゼロである領域を創成する。このカスタム結合パターンは複合濾過媒体構造体の濾過効率を改良する上で役に立ち得る。
【0024】
ベース基材12に対する一例の結合領域パターン31を図6に示す。このパターンは結合領域の複数の実質的に平行な不連続線33を有し、二成分繊維30を互いに結合して不織布ベース基材12を形成する。結合パターン31の不連続線33はベース媒体基材12の機械方向(長手方向の広がり)に対して平行な方向に作成することができる。結合領域の平行な不連続線33は互いにオフセットになっていて、結合領域が存在しない位置35がある。この結合領域がない位置35は隣接する不連続線33の結合領域37と並んでいることができる。1つの例において、媒体基材12内のスパンボンド二成分繊維30の結合領域37はファブリックの総面積の約10〜約16パーセントである。幾つかの公知のスパンボンドファブリックは約19〜24パーセントの結合領域を有し得ることは注目に値する。より少ない結合領域では、所与の空気流れにおいて、ベース媒体12の空気透過性が増大し、又は反比例して低い圧力低下が可能である。一実施形態では不織合成ファブリックベース媒体12の坪量は約100〜約330g/m2、別の実施形態では約150〜約260g/m2である。
【0025】
図8は、エンボス加工法のための下側及び上側エンボスローラー100、102を有する一例の装置の概略図である。図から分かるように、ローラー100、102は、その間のベース基材12と対になって局在化した熱及び圧力をかける複数の構造体を有している。図示した例で、ローラー100、102は、下側及び上側エンボスローラー100及び102の外面108に配置された複数のリブ104及びチャンネル106の対を有している。各々のリブ104及び各々のチャンネル106はエンボスローラー100又は102の円周の一部分に沿って延びている。また、下側エンボスローラー100上のリブ104及びチャンネル106の各々の対は、上側エンボスローラー102上のリブ104及びチャンネル106の対応する対と揃って並んでおり、リブ及びチャンネルは、下側ローラー100上の各リブ104が上側ローラー102上のチャンネル106と揃って並び、対になるように、かつ上側ローラー102上の各リブ104が下側ローラー100上のチャンネル106と揃って並び、対になるように、配置されている。複数の対のリブ104及びチャンネル106は、エンボスローラー100及び102の全面で間隔をあけて互い違いの列状になっており、一例のエンボス加工パターンを定めている。図9は、エンボス加工したベース基材12の断面を示す。エンボス加工した部分は断面の中央付近に配置されており、厚さ寸法が低減している。1つの例において、この形成されたエンボス加工した基材12はASHRAE 52.2−1999の試験手順で測定して約50%以上の濾過効率を有する。
【0026】
ナノ繊維層20に関して、この層はエレクトロブロースピニング法によって形成できる。この方法では、スピニングノズル中にポリマー溶液を供給し、スピニングノズルに高電圧をかけ、スピニングノズルを介してポリマー溶液を放出しながらスピニングノズルの下端中に圧縮した空気を注入することができる。かける高電圧の範囲は約1〜約300kVである。このエレクトロブロースピニング法によると、公知の濾過媒体上の公知のナノ繊維濾過層より厚いナノ繊維の耐久性の三次元濾過層が得られる。代表的な態様において、ナノ繊維膜層20の坪量は約2.0〜約3.0g/m2、別の態様においては約2.0〜約2.5g/m2である。ナノ繊維に対する重量の小さい範囲は、2.5g/m2の標的を使用することができるように達成するのは困難であることがあり、現実の製品は2.5±0.5g/m2であり得ることが理解されよう。
【0027】
エレクトロブロースピニング法によりナノ繊維を形成するのに適したポリマーは熱可塑性ポリマーに限定されることはなく、熱硬化性ポリマーを包含し得る。適切なポリマーとしては、限定されることはないが、ポリイミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチレン及びこれらのコポリマー又は誘導体化合物がある。ポリマー溶液は、選択したポリマーを溶解する溶媒を選択することによって調製される。ポリマー溶液は添加剤、例えば可塑剤、紫外線安定剤、架橋剤、硬化剤、反応開始剤、などと混合することができる。ポリマーを溶解するのに特定の温度範囲は必要ないかもしれないが、溶解反応を支援するのに加熱が必要となることがある。
【0028】
上記各種のポリマーに可塑剤を添加することが有利である可能性がある。適切な可塑剤はポリマー、並びにナノ繊維層の特定の最終用途に依存する。例えば、ナイロンポリマーは水又はエレクトロスピニング又はエレクトロブロースピニング法に由来する残留溶媒で可塑化することができる。有用である可能性があるその他の可塑剤としては、限定されることはないが、脂肪族グリコール、芳香族スルホンアミド、フタル酸エステル、例えば、限定されることはないが、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジドデカニル、及びフタル酸ジフェニル、などがある。
【0029】
ナノ繊維層20は、例えばエレクトロブロースピニングによって、直接ベース基材12の少なくとも一面に設置して複合濾過媒体10を形成することができる。得られる複合濾過媒体は約85%の最小濾過効率を有する。この媒体基材12は公知の濾過媒体と比較して高い空気透過性を有しており、このため媒体基材12に対するナノ繊維の改良された機械的接着が可能になる。かかる透過性の場合、ナノ繊維層20を媒体基材12の第1の面14に設置する際に媒体基材の第2の面16側から真空にすることができる。新しいベース媒体がそのより高い空気透過性のために気流に対してより開放的であれば、真空の有効性がより大きくなり、ベース媒体中の二成分繊維に対するナノ繊維の強い機械的結合が確実になる。ナノ繊維の真空合体(vacuum consolidation)と相俟って、乾燥工程の熱的合体により、ベース媒体中の特別な二成分ポリエステル繊維に対する接着が改良される。ナノ繊維層20の設置の際に使用する乾燥温度と組み合わせて、二成分繊維30の鞘部分34の軟化も起こり得、ナノ繊維層20はより緻密になり、スパンボンドベース媒体基材12に結合するようになることができる。
【0030】
この時点で、完全で有用な複合濾過媒体10が提供される。しかし、既に述べたように、複合濾過媒体をさらに加工処理してもよい。一例として、複合濾過媒体10は、対向する波形成形ローラーを約90〜約140℃の温度で用いて波形にすることができる。代わりの実施形態では、複合濾過媒体10は、対向するエンボスローラーを約90〜約140℃の温度で用いてエンボス加工することができる。
【0031】
図7も参照すると、形成することができる波形の一例18が示されている。これらの例の波形18は複合濾過媒体10内に交互にアップダウンする実質的にV形の波として構成されている。波の頂22及び谷24は成形装置を通る基材のウェブの進行の方向に延びている。谷24は約0.02インチ(0.5mm)以上の有効深さDを有していて、高い塵埃負荷における濾過媒体10の通気性が約4インチの水柱(wc)未満の低い差圧を維持することを可能にしている。波形のピッチCは、代表的な態様において1インチ当たり約3〜約10の波形(1cm当たり約1.2〜約3.9の波形)、別の態様において1インチ当たり約3〜約6の波形(1cm当たり約1.2〜約2.4の波形)である。この有効な深さDと波形のピッチCの組合せは、高い空気速度及び塵埃負荷による高い静水圧の下で襞のつぶれを防止する役に立つ改良された接触点を提供するのに役立っている。濾過媒体10の全断面にわたる均一な波形も提供することができる。
【0032】
図10は、波形の濾過媒体10から形成された一例のフィルターエレメント70の側面図である。フィルターエレメント70は第1のエンドキャップ74及び対向する第2のエンドキャップ76を含んでおり、濾過媒体10はエンドキャップ74及び76間に延びている。フィルターエレメント70は内部の導管78(図11A)を含む管状形状である。変形として、図11Bに示されているようにフィルターエレメント170は円錐状の形状であることもできる。フィルターエレメント170は類似の構造部分(例えば、第1のエンドキャップ174、第2のエンドキャップ176及び内部の導管178)を有している。フィルターエレメント70、170のその他の形状も提供することができることが理解される。
【0033】
さらにもう1つ別の例として、図12は、濾過媒体10の2つの部分が隣接して位置する配置を示す。フィルターエレメント70の隣接する襞72の波形18は気流のための卵形の管79を画定している。波形18は襞72の縁部に対して実質的に垂直に延びている。
【0034】
その他の構成要素もフィルターエレメント70の一部として濾過媒体10と共に提供することができる。例えば、内部及び外部有孔金属ケージ、ウレタンポット化合物、及びウレタンストラップ化合物も全て提供することができる。
【0035】
本発明の様々な態様を含むフィルターエレメントはガスタービンの吸入濾過システムに使用することができる。もちろん、他のシステムで、本発明の様々な態様を含むフィルターエレメントを使用してもよい。さらに、清浄化システムを1以上のフィルターエレメントに連結して、汚物及び塵埃を除去するために清浄化する目的でフィルターエレメント中に空気を送ることができる。
【0036】
様々な坪量を有するベース媒体基材12試験試料の平坦なシートを、ASHRAE 52.2−1999試験法に従って平坦シート分別効率試験で比較のベース媒体基材と比較した。KCl粒子を含有する空気を、約10ft/minの流量で各試験試料に通して流した。図13は、この比較試験のグラフ表示である。線110は150g/m2の坪量のベース基材12を表し、線112は200g/m2の坪量のベース基材12を表し、線114は260g/m2の坪量のベース基材12を表す。線116は比較のベース媒体基材を表しており、このベース媒体基材はナノ繊維層を含んでいなかった。本発明の例に従った各坪量のベース媒体基材12は、KCl粒子の全粒度範囲にわたって比較のベース基材より高い効率を有している。媒体の坪量に関わらず、粒度が増大するにつれて分別効率も増大する。図13のデータはチャート1に基づいている。
【0037】
【表1】
ベース媒体基材12、及びナノ繊維層20を含むベース媒体基材12の平坦なシートを、ASHRAE 52.2−1999試験法に従って平坦シート分別効率試験でナノ繊維層を有するものと有しないものの比較のベース媒体基材と比較した。KCl粒子を含有する空気を約10ft/minの流量で各試験試料に通して流した。図14は、この比較試験のグラフ表示である。線120は200g/m2のベース媒体基材12を表と、線122はナノ繊維層20を含む200g/m2のベース媒体基材12を表す。線124は比較のベース媒体基材を表し、線126はナノ繊維層を含む比較のベース媒体基材を表す。ナノ繊維層20を含むものと含まないベース媒体基材12は、KCl粒子の全粒度範囲にわたって、ナノ繊維層を含むものと含まない比較のベース基材より高い効率を有していた。図14のデータはチャート2に基づいている。
【0038】
【表2】
独特の構造の濾過媒体10は公知の濾過媒体より耐久性が高く、濾過及び逆清浄化操作中濾過媒体にかかる力による撓みが1つはその波形構造のためにより少ないので圧力低下の増大がより低くなる。フィルターエレメント70は、最も透過性の粒度のエアロゾル又は塵埃(約0.3〜約0.5μm)の捕捉に関して、公知のフィルターエレメントの約50〜55%に対して約85%というより大きい平均効率を生み出すことができる。また、ナノ繊維層20は公知の濾過媒体より高い坪量を有しており、そのため濾過媒体10は逆パルス清浄化において公知の濾過媒体より効果的に清浄化することができる。さらに、ナノ繊維層20の高い坪量により、気流を制限したり圧力低下を増大したりすることなく高い効率及び微粒子捕捉を可能とする広範囲にわたる蛇行経路を有する耐久性の三次元表面濾過層が得られる。
【0039】
チャート3は、以前に公知の製品に対する圧力低下を示す。たった約50.2%〜57.2%の分別効率で約12.5〜15.6mmH2Oの圧力が観察された。チャート3の例は様々なロール長、ナノ繊維の坪量、及び様々な総坪量を含んでおり、その結果様々な分別効率、及び様々な圧力低下が得られる。例えば、チャート3で得られた比較の圧力低下及び分別効率は様々な波形深さ及びFrazier気孔率で得られた。
【0040】
【表3】
以下のチャート4に、実際の製品の比較で得られた複数の情報を提供する。本発明に従った1つの例において、ナノ繊維層の約2.5g/m2の坪量で、フィルターエレメント70の良好な効率が得られることが判定された。様々な例が種々の坪量及びロール長を有しているが、それでも一貫して約85%の濾過効率を達成する。このデータは、約2.5g/m2の重量で、良好な濾過効率、良好な表面濾過、及び良好な長期の一体耐久性が得られることを示している。ナノ繊維層が3.0g/m2より大きい坪量を有していると、フィルターエレメント70の性能が落ちることが判定された。
【0041】
【表4】
チャート4はまた、濾過媒体の圧力低下が上記チャート3に示す従来技術の製品の例より実質的に低いことも示している。例えば、試験は、1つの例において、圧力低下がチャート4に示すように本発明の場合約4.4〜約6.0mmH2Oであることができることを示した。同じ濾過媒体及びナノ繊維層を含まない比較の従来技術の装置は、チャート3に示すように、たった約50.2〜57.2%の分別効率で約12.5〜15.6mmH2Oの圧力低下を示すことが分かる。チャート3及びチャート4の例は、様々なロール長、ナノ繊維の坪量、及び様々な総坪量を含んでおり、それぞれ異なる分別効率、及び異なる圧力低下となり得る。本発明の媒体は、現行の技術と類似又は同等のコストで改良された濾過効率及びタービンブレード保護を提供する一方で、圧力低下を大きく増大することがない。この改良された濾過効率は類似又は同等の圧力低下で達成することができるので、タービンの運転に変更の必要は殆どない。チャート4は0.30μmでの濾過効率が35%増大し、圧力低下が50%低減することを表している。
【0042】
図15は、本発明を標準的な媒体と比較して示すASHRAE 52.2分別効率対粒度のグラフである。
【0043】
上記例示としての実施形態を参照して本発明を説明してきた。本明細書を読み理解すすれば他の修正及び変更は明らかであろう。かかる修正及び変更は全て、特許請求の範囲に入る限り、本発明の1以上の態様を組み込んだ例示としての実施形態に包含される。
【符号の説明】
【0044】
複合濾過媒体 10
スパンボンド基材(不織布ベース基材) 12
第1の面 14
第2の面 16
波形 18
ナノ繊維層 20
波の頂 22
波の谷 24
二成分繊維 30
結合領域パターン 31
芯 32
不連続線 33
鞘 34
結合領域がない位置 35
スパンボンドファブリック 36
結合領域 37
フィルターエレメント 70
襞 72
エンドキャップ 74
エンドキャップ 76
内部の導管 78
卵形の管 79
フィルターエレメント 170
第1のエンドキャップ 174
第2のエンドキャップ 176
内部の導管 178
下側エンボスローラー 100
上側エンボスローラー 102
リブ 104
チャンネル 106
波形のピッチ C
有効な深さ D
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にフィルターエレメントに関し、より特定的には、波形又はエンボス加工した複合不織濾過媒体を有するフィルターエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
ある公知の濾過媒体複合構築物では、基材を製造するために湿式(wet-laid)製紙法を用い、かつ濾過媒体基材の片面又は両面に軽量のナノ繊維コーティングを設けるためにエレクトロスピニング技術を用いる。通例、媒体基材は100〜120g/m2の坪量を有し、ナノ繊維層は0.5g/m2以下の坪量を有する。
【0003】
軽量ナノ繊維層によっては高い機械的ストレスがかかる可能性があることが知られている。かかるストレスがかかることは、500nm未満、より典型的には100nmの直径を有する繊維から形成されたナノ繊維層にとっては重大である可能性がある。また、公知のエレクトロスピニングしたナノ繊維層は、図1に示されているように基材に取り付けたときに二次元の構造であり、厚さが単一の繊維層である。従来のエレクトロスピニングした繊維では、ナノ繊維とベース媒体間の分極引力に基づく比較的弱い引力結合のためにナノ繊維が濾過媒体から脱落する繊維脱落(shedding)が起こり得ることが知られている。かかる媒体は濾過性能が低下する可能性がある。
【0004】
濾過媒体複合構築物を用いて、各種の装置に清浄な空気を供給することができる。かかる装置として、タービンブレードを挙げることができる。典型的な公知の濾過媒体は、公知の作動流量でASHRAE 52.2−1999の試験手順で試験したときに、通例7.0mmH2Oより大きい圧力低下で0.3〜0.4μmの粒子を約55%捕捉するという新しい又は清浄な作動効率を有し得る。
【0005】
タービンブレードを含有する装置の例を考えると、タービンブレードを清浄に維持しようとすることは当然の論理である。タービンブレードを清浄化するための現在の1つの方法では、タービンを定期的にオフラインにしてブレードを清浄に水洗する必要がある。タービンの停止時間は、その間タービンが作動せず、従って発電が削減されるので費用がかかる可能性がある。公知の濾過媒体より高い効率の濾過媒体を提供して、タービンブレードを清浄化するためのタービン停止時間を低減又は削除することができれば望ましいであろう。
【0006】
現行の技術の最良の性能は、エレクトロスピニングした繊維表面層で被覆された標準的な湿式(wet laid)ベース媒体を用いてF−9にランク付けされている。今までのところ、最大の効率は、エレクトロスピニング法により、100%0.30μmDOP粒子を用いて検査したときに最大75%の効率程度に制限されている。これは、湿式ベース媒体の1つの表面上にエレクトロスピニングした繊維の重い層、又はベース媒体の両面にナノ繊維層を使用することによって達成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7316723号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の幾つかの例示的な態様を基本的に理解できるように、以下に本発明の簡単な概要を述べる。この概要は本発明の外延を概観するものではない。また、この概要は本発明の重要な要素を特定するものでも本発明の範囲を画定するものでもない。この概要の唯一の目的は、後に述べるより詳細な説明の前置きとして、本発明の幾つかの概念を簡略化した形態で示すことにある。
【0009】
1つの態様で、本発明は、ベース基材を含む複合濾過媒体構造体を提供する。このベース基材はスパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含んでいる。複合濾過媒体構造体はエレクトロブロースピニング法(electro-blown spinning)によりベース基材の一面上に設けたナノ繊維層を含んでいる。ベース基材とナノ繊維層はASHRAE 52.2−1999試験法に従って測定して少なくとも85%の濾過効率を与えるように構成されている。
【0010】
別の態様で、本発明は、ベース基材を含む複合濾過媒体構造体を提供する。このベース基材はスパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含んでいる。複合濾過媒体構造体はエレクトロブロースピニング法によりベース基材の一面上に設けたナノ繊維層を含んでいる。ナノ繊維層は約2.0〜約3.0g/m2の坪量を有している。
【0011】
もう1つ別の態様で、本発明は、複合濾過媒体の作成方法を提供する。この方法は、スパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維から不織布基材を形成することを含んでいる。また、この方法は、ポリマー溶液をエレクトロブロースピニングして不織布の少なくとも一面上に複数のナノ繊維を形成して複合濾過媒体を形成することによりナノ繊維層を設け、それにより複合濾過媒体が約85%以上の濾過効率を有するようにすることを含んでいる。
【0012】
本発明の上記及び他の態様は、添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより本発明が属する技術分野の当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、湿式基材上にエレクトロスピニングしたナノ繊維層の従来技術の例の顕微鏡写真である。
【図2】図2は、本発明の1つの態様によるスパンボンドした二成分基材上のエレクトロブローしたナノ繊維膜層の第1の例の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、図2のナノ繊維膜層及びスパンボンドした二成分基材を用いた一例の複合濾過媒体の概略断面図である。
【図4】図4は、図3に示す濾過媒体に使用した二成分繊維の端部顕微鏡写真である。
【図5】図5は、図3に示すスパンボンドした二成分基材の平面顕微鏡写真である。
【図6】図6は、図3に示すスパンボンドした二成分基材の結合パターンの概略平面図である。
【図7】図7は、図3に示す複合濾過媒体の波形構造の態様の例の断面図である。
【図8】図8は、一例の態様に従って図3の複合濾過媒体をエンボス加工するためのエンボスローラーの概略図である。
【図9】図9は、図3に示す濾過媒体に使用した二成分繊維の断面の顕微鏡写真である。
【図10】図10は、図6に示す濾過媒体を含むフィルターカートリッジの側面図である。
【図11A】図11Aは、図3の濾過媒体を用いる第1の例のフィルターエレメントの透視図である。
【図11B】図11Bは、図3の濾過媒体を用いる第2の例のフィルターエレメントの透視図である。
【図12】図12は、図10に示すフィルターカートリッジの一部分の拡大透視図である。
【図13】図13は、図3の態様例による分別効率対様々な坪量におけるベース媒体基材の粒度のグラフである。
【図14】図14は、図3の一例の態様に従うナノ繊維層を有するものと有しないもののベース媒体基材の分別効率対粒度の、ナノ繊維層を有するものと有しないものの比較のベース媒体基材と比較して示すグラフである。
【図15】図15は、本発明と標準的な媒体を比較してASHRAE 52.2分別効率対粒度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の1以上の態様を具体化する例示としての実施形態を図面に記載し例証する。これらの図示された例は本発明を限定するものではない。例えば、本発明の1以上の態様は他の実施形態、さらには他の型の装置に利用することができる。また、幾つかの専門用語は便宜上のためにのみ本明細書中で使用されており、本発明に制限を加えるものではない。さらにまた、図面中、同じ参照番号は同じ要素を指定するのに使用される。
【0015】
本発明の1以上の態様に従う高性能複合濾過媒体及びその複合濾過媒体の作成方法の例を以下で詳細に説明する。一般に、複合濾過媒体は二成分系合成不織ベース基材とナノ繊維の1以上の表面層とを含んでいる。1つの特定の例において、かかる複合濾過媒体は、フィルターエレメント又はカートリッジ中に設置し、パルス式のガスタービン吸入フィルターハウジング又は類似の工業用濾過システムに使用したときに高まった濾過性能を提供する。また、1つの例において、この新しい複合濾過媒体は、波形成形及びプリーツ加工及び全体の組立のようなその後の工程を伴うフィルターカートリッジ又はフィルターエレメント中に設定することもできる。濾過媒体の波形成形により、複合濾過媒体の「清浄な」及び「汚れた」面側の両方で低い制限空気流のための大きい容積の通路が得られる。1つの例において、複合濾過媒体はthe American Society of Heating,Refrigerating and Air−Conditioning Engineers(ASHRAE)52.1の試験手順で試験したときに0.3〜0.4μm粒子の約85%の保持捕捉という初期濾過効率を提供し得、これは公知の濾過媒体と比較して約10%の性能増大である。その上、この複合媒体は公知の濾過媒体より低い圧力低下で85%の効率を提供し得る。1つの例において、複合濾過媒体は6.0mm水未満の抵抗(すなわち圧力低下)を有する。
【0016】
また、この複合濾過媒体は、大規模で激しい塵埃負荷及び清浄化の難問に曝されたときに有益な耐久性を有することができ、より高い効率を達成する。かかる有益な耐久性は既存の技術に対する改善であり得る。この改良された性能(例えば、85%以上の効率)の1つの理由は、ナノ繊維の坪量が約2.0〜3.0g/m2であることであり得る。かかる坪量は公知の濾過媒体より大きいであろう。約2.0〜3.0g/m2の範囲例はナノ繊維層にとって有用な重量であることが判明した。この高めの坪量により、逆パルス清浄化において公知の濾過媒体より効果的に濾過媒体を清浄化することができる。
【0017】
図2は、ナノ繊維層20と組み合わせたスパンボンド基材12の形態の本発明の1以上の態様に従う複合濾過媒体10の1つの例を示す。ナノ繊維層20とスパンボンド基材12の組合せにより、耐久性の三次元表面濾過層が得られ、これは気流を実質的に制限したり圧力低下を増大したりすることなく高い効率と微粒子捕捉を可能にする広範囲にわたる多層蛇行経路を有する。この多層蛇行経路は小さい細孔を有し得る。かかる構造は、パルス式濾過システムにおいて、殊に最小の厚さを有する二次元ナノ繊維層と比較して、機械的な力に対して極めて耐久性であることが判明した。この示した例の場合、ナノ繊維層20の坪量は約2.0〜3.0g/m2の範囲である。スパンボンド基材12又は複数の二成分繊維30上の一例のナノ繊維層20の厚さは、図1に示すような単一層の従来技術の例の場合の典型的な最大の厚さ3μmと対照的に約10μmであることができる。
【0018】
媒体はまた、濾過及び逆清浄化操作の間濾過媒体にかかる力による濾過媒体の撓みがより少ないため、圧力低下の大きさがより少なくなる可能性もある。また、スパンボンド波形媒体基材12は等しい又はより低い圧力低下で公知の濾過媒体基材より効率的であり得る。スパンボンド媒体により、繊維30をファブリック又はファブリック基材に合体させるための結合が得られる。1つの態様において、この媒体基材12を形成するのに用いる二成分繊維30は公知の濾過媒体を形成するのに使用される繊維より微細である。その上、ベース媒体基材12とナノ繊維層20との間の接着結合は波形成形又はエンボス加工操作中の追加の熱的加工処理によって高まり得る。
【0019】
図3は、複合濾過媒体10の概略部分説明図であり、特定の例のシート様構造を示す。図から理解できるように、濾過媒体10はベース媒体基材12とナノ繊維層20を含んでいる。ベース媒体基材12は第1の面14と第2の面16を有する。1つの態様において、ナノ繊維層20は媒体基材12の第1の面14上に設置されている。例示の説明図には明白に示されていないが、ナノ繊維層20は第2の面16上に設置することもできるし、又はナノ繊維層20は第1及び第2の面14及び16の各々に設置することもできることが分かる。
【0020】
媒体基材12の詳細に関しては図4に注目されたい。本発明の1つの態様で、基材12はスパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維30から形成された不織布基材である。二成分繊維を提供するためのかかる態様は芯−鞘構造、島構造、又は並んだ構造によるものであることができる。また図4を参照して、この例示した実施形態では、二成分繊維30は芯32と、この芯32の周囲を取り囲む鞘34とを含んでいる。1つの例において、二成分繊維30は約12〜約18μmの直径を有する。
【0021】
任意の適切な二成分合成繊維30を用いて媒体基材12の不織布を作成することができる。二成分繊維30の芯32及び鞘34に適した材料としては、限定されることはないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、アラミド、及びこれらの混合物がある。二成分繊維の鞘に適した材料には、二成分繊維の芯の材料より低い融点を有する熱可塑性材料、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、アラミド、及びこれらの混合物がある。
【0022】
二成分繊維30をジェットによって溶融紡糸して複数の連続繊維とし、これらを均一に付着させて図5に示すようなランダム三次元ウェブとする。このウェブは次にカレンダーロールにより加熱及びエンボス加工することができ、ウェブを熱的に結合させて合体したスパンボンドファブリック36にする。カレンダーロールエンボス加工パターンの接触による加熱により、二成分繊維30の熱可塑性の鞘34が軟化又は溶融し、不織繊維がカレンダーロールエンボス加工パターンの接触点のみで一緒に結合する。温度は、少なくとも、二成分繊維30の鞘34のより低い融点部分の軟化又は融解が起こるように選択される。一実施形態では、この温度は約90〜約240℃である。冷却後、鞘部分34の溶融及び再固化により繊維の所望の連結が起こる。
【0023】
本発明の1つの態様はベース媒体基材12の独特の結合パターンである。この結合パターンは、カレンダーロールのエンボス加工パターンによって規定することができる。結合領域が媒体の耐久性と機能を提供すると同時に、これらの結合点が溶融したポリマーのうちの気流がゼロである領域を創成する。このカスタム結合パターンは複合濾過媒体構造体の濾過効率を改良する上で役に立ち得る。
【0024】
ベース基材12に対する一例の結合領域パターン31を図6に示す。このパターンは結合領域の複数の実質的に平行な不連続線33を有し、二成分繊維30を互いに結合して不織布ベース基材12を形成する。結合パターン31の不連続線33はベース媒体基材12の機械方向(長手方向の広がり)に対して平行な方向に作成することができる。結合領域の平行な不連続線33は互いにオフセットになっていて、結合領域が存在しない位置35がある。この結合領域がない位置35は隣接する不連続線33の結合領域37と並んでいることができる。1つの例において、媒体基材12内のスパンボンド二成分繊維30の結合領域37はファブリックの総面積の約10〜約16パーセントである。幾つかの公知のスパンボンドファブリックは約19〜24パーセントの結合領域を有し得ることは注目に値する。より少ない結合領域では、所与の空気流れにおいて、ベース媒体12の空気透過性が増大し、又は反比例して低い圧力低下が可能である。一実施形態では不織合成ファブリックベース媒体12の坪量は約100〜約330g/m2、別の実施形態では約150〜約260g/m2である。
【0025】
図8は、エンボス加工法のための下側及び上側エンボスローラー100、102を有する一例の装置の概略図である。図から分かるように、ローラー100、102は、その間のベース基材12と対になって局在化した熱及び圧力をかける複数の構造体を有している。図示した例で、ローラー100、102は、下側及び上側エンボスローラー100及び102の外面108に配置された複数のリブ104及びチャンネル106の対を有している。各々のリブ104及び各々のチャンネル106はエンボスローラー100又は102の円周の一部分に沿って延びている。また、下側エンボスローラー100上のリブ104及びチャンネル106の各々の対は、上側エンボスローラー102上のリブ104及びチャンネル106の対応する対と揃って並んでおり、リブ及びチャンネルは、下側ローラー100上の各リブ104が上側ローラー102上のチャンネル106と揃って並び、対になるように、かつ上側ローラー102上の各リブ104が下側ローラー100上のチャンネル106と揃って並び、対になるように、配置されている。複数の対のリブ104及びチャンネル106は、エンボスローラー100及び102の全面で間隔をあけて互い違いの列状になっており、一例のエンボス加工パターンを定めている。図9は、エンボス加工したベース基材12の断面を示す。エンボス加工した部分は断面の中央付近に配置されており、厚さ寸法が低減している。1つの例において、この形成されたエンボス加工した基材12はASHRAE 52.2−1999の試験手順で測定して約50%以上の濾過効率を有する。
【0026】
ナノ繊維層20に関して、この層はエレクトロブロースピニング法によって形成できる。この方法では、スピニングノズル中にポリマー溶液を供給し、スピニングノズルに高電圧をかけ、スピニングノズルを介してポリマー溶液を放出しながらスピニングノズルの下端中に圧縮した空気を注入することができる。かける高電圧の範囲は約1〜約300kVである。このエレクトロブロースピニング法によると、公知の濾過媒体上の公知のナノ繊維濾過層より厚いナノ繊維の耐久性の三次元濾過層が得られる。代表的な態様において、ナノ繊維膜層20の坪量は約2.0〜約3.0g/m2、別の態様においては約2.0〜約2.5g/m2である。ナノ繊維に対する重量の小さい範囲は、2.5g/m2の標的を使用することができるように達成するのは困難であることがあり、現実の製品は2.5±0.5g/m2であり得ることが理解されよう。
【0027】
エレクトロブロースピニング法によりナノ繊維を形成するのに適したポリマーは熱可塑性ポリマーに限定されることはなく、熱硬化性ポリマーを包含し得る。適切なポリマーとしては、限定されることはないが、ポリイミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチレン及びこれらのコポリマー又は誘導体化合物がある。ポリマー溶液は、選択したポリマーを溶解する溶媒を選択することによって調製される。ポリマー溶液は添加剤、例えば可塑剤、紫外線安定剤、架橋剤、硬化剤、反応開始剤、などと混合することができる。ポリマーを溶解するのに特定の温度範囲は必要ないかもしれないが、溶解反応を支援するのに加熱が必要となることがある。
【0028】
上記各種のポリマーに可塑剤を添加することが有利である可能性がある。適切な可塑剤はポリマー、並びにナノ繊維層の特定の最終用途に依存する。例えば、ナイロンポリマーは水又はエレクトロスピニング又はエレクトロブロースピニング法に由来する残留溶媒で可塑化することができる。有用である可能性があるその他の可塑剤としては、限定されることはないが、脂肪族グリコール、芳香族スルホンアミド、フタル酸エステル、例えば、限定されることはないが、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジドデカニル、及びフタル酸ジフェニル、などがある。
【0029】
ナノ繊維層20は、例えばエレクトロブロースピニングによって、直接ベース基材12の少なくとも一面に設置して複合濾過媒体10を形成することができる。得られる複合濾過媒体は約85%の最小濾過効率を有する。この媒体基材12は公知の濾過媒体と比較して高い空気透過性を有しており、このため媒体基材12に対するナノ繊維の改良された機械的接着が可能になる。かかる透過性の場合、ナノ繊維層20を媒体基材12の第1の面14に設置する際に媒体基材の第2の面16側から真空にすることができる。新しいベース媒体がそのより高い空気透過性のために気流に対してより開放的であれば、真空の有効性がより大きくなり、ベース媒体中の二成分繊維に対するナノ繊維の強い機械的結合が確実になる。ナノ繊維の真空合体(vacuum consolidation)と相俟って、乾燥工程の熱的合体により、ベース媒体中の特別な二成分ポリエステル繊維に対する接着が改良される。ナノ繊維層20の設置の際に使用する乾燥温度と組み合わせて、二成分繊維30の鞘部分34の軟化も起こり得、ナノ繊維層20はより緻密になり、スパンボンドベース媒体基材12に結合するようになることができる。
【0030】
この時点で、完全で有用な複合濾過媒体10が提供される。しかし、既に述べたように、複合濾過媒体をさらに加工処理してもよい。一例として、複合濾過媒体10は、対向する波形成形ローラーを約90〜約140℃の温度で用いて波形にすることができる。代わりの実施形態では、複合濾過媒体10は、対向するエンボスローラーを約90〜約140℃の温度で用いてエンボス加工することができる。
【0031】
図7も参照すると、形成することができる波形の一例18が示されている。これらの例の波形18は複合濾過媒体10内に交互にアップダウンする実質的にV形の波として構成されている。波の頂22及び谷24は成形装置を通る基材のウェブの進行の方向に延びている。谷24は約0.02インチ(0.5mm)以上の有効深さDを有していて、高い塵埃負荷における濾過媒体10の通気性が約4インチの水柱(wc)未満の低い差圧を維持することを可能にしている。波形のピッチCは、代表的な態様において1インチ当たり約3〜約10の波形(1cm当たり約1.2〜約3.9の波形)、別の態様において1インチ当たり約3〜約6の波形(1cm当たり約1.2〜約2.4の波形)である。この有効な深さDと波形のピッチCの組合せは、高い空気速度及び塵埃負荷による高い静水圧の下で襞のつぶれを防止する役に立つ改良された接触点を提供するのに役立っている。濾過媒体10の全断面にわたる均一な波形も提供することができる。
【0032】
図10は、波形の濾過媒体10から形成された一例のフィルターエレメント70の側面図である。フィルターエレメント70は第1のエンドキャップ74及び対向する第2のエンドキャップ76を含んでおり、濾過媒体10はエンドキャップ74及び76間に延びている。フィルターエレメント70は内部の導管78(図11A)を含む管状形状である。変形として、図11Bに示されているようにフィルターエレメント170は円錐状の形状であることもできる。フィルターエレメント170は類似の構造部分(例えば、第1のエンドキャップ174、第2のエンドキャップ176及び内部の導管178)を有している。フィルターエレメント70、170のその他の形状も提供することができることが理解される。
【0033】
さらにもう1つ別の例として、図12は、濾過媒体10の2つの部分が隣接して位置する配置を示す。フィルターエレメント70の隣接する襞72の波形18は気流のための卵形の管79を画定している。波形18は襞72の縁部に対して実質的に垂直に延びている。
【0034】
その他の構成要素もフィルターエレメント70の一部として濾過媒体10と共に提供することができる。例えば、内部及び外部有孔金属ケージ、ウレタンポット化合物、及びウレタンストラップ化合物も全て提供することができる。
【0035】
本発明の様々な態様を含むフィルターエレメントはガスタービンの吸入濾過システムに使用することができる。もちろん、他のシステムで、本発明の様々な態様を含むフィルターエレメントを使用してもよい。さらに、清浄化システムを1以上のフィルターエレメントに連結して、汚物及び塵埃を除去するために清浄化する目的でフィルターエレメント中に空気を送ることができる。
【0036】
様々な坪量を有するベース媒体基材12試験試料の平坦なシートを、ASHRAE 52.2−1999試験法に従って平坦シート分別効率試験で比較のベース媒体基材と比較した。KCl粒子を含有する空気を、約10ft/minの流量で各試験試料に通して流した。図13は、この比較試験のグラフ表示である。線110は150g/m2の坪量のベース基材12を表し、線112は200g/m2の坪量のベース基材12を表し、線114は260g/m2の坪量のベース基材12を表す。線116は比較のベース媒体基材を表しており、このベース媒体基材はナノ繊維層を含んでいなかった。本発明の例に従った各坪量のベース媒体基材12は、KCl粒子の全粒度範囲にわたって比較のベース基材より高い効率を有している。媒体の坪量に関わらず、粒度が増大するにつれて分別効率も増大する。図13のデータはチャート1に基づいている。
【0037】
【表1】
ベース媒体基材12、及びナノ繊維層20を含むベース媒体基材12の平坦なシートを、ASHRAE 52.2−1999試験法に従って平坦シート分別効率試験でナノ繊維層を有するものと有しないものの比較のベース媒体基材と比較した。KCl粒子を含有する空気を約10ft/minの流量で各試験試料に通して流した。図14は、この比較試験のグラフ表示である。線120は200g/m2のベース媒体基材12を表と、線122はナノ繊維層20を含む200g/m2のベース媒体基材12を表す。線124は比較のベース媒体基材を表し、線126はナノ繊維層を含む比較のベース媒体基材を表す。ナノ繊維層20を含むものと含まないベース媒体基材12は、KCl粒子の全粒度範囲にわたって、ナノ繊維層を含むものと含まない比較のベース基材より高い効率を有していた。図14のデータはチャート2に基づいている。
【0038】
【表2】
独特の構造の濾過媒体10は公知の濾過媒体より耐久性が高く、濾過及び逆清浄化操作中濾過媒体にかかる力による撓みが1つはその波形構造のためにより少ないので圧力低下の増大がより低くなる。フィルターエレメント70は、最も透過性の粒度のエアロゾル又は塵埃(約0.3〜約0.5μm)の捕捉に関して、公知のフィルターエレメントの約50〜55%に対して約85%というより大きい平均効率を生み出すことができる。また、ナノ繊維層20は公知の濾過媒体より高い坪量を有しており、そのため濾過媒体10は逆パルス清浄化において公知の濾過媒体より効果的に清浄化することができる。さらに、ナノ繊維層20の高い坪量により、気流を制限したり圧力低下を増大したりすることなく高い効率及び微粒子捕捉を可能とする広範囲にわたる蛇行経路を有する耐久性の三次元表面濾過層が得られる。
【0039】
チャート3は、以前に公知の製品に対する圧力低下を示す。たった約50.2%〜57.2%の分別効率で約12.5〜15.6mmH2Oの圧力が観察された。チャート3の例は様々なロール長、ナノ繊維の坪量、及び様々な総坪量を含んでおり、その結果様々な分別効率、及び様々な圧力低下が得られる。例えば、チャート3で得られた比較の圧力低下及び分別効率は様々な波形深さ及びFrazier気孔率で得られた。
【0040】
【表3】
以下のチャート4に、実際の製品の比較で得られた複数の情報を提供する。本発明に従った1つの例において、ナノ繊維層の約2.5g/m2の坪量で、フィルターエレメント70の良好な効率が得られることが判定された。様々な例が種々の坪量及びロール長を有しているが、それでも一貫して約85%の濾過効率を達成する。このデータは、約2.5g/m2の重量で、良好な濾過効率、良好な表面濾過、及び良好な長期の一体耐久性が得られることを示している。ナノ繊維層が3.0g/m2より大きい坪量を有していると、フィルターエレメント70の性能が落ちることが判定された。
【0041】
【表4】
チャート4はまた、濾過媒体の圧力低下が上記チャート3に示す従来技術の製品の例より実質的に低いことも示している。例えば、試験は、1つの例において、圧力低下がチャート4に示すように本発明の場合約4.4〜約6.0mmH2Oであることができることを示した。同じ濾過媒体及びナノ繊維層を含まない比較の従来技術の装置は、チャート3に示すように、たった約50.2〜57.2%の分別効率で約12.5〜15.6mmH2Oの圧力低下を示すことが分かる。チャート3及びチャート4の例は、様々なロール長、ナノ繊維の坪量、及び様々な総坪量を含んでおり、それぞれ異なる分別効率、及び異なる圧力低下となり得る。本発明の媒体は、現行の技術と類似又は同等のコストで改良された濾過効率及びタービンブレード保護を提供する一方で、圧力低下を大きく増大することがない。この改良された濾過効率は類似又は同等の圧力低下で達成することができるので、タービンの運転に変更の必要は殆どない。チャート4は0.30μmでの濾過効率が35%増大し、圧力低下が50%低減することを表している。
【0042】
図15は、本発明を標準的な媒体と比較して示すASHRAE 52.2分別効率対粒度のグラフである。
【0043】
上記例示としての実施形態を参照して本発明を説明してきた。本明細書を読み理解すすれば他の修正及び変更は明らかであろう。かかる修正及び変更は全て、特許請求の範囲に入る限り、本発明の1以上の態様を組み込んだ例示としての実施形態に包含される。
【符号の説明】
【0044】
複合濾過媒体 10
スパンボンド基材(不織布ベース基材) 12
第1の面 14
第2の面 16
波形 18
ナノ繊維層 20
波の頂 22
波の谷 24
二成分繊維 30
結合領域パターン 31
芯 32
不連続線 33
鞘 34
結合領域がない位置 35
スパンボンドファブリック 36
結合領域 37
フィルターエレメント 70
襞 72
エンドキャップ 74
エンドキャップ 76
内部の導管 78
卵形の管 79
フィルターエレメント 170
第1のエンドキャップ 174
第2のエンドキャップ 176
内部の導管 178
下側エンボスローラー 100
上側エンボスローラー 102
リブ 104
チャンネル 106
波形のピッチ C
有効な深さ D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維(30)から形成された不織布基材を含むベース基材(12)、及び
エレクトロブロースピニング法によってベース基材(12)の一面上に設けられたナノ繊維層(20)
を含む複合濾過媒体構造体(10)であって、
ベース基材(12)及びナノ繊維層(20)が、ASHRAE 52.2−1999試験法に従って測定して85%以上の濾過効率を与えるように構成されている、複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項2】
不織布基材が約150〜約260g/m2の坪量を有する、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項3】
ナノ繊維層(20)が約2.0〜約3.0g/m2の坪量を有する、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項4】
ナノ繊維層(20)の厚さが約10μmである、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項5】
複合濾過媒体構造体(10)が約4.4〜約6.0mmH2Oの圧力低下で85%以上の分別効率を与える、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項6】
複合濾過媒体構造体(10)が約0.3〜約0.5μmの透過性の粒度を捕捉する、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項7】
複合濾過媒体構造体(10)がさらに複数の波形(18)を含む、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項8】
スパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維(30)から形成された不織布基材を含むベース基材(12)、及び
エレクトロブロースピニング法によってベース基材(12)の一面上に設けられた、約2.0〜約3.0g/m2の坪量を有するナノ繊維層(20)
を含む複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項9】
ベース基材(12)及びナノ繊維層(20)がASHRAE 52.2−1999試験法に従って測定して85%以上の濾過効率を与えるように構成されている、請求項8記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項10】
ナノ繊維層(20)の厚さが約10μmである、請求項8記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項1】
スパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維(30)から形成された不織布基材を含むベース基材(12)、及び
エレクトロブロースピニング法によってベース基材(12)の一面上に設けられたナノ繊維層(20)
を含む複合濾過媒体構造体(10)であって、
ベース基材(12)及びナノ繊維層(20)が、ASHRAE 52.2−1999試験法に従って測定して85%以上の濾過効率を与えるように構成されている、複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項2】
不織布基材が約150〜約260g/m2の坪量を有する、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項3】
ナノ繊維層(20)が約2.0〜約3.0g/m2の坪量を有する、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項4】
ナノ繊維層(20)の厚さが約10μmである、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項5】
複合濾過媒体構造体(10)が約4.4〜約6.0mmH2Oの圧力低下で85%以上の分別効率を与える、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項6】
複合濾過媒体構造体(10)が約0.3〜約0.5μmの透過性の粒度を捕捉する、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項7】
複合濾過媒体構造体(10)がさらに複数の波形(18)を含む、請求項1記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項8】
スパンボンド法を用いて複数の二成分合成繊維(30)から形成された不織布基材を含むベース基材(12)、及び
エレクトロブロースピニング法によってベース基材(12)の一面上に設けられた、約2.0〜約3.0g/m2の坪量を有するナノ繊維層(20)
を含む複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項9】
ベース基材(12)及びナノ繊維層(20)がASHRAE 52.2−1999試験法に従って測定して85%以上の濾過効率を与えるように構成されている、請求項8記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【請求項10】
ナノ繊維層(20)の厚さが約10μmである、請求項8記載の複合濾過媒体構造体(10)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−201419(P2010−201419A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38053(P2010−38053)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(507168926)ビーエイチエイ・グループ・インコーポレーテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】BHA GROUP, INC.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(507168926)ビーエイチエイ・グループ・インコーポレーテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】BHA GROUP, INC.
【Fターム(参考)】
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