説明

HEVシステム又はEVシステムを搭載したセミトレーラの充電装置とその充電方法

【課題】HEVシステムやEVシステムを搭載したセミトレーラのバッテリへ充電する際に、複雑なバッテリの交換設備や別途電力を供給する給電コネクタを着脱する作業を不要とし、容易にバッテリへ充電することができる充電装置、セミトレーラ、トレーラの保管スペース、充電システム及びその充電方法を提供する。
【解決手段】トラクタヘッド10とトレーラ20の少なくとも一方にバッテリ18又はバッテリユニット30を備え、トラクタヘッド10を切り離す際にランディングギヤによってトレーラ20の保持を行うセミトレーラ2の充電装置60を、ランディングギヤの内部をエアシリンダ(昇降装置)66によって昇降する受電コネクタを備えると共に、受電コネクタを降下して、路面に配設された給電コネクタ71に接続して、受電コネクタと給電コネクタ71を介して前記バッテリ18又はバッテリユニット30へ電力を送るように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HEVシステム又はEVシステムを搭載したセミトレーラのバッテリを充電する充電装置と、その充電装置によってバッテリが充電されるセミトレーラと、給電器を設けたトレーラの保管スペースと、前記セミトレーラと前記保管スペースからなる充電システムと、その充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流の国際化と大量輸送の観点から海上輸送が煩雑に行われ、この海上輸送に伴い海上コンテナの輸送が行われている。このコンテナを利用した輸送は、船舶を利用した海上輸送だけではなく、鉄道等の公共大量輸送網を利用した陸上輸送をすることができるので、地球温暖化の原因となるCOの排出量の抑制に寄与できる。
【0003】
このコンテナ輸送では、他の大量輸送手段と連携した輸送を行うと共に、セミトレーラによる輸送を、限定的に、例えば、船舶からの積み下ろしからコンテナヤードまでの移動、コンテナヤードから鉄道基地までの輸送、コンテナヤードから荷主までの輸送等に限定して行うことにより、COの排出量の抑制への寄与をより大きくできる。また、これらの移動においては、セミトレーラの走行パターンがある程度限定されるために、セミトレーラの運行スケジュールは容易に調整できるものとなる。
【0004】
また、その種のセミトレーラでは、重量物であるコンテナを積載したトレーラを牽引するために、トラクタヘッドに高出力で排気量が多い大型のエンジン(内燃機関)とこのエンジンの出力に見合った大型の多段ミッション(多段変速機)を搭載していることが多い。
【0005】
しかし、近時、地球温暖化の原因を解消するために、港湾施設等でもCOの排出を抑制することが望まれており、かかる意味においても従来の大型のエンジンを搭載したセミトレーラの使用はなるべく控えて、小出力のエンジンと小型の多段ミッションを組み合わせた駆動装置を備えたセミトレーラを使用することや、より好ましくはエンジンと電動機(モータ)とを動力源としたハイブリッド車(以下、HEV車という)や電動機のみを動力源とした電動車(以下、EV車という)を備えたセミトレーラを使用することで、よりCOの排出量の抑制に寄与できる。
【0006】
そこで、トラクタヘッドにHEVシステムを搭載し、且つ、長距離輸送におけるHEVシステムのバッテリの予備として、トレーラにバッテリを搭載したセミトレーラがある。このセミトレーラの充電装置を、図9に示す。この充電システム1XはHEVシステムを搭載したセミトレーラ2Xと、トレーラの保管スペース3Xとを備える。
【0007】
セミトレーラ2Xはトラクタヘッド10Xとトレーラ20Xとからなり、トレーラ20X側の連結器(キングピン)20aに、トラクタヘッド(セミトラクタ)側の連結器(カプラ)10aを連結して、トラクタヘッド10Xがトレーラ20Xを牽引する。トラクタヘッド10Xはエンジン(内燃機関)11、多段ミッション(多段変速装置)12、動力伝達軸13、駆動輪14、従動輪15、及び運転席16を備える。また、図10に示すように、電動機17とバッテリ18と動力取出機構(以下、PTOという)19とからなるHEVシステムを備える。
【0008】
トレーラ20Xはフレーム21の下部に車輪部を備え、車輪部には車軸22に従動輪2
3が備わっている。また、HEVシステムのバッテリ18Xと接続される予備のバッテリユニット30Xを備える。加えてエアシステム40Xとそのエアシステム40Xにより稼働するトレーラ保持部50Xも備える。
【0009】
セミトレーラ2Xには、トラクタヘッド10Xに受電コネクタ61aXとトレーラ20Xに受電コネクタ61bXとを備え、保管スペース3Xには受電コネクタ61aX、61bXと接続される給電コネクタ71Xと高圧ケーブル74Xと給電器75Xとを備える。
【0010】
セミトレーラ2Xのバッテリ18X及びバッテリユニット30Xに充電する場合は、それぞれの受電コネクタ61aX、61bXに給電コネクタ71Xを接続して、給電器75から電力を供給する。
【0011】
ところが、充電システム1Xでは、バッテリ18X及びバッテリユニット30Xに充電する際に、給電コネクタ71Xを受電コネクタ61aX、61bXとを接続する作業が必要になり、非効率であった。
【0012】
そこで、路面に沿って形成した溝に電力供給ラインを設け、電気自動車に、その電力供給ラインを摺動するトロリー式の接触端子を設けた充電装置がある(例えば、特許文献1参照)。また、無人搬送台車に、上下に昇降する集電子を設け、地上に設けた地上電極と接地させて充電する装置もある(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
しかし、それらの装置には特許文献1に記載の接触端子や、特許文献2に記載の集電子を保護していないため、接触端子や集電子が破損してしまうという問題や、電気が漏電してしまうという問題がある。
【0014】
一方、HEVシステムやEVシステムを搭載した車両のバッテリを充電する方法として、バッテリを車両から取り外して行う方法もある。この方法もバッテリを取り外す作業が必要となり、非効率である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−128304号公報
【特許文献2】特開平6−315206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、HEVシステムやEVシステムを搭載したセミトレーラのバッテリへ充電する際に、複雑なバッテリの交換設備や別途電力を供給する給電コネクタを着脱する作業を不要とし、容易にバッテリへ充電することができる充電装置、セミトレーラ、トレーラの保管スペース、充電システム及びその充電方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するための充電装置は、トラクタヘッドとトレーラの少なくとも一方にバッテリを備え、前記トラクタヘッドを切り離す際にランディングギヤによって前記トレーラの保持を行うセミトレーラの充電装置において、前記ランディングギヤの内部を昇降装置によって昇降する受電コネクタを備えると共に、前記受電コネクタを降下して、路面に配設された給電コネクタに接続して、前記受電コネクタと前記給電コネクタを介して前記バッテリへ電力を送るように構成される。
【0018】
この構成によれば、セミトレーラのトラクタヘッドが切り離される際に路面に降下して、従動輪と共にトレーラを保持するランディングギヤに、受電コネクタを備える。昇降装置によってランディングギヤの内部を昇降するシャフトに受電コネクタを接合して、昇降装置でシャフトを降下すると、シャフトと共に受電コネクタも降下するように構成する。そして、受電コネクタが路面に敷設した給電コネクタと接続して、HEVシステム又はEVシステムを搭載したセミトレーラのバッテリに充電することができる。
【0019】
そのため、複雑なバッテリ交換設備や別途電力を供給する給電装置を着脱する作業が不要になり、バッテリの充電作業を容易にすることができる。また、受電コネクタがランディングギヤの内部を昇降可能に設けるため、受電コネクタを衝撃や漏電などから保護することができるので、バッテリの充電の際に、漏電や感電などの事故を防ぐことができる。
【0020】
また、上記の充電装置は、前記受電コネクタと前記給電コネクタが接続されると、前記バッテリの充電状態を把握して前記昇降装置を制御する制御装置と繋がる通信回路を備えて構成される。
【0021】
この構成によれば、バッテリの充電が完了すると、自動的に昇降装置が稼働して、受電コネクタをランディングギヤの内部に格納することができる。そのため、セミトレーラを走行可能な状態にするには、トラクタヘッドを接続してランディングギヤを上昇させるだけでよい。
【0022】
この制御装置はトレーラの保管スペースに備えた給電器又はセミトレーラのどちらか一方に設ける。また、通信回路は受電コネクタと給電コネクタとが接続されると、少なくとも昇降装置を介して制御装置とバッテリとの間で開通する。制御装置にバッテリの充電状態を表す情報を送り、その情報を元に制御装置はバッテリの充電が完了したかどうかを判断する。そして、バッテリの充電が完了しと判断した場合に、昇降装置を稼働させて、受電コネクタをランディングギヤの内部に格納する。
【0023】
また、上記の目的を達成するためのセミトレーラは、上記に記載の充電装置と、少なくとも2本の前記ランディングギヤとを設け、前記充電装置の前記受電コネクタを前記ランディングギヤのそれぞれの内部に正負を区分して備えて構成される。
【0024】
この構成によれば、上記の充電装置を備えたセミトレーラは前述と同様の作用効果を得ることができる。そのため、安全で容易なバッテリの充電作業を行うことができる。また、正負に区分した充電装置を備えることで、誤接続を防ぐことができる。
【0025】
加えて、上記の目的を達成するためのトレーラの保管スペースは、上記に記載のセミトレーラのトレーラの保管スペースであって、前記充電装置の前記受電コネクタと接続する前記給電コネクタと、制御装置と、前記給電コネクタへ電力を送る給電器とを備え、前記充電装置を備えた前記ランディングギヤが接地する路面に前記給電コネクタを前記受電コネクタのそれぞれの正負に対応させて配置して構成される。この構成によれば、上記の充電装置を備えたトレーラを保管するスペースに、給電コネクタと給電器を設け、トレーラを保管するスペースと時間を有効に利用して、バッテリへの充電作業を実施することができる。
【0026】
また、上記のトレーラの保管スペースは、トレーラが所定の停車位置に停車したことを確認する停車位置確認装置を設けて構成される。この構成によれば、路面に設けた給電コネクタと受電コネクタを正確に接触させることができる。例えば、停車位置確認装置はトレーラの駆動輪又は従動輪の位置を計測する位置センサーや、輪留めなどを用いることができる。
【0027】
さらに、上記の目的を達成するためのセミトレーラの充電システムは、上記のセミトレーラと、上記の保管スペースとを備えて構成される。この構成によれば、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
上記の目的を達成するためのセミトレーラの充電方法は、トラクタヘッドとトレーラの少なくとも一方にバッテリを備え、前記トラクタヘッドを切り離す際にランディングギヤによって前記トレーラの保持を行うセミトレーラの充電方法において、前記ランディングギヤを保管スペースの路面と接地させた際に、前記ランディングギヤに備えられた受電コネクタを昇降装置により降下して、前記トレーラの保管スペースの路面に備えた給電コネクタと接続させてバッテリの充電を行う。
【0029】
また、上記のセミトレーラの充電方法は、前記受電コネクタと前記給電コネクタとが接続すると共に、前記受電コネクタと前記昇降装置を備えた充電装置と、制御装置との間の通信回路が繋がり、前記制御装置が、前記通信回路を介して前記バッテリの充電状態を把握し、前記バッテリの充電が完了すると前記昇降装置を稼働して、前記ランディングギヤに前記受電コネクタを格納する。
【0030】
これらの方法によれば、制御装置によって充電後の受電コネクタをランディングギヤへ格納する作業を自動で行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、HEVシステムやEVシステムを搭載したセミトレーラのバッテリへ充電する際に、複雑なバッテリの交換設備や別途電力を供給する給電コネクタを着脱する作業を不要とし、容易にバッテリへ充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る実施の形態の充電システムを示した側面図ある。
【図2】図1の充電装置を示した拡大図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のセミトレーラのトレーラを示した正面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の充電装置の受電コネクタと、本発明に係る実施の形態のトレーラの保管スペースの給電コネクタの接続を示した拡大図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の充電装置の受電コネクタの昇降を示した図で、(a)は受電コネクタがランディングギヤに格納された状態を示した図で、(b)は受電コネクタと給電コネクタが接続された状態を示した図である。
【図6】本発明に係る実施の形態のセミトレーラとトレーラを示した図で、(a)は充電準備が完了後にトラクタヘッドを切り離した、又は充電が完了後にトラクタヘッドを連結する状態を示した図で、(b)はトレーラが保管されている状態を示した図である。
【図7】本発明に係る実施の形態の充電方法において、セミトレーラを停車してから充電準備が完了するまでのフローチャートである。
【図8】本発明に係る実施の形態の充電方法において、バッテリの充電開始からセミトレーラが走行状態可能になるまでのフローチャートである。
【図9】従来のHEVシステムを搭載したセミトレーラを示した側面図である。
【図10】図9のX−Xで示した底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施の形態の充電装置、セミトレーラ、トレーラの保管スペース、充電システム及びその充電方法について、図面を参照しながら説明する。なお、従来と同一の構成及び動作については同一の符号を用いて、その説明を省略する。
【0034】
図1に示すように、充電システム1はセミトレーラ2とトレーラの保管スペース3からなり、セミトレーラ2に充電装置60を、保管スペース3に給電装置70を備える。
【0035】
このセミトレーラ2は、海上コンテナ等を運搬するトレーラであり、そのトレーラの中でも、荷重をその車体であるトレーラ20自体と、このトレーラ20を牽引するトラクタヘッド10の両方で分担して支持するトレーラであり、図9に示す従来のセミトレーラと同様に、トレーラ20側の連結器(キングピン)20aに、トラクタヘッド(セミトラクタ)側の連結器(カプラ)10aを連結して、トラクタヘッド10がトレーラ20を牽引した状態で運行する。なお、トレーラ荷重の殆どがトレーラ自体に加わるトレーラはフルトレーラと呼ばれ、大型トラック等に連結する大型フルトレーラと、乗用車等に連結するキャンピングトレーラなどの軽量フルトレーラに大別されている。
【0036】
図1に示すように、トレーラ20は、バッテリユニット30と、エアシステム40と、トレーラ保持部50と、充電装置60とを備える。
【0037】
トレーラ20の下部の車輪部に設けたバッテリユニット30にはバッテリ本体31と電力供給コネクタ32とを備える。また、バッテリユニット30の容量は、セミトレーラ2の載荷状態、即ち、積載する貨物(コンテナ)の重量や、走行パターンに対応するように、幾つかの種類を用意して、運行時のセミトレーラ2の載荷状態や走行パターンに対応させて選択できるようにすることが好ましい。
【0038】
エアシステム40は、エアタンク41と、エア制御ユニット42と、エア配管43とを備える。また、エアタンク41の入口側にエア流出防止のために逆止弁を設置する。そして、分岐部において、トラクタヘッド10から供給されるエア(圧縮空気)を、トレーラ20のエアブレーキ用のエアとして供給すると共に、エアタンク41へのエアを供給して、このエアをエアタンク41に貯蔵する。このエアタンク41に貯蔵されたエアをエア配管43によりエア制御ユニット42を経由して、充電装置60のエアシリンダ66などに供給する。このエアシステム40のエア制御ユニット42の制御により、必要に応じて、エアタンク41のエアを、充電装置60のエアシリンダ66に送って、エアシリンダ66の伸張と縮小を行う。
【0039】
次に、図2及び図3に示すように、トレーラ保持部50と充電装置60について説明する。トレーラ20のトレーラ保持部50に、ランディングギヤ51と、ランディングギヤ用昇降装置52とを備える。ランディングギヤ51の内部をその長手方向に中空の筒状に形成する。また、地面側の端部を地面との接地面積が大きくなるように形成する。加えて、ランディングギヤ51はトラクタヘッド10を取り付けていないときのトレーラ20の自重を従動輪23と共に保持することが出来る強度構造が好ましい。このランディングギヤ51には、例えば折りたたみ式のランディングギヤも用いることもできる。
【0040】
ランディングギヤ用昇降装置52に、昇降用モータ52aとピニオンギヤ52bとラックギヤ52cと昇降用バッテリ52dを備える。昇降用モータ52aでピニオンギヤ52bを回転させ、その回転によって、ピニオンギヤ52bと噛み合うラックギヤ52cにより、ランディングギヤ51の上下動を可能にする。このランディングギヤ用昇降装置52には上記の構成に限らず、ランディングギヤ51を上下に昇降させることができればよい。例えばエアシステム40のエア配管43を経由して送られるエアによって伸張と縮小を行うエアシリンダを用いることもできる。
【0041】
充電装置60は、受電コネクタ61、充電装置用通信コネクタ62、シャフト63、絶縁スリーブ64、絶縁ロッド65、受電コネクタ用昇降装置(エアシリンダ)66、シャフト接続コネクタ67、充電用通信用一体ケーブル68、及びバッテリ接続コネクタ69
を備える。
【0042】
受電コネクタ61を左右のトレーラ保持部50にそれぞれ正負別々の電極になるように配置し、受電コネクタ61の路面側の端部を凹形状に形成する。正負の電極をそれぞれ左右に分けて配置することで、誤接続を防止することができる。
【0043】
シャフト63を受電コネクタ61と一体に形成又は接合し、ランディングギヤ51の内部に設けた中空部を上下に昇降するように、ランディングギヤ51に挿通する。シャフト63を昇降させるエアシリンダ66はエアシステム40からエアを供給され、伸張と縮小を行う。その伸張と縮小に合わせてシャフト63がランディングギヤ51の内部を昇降する。このシャフト63の昇降動作によって、受電コネクタ61をランディングギヤ51内部に格納し、また、保管スペース3の路面に配置した給電コネクタ71と接続することができる。受電コネクタ61をランディングギヤ51の内部に格納するため、電極である受電コネクタ61とシャフト63をランディングギヤ51で保護することができる。
【0044】
シャフト63とランディングギヤ51の内壁との間の隙間に電気的に絶縁構造を持つ絶縁スリーブ64を設け、シャフト63からランディングギヤ51へ電気が流れないように、漏電対策を施す。また、シャフト63とエアシリンダ66との間にも絶縁ロッド65を前述と同様の理由で設ける。充電用通信用一体ケーブル68は、受電コネクタ61とシャフト63とが上下動した場合でもケーブルが断線しないように、余裕を持たせることが望ましい。加えて、ランディングギヤ51の路面側の端部に開閉窓を設け、この開閉窓を受電コネクタ61の昇降動作に合わせてこの開閉し、ランディングギヤ51の内部と外部を遮断するように構成すると、より受電コネクタの保護性が増す。
【0045】
この充電装置60の動作を説明する。受電コネクタ61とシャフト63はエアシリンダ66の伸張と縮小によって、ランディングギヤ51の内部を上下動する。ランディングギヤ51が路面に接地した状態でエアシリンダ66を伸張させて、シャフト63と共に受電コネクタ61を降下させて、路面に設けた給電コネクタと接続する。この接続により、受電コネクタ61からシャフト63を介して電力がシャフト接続コネクタ67から充電用通信用一体ケーブル68を通って、バッテリ接続コネクタからバッテリ31へと流れ、バッテリ31を充電する。充電装置60は上記の構成に限らず、トラクタヘッド10のバッテリ18へ電力を送る構成でもよい。充電が完了すると、エアシリンダ66を縮小させて、シャフト63と共に受電コネクタ61を上昇させて、ランディングギヤの内部に格納する。
【0046】
上記の動作によれば、バッテリ18又はバッテリユニット30をセミトレーラ2から取り外して交換する作業や、電力を供給する給電装置の着脱などの作業を必要とすることなく、セミトレーラ2に搭載したバッテリ18又はバッテリユニット30に、電力を充電することができるため、バッテリの充電作業を容易にすることができる。また、ランディングギヤ51の内部に受電コネクタ61を格納することができるため、受電コネクタ61を保護でき、これにより受電コネクタ61が露出しないため、漏電や感電などの事故を防ぐことができる。
【0047】
ランディングギヤ51の内部に受電コネクタ61を格納することができること、また、絶縁スリーブでシャフト63を覆うことで、電極となる受電コネクタ61とシャフト63の絶縁性が更に向上する。
【0048】
次に、トレーラの保管スペース3(以下保管スペース3という)について、図2及び図3を参照しながら説明する。保管スペース3には給電装置70を備える。給電装置70は、給電コネクタ71と給電装置用通信コネクタ72と絶縁ブロック73とからなる給電部、給電用通信用一体ケーブル74、給電器75、給電器接続コネクタ76、位置センサー77、及び輪留め78を備える。
【0049】
給電部はトレーラ20のランディングギヤ51が接地する路面であり、その接地する箇所で給電コネクタ71が路面の表面から突出しないように、凹形状の窪みに給電コネクタ71を備える。
【0050】
給電コネクタ71をトレーラ20の左右のランディングギヤ51が接地する路面に周囲の路面とは絶縁された状態で、前述の受電コネクタ61と対応する正負の電極となるように、凸形状に形成する。絶縁ブロック73を給電コネクタ71と給電部の窪みとの間に配置して、漏電を防ぐ。
【0051】
給電部は上記の構成に限らず、例えば凹形状の窪みに受電コネクタ61が挿入されていないとき、すなわちバッテリへの充電作業がないときには、給電コネクタ71を隠すように蓋が閉まる構造にすると好ましい。すると、保管スペース3を屋外に設けても、雨などが入り込まずに安全に使用することができる。
【0052】
充電器75は内部に制御装置(図示しない)を備え、制御装置は給電コネクタ71が受電コネクタ61と接合した際に、少なくともバッテリ31の充電状態を把握し、エアシリンダ66を稼働させることができるように構成する。つまり、制御装置はバッテリ31と、エアシリンダ66と、エア制御ユニット42と通信回路(充電用通信用一体ケーブル68、給電用通信用一体ケーブル74)を介して繋がっている。
【0053】
位置センサー77は、トレーラ20の停車位置を感知するセンサーであり、例えば赤外線センサーや、映像装置などを用いることができる。この位置センサー77は充電器75の制御装置と接続され、制御装置はトレーラ20の位置を充電器75から運転手に伝達する手段も有して構成される。例えば、警告音や、運転席16から見える範囲にトレーラ20の停車位置を表示させてもよい。この位置センサー77と輪留め78とがトレーラ20の停車位置確認装置となり、トレーラ20を保管スペース3内の所定の位置に停車することができる。この保管スペース3内の所定の位置とは、充電装置60の受電コネクタ61と給電装置70の給電コネクタ71とが正確に接続される位置のことをいう。
【0054】
上記の構成によれば、トレーラ20がトラクタヘッド10から切り離された状態、つまり保管状態であっても、トレーラ20のバッテリユニット30に電力を供給することができる。そのため、充電のためだけのスペースを別途設けることなく、充電作業を実施することができ、且つ、トレーラ20の保管時間を有効に活用して、充電作業を実施することができる。
【0055】
次に図4に示すように、充電装置60の受電コネクタ61と給電装置70の給電コネクタ71との接続について説明する。ランディングギヤ51の路面側の端部53を、前述した通り路面との接地面積を多くするために広く形成する。また、端部53を広く形成しているため、受電コネクタ61と、充電装置用通信コネクタ62を露出することなく、ランディングギヤ51の内部へ格納することができる。
【0056】
絶縁ブロック73を、ランディングギヤ51の端部53と接地する箇所に配置する。これにより、給電コネクタ71の絶縁性を向上させる。
【0057】
受電コネクタ61の凹形状と給電コネクタ71の凸形状を、受電コネクタ61の昇降動作のみで、接続可能な形状に形成する。より好ましくは、給電コネクタ71の凸形状をテーパー形状に形成し、受電コネクタ61をそのテーパー形状に合う形状に形成する。受電コネクタ61と給電コネクタ71の形状は上記の形状に限らず、互いに接続が容易なような形状であればよい。例えば、バッテリ31へ流れる電力を3相交流にすると、3相電極を用いて、3角錐の面それぞれに電極を配置する形状でもよい。
【0058】
充電装置用通信コネクタ62と給電装置用通信コネクタ72は光ファイバーを繋ぐための光コネクタや、押し込むことによりロックされるプッシュオンロック機構を持つSMPコネクタなどを用いることができる。この両コネクタ62、72も前述したように、昇降動作のみで、接続が容易なコネクタであればよい。
【0059】
次に、本発明の実施の形態の充電システム1のバッテリユニット30への充電動作について、図5及び図6のセミトレーラ2と充電装置60の動作を表す図と、本発明の実施の形態の充電方法について、セミトレーラ2が保管スペース3に停車してから、充電準備が完了するまでのフローチャートの図7と、充電してからセミトレーラ2が走行可能になるまでのフローチャートの図8を参照して、説明する。
【0060】
まず、図7に示す充電準備のステップS10について説明する。トレーラ20を保管するために、運転手が停車操作であるステップS11を行う。次に停車位置確認装置である位置センサー77と輪留め78によって、トレーラ20の停車位置を確認するステップS12を行う。ステップS12ではトレーラ20のランディングギヤ51が降下し、保管スペース3の路面と接地したときに、正確に給電部に接地する位置にトレーラ20が停車しているかどうかを給電器75の制御装置が判断している。車両停車位置が不適切な場合はステップS11に戻り、再度運転手は停車操作を行う。
【0061】
ステップS12で、車両停車位置が適切と判断され、セミトレーラ2が保管スペース3の所定の位置に停車した状態を図1に示す。次に、運転手がランディングギヤ用昇降装置52を操作するステップS13を行う。ステップS13により、ランディングギヤ51が降下して、保管スペース3の路面と接地する。このときの状態を図5の(a)に示す。
【0062】
次に、ランディングギヤ51と路面とが接地すると接地が完了したことを運転手に知らせるステップS14を行う。この接地の完了については、例えば、ブザー音などで運転手に知らせることができる。このとき、ランディングギヤ51が正確に給電コネクタ71を配置した路面に接地しているかどうかを判断するステップを行うと、より安全且つ確実に作業を行うことができる。
【0063】
次に、運転手がエア制御ユニット42を操作して、エアをエアシリンダ66へ送り、エアシリンダ66を伸張させるステップ15を行う。エアシリンダ66が伸張すると、エアシリンダ66と絶縁ロッド65を介して接続されているシャフト63が降下すると共に、シャフト63と一体に成形された受電コネクタ61と充電装置用通信コネクタ62も合わせて降下する。
【0064】
シャフト63を降下すると次に、受電コネクタ61と給電コネクタ71の接続が完了し、その接続完了を運転手に知らせるステップS16と充電装置用通信コネクタ62と給電装置用通信コネクタ72の接続が完了し、その接続完了を知らせるステップS17とを略同時に行う。このときの状態を図5の(b)に示す。
【0065】
次に、ステップS16とステップS17が完了すると、運転手がカプラ10aを操作して、トレーラ20からトラクタヘッド10を切り離すステップS18を行う。このときの状態を図6の(a)に示す。以上で、トレーラ20を保管スペース3に停車して、バッテリユニット30への充電準備のステップS10が完了する。このときの状態を図6の(b)に示す。
【0066】
ステップS13〜S17は上記の工程に限らず、一つのステップとしてもよい。例えば、ランディングギヤ51と路面の接地を検知するセンサーとエア制御ユニットを連動させて、ランディングギヤ51が路面と接地すると、エアシリンダ66を稼働させて、受電コネクタ61を降下させるステップとすると運転手の操作を省略することができる。また、トラクタヘッド10に搭載したバッテリ18に電力を充電する場合はトラクタヘッド10を切り離すステップS18を行わずに充電準備が完了する。
【0067】
上記の動作によれば、運転手が車外に出ることなく、手元の操作のみで、セミトレーラ2に搭載したバッテリ18又はバッテリユニット30へ電力を充電するための準備を行うことができる。また、充電装置60や給電装置70を直接扱わずに作業を完了することができる。そのため、安全性が向上した充電準備作業を容易に行うことができる。
【0068】
次に、図8に示すバッテリ充電のステップS20と、トラクタヘッド10とトレーラ20とを接続させて走行可能にするステップS30とを説明する。
【0069】
上記の動作で充電の準備が完了すると、つまり受電コネクタ61と給電コネクタ71、及び充電装置用通信コネクタ62と給電装置用通信コネクタが接続されると、給電器75の制御装置は電力の供給を開始し、バッテリの充電が開始されるステップS21を行う。この状態を図6の(b)に示す。ステップS21が行われている最中は常時、給電器75又は運転室16に備えたモニタ(図示しない)に、バッテリの充電状態を表示するステップS22を行う。
【0070】
また、給電器75の制御装置は通信回路を介してバッテリ31の充電状態を把握するステップS23を行う。ステップS23でバッテリ31の充電が不足していると判断された場合は、再度ステップS21へ戻り、継続して充電を行う。一方ステップS23でバッテリ31の充電が完了したと判断された場合、つまり、バッテリ31に電力が満タンになった場合は、制御装置はエア制御ユニット42を制御して、エアをエアシリンダ66から抜き出すステップS24を行う。エアシリンダ66が縮小するとシャフト63が上昇し、合わせて受電コネクタ61と充電装置用通信コネクタ62も上昇する。
【0071】
シャフト63が上昇して、受電コネクタ61と給電コネクタ71との接続を解除するステップS25と、充電装置用通信コネクタ62と給電装置用通信コネクタ72との接続を解除するステップS26とを同時に行う。さらにシャフト63を上昇させて、ランディングギヤ51に受電コネクタ61を格納する。このときの状態を図5の(a)に示す。
【0072】
以上でバッテリ31への充電が完了する。充電が完了すると充電器75の制御装置はトレーラ20のバッテリ31の充電が完了し、且つ受電コネクタ61がランディングギヤ51の内部に格納されたことを運転手に知らせるステップS27を行う。この充電が完了した合図は充電器75に設けた充電完了を知らせるランプを点灯させる方法などを用いることができる。以上でバッテリ充電のステップS20が完了し、次にトラクタヘッド10とトレーラ20とを接続させて走行可能にするステップS30を行う。
【0073】
ステップS27で、トレーラ20のバッテリ31の充電が完了していることを知らされた運転手は、トラクタヘッド10とトレーラ20とを接続するステップS31を行う。ステップS31ではブレーキ系、エア系及び電気系の接続を行う。ステップS31が完了するとランディングギヤ用昇降装置52を稼働させるステップS32を行う。そして、ランディングギヤ51が上昇し、保管スペース3の路面から離れたことを運転手に知らせるステップS33を行う。以上でセミトレーラ2は走行可能な状態になる。このときの状態を図1に示す。以上でトラクタヘッド10とトレーラ20とを接続させて走行可能にするス
テップS30が完了する。
【0074】
上記の動作でトラクタヘッド10に搭載したバッテリ18に電力を充電する場合はトラクタヘッド10とトレーラ20は前述の充電準備のステップS10で切り離すステップS18を行わずに、充電しているため、ステップS31が不要となり、ステップ27が完了すると直ぐにステップ32を行う。またその場合には、受電コネクタ61がランディングギヤ51の内部に格納されると、自動的にランディングギヤ用昇降装置52が稼働して、ランディングギヤ51を上昇させるように構成する。バッテリに充電が完了した後にセミトレーラは走行可能な状態になり、すぐに運転手が走行させることができる。
【0075】
以上の動作によれば、受電コネクタ61と給電コネクタ71とが接続されると同時に繋がる通信回路を介して、充電器75の制御装置がバッテリ31の充電状態を把握することができる。そして、充電が完了すると制御装置が自動で、エア制御ユニット42を制御して、エアシリンダ66を稼働させて、受電コネクタ61を上昇させて、ランディングギヤ51の内部に格納することができる。そのため、充電が完了した後は、トラクタヘッド10を接続して、ランディングギヤ51を上昇させる動作のみでセミトレーラ2を走行可能にすることができる。
【0076】
上記の充電装置60を搭載する車両はランディングギヤ51を搭載したトレーラ20を有するセミトレーラ2に限らない。例えば、HEVシステム又はEVシステムを搭載した車両において、路面に降下するスタンドなどを設けて、そのスタンドに上記の充電装置60を備えることができる。その場合、上記の保管スペース3と同様に給電装置70を備えた車庫などに停車したときに、スタンドを降下させて、スタンドが路面と接地してから、受電コネクタ61が降下して、給電コネクタ71と接続するように構成する。すると、バッテリの充電作業を容易且つ安全に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の充電装置、セミトレーラ、トレーラの保管スペース、充電システム及びその充電方法は、充電装置の受電コネクタを昇降可能にランディングギヤに設け、コネクタの着脱作業などを不要にし、且つバッテリの充電状態を把握して、受電コネクタの昇降動作を制御することができる。そのため、HEVシステム又はEVシステムを搭載したセミトレーラなどの車両に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 充電装置
2 セミトレーラ
3 保管スペース
10 トラクタヘッド
20 トレーラ
30 バッテリユニット
40 エアユニット
50 トレーラ保持部
51 ランディングギヤ
52 ランディングギヤ用昇降装置
60 充電装置
61 受電コネクタ
62 充電装置用通信コネクタ
63 シャフト
66 エアシリンダ
70 給電装置
71 給電コネクタ
72 給電装置用通信コネクタ
75 給電器(制御装置を含む)
80 通信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタヘッドとトレーラの少なくとも一方にバッテリを備え、前記トラクタヘッドを切り離す際にランディングギヤによって前記トレーラの保持を行うセミトレーラの充電装置において、
前記ランディングギヤの内部を昇降装置によって昇降する受電コネクタを備えると共に、前記受電コネクタを降下して、路面に配設された給電コネクタに接続して、前記受電コネクタと前記給電コネクタを介して前記バッテリへ電力を送るように構成したことを特徴とする充電装置。
【請求項2】
前記受電コネクタと前記給電コネクタが接続されると、前記バッテリの充電状態を把握して前記昇降装置を制御する制御装置と繋がる通信回路を備えたことを特徴とする請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の充電装置と、少なくとも2本の前記ランディングギヤとを設け、前記充電装置の前記受電コネクタを前記ランディングギヤのそれぞれの内部に正負を区分して備えたことを特徴とするセミトレーラ。
【請求項4】
請求項3に記載のセミトレーラのトレーラの保管スペースであって、前記充電装置の前記受電コネクタと接続する前記給電コネクタと、制御装置と、前記給電コネクタへ電力を送る給電器とを備え、
前記充電装置を備えた前記ランディングギヤが接地する路面に前記給電コネクタを前記受電コネクタのそれぞれの正負に対応させて配置したことを特徴とするトレーラの保管スペース。
【請求項5】
トレーラが所定の停車位置に停車したことを確認する停車位置確認装置を設けたことを特徴とする請求項4に記載のトレーラの保管スペース。
【請求項6】
請求項3に記載のセミトレーラと、請求項4又は5に記載の保管スペースとを備えた充電システム。
【請求項7】
トラクタヘッドとトレーラの少なくとも一方にバッテリを備え、前記トラクタヘッドを切り離す際にランディングギヤによって前記トレーラの保持を行うセミトレーラの充電方法において、
前記ランディングギヤを保管スペースの路面と接地させた際に、前記ランディングギヤに備えられた受電コネクタを昇降装置により降下して、前記トレーラの保管スペースの路面に備えた給電コネクタと接続させてバッテリの充電を行うことを特徴とするセミトレーラの充電方法。
【請求項8】
前記受電コネクタと前記給電コネクタとが接続すると共に、前記受電コネクタと前記昇降装置を備えた充電装置と、制御装置との間の通信回路が繋がり、
前記制御装置が、前記通信回路を介して前記バッテリの充電状態を把握し、前記バッテリの充電が完了すると前記昇降装置を稼働して、前記ランディングギヤに前記受電コネクタを格納することを特徴とする請求項7に記載のセミトレーラの充電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−235650(P2012−235650A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103732(P2011−103732)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】