説明

HMGCRタンパク質に関係する処置予測

本発明は、乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法であって、次の工程:前記被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および前記サンプル値が前記対照値より高い場合、被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程を含む方法を提供する。さらに、対応する処置方法ならびに乳癌処置または処置予測に関連して用いられ得るさらなる方法、使用および手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乳癌処置および処置予測の分野に関する。本開示はまた、そのような処置または処置予測において用いられ得る手段に関する。
【背景技術】
【0002】

癌は、西洋における最も多い疾患および死亡の原因である。一般に、罹患率は、ほとんどの形態の癌について、年齢と共に増加している。一般的健康状態の向上によりヒト集団の寿命が続伸しているため、癌が影響を及ぼし得る個体数が増加している。最も多い癌タイプの原因はなお、大部分が不明であるが、環境因子(食事、喫煙、UV照射など)および遺伝的因子(p53、APC、BRCA1、XPなどのような「癌遺伝子」における生殖細胞系列変異)と癌の発達の危険性との間の関連を提供する知識体系が増大している。
【0003】
癌は、本質的に細胞の疾患であり、そして正味の細胞増殖および秩序に反する(anti−social)挙動を伴う形質転換された細胞集団として定義されているという事実にもかかわらず、細胞生物学的観点から見ると、癌の定義は、完全には満足できるものではない。悪性形質転換は、不可逆的な遺伝的変更に基づく悪性表現型への転移を表す。このことは正式には証明されていないが、悪性形質転換は、1個の細胞から生じ、その細胞を起源として、その後、腫瘍が発達する(「癌の形成」ドグマ)と考えられている。発癌は、癌が発生するプロセスであり、究極的に悪性腫瘍の増殖をもたらす多数の事象を含むことが一般的に認められている。この多段階プロセスは、変異の付加およびおそらくはまたエピジェネティックな事象のようないくつかの律速段階を含み、前癌増殖のステージ後に癌の形成をもたらす。段階的変化は、細胞分裂、反秩序的な(asocial)挙動および細胞死を決定する生命の規則的経路におけるエラー(変異)の累積に関係する。これらの変化のそれぞれは、周囲の細胞と比較して、選択的なダーウィン(Darwinian)増殖の利点を提供し得、腫瘍細胞集団の正味の増殖を生じる。悪性腫瘍は、必ずしも形質転換された腫瘍細胞自体のみではなく、また、支持間質として作用する周囲の正常細胞からもなる。この補充された癌間質は、結合組織、血管および他の様々な正常細胞、例えば、形質転換された腫瘍細胞に、腫瘍増殖の継続に必要なシグナルを供給するために共同で作用する炎症細胞からなる。
【0004】
最も多い癌の形態は、体細胞において生じ、そして主に、上皮、例えば、前立腺上皮、乳腺上皮、結腸上皮、尿路上皮および皮膚上皮由来であり、その次に多い形態として、造血系統を起源とする癌、例えば、白血病およびリンパ腫、神経外胚葉、例えば、悪性神経膠腫、ならびに軟部組織腫瘍、例えば、肉腫が続く。
【0005】
癌診断および予後
腫瘍から採取した組織切片の顕微鏡的評価は、依然として、癌の診断を決定するための絶対的基準のままである。例えば、顕微鏡的診断では、疑わしい腫瘍由来の生検材料を回収し、そして顕微鏡下で調べる。確定診断を得るためには、腫瘍組織をホルマリン中で固定し、組織学的に処理(histo−processed)し、そしてパラフィン包埋する。得られるパラフィンブロックから、組織切片を生成し、そして組織化学的、即ち、ヘマトキシリン−エオシン染色、および免疫組織化学的方法の両方を使用して、染色する。次いで、外科的標本を、肉眼および顕微鏡分析を含む病理学的技術により評価する。この分析は、しばしば、特異的診断、即ち、腫瘍タイプを分類し、そして腫瘍の悪性度を格付けするための基礎を形成する。
【0006】
悪性腫瘍は、各癌タイプに特異的な分類スキームに従って、いくつかのステージに分類することができる。固形腫瘍の最も一般的な分類システムは、腫瘍−リンパ節−転移(TNM)分類である。Tの分類は、原発腫瘍の局所進展度、即ち、腫瘍がどれだけ広範に周囲組織に浸潤し、そして増殖したかについて説明する一方、Nの分類およびMの分類は、腫瘍がどれだけ転移を発達させてきたかを説明しており、Nの分類は、腫瘍のリンパ節への拡大を説明し、そしてMの分類は、他の離れた器官における腫瘍の増殖について説明している。初期のステージとして:T0〜1、N0、M0が挙げられ、リンパ節転移陰性の局在性の腫瘍を表す。より進行期のステージとして:より広範な増殖を伴う局在性の腫瘍を表すT2〜4、N0、M0が挙げられ、そしてリンパ節に転移した腫瘍を表すT1〜4、N1〜3、M0が挙げられ、そして離れた器官において転移が検出された腫瘍を表すT1〜4、N1〜3、M1が挙げられる。腫瘍の分類は、しばしば、外科的、放射線学的および病理組織学的分析を含むいくつかの形態の検査に基づく。分類に加えて、ほとんどの腫瘍タイプの悪性度のレベルを格付けするための分類システムも存在する。格付けシステムは、腫瘍組織サンプルの形態学的評価に依存し、そして所与の腫瘍において見出される顕微鏡的特徴に基づく。これらの格付けシステムは、腫瘍細胞の分化、増殖および異形の程度に基づき得る。一般的に用いられる格付けシステムの例として、前立腺癌を格付けするGleasonおよび乳癌を格付けするNottingham Histological Grade(NHG)が挙げられる。
【0007】
的確な分類および格付けは、正確な診断に極めて重要であり、そして予後を予測するための道具を提供し得る。特定の腫瘍の診断および予後情報は、続いて、所与の癌患者の適切な処置ストラテジーを決定する。組織切片の組織化学染色に加えて、腫瘍に関する更なる情報を得るための一般に用いられる方法は、免疫組織化学染色である。IHCは、特異的抗体を使用する組織および細胞におけるタンパク質発現パターンの検出を可能にする。臨床診断においてIHCを使用すると、組織化学的に染色した腫瘍組織切片から評価される組織構造および細胞形態学に関する情報に加えて、異なる細胞集団における免疫反応性を検出することが可能になる。IHCは、原発腫瘍の分類および格付けを含む的確な診断を支持すること、ならびに起源が不明な転移の診断に関係し得る。今日の臨床診療において最も一般に使用される抗体として、細胞タイプ「特異的」タンパク質、例えば、PSA(前立腺)、MelanA(メラノサイト)およびサイログロブリン(甲状腺)に対する抗体、ならびに中間径フィラメント(上皮細胞、間葉細胞、グリア細胞)、白血球分化(CD)抗原(造血(hematopoetic)細胞、リンパ系(lympoid)細胞の下位分類)および悪性能のマーカー、例えば、Ki67(増殖)、p53(通例、変異した腫瘍抑制因子遺伝子)およびHER−2(増殖因子受容体)を認識する抗体が挙げられる。
【0008】
IHCの他に、遺伝子増幅を検出するためのインサイチュハイブリダイゼーションおよび変異分析の遺伝子配列決定の使用も、癌診断内の発展している技術である。加えて、転写物、タンパク質または代謝物の網羅的分析もすべて、関連の情報を追加する。しかし、これらの分析のほとんどはなお、基礎研究を想定しており、そして臨床医学における使用のための評価および標準化は未だ行われていない。
【0009】
乳癌
乳癌は、世界中で2番目に多い形態の癌であり、そして女性の頻度のはるかに高い癌である。Parkinらによって提示されたGLOBOCAM2002データベースのデータから、2002年では115万人の新たな症例および同じ期間中に41万人の死亡例が示された(非特許文献1)。早期のステージにおいて検出される場合、先進国に住む患者の予後は比較的良好であり、一般的な5年生存率は、後進国の57%と比較して、73%である。発症率は緩徐に増加しており、そして先進国の女性の約9名中1名が、生涯に乳癌に罹患すると考えられている。外因性ホルモンへの暴露を含む女性のステロイドホルモンに関連するライフスタイルの変化は、乳癌の発達の危険性に影響を及ぼすが、これらの要因は、病因のほんの一部を占めるに過ぎず、予防措置の利益は低いと考えられる。死亡率の減少は、主に、マンモグラフィースクリーニングによる早期検出および現代のアジュバント全身処置の使用による。
【0010】
乳癌の処置
70年代後半における導入以来、腫瘍の根治的切除術を良好な美容的結果と組み合わせることができる乳房温存手術と術後放射線療法とを組み合わせた乳房温存療法が、女性の第1選択処置になっている。乳房切除術はなお、いくらかの患者、即ち、乳房部が小さい、腫瘍が大きい(>4cm)または多病巣性/多中心性疾患を伴う女性において好適である。
【0011】
腋窩リンパ節郭清は、主に、診断目的のために実施されており、そして少なくとも10個のリンパ節を取り出すことにより、97〜98%の感度を伴う良好な分類指針が得られる(非特許文献2;非特許文献3)。しかし、原発性癌の処置における最小範囲手術への次の段階は、高い合併症率を伴う腋窩リンパ節郭清の代わりに腋窩リンパ節のマッピングによるセンチネルリンパ節生検技術の導入である。この技術は、乳腺から腋窩へのほとんどのリンパドレナージが、はじめに1個(もしくは数個)のリンパ節(センチネルリンパ節)を通過するという、このリンパ節の分析が、腋窩リンパ節の状態の十分な指標であり得ることを裏付ける知識の結果として導入された(非特許文献4)。
【0012】
全身性疾患としての乳癌、即ち、診断時に微小転移の存在が散見され、これにより局所領域療法後の処置の失敗を説明し得るという概念から、1970年代に、内分泌療法および化学療法を含むアジュバントの無作為化治験への道が開かれた。アジュバント多剤併用化学療法は、リンパ節の状態に関係なく、再発の危険性が高いホルモン受容体陰性患者に対する標準的な処置である。全生存率および無再発生存率の両方に対する有益な効果が、特に、閉経期前の患者において実証されている(非特許文献5)。ホルモン応答性疾患、例えば、エストロゲン受容体(ER)および/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性疾患を伴う患者には、アジュバント多剤併用化学療法が、連続的な化学−内分泌療法として内分泌療法との併用で行われている。また、アジュバント化学療法は、一般的に、無月経を誘発し、細胞障害性に加えて、派生的な内分泌上の影響を及ぼす(非特許文献6)。
【0013】
内分泌療法は、年齢、ステージおよび閉経期状態に関係なく、ホルモン受容体陽性腫瘍を有する患者に推奨されている。
【0014】
閉経期前のホルモン応答性の患者において、手術もしくは放射線照射による卵巣機能停止、またはLHRHアゴニストによる卵巣機能抑制は、有効なアジュバント処置モダリティーである(非特許文献7)。閉経期後の患者では、エストロゲンの主な供給源は、卵巣での合成からではなく、乳腺を含む末梢組織におけるアンドロステンジオンからエストロンおよびエストラジオールへの変換からであるため、卵巣機能停止は有効ではない。
【0015】
タモキシフェンは、ERに対してアゴニスト効果を有する選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるため、これは、閉経期前および閉経期後の女性の両方における進行性乳癌に対する適切な処置である。研究により、最初の手術後のアジュバント処置としてタモキシフェンを5年間用いると、リンパ節の状態に関係なく、ER陽性(ER+)腫瘍を有する患者の乳癌による死亡率が減少することが示されている(非特許文献8)。タモキシフェンは、循環器系疾患に対する保護効果を有する一方、子宮内膜のERに対するアゴニスト効果により、子宮内膜癌を発達させる危険性が増加する(非特許文献9)。
【0016】
アロマターゼ阻害剤(AI)は、アンドロゲンをエストロゲンに変換する酵素であるアロマターゼを阻害することによって、機能する。例えば、AIは、閉経期後の女性に対するアジュバント処置として、単独かまたはタモキシフェン処置後のいずれかに投与することができ、そしてそれらは、死亡率を有意に減少することが示されているが、おそらく、単独で投与するとなお減少するであろう(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。しかし、この療法は比較的新しく、そして長期の副作用については未だ十分には知られていない(非特許文献13)が、最も重要なのは、循環器系の合併症および骨粗鬆症である。
【0017】
ERを完全に遮断するフルベストラントのような新たに開発された純粋な抗エストロゲンは、現在、進行性乳癌にのみ使用されており、アジュバントセッティングには使用されない(非特許文献14)。
【0018】
アジュバント内分泌療法は、ホルモン受容体陰性乳癌では有効でないと考えられているが、いくつかの研究では、いくつかのER陰性、即ち、ERα陰性(ERα−)の腫瘍が、タモキシフェン処置に応答することが示されている(非特許文献15)。
【0019】
HER2/neu遺伝子は、すべての乳癌の約20%、および低分化性の乳癌の70%までにおいて過剰発現する(非特許文献16、非特許文献17)。HER2を過剰発現する腫瘍を有する患者は、モノクローナル抗体トラスツズマブによる処置から利益を得ることができる。実験データは、HER2過剰発現と内分泌処置に対する耐性との間の関係を裏付けている(非特許文献18)が、臨床データの方は一貫していない(非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21)。
【0020】
乳癌の診断
形態学的基準はなお、一般的に、乳癌の診断、上皮内(in situ)および浸潤性の癌の両方の確定において重要であると考えられている。浸潤性乳癌のうち、浸潤性乳管癌は、最も多い腫瘍タイプ(約80%)であり、そして小葉癌は、2番目に多く存在する(約10〜15%)。管状癌および髄様癌は、より有病率が低い異なるタイプである(非特許文献22)。
【0021】
乳癌の予後および処置予測因子
髄様癌のような所定の亜型は、一般に、より好適な予後を有するため、腫瘍タイプの正確な組織学的分類は、予後に関連する事柄である。それにもかかわらず、Nottingham Histological Grade(NHG)システムを使用する組織学的格付けの評価はなお、予後のツールである(非特許文献23;非特許文献24)。
【0022】
乳癌の大部分は、ホルモン受容体応答性であり、即ち、ERおよび/またはPRを発現する。エストロゲンの作用は、2つの受容体ERαおよびERβによって仲介される。ERαおよびPRは、内分泌療法のための患者を選択するために、1つの基準「>10%の核陽性(nuclear positivity)を有する腫瘍を陽性とみなす」に従って日常的に評価される。ERαは、今日、タモキシフェン応答の予測因子と考えられている。しかし、PR陽性はなお、ERαより強力なタモキシフェン応答の予測因子であり得ることを示す研究がある。タモキシフェンかまたはアジュバント内分泌処置なしに無作為に振り分けられた閉経期前の患者の研究では、PRの高発現(>75%核画分)は、ERαの状態に関係なく、タモキシフェン処置患者の無再発生存率および全生存率の増加に有意に関連することが示された。より低いPRレベル、<75%では、タモキシフェン処置からポジティブな効果は観察されなかった(非特許文献25)。Yuらは、最近、アジュバント内分泌療法のPRの予測値について研究し、そしてERα+/PR+腫瘍を有するより高齢の患者(≧60歳)は、タモキシフェンで処置した場合、アジュバント処置を行わなかった患者より有意に長い無病生存期間を有することを見出した。より若年の患者(<60歳)では、有意な効果は観察されなかった(非特許文献26)。興味深いことに、ATAC治験(アリミデックス、タモキシフェンまたは併用で処置した閉経期後の女性)の報告では、タモキシフェンで処置した患者と比較して、6年間の追跡期間の間、ERα+/PR−腫瘍を有するアナストロゾール処置患者では、再発率が半減したことが示された(非特許文献27)。
【0023】
乳癌におけるERβの役割については、未だ十分に明らかにされていないが、最近の研究では、ERβ−発現は、より良好なタモキシフェン応答に関連し得(非特許文献28)、特に、ERα−腫瘍において関連し得る(非特許文献29)ことが示唆されている。しかし、ERβを決定することは、今日、一般的に、臨床的関連性はないと考えられている。
【0024】
今日の主な問題は、ERα陽性(ERα+)患者の30〜40%がタモキシフェン処置に応答せず(非特許文献30、非特許文献29)、不必要な処置になることである。加えて、一部のERα−患者は、タモキシフェン処置に応答するが、その理由は、現在のところ不明である。Gruvberger−Saalは、ERβ発現が、ERα−患者におけるタモキシフェン応答の陽性予測因子であることを示唆している(非特許文献29)。
【0025】
HER2状態はまた、主に、IHCによって日常的に評価され、中等度の発現(2+)の場合、遺伝子増幅状態は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)分析によって決定される。HER2陽性腫瘍を有する患者は、トラスツズマブによる処置から利益を得ることができる。
【0026】
乳癌は、真正の異種疾患であり、そしてその性質についての理解が深まっているにもかかわらず、利用可能な予後および処置予測マーカーについての蓄積はなお十分ではなく、従って、不必要な処置を受けている患者もいる一方、他の患者は、不十分またはなお有効ではない処置を受けている可能性がある。乳癌の異なるサブグループをより良好に定義し、そして適合した療法の選択肢を増加させるために、さらなる分子マーカーが必要である。
【0027】
エンドポイント分析
エンドポイント分析は、患者が所定の療法にどのように応答するかの情報を提供するため、これを使用して、癌に対するアジュバント処置による治験が評価される。エンドポイント分析はまた、潜在的なバイオマーカーの研究に有用であり得る。
【0028】
全生存率(OS)は、標準的な主要エンドポイントと考えられている。OSは、原因、例えば、死亡が癌によるか否かに関係なく、死亡までの時間を考慮する。追跡不能例を削除し、そして領域再発、遠位への転移、2次原発性乳癌、および他の2次原発性癌は無視する。
【0029】
現在まで、多くのタイプの癌において利用可能な有効な処置の数が増加しており、アジュバント処置の効果のより良好な評価を可能にするための代替エンドポイントの必要性が生じた。それ故、アジュバント処置がOSを改善することを実証するのに必要なかなり長期の追跡に、しばしば、処置がどれだけ成功しているかをより早期に示す他の臨床エンドポイントが補足される。これらの観察のために、無再発生存率(RFS)および乳癌−特異的生存率(BCSS)を分析してもよい。RFSは、同じ癌に関連する任意の事象までの時間を含み、即ち、すべての癌再発および同じ癌による死亡が事象となる。遠位、局所および領域転移ならびに乳癌特異的死亡が考慮される。これに対し、2次原発性の同じ癌および他の原発性癌、ならびに対側乳癌は無視する。他の癌による死亡、癌に関連しない死亡、処置に関連する死亡、および追跡不能例は、削除された観察である。乳癌特異的生存率(BCSS)は、本来の腫瘍による乳癌によって引き起こされる死亡までの時間を含む。類似性または差異は、異なる腫瘍生物学的挙動に反映し得るため、両方のエンドポイントが関連する。局所での積極的な挙動に関連するバイオマーカーは、例えば、BCSSよりもRFSに対して影響を及ぼし得る一方、遠位への転移の発達に関連するバイオマーカーは、RFSおよびBCSSの両方に反映され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0030】
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【非特許文献3】Recht A and Houlihan MJ (1995) Cancer 6(9):1491-1512
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【非特許文献8】EBCTCG (1998) Lancet 351(9114):1451-67
【非特許文献9】EBCTCG (2005) Lancet 365(9472):1687-717
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【非特許文献30】Riggins RB et al. (2007) Cancer Letters 1:1-24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
説明
本開示のいくつかの態様の目的は、処置予測、特に、乳癌を有する哺乳動物被験体に関する乳癌処置予測に有用な手段、方法および/または使用を提供することである。
【0032】
本開示のいくつかの態様の目的は、そのような被験体の処置に有用な手段、方法および/または使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
それ故、本発明の第1の態様の第1の構成として、以下の工程を含む、乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法が提供される:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程。
【0034】
本開示の方法の工程b)に関して、HMGCRタンパク質の量が増加すると、典型的に、サンプル値も増加し、その逆は生じない。しかし、いくつかの実施形態では、評価された量は、予め決定した数の個別のサンプル値のいずれかに対応し得る。そのような実施形態では、第1の量および第2の増加した量は、同じサンプル値に対応し得る。いずれにせよ、本開示に関して、HMGCRタンパク質の量が増加しても、サンプル値は減少しない。
【0035】
しかし、好ましくはないが、同様に、工程c)とd)との間の定量化が「サンプル値が対照値より低い場合」に行われる場合、評価される量は、サンプル値に反比例するかもしれない(上記の方法を参照のこと)。これは、本開示の他の方法の態様、構成および実施形態に準用する。
【0036】
本開示に関して、「内分泌処置から利益を得る可能性がある」は、内分泌処置を経験しない場合より、内分泌処置を経験する場合により高い確率の生存率または回復率を有することを指す。これに関して、「回復率」は、乳癌状態から乳癌を有さない状態に復帰することを指す。「生存率」は、無再発生存率であってもまたは乳癌特異的生存率であってもよい。さらに、「回復率」は、無再発回復率であってもよい。また、「より高い確率」は、5年間、10年間または15年間における少なくとも5%、例えば、少なくとも10%の確率上の利益であり得る。
【0037】
本開示のこの第1の態様は、乳癌を有する被験体から得られるサンプルにおけるHMGCRタンパク質の発現が、被験体における内分泌処置に対する応答の指標としての役割を果たし得るというこれまでに認識されていない事実に基づく。より詳細には、本発明者らは、乳癌を患っている患者において、一方ではHMGCRタンパク質の値と他方では内分泌処置後の生存率との間の相関を見出した。典型的に、高いHMGCRタンパク質値は、本明細書において、内分泌処置に対する応答性と相関することが示されている。乳癌処置の指標としてHMGCRタンパク質発現に基づく本開示は、多くの利益を提供する。第1に、それは、患者が内分泌処置に応答する可能性がある稼動を予測するためのさらなる、または別のツールを提供する。第2に、それは、より以前の考えとは対照的に内分泌処置から利益を得るホルモン受容体陰性患者のサブグループを同定する。結果的に、本開示は、これまで十分に処置されなかったグループの的確な処置を提供することができる。第3に、本開示は、一般的に、内分泌処置から利益を得られない乳癌患者のサブグループを同定する。
【0038】
従来、ホルモン受容体陰性乳癌、特に、ER−乳癌を有する被験体には、全身内分泌処置が行われなかった。しかし、本開示において示すように、ホルモン受容体陰性、例えば、ER−またはPR−、ER−、PR−、またはER−およびPR−、高いHMGCR値を有する乳癌を有する被験体のサブグループにおける生存率は、内分泌処置によって改善された。結果的に、本発明者らは、内分泌処置で処置することができる被験体の新たなサブグループを同定した。従って、本開示の様々な態様は、ホルモン受容体陰性癌を有する被験体に特に関連し得る。
【0039】
第1の態様の第2の構成として、以下の工程を含む、乳癌を有する哺乳動物被験体が内分泌処置を経験すべきかどうかを決定するための方法が提供される:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d)被験体は、内分泌処置を経験すべきであると結論付ける工程。
【0040】
本発明の第1の態様の第3の構成として、以下を含む、乳癌を有する哺乳動物被験体のための非処置ストラテジー方法が提供される:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d)内分泌処置による前記被験体の処置を中断する工程。
【0041】
例えば、工程d)の中断は、工程a)〜c)の終了から少なくとも1週間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも1箇月間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも3箇月間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも6箇月間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも1年間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも2年間の間の中断であり得る。
【0042】
あるいは、工程d)の中断は、方法が実施される次の時点までか、または乳癌腫瘍の再発までの中断であってもよい。
【0043】
第1の態様の構成1〜3の実施形態では、乳癌は、ホルモン受容体陰性乳癌、例えば、ER−もしくはPR−乳癌、ER−乳癌、PR−乳癌、またはER−およびPR−乳癌であってもよい。例えば、乳癌は、ホルモン受容体陰性として先に診断されていてもよい。
【0044】
一般に、ホルモン受容体の状態、例えば、ER状態またはPR状態は、当業者に公知の任意の方法に従って評価してもよく、そして当業者は、患者のERおよび/またはPR状態を得る仕方について知っている。例えば、そのような情報は、市販のER/PR pharmDXキット(DakoCytomation)を使用する試験の結果から得ることができる。もう1つの例として、Allredら(Allred et al. (1998) Mod Pathol 11(2), 155)によって開示された方法を使用して、全スコア(Allredスコア)を得てもよく、そしてERおよびPRの両方について、2より高いAllredスコアは陽性とみなされ、そして2以下のAllredスコアは陰性とみなされる。あるいは、ERまたはPRについて、サンプルを陽性もしくは陰性であると分類する場合、当該分野内において認識された限界値である10%陽性細胞のカットオフを使用してもよい。
【0045】
当業者は、患者のERおよび/またはPR状態を得る仕方について知っている。例えば、そのような情報は、市販のER/PR pharmDXキット(DakoCytomation)を使用する試験の結果から得ることができる。もう1つの例として、Allredら(Allred et al. (1998) Mod Pathol 11(2), 155)によって開示された方法を使用して、全スコア(Allredスコア)を得てもよく、そしてERおよびPRの両方では、2より高いAllredスコアは陽性とみなされ、そして2以下のAllredスコアは陰性とみなされる。あるいは、ERまたはPRについて、サンプルを陽性もしくは陰性であると分類する場合、当該分野内において認識された限界値である10%陽性細胞のカットオフを使用してもよい。
【0046】
他で述べない限り、本開示では、「ER」は「ERα」を指す。
【0047】
それ故、本発明の第1の態様の第4の構成として、以下の工程を含む、乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法が提供される:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程c)において得られるサンプル値と対照値とを比較し、それによって、前記被験体のHMGCR状態を決定する工程;
d)前記被験体のER状態を得る工程;および
前記ER状態または前記HMGCR状態が陽性である場合、
e1)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程、あるいは
前記ER状態および前記HMGCR状態が陰性である場合、
e2)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性がないと結論付ける工程。
【0048】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含されるe1)およびe2)は、2つの別の結論への選択肢を提供する。従って、第1の態様の第4の構成の方法は、乳癌を有する被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかという問題、または乳癌を有する被験体は内分泌処置から利益を得る可能性がないかどうかという問題に回答し得る。それ故、第1の態様の第4の構成の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程e1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程e2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0049】
例えば、工程c)では、HMGCR状態は、サンプル値が対照値より高い場合、陽性とみなされ得、そして対照値が対照値以下である場合、陰性とみなされ得る。
【0050】
被験体由来の単一のサンプルは、例えば、免疫組織化学によって、ER状態およびHMGCR状態の両方を提供し得る。それ故、本開示の方法態様の実施形態では、ER状態は、工程a)のサンプルから得ることができる。また、ER状態は、工程a)のサンプルを入手した組織材料からも得ることができる。結果的に、被験体からの生検の必要数または生物学的材料の量は、低く維持することができる。
【0051】
本開示の第1の態様の第5の構成として、以下の工程を含む、乳癌を有する哺乳動物被験体から早期に得られるサンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量に対応するサンプル値が、内分泌処置を被験体に適応する決定に好適かどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
サンプル値が対照値より高い場合、
d1)サンプル値が、内分泌処置で被験体を処置する決定に好適であると結論付ける工程、および/または
サンプル値が対照値以下である場合、
d2)サンプル値が、内分泌処置による被験体の処置を中断する決定に好適であると結論付ける工程。
【0052】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第1の態様の第5の構成のd1)およびd2)は、2つの別の結論への選択肢を提供する。従って、方法は、サンプル値が、内分泌処置による被験体の処置を中断する決定に好適であるかどうかという問題、またはサンプル値が、内分泌処置で被験体を処置する決定に好適であるかどうかという問題に回答し得る。それ故、第1の態様の第5の構成の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0053】
乳癌を有する患者に適切な処置ストラテジーを決定する場合、処置を担当する医師は、免疫組織化学的評価の結果、患者の年齢、ホルモン受容体の状態、全身状態、既往歴、例えば、乳癌の既往歴および遺伝形質、例えば、被験体の家族に乳癌の既往歴が認められるかどうかのようないくつかのパラメータを考慮することができる。そのような決定において指針とするために、医師は、第1の態様に従って、HMGCRタンパク質試験を実施するか、またはHMGCRタンパク質試験の実施を指令することができる。そのような場合、第1の態様の第5の構成に従う方法が、特に関連し得る。
【0054】
また、医師は、検査員のような他の者に指示して、工程a)〜c)のような本開示に従う方法の一部を実施させ、そして工程d)またはe)のような残りの部分を、自身で実施することができる。
【0055】
第1の態様の第6の構成として、乳癌を有する哺乳動物被験体に関する内分泌処置予測を決定するための方法が提供される:
a)被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして評価される量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)のサンプル値を、被験体の内分泌処置予測に相関させる工程。
【0056】
上記の方法の実施形態では、サンプルは、早期に得られるサンプルであってもよい。
【0057】
工程c)の相関させる工程は、処置予測を確立するように、生存率のデータを、得られたサンプル値に関連付ける任意の方法を指す。
【0058】
高いHMGCRタンパク質発現と内分泌処置に対する応答との間の同定された相関もまた、被験体の処置の特定のレジメンの適応の基礎を形成し得る。それ故、本開示の第2の態様の第1の構成では、以下の工程を含む、処置を必要とする哺乳動物被験体の処置の方法が提供され、ここで、前記被験体は乳癌,を有する:
a)前記被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d)内分泌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程。
【0059】
第2の態様の第1の構成の実施形態では、乳癌は、ホルモン受容体陰性乳癌、例えば、ER−もしくはPR−乳癌、ER−乳癌、PR−乳癌、またはER−およびPR−乳癌であってもよい。例えば、乳癌は、ホルモン受容体陰性として先に診断されていてもよい。
【0060】
第2の態様の第2の構成として、以下の工程を含む、処置を必要とする哺乳動物被験体の処置の方法が提供され、ここで、前記被験体は乳癌を有する:
a)前記被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程c)において得られるサンプル値と対照値とを比較し、それによって、前記被験体のHMGCR状態を決定する工程;
d)前記被験体のER状態を得る工程;および
前記ER状態または前記HMGCR状態が陽性である場合、
e1)内分泌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程、または
前記ER状態および前記HMGCR状態が陰性である場合、
e2)非内分泌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程。
【0061】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第2の態様の第2の構成のe1)およびe2)は、2つの別の結論への選択肢を提供する。従って、方法は、内分泌処置レジメンに関係してもよく、または非内分泌処置レジメンに関連してもよい。それ故、第2の態様の第2の構成の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程e1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程e2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0062】
一般的に、本開示の処置態様の方法に関して、被験体の処置を担当する医師は、自身で工程a)〜c)を実施してもよく、または検査員のような他の者に指示してもよい。
【0063】
本開示に関して、「内分泌処置」は、抗エストロゲン効果を伴う全身処置を指す。さらに、「抗エストロゲン効果」は、エストロゲン産生の抑制または身体におけるエストロゲン効果の阻害を指す。当該分野において、内分泌処置は、時々、抗ホルモン処置と称される。
【0064】
本開示の「内分泌処置」は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)処置、アロマターゼ阻害剤処置、およびステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニスト処置からなる群から選択することができる。SERM処置は、例えば、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンおよびタモキシフェン処置から選択される処置であってもよい。アロマターゼ阻害剤処置は、例えば、アナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタン処置から選択することができる。さらに、ステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニスト処置は、フルベストラントによる処置であってもよい。
【0065】
SERMは、標的組織に依存して、アゴニスト効果またはアンタゴニスト効果のいずれを有してもよい。例えば、SERMは、乳腺においてアンタゴニストとしておよび子宮においてアゴニストとして作用することができる。
【0066】
本開示の実施例のセクションでは、SERMタモキシフェンによる処置の様々な結果を提示する。結果は、HMGCRタンパク質発現のレベルが、被験体がタモキシフェン処置に応答性であるかどうかを予測することに関連することを示す。それ故、本開示の好適な実施形態では、内分泌処置は、タモキシフェン処置である。
【0067】
例えば、本開示の「非内分泌処置」は、化学療法、放射線療法およびそれらの組み合わせから選択することができる。化学療法は、CMF(シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル)FEC(フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド)および/またはタキサン系薬剤による処置のような1剤もしくは多剤併用化学療法を含み得る。また、乳癌がHER2陽性(HER2+)である場合、非内分泌処置は、抗HER2抗体、例えば、トラスツズマブによる処置のような抗HER2処置であってもよい。
【0068】
本開示に関して、「乳癌を有する哺乳動物被験体」は、原発性もしくは続発性乳腫瘍を有する哺乳動物被験体、あるいは乳腺からそのような腫瘍が取り出されている哺乳動物被験体を指し、ここで、腫瘍の取り出しは、任意のタイプの手術または治療によって腫瘍を死滅もしくは取り出すことを指す。後者の場合、腫瘍は、例えば、1年未満前に取り出されていてもよい。例えば、手術によって乳腫瘍が取り出され、そして補助療法を受けようとしている被験体は、本開示では、「乳癌を有する」とみなされる。「乳腫瘍」は、非浸潤性乳管癌(DCIS)を含む。本開示の方法および使用態様では、「乳癌を有する哺乳動物被験体」はまた、哺乳動物被験体が、使用または方法の実施時に乳癌を有することが疑われており、そして後に乳癌診断が確定される場合を含む。
【0069】
本開示の方法態様に関して、「早期に得られる」は、方法が実施される前に得られることを指す。結果的に、被験体から早期に得られるサンプルが、ある方法で提供される場合、この方法は、サンプルを被験体から得る工程を必要としない、即ち、サンプルは、この方法とは個別の工程で被験体から予め得られた。
【0070】
従って、本開示のすべての方法および使用は、他で述べない限り、全体的にインビトロで実施することができる。
【0071】
上記の態様の方法の工程b)は、サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価する工程、および量に対応するサンプル値を決定する工程を必要とする。「サンプルの少なくとも一部」は、処置予測を確立するか、または適切な処置に関する結論を導き出すためのサンプルの1つもしくは複数の関連する部分を指す。当業者は、方法を実施する場合に存在する状況下で関連する1つもしくは複数の部分について理解している。例えば、サンプルが腫瘍および非腫瘍細胞を含む場合、当業者は、サンプルの腫瘍細胞のみ、および腫瘍細胞の細胞質のみを考慮すればよい。
【0072】
さらに、工程b)では、量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する。結果的に、サンプル値を得るために、HMGCRタンパク質の量の正確な測定値は必要ではない。例えば、HMGCRタンパク質の量は、染色された組織サンプルの目視検査によって評価してもよく、次いで、サンプル値は、評価された量に基づいて、例えば、高いまたは低いに分類してもよい。当業者は、そのような評価および決定を実施するための仕方を理解している。
【0073】
なおさらに、本開示に関して、「対照値」は、処置予測に関して、決定を行うこと、または結論を導き出すことに関連する予め決定された値を指す。
【0074】
本開示のデータは、ヒト女性のグループに基づく。それ故、本開示の実施形態では、「哺乳動物被験体」は、ヒトであってもよい。また、本開示の実施形態では、「哺乳動物被験体」は、閉経期前または閉経期後の女性のような女性であってもよい。内分泌処置は、閉経期前および閉経期後の両方の被験体に行われる。閉経期前の女性の方が、一般的に、タモキシフェン処置に対してより応答性であると考えられる。それ故、いくつかの実施形態、特に、タモキシフェンが内分泌処置として選択される実施形態では、閉経期前のヒト女性被験体は、特に関連するグループであり得る。
【0075】
本開示の診断または処置される腫瘍は、いずれのステージであってもよい。しかし、実施例のセクション4に記載のような研究をされた被験体は、ステージIIの浸潤性乳癌を有した。ステージIIは、TNM分類に従うpT2 N0 M0またはpT1〜2 N1 M0を指す。それ故、本開示の実施形態では、「乳癌」は、ステージII乳癌であってもよい。
【0076】
また、本開示の実施形態では、「乳癌」は、リンパ節転移陰性乳癌であってもよく、またはリンパ節転移陽性乳癌であってもよい(例えば、図4を参照のこと)。「リンパ節転移陰性癌」および「リンパ節転移陽性癌」は、それぞれ、リンパ節に拡大したおよび拡大しなかった癌を指す。
【0077】
図4〜7および9に見られるように、HMGCRタンパク質発現の処置予測の役割は、リンパ節転移陽性乳癌において特に顕著である。それ故、本開示の実施形態では、乳癌は、リンパ節転移陽性であってもよい。
【0078】
上記の態様の方法の実施形態では、サンプルは、血液、血漿、血清、脳脊髄液、リンパ、尿または滲出物のサンプルのような体液サンプルであってもよい。好ましくは、体液サンプルは、血液、血漿、血清またはリンパのサンプルである。あるいは、サンプルは、細胞学的サンプルであってもよく、または糞便サンプルであってもよい。
【0079】
HMGCRタンパク質発現のレベルは、好ましくは、細胞内で測定することができる。それ故、体液、細胞学的または糞便サンプルは、例えば、腫瘍細胞のような細胞を含み得る。
【0080】
上記の態様の方法のさらなる実施形態では、サンプルは、腫瘍組織サンプルのような組織サンプルであってもよい。例として、組織サンプルは、上皮内(in situ)もしくは浸潤性癌のような原発性乳腺腫瘍から誘導してもよく、または続発性腫瘍(転移)から誘導してもよい。組織サンプルは、免疫組織化学によって、HMGCRタンパク質の発現分析を容易にする。
【0081】
本発明者らは、関連するHMGCRタンパク質発現は、主に細胞質内においてであることを見出した。それ故、本開示の方法の実施形態では、工程b)の評価を、サンプルの腫瘍細胞のような細胞の細胞質に限定することができる。評価を細胞質に限定する場合、細胞質のHMGCRタンパク質発現のような特徴のみが、評価において考慮される。そのような評価は、例えば、免疫組織化学染色によって補助され得る。
【0082】
本発明者らは、乳癌を患い、そして本質的にHMGCRタンパク質発現が認められない被験体は、一般的に、内分泌処置後の生存率が不良であることを見出した(実施例、セクション4および図面を参照のこと)。結果的に、被験体が「HMGCR高」であるかまたは「HMGCR低」であるかを決定する「カットオフ値」は0であり得る。
【0083】
それ故、本開示の方法の実施形態では、工程b)のサンプル値は、サンプルにおいて検出可能なHMGCRタンパク質が認められることに対応する1、またはサンプルにおいて検出可能なHMGCRタンパク質が認められないことに対応する0のいずれかであり得る。結果的に、そのような実施形態では、サンプルの評価はデジタルである:HMGCRタンパク質は、存在するかまたは存在しないかのいずれかとみなされる。本開示に関して、「検出可能なHMGCRタンパク質が認められない」は、通常の操作状況中に上記の態様のいずれか1つに従って方法を操作する人または装置によって検出可能ではないほどに少ないHMGCRタンパク質の量を指す。「通常の操作状況」とは、当業者が本発明を実施するのに適切であることを見出す検査方法および技術を指す。
【0084】
従って、本開示の方法の実施形態では、工程c)の対照値は、0であってもよい。そして本開示の方法のさらなる実施形態では、当然、工程c)の対照値は、検出可能なHMGCRタンパク質が認められない対照サンプルに対応し得ることになる(以下を参照のこと)。
【0085】
対照値より高いHMGCRタンパク質のサンプル値、またはそのようなサンプル値が得られる被験体を、時々、本明細書において「HMGCRタンパク質高」と称する。さらに、対照値未満のHMGCRタンパク質のサンプル値、またはそのようなサンプル値が得られる被験体を、時々、本明細書において「HMGCRタンパク質低」と称する。
【0086】
本開示に関して、用語「サンプル値」および「対照値」は、広範に解釈すべきである。これらの値を得るためのHMGCRタンパク質の定量化は、自動化手段を介するか、サンプルの目視もしくは顕微鏡検査に基づく評価システムを介するか、またはそれらの組み合わせを介して行うことができる。しかしまた、組織病理学の当業者のような熟練者は、例えば、HMGCRタンパク質発現に対して染色されている組織スライドの検査だけで、サンプルおよび対照値を決定することが可能である。それ故、対照値より高いサンプル値の決定は、目視または顕微鏡検査時に、サンプル組織スライドが、より濃染され、および/または対照組織スライドの場合より大きな画分の染色細胞を示すという決定に対応し得る。サンプル値はまた、文字で記載された対照値のような文字の対照、または対照図面によって示された対照値と比較してもよい。結果的に、サンプルおよび/または対照値は、場合によっては、検査および比較時に当業者が決定する心証に基づく値であり得る。
【0087】
例えば、当業者は、サンプルをHMGCRタンパク質高または低であるとして分類してもよく、ここで、サンプルが、先に検査した対照サンプルより多くのHMGCRタンパク質を含有する場合、サンプルは高いに分類され、そしてサンプルが対照サンプル以下である場合、低いに分類される。そのような評価は、サンプル、および必要であれば、対照サンプルを、例えば、HMGCRタンパク質に選択的な抗体を含む染色溶液で染色することによって、補助され得る。
【0088】
被験体由来のサンプル値との比較として使用するための乳癌被験体に関する処置の決定を行うために関連することが見出されている対照値は、様々な方法で提供することができる。当業者は、本開示の教示内容の知識を用いて、過度の負担を伴うことなく、本開示の方法を実施するための関連する対照値を提供することができる。
【0089】
上記の態様の方法を実施するものは、例えば、対照値を所望の情報に適応させてもよい。例えば、対照値を適応させて、最も有意な処置予測情報、例えば、HMGCRタンパク質高生存率曲線とHMGCRタンパク質低生存率曲線との間の最も大きな隔たりを得ることができる(例えば、図1を参照のこと)。大きな隔たりを生じる対照値の例は、細胞質強度の不在である。
【0090】
上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、方法の被験体の健康な乳腺組織、または間質組織のような健康な組織におけるHMGCRタンパク質発現の量に対応し得る。もう1つの例として、対照値は、もう1つの同等の被験体由来の正常組織の標準的なサンプルにおいて測定されるHMGCRタンパク質発現の量によって提供され得る。もう1つの例として、対照値は、腫瘍組織、例えば、乳癌組織の対照サンプルのような腫瘍細胞を含む対照サンプルにおいて測定されるHMGCRタンパク質発現の量によって提供され得る。対照サンプルのタンパク質発現の量は、好ましくは、予め確立され得る。結果的に、対照値は、予め決定された量のHMGCRタンパク質を発現する細胞を含む対照サンプルにおいて測定されるHMGCRタンパク質の量によって提供され得る。
【0091】
さらに、対照値は、例えば、予め決定されたか、または制御された量のHMGCRタンパク質を発現する癌細胞系統のような細胞系統を含む対照サンプルにおいて測定されるHMGCRタンパク質発現の量によって提供され得る。当業者は、例えば、Rhodes et al. (2006) The biomedical scientist, p 515-520の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。
【0092】
結果的に、本開示の方法の実施形態では、対照値は、対照サンプルにおけるHMGCRタンパク質発現の量に対応する予め決定された値であってもよい。
【0093】
しかし、さらに以下において考察されるように、対照サンプル中のHMGCRタンパク質の量は、必ずしも対照値に直接対応する必要はない。対照サンプルはまた、様々な対照値を評価する方法を実施する者を補助するHMGCRタンパク質の量を提供し得る。例えば、対照サンプルは、「陽性」対照値および/または「陰性」対照値を提供することによって、対照値の心的イメージを作成するのに役立ち得る。
【0094】
被験体からより早期に得られるサンプルまたは対照サンプルのようなサンプルにおけるHMGCRタンパク質発現の定量化のための1つの別法は、所定のレベルを超えるHMGCRタンパク質発現を示すサンプルにおける細胞の画分の決定である。画分は、例えば、次のものであり得る:細胞全体のHMGCRタンパク質発現を考慮する「細胞画分」;細胞の細胞質のみのHMGCRタンパク質発現を考慮する「細胞質画分」;または核のみのHMGCRタンパク質発現を考慮する「核画分」。細胞質画分は、例えば、関連する細胞集団の<2%、2〜25%、>25〜75%または>75%の免疫反応性細胞として分類することができる。「細胞質画分」は、細胞質において陽性染色を示すサンプル中の関連する細胞の百分率に対応し、ここで、細胞質における中等度のまたは明瞭かつ強力な免疫反応性は陽性とみなされ、そして細胞質における認められないまたは軽度の免疫反応性は陰性とみなされる。病理学の当業者は、方法を実施する場合に存在する条件下でどの細胞が関連するかを理解しており、そして当業者の一般的知識および本開示の教示内容に基づく細胞質画分を決定することができる。関連する細胞は、例えば、腫瘍細胞であってもよい。さらに、当業者は、「細胞画分」または「核画分」を用いて対応する測定を実施する仕方について理解している。
【0095】
被験体からより早期に得られるサンプルまたは対照サンプルのようなサンプルにおけるHMGCRタンパク質発現の定量化のためのもう1つの別法は、サンプルの全体的染色強度を決定することである。強度は、例えば、次のものであり得る:細胞全体のHMGCRタンパク質発現を考慮する「細胞強度」;細胞の細胞質のみのHMGCRタンパク質発現を考慮する「細胞質強度」;または核のみのHMGCRタンパク質発現を考慮する「核強度」。細胞質強度は、臨床病理組織学的診断において使用される基準に従って、主観的に評価される。細胞質強度決定の結果は、次のように分類することができる:不在=サンプルの関連する細胞の細胞質において全体的な免疫反応性が認められない、弱=サンプルの関連する細胞の細胞質において全体的な免疫反応性が軽度である、中=サンプルの関連する細胞の細胞質において全体的な免疫反応性が中等度である、または強=サンプルの関連する細胞の細胞質において全体的な免疫反応性が明瞭かつ強力である。病理学の当業者は、方法を実施する場合に存在する条件下でどの細胞が関連するかを理解しており、そして当業者の一般的知識および本開示の教示内容に基づく細胞質強度を決定することができる。関連する細胞は、例えば、腫瘍細胞であってもよい。細胞質強度の決定は、例えば、実施例、セクション4の「細胞質強度」の定義において以下に記載のように実施することができる。さらに、当業者は、「細胞強度」または「核強度」を用いて対応する測定を実施する仕方について理解している。
【0096】
本発明者らは、HMGCRタンパク質の細胞質発現が、処置予測を行うのに特に関連することを見出した。それ故、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、細胞質画分、細胞質強度またはそれらの組み合わせであってもよい。従って、サンプル値は、細胞質画分、細胞質強度またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0097】
好ましくは、サンプル値および対照値は、両方とも、同じタイプの値である。
【0098】
上記の態様の方法の実施形態では、工程d)における結論のための基準は、HMGCRタンパク質陽性細胞の細胞質画分のためのサンプル値、即ち、0%より高い、例えば、1%より高い、例えば、2%より高い、例えば、5%より高い、例えば、10%より高い、例えば、15%より高い、例えば、20%より高い、例えば、25%より高い、例えば、30%より高い、例えば、35%より高い、例えば、40%より高い、例えば、50%より高い、例えば、60%より高い、例えば、70%より高い、例えば、75%より高い、例えば、80%より高い、例えば、90%より高い「細胞質画分」である。
【0099】
上記の態様の方法の代替的または相補的な実施形態では、工程c)の対照値は、95%以下、例えば、90%以下、例えば、85%以下、例えば、80%以下、例えば、75%以下、例えば、70%以下、例えば、65%以下、例えば、60%以下、例えば、55%以下、例えば、50%以下、例えば、45%以下、例えば、40%以下、例えば、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下、例えば、0%の細胞質画分である。
【0100】
本発明者らは、0の値のような低いカットオフ値が処置予測に特に関連することを理解している。しかし、本発明者らは、さらに、試験した腫瘍サンプルが、一般的に50%より高い細胞質画分かまたは1%以下の細胞質画分のいずれかを示すことに注目しており、ここで、前者のグループは、タモキシフェンに対する応答に関連する。それ故、対照値が細胞質画分である場合、それは、好ましくは、50%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下である。最も好適には、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下、例えば、0%である。
【0101】
さらに、上記の態様の方法の実施形態では、工程d)における結論の基準は、サンプル、即ち、細胞質強度の不在より高い、例えば、弱い細胞質強度より高い、例えば、中等度の細胞質強度より高い細胞質強度の染色強度のためのサンプル値であってもよい。上記の態様の方法の代替的または相補的な実施形態では、工程c)の対照値は、中等度の細胞質強度のHMGCRタンパク質発現以下、例えば、弱い細胞質強度のHMGCRタンパク質発現以下、例えば、細胞質強度が不在であってもよい。
【0102】
実施例のセクションでは、カットオフ値、細胞質強度「の不在」が、用いられる。それ故、対照値が細胞質強度である場合、それは、好ましくは、低い、例えば、弱以下である。最も好適には、不在である。
【0103】
さらに、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、2つの値から構成され得、ここで、工程d)における結論の基準は、これらの2つの値より高いサンプル値である。そのような対照値の例は、25%以下および弱い細胞質強度以下の細胞質画分である。
【0104】
あるいは、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、画分値と強度値、例えば、細胞質画分値と細胞質強度値との組み合わせであってもよい。
【0105】
また、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、細胞質画分値、細胞質強度値の関数であってもよい。例えば、そのような関数は、染色スコアであり得る。「染色スコア」は、実施例、セクション3および以下の表1に記載のように計算される。例えば、対照値は、2以下、例えば、1以下、例えば、0の染色スコアであってもよい。
【0106】
当業者は、強度値または画分値である他の対照値もまた、本発明の範囲内に当てはまることを理解している。同様に、当業者は、画分と強度との他の組み合わせもまた、本発明の範囲内に当てはまることを理解している。結果的に、対照値は、2つ、そしておそらくはなおそれを超える基準に関係し得る。
【0107】
一般に、対照値としての細胞質強度値および/または細胞質画分値の選択は、染色手順、例えば、用いられる抗HMGCR抗体および染色試薬に依存し得る。
【0108】
本開示を指針として、当業者、例えば、病理学者は、細胞、細胞質もしくは核画分のような画分、または細胞、細胞質もしくは核強度のような強度をもたらす評価を実施する仕方について理解している。例えば、当業者は、所定の画分または強度の出現を確立するための予め決定された量のHMGCRタンパク質を含む対照サンプルを使用することができる。
【0109】
しかし、対照サンプルは、実際の対照値を供給するためだけではなく、対照値に対応する量より高いHMGCRタンパク質の量を伴うサンプルの例を供給するために使用することができる。例として、免疫組織化学染色のような組織化学染色では、当業者は、高量のHMGCRタンパク質を有する染色されたサンプル、例えば、陽性対照の出現を確立するための対照サンプルを使用することができる。続いて、当業者は、対照値に対応する量のHMGCRタンパク質を伴うサンプルの出現のようなより低量のHMGCRタンパク質を有するサンプルの出現を評価することができる。言い換えれば、当業者は、対照サンプルを使用して、対照サンプルより低いHMGCRタンパク質の量に対応する対照値の心的イメージを作成することができる。代替的に、または補完物として、そのような評価では、当業者は、例えば、「陰性対照」としてのそのようなサンプルの出現を確立するための低量のHMGCRタンパク質を有するか、または検出可能なHMGCRタンパク質を含まないもう1つの対照サンプルを使用することができる。
【0110】
例えば、10%の細胞質画分の対照値を使用する場合、次の2つの対照サンプルを使用してもよい:検出可能なHMGCRタンパク質が認められず、それ故、0の細胞質画分に対応する、対照値より低い第1の対照サンプル;および75%以上の細胞質画分に対応するHMGCRタンパク質の量を有する、対照値より高い第2の対照サンプル。
【0111】
結果的に、評価では、当業者は、高量のHMGCRタンパク質を伴うサンプルの出現を確立するための対照サンプルを使用することができる。そのような対照サンプルは、高量のHMGCRタンパク質を発現する組織を含むサンプル、例えば、予め確立された高発現のHMGCRタンパク質を有する乳腫瘍組織を含むサンプルであってもよい。
【0112】
従って、対照サンプルは、強い細胞質強度(CI)の例を提供し得る。次いで、強いCIを伴うサンプルの出現の知識を用いて、当業者は、サンプルを次のCIカテゴリー、不在、弱、中および強に分割することができる。この分割は、検出可能なHMGCRタンパク質(陰性対照)を含まない対照サンプル、即ち、細胞質強度が不在である対照サンプルによって、さらに補助され得る。また、対照サンプルは、75%以上の細胞質画分(CF)を伴うサンプルの例を提供し得る。次いで、75%を超える陽性細胞を伴うサンプルの出現の知識を用いて、当業者は、例えば、より低い百分率の陽性細胞を有する他のサンプルの細胞質画分を評価することができる。この分割は、HMGCRタンパク質を本質的に含まない対照サンプル(陰性対照)、即ち、低いCF(例えば、<5%、例えば、<2%)、または0のCFを提供する対照サンプルによって、さらに補助され得る。
【0113】
上記のように、制御された量のHMGCRタンパク質を発現する細胞系統は、対照、特に、陽性対照として使用することができる。
【0114】
1つ以上の図面もまた、「対照サンプル」として提供され得る。例えば、そのような図面は、所定の細胞強度および/または画分を示す所定の条件中に所定の抗体によって染色された腫瘍組織スライドの例であり得る。「対照サンプル」についての上記の考察は、図面に準用する。
【0115】
さらに、当業者は、タンパク質が関連遺伝子によってコードされ、そして関連する発現パターンを示す限り、上記の態様に従う方法の有用性が、問題の被験体に存在するHMGCRタンパク質の任意の特定の変異体の定量化に限定されないことを認識すべきである。非制限的例として、HMGCRタンパク質は、以下から選択される配列を含むか、または以下から選択される配列からなる:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列。
【0116】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号1に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0117】
もう1つの非制限的例として、HMGCRタンパク質は、以下から選択される配列を含むか、または以下から選択される配列からなる:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列。
【0118】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号2に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0119】
本開示に関して使用される用語「%同一」は、次のとおりに計算される。CLUSTAL Wアルゴリズム(Thompson, J.D., Higgins, D.G. and Gibson, T.J., Nucleic Acids Research, 22: 4673-4680 (1994))を使用して、問い合わせ配列を標的配列に対してアラインする。各位置におけるアミノ酸残基を比較し、そして標的配列において同一の応答を有する問い合わせ配列における位置の百分率を同一%として報告する。また、標的配列は、比較する位置の数を決定する。結果的に、本開示に関して、標的配列より短い問い合わせ配列は、標的配列に対して、決して100%同一になり得ない。例えば、85アミノ酸の問い合わせ配列は、100アミノ酸の標的配列に対して、最大で85%同一であり得る。
【0120】
上記の態様の方法の実施形態では、HMGCRタンパク質は、HMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能である検出可能および/または定量可能な親和性リガンドのサンプルへの適用を介して、検出および/または定量することができる。親和性リガンドの適用は、サンプル中の任意のHMGCRタンパク質への親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される。
【0121】
具体化するために、上記の態様の方法の実施形態では、工程b)は、以下を含み得る:
b1)前記サンプルに、評価しようとするHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能である定量可能な親和性リガンドを適用する工程であって、前記適用は、前記サンプルに存在するHMGCRタンパク質への前記親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される;
b2)非結合親和性リガンドを取り出す工程;および
b3)前記サンプルとの会合において残留する親和性リガンドを定量して、前記量を評価する工程。
【0122】
「サンプルとの会合において残留する親和性リガンド」は、工程b2)において取り出されなかった親和性リガンド、例えば、サンプルに結合した親和性リガンドを指す。ここで、結合は、例えば、抗体と抗原との間の相互作用であってもよい。
【0123】
しかし、いくつかの実施形態では、b2)に従う非結合親和性リガンドの取り出し、例えば、洗浄は必ずしも必要ではない。それ故、上記の態様の方法のいくつかの実施形態では、工程b)は、以下を含み得る:
bI)前記サンプルに、評価しようとするHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能である定量可能な親和性リガンドを適用する工程であって、前記適用は、前記サンプルに存在するHMGCRタンパク質への前記親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される工程;
bII)前記サンプルに結合した親和性を定量して、前記量を評価する工程。
【0124】
一旦、本開示の教示内容を介して、乳癌についてのHMGCRタンパク質と処置予測との間の関連が公知になれば、適切な親和性リガンドを選択または製造し、そして検出および/または定量化のための適切な形式および条件を選択することは、当業者の能力の範囲内であることが認識される。それでも敢えて、有用性を証明し得る親和性リガンドの例、ならびに検出および/または定量化の形式および条件の例を、例示目的のために以下に示すことにする。
【0125】
それ故、本開示の実施形態では、親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体、即ち、免疫グロブリン足場に基づく親和性リガンドからなる群から選択され得る。抗体およびそのフラグメントまたは誘導体は、単離され得、および/または単一特異的であり得る。抗体は、マウス、ウサギ、ヒトおよび他の抗体を含む任意の起源のモノクローナルおよびポリクローナル抗体、ならびに部分的にヒト化された抗体、例えば、部分的にヒト化されたマウス抗体のような異なる種由来の配列を含むキメラ抗体を含む。ポリクローナル抗体は、好適な抗原による動物の免疫化によって産生される。定義された特異性を有するモノクローナル抗体は、KoehlerおよびMilstein(Koehler G and Milstein C (1976) Eur. J. Immunol. 6:511-519)によって開発されたハイブリドーマ技術を使用して、産生させることができる。本開示の抗体フラグメントおよび誘導体は、抗体(それらはそのフラグメントまたは誘導体である)と同じ抗原(例えば、HMGCRタンパク質)との選択的相互作用が可能である。抗体フラグメントおよび誘導体は、無傷(intact)な免疫グロブリンタンパク質の重鎖(CH1)の第1の定常ドメイン、軽鎖(CL)の定常ドメイン、重鎖(VH)の可変ドメインおよび軽鎖(VL)の可変ドメインからなるFabフラグメント;2つの可変抗体ドメインVHおよびVLからなるFvフラグメント(Skerra A and Plueckthun A (1988) Science 240:1038-1041);可撓性ペプチドリンカーによって共に連結された2つのVHおよびVLドメインからなる一本鎖Fvフラグメント(scFv)(Bird RE and Walker BW (1991) Trends Biotechnol. 9:132-137);Bence Jonesダイマー(Stevens FJ et al. (1991) Biochemistry 30:6803-6805);ラクダ科重鎖ダイマー(Hamers-Casterman C et al. (1993) Nature 363:446-448)および単一可変ドメイン(Cai X and Garen A (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:6280-6285;Masat L et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:893-896)、ならびに例えば、コモリザメ由来のNew Antigen Receptor(NAR)のような単一ドメイン足場(Dooley H et al. (2003) Mol. Immunol. 40:25-33)および可変重鎖ドメインに基づくミニボディ(Skerra A and Plueckthun A (1988) Science 240:1038-1041)を含む。
【0126】
配列番号1は、免疫化のために設計された、例えば、成熟タンパク質から切断除去されるため、大腸菌(E.coli)における効率的な発現を確実にするために膜貫通領域を含まず、そしていずれのシグナルペプチドも含まないように設計された。結果的に、本開示に従う抗体またはそのフラグメントもしくはその誘導体は、例えば、アミノ酸配列が配列番号1を含む、好ましくは、配列番号1からなるタンパク質でウサギのような動物を免疫化する工程を含むプロセスによって入手可能であるものであり得る。例えば、免疫化プロセスは、フロイント完全アジュバント中のタンパク質による1次免疫を含み得る。また、免疫化プロセスは、少なくとも2回、2〜6週間の間隔で、フロイント不完全アジュバント中のタンパク質によりブーストすることをさらに含み得る。当該技術分野において公知である所与の標的に対する抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体の産生のためのプロセスは、本開示のこの態様に関連して適用され得る。
【0127】
本開示に関して、「単一特異的抗体」は、それ自体の抗原に対してアフィニティー精製されているポリクローナル抗体の集団の1つであり、それによって、他の抗血清タンパク質および非特異的抗体からそのような単一特異的抗体を分離している。このアフィニティー精製は、その抗原に選択的に結合する抗体を生じる。本開示の場合、ポリクローナル抗血清は、標的タンパク質に選択的な単一特異的抗体を得るための2工程の免疫アフィニティーに基づくプロトコルによって、精製される。捕捉因子として固定化されたタグタンパク質を使用する1次枯渇工程において、抗原フラグメントの包括的親和性タグに対する抗体を取り出す。第1の枯渇工程後、抗原に特異的な抗体を富化するために、捕捉因子として抗原を伴う第2のアフィニティーカラム上で、血清を単離する(また、Nilsson P et al. (2005) Proteomics 5:4327-4337も参照のこと)。
【0128】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体は、上記の方法態様に従うHMGCRタンパク質の検出および/または定量化におけるような選択的生体分子認識を必要とするアプリケーションにおいて、親和性リガンドを従来どおり選択する。しかし、当業者は、選択的結合リガンドのハイスループット作製および低コスト生産システムの需要が増加しているため、新たな生体分子多様性技術が、最近10年間の間に開発されてきたことを知っている。これは、生体分子認識アプリケーションにおいて結合リガンドとして有用であることが同様に証明されており、そして免疫グロブリンの代わりに、または免疫グロブリンと共に使用することができる免疫グロブリンならびに非免疫グロブリン起源の両方の新規のタイプの親和性リガンドの作製を可能にした。
【0129】
親和性リガンドの選択に必要な生体分子多様性は、複数の可能な足場分子のうちの1つのコンビナトリアル操作によって作製することができ、次いで、特異的および/または選択的親和性リガンドが、適切な選択プラットホームを使用して、選択される。足場分子は、免疫グロブリンタンパク質由来(Bradbury AR and Marks JD (2004) J. Immunol. Meths. 290:29-49)、非免疫グロブリンタンパク質由来(Nygren PA and Skerra A (2004) J. Immunol. Meths. 290:3-28)、またはオリゴヌクレオチド由来(Gold L et al. (1995) Annu. Rev. Biochem. 64:763-797)であってもよい。
【0130】
多数の非免疫グロブリンタンパク質足場が、新規の結合タンパク質の開発において支持構造として使用されている。本開示に従って使用するためのHMGCRタンパク質に対する親和性リガンドを作製するのに有用なそのような構造の非制限的例には、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメインならびにこれらのドメインの誘導体、例えば、プロテインZ(Nord K et al. (1997) Nat. Biotechnol. 15:772-777);リポカリン(Beste G et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96:1898-1903);アンキリンリピートドメイン(Binz HK et al. (2003) J. Mol. Biol. 332:489-503);セルロース結合ドメイン(CBD)(Smith GP et al. (1998) J. Mol. Biol. 277:317-332; Lehtioe J et al. (2000) Proteins 41:316-322);γクリスタリン(Fiedler U and Rudolph R, WO01/04144);緑色蛍光タンパク質(GFP)(Peelle B et al. (2001) Chem. Biol. 8:521-534);ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)(Hufton SE et al. (2000) FEBS Lett. 475:225-231;Irving RA et al. (2001) J. Immunol. Meth. 248:31-45);プロテアーゼ阻害剤、例えば、Knottinタンパク質(Wentzel A et al. (2001) J. Bacteriol. 183:7273-7284;Baggio R et al. (2002) J. Mol. Recognit. 15:126-134)およびKunitzドメイン(Roberts BL et al. (1992) Gene 121:9-15;Dennis MS and Lazarus RA (1994) J. Biol. Chem. 269:22137-22144);PDZドメイン(Schneider S et al. (1999) Nat. Biotechnol. 17:170-175);ペプチドアプタマー、例えば、チオレドキシン(Lu Z et al. (1995) Biotechnology 13:366-372;Klevenz B et al. (2002) Cell. Mol. Life Sci. 59:1993-1998);スタフィロコッカルヌクレアーゼ(Norman TC et al. (1999) Science 285:591-595);テンダミスタット(McConell SJ and Hoess RH (1995) J. Mol. Biol. 250:460-479;Li R et al. (2003) Protein Eng. 16:65-72);フィブロネクチンIII型ドメインに基づくトリネクチン(Koide A et al. (1998) J. Mol. Biol. 284:1141-1151;Xu L et al. (2002) Chem. Biol. 9:933-942);ならびにジンクフィンガー(Bianchi E et al. (1995) J. Mol. Biol. 247:154-160;Klug A (1999) J. Mol. Biol. 293:215-218;Segal DJ et al. (2003) Biochemistry 42:2137-2148)がある。
【0131】
非免疫グロブリンタンパク質足場の上記の例として、新規の結合特異性の作製に使用される単一の無作為化ループを提示する足場タンパク質、堅牢な2次構造を伴うタンパク質足場が挙げられ、ここで、 タンパク質表面から突出している側鎖が、新規の結合特異性の作製、および新規の結合特異性の作製に使用される非連続的超可変ループ領域を示す足場のために無作為化される。
【0132】
非免疫グロブリンタンパク質に加えて、オリゴヌクレオチドもまた、親和性リガンドとして使用してもよい。一本鎖核酸は、アプタマーまたはデコイと呼ばれ、良好に定義された3次元構造に折り畳まれ、そして高い親和性および特異性でそれらの標的に結合する。(Ellington AD and Szostak JW (1990) Nature 346:818-822;Brody EN and Gold L (2000) J. Biotechnol. 74:5-13;Mayer G and Jenne A (2004) BioDrugs 18:351-359)。オリゴヌクレオチドリガンドは、RNAまたはDNAのいずれかであり得、そして広範な標的分子クラスに結合することができる。
【0133】
上記の足場構造のいずれかの変異体のプールから定義された親和性リガンドを選択するために、多くの選択プラットホームが、好適な標的タンパク質に対する新規の特異的なリガンドの単離に利用可能である。選択プラットホームとして、ファージディスプレイ(Smith GP (1985) Science 228:1315-1317)、リボソームディスプレイ(Hanes J and Plueckthun A (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:4937-4942)、酵母ツーハイブリッドシステム(Fields S and Song O (1989) Nature 340:245-246)、酵母ディスプレイ(Gai SA and Wittrup KD (2007) Curr Opin Struct Biol 17:467-473)、mRNAディスプレイ(Roberts RW and Szostak JW (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:12297-12302)、細菌ディスプレイ(Daugherty PS (2007) Curr Opin Struct Biol 17:474-480、Kronqvist N et al. (2008) Protein Eng Des Sel 1-9、Harvey BR et al. (2004) PNAS 101(25):913-9198)、マイクロビーズディスプレイ(Nord O et al. (2003) J Biotechnol 106:1-13、WO01/05808)、SELEX(System Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)(Tuerk C and Gold L (1990) Science 249:505-510)およびタンパク質フラグメント相補性アッセイ(PCA)(Remy I and Michnick SW (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96:5394-5399)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
それ故、本開示の実施形態では、親和性リガンドは、上記で列挙したタンパク質足場のうちのいずれかから誘導された非免疫グロブリン親和性リガンドであってもよく、またはオリゴヌクレオチド分子であってもよい。
【0135】
HMGCRタンパク質の配列番号1は、他のヒトタンパク質と低い相同性を有する独特な配列からなり、そして作製されたアフィニティー試薬の交差反応性を最小限にするように設計された。結果的に、本開示の実施形態では、親和性リガンドは、配列番号1からなるポリペプチドとの選択的相互作用が可能であり得る。
【0136】
以下の実施例では、配列番号4を有するHMGCRエピトープに結合する抗体を用いる。配列番号4は、アミノ酸配列CKDNPGENARQLAR(即ち、EnsEMBL登録番号ENSP00000287936のアミノ酸827〜840)を指す。この抗体は、強力な染色を生じる。結果的に、本開示のさらなる実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、配列番号4を含む、または配列番号4からなるHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る。
【0137】
本開示のいくつかの実施形態では、HMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドは、検出可能および/または定量可能である。そのような親和性リガンドの検出および/または定量化は、生物学的相互作用に基づくアッセイにおいて結合試薬の検出および/または定量化について当業者に公知の任意の方法で達成することができる。それ故、上記の任意の親和性リガンドを、定量的または定性的に使用して、HMGCRタンパク質の存在を検出することができる。これらの「1次」親和性リガンドは、それら自体が、様々なマーカーによって標識され得、あるいは次いで、2次標識親和性リガンドによって検出されて、検出、可視化および/または定量化を可能にし得る。これは、当業者に公知であり、そして過度の実験が関係しない多数の技術のいずれか1つ以上を使用して、HMGCRタンパク質との相互作用が可能な親和性リガンドまたは任意の2次親和性リガンドにコンジュゲートすることができる多数の標識のいずれか1つ以上を使用して、達成することができる。
【0138】
1次および/または2次親和性リガンドにコンジュゲートすることができる標識の非制限的例として、蛍光染料または金属(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、フルオレスカミン)、発色団染料(例えば、ロドプシン)、化学発光化合物(例えば、ルミナール、イミダゾール)および生物発光タンパク質(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ)、ハプテン(例えば、ビオチン)が挙げられる。多様な他の有用な蛍光物質および発色団については、Stryer L (1968) Science 162:526-533およびBrand L and Gohlke JR (1972) Annu. Rev. Biochem. 41:843-868に記載されている。親和性リガンドは、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ラクタマーゼ)、放射性同位元素(例えば、H、14C、32P、35Sまたは125I)および粒子(例えば、金)で標識することができる。本開示に関して、「粒子」は、分子を標識するのに適切な粒子、例えば、金属粒子を指す。さらに、親和性リガンドはまた、蛍光半導体ナノ結晶(量子ドット)で標識することができる。量子ドットは、より優れた量子収量を有し、そして有機蛍光団と比較してより光安定性であり、従って、より容易に検出される(Chan et al. (2002) Curr Opi Biotech. 13: 40-46)。様々な化学、例えば、アミン反応またはチオール反応を使用して、異なるタイプの標識を、親和性リガンドにコンジュゲートすることができる。しかし、アミンおよびチオール以外の他の反応基、例えば、アルデヒド、カルボン酸およびグルタミンを使用することもできる。
【0139】
上記の方法態様は、いくつかの既知の形式および設定のいずれかで利用することができ、その非制限的選択について以下で考察する。
【0140】
組織学に基づく設定では、そのHMGCRタンパク質標的に結合した標識親和性リガンドの検出、局在および/または定量化は、可視化技術、例えば、光学顕微鏡または免疫蛍光顕微鏡に関係し得る。他の方法は、フローサイトメトリーまたはルミノメトリーを介する検出に関係し得る。
【0141】
例えば、被験体から取り出した乳腺組織由来の腫瘍組織サンプル(生検)のような生物学的サンプルは、HMGCRタンパク質の検出および/または定量化に使用することができる。生検のような生物学的サンプルは、早期に得られるサンプルであってもよい。ある方法において早期に得られるサンプルを使用する場合、ヒトまたは動物身体に対して実践される方法の工程はない。親和性リガンドを、HMGCRタンパク質の検出および/または定量化のために、生物学的サンプルに適用してもよい。この手順は、HMGCRタンパク質の検出を可能にするだけではなく、加えて、その発現の分布および相対的レベルを示すこともできる。
【0142】
親和性リガンド上の標識の可視化の方法として、フルオロメトリー、ルミノメトリーおよび/または酵素的技術を挙げることができるが、これらに限定されない。蛍光は、蛍光標識を特定の波長の光に暴露し、その後、特定の波長領域において放射された光を検出および/または定量することによって、検出および/または定量される。発光タグ化親和性リガンドの存在は、化学反応中に発生する発光によって、検出および/または定量することができる。酵素反応の検出は、化学反応から生じるサンプルの色のシフトによるものである。当業者は、適切な検出および/または定量化のために、異なる多様なプロトコルを改変することができることを知っている。
【0143】
上記の態様の方法の実施形態では、生物学的サンプルを、ニトロセルロースもしくは適用される生物学的サンプルに存在するHMGCRタンパク質を固定化することが可能な他の任意の固相支持体マトリックスのような固相支持体またはキャリアに固定化することができる。本発明において有用ないくつかの周知の固体状態支持材料として、ガラス、炭水化物(例えば、Sepharose)、ナイロン、プラスチック、ウール、ポリスチレン、ポリエテン(polyethene)、ポリプロピレン、デキストラン、アミラーゼ、フィルム、樹脂、セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、アルミナ、ガブロおよびマグネタイトが挙げられる。生物学的サンプルの固定化後、HMGCRタンパク質に特異的な1次親和性リガンドは、例えば、本開示の実施例、セクション3、4または5に記載のように適用することができる。1次親和性リガンドがそれ自体で標識されない場合、支持マトリックスを、当該分野において公知の1つ以上の適切な緩衝液で洗浄することができ、続いて、2次標識親和性リガンドに暴露し、もう1回、緩衝液で洗浄して、結合していない親和性リガンドを取り出すことができる。その後、従来の方法で、選択的親和性リガンドを検出および/または定量することができる。親和性リガンドの結合特性は、固体状態支持体によって変動し得るが、当業者は、日常的な実験によって、それぞれの決定のための作動および至適アッセイ条件を決定することが可能であるべきである。
【0144】
結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、b1)の定量可能な親和性リガンドは、定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを使用して、検出することができる。それ故、b3)の定量化は、定量可能な親和性リガンドに対して親和性を有する2次親和性リガンドによって、行うことができる。例として、2次親和性リガンドは、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体であり得る。
【0145】
例として、HMGCRタンパク質の検出および/または定量化の1つの利用可能な方法は、後に酵素イムノアッセイ(例えば、EIAもしくはELISA)で検出および/または定量することができる酵素に親和性リガンドを連結させることによる。そのような技術は、良好に確立されており、そしてそれらは、当業者にとって過度の困難を伴わずに実現される。そのような方法では、生物学的サンプルは、固体材料、またはHMGCRタンパク質に対する親和性リガンドにコンジュゲートされた固体材料と接触され、次いで、酵素標識された2次親和性リガンドで検出および/または定量される。この後、適切な基質を酵素標識を伴う適切な緩衝液と反応させて、例えば、分光光度計、蛍光光度計、発光測定装置を使用して、または目視手段によって、検出および/または定量される化学部分を生成させる。
【0146】
上記で述べたように、1次および2次親和性リガンドは、検出および/または定量化を可能にする放射性同位元素で標識することができる。本開示における適切な放射性標識の非制限的例には、H、14C、32P、35Sまたは125Iがある。標識された親和性リガンドの比活性は、放射性標識の半減期、同位体の純度、および標識がどのようにして親和性リガンドに組み入れられたかに依存する。親和性リガンドは、好ましくは、周知の技術(Wensel TG and Meares CF (1983) in: Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy (Burchiel SW and Rhodes BA eds.) Elsevier, New York, pp 185-196)を使用して、標識される。そのような放射性標識された親和性リガンドを使用して、インビボまたはインビトロでの放射能の検出により、HMGCRタンパク質を可視化することができる。例えば、γカメラ、磁気共鳴分光法または放射トモグラフィーによる放射性核種スキャニングは、インビボおよびインビトロでの検出に機能する一方、γ/βカウンター、シンチレーションカウンターおよびラジオグラフィーもまた、インビトロで使用される。
【0147】
本開示の第3の態様として、以下を含む、上記の態様に従って、方法を実施するためのキットが提供される:
a)HMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;および
b)親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬。
【0148】
第3の態様に従うキットの様々な成分は、本開示の方法態様に関連して上記のように選択および指定することができる。
【0149】
それ故、本開示に従うキットは、HMGCRタンパク質に対する親和性リガンド、ならびにそれが特異的および/または選択的にHMGCRタンパク質に結合した後、特異的および/または選択的親和性リガンドを定量するのに役立つ他の手段を含む。例えば、キットは、HMGCRタンパク質、およびHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドによって形成される複合体を検出および/または定量するための2次親和性リガンドを含有することができる。キットはまた、キットを容易かつ効率的に使用することを可能にするための親和性リガンド以外の様々な補助物質を含有することができる。補助物質の例として、キットの凍結乾燥タンパク質成分を溶解または再構成するための溶媒、洗浄緩衝液、酵素を標識として使用する場合、酵素活性を測定するための基質、パラフィンまたはホルマリン固定された組織サンプルを使用する場合、抗原へのアクセス可能性を増大するための抗原賦活液(target retrieval solution)、および反応抑止剤(reaction arrester)のような物質、例えば、イムノアッセイ試薬キットにおいて一般に使用されるバックグランド染色を減少するための内因性酵素ブロック溶液および/または染色の対比を増加するための対比染色溶液が挙げられる。
【0150】
キット態様の実施形態では、親和性リガンドは、方法態様に関して上記に記載のように選択することができる。
【0151】
さらに、方法態様に関して上記に記載のことに従って、検出可能な親和性リガンドは、キット態様の実施形態において、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含み得る。あるいは、親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬は、定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを含む。例として、定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドは、蛍光染料または金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む。
【0152】
キット態様に従うキットはまた、サンプル値との比較のために使用すべき対照値の供給または産出のための対照サンプルを有利に含み得る。例えば、対照サンプルは、予め決定された量のHMGCRタンパク質を含み得る。そのような対照サンプルは、例えば、予め決定された量のHMGCRタンパク質を有する組織サンプルによって構成され得る。次いで、組織対照サンプルは、対照組織サンプルおよび被験体サンプルにおける発現レベルの肉眼のような手動、または自動化された比較によって、研究しているサンプル中のHMGCR発現状態の決定において当業者によって使用され得る。もう1つの例として、対照サンプルは、予め決定された、または制御された量のHMGCRタンパク質を発現する癌細胞系統のような細胞系統を含み得る。当業者は、例えば、Rhodes et al. (2006) The biomedical scientist, p 515-520の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。例として、細胞系統は、ホルマリン固定化してもよい。また、そのようなホルマリン固定化細胞系統を、パラフィン包埋してもよい。
【0153】
語句「対照値の供給のための対照サンプル」は、本開示に関して、広範に解釈すべきである。対照サンプルは、実際に対照値に対応するHMGCRタンパク質の量を含み得るが、それはまた、対照値より高い値に対応するHMGCRタンパク質の量を含み得る。後者の場合、「高い」値は、例えば、「高い」値より低い対照値の出現を評価するための上位対照(陽性対照)として方法を実施する者によって、使用され得る。免疫組織化学の当業者は、そのような評価をする仕方について理解している。さらに、代替的または相補的な例として、当業者は、例えば、陰性対照として、そのような評価における「低い」値の供給のための低い量のHMGCRタンパク質を含むもう1つの対照サンプルを使用することができる。これについては、さらに、方法態様に関連して上記で考察している。
【0154】
結果的に、キット態様の実施形態では、対照サンプルは、対照値に対応するHMGCRタンパク質の量を含み得る。例として、対照サンプルは、95%以下、例えば、90%以下、例えば、85%以下、例えば、80%以下、例えば、75%以下、例えば、70%以下、例えば、65%以下、例えば、60%以下、例えば、55%以下、例えば、50%以下、例えば、45%以下、例えば、40%以下、例えば、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下、例えば、0%の細胞質画分に対応するHMGCRタンパク質の量を含み得る。
【0155】
上記のように、本発明者らは、0の値のような低いカットオフ値が処置予測に特に関連することを理解している。しかし、本発明者らは、さらに、試験した腫瘍サンプルが、一般的に50%より高い細胞質画分かまたは1%以下の細胞質画分のいずれかを示すことに注目しており、ここで、前者のグループは、タモキシフェンに対する応答に関連する。
【0156】
それ故、好適な実施形態では、対照サンプルは、50%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下、例えば、0%の細胞質画分に対応するHMGCRタンパク質の量を含み得る。
【0157】
代替的または相補的に、対照サンプルは、中等度の細胞質強度のHMGCRタンパク質発現以下、例えば、弱い細胞質強度のHMGCRタンパク質発現以下に対応するHMGCRタンパク質の量を含み得る。添付の図面に示されるように、低い細胞質強度、例えば、細胞質強度の不在は、関連するカットオフである。それ故、実施形態では、対照サンプルは、弱い細胞質強度以下、例えば、細胞質強度の不在に対応するHMGCRタンパク質の量を含み得る。
【0158】
さらに、対照サンプルは、0、1または2、好ましくは、0の染色スコアに対応するHMGCRタンパク質の量を含み得る。
【0159】
細胞質画分値または細胞質強度値の供給については、方法態様に関連して上記で考察している。
【0160】
さらに、キット態様の代替的または相補的な実施形態では、キットは、対照値より高い値に対応するHMGCRタンパク質の量を含む対照サンプルを含み得る。これらの実施形態では、対照サンプルは、例えば、75%以上の細胞質画分および/または核発現の強い細胞質強度に対応するHMGCRタンパク質の量を含み得る。
【0161】
キット態様の他の代替的または相補的な実施形態では、キットは、対照値以下の値、例えば、細胞質強度の不在および/または≦1%HMGCRタンパク質陽性細胞、例えば、0%HMGCRタンパク質陽性細胞の細胞質画分に対応するHMGCRタンパク質の量を含む対照サンプルを含み得る。
【0162】
それ故、キットは次を含み得る:予め決定された対照値に対応するHMGCRタンパク質の量を含む対照サンプル;予め決定された対照値より高い値に対応するHMGCRタンパク質の量を含む対照サンプル;および/または予め決定された対照値より低い値に対応するHMGCRタンパク質の量を含む対照サンプル。
【0163】
結果的に、キットの実施形態は、次を含み得る:予め決定された対照値より高いHMGCRタンパク質の量を含む第1の対照サンプル;および予め決定された対照値以下のHMGCRタンパク質の量を含む第2の対照サンプル。
【0164】
キット態様の実施形態では、対照サンプルは、組織サンプル、例えば、肉眼または顕微鏡的評価に適応される組織サンプルであってもよい。例として、組織対照サンプルは、パラフィンもしくは緩衝ホルマリン中に固定化され得る、および/または顕微鏡ガラススライド上にマウントされるμm薄切片に組織処理され得る。組織対照サンプルは、さらに、HMGCRタンパク質に対する抗体のような親和性リガンドによる染色に適応され得る。
【0165】
結果的に、キット態様の実施形態では、対照サンプルは、上記で考察した対照値のいずれか1つのような任意の関連する対照値を直接的または間接的に提供するように適用され得る。
【0166】
従って、キット態様の対照サンプルのさらなる実施形態については、方法態様の対照値および対照サンプルに関連して上記で考察している。
【0167】
さらに、上記で考察したように、HMGCRタンパク質発現とホルモン受容体状態のレベルの組み合わせは、処置予測乳癌被験体に関する結論を導き出すことに関連する情報を提供し得る。
【0168】
上記の理由のため、第3の態様および下記のさらなる態様の「乳癌」は、ホルモン受容体陰性乳癌、例えば、ER−もしくはPR−乳癌、ER−乳癌、PR−乳癌、またはER−およびPR−乳癌であってもよい。例えば、乳癌は、ホルモン受容体陰性として先に診断されていてもよい。
【0169】
それ故、キットはまた、被験体のホルモン受容体状態を確立するための手段を含み得る。
【0170】
従って、キット態様の実施形態では、キットは、さらに、以下を含み得る:
a’)エストロゲン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;およびb’)そのような親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬;ならびに/あるいは
a’’)プロゲステロン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;およびb’’)そのような親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬。
【0171】
a’)およびa’’)の定量可能な親和性リガンドは、それぞれ、ER状態およびPR状態の決定のために提供される。
【0172】
b)、b’)およびb’’)の試薬は、同じであっても、または異なっていてもよい。
【0173】
工程a’)およびa’’)に適切な定量可能な親和性リガンドは、それぞれ当業者に周知であり、そして市販されている。
【0174】
結果的に、キットは、本開示の方法態様のいくつかの実施形態に従って結論を導き出すのに必要なホルモン状態の情報を供給するための手段を含み得る。
【0175】
上記で示した所見に従って、本発明者らは、HMGCRタンパク質のいくつかの用途を理解している。
【0176】
それ故、本開示の第4の態様の第1の構成として、乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置適応マーカーとしてのHMGCRタンパク質の使用が提供される。
【0177】
本開示に関して、「内分泌処置適応マーカー」は、存在が内分泌処置の適合性を示す何らかの材料を指す。それ故、マーカーは、ヒトタンパク質のようなバイオマーカーであってもよい。
【0178】
第4の態様の第2の構成として、乳癌を有する哺乳動物被験体に対する内分泌処置適応因子の産生、選択もしくは精製のためのHMGCRタンパク質、またはその抗原活性なフラグメントの使用が提供される。
【0179】
本開示に関して、「内分泌処置適応因子」は、例えば、乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置についての処置予測の確立において価値のある少なくとも1つの特性を有する因子を指す。例えば、適応因子は、適応マーカーとの選択的相互作用が可能であり得る。
【0180】
内分泌処置適応因子は、HMGCRタンパク質、またはその抗原活性なフラグメントとの選択的相互作用が可能な親和性リガンドであってもよい。そのような親和性リガンドの例については、方法態様に関連して上記で考察している。
【0181】
本開示の教示内容を指針として、当業者は、内分泌処置適応因子の産生、選択または精製においてHMGCRタンパク質を使用する仕方について理解している。例えば、使用は、HMGCRタンパク質が固定化されている固相支持体上でのアフィニティー精製を含み得る。固相支持体は、例えば、カラムにおいて配置されていてもよい。さらに、使用は、ポリペプチドが固定化されている固相支持体を使用する、HMGCRタンパク質に対して特異性を有する親和性リガンドの選択を含み得る。そのような固相支持体は、ウェルプレート(例えば、96ウェルプレート)、磁気ビーズ、アガロースビーズまたはセファロースビーズであってもよい。さらに、使用は、例えば、デキストランマトリックスを使用する可溶性マトリックス上の親和性リガンドの分析、またはBiacoreTM装置のような表面プラズモン共鳴装置における使用を含み得、ここで、分析は、例えば、多くの潜在的な親和性リガンドの固定化されたHMGCRタンパク質に対する親和性をモニターすることを含み得る。
【0182】
また、内分泌処置適応因子または処置予測因子の産生のために、HMGCRタンパク質を、動物の免疫化において使用することができる。
【0183】
そのような使用は、以下の工程を含む方法に関係し得る:
i)HMGCRタンパク質を抗原として使用して、動物を免疫する工程;
ii)免疫動物から内分泌処置適応因子を含む血清を入手する工程;および場合により、
iii)血清から内分泌処置適応因子を単離する工程。
【0184】
あるいは、第1の工程後の工程は、以下のとおりであり得る:
ii’) 免疫動物から細胞を入手する工程であって、細胞は、内分泌処置適応因子をコードするDNAを含む工程、
iii’) 細胞と骨髄腫細胞とを融合させて、少なくとも1つのクローンを入手する工程、および
iv’) クローンによって発現される内分泌処置適応因子を入手する工程。
【0185】
第4の態様の実施形態では、HMGCRタンパク質のアミノ酸配列は、以下から選択される配列を含み得る:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列。
【0186】
いくつかの実施形態では、配列ii)は、配列番号1に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0187】
さらに、第4の態様の実施形態では、HMGCRタンパク質のアミノ酸配列は、以下から選択される配列を含み得る:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列。
【0188】
いくつかの実施形態では、配列ii)は、配列番号2に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0189】
本開示の第5の態様として、HMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドが提供される。
【0190】
そのような親和性リガンドの例については、方法態様に関連して上記で考察している。
【0191】
親和性リガンドは、インビボでの画像のようなインビボ診断に使用され得る。
【0192】
それ故、第5の態様の第1の構成として、乳癌を有する哺乳動物被験体における内分泌処置適応因子としてのインビボ使用のためのHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドが提供される。
【0193】
従って、実施形態では、親和性リガンドは、乳癌、例えば、ER陰性乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置、例えば、タモキシフェン処置の結果の予測を確立するためのインビボ方法に使用することができる。被験体の内分泌処置の結果の予測の確立は、例えば、被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定することであり得る。そのような実施形態では、親和性リガンドは、例えば、即ち、検出可能な標識で標識された画像を可能にするために標識され得る。抗体のような親和性リガンドを標識するための適切な標識は、当業者に周知である。乳癌を有する哺乳動物被験体の処置予測を確立するためのインビボ方法は、例えば、インビボでの腫瘍におけるHMGCRタンパク質発現を示し得、次いで、処置決定の基礎を形成し得る。この実施形態に関して使用することができる様々なインビボ方法、標識および検出技術については、さらに、上記で考察している。
【0194】
第5の態様の同様の構成では、乳癌を有する哺乳動物被験体におけるHMGCRタンパク質の量のインビボでの評価のためのHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドが提供される。例えば、乳癌腫瘍におけるHMGCR発現のレベルを評価してもよい。
【0195】
本開示の第6の態様として、乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置適応因子として、第5の態様に従う親和性リガンドの使用が提供される。結果的に、親和性リガンドは、乳癌を有する哺乳動物被験体が内分泌処置から利益を得るかどうかを示すために使用され得る。そのような使用は、例えば、被験体からより早期に得られるサンプルの少なくとも一部におけるHMGCRの量の決定に関係して、例えば、インビトロで実施することができる。
【0196】
本開示では、内分泌処置、特に、SERM処置、例えば、タモキシフェン処置は、HMGCR陽性である被験体に特に有益であることが示されている(実施例、セクション4および図面を参照のこと)。HMGCR陽性である乳癌被験体は、内分泌処置に関して、これまで認識されていないサブグループである。
【0197】
それ故、本開示の第7の態様として、乳癌を有する哺乳動物被験体の処置に使用するための内分泌処置製品が提供され、ここで、前記被験体は、HMCGRタンパク質陽性である。
【0198】
本開示の第8の態様として、乳癌を有する哺乳動物被験体の処置のための医薬品の製造における内分泌処置製品の使用が提供され、ここで、前記被験体は、HMCGRタンパク質陽性である。
【0199】
前記被験体から誘導される任意のHMGCRタンパク質パラメータが、被験体が内分泌処置から利益を得る可能性があることを示す場合、被験体は、「HMGCRタンパク質陽性」である。例えば、被験体由来の関連する生物学的サンプルが、関連する対照値より高いサンプル値に対応するHMGCRタンパク質の量を含有することが見出されている場合、被験体は、HMGCRタンパク質陽性とみなされ得る。関連するサンプルおよび対照値については、方法態様に関連して上記で考察している。それ故、原発性または続発性の腫瘍由来の関連するサンプル、例えば、組織サンプルが、サンプルの関連する部分、例えば、腫瘍細胞において検出可能なHMGCRタンパク質発現を示す場合、乳癌被験体は、例えば、HMGCRタンパク質陽性とみなされ得る。さらに、そのようなサンプルが、不在より高い細胞質強度または1%より高い細胞質画分に対応するHMGCRの量を含有する場合、乳癌被験体は、例えば、HMGCRタンパク質陽性とみなされ得る。本開示から、当業者、例えば、病理学者は、被験体がHMGCRタンパク質陽性かまたはそうではないかについて決定する仕方について理解している。
【0200】
本開示の実施形態では、「内分泌処置製品」は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、アロマターゼ阻害剤、およびステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニストからなる群から選択することができる。SERMは、例えば、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンおよびタモキシフェンから選択され得る。アロマターゼ阻害剤は、例えば、アナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンから選択することができる。ステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニストは、例えば、フルベストラントであってもよい。好適な実施形態では、内分泌処置製品は、SERM、例えば、タモキシフェンである。
【0201】
HMGCR発現は、すべてのグループの乳癌被験体における内分泌処置に対する応答の強力な(独立した)指標であるが、ER−乳癌を有する被験体は、従来、そのような処置に非応答性であると考えられていたため、この指標は、そのような被験体に特に関連すると考えられ得る。
【0202】
それ故、第7および第8の態様の実施形態では、乳癌はER−であってもよい。
【0203】
タモキシフェンは、最近25年間にアジュバント内分泌療法の主力になっており、そして閉経期状態に関係なく、乳癌の処置におけるその役割を支持する証拠が豊富に存在する。5年間のタモキシフェンをアジュバント処置なしと比較する場合、メタ分析の結果から、疾患再発(41%)、乳癌特異的死亡率(34%)の両方の有意な減少が実証されている(EBCTG: (2005) Lancet 365:1687-717)。
【0204】
HMGCRタンパク質は、メバロン酸経路において律速酵素として作用する。コレステロールは、この経路の主な産物の代表であるが、それはまた、血管新生、増殖、および移動の重要なレギュレーターであることが示されている多くの非ステロール性イソプレノイド副産物を産生する(Liao JK (2002) J Clin Invest 110:285-8、Wejde J, et al (1992) Anticancer Res 12:317-24)。
【0205】
スタチン系薬剤の抗新生物特性について説明している文献の数が絶えず増加しているにもかかわらず、一般的な癌、特に、乳癌に対する予防効果に関する疫学的データは、依然として確定的ではない。本開示の教示内容の一部を考慮して、本発明者らは、メバロン酸経路が、所定の乳癌、特に、ER陰性および/またはリンパ節陽性腫瘍において重要な役割を果たしていると考えている。
【0206】
インビトロ研究により、スタチンにより誘導されるメバロン酸枯渇は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Goldstein JL and Brown MS (1990) Nature 343:425-30)およびMCF−7 乳癌細胞(Duncan RE, et al (2005) Cancer Lett 224:221-8)においてHMGCRタンパク質発現の適応誘導を生じることが実証されている。MCF−7細胞をメバスタチンで処置すると、HMGCRmRNA発現の2.5倍〜3.5倍の誘導と共同して、HMGCR活性が10倍〜15倍誘導された。
【0207】
スタチン系薬剤がHMGCRタンパク質発現を誘導することが示されているという事実、およびHMGCR発現レベルの増加が、ER陽性およびER陰性腫瘍の両方において、タモキシフェンに対する応答の改善に関連するという所見に基づいて、本発明者らは、内分泌処置製品と1つ以上のスタチン系薬剤との組み合わせが、新たな処置の選択肢であると結論付けている。
【0208】
それ故、本開示の第9の態様として、乳癌治療のような治療における同時、個別または連続使用のための組み合わせ製剤として、内分泌処置製品およびスタチンを含む製品が提供される。
【0209】
2つの製品の組み合わせは、「キット・オブ・パーツ」または製品において提供することができ、乳癌治療のような治療における同時、個別または連続使用のための取扱説明書を含み得る。
【0210】
それ故、本開示の第10の態様として、内分泌処置製品およびスタチンを含むキット・オブ・パーツが提供される。
【0211】
例えば、そのようなキット・オブ・パーツは、乳癌治療のような治療に使用され得る。
【0212】
第9または第10の態様の実施形態では、乳癌治療は、ER−および/またはリンパ節陽性乳癌の治療であってもよい。
【0213】
さらに、本開示の第11の態様として、処置を必要とする哺乳動物被験体の処置の方法が提供され、ここで、前記被験体は乳癌を有し、スタチンおよび内分泌処置製品の同時、個別または連続投与を含む。
【0214】
第11の態様の実施形態では、乳癌は、ER−および/またはリンパ節陽性乳癌であってもよい。
【0215】
本開示のスタチンは、親油性/疎水性スタチン系薬剤および疎水性スタチン系薬剤から選択することができる。親油性/疎水性スタチン系薬剤は、フルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチンおよびセリバスタチンを含む。疎水性スタチン系薬剤は、プラバスタチンおよびロスバスタチンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】図1〜7に関して、腫瘍組織を高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI=弱、中および強であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。図1〜2、4〜5および7において、実線は、HMGCR高被験体を表し、そして破線はHMGCR低被験体を表す。図1は、浸潤性乳癌と診断された被験体の免疫組織化学染色に基づく生存分析の結果を示す。図1aは、アジュバントタモキシフェンで処置した患者における無再発生存率を示す。図1bは、アジュバント内分泌処置を行わなかった患者における無再発生存率を示す。
【図2】図1〜7に関して、腫瘍組織を高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI=弱、中および強であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。図1〜2、4〜5および7において、実線は、HMGCR高被験体を表し、そして破線はHMGCR低被験体を表す。図2は、浸潤性乳癌と診断されたER陽性被験体の免疫組織化学染色に基づく生存分析の結果を示す。ER>10%の画分スコアを陽性とみなした。図2aは、アジュバントタモキシフェンで処置した患者における無再発生存率を示す。図2bは、アジュバント内分泌処置を行わなかった患者における無再発生存率を示す。
【図3】図1〜7に関して、腫瘍組織を高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI=弱、中および強であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。図3は、HMGCRタンパク質発現状態およびER状態の異なる組み合わせで被験体をグループに分割した場合の生存率に対する影響を示す。簡単に説明すると、すべての被験体を、HMGCR状態およびER状態に基づいて4つのグループ、即ち、HMGCR陽性かつER陽性である被験体、HMGCR陽性かつER陰性である被験体、HMGCR陰性かつER陽性である被験体またはHMGCR陰性かつER陰性である被験体に分割する。ER陽性=10%の画分スコアおよびER陰性=<10%の画分スコア。図3aは、アジュバントタモキシフェンで処置した患者における無再発生存率を示す。図3bは、アジュバント内分泌処置を行わなかった患者における無再発生存率を示す。
【図4】図1〜7に関して、腫瘍組織を高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI=弱、中および強であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。図1〜2、4〜5および7において、実線は、HMGCR高被験体を表し、そして破線はHMGCR低被験体を表す。図4は、浸潤性乳癌と診断された被験体の免疫組織化学染色に基づく生存分析の結果を示す。図4aは、アジュバントタモキシフェンで処置したリンパ節転移陽性被験体における無再発生存率を示す。図4bは、アジュバントタモキシフェンで処置したリンパ節転移陰性被験体における無再発生存率を示す。
【図5】図1〜7に関して、腫瘍組織を高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI=弱、中および強であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。図1〜2、4〜5および7において、実線は、HMGCR高被験体を表し、そして破線はHMGCR低被験体を表す。図5は、浸潤性乳癌と診断されたER陽性被験体の免疫組織化学染色に基づく生存分析の結果を示す。ER>10%の画分スコアを陽性とみなした。図5aは、アジュバントタモキシフェンで処置したリンパ節転移陽性被験体における無再発生存率を示す。図5bは、アジュバントタモキシフェンで処置したリンパ節転移陰性被験体における無再発生存率を示す。
【図6】図1〜7に関して、腫瘍組織を高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI=弱、中および強であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。図6は、HMGCRタンパク質発現状態およびER状態の異なる組み合わせで被験体をグループに分割した場合の生存率に対する影響を示す。簡単に説明すると、すべての被験体を、HMGCR状態およびER状態に基づいて4つのグループ、即ち、HMGCR陽性かつER陽性である被験体、HMGCR陽性かつER陰性である被験体、HMGCR陰性かつER陽性である被験体またはHMGCR陰性かつER陰性である被験体に分割する。ER陽性=10%の画分スコアおよびER陰性=>10%の画分スコア。図6aは、アジュバントタモキシフェンで処置したリンパ節転移陽性被験体における無再発生存率を示す。図6bは、アジュバントタモキシフェンで処置したリンパ節転移陰性被験体における無再発生存率を示す。
【図7】図1〜7に関して、腫瘍組織を高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI=弱、中および強であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。図1〜2、4〜5および7において、実線は、HMGCR高被験体を表し、そして破線はHMGCR低被験体を表す。図7は、胸部の浸潤性癌と診断されたER陰性被験体の免疫組織化学染色に基づく生存分析の結果を示す。ER発現>10%の画分スコアを陽性とみなした。図7aは、アジュバントタモキシフェンで処置した被験体における無再発生存率を示す。図7bは、アジュバントタモキシフェンで処置した被験体における無再発生存率を示す。
【図8】図8〜12に関して、腫瘍コアを高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI>不在であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。さらに、実線は、アジュバントタモキシフェンを投与した被験体のグループを表し、そして破線は、アジュバント内分泌処置を行わなかった患者を表す。図8は、浸潤性乳癌と診断された被験体の免疫組織化学染色に基づく生存分析の結果を示す。図8aは、HMGCR高患者における無再発生存率を示す。図8bは、HMGCR低患者における無再発生存率を示す
【図9】図8〜12に関して、腫瘍コアを高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI>不在であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。さらに、実線は、アジュバントタモキシフェンを投与した被験体のグループを表し、そして破線は、アジュバント内分泌処置を行わなかった患者を表す。図9は、浸潤性乳癌と診断されたHMGCR陽性かつER陰性被験体の免疫組織化学染色に基づく生存分析の結果を示す。ER発現>10%の画分スコアを陽性とみなした。図9aは無再発生存率を示す。図9bは、リンパ節転移陽性患者における無再発生存率を示す。
【図10】図8〜12に関して、腫瘍コアを高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI>不在であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。さらに、実線は、アジュバントタモキシフェンを投与した被験体のグループを表し、そして破線は、アジュバント内分泌処置を行わなかった患者を表す。図10は、浸潤性乳癌と診断された被験体の免疫組織化学染色に基づく生存分析の結果を示す。被験体を、ER陽性またはER陰性に分類したが、ここで、>10%の画分スコアを陽性とみなし、そして<10%の画分スコアを陰性とみなした。図10aは、HMGCR陽性またはER陽性被験体における無再発生存率を示す。図10bは、HMGCR陰性かつER陰性被験体における無再発生存率を示す。
【図11】図8〜12に関して、腫瘍コアを高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI>不在であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。さらに、実線は、アジュバントタモキシフェンを投与した被験体のグループを表し、そして破線は、アジュバント内分泌処置を行わなかった患者を表す。図11は、浸潤性乳癌と診断された被験体の免疫組織化学染色に基づく生存分析の結果を示す。被験体を、PR陽性またはPR陰性に分類したが、ここで、>10%の画分スコアを陽性とみなし、そして<10%の画分スコアを陰性とみなした。図10aは、HMGCR陽性またはPR陽性被験体における無再発生存率を示す。図10bは、HMGCR陰性かつPR陰性被験体における無再発生存率を示す。
【図12】図8〜12に関して、腫瘍コアを高いまたは低いHMGCRレベルについて評価したが、ここで、高いHMGCRレベルはCI>不在であり、そして低いHMGCRレベルはCI=不在である。さらに、実線は、アジュバントタモキシフェンを投与した被験体のグループを表し、そして破線は、アジュバント内分泌処置を行わなかった患者を表す。図12は、浸潤性乳癌と診断されたHMGCR陽性かつPR陰性被験体の無再発生存率を示す。PR発現>10%の画分スコアを陽性とみなした。
【実施例】
【0217】
HMGCRに対する単一特異的抗体の作製ならびに正常および癌サンプルにおいてHMGCRを検出するためのそれらの使用
1.抗原の作製
a)材料および方法
テンプレートとしてヒトゲノム配列を有するバイオインフォマティクスツールを使用して、EnsEMBL Gene ID ENSG00000113161によってコードされる標的タンパク質の適切なフラグメントを選択した(Lindskog M et al. (2005) Biotechniques 38:723-727, EnsEMBL, www.ensembl.org)。HMGCRタンパク質(配列番号2;EnsEMBL登録番号ENSP00000287936)のアミノ酸742〜881(配列番号1)に対応する140アミノ酸長フラグメントの産生のためのテンプレートとして、フラグメントを使用した。
【0218】
EnsEMBL登録番号ENST00000287936(配列番号3)のヌクレオチド2274〜2693を含有するHMGCR遺伝子転写物のフラグメントを、Platinum(登録商標)Taq(Invitrogen)を有するSuperscriptTM One−Step RT−PCR増幅キットおよびテンプレートとしてのヒト全RNAプールパネル(Human Total RNA Panel IV, BD Biosciences Clontech)によって単離した。フランキング制限部位NotIおよびAscIを、PCR増幅プライマーを介してフラグメントに導入して、発現ベクターへのインフレームクローニングを可能にした(順方向プライマー:ATGGCTGGGAGCATAGGAG、逆方向プライマー:TCCTTGGAGGTCTTGTAAATTG)。次いで、下流プライマーをビオチン化して、先に記載のように、固相クローニングを可能にし、そして得られたビオチン化PCR産物を、Dynabeads M280Streptavidin(Dynal Biotech)上に固定化した(Larsson M et al. (2000) J. Biotechnol. 80:143-157)。フラグメントを、NotI−AscI消化(New England Biolabs)によって、固相支持体から遊離させ、固定化金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)精製のためのヘキサヒスチジルタグおよび連鎖球菌プロテインG由来の免疫増強アルブミン結合タンパク質(ABP)からなる二重親和性タグ(Sjoelander A et al. (1997) J. Immunol. Methods 201:115-123;Stahl S et al. (1999) Encyclopedia of Bioprocess Technology: Fermentation, Biocatalysis and Bioseparation (Fleckinger MC and Drew SW, eds) John Wiley and Sons Inc., New York, pp 49-63)を伴うフレーム内のpAff8cベクター(Larsson M et al、上掲)にライゲートし、そして大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞(Novagen)に形質転換した。クローンの配列を、製造者の推奨に従って、TempliPhi DNA配列決定増幅キット(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)を使用して増幅したプラスミドDNAのダイターミネーターサイクルシーケンスによって、確認した。
【0219】
発現ベクターを所有するBL21(DE3)細胞を、同じ培養培地の1mlの1晩培養物の添加によって5g/l酵母抽出物(Merck KGaA)および50mg/lカナマイシン(Sigma−Aldrich)を補充した、100mlの30g/lトリプティックソイブロス(Merck KGaA)に播種した。細胞培養物を、1リットル振盪フラスコ中37℃および150rpmで、600nmでの光学密度が0.5〜1.5に到達するまで、インキュベートした。次いで、1mMの最終濃度へのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(Apollo Scientific)の添加によって、タンパク質発現を誘導し、そしてインキュベーションを、1晩、25℃および150rpmで継続した。2400gでの遠心分離によって、細胞を回収し、そしてペレットを、5ml溶解緩衝液(7M塩酸グアニジン、47mMのNaHPO、2.65mMのNaHPO、10mMのTris−HCl、100mMのNaCl、20mMのβ−メルカプトエタノール;pH=8.0)に再懸濁し、そして2時間、37℃および150rpmでインキュベートした。35300gでの遠心分離後、変性および可溶化したタンパク質を含有する上清を回収した。
【0220】
His−タグ化融合タンパク質を、ASPEC XL4TM(Gilson)上の自動化タンパク質精製手順(Steen J et al. (2006) Protein Expr. Purif. 46:173-178)を使用する1mlのTalon(登録商標)金属(Co2+)アフィニティー樹脂(BD Biosciences Clontech)を伴うカラム上での固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)によって、精製した。樹脂を、20mlの変性洗浄緩衝液(6M塩酸グアニジン、46.6mMのNaHPO、3.4mMのNaHPO、300mMのNaCl、pH8.0〜8.2)で平衡化した。次いで、澄明にした細胞溶解物を、カラムに添加した。その後、2.5ml溶出緩衝液(6M尿素、50mMのNaHPO、100mMのNaCl、30mM酢酸、70mM酢酸ナトリウム、pH5.0)への溶出前に、樹脂を、最低でも31.5mlの洗浄緩衝液で洗浄した。溶出した材料を、3つのプール500、700および1300μlに分画した。抗原を含有する700μl画分、ならびにプールした500および1300μl画分を、さらなる使用のために貯蔵した。
【0221】
抗原画分を、リン酸緩衝食塩水(PBS;1.9mMのNaHPO、8.1mMのNaHPO、154mMのNaCl)で1M尿素の最終濃度に希釈し、続いて、7500Daでの分子量カットオフを伴うVivapore10/20ml濃縮装置(Vivascience AG)を使用して、タンパク質濃度を増加するための濃縮工程を行った。製造者の推奨に従って、ウシ血清アルブミン標準を伴うビシンコニン酸(BCA)マイクロアッセイプロトコル(Pierce)を使用して、タンパク質濃度を決定した。タンパク質の品質を、Protein 50もしくは200アッセイ(Agilent Technologies)を使用するBioanalyzer装置上で分析した。
【0222】
b)結果
HMGCR遺伝子の長い転写物(配列番号3)のヌクレオチド2274〜2693に対応し、そして標的タンパク質HMGCR(配列番号2)のアミノ酸742〜881からなるペプチド(配列番号1)をコードする遺伝子フラグメントを、このタンパク質フラグメントに特異的なプライマーを使用するヒトRNAプールからのRT−PCRによって、首尾よく単離した。標的タンパク質(配列番号2)の140アミノ酸フラグメント(配列番号1)は、成熟タンパク質において切断除去されるため、膜貫通領域を含まず、大腸菌(E.coli)における効率的な発現を確実にし、そしていずれのシグナルペプチドも含まないように設計した。加えて、タンパク質フラグメントを、他のヒトタンパク質と低い相同性を有する独特な配列からなり、作製されるアフィニティー試薬の交差反応性を最小限にし、そしてコンフォメーショナルエピトープの形成を可能にし、そしてなお細菌系における効率的なクローニングおよび発現を可能にするのに適切なサイズであるように設計した。
【0223】
正確なアミノ酸配列をコードするクローンを同定し、そして大腸菌(E.coli)での発現時、正確なサイズの単一のタンパク質を産生させ、続いて、固定化金属イオンクロマトグラフィーを使用して、精製した。溶出したサンプルを1M尿素の最終濃度に希釈し、そしてサンプルを1mlに濃縮した後、タンパク質フラグメントの濃度を、11.7mg/mlに決定し、そして純度分析に従って、84.2%純度を得た。
【0224】
2.抗体の作製
a)材料および方法
上記で得られた精製したHMGCRフラグメントを抗原として使用して、国のガイドライン(スウェーデン許可番号A84−02)に従って、ウサギを免疫した。ウサギの筋肉内に、1次免疫化としてフロイント完全アジュバント中200μgの抗原を免疫し、そして4週間間隔で、フロイント不完全アジュバント中100μg抗原で3回ブーストした。
【0225】
免疫動物由来の抗血清を、3工程の免疫アフィニティーに基づくプロトコル(Agaton C et al. (2004) J. Chromatogr. A 1043:33-40;Nilsson P et al. (2005) Proteomics 5:4327-4337)によって精製した。第1の工程では、7mlの全抗血清を、10×PBSで緩衝化して、1×PBS(1.9mMのNaHPO、8.1mMのNaHPO、154mMのNaCl)の最終濃度とし、0.45μmポアサイズフィルター(Acrodisc(登録商標)、Life Science)を使用してろ過し、そしてpAff8cベクターから発現され、そして抗原タンパク質フラグメントについて上記と同じ方法で精製した二重親和性タグタンパク質His−ABP(ヘキサヒスチジルタグおよびアルブミン結合タンパク質タグ)に結合させた5mlのN−ヒドロキシスクシンイミド−活性化SepharoseTM4 Fast Flow(GE Healthcare)を含有するアフィニティーカラムに適用した。第2の工程では、二重親和性タグHis−ABPに対する抗体を枯渇させたフロースルーを、免疫化のために抗原として使用したHMGCRタンパク質フラグメント(配列番号1)に結合させた1mlのHi−Trap NHS−活性化HPカラム(GE Healthcare)上、0.5ml/分の流速で充填させた。His−ABPタンパク質およびタンパク質フラグメント抗原を、製造者によって推奨されるように、NHS活性化マトリックスに結合させた。非結合材料を、1×PBST(1×PBS、0.1%Tween20、pH7.25)で洗浄除去し、そして捕捉された抗体を、低pHグリシン緩衝液(0.2Mグリシン、1mMのEGTA、pH2.5)を使用して、溶出させた。溶出した抗体画分を自動的に回収し、そして第3の工程における効率的な緩衝液交換のために直列に接続した2つの5mlのHiTrapTM脱塩カラム(GE Healthcare)上に充填した。第2および第3の精製工程を、AEKTAxpressTMプラットホーム(GE Healthcare)上で稼動させた。抗原選択的(単一特異的)抗体(msAb)を、−20℃での長期間貯蔵のために、それぞれ、40%および0.02%の最終濃度でグリセロールおよびNaNを補充したPBS緩衝液で溶出させた(Nilsson P et al. (2005) Proteomics 5:4327-4337)。
【0226】
アフィニティー精製した抗体画分の特異性および選択性を、抗原自体および他のタンパク質アレイ設定(Nilsson P et al. (2005) Proteomics 5:4327-4337)における他の383のヒトタンパク質フラグメントに対する結合分析によって、分析した。タンパク質フラグメントを、0.1M尿素および1×PBS(pH7.4)中40μg/mlに希釈し、そしてそれぞれの50μlを、96ウェルスポッティングプレートのウェルに移した。ピン・アンド・リング(pin−and−ring)のアレイヤー(Affymetrix 427)を使用して、タンパク質フラグメントを2回測定でスポットし、そしてエポキシスライド(SuperEpoxy,TeleChem)上に固定化した。スライドを1×PBSで洗浄(5分間)し、次いで、表面を30分間ブロックした(SuperBlock(登録商標)、Pierce)。接着性の16ウェルシリコーンマスク(Schleicher&Schuell)を、単一特異的抗体を添加する(1×PBST中で1:2000に希釈して約50ng/mlにした)前にガラス適用し、そして振盪器上で60分間インキュベートした。各スポットのタンパク質の量を定量するため、親和性タグ特異的IgY抗体を単一特異的抗体と共にインキュベートした。スライドを1×PBSTおよび1×PBSでそれぞれ2回、10分間、洗浄した。第二抗体(Alexa 647とコンジュゲートされたヤギ抗ウサギ抗体およびAlexa 555とコンジュゲートされたヤギ抗ニワトリ抗体、Molecular Probes)を1×PBST中で1:60000に希釈して30ng/mlとし、そして60分間インキュベートした。第1のインキュベーションについて行ったのと同じ洗浄手順を行った後、スライドをスピンして乾燥し、そして走査し(G2565BAアレイスキャナー、Agilent)、その後、画像を、画像分析ソフトウェア(GenePix5.1、Axon Instruments)を使用して、定量した。
【0227】
b)結果
ポリクローナル抗体製剤の品質は、抗体精製におけるストリンジェンシーの程度に依存することが証明され、そして標的タンパク質に由来するものではないエピトープに対する抗体の枯渇が、他のタンパク質との交差反応性およびバックグランド結合を回避するのに必要であることがすでに証明されている(Agaton C et al. (2004) J. Chromatogr. A 1043:33-40)。それ故、タンパク質マイクロアレイ分析を実施して、特異性が高い単一特異的ポリクローナル抗体が、His−タグに対する抗体ならびにABP−タグに対する抗体の枯渇によって作製されたことを確実にした。
【0228】
タンパク質アレイの各スポットにおけるタンパク質の量を定量するため、第1抗体と第二抗体との組み合わせで、2色の染料標識システムを使用した。ニワトリにおいて作製されたタグ特異的IgY抗体を、Alexa555蛍光染料で標識した第二ヤギ抗ニワトリ抗体で検出した。ウサギmsAbとアレイ上のその抗原との特異的結合を、蛍光的にAlexa 647標識ヤギ抗ウサギ抗体で検出した。タンパク質アレイ分析は、HMGCRに対するアフィニティー精製された単一特異的抗体が、正確なタンパク質フラグメントに対して高選択的であり、そしてアレイ上で分析した他のすべてのタンパク質フラグメントに対するバックグランドが極めて低いことを示した。
【0229】
3.免疫組織化学による組織プロファイリング
a)材料および方法
ヒト組織を含有する全部で576のパラフィンコアを、実施例、セクション2で得た単一特異的抗体サンプルを使用して分析した。組織マイクロアレイ(TMA)の生成のためのドナーブロックとして使用する全組織を、地方倫理委員会(local ethical committee)からの認可に従う、Department of Pathology,University Hospital,Uppsalaのアーカイブから選択した。TMA分析に使用するすべての組織切片を調べて、診断を決定し、そしてドナーブロックの代表的領域を選択した。正常組織を、顕微鏡的に正常(非腫瘍性)と定義し、外科的に取り出された腫瘍周辺から回収した標本から選択することが最も多かった。癌組織を診断および分類のために精査した。診断目的で、全組織をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、そして切片化した。
【0230】
TMAの生成を、本質的に、先に記載のように実施した(Kononen J et al. (1998) Nature Med. 4:844-847;Kallioniemi OP et al. (2001) Hum. Mol. Genet. 10:657-662)。簡単に説明すると、レシピエントのTMAブロック内に孔を作製し、そしてドナーブロックから円筒状のコア組織サンプルを取得し、レシピエントのTMAブロック内に配置した。これをBeecher Instrument製の自動化組織アレイヤー(ATA−27、Beecher Instruments(Sun Prairie,CA,USA))内で完全なTMAのデザインが生成されるまで反復した。TMAのレシピエントブロックを、切片化の前に42℃で2時間ベーキングした。
【0231】
TMA:sの設計では、広範囲の代表的な正常組織由来のサンプルを得て、代表的な癌組織を含めることに重点を置いた。このことは、Kampf C et al. (2004) Clin. Proteomics 1:285-300において既に詳述されている。簡単に述べると、48の正常組織由来のサンプルおよび20のヒトに作用する最も一般的な癌タイプ由来のサンプルを選択した。合計で、TMAブロックの8つの異なるデザイン(各々が1mmの直径を有する72の組織コアを含有する)を生成した。TMA:sのうちの2つは正常組織を表し、異なる個体由来の3回測定の48の異なる正常組織に対応するものであった。残りの6つのTMA:sは20の異なる癌タイプ由来の癌組織を表すものであった。癌タイプの20のうちの17については、12の個別に異なる腫瘍を採取し、そして残りの3つの癌タイプについては4つの個別に異なる腫瘍を採取した(すべてを同じ腫瘍から2回測定で)。IHC分析のため、TMAブロックをウォーターフォール・ミクロトーム(waterfall microtome)(Leica)を用いて4μmの厚みで切片化し、SuperFrost(登録商標)(Roche Applied Science)のガラススライド上に置いた。
【0232】
自動化されたIHCを、既に記載のとおりに実施した(Kampf C et al. (2004) Clin. Proteomics 1:285-300)。簡単に述べると、ガラススライドを、60℃で45分間インキュベートし、キシレン中で脱パラフィン処理し(2×15分間)、等級化されたアルコールに水和した。抗原賦活化のために、スライドをTRS(Target Retrieval Solution,pH6.0,DakoCytomation)中に浸漬し、そしてDecloakingチャンバ(登録商標)(Biocare Medical)内、125℃で4分間沸騰させた。スライドを、Autostainer(登録商標)(DakoCytomation)内に置き、そして内因性ペルオキシダーゼを、最初に、H(DakoCytomation)でブロックした。スライドを、実施例、セクション2で得た第一抗体と共に30分間、室温でインキュベートし、続いて、30分間、室温で、ヤギ抗ウサギペルオキシダーゼコンジュゲートEnvision(登録商標)と共にインキュベーションした。すべての工程と工程の間で、スライドを、洗浄緩衝液(DakoCytomation)中で濯いだ。最後に、ジアミノベンジジン(DakoCytomation)を色素原として使用し、そしてHarrisヘマトキシリン(Sigma−Aldrich)を対比染色に使用した。スライドを、Pertex(登録商標)(Histolab)と共にマウントした。
【0233】
8つの異なるTMA:s由来のすべての免疫組織化学的に染色した切片を、ScanScope T2自動化スライド走査システム(Aperio Technologies)を使用して、走査した。8つのTMA:sのすべての内容物を表すために、576のデジタル画像を作成した。走査を20倍の倍率で実施した。元のデータを保存するため、デジタル画像を個別のタグ画像ファイル形式(TIFF)ファイルとして分離および抽出した。ウェブベースのアノテーションシステム内での画像処理を可能にするため、個々の画像をTIFF形式からJPEG形式に圧縮した。免疫組織化学的に染色した組織の全画像を、顕微鏡下で手動で評価し、そして認定された病理専門医または専門教育を受けた人員(その後、病理学者が検証した)によりアノテートした。
【0234】
異なる各正常組織および癌組織のアノテーションを、IHC結果の分類のための簡素化されたスキームを使用して、実施した。各組織における代表性(representativity)および免疫反応性について検査した。各正常組織タイプ内に含まれる異なる組織特異的な細胞タイプを、アノテートした。各癌においては、腫瘍細胞および間質をアノテートした。基本的なアノテーションパラメータは、i)細胞内局在化(核および/または細胞質/膜)、ii)染色強度(SI)およびiii)染色細胞の画分(FSC)の評価を含んだ。染色強度は、臨床組織病理学的診断で使用される基準に従って、主観的に評価し、そして結果を次のように分類した:不在=免疫反応性なし、弱い=僅かな免疫反応性、中等度=中等度の免疫反応性、または強い=明瞭かつ強い免疫反応性。染色細胞の画分を評価し、そして関連する細胞集団の<2%、2〜25%、>25〜75%または>75%の免疫反応性細胞として分類した。免疫反応性細胞の強度および画分の両方に基づき、各組織サンプルについて、「染色スコア」を次のとおりに与えた:0=陰性、1=弱い、2=中等度、および3=強い。N.R.は、代表的な組織が存在しなかったことを意味する。詳細には、次の基準に従って、染色スコアを与えた:SI=不在または弱いかつFSC≦25%である場合、0とした;SI=弱いかつFSC>25%である場合またはSI=中等度かつFSC≦25%である場合、1とした;SI=中等度かつFSC>25%である場合またはSI=強いかつFSC≦25%およびSI=中等度である場合、2とした;ならびに最後に、SI=強いかつFSC>25%である場合、3とした。また、表1も参照のこと。当業者は、この手順がAllredスコアの計算に類似することを理解すべきである(例えば、Allred et al. (1998) Mod Pathol 11(2), 155を参照のこと)。
【0235】
【表1】

【0236】
b)結果
実施例、セクション2において得られたヒト標的タンパク質HMGCRの組み換えタンパク質フラグメントに対して作製された単一特異的抗体による組織プロファイリングの結果は、いくつかの正常組織において特定の免疫反応性を示した。表2は、正常ヒト組織におけるHMGCRタンパク質発現パターンを示す。IHCおよびTMA技術を使用して、48の異なるタイプの正常組織を表す144のスポット(直径1mm)を、HMGCRの発現についてスクリーニングした。ほとんどの組織の細胞質において、主に免疫反応性が観察された。いくつかの症例は、さらなる核または膜の陽性を示した。最も強い染色が、腺上皮において見出された。若干の症例では、代表的な組織が観察されなかった(N.R.)。
【0237】
【表2】

【0238】
【表3】

【0239】
HMGCRタンパク質発現を、様々な癌タイプ由来の組織サンプルにおいてさらに評価した。表3は、12の異なる乳癌組織サンプルにおけるHMGCR発現のレベルを示す。これらのサンプルのすべてが代表的な組織を示し、そして10の組織が、陽性、即ち、0より高い染色スコアを示した。HMGCR発現は、細胞質において観察された。
【0240】
【表4】

【0241】
4.無作為化閉経期前のコホートTMA
a)材料および方法
1984年〜1991年の間、スウェーデンの南部および東南部領域における原発性乳癌を有する564例の閉経期前の女性を、多施設臨床治験に登録し、そして無作為に、2年間のアジュバントタモキシフェン(n=276)またはコントロールグループ(n=288)のいずれかに振り分けた。コントロールグループには、アジュバント内分泌処置、即ち、タモキシフェンを投与しなかった。参加基準は、非定型的乳房切除術または腋窩リンパ節郭清を伴う乳房温存手術によって処置したステージII(pT2 N0 M0、pT1〜2 N1 M0)浸潤性乳癌の閉経期前患者、または50歳未満の患者であった。術後放射線療法(50Gy)を、乳房温存手術後に行い、そしてすべてのリンパ節陽性患者に局所領域放射線療法を施行した。アジュバント全身化学療法を施行した患者は2%未満であった。乳癌事象を伴わない患者の追跡期間中央値は、13.9年であった。診断時の年齢の中央値は、45(25〜57)歳であった。研究デザインについては、他で詳述されている(Ryden L et al, Eur J Cancer, 2005, 41(2): 256-64)。倫理的許可は、Lund and Linkoeping Universitiesの地方倫理委員会(Local Ethics Committees)から得た。
【0242】
564例の患者のうち500例の組織ブロックを、TMA−構築のために回収することができた。すべての症例を、ヘマトキシリンおよびエオシン染色スライドについて、組織病理学的に再評価した。TMA:sを、手動のアレイデバイス(MTA−1,Beecher Inc,(WI,USA))を使用して、浸潤性癌の代表的領域から1症例あたり2×0.6mmのコアを採取することによって、構築した。4μmの切片を乾燥し、脱パラフィン処理し、そしてPT−リンクシステム(DAKO,(Copenhagen,Denmark))を使用して前処理し、次いで、Techmate 500(DAKO,(Copenhagen,Denmark))中、1:250に希釈したポリクローナル抗HMGCR抗体(カタログ番号07−457,Upstate)で染色したが、この抗体は、配列番号4からなるペプチドと選択的に相互作用する。ERおよびPRのIHC染色については、予め実施しておいた。現在の臨床的実践に沿って、10%陽性の核におけるカットオフを使用して、ホルモン受容体の陽性を定義した。
【0243】
統計分析のために、上記の実施例、セクション3の記載に沿って、細胞質強度(CI)レベルを評価した。細胞質の染色強度のレベルは、臨床組織病理学的診断で使用される基準に従って、主観的に評価し、そして結果を次のように分類する:不在=免疫反応性なし、弱い=僅かな免疫反応性、中等度=中等度の免疫反応性、または強い=明瞭かつ強い免疫反応性。異なるすべての層に対する生存率の傾向に基づいて、さらなる統計分析のために、二分類の変数を構築した。次の2つのカテゴリーを定義した:CI=弱い、中等度および強いに対応する「HMGCR高」、ならびにCI=不在に対応する「HMGCR低」。サンプルのこの分類を、Kaplan−Meier推定量に従って、RFS分析に使用し、そしてログランク検定を使用して、異なる層における生存率を比較した。ERおよびPR陰性は、スウェーデンにおける現在の臨床ガイドラインに従って、<10%陽性染色の核として定義した。すべての統計的検定は、両側検定であり、そして<0.05のp値を有意とみなした。すべての計算は、統計パッケージSPSS17.0(SPSS Inc.(Illinois,USA))により行った。
【0244】
b)結果
本結果セクションでは、「HMGCR」は、HMGCRタンパク質を指す。本研究では、423の腫瘍についてHMGCR発現の免疫組織化学的分析を実施することができた。残りのコアは、浸潤性癌を含有しないか、または組織処理中に失われたかのいずれかであった。423の分析した腫瘍のうち、324の腫瘍はER陽性(即ち、ERα+)であり、>10%ER核画分として定義されたが、この画分は、ホルモン受容体評価に使用される臨床的に確立されたカットオフに沿っている。
【0245】
タモキシフェンで処置した患者およびアジュバント内分泌療法を施行しなかったコントロールグループの患者における高いまたは低いHMGCRタンパク質レベルに基づく無再発生存率(RFS)の分析を、それぞれ、図1aおよび1bに示す。この分析は、図1aに示すように、HMGCR低カテゴリーよりもHMGCR高カテゴリーに対してより有意に良好なRFSを示す(p=0.001)。
【0246】
タモキシフェン処置患者およびコントロールグループのER陽性患者における高または低HMGCRレベルに基づくRFSの分析を、それぞれ、図2aおよび2bに示す。この分析は、図2aに示すように、タモキシフェン処置被験体のHMGCR高カテゴリーに対して、有意に良好なRFSを示す。
【0247】
本コホートにおけるタモキシフェン応答に対するHMGCRの見掛けの影響に照らして、HMGCRタンパク質発現状態およびER状態の異なる組み合わせを有する層におけるRFSに対する影響について分析した。簡単に説明すると、すべての被験体を、HMGCRおよびER状態に基づいて4つのグループ、即ち、HMGCR陽性かつER陽性である被験体、HMGCR陽性かつER陰性である被験体、HMGCR陰性かつER陽性である被験体ならびにHMGCR陰性かつER陰性である被験体に分割する。分析は、これらの層が、タモキシフェン処置コホートにおけるRFSの差異に関連することを示した(p=0.001)(図3a)。しかし、非処置コホートでは、層間に極めて小さな差異が観察された(図3b)。意外なことに、図3aに例示されるように、HMGCR陽性かつER陰性患者は、処置コホートにおいて、HMGCR陰性かつER陽性患者より良好な結果を示した。
【0248】
それ故、タモキシフェン応答に対するHMGCR発現の好適な効果が実証された。さらに、タモキシフェンに応答し得るER陰性患者のグループが同定される。結果的に、HMGCRタンパク質は、ERに対する代替物または補完物であり得る内分泌処置マーカーである。
【0249】
次に、タモキシフェンで処置したリンパ節陽性患者におけるHMGCR発現とRFSとの間の関係について調べた。これは、HMGCR発現が、タモキシフェンを投与したリンパ節陽性患者におけるRFSの改善(p=0.001)と関連することを示した(図4a)。同じサブグループのER陽性被験体を分析した場合、同様の結果が得られた(図5a)。リンパ節転移陰性サブグループのHMGCR陽性被験体についてより良好な生存率の傾向が観察された(図4bおよび5b)が、これらのサブグループが含有する患者数が少な過ぎたため、統計的に有意な結果を得ることができなかった。タモキシフェン処置被験体における異なる組み合わせのHMGCR発現およびER状態を伴う層におけるリンパ節状態に基づくRFSに対する影響を、分析した。リンパ節転移陽性、タモキシフェン処置被験体では、HMGCR/ER状態は、リンパ節陰性タモキシフェン処置患者(図6b)と比べて、RFSに対して有意に高い影響を及ぼした(p=0.000)(図6a)。リンパ節転移陽性被験体に関して、HMGCR陽性かつER陰性患者は、処置コホートにおいてHMGCR陰性かつER陽性患者より良好な結果を示した(図6a)。
【0250】
HMGCR陽性であるタモキシフェン処置被験体かつER陰性被験体の生存率に対する影響を、図7により詳細に示す。ER陰性被験体におけるHMGCRレベルに基づくRFSに対するポジティブな効果を図7aに示し、そして図7bに示されるように、その効果は、リンパ節陽性患者においてさらに増強されるようである。
【0251】
パラメータを変更し、そしてER状態に関係なく、RFS分析が、HMGCR高または低被験体のタモキシフェン処置に基づく場合、結果は、HMGCR低腫瘍を伴う患者とは対照的に、HMGCR高腫瘍を伴う患者のタモキシフェン処置時に有意に改善された生存率を示し(図8a)、ここで、タモキシフェン処置は、生存率に影響を及ぼさなかった(図8b)。
【0252】
タモキシフェン処置時における生存率の改善はまた、図9aに示されるように、HMGCR陽性かつER陰性被験体を分析する場合にも観察された。その傾向は、図9bに示されるように、リンパ節陽性患者においてさらに増強されるようである。図8および9の結果は、さらに、HMGCR陽性被験体がタモキシフェン処置から利益を得ること、およびそのような利益はまた、既にタモキシフェンに対して非応答性であるとみなされていたER陰性患者のサブグループのHMGCR陽性被験体においても認められることを支持する。
【0253】
乳癌被験体を、それぞれ、HMGCR陽性またはER陽性、およびHMGCR陰性かつER陰性に分割する場合、前者のグループでは、タモキシフェン処置の有意にポジティブな効果が観察されたが、後者では、ポジティブな効果は観察されなかった(それぞれ、10aおよび10b)。
【0254】
文献では、PRは、内分泌処置予測におけるERに対する代替物または補完物として提唱されている。従って、そのHMGCR状態との関係について調べた。PR陽性かつHMGCR陽性被験体は、タモキシフェン処置に対して有意な応答を示したが、PR陰性かつHMGCR陰性被験体のグループでは、応答は観察されなかった(それぞれ、11aおよび11b)。HMGCR陽性かつPR陰性被験体のグループでは、生存率に対するタモキシフェンの影響の傾向を観察することができる(図12)。おそらく、このグループでは患者数が少な過ぎたため、傾向は統計的に有意ではない。
【0255】
乳癌患者が内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかの決定および前記患者の処置
5)非制限的例
乳癌患者は、明白なしこり/腫瘍、乳頭からの分泌物または皮膚変形のような症状または徴候を呈し得る。一般的に症状を伴わない乳癌の割合はまた、マンモグラフィーをスクリーニングすることによっても検出される。それらの試験が診断に対して決定的でない場合、乳腺生検を実施することができる(即ち、疑わしい腫瘍からの組織の選択された物理的片の取り出し)。
【0256】
乳癌の診断後、腫瘍は、通常、手術によって(例えば、乳房切除術または部分的乳房切除術によって)取り出される。
【0257】
処置予測方法を実施するために、腫瘍組織サンプルを入手する。腫瘍組織サンプルは、腫瘍のより早期の外科的切除からの標本または癌の診断中により早期に実施された生検から得ることができる。
【0258】
陰性HMGCR染色を示す対照サンプル(陰性対照)を供給するために、材料は、HMGCR発現がない組織、例えば、検出可能なHMGCRタンパク質発現を欠く組織を含むアーカイブ材料から採取される。陰性対照は、細胞質強度が不在であり得る。
【0259】
高いHMGCR染色を示す対照サンプル(陽性対照)を供給するために、材料は、HMGCR発現が高い組織、例えば、予め確立された高いHMGCRタンパク質発現を有する乳癌組織から採取される。陽性対照は、強い細胞質強度を示し得る。
【0260】
材料(腫瘍組織サンプルおよび対照サンプル)を、緩衝ホルマリン中に固定化し、そして薄切片(4μm)を得るために、組織学的に処理する。あるいは、対照サンプルを調製してもよく、例えば、既に緩衝ホルマリン中に既に固定化されているか、または既にスライド上にマウントされている(以下を参照のこと)。
【0261】
免疫組織化学は、実施例、セクション3に記載のように実施される。各サンプル由来の1つ以上のサンプル切片をガラススライド上にマウントし、これを、45分間、60℃でインキュベートし、キシレン中で脱パラフィン処理し(2×15分間)、そして等級化されたアルコールに水和する。抗原賦活化のために、スライドをTRS(Target Retrieval Solution,pH6.0,DakoCytomation)中に浸漬し、そしてDecloakingチャンバ(登録商標)(Biocare Medical)内、125℃で4分間沸騰させる。次いで、スライドを、Autostainer(登録商標)(DakoCytomation)内に置き、そして内因性ペルオキシダーゼを、最初に、H2O2(DakoCytomation)でブロックする。複数のサンプル切片をマウントする理由は、結果の確度を増加することができるからである。
【0262】
第一HMGCR特異的抗体(例えば、実施例、セクション2または4の抗HMGCR抗体)をスライドに添加し、次いで、30分間、室温でインキュベートし、続いて、標識された第二抗体(例えば、ヤギ抗ウサギペルオキシダーゼコンジュゲートEnvision(登録商標))と共に30分間、室温でインキュベーションする。第二抗体を検出するために、ジアミノベンジジン(DakoCytomation)を色素原として使用し、Harrisヘマトキシリン(Sigma−Aldrich)対比染色で対比させる。すべての工程と工程の間で、スライドを、洗浄緩衝液(DakoCytomation)中で濯ぐ。次いで、スライドを、Pertex(登録商標)(Histolab)と共にマウントする。
【0263】
染色手順を確認するためのツールとして、2つのコントロール細胞系統を使用してもよい;例えば、HMGCRを発現する細胞(陽性細胞系統)を有する1つのスライドおよびHMGCR発現を伴わない細胞(陰性細胞系統)を有する1つのスライド。当業者は、例えば、Rhodes et al. (2006) The biomedical scientist, p 515-520の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。コントロール系統のスライドは、乳癌スライドと同じ手順で同時に染色され得、即ち、同じ第一および第二抗体と共にインキュベートされる。
【0264】
デジタル画像を得るために、乳癌腫瘍スライド、対照スライド、および場合により、コントロール細胞系統を有するスライドを、ScanScope T2自動化スライド走査システム(Aperio Technologies)を20倍の倍率で使用して、光学顕微鏡下で走査してもよい。しかし、この走査工程は、必ずしも必要ではないが、例えば、スライドの調製および染色、ならびに細胞質強度の評価(以下を参照のこと)が、異なる局在においてかまたは異なるヒトによって実施される場合、手順をより容易にすることができる。
【0265】
コントロール細胞系統を使用する場合、染色手順を確認するために、これらについて調べる。細胞系統が許容できる基準外の染色結果、例えば、当業者によって認識される染色人工物を示す場合、スライドの染色は脆弱であるとみなされ、そして染色手順全体が、新たなスライドで反復される。陽性細胞系統および陰性細胞系統が、それぞれ、強い染色強度を示し、そして染色強度を示さない場合、染色は確認されたとみなされる。
【0266】
腫瘍サンプル由来の染色されたサンプルスライドは、手動で目視検査により評価され、そして乳癌スライドの細胞質強度(CI)は、実施例、セクション3に記載のように、格付けされる。
【0267】
格付けでは、細胞質強度(CI)は、主観的に、次のように分類される:不在=免疫反応性なし、弱い=僅かな免疫反応性、中等度=中等度の免疫反応性、または強い=明瞭かつ強い免疫反応性。
【0268】
評価を実施し、そして格付けする者は、染色された陽性および陰性対照スライドの目視検査によって補助される。
【0269】
対照値は、不在のCIであってもよく、その場合、被験体から誘導されるサンプル値が不在のCIより高い場合、即ち、サンプル値が弱い、中等度のまたは強いCIである場合、問題の患者は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付けられる。
【0270】
上記の結論により、医師は、内分泌処置を適用することができる。しかし、場合によって、そのような決定は、いくつかのパラメータに依存し得る。いずれにせよ、患者がHMGCR陽性であるという事実は、患者を内分泌処置、特に、タモキシフェン処置で処置する決定に好適である。
【0271】
刊行物、DNAまたはタンパク質データの入力、および特許を含むが、これらに限定されない本出願において言及した引用したすべての材料は、本明細書において、参照により援用される。
【0272】
本発明を上記のように説明してきたが、本発明は、多くの方法で改変することができることは明らかであろう。そのような改変は、本発明の趣旨および範囲から逸脱するものと認識されるべきではなく、そのようなすべての変更は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法であって、以下の工程:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程
を含む、方法。
【請求項2】
乳癌を有する哺乳動物被験体のための非処置ストラテジー方法であって:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d)内分泌処置による前記被験体の処置を中断する工程
を含む、方法。
【請求項3】
前記乳癌はER陰性またはPR陰性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記乳癌はER陰性である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法であって、以下の工程:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程c)において得られるサンプル値と対照値とを比較し、それによって、前記被験体のHMGCR状態を決定する工程;
d)前記被験体のER状態を得る工程;および
前記ER状態または前記HMGCR状態が陽性である場合、
e1)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程、あるいは
前記ER状態および前記HMGCR状態が陰性である場合、
e2)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性がないと結論付ける工程
を含む、方法。
【請求項6】
ER状態は、工程a)のサンプルから得られる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記内分泌処置は、SERM処置、アロマターゼ阻害剤処置、およびステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニスト処置から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記内分泌処置はSERM処置であり、そして前記SERMは、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンおよびタモキシフェンから選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記内分泌処置はタモキシフェン処置である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルは体液サンプルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
体液は、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿および滲出物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルは細胞学的サンプルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルは糞便サンプルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルは、前記被験体由来の細胞を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルは、前記被験体由来の腫瘍細胞を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルは組織サンプルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記組織サンプルは乳癌組織サンプルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程b)の評価は、前記サンプルの細胞の細胞質に限定される、請求項14〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記サンプルの細胞は腫瘍細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記被験体はヒト女性である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記被験体は閉経期前の女性である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記乳癌はステージIIの乳癌である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記乳癌はリンパ節転移陽性乳癌である、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対照値は、対照サンプル中のHMGCRタンパク質の量に対応する値である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
工程b)の前記サンプル値は、前記サンプルにおいて検出可能なHMGCRタンパク質が認められることに対応する1、または前記サンプルにおいて検出可能なHMGCRタンパク質が認められないことに対応する0のいずれかとして決定される、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
工程c)の前記対照値は、検出可能なHMGCRタンパク質が認められない対照サンプルに対応する、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程c)の前記対照値は0である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対照値は、細胞質画分、細胞質強度、細胞質画分および細胞質強度の関数、核画分、核強度ならびに核画分および核強度の関数からなる群から選択される、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記対照値は、細胞質画分、細胞質強度ならびに細胞質画分および細胞質強度の関数からなる群から選択される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対照値は、50%以下のHMGCRタンパク質陽性細胞の細胞質画分である、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記対照値は、25%以下のHMGCRタンパク質陽性細胞の細胞質画分である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対照値は、10%以下のHMGCRタンパク質陽性細胞の細胞質画分である、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対照値は、HMGCRタンパク質発現の弱い細胞質強度以下である、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対照値は、HMGCRタンパク質発現の細胞質強度が不在である、請求項1〜29および33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対照値は、25%以下のHMGCRタンパク質の細胞質画分またはHMGCRタンパク質発現の弱い細胞質強度以下である、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
HMGCRタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含む、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
HMGCRタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含む、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
工程b)は:
b1)前記サンプルに、評価しようとするHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能である定量可能な親和性リガンドを適用する工程であって、前記適用は、前記サンプルに存在する任意のHMGCRタンパク質への前記親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される工程;
b2)非結合親和性リガンドを取り出す工程;および
b3)前記サンプルとの会合において残留する親和性リガンドを定量して、前記量を評価する工程
を含む、請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記定量可能な親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1を含むタンパク質で動物を免疫する工程を含むプロセスによって入手可能である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列がアミノ酸配列番号1からなるタンパク質で動物を免疫する工程を含むプロセスによって入手可能である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記定量可能な親和性リガンドは、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカルヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインおよびジンクフィンガーからなる群から選択される足場から誘導されるタンパク質リガンドである、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記定量可能な親和性リガンドはオリゴヌクレオチド分子である、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1または配列番号4の配列からなるHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項38〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記定量可能な親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む、請求項38〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記定量可能な親和性リガンドは、前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを使用して、検出される、請求項38〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記2次親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
a)HMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;および
b)前記定量可能な親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬
を含む、請求項1〜47のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項49】
前記定量可能な親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1を含むタンパク質で動物を免疫する工程を含むプロセスによって入手可能である、請求項49に記載のキット。
【請求項51】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1からなるタンパク質で動物を免疫する工程を含むプロセスによって入手可能である、請求項49に記載のキット。
【請求項52】
前記定量可能な親和性リガンドは、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカルヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインおよびジンクフィンガーからなる群から選択される足場から誘導されるタンパク質リガンドである、請求項48のいずれか一項に記載のキット。
【請求項53】
前記定量可能な親和性リガンドはオリゴヌクレオチド分子である、請求項48のいずれか一項に記載のキット。
【請求項54】
前記定量可能な親和性リガンドは:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含むか、またはそれからなるHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項48〜53のいずれか一項に記載のキット。
【請求項55】
前記定量可能な親和性リガンドは:
i)配列番号2;および
配列番号2に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含むか、またはそれからなるHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項48〜54のいずれか一項に記載のキット。
【請求項56】
前記定量可能な親和性リガンドは、配列番号4を含むか、またはそれからなるHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項48〜55のいずれか一項に記載のキット。
【請求項57】
前記定量可能な親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む、請求項48〜56のいずれか一項に記載のキット。
【請求項58】
前記定量可能な親和性リガンドの前記量を定量するのに必要な前記試薬は、前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを含む、請求項48〜57のいずれか一項に記載のキット。
【請求項59】
前記2次親和性リガンドは、蛍光染料または金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む、請求項58に記載のキット。
【請求項60】
対照値の供給のための少なくとも1つの対照サンプルをさらに含む、請求項48〜59のいずれか一項に記載のキット。
【請求項61】
少なくとも1つの対照サンプルは、検出可能なHMGCRタンパク質を含まない組織サンプルである、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
少なくとも1つの対照サンプルはHMGCRタンパク質を含む、請求項60または61に記載のキット。
【請求項63】
少なくとも1つの対照サンプルは、50%以下の細胞質画分に対応するHMGCRタンパク質の量を含む、請求項60〜62のいずれか一項に記載のキット。
【請求項64】
少なくとも1つの対照サンプルは、25%以下の細胞質画分に対応するHMGCRタンパク質の量を含む、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
少なくとも1つの対照サンプルは、10%以下の細胞質画分に対応するHMGCRタンパク質の量を含む、請求項64に記載のキット。
【請求項66】
少なくとも1つの対照サンプルは、1%以下の細胞質画分に対応するHMGCRタンパク質の量を含む、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
少なくとも1つの対照サンプルは、弱い細胞質強度以下に対応するHMGCRタンパク質の量を含む、請求項60〜66のいずれか一項に記載のキット。
【請求項68】
少なくとも1つの対照サンプルは、細胞質強度の不在に対応するHMGCRタンパク質の量を含む、請求項67に記載のキット。
【請求項69】
少なくとも1つの対照サンプルは、前記対照値より高い値に対応するHMGCRタンパク質の量を含む、請求項60〜68のいずれか一項に記載のキット。
【請求項70】
少なくとも1つの対照サンプルは、強い細胞質強度に対応するHMGCRタンパク質の量を含む、請求項69に記載のキット。
【請求項71】
少なくとも1つの対照サンプルは、75%以上の細胞質画分に対応するHMGCRタンパク質の量を含む、請求項69または70に記載のキット。
【請求項72】
対照値より高い値(陽性対照値)に対応するHMGCRタンパク質の量を含む第1の対照サンプル;および
前記対照値以下の値(陰性対照値)に対応するHMGCRタンパク質の量を含む第2の対照サンプル
を含む、請求項60〜71のいずれか一項に記載のキット。
【請求項73】
対照サンプルは組織サンプルである、請求項60〜72のいずれか一項に記載のキット。
【請求項74】
a’)エストロゲン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;および
b’)a’)の定量可能な親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬
をさらに含む、請求項48〜73のいずれか一項に記載のキット。
【請求項75】
a’’)プロゲステロン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;および
b’’)a’’)の定量可能な親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬
をさらに含む、請求項48〜74のいずれか一項に記載のキット。
【請求項76】
乳癌を有する哺乳動物被験体に対する内分泌処置適応マーカーとしてのHMGCRタンパク質の使用。
【請求項77】
乳癌を有する哺乳動物被験体に対する内分泌処置適応因子の製造におけるHMGCRタンパク質、またはその抗原活性なフラグメントの使用。
【請求項78】
乳癌を有する哺乳動物被験体に対する内分泌処置適応因子の産生、選択もしくは精製のためのHMGCRタンパク質、またはその抗原活性なフラグメントの使用。
【請求項79】
前記内分泌処置適応因子は、HMGCRタンパク質、またはその抗原活性なフラグメントとの選択的相互作用が可能な親和性リガンドである、請求項78に記載の使用。
【請求項80】
親和性リガンドは、配列番号1からなるタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項79に記載の使用。
【請求項81】
HMGCRタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含むか、またはそれからなる、請求項76〜80のいずれか一項に記載の使用。
【請求項82】
HMGCRタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含むか、またはそれからなる、請求項76〜80のいずれか一項に記載の使用。
【請求項83】
乳癌を有する哺乳動物被験体において内分泌処置適応因子としてインビボで使用するためにHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンド。
【請求項84】
乳癌を有する被験体におけるHMGCRタンパク質の量をインビボで評価するためにHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンド。
【請求項85】
アミノ酸配列が配列番号1を含むタンパク質で動物を免疫する工程を含むプロセスによって入手可能である、請求項83または84に記載の親和性リガンド。
【請求項86】
アミノ酸配列が配列番号1からなるタンパク質で動物を免疫する工程を含むプロセスによって入手可能である、請求項85に記載の親和性リガンド。
【請求項87】
配列番号1からなるポリペプチドとの選択的相互作用が可能である、請求項83〜86のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項88】
配列番号4からなるポリペプチドとの選択的相互作用が可能である、請求項83〜86のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項89】
乳癌を有する哺乳動物被験体に対する内分泌処置適応因子としての請求項83〜88のいずれか一項に記載の親和性リガンドのインビトロでの使用。
【請求項90】
乳癌を有する哺乳動物被験体が内分泌処置から利益を得るかどうかを示すための請求項83〜88のいずれか一項に記載の親和性リガンドのインビトロでの使用。
【請求項91】
乳癌を有する哺乳動物被験体に対する内分泌処置適応因子の製造における請求項83〜88のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。
【請求項92】
前記被験体はHMCGR陽性である、乳癌を有する哺乳動物被験体の処置に使用するための内分泌処置製品。
【請求項93】
前記乳癌はER陰性またはPR陰性である、請求項92に記載の内分泌処置製品。
【請求項94】
タモキシフェンである、請求項92または93に記載の内分泌処置製品。
【請求項95】
乳癌を有する哺乳動物被験体の処置のための医薬品の製造における内分泌処置製品の使用であって、前記被験体はHMCGR陽性である、使用。
【請求項96】
前記乳癌はER陰性またはPR陰性である、請求項95に記載の使用。
【請求項97】
内分泌処置製品はタモキシフェンである、請求項95または96に記載の使用。
【請求項98】
内分泌処置製品およびスタチンを含む、キット・オブ・パーツ。
【請求項99】
処置に使用するための請求項98に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項100】
乳癌治療に使用するための請求項99に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項101】
治療における同時、個別または連続使用のための組み合わせ製剤として内分泌処置製品およびスタチンを含む製品。
【請求項102】
乳癌治療における同時、個別または連続使用のための組み合わせ製剤として内分泌処置製品およびスタチンを含む製品。
【請求項103】
処置を必要とする哺乳動物被験体の処置の方法であって、ここで、前記被験体は乳癌を有し、以下の工程:
a)前記被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d)内分泌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程
を含む、方法。
【請求項104】
前記乳癌はER陰性またはPR陰性である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記乳癌はER陰性である、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
処置を必要とする哺乳動物被験体の処置の方法であって、ここで、前記被験体は乳癌を有し、以下の工程:
a)前記被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するHMGCRタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程c)において得られるサンプル値と対照値とを比較し、それによって、前記被験体のHMGCR状態を決定する工程;
d)前記被験体のER状態を得る工程;および
前記ER状態または前記HMGCR状態が陽性である場合、
e1)内分泌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程、または
前記ER状態および前記HMGCR状態が陰性である場合、
e2)非内分泌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程
を含む、方法。
【請求項107】
ER状態は、工程a)のサンプルから得られる、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記内分泌処置は、SERM処置、アロマターゼ阻害剤処置、およびステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニスト処置から選択される、請求項103〜107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記内分泌処置はSERM処置であり、そして前記SERMは、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンおよびタモキシフェンから選択される、請求項103〜108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記内分泌処置はタモキシフェン処置である、請求項103〜109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記サンプルは体液サンプルである、請求項103〜110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
体液は、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿および滲出物からなる群から選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記サンプルは細胞学的サンプルである、請求項103〜110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記サンプルは糞便サンプルである、請求項103〜110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記サンプルは、前記被験体由来の細胞を含む、請求項103〜114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記サンプルは、前記被験体由来の腫瘍細胞を含む、請求項103〜115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記サンプルは組織サンプルである、請求項103〜110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記組織サンプルは乳癌組織サンプルである、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
工程b)の評価は、前記サンプルの細胞の細胞質に限定される、請求項115〜118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記サンプルの細胞は腫瘍細胞である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記被験体はヒト女性である、請求項103〜120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
前記被験体は閉経期前の女性である、請求項103〜121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記乳癌はステージIIの乳癌である、請求項103〜122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記乳癌はリンパ節転移陽性乳癌である、請求項103〜123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記対照値は、対照サンプル中のHMGCRタンパク質の量に対応する値である、請求項103〜124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
工程b)の前記サンプル値は、前記サンプルにおいて検出可能なHMGCRタンパク質が認められることに対応する1、または前記サンプルにおいて検出可能なHMGCRタンパク質が認められないことに対応する0のいずれかとして決定される、請求項103〜125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
工程c)の前記対照値は、検出可能なHMGCRタンパク質が認められない対照サンプルに対応する、請求項103〜126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
工程c)の前記対照値は0である、請求項103〜127のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
前記対照値は、細胞質画分、細胞質強度、細胞質画分および細胞質強度の関数、核画分、核強度ならびに核画分および核強度の関数からなる群から選択される、請求項103〜128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記対照値は、細胞質画分、細胞質強度ならびに細胞質画分および細胞質強度の関数からなる群から選択される、請求項103〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記対照値は、50%以下のHMGCRタンパク質陽性細胞の細胞質画分である、請求項103〜130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記対照値は、25%以下のHMGCRタンパク質陽性細胞の細胞質画分である、請求項103〜131のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記対照値は、10%以下のHMGCRタンパク質陽性細胞の細胞質画分である、請求項103〜132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記対照値は、HMGCRタンパク質発現の弱い細胞質強度以下である、請求項103〜130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
前記対照値は、HMGCRタンパク質発現の細胞質強度が不在である、請求項103〜130および134のいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
前記対照値は、25%以下のHMGCRタンパク質の細胞質画分またはHMGCRタンパク質発現の弱い細胞質強度以下である、請求項103〜130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
HMGCRタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含む、請求項103〜136のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
HMGCRタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含む、請求項103〜136のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
工程b)は:
b1)前記サンプルに、評価しようとするHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能である定量可能な親和性リガンドを適用する工程であって、前記適用は、前記サンプルに存在する任意のHMGCRタンパク質への前記親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される工程;
b2)非結合親和性リガンドを取り出す工程;および
b3)前記サンプルとの会合において残留する親和性リガンドを定量して、前記量を評価する工程
を含む、請求項103〜138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記定量可能な親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1を含むタンパク質で動物を免疫する工程を含むプロセスによって入手可能である、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列がアミノ酸配列番号1からなるタンパク質で動物を免疫する工程を含むプロセスによって入手可能である、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記定量可能な親和性リガンドは、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカルヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインおよびジンクフィンガーからなる群から選択される足場から誘導されるタンパク質リガンドである、請求項139に記載の方法。
【請求項144】
前記定量可能な親和性リガンドはオリゴヌクレオチド分子である、請求項139に記載の方法。
【請求項145】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1または配列番号4の配列からなるHMGCRタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項139〜144のいずれか一項に記載の方法。
【請求項146】
前記定量可能な親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む、請求項139〜145のいずれか一項に記載の方法。
【請求項147】
前記定量可能な親和性リガンドは、前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを使用して、検出される、請求項139〜146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記2次親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能である、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
処置を必要とする哺乳動物被験体の処置の方法であって、前記被験体は乳癌を有し、スタチンおよび内分泌処置製品の同時、個別または連続投与を含む、方法。
【請求項150】
内分泌処置製品はSERMである、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
内分泌処置製品はタモキシフェンである、請求項149または150に記載の方法。
【請求項152】
前記スタチンは、親油性/疎水性スタチンまたは疎水性スタチンである、請求項149〜151のいずれか一項に記載の方法。
【請求項153】
前記スタチンは、フルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチンおよびセリバスタチンから選択される親油性/疎水性スタチンである、請求項152に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−525105(P2011−525105A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509434(P2011−509434)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/SE2009/000066
【国際公開番号】WO2009/139681
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(508178490)アトラス・アンティボディーズ・アクチボラゲット (11)
【氏名又は名称原語表記】Atlas Antibodies AB
【Fターム(参考)】