I−III−VI2ナノ粒子の製造方法及び多結晶光吸収層薄膜の製造方法
【課題】均一な大きさのI-III-VI2ナノ粒子前駆体をより環境に優しく、かつ容易な方法で合成し、これを基板に蒸着させて薄膜を形成した後、熱処理して所望する組成の太陽電池用光吸収層をより簡便に製造できる方法を提供する。
【解決手段】本発明はI-III-VI2ナノ粒子の製造方法及び多結晶光吸収層薄膜の製造方法に関する。本発明のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法は、(a1)I族原料、III族原料及びVI族原料を溶媒と共に混合して混合溶液を製造する段階と、(a2)前記混合溶液を超音波処理する段階と、(a3)前記超音波処理された混合溶液から溶媒を分離する段階と、(a4)前記(a3)段階から得られた結果物を乾燥させてナノ粒子を得る段階とを含む。本発明によれば、超音波を用いた破砕分散を通じて均一な大きさのI-III-VI2ナノ粒子前駆体を合成し、薄膜を製造した後、熱処理工程などを通じて容易に所望する造成の多結晶光吸収層薄膜を得ることができる。また、本発明によれば、既存の酸素除去工程が不要であるため、従来の製造工程を簡素化でき、製造コストを大幅に低減できるものと期待される。
【解決手段】本発明はI-III-VI2ナノ粒子の製造方法及び多結晶光吸収層薄膜の製造方法に関する。本発明のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法は、(a1)I族原料、III族原料及びVI族原料を溶媒と共に混合して混合溶液を製造する段階と、(a2)前記混合溶液を超音波処理する段階と、(a3)前記超音波処理された混合溶液から溶媒を分離する段階と、(a4)前記(a3)段階から得られた結果物を乾燥させてナノ粒子を得る段階とを含む。本発明によれば、超音波を用いた破砕分散を通じて均一な大きさのI-III-VI2ナノ粒子前駆体を合成し、薄膜を製造した後、熱処理工程などを通じて容易に所望する造成の多結晶光吸収層薄膜を得ることができる。また、本発明によれば、既存の酸素除去工程が不要であるため、従来の製造工程を簡素化でき、製造コストを大幅に低減できるものと期待される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はI-III-VI2ナノ粒子の製造方法及び多結晶光吸収層薄膜の製造方法に関し、超音波を用いて化合物半導体であるI-III-VI2ナノ粒子を合成し、これを用いて太陽電池用多結晶光吸収層薄膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CuInSe2に代表されるI-III-VI2族カルコパイライト(chalcopyrite)系化合物半導体は、直接遷移型エネルギーバンドギャップ(band gap)を有しており、光吸収系数が非常に高く、数マイクロメートルの薄膜でも高効率の太陽電池の製造が可能であり、優れた電気光学的安全性を有しており、太陽電池の光吸収層の材料として非常に理想的な化合物である。特に、Cu(In、Ga)Se2太陽電池は薄膜型太陽電池のうち、エネルギー効率(NREL、>19%)が最も高く、既存のシリコン基盤の太陽電池に比べて価格競争力が高いことから、既存の高価な結晶質シリコン太陽電池に取って代わることのできる薄膜型太陽電池として浮上している。しかしながら、このようなカルコパイライト系化合物は、多元化合物(multinary compound)であるため、製造工程が非常に難しい。従って、カルコパイライト系化合物に基づく太陽電池が化石燃料と競争するためには、工程の改善を通じた持続的な生産コストの下落が課題となっている。
【0003】
CuInSe2化合物は、太陽電池の理想的なバンドギャップ(1.4eV)に若干満たない1.04eVのエネルギーバンドギャップを有しているため、これに基づく太陽電池の短絡電流(Jσχ、short-circuit current)は比較的に高いが、開放電圧(Voχ、open-circuit voltage)は相対的に低い方である。従って、開放電圧を高めるためにインジウム(In)の一部をガリウム(Ga)に置換したり、セレニウム(Se)の一部を硫黄(S)に置換することもあるが、構成成分によって、CuInSe2(CIS)、CuGaSe2(CGS)、Cu(In、Ga)Se2(CIGS)、CuInS2、CuGaS2、Cu(in、Ga)S2、CuIn(Se、S)2(CISS)、CuGa(Se、S)2(CGSS)及びCu(In、Ga)(Se、S)2(CIGSS)で表し、包括的にCIS系太陽電池と表現する。CIS系太陽電池は、一般にガラスを基板として5個の単位薄膜である背面電極、光吸収層、バッファ層、前面透明電極、反射防止膜を順次形成させて作る。単位薄膜別では多様な種類の材料と組成、製造方法では各種物理的、化学的薄膜製造方法が使用され得る。
【0004】
CIS系太陽電池の光吸収層は、一般に同時蒸着(co-evaporation)法、スパッタリング(Sputtering)法など真空技術を用いた物理蒸着方式で製造される。同時蒸着法は、真空チャンバ内に設置された小さな電気炉の内部に各元素(Cu、In、Ga、Se)を入れ、これを加熱して基板に真空蒸着させて薄膜を製作する技術であって、米国の国立再生エネルギー研究所(NREL)でこの方法を用いて19.5%のエネルギー変換効率を示すCIGS太陽電池を製作した。しかしながら、この方法は高真空技術を用いるため、初期の投資費用が多くかかり、大面積化が難しい。また、進攻装置内部の汚染が深刻であり、持続的に再現性のある薄膜を製作し難い。スパッタリング法は、比較的に装置が簡単であり、容易に金属又は絶縁体を蒸着できることから、幅広く活用されている技術である。シェルソーラー(Shell Solar)では銅とガリウム合金ターゲットとインジウムターゲットを順次スパッタリングして銅-ガリウム-インジウム合金薄膜を製作した後、セレン化水素(H2Se)ガス雰囲気で熱処理してCIGS薄膜を製作している。この方法は同時蒸着法に比べて相対的に製造が容易であると長所はあるが、これも真空技術を用いるため、大面積化には限界があり、初期の投資費用が多くかかるという短所がある。
【0005】
同時蒸着法とスパッタリング法は、太陽電池の大面積生産を相対的に難しくし、製造コストを高めて太陽電池の価格競争力を低下させる主因となっている。このような問題に対する1つの代案として、真空技術を用いた物理蒸着法ではなく、ナノ粒子をスプレー、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、ドクターブレード及びスピンキャスティングなどの方法で基板に蒸着した後、熱処理を通じて太陽電池の光吸収層を製造するナノ粉末工程法に対する研究が進められている。図1は、ナノ粉末工程法を用いた光吸収層の製造過程を概略的に示す図であり、ナノ粉末工程法によれば、図1に示すように、ナノ粒子101を製造して基板103上に塗布し、ナノ粒子を熱処理して多結晶薄膜102を形成する過程を通じて光吸収層薄膜を製造する。
【0006】
ナノ工程法で太陽電池の光吸収層を製造するためには、まず該当元素を含むナノ粒子前駆体の合成が先行しなければならない。前駆体物質は、化学組成によって大きくCIS、CIGSナノ粒子とCu-In-O、Cu-In-Ga-Oなどの二元又は三元化合物の酸化物ナノ粒子とに分けられる。
【0007】
下記の特許文献1は、超音波噴霧技法(ultrasonic nebulizer)で三元化合物の酸化物(e.g. Cu2In1.5G0.5O5、Cu2In2O5、Cu2O-In2O3)をマイクロメートル以下の大きさで合成し、これを溶液又はペースト状にして薄膜を形成した後、還元雰囲気で熱処理してCIS薄膜を形成する技術を報告したが、粒子の平均大きさが数百ナノで比較的に大きい方であるので、熱処理温度を下げられないという点が短所として指摘される。類似する方法として、下記の特許文献2では水溶液から銅水酸化物(Cu-hydroxide)とインジウム水酸化物(In-hydroxide)を沈殿させて加熱する方法でCu、Inの酸化物を合成し、これを基板に蒸着して薄膜を形成した後、還元雰囲気で熱処理すれば、CIS薄膜を製造できると報告している。しかしながら、これも粒子の大きさがナノミリメートルではなく、マイクロメートルの範ちゅうであり、熱処理温度は550℃前後である。また、酸化物を前駆体として用いるため、酸化物から酸素を除去した後、セレニウムを供給する追加の工程が必要である。
【0008】
下記の特許文献3によれば、CuI、InI3、GaI3を溶かしたピリジン溶媒とNa2Seを溶かしたメタノール溶媒を低温で反応させてCIGSコロイドを得た後、これをスプレー(spray)などの方法で基板に蒸着させて熱処理すれば、CIGS薄膜が得られると報告している。しかしながら、この方法は溶媒の脱酸素及び脱水分のための前処理が必要であり、全ての過程が不活性雰囲気で行われなければならないという短所がある。一方、下記の非特許文献1はエチレンジアミン(ethylenediamine)とジエチルアミン(diethylamine)溶媒にCuCl2、InCl3、Se粉末を原料として入れ、溶媒熱法(Solvothermal route)で反応させると、ナノ粒子のCIS化合物を合成できると報告した。しかしながら、溶媒として強塩基性の有毒なアミン化合物(amine compound)を用いるため、前駆体の製造及び分離が難しく、一日以上の長い反応時間、180℃以上の高温を要求する反応であるという点が短所として指摘される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公告番号6,268,014号
【特許文献2】ヨーロッパ特許公告番号EP 0 978 882 A2号
【特許文献3】米国特許登録番号6,126,740号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yitai Quianら、Adv. Mater. 11(17)、1456-1459(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、均一な大きさのI-III-VI2ナノ粒子前駆体をより環境に優しく、かつ容易な方法で合成し、これを基板に蒸着させて薄膜を形成した後、熱処理して所望する組成の太陽電池用光吸収層をより簡便に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題を達成するために、本発明は、(a1)I族原料、III族原料及びVI族原料を溶媒と共に混合して混合溶液を製造する段階と、(a2)前記混合溶液を超音波処理する段階と、(a3)前記超音波処理された混合溶液から溶媒を分離する段階と、(a4)前記(a3)段階から得られた結果物を乾燥させてナノ粒子を得る段階とを含むことを特徴とするI-III-VI2ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、(S1)前記本発明に係るナノ粒子の製造方法を用いてI-III-VI2ナノ粒子を製造する段階と、(S2)前記ナノ粒子を基板に蒸着する段階と、(S3)前記基板に蒸着されたナノ粒子をセレニウム(Se)、硫黄(S)、非活性気体又はこれらの混合気体雰囲気で熱処理して多結晶I-III-VI2薄膜を形成する段階とを含むことを特徴とする多結晶光吸収層薄膜の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波を用いた破砕分散を通じて均一な大きさのI-III-VI2ナノ粒子前駆体を合成し、薄膜を製造した後、熱処理工程などを通じて容易に所望する組成の多結晶光吸収層薄膜を得ることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、既存の酸素除去工程が不要であるため、従来の製造工程を簡素化でき、製造コストを大幅に低減できるものと期待される。更に、大量生産が可能であり、製造時に用いられる溶剤は化学的に安定的かつ人体に無害であり、製造工程において再使用が可能な点で環境に優しい方法であるため、産業上、その利用が大きく期待される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ナノ粉末工程法を用いた光吸収層の製造過程を概略的に示す図である。
【図2】本発明の多結晶光吸収層薄膜の製造方法による製造工程図である。
【図3】実施例で用いられた超音波処理処置の概略図である。
【図4】実施例1によって製造されたCuInSe2ナノ粒子の走査電子顕微鏡測定写真である。
【図5】実施例1によって製造されたCuInSe2ナノ粒子のEDS測定写真である。
【図6】実施例1によって製造されたCuInSe2ナノ粒子のX‐線回折分析グラフである。
【図7】実施例2〜5によって製造されたCuInSe2ナノ粒子のX‐線回折分析グラフである。
【図8】実施例6によって製造されたCu(In、Ga)Se2ナノ粒子の走査電子顕微鏡測定写真である。
【図9】実施例6によって製造されたCu(In、Ga)Se2ナノ粒子のEDS測定写真である。
【図10】実施例6によって製造されたCu(In、Ga)Se2ナノ粒子のX‐線回折分析グラフである。
【図11】実施例6によって製造されたCu(In、Ga)Se2ナノ粒子の透過電子顕微鏡測定写真である。
【図12】実施例6によって製造されたCu(In、Ga)Se2ナノ粒子のCu、In、Ga及びSeに対する分布マッピング(X-Ray Mapping)写真である。
【図13】実施例7によって製造されたCuInS2ナノ粒子の走査電子顕微鏡測定写真である。
【図14】実施例7によって製造されたCuInS2ナノ粒子のEDS測定写真である。
【図15】実施例7によって製造されたCuInS2ナノ粒子のX‐線回折分析グラフである。
【図16】実施例7によって製造されたCuInS2ナノ粒子のラマン分析グラフである。
【図17】本発明の実施例8によって製造されたCu(In、Ga)S2ナノ粒子の走査電子顕微鏡測定写真である。
【図18】本発明の実施例8によって製造されたCu(In、Ga)S2ナノ粒子のEDS測定写真である。
【図19】本発明の実施例8によって製造されたCu(In、Ga)S2ナノ粒子のX‐線回折分析グラフである。
【図20】本発明の実施例8によって製造されたCu(In、Ga)S2ナノ粒子のラマン分析グラフである。
【図21】実施例9の熱処理前にナノ粒子薄膜の走査電子顕微鏡で測定した前面写真である。
【図22】熱処理後の多結晶CuInSe2薄膜とCu(In、Ga)Se2薄膜のX‐線回折分析グラフである。
【図23】走査電子顕微鏡で測定した多結晶CuInSe2薄膜の前面写真である。
【図24】走査電子顕微鏡で測定した多結晶CuInSe2薄膜の側面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記のような技術的課題を解決するために、鋭意研究を重ねていた本発明者らは、各原料物質を混合して所定の条件で超音波処理する場合、CuInSe2、Cu(In、Ga)Se2、CuGaSe2、CuInS2、Cu(In、Ga)S2、CuGaS2、CuIn(Se、S)2、CuGa(Se、S)2及びCu(In、Ga)(Se、S)2ナノ粒子の製造が可能であり、これを用いて薄膜を製造し、セレニウム(Se)、硫黄(S)、非活性気体又はこれらの混合気体雰囲気で熱処理を施す場合、多様な種類の多結晶CIS系薄膜をより簡単に製造できるという点を見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
図2に示すように、本発明の多結晶光吸収層薄膜の製造方法は、(S1)超音波を用いてI-III-VI2ナノ粒子を製造する段階と、(S2)前記ナノ粒子を基板に蒸着する段階と、(S3)前記基板に蒸着されたナノ粒子をセレニウム(Se)、硫黄(S)、非活性気体又はこれらの混合気体雰囲気で熱処理して多結晶I-III-VI2薄膜を形成する段階とを含む。
【0018】
超音波を用いてI-III-VI2ナノ粒子を製造する段階は、具体的に、(a1)I族原料、III族原料及びVI族原料を溶媒と共に混合して混合溶液を製造する段階と、(a2)前記混合溶液を超音波処理する段階と、(a3)前記超音波処理された混合溶液から溶媒を分離する段階と、(a4)前記(a3)段階から得られた結果物を乾燥させてナノ粒子を得る段階とを含んでなることができる。このような過程を通じて、CuInSe2、CuGaSe2、Cu(In、Ga)Se2、CuInS2、CuGaS2、Cu(In、Ga)S2、CuIn(Se、S)2、CuGa(Se、S)2及びCu(In、Ga)(Se、S)2ナノ粒子が得られる。
【0019】
混合溶液の製造のために用いられる溶媒は、反応特性を改善するために水又はアルコール系有機溶剤に窒素系錯化剤(N-chelants)が添加され、選択的にイオン性液体が添加され得る。
【0020】
アルコール系有機溶剤及び水は溶液内で不活性組成物として作用するため、ナノ粒子を合成した後、再活用が可能である。また、高い沸点のため、高い温度の反応でも溶液が損失することなく、有用に使用され得る。アルコール系有機溶剤として、例えば、メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、イソプロパノール(isopropanol)、ブタノール(butanol)、イソブタノール(isobutanol)、3-メチル-3-メトキシブタノール(3-methyl-3-methoxy butanol)、トリデシルアルコール(tridecyl alcohol)、ペンタノール(pentanol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、へキシレングリコール(hexylene glycol)、ブチレングリコール(butylene glycol)、スクロース(sucrose)、ソルビトール(sorbitol)及びグリセリン(glycerin)などの2価、3価又は多価脂肪族アルコールなどを使用できる。
【0021】
窒素系錯化剤は、溶液内で錯化剤(complexing agent)としての機能をする窒素化合物で原料と錯イオンを形成することで、反応を促進する役割をする。窒素系錯化剤としては、例えば、ジエチルアミン(dimethyl amine)、トリエチルアミン(triethylamine)、ジエチレンジアミン(diethylene diamine)、ジエチレントリアミン(diethylene triamine)、トルエンジアミン(toluene diamine)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、ジフェニルメタンジアミン(diphenyl methane diamine)、ヘキサメチレンジアミン(hexamethylene diamine)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylenepentamine)、ヘキサメチレンテトラミン(hexamethylenete tramine)、4,4-ジアミノジフェニルメタン(4,4-diaminodiphenyl methane)、ヒドラジン(hydrazine)、ヒドラジド(hydrazide)、チオアセトアミド(thioacetamide)、ウレア(urea)、チオ尿素(thiourea)などが使用され得る。大部分の窒素化合物が強塩基であり、毒性が強くて使用が容易でないため、溶液内でナノ粒子を合成するのに必要な濃度範囲内で最少の量で添加することが好ましい。
【0022】
イオン性液体は補助錯化剤(auxiliary chelants)として添加され、錯化剤によって選択的に用いられる。イオン性液体は、添加された窒素系錯化剤の効果が反応を進行させるのに不十分な場合、錯化剤により形成された金属錯イオンを安定化させ、反応を促進する機能をする。溶媒に添加されるイオン性液体は、脂溶性又は水溶性であってもよく、アルキルアンモニウム(alkyl amonium)、アルキルピリジニウム(N-alkyl pyridinium)、アルキルピリダジニウム(N-alkyl pyridazinium)、アルキルピリミジニウム(N-alkyl pyrimidinium)、アルキルピラジニウム(N-alkyl pyrazinium)、アルキルイミダゾリウム(N,N-alkyl imidazolium)、アルキルピラゾリウム(N-alkyl pyrazolium)、アルキルチアゾリウム(N-alkyl thiazolium)、アルキルオキサゾリウム(N-alkyl oxazolium)、アルキルトリアゾリウム(N-alkyl triazolium)、アルキルホスホニウム(N-alkyl phosphonium)及びアルキルピロリジニウム(N-alkyl pyrolidinium)又はこれらの誘導体のようなカチオンと、ヘキサフルオロアンチモネート(hexafluoroantimonate、SbF6-)、ヘキサフルオロホスフェート(hexafluorophosphate、PF6-)、テトラフルオロボラート(tetrafluoroborate、BF4-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(bis(trifluoromethylsulfonyl)amide、(CF3SO2)2N-)、トリフルオロメタンスルホネート(trifluoromethanesulfonate、CF3SO3-)、アセテート(acetate、OAc-)、又は硝酸(nitrate、NO3-)などのアニオンを含んでなる。
【0023】
I-III-VI2ナノ粒子の製造時、I族原料としては銅又は銅化合物が、III族原料としてはインジウム、インジウム化合物、ガリウム又はガリウム化合物が、VI族原料としてはセレニウム、セレニウム化合物、硫黄又は硫黄化合物が利用され得る。選択される原料によって、Cu(InξGa1-ξ)(SeψS1-ψ)2(0<x<1、0<y<1)、CuInξGa1-ξSe2(0<x<1)、CuInξGa1-ξS2(0<x<1)、CuIn(SeψS1-ψ)2(0<y<1)、CuGa(SeψS1-ψ)2(0<y<1)、CuGaSe2、CuGaS2、CuInSe2、CuInS2ナノ粒子を製造できる。
【0024】
前記銅化合物としてはCuO、CuO2、CuOH、Cu(OH)2、Cu(CH3COO)、Cu(CH3COO)2、CuF2、CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、Cu(ClO4)2、Cu(NO3)2、CuSO4、CuSe、Cu2−ξSe(0<x<2)、Cu2Se又はこれらの水化物が、前記インジウム化合物としてはIn2O3、In(OH)3、In(CH3COO)3、InF3、InCl、InCl3、CInBr、InBr3、InI、InI3、In(ClO4)3、In(NO3)3、In2(SO4)3、In2Se3、InGaSe3又はこれらの水化物が、前記ガリウム化合物としてはGa2O3、Ga(OH)3、Ga(CH3COO)3、GaF3、GaCl、GaCl3、GaBr、GaBr3、GaI、GaI3、Ga(ClO4)3、Ga(NO3)3、Ga2(SO4)3、Ga2Se3、InGaSe3又はこれらの水化物が、前記セレニウム化合物としてはSe、H2Se、Na2Se、K2Se、Ca2Se、(CH3)2Se、CuSe、Cu2−ξSe(0<x<2)、Cu2Se、In2Se3又はこれらの水化物が、前記硫黄化合物としてはチオアセトアミド(thioacetamide)、チオ尿素(thiourea)、チオアセト酸(thioacetic acid)、アルキルチオール(alkyl thiol)又は硫化ナトリウム(Sodium sulfide)が利用され得る。
【0025】
本発明において超音波処理は、-13〜200℃の温度で1時間以上行うことが好ましい。温度が低いか、反応時間が短ければ、反応が起こらなかったり、付加生成物と共に得られるおそれがある。処理温度及び処理時間が前記上限を超えるのは工程効率を考慮する時、好ましくない。超音波処理の後、溶媒は分離して再活用でき、溶媒の分離は濾過器、遠心分離器などを用いた分離方法を使用できる。
【0026】
本発明によって製造されたナノ粒子は超音波の合成時に反応に添加されるCu、In、Ga、Se及びS原料化合物の割合を調節することで、Cu、In、Se及びSの化学量論比(stoichiometric ratio)を決定できる。例えば、CuIn0.7Ga0.3Se2ナノ粒子を合成するためには、Cu、In、Ga、Se原料化合物をそれぞれ1.0:0.7:0.3:2.0のモル比で混合して反応に添加することが好ましい。
【0027】
得られたナノ粒子はインキ(ink)又はペースト(paste)状にしてスプレー、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、ドクターブレード及びスピンキャスティングなどの方法で基板に蒸着する。ナノ粒子が蒸着された基板はセレニウム(Se)、硫黄(S)、非活性気体やこれらの混合気体の雰囲気で熱処理して多結晶光吸収層薄膜で製造できる。このとき、熱処理温度は350〜550℃にすることが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、好適な実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の実施例は多様に変形されることができ、本発明の範囲が好適な実施例によって限定されるものではない。
【0029】
本発明によってCuInSe2ナノ粒子前駆体を製造するために、Tiホーン(horn)203が備えられた超音波発生装置201、反応器202、恒温槽204、及び加熱器205からなる棒状形超音波処理装置器を設置した。設置された実験装置の概略図を図3に示した。
【0030】
本発明で用いた超音波装置はSONICS & MATERIALS社製(モデル名VCX750)の棒状形超音波発生装置101であって、周波数は20kHzであり、出力は200Wに固定して反応を進めた。温度を一定に維持するために恒温槽104を使用した。
【0031】
実施例1(CuInSe2ナノ粒子の製造)
1:1:2のモル比でCu(CH3COO)2、In(CH3COO)3及びSe粉末を反応器102に入れた。トリエチレンテトラミン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート及びアルコール系有機溶剤で反応器を満たし、100℃で4時間超音波処理した後、自然冷却させた。生成物は遠心分離して溶媒を分離し、蒸留水とエタノールで数回繰り返して洗浄した後、80℃の常圧雰囲気で4時間乾燥させた。
【0032】
得られたCuInSe2ナノ粒子の組成に対する定性分析と粒度分布を調べるために、EDS(Energy Dispersive Spectroscopy)と走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を測定してその結果を図4と図5に示した。最終的に得られた生成物がCu:In:Seの組成比が0.96:1.00:2.04である粒径100nm〜150nmの粒子からなっていることが確認できる。得られた生成物の相を確認するために粉末用X‐線回折分析(X-ray Diffraction、XRD)が用いられ、その分析結果を図6に示した。生成物のX‐線回折パターンは正方晶系であるCIS上の主ピーク112、204/220、312/116に対応した。これは、得られたCISナノ粒子が正方晶系の結晶構造を有するということを裏付ける。
【0033】
実施例2(溶媒の最初の再活用)
実施例1から遠心分離して分離された溶媒を再使用してCuInSe2ナノ粒子を合成した。まず、Cu(CH3COO)2、In(CH3COO)3及びSe粉末を1:1:2のモル比で反応器に入れた。実施例1から得られた溶媒で反応器を満たし、超音波処理した後、自然冷却させた。生成物は遠心分離して溶媒を分離し、蒸留水とアルコールで数回繰り返して洗浄した後、80℃の常圧雰囲気で4時間乾燥させた。得られたナノ粒子の粉末X‐線回折分析グラフを図7(a)に示した。
【0034】
実施例3(溶媒の2度目の再活用)
実施例2から遠心分離して分離された溶媒を再使用してCuInSe2ナノ粒子を合成した。Cu、In、Se原材料を反応器に入れ、実施例3から得られた溶媒で反応器を満たした後、超音波を溶液に印加した。その後の段階は実施例2と同一に進めてナノ粒子粉末を製造した。得られたナノ粒子の粉末X‐線回折分析グラフを図7(b)に示した。
【0035】
実施例4(溶媒の3度目の再活用)
実施例3から遠心分離して分離された溶媒を再使用してCuInSe2ナノ粒子を合成した。Cu、In、Se原材料を反応器に入れ、実施例3から得られた溶媒で反応器を満たした後、超音波を溶液に印加した。その後の段階は実施例2と同一に進めてナノ粒子粉末を製造した。得られたナノ粒子の粉末X‐線回折分析グラフを図7(c)に示した。
【0036】
実施例5(溶媒の4度目の再活用)
実施例4から遠心分離して分離された溶媒を再使用してCuInSe2ナノ粒子を合成した。Cu、In、Se原材料を反応器に入れ、実施例3から得られた溶媒で反応器を満たした後、超音波を溶液に印加した。その後の段階は実施例2と同一に進めてナノ粒子粉末を製造した。得られたナノ粒子の粉末X‐線回折分析グラフを図7(d)に示した。
【0037】
図7は、実施例1で分離された溶媒を継続的に再使用して合成したCISナノ粒子に対するそれぞれのX‐線回折結果であって、共通して(典型的なCIS正方晶系結晶構造の112方向に沿って配向されていることを示す)2θ=26.6°でのピークを観察できる。これはナノ粒子の合成に一度用いられた溶媒が追加の供給なしに継続的にナノ粒子の合成に再使用され得ることを示す結果であって、本発明が非常に経済的で、かつ環境に優しい工程であることを示す。
【0038】
実施例6(Cu(In、Ga)Se2ナノ粒子の製造)
CuCl、In(CH3COO)3、Ga(NO3)3及びSe粉末を1.0:0.7:0.3:2.0のモル比で窒素系錯化剤とアルコール系有機溶剤が入った反応器で混合し、80℃で4時間超音波処理した後、自然冷却させた。最終生成物は遠心分離器を用いて溶媒と分離し、蒸留水とアルコール系溶媒で2回以上繰り返し洗浄して副産物を全て除去した後、80℃の常圧雰囲気で4時間乾燥させた。
【0039】
得られた生成物の組成に対する定性分析、粒度分布及び最終生成物の相を確認するために、EDS、走査電子顕微鏡、粉末用X‐線回折分析を測定し、その結果をそれぞれ図8、図9、及び図10に示した。これらは最終的に得られた生成物がCu:In:Ga:Seの成分比が0.96:0.62:0.33:2.09からなる粒径約37nmの微細な粒子が互いに塊になっていることを示す。生成物のX‐線回折パターンは正方晶系であるCIGS上の主ピーク112、204/220、312/116に対応した。
【0040】
図11は、得られた生成物の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)写真であり、最終生成物が0.20nmと0.32nmの格子間隔(lattice spacing)を有するものと測定された。これは、生成物のX‐線回折パターン(図8)の112、204/220方向とも一致する結果である。
【0041】
図12は、得られた生成物の成分別分布マッピング(X-Ray Mapping)を測定した結果である。Cu、In、Ga、Se元素が均一に分布していることを示す。これは、生成物が各元素の物理的な混合物ではなく、CIGS化合物からなっていることを裏付ける。
【0042】
実施例7(CuInS2ナノ粒子の製造)
CuCl、InCl3とチオアセトアミドを1:1:2のモル比でアルコール系有機溶剤と混合した。混合された溶液は100℃で4時間超音波処理した後、自然冷却させた。生成物は遠心分離器を用いて溶媒と分離し、蒸留水とエタノールで数回繰り返して洗浄して副産物を除去した後、80℃の常圧雰囲気で乾燥させた。
【0043】
得られた生成物の組成に対する定性分析と粒度分布を調べるために、各元素の特性転移エネルギーを、EDSと走査電子顕微鏡を測定してその結果を図13と図14に示した。これを通じて最終的に得られた生成物がCu:In:Sの組成比が1.03:1.00:1.97である粒径20nm〜60nmの粒子で構成されていることが分かる。得られた生成物の相を確認するために、粉末用X‐線回折分析とラマン分光器(Raman Spectroscopy)が用いられ、その分析結果が図15と図16に示されている。図15から分かるように、2theta=27.9°近傍でCuInS2に該当する112ピークを観察できる。他の主要ピークもCuInS2の020、024/220、116/312、040方向に該当することが分かる。生成物のラマン分光測定結果を示す図16は290cm-1で単一ピークのみを示すが、これは化学量論比が合うCuInS2の格子振動のA1 modeに該当する。
【0044】
実施例8(Cu(In、Ga)S2ナノ粒子の製造)
CuCl、In(CH3COO)3、Ga粉末及びSe粉末を1.0:0.7:0.3:2.0のモル比で反応器に入れ、アルコール系有機溶剤と混合した。混合された溶液は100℃で4時間超音波処理した後、自然冷却させた。生成物は遠心分離器を用いて溶媒と分離し、蒸留水とアルコールで数回繰り返して洗浄して副産物を除去した後、80℃の常圧雰囲気で乾燥させた。
【0045】
得られた生成物の組成に対する定性分析、粒度分布及び最終生成物の相を確認するために、EDS、走査電子顕微鏡、粉末用X‐線回折分析及びラマン分光を測定し、その結果をそれぞれ図17、図18、図19及び図20に示した。SEMとEDS結果は最終生成物がCu:In:Ga:Sの成分比が1.09:0.65:0.37:1.89からなる粒径約60nm以下の微細な粒子で構成されていることを示す。ラマン分光測定結果、290cm-1での単一ピークのみが観察された。X‐線回折分析は最終生成物の112ピーク(28.28°)が実施例1で得られたCuInS2(27.94°)より高い回折角を有していることを示す。一般に、CuInS2、CuInSe2などの化合物にIn元素より小さいGa元素が一部添加されると、より高い回折角でピークが観察される。最終生成物としては、CuIn0.65Ga0.35S2ナノ粒子が合成された。
【0046】
実施例9(多結晶光吸収層薄膜の製造)
ナノ粒子前駆体が蒸着された基板を熱処理を通じて多結晶CIS系薄膜として製造するために、まず実施例7、8で得られたナノ粒子を水、アルコールなどの溶液に分散させ、ドクターブレード及びスピンキャスティングなどの方法で基板に蒸着した。図21は、ドクターブレード方法によりCuInS2ナノ粒子が蒸着された基板を撮影した走査電子顕微鏡写真である。ナノ粒子薄膜はそれぞれSe気体雰囲気の下で所定の温度で所定時間加熱した。CuInS2ナノ粒子薄膜は500℃で20分間、CuIn0.65Ga0.35S2ナノ粒子薄膜は450℃で15分間加熱した後、自然冷却させた。
【0047】
熱処理したナノ粒子薄膜のX‐線回折分析測定結果を図22に示した。CuInS2ナノ粒子薄膜は熱処理の後、Se気体により多結晶CuInSe2(CIS)薄膜となった。CuIn0.65Ga0.35S2ナノ粒子薄膜は熱処理後、主要X‐線回折分析ピークがCuIn0.7Ga0.3Se2化合物とCuIn0.5Ga0.5Se2化合物の有する回折角の間で観察された。従って、CuIn0.65Ga0.35S2薄膜がSe気体により多結晶CuIn0.65Ga0.35S2(CIGS)薄膜に変換されたことが確認できる。
【0048】
図23と図24は、本発明によって製造されたCuInS2ナノ粒子薄膜を熱処理して製造したCuInSe2薄膜の走査電子顕微鏡の前面写真と側面写真である。加熱による熱とSe気体によりCuInS2ナノ粒子薄膜から0.9μm〜2.0μmの粒径を有する、厚さ約3.0μmの多結晶CuInSe2薄膜が製造されたことが分かる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明に係る技術的思想の範囲から逸脱しない範囲内で様々な変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0050】
101 CuInξGa1‐ξS2ナノ粒子前駆体
102 Cu(InξGa1‐ξ)(SeψS1‐ψ)2多結晶
103 基板
201 超音波発生装置
202 反応器
203 Tiホーン(horn)
204 恒温槽
205 加熱器
【技術分野】
【0001】
本発明はI-III-VI2ナノ粒子の製造方法及び多結晶光吸収層薄膜の製造方法に関し、超音波を用いて化合物半導体であるI-III-VI2ナノ粒子を合成し、これを用いて太陽電池用多結晶光吸収層薄膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CuInSe2に代表されるI-III-VI2族カルコパイライト(chalcopyrite)系化合物半導体は、直接遷移型エネルギーバンドギャップ(band gap)を有しており、光吸収系数が非常に高く、数マイクロメートルの薄膜でも高効率の太陽電池の製造が可能であり、優れた電気光学的安全性を有しており、太陽電池の光吸収層の材料として非常に理想的な化合物である。特に、Cu(In、Ga)Se2太陽電池は薄膜型太陽電池のうち、エネルギー効率(NREL、>19%)が最も高く、既存のシリコン基盤の太陽電池に比べて価格競争力が高いことから、既存の高価な結晶質シリコン太陽電池に取って代わることのできる薄膜型太陽電池として浮上している。しかしながら、このようなカルコパイライト系化合物は、多元化合物(multinary compound)であるため、製造工程が非常に難しい。従って、カルコパイライト系化合物に基づく太陽電池が化石燃料と競争するためには、工程の改善を通じた持続的な生産コストの下落が課題となっている。
【0003】
CuInSe2化合物は、太陽電池の理想的なバンドギャップ(1.4eV)に若干満たない1.04eVのエネルギーバンドギャップを有しているため、これに基づく太陽電池の短絡電流(Jσχ、short-circuit current)は比較的に高いが、開放電圧(Voχ、open-circuit voltage)は相対的に低い方である。従って、開放電圧を高めるためにインジウム(In)の一部をガリウム(Ga)に置換したり、セレニウム(Se)の一部を硫黄(S)に置換することもあるが、構成成分によって、CuInSe2(CIS)、CuGaSe2(CGS)、Cu(In、Ga)Se2(CIGS)、CuInS2、CuGaS2、Cu(in、Ga)S2、CuIn(Se、S)2(CISS)、CuGa(Se、S)2(CGSS)及びCu(In、Ga)(Se、S)2(CIGSS)で表し、包括的にCIS系太陽電池と表現する。CIS系太陽電池は、一般にガラスを基板として5個の単位薄膜である背面電極、光吸収層、バッファ層、前面透明電極、反射防止膜を順次形成させて作る。単位薄膜別では多様な種類の材料と組成、製造方法では各種物理的、化学的薄膜製造方法が使用され得る。
【0004】
CIS系太陽電池の光吸収層は、一般に同時蒸着(co-evaporation)法、スパッタリング(Sputtering)法など真空技術を用いた物理蒸着方式で製造される。同時蒸着法は、真空チャンバ内に設置された小さな電気炉の内部に各元素(Cu、In、Ga、Se)を入れ、これを加熱して基板に真空蒸着させて薄膜を製作する技術であって、米国の国立再生エネルギー研究所(NREL)でこの方法を用いて19.5%のエネルギー変換効率を示すCIGS太陽電池を製作した。しかしながら、この方法は高真空技術を用いるため、初期の投資費用が多くかかり、大面積化が難しい。また、進攻装置内部の汚染が深刻であり、持続的に再現性のある薄膜を製作し難い。スパッタリング法は、比較的に装置が簡単であり、容易に金属又は絶縁体を蒸着できることから、幅広く活用されている技術である。シェルソーラー(Shell Solar)では銅とガリウム合金ターゲットとインジウムターゲットを順次スパッタリングして銅-ガリウム-インジウム合金薄膜を製作した後、セレン化水素(H2Se)ガス雰囲気で熱処理してCIGS薄膜を製作している。この方法は同時蒸着法に比べて相対的に製造が容易であると長所はあるが、これも真空技術を用いるため、大面積化には限界があり、初期の投資費用が多くかかるという短所がある。
【0005】
同時蒸着法とスパッタリング法は、太陽電池の大面積生産を相対的に難しくし、製造コストを高めて太陽電池の価格競争力を低下させる主因となっている。このような問題に対する1つの代案として、真空技術を用いた物理蒸着法ではなく、ナノ粒子をスプレー、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、ドクターブレード及びスピンキャスティングなどの方法で基板に蒸着した後、熱処理を通じて太陽電池の光吸収層を製造するナノ粉末工程法に対する研究が進められている。図1は、ナノ粉末工程法を用いた光吸収層の製造過程を概略的に示す図であり、ナノ粉末工程法によれば、図1に示すように、ナノ粒子101を製造して基板103上に塗布し、ナノ粒子を熱処理して多結晶薄膜102を形成する過程を通じて光吸収層薄膜を製造する。
【0006】
ナノ工程法で太陽電池の光吸収層を製造するためには、まず該当元素を含むナノ粒子前駆体の合成が先行しなければならない。前駆体物質は、化学組成によって大きくCIS、CIGSナノ粒子とCu-In-O、Cu-In-Ga-Oなどの二元又は三元化合物の酸化物ナノ粒子とに分けられる。
【0007】
下記の特許文献1は、超音波噴霧技法(ultrasonic nebulizer)で三元化合物の酸化物(e.g. Cu2In1.5G0.5O5、Cu2In2O5、Cu2O-In2O3)をマイクロメートル以下の大きさで合成し、これを溶液又はペースト状にして薄膜を形成した後、還元雰囲気で熱処理してCIS薄膜を形成する技術を報告したが、粒子の平均大きさが数百ナノで比較的に大きい方であるので、熱処理温度を下げられないという点が短所として指摘される。類似する方法として、下記の特許文献2では水溶液から銅水酸化物(Cu-hydroxide)とインジウム水酸化物(In-hydroxide)を沈殿させて加熱する方法でCu、Inの酸化物を合成し、これを基板に蒸着して薄膜を形成した後、還元雰囲気で熱処理すれば、CIS薄膜を製造できると報告している。しかしながら、これも粒子の大きさがナノミリメートルではなく、マイクロメートルの範ちゅうであり、熱処理温度は550℃前後である。また、酸化物を前駆体として用いるため、酸化物から酸素を除去した後、セレニウムを供給する追加の工程が必要である。
【0008】
下記の特許文献3によれば、CuI、InI3、GaI3を溶かしたピリジン溶媒とNa2Seを溶かしたメタノール溶媒を低温で反応させてCIGSコロイドを得た後、これをスプレー(spray)などの方法で基板に蒸着させて熱処理すれば、CIGS薄膜が得られると報告している。しかしながら、この方法は溶媒の脱酸素及び脱水分のための前処理が必要であり、全ての過程が不活性雰囲気で行われなければならないという短所がある。一方、下記の非特許文献1はエチレンジアミン(ethylenediamine)とジエチルアミン(diethylamine)溶媒にCuCl2、InCl3、Se粉末を原料として入れ、溶媒熱法(Solvothermal route)で反応させると、ナノ粒子のCIS化合物を合成できると報告した。しかしながら、溶媒として強塩基性の有毒なアミン化合物(amine compound)を用いるため、前駆体の製造及び分離が難しく、一日以上の長い反応時間、180℃以上の高温を要求する反応であるという点が短所として指摘される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公告番号6,268,014号
【特許文献2】ヨーロッパ特許公告番号EP 0 978 882 A2号
【特許文献3】米国特許登録番号6,126,740号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yitai Quianら、Adv. Mater. 11(17)、1456-1459(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、均一な大きさのI-III-VI2ナノ粒子前駆体をより環境に優しく、かつ容易な方法で合成し、これを基板に蒸着させて薄膜を形成した後、熱処理して所望する組成の太陽電池用光吸収層をより簡便に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題を達成するために、本発明は、(a1)I族原料、III族原料及びVI族原料を溶媒と共に混合して混合溶液を製造する段階と、(a2)前記混合溶液を超音波処理する段階と、(a3)前記超音波処理された混合溶液から溶媒を分離する段階と、(a4)前記(a3)段階から得られた結果物を乾燥させてナノ粒子を得る段階とを含むことを特徴とするI-III-VI2ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、(S1)前記本発明に係るナノ粒子の製造方法を用いてI-III-VI2ナノ粒子を製造する段階と、(S2)前記ナノ粒子を基板に蒸着する段階と、(S3)前記基板に蒸着されたナノ粒子をセレニウム(Se)、硫黄(S)、非活性気体又はこれらの混合気体雰囲気で熱処理して多結晶I-III-VI2薄膜を形成する段階とを含むことを特徴とする多結晶光吸収層薄膜の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波を用いた破砕分散を通じて均一な大きさのI-III-VI2ナノ粒子前駆体を合成し、薄膜を製造した後、熱処理工程などを通じて容易に所望する組成の多結晶光吸収層薄膜を得ることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、既存の酸素除去工程が不要であるため、従来の製造工程を簡素化でき、製造コストを大幅に低減できるものと期待される。更に、大量生産が可能であり、製造時に用いられる溶剤は化学的に安定的かつ人体に無害であり、製造工程において再使用が可能な点で環境に優しい方法であるため、産業上、その利用が大きく期待される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ナノ粉末工程法を用いた光吸収層の製造過程を概略的に示す図である。
【図2】本発明の多結晶光吸収層薄膜の製造方法による製造工程図である。
【図3】実施例で用いられた超音波処理処置の概略図である。
【図4】実施例1によって製造されたCuInSe2ナノ粒子の走査電子顕微鏡測定写真である。
【図5】実施例1によって製造されたCuInSe2ナノ粒子のEDS測定写真である。
【図6】実施例1によって製造されたCuInSe2ナノ粒子のX‐線回折分析グラフである。
【図7】実施例2〜5によって製造されたCuInSe2ナノ粒子のX‐線回折分析グラフである。
【図8】実施例6によって製造されたCu(In、Ga)Se2ナノ粒子の走査電子顕微鏡測定写真である。
【図9】実施例6によって製造されたCu(In、Ga)Se2ナノ粒子のEDS測定写真である。
【図10】実施例6によって製造されたCu(In、Ga)Se2ナノ粒子のX‐線回折分析グラフである。
【図11】実施例6によって製造されたCu(In、Ga)Se2ナノ粒子の透過電子顕微鏡測定写真である。
【図12】実施例6によって製造されたCu(In、Ga)Se2ナノ粒子のCu、In、Ga及びSeに対する分布マッピング(X-Ray Mapping)写真である。
【図13】実施例7によって製造されたCuInS2ナノ粒子の走査電子顕微鏡測定写真である。
【図14】実施例7によって製造されたCuInS2ナノ粒子のEDS測定写真である。
【図15】実施例7によって製造されたCuInS2ナノ粒子のX‐線回折分析グラフである。
【図16】実施例7によって製造されたCuInS2ナノ粒子のラマン分析グラフである。
【図17】本発明の実施例8によって製造されたCu(In、Ga)S2ナノ粒子の走査電子顕微鏡測定写真である。
【図18】本発明の実施例8によって製造されたCu(In、Ga)S2ナノ粒子のEDS測定写真である。
【図19】本発明の実施例8によって製造されたCu(In、Ga)S2ナノ粒子のX‐線回折分析グラフである。
【図20】本発明の実施例8によって製造されたCu(In、Ga)S2ナノ粒子のラマン分析グラフである。
【図21】実施例9の熱処理前にナノ粒子薄膜の走査電子顕微鏡で測定した前面写真である。
【図22】熱処理後の多結晶CuInSe2薄膜とCu(In、Ga)Se2薄膜のX‐線回折分析グラフである。
【図23】走査電子顕微鏡で測定した多結晶CuInSe2薄膜の前面写真である。
【図24】走査電子顕微鏡で測定した多結晶CuInSe2薄膜の側面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記のような技術的課題を解決するために、鋭意研究を重ねていた本発明者らは、各原料物質を混合して所定の条件で超音波処理する場合、CuInSe2、Cu(In、Ga)Se2、CuGaSe2、CuInS2、Cu(In、Ga)S2、CuGaS2、CuIn(Se、S)2、CuGa(Se、S)2及びCu(In、Ga)(Se、S)2ナノ粒子の製造が可能であり、これを用いて薄膜を製造し、セレニウム(Se)、硫黄(S)、非活性気体又はこれらの混合気体雰囲気で熱処理を施す場合、多様な種類の多結晶CIS系薄膜をより簡単に製造できるという点を見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
図2に示すように、本発明の多結晶光吸収層薄膜の製造方法は、(S1)超音波を用いてI-III-VI2ナノ粒子を製造する段階と、(S2)前記ナノ粒子を基板に蒸着する段階と、(S3)前記基板に蒸着されたナノ粒子をセレニウム(Se)、硫黄(S)、非活性気体又はこれらの混合気体雰囲気で熱処理して多結晶I-III-VI2薄膜を形成する段階とを含む。
【0018】
超音波を用いてI-III-VI2ナノ粒子を製造する段階は、具体的に、(a1)I族原料、III族原料及びVI族原料を溶媒と共に混合して混合溶液を製造する段階と、(a2)前記混合溶液を超音波処理する段階と、(a3)前記超音波処理された混合溶液から溶媒を分離する段階と、(a4)前記(a3)段階から得られた結果物を乾燥させてナノ粒子を得る段階とを含んでなることができる。このような過程を通じて、CuInSe2、CuGaSe2、Cu(In、Ga)Se2、CuInS2、CuGaS2、Cu(In、Ga)S2、CuIn(Se、S)2、CuGa(Se、S)2及びCu(In、Ga)(Se、S)2ナノ粒子が得られる。
【0019】
混合溶液の製造のために用いられる溶媒は、反応特性を改善するために水又はアルコール系有機溶剤に窒素系錯化剤(N-chelants)が添加され、選択的にイオン性液体が添加され得る。
【0020】
アルコール系有機溶剤及び水は溶液内で不活性組成物として作用するため、ナノ粒子を合成した後、再活用が可能である。また、高い沸点のため、高い温度の反応でも溶液が損失することなく、有用に使用され得る。アルコール系有機溶剤として、例えば、メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、イソプロパノール(isopropanol)、ブタノール(butanol)、イソブタノール(isobutanol)、3-メチル-3-メトキシブタノール(3-methyl-3-methoxy butanol)、トリデシルアルコール(tridecyl alcohol)、ペンタノール(pentanol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、へキシレングリコール(hexylene glycol)、ブチレングリコール(butylene glycol)、スクロース(sucrose)、ソルビトール(sorbitol)及びグリセリン(glycerin)などの2価、3価又は多価脂肪族アルコールなどを使用できる。
【0021】
窒素系錯化剤は、溶液内で錯化剤(complexing agent)としての機能をする窒素化合物で原料と錯イオンを形成することで、反応を促進する役割をする。窒素系錯化剤としては、例えば、ジエチルアミン(dimethyl amine)、トリエチルアミン(triethylamine)、ジエチレンジアミン(diethylene diamine)、ジエチレントリアミン(diethylene triamine)、トルエンジアミン(toluene diamine)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、ジフェニルメタンジアミン(diphenyl methane diamine)、ヘキサメチレンジアミン(hexamethylene diamine)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylenepentamine)、ヘキサメチレンテトラミン(hexamethylenete tramine)、4,4-ジアミノジフェニルメタン(4,4-diaminodiphenyl methane)、ヒドラジン(hydrazine)、ヒドラジド(hydrazide)、チオアセトアミド(thioacetamide)、ウレア(urea)、チオ尿素(thiourea)などが使用され得る。大部分の窒素化合物が強塩基であり、毒性が強くて使用が容易でないため、溶液内でナノ粒子を合成するのに必要な濃度範囲内で最少の量で添加することが好ましい。
【0022】
イオン性液体は補助錯化剤(auxiliary chelants)として添加され、錯化剤によって選択的に用いられる。イオン性液体は、添加された窒素系錯化剤の効果が反応を進行させるのに不十分な場合、錯化剤により形成された金属錯イオンを安定化させ、反応を促進する機能をする。溶媒に添加されるイオン性液体は、脂溶性又は水溶性であってもよく、アルキルアンモニウム(alkyl amonium)、アルキルピリジニウム(N-alkyl pyridinium)、アルキルピリダジニウム(N-alkyl pyridazinium)、アルキルピリミジニウム(N-alkyl pyrimidinium)、アルキルピラジニウム(N-alkyl pyrazinium)、アルキルイミダゾリウム(N,N-alkyl imidazolium)、アルキルピラゾリウム(N-alkyl pyrazolium)、アルキルチアゾリウム(N-alkyl thiazolium)、アルキルオキサゾリウム(N-alkyl oxazolium)、アルキルトリアゾリウム(N-alkyl triazolium)、アルキルホスホニウム(N-alkyl phosphonium)及びアルキルピロリジニウム(N-alkyl pyrolidinium)又はこれらの誘導体のようなカチオンと、ヘキサフルオロアンチモネート(hexafluoroantimonate、SbF6-)、ヘキサフルオロホスフェート(hexafluorophosphate、PF6-)、テトラフルオロボラート(tetrafluoroborate、BF4-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(bis(trifluoromethylsulfonyl)amide、(CF3SO2)2N-)、トリフルオロメタンスルホネート(trifluoromethanesulfonate、CF3SO3-)、アセテート(acetate、OAc-)、又は硝酸(nitrate、NO3-)などのアニオンを含んでなる。
【0023】
I-III-VI2ナノ粒子の製造時、I族原料としては銅又は銅化合物が、III族原料としてはインジウム、インジウム化合物、ガリウム又はガリウム化合物が、VI族原料としてはセレニウム、セレニウム化合物、硫黄又は硫黄化合物が利用され得る。選択される原料によって、Cu(InξGa1-ξ)(SeψS1-ψ)2(0<x<1、0<y<1)、CuInξGa1-ξSe2(0<x<1)、CuInξGa1-ξS2(0<x<1)、CuIn(SeψS1-ψ)2(0<y<1)、CuGa(SeψS1-ψ)2(0<y<1)、CuGaSe2、CuGaS2、CuInSe2、CuInS2ナノ粒子を製造できる。
【0024】
前記銅化合物としてはCuO、CuO2、CuOH、Cu(OH)2、Cu(CH3COO)、Cu(CH3COO)2、CuF2、CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、Cu(ClO4)2、Cu(NO3)2、CuSO4、CuSe、Cu2−ξSe(0<x<2)、Cu2Se又はこれらの水化物が、前記インジウム化合物としてはIn2O3、In(OH)3、In(CH3COO)3、InF3、InCl、InCl3、CInBr、InBr3、InI、InI3、In(ClO4)3、In(NO3)3、In2(SO4)3、In2Se3、InGaSe3又はこれらの水化物が、前記ガリウム化合物としてはGa2O3、Ga(OH)3、Ga(CH3COO)3、GaF3、GaCl、GaCl3、GaBr、GaBr3、GaI、GaI3、Ga(ClO4)3、Ga(NO3)3、Ga2(SO4)3、Ga2Se3、InGaSe3又はこれらの水化物が、前記セレニウム化合物としてはSe、H2Se、Na2Se、K2Se、Ca2Se、(CH3)2Se、CuSe、Cu2−ξSe(0<x<2)、Cu2Se、In2Se3又はこれらの水化物が、前記硫黄化合物としてはチオアセトアミド(thioacetamide)、チオ尿素(thiourea)、チオアセト酸(thioacetic acid)、アルキルチオール(alkyl thiol)又は硫化ナトリウム(Sodium sulfide)が利用され得る。
【0025】
本発明において超音波処理は、-13〜200℃の温度で1時間以上行うことが好ましい。温度が低いか、反応時間が短ければ、反応が起こらなかったり、付加生成物と共に得られるおそれがある。処理温度及び処理時間が前記上限を超えるのは工程効率を考慮する時、好ましくない。超音波処理の後、溶媒は分離して再活用でき、溶媒の分離は濾過器、遠心分離器などを用いた分離方法を使用できる。
【0026】
本発明によって製造されたナノ粒子は超音波の合成時に反応に添加されるCu、In、Ga、Se及びS原料化合物の割合を調節することで、Cu、In、Se及びSの化学量論比(stoichiometric ratio)を決定できる。例えば、CuIn0.7Ga0.3Se2ナノ粒子を合成するためには、Cu、In、Ga、Se原料化合物をそれぞれ1.0:0.7:0.3:2.0のモル比で混合して反応に添加することが好ましい。
【0027】
得られたナノ粒子はインキ(ink)又はペースト(paste)状にしてスプレー、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、ドクターブレード及びスピンキャスティングなどの方法で基板に蒸着する。ナノ粒子が蒸着された基板はセレニウム(Se)、硫黄(S)、非活性気体やこれらの混合気体の雰囲気で熱処理して多結晶光吸収層薄膜で製造できる。このとき、熱処理温度は350〜550℃にすることが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、好適な実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の実施例は多様に変形されることができ、本発明の範囲が好適な実施例によって限定されるものではない。
【0029】
本発明によってCuInSe2ナノ粒子前駆体を製造するために、Tiホーン(horn)203が備えられた超音波発生装置201、反応器202、恒温槽204、及び加熱器205からなる棒状形超音波処理装置器を設置した。設置された実験装置の概略図を図3に示した。
【0030】
本発明で用いた超音波装置はSONICS & MATERIALS社製(モデル名VCX750)の棒状形超音波発生装置101であって、周波数は20kHzであり、出力は200Wに固定して反応を進めた。温度を一定に維持するために恒温槽104を使用した。
【0031】
実施例1(CuInSe2ナノ粒子の製造)
1:1:2のモル比でCu(CH3COO)2、In(CH3COO)3及びSe粉末を反応器102に入れた。トリエチレンテトラミン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート及びアルコール系有機溶剤で反応器を満たし、100℃で4時間超音波処理した後、自然冷却させた。生成物は遠心分離して溶媒を分離し、蒸留水とエタノールで数回繰り返して洗浄した後、80℃の常圧雰囲気で4時間乾燥させた。
【0032】
得られたCuInSe2ナノ粒子の組成に対する定性分析と粒度分布を調べるために、EDS(Energy Dispersive Spectroscopy)と走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を測定してその結果を図4と図5に示した。最終的に得られた生成物がCu:In:Seの組成比が0.96:1.00:2.04である粒径100nm〜150nmの粒子からなっていることが確認できる。得られた生成物の相を確認するために粉末用X‐線回折分析(X-ray Diffraction、XRD)が用いられ、その分析結果を図6に示した。生成物のX‐線回折パターンは正方晶系であるCIS上の主ピーク112、204/220、312/116に対応した。これは、得られたCISナノ粒子が正方晶系の結晶構造を有するということを裏付ける。
【0033】
実施例2(溶媒の最初の再活用)
実施例1から遠心分離して分離された溶媒を再使用してCuInSe2ナノ粒子を合成した。まず、Cu(CH3COO)2、In(CH3COO)3及びSe粉末を1:1:2のモル比で反応器に入れた。実施例1から得られた溶媒で反応器を満たし、超音波処理した後、自然冷却させた。生成物は遠心分離して溶媒を分離し、蒸留水とアルコールで数回繰り返して洗浄した後、80℃の常圧雰囲気で4時間乾燥させた。得られたナノ粒子の粉末X‐線回折分析グラフを図7(a)に示した。
【0034】
実施例3(溶媒の2度目の再活用)
実施例2から遠心分離して分離された溶媒を再使用してCuInSe2ナノ粒子を合成した。Cu、In、Se原材料を反応器に入れ、実施例3から得られた溶媒で反応器を満たした後、超音波を溶液に印加した。その後の段階は実施例2と同一に進めてナノ粒子粉末を製造した。得られたナノ粒子の粉末X‐線回折分析グラフを図7(b)に示した。
【0035】
実施例4(溶媒の3度目の再活用)
実施例3から遠心分離して分離された溶媒を再使用してCuInSe2ナノ粒子を合成した。Cu、In、Se原材料を反応器に入れ、実施例3から得られた溶媒で反応器を満たした後、超音波を溶液に印加した。その後の段階は実施例2と同一に進めてナノ粒子粉末を製造した。得られたナノ粒子の粉末X‐線回折分析グラフを図7(c)に示した。
【0036】
実施例5(溶媒の4度目の再活用)
実施例4から遠心分離して分離された溶媒を再使用してCuInSe2ナノ粒子を合成した。Cu、In、Se原材料を反応器に入れ、実施例3から得られた溶媒で反応器を満たした後、超音波を溶液に印加した。その後の段階は実施例2と同一に進めてナノ粒子粉末を製造した。得られたナノ粒子の粉末X‐線回折分析グラフを図7(d)に示した。
【0037】
図7は、実施例1で分離された溶媒を継続的に再使用して合成したCISナノ粒子に対するそれぞれのX‐線回折結果であって、共通して(典型的なCIS正方晶系結晶構造の112方向に沿って配向されていることを示す)2θ=26.6°でのピークを観察できる。これはナノ粒子の合成に一度用いられた溶媒が追加の供給なしに継続的にナノ粒子の合成に再使用され得ることを示す結果であって、本発明が非常に経済的で、かつ環境に優しい工程であることを示す。
【0038】
実施例6(Cu(In、Ga)Se2ナノ粒子の製造)
CuCl、In(CH3COO)3、Ga(NO3)3及びSe粉末を1.0:0.7:0.3:2.0のモル比で窒素系錯化剤とアルコール系有機溶剤が入った反応器で混合し、80℃で4時間超音波処理した後、自然冷却させた。最終生成物は遠心分離器を用いて溶媒と分離し、蒸留水とアルコール系溶媒で2回以上繰り返し洗浄して副産物を全て除去した後、80℃の常圧雰囲気で4時間乾燥させた。
【0039】
得られた生成物の組成に対する定性分析、粒度分布及び最終生成物の相を確認するために、EDS、走査電子顕微鏡、粉末用X‐線回折分析を測定し、その結果をそれぞれ図8、図9、及び図10に示した。これらは最終的に得られた生成物がCu:In:Ga:Seの成分比が0.96:0.62:0.33:2.09からなる粒径約37nmの微細な粒子が互いに塊になっていることを示す。生成物のX‐線回折パターンは正方晶系であるCIGS上の主ピーク112、204/220、312/116に対応した。
【0040】
図11は、得られた生成物の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)写真であり、最終生成物が0.20nmと0.32nmの格子間隔(lattice spacing)を有するものと測定された。これは、生成物のX‐線回折パターン(図8)の112、204/220方向とも一致する結果である。
【0041】
図12は、得られた生成物の成分別分布マッピング(X-Ray Mapping)を測定した結果である。Cu、In、Ga、Se元素が均一に分布していることを示す。これは、生成物が各元素の物理的な混合物ではなく、CIGS化合物からなっていることを裏付ける。
【0042】
実施例7(CuInS2ナノ粒子の製造)
CuCl、InCl3とチオアセトアミドを1:1:2のモル比でアルコール系有機溶剤と混合した。混合された溶液は100℃で4時間超音波処理した後、自然冷却させた。生成物は遠心分離器を用いて溶媒と分離し、蒸留水とエタノールで数回繰り返して洗浄して副産物を除去した後、80℃の常圧雰囲気で乾燥させた。
【0043】
得られた生成物の組成に対する定性分析と粒度分布を調べるために、各元素の特性転移エネルギーを、EDSと走査電子顕微鏡を測定してその結果を図13と図14に示した。これを通じて最終的に得られた生成物がCu:In:Sの組成比が1.03:1.00:1.97である粒径20nm〜60nmの粒子で構成されていることが分かる。得られた生成物の相を確認するために、粉末用X‐線回折分析とラマン分光器(Raman Spectroscopy)が用いられ、その分析結果が図15と図16に示されている。図15から分かるように、2theta=27.9°近傍でCuInS2に該当する112ピークを観察できる。他の主要ピークもCuInS2の020、024/220、116/312、040方向に該当することが分かる。生成物のラマン分光測定結果を示す図16は290cm-1で単一ピークのみを示すが、これは化学量論比が合うCuInS2の格子振動のA1 modeに該当する。
【0044】
実施例8(Cu(In、Ga)S2ナノ粒子の製造)
CuCl、In(CH3COO)3、Ga粉末及びSe粉末を1.0:0.7:0.3:2.0のモル比で反応器に入れ、アルコール系有機溶剤と混合した。混合された溶液は100℃で4時間超音波処理した後、自然冷却させた。生成物は遠心分離器を用いて溶媒と分離し、蒸留水とアルコールで数回繰り返して洗浄して副産物を除去した後、80℃の常圧雰囲気で乾燥させた。
【0045】
得られた生成物の組成に対する定性分析、粒度分布及び最終生成物の相を確認するために、EDS、走査電子顕微鏡、粉末用X‐線回折分析及びラマン分光を測定し、その結果をそれぞれ図17、図18、図19及び図20に示した。SEMとEDS結果は最終生成物がCu:In:Ga:Sの成分比が1.09:0.65:0.37:1.89からなる粒径約60nm以下の微細な粒子で構成されていることを示す。ラマン分光測定結果、290cm-1での単一ピークのみが観察された。X‐線回折分析は最終生成物の112ピーク(28.28°)が実施例1で得られたCuInS2(27.94°)より高い回折角を有していることを示す。一般に、CuInS2、CuInSe2などの化合物にIn元素より小さいGa元素が一部添加されると、より高い回折角でピークが観察される。最終生成物としては、CuIn0.65Ga0.35S2ナノ粒子が合成された。
【0046】
実施例9(多結晶光吸収層薄膜の製造)
ナノ粒子前駆体が蒸着された基板を熱処理を通じて多結晶CIS系薄膜として製造するために、まず実施例7、8で得られたナノ粒子を水、アルコールなどの溶液に分散させ、ドクターブレード及びスピンキャスティングなどの方法で基板に蒸着した。図21は、ドクターブレード方法によりCuInS2ナノ粒子が蒸着された基板を撮影した走査電子顕微鏡写真である。ナノ粒子薄膜はそれぞれSe気体雰囲気の下で所定の温度で所定時間加熱した。CuInS2ナノ粒子薄膜は500℃で20分間、CuIn0.65Ga0.35S2ナノ粒子薄膜は450℃で15分間加熱した後、自然冷却させた。
【0047】
熱処理したナノ粒子薄膜のX‐線回折分析測定結果を図22に示した。CuInS2ナノ粒子薄膜は熱処理の後、Se気体により多結晶CuInSe2(CIS)薄膜となった。CuIn0.65Ga0.35S2ナノ粒子薄膜は熱処理後、主要X‐線回折分析ピークがCuIn0.7Ga0.3Se2化合物とCuIn0.5Ga0.5Se2化合物の有する回折角の間で観察された。従って、CuIn0.65Ga0.35S2薄膜がSe気体により多結晶CuIn0.65Ga0.35S2(CIGS)薄膜に変換されたことが確認できる。
【0048】
図23と図24は、本発明によって製造されたCuInS2ナノ粒子薄膜を熱処理して製造したCuInSe2薄膜の走査電子顕微鏡の前面写真と側面写真である。加熱による熱とSe気体によりCuInS2ナノ粒子薄膜から0.9μm〜2.0μmの粒径を有する、厚さ約3.0μmの多結晶CuInSe2薄膜が製造されたことが分かる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明に係る技術的思想の範囲から逸脱しない範囲内で様々な変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0050】
101 CuInξGa1‐ξS2ナノ粒子前駆体
102 Cu(InξGa1‐ξ)(SeψS1‐ψ)2多結晶
103 基板
201 超音波発生装置
202 反応器
203 Tiホーン(horn)
204 恒温槽
205 加熱器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)I族原料、III族原料及びVI族原料を溶媒と共に混合して混合溶液を製造する段階と、
(a2)前記混合溶液を超音波処理する段階と、
(a3)前記超音波処理された混合溶液から溶媒を分離する段階と、
(a4)前記(a3)段階から得られた結果物を乾燥させてナノ粒子を得る段階と
を含むことを特徴とするI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記溶媒は、窒素系錯化剤及び水又はアルコール系有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒は、イオン性液体を更に含むことを特徴とする請求項2に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記窒素系錯化剤は、
ジエチルアミン(diethyl amine)、トリエチルアミン(triethylamine)、ジエチレンジアミン(diethylene diamine)、ジエチレントリアミン(diethylene triamine)、トルエンジアミン(toluene diamine)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、ジフェニルメタンジアミン(diphenylmethane diamine)、ヘキサメチレンジアミン(hexamethylene diamine)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylenepentamine)、ヘキサメチレンテトラミン(hexamethylene tetramine)、4,4-ジアミノジフェニルメタン(4,4-diaminodiphenyl methane)を含むアミン化合物とヒドラジン(hydrazine)、ヒドラジド(hydrazide)、チオアセトアミド(thioacetamide)、ウレア(urea)及びチオ尿素(thiourea)からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記アルコール系有機溶剤は、
メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、イソプロパノール(isopropanol)、ブタノール(butanol)、イソブタノール(isobutanol)、3-メチル-3-メトキシブタノール(3-methyl-3-methoxy butanol)、トリデシルアルコール(tridecyl alcohol)、ペンタノール(pentanol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、へキシレングリコール(hexylene glycol)、ブチレングリコール(butylene glycol)、スクロース(sucrose)、ソルビトール(sorbitol)及びグリセリン(glycerin)からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記イオン性液体は、
アルキルアンモニウム(alkyl amonium)、アルキルピリジニウム(N-alkyl pyridinium)、アルキルピリダジニウム(N-alkyl pyridazinium)、アルキルピリミジニウム(N-alkyl pyrimidinium)、アルキルピラジニウム(N-alkyl pyrazinium)、アルキルイミダゾリウム(N,N-alkyl imidazolium)、アルキルピラゾリウム(N-alkyl pyrazolium)、アルキルチアゾリウム(N-alkyl thiazolium)、アルキルオキサゾリウム(N-alkyl oxazolium)、アルキルトリアゾリウム(N-alkyl triazolium)、アルキルホスホニウム(N-alkyl phosphonium)及びアルキルピロリジニウム(N-alkyl pyrolidinium)からなる群より選択される化合物又は前記化合物の誘導体のカチオン、ヘキサフルオロアンチモネート(hexafluoroantimonate、SbF6_)、ヘキサフルオロホスフェート(hexafluorophosphate、PF6-)、テトラフルオロボラート(tetrafluoroborate、BF4-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(bis(trifluoromethylsulfonyl)amide、(CF3SO2)2N-)、トリフルオロメタンスルホネート(trifluoromethanesulfonate、CF3SO3-)、アセテート(acetate、OAc-)及び硝酸(nitrate、NO3-)からなる群より選択されるアニオンを含むことを特徴とする請求項3に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記(a2)段階で超音波処理温度は-13〜200℃であることを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記(a2)段階で超音波処理は1〜24時間行われることを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム、インジウム化合物、ガリウム又はガリウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム、セレニウム化合物、硫黄又は硫黄化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、Cu(InξGa1‐ξ)(SeψS1‐ψ)2(0<x<1、0<y<1)ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム、インジウム化合物、ガリウム又はガリウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム又はセレニウム化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuInξGa1‐ξSe2(0<x<1)ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム、インジウム化合物、ガリウム及びガリウム化合物であり、
前記VI族原料は硫黄又は硫黄化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuInξGa1‐ξS2(0<x<1)ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム又はインジウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム、セレニウム化合物、硫黄又は硫黄化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuIn(SeψS1‐ψ)2(0<y<1)ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はガリウム又はガリウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム、セレニウム化合物、硫黄又は硫黄化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuGa(SeψS1‐ψ)2(0<y<1)ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はガリウム又はガリウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム又はセレニウム化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuGaSe2ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はガリウム又はガリウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム又はセレニウム化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuGaS2ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム又はインジウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム又はセレニウム化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子としてCuInSe2ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項17】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム又はインジウム化合物であり、
前記VI族原料は硫黄又は硫黄化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子としてCuInS2ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項18】
前記銅化合物は、
CuO、CuO2、CuOH、Cu(OH)2、Cu(CH3COO)、Cu(CH3COO)2、CuF2、CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、Cu(ClO4)2、Cu(NO3)2、CuSO4、CuSe、Cu2−ξSe(0<x<2)、Cu2Se及びこれらの水化物からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項9〜17の何れか一項に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項19】
前記インジウム化合物は、
In2O3、In(OH)3、In(CH3COO)3、InF3、InCl、InCl3、CInBr、InBr3、InI、InI3、In(ClO4)3、In(NO3)3、In2(SO4)3、In2Se3、InGaSe3及びこれらの水化物からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項9〜12、16及び17の何れか一項に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項20】
前記ガリウム化合物は、
Ga2O3、Ga(OH)3、Ga(CH3COO)3、GaF3、GaCl、GaCl3、GaBr、GaBr3、GaI、GaI3、Ga(ClO4)3、Ga(NO3)3、Ga2(SO4)3、Ga2Se3、InGaSe3及びこれらの水化物からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項9〜11及び13〜15に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項21】
前記セレニウム化合物は、
Se、H2Se、Na2Se、K2Se、Ca2Se、(CH3)2Se、CuSe、Cu2−ξSe(0<x<2)、Cu2Se、In2Se3及びこれらの水化物からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項9、10、13〜16に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項22】
前記硫黄化合物は、
チオアセトアミド(thioacetamide)、チオ尿素(thiourea)、チオアセト酸(thioacetic acid)、アルキルチオール(alky thiol)及び硫化ナトリウム(Sodium sulfide)からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項9、11〜13及び17に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項23】
(S1)請求項1〜17の中から選択された何れか一項によるナノ粒子の製造方法を用いてI-III-VI2ナノ粒子を製造する段階と、
(S2)前記ナノ粒子を基板に蒸着する段階と、
(S3)前記基板に蒸着されたナノ粒子をセレニウム(Se)、硫黄(S)、非活性気体又はこれらの混合気体雰囲気で熱処理して多結晶I-III-VI2薄膜を形成する段階と
を含むことを特徴とする多結晶光吸収層薄膜の製造方法。
【請求項24】
前記(S3)段階で熱処理温度は350〜600℃であることを特徴とする請求項19に記載の多結晶光吸収層薄膜の製造方法。
【請求項1】
(a1)I族原料、III族原料及びVI族原料を溶媒と共に混合して混合溶液を製造する段階と、
(a2)前記混合溶液を超音波処理する段階と、
(a3)前記超音波処理された混合溶液から溶媒を分離する段階と、
(a4)前記(a3)段階から得られた結果物を乾燥させてナノ粒子を得る段階と
を含むことを特徴とするI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記溶媒は、窒素系錯化剤及び水又はアルコール系有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒は、イオン性液体を更に含むことを特徴とする請求項2に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記窒素系錯化剤は、
ジエチルアミン(diethyl amine)、トリエチルアミン(triethylamine)、ジエチレンジアミン(diethylene diamine)、ジエチレントリアミン(diethylene triamine)、トルエンジアミン(toluene diamine)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、ジフェニルメタンジアミン(diphenylmethane diamine)、ヘキサメチレンジアミン(hexamethylene diamine)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylenepentamine)、ヘキサメチレンテトラミン(hexamethylene tetramine)、4,4-ジアミノジフェニルメタン(4,4-diaminodiphenyl methane)を含むアミン化合物とヒドラジン(hydrazine)、ヒドラジド(hydrazide)、チオアセトアミド(thioacetamide)、ウレア(urea)及びチオ尿素(thiourea)からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記アルコール系有機溶剤は、
メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、イソプロパノール(isopropanol)、ブタノール(butanol)、イソブタノール(isobutanol)、3-メチル-3-メトキシブタノール(3-methyl-3-methoxy butanol)、トリデシルアルコール(tridecyl alcohol)、ペンタノール(pentanol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、へキシレングリコール(hexylene glycol)、ブチレングリコール(butylene glycol)、スクロース(sucrose)、ソルビトール(sorbitol)及びグリセリン(glycerin)からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記イオン性液体は、
アルキルアンモニウム(alkyl amonium)、アルキルピリジニウム(N-alkyl pyridinium)、アルキルピリダジニウム(N-alkyl pyridazinium)、アルキルピリミジニウム(N-alkyl pyrimidinium)、アルキルピラジニウム(N-alkyl pyrazinium)、アルキルイミダゾリウム(N,N-alkyl imidazolium)、アルキルピラゾリウム(N-alkyl pyrazolium)、アルキルチアゾリウム(N-alkyl thiazolium)、アルキルオキサゾリウム(N-alkyl oxazolium)、アルキルトリアゾリウム(N-alkyl triazolium)、アルキルホスホニウム(N-alkyl phosphonium)及びアルキルピロリジニウム(N-alkyl pyrolidinium)からなる群より選択される化合物又は前記化合物の誘導体のカチオン、ヘキサフルオロアンチモネート(hexafluoroantimonate、SbF6_)、ヘキサフルオロホスフェート(hexafluorophosphate、PF6-)、テトラフルオロボラート(tetrafluoroborate、BF4-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(bis(trifluoromethylsulfonyl)amide、(CF3SO2)2N-)、トリフルオロメタンスルホネート(trifluoromethanesulfonate、CF3SO3-)、アセテート(acetate、OAc-)及び硝酸(nitrate、NO3-)からなる群より選択されるアニオンを含むことを特徴とする請求項3に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記(a2)段階で超音波処理温度は-13〜200℃であることを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記(a2)段階で超音波処理は1〜24時間行われることを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム、インジウム化合物、ガリウム又はガリウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム、セレニウム化合物、硫黄又は硫黄化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、Cu(InξGa1‐ξ)(SeψS1‐ψ)2(0<x<1、0<y<1)ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム、インジウム化合物、ガリウム又はガリウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム又はセレニウム化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuInξGa1‐ξSe2(0<x<1)ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム、インジウム化合物、ガリウム及びガリウム化合物であり、
前記VI族原料は硫黄又は硫黄化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuInξGa1‐ξS2(0<x<1)ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム又はインジウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム、セレニウム化合物、硫黄又は硫黄化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuIn(SeψS1‐ψ)2(0<y<1)ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はガリウム又はガリウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム、セレニウム化合物、硫黄又は硫黄化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuGa(SeψS1‐ψ)2(0<y<1)ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はガリウム又はガリウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム又はセレニウム化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuGaSe2ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はガリウム又はガリウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム又はセレニウム化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子として、CuGaS2ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム又はインジウム化合物であり、
前記VI族原料はセレニウム又はセレニウム化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子としてCuInSe2ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項17】
前記I族原料は銅又は銅化合物であり、
前記III族原料はインジウム又はインジウム化合物であり、
前記VI族原料は硫黄又は硫黄化合物であり、
前記I-III-VI2ナノ粒子としてCuInS2ナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項18】
前記銅化合物は、
CuO、CuO2、CuOH、Cu(OH)2、Cu(CH3COO)、Cu(CH3COO)2、CuF2、CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、Cu(ClO4)2、Cu(NO3)2、CuSO4、CuSe、Cu2−ξSe(0<x<2)、Cu2Se及びこれらの水化物からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項9〜17の何れか一項に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項19】
前記インジウム化合物は、
In2O3、In(OH)3、In(CH3COO)3、InF3、InCl、InCl3、CInBr、InBr3、InI、InI3、In(ClO4)3、In(NO3)3、In2(SO4)3、In2Se3、InGaSe3及びこれらの水化物からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項9〜12、16及び17の何れか一項に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項20】
前記ガリウム化合物は、
Ga2O3、Ga(OH)3、Ga(CH3COO)3、GaF3、GaCl、GaCl3、GaBr、GaBr3、GaI、GaI3、Ga(ClO4)3、Ga(NO3)3、Ga2(SO4)3、Ga2Se3、InGaSe3及びこれらの水化物からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項9〜11及び13〜15に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項21】
前記セレニウム化合物は、
Se、H2Se、Na2Se、K2Se、Ca2Se、(CH3)2Se、CuSe、Cu2−ξSe(0<x<2)、Cu2Se、In2Se3及びこれらの水化物からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項9、10、13〜16に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項22】
前記硫黄化合物は、
チオアセトアミド(thioacetamide)、チオ尿素(thiourea)、チオアセト酸(thioacetic acid)、アルキルチオール(alky thiol)及び硫化ナトリウム(Sodium sulfide)からなる群より選択された1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項9、11〜13及び17に記載のI-III-VI2ナノ粒子の製造方法。
【請求項23】
(S1)請求項1〜17の中から選択された何れか一項によるナノ粒子の製造方法を用いてI-III-VI2ナノ粒子を製造する段階と、
(S2)前記ナノ粒子を基板に蒸着する段階と、
(S3)前記基板に蒸着されたナノ粒子をセレニウム(Se)、硫黄(S)、非活性気体又はこれらの混合気体雰囲気で熱処理して多結晶I-III-VI2薄膜を形成する段階と
を含むことを特徴とする多結晶光吸収層薄膜の製造方法。
【請求項24】
前記(S3)段階で熱処理温度は350〜600℃であることを特徴とする請求項19に記載の多結晶光吸収層薄膜の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2010−526007(P2010−526007A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502953(P2010−502953)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003421
【国際公開番号】WO2009/064056
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(509017594)成均館大学校 産学協力団 (10)
【氏名又は名称原語表記】SUNGKYUNKWAN UNIVERSITY Foundation for Corporate Collaboration
【住所又は居所原語表記】300 Cheoncheon−dong, Jangan−gu, Suwon−si, Gyeonggi−do 440−746, Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003421
【国際公開番号】WO2009/064056
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(509017594)成均館大学校 産学協力団 (10)
【氏名又は名称原語表記】SUNGKYUNKWAN UNIVERSITY Foundation for Corporate Collaboration
【住所又は居所原語表記】300 Cheoncheon−dong, Jangan−gu, Suwon−si, Gyeonggi−do 440−746, Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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