説明

ICカード

【課題】 セキュリティ性と利便性とを共に実現されたICカードを提供する。
【解決手段】 静電容量型指紋センサ10、表示素子11、記憶部16、及び演算処理部を具14、15備し、記憶部16には、認証指紋データ、特定情報、及び当該特定情報を利用するためのアプリケーションが記憶されており、演算処理部14、15は、静電容量型指紋センサ10から抽出された抽出指紋データと、認証指紋データとを比較し、抽出指紋データと、認証指紋データとが一致した場合のみに、演算処理部14、15はアプリケーションを起動し、表示素子11は特定情報を表示するICカードを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋センサを搭載したICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカード(スマートカード)は、IC(集積回路)チップを搭載したカードであり、磁気ストライプカードと比較して、高情報容量化、セキュリティ性向上(偽変造、不正使用の防止)、複数のアプリケーションに対応可能、ホスト負荷軽減(オフライン処理が可能)等の特徴を有する。このため、クレジットカードやキャッシュカードの他、電子マネー、電子商取引、医療保健分野、鉄道・バスなどの交通分野やビルの入退出管理等への展開が盛んに行われ始めている。これに伴い、更なるセキュリティ向上(情報保護、アクセス制限等)の目的から、指紋センサを搭載した個人認証機能付きICカードが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、近年では、個人認証機能だけでなく、複数のアプリケーション(マルチアプリケーション)が利用可能なICカードに関する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平11−312225号公報
【特許文献2】特開2001−307043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本発明者は、上記特許文献に記載された技術は、利便性が不十分であることを見出した。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、セキュリティ性と利便性とを共に実現されたICカードを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、個人認証機能を備えたICカードにおいて、ICカード自体に表示装置が設けられていないことから、個人認証後に身分証明書等の個人情報を表示できないことに着目した。また、本発明者は、マルチアプリケーション機能を備えたICカードにおいて、複数のアプリケーションのうち、どのアプリケーションを利用するか確認できないことに着目した。そして、本発明者は、このような従来のICカードには表示機能が具備されていないことから、情報表示を行うことができず、個人認証後における利便性が低いことを見出した。
そこで、本発明者は、上記に基づいて以下の手段を有するICカードを想到した。
【0005】
即ち、本発明のICカードは、静電容量型指紋センサ、表示素子、記憶部、及び演算処理部を具備し、前記記憶部には、認証指紋データ、特定情報、及び当該特定情報を利用するためのアプリケーションが記憶されており、前記演算処理部は、前記静電容量型指紋センサから抽出された抽出指紋データと、前記認証指紋データとを比較し、前記抽出指紋データと、前記認証指紋データとが一致した場合のみに、前記演算処理部は前記アプリケーションを起動し、前記表示素子は前記特定情報を表示することを特徴としている。
【0006】
本発明によれば、演算処理部において、静電容量型指紋センサから抽出された抽出指紋データと、記憶部に記憶された認証指紋データとを比較することによって、ICカードの利用者の個人認証を行うことができ、ICカードの利用者を限定することができる。従って、ICカードの悪用を防止することができ、セキュリティ性が高いICカードを実現できる。
また、本発明のICカードは、抽出指紋データと、認証指紋データとが一致した場合のみに、アプリケーションを起動させることができる。更に、本発明のICカードは、このような個人認証や、アプリケーションの起動だけでなく、当該アプリケーションにおける特定情報を表示することができる。従って、ICカードの利用者は、当該特定情報を確認することができる。一方、従来のICカードにおいては、表示素子が具備されていないために、個人認証後の情報を確認することができなかった。
従って、本発明は、従来のICカードと比較して、個人認証後の利便性がより高いものとなる。
【0007】
また、本発明のICカードにおいては、静電容量型指紋センサ、表示素子、記憶部、及び演算処理部を具備し、前記記憶部には、認証指紋データ、複数の特定情報、及び当該複数の特定情報を各々利用するための複数のアプリケーションが記憶されており、前記演算処理部は、前記静電容量型指紋センサから抽出された抽出指紋データと、前記複数の認証指紋データとを比較し、前記抽出指紋データと、前記複数の認証指紋データとが一致した場合のみに、前記演算処理は、前記複数のアプリケーションのいずれかを起動可能とし、前記表示素子は前記複数のアプリケーションに対応した複数の特定情報のいずれかを表示可能とすることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、演算処理部において、静電容量型指紋センサから抽出された抽出指紋データと、記憶部に記憶された認証指紋データとを比較することによって、ICカードの利用者の個人認証を行うことができ、ICカードの利用者を限定することができる。従って、ICカードの悪用を防止することができ、セキュリティ性が高いICカードを実現できる。
また、本発明のICカードは、抽出指紋データと、認証指紋データとが一致した場合のみに、複数のアプリケーションを起動させることができる。更に、本発明のICカードは、このような個人認証や、複数のアプリケーションを起動させるだけでなく、当該複数のアプリケーションの各々における特定情報を表示することができる。従って、ICカードの利用者は、当該特定情報を確認することができる。一方、従来のICカードにおいては、表示素子が具備されていないために、個人認証後の情報を確認することができなかった。
従って、本発明は、従来のICカードと比較して、個人認証後の利便性がより高いものとなる。
【0009】
また、本発明のICカードにおいては、前記記憶部には、複数の前記認証指紋データが記憶されており、当該複数の認証指紋データの各々は、前記複数のアプリケーションの各々に対応しており、前記静電容量型指紋センサから抽出された抽出指紋データと、前記複数の認証指紋データのいずれか一の認証指紋データとが一致した場合のみに、前記演算処理部は前記一の認証指紋データに対応したアプリケーションを起動し、前記表示素子は当該アプリケーションにおける特定情報を表示することを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、先に記載したICカードと同様の効果が得られる。更に、本発明においては、複数の認証指紋データの各々は、前記複数のアプリケーションの各々に対応しているので、利用者が複数の指のうちいずれかを選択してICカードの静電容量型指紋センサに触れることで、個人認証が行われ、更に、当該指に対応したアプリケーションを限定して起動させることができる。更に、当該アプリケーションに対応した特定情報を表示素子において表示させることができる。従って、アプリケーションを選択するための選択手段が不要になり、スイッチ等の入力手段をICカードに設ける必要がなくなり、ICカードの構成を簡素化することができる。
【0011】
また、本発明のICカードにおいては、前記複数のアプリケーションのうちいずれかを選択する選択手段を更に備え、前記抽出指紋データと、前記複数の認証指紋データとが一致した場合のみに、前記選択手段は、前記複数のアプリケーションのいずれかを選択し、前記表示素子は当該選択されたアプリケーションの特定情報を表示することを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、先に記載したICカードと同様の効果が得られる。更に、本発明においては、指紋センサによる個人認証後に、選択手段によって複数のアプリケーションのうちいずれかを選択することにより、特定のアプリケーションを起動させることができる。更に、当該アプリケーションにおける特定情報を表示素子において表示させることができる。
【0013】
また、本発明のICカードにおいては、外部装置との通信を可能とする通信部を更に備え、前記演算処理部において前記抽出指紋データと前記認証指紋データとが一致した場合のみに、前記演算処理部は前記通信部を介して前記外部装置に前記特定情報を出力することを特徴としている。
ここで、通信部とは、ICカードと外部装置との通信を可能とするものであって、その形態は限定されるものではない。通信部として、例えば、外部装置に設けられた端子と、ICカードに設けられた端子とが直接的に接続されることで、通信を行うものが挙げられる。また、通信部として、外部装置に設けられたアンテナと、ICカードに設けられたアンテナとが、電磁的な作用によって通信を行うものが挙げられる。
このようにすれば、先に記載したICカードと同様の効果が得られると共に、通信部を介してICカードで利用可能なアプリケーションにおける特定情報を外部装置に出力することができる。
【0014】
また、本発明のICカードにおいては、外部装置との通信を可能とする通信部を更に備え、前記演算処理部において前記抽出指紋データと前記認証指紋データとが一致した場合のみに、前記演算処理部は前記通信部を介して前記外部装置が出力する更新情報を入力し、前記記憶部は、前記更新情報を記憶することを特徴としている。
このようにすれば、先に記載したICカードと同様の効果が得られると共に、通信部を介して外部装置が出力する更新情報をICカードに入力することができる。
【0015】
また、本発明のICカードにおいては、前記表示素子は、前記更新情報を表示することを特徴としている。
このようにすれば、先に記載したICカードと同様の効果が得られると共に、通信部を介して外部装置からICカードに入力された更新情報を表示することができる。
【0016】
また、本発明のICカードにおいては、前記表示素子は、電気泳動表示デバイスであることを特徴としている。
ここで、電気泳動表示デバイスは、TFT等の駆動素子が所定時間の間に所定電圧を付与することで、その後に電圧を付加することなく、画像を保持することが可能となっている。即ち、画像の表示記憶性や表示メモリ性を有する表示素子である。
このような電気泳動表示デバイスを備えることにより、画像を表示するための消費電力を低減できるので、低消費電力を実現することができると共に、表示メモリ性を有するICカードを実現できる。
【0017】
また、本発明のICカードにおいては、前記電気泳動表示デバイスが表示した画像を消去する画像消去手段を更に備えることを特徴としている。
上記のように、電気泳動素子は表示メモリ性を有している。そこで、本発明のように画像消去手段を備えることで、ICカードの使用後に電気泳動表示デバイスにおける残像を消去することができ、ICカードが表示する特定情報の悪用を防止できる。これにより、より高いセキュリティ性を有するICカードを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(ICカードの第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るICカードについて図を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るICカードKを示す平面図である。
図1に示すように、ICカードKは、指紋センサ(静電容量型指紋センサ)10と、電気泳動表示デバイス(表示素子、Electro Phoretic Display、以下、EPDと称する。)11と、接続用IC端子(通信部)12と、画像消去スイッチ(画像消去手段)13と、を備えている。
また、ICカードKの内部には、2枚のプラスチック基材によって挟持されたICチップ等の集積回路が設けられている。そして、ICチップは、後述するように演算処理部(後述)と記憶部(後述)として機能するようになっている。
【0019】
次に、図2〜図4を参照して、ICカードKにおける各構成要素について詳述する。
図2は指紋センサの構成を示す模式図であり、図3は電気泳動表示デバイス(EPD)の断面を示す断面図であり、図4はICカードKの構成を説明するためのブロック図である。
【0020】
(指紋センサ)
図2に示すように、指紋センサ10は、静電容量型、すなわち凹凸を有する指紋と検出面10aとの間の距離に応じて変化する静電容量を測定して、指紋データを検出するようになっている。このような静電容量型の指紋センサ10は、光源が不要であるために薄型化することが容易であり、かつ表面保護層(パッシベーション膜)を適切に選択することによって、耐傷性を向上させることが可能となっている。
指紋センサ10は、プラスチック基材115上に設けられており、このプラスチック基材115上には、所定の間隔を空けて互いに平行に形成された不図示の複数の走査線と、この走査線に対して直交するように所定の間隔を空けて互いに平行に形成された複数の信号線116とが設けられている。
【0021】
複数の走査線と複数の信号線116との交点のそれぞれに対応する位置には、トランジスタ等によって構成されるスイッチング素子112が設けられている。
これらの走査線、信号線116およびスイッチング素子112によって、アクティブマトリクスアレイ113が構成されており、このアクティブマトリクスアレイ113の上には、検出電極111が各スイッチング素子112に対応する位置にマトリックス状に設けられている。
各検出電極111は、アクティブマトリクスアレイ113の全面を覆うように絶縁膜(パッシベーション膜)114にて覆われており、絶縁膜114は、ICカードKの利用者の指Fと接触可能になっている。
なお、アクティブマトリクスアレイ113としては、半導体基板上に形成されたMOSトランジスタアレイ、絶縁基板上に形成された薄膜トランジスタ(TFT、Thin Film Transistor)等を用いることができる。
【0022】
このような構成を有する指紋センサ10においては、指Fが検出面10aに接触すると、指Fとマトリックス状に配置された各検出電極111との間に、2次元的に分布する静電容量が発生する(図2のC1,C2,C3等)。この2次元的に分布した各静電容量の値をアクティブマトリクスアレイ113によって電気的に読み出すことにより、指Fの表面に形成された微細な凹凸形状のパターン(抽出指紋データ)を検出することができる。静電容量方式を用いた指紋センサ10において、人体に帯電した静電気による放電破壊を回避するためには、検出前において、指Fに帯電した静電気を放電し、指Fの電位をスイッチング素子112のグランド(基準電位)Gレベルと略同一の電位にしておくことが必須である。更に、各静電容量の値を安定して検出するためには、検出時において、指Fの電位を所定の電位に固定することが好ましい。このため、検出電極とは異なる電極、すなわち人体に帯電した静電気を放電させる放電用電極120をICカードKの基板50上に設けている。
また、このような指紋センサ10において検出された信号は、信号線116を介して、後述する第2演算処理部15に伝達するようになっている。
【0023】
(EPD)
図3は、EPD11の断面を示す断面図である。
EPD11は、可撓性を有するプラスチック基材115上に、電極フィルム211d、電気泳動表示層211c、電極フィルム211b及びこの表示部を保護する表面保護層211aが積層されて構成されている。なお、表面保護層211aは省略することも可能である。このようなEPD11は、指紋センサ10と同じプラスチック基材115上に形成されている。
【0024】
電極フィルム211bは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等の寸法安定性の優れた透明なプラスチックフィルムに電極が形成されているものである。電極フィルム211dも同様な基材の電極が形成されてなるものであるが、必ずしも透明性は要求されない。なお、電極フィルム211bと電極フィルム211dとは、上下動通電極211fにより導通される。
電極フィルム211bは、全面に同一の電位がかかる共通電極となり、一方、電極フィルム211dにはアクティブマトリックス電極或いはセグメント電極等が形成されて駆動電極となる。
【0025】
電気泳動表示層211cを形成するマイクロカプセル211は、アラビアガム・ゼラチンの複合膜、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、尿素樹脂等をカプセル殻とし、カプセル殻の作製方法としては、界面重合法、in−situ重合法、相分離法、界面沈殿法、スプレードライング法、等の公知のマイクロカプセル化手法を採用することができる。内部には泳動粒子と分散媒が封入される。泳動粒子としては有機あるいは無機の粒子(高分子あるいはコロイド)が用いられる。たとえば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ、ジイスアゾン、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン等の黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、アントラキノン系染料、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等の1種又は2種以上を用いることができる。分散媒としては無色または染料により染色された水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブ等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等の各種エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等の長鎖アルキル基を有するベンゼン類等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、カルボン酸塩又はその他の種々の油類等の単独又はこれらの混合物に界面活性剤等を配合したものを用いることができる。
【0026】
電気泳動は、電気泳動粒子は予め正または負に帯電させられており、また、分散媒と電気泳動粒子とは、互いに異なる着色がなされている。例えば白の粒子である酸化チタンを正電荷に、一方黒の粒子であるカーボンブラックを負電荷にした場合、二つの電極フィルム211b,211dに電界を印加して、電極フィルム211bが負極、電極フィルム211dが正極になると、正に帯電した白の粒子が電極フィルム211b側に引かれ、黒の粒子が電極フィルム211d側に引かれるので、電極フィルム211bを透明電極としておくことにより、電極フィルム211b側の上方から観察すると、その部分が白く見えるようになる。逆に、電極フィルム211bが正極、電極フィルム211dが負極になった場合には、正に帯電した白の粒子が電極フィルム211d側に引かれ、黒の粒子が電極フィルム211b側に引かれるので、電極フィルム211bの上方から観察するとその部分が黒く見える。
【0027】
EPD11は、上述したマイクロカプセル211を多数有しているので、電極フィルム211b,211dの各アドレス電極の電界を制御することで、所望の文字、数字、或いは記号を白と黒の画素で表示させることが可能となっている。
なお、マイクロカプセル211をアクティブマトリックス駆動法で駆動する場合は、電極フィルム211dは画素電極として画素毎に独立してパターニングされ、不図示の薄膜トランジスタ、信号電極、および走査電極を併設し、電極フィルム211bは光透過性基材上に一様に形成された透明な共通電極とする。この場合、電極フィルム211bを共通電極にすると全面同一電位になるので(例えば電位をゼロとする)、電極フィルム211d側の各アドレス電極の電界を制御(正または負の電位を与える)することで、上述した原理に基づき電極位置のマイクロカプセル211内の粒子を移動させ、所望の画像を表示させることができる。同様に、電極フィルム211dを共通電極とし、電極フィルム211b側の各アドレス電極の電界を制御することで、電極位置のマイクロカプセル211内の粒子を移動させることで所望の画像を表示させるようにしてもよい。
時分割駆動の場合は、電極フィルム211b、211dは互いに直交するライン状のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の透明導電体からなる透明電極により構成され、両電極の交わる領域にマイクロカプセル211を配置する。
駆動方式は上述したものに限定されず、用途に応じて最適なものを選択すればよい。また、マイクロカプセル211の径は、種々のものを採用することが可能である。
このようなEPD11は、表示画像を記憶するメモリ性を有している。具体的には、電極フィルム211b,211dの間に電圧を一度付与するだけで、EPD11の画像は保持され、電圧が付与されていない状態で表示画像が残るようになっている。従って、一度表示した画像を電源が切れても保持するという特性を有し、低消費電力が実現可能となっている。
【0028】
上記のような指紋センサ10及びEPD11においては、薄膜トランジスタを利用することにより指紋情報を静電容量として電気的に読み出したり、電気泳動表示層211cに電圧を付与したりしている。このような薄膜トランジスタは、SUFTLA(Surface Free Technology by Laser Ablation)(登録商標)等の剥離転写技術によりプラスチック基材115に形成されたものである。具体的には、耐熱性に優れ、透明性を有する、例えばガラス基板上に低温ポリシリコンTFTを予め形成し、その後、レーザー照射によって所定の薄膜トランジスタを剥離し、当該薄膜トランジスタをプラスチック基材115上に転写して形成するものである。このような技術を用いることにより、従来まではガラス基板のような硬くて耐熱性を有する基板のみにしか形成することができなかった薄膜トランジスタを、例えばガラス基板よりも耐熱性が劣るような、可撓性基板に転写形成することが可能となる。従って、柔軟性を有するプラスチック基材115等に容易に薄膜トランジスタを形成することが可能となり、指紋センサ10やEPD11を備えると共に可撓性を有するICカードKが実現可能となる。
【0029】
(接続用IC端子)
また、接続用IC端子12は、ICカードKと外部装置20との間で情報の入出力や送受信(通信)を行うためのものである。そして、当該接続用IC端子12は、ICカードKを使用する際に、外部装置20に設けられた端子に接続されるものである。また、接続用IC端子12は、ICカードKの内部に設けられたICチップに接続されており、外部装置とICチップとの間で入出力信号を送受信するようになっている。
なお、本実施形態においては、外部装置20とICカードKとの通信手段として接続用IC端子12を採用し、接続用IC端子12と外部装置20の端子とを直接的に接触させて入出力信号を送受信するようになっているが、本実施形態は、これに限定するものではなく、通信部としてアンテナがICカードKに設けて、当該アンテナと、外部装置20に設けられたアンテナとの間において、電磁的に入出力信号を送受信してもよい。
【0030】
(画像消去スイッチ)
また、画像消去スイッチ13は、例えば、メンブレンスイッチ等からなるものである。
ここで、上記のようにEPD11は、表示画像を記憶するメモリ性を有しているため、利用者が画像消去スイッチ13をONにすることで、EPD11が表示した画像を消去するようになっている。また、EPD11の表示画像が残っている場合には、第3者による悪用を招く恐れがあるが、このような画像スイッチ13がONになることで、このような悪用の危険性を回避することが可能となる。
【0031】
(演算処理部、記憶部)
次に、図4を参照して、ICカードKに内蔵された演算処理部と記憶部16について説明する。
図4に示すように、ICカードは、ICチップ内に第1演算処理部14と、第2演算処理部15と、記憶部16とを備えており、更に、当該ICチップに電力を供給する電源部17を備えている。
【0032】
ここで、第1演算処理部14においては、ICカードKは別体の外部装置20が具備するリーダライタと、接続用IC端子12との間で特定情報の入出力が行われるようになっている。また、第1演算処理部14は、制御部、駆動用プログラムを記憶するマスクROM、入出力データや演算データを一時格納し出力側に引き渡す役割を有するRAM、及び演算部から構成されている。
【0033】
また、第2演算処理部15においては、指紋センサ10に入力された指紋情報を抽出指紋データとして入力されるようになっており、また、画像消去スイッチ13がON状態になった場合にON信号が入力されるようになっている。更に、第2演算処理部15は、制御指令に基づいて、記憶部16から特定情報を読み出して、EPD11に当該特定情報を表示されるようになっている。また、第2演算処理部15は、制御部、駆動用プログラムを記憶するマスクROM、指紋情報等の入出力データや演算データを一時格納し出力側に引き渡す役割を有するRAM、及び演算部から構成されている。
【0034】
また、記憶部16は、EEPROMを有しており、第1演算処理部14や第2演算処理部15において処理された様々な情報を記憶するようになっている。また、アプリケーションを動作させるためのプログラムが記憶されている。
本実施形態においては、アプリケーションとして運転免許証の表示プログラムが記憶されている。そして、記憶部16の記憶される特定情報としては、例えば、本人の運転免許証の名前、住所、番号、生年月日等が記憶されている。更に、記憶部16には、ICカードKの利用者を特定するために、利用者の指紋情報が認証指紋データとして記憶されている。
【0035】
なお、実際のICカードKにおいては、これら2つの第1演算処理部14、第2演算処理部15を1つの演算処理部として構成することも可能である。
【0036】
次に、利用者がICカードKを使用する形態について説明する。
図5は、ICカードKにおいて利用者の個人認証を行った後に、運転免許証を表示するアプリケーションを動作させるフローチャート図である。
【0037】
まず、利用者が指紋センサ10に指を押し当てると、第2演算処理部15のRAMに一時的に抽出指紋データが格納される(ステップS1)。そして、当該抽出指紋データと、予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データとが第2演算処理部15の演算部において比較される。そして、演算部における比較の結果、抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合(ステップS2)に、運転免許証を表示するためのアプリケーションが起動し(ステップS3)、記憶部16に格納されている運転免許証の名前、住所、番号、生年月日等がEPD11に表示される(ステップS4)。そして、運転免許証の表示をした後に、表示する必要がなくなった場合には、利用者の判断に基づいて、画像消去スイッチ13がONとなり、EPD11が表示している画像が消去される(ステップS5)。
【0038】
なお、本実施形態においては、運転免許証を表示するアプリケーションを限定するものではなく、他のアプリケーションを利用することも可能である。
例えば、本実施形態のICカードをクレジットカードやバンクカードとして利用することが可能である。
【0039】
このような場合、ICカードKは、EPD11を備えているので、使用金額や残高等の表示を行うことが可能となる。更に、外部装置20のリーダライタと接続用IC端子12とが接続されることで、ICカードKと外部装置20との間で通信可能となり、ICカードKに記憶されていた情報を更新することも可能となる。具体的には、クレジットカードの使用後にリーダライタによって第1演算処理部14のRAMに使用金額、残高情報等が書き込まれ、更に、記憶部16において記憶される。そして、第2演算処理部15において抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合、記憶部16に記憶された情報は、EPD11に表示される。従って、ICカードKにおいては、予め記憶された情報だけでなく、外部装置20から入力された更新情報も表示可能となる。
【0040】
なお、ICカードKにおいては、指紋認証後に接続用IC端子12が有効になるプログラムが第1演算処理部14のマスクROMに格納されてもよい。
このような場合、指紋センサ10で認証が行われなければ、当該ICカードKは使用不可能となるために、本人以外の使用が不可能となる。また、指紋照合が行われた結果、記憶部16に格納されている認証指紋データと一致しなかった場合はEPD11に使用不可の表示をしてもよい。更に、指紋認証は、ICカードK内のみで行われるため、外部に使用者の指紋情報が漏洩することも無い。従って、更に高いセキュリティ性を有するICカードKを実現できる。
【0041】
上述したように、本実施形態のICカードKにおいては、第2演算処理部15において、指紋センサ10から抽出された抽出指紋データと、記憶部16に記憶された認証指紋データとを比較することによって、ICカードKの利用者の個人認証を行うことができ、ICカードKの利用者を限定することができる。従って、ICカードKの悪用を防止することができ、セキュリティ性が高いICカードを実現できる。
また、本実施形態のICカードKは、抽出指紋データと、認証指紋データとが一致した場合のみに、アプリケーションを起動させることができる。
更に、本実施形態のICカードKは、このような個人認証や、アプリケーションの起動だけでなく、当該アプリケーションにおける特定情報をEPD11に表示することができる。従って、ICカードKの利用者は、当該特定情報を確認することができる。一方、従来のICカードにおいては、EPD11等の表示素子が具備されていないために、個人認証後の情報を確認することができなかった。従って、本実施形態のICカードKは、従来のICカードと比較しても、個人認証後の利便性がより高いものとなる。
【0042】
また、外部装置20との通信を可能とする接続用IC端子12を更に備えているので、抽出指紋データと認証指紋データとが一致した場合のみに、第1演算処理部14は接続用IC端子12を介して外部装置20に特定情報を出力することができる。更に、接続用IC端子12を介して、外部装置20が出力する更新情報を第1演算処理部14に入力することで、記憶部16は更新情報を記憶することができる。
従って、ICカードKで利用可能なアプリケーションにおける特定情報を外部装置20に出力することができ、また、外部装置20の情報を更新情報として入力することで、記憶部16に更新情報を記憶することができる。また、当該更新情報をEPD11に表示することができる。
【0043】
また、ICカードKが備えるEPD11は、薄膜トランジスタ等の駆動素子が所定時間の間に所定電圧を付与することで、その後に電圧を付加することなく、画像を保持することができる。従って、画像を表示するための消費電力を低減できるので、低消費電力を実現することができると共に、表示メモリ性を有するICカードを実現できる。
【0044】
また、ICカードが備える画像消去スイッチ13によって、表示メモリ性を有するEPD11の画像を消去することができる。従って、ICカードKが表示する特定情報の悪用を防止でき、より高いセキュリティ性を有するICカードKを実現できる。
【0045】
(ICカードの第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るICカードについて図を参照して説明する。
本実施形態においては、先に記載した第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
図6は、本実施形態におけるICカードKの構成を説明するためのブロック図である。
【0046】
図6に示すように、本実施形態のICカードKにおいては、記憶部16が複数のEEPROMを備えた構成となっている。そして、複数のEEPROMの各々には、複数の異なる認証指紋データ、複数のアプリケーションを動作させるプログラム、各アプリケーションにおける個人情報等の特定情報が格納されている。具体的には、EEPROM1には利用者の必要な指の本数の認証指紋データが格納されており、EEPROM2には運転免許証の表示プログラムと使用情報が格納されており、EEPROM3にはクレジットカードのプログラムと使用情報が格納されており、EEPROM4にはバンクカードのプログラムと使用情報が格納されている。このようにICカードKの利用プログラム毎にそれぞれの対応したメモリ領域のEEPROMが記憶部15に設けられている。
また、EEPROM1に格納されている利用者の認証指紋データとは、上記の3つのアプリケーションを各々利用するものであり、各アプリケーションに対応した親指、人差指、中指の認証指紋データを意味している。そして、本実施形態においては、親指の認証指紋データによって運転免許証のアプリケーションを利用するようになっており、人差指の認証指紋データによってクレジットカードのアプリケーションを利用するようになっており、中指の認証指紋データによってバンクカードのアプリケーションを利用するようになっている。
更に、各々の指とそれに対応するEEPROMの領域に関する情報はマスクROMに格納されている。
【0047】
次に、図7及び図8を参照して、利用者がICカードKを使用する形態について説明する。ここで、図7はフローチャート図であり、図8は利用者の指を示す図である。
最初に、運転免許証を表示するアプリケーションについて説明する。
まず、使用者が左手親指A(図8参照)をICカードKの指紋センサ10に押し当てると、指紋センサ10で得られた左手親指の抽出指紋データが第2演算処理部15のRAMに格納される(ステップS11)。
次に、EEPROM1に格納された各々の指の認証指紋データと比較され、左手親指の指紋データが一致する(ステップS12)。
次に、マスクROMに格納された左手親指の認証指紋データに対応するEEPROM2の領域へ指令が出る(ステップS13)。
次に、その指令を受けたEEPROM2から第1演算処理部14へ、運転免許証を表示するアプリケーションの起動の指令が出る(ステップS14)。そして、第2演算処理部15へ運転免許証の名前、住所、番号、生年月日の情報が行き、第2演算処理部15の制御部はEPD11へそれら情報を表示させる(ステップS15)。それら指令は暗号化されたものであり、またEEPROM内情報も暗号化されていることが好ましい。その後、利用者の判断に基づいて、画像消去スイッチ13がONとなり、EPD11が表示している画像が消去される(ステップS16)。
【0048】
次に、クレジットカードを利用するアプリケーションについて説明する。
まず、使用者が左手人差指B(図8参照)をICカードKの指紋センサ10に押し当てると、指紋センサ10で得られた左手人差指の抽出指紋データが第2演算処理部15のRAMに格納される(ステップS11)。
次に、EEPROM1に格納された各々の指の認証指紋データと比較され、左手人差指の指紋データが一致する(ステップS12)。
次に、マスクROMに格納された左手人差指の認証指紋データに対応するEEPROM3の領域へ指令が出る(ステップS21)。
次に、その指令を受けたEEPROM3から第1演算処理部14へ、クレジットカードを利用するアプリケーションの起動の指令が出る(ステップS22)。
そして、第2演算処理部15へ、例えば当月はいくらクレジットカードを使用した等の使用状況等の情報が行き、第2演算処理部15の制御部はEPD11へそれら情報を表示させる(ステップS23)。それら指令は暗号化されたものであり、またEEPROM内情報も暗号化されていることが好ましい。クレジットカード使用後は接続用IC端子12から使用状況が第1演算処理部14のRAMに格納され、さらにEEPROM3の使用情報を書き換える。つまりEEPROMの各領域は常に最新の使用情報を保持する。その後、利用者の判断に基づいて、画像消去スイッチ13がONとなり、EPD11が表示している画像が消去される(ステップS24)。
【0049】
次に、バンクカードを利用するアプリケーションについて説明する。
まず、使用者が左手中指C(図8参照)をICカードKの指紋センサ10に押し当てると、指紋センサ10で得られた左手中指の抽出指紋データが第2演算処理部15のRAMに格納される(ステップS11)。
次に、EEPROM1に格納された各々の指の認証指紋データと比較され、左手中指の指紋データが一致する(ステップS12)。
次に、マスクROMに格納された左手中指の認証指紋データに対応するEEPROM4の領域へ指令が出る(ステップS31)。
次に、その指令を受けたEEPROM4から第1演算処理部14へ、バンクカードを利用するアプリケーションの起動の指令が出る(ステップS32)。
そして、第2演算処理部15へ、例えば当月はいくらバンクカードを使用した等の使用状況等の情報が行き、第2演算処理部15の制御部はEPD11へそれら情報を表示させる(ステップS33)。それら指令は暗号化されたものであり、またEEPROM内情報も暗号化されていることが好ましい。バンクカード使用後は接続用IC端子12から使用状況が第1演算処理部14のRAMに格納され、さらにEEPROM4の使用情報を書き換える。つまりEEPROMの各領域は常に最新の使用情報を保持する。その後、利用者の判断に基づいて、画像消去スイッチ13がONとなり、EPD11が表示している画像が消去される(ステップS34)。
【0050】
なお、本実施形態においては、親指、人差指、中指の各々に対応するアプリケーションを起動させているが、これを限定するものではない。各々の指だけでなく、指紋センサに置く指の向き、例えば、指を90°ずつ異ならせた向きで指紋センサ10に触れることで、各々異なるアプリケーションを起動させてもよい。
また、例えば、アプリケーションとして、複数の異なる銀行のバンクカードを割り当てた場合は、指紋を押し当てれば残高を見ることが可能となるので、各々の口座の残高を確認してから使用できるという使い方もある。
【0051】
上述したように、本実施形態のICカードKにおいては、第2演算処理部15において、指紋センサ10から抽出された抽出指紋データと、記憶部16に記憶された認証指紋データとを比較することによって、ICカードKの利用者の個人認証を行うことができ、ICカードKの利用者を限定することができる。従って、ICカードKの悪用を防止することができ、セキュリティ性が高いICカードを実現できる。
また、本実施形態のICカードKは、抽出指紋データと、認証指紋データとが一致した場合のみに、複数のアプリケーションを起動させることができる。
更に、本実施形態のICカードKは、このような個人認証や、複数のアプリケーションを起動させるだけでなく、当該複数のアプリケーションの各々における特定情報を表示することができる。従って、ICカードKの利用者は、当該特定情報を確認することができる。一方、従来のICカードにおいては、EPD11等の表示素子が具備されていないために、個人認証後の情報を確認することができなかった。従って、本発明は、従来のICカードと比較して、個人認証後の利便性がより高いものとなる。
【0052】
また、本発明のICカードにおいては、記憶部16には、親指、人差指、中指等の複数の認証指紋データが記憶され、また、当該複数の認証指紋データの各々は、免許証、クレジットカード、及びバンクカード等の複数のアプリケーションの各々に対応している。そして、指紋センサ10から抽出された抽出指紋データと、複数の認証指紋データのいずれか一の認証指紋データとが一致した場合のみに、一の認証指紋データに対応したアプリケーションを起動させている。更に、EPD11は選択されたアプリケーションにおける特定情報を表示している。これにより、個人認証を行うことができるだけでなく、一の認証指紋データに対応したアプリケーションを限定して起動させることができる。更に、当該アプリケーションに対応した特定情報をEPD11に表示させることができる。従って、アプリケーションを選択するための選択手段が不要になり、スイッチ等の入力手段をICカードKに設ける必要がなくなり、ICカードKの構成を簡素化することができる。
従って、利便性と高いセキュリティ性とを兼ね備えた、マルチアプリケーションICカードKを実現することができる。
【0053】
(ICカードの第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るICカードについて図を参照して説明する。
本実施形態においては、先に記載した第1及び第2の実施形態と異なる部分についてのみ説明し、同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
図9は、本実施形態に係るICカードKを示す平面図である。
【0054】
図9に示すように、本実施形態のICカードKは、第1実施形態に記載した構成を有すると共に、選択スイッチ(選択手段)17を備えている。このような選択スイッチ17は、例えば、メンブレンスイッチからなるものである。
更に、本実施形態のICカードKは、第2実施形態に記載したように複数のアプリケーションを利用可能としている。そして、選択スイッチ17のうち、
選択スイッチ17Aが選択された場合には、運転免許証の表示アプリケーションが起動するようになっている。また、選択スイッチ17Bが選択された場合には、クレジットカードのアプリケーションが起動するようになっている。また、選択スイッチ17Cが選択された場合には、バンクカードのアプリケーションが起動するようになっている。
従って、本実施形態は、先に記載した実施形態と比較して、ICカードKの利用者を認証した後に選択スイッチ17によって複数のアプリケーションのうちいずれかを選択して利用する点が相違している。
【0055】
次に、図9を参照して、利用者がICカードKを使用する形態について説明する。ここで、図9はフローチャート図である。
まず、利用者が指紋センサ10に指を押し当てると、第2演算処理部15のRAMに一時的に抽出指紋データが格納される(ステップS41)。そして、当該抽出指紋データと、予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データとが第2演算処理部15の演算部において比較される。そして、演算部における比較の結果、抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合(ステップS42)に、複数のアプリケーションのうちいずれかを選択することが可能となる。
【0056】
そして、ステップS43のアプリケーション選択において、選択スイッチ17AがONとなった場合には、EEPROM2から第1演算処理部14へ、運転免許証を表示するアプリケーションの起動の指令が出る(ステップS44)。そして、第2演算処理部15へ運転免許証の名前、住所、番号、生年月日の情報が行き、第2演算処理部15の制御部はEPD11へそれら情報を表示させる(ステップS45)。それら指令は暗号化されたものであり、またEEPROM内情報も暗号化されていることが好ましい。その後、利用者の判断に基づいて、画像消去スイッチ13がONとなり、EPD11が表示している画像が消去される(ステップS46)。
【0057】
また、ステップS43のアプリケーション選択において、選択スイッチ17BがONとなった場合には、EEPROM3から第1演算処理部14へ、クレジットカードを利用するアプリケーションの起動の指令が出る(ステップS51)。そして、第2演算処理部15へ、例えば当月はいくらクレジットカードを使用した等の使用状況等の情報が行き、第2演算処理部15の制御部はEPD11へそれら情報を表示させる(ステップS52)。それら指令は暗号化されたものであり、またEEPROM内情報も暗号化されていることが好ましい。クレジットカード使用後は接続用IC端子12から使用状況が第1演算処理部14のRAMに格納され、さらにEEPROM3の使用情報を書き換える。つまりEEPROMの各領域は常に最新の使用情報を保持する。その後、利用者の判断に基づいて、画像消去スイッチ13がONとなり、EPD11が表示している画像が消去される(ステップS253)。
【0058】
また、ステップS43のアプリケーション選択において、選択スイッチ17CがONとなった場合には、EEPROM4から第1演算処理部14へ、バンクカードを利用するアプリケーションの起動の指令が出る(ステップS61)。
そして、第2演算処理部15へ、例えば当月はいくらバンクカードを使用した等の使用状況等の情報が行き、第2演算処理部15の制御部はEPD11へそれら情報を表示させる(ステップS62)。それら指令は暗号化されたものであり、またEEPROM内情報も暗号化されていることが好ましい。バンクカード使用後は接続用IC端子12から使用状況が第1演算処理部14のRAMに格納され、さらにEEPROM4の使用情報を書き換える。つまりEEPROMの各領域は常に最新の使用情報を保持する。その後、利用者の判断に基づいて、画像消去スイッチ13がONとなり、EPD11が表示している画像が消去される(ステップS63)。
【0059】
上述したように、本実施形態のICカードKにおいては、先に記載の実施形態と同様の効果が得られると共に、指紋センサ10による個人認証後に、選択スイッチ17によって複数のアプリケーションのうちいずれかを選択することにより、特定のアプリケーションを起動させることができる。更に、当該アプリケーションにおける特定情報をEPD11に表示させることができる。
【0060】
なお、上記の第1〜第3の実施形態においては、表示素子として、EPD11を採用したが、他の表示素子を採用してもよい。例えば、コレステリック液晶材料を利用した反射型液晶表示装置を備えたICカードでもよい。このような液晶材料は、EPD11と同じように表示メモリ性を有していることから、ICカードに採用する表示素子としては、好ましいものとなる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1実施形態に係るICカードKを示す平面図。
【図2】第1実施形態における指紋センサの構成を示す模式図。
【図3】第1実施形態における電気泳動表示デバイス(EPD)の断面を示す断面図。
【図4】第1実施形態に係るICカードKの構成を説明するためのブロック図。
【図5】第1実施形態に係るICカードにおける動作のフローチャート図。
【図6】第2実施形態に係るICカードKの構成を説明するためのブロック図。
【図7】第2実施形態に係るICカードにおける動作のフローチャート図。
【図8】第2実施形態に係るICカードの利用者の指を示す図である。
【図9】第3実施形態に係るICカードKを示す平面図。
【図10】第3実施形態に係るICカードにおける動作のフローチャート図。
【符号の説明】
【0063】
10…指紋センサ(静電容量型指紋センサ)、 11…EPD(電気泳動表示デバイス、表示素子)、 12…接続用IC端子(通信部)、 13…画像消去スイッチ(画像消去手段)、 14…第1演算処理部(演算処理部)、 15…第2演算処理部(演算処理部)、 16…記憶部、 17、17A、17B、17C…選択スイッチ(選択手段)、 K…ICカード



【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量型指紋センサ、表示素子、記憶部、及び演算処理部を具備し、
前記記憶部には、認証指紋データ、特定情報、及び当該特定情報を利用するためのアプリケーションが記憶されており、
前記演算処理部は、前記静電容量型指紋センサから抽出された抽出指紋データと、前記認証指紋データとを比較し、
前記抽出指紋データと、前記認証指紋データとが一致した場合のみに、前記演算処理部は前記アプリケーションを起動し、前記表示素子は前記特定情報を表示することを特徴とするICカード。
【請求項2】
静電容量型指紋センサ、表示素子、記憶部、及び演算処理部を具備し、
前記記憶部には、認証指紋データ、複数の特定情報、及び当該複数の特定情報を各々利用するための複数のアプリケーションが記憶されており、
前記演算処理部は、前記静電容量型指紋センサから抽出された抽出指紋データと、前記複数の認証指紋データとを比較し、
前記抽出指紋データと、前記複数の認証指紋データとが一致した場合のみに、前記演算処理は、前記複数のアプリケーションのいずれかを起動可能とし、前記表示素子は前記複数のアプリケーションに対応した複数の特定情報のいずれかを表示可能とすることを特徴とするICカード。
【請求項3】
前記記憶部には、複数の前記認証指紋データが記憶されており、
当該複数の認証指紋データの各々は、前記複数のアプリケーションの各々に対応しており、
前記静電容量型指紋センサから抽出された抽出指紋データと、前記複数の認証指紋データのいずれか一の認証指紋データとが一致した場合のみに、前記演算処理部は前記一の認証指紋データに対応したアプリケーションを起動し、前記表示素子は当該アプリケーションにおける特定情報を表示することを特徴とする請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記複数のアプリケーションのうちいずれかを選択する選択手段を更に備え、
前記抽出指紋データと、前記複数の認証指紋データとが一致した場合のみに、前記選択手段は、前記複数のアプリケーションのいずれかを選択し、前記表示素子は当該選択されたアプリケーションの特定情報を表示することを特徴とする請求項2に記載のICカード。
【請求項5】
外部装置との通信を可能とする通信部を更に備え、
前記演算処理部において前記抽出指紋データと前記認証指紋データとが一致した場合のみに、
前記演算処理部は前記通信部を介して前記外部装置に前記特定情報を出力することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項6】
外部装置との通信を可能とする通信部を更に備え、
前記演算処理部において前記抽出指紋データと前記認証指紋データとが一致した場合のみに、
前記演算処理部は前記通信部を介して前記外部装置が出力する更新情報を入力し、
前記記憶部は、前記更新情報を記憶することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項7】
前記表示素子は、前記更新情報を表示することを特徴とする請求項6に記載のICカード。
【請求項8】
前記表示素子は、電気泳動表示デバイスであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項9】
前記電気泳動表示デバイスが表示した画像を消去する画像消去手段を更に備えることを特徴とする請求項8に記載のICカード。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−72890(P2006−72890A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258149(P2004−258149)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】