説明

III−P半導体発光デバイスのPコンタクト層

デバイスは、n型領域とp型領域との間に配置された少なくとも1つのIII−P発光層を有する半導体構造を含む。該半導体構造は更に、x<0.45であるGaAs1−xのpコンタクト層を含んでいる。第1のメタルコンタクトが、前記GaAs1−xのpコンタクト層と直接的に接触する。第2のメタルコンタクトが前記n型領域に電気的に接続される。第1及び第2の金属コンタクトは、前記半導体構造の同一面に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III−P発光デバイスに関し、より具体的には、フリップチップ型III−P発光デバイスのコンタクト層に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色から琥珀色までの可視波長を生成するために、例えば(AlGa1−x1−yInP発光ダイオード(LED)などのIII族−P半導体デバイスが使用されている。AlInGaP LEDは典型的に、発光活性層を挟んだp型層とn型層とを含むエピタキシャル層を、GaAs成長基板上に成長させることによって形成される。高品質の三元基板及び四元基板は製造するのが困難であるため、GaAs基板が一般的に使用されている。低欠陥のLED層を作り出すためには、(AlGa1−x1−yInPエピタキシャル層の格子定数がGaAsの格子定数に一致しなければならない。GaAsの格子定数との一致のため、y=0.48にされる。xの値は、所望の発光波長を達成するために調整される。
【0003】
特許文献1に記載されたフリップチップIII−P LEDを図1に示す。成長基板(図示せず)上に、n型AlInPの下部閉じ込め層22が成長される。このAlInP閉じ込め層22は、活性層のバンドギャップより高いバンドギャップを有する。閉じ込め層22上に、複数の層を有し得る(AlGa1−x0.47In0.53Pの活性層24が成長される。活性層24上に、AlInPのp型上部閉じ込め層26が成長される。層26上に、高濃度ドープされたp型AlInGaPコンタクト層71が設けられ得る。電気コンタクトのためにn−AlInP閉じ込め層22を露出させるように、層24、26及び71がエッチングされる。そして、n−AlInP閉じ込め層22と電気的に接触するように金属n電極83が形成されるとともに、p+AlInGaP層71と接触するようにp電極84が形成される。
【0004】
p電極及びn電極は、パッケージ素子87上の金属パッドに接合される。上記基板は、これらの電極をパッケージ素子に接合した後に除去されてもよい。ビアが、パッケージ素子87の頂面の金属パッドを、パッケージ素子87の底面のp電極90及びn電極91に電気的に結合する。電極90、91は、回路基板上のパッド、又は別のパッケージ上のパッドにはんだ付けされ得る。
【0005】
LEDの頂面(この例において、n−AlInP層22)は、光抽出機構92を有するように更に処理される。該機構は、粗面加工、又は光出力を増大させるための、例えば規則的なテクスチャリング若しくはフォトニック結晶構造などの、その他の技術を含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7244630号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、GaAs1−xのpコンタクト層と、該GaAs1−x pコンタクト層に直接的に接触したメタルコンタクトとを備えたデバイスを形成することである。本発明の実施形態は、従来のIII−Pデバイスより低いコンタクト抵抗を有し得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によれば、デバイスは、n型領域とp型領域との間に配置された少なくとも1つのIII−P発光層を有する半導体構造を含む。該半導体構造は更に、x<0.45であるGaAs1−xのpコンタクト層を含んでいる。第1のメタルコンタクトが、前記GaAs1−xのpコンタクト層と直接的に接触する。第2のメタルコンタクトが前記n型領域に電気的に接続される。第1及び第2の金属コンタクトは、前記半導体構造の同一面に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術に係るフリップチップIII−P LEDを例示する図である。
【図2】成長基板上に成長されたIII−Pデバイス構造を例示する図である。
【図3】pコンタクトを形成し、メサをエッチングし、且つnコンタクトを形成した後の、図2の構造を例示する図である。
【図4】マウント上に搭載されたIII−Pデバイスを例示する図である。
【図5】従来のコンタクト層を有するデバイスの一部のエネルギーバンド図を例示する図である。
【図6】本発明の実施形態に係るデバイスの一部のエネルギーバンド図を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例えば図1に示すデバイスなどのデバイスにおいて、コンタクト層71は典型的にGaPである。金属−半導体界面での光子散乱によって生じる反射を抑制することなくGaPへのオーミックpコンタクトを形成することは困難である。pメタル−半導体界面は好ましくは、光子散乱を最小化するために、可能な限り平滑且つ一様にされる。従来のGaPコンタクト層上に形成されるpメタルコンタクトは、典型的に、金属スパイク及び不均一な界面をもたらし、それにより不所望の光子散乱を生じさせる。
【0011】
本発明の実施形態においては、GaPコンタクト層ではなく、GaAsPコンタクト層の上に金属pコンタクトが形成される。
【0012】
図2−4は、本発明の実施形態に係るデバイスの形成法を例示している。図2において、GaAs又は何らかの好適な成長基板とし得る成長基板10上にデバイス構造が成長されている。先ず、n型領域12が成長基板10上に成長される。n型領域12は、異なる組成及びドーパント濃度の複数の層を含み得る。該複数の層は、例えば、n型あるいは意図的にはドープされないものとし得るバッファ層若しくは核生成層などのプリパレーション層と、後の成長基板の除去(リリース)若しくは基板除去後の半導体構造の薄化を容易にするように設計されるリリース層と、発光領域が効率的に光を放射するのに望ましい特定の光学特性若しくは電気特性に合わせて設計されるn型若しくはp型のデバイス層とを含む。n型領域12は、例えば、x=0.4とした(AlGa1−x0.52In0.48Pのnコンタクト層を含み得る。
【0013】
発光領域又は活性領域14がn型領域12上に成長される。活性領域14は、単一の厚い、あるいは薄い発光層であってもよいし、バリア層によって分離された複数の薄い、あるいは厚い量子井戸発光層を含んだマルチ量子井戸活性領域であってもよい。
【0014】
p型領域16が活性領域14上に成長される。n型領域と同様に、p型領域は、異なる組成、厚さ及びドーパント濃度の複数の層を含むことができ、意図的にはドープされていない層又はn型層を含んでいてもよい。p型領域16は、例えば、GaP又はAlInPのpクラッド層を含み得る。一部の実施形態において、p型領域16は、活性領域に隣接したクラッド層と、該クラッド層と後述のコンタクト層との間に配置された遷移領域とを含む。例えば、クラッド層は1.5μm厚のAl0.48In0.52P(又はAlInGaP)層とすることができ、遷移領域は、厚い(厚さ20−5000Å)組成的に傾斜した、例えばAlInPから(Al0.3Ga0.70.47In0.53Pまで傾斜された、(AlGa1−x0.5In0.5P層とすることができる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、p型領域16上にpコンタクト層18が成長される。pコンタクト層18は例えばGaAs1−xとし得る。この材料が吸収を最小化するために間接バンドギャップ領域内にあるように、Asの組成量xは0.45未満にされる。pコンタクト層18は、一定の組成量xを有していてもよいし、x=0(GaP)からx<0.45としたGaAs1−xまで、組成的に傾斜されてもよい。一定組成量xを有するpコンタクト層18では、一部の実施形態において0<x<0.45であり、一部の実施形態において0.2<x<0.4であり、一部の実施形態においてx=0.3である。組成的に傾斜したpコンタクト層18では、xは一部の実施形態において0から0.45まで傾斜され、一部の実施形態において0から0.2と0.4との間まで傾斜され、一部の実施形態において0から0.3まで傾斜される。pコンタクト層18は、例えばMg、Zn又はCで3e18cm−3と1e19cm−3との間の濃度にドープされてもよい。pコンタクト層18は例えば、一部の実施形態において20Åと2μmとの間の厚さ、一部の実施形態において0.5μmの厚さとし得る。
【0016】
一部の実施形態において、GaAsPのpコンタクト層18は、アルシン源としてテトラブチルアルシン(TBA)を用い、ホスフィン源としてテトラブチルホスフィン(TBP)を用いて成長される。例えばアルシン(AsH)及びホスフィン(PH)などの従来のソースをTBA及びTBPで置き換えることは、より良好なコンタクト特性を有する一層高品質の材料をもたらし得る一層低い温度でpコンタクト層18が成長されることを可能にし得る。例えば、ソースとしてTBA及びTBPが使用されるとき、成長温度を100℃程度も下げることができ、それによりMgドーピングの取り込み効率を2−2.5倍高め得る。Mgドーピング効率の増大は、より低い反応炉バックグラウンド濃度(より低い、バックグラウンドの残留ドーパント)を可能にし、より高い光出力を有する一層一貫したLEDを作り出し得る。
【0017】
図3において、コンタクトメタルが形成され、且つデバイス内にメサがエッチングされている。先ずpコンタクトが、例えば、離散的な複数の領域21にオーミックコンタクトメタルを堆積することによって形成され得る。オーミックコンタクトメタル21は例えば、AuZn又はAlとすることができ、ドット状に形成された後にアニールされる。例えば銀とし得るミラー(鏡)20がオーミックコンタクトメタル領域21上に形成される。オーミック領域21は、一部の実施形態において1μmと5μmとの間の直径であり、一部の実施形態において3μmの直径であるとともに、一部の実施形態において5μmと15μmとの間の間隔で離隔され、一部の実施形態において10μmの間隔で離隔される。
【0018】
n型領域12の部分27を露出させるように、pコンタクト18、p型層16及び活性領域14の部分が除去され得る。例えばAuGeとし得るnコンタクト25が、n型領域12の露出部27上に形成される。nコンタクト25及びpコンタクト20/21は、絶縁材料23で充填され得るトレンチ(溝)によって電気的に分離され得る。コンタクトを形成するためにエッチングによって露出されるn型領域の部分27は、デバイスにわたって分布され得る。
【0019】
図4において、デバイスがマウントに取り付けられるとともに、成長基板が除去されている。nコンタクト25及びpコンタクト20は、nインターコネクト(相互接続)35及びpインターコネクト22によって、マウント87に電気的且つ物理的に接続されている。これらのインターコネクトは、例えば、はんだ、金、又はその他の好適材料とし得る。デバイスはマウント87に、例えば、はんだインターコネクトをリフローすること、又は金インターコネクトの超音波ボンディングによって取り付けられ得る。ビア(図4には図示せず)が、マウント87の頂面の金属パッドをマウント87の底面のp電極90及びn電極91に電気的に結合する。電極90、91は、回路基板上のパッド、又は別のパッケージ上のパッドにはんだ付けされ得る。
【0020】
デバイスをマウント87上に取り付けた後、成長基板10が例えばエッチングによって除去され得る。成長基板を除去した後に残存する半導体構造30は薄化されてもよい。頂面は、光の抽出を向上させるために、例えば、粗面加工によって、あるいはフォトニック結晶などのパターンを形成するエッチングによって、テクスチャ(凹凸)を付けられ得る。
【0021】
図5は、従来のGaPコンタクト層を含むデバイスの一部のバンド図を例示している。図6は、本発明の実施形態に従った、GaAsPコンタクト層と傾斜(AlGa1−x0.5In0.5P遷移層とを含むデバイスの一部のバンド図を例示している。図5におけるp型領域16とp−GaPコンタクト層40との間の価電子帯の切り込み(ノッチ)は、正孔をトラップ(捕獲)することができる。図6に示すように、GaAsPコンタクト層18の価電子帯は、p型領域16内の遷移層の価電子帯と、より好ましく揃っており、また、GaAsPはより狭いバンドギャップを有しており、それにより、活性な正孔の濃度が高められるとともにコンタクト抵抗が低減され、ひいては、ターンオン電圧が低減されるとともにウォールプラグ効率が高められる。
【0022】
また、GaAsPのpコンタクト層18は、上述の活性領域14によって一般的に放射される波長域である580nmと620nmとの間の波長に対して高度に透明である。GaAsPのpコンタクト層18の透明性は、内部吸収を低減して、デバイスからの光の抽出を増大させ得る。
【0023】
さらに、GaPコンタクト層上に従来のpメタルコンタクトを形成することは、しばしば、金属スパイクと一様でない界面とをもたらし、それにより不所望の光子散乱を生じさせる。金属スパイクは、pメタルの堆積後のpメタルの合金化処理(例えば、高温アニールとし得る)中に形成され得る。合金化工程において、金属は一様でない速度でpコンタクト半導体層内に拡散する。結果として、コンタクト層の一部の領域は大きめの金属侵入を有し、他の領域はそれより小さい金属侵入を有することになる。このような不均一な侵入は、例えば、拡散された金属がpコンタクト層と、光子を吸収する合金を形成するときなど、界面で光子が散乱あるいは吸収されることを引き起こし得る。本発明の実施形態に従ったGaAs1−xコンタクト層は、上述のように、pコンタクトメタルとの間で一層好ましいバンド整列を有するため、合金化が不要になったり、あるいは合金化温度が下げられたりし、より一様な界面と、より少ない金属スパイクとがもたらされ得る。
【0024】
本発明を詳細に説明してきたが、当業者に認識されるように、この開示により、本発明への変更が、ここで説明した発明概念の精神を逸脱することなく為され得る。故に、本発明の範囲は、図示して説明した特定の実施形態に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体構造であり:
n型領域とp型領域との間に配置された少なくとも1つのIII−P発光層;及び
x<0.45であるGaAs1−xのpコンタクト層;
を有する半導体構造と、
前記GaAs1−xのpコンタクト層と直接的に接触する第1の金属コンタクトと、
前記n型領域に電気的に接続された第2の金属コンタクトと
を有し、
前記第1及び第2の金属コンタクトは、前記半導体構造の同一面に形成されている、
デバイス。
【請求項2】
前記GaAs1−xのpコンタクト層は一定の組成量xを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
0.2<x<0.4である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記GaAs1−xのpコンタクト層は、傾斜した組成量xを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記GaAs1−xのpコンタクト層は、x=0からx<0.45まで傾斜された組成量を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の金属コンタクトは:
ミラー;及び
前記ミラーと前記GaAs1−xのpコンタクト層との間に配置された複数のオーミックコンタクト領域;
を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ミラーは銀を有し、前記複数のオーミックコンタクト領域はAuZn及びAlのうちの一方を有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記p型領域は:
前記発光層と直接的に接触するクラッド層;及び
前記クラッド層と前記コンタクト層との間に配置された、傾斜した組成量を有する領域;
を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記クラッド層はAl0.48In0.52Pを有し、且つ
前記傾斜した組成量を有する領域は、AlInPから、(Al0.3Ga0.70.47In0.53Pまで傾斜されている、
請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
成長基板上に半導体構造を成長させる工程であり、該半導体構造は:
n型領域とp型領域との間に配置された少なくとも1つのIII−P発光層;及び
x<0.45であるGaAs1−xのpコンタクト層;
を有する、成長させる工程と、
前記GaAs1−xのpコンタクト層と直接的に接触する第1の金属コンタクトを形成する工程と、
前記n型領域の一部を露出させるように、前記少なくとも1つのIII−P発光層と前記p型領域との一部をエッチング除去する工程と、
前記n型領域に電気的に接続された第2の金属コンタクトを形成する工程と
を有し、
前記第1及び第2の金属コンタクトは、前記半導体構造の同一面に形成される、
方法。
【請求項11】
前記半導体構造を成長させる工程は、アルシン源としてテトラブチルアルシン(TBA)を用いて前記pコンタクト層を成長させることを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記半導体構造を成長させる工程は、ホスフィン源としてテトラブチルホスフィン(TBP)を用いて前記pコンタクト層を成長させることを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記成長基板を除去する工程、を更に有する請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−532438(P2012−532438A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516889(P2012−516889)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052367
【国際公開番号】WO2011/001308
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500507009)フィリップス ルミレッズ ライティング カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (197)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】