説明

IP−PBXシステム

【課題】IP網3に接続可能な1つの構内交換機(IP−PBX)1に対して、複数の拠点に3者会議トランクや外部保留トランク、外部トーキ装置のような局内で使用する同機能のトランク(IP局内トランク)が存在する場合、IP局内トランク捕捉時に離れたトランクを捕捉すると、距離等の問題でIP網に問題があれば遅延やノイズの原因となる。
【解決手段】IP端末が各サービス使用時にIP局内トランクを捕捉する時、拠点番号識別テーブルから端末が属する拠点番号を読み出す。次に選択テーブルから拠点番号に対応した優先的に使用すべきIP局内トランクを読み出す。そして該当するIP局内トランクの空きチェックを行い、空いていればこのIP局内トランクを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP−PBXシステム、特に、IPネットワークにおけるIP局内トランクの選択に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IPネットワークに接続可能な構内交換機(IP−PBX)を有するIP−PBXシステムにおいて、局内で使用するトランクのIP化が広く実施されるようになってきている。このようなトランク(以下、「IP局内トランク」と記す)は、例えば、3者会議トランクや外部保留トランク、発信レジスタ、着信レジスタであって、1つのIP−PBXに収容され複数の拠点にまたがって存在するIP端末によって使用され得る。
【0003】
図6は、この種の従来のIP−PBXシステムを示し(文献公知発明に係るものではない)、IP−PBX4とIP端末10及びIP局内トランク11を収容している拠点Aと、IP端末20及びIP局内トランク21を収容している拠点Bと、IP端末30及びIP局内トランク31を収容している拠点Cと、IP端末40及びIP局内トランク41を収容している拠点DとがIP網3を介して接続されている。ここで、IP局内トランク11〜41は同機能のトランクである。IP−PBX4と、IP端末10,20,30,40と、IP局内トランク11,21,31,41はそれぞれIP網3に接続されている。IP端末10,20,30,40において3者会議や保留などの操作が行なわれると、各サービスに対応したIP局内トランクが捕捉される。
【0004】
このような場合、拠点番号又は拠点共通の各々に対応付けて、複数のメッセージトランクに付されたトランク番号と、その使用/未使用の別を示す状態情報とが対応付けられて設定されたテーブルを参照して、未使用状態のトランクを抽出し通話要求元の通話路に割り当てるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、電話機からの発信にIPトランクを使用するときに、そのIPトランクが使用不可である場合、PSTN網等他の通信網に迂回するように動作するため、トランク番号と迂回トランクとを対応付け他データをシステム管理者がデータベースに予め登録しておくにした技術も公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、ネットワークにおける選択経路において、重み付け値表を設定し、重み付け値の演算値が最小となる集合の組合せを探索することを特徴とする2点間の重み付けを反映する経路選択方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。ここでは、重み付け値の元になるであろう優先度の値(トラフィック処理能力と遅延、エラー率等のネットワーク品質)を入力する。
【0007】
【特許文献1】特開2006−157776号公報(第5頁−第6頁、図5、図7)
【特許文献2】特開2005−123730号公報(第4頁−第5頁、図2)
【特許文献3】特開2001−292161号公報(第3頁−第5頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図6に示した技術では、IP局内トランク11,21,31,41は同機能の局内トランクであるが、IP端末10がこのトランクを捕捉するときトランクの空き話中チェックを行なった結果、空きがあっても通話状況によってはIP端末10の近くのIP局内トランク11を捕捉するとは限らず、IP局内トランク21,31,41のいずれかを捕捉する場合がある。この場合、IP端末10とIP局内トランク21,31,41間の距離等が遅延やノイズの原因となり、IP網3に負荷が発生することにもなるという問題点がある。
【0009】
本願発明の目的は、1つのIP−PBXに収容された同機能のIP局内トランクが複数の拠点に存在する環境下にあって、最適な局内トランクを選択できるIP−PBXシステムを提供することにある。
【0010】
なお、上述した特許文献1は、通話要求毎にサービスされる音声ガイダンスの内容を通話要求先の拠点によって異なる内容とすることを可能化しており、同機能の局内トランクが異なる拠点に存在する状況に関する記載はなく、従って、上述の問題点とは無関係である。
【0011】
また、上述した特許文献2は、局外トランクの発信の場合の迂回に関して記載しており、本願発明におけるように、発着信を問わず局内トランクへの接続時における迂回ルートに関するものではなく、従って、上述の問題点とは無関係である。
【0012】
また、上述した特許文献3では、2点間の経路で重み付けを行なっているので、本願発明におけるように、3者会議トランクには対応することができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明IP−PBXシステムは、1つのIP−PBX(図1の1)に収容された複数の拠点(図1のA,B,C,D)がIP網(図1の3)で接続されたIP−PBXシステムにおいて、各拠点はIP端末(図1の10,20,30,40)及び同機能のIP局内トランク(図1の11,12,21,22,31,32,41,42)を備え、IP−PBXに接続された記憶装置(図1の2)に、IP端末と当該拠点番号との対応を示す拠点番号識別テーブル(図2)、及びIP端末がいずれのIP局内トランクを優先的に使用すべきかを示すための情報を拠点番号毎に示す選択テーブル(図4,図5)を記憶し、優先的使用はIP網の帯域及び遅延に基づいて定められることと、IP端末が局内トランクを捕捉するサービスを行うときは、拠点番号識別テーブル及び選択テーブルを参照して、当該IP端末の拠点番号の組合せからIP局内トランクを選択し、選択された拠点に存在するIP局内トランクに接続することを特徴とする。
【0014】
より詳しくは、選択テーブルは、各拠点の局内トランクが使用中の場合の迂回拠点先を示す迂回拠点選択テーブル(図3)である。更に、記憶装置は拠点内の同種局内トランクの内のいずれを優先して使用するかを拠点番号毎に示す局内トランク選択テーブル(図2)を記憶している。この同種局内トランクは、例えば選択的に使用される外部保留トランクとトーキ装置である。
【0015】
また、局内トランクは会議トランクであり、選択テーブルは、該会議トランクが属する拠点を示す会議トランク拠点番号毎に、その会議トランクを使用するIP端末が属する拠点を示す端末拠点番号について優先度を掲げている会議トランク選択テーブル(図5)であって、複数のIP端末が会議トランクを捕捉するサービスを行なう際は、会議トランク拠点番号毎に、拠点番号識別テーブルから求めた各端末拠点番号について、会議トランク選択テーブルから優先度を求め、各会議トランク拠点番号の会議トランクについて優先度を合計し、一番高い値の会議トランクを捕捉する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1つのIP−PBXに収容された同機能のIP局内トランクが複数の拠点に存在する環境下にあって、いずれのIP局内トランクを優先して使用かはIP網の帯域及び遅延に基づいて定めることとしたため、最適な局内トランクを選択できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明を実施するための形態を示すネットワーク図である。図1に示す通り、このネットワーク構成は、記憶装置2を備えたIP−PBX1とIP端末10と2つのIP局内トランク(以下、「局内トランク」と記す)11,12を収容している拠点A、IP端末20と2つの局内トランク21,22を収容している拠点B、IP端末30と2つの局内トランク31,32を収容している拠点C、IP端末40と2つの局内トランク41,42を収容している拠点DがIP網3を介して接続されている。IP−PBX1とIP端末10,20,30,40と局内トランク11,12,21,22,31,32,41,42はそれぞれIP網3に接続されている。
【実施例1】
【0018】
いま、局内トランクとして外部保留トランクまたはトーキ装置を使用した場合について説明する。局内トランクX1(X=1〜4)は外部保留トランク、局内トランクX2はトーキ装置とする。外部保留トランクとは、内線が通話を保留した場合に通話相手に聞かせる保留音を出す機器、トーキ装置とは話中時などに話中音ではなく、ミュージックや音声案内を聞かせる装置をいい、選択的に使用される。
【0019】
記憶装置2には拠点番号識別テーブル,局内トランク選択テーブル及び迂回拠点選択テーブルを記憶する。図2は、拠点番号識別テーブルの構成を示す図であり、IP端末毎に、それが属する拠点の番号を示している。拠点A,B,C,Dの拠点番号は、それぞれ001,002,003,004であることが分かる。
【0020】
図3は、局内トランク選択テーブルの構成を示す図であり、拠点毎に、優先的に使用する局内トランクを示している。例えば、拠点番号001の拠点Aにおいては、局内トランク12ではなく局内トランク11を優先して使用することを示している。これは、上記の例では、外部保留トランクがトーキ装置に優先することを意味する。この優先的使用はユーザの指定による。
【0021】
図4は、迂回拠点選択テーブルの構成を示す図であり、拠点の局内トランクが話中時の迂回拠点対応を示している。例えば、拠点番号002の拠点Bにおいては、拠点Bの局内トランクが話中の場合は先ず拠点番号001の拠点Aに迂回し、拠点Aでも局内トランクが話中の場合は拠点番号003の拠点Cに迂回し、拠点Cでも局内トランクが話中の場合は拠点番号004の拠点Dに迂回することになる。迂回の順序は、IP網3の帯域、遅延などから定められる。
【0022】
パターン1(IP端末10が操作を行い局内トランク11が空きの時)
拠点AのIP端末10が局内トランクを捕捉するとき、拠点番号識別テーブル(図2)からIP端末10は拠点Aに存在することが分かる。次に、優先的に使用する局内トランクを局内トランク選択テーブル(図3)から読み出し、拠点Aでは局内トランク11を優先的に選択することになる。この局内トランク11に対して空き話中チェックを行うと、このパターン1では局内トランク11が空きであるからIP端末10は局内トランク11を捕捉する。
【0023】
パターン2(IP端末20が操作を行い、局内トランク21が話中、局内トランク11が空きの場合)
IP端末20が局内トランクを捕捉するとき、拠点番号識別テーブルからIP端末20は拠点Bに存在することが分かる。局内トランク選択テーブルから拠点Bでは局内トランク21を優先的に使用することになる。局内トランク21に対して空き話中チェックを行うと、このパターン2では話中と判断される。
【0024】
次に、迂回拠点選択テーブルから拠点Bが次に利用可能な拠点番号を読み出すと、拠点Bは次に拠点Aの局内トランクを使用できると決定される。この後、優先トランク選択テーブルから拠点Aで優先的に使用できる局内トランクを読み出し、局内トランク11が使用できることが分かる。この後、空き話中チェックを行い、このパターン2では局内トランク11が空いているため、IP端末20は局内トランク11を捕捉する。
【0025】
パターン3(IP端末30が操作を行い、局内トランク31、41が話中、局内トランク21が空きの場合)
IP端末30が局内トランクを捕捉するとき、拠点番号識別テーブルからIP端末30は拠点Cに存在することが分かる。局内トランク選択メモリから拠点Cの場合は局内トランク31を優先的に使用することになる。この局内トランク31に対して空き話中チェックを行うと、このパターン3では話中と判断される。次に、迂回拠点選択テーブルから拠点Cが次に利用可能な拠点番号を読み出すと、拠点Dの局内トランクを使用できると決定される。
【0026】
この後、局内トランク選択テーブルから拠点Dで使用できる局内トランクを読み出し、局内トランク41が優先的に使用できることが分かる。この後、空き話中チェックを行うと、このパターン3では局内Iトランク41が話中と判断される。次に、迂回拠点テーブルから拠点Cが次に利用可能な拠点番号を読み出すと、拠点Bの局内トランクを使用できると決定される。この後、局内トランク選択テーブルから拠点Bで優先的に使用できる局内トランクを読み出すと、局内トランク21が優先的に使用できることが分かる。この後、空き話中チェックを行い、このパターン3では局内トランク21が空いているため、IP端末30は局内トランク21を捕捉する。
【0027】
このようにして、局内トランクが話中の場合は迂回拠点選択テーブルに従って迂回され最適なトランクが捕捉される。
【実施例2】
【0028】
次に、局内トランクとして会議トランクを用いた場合について説明する。以下、3者での会議の場合について説明するが、本発明は3者会議に限定したものではない。この場合、記憶装置2に拠点番号識別テーブル(図2)及び会議トランク選択テーブル(図5)を記憶する。会議トランク選択テーブルは、図5に示すように、会議トランクが属する拠点毎に、その会議トランクを使用するIP端末が属する拠点の優先度を掲げている。
【0029】
図5を参照すると、例えば、拠点番号001に属する会議トランクを使用するIP端末が拠点001,002,003,004に属するなら、優先度はそれぞれ0.5,0.25,0.25,0.15である。ここで、優先度とは、局内トランクを捕捉する順番を決めるための基準値であって、その値はIP網3の帯域、遅延などから最適な値を予め割り振るものとする。
【0030】
3者会議を行う際、先ず拠点番号識別テーブルからIP端末が属する拠点番号を割り出す。次に、会議トランク選択テーブルから、各拠点に属する会議トランクを捕捉するIP端末毎の優先度を求める。そして、各拠点に属する会議トランクについて優先度を合計し、一番高い値の会議トランクがこの3者で通話品質が一番保たれるものと判断し、この会議トランクを捕捉する。
【0031】
パターン1(拠点A,B,Cの端末が3者会議を行う場合)
IP端末10,20,30が3者会議を行う際、拠点番号識別テーブルからIP端末10が属する拠点番号は001、IP端末20が属する拠点番号は002、IP端末30が属する拠点番号は003であることが分かる。パターン1では、拠点番号001に属する会議トランクを使用する場合の優先度はIP端末が拠点Aに属する場合は0.5、IP端末が拠点Bに属する場合は0.25、IP端末が拠点Cに属する場合は0.25となり、合計すると拠点番号001の3者会議トランクの優先度は1.0となる。同様の方法で各拠点の優先度を求めると、拠点番号002が0.9、拠点番号003が0.75、拠点番号004が0.35のため、IP局内トランクとして拠点Aに属する会議トランクが選択され捕捉される。
【0032】
パターン2(拠点B,C,Dの端末が3者会議を行う場合。但し、局内トランク21が話中、トランク41が空きの場合)
IP端末20,30,40が3者会議を行う際、拠点番号識別テーブルからIP端末20は拠点BにIP端末30は拠点CにIP端末40は拠点Dに属することが分かる。次に、会議トランク選択テーブルから各拠点の会議トランクを捕捉する優先度を求める。本パターンでは拠点Aが0.65、拠点Bが0.9、拠点Cが0.7、拠点Dが0.75のであるため、先ずは会議トランクとして拠点Bの会議トランクが選択される。しかし、会議トランク21に対して話中チェックを行うと、話中と判断されるため、次に優先度が高いものを選択する。このケースでは拠点Dの会議トランク41が次に優先度が高く空きであるため選択され捕捉される。
【0033】
なお、別テーブルで会議トランクが話中時の優先順位を別途決めておいてもよい。また、会議トランク選択テーブルの優先度は時間等でリアルタイムに変更も可能なものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を実施するための形態を示すIPネットワーク図
【図2】拠点番号識別テーブルの構成図
【図3】局内トランク選択テーブルの構成図
【図4】迂回拠点選択テーブルの構成図
【図5】会議トランク選択テーブルの構成図
【図6】従来のIPネットワーク図
【符号の説明】
【0035】
1,4 IP−PBX
2 記憶装置
3 IP網
10,20,30,40 IP端末
11,12,21,22,31,32,41,42 局内トランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのIP−PBXに収容された複数の拠点がIP網で接続されたIP−PBXシステムにおいて、
前記各拠点はIP端末及び同機能のIP局内トランクを備え、
前記IP−PBXに接続された記憶装置に、前記IP端末と当該拠点番号との対応を示す拠点番号識別テーブル、及び前記IP端末がいずれの前記IP局内トランクを優先的に使用すべきかを示すための情報を前記拠点番号毎に示す選択テーブルを記憶し、
前記優先的使用は前記IP網の帯域及び遅延に基づいて定められることと、前記IP端末が前記局内トランクを捕捉するサービスを行うときは、前記拠点番号識別テーブル及び前記選択テーブルを参照して、当該IP端末の拠点番号の組合せからIP局内トランクを選択し、選択された拠点に存在するIP局内トランクに接続することを特徴とするIP−PBXシステム。
【請求項2】
前記選択テーブルは、各拠点の局内トランクが使用中の場合の迂回拠点先を示す迂回拠点選択テーブルであることを特徴とする請求項1記載のIP−PBXシステム。
【請求項3】
前記記憶装置は拠点内の同種局内トランクの内のいずれを優先して使用するかを前記拠点番号毎に示す局内トランク選択テーブルを記憶していることを特徴とする請求項2記載のIP−PBXシステム。
【請求項4】
前記同種局内トランクは選択的に使用される外部保留トランクとトーキ装置であることを特徴とする請求項3記載のIP−PBXシステム。
【請求項5】
前記局内トランクは会議トランクであり、前記選択テーブルは、該会議トランクが属する拠点を示す会議トランク拠点番号毎に、その会議トランクを使用するIP端末が属する拠点を示す端末拠点番号について優先度を掲げている会議トランク選択テーブルであって、
複数の前記IP端末が前記会議トランクを捕捉するサービスを行なう際は、前記会議トランク拠点番号毎に、前記拠点番号識別テーブルから求めた各端末拠点番号について、前記会議トランク選択テーブルから前記優先度を求め、各会議トランク拠点番号の会議トランクについて優先度を合計し、一番高い値の会議トランクを捕捉することを特徴とする請求項1記載のIP−PBXシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−100333(P2009−100333A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271018(P2007−271018)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】