説明

IP電話交換機及びIP電話システム

【課題】IP電話機等のネットワーク機器の通信品質の検証をより容易に実現することが可能なIP電話交換機及びIP電話システムを提供する。
【解決手段】IP電話交換機10は、IP電話機30A,30B,30CからIP電話機30A,30B,30CのIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスが示されたログイン要求メッセージを受信したことに対応して、IP電話機30A,30B,30Cに対するログイン認証を行うとともに、IP電話機30A,30B,30Cの認証が成功したことに対応して、ログイン要求メッセージに示されるIP電話機30A,30B,30CのIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスを記憶装置に登録し、さらに記憶装置に登録されたIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスに対して、pingコマンドによる生存確認を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ログイン認証済みのIP電話機に対する通話をSIPに従って制御するIP電話交換機及びIP電話システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業などの内線電話システムとして、IPネットワークを介してSIP(Session Initiation Protocol)に従った呼制御を行うIP電話システムが普及している。
【0003】
ところで、IP電話システムは、他のネットワークシステムと混在して同じIPネットワークに接続されることが多い。そのため、例えば、IP電話システムの動作状態の確認のために、ハブなどの集線装置に監視装置を接続して、集線装置を通過するデータを監視しようとすると、IP電話システム以外のネットワークシステムに関わるデータまで監視が可能な状態となってしまう。したがって、IP電話システムの保守業者などによるIP電話システムの動作状態の確認は、セキュリティ上の問題により、好ましくない場合がある。
【0004】
特許文献1には、自身が生存することを示す生存確認要求信号をIPネットワークに接続されたサーバに送信し、生存確認要求信号が送信されてからサーバからの応答信号を受信するまでの応答時間を検出し、検出された応答時間に応じて、音声通信に関するIPネットワークの現在の通信品質を推定する音声通信端末が開示されている。
【0005】
特許文献2には、データの遅延、ジッタ、データロスの少なくとも一つを測定し、その測定結果から通信パケットのエラー率を監視するトラフィックモニタが開示されている。
【0006】
特許文献1,2に開示されているような技術によれば、IPネットワークに設けられた集線装置に監視端末を接続することなく、IP電話システムの通信品質などを検証することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−157167号公報
【特許文献2】特開2002−232475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたような技術では、音声通信端末がIP電話交換機に対して、生存確認要求信号を送信する必要がある。したがって、IP電話機などのIP端末以外の生存確認要求信号の送信機能を有していないルータなどのネットワーク機器の通信品質は検証することができない。
【0009】
また、特許文献1或いは特許文献2に開示されたような技術では、音声通信端末やIPアダプタが個別に通信品質などを監視して、その結果が音声通信端末やIPアダプタに接続された電話機等の表示部に表示される。したがって、音声通信端末やIPアダプタに接続された電話機の利用者はその結果を表示部を介して容易に確認することができる。しかし、IP電話システムの保守業者などが、音声通信端末やIPアダプタに対する通信品質を確認するためには、各音声通信端末等で個別に取得された通信品質に関わるデータを適宜収集しなければならず、必ずしも容易に確認できない。
【0010】
本発明は、IP電話機等のネットワーク機器の通信品質の検証をより容易に実現することが可能なIP電話交換機及びIP電話システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ログイン認証済みのIP電話機に対する通話をSIPに従って制御するIP電話交換機であって、IP電話機から当該IP電話機のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスが示されたログイン要求メッセージを受信したことに対応して、当該IP電話機に対するログイン認証を行うとともに、前記IP電話機の認証が成功したことに対応して、前記ログイン要求メッセージに示される前記IP電話機のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスを記憶装置に登録する認証処理部と、前記記憶装置に登録された前記IPアドレス及び前記デフォルトゲートウェイのIPアドレスに対して、pingコマンドによる生存確認を実行する生存確認部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るIP電話交換機によれば、IP電話機からログイン要求時に送信されたログイン要求メッセージに示されるIP電話機のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスに対して、pingコマンドによる生存確認が実行されるので、当該pingコマンドによる生存確認の結果に基づいてIP電話機等のネットワーク機器の通信品質の検証をより容易に実現することができる。
【0013】
本発明は、IP電話機と、ログイン認証済みのIP電話機に対する通話をSIPに従って制御するIP電話交換機とを備えるIP電話システムであって、前記IP電話機は、自己に割り当てられたIPアドレスとデフォルトゲートウェイのIPアドレスとを示したログイン要求メッセージを前記IP電話交換機に対して送信することで、前記IP電話交換機に対してログイン認証を要求し、前記IP電話交換機は、前記IP電話機から前記ログイン要求メッセージを受信したことに対応して、前記IP電話機に対するログイン認証を行うとともに、前記ログイン要求メッセージに示される前記IP電話機のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスに対して、pingコマンドによる生存確認を実行することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るIP電話システムによれば、IP電話機からログイン要求時に送信されたログイン要求メッセージに示されるIP電話機のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスに対して、IP電話交換機においてpingコマンドによる生存確認が実行されるので、当該pingコマンドによる生存確認の結果に基づいてIP電話機等のネットワーク機器の通信品質の検証をより容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、IP電話機からログイン要求時に送信されたログイン要求メッセージに示されるIP電話機のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスに対して、IP電話交換機においてpingコマンドによる生存確認が実行されるので、当該pingコマンドによる生存確認の結果に基づいてIP電話機等のネットワーク機器の通信品質の検証をより容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を実施するための形態に係るIP電話システムの全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明を実施するための形態に係るIP電話交換機の内部構成を示すブロック図である。
【図3】IPアドレス記憶部に記憶されるIP電話機からログイン要求時に収集されたIPアドレスのテーブルの一例を示す図である。
【図4】ping先IPアドレス記憶部に記憶されるping先のIPアドレスの一覧テーブルの一例を示す図である。
【図5】ping結果記憶部に記憶される各ノードに対するping結果の一例を示す図である。
【図6】統計結果記憶部に記憶されるノード間のping統計データの一例を示す図である。
【図7】本発明を実施するための形態に係るIP電話交換機がIP電話機からログイン要求メッセージを受信した際に実行する認証処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】IP電話機からログイン要求時に送信されるログイン要求メッセージのデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称す)について、以下図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るIP電話システムの全体構成を示すシステム構成図を示す。図1において、IP電話交換機10、保守端末20、IP電話機30Aは、レイヤ2スイッチ(L2SW)40を介してルータ52に接続され、それぞれルータ52を介してIP網50に接続される。また、IP電話機30B,30Cは、レイヤ2スイッチ42を介してルータ54に接続され、それぞれルータ54を介してIP網50に接続される。ルータ52とルータ54とはIP網50を介して相互に接続される。なお、IP電話機30A,30B,30Cは、SIP(Session Initiation Protocol)に従ったVoIP通信によるIP電話機能を備えたパーソナルコンピュータ等のIP端末全般を用いることができる。また、保守端末20は、IP電話交換機10を遠隔保守する際に用いられる。
【0019】
本実施形態に係るIP電話システムでは、IP電話交換機10が、IP電話機30A,30B,30C等にpingコマンドに基づくICMPエコー要求パケットを一定周期で送信する。さらに、IP電話交換機10は、IP電話機30A,30B,30C等からのICMP応答パケットの受信の有無や応答時間等の通信品質に関わるデータを収集し、収集されたデータを統計処理することで、IP電話機30A,30B,30C等の通信品質を監視する。
【0020】
図2は、IP電話交換機10の内部構成を示すブロック図である。図2において、CPU110は、ROM112に記憶されたBIOSプログラムなどの基本的な制御プログラムをRAM114に展開して、バス190を介して各部を制御し、通信インタフェース180を介して呼制御などを行う。CPU110は、ROM112に記憶されたプログラム140をRAM114に展開して、必要に応じてデータベース150に格納された各種データを参照して、各種機能を実現する。
【0021】
記憶装置130は、プログラム140として、認証処理部141、ping先IPアドレス管理部142、生存確認部143、統計処理部144、及び呼処理部145を記憶する。
【0022】
認証処理部141は、IP電話機30A,30B,30Cからのログイン要求メッセージを受けて、IP電話機30A,30B,30Cに対する認証処理を実行する。ping先IPアドレス管理部142は、後述のIPアドレス記憶部154に記憶されたIPアドレスの情報に基づいて、生存確認を行う対象となるIPアドレスを特定し、そのIPアドレスの一覧テーブルを後述のping先IPアドレス記憶部156に登録し、さらに定期的に更新する。生存確認部143は、後述するように認証処理部141における認証処理の際に取得したIPアドレスに対してpingコマンドに基づくICMPエコー要求パケットを送信し、その応答としてICMP応答パケットを受信することで、検査対象の端末の生存確認を行う。統計処理部144は、生存確認部143によるpingコマンドに基づく生存確認の結果を統計処理し、検査対象の端末のネットワーク品質に関わる指標データを生成する。呼処理部145は、ログイン認証済みのIP電話機に対する発呼や着呼があった際の通話処理を実行する。
【0023】
また、記憶装置130には、データベース150として、認証情報記憶部152、IPアドレス記憶部154、ping先IPアドレス記憶部156、ping結果記憶部158、及び統計結果記憶部160を記憶する。認証情報記憶部152には、IP電話機の認証を行う際に認証処理部141によって参照される情報が登録されており、例えば、認証が許可されるユーザのユーザID及びパスワードが登録されている。
【0024】
IPアドレス記憶部154には、後述のように、IP電話機から送信されるログイン要求メッセージに示されるIP電話機のIPアドレスやデフォルトゲートウェイとして設定されたIPアドレスが図3に示すようなテーブルに登録されている。なお、図3に示すテーブルにおいて、端末番号は、ログイン要求メッセージの受信順に割り当てられる番号を示す。
【0025】
ping先IPアドレス記憶部156には、生存確認部143によって実行されるpingコマンドに基づく生存確認対象のIPアドレスが図4に示すようなIPアドレスの一覧テーブルに登録されている。
【0026】
ping結果記憶部158には、pingコマンドに基づく生存確認の結果として、図5に示すように、pingの送出元及び送出先のIPアドレス、ping送信時刻、及びping応答時間などが登録される。
【0027】
統計結果記憶部160には、pingコマンドに基づく生存確認の統計処理の結果として、図6に示すようなping統計データが記録される。
【0028】
図7は、IP電話交換機10がIP電話機30A,30B,30Cからログイン要求メッセージを受信した際に実行する認証処理の手順を示すフローチャートである。
【0029】
図8は、ログイン要求メッセージのデータ構造を示す図である。図8に示すように、ログイン要求メッセージは、ヘッダ部200とデータ部210とで構成される。
【0030】
ヘッダ部200には、メッセージ番号202、メッセージ種別204、発行元種別206が含まれる。メッセージ番号202は、IP電話機が発行したメッセージ毎に付与される番号に相当する情報であり、同一メッセージが再送された際にメッセージ受信側のIP電話交換機10が同一メッセージかどうかを判断する際の判断基準となる情報である。メッセージ種別204は、メッセージの種別を示す情報であり、例えばメッセージ受信側のIP電話交換機10が受信したメッセージがログイン要求メッセージかどうかを判断する際の判断基準となる情報である。発行元種別206は、メッセージの発行した発行元の種別を示す情報であり、例えばメッセージ受信側のIP電話交換機10が受信したメッセージの発行元がIP電話機かどうかを判断する際の判断基準となる情報である。
【0031】
データ部には、内線番号212、MACアドレス214、IPアドレス216、デフォルトゲートウェイ218が含まれる。内線番号212は、メッセージ発行元のIP電話機に割り当てられた内線番号を示す情報である。MACアドレス(Media Access Control address)214は、メッセージの発行元のIP電話機のハードウェア固有の物理アドレスであり、保守する際の機器の識別等に用いられる情報である。IPアドレス(Internet Protocol address)216は、メッセージの発行元のIP電話機に割り当てられたIPアドレスを示す情報である。デフォルトゲートウェイ218は、メッセージの発行元のIP電話機のデフォルトゲートウェイとして設定されているルータのIPアドレスを示す情報である。
【0032】
ここで、図7を参照して、IP電話交換機10がIP電話機30A,30B,30C(以下、「IP電話機30」と総称する)からログイン要求メッセージを受信した際に実行する認証処理の手順について、さらに説明する。
【0033】
なお、本実施形態では、IP電話交換機10は、ログイン認証済みのIP電話機30に対する通話処理を実行する。したがって、通話を行うIP電話機30は、事前に、IP電話交換機10に対して、LANやインターネット等のIP網50を介して仮想的に接続(レジスト)し、ログイン認証を済ませておく必要がある。そこで、本実施形態では、IP電話機30は、IP網50に接続された段階で、IP電話交換機10に対してログイン要求メッセージを送信することで、IP電話交換機10に対してログイン要求を実行する。
【0034】
図7において、IP電話交換機10は、IP電話機30からログイン要求メッセージを受信すると(S100)、ログイン要求メッセージからIP電話機30のIPアドレスを取得し、そのIPアドレスに対して認証情報を要求する。要求に対する応答としてIP電話機30からユーザID及びパスワードの提供を受ける。次いで、IP電話交換機10は、認証情報記憶部152を参照して、提供されたユーザID及びパスワードが関連付けて認証情報記憶部152に登録されているかどうかを判定することで、IP電話機30のログイン認証を行う(S102)。
【0035】
ログイン認証の結果、ログイン認証に成功した場合には(ステップS104の判定結果が、肯定「Y」)、ログイン要求メッセージから、ログイン端末情報として、IP電話機30のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイをIPアドレス記憶部154に登録する(S106)。登録後、IP電話交換機10は、IP電話機30に対してログイン認証に成功したことを示すログイン要求応答(許可)メッセージを送信する(S108)。
【0036】
一方、ログイン認証の結果、ログイン認証に失敗した場合には(ステップS104の判定結果が、否定「N」)、IP電話交換機10は、IP電話機30に対してログイン認証に失敗したことを示すログイン要求応答(拒否)メッセージを送信する(S110)。
【0037】
以上の通り、本実施形態では、IP電話交換機10は、IP電話機30がログイン要求する毎に、ログイン要求メッセージに示されるIP電話機30のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイに相当するIPアドレスとを取得して、これらIPアドレスを関連付けてIPアドレス記憶部154に登録する。
【0038】
さらに、IP電話交換機10は、上記のように、ログイン認証時にIP電話機30のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイの登録を行うとともに、図4に示すようなping先のIPアドレスが登録された一覧テーブルの生成及び更新を行う。即ち、IP電話交換機10は、ping先IPアドレス管理部142において、定期的にIPアドレス記憶部154を参照して、ping先IPアドレス記憶部154に格納された一覧テーブルに登録されていないIPアドレスが存在するか否かを検索する。検索の結果、一覧テーブルに登録されていないIPアドレスが存在する場合には、IP電話交換機10は、新規のping先のIPアドレスとして管理番号と関連付けて一覧テーブルに登録する。なお、IP電話交換機10は、ping先IPアドレスの一覧テーブルの生成及び更新を定期的に行ってもよいし、ログイン要求メッセージを受信する毎に行ってもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態では、IP電話交換機10は、IP電話機30からのログイン要求メッセージに示されるIP電話機30に割り当てられたIPアドレス及びデフォルトゲートウェイを取得し、取得したIPアドレス及びデフォルトゲートウェイに基づいてping先IPアドレスの一覧テーブルを生成、更新を実行する。
【0040】
また、IP電話交換機10は、生存確認部143において、ping先IPアドレス記憶部156に記憶された一覧テーブルに登録された各IPアドレスに対してpingコマンドに基づく生存確認を管理番号の順に定期的に実行する。
【0041】
ここで、pingコマンドに基づく生存確認は、ICMPエコー要求パケットの送信(pingの送出)と、ICMP応答パケットの受信(ping応答)により行われる。ICMPエコー要求パケットの送信から一定の時間が過ぎてもping先の端末からのICMP応答パケットを受信しなかった場合には、パケットロスとして検出される。したがって、pingコマンドに基づく生存確認の間隔、つまりICMPエコー要求パケットの送信間隔は、パケットロスの検知時間よりも長くする必要がある。例えば、パケットロスを検出するのに必要な時間が1000msの場合には、IP電話交換機10は、ICMPエコー要求パケットを送信した後、1000msのタイマをセットし、1000msが経過してから、次回のICMPエコー要求パケットを送信する。なお、タイマの設定は、生存確認の対象端末の数に応じて変更してもよい。
【0042】
IP電話交換機10は、ping先IPアドレスの一覧テーブルに登録されたすべてのIPアドレスに対する生存確認が完了すると、再度、先頭の管理番号に関連付けられたIPアドレスから順次生存確認を実行する。
【0043】
また、本実施形態では、pingコマンドに基づく生存確認により、パケットの遅延やロスなどのデータを統計的に集計するため、1つのIPアドレスに対するICMPエコー要求パケットの送信のタイミング、つまり、一つのノードに対する監視を、一定周期に行う必要がある。例えば、1分に1回、ノードを監視した場合には、ICMPエコー要求パケットを送信してから、同一の送信先に対する次回のICMPエコー要求パケットを送信するまでの送信間隔を60000ms(1分×60秒×1000ms)に設定する。
【0044】
以上のように、本実施形態では、生存確認部143において、ping先IPアドレスの一覧テーブルに登録された各IPアドレスに対してpingコマンドに基づく生存確認が行われ、生存確認による結果が、図5に示すようなping結果データとして集計される。
【0045】
すなわち、IP電話交換機10は、ping送出とping応答時間及び遅延やパケットロスに関する情報を収集し、ping結果記憶部158に登録する。
【0046】
図5において、ping送出番号501には、pingを送出した順番に付与される番号が記録される。ping送出元IPアドレス502には、pingを送出しているノードのIPアドレス、つまりIP電話交換機10のIPアドレスが記録される。ping送出先IPアドレス503には、ping送出先のノードのIPアドレス、つまりIP電話交換機10の配下にあるIP電話機30やルータ52,54のIPアドレスが記録される。ping送信時刻504には、ping送出元IPアドレスからping送出先IPアドレスへpingを送出した時刻が記録される。ping応答時間(ms)505には、ping送信時刻504は、ping送出元IPアドレスからping送出先IPアドレスへping(ICMPエコー要求パケット)を送出した時刻から、ping応答(ICMP応答パケット)を受信するために要した時間が記録される。ping応答がない場合、ping応答時間(ms)505には、Lossに相当する「L」が記録される。
【0047】
統計処理部144は、ping結果データを参照して、図6に示すようなping統計データを管理する。
【0048】
図6において、経路番号601は、どのノード間の情報かを区別するために付与される番号を示す。なお、ここで、ノードとは、IP網50に接続されたIP電話交換機10、IP電話機30、ルータ52,54等のことを示す。地点A602は、統計情報を採取したノード間のうち、一方のノードのIPアドレスを示す。地点B603は、統計情報を採取したノード間のうち、他方のノードのIPアドレスを示す。測定開示時刻604は、統計情報の採取が開示された時刻、つまりpingの送出が開示された時刻を示す。
【0049】
ロス率(%)605は、ノード間の生存確認において、ロスパケットとして処理されたパケットの割合を示す。例えば、経路番号「0006」において、ロス率(%)が「7」と記録されているが、このノード間で7%の割合でping応答がなかったことを示す。
【0050】
最大遅延(ms)605は、ノード間で採取されたping応答時間のうち、パケットロスの場合を除いて、最も値が大きい時間を示している。平均遅延(ms)606は、ノード間で採取されたping応答時間の平均時間を示す。
【0051】
以上の通り、本実施形態では、IP電話交換機10が、IP電話機30からログイン要求メッセージを受信したことに対応して、当該ログイン要求メッセージに示されるIP電話機30に割り当てられたIPアドレス及びデフォルトゲートウェイを取得し、取得したIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスに対してpingコマンドに基づく生存確認を実行し、さらにその生存確認の結果に基づいてノード間の遅延等の通信品質に係るデータの統計処理を実行する。
【0052】
従来は、IP電話機30がログイン要求を行う場合、ログイン要求メッセージにはデフォルトゲートウェイのIPアドレスは示されていなかった。したがって、IP電話交換機10は、デフォルトゲートウェイの情報を保有していないため、ルータを介して接続されたIP電話機30に対してpingコマンドに基づく生存確認を行うことができなかった。しかし、本実施形態によれば、IP電話機30のログイン要求時に当該IP電話機30に設定されたデフォルトゲートウェイのIPアドレスも通知されるため、IP電話交換機10は、別途IP電話機30のデフォルトゲートウェイのIPアドレスの入力を受けることなく、ルータを介して接続されたIP電話機30に対するpingコマンドに基づく生存確認を実行することができる。
【0053】
つまり、本実施形態によれば、例えば、IP電話システムの保守業者などが、音声通信端末やIPアダプタで個別に監視された通信品質を確認するため、各音声通信端末等から個別に通信品質に関わるデータを収集する必要がなく、IP電話交換機10において集中的に各端末の通信品質に関わるデータを管理することができる。よって、本実施形態によれば、IP電話機等のネットワーク機器の通信品質の検証をより容易に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、IP電話機からのログイン要求時に取得したIPアドレスに対するpingコマンドによる生存確認の結果に基づいてIP電話機等のネットワーク機器の通信品質の検証をより容易に実現することができるので、ログイン認証済みのIP電話機に対する通話をSIPに従って制御するIP電話交換機等に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 IP電話交換機
20 保守端末
30A,30B,30C IP電話機
40,42 スイッチ
52,54 ルータ
130 記憶装置
140 プログラム
141 認証処理部
142 ping先IPアドレス管理部
143 生存確認部
144 統計処理部
145 呼処理部
150 データベース
152 認証情報記憶部
154 IPアドレス記憶部
156 ping先アドレス記憶部
158 ping結果記憶部
160 統計結果記憶部
180 通信インタフェース
190 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ログイン認証済みのIP電話機に対する通話をSIPに従って制御するIP電話交換機であって、
IP電話機から当該IP電話機のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスが示されたログイン要求メッセージを受信したことに対応して、当該IP電話機に対するログイン認証を行うとともに、前記IP電話機の認証が成功したことに対応して、前記ログイン要求メッセージに示される前記IP電話機のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスを記憶装置に登録する認証処理部と、
前記記憶装置に登録された前記IPアドレス及び前記デフォルトゲートウェイのIPアドレスに対して、pingコマンドによる生存確認を実行する生存確認部と、
を備えることを特徴とするIP電話交換機。
【請求項2】
IP電話機と、ログイン認証済みのIP電話機に対する通話をSIPに従って制御するIP電話交換機とを備えるIP電話システムであって、
前記IP電話機は、
自己に割り当てられたIPアドレスとデフォルトゲートウェイのIPアドレスとを示したログイン要求メッセージを前記IP電話交換機に対して送信することで、前記IP電話交換機に対してログイン認証を要求し、
前記IP電話交換機は、前記IP電話機から前記ログイン要求メッセージを受信したことに対応して、前記IP電話機に対するログイン認証を行うとともに、前記ログイン要求メッセージに示される前記IP電話機のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスに対して、pingコマンドによる生存確認を実行する、
ことを特徴とするIP電話システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−3981(P2011−3981A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143389(P2009−143389)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】