説明

LCDユニットとこれを用いたメータ

【課題】位置決め・検査等に問題なく対応でき、かつ組み付け性の向上するLCDユニットを提供する。
【解決手段】 LCDシート10と、発光面がLCDシート10によって覆われた状態でLCDシート10が張り付けられるTFT−LCD20と、LCDシート10が張り付けられたTFT−LCD20を保持するTFTホルダ50と、TFT−LCD20に電気的接続可能にTFTホルダ50に組み付けられる配線板60と、を備え、LCDシート10、TFT−LCD20、TFTホルダ50、配線板60の順に積層され、LCDシート10には係止孔10Nが形成され、TFTホルダ50には係止孔10Nに係合する係止突起50Nが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメータに組み込まれるTFT−LCD(Thin Film Transistor Liquid Crystal Display)の取り付け構造に関するもので、特に、各部品の位置決め精度と組み付けの作業性の向上を図ることのできる取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
〈従来装置〉
近年、文字・数字・図柄等を表示する液晶本体を備えた液晶表示装置が自動車用メータに設けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1記載の液晶表示装置は、自動車用メータ内に組み込まれたものであるが、斬新さに乏しいものとなっていた。
これに対して、液晶表示装置を自動車用メータの周囲に外付けとして設置する外部表示器も知られている。
図5はTFT−LCDを用いた表示器から成る外部表示器100を自動車用メータ110に別体で設けた全体の正面図である。
図6は図5の外部表示器100を分解して示す分解斜視図である。外部表示器100は、LCDベゼル210で覆ったTFT−LCD200を始め、配電板600等部品順にケース900に組み込み、その後、TFT−LCD200の表示器を視認できる窓を持つカバー(図示なし)で覆って出来上がっている。
そして、この外部表示器100は自動車用メータ110に取り付けステー910で取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−85125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TFT−LCDを用いた従来の表示器はこのように基本的に部品を積み重ねて組み付けるため、各部品の位置決め・検査等からいまひとつ組付性が劣っていた。
また、組み付け後の検査で問題があった場合、部品の多くを外して対応しなければならない問題があった。
さらに、LCDベゼルの上に表示器を視認できる窓を持つカバーを取り付けるため、機能が重複する部品を2つ設ける必要があった。
本発明は、かかる欠点を解決するためになされたもので、組み付け後の検査で問題があっても多くの部品を取り外す必要のない、機能が重複する部品を用いない、組付性の良い表示器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係るTFTユニット(1)および(2)とこれを用いたメータ(3)は、次のことを特徴としている。
(1) LCDシートと、発光面が前記LCDシートによって覆われた状態で前記LCDシートが張り付けられるTFT−LCDと、前記LCDシートが張り付けられたTFT−LCDを保持するTFTホルダと、 前記TFT−LCDに電気的接続可能に前記TFTホルダに組み付けられる配線板と、を備え、 前記LCDシート、前記TFT−LCD、前記TFTホルダ、前記配線板の順に積層されたこと。
(2) 前記LCDシートには、係止孔が形成され、前記TFTホルダには、前記係止孔に係合する係止突起が形成され、 前記係止孔に前記係止突起が係合した状態の前記LCDシート及び前記TFTホルダの間に前記TFT−LCDが挟み込まれていること。
(3) 各種計器を表示する表示器本体と、前記表示器本体に外付けされた外部表示器と、を備えるメータであって、前記外部表示器は、上記発明(1)記載のTFTユニットと、前記TFTユニットを収容するケースと、前記ケースの前面を覆うカバーとの3体から構成されていること。
【発明の効果】
【0006】
(a)上記発明(1)によれば、TFT−LCDを含めた諸部品を予めユニット化したものを組み付けるため、組付性が向上し、組み付け後の検査で問題があった場合、部品の多くを外すことがなく、LCDベゼルを省略できるため、機能が重複する部品を2つ設けることがない。
(b)上記発明(2)によれば、TFT−LCDを含めた諸部品をユニット化する際に、TFT−LCDの組み込みが簡単化され、組付性がさらによくなる。
(c)上記発明(3)を用いることで、3体構成のため組付性が向上したLCDユニットを用いるので、安価なメータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は本発明に係るLCDユニットの分解斜視図である。
【図2】図2はLCDユニットの係止孔と係止突起の部分の拡大図である。
【図3】図3は図1のLCDユニットを組み立てた後の外観の斜視図である。
【図4】図4は本発明に係るLCDユニットを含む外付表示器の分解斜視図である。
【図5】図5はTFT−LCDを用いた表示器から成る外部表示器を自動車用メータに別体で設けた全体の正面図である。
【図6】図6は図5の外部表示器を分解して示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
組み付け後の検査で問題があっても多くの部品を取り外す必要のない、機能が重複する部品を用いない、組付性の良いLCDユニットについて、図1に基づいて説明する。
【0009】
〈本発明に係るLCDユニットの構成〉
図1は本発明に係るLCDユニットの分解斜視図である。
図1において、1は本発明に係るLCDユニット、10はLCDシート(偏光シート)、20はTFT−LCD、30は熱伝導シート、40はヒートシンク、50はTFTホルダ、60は配線板、70はハーネス、Nはネジである。
以下、これらについてこの順で説明する。
【0010】
〈LCDシート10〉
LCDシート10は、ほぼ矩形状をした偏光シートで、TFT−LCDの発光面を覆った状態でTFT−LCDに張り付けられ、TFT−LCD表面を保護している。図で左右の両辺のそれぞれ上下に係止孔10Nを備えており、都合4個備えている。この係止孔10NにはTFTホルダ50の係止突起50N(後述)が係合し、LCDシート10とTFTホルダ50とが結合される。
【0011】
〈TFT−LCD20〉
TFT−LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)20は、TFT(薄膜トランジスタ)を用いた矩形状をしたLCD(液晶ディスプレイ)で、これ自体公知であり、例えば、以下に述べるTFT型LCDセルと光学構造とLED基板と制御基板と順に積層配置されて、金属製の上側シールドケースと金属製の下側シールドケースの間に収容されて成るものである。
組み立て時に、TFT−LCD20はTFTホルダ50の左の係止突起50Nと右の係止突起50との間に収容される。
《TFT型LCDセル》
TFT型LCDセルは、ドットマトリクス表示が可能な表示手段であり、X方向ドライバとY方向ドライバを介して、縦横の行列に並んでいる表示単位(画素)をON/OFFして数値、図形等を表示画面上に描く。
《光学構造》
光学構造は、プリズムシート、拡散シート、導光板、反射シートおよび金属製中間シールド板が順に積層配置され、樹脂製の上側ケースと下側ケースの間に収容されて成る。
《LED基板》
LED基板は、導光板のサイドエッジに合わせられた寸法を有する金属製基板であり、その上に形成された絶縁膜上にLED回路が形成されると共に、複数のLEDが導光板のサイドエッジに対向するように実装されて成る。
【0012】
〈熱伝導シート30〉
熱伝導シート30は、ほぼ矩形状をした熱伝導体から成るシートで、TFT−LCD20から発する熱をヒートシンク40へ効率よく伝導する役割をしている。図で上辺の左右2箇所に切り欠き30Mが形成されている。この切り欠き30MにはTFTホルダ50の上辺にある左右の係止突起50M(後述)が入り込み、熱伝導シート30が動かないように固定している。
【0013】
〈ヒートシンク40〉
ヒートシンク40は、TFT−LCD20からの熱を熱伝導シート30を介して放熱するためのアルミ製放熱板である。図でヒートシンク40の上辺と左右両辺には、TFTホルダ50の上辺の係止突起50Mと左右の係止突起50Nとに対向する部位にそれぞれ貫通孔40M、40Nがあけられている。特に、左右の貫通孔40Nのうちそれぞれの上方に位置する貫通孔40Nは上下に延びる細孔の下端から横方向に広がる大孔40Lが形成されており、大まかな位置決めでTFTホルダ50の係止突起50Nがヒートシンク40の大孔40Lに入り易くなるようにしてある。TFTホルダ50の係止突起50Nがヒートシンク40の大孔40Lに一旦入ると、ヒートシンク40の重力で下に下がり懸垂状態となり、この状態で最終的にTFTホルダ50の係止突起50Nはヒートシンク40の細孔である貫通孔40Nに収まる。これにより、TFTホルダ50の他の係止突起50N、50Mもヒートシンク40の他の貫通孔40N、40Mにスムーズに入るようになる。
また、ヒートシンク40にはネジN1によってTFTホルダ50のネジ孔S1とネジ結合されるためのネジ孔M1が複数箇所に設けられている。
【0014】
〈TFTホルダ50〉
TFTホルダ50は、LCDシート10と係合するように本発明により設けられたほぼ矩形状をした樹脂製支持体で、LCDシート10とTFTホルダ50との間に、TFT−LCD20と熱伝導シート30とヒートシンク40を挟み込むようになる。
そのために、TFTホルダ50の左右上下に係止突起50Nが都合4個設けられ、同じく、TFTホルダ50の上辺に係止突起50Mが2個設けられている。
また、ネジN1が入り込むネジ孔S1が形成されており、その裏側には、ネジN2が入り込むネジ孔S2が形成されている。同じくネジN3が入り込むネジ孔S3(図では見えない)が形成されている。
【0015】
〈配線板60〉
配線板60はほぼ矩形状をした平板状の樹脂製品でユニット化されており、TFT−LCD20の中にあるLEDに電力を供給し、TFT−LCD20に制御信号を送るためのコネクタ60Cがほぼ中央にあり、ワイヤハーネス70内の電力線・信号線に繋がる配線が配線板60に形成されており、コネクタ60Cに向けて延びている。
ネジN2が入り込むネジ孔M2が形成され、ネジN3が入り込むネジ孔M3が形成されている。
【0016】
〈ハーネス70〉
ハーネス70は、外部機器に接続されるコネクタCに一端が接続され、他端がLCDユニット内の各端子に電気・信号を供給するために配線板60に接続されるワイヤハーネスである。
【0017】
〈本発明に係るLCDユニットの組み立て〉
分解斜視図で示す図1のLCDユニットを組み立てるには次のように行う。
TFTホルダ50の左右上下に4個設けられている係止突起50Nをそれぞれヒートシンク40の貫通孔40Nに貫通させ、熱伝導シート30の左右両辺の外側を通過させ、TFT−LCD20の左右両辺の外側を通過させ、LCDシート10の4個の係止孔10Nとそれぞれ係合させることで、図2のように、互いに固定状態となる。
同じく、TFTホルダ50の上辺に設けられている2個の係止突起50Mを、それぞれヒートシンク40の貫通孔40Mに貫通させ、熱伝導シート30の上辺の切り欠き30Mを通過させ、TFT−LCD20の上辺の外側を通過させ、LCDシート10の上辺を通過させることで、ヒートシンク40、熱伝導シート30、TFT−LCD20、LCDシート10のそれぞれ上方への移動を阻止する。
TFTホルダ50の係止突起50M、50Nとヒートシンク40の貫通孔40M、40Nの緩い結合を、ネジN1を用いてヒートシンク40のネジ孔M1、TFTホルダ50のネジ孔L1をネジ結合することで堅い結合にしている。
そして、TFTホルダ50の裏側に配線板60をあてがって、TFTホルダ50のコネクタ60CをTFTホルダ50、ヒートシンク40、熱伝導シート30のそれぞれの下辺から中央に向けて設けた大きな開口を通してTFT−LCD20の図で裏側にあるコネクタ(図では見えない)と接続し、最後に、ネジN2をネジ孔M2を通してTFTホルダ50の裏側にあるネジ孔S2にねじ込み、同じく、ネジN3をネジ孔M3を通してTFTホルダ50の裏側にあるネジ孔S3にねじ込むことで、LCDシート10とTFT−LCD20と熱伝導シート30とヒートシンク40とTFTホルダ50と配線板60とが一体結合された図3に示すLCDユニット1が完成する。
【0018】
〈本発明に係るLCDユニットの特徴〉
このように本発明に係るLCDユニット1は、偏光用であるLCDシート10からTFT−LCD20、熱伝導シート30,ヒートシンク40までをTFTホルダ50で保持し、また配線板60もユニット化しているのが特徴である。しかも、TFT−LCD等をLCDシートとTFTホルダで挟む構成としているのが特徴である。
このようにすることにより、基本部分はユニット化されて、動作検査後に組み付けられ、位置決め・検査等は問題なく対応できるものとなる。本発明に係るLCDユニット1を用いると外付表示器も以下に説明するように簡単に製造できる。
【0019】
〈LCDユニット1を含む外付表示器〉
図4は本発明に係るLCDユニット1を収容して成る外付表示器の分解斜視図で、1は本発明に係るLCDユニット、80はカバー、90はケースである。以下、カバー80とケース90について説明する。
【0020】
《カバー80》
カバー80はケース90の前面開口部全体を覆う樹脂成型部材で、LCDユニット1のLCDシート10の大きさに相当する開口80Lを有する額縁部80Gと額縁部80Gの縦辺から底辺に至る一隅を斜めに延びるベース80Bとから成っている。
ケース90の底部90Dにある係止孔90Kと係合する係止突起80Kが底部80Dの裏面に形成され、さらに、ケース90の天部90Pにある係止片90Hと係合する係止片80Hが上部80PのLCDユニット1側に形成されている。
【0021】
《ケース90》
ケース90は前面一面に開口部を有する樹脂成型部材で、LCDユニット1を収容できる大きさの内部空間を備えた額縁部90Gと額縁部90Gの縦辺から底辺に至る一隅を斜めに延びるベース90Bと、補強リブ付き背面部90Zとを含んでいる。内部空間にLCDユニット1を収容し、カバー80で蓋をするようになっている。そのために、LCDユニット1はケース90にネジN4でネジ止め固定され、カバー80は、底部80Dにある係止片80Kをケース90の底部90Dにある係止片90Kに係合させ、かつ、カバー80の天部80Pにある係止片80Hをケース90の天部90Pにある係止片90Hに係合させることで係止・固定している。
以上により、基本部分は本発明によりユニット化されてLCDユニット1とし、これをケース90に収容し、カバー80で蓋をすると言った3体構成により外付表示器が簡単に得られる。
【0022】
〈まとめ〉
本発明によれば、偏光用であるLCDシートからTFT−LCD、ヒートシンクをTFTホルダで保持し、また配線板もユニット化し、ケースにネジ等で組み付け後、カバーで覆う構成としているのが特徴である。その際、TFT−LCD等をLCDシートとTFTホルダで挟む構成としているのが特徴である。
このようにすることにより、基本部分はユニット化されて、動作検査後に組み付けられ、位置決め・検査等は問題なく対応でき、また、基本的に3体構成のため、組み付けが簡単にできるので組み付け性を向上することができる。
また、偏光用途であるLCDシートを組み付け部材として用いるため、従来のLCDベゼルは不要となり、部品点数も削減できる。
なお、本発明は自動車用メータへの取り付けタイプを実施例としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、単体ユニットとして取り付けられる表示器に用いることもできる。
【符号の説明】
【0023】
1:本発明に係るLCDユニット
10:LCDシート
10N:係止孔
20:TFT−LCD
30:熱伝導シート
30M:切り欠き
40:ヒートシンク
40M、40N:貫通孔
40L:大孔
50:TFTホルダ
50M、50N:係止突起
60:配線板
60C:コネクタ
70:ハーネス
80:カバー
80B:ベース
80D:底部
80G:額縁部
80H:係止片
80K:係止突起
80L:開口
90:ケース
90D:底部
90H:係止片
90K:係止孔
90P:天部
N1〜N4:ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LCDシートと、
発光面が前記LCDシートによって覆われた状態で前記LCDシートが張り付けられるTFT−LCDと、
前記LCDシートが張り付けられたTFT−LCDを保持するTFTホルダと、
前記TFT−LCDに電気的接続可能に前記TFTホルダに組み付けられる配線板と、
を備え、
前記LCDシート、前記TFT−LCD、前記TFTホルダ、前記配線板の順に積層されたことを特徴とするTFTユニット。
【請求項2】
前記LCDシートには、係止孔が形成され、
前記TFTホルダには、前記係止孔に係合する係止突起が形成され、
前記係止孔に前記係止突起が係合した状態の前記LCDシート及び前記TFTホルダの間に前記TFT−LCDが挟み込まれていることを特徴とする請求項1記載のTFTユニット。
【請求項3】
各種計器を表示する表示器本体と、前記表示器本体に外付けされた外部表示器と、を備えるメータであって、
前記外部表示器は、請求項1記載のTFTユニットと、前記TFTユニットを収容するケースと、前記ケースの前面を覆うカバーとの3体から構成されていることを特徴とするメータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−97259(P2013−97259A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241335(P2011−241335)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】