説明

LCST−ポリマー

(A)(a)N,N−ジアルキルアクリルアミド
【化1】


[式中、Nは1〜10,000であり、Rは同一もしくは互いに異なる]は水素もしくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示し、ここでラジカルRは窒素原子と一緒になってリングを形成することもでき];
(b)N−ビニルカプロラクタム
【化2】


[式中、oは1〜10,000を示す];
(c)N−ビニルピペリドン
【化3】


[式中、pは1〜10,000を示す];
(d)n−ビニルピロリドン
【化4】


[式中、qは1〜10,000を示す];
(e)メチル−ビニルエーテル
【化5】


[式中、rは1〜10,000を示];および/または
(f)N−ビニル−アルキルアミド
【化6】


[式中、sは1〜10,000を示し、R2は1〜5個の炭素原子を有する(イソ)アルキル基またはシクロペンチル基を示す]
の構造単位を有する少なくとも1種のモノマーもしくはマクロモノマー約45.0〜99.9モル%;
(B)(a)マレイン酸、無水マレイン酸またはマレイン酸のアルキルエステル(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(b)フマル酸またはフマル酸のアルキルエステル(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(c)アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアルキルアクリレートもしくは−メタクリレート(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(d)ヒドロキシアルキルアクリレートもしくは−メタクリレート(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(e)酢酸ビニル;
(f)(メタ)アクリル酸グリシジル;
(g)アリルグリシジルエーテル;および/または
(h)α,α−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートの群からのコモノマー約0.1〜55.0モル%
の水溶液もしくはアルコール溶液におけるラジカル共重合もしくは三元重合により得られるLCST−ポリマーにつき開示し、ここでモノマーもしくはマクロモノマー(A)および(B)の共重合により得られるポリマーは、コモノマー(B)に由来する反復単位からの基と共有結合を形成しながら反応しうる少なくとも1個の基、および少なくとも1個の重合しうる二重血結合を有する誘導化剤により誘導化されることを特徴とする。更にその製造方法、並びに粒子および非粒状基体表面を被覆するためのその使用についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はLCST(低臨界溶液温度)−ポリマーに関するものである。この概念は低温度にて流体媒体に可溶性であるが所定温度(LCST温度)より高ければ流体媒体から沈降するようなポリマーと理解される。LCST−ポリマーは種々異なる化学組成を有する。最も良く知られたLCST−ポリマーはポリアルキレンオキシド−ポリマー、たとえばポリエチレンオキシド−(PEO)−もしくはポリプロピレンオキシド−(PPO)−ポリマーであるが、(PEO)−(PPO)−コポリマー、特にPEO−PPO−PEO−ブロックコポリマーも存在する。他のLCST−ポリマーはポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)−エチル−(ヒドロキシエチル)−セルロース−、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)−およびポリ(メチルビニルエーテル)−誘導体である。
【0002】
最初に挙げたポリマーは、たとえば国際公開第01/60926号パンフレットに記載されている。この刊行物は基体表面(粒子表面および非粒状基体表面)をLCST−ポリマーで被覆するための方法に関するものであり、ここではLCST−ポリマーを溶剤にLCST−温度より低い温度にて溶解させ、この溶液を被覆すべき基体表面と混合し、得られた混合物をLCST−ポリマーの基体表面に対する沈着が開始するまでLCST−温度を超えるまで加熱する。沈着したLCST−ポリマーは不働化することができ、これは実質的に基体表面への不可逆的吸着を可能にする官能基が設けられて行われる。官能基は酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、ホスフェート基、メルカプタン基、シロキサン基または疎水性基から選択することができる。更にLCST−ポリマーには粒子へのLCST−ポリマーの沈着後に架橋反応にてLCST−ポリマーの架橋を可能にする官能基も設けることもできる。この種の官能基はカルボン酸基誘導体、クロルホルメート基、アミノ基、イソシアナト基、オキシラン基および/またはラジカル架橋性基から選択することができ、ここで架橋反応は特に溶液のpH値の変化により開始される。
【0003】
ラジカル性架橋は、pH値の変化による架橋と比較して大して好ましくない。たとえば種々の顔料粒子(TiO、Fe、Cu−フタロシアニン青、並びに二酸化珪素表面を有する半導体ウェファー)のPEO−PPO−PEO−ブロックコポリマーによる被覆のみが示されている。基体表面に沈着されたコポリマーの固定は示されていない。
【0004】
超常磁性粒子を被覆するためのLCST−ポリマーの使用も国際公開第97/45202号パンフレットから公知である。これら粒子は第1ポリマーからの核と、核を被覆すると共に磁性材料を分散させた第2ポリマーからの内層と、磁性層を被覆すると共に少なくとも1種の生物学分子との反応状態にある第3ポリマーからの外層とを含有し、ここで少なくとも第2ポリマーは感熱性であると共に15〜65℃のLCST−温度を有する。好ましくは第2ポリマーは(1)水溶性アクリルアミドモノマー(たとえばN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM))、(2)少なくとも1種の架橋剤(たとえばN,N−メチレン−ビスアクリルアミド)および(3)モノマー(1)とは異なる少なくとも1種の官能性カチオン型かつ水溶性のモノマー(たとえば2−アミノエチル−メタアクリレートの塩化物)の重合により得られる。更に好適なポリマーは[ポリ−(N−イソプロピルアクリルアミド)](PNIPAM)である。
【0005】
「日本国特許要約Vol. 009、No.188(C295)(1985)、第107頁=JP特開昭60−058237号公報には、無機粒子の包封が記載されている。その目的は安定な粒子分散物の作成である。無機粒子は水に懸濁されて、LCST温度より低い温度でLCST−ポリマーの水溶液と接触される。得られる系の温度を上昇させた後、無機粒子上にLCST−ポリマーの層を沈着させる。得られた粒子懸濁物にラジカル重合により重合しうるモノマー、開始剤および場合により乳化剤を添加し、乳化重合を行って包封された粒子を得る。更に外層としては重合したモノマー層も生じ、LCST−ポリマー層の機能はモノマーラジカルの浸入を容易化させることにある。
【0006】
重合性モノマーは、既に粒子上に存在するLCST−ポリマーと反応し、或いは水溶性ポリマーは重合性モノマーから得られたポリマーの層で覆われる。この方法は、予め沈着したLCST−ポリマーの活性中心に対してのみグラフト付着が生ずることにより、被覆が不均等かつ不均一となって完全なバリヤを構成しないと言う欠点を有する。
【0007】
更に、被覆された粒子の分散物にはモノマーを添加して架橋を開始させねばならない。大抵の場合、モノマーは決して完全には消費されず、従ってモノマーの或る程度の部分が架橋した構造に残留する。ポリマーからの「溶解した」モノマーのその後の放出は、このモノマーが健康上有害であるため望ましくない。
【0008】
更に顔料が溶剤と接触する場合、共重合した乳化剤の脱着によるラッカー系における欠点も予想される。
【0009】
国際公開第92/20441号パンフレットには包封粒子の製造方法が記載されており、ここで粒子はコアゼルベート被覆により包囲されるコアを含有する。この方法においては、LCST−ポリマーの水溶液をT1の可逆性不溶化(TRI)の温度にてT1よりも低いT2の温度における粒子の分散物と接触させ、次いでこの分散物をT1より高い温度まだ加熱し、これによりLCST−ポリマーを粒子の周囲にコアゼルベートとして沈着させる。次いでTRIを低下させる薬剤を溶液に添加し、溶液におけるLCST−ポリマーのTRIをT1より低い温度T3まで低下させ、次いで分散物をT3〜T1の温度まで冷却しその温度に維持し、或いは粒子をT3より高い温度にて分散物から分離する。TRIを低下させる薬剤として電解質およびLCST−ポリマーが可溶性でない水混和性有機液を使用することができる。
【0010】
LCST−ポリマーとしては好ましくは合成ポリマー(ホモポリマーもしくはコポリマー)を親水性モノマーと共に使用する。適するLCST−モノマーはアクリル−もしくはビニル−化合物である。LCST−コポリマーを使用する場合、一般にコモノマーは親水性であると共に、非イオン性もしくはイオン性とすることができる。適する非イオン性モノマーは或る種のアクリル−もしくはビニル−化合物である。たとえばアニオン性もしくはカチオン性モノマーはアクリル酸誘導体またはジアルキルアミノアルキルアクリレートである。これら化合物はしかしながら既に末端飽和されており、架橋反応はもはや可能でない。
【0011】
LCST−ポリマーは、たとえば欧州特許出願公開第0629649号明細書からも公知である。これらはレオ流動化添加剤および抗沈降剤としてダイヤフラム壁部構造に、油工業における穴部として、および水圧流体および潤滑剤として使用される。
【0012】
欧州特許出願公開第0718327号明細書からは、メチルメタクリレートおよびアクリレートもしくはメタクリレートから構成された普遍的な適合性顔料分散剤が公知である。これらポリマーはしかしながら顔料の分散のみに役立ち、顔料の被覆には役立たない。
【0013】
ドイツ国特許出願公開第19802233号明細書には向温特性を有するゲルが記載され、これはたとえばガラス化システムに使用されて、日光照射とは無関係に暗色化を達成する。このゲルは60〜99.9重量%のエチレン系不飽和ラクタムまたはビニルエーテル(モノマーA)と、0〜20重量%のエチレン系不飽和の架橋作用化合物(モノマーB)と、0.1〜30重量%の少なくとも1個の酸基もしくは無水酸基を有するモノマー(モノマーC)と、0〜20重量%の更なるモノマーDとから構成されたLCST−ポリマーを含む。好ましくは、このLCST−ポリマーはモノマーAおよびCのみを含み、従ってLCST−ポリマーは照射に際し架橋しない。ゲルを作成するため、LCST−ポリマー並びにラジカル重合性モノマー(b)から溶液を作成すると共に、エネルギーリッチな光を照射する。モノマー(b)はその際三次元ネットワーク(すなわちゲル)を形成し、これは選択された溶剤もしくは溶剤混液には全く或いは殆ど溶解しない。モノマー(b)から形成されたネットワークにLCST−ポリマーは結合され、従って向熱性ゲルが得られ、これは極めて幅広に架橋される。このゲルはガラス板の間に施すことができて、ガラス板の間の中間室を満たさねばならない。
【0014】
同様なポリマー系がドイツ国特許出願公開第19719224号明細書にも記載されている。向温性ポリマー系が内側と外側との、(すなわち天然太陽光に晒される透明な)ガラス板の間に配置された層構造が記載されている。向温性ポリマー系はUV−保護層により長時間にわたりUV光の作用に対し保護される。向温性ポリマー系はここでも幅広架橋されたゲルから構成される。
【0015】
ドイツ国特許出願公開第19700064号明細書には混合物の照射により得られる向温特性を有するゲルが記載され、これは未架橋ポリマー、ラジカル重合性モノマー、水もしくは有機溶剤またはその混合物、並びに少なくとも1種の特殊な光開始剤を含有する。この場合もLCST−ポリマーはラジカル重合性モノマーで作成される幅広メッシュのゲル構造に結合される。このゲルはガラス化システムにて向温性層として使用される。
【0016】
ドイツ国特許出願公開第19601085号明細書には同様に、ガラス化システムに使用される向温特性を有するゲルが記載されている。これらゲルは、(a)(a)、(b)および(c)の合計に対し5重量%以下の量の未架橋ポリマーと、(b)ラジカル重合性モノマーと、(c)水もしくは有機溶剤またはその混合物とを含有する混合物の照射により得られる。ここでもLCST−ポリマーはラジカル重合性モノマーから形成された幅広メッシュのネットワークに一体化される。
【0017】
ドイツ国特許出願公開第19601084号明細書には向温性層のためのゲルが記載され、これはエネルギーリッチな光での混合物の照射により得られる。この混合物は1000〜30000g/モルの数平均分子量Mを有するポリマー(LCST−ポリマー)と、ラジカル重合性モノマーと、水もしくは有機溶剤またはその混合物とを含有する。これらゲルは同様にガラス化システムに向温性層として使用される。ここでも幅広メッシュ構造にLCST−ポリマーが結合されたゲルが形成される。
【0018】
ガラス化システムのための前記向温性ゲルにおいてLCST−ポリマーはゲルにおいてもその向温特性を保持すべきであり、反復して沈降もしくは溶解して、陰影/照明のできるだけ高いサイクル数を行うことができる。この種のゲルは被覆の形成には適さない。
【0019】
この種の更なるシステムがドイツ国特許出願公開第4414088号明細書にも記載されている。これらゲルも、ゲルに一体化されたLCST−ポリマーを含み、これはたとえば水または有機溶剤のような適する溶剤におけるラジカル重合性モノマーの重合により得られる。
【0020】
本発明は、冷却に際しもはや基体表面から脱着せず、そこに堅固に結合し続けるようなLCST−ポリマーを作成することを課題とする。従ってポリマーは乳化剤もしくはモノマーの添加なしに使用され、従って規定されたポリマー層からは全く添加物質が溶出しえない。
【0021】
この課題は本発明によれば
(A)(a)N,N−ジアルキルアクリルアミド
【化1】

[式中、Nは1〜10,000であり、R(同一もしくは互いに異なる)は水素もしくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示し、ここで残基Rは窒素原子と一緒になってリングを形成することもでき];
(b)N−ビニルカプロラクタム
【化2】

[式中、oは1〜10,000を示す];
(c)N−ビニルピペリドン
【化3】

[式中、pは1〜10,000を示す];
(d)n−ビニルピロリドン
【化4】

[式中、qは1〜10,000を示す];
(e)メチル−ビニルエーテル
【化5】

[式中、rは1〜10,000を示し;および/または
(f)N−ビニル−アルキルアミド
【化6】

[式中、sは1〜10,000を示し、Rは1〜5個の炭素原子を有する(イソ)アルキル基またはシクロペンチル基を示す]
の構造単位を有する少なくとも1種のモノマーもしくはマクロモノマー約45.0〜99.9モル%;
(B)(a)マレイン酸、無水マレイン酸またはマレイン酸のアルキルエステル(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(b)フマル酸またはフマル酸のアルキルエステル(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(c)アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアルキルアクリレートもしくは−メタクリレート(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(d)ヒドロキシアルキルアクリレートもしくは−メタクリレート(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(e)酢酸ビニル;
(f)(メタ)アクリル酸グリシジル;
(g)アリルグリシジルエーテル;および/または
(h)α,α−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートの群からのコモノマー約0.1〜55.0モル%
の水溶液もしくはアルコール溶液におけるラジカル共重合もしくは三元重合により得られるLCST−ポリマー[ここでモノマーもしくはマクロモノマー(A)および(B)の共重合により得られるポリマーはコモノマー(B)に由来する反復単位からの基と共有結合を形成しながら反応しうると共に少なくとも1個の重合しうる二重結合を有する誘導化剤により誘導化される]により解決される。
【0022】
「マクロモノマー」とは更にまだ重合しうるコポリマーと理解されるが、或る種のコポリマーの場合は当てはまらない。これらマクロモノマーは従ってたとえば反応性の重合しうる二重結合を含む。
【0023】
本発明によるLCST−ポリマーの作成に際し、先ず最初にモノマーもしくはマクロモノマー(A)および(B)からポリマーを作成し、これは殆ど既にLCST−特性を有する。この反応は一般に溶液にて行われる。ポリマーの溶解度に依存反応に際し濁りが生ずる。これはポリマーの構造および性質に影響を及ぼすが本質的ではない。これらポリマーを作成するには、モノマーもしくはマクロモノマー(A)および(B)もポリマーも溶解して反応が更に均質に進行するような適する溶剤が選択される。たとえば水またはアルコール(たとえばメタノール、エタノールもしくはイソプロパノール)またはこれら溶剤の混合物が適している。脂肪族もしくは芳香族溶剤も使用することができる。芳香族溶剤がその一層良好な溶解特性のため好適である。適する芳香族溶剤はたとえばトルエンまたはキシレンである。脂肪族もしくは芳香族溶剤の使用は特に、ポリマーが水もしくはアルコールと反応しうる誘導化用の反応基を有する場合に好適である。更にここでは溶剤混合物も使用することができる。上記溶剤の他に、他の溶剤も使用することができる。
【0024】
第1工程にて作成されたポリマーは、それぞれ上記群(A)および(B)からのモノマーのみを含むことができる。しかしながら、上記群(A)および(B)からの多くのモノマーをポリマーに含有させることもできる。それに応じ、ポリマーは共重合または三元重合により得られる。場合により重合は3種より多い異なるモノマーで行うこともできる。
【0025】
群(A)に含まれるモノマーは種々異なる極性を有し、従って個々のモノマー(もしくはマクロモノマー)の比によりLCST−ポリマーのLCST温度は影響を受けることがある。たとえばモノマー((A、d);N−ビニルピロリドン)は比較的極性の性質を有すると共にLCST−温度を上昇させる一方、モノマー(A、b);N−ビニルカプロラクタム)は明らかに非極性の特性を有し、従ってLCST−ポリマーの一層低いLCST−温度をもたらす。モノマー((A、d);N−ビニルピロリドン)を群(A)の他のモノマーと一緒に使用するのが好適であり、特にモノマー((A、b);N−ビニルカプロラクタム)および((A、c);N−ビニルピペリドン)の一方もしくは両者と組み合わせるのが好適であり、更に特にモノマー((A、b);N−ビニルカプロラクタム)と組み合わせるのが好適である。群(A)のモノマーに対するモノマー((A、d);N−ビニルピロリドン)の割合はその際70モル%より小、特に60モル%より小、特に好ましくは50モル%より小として選択するのが好適である。
【0026】
群(B)のモノマーにより、その後のポノマーの誘導化を可能にする基が導入される。群(B)のモノマーは従って重合しうる二重結合の他に、一方では重合反応を妨げずかつ他方ではポリマーに含有され続けて誘導化剤との反応を可能にするような少なくとも1個の反応基を含む。群(B)のモノマーの極性により更に、LCST−ポリマーのLCSTが影響されることもある。
【0027】
群(A)および(B)のモノマーの重合の後、ポリマーの誘導化が行われ、これにより修飾重合性二重結合がポリマー中に導入される。ポリマーを誘導化する化合物は、一方では重合性二重結合を有すると共に他方ではポリマーの骨格に対する結合を可能にする反応基をも有する。その際、結合はモノマー(B)により導入された反応基を介して行なわれる。これら化合物は好ましくは50〜300の範囲の分子量を有する。これら化合物の導入により、LCST−ポリマーのLCST−特性は大して影響を受けない。誘導化剤の反応基は、群(B)のモノマーと共にポリマー中に導入された基に相応して選択される。ポリマーにカルボキシ基、カルボン酸エステル基、無水カルボン酸基、エポキシ基もしくはイソシアナト基が設けられた場合、誘導化剤は好ましくはヒドロキシ基もしくはアミノ基を含む。従って誘導化には好ましくは不飽和アルコールもしくはアミンが使用される。群(B)のモノマーと共にヒドロキシ基が反応基としてポリマー中に導入された場合、誘導化剤はそれに応じてカルボキシ基、カルボン酸エステル基、無水カルボン酸基もしくは他の活性カルボン酸基またはエポキシ基もしくはイソシアナト基をも含む。
【0028】
LCST−ポリマーは誘導化の後に重合性二重結合を持った修飾基を有する。本発明によるLCST−ポリマーの利点は従ってこれらが表面への沈着の後にもまだ更に架橋しうると言う点であり、極めて高い架橋度を達成することができる。
【0029】
本発明によるLCST−ポリマーの具体例において、群(B)のモノマーの少なくとも1部はブタジエンにより交換される。これは、修飾重合性二重結合の導入を別途の誘導化工程にて行う必要がなく寧ろこれら修飾重合性二重結合が既に群(A)および(B)のモノマーもしくはマクロモノマーの重合に際し導入されると言う利点を有する。
【0030】
コモノマー(B)(a)〜(c)からの構造単位の誘導化はアリルアルコール、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートもしくは3−アミノ−1−プロパノールビニルエーテルでのエステル交換により行うことができる。
【0031】
コモノマー(B)(d)からの構造単位の誘導化はアクリル酸での或いはメタクリル酸でのエステル化またはC〜C10−アルキルアクリレートもしくはメタクリレートでのエステル交換により行うことができる。
【0032】
コモノマー(B)(e)からの構造単位の誘導化はアクリル酸、メタクリル酸、C〜C10−アルキルアクリレートもしくは−メタクリレートでのエステル交換により行うことができる。
【0033】
コモノマー(B)(f)からの構造単位は誘導化する必要がない。
【0034】
コモノマー(B)(g)および/または(h)からの構造単位またはそのOH−もしくはNH−官能性誘導体の誘導化は(メタ)アクリル酸でのエステル交換により行うことができる。
【0035】
カルボン酸基を含むコモノマー(B)(a)〜(c)からの構造単位の誘導化は、グリシジル(メタ)アクリレートおよび/またはアリルグリシジルエーテルとの反応により行うことができる。
【0036】
OH−および/またはNH−官能性を有するコモノマー(B)からの構造単位の誘導化は、α,α−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートで行うことができる。たとえば、本発明の具体例においてコモノマー(B)(d)からの構造単位の誘導化はα,α−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートとの反応により行われる。
【0037】
LCST−ポリマーについては正確な式を示すことができない。何故なら、モノマーは一般に統計的分布にてポリマー鎖中に配置されるからである。しかしながら、ポリマー鎖は同じモノマーのブロックから構成することもできる。
【0038】
驚くことに、本発明によるポリマーはコモノマー(B)(a)〜(B)(i)の重合および誘導化の後に不可逆的に基体表面に対し固定化されることが突き止められた。固定化は、末端基が簡単なビニル基またはに二重結合を有する他の基からなるLCST−ポリマーの場合よりもずっと大である。実質的に分子内の2個より多い重合性基を、ポリマーを固定化するために用いることができる。多数の二重結合の存在により、架橋密度は2個のみの(末端)基の場合におけるよりも大となる。更なる点は、より緻密な架橋(高架橋密度)により(水性)溶剤における顔料に固定化されたポリマーの膨潤が実質的に低くなる点である。これは被覆された顔料を塗料中に混入する際に大きな利点を有する。何故なら、たとえばブリスタおよび膨潤のような塗料の欠点が一層小さくなるからである。
【0039】
本発明によるポリマーは一般に、特に次の因子に依存して7〜70℃の範囲におけるLCSTを有する:
−LCST−ポリマーの疎水性部分と親水性部分とのモル比、
−LCST−ポリマーのモル量、
−重合性かつイオン化性基の個数、
−ポリマーの濃度、
−媒体のpH値およびイオン強度。
【0040】
LCST−ポリマーは極性および非極性または親水性および疎水性のセグメントで構成される。LCSTは、これら個々のセグメントの変動および全鎖長により合理的に調整することができる。
【0041】
本発明のLCST−ポリマーは、重合および誘導化の後に、基体表面上に固定された分散剤として使用される。このようにして、特に顔料分散のコストのかかる工程を安価にすることができる。顔料が分散剤となるからである。さらに、このように被覆された顔料は未処理顔料よりも小さい程度しか凝集体を形成せず、従って分散を一層容易に行うことができ更なるコスト低減をもたらす。
【0042】
分散剤は、粉末状物質(たとえば顔料もしくは充填材料)の分散を液体分散媒体にて容易化させる表面活性物質であり、これらは両成分間の表面張力を低下させる。これにより顔料分散の過程でこれらは凝集体の形態で存在する二次粒子を一次粒子まで機械的に崩壊するのを容易化させる。更に、これらは保護コロイドシェルまたは電気化学二重層の完全湿潤化および形成により、再凝集またはフロキュレーションに対し形成一次粒子を保護する。
【0043】
本発明のLCST−ポリマーは可視光において透明もしくは半透明であるため、これらは粒子自身の色に悪影響を及ぼすことなく各粒子の完全な被覆を形成することができる。更に、塗料においてはこのように被覆された顔料は充分な色強度を示す。何故なら、LCST−ポリマーでのコーチングにより、これらは決して凝集体を形成しないからである。
【0044】
本発明によるLCST−ポリマーは、ラジカル重合および/次いで流動化により作成することができる。その際、群(A)からの少なくとも1種のモノマーもしくはオリゴマーの約45.0〜99.9モル%、好ましくは約75〜99モル%をコモノマー(B)の約0.1〜55.0モル%、好ましくは約1〜25モル%と共に使用する。重合は好ましくは溶液にて行われる。
【0045】
その際、モノマー(A)とコモノマー(B)との混合物も使用することが可能である。本発明によるコポリマーの作成は、水溶液またはアルコール溶液にてラジカル重合により行うことができる。その際、低分子量アルコール(C〜C)が好ましい。何故なら、これらは容易に除去しうるからである。群(B)のコモノマーがアルコールもしくは水と反応しうる反応基(たとえばエポキシ基またはイソシアナト基)を有する場合、溶剤としては脂肪族もしくは芳香族炭化水素も使用することができ、ここで芳香族炭化水素が好適である。適する芳香族溶剤はたとえばトルエンもしくはキシレンである。重合はラジカル形成性化合物、たとえば有機ペルオキシドもしくはアゾ化合物のような重合開始剤、または無機ペルオキシド化合物の存在下に行われる。得られるコポリマーの分子量に影響を及ぼすには、適する重合調整剤(たとえばメルカプタン、有機ハロゲン化合物またはアルデヒド)を添加する。重合は一般に50〜100℃の温度、好ましくは60〜80℃の温度にて行われる。
【0046】
本発明によるLCST−ポリマーは、粒子および非粒状基体表面の被覆に使用することができる。本発明により適する粒子には顔料、充填材料およびナノ粒子がある。顔料は粉末状もしくは小板状の色素であって着色料とは異なり包囲媒体に不溶性である(DIN 55943:1993〜11、DIN:EN971−1:1996−09)。顔料は着色に影響を及ぼし或いは決定すると共に、コスト上の理由からできるだけ少量にて使用される。相互作用の力に基づき、特にマトリックス材料に混入する際に、顔料粒子が凝集しうる。その結果、たとえば得られる顔料に品質劣化をもたらし、特に不充分な色強度、沈降または層分離により品質劣化をもたらす。
【0047】
好適顔料は二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、Cu−フタロシアニン顔料、小板状顔料(たとえば雲母、場合により酸化性および金属性被覆を有する)、またはアルミニウムである。充填材料としては、たとえば硫酸バリウムおよびタルクを使用することができる。ナノ粒子としては酸化鉄−二酸化チタン−および二酸化珪素−粒子、並びにナノクレーを使用することができる。ナノクレーはたとえばモンモリロナイト、ベントナイト、合成ヘクトライトもしくはハイドロタルサイトで構成される。これらはその長手方向に沿って1μmよりも小さい延びを有する。好ましくはこれらは100nmより大の長さと10nmより小の厚さとを有する。ナノクレーは1000までの極めて高いアスペクト比を有する。これら粒子にはミクロ繊維(たとえばガラス繊維、炭素繊維、織物およびポリマー繊維)も挙げられる。
【0048】
基体表面は非粒状表面、たとえばガラス、金属および半導体からの表面とすることもできる。特に好適な表面は二酸化珪素−ウェファーであって半導体技術に使用されるものである。
【0049】
本発明によるLCST−ポリマーは好ましくは液体媒体(たとえば水性媒体もしくは有機媒体)中でLCST−温度未満にて粒子または非粒状基体表面と接触させ、その後に温度をLCST−温度を越えるまで上昇させ、ポリマーをこの温度またはそれより高い温度にて二重結合を介し粒子の表面上に或いは非粒状基体表面上で重合させる。
【0050】
更に本発明の課題は、重合したLCST−ポリマーにより被覆された粒子または非粒状基体表面である。
【0051】
以下、限定はしないが実施例により本発明を更に説明する。
【0052】
実施例1
90モル%のN,N−ジエチルアクリルアミドと10モル%の無水マレイン酸とのコポリマー
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とを設けた1リットルの3つ首フラスコにて250gのN,N−ジエチルアクリルアミドと21.42gの無水マレイン酸と8gのドデシルメルカプタンとを500mlのトルエンに溶解させると共に窒素をフラッシュさせた。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱した。コポリマーを単離するため溶剤を減圧除去した。
【0053】
コポリマーの改変は、従来技術に従うエステルにより行うことができる。これにはコポリマーを500mlのトルエンに溶解させると共に25.37gのアリルアルコールと混合する。アルコールの添加は反応に際し部分的に或いは連続的に行うこともできる。更に0.1〜5重量%のエステル化触媒(硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルカリ(土類)(ヒドロ)オキサイドまたは金属アルコラート)と混合する。エステル化は80〜120℃のスンプ温度にて行なう。望ましくない重合を回避するには、合理的には反応を少量の市販の重合阻止剤(たとえばハイドロキノンモノアルキルエーテル、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、N−ニトロソアミン、フェノチアジンまたは燐酸エステル)の存在下に行なう。これら化合物は、エステルの質量に対し0.01〜2.0%の量にて使用される。得られる生成物は約29℃のLCSTを有する。
【0054】
実施例2
90モル%のN,N−ジエチルアクリルアミドと10モル%のフマル酸ジメチルとからのコポリマー
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのN,N−ジエチルアクリルアミドと31.48gのフマル酸ジメチルと8gのドデシルメルカプタンとを溶解させ、窒素をフラッシュさせた。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加し、12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱した。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去した。
【0055】
エステル交換触媒および重合阻止剤の使用下におけるアリルアルコールでのエステル交換によるコポリマーの改変を実施例1に従って行った。得られた生成物は約29℃のLCSTを有する。
【0056】
実施例3
90モル%のN,N−ジエチルアクリルアミドと10モル%のヒドロキシエチルメタクリレートとからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのN,N−ジエチルアクリルアミドと28.42gのヒドロキシエチルメタクリレートと8gのドデシルメルカプタンとを溶解させ、窒素をフラッシュさせた。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱した。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去した。
【0057】
エステル交換触媒と重合阻止剤とを使用しながら、21.87gのメタクリル酸メチル(アリルアルコールの代わり)でのエステル交換によるコポリマーの改変を実施例1に従って行った。得られた生成物は約24℃のLCSTを有する。
【0058】
実施例4
90モル%のN,N−ジエチルアクリルアミドおよび10モル%のブタジエンからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのエタノールに250gのN,N−ジエチルアクリルアミドと8gのドデシルメルカプタンとを溶解させ、窒素をフラッシュさせた。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に12時間にわたりエタノールの沸点まで加熱した。その際、11.82gのブタジエンをガス状にて導入した。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去した。得られた生成物は31℃のLCSTを有する。
【0059】
実施例5
90モル%のN−ビニルカプロラクタムおよび10モル%の無水マレイン酸からの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのN−ビニルカプロラクタムと19.57gの無水マレイン酸と8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせた。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱した。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去した。
【0060】
エステル交換触媒および重合阻止剤を使用しながらアリルアルコールでのエステル化によるコポリマーの改変を実施例1に従って行った。得られた生成物は約28℃のLCSTを有する。
【0061】
実施例6
90モル%のN−ビニルカプロラクタムおよび10モル%のフマル酸ジメチルからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのN−ビニルカプロラクタムと28.76gのフマル酸ジメチルと8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせた。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱した。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去した。
【0062】
エステル交換触媒と重合阻止剤とを使用しながらアリルアルコールでエステル交換するコポリマーの改変を実施例1と同様に行う。得られる生成物は約28℃のLCSTを有する。
【0063】
実施例7
90モル%のN−ビニルカプロラクタムおよび10モル%のヒドロキシエチルメタクリレートからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのN−ビニルカプロラクタムと25.97gのヒドロキシエチルメタクリレートと8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせた。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱した。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去した。
【0064】
エステル交換触媒と重合阻止剤とを使用しながら21.87gのメタクリル酸メチルでエステル交換するコポリマーの改変を実施例1と同様に行う。得られる生成物は約19℃のLCSTを有する。
【0065】
実施例8
90モル%のN−ビニルカプロラクタムおよび10モル%のブタジエンからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのエタノールに250gのN−ビニルカプロラクタムと8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせた。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりエタノールの沸点まで加熱した。その際、10.79gのブタジエン(ガス状)を導入する。コポリマーを単離するため溶剤を減圧除去する。得られる生成物は30℃のLCSTを有する。
【0066】
実施例9
90モル%のメチルビニルエーテルおよび10モル%の無水マレイン酸からの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのメチルビニルエーテルと46.9gの無水マレイン酸と8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせた。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱する。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去する。
【0067】
エステル交換触媒と重合阻止剤とを使用しながらアリルアルコールでエステル化するコポリマーの改変は実施例1に従って行う。得られる生成物は約25℃のLCSTを有する。
【0068】
実施例10
90モル%のメチルビニルエーテルおよび10モル%のフマル酸ジメチルからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのメチルビニルエーテルと68.93gのフマル酸ジメチルと8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせた。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱する。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去する。
【0069】
エステル交換触媒と重合阻止剤とを使用しながらアリルアルコールでエステル交換するコポリマーの改変は実施例1に従って行う。得られる生成物は約25℃のLCSTを有する。
【0070】
実施例11
90モル%のメチルビニルエーテルおよび10モル%のヒドロキシエチルメタクリレートからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのメチルビニルエーテルと62.24gのヒドロキシエチルメタクリレートと8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせる。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱する。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去する。
【0071】
エステル交換触媒と重合阻止剤とを使用しながら21.87gのメタクリル酸メチルでエステル交換するコポリマーの改変は実施例1に従って行う。得られた生成物は約16℃のLCSTを有する。
【0072】
実施例12
90モル%のN−ビニルカプロラクタムおよび10モル%のブタジエンからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのエタノールに250gのN−ビニルカプロラクタムと8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせる。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりエタノールの沸点まで加熱する。その際、10.79gのブタジエン(ガス状)を導入する。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去する。得られた生成物は24℃のLCSTを有する。
【0073】
実施例13
90モル%のN−ビニル−n−ブチルアミドおよび10モル%の無水マレイン酸からの共重合体
たとえばN−ビニル−n−ブチルアミドのようなN−ビニルアルキルアミドを2段階反応により作成する。これに1モルのアセトアルデヒドと1モルのイソプロパノールと1モルのN−ブチルアミドとを触媒量の濃硫酸の存在下に500℃にてN−ビニル−n−ブチルアミドまで加熱分解する。正確なメカニズムはK.スワ、Y.ワダ、Y.キクナガ、K.モリシタ、A.キシダ、M.アカシ、ジャーナル・ポリマー・サイエンス、パートA:ポリマー・ケミストリー・Ed、35、1763頁(1997)に示されている。
【0074】
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのN−ビニル−n−ブチルアミドと24.08gの無水マレイン酸と8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせる。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱する。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去する。
【0075】
エステル交換触媒と重合阻止剤とを使用しながらアリルアルコールでエステル化によるコポリマーの改変は実施例1に従って行う。得られる生成物は約29℃のLCSTを有する。
【0076】
実施例14
90モル%のN−ビニル−n−ブチルアミドおよび10モル%のフマル酸ジメチルからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのN−ビニル−n−ブチルアミドと35.39gのフマル酸ジメチルと8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせる。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱する。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去する。
【0077】
エステル交換触媒と重合阻止剤を使用しながらアリルアルコールでエステル交換するコポリマーの改変は実施例1に従って行う。得られる生成物は約29℃のLCSTを有する。
【0078】
実施例15
90モル%のN−ビニル−n−ブチルアミドおよび10モル%のヒドロキシエチルメタクリレートからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのトルエンに250gのN−ビニル−n−ブチルアミドと31.95gのヒドロキシエチルメタクリレートと8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせる。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりトルエンの沸点まで加熱する。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去する。
【0079】
エステル交換触媒と重合阻止剤を使用しながら21.87gのメタクリル酸メチルでエステル交換するコポリマーの改変は実施例1に従って行う。得られる生成物は約24℃のLCSTを有する。
【0080】
実施例16
90モル%のN−ビニル−n−ブチルアミドおよび10モル%のブタジエンからの共重合体
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた1リットルの3つ首フラスコにて500mlのエタノールに250gのN−ビニル−n−ブチルアミドと8gのドデシルメルカプタンとを溶解し、窒素をフラッシュさせる。これに2gのジベンゾイルペルオキシドを添加すると共に、12時間にわたりエタノールの沸点まで加熱する。その際13.28gのブタジエン(ガス状)を導入する。共重合体を単離するため溶剤を減圧除去する。得られる生成物は30℃のLCSTを有する。
【0081】
実施例17
50モル%のビニルカプロラクタムと45モル%のビニルピロリジンと5モル%のメタクリル酸グリシジルとからの共重合体および/次いで5モル%のメタクリル酸による改変
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた2リットルの3つ首フラスコにて600mlのトルエンに138.2gのN−ビニルカプロラクタムと50.9gのN−ビニルピロリドンとを溶解し、窒素をフラッシュさせる共にトルエンの沸点まで加熱する。この溶液に10.9gのメタクリル酸グリシジルと2.5gのアゾビスイソブチロニトリルとの80mlのエタノールにおける混合物を滴下すると共に、反応混合物を更に5時間にわたり同温度にて攪拌する。コポリマーの改変は、約80℃にて更に5時間にわたり6.6gのメタクリル酸とコポリマーを反応させて行う。酸の添加は反応の際に部分的または連続的に行うこともできる。得られる生成物は約46℃のLCSTを有する。
【0082】
実施例18
50モル%のビニルカプロラクタムと45モル%のビニルピロリジンと5モル%のメタクリル酸とからの共重合体およびその後の5モル%のメタクリル酸グリシジルによる改変
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた2リットルの3つ首フラスコにて600mlのトルエンに138.2gのN−ビニルカプロラクタムと50.9gのN−ビニルピロリドンとを溶解し、窒素をフラッシュさせる共にトルエンの沸点まで加熱する。この溶液に6.6gのメタクリル酸と2.5gのアゾビスイソブチロニトリルとの80mlのエタノールにおける混合物を滴下し、反応混合物を更に5時間にわたり同温度にて攪拌する。コポリマーの改変は、コポリマーと10.9gのメタクリル酸グリシジルとの約80℃にて更に5時間にわたる反応により行う。メタクリル酸の添加は、反応に際し部分的または連続的に行うこともできる。得られる生成物は約48℃のLCSTを有する。
【0083】
実施例19
50モル%のビニルカプロラクタムと45モル%のビニルピロリドンと5モル%のα,α−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートとからの共重合体およびその後の5モル%のヒドロキシエチルメタクリレートによる改変
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた2リットルの3つ首フラスコにて600mlのトルエンに135.2gのN−ビニルカプロラクタムと49.8gのN−ビニルピロリドンと15.0gのα,α−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートとを溶解し、窒素をフラッシュさせる共にトルエンの沸点まで加熱する。この溶液に2.5gのアゾビスイソブチロニトリルの80mlのトルエンにおける溶液を滴下し、反応混合物を更に5時間にわたり同温度にて攪拌する。コポリマーの改変は、コポリマーと10.9gのヒドロキシエチルメタクリレートとの約80℃における更に5時間にわたる反応により行う。酸の添加は、反応に際し部分的または連続的に行うこともできる。得られる生成物は約50℃のLCSTを有する。
【0084】
実施例20
50モル%のビニルカプロラクタムと45モル%のビニルピロリドンと5モル%のヒドロキシエチルメタクリレートとからの共重合体およびその後の5モル%のα,α−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートによる改変
撹拌器と還流冷却器と窒素導入管とが設けられた2リットルの3つ首フラスコにて600mlのトルエンに135.2gのN−ビニルカプロラクタムと49.8gのN−ビニルピロリドンと10.9gのヒドロキシエチルメタクリレートとを溶解し、窒素をフラッシュさせる共にトルエンの沸点まで加熱する。この溶液に80mlのトルエンにおける2.5gのアゾビスイソブチロニトリルの溶液を滴下し、反応混合物を更に5時間にわたり同温度にて攪拌する。コポリマーの改変は、コポリマーと15.0gのα,α−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートとの約80℃における更に5時間にわたる反応により行う。イソシアネートの添加は反応に際し部分的または連続的に行うこともできる。得られる生成物は約50℃のLCSTを有する。
【0085】
実施例21(比較)
粒子に固定化するための2個のみの官能基を有するLCST−ポリマー
(a)開始剤溶液の作成:
乾燥チューブが設置された還流冷却器と窒素導入管とを有する2リットルの3つ首フラスコにて、ナトリウム上で何回も蒸留された1000mlのテトラヒドロフランと40gのナフタリンと6gのナトリウム切り屑とを20℃で絶対乾燥窒素雰囲気下に攪拌した。ナトリウムは深緑色の付加化合物を形成しながら2時間かけて溶液となった。作成された溶液はその後に、ナトリウムに対し0.25モルとなる。
(b)重合の実施:
同様に空気および水分を慎重に排除しながら、次の操作を行わねばならない。
【0086】
1リットルの3つ首フラスコに純窒素雰囲気下で、ナトリウム上で蒸留された新たな300mlのテトラヒドロフランを入れる。次いで、フラスコに設置された滴下漏斗にて、(a)からの20mlのナフタリンナトリウム溶液を導入し、この溶液の滴下によりフラスコ内の最終的不純物を除去する。緑色が維持されたら直ちに、500mlのこの0.25m溶液を流入させる。強力な撹拌下に次いで30分間かけて1000mlのテトラヒドロフランにおける317gのN,N−ジエチルアクリルアミド(2.5モル)の溶液を滴下する。この溶液は直ちに着色する。外部冷却により温度を15〜20℃に保ち、ここで滴下されたN,N−ジエチルアクリルアミドは実質的に1〜2秒間で重合する。N,N−ジエチルアクリルアミド添加の終了後、12gのアクリル酸クロライドの過剰量の添加により重合を停止させる。溶剤をストリップ除去する前に、後処理のため反応混合物に10mlのメタノールを添加する。得られた生成物は約4700g/モルの平均分子量および約39℃のLCSTを有する。
【0087】
実施例22(比較)
粒子に固定化するための2個の官能基を有するLCST−ポリマー
例21のN,N−ジエチルアクリルアミドの場合と同様に、348g(2.5モル)のN−ビニルカプロラクタムの重合を行った。得られた生成物は約5700g/モルの平均分子量および約32℃のLCSTを有する。
【0088】
実施例23(比較)
粒子に固定化するための2個の官能基を有するLCST−ポリマー
例21のN,N−ジエチルアクリルアミドの場合と同様に145g(2.5モル)のメチルビニルエーテルの重合を行った。得られた粘性の生成物は約2500g/モルの平均分子量および約28〜30℃のLCSTを有する。
【0089】
使用例
蛍光顔料(イリオジン・アフレア(登録商標)504、製造業者:メルクKgaA、ダルムシュタット)を実施例からの各生成物に従うLCST−ポリマーで被覆する。粒子のポリマー被覆の効果を検査するため、小板形状の蛍光顔料の使用を検証した。この目的で、本発明による被覆された蛍光顔料を含有する塗料の吸水性を測定する。ここで興味あることは高度および低度の架橋または架橋なしのポリマー被覆間の比較である。
【0090】
使用例1
実施例1のLCST−ポリマーでイリオジン・アフレア(登録商標)504を処理するため0.5%ポリマー溶液を使用する。顔料(10重量%)を800U/minにて15分間にわたり水に分散させる。分散物を次いで10℃の温度まで冷却する。ポリマー溶液を添加した後、顔料を40℃にて30分間にわたりポリマーで被覆し、沈着したポリマーを次いで3時間にわたり架橋させる。開始剤システムとして、ポリマー1g当たり0.8gのナトリウムピロサルファイトと0.4gの硫酸鉄(II)と0.8gのカリウムペルオキソジサルフェートとを使用する。顔料に対するポリマー濃度は5重量%とした。
【0091】
使用例2
同様にして実施例2のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)の処理を行い、ここで顔料分散物の温度を10℃から40℃まで顔料の被覆のため上昇させる。ポリマー層の架橋を使用例1の重合開始剤の使用下で3時間の時間にわたり行う。
【0092】
使用例3
同様にして実施例3のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、ここで顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1の重合開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0093】
使用例4
同様にして実施例4のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、ここで顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1の重合開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0094】
使用例5
同様にして実施例5のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0095】
使用例6
同様にして実施例6のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0096】
使用例7
同様にして実施例7のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0097】
使用例8
同様にして実施例8のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0098】
使用例9
同様にして実施例9のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0099】
使用例10
同様にして実施例10のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0100】
使用例11
同様にして実施例11のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0101】
使用例12
同様にして実施例12のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0102】
使用例13
同様にして実施例13のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0103】
使用例14
同様にして実施例14のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0104】
使用例15
同様にして実施例15のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0105】
使用例16
同様にして実施例16のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から40℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0106】
使用例17
同様にして実施例17のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から55℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0107】
使用例18
同様にして実施例18のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から55℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0108】
使用例19
同様にして実施例19のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から55℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0109】
使用例20
同様にして実施例20のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、顔料分散物の温度を10℃から55℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1のポリマー開始剤の使用下にて3時間の時間にわたり行う。
【0110】
使用例21(比較)
同様にして例21(比較)のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、ここでのLCST−ポリマーはそれぞれポリマーの末端に固定化のため2個のみの重合性基を有する。ここで顔料分散物の温度は10℃から45℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1の重合開始剤の使用下で3時間の時間にわたり行う。
【0111】
使用例22(比較)
同様にして例22(比較)のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、ここでのLCST−ポリマーはそれぞれポリマーの末端に固定化のため2個のみの重合性基を有する。ここで顔料分散物の温度は10℃から45℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1の重合開始剤の使用下で3時間の時間にわたり行う。
【0112】
使用例23(比較)
同様にして例23(比較)のLCST−ポリマーによるイリジオン・アフレア(登録商標)504の処理を行い、ここでのLCST−ポリマーはそれぞれポリマーの末端に固定化のため2個のみの重合性基を有する。ここで顔料分散物の温度は10℃から45℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1の重合開始剤の使用下で3時間の時間にわたり行う。
【0113】
使用例24(比較)
同様にして4400g/モルの平均分子量と8℃のLCST温度とを有するPEO−PPO−PEOプロックコポリマー(アルドリッチ社から入手)によりイリジオン・アフレア(登録商標)504の被覆を行う。その際、顔料分散物の温度は5℃から20℃まで高めて顔料の被覆を行う。ポリマー層の架橋は使用例1の重合開始剤の使用下で3時間の時間にわたり行う。
【0114】
顔料プローブを次のように試験した:
水−浸入試験
試験のため、次の組成の自動車ラッカー用の従来の塗料系を使用した:
【0115】
【表1】

【0116】
顔料プローブを塗料系に混入すると共に、検体をドクターブレード(層厚さ500μm)でフィルムとして作成した。検査は66℃にて16時間後および80℃にて20時間後にワンコートシステムで行った。その際、検体を蒸留水に半分まで浸漬させる。ウェザリング後の灰色化の肉眼判定を、露出の24時間後にISO 105−A02に従って行った。判定尺度は5(極めて良好)〜1(極めて貧弱)の範囲とする。
【0117】
縮合水試験
試験するため、次の組成の水性塗料系を使用した:
【0118】
【表2】

【0119】
顔料プローブを同様に含水塗料系に混入すると共に、検体をドクターブレード(層厚さ500μm)によりフィルムとして作成する。検査はDIN 50017(一定縮合水環境)に従い露出後に10分間〜1時間にわたり行った。
【0120】
ブリスタリングの判定はDIN 53209に従い肉眼で行った。評価尺度は0(極めて良好)〜5(極めて貧弱)の範囲とする。
【0121】
膨潤過程の判定はDIN 53230の教示に従い肉眼で行った。相対的評価尺度において指標0は「変化せず」を意味し、指標5は「強度に変化」を意味する。
【0122】
ブランク試料は、純粋な含水塗料系(すなわち顔料フラクションなし)も同様に水を吸収すると共に僅かな膨潤が生ずることを示す。
【0123】
表1における測定結果の比較は明らかに、本発明により被覆された水性塗料系における顔料が比較ポリマー(実施例21、22、23、24)で被覆された顔料よりも高い安定性を有することを示す。本発明によるポリマーの一層緻密な架橋は一層高いバリヤ効果をもたらし、従って被覆ポリマー中への水の浸入を効果的に防止する。
【0124】
【表3】

【0125】
使用例25
寸法1x1cmの二酸化珪素表面を有する半導体ウェファーを3mlの蒸留水に浸漬する。これを10℃まで冷却した後、0.2mlの10重量%LCST−コポリマー溶液(実施例1)を添加する。10℃にて2時間後、1時間以内に40℃まで加温する。その後、再び10℃まで冷却し、勿論10分間の持続時間についてのみ1時間以内に40℃まで加温する。冷却および加温のこのサイクルを全部で3回行う。最後のサイクルの後、ウェファーを40℃にて24時間にわたり液体被覆媒体に残留させ、その後に蒸留水をフラッシュさせる。次いでポリマー層を熱誘導下で架橋させる。これにはウェファーを70〜100℃の温度における乾燥棚にて5時間にわたり調温する。ポリマー層を架橋させる他の可能性は、被覆されたウェファーを5時間にわたり強力な可視光で照射することである。
【0126】
同様にして実施例2〜16によるLCST−ポリマーでの珪素ウェファーの処理を行い、ここで被覆プロセスにおけるポリマー溶液の温度範囲は各使用例のそれに対応する。架橋プロセスは実施例1のポリマーの場合と同様に行う。
【0127】
上記方法によりLCST−ポリマー被覆された半導体ウェファーは、被覆なしのウェファーよりも強力な疎水性表面を有する。これは表面に加えられた水の液滴により実験的に示すことができる。従って一層疎水性である被覆表面は、未改変表面よりも水により大して濡らされない。水滴は被覆ウェファーから剥離する。改変されなかった表面では液滴が拡開する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)N,N−ジアルキルアクリルアミド
【化1】

[式中、Nは1〜10,000であり、R(同一もしくは互いに異なる)は水素もしくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示し、ここでラジカルRは窒素原子と一緒になってリングを形成することもでき];
(b)N−ビニルカプロラクタム
【化2】

[式中、oは1〜10,000を示す];
(c)N−ビニルピペリドン
【化3】

[式中、pは1〜10,000を示す];
(d)n−ビニルピロリドン
【化4】

[式中、qは1〜10,000を示す];
(e)メチル−ビニルエーテル
【化5】

[式中、rは1〜10,000を示す];および/または
(f)N−ビニル−アルキルアミド
【化6】

[式中、sは1〜10,000を示し、Rは1〜5個の炭素原子を有する(イソ)アルキル基またはシクロペンチル基を示す]
の構造単位を有する少なくとも1種のモノマーもしくはマクロモノマー約45.0〜99.9モル%;
(B)(a)マレイン酸、無水マレイン酸またはマレイン酸のアルキルエステル(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(b)フマル酸またはフマル酸のアルキルエステル(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(c)アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアルキルアクリレートもしくは−メタクリレート(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(d)ヒドロキシアルキルアクリレートもしくは−メタクリレート(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(e)酢酸ビニル;
(f)(メタ)アクリル酸グリシジル;
(g)アリルグリシジルエーテル;および/または
(h)α,α−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートの群からのコモノマー約0.1〜55.0モル%
の水溶液もしくはアルコール溶液におけるラジカル共重合もしくは三元重合により得られるLCST−ポリマー[ここでモノマーもしくはマクロモノマー(A)および(B)の共重合により得られるポリマーはコモノマー(B)に由来する反復単位からの基と共有結合を形成しながら反応しうると共に少なくとも1個の重合しうる二重結合を有する誘導化剤により誘導化される]。
【請求項2】
コモノマー(B)(a)〜(c)からの構造単位の誘導化がアリルアルコール、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートもしくは3−アミノ−1−プロパノールビニルエーテルでのエステル交換により、および/または対応アミンとの反応により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項3】
コモノマー(B)(d)からの構造単位の誘導化がアクリル酸またはメタクリル酸でのエステル化により、またはC〜C10−アルキルアクリレートもしくは−メタクリレートでのエステル交換により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項4】
コモノマー(B)(e)からの構造単位の誘導化がアクリル酸、メタクリル酸、C〜C10−アルキルアクリレートもしくは−メタクリレートでのエステル交換により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項5】
コモノマー(B)(g)および/または(h)またはそのOH−もしくはNH−官能性誘導体からの構造単位の誘導化が(メタ)アクリル酸との反応により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項6】
コモノマー(B)(a)〜(c)からのカルボン酸基を含む構造単位の誘導化が(メタ)アクリル酸グリシジルおよび/またはアリルグリシジルエーテルとの反応により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項7】
群(B)のコポリマーが少なくとも部分的にブタジエンにより代替されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のLCST−ポリマー。
【請求項8】
コモノマー(B)(h)からの構造単位の誘導化が不飽和アルコールとの、特にアリルアルコール、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートもしくは3−アミノ−1−プロパノールビニルエーテルとの反応により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項9】
コモノマー(B)(d)からの構造単位の誘導化がα,α−ジメチル−メタ−イソプロペニル−ベンジルイソシアネートとの反応により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項10】
少なくとも1種のモノマーもしくはマクロモノマー(A)約45.0〜99.9モル%およびコモノマー(B)約0.1〜55重量%をラジカル重合にかけると共に、得られるポリマーをコモノマー(B)に由来する反復単位の基と共有結合を形成しながら反応しうる少なくとも1個の基、並びに少なくとも1個の重合性二重結合を有する誘導化剤により誘導化することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のLCST−ポリマーの製造方法。
【請求項11】
粒子および非粒状基体表面を被覆するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載または請求項10により作成されるLCST−ポリマーの使用。
【請求項12】
LCST−ポリマーを液体媒体中でLCST温度以下にて粒子または非粒状基体表面と接触させ、温度をLCST温度を越えるまで上昇させ、この温度またはそれより高い温度にてポリマーを二重結合を介し粒子の表面上または非粒状基体表面上で重合させることを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
重合されたLCST−ポリマーにより被覆された請求項11に記載の粒子または非粒状基体表面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)N,N−ジアルキルアクリルアミド
【化1】

[式中、Nは1〜10,000であり、R(同一もしくは互いに異なる)は水素もしくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示し、ここでラジカルRは窒素原子と一緒になってリングを形成することもでき];
(b)N−ビニルカプロラクタム
【化2】

[式中、oは1〜10,000を示す];
(c)N−ビニルピペリドン
【化3】

[式中、pは1〜10,000を示す];
(d)n−ビニルピロリドン
【化4】

[式中、qは1〜10,000を示す];
(e)メチル−ビニルエーテル
【化5】

[式中、rは1〜10,000を示す];および/または
(f)N−ビニル−アルキルアミド
【化6】

[式中、sは1〜10,000を示し、Rは1〜5個の炭素原子を有する(イソ)アルキル基を示す]
の構造単位を有する少なくとも1種のモノマーもしくはマクロモノマー約45.0〜99.9モル%;
(B)(a)マレイン酸、無水マレイン酸またはマレイン酸のアルキルエステル(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(b)フマル酸またはフマル酸のアルキルエステル(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(c)アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアルキルアクリレートもしくは−メタクリレート(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(d)ヒドロキシアルキルアクリレートもしくは−メタクリレート(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を有する);
(e)酢酸ビニル;
(f)(メタ)アクリル酸グリシジル;
(g)アリルグリシジルエーテル;
(h)α,α−ジメチル−メタ−イソプロペニルベンジルイソシアネート;および/または
(i)ブタジエンの群からのコモノマー約0.1〜55.0モル%
の溶液におけるラジカル共重合もしくは三元重合により得られるLCST−ポリマー[ここでモノマーもしくはマクロモノマー(A)および(B)の共重合により得られるポリマーはコモノマー(B)に由来する反復単位からの基と共有結合を形成しながら反応しうると共に少なくとも1個の重合しうる二重結合を有する誘導化剤により誘導化され、さらに群(B)のコモノマーが少なくとも部分的にブタジエンによって形成される限り誘導化剤による誘導化は行われる必要がない]。
【請求項2】
コモノマー(B)(a)〜(c)からの構造単位の誘導化がアリルアルコール、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートもしくは3−アミノ−1−プロパノールビニルエーテルでのエステル交換により、および/または対応アミンとの反応により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項3】
コモノマー(B)(d)からの構造単位の誘導化がアクリル酸またはメタクリル酸でのエステル化により、またはC〜C10−アルキルアクリレートもしくは−メタクリレートでのエステル交換により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項4】
コモノマー(B)(e)からの構造単位の誘導化がアクリル酸、メタクリル酸、C〜C10−アルキルアクリレートもしくは−メタクリレートでのエステル交換により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項5】
コモノマー(B)(g)および/または(h)またはそのOH−もしくはNH−官能性誘導体からの構造単位の誘導化が(メタ)アクリル酸との反応により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項6】
コモノマー(B)(a)〜(c)からのカルボン酸基を含む構造単位の誘導化が(メタ)アクリル酸グリシジルおよび/またはアリルグリシジルエーテルとの反応により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項7】
群(B)のコポリマーが少なくとも部分的にブタジエンにより形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のLCST−ポリマー。
【請求項8】
コモノマー(B)(h)からの構造単位の誘導化が不飽和アルコールとの、特にアリルアルコール、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートもしくは3−アミノ−1−プロパノールビニルエーテルとの反応により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項9】
コモノマー(B)(d)からの構造単位の誘導化がα,α−ジメチル−メタ−イソプロペニル−ベンジルイソシアネートとの反応により行われることを特徴とする請求項1に記載のLCST−ポリマー。
【請求項10】
少なくとも1種のモノマーもしくはマクロモノマー(A)約45.0〜99.9モル%およびコモノマー(B)約0.1〜55重量%をラジカル重合にかけると共に、得られるポリマーをコモノマー(B)に由来する反復単位の基と共有結合を形成しながら反応しうる少なくとも1個の基、並びに少なくとも1個の重合性二重結合を有する誘導化剤により誘導化し、群(B)のコモノマーが少なくとも部分的にブタジエンによって形成される限り誘導化剤による誘導化は行われる必要がないことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のLCST−ポリマーの製造方法。
【請求項11】
粒子および非粒状基体表面を被覆するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載または請求項10により作成されるLCST−ポリマーの使用。
【請求項12】
LCST−ポリマーを液体媒体中でLCST温度以下にて粒子または非粒状基体表面と接触させ、温度をLCST温度を越えるまで上昇させ、この温度またはそれより高い温度にてポリマーを二重結合を介し粒子の表面上または非粒状基体表面上で重合させることを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
重合されたLCST−ポリマーにより被覆された請求項11に記載の粒子または非粒状基体表面。

【公表番号】特表2006−507399(P2006−507399A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557921(P2004−557921)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013099
【国際公開番号】WO2004/052946
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(591056237)ジュート−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (33)
【Fターム(参考)】