説明

LED発光素子用リードフレーム及びそれを用いたLEDパッケージ、およびその製造方法

【課題】数種類の材料を組み合わせてLED発光素子搭載用リードフレームを作製するにおいて、反りがないものを簡便に作製する。
【解決手段】LED発光素子用の素子搭載部、LED発光素子と電気的接続を行うための電気接続エリアを有するリード部を備えたベースとなる基板が、LED光源の高い光反射率を得るための樹脂製リフレクターを併設する場合において、該素子搭載部およびリード部を構成する層が金属材料で構成され、リフレクターは例えば熱硬化性樹脂などの絶縁材料を用いて数種類の材料が組み合わされて作製されており、使用する材料によって線膨張係数が異なっていたとしても、LEDパッケージを個片化する際に機械的に切断する部分にあらかじめ溝部が設けられており、それはリフレクター成型時に、一括で成型されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(Light Emitting Diode)発光素子を搭載するLED発光素子用リードフレーム、およびそれを用いたLEDパッケージ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体集積回路やLED発光素子などの電子素子を搭載するためのリードフレームは、板状のFe-Ni等の合金薄板、Cu-Ni-Sn等の合金薄板からなるリードフレーム用金属材料を、その片面または両面から塩化第二鉄等のエッチング液を用いてフォトエッチング加工をして製造され、半導体集積回路やLED素子を搭載するためのパッド部と、該パッド部とは絶縁状態に離反し、LED発光素子と接続が行われるインナーリード部および、外部基板と電気的接続を行うアウトリード部を備えている。あるいは、プレス加工によって、パット部と、該パット部と絶縁状態に離反しているインナーリード部、および外部基板と電気的接続を行うアウトリード部を製造し、断面をコ字状に折り曲げ加工することによって形成されている。
【0003】
LEDパッケージの構成は、大きく分けると、上記のようなエッチングによる工法、あるいは、プレス加工によって作製されたLED発光素子搭載用のパッド部、およびLED発光素子と電気的に接続用のリード部を備えたベース基板と、LED光源から光を効率よく取り出すための反射機能を発揮するリフレクター部分からなる。
ベース基板としては、金属薄板からなるリードフレーム部材が用いられ、それに対してインサートモールド成型することにより、LED発光素子搭載箇所を囲む凹部を有するリフレクター部分となる樹脂成形部を一体化する手法が採用される。
【0004】
このように、LEDパッケージは数種類の材料を組み合わせることによって作製されている場合があるが、いずれも、材料によって熱膨張係数に差があるため反りが発生してしまうことが多く、例えば個片化する際の機械的切断工程などで、不都合が生じることが問題となっている。そこで、線膨張係数の異なる数種類の材料をもちいて構成されたLEDパッケージでも反らないための工夫が必要であるという課題がある。
【0005】
以下、本明細書においては、「LED発光素子」「LED素子」「LEDチップ」など全てを同義語として混在して用いることもある。また、リードフレームとリフレクター部分から構成される「LEDパッケージ」「LED発光素子用リードフレーム」「リードフレーム基板」を同義語として混在して用いることもある。
【0006】
前記のようにベース基板と、リフレクター部分が異なる材料で構成されたLED発光素子用リードフレームを作製する方法は広く検討されており、近年、照明をはじめ電子部品などに広く利用されている。特許文献1には、リフレクターによってLEDチップからの光を効率よく取り出し、高い信頼性を備え、高出力、大光量化に対応した放熱性を有すると共に、ベース基板とリフレクター材料が異なった材料で作製されたLEDパッケージの反りを低減する工夫が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−10507(特許第4198233号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LED発光素子用の素子搭載部、LED発光素子と電気的接続を行うための電気接続エリアを有するリード部を備えた基板、あるいは、LED光源の高い光反射率を得るためのリフレクターを併設する場合、該素子搭載部およびリード部を構成する層は、金属材料で構成され、リフレクターは例えば熱硬化性樹脂などの絶縁材料を用いて数種類の材料が組み合わされて作製されている。そのため、使用する材料によって線膨張係数が異なり、その差によって反りが発生しやすいという問題があった。
【0009】
リフレクター材料として樹脂が使われる場合、素子搭載部およびリード部を構成する金属材料と線膨張係数を近づけるために、SiO2などのフィラーを多く含有させる方法が良く採られるが、その場合は、樹脂本来の特性が低下し、密着性が悪化するといった別の問題とトレードオフの関係になっている。または、セラミックスに対して小型化できることが樹脂の特徴でもあるが、フィラーが多くなる事で成型性が悪化するという問題があり、反りの改善策としては、限界のあるものであった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、LED発光素子搭載部、リード部、LED光源の高い光反射率を得るためのリフレクターを併せ持った基板として、高放熱性、高反射性、高信頼性を兼ね備えたLED発光素子搭載用リードフレームを反りなく簡便に作製する事を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも、LEDチップを搭載するための1乃至複数箇所のパット部と、前記LEDチップと電気的接続を行うための電気接続エリアを有するリード部が露出しており、該パット部及びチップ搭載部の周囲に上方向へ反射用の樹脂成型体が成型されているLED発光素子用リードフレームにおいて、該樹脂成型体表面に、該リードフレーム外枠部の辺に並行、あるいは垂直方向に、幅0.01mm〜0.3 mm、深さ0.05mm〜0.35 mmの溝部を少なくとも1乃至複数本を形成することを特徴とするLED発光素子用リードフレームである。該溝部によって、樹脂成型体にかかる応力が緩和されることにより、反りが緩和される。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、前記リードフレームにおいて樹脂成型体表面に形成される溝部は、パッド部およびチップ搭載エリアが多面付けされたLED発光素子用リードフレームを個片化する際に切断するライン上にのみに幅0.01mm〜0.3mm、深さ0.05mm〜0.35 mmで形成されていることを特徴とするLED発光素子用リードフレームである。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、前記の溝部は、前記樹脂成型体を成型する際に用いる金型を用いて、トランスファーモールド工法により請求項1に記載された反射用の樹脂成型体と同時に同一材料で形成されていることを特徴とする請求項1、および請求項2に記載のLED発光素子用リードフレームの製造方法である。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項3に記載のLED発光素子用リードフレームにおいて、所定の位置にチップを実装し、透明樹脂で封止した後、溝部上を機械加工し、個片化して製造されていることを特徴とするLEDパッケージである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、LED発光素子用の素子搭載部、LED発光素子と電気的接続を行うための電気接続エリアを有するリード部を備えたベースとなる基板が、LED光源の高い光反射率を得るためのリフレクターを併設する場合において、該素子搭載部およびリード部を構成する層が金属材料で構成され、リフレクターは例えば熱硬化性樹脂などの絶縁材料を用いて数種類の材料が組み合わされて作製されており、使用する材料によって線膨張係数が異なっていたとしても、反らずにLED発光素搭載用リードフレームが製造できる。上述のように、2種類以上の異なる材料を組み合わせて作製された基板を作製するとき、一般的な反り低減化対策としては、使用する樹脂中のフィラー含有量を増やす事があるが、その方法では、樹脂本来の特性が低下してしまう事により密着性の悪化、あるいは、樹脂の粘度上昇による成型性の悪化という問題とトレードオフの関係であり、改善することは難しい。本発明のLED発光素子用リードフレーム、およびその製造方法によれば、簡便に反りの問題を回避することが出来るという効果がある。さらに、リードフレームを個片化するときに、機械的に切断するライン上に溝部を設けているため、切削箇所が減る事により、例えば切断に使用するダイヤモンドブレードなどの消耗が抑えられ、より安価で短時間で作製する事が可能になるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明におけるLED発光素子搭載用リードフレームの上面図。
【図2】本発明におけるLED発光素子搭載用リードフレームの下面図。
【図3】本発明におけるLEDパッケージにチップを搭載し、個片化した後のX1−X1断面図。
【図4】本発明のLED発光素子搭載用リードフレームを製造する方法を説明する断面図。
【図5】本発明のLEDパッケージが多面付け状態のLEDパッケージであることを説明する上面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係わるLED発光素子用リードフレーム基板にLED素子を実装していない状態での実施形態を示す上面図、図2は、その裏面図である。
また、図3は、図1のX1−X1線における側断面図を示す。
【0018】
本実施形態におけるリードフレーム部材は、金属合金製の板状の基材をフォトエッチング加工することによって形成されており、図1,2に示すように、マトリクス状に多面配置された複数のLEDチップ実装箇所には、それぞれLEDチップ搭載のパッド部,LEDチップと図示しない外部配線回路とを電気的に接続するための電気的接続エリアを、図1では円内にペアとして備えている。
尚、上記の円内が、LEDチップ実装箇所を囲む凹部であり、反射面となる。
【0019】
図1,2に示すように、該パッド部1の表面は、LEDチップ10を搭載するための搭載用表面Aとなっており、該パッド部1と対向する裏面側の放熱部4の外面は、LEDチップ10本体から発生する駆動熱やLEDチップ10の周囲環境による熱を放散させて、LEDチップ10に熱が蓄積されないように、パッド部1裏面側から外界側に熱を放散させるための放熱用裏面Bとなっている。
多面付けされたLEDチップ実装箇所の1箇所について、図3の断面図により説明する。
【0020】
金属合金製の板状の基材をフォトエッチング加工することにより形成された前記パッド部1に対して、所定の間隔をおいて離反して隣接する位置には、対応するリード部2を備えている。該リード部は、上部構造体と対向する下部構造体は一体であり、下部構造体には放熱部4を備えている。リード部2は、板状の基材をフォトエッチングする際にパッド部1と同時に形成される。該リード部2の表面は、ワイヤーボンディングやチップボンディング等によりLEDチップ10とリード部2との電気的接続を行なう際に接続性を向上させるためであり、また、チップ10から光を効率よく取り出すためにAgめっき等が施された電気接続エリアとなっていて、該リード部2の電気接続エリアと対向する裏面は、放熱用裏面となっている。
【0021】
前記リード部2の電気接続エリアは、パッド部1の搭載用表面A上に実装されるLED発光素子10に対してワイヤーボンディングやチップボンディングによって接続される。なお、電気接続エリアCへのめっきは、銀めっき等のめっきがほどこされている。また、電気接続エリアCにこれらのめっきに先立ち、耐熱拡散性に優れたNiめっき等の下地めっきを行っても構わない。さらには、LED発光素子を外部基板に搭載、接続するために、放熱用裏面にも銀めっき、金めっき、パラジウムめっき等をおこなっても構わない。
【0022】
前記リード部2の表面は、前記パッド部1の搭載用表面Aと同一の電気接続エリアCとなっていて、バッド部2の搭載用表面Aに搭載したLEDチップ10を接続するためのワイヤーがボンディングされる領域、または、LEDチップ10に形成された接続用電極と半田などを介してチップボンディングされる領域となっており、該エリアCと対向して、前記パッド部2の放熱用裏面Bと同一面になる放熱用裏面Dを備えている。
【0023】
リードフレーム部材のパッド部、リード部は、板状のFe-Ni等の合金薄板またはCu-Ni-Sn等の合金薄板を金属材料として用いるが、熱伝導率が高いCuまたはCu合金を用いる方が、放熱性が向上するため望ましい。
【0024】
リードフレーム部材のパッド部,リード部は、金属板の表裏面にフォトレジスト5(感光性樹脂)を塗布し、フォトレジストへのパターン露光と現像処理等をする事によって、レジストパターンを形成し、塩化第二鉄等のエッチャントを用いて、レジスト非形成部分をフォトエッチング加工することによって、LED素子を搭載するためのパッド部1と、該パッド部1とは絶縁状態に離反しているリード部2を形成するための構造が形成されている。
【0025】
次に、本実施形態におけるLEDパッケージの製造方法を図4に即して説明する。
まず、Fe-Ni等の合金薄板または、Cu-Ni-Sn等の金属合金製の板状のリードフレーム用金属材料(図4a)の表面に、フォトレジスト(感光性樹脂)を塗布してレジスト5を形成し、所定のパターン露光用フォトマスクを用いてフォトレジスト層にパターンを露光し、次いで現像、必要に応じて硬膜処理をする。これにより、(図4b)パッド部、リード部を形成する箇所を残してフォトレジストが現像除去され、追ってレジスト非形成部分をフォトエッチング加工することによって、チップ搭載面および、リード部が形成され、フォトレジスト膜を除去すると、図4cに示すリードフレーム部材となる。
【0026】
次いで、トランスファーモールド成型,射出成型などの既知の手法により、リードフレーム部材を収める所定の内部形状とした凹部を予め有している金型の凹部内に、リードフレームを装填し、リフレクタ部分となる樹脂成形部と一体化して、LEDパッケージ(リードフレーム基板)を得る。
金型としては、蓋となる板状の上金型と、溶融する充填樹脂を注入する注入口と連通するリードフレーム(多面付けリードフレーム)を装填可能な凹部を内部空間として形成した下金型との2枚構成とし、下金型にリードフレーム(多面付けリードフレーム)を装填後に、上金型で下金型に蓋をして型締めするものが一般的である。
また、図示していないが、上金型/下金型の何れか一方には、成形されるリフレクタ部が持つすり鉢状凹部に相当する凸部が設けられる必要がある。
【0027】
本発明では、樹脂成型体であるリフレクタ部に「溝部」を形成することが必須であり、上金型50には、意図する溝部の逆型であるコア(凸部)を設けておく。
以上により、熱硬化性あるいは、熱可塑性の樹脂をモールドし、該パッド部およびリード部が絶縁された状態になると同時に、反射機能を持つリフレクター部および溝部20が成型される。該溝部は、反射機能を持つリフレクター部を形成する樹脂成型体表面に、前記リードフレーム外枠部の辺に並行、あるいは垂直方向に、幅0.01mm〜0.3mm、深さ0.05mm〜0.35mmで、少なくとも1乃至複数本が、樹脂成型体を形成する金型を凸状に加工することによって形成されている。溝部は、LEDパッケージを機械的に切断するなどの方法で個片化するときに、ダイヤモンドブレードで加工されるライン上にのみ形成されており、リフレクター部が十分に確保された状態になるように設計されている。また、溝部の深さは、樹脂成型後の反りを緩和する機能を発揮さえすれば、金型の加工しやすさ等によって、適宜変更してかまわない。
溝部が存在する事によって、樹脂成型体にかかる応力が緩和(吸収)されやすくなる。
もしくは、仮にクラックが発生するようなことがあったとしても、溝部の下部に残った樹脂厚は他の場所よりも薄くなっているため、クラックの起点となり、製品を損傷することなく、きれいなライン状にクラックを形成することが出来る。
【0028】
反りのないLEDパッケージが作製できたあと、凹部内の銅が露出している部分に、耐熱拡散性に優れたNiめっき等の下地めっきを行う。(図4e)さらには、LED発光素子を外部基板に搭載、接続するために、放熱用裏面にも銀めっき、金めっき、パラジウムめっき等をおこなっても構わない。
凹部内のめっきが施されたチップ搭載部にLED素子を搭載し、パッド部にワイヤーボンディングを行い、該凹部に透明の封止樹脂を充填し、硬化することで、本発明のLEDパッケージが形成される。(図4f,g)
【0029】
本発明のLEDパッケージにおいては、LED素子10が透明樹脂層30内に埋設された状態で発光するため、LED素子10から発せられた光を透明樹脂30から外側に効率よく取り出すにあたり、高い利得性を持たせる事が重要である。そのためには、例えば、ポリメチルアクリレート樹脂といった光透過性のあるアクリル系樹脂などの透明性の良好な樹脂を選定することはもちろんであり、銀めっき表面との密着が高いことが望ましい。
【0030】
次に、本発明のLEDパッケージを説明する。LEDチップ10を搭載した1乃至複数箇所のパッド部1と、前記LEDチップとの電気的接続を行う電気的接続エリアCを有するリード部2が形成されている本発明のLEDパッケージは、一般的なフォトエッチング方にて安価に形成することが出来るので、安価なLEDパッケージの供給を可能とする。
【0031】
前記パッド部1の搭載用表面Aより上面側、及びリード部2の電気接続エリアCより上面側であり、リフレクター21の内面側には、LEDチップ10及び、電気的接続エリアCを含めて、透明樹脂30が充填されている。この透明樹脂は、耐熱性、耐光性、熱伝導性、高い光拡散性を有する事も望ましい。
【0032】
本発明のLEDパッケージは、本発明におけるパッド部1およびリード部2を、その表裏面を同一平面とする1単位フレームとしている。1単位フレームは、枚葉状あるいは帯状の金属材料に、複数の1単位フレームを互いに縦横方向に多面付け配列して製造される。
【0033】
1単位のフレームの複数単位を多面付けして、フォトエッチングにて製造された平坦状のフレームは、それぞれ搭載用表面A,放熱用裏面B,電気的接続エリアCが露呈し、多面付けされたLEDパッケージが形成される。
【0034】
その後、多面付けされたLEDパッケージは、機械的に切断し、切り離された1単位のLEDパッケージが得られる。
【実施例】
【0035】
<実施例1>
本発明によるLED発光素子用リードフレーム基板の製造方法を説明する。
まず、0.3mm厚の銅―ニッケル−錫合金製の板状金属材料を準備し、脱脂洗浄処理をした後、板状金属材料の表面にネガ型フォトレジストを8μm塗布し、90℃で30分乾燥してレジスト層を形成する。
【0036】
次いで、LED発光素子を搭載するパッド部、LED発光素子と電気的に接続するリード部、パッド部とリード部を支持するタイバーと吊りリード、外枠部等の金属パターンを形成するために、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、超高圧水銀灯を用い、露光量約100mJ/cmでフォトレジスト層を露光し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液にてフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、前述のパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0037】
同様に、該板状金属材料の裏面にもフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成する。パターン露光、現像等といった前述の工程を繰り返した。この時、表裏のフォトマスクのパターン形状を変え、エッチング完了後に、パッド部、および、リード部の面積を、LED発光素子が搭載される面より、裏面の方を大きくなるように設定した。
【0038】
次に、比重1.45の塩化第二鉄液を用いて、両面同時に板状金属材料の露出部をエッチング除去した。これにより、所望の両面形状の異なるリードフレームパターンが形成された。
【0039】
得られたリードフレームに、エポキシ系、あるいは、シリコーン系など耐熱性の高い樹脂組成物からなる、径18mm、長さ40mmの固形タブレットを用いて、図示しない充填用金型を使用して樹脂成形体(リフレクタ部)を設けた。この時、LED発光素子搭載面側には、深さ0.5mm、リードフレーム面となす角度が45度の傾斜を有する円形状の凹部が所定の数、同時に、深さ0.25mm、幅0.05mmの溝部が各凹部の間に所定の本数が形成された。一方裏面は、対応するパッド部とリード部表面と同一面上に樹脂面が形成された。リードフレーム基板を金型から取り出し、130℃、1時間、熱硬化した。
【0040】
パッド部ならびにリード部表面に、滲み出た樹脂バリを除去するため、リン酸水溶液にて30分電解研磨を行ったのち、アルゴンエッチングにて処理を行った。
【0041】
その後、銀濃度50g/L、pH8.5、浴温度65℃、比重1.1、陰極電流密度10A/dm2、液流速1.0m/secの銀めっき液を用いて、表裏のパッド部、および、リード部表面に4μmの電解銀めっきを施した。パッド部、ならびに、リード部表面には、めっき付着部は見られず、均一なめっき層が形成された。これにより、本発明のLED発光素子用リードフレーム基板が完成した。
【0042】
<実施例2>
本発明によるLED発光素子用リードフレーム基板のその他の製造方法を説明する。
【0043】
まず、0.3mm厚の銅―ニッケル−錫合金製の板状金属材料を準備し、脱脂洗浄処理をした後、板状金属材料の表面にネガ型フォトレジストを8μm塗布し、90℃で30分乾燥してレジスト層を形成する。
【0044】
次いで、LEDを搭載するパッド部、LED発光素子と電気的に接続するリード部、パッド部とリード部を支持するタイバーと吊りリード、外枠部等の金属パターンを形成するために、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、超高圧水銀灯を用い、露光量約100mJ/cmでフォトレジスト層を露光し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液にてフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、前述のパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0045】
同様に、該板状金属材料の裏面にもフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成する。パターン露光、現像等といった前述の工程を繰り返した。この時、表裏のフォトマスクのパターン形状を変え、エッチング完了後に、パッド部、および、リード部の面積を、LED発光素子が搭載される面より、裏面の方を大きくなるように設定した。また、吊りリード部は表面のみハーフエッチングされるように設定した。
【0046】
次に、比重1.45の塩化第二鉄液を用いて、両面同時に板状金属材料の露出部をエッチング除去した。これにより、所望の両面形状の異なるリードフレームパターンが形成された。
【0047】
その後、スルファミン酸ニッケル300〜600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30〜40g/L、pH3.5〜4.5、温度40〜70℃、陰極電流密度3〜40A/dm2、アノードにS入りNiと微量の界面活性剤で調整されたスルファミン酸浴を用いて、リードフレーム全面に4μmの電解ニッケルめっきを施しさらに、銀濃度50g/L、pH8.5、浴温度65℃、比重1.1、陰極電流密度10A/dm2、液流速1.0m/secの銀めっき液を用いて、表裏のパッド部、および、リード部表面に4μmの電解銀めっきを用いて、同様にリードフレーム全面に4μmの電解銀めっきを施した。
【0048】
得られたリードフレーム部材に、エポキシ系、あるいは、シリコーン系など耐熱性の高い樹脂組成物からなる、径18mm、長さ40mmの固形タブレットを用いて、図示しない充填用金型を使用して樹脂成形体(リフレクタ部)を設けた。この時、LED発光素子搭載面側には、深さ0.5mm、リードフレーム面となす角度が45度の傾斜を有する円形状の凹部が所定の数、同時に、深さ0.25mm、幅0.05mmの溝部が各凹部の間に所定の本数が形成された。一方裏面は、対応するパッド部とリード部表面と同一面上に樹脂面が形成された。リードフレーム基板を金型から取り出し、130℃、1時間、熱硬化した。
【0049】
パッド部ならびにリード部表面に、滲み出た樹脂バリを除去するため、リン酸水溶液にて30分電解研磨を行ったのち、アルゴンエッチングにて処理を行った。
【0050】
これにより、本発明のLED発光素子用リードフレーム基板が完成した。
【0051】
<実施例3>
本発明によるLED発光素子用リードフレーム基板を用いたLED発光素子装置の製造方法を説明する。
得られたLED発光素子用リードフレーム基板のパッド部に導電性ペーストを塗布して、LED発光素子をマウンターで搭載し、180℃30分熱硬化させる。その後、25μm径の金ワイヤーでリード部と接合する。
【0052】
次に、蛍光体が混練された封止用の透明樹脂を、ディスペンサを用いて塗布し、クリーンオーブン中で硬化させることによりLED発光素子装置が完成した。
【符号の説明】
【0053】
A・・・・搭載用表面
B・・・・放熱用裏面
1・・・・パッド部
2・・・・リード部
4・・・・放熱部
5・・・・リード部および、パッド部形成用レジスト
10・・・LEDチップ
11・・・ワイヤー
20・・・溝
21・・・リフレクター
30・・・透明樹脂
40・・・銀めっき
50・・・金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、LEDチップを搭載するための1乃至複数箇所のパット部と、前記LEDチップと電気的接続を行うための電気接続エリアを有するリード部が露出しており、該パッド部及びリード部の周囲に上方向へ反射用の樹脂成型体が成型されているLED発光素子用リードフレーム基板において、
該樹脂成型体表面に、該リードフレーム外枠部の辺に並行、あるいは垂直方向に、溝部を少なくとも1乃至複数本を形成することを特徴とするLED発光素子用リードフレーム基板。
【請求項2】
樹脂成型体表面に形成される溝部は、パッド部およびチップ搭載エリアが多面付けされたLED発光素子用リードフレーム基板を個片化する際に切断するライン上にのみ形成されていることを特徴とする請求項1記載のLED発光素子用リードフレーム基板。
【請求項3】
溝部は、幅0.01mm〜0.3mm、深さ0.05mm〜0.35mmであることを特徴とする請求項1または2に記載のLED発光素子用リードフレーム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のLED発光素子用リードフレーム基板の所定の位置にチップを実装し、透明樹脂で封止した後、溝部上を機械加工し、個片化することを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項5】
少なくとも以下の工程を具備することを特徴とするED発光素子用リードフレーム基板の製造方法。
(a)エッチングを施した金属板の第一面に、少なくともLEDチップを搭載するための1乃至複数箇所のパッド部1のチップ搭載面と、金属板の第二面に、前記チップ搭載面に対向する放熱面、および、電気接続エリアを形成するためのレジストを形成する工程と、
(b)工程(a)により形成されたレジスト塗布面の片面もしくは両面からエッチングを行って、前記パッド部、リード部、および充填樹脂を保持するための形状を有するリードフレーム部材を形成する工程と、
(c)上記リードフレーム部材を金型内部に装填し、トランスファーモールド成型,射出成型などの手法により、反射用の樹脂成型体をリードフレーム部材と一体化させて成型する際、上金型/下金型の何れか一方には、樹脂成型体の表面に形成する溝部に相当する凸部を設けておき、樹脂成型体の一体成型と同時に溝部を形成する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77728(P2013−77728A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217198(P2011−217198)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】