LED発光装置
【課題】高い発光効率と高い演色性を両立することが出来るLED励起光源と蛍光体を組み合わせた白色LEDを実現する。
【解決手段】LEDチップと前記LEDチップから外部に放射される光路に沿って黄色蛍光体層と赤色蛍光体層が配置され、黄色蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt1をμmで表示し、黄色色蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw1で表したときt1×w1=Aとし、赤色蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt2をμmで表示し、赤色蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw2で表したときt2×w2=Bとしたとき、AとBの値が、4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
である事を特徴とするLED発光装置。
【解決手段】LEDチップと前記LEDチップから外部に放射される光路に沿って黄色蛍光体層と赤色蛍光体層が配置され、黄色蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt1をμmで表示し、黄色色蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw1で表したときt1×w1=Aとし、赤色蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt2をμmで表示し、赤色蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw2で表したときt2×w2=Bとしたとき、AとBの値が、4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
である事を特徴とするLED発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関し、特に、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を備えて構成された発光装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LEDを光源に用いて構成された発光装置は、高発光効率で鮮やかな色の光を発光する。そして、電球に比べて寿命が長く、小型化が容易であり、低電圧駆動が可能であることから、家庭用照明をはじめとする各種照明用や、車両用灯具、液晶表示素子のバックライトなど、次世代の光源として注目され、近年盛んに研究と開発とが進められている。
【0003】
このような発光装置を用いて白色光を得る方式としては、次のようなものがある。
(1)光の3原色である赤色(R:Red)、緑色(G:Green)、および青色(B:Blue)の3色の発光をそれぞれ実現する3種のLEDを組み合わせて白色光を得る方式。
(2)青色発光する青色LEDを励起源として使用し、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を励起することによって緑色光及び赤色光を得て、光源の青色光と蛍光体の緑色光及び赤色光の混合により白色光を得る方式。
(3)410nmより短波長の近紫外領域に発光ピークを有する紫外発光LEDを励起源として使用し、赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体を励起することによってRGB3色の光を得、これらを混合させて、白色光を得る方式。
【0004】
しかし、上記(1)のRGB3色のLEDを使用する方式は、製造コストが高くなるといった課題を含んでいる。そして、駆動回路も複雑であるため、製品のサイズが大きくなってしまうという課題も有する。また、LEDはその発光スペクトルにおいて優れた単色性のピークを示すため、RGB3色の発光により得られる白色光の色再現特性は、一般に使用される蛍光灯など、室内照明の白色光の持つ自然な色再現特性とは異なったものとなってしまう。
【0005】
また、上記(2)の青色LEDを励起源として緑色発光蛍光体及び赤色蛍光体を励起する方式は、高効率に発光を得ることができる緑色蛍光体と、赤色再現性の高い赤色蛍光体を組み合わせることにより、高発光効率で演色性の高い白色光の発光を得る事ができる。
【0006】
そして、(3)の紫外発光LEDを使用する方式では、色再現性に優れ、一般の照明用途をはじめ、病院や美術館、商品を鮮やかに見せて展示をしたい食料品店などの小売店舗などの照明用途にも適している。
【0007】
しかしながら、上記(2)及び(3)の方式の場合、複数の蛍光体を使用するため、一方の蛍光体の励起スペクトルが他方の蛍光体の発光スペクトルと重なっている場合、後者の蛍光体からの発光が前者の蛍光体に吸収される現象が起こる。一般に蛍光体の励起スペクトルは発光スペクトルより短波長側に位置するため、このような現象はより短波長の発光スペクトルを持つ蛍光体からの発光が、前記発光スペクトルと同じ波長域に励起スペクトルを持つ蛍光体に吸収されることで起こる。
【0008】
この現象の影響を低減するため、特開2005−311136(特許文献1)には、複数の蛍光体層を発光素子からの光の進行方向に積層して設置するとともに、発光波長が長い方の蛍光体を含有する蛍光体層が前記発光素子に近い側に設置される事を特徴とする構成が記載されている。この例では、発光素子からの励起光が波長変換される際の量子効率が、これらの蛍光体を混合して用いた場合や、異なる積層順とした場合と比較して向上している。
【0009】
また、特開2007−116133(特許文献2)には、青色LEDからの発光が外部に放出される際の光路に沿って、青色LEDに近い方に黄色蛍光体樹脂層を配置し、遠い方に赤色蛍光体を保持したシート状蛍光体層を配置する例が報告されている。この文献では、シート状蛍光体層の厚みとして0.5〜1.0mm程度の厚みが好ましいとされており、実施例として、厚さ0.5mmのシートを成形し、赤色蛍光体の含有量を赤色蛍光体シートの総重量に対して4%、8%、12%となるようにしたものが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−311136号公報
【特許文献2】特開2007−116133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載の方式の場合、励起源からの光が長波長で発光する蛍光体、具体的には赤色蛍光体を最初に励起するため、励起強度が高くなり、赤色光が多量に放射される。ここで、赤色光は視感度が低いうえ、励起光との波長の差が大きいため波長変換にともなうエネルギー損(ストークス損)が大きく、発光効率(単位: lm/W)が低い。また、赤色光は緑色蛍光体を励起する事が出来ないため、緑色蛍光体は赤色蛍光体を透過した少量の励起光によってしか励起されず、十分な緑色光が得られない。ゆえに、発光効率の低い赤色光を多量に放射する一方で、発光効率の高い緑色光を少量しか放射できないため、外部に放射される光の輝度が低くなり、LED装置全体としての発光効率が低くなってしまう問題がある。
【0012】
また、上記特許文献2に記載の方式の場合、青色励起光源に近い方に黄色蛍光体樹脂層を配置し、遠い方に赤色シート状蛍光体層を配置するとの記述があるが、発光効率の向上に関する記述は何ら見当たらない。また、赤色シート状蛍光体層の層厚と赤色蛍光体の質量パーセント濃度の記載はあるが、黄色蛍光体樹脂層については、黄色蛍光体の質量パーセント濃度が記載されているのみである。これより、黄色蛍光体樹脂層の層厚に関する情報が不足しているため、高い発光効率と高い平均演色評価数Raを両立するLED発光装置を得られない。なお、Raとは、太陽光で照らした場合に比べ、用いた光源で照らした場合に物体色の色度がどのくらいずれているかを示す指標であり、照明の使用環境によって、CIE(国際照明委員会)によって、40以上、60以上、80以上などというように規定されている。
【0013】
本発明の課題は、高い発光効率と必要な演色評価数を得ることが出来るLED発光層装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
励起源となるLEDからの発光が外部に放出される際の光路に沿って、励起源に近い方に発光効率の高い蛍光体層を配置し、遠い方に発光効率の低い蛍光体層を配置する。これによって、励起源からの光が発光効率の高い蛍光体層を最初に励起するため、励起強度が高くなり、LED発光装置全体での発光効率を向上できる。
【0015】
さらに、この効果を得るためには、発光効率の高い蛍光体層と発光効率の低い蛍光体層それぞれの封止材に対する各蛍光体の質量パーセント濃度と、各蛍光体層の層厚が適切な範囲に有る必要がある。本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
このLED発光装置は、例えば青色LEDの発光により励起され、青色LEDより長波長で発光する黄色蛍光体層と赤色蛍光体層を有する。そして、青色LEDに近い方に、発光効率の高い蛍光体層から順番に配置する事を特徴とする。例えば、青色LEDの近傍に黄色蛍光体層を配置し、その外側に赤色蛍光体層を配置する。
【0017】
また、蛍光体層として緑色蛍光体層と橙色蛍光体層を有する場合は、青色LED光照射下での発光効率の高い方から励起源に近い方に順番に配置する。例えば、青色LEDの近傍に緑色蛍光体層を配置し、その外側に橙色蛍光体層を配置する。
【0018】
励起源として紫外LEDを用いる場合は、その最近傍に青色蛍光体層を配置する事で前記構成と同等となる。このため、まず紫外LEDの近傍に青色蛍光体層を配置した後、それ以外の蛍光体層について発光効率の高い蛍光体層から順番に光源の近傍に配置する。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。本発明のLED発光装置は、蛍光体を独立に含有する2種類以上の蛍光体層を有し、これらを励起源となるLEDからの発光が外部に放出される際の光路に沿って、励起源に近い方に発光効率の高い蛍光体層を配置し、遠い方に発光効率の低い蛍光体層を配置する事で、蛍光体を混合して用いた場合や、発光効率が最も低い蛍光体から順に励起源の近くに配置した場合に比べ、発光効率を向上できる。
【0020】
また、蛍光体層それぞれの封止材に対する各蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)と、各蛍光体層の層厚(μm)との積を適切な範囲にする事で、高い発光効率と優れた演色性を両立するLED発光装置を実現することができる。
【0021】
さらに、蛍光体層の種類として視感度が高い黄色光を発光する黄色蛍光体層と、青色光と黄色光に不足している可視光長波長側のスペクトルを補う赤色蛍光体層を併用する事で、高い発光効率と優れた演色性とを両立可能なLED発光装置を実現することができる。また、黄色蛍光体と赤色蛍光体について具体例として、Y3Al5O12:Ceで表わされるYAG蛍光体等とCaAlSiN3:Euで表わされるCASN蛍光体等を用いることができ、これらの蛍光体の輝度の高さを反映した、発光効率が高いLED発光装置を得ることができる。
【0022】
そして、蛍光体の種類を緑色蛍光体と橙色蛍光体にする事で、発光効率が高い蛍光体層同士の組合せを活かした、非常に高い発光効率と適度な演色性を有するLED発光装置を得ることができる。例えば緑色蛍光体層に含まれる蛍光体として(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu系蛍光体等、橙色蛍光体層に含まれる蛍光体として(Ba,Sr,Ca,Mg)3SiO5:Eu蛍光体等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態である発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態である発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図3】実施例1でのLED発光装置の発光効率と平均演色評価数Raの関係を表す図である。
【図4】実施例1での黄色蛍光体層と赤色蛍光体層とのそれぞれの質量パーセント濃度と層厚の積について、LED発光装置が高い発光効率と程よい平均演色評価数Raを両立する範囲を表す図である。
【図5】実施例1と比較例1でのLED発光装置の発光効率と平均演色評価数Raの関係を表す図である。
【図6】実施例1での黄色蛍光体層と赤色蛍光体層とのそれぞれの質量パーセント濃度と層厚の積について、LED発光装置が高い発光効率と、より優れた平均演色評価数Raを両立する範囲を表す図である。
【図7】実施例1での黄色蛍光体層と赤色蛍光体層とのそれぞれの質量パーセント濃度と層厚の積について、LED発光装置が高い発光効率と、さらに優れた平均演色評価数Raを両立する範囲を表す図である。
【図8】実施例2と比較例2でのLED発光装置の発光効率と平均演色評価数Raの関係を表す図である。
【図9】実施例2での緑色蛍光体層と橙色蛍光体層とのそれぞれの質量パーセント濃度と層厚の積について、LED発光装置が優れた発光効率と実用可能な高い平均演色評価数Raを両立する範囲を表す図である。
【図10】実施例4による発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図11】実施例5による発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図12】実施例6による発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図13】実施例7による発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本実施の形態の砲弾型LED発光装置1の構造を示す模式的な断面図である。ここでは、砲弾型LED発光装置1の具体例として、高分子レンズタイプの砲弾型発光装置を示す。なお、高分子レンズとしては、耐熱性及び耐紫外線性能に優れたシリコーンレンズを使用する。LEDチップ2は金属バンプ3と金属ワイヤ4を通じて電気リードフレーム5に電気的に接続されている。LEDチップ2には、InGaN発光ダイオードまたはGaN発光ダイオードが用いられ、波長410〜500nmの波長領域に発光ピークを有する青色光又は波長350〜410nmの波長領域に発光ピークを有する近紫外光を発光する。
【0025】
LEDチップ2を取り囲むように形成された蛍光体層(近)6とその外側に形成された蛍光体層(遠)7とは、蛍光体を耐熱性及び耐紫外線性能に優れたシリコーン樹脂中に分散して構成されている。また、蛍光体層(近)6と蛍光体層(遠)7とは、蛍光体の分散媒として、耐熱性及び耐紫外線性能の優れたシリコーン樹脂を含んでもよいが、シリコーン樹脂としては、市販のものを適宜採用することができる。また、シリコーン樹脂の代わりにエポキシ樹脂を使用することも可能である。
【0026】
図1において、蛍光体層(近)の層厚という場合はd1を意味し、蛍光体層(遠)の層厚という場合はd2を意味する。これは、後で議論する、蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)と、LED光源から外部へ向かう方向への蛍光体層の層厚(μm)の積を求める場合の層厚として、図1におけるLED光源においては、d1あるいはd2を使用するという意味である。
【0027】
電気リードフレーム5と一体に形成された成形モールド8の内部は、アルミニウムまたは銀でコーティングされた反射膜10で形成されている。この反射膜10は、LEDチップ2から放出された発光を上方に反射する役割と、蛍光体層(近)6及び蛍光体層(遠)7を包含する役割とを有する。蛍光体層(遠)7の上部には、シリコーンドームレンズ9が形成されており、このシリコーンドームレンズ9の形状は、所望の発光の照射角度によって適宜変更可能である。
【0028】
本実施の形態の砲弾型LED発光装置1は、光源として用いることができる。例えば、家庭用の照明、通信機器および各種のディスプレイ装置のバックライトとして好適であり、次世代の照明としても用いることができる。具体的には、自動車のヘッドライトや車内照明、電車のヘッドライトや車内照明、液晶プロジェクタの光源として用いることができる。
【0029】
本実施の形態の砲弾型LED発光装置1において、LEDチップ2として青色LEDチップと、蛍光体層(近)6として黄色蛍光体層または緑色蛍光体層と、蛍光体層(遠)7として赤色蛍光体層または橙色蛍光体層とを用いた場合について詳述する。
【0030】
青色LEDチップからの発光は発光ピーク波長が410乃至500nmである事が特徴である。青色LEDに用いうる半導体素子の材料として、InGaNやGaNが挙げられる。
【0031】
黄色蛍光体層からの発光は発光ピーク波長が540乃至580nmである事が特徴である。黄色蛍光体層に含まれうる黄色蛍光体としては、Y3Al5O12:Ceで表わされるYAG蛍光体や、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Euで表されるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、CaGa2S4:Euで表わされるチオガレート蛍光体などの使用が可能であり、これらのうち少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0032】
同様に、緑色蛍光体層からの発光は発光ピーク波長が500乃至540nmである事が特徴である。緑色蛍光体層に含まれうる緑色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Euで表されるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、Si6−xAlxOxN8−x:Euで表わされるβ-サイアロン蛍光体、Ba3Sc2Si3O12:Ceで表わされる珪酸塩蛍光体、CaSc2O4:Ceで表わされるスカンジウム酸化物蛍光体、SrGa2S4:Euで表わされるチオガレート蛍光体などの使用が可能であり、これらのうち少なくともいずれか一つを含む事ができる。
【0033】
同様に、赤色蛍光体層からの発光は発光ピーク波長が620乃至700nmである事が特徴である。赤色蛍光体層に含まれうる赤色蛍光体としては、CaAlSiN3:Euで表わされるCASN蛍光体や、(Sr,Ca)AlSiN3:Euで表わされるSCASN蛍光体、CaS:Euで表わされる硫化物蛍光体などの使用が可能であり、これらのうち少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0034】
同様に、橙色蛍光体層からの発光は発光ピーク波長が580乃至620nmである事が特徴である。橙色蛍光体層に含まれうる橙色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca,Mg)3SiO5:Euで表わされるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、Cax(Si,Al)12(O, N)16:Euで表わされるα-サイアロン蛍光体、SrS:Euで表わされる硫化物蛍光体などの使用が可能であり、これらのうち少なくともいずれか一つを含む事ができる。
【0035】
なお、本実施の形態のLED発光装置において、発光の色味や輝度を調整するため、他の異なる組成の色の蛍光体を含有する蛍光体層を追加して用いることも可能である。また、本実施の形態のLED発光装置は、図1に示した砲弾型構造のみに限定されるものではない。例えば、これ以外にも表面実装型としても良い。表面実装型の例としてフェイスアップ型LEDチップ、フリップチップ型LEDチップなどを用いたものが挙げられる。また、チップオンボード型としても良い。他にもさまざまな形態に変更することができる。また、LEDチップの数も1つのパッケージに1つのLEDチップを有するシングルチップ型に限らず、1つのパッケージに2つ以上のLEDチップを有するマルチチップ型としても良い。以下に本発明を実施例に用いて説明する。
【実施例1】
【0036】
本実施の形態における蛍光体層の作製方法について説明する。黄色蛍光体として発光ピーク波長が555nmであるYAG蛍光体を用いた。樹脂として2液性のシリコーン樹脂を用いた。
【0037】
まず、2液性のシリコーン樹脂を0.3gずつ秤量し、撹拌容器に入れて脱泡撹拌を行った。次に、撹拌後の0.6gのシリコーン樹脂に所定の量の黄色蛍光体を質量パーセント濃度が30乃至50wt%となるよう混合し、再度脱泡撹拌して蛍光体を分散させた。次に、10mm×10mm、深さ50乃至200μmの開口部を有するスペーサ枠を用いて蛍光体含有樹脂層を作製した。スペーサ枠の開口部に蛍光体ペーストを投入し、ガラス製スキージを用いてスペーサ枠内に刷り込んだ。最後にスペーサ枠をはずし、スペーサ枠形状の蛍光体層を形成した。これを60℃で2時間、100℃で1時間、150℃で4時間加熱して硬化させ、黄色蛍光体層を形成した。
【0038】
ここで、黄色蛍光体層の全質量に対する黄色蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)と、LED光源から外部へ向かう方向への黄色蛍光体層の層厚(μm)の積をA(wt%・μm)とする。図2における黄色蛍光体層の厚さはd1である。
【0039】
次に、赤色蛍光体として発光ピーク波長が645nmであるCASN系蛍光体を用いた事を除いては、前記黄色蛍光体層を作製した方法と同様の方法で、赤色蛍光体層を形成した。図2における赤色蛍光体層の厚さはd2である。
【0040】
ここで、赤色蛍光体層の全質量に対する赤色蛍光体の質量パーセント濃度 (wt%)と、LED光源から外部へ向かう方向への赤色蛍光体層の層厚(μm)の積をB(wt%・μm)とする。
【0041】
図2に示す構成で、LEDチップ2として発光ピーク波長が450nmである青色LEDを用い、これを透明樹脂13としてシリコーン樹脂で封止した上で、蛍光体層(近)6として黄色蛍光体層を、蛍光体層(遠)7として赤色蛍光体層を用いた表面実装型LED発光装置11を作製した。ここで、黄色蛍光体層の前記Aと赤色蛍光体層の前記Bの値がそれぞれ
0 < A ≦ 10000 (wt%・μm)
0 < B ≦ 10000 (wt%・μm)
となるよう、各蛍光体層の質量パーセント濃度と層厚を調整した。
【0042】
この表面実装型LED発光装置11を点灯し、発光効率と平均演色評価数Raを測定した。発光効率の値は、蛍光体層を除いた構成での表面実装型LED発光装置11の発光効率に対する相対値とした。
【0043】
また、図2において蛍光体層(遠)7を取り去り、黄色蛍光体層のみを蛍光体層(近)6として用いた表面実装型LED発光装置11についても、同様に評価した。
【0044】
(比較例1)
図2に示す構成で、赤色蛍光体層と黄色蛍光体層の配置を交換した事を除き、実施例1から変更のない構成で表面実装型LED発光装置11を作製し、実施例1と同様に評価した。この構成は、従来から一般的に用いられてきた構成であり、以下に述べる本発明の効果については、特に断らない限り、この構成の比較例との比較を述べる。したがって、この構成よりも優れた効果を持つことは、従来例よりも優れた効果を持つということである。なお、図2において蛍光体層(遠)7を取り去り、赤色蛍光体層のみを蛍光体層(近)6として用いた表面実装型LED発光装置11についても、同様に評価した。
【0045】
実施例1と比較例1について、発光効率と平均演色評価数Raの関係を図3及び図5に図示する。これらの図では、同じ発光効率で比較した場合は図の上側の範囲の方が平均演色評価数Raが良く、同じ平均演色評価数Raで比較した場合は図の右側の範囲の方が発光効率が良いため、総じて図の右上の範囲ほど性能が良いと言う事ができる。
【0046】
実施例1について、A = 2000, 4000, 5000, 6000, 8000, 10000での結果をそれぞれ曲線21、曲線22、曲線23、曲線24、曲線25、曲線26として図3に示す。それぞれの曲線はBの値を変化させた結果の集合であり、各曲線の 右端即ち発光効率が高い端点はB = 0に、左端即ち発光効率が低い端点はB = 10000に対応する。
【0047】
ここで、蛍光体層を除いた構成での表面実装型LED発光装置11の3倍以上の発光効率を持ち、平均演色評価数Ra > 40である範囲を、接点や交点を境界として、AとBについて示すと
4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
となる。図3において、発光効率3の線と曲線22、曲線23、曲線24、曲線25、曲線26との交点におけるBは全て8000である。
【0048】
なお、発光効率とは、人間の眼の感度(比視感度)を考慮したものであり、単位は、lm/Wである。すなわち、人間の眼は波長555nmにおいて最も感度が高い。したがって、蛍光体を介することによって、波長を人間の眼の感度の高いところの光に変換することによって発光効率を上げることが出来る。すなわち、LEDチップ2として発光ピーク波長が450nmである青色LEDを用いると、この波長では、人間の眼の感度は低いので、例えば、緑蛍光体を用いると発光効率は向上することになる。
【0049】
図4に斜線部として示したこの範囲では、平均演色評価数Ra > 40となるため、程よい演色性が求められる用途、即ち粗い作業の工場、トンネル用照明に好ましく、一般作業の工場用照明に許容できる、高い発光効率を有するLED発光装置を得る事ができる。
【0050】
次に、実施例1について、A = 4000, 5000, 6000, 8000, 10000での結果をそれぞれ曲線22、曲線23、曲線24、曲線25、曲線26として図5に示す。それぞれの曲線はBの値を変化させた結果の集合であり、各曲線の右端即ち発光効率が高い端点はB = 0に、左端即ち発光効率が低い端点はB = 10000に対応する。また、比較例1について、同じ平均演色評価数Raを持つ結果の中で最も発光効率が高い結果を結んだ曲線を、比較例1の曲線27として図5中に示す。ここで、比較例1の曲線27よりも右上の範囲にある結果は、比較例1よりも性能が高い。曲線22乃至26と比較例1の曲線27について、接点や交点を境界として、この範囲をAとBについて示すと
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A および
6000 < A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 4000
となる。図5において、曲線23と比較例である曲線27との交点におけるBの値は5000である。また、曲線24、曲線25、曲線26と比較例である曲線27との交点におけるBの値は4000である。また、曲線22と比較例である曲線27との接点におけるBの値は6000である。
【0051】
図6に斜線部として示したこの範囲では、平均演色評価数Ra > 60となるため、良好な演色性が求められる用途、即ち一般的作業の工場用照明に好ましく、事務所、学校用照明に許容できる、高い発光効率を有するLED発光装置を得る事ができる。
【0052】
さらに、前記範囲のうち、図7に斜線部として示した
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A
なる範囲では、比較例1よりも実施例1の方が性能が高く、さらに平均演色評価数Ra > 80となるため、優れた演色性が求められる用途、即ち住宅、ホテル、レストラン、店舗、事務所、学校、病院、印刷・塗装・繊維・精密作業工場、色検査、臨床検査、美術館等に用いる照明に好ましい、高い発光効率を有するLED発光装置を得る事ができる。また、液晶表示装置のバックライトや、車載照明に用いても良い。
【実施例2】
【0053】
緑色蛍光体として発光ピーク波長が535nmである(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu蛍光体を用いた事を除き、実施例1と同様の方法で緑色蛍光体層を作製した。ここで、緑色蛍光体層の全質量に対する緑色蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)と、LED光源から外部へ向かう方向への緑色蛍光体層の層厚(μm)の積をA(wt%・μm)とする。
【0054】
次に、橙色蛍光体として発光ピーク波長が590nmである(Ba,Sr,Ca,Mg)3SiO5:Eu蛍光体を用いた事を除き、実施例1と同様の方法で橙色蛍光体層を形成した。
【0055】
ここで、橙色蛍光体層の全質量に対する橙色蛍光体の質量パーセント濃度 (wt%)と、LED光源から外部へ向かう方向への橙色蛍光体層の層厚(μm)の積をB(wt%・μm)とする。
【0056】
図2に示す構成で、LEDチップ2として発光ピーク波長が450nmである青色LEDを用い、透明樹脂13としてシリコーン樹脂で封止した上で、蛍光体層(近)6として緑色蛍光体層を、蛍光体層(遠)7として橙色蛍光体層を用いた表面実装型LED発光装置11を作製した。ここで、緑色蛍光体層の前記Aと、橙色蛍光体層の前記Bの値がそれぞれ
0 < A ≦ 12500 (wt%・μm)
0 < B ≦ 10000 (wt%・μm)
となるよう、各蛍光体層の質量パーセント濃度と層厚を調整した。
【0057】
このLED発光装置を点灯し、発光効率と平均演色評価数Raを測定した。発光効率の値は、蛍光体層を除いた構成でのLED発光装置の発光効率に対する相対値とした。また、図2において、蛍光体層(遠)7を取り去り、緑色蛍光体層のみを蛍光体層(近)6として用いたLED発光装置についても、同様に評価した。
(比較例2)
図2に示す構成で、橙色蛍光体層と緑色蛍光体層の配置を交換した事を除き、実施例2から変更のない構成でLED発光装置を作製し、実施例2と同様に評価した。この比較例の構成は、従来一般に行われてきた構成であり、本実施例の効果は、この比較例との比較で行う。また、図2において、蛍光体層(遠)7を取り去り、橙色蛍光体層のみを蛍光体層(近)6として用いたLED発光装置についても、同様に評価した。
【0058】
実施例と比較例について、発光効率と平均演色評価数Raの関係を図8に図示する。この図では、同じ発光効率で比較した場合は図の上側の範囲の方が平均演色評価数Raが良く、同じ平均演色評価数Raで比較した場合は図の右側の範囲の方が発光効率が良いため、総じて図の右上の範囲ほど性能が良いという事ができる。
【0059】
実施例2について、A = 6000, 10000, 12500での結果をそれぞれ曲線32、曲線33、曲線34として図8に示す。それぞれの曲線はBの値を変化させた結果の集合であり、各曲線の右端即ち発光効率が高い端点はB = 0に、左端即ち発光効率が低い端点はB = 10000に対応する。ここで、比較例2について同じ平均演色評価数Raを持つ結果の中で最も発光効率が高い結果を結んだ曲線を、比較例2の曲線35として図8中に示す。
【0060】
ここで、比較例2の曲線35よりも右上の範囲にある結果は、比較例2よりも性能が高い。曲線32乃至34と比較例2の曲線35について、接点や交点を境界として、この範囲をAとBについて示すと、
6000 ≦ A ≦ 12500かつ0 < B ≦ 2000
となる。図9に斜線部として示したこの範囲では、蛍光体層を除いた構成でのLED発光装置の6倍以上という非常に高い発光効率が得られる。さらに、平均演色評価数Ra > 40となるため、粗い作業の工場やトンネル用照明に好ましく、一般作業の工場用照明に適する発光装置を得る事ができる。
【実施例3】
【0061】
実施例3における砲弾型LED発光装置1を用いた構成について、図1を用いて説明する。反射膜10が形成されている凹部に、黄色蛍光体をシリコーン樹脂中に分散した蛍光体ペーストを注入した後、赤色蛍光体をシリコーン樹脂中に分散した蛍光体ペーストを注入し、これを60℃で2時間、100℃で1時間、150℃で4時間加熱して硬化させ、それぞれ黄色蛍光体層と赤色蛍光体層を形成した。
【0062】
この実施例における砲弾型LED発光装置1は、励起光源に近い側に黄色蛍光体層を蛍光体層(近)6として配置しているため、発光効率が高い蛍光体層の励起光強度が高くなり、発光装置全体としても発光効率が高い結果が得られた。また、シリコーンドームレンズ9の形状を変更することで、発光の配向を適宜変更可能である。
【0063】
具体的な構成は次のとおりである。図1において、励起光源に近い側の黄色蛍光体層の厚さがd1、遠い側の赤色蛍光体層の厚さがd2である。この場合、黄色蛍光体層の層厚 (μm)と、黄色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をA(wt%・μm)とし、赤色蛍光体層の層厚 (μm)と、赤色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をB (wt%・μm)とした時、AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
である。
【0064】
また、本実施例の他の態様として、前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A および
6000 < A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 4000
である。
【0065】
さらに、本実施例の他の態様としては、前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A
である。
【実施例4】
【0066】
実施例4における表面実装型LED発光装置11を用いた構成について、図10を用いて説明する。パッケージ12の凹部に、黄色蛍光体をシリコーン樹脂中に分散した蛍光体ペーストを注入した後、赤色蛍光体をシリコーン樹脂中に分散した蛍光体ペーストを注入し、これを60℃で2時間、100℃で1時間、150℃で4時間加熱して硬化させ、それぞれ黄色蛍光体層である蛍光体層(近)6と赤色蛍光体層である蛍光体層(遠)7を形成した。
【0067】
この実施例における表面実装型LED発光装置11は、励起光源に近い側に黄色蛍光体層を蛍光体層(近)6として配置しているため、発光効率が高い蛍光体層の励起光強度が高くなり、発光装置全体としても発光効率が高い結果が得られた。また、パッケージ内に蛍光体層を有するため励起光強度が高い事や、外部に対し飛び出した構造を持たないメリットがある。
【0068】
具体的な構成は次のとおりである。図10において、励起光源に近い側の黄色蛍光体層の厚さがd1、遠い側の赤色蛍光体層の厚さがd2である。この場合、黄色蛍光体層の層厚 (μm)と、黄色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をA(wt%・μm)とし、赤色蛍光体層の層厚 (μm)と、赤色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をB (wt%・μm)とした時、AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
である。
【0069】
また、本実施例の他の態様として、前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A および
6000 < A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 4000
である。
【0070】
さらに、本実施例の他の態様としては、前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A
である。
【実施例5】
【0071】
実施例5のLED発光装置の断面図を図11に示す。実施例5については、フリップチップ型LEDチップ14を用いた構成とした以外は、実施例1と同様に作製、評価した。この実施例における表面実装型LED発光装置11は、励起光源に近い側に黄色蛍光体層を蛍光体層(近)6として配置しているため、発光効率が高い蛍光体層の励起光強度が高くなり、発光装置全体としても発光効率が高い結果が得られた。また、フリップチップ型LEDチップ14を用いているため熱引きが良く、熱による発光効率の低下を抑制するメリットがある。
【0072】
励起光源に近い側の黄色蛍光体層の厚さがd1、遠い側の赤色蛍光体層の厚さがd2である。この場合、黄色蛍光体層の層厚 (μm)と、黄色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をA(wt%・μm)とし、赤色蛍光体層の層厚 (μm)と、赤色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をB (wt%・μm)とした時の具体的な効果は実施例1で述べたと同様である。
【実施例6】
【0073】
実施例6のLED発光装置の断面図を図12に示す。実施例6については、フリップチップ型LEDチップ14を用いた構成とした以外は、実施例4と同様に作製、評価した。図12において、黄色蛍光体層である蛍光体層(近)6の厚さはd1、赤色蛍光体層である蛍光体層(遠)7の厚さはd2である。
【0074】
この実施例における表面実装型LED発光装置11は、励起光源に近い側に黄色蛍光体層を蛍光体層(近)6として配置しているため、発光効率が高い蛍光体層の励起光強度が高くなり、発光装置全体としても発光効率が高い結果が得られた。
【0075】
本実施例において、励起光源に近い蛍光体層の厚さおよび蛍光体の重量%と、励起光源から遠い蛍光体層の厚さおよび蛍光体の重量%との関係は、実施例4で説明したのと同様である。
【0076】
本実施例では、フリップチップ型LEDチップ14を用いているため熱引きが良く、熱による発光効率の低下を抑制するメリットがある。さらに、パッケージ内に蛍光体層を有するため励起光強度が高く、外部に対し飛び出した構造を持たないメリットがある。
【実施例7】
【0077】
実施例7におけるフリップチップ型LEDチップ14を用いた構成について、図13を用いて説明する。この構成では、フリップチップ型LEDチップ14の外部側が平坦な面となるため、プレート状の蛍光体を直接フリップチップ型LEDチップ14の表面に密着又は接着する事ができ、均一な発光を実現することができる。ここで、蛍光体プレート(近)15は黄色蛍光体プレートを用い、蛍光体プレート(遠)16は赤色蛍光体プレートを用いた。また、配置は、フリップチップ型LEDチップ14、蛍光体プレート(近)15、蛍光体プレート(遠)16の順番に隣り合った構成とし、透明樹脂13としてシリコーン樹脂で封止した。なお、蛍光体プレートは複数のフリップチップ型LEDチップ14に接して励起、発光する構成となっていても良い。
【0078】
蛍光体プレートの製法としては、加圧下で加熱して粒子を焼結させる方法を取った。なお、プレート化の際には透明バインダを使用することで層厚、濃度密度を制御する事ができる。この実施例における表面実装型LED発光装置11は、励起光源に近い側に黄色蛍光体層を蛍光体プレート(近)15として配置しているため、発光効率が高い蛍光体プレートの励起光強度が高くなり、発光装置全体としても発光効率が高い結果が得られた。また、フリップチップ型LEDチップ14を用いているため熱引きが良く、熱による発光効率の低下を抑制するメリットがある。さらに、蛍光体プレート(近)15がフリップチップ型LEDチップ14に接しているため、励起光強度が非常に高い事や、蛍光体プレート(近)15は均一性が高いため発光が均一になるメリットがある。そして、外部に対し飛び出した構造を持たないメリットがある。
【0079】
励起光源に近い側の黄色蛍光体プレートの厚さがd1、遠い側の赤色蛍光体プレートの厚さがd2である。この場合、黄色蛍光体プレートの層厚 (μm)と、黄色蛍光体プレートの全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をA(wt%・μm)とし、赤色蛍光体プレートの層厚 (μm)と、赤色蛍光体プレートの全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をB (wt%・μm)とした時の具体的な効果は実施例1で述べたと同様である。
【0080】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0081】
本発明の発光装置は、各種照明、具体的には家庭用の照明、通信機器、自動車のヘッドライトや車内照明、電車のヘッドライトや車内照明、ディスプレイ装置のバックライト、液晶プロジェクタの光源等へ広く適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 砲弾型LED発光装置
2 LEDチップ
3 金属バンプ
4 金属ワイヤ
5 電気リードフレーム
6 蛍光体層(近)
7 蛍光体層(遠)
8 成形モールド
9 シリコーンドームレンズ
10 反射膜
11 表面実装型LED発光装置
12 パッケージ
13 透明樹脂
14 フリップチップ型LEDチップ
15 蛍光体プレート(近)
16 蛍光体プレート(遠)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関し、特に、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を備えて構成された発光装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LEDを光源に用いて構成された発光装置は、高発光効率で鮮やかな色の光を発光する。そして、電球に比べて寿命が長く、小型化が容易であり、低電圧駆動が可能であることから、家庭用照明をはじめとする各種照明用や、車両用灯具、液晶表示素子のバックライトなど、次世代の光源として注目され、近年盛んに研究と開発とが進められている。
【0003】
このような発光装置を用いて白色光を得る方式としては、次のようなものがある。
(1)光の3原色である赤色(R:Red)、緑色(G:Green)、および青色(B:Blue)の3色の発光をそれぞれ実現する3種のLEDを組み合わせて白色光を得る方式。
(2)青色発光する青色LEDを励起源として使用し、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を励起することによって緑色光及び赤色光を得て、光源の青色光と蛍光体の緑色光及び赤色光の混合により白色光を得る方式。
(3)410nmより短波長の近紫外領域に発光ピークを有する紫外発光LEDを励起源として使用し、赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体を励起することによってRGB3色の光を得、これらを混合させて、白色光を得る方式。
【0004】
しかし、上記(1)のRGB3色のLEDを使用する方式は、製造コストが高くなるといった課題を含んでいる。そして、駆動回路も複雑であるため、製品のサイズが大きくなってしまうという課題も有する。また、LEDはその発光スペクトルにおいて優れた単色性のピークを示すため、RGB3色の発光により得られる白色光の色再現特性は、一般に使用される蛍光灯など、室内照明の白色光の持つ自然な色再現特性とは異なったものとなってしまう。
【0005】
また、上記(2)の青色LEDを励起源として緑色発光蛍光体及び赤色蛍光体を励起する方式は、高効率に発光を得ることができる緑色蛍光体と、赤色再現性の高い赤色蛍光体を組み合わせることにより、高発光効率で演色性の高い白色光の発光を得る事ができる。
【0006】
そして、(3)の紫外発光LEDを使用する方式では、色再現性に優れ、一般の照明用途をはじめ、病院や美術館、商品を鮮やかに見せて展示をしたい食料品店などの小売店舗などの照明用途にも適している。
【0007】
しかしながら、上記(2)及び(3)の方式の場合、複数の蛍光体を使用するため、一方の蛍光体の励起スペクトルが他方の蛍光体の発光スペクトルと重なっている場合、後者の蛍光体からの発光が前者の蛍光体に吸収される現象が起こる。一般に蛍光体の励起スペクトルは発光スペクトルより短波長側に位置するため、このような現象はより短波長の発光スペクトルを持つ蛍光体からの発光が、前記発光スペクトルと同じ波長域に励起スペクトルを持つ蛍光体に吸収されることで起こる。
【0008】
この現象の影響を低減するため、特開2005−311136(特許文献1)には、複数の蛍光体層を発光素子からの光の進行方向に積層して設置するとともに、発光波長が長い方の蛍光体を含有する蛍光体層が前記発光素子に近い側に設置される事を特徴とする構成が記載されている。この例では、発光素子からの励起光が波長変換される際の量子効率が、これらの蛍光体を混合して用いた場合や、異なる積層順とした場合と比較して向上している。
【0009】
また、特開2007−116133(特許文献2)には、青色LEDからの発光が外部に放出される際の光路に沿って、青色LEDに近い方に黄色蛍光体樹脂層を配置し、遠い方に赤色蛍光体を保持したシート状蛍光体層を配置する例が報告されている。この文献では、シート状蛍光体層の厚みとして0.5〜1.0mm程度の厚みが好ましいとされており、実施例として、厚さ0.5mmのシートを成形し、赤色蛍光体の含有量を赤色蛍光体シートの総重量に対して4%、8%、12%となるようにしたものが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−311136号公報
【特許文献2】特開2007−116133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載の方式の場合、励起源からの光が長波長で発光する蛍光体、具体的には赤色蛍光体を最初に励起するため、励起強度が高くなり、赤色光が多量に放射される。ここで、赤色光は視感度が低いうえ、励起光との波長の差が大きいため波長変換にともなうエネルギー損(ストークス損)が大きく、発光効率(単位: lm/W)が低い。また、赤色光は緑色蛍光体を励起する事が出来ないため、緑色蛍光体は赤色蛍光体を透過した少量の励起光によってしか励起されず、十分な緑色光が得られない。ゆえに、発光効率の低い赤色光を多量に放射する一方で、発光効率の高い緑色光を少量しか放射できないため、外部に放射される光の輝度が低くなり、LED装置全体としての発光効率が低くなってしまう問題がある。
【0012】
また、上記特許文献2に記載の方式の場合、青色励起光源に近い方に黄色蛍光体樹脂層を配置し、遠い方に赤色シート状蛍光体層を配置するとの記述があるが、発光効率の向上に関する記述は何ら見当たらない。また、赤色シート状蛍光体層の層厚と赤色蛍光体の質量パーセント濃度の記載はあるが、黄色蛍光体樹脂層については、黄色蛍光体の質量パーセント濃度が記載されているのみである。これより、黄色蛍光体樹脂層の層厚に関する情報が不足しているため、高い発光効率と高い平均演色評価数Raを両立するLED発光装置を得られない。なお、Raとは、太陽光で照らした場合に比べ、用いた光源で照らした場合に物体色の色度がどのくらいずれているかを示す指標であり、照明の使用環境によって、CIE(国際照明委員会)によって、40以上、60以上、80以上などというように規定されている。
【0013】
本発明の課題は、高い発光効率と必要な演色評価数を得ることが出来るLED発光層装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
励起源となるLEDからの発光が外部に放出される際の光路に沿って、励起源に近い方に発光効率の高い蛍光体層を配置し、遠い方に発光効率の低い蛍光体層を配置する。これによって、励起源からの光が発光効率の高い蛍光体層を最初に励起するため、励起強度が高くなり、LED発光装置全体での発光効率を向上できる。
【0015】
さらに、この効果を得るためには、発光効率の高い蛍光体層と発光効率の低い蛍光体層それぞれの封止材に対する各蛍光体の質量パーセント濃度と、各蛍光体層の層厚が適切な範囲に有る必要がある。本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
このLED発光装置は、例えば青色LEDの発光により励起され、青色LEDより長波長で発光する黄色蛍光体層と赤色蛍光体層を有する。そして、青色LEDに近い方に、発光効率の高い蛍光体層から順番に配置する事を特徴とする。例えば、青色LEDの近傍に黄色蛍光体層を配置し、その外側に赤色蛍光体層を配置する。
【0017】
また、蛍光体層として緑色蛍光体層と橙色蛍光体層を有する場合は、青色LED光照射下での発光効率の高い方から励起源に近い方に順番に配置する。例えば、青色LEDの近傍に緑色蛍光体層を配置し、その外側に橙色蛍光体層を配置する。
【0018】
励起源として紫外LEDを用いる場合は、その最近傍に青色蛍光体層を配置する事で前記構成と同等となる。このため、まず紫外LEDの近傍に青色蛍光体層を配置した後、それ以外の蛍光体層について発光効率の高い蛍光体層から順番に光源の近傍に配置する。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。本発明のLED発光装置は、蛍光体を独立に含有する2種類以上の蛍光体層を有し、これらを励起源となるLEDからの発光が外部に放出される際の光路に沿って、励起源に近い方に発光効率の高い蛍光体層を配置し、遠い方に発光効率の低い蛍光体層を配置する事で、蛍光体を混合して用いた場合や、発光効率が最も低い蛍光体から順に励起源の近くに配置した場合に比べ、発光効率を向上できる。
【0020】
また、蛍光体層それぞれの封止材に対する各蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)と、各蛍光体層の層厚(μm)との積を適切な範囲にする事で、高い発光効率と優れた演色性を両立するLED発光装置を実現することができる。
【0021】
さらに、蛍光体層の種類として視感度が高い黄色光を発光する黄色蛍光体層と、青色光と黄色光に不足している可視光長波長側のスペクトルを補う赤色蛍光体層を併用する事で、高い発光効率と優れた演色性とを両立可能なLED発光装置を実現することができる。また、黄色蛍光体と赤色蛍光体について具体例として、Y3Al5O12:Ceで表わされるYAG蛍光体等とCaAlSiN3:Euで表わされるCASN蛍光体等を用いることができ、これらの蛍光体の輝度の高さを反映した、発光効率が高いLED発光装置を得ることができる。
【0022】
そして、蛍光体の種類を緑色蛍光体と橙色蛍光体にする事で、発光効率が高い蛍光体層同士の組合せを活かした、非常に高い発光効率と適度な演色性を有するLED発光装置を得ることができる。例えば緑色蛍光体層に含まれる蛍光体として(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu系蛍光体等、橙色蛍光体層に含まれる蛍光体として(Ba,Sr,Ca,Mg)3SiO5:Eu蛍光体等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態である発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態である発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図3】実施例1でのLED発光装置の発光効率と平均演色評価数Raの関係を表す図である。
【図4】実施例1での黄色蛍光体層と赤色蛍光体層とのそれぞれの質量パーセント濃度と層厚の積について、LED発光装置が高い発光効率と程よい平均演色評価数Raを両立する範囲を表す図である。
【図5】実施例1と比較例1でのLED発光装置の発光効率と平均演色評価数Raの関係を表す図である。
【図6】実施例1での黄色蛍光体層と赤色蛍光体層とのそれぞれの質量パーセント濃度と層厚の積について、LED発光装置が高い発光効率と、より優れた平均演色評価数Raを両立する範囲を表す図である。
【図7】実施例1での黄色蛍光体層と赤色蛍光体層とのそれぞれの質量パーセント濃度と層厚の積について、LED発光装置が高い発光効率と、さらに優れた平均演色評価数Raを両立する範囲を表す図である。
【図8】実施例2と比較例2でのLED発光装置の発光効率と平均演色評価数Raの関係を表す図である。
【図9】実施例2での緑色蛍光体層と橙色蛍光体層とのそれぞれの質量パーセント濃度と層厚の積について、LED発光装置が優れた発光効率と実用可能な高い平均演色評価数Raを両立する範囲を表す図である。
【図10】実施例4による発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図11】実施例5による発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図12】実施例6による発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図13】実施例7による発光装置の構造を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本実施の形態の砲弾型LED発光装置1の構造を示す模式的な断面図である。ここでは、砲弾型LED発光装置1の具体例として、高分子レンズタイプの砲弾型発光装置を示す。なお、高分子レンズとしては、耐熱性及び耐紫外線性能に優れたシリコーンレンズを使用する。LEDチップ2は金属バンプ3と金属ワイヤ4を通じて電気リードフレーム5に電気的に接続されている。LEDチップ2には、InGaN発光ダイオードまたはGaN発光ダイオードが用いられ、波長410〜500nmの波長領域に発光ピークを有する青色光又は波長350〜410nmの波長領域に発光ピークを有する近紫外光を発光する。
【0025】
LEDチップ2を取り囲むように形成された蛍光体層(近)6とその外側に形成された蛍光体層(遠)7とは、蛍光体を耐熱性及び耐紫外線性能に優れたシリコーン樹脂中に分散して構成されている。また、蛍光体層(近)6と蛍光体層(遠)7とは、蛍光体の分散媒として、耐熱性及び耐紫外線性能の優れたシリコーン樹脂を含んでもよいが、シリコーン樹脂としては、市販のものを適宜採用することができる。また、シリコーン樹脂の代わりにエポキシ樹脂を使用することも可能である。
【0026】
図1において、蛍光体層(近)の層厚という場合はd1を意味し、蛍光体層(遠)の層厚という場合はd2を意味する。これは、後で議論する、蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)と、LED光源から外部へ向かう方向への蛍光体層の層厚(μm)の積を求める場合の層厚として、図1におけるLED光源においては、d1あるいはd2を使用するという意味である。
【0027】
電気リードフレーム5と一体に形成された成形モールド8の内部は、アルミニウムまたは銀でコーティングされた反射膜10で形成されている。この反射膜10は、LEDチップ2から放出された発光を上方に反射する役割と、蛍光体層(近)6及び蛍光体層(遠)7を包含する役割とを有する。蛍光体層(遠)7の上部には、シリコーンドームレンズ9が形成されており、このシリコーンドームレンズ9の形状は、所望の発光の照射角度によって適宜変更可能である。
【0028】
本実施の形態の砲弾型LED発光装置1は、光源として用いることができる。例えば、家庭用の照明、通信機器および各種のディスプレイ装置のバックライトとして好適であり、次世代の照明としても用いることができる。具体的には、自動車のヘッドライトや車内照明、電車のヘッドライトや車内照明、液晶プロジェクタの光源として用いることができる。
【0029】
本実施の形態の砲弾型LED発光装置1において、LEDチップ2として青色LEDチップと、蛍光体層(近)6として黄色蛍光体層または緑色蛍光体層と、蛍光体層(遠)7として赤色蛍光体層または橙色蛍光体層とを用いた場合について詳述する。
【0030】
青色LEDチップからの発光は発光ピーク波長が410乃至500nmである事が特徴である。青色LEDに用いうる半導体素子の材料として、InGaNやGaNが挙げられる。
【0031】
黄色蛍光体層からの発光は発光ピーク波長が540乃至580nmである事が特徴である。黄色蛍光体層に含まれうる黄色蛍光体としては、Y3Al5O12:Ceで表わされるYAG蛍光体や、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Euで表されるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、CaGa2S4:Euで表わされるチオガレート蛍光体などの使用が可能であり、これらのうち少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0032】
同様に、緑色蛍光体層からの発光は発光ピーク波長が500乃至540nmである事が特徴である。緑色蛍光体層に含まれうる緑色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Euで表されるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、Si6−xAlxOxN8−x:Euで表わされるβ-サイアロン蛍光体、Ba3Sc2Si3O12:Ceで表わされる珪酸塩蛍光体、CaSc2O4:Ceで表わされるスカンジウム酸化物蛍光体、SrGa2S4:Euで表わされるチオガレート蛍光体などの使用が可能であり、これらのうち少なくともいずれか一つを含む事ができる。
【0033】
同様に、赤色蛍光体層からの発光は発光ピーク波長が620乃至700nmである事が特徴である。赤色蛍光体層に含まれうる赤色蛍光体としては、CaAlSiN3:Euで表わされるCASN蛍光体や、(Sr,Ca)AlSiN3:Euで表わされるSCASN蛍光体、CaS:Euで表わされる硫化物蛍光体などの使用が可能であり、これらのうち少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0034】
同様に、橙色蛍光体層からの発光は発光ピーク波長が580乃至620nmである事が特徴である。橙色蛍光体層に含まれうる橙色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca,Mg)3SiO5:Euで表わされるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、Cax(Si,Al)12(O, N)16:Euで表わされるα-サイアロン蛍光体、SrS:Euで表わされる硫化物蛍光体などの使用が可能であり、これらのうち少なくともいずれか一つを含む事ができる。
【0035】
なお、本実施の形態のLED発光装置において、発光の色味や輝度を調整するため、他の異なる組成の色の蛍光体を含有する蛍光体層を追加して用いることも可能である。また、本実施の形態のLED発光装置は、図1に示した砲弾型構造のみに限定されるものではない。例えば、これ以外にも表面実装型としても良い。表面実装型の例としてフェイスアップ型LEDチップ、フリップチップ型LEDチップなどを用いたものが挙げられる。また、チップオンボード型としても良い。他にもさまざまな形態に変更することができる。また、LEDチップの数も1つのパッケージに1つのLEDチップを有するシングルチップ型に限らず、1つのパッケージに2つ以上のLEDチップを有するマルチチップ型としても良い。以下に本発明を実施例に用いて説明する。
【実施例1】
【0036】
本実施の形態における蛍光体層の作製方法について説明する。黄色蛍光体として発光ピーク波長が555nmであるYAG蛍光体を用いた。樹脂として2液性のシリコーン樹脂を用いた。
【0037】
まず、2液性のシリコーン樹脂を0.3gずつ秤量し、撹拌容器に入れて脱泡撹拌を行った。次に、撹拌後の0.6gのシリコーン樹脂に所定の量の黄色蛍光体を質量パーセント濃度が30乃至50wt%となるよう混合し、再度脱泡撹拌して蛍光体を分散させた。次に、10mm×10mm、深さ50乃至200μmの開口部を有するスペーサ枠を用いて蛍光体含有樹脂層を作製した。スペーサ枠の開口部に蛍光体ペーストを投入し、ガラス製スキージを用いてスペーサ枠内に刷り込んだ。最後にスペーサ枠をはずし、スペーサ枠形状の蛍光体層を形成した。これを60℃で2時間、100℃で1時間、150℃で4時間加熱して硬化させ、黄色蛍光体層を形成した。
【0038】
ここで、黄色蛍光体層の全質量に対する黄色蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)と、LED光源から外部へ向かう方向への黄色蛍光体層の層厚(μm)の積をA(wt%・μm)とする。図2における黄色蛍光体層の厚さはd1である。
【0039】
次に、赤色蛍光体として発光ピーク波長が645nmであるCASN系蛍光体を用いた事を除いては、前記黄色蛍光体層を作製した方法と同様の方法で、赤色蛍光体層を形成した。図2における赤色蛍光体層の厚さはd2である。
【0040】
ここで、赤色蛍光体層の全質量に対する赤色蛍光体の質量パーセント濃度 (wt%)と、LED光源から外部へ向かう方向への赤色蛍光体層の層厚(μm)の積をB(wt%・μm)とする。
【0041】
図2に示す構成で、LEDチップ2として発光ピーク波長が450nmである青色LEDを用い、これを透明樹脂13としてシリコーン樹脂で封止した上で、蛍光体層(近)6として黄色蛍光体層を、蛍光体層(遠)7として赤色蛍光体層を用いた表面実装型LED発光装置11を作製した。ここで、黄色蛍光体層の前記Aと赤色蛍光体層の前記Bの値がそれぞれ
0 < A ≦ 10000 (wt%・μm)
0 < B ≦ 10000 (wt%・μm)
となるよう、各蛍光体層の質量パーセント濃度と層厚を調整した。
【0042】
この表面実装型LED発光装置11を点灯し、発光効率と平均演色評価数Raを測定した。発光効率の値は、蛍光体層を除いた構成での表面実装型LED発光装置11の発光効率に対する相対値とした。
【0043】
また、図2において蛍光体層(遠)7を取り去り、黄色蛍光体層のみを蛍光体層(近)6として用いた表面実装型LED発光装置11についても、同様に評価した。
【0044】
(比較例1)
図2に示す構成で、赤色蛍光体層と黄色蛍光体層の配置を交換した事を除き、実施例1から変更のない構成で表面実装型LED発光装置11を作製し、実施例1と同様に評価した。この構成は、従来から一般的に用いられてきた構成であり、以下に述べる本発明の効果については、特に断らない限り、この構成の比較例との比較を述べる。したがって、この構成よりも優れた効果を持つことは、従来例よりも優れた効果を持つということである。なお、図2において蛍光体層(遠)7を取り去り、赤色蛍光体層のみを蛍光体層(近)6として用いた表面実装型LED発光装置11についても、同様に評価した。
【0045】
実施例1と比較例1について、発光効率と平均演色評価数Raの関係を図3及び図5に図示する。これらの図では、同じ発光効率で比較した場合は図の上側の範囲の方が平均演色評価数Raが良く、同じ平均演色評価数Raで比較した場合は図の右側の範囲の方が発光効率が良いため、総じて図の右上の範囲ほど性能が良いと言う事ができる。
【0046】
実施例1について、A = 2000, 4000, 5000, 6000, 8000, 10000での結果をそれぞれ曲線21、曲線22、曲線23、曲線24、曲線25、曲線26として図3に示す。それぞれの曲線はBの値を変化させた結果の集合であり、各曲線の 右端即ち発光効率が高い端点はB = 0に、左端即ち発光効率が低い端点はB = 10000に対応する。
【0047】
ここで、蛍光体層を除いた構成での表面実装型LED発光装置11の3倍以上の発光効率を持ち、平均演色評価数Ra > 40である範囲を、接点や交点を境界として、AとBについて示すと
4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
となる。図3において、発光効率3の線と曲線22、曲線23、曲線24、曲線25、曲線26との交点におけるBは全て8000である。
【0048】
なお、発光効率とは、人間の眼の感度(比視感度)を考慮したものであり、単位は、lm/Wである。すなわち、人間の眼は波長555nmにおいて最も感度が高い。したがって、蛍光体を介することによって、波長を人間の眼の感度の高いところの光に変換することによって発光効率を上げることが出来る。すなわち、LEDチップ2として発光ピーク波長が450nmである青色LEDを用いると、この波長では、人間の眼の感度は低いので、例えば、緑蛍光体を用いると発光効率は向上することになる。
【0049】
図4に斜線部として示したこの範囲では、平均演色評価数Ra > 40となるため、程よい演色性が求められる用途、即ち粗い作業の工場、トンネル用照明に好ましく、一般作業の工場用照明に許容できる、高い発光効率を有するLED発光装置を得る事ができる。
【0050】
次に、実施例1について、A = 4000, 5000, 6000, 8000, 10000での結果をそれぞれ曲線22、曲線23、曲線24、曲線25、曲線26として図5に示す。それぞれの曲線はBの値を変化させた結果の集合であり、各曲線の右端即ち発光効率が高い端点はB = 0に、左端即ち発光効率が低い端点はB = 10000に対応する。また、比較例1について、同じ平均演色評価数Raを持つ結果の中で最も発光効率が高い結果を結んだ曲線を、比較例1の曲線27として図5中に示す。ここで、比較例1の曲線27よりも右上の範囲にある結果は、比較例1よりも性能が高い。曲線22乃至26と比較例1の曲線27について、接点や交点を境界として、この範囲をAとBについて示すと
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A および
6000 < A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 4000
となる。図5において、曲線23と比較例である曲線27との交点におけるBの値は5000である。また、曲線24、曲線25、曲線26と比較例である曲線27との交点におけるBの値は4000である。また、曲線22と比較例である曲線27との接点におけるBの値は6000である。
【0051】
図6に斜線部として示したこの範囲では、平均演色評価数Ra > 60となるため、良好な演色性が求められる用途、即ち一般的作業の工場用照明に好ましく、事務所、学校用照明に許容できる、高い発光効率を有するLED発光装置を得る事ができる。
【0052】
さらに、前記範囲のうち、図7に斜線部として示した
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A
なる範囲では、比較例1よりも実施例1の方が性能が高く、さらに平均演色評価数Ra > 80となるため、優れた演色性が求められる用途、即ち住宅、ホテル、レストラン、店舗、事務所、学校、病院、印刷・塗装・繊維・精密作業工場、色検査、臨床検査、美術館等に用いる照明に好ましい、高い発光効率を有するLED発光装置を得る事ができる。また、液晶表示装置のバックライトや、車載照明に用いても良い。
【実施例2】
【0053】
緑色蛍光体として発光ピーク波長が535nmである(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu蛍光体を用いた事を除き、実施例1と同様の方法で緑色蛍光体層を作製した。ここで、緑色蛍光体層の全質量に対する緑色蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)と、LED光源から外部へ向かう方向への緑色蛍光体層の層厚(μm)の積をA(wt%・μm)とする。
【0054】
次に、橙色蛍光体として発光ピーク波長が590nmである(Ba,Sr,Ca,Mg)3SiO5:Eu蛍光体を用いた事を除き、実施例1と同様の方法で橙色蛍光体層を形成した。
【0055】
ここで、橙色蛍光体層の全質量に対する橙色蛍光体の質量パーセント濃度 (wt%)と、LED光源から外部へ向かう方向への橙色蛍光体層の層厚(μm)の積をB(wt%・μm)とする。
【0056】
図2に示す構成で、LEDチップ2として発光ピーク波長が450nmである青色LEDを用い、透明樹脂13としてシリコーン樹脂で封止した上で、蛍光体層(近)6として緑色蛍光体層を、蛍光体層(遠)7として橙色蛍光体層を用いた表面実装型LED発光装置11を作製した。ここで、緑色蛍光体層の前記Aと、橙色蛍光体層の前記Bの値がそれぞれ
0 < A ≦ 12500 (wt%・μm)
0 < B ≦ 10000 (wt%・μm)
となるよう、各蛍光体層の質量パーセント濃度と層厚を調整した。
【0057】
このLED発光装置を点灯し、発光効率と平均演色評価数Raを測定した。発光効率の値は、蛍光体層を除いた構成でのLED発光装置の発光効率に対する相対値とした。また、図2において、蛍光体層(遠)7を取り去り、緑色蛍光体層のみを蛍光体層(近)6として用いたLED発光装置についても、同様に評価した。
(比較例2)
図2に示す構成で、橙色蛍光体層と緑色蛍光体層の配置を交換した事を除き、実施例2から変更のない構成でLED発光装置を作製し、実施例2と同様に評価した。この比較例の構成は、従来一般に行われてきた構成であり、本実施例の効果は、この比較例との比較で行う。また、図2において、蛍光体層(遠)7を取り去り、橙色蛍光体層のみを蛍光体層(近)6として用いたLED発光装置についても、同様に評価した。
【0058】
実施例と比較例について、発光効率と平均演色評価数Raの関係を図8に図示する。この図では、同じ発光効率で比較した場合は図の上側の範囲の方が平均演色評価数Raが良く、同じ平均演色評価数Raで比較した場合は図の右側の範囲の方が発光効率が良いため、総じて図の右上の範囲ほど性能が良いという事ができる。
【0059】
実施例2について、A = 6000, 10000, 12500での結果をそれぞれ曲線32、曲線33、曲線34として図8に示す。それぞれの曲線はBの値を変化させた結果の集合であり、各曲線の右端即ち発光効率が高い端点はB = 0に、左端即ち発光効率が低い端点はB = 10000に対応する。ここで、比較例2について同じ平均演色評価数Raを持つ結果の中で最も発光効率が高い結果を結んだ曲線を、比較例2の曲線35として図8中に示す。
【0060】
ここで、比較例2の曲線35よりも右上の範囲にある結果は、比較例2よりも性能が高い。曲線32乃至34と比較例2の曲線35について、接点や交点を境界として、この範囲をAとBについて示すと、
6000 ≦ A ≦ 12500かつ0 < B ≦ 2000
となる。図9に斜線部として示したこの範囲では、蛍光体層を除いた構成でのLED発光装置の6倍以上という非常に高い発光効率が得られる。さらに、平均演色評価数Ra > 40となるため、粗い作業の工場やトンネル用照明に好ましく、一般作業の工場用照明に適する発光装置を得る事ができる。
【実施例3】
【0061】
実施例3における砲弾型LED発光装置1を用いた構成について、図1を用いて説明する。反射膜10が形成されている凹部に、黄色蛍光体をシリコーン樹脂中に分散した蛍光体ペーストを注入した後、赤色蛍光体をシリコーン樹脂中に分散した蛍光体ペーストを注入し、これを60℃で2時間、100℃で1時間、150℃で4時間加熱して硬化させ、それぞれ黄色蛍光体層と赤色蛍光体層を形成した。
【0062】
この実施例における砲弾型LED発光装置1は、励起光源に近い側に黄色蛍光体層を蛍光体層(近)6として配置しているため、発光効率が高い蛍光体層の励起光強度が高くなり、発光装置全体としても発光効率が高い結果が得られた。また、シリコーンドームレンズ9の形状を変更することで、発光の配向を適宜変更可能である。
【0063】
具体的な構成は次のとおりである。図1において、励起光源に近い側の黄色蛍光体層の厚さがd1、遠い側の赤色蛍光体層の厚さがd2である。この場合、黄色蛍光体層の層厚 (μm)と、黄色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をA(wt%・μm)とし、赤色蛍光体層の層厚 (μm)と、赤色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をB (wt%・μm)とした時、AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
である。
【0064】
また、本実施例の他の態様として、前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A および
6000 < A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 4000
である。
【0065】
さらに、本実施例の他の態様としては、前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A
である。
【実施例4】
【0066】
実施例4における表面実装型LED発光装置11を用いた構成について、図10を用いて説明する。パッケージ12の凹部に、黄色蛍光体をシリコーン樹脂中に分散した蛍光体ペーストを注入した後、赤色蛍光体をシリコーン樹脂中に分散した蛍光体ペーストを注入し、これを60℃で2時間、100℃で1時間、150℃で4時間加熱して硬化させ、それぞれ黄色蛍光体層である蛍光体層(近)6と赤色蛍光体層である蛍光体層(遠)7を形成した。
【0067】
この実施例における表面実装型LED発光装置11は、励起光源に近い側に黄色蛍光体層を蛍光体層(近)6として配置しているため、発光効率が高い蛍光体層の励起光強度が高くなり、発光装置全体としても発光効率が高い結果が得られた。また、パッケージ内に蛍光体層を有するため励起光強度が高い事や、外部に対し飛び出した構造を持たないメリットがある。
【0068】
具体的な構成は次のとおりである。図10において、励起光源に近い側の黄色蛍光体層の厚さがd1、遠い側の赤色蛍光体層の厚さがd2である。この場合、黄色蛍光体層の層厚 (μm)と、黄色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をA(wt%・μm)とし、赤色蛍光体層の層厚 (μm)と、赤色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をB (wt%・μm)とした時、AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
である。
【0069】
また、本実施例の他の態様として、前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A および
6000 < A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 4000
である。
【0070】
さらに、本実施例の他の態様としては、前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A
である。
【実施例5】
【0071】
実施例5のLED発光装置の断面図を図11に示す。実施例5については、フリップチップ型LEDチップ14を用いた構成とした以外は、実施例1と同様に作製、評価した。この実施例における表面実装型LED発光装置11は、励起光源に近い側に黄色蛍光体層を蛍光体層(近)6として配置しているため、発光効率が高い蛍光体層の励起光強度が高くなり、発光装置全体としても発光効率が高い結果が得られた。また、フリップチップ型LEDチップ14を用いているため熱引きが良く、熱による発光効率の低下を抑制するメリットがある。
【0072】
励起光源に近い側の黄色蛍光体層の厚さがd1、遠い側の赤色蛍光体層の厚さがd2である。この場合、黄色蛍光体層の層厚 (μm)と、黄色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をA(wt%・μm)とし、赤色蛍光体層の層厚 (μm)と、赤色蛍光体層の全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をB (wt%・μm)とした時の具体的な効果は実施例1で述べたと同様である。
【実施例6】
【0073】
実施例6のLED発光装置の断面図を図12に示す。実施例6については、フリップチップ型LEDチップ14を用いた構成とした以外は、実施例4と同様に作製、評価した。図12において、黄色蛍光体層である蛍光体層(近)6の厚さはd1、赤色蛍光体層である蛍光体層(遠)7の厚さはd2である。
【0074】
この実施例における表面実装型LED発光装置11は、励起光源に近い側に黄色蛍光体層を蛍光体層(近)6として配置しているため、発光効率が高い蛍光体層の励起光強度が高くなり、発光装置全体としても発光効率が高い結果が得られた。
【0075】
本実施例において、励起光源に近い蛍光体層の厚さおよび蛍光体の重量%と、励起光源から遠い蛍光体層の厚さおよび蛍光体の重量%との関係は、実施例4で説明したのと同様である。
【0076】
本実施例では、フリップチップ型LEDチップ14を用いているため熱引きが良く、熱による発光効率の低下を抑制するメリットがある。さらに、パッケージ内に蛍光体層を有するため励起光強度が高く、外部に対し飛び出した構造を持たないメリットがある。
【実施例7】
【0077】
実施例7におけるフリップチップ型LEDチップ14を用いた構成について、図13を用いて説明する。この構成では、フリップチップ型LEDチップ14の外部側が平坦な面となるため、プレート状の蛍光体を直接フリップチップ型LEDチップ14の表面に密着又は接着する事ができ、均一な発光を実現することができる。ここで、蛍光体プレート(近)15は黄色蛍光体プレートを用い、蛍光体プレート(遠)16は赤色蛍光体プレートを用いた。また、配置は、フリップチップ型LEDチップ14、蛍光体プレート(近)15、蛍光体プレート(遠)16の順番に隣り合った構成とし、透明樹脂13としてシリコーン樹脂で封止した。なお、蛍光体プレートは複数のフリップチップ型LEDチップ14に接して励起、発光する構成となっていても良い。
【0078】
蛍光体プレートの製法としては、加圧下で加熱して粒子を焼結させる方法を取った。なお、プレート化の際には透明バインダを使用することで層厚、濃度密度を制御する事ができる。この実施例における表面実装型LED発光装置11は、励起光源に近い側に黄色蛍光体層を蛍光体プレート(近)15として配置しているため、発光効率が高い蛍光体プレートの励起光強度が高くなり、発光装置全体としても発光効率が高い結果が得られた。また、フリップチップ型LEDチップ14を用いているため熱引きが良く、熱による発光効率の低下を抑制するメリットがある。さらに、蛍光体プレート(近)15がフリップチップ型LEDチップ14に接しているため、励起光強度が非常に高い事や、蛍光体プレート(近)15は均一性が高いため発光が均一になるメリットがある。そして、外部に対し飛び出した構造を持たないメリットがある。
【0079】
励起光源に近い側の黄色蛍光体プレートの厚さがd1、遠い側の赤色蛍光体プレートの厚さがd2である。この場合、黄色蛍光体プレートの層厚 (μm)と、黄色蛍光体プレートの全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をA(wt%・μm)とし、赤色蛍光体プレートの層厚 (μm)と、赤色蛍光体プレートの全質量に対する含有された蛍光体の質量パーセント濃度(wt%)との積をB (wt%・μm)とした時の具体的な効果は実施例1で述べたと同様である。
【0080】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0081】
本発明の発光装置は、各種照明、具体的には家庭用の照明、通信機器、自動車のヘッドライトや車内照明、電車のヘッドライトや車内照明、ディスプレイ装置のバックライト、液晶プロジェクタの光源等へ広く適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 砲弾型LED発光装置
2 LEDチップ
3 金属バンプ
4 金属ワイヤ
5 電気リードフレーム
6 蛍光体層(近)
7 蛍光体層(遠)
8 成形モールド
9 シリコーンドームレンズ
10 反射膜
11 表面実装型LED発光装置
12 パッケージ
13 透明樹脂
14 フリップチップ型LEDチップ
15 蛍光体プレート(近)
16 蛍光体プレート(遠)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDチップと前記LEDチップから外部に放射される光路に沿って第1の蛍光体層と第2の蛍光体層が配置されたLED発光装置であって、
前記LEDチップからの発光が青色光であり、前記第1の蛍光体層に含まれる蛍光体が黄色蛍光体であり、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体が赤色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt1をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw1で表したときt1×w1=Aとし、
前記第2の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt2をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw2で表したときt2×w2=Bとしたとき、
AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
である事を特徴とするLED発光装置。
【請求項2】
前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A および
6000 < A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 4000
である事を特徴とする請求項1に記載のLED発光装置。
【請求項3】
前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A
である事を特徴とする請求項1に記載のLED発光装置。
【請求項4】
前記第1の蛍光体層に含まれる蛍光体がY3Al5O12:Ceで表わされるYAG蛍光体、Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Euで表されるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、CaGa2S4:Euで表わされるチオガレート蛍光体のうちのいずれかであり、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体がCaAlSiN3:Euで表わされるCASN蛍光体、(Sr,Ca)AlSiN3:Euで表わされるSCASN蛍光体、CaS:Euで表わされる硫化物蛍光体のうちのいずれかである事を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のLED発光装置。
【請求項5】
LEDチップと前記LEDチップから外部に放射される光路に沿って第1の蛍光体層と第2の蛍光体層が配置されたLED発光装置であって、
前記LEDチップからの発光が青色光であり、前記第1の蛍光体層に含まれる蛍光体が緑色蛍光体であり、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体が橙色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt1をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw1で表したときt1×w1=Aとし、
前記第2の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt2をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw2で表したときt2×w2=Bとしたとき、
AとBの値が、
6000 ≦ A ≦ 12500かつ0 < B ≦ 2000
である事を特徴とするLED発光装置。
【請求項6】
緑色蛍光体層に含まれる蛍光体が(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Euで表されるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、Si6−xAlxOxN8−x:Euで表わされるβ-サイアロン蛍光体、Ba3Sc2Si3O12:Ceで表わされる珪酸塩蛍光体、CaSc2O4:Ceで表わされるスカンジウム酸化物蛍光体、SrGa2S4:Euで表わされるチオガレート蛍光体のうちのいずれかであり、
前記橙色蛍光体層に含まれる蛍光体が(Ba,Sr,Ca,Mg)3SiO5:Euで表わされるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、Cax(Si,Al)12(O, N)16:Euで表わされるα-サイアロン蛍光体、SrS:Euで表わされる硫化物蛍光体のうちのいずれかである事を特徴とする請求項5に記載のLED発光装置。
【請求項7】
LEDチップと前記LEDチップから外部に放射される光路に沿って第1の蛍光体層と第2の蛍光体層が前記LEDチップから近い順に配置され、前記第1の蛍光体層は、前記LEDチップからの光を吸収してより波長の長い光を放射する蛍光体で構成され、前記第2の蛍光体層は、前記LEDチップからの光および前記第1の蛍光体層から放射される光を吸収してより波長の長い光を放射する蛍光体で構成され、
前記第1の蛍光体層および前記第2の蛍光体層は板状に成型されていることを特徴とするLED発光装置。
【請求項8】
前記LEDチップからの発光が青色光であり、前記第1の蛍光体層に含まれる蛍光体が黄色蛍光体であり、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体が赤色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt1をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度をwt%をw1で表したときt1×w1=Aとし、
前記第2の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt2をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度をwt%をw2で表したときt2×w2=Bとしたとき、
AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
である事を特徴とする請求項7に記載のLED発光装置。
【請求項9】
前記LEDチップからの発光が青色光であり、前記第1の蛍光体層に含まれる蛍光体が緑色蛍光体であり、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体が橙色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt1をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度をwt%をw1で表したときt1×w1=Aとし、
前記第2の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt2をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度をwt%をw2で表したときt2×w2=Bとしたとき、
AとBの値が、
6000 ≦ A ≦ 12500かつ0 < B ≦ 2000
である事を特徴とする請求項7に記載のLED発光装置。
【請求項1】
LEDチップと前記LEDチップから外部に放射される光路に沿って第1の蛍光体層と第2の蛍光体層が配置されたLED発光装置であって、
前記LEDチップからの発光が青色光であり、前記第1の蛍光体層に含まれる蛍光体が黄色蛍光体であり、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体が赤色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt1をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw1で表したときt1×w1=Aとし、
前記第2の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt2をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw2で表したときt2×w2=Bとしたとき、
AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
である事を特徴とするLED発光装置。
【請求項2】
前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A および
6000 < A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 4000
である事を特徴とする請求項1に記載のLED発光装置。
【請求項3】
前記AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 6000かつ0 < B ≦ 10000−A
である事を特徴とする請求項1に記載のLED発光装置。
【請求項4】
前記第1の蛍光体層に含まれる蛍光体がY3Al5O12:Ceで表わされるYAG蛍光体、Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Euで表されるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、CaGa2S4:Euで表わされるチオガレート蛍光体のうちのいずれかであり、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体がCaAlSiN3:Euで表わされるCASN蛍光体、(Sr,Ca)AlSiN3:Euで表わされるSCASN蛍光体、CaS:Euで表わされる硫化物蛍光体のうちのいずれかである事を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のLED発光装置。
【請求項5】
LEDチップと前記LEDチップから外部に放射される光路に沿って第1の蛍光体層と第2の蛍光体層が配置されたLED発光装置であって、
前記LEDチップからの発光が青色光であり、前記第1の蛍光体層に含まれる蛍光体が緑色蛍光体であり、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体が橙色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt1をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw1で表したときt1×w1=Aとし、
前記第2の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt2をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度wt%をw2で表したときt2×w2=Bとしたとき、
AとBの値が、
6000 ≦ A ≦ 12500かつ0 < B ≦ 2000
である事を特徴とするLED発光装置。
【請求項6】
緑色蛍光体層に含まれる蛍光体が(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Euで表されるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、Si6−xAlxOxN8−x:Euで表わされるβ-サイアロン蛍光体、Ba3Sc2Si3O12:Ceで表わされる珪酸塩蛍光体、CaSc2O4:Ceで表わされるスカンジウム酸化物蛍光体、SrGa2S4:Euで表わされるチオガレート蛍光体のうちのいずれかであり、
前記橙色蛍光体層に含まれる蛍光体が(Ba,Sr,Ca,Mg)3SiO5:Euで表わされるアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体、Cax(Si,Al)12(O, N)16:Euで表わされるα-サイアロン蛍光体、SrS:Euで表わされる硫化物蛍光体のうちのいずれかである事を特徴とする請求項5に記載のLED発光装置。
【請求項7】
LEDチップと前記LEDチップから外部に放射される光路に沿って第1の蛍光体層と第2の蛍光体層が前記LEDチップから近い順に配置され、前記第1の蛍光体層は、前記LEDチップからの光を吸収してより波長の長い光を放射する蛍光体で構成され、前記第2の蛍光体層は、前記LEDチップからの光および前記第1の蛍光体層から放射される光を吸収してより波長の長い光を放射する蛍光体で構成され、
前記第1の蛍光体層および前記第2の蛍光体層は板状に成型されていることを特徴とするLED発光装置。
【請求項8】
前記LEDチップからの発光が青色光であり、前記第1の蛍光体層に含まれる蛍光体が黄色蛍光体であり、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体が赤色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt1をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度をwt%をw1で表したときt1×w1=Aとし、
前記第2の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt2をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度をwt%をw2で表したときt2×w2=Bとしたとき、
AとBの値が、
4000 ≦ A ≦ 10000かつ0 < B ≦ 8000
である事を特徴とする請求項7に記載のLED発光装置。
【請求項9】
前記LEDチップからの発光が青色光であり、前記第1の蛍光体層に含まれる蛍光体が緑色蛍光体であり、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体が橙色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt1をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度をwt%をw1で表したときt1×w1=Aとし、
前記第2の蛍光体層の前記LEDチップから外部に放射される光路に沿った厚さt2をμmで表示し、前記第1の蛍光体層の全質量に対する蛍光体の質量パーセント濃度をwt%をw2で表したときt2×w2=Bとしたとき、
AとBの値が、
6000 ≦ A ≦ 12500かつ0 < B ≦ 2000
である事を特徴とする請求項7に記載のLED発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−228344(P2011−228344A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94094(P2010−94094)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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